(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】複合型保護継電器装置、およびその設計方法
(51)【国際特許分類】
H02H 7/045 20060101AFI20240725BHJP
H02H 3/05 20060101ALI20240725BHJP
H02H 3/34 20060101ALI20240725BHJP
H02H 3/38 20060101ALI20240725BHJP
H02H 3/42 20060101ALI20240725BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H02H7/045 E
H02H3/05 C
H02H3/34 D
H02H3/38 P
H02H3/42 D
H02J3/00 170
(21)【出願番号】P 2021082921
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 康太
(72)【発明者】
【氏名】別府 賢一郎
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-089505(JP,A)
【文献】特開2005-269870(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0021937(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H1/00-3/07
H02H3/32-3/52
H02H7/04-7/055
H02J3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器と配線を備えて構成される電力機器主回路および該電力機器主回路に接続される電力系統の事故から電力機器や配線および付随する電気機器を保護する
複合型保護継電器装置であって、
前記電力機器主回路の結線構成を表記する展開接続図と、前記展開接続図上の位相に関する条件を設定する信号と、前記電力機器主回路の所定の位置に配置され接続された複数の計器用変成器の計測信号と、を入力する入力部と、
前記電力機器主回路の
前記展開接続図と、前記電力機器主回路の変圧器の結線と、複数の前記計器用変成器の位相と結線の設定とに基づき、
前記電力機器主回路から
前記複合型保護継電器装置までの前記展開接続図の各部の位相を自動計算する自動計算部と、
前記電力機器主回路の
前記展開接続図と、該展開接続図の各部の位相の自動計算結果と、複数の前記計器用変成器の計測信号の位相と、を表示する表示部と、
を備える、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電力機器主回路に接続された複数の前記計器用変成器の前記計測信号を基に、前記電力機器主回路または
前記電力系統の異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部による異常検出信号によって、前記電力機器主回路または前記電力系統に設置された遮断器に遮断信号を出力する出力部と、
を備える、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記電力機器主回路は、
前記電力系統に変圧器を備える変圧器主回路である、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記電力機器主回路は、
前記電力系統に発電機を備える発電機主回路である、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記電力機器主回路は、
前記電力系統に変圧器と発電機を備える電力機器主回路である、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項6】
請求項2において、
前記異常検出部は、差動電流リレーの検出機能、界磁喪失リレーの検出機能のいずれか、または両方を備える、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記表示部は、
前記複合型保護継電器
装置へ入力した前記計器用変成器の実測値と、前記自動計算部の計算値とを、画面上で比較表示す
る、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置。
【請求項8】
電力機器と配線を備えて構成される電力機器主回路および該電力機器主回路に接続される電力系統の事故から電力機器や配線および付随する電気機器を保護する複合型保護継電器装置の設計方法であって、
前記電力機器主回路の結線構成を
表記する展開接続図
と、前記展開接続図上の位相に関する条件を設定する信号と、前記電力機器主回路の所定の位置に配置され接続された複数の計器用変成器の計測信号と、を入力し、
前記電力機器主回路の前記展開接続図と、前記電力機器主回路の変圧器の結線と、
複数の前記計器用変成器の位相と結線の設定とに基づき、
前記電力機器主回路から
前記複合型保護継電器装置までの前記展開接続図の各部の位相を自動計算
し、
前記電力機器主回路の前記展開接続図と、該展開接続図の各部の位相の自動計算結果と、複数の前記計器用変成器の計測信号の位相と、を表示する、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置の設計方法。
【請求項9】
電力機器主回路および該電力機器主回路に接続される電力系統の事故から電気機器を保護する複合型保護継電器装置の設計方法であって、
前記電力機器主回路と、所定の位置に配置された計器用変圧器と計器用変流器と、前記複合型保護継電器装置とが接続された展開接続図を入力し、
前記電力機器主回路に入力する電圧と電流間における力率を入力して、電圧に対する電流の位相を計算し、
前記計器用変圧器の結線情報に関する所定のリストから
前記計器用変圧器の結線情報を選択入力し、
前記計器用変圧器の結線情報から所定のアルゴリズムによって、
前記計器用変圧器の二次電圧の位相を計算し、
前記展開接続図上の所定の位置に前記計算した計器用変圧器の二次電圧の位相を表示し、
前記計器用変流器の結線情報に関する所定のリストから
前記計器用変流器の結線情報を選択入力し、
前記計器用変流器の結線情報から所定のアルゴリズムによって、
前記計器用変流器の二次電流の位相を計算し、
前記展開接続図上の所定の位置に前記計算した計器用変流器の二次電流の位相を表示し、
前記計器用変圧器と前記計器用変流器によって測定した前記電力機器主回路の所定の箇所の電圧と電流のそれぞれの位相を入力し、
表示された前記展開接続図上における測定された前記計器用変圧器の電圧の位相、および前記計器用変流器の電流の位相と、前記所定のアルゴリズムで計算された
前記計器用変圧器の二次電圧の位相、および、
前記計器用変流器の二次電流の位相を、それぞれ比較することによって、
前記複合型保護継電器装置の設計が適正か否かを判定する、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置の設計方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、
前記電力機器主回路は、
前記電力系統に変圧器を備える変圧器主回路である、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置の設計方法。
【請求項11】
請求項8または請求項9において、
前記電力機器主回路は、
前記電力系統に発電機を備える発電機主回路である、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置の設計方法。
【請求項12】
請求項8または請求項9において、
前記電力機器主回路は、
前記電力系統に変圧器と発電機とを備える電力機器主回路である、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置の設計方法。
【請求項13】
請求項8または請求項9において、
前記複合型保護継電器装置は、差動電流リレーの検出機能、界磁喪失リレーの検出機能のいずれか、または両方を備える、
ことを特徴とする複合型保護継電器装置の設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護継電器装置に係る。特に、電力系に接続された各種機器を保護するに好適な複合型保護継電器装置、およびその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力・水力発電所における発電機や変圧器などを保護するための保護継電器装置の設計、製作においては、保護継電器装置への電流電圧の入力も多様である。そのため、入力電流電圧の仕様に適応する保護継電器装置は、発電所毎に毎回設計する必要がある。
特に入力電流電圧の位相については、その種類組合せが膨大で、計器用変成器(計器用変圧器、計器用変流器)のベクトル変換や、変圧器部のベクトル変換を行っているため、計算が煩雑である。また、設計時間の削減と絶対に間違いのない設計が一般的には困難である。また、電流電圧の入力位相を誤ると、保護リレーの誤動作、誤不動作になるため、ヒューマンエラーによる設計ミスを防止することが重要である。
【0003】
前記の課題を解決するための技術として、特許文献1および特許文献2がある。
特許文献1の[要約]には、「[課題]図面の自動検査及び製作図面の自動生成、並びに手配部品の自動抽出を可能とする制御盤設計支援システムを提供することを目的とする。[解決手段]制御盤設計支援システム1は、電気系CAD機能の電気回路図面編集部31と、作成編集された展開接続図を検査ルールリスト15及び図面検査用リスト16を用いて検査する展開接続図検査部41と、展開接続図から雛形図面データベース17の雛形図面を用いて制御盤製作図面を生成する制御盤製作図面生成部43と、機械系CAD機能を用いて、前記生成された制御盤製作図面を編集及び出力する制御盤製作図面編集部33と、展開接続図から部品データベース18及び関連部品データベース19を用いて手配部品リスト22生成する部品抽出部45を備えている。」と記載され、制御盤製作支援システムの技術が開示されている。
【0004】
このように、特許文献1では、設計支援システムとして、図面の自動検査及び製作図面の自動生成、並びに手配部品の自動抽出を可能とする制御盤設計支援システムの技術が示されている。
【0005】
また、特許文献2の[要約]には、「[課題]方向性継電装置を含む複線図式の電気回路図が表示された画面上において方向性継電装置の結線状態や動作を視覚的に確認できる電気回路設計支援装置を得る。[解決手段]CADの電子データに基づく方向性保護継電装置を含む複線図式の電気回路図が、電気回路図表示手段31によりディスプレイ40の画面に表示されている。当該画面上で端子結線確認手段33により方向性保護継電装置の入力端子に結線が全てされているかを確認し、結線に抜けがあれば画面上の電気回路図を修正する。しかる後、方向性保護継電装置模擬装置50に模擬入力を与えて保護方向を含めた動作確認をし、画面に表示されている電気回路図に対応させて、模擬入力値や保護方向を表示する。画面に表示されている電気回路図上で方向性保護継電装置の入力端子の結線を視覚的に確認でき、保護方向等も表示されるので、電気回路図の結線の誤りを防止できる。」と記載され、方向性保護継電装置に係る電気回路設計支援装置の技術が開示されている。
【0006】
このように、特許文献2では、従来の電気回路設計支援装置及び方向性継電装置試験支援装置として、方向性継電装置が組み込まれた電気回路図上において方向性継電装置の結線や動作を視覚的に確認でき、また方向性継電装置の保護方向を電気回路図と関連づけた管理リストを作成できる電気回路設計支援装置及び電気回路図と対応させて方向性継電装置の設定値や方向性継電装置の動作を視覚的に確認することのできる方向性継電装置試験支援装置の技術示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-55571号公報
【文献】特開2007-189858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の従来の設計支援システムでは、制御盤についての支援システムであるが、保護継電器装置の支援システムには対応することができないという課題(問題)がある。
また、特許文献2の従来の電気回路設計支援装置では、入力位相の誤りを防止するために、方向性保護継電装置の入力方向の端子への結線情報を表示する考慮されていたが、主回路の位相や保護継電装置の位相まで確認することを考慮されていないという課題(問題)がある。
【0009】
本発明は、前記課題に対応するために、組合せが膨大な電流電圧の位相の自動計算を可能とする複合型保護継電器装置を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の複合型保護継電器装置は、電力機器と配線を備えて構成される電力機器主回路および該電力機器主回路に接続される電力系統の事故から電力機器や配線および付随する電気機器を保護する複合型保護継電器装置であって、前記電力機器主回路の結線構成を表記する展開接続図と、前記展開接続図上の位相に関する条件を設定する信号と、前記電力機器主回路の所定の位置に配置され接続された複数の計器用変成器の計測信号と、を入力する入力部と、前記電力機器主回路の前記展開接続図と、前記電力機器主回路の変圧器の結線と、複数の前記計器用変成器の位相と結線の設定とに基づき、前記電力機器主回路から前記複合型保護継電器装置までの前記展開接続図の各部の位相を自動計算する自動計算部と、前記電力機器主回路の前記展開接続図と、該展開接続図の各部の位相の自動計算結果と、複数の前記計器用変成器の計測信号の位相と、を表示する表示部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、組合せが膨大な電流電圧の位相の計算を自動計算で実施する複合型保護継電器装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の構成例を概念的に示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の構成例を、外部計測装置と設計端末装置に接続した場合として示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置における設計端末装置の表示画面例を示す図である。
【
図4】変圧器主回路に本発明の第1実施形態の複合型保護継電器装置を接続した構成例を示す図である。
【
図5】変圧器の1次側と2次側の結線であるYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0と位相関係(位相角)と計算式とを一覧として示したものである。
【
図6】計器用変圧器の1次側と2次側の結線であるYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0と位相関係(位相角)と計算式とを一覧として示したものである。
【
図7】計器用変流器CTの結線の種類と、その結線における基準位相を傾ける角度と、計算式との関係を示す図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の動作を示すフローチャートの例を示す図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の演算によるVT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャートの例を示す図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の演算によるCT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は例であって、説明する具体的内容に発明自体が限定されるものではない。
【0015】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の構成について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置101の構成例を概念的に示す図である。
【0016】
また、
図1において、複合型保護継電器装置101は、異常検出部110、自動計算部111、表示部112、入力部113、出力部114を備えている。
異常検出部110は、保護継電器として、例えば、過電流保護リレー、差動電流リレー(電流差動リレー、比率電流差動リレー)、界磁喪失リレー、電圧保護リレー、地絡保護リレー等の機能を異常検出手段として有している。
また、自動計算部111は、CPU(Central Processing Unit)を備えて構成され、後記する計器用変成器(VCT)、計器用変圧器(VT)、計器用変流器(CT)における位相自動計算機能を備えている。なお、計器用変圧器や計器用変流器も、適宜、計器用変成器と表記する。
【0017】
また、表示部112は、電力系統(配電系統)における電力機器主回路(変圧器主回路、発電機主回路)の構成や、単線結線図(あるいは三線結線図)や、計器用変成器(VCT,VT,CT)の三相の電圧・電流のベクトル関係に対応する位相などを画面で表示する。例えば、後記する
図3、あるいは
図4に相当する画面構成や簡易化された構成を表示する。なお、電力機器主回路や複数の計器用変成器の構成を含む単線結線図(あるいは三線結線図)を、適宜、展開接続図とも呼称する。
入力部113(
図1)は、後記する
図2における外部計測装置202(例えば計器用変成器(VCT,VT,CT)や試験装置)からの信号や、設計端末装置203からの信号を入力する。また、展開接続図に関する情報も入力する。
【0018】
出力部114は、複合型保護継電器装置101としての電力機器主回路や複数の計器用変成器の位相の自動計算(位相自動計算)の演算結果を、内部の表示部112に出力、送信する。
また、出力部114は、保護継電器(リレー)としての複合型保護継電器装置101の異常検出部110の検出した異常信号を外部に送信する。例えば、出力部114から、後記する
図4における遮断器410を遮断する信号(4101:
図4)が出力する。
【0019】
以上の構成によって、複合型保護継電器装置101は、電力機器主回路(変圧器主回路、発電機主回路など)の構成や、計器用変成器(VCT)、計器用変圧器(VT)、計器用変流器(CT)の構成を入力して、これらの構成に適した保護継電器としての構成を自動計算部111で自動計算して、複合型保護継電器装置101としての構成を確定する。
前記したように、従来においては、発電機、変圧器を含む発電所毎に、計器用変成器(VCT,VT,CT)の構成や、保護継電器としての構成を、都度、設計、あるいは設計変更をしていたが、構成の組み合わせが膨大であって、多大な工数と期間を要していた。
本願の発明による複合型保護継電器装置101は、前記の構成によって、保護継電器としての設計変更を軽減するようにしている。以降に、複合型保護継電器装置101について、詳細に説明する。
【0020】
図2は、本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置101の構成例を、外部計測装置202と設計端末装置203に接続した場合として示す図である。
なお、外部計測装置202は、複数の計器用変成器(VCT,VT,CT)である場合や、それらの複数の計器用変成器(VCT,VT,CT)を代用する試験装置である場合がある。
そして、外部計測装置202から複合型保護継電器装置101の入力部113に、信号(電流、電圧、位相など)が流入している。また、この入力した信号(電流、電圧、位相など)の値や、配電系統の系統構成を含む展開接続図などを表示部112で表示する。
また、表示部112においては、後記する計器用変成器VCT(VT,CT)の位相の自動計算結果と前記の外部計測装置202からの入力値や、設計端末装置203からの信号を表示可能である。
【0021】
また、
図2において、設計端末装置203は、CPU211と表示部212と入力装置213を備えて構成されている。
入力装置213は、キーボードやマウスを備えて構成されており、複合型保護継電器装置101への構成を設定するための指示を入力する装置である。
設計端末装置203の表示部212は、入力装置213による入力を表示する。また、複合型保護継電器装置101における自動計算結果、および前記の外部計測装置202からの入力値を設計端末装置203の表示部212に表示することが可能である。すなわち、設計端末装置203の表示部212と、複合型保護継電器装置101の表示部112とにおいて、表示内容を部分的に共用することも可能である。
設計端末装置203のCPU211は、設計端末装置203の作業、動作を支援する。
【0022】
<設計端末装置における計算結果と外部入力の位相の表示>
前記した
図2における設計端末装置203の表示部212の表示例を、
図3における設計端末装置203の表示画面例301として説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置における設計端末装置203の表示画面例301を示す図である。
図3において、設計端末装置203(
図2)の表示画面例301においては、複合型保護継電器装置101(
図2)の自動計算部111(
図2)における「アルゴリズムによる計算結果」311と、外部計測装置202からの「外部入力」312が表示されている。
【0023】
図3において、「アルゴリズムによる計算結果」311では、「力率(θ)=1」、「(a)Yy0結線」、「(A)主回路電圧」、「(b)Y正結線」、「(B)主回路電流」、「(F)VT2次電圧」、「(G)CT2次電流」が例として表記されている。
また、「外部入力」312では、「(f)VT2次電圧」、「(g)CT2次電流」が例として表記されている。
なお、「アルゴリズムによる計算結果」311、および「外部入力」312では、系統の各部の位相をベクトル図にて表示している。つまり、系統の各部の位相は、三相の電圧・電流のベクトル関係に対応しているので、視覚的に便利な三相の電圧・電流のベクトルで表記(表示)している。なお、単に「位相」と表記した場合においては、「三相の電圧または三相の電流のベクトル関係で示した位相」であることを、適宜、意味する。
【0024】
図3においては、「アルゴリズムによる計算結果」311の一例が表示されている。
図3において、破線の枠で示した各ブロックは「選択」する要素を示しており、「力率(θ)=1」、「(a)Yy0結線」、「(b)Y正結線」、「(A)主回路電圧」が選択されて入力されている。
この選択がなされた場合に、実線の枠で示した各ブロック「(B)主回路電流」、「(F)VT2次電圧」、「(G)CT2次電流」が複合型保護継電器装置101のCPUのアルゴリズムによって計算され、その結果が位相情報を含むベクトル図で表示される。
【0025】
また、
図3においては、「外部入力」312において、外部計測装置202(
図2)で計測された外部入力からの「(f)VT2次電圧」、「(g)CT2次電流」が位相と共にベクトル図で表示される。
【0026】
これらの複合型保護継電器装置101のCPUを備えた自動計算部111(
図2)のアルゴリズムで計算された、「(F)VT2次電圧」、「(G)CT2次電流」と、外部入力312から計測された「(f)VT2次電圧」、「(g)CT2次電流」とをそれぞれ比較して、
図3における設計端末装置203の表示画面例301における設定が適正であるか否かを検証する。すなわち、(F)と(f)が一致、かつ、(G)と(g)が一致していれば、複合型保護継電器装置101の設定が適正であると判定する。
なお、複合型保護継電器装置101の設定が適正であることが確認されれば、その設定の複合型保護継電器装置101は、電力系統(配電系統)における電力機器主回路の保護継電器として使用できることを意味する。
【0027】
<変圧器主回路と複合型保護継電器装置の接続構成例>
図4は、変圧器の主回路である変圧器主回路401に本発明の第1実施形態の複合型保護継電器装置101を接続した構成例を示す図である。なお、
図4では、電力機器の主回路(電力機器主回路)としての例として、電力機器が変圧器である変圧器主回路の構成例を示すものである。
【0028】
図4において、変圧器主回路(電力機器主回路)401と、それを保護する保護継電器である複合型保護継電器装置(複合型保護継電器)101が配置されている。
変圧器主回路401は、三相配電線405,406,407と遮断器410と変圧器(主変圧器)413を備えて構成されている。
三相(R,S,T)電圧が供給されている三相配電線405と三相配電線406との間に、遮断器410が設けられている。
また、三相配電線406の電力(電圧、電流)は、主変圧器413の一次側に供給され、主変圧器413で変圧された電力(電圧、電流)が、主変圧器413の二次側の三相配電線407に供給されている。
主変圧器413の一次側は、三相のΔ結線であり、二次側は三相のY結線である。そのため、二次側の電圧が供給される三相配電線407の三相電圧は、一次側の電圧が供給されている三相配電線406の三相電圧に対して、電圧のみならず位相も変換されている。
【0029】
三相配電線406には、計器用変圧器(VT)411が備えられ、計器用変圧器(VT)411の1次側が三相配電線406に接続されている。
また、三相配電線406には、計器用変流器(CT)412が設けられ、計器用変流器(CT)412で三相配電線406の電流が検出される。
三相配電線407には、計器用変流器(CT)414が設けられ、計器用変流器(CT)414で三相配電線407の電流が検出される。
また、三相配電線407には、計器用変流器(CT)415が設けられ、計器用変流器(CT)415で三相配電線407の電流が検出される。
なお、計器用変流器(CT)412と計器用変流器(CT)414は、Y結線であり、計器用変流器(CT)415は、Δ結線である。
【0030】
計器用変圧器(VT)411で変圧された信号電圧、および計器用変流器(CT)412、計器用変流器(CT)414、計器用変流器(CT)415で、それぞれ変成された信号電流は、複合型保護継電器装置(複合型保護継電器)101に入力している。
【0031】
複合型保護継電器装置101で保護継電器として演算された出力(出力部114:
図2)は、遮断器410に接続されている。複合型保護継電器装置101の異常検出部110によって、変圧器主回路401に異常があると判定された場合には、複合型保護継電器装置101の制御の基に、信号線4101(
図4)を介して、遮断器410は遮断される。
なお、遮断器410が電力系統(配電系統)の三相配電線405と変圧器主回路(電力機器主回路)401の三相配電線406との間を遮断することによって、電力系統(配電系統)や、変圧器主回路401の電力機器や配線(配電線)、および図示していない付随する電気機器(必ずしも電力を対象としない電気機器)を、異常事態から保護する。
【0032】
<変圧器主回路と複合型保護継電器装置の入力と出力の算出手順の概要>
図4を参照して、変圧器主回路と複合型保護継電器装置の入力と出力の算出手順の概要を説明する。
図4において、点線(破線)の枠線で示したブロック(1011,1012,1013,1014,1015,1016)に示した入力部から、変圧器主回路に入力する電圧と電流間の力率の値や、基準となる変圧器主回路における電圧ベクトル図、VCT結線情報、変圧器の情報が入力される。
なお、
図4においては、「力率(θ)=1」、「(A)主回路電圧のベクトル図」、「(a)Yy0結線」、「(b)Y正結線」、「(c)主変圧器、Dy1結線」、「(d)Y結線」、「(e)Δ逆結線」が、それぞれ入力されている。
【0033】
前記の情報が入力された後、実線の枠線で示したブロック(1023,1025,1026,1031,1032,1033,1034)に、変圧器主回路に関する前記の複数の情報を基に、複合型保護継電器装置101の自動計算部111で演算された自動計算結果が三相の電圧・電流のベクトル図(位相)として、表示される。
なお、
図4においては、「(B)主回路電流のベクトル図」、「(D)主回路電流のベクトル図」、「(E)主回路電流のベクトル図」、「(E)主回路電流」、「(F)VT2次電圧のベクトル図」、「(G)CT2次電流のベクトル図」、「(H)CT2次電流のベクトル図」、「(I)CT2次電流のベクトル図」が、それぞれ表示されている。
【0034】
変圧器主回路401から計器用変圧器VT(411)、計器用変流器CT(412,414,415)通じて、入力される電圧・電流は、一点鎖線の枠線で示したブロック(1041,1042,1043,1044)で表示される。
なお、
図4においては、「(f)VT2次電圧のベクトル図」、「(g)CT2次電流のベクトル図」、「(h)CT2次電流のベクトル図」、「(i)CT2次電流のベクトル図」として、表示される。
なお、一点鎖線の枠線で示したブロックは、自動計算の結果である実線の枠線で示したブロックの横(近傍)に、比較しやすいように、それぞれ表示される。
そして、互いの横(近傍)に表示された値を比較することによって、実測値と計算値が一致しているか否かを確認できる。
【0035】
具体的には、
図4に示すように、計算値を実線の枠線で示したブロック(1031,1032,1033,1034)と実測値を一点鎖線の枠線で示したブロック(1041,1042,1043,1044)をそれぞれ比較して確認する。
すなわち、「(F)VT2次電圧」と「(f)VT2次電圧」とを比較する。同様に、「(G)CT2次電流」と「(g)CT2次電流」とを比較する。
また、「(H)CT2次電流」と「(h)CT2次電流」とを比較し、「(I)CT2次電流」と、「(i)CT2次電流」とを比較する。
以上においても、それぞれが隣接された箇所に表示され、実測値と計算値が一致しているのかを容易に確認することができる
【0036】
<変圧器主回路と複合型保護継電器装置の入力と出力の算出手順の詳細>
次に、変圧器主回路401と複合型保護継電器装置101の入力と出力の算出手順の詳細について説明する。
なお、
図4で示した変圧器主回路401は、三相配電線405,406,407、遮断器410、変圧器(主変圧器)413を備えて構成されている。
【0037】
図4において、選択箇所は、枠を点線(破線)で表したブロック(1011,1012,1013,1014,1015,1016)となっている。
また、アルゴリズムを用いて計算した結果を表示する箇所は、枠を実線で表したブロック(1023,1025,1026,1031,1032,1033,1034)となっている。
また、
図4における各符号の(A)、(a)、(B)、(b)、(c)、(D)、(d)、(E)、(e)、(F)、(f)、(G)、(g)、(H)、(h)、(I)、(i)は、後記する説明の符号に対応する箇所を示すために、表記している。
また、
図4において「(a)Yy0結線」や「Dy1結線」の記載があり、また次の
図5、
図6の記述に関連する(Yd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0)の意味については、後記する。なお、「Yd1」等については、表記の都合上、半角の文字で表記している。
【0038】
《1》 まず初めに、主回路(変圧器主回路)に入力する電圧と電流間における力率を入力する。
図4に示す三線結線図の場合は、点線(破線)で示したブロック1011において、前記したように、「力率(θ)=1」を入力している。なお、力率(θ)=1とは、電圧と電流に位相差がない状態に対応する。
【0039】
《2》 次に、基準となる主回路電圧(A)を定義する。
具体的には、前記した主回路電圧における計器用変圧器VT411の結線情報である(a)をYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0から選択する。
図4に示した三線結線図の場合においては、計器用変圧器VT411の1次側がY結線であり、2次側もY結線であって、1次側と2次側に位相差は無いので、Yy0結線に相当する。
具体的には、点線(破線)で示したブロック1012において、「(a)Yy0結線」を選択する。また、選択すると「(A)主回路電圧のベクトル図」が選択されて表示部112(
図2)に表示される。
【0040】
《3》
図4に示したなかで、《1》で入力した力率、及び《2》で定義した主回路電圧(A)を用いて、自動計算部111(
図2)で計算を行い、主回路電流(B)を求める。
図4の三線結線図の場合は、力率(θ)=1より、主回路電流(B)は、主回路電圧(A)と同じ位相であり、同じベクトル図の関係となる。
なお、「主回路電流(B)のベクトル図」は、実線で示したブロック1023において、表示される。
【0041】
《4》 次に結線情報(b)、(d)、(e)を計器用変流器CT412、CT414、CT415に対応して、Y正、Y逆、Δ正、Δ逆の中から前記の計器用変流器のCT結線に合わせて、点線(破線)で示したブロック1013,1015,1016で、それぞれ「(b)Y正結線」、「(d)Y結線」、「(e)Δ逆結線」を選択する。
【0042】
《5》 発電機か変圧器かを選択する。変圧器(主変圧器413)である場合には、変圧器情報(c)をYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0から選択する。
図4の三線結線図の場合は、変圧器(主変圧器413)は、1次側がΔ結線で、2次側は、Y結線であるので、Dy1結線を選択する。
具体的には、点線(破線)で示したブロック1014において、「(c)主変圧器Dy1結線」を選択する。
【0043】
《6》 前記の変圧器情報(c)と主回路電流(B)より主回路電流(D),(E)を求める。
図4に示した三線結線図の場合、変圧器情報がDy1、すなわち1次側がΔ結線、2次側がY結線なので、主回路電流(D),(E)は、主回路電流(B)に比べ、-30度回転させたベクトルとなる。
【0044】
《7》 前記の《2》で定義した主回路電圧(A)と、結線情報(a)を用いて計算し、VT2次電圧(F)を求める。
図4の三線結線図の場合、VT2次電圧(F)は、結線情報(a)がYy0結線なので、主回路電圧(A)と同じベクトルである。
【0045】
《8》 次に《6》で求めた主回路電流(D),(E)と結線情報(d),(e)を用いて、CT2次電流(G),(H),(I)を求める。
図4の三線結線図の場合、CT2次電流(G)は、結線情報(b)がY正結なので、主回路電流(B)と同じベクトルである。
CT2次電流(H)は、結線情報(d)がY正結なので、主回路電流(D)と同じベクトルである。
CT2次電流(I)は、結線情報(e)が△逆結線なので、主回路電流(E)に比べて、210度回転させたベクトルとなる。
【0046】
《9》 保護リレー(複合型保護継電器装置101)に保守ツール(外部計測装置202)を繋ぎ、展開接続図、単結図、前記した(A)~(I)を、保守ツール(外部計測装置202)の画面に表示する。
実際に保護リレーに印加されている電圧・電流(F),(G),(H),(I)を保護リレー(保護継電器)が測定した(f),(g),(h),(i)の横に表示する。
試験時には(F)=(f),(G)=(g),(H)=(h),(I)=(i)となっていることを確認する。
前記の等しい関係が成り立っていない場合は、保護リレーの結線が間違っていることが分かる。
【0047】
<符号Yd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0の補足説明>
以上の説明において、
図4における計器用変圧器VT411の結線情報である(a)については、Yd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0から選択するとした。この符号の意味について、次に補足説明をする。
「Y」は、1次側の結線がY結線であることを意味する。
「y」は、2次側の結線がY結線であることを意味する。
「D」は、1次側の結線がΔ結線であることを意味する。
「d」は、2次側の結線がΔ結線であることを意味する。
「1」、「11」、「0」は、変圧器の1次側と2次側の位相関係(位相角)を意味している。なお、「1」、「11」、「0」は時計の針の短針と長針の位置関係に関連づけている。
【0048】
電気のベクトルにおいては、時計回りが遅れ方向、反時計回りが進み方向と、一般的には、定義されている。
すなわち、「0」は時計の0時に対応しており、短針と長針が重なっていることに対応する。つまり位相差は0度である。
また、「1」は、時計の1時に対応しており、長針の位置に対して短針は30度、右側に位置している。すなわち、30度遅れであることを意味している。
また、「11」は、時計の11時に対応しており、長針の位置に対して短針は30度、左側に位置している。すなわち、30度進みであることを意味している。
以上の模式的な関係から、変圧器の1次側と2次側の結線と位相関係(位相角)を前記した、Yd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0 によって表現している。
【0049】
<変圧器の情報リスト>
図5は、変圧器情報リストとして、前記の変圧器の1次側と2次側の結線の関係を、結線の種類についてYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0と、位相に関する計算式と、基準位相に対する位相関係(位相角)と、を一覧として示したものである。
図5において、前記したYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0をあらためて一覧としてしたものであるので、実質的に重複する説明は省略する。
例えば、変圧器としての種類が「Yy0」の場合には、変圧器の1次側と2次側は、共にY結線で構成されるので、一次側電圧と2次側電圧には位相差がないので、計算式としてはe
i(0)であり、e
i(0)=1であるので、1を掛けても変化はなく、基準位相を傾ける角度は0°である。すなわち、変圧器の1次側と2次側において、位相差は0°であって、差はない。
【0050】
他の項目についても、
図5における計算式から位相差が一覧として表記されている。
なお、
図5においては、「e
i(0)」を表記上の都合により「ei(0)」と表記している。他の項目についても同様の表記をしている。
また、オイラーの公式である「e
iθ=cosθ+isinθ」における「e
iθ」を
図5においては「ei(θ)」と表記上の都合により記載している。
なお、θが(0)の場合は、0°に対応する。θが(-π/6)は、-30°に対応する。θが(π/6)は、+30°に対応する。
【0051】
<VT結線の情報リスト>
図6は、計器用変圧器VTのVT結線情報リストとして、計器用変圧器VTの1次側と2次側の結線の関係を、結線の種類についてYd1,Yd11,Yy0,Dy1,Dy11,Dd0と、位相に関する計算式と、基準位相に対する位相関係(位相角)と、を一覧として示したものである。
なお、
図4における計器用変圧器VT411と主変圧器413は、共に「変圧器」である。したがって、
図6に示した「結線の種類」と「計算式」と「基準位相を傾ける角度」は、
図5に示した「結線の種類」と「計算式」と「基準位相を傾ける角度」とは、それぞれが等しく、
図6は、
図5と同じ表記となっている。
事実上、重複する説明は、省略する。
【0052】
<CT結線の情報リスト>
図7は、計器用変流器CTの結線の種類と、それらの結線に関する位相に関する計算式と、その結線における基準位相を傾ける角度との関係と一覧であるCT結線情報リストと、を示す図である。
図7において、CTの結線の種類は、Y正結線、Y逆結線、Δ正結線、Δ逆結線があり、それぞれに対して、
図6の右端の欄に「基準位相を傾ける角度」が記載されている。
一般的に知られていることなので、詳細な説明は省略する。
【0053】
<複合型保護継電器装置の動作を示すフローチャート>
次に、複合型保護継電器装置の動作を示すフローチャートについて説明する。
図8は、本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の動作を示すフローチャートの例を示す図である。
【0054】
《処理ステップS501》
図8において、フローチャートを開始(START)すると、処理ステップS501となる。処理ステップS501では、例えば変圧器主回路(401:
図4)と複合型保護継電器装置(101:
図4)との展開接続図を、複合型保護継電器装置(101)が受け付ける。
【0055】
《処理ステップS502》
処理ステップS502では、受け付けた展開接続図を複合型保護継電器装置(101)に入力する。そして入力が完了しているか否かを判定する(入力完了か)。
入力完了(YES)であれば、処理ステップS503に進む。
入力を完了していなければ(NO)、処理ステップS502に戻り、操作者が入力を続ける、もしくは再入力する。
【0056】
《処理ステップS503》
処理ステップS503では、展開接続図上の位相(力率(θ)、1次側電圧と2次側電圧の位相関係、または1次側電流と2次側電流の位相関係)に関する条件受付ける。そして、処理ステップS504に進む。
【0057】
《処理ステップS504》
処理ステップS504では、操作者が前記の位相に関する条件を入力する。そして入力が完了しているか否かを、操作者もしくは複合型保護継電器装置(101)が判定する(入力完了か)。
入力完了(YES)であれば、処理ステップS505に進む。
入力を完了していなければ(NO)、処理ステップS504に戻り、入力を続ける、もしくは再入力する。
【0058】
《処理ステップS505》
処理ステップS505では、所定のアルゴリズムを用いて、前記の位相に関連する関係を自動計算する。そして、処理ステップS506に進む。
【0059】
《処理ステップS506》
処理ステップS506では、前記の入力された展開接続図に位相に関連した情報を追記した展開接続図を作成する。そして、処理ステップS507に進む。
【0060】
《処理ステップS507》
処理ステップS507では、外部計測装置202(
図2)による電圧(VT)、電流(CT)の入力を受け付ける。そして、処理ステップS508に進む。
【0061】
《処理ステップS508》
処理ステップS508では、受け付けた外部計測装置による電圧(VT)、電流(CT)の入力が完了しているか否かを、操作者もしくは複合型保護継電器装置(101)が判定する(入力完了か)。
入力完了(YES)、処理ステップS509に進む。
そもそも外部計測装置202(
図2)による電圧、電流の入力がない場合(NO)は、処理ステップS510に進む。
【0062】
《処理ステップS509》
処理ステップS509では、作成した展開接続図上に外部入力された電流、電圧の位相を表示する。そして、処理ステップS510に進む。
【0063】
《処理ステップS510》
処理ステップS510では、作成した展開接続図を表示部112(
図2)に出力する。
そして、終了(END)する。
【0064】
<VT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャート>
次に、計器用変圧器のVT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャートについて説明する。
図9は、本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の演算によるVT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャートの例を示す図である。
【0065】
《処理ステップS501~S502》
図9において、処理ステップS501~S502は、
図8における処理ステップS501~S502と同じ内容であるので、重複する説明は省略する。
【0066】
《処理ステップS511》
図9において、処理ステップS502の後に処理ステップS511に進む。
処理ステップS511では、主回路(変圧器主回路)における力率の値を複合型保護継電器装置(101)が受付ける。そして、処理ステップS512に進む。
【0067】
《処理ステップS512》
処理ステップS512では、操作者が位相に関する条件、すなわち力率を入力する。そして入力が完了しているか否かを判定する(入力完了か)。
入力完了(YES)であれば、処理ステップS513に進む。
入力を完了していなければ(NO)、処理ステップS512に戻り、入力を続ける、もしくは再入力する。
【0068】
《処理ステップS513》
処理ステップS513では、主回路電圧(A)の基準となる位相角の値を複合型保護継電器装置(101)が受付ける。そして、処理ステップS514に進む。
【0069】
《処理ステップS514》
処理ステップS514では、主回路電圧(A)の基準となる位相角の値を操作者が入力する。そして入力が完了しているか否かを操作者もしくは複合型保護継電器装置(101)が判定する(入力完了か)。
入力完了(YES)であれば、処理ステップS515に進む。
入力を完了していなければ(NO)、処理ステップS514に戻り、入力を続ける、もしくは再入力する。
【0070】
《処理ステップS515》
処理ステップS515では、VT結線情報に関するリストからVT結線情報(a)を選択する。そして、処理ステップS516に進む。
【0071】
《処理ステップS516》
処理ステップS516では、VT結線情報(a)の選択情報を入力する。そして選択が完了しているか否かを判定する(選択完了か)。
選択完了(YES)であれば、処理ステップS517に進む。
入力を完了していなければ(NO)、処理ステップS516に戻り、選択情報の入力を続ける、もしくは再入力する。
【0072】
《処理ステップS517》
処理ステップS517では、アルゴリズムによってVT2次電圧(F)の位相を計算する。そして、処理ステップS518に進む。
【0073】
《処理ステップS518》
処理ステップS518では、展開接続図上に計算した位相を表示する。
そして、終了(END)する。
【0074】
<CT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャート>
次に、計器用変流器のCT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャートについて説明する。
図10は、本発明の第1実施形態に係る複合型保護継電器装置の演算によるCT位相をアルゴリズムにより自動計算するフローチャートの例を示す図である。
【0075】
《処理ステップS501~S502、S511~S514》
図10において、処理ステップS501~S502、および処理ステップS511~S514は、
図8における処理ステップS501~S502、および処理ステップS511~S514と同じ内容であるので、重複する説明は省略する。
【0076】
《処理ステップS521》
図10の処理ステップS521において、主回路電流(B)の位相角を計算(自動計算)する。そして、処理ステップS522に進む。
【0077】
《処理ステップS522》
処理ステップS522において、発電機(発電機主回路)か、変圧器(変圧器主回路)かの選択を受け付ける。そして、処理ステップS523に進む。
【0078】
《処理ステップS523》
処理ステップS523において、受け付けた対象が変圧器か否かを複合型保護継電器装置(101)が判定する。
変圧器である場合(YES)には、処理ステップS524に進む。
変圧器でない場合(NO)には、処理ステップS526に進む。
【0079】
《処理ステップS524》
処理ステップS524において、操作者が変圧器情報(c)をリストより選択する。そして、処理ステップS525に進む。
【0080】
《処理ステップS525》
処理ステップS525において、操作者が変圧器情報(c)を入力する。そして入力を完了したか否かを判定する(入力完了か)。
入力が完了(YES)であれば、処理ステップS526に進む。
入力が完了していなければ(NO)、処理ステップS525に戻り、操作者が選択情報の入力を続ける、もしくは再入力する。
【0081】
《処理ステップS526》
処理ステップS526において、アルゴリズムを用いて主回路電流(D)、(E)の位相を計算(自動計算)する。そして、処理ステップS527に進む。
【0082】
《処理ステップS527》
処理ステップS527において、CT結線情報に関するリストからCT結線情報(b)、(d)、(e)を選択する。そして、処理ステップS528に進む。
【0083】
《処理ステップS528》
処理ステップS528において、操作者がCT結線情報(b)、(d)、(e)を入力する。そして入力を完了したか否かを判定する(入力完了か)。
入力が完了(YES)であれば、処理ステップS529に進む。
入力が完了していなければ(NO)、処理ステップS528に戻り、選択情報の入力を続ける、もしくは再入力する。
【0084】
《処理ステップS529》
処理ステップS529において、アルゴリズムによりCT2次電流(G)、(H)、(I)の位相を計算(自動計算)する。そして、処理ステップS530に進む。
【0085】
《処理ステップS530》
処理ステップS530では、展開接続図上に計算した結果の位相を表示する。
そして、終了(END)する。
【0086】
<第1実施形態の総括>
火力・水力発電所における発電機や変圧器などを保護するための保護継電器装置の設計、製作が重要であるが、入力電流電圧の仕様は多様であり、発電所毎に毎回設計する必要があり、多大な工数と期間を要していた。
本発明の複合型保護継電器装置は、発電機主回路から保護継電器における、展開接続上の変圧器の結線、計器用変成器の結線をパラメータ化し、電流ベクトルの位相変換の規則を一般化して定式化し、自動計算して、複合型保護継電器装置の構成を確定する。
このように、本発明の複合型保護継電器装置、および複合型保護継電器装置の設計方法を使用することで、変換処理が自動化可能で大幅に設計コストを下げることができ、ヒューマンエラーによる設計ミスを防止できる。
【0087】
<第1実施形態の効果>
本発明によれば、組合せが膨大な電流電圧の位相の計算を自動計算で実施する複合型保護継電器装置を提供できる。
また、本発明の複合型保護継電器装置の設計方法を使用することで、変換処理が自動化可能で大幅に設計コストを下げることができ、ヒューマンエラーによる設計ミスを防止できる。
【0088】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0089】
《発電機主回路》
図4においては、電力機器主回路の例として、変圧器主回路401の例を示した。しかし、電力機器主回路は変圧器主回路に限定されない。
例えば、
図4において、変圧器を主変圧器413として変圧器主回路の構成例を示したが、変圧器の代りに発電機を用いてもよい。発電機を用いることによって、主回路の構成は変化するが、発電機を用いた電力系統、配電系統において、遮断器や計器用変成器(VCT)、計器用変圧器(VT)、計器用変流器(CT)の信号を参照して、遮断器を動作させる保護継電器を迅速に、簡易に、汎用性が高い複合型保護継電器装置を前記した方法に準じて構成することができる。
また、電力機器主回路として発電機を用いた場合には、発電機の界磁に関する界磁喪失リレーの検出機能が複合型保護継電器装置に求められる。
ただし、電力機器主回路として、発電機を用い場合においても、電力系統に電力を供給する場合には、変圧器が併用されることが一般的である。
【0090】
《電力機器主回路の構成要素》
図4において、電力機器主回路が変圧器主回路の例を示し、≪その他の実施形態≫において、電力機器主回路が発電機主回路の例を示した。ただし、これらの2例に限定されない。例えば、変圧器主回路と電力機器主回路が混成した電力系統であっても、本発明の複合型保護継電器装置は適用できる。
また、整流器に相当するコンバータや、その逆のインバータ回路が前記の電力機器主回路に含まれる場合でも、本発明の複合型保護継電器装置は適用できる。
【0091】
《発電機を用いた電力系統、配電系統、発電所への適用》
電力機器主回路に適用する本発明の複合型保護継電器装置は、蒸気を用いるタンデム、クロス、コンバインドの全ての火力発電の電力機器主回路に適応できる。
また、発電機が直接接地系でも、抵抗接地系でも適応できる。
また、発電機の起動方式がサイリスタ起動方式、半速度2軸同期方式でも適応できる。
すなわち、非常に広範囲な電力機器主回路に適応可能である。
【0092】
《複合型保護継電器装置による保護リレーの結線の正誤の判定》
図4においては、実線の枠線で示したブロック(1023,1025,1026,1031,1032,1033,1034)に表示された自動計算結果と、自動計算の横(近傍)に一点鎖線の枠線で示したブロック(1041,1042,1043,1044)に表示される計器用変圧器VT(411)、計器用変流器CT(412,414,415)通じて、入力される発電機主回路からの電圧・電流とを操作者が視覚的に判断する例を示したが、この方法に限定されない。
例えば、複合型保護継電器装置の自動計算結果と、計器用変圧器VT、計器用変流器CTを介しての発電機主回路からの電圧・電流とを基に、人間の操作者の視覚的な判定に頼らずに、複合型保護継電器装置に判定させてもよい。
【符号の説明】
【0093】
101 複合型保護継電器装置、複合型保護継電器
110 異常検出部
111 自動計算部
112、212 表示部
113 入力部
114 出力部
202 外部計測装置
203 設計端末装置
211 CPU
213 入力装置
301 表示画面例
311 アルゴリズム計算結果(アルゴリズムによる計算結果)
312 外部入力
401 変圧器主回路
405、406、407 三相配電線
410 遮断器
411 計器用変圧器(計器用変成器)、VT
412,414,415 計器用変流器(計器用変成器)、CT
413 主変圧器、変圧器