(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】応答方法提案システム、および、応答方法提案方法
(51)【国際特許分類】
G06F 16/90 20190101AFI20240725BHJP
【FI】
G06F16/90 100
(21)【出願番号】P 2021152080
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西村 繁
(72)【発明者】
【氏名】野中 久典
(72)【発明者】
【氏名】厚沢 輝佳
(72)【発明者】
【氏名】五嶋 匡
(72)【発明者】
【氏名】ヤン インジャ
【審査官】酒井 恭信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-211403(JP,A)
【文献】特開2019-197977(JP,A)
【文献】特開2015-056069(JP,A)
【文献】特開2021-103411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00 - 16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末と通信接続したチャットボットに応答方法を提案する応答方法提案システムであって、
キーワードと回答候補と
オペレータが該回答候補を使用した頻度と好感度を関連付けて記録した知識データベースと、
前記ユーザ端末からの問い合わせをテキスト化したテキストデータからキーワードを抽出する辞書と、
該辞書が抽出したキーワードに対応し、かつ、前記頻度と前記好感度の双方が閾値以上の回答候補を
前記知識データベースから抽出して前記チャットボットに送信する検索部と、
前記ユーザ端末とオペレータ端末の通話を録音した音声データに基づいてユーザの好感度を演算する感情判定部と、
前記通話をテキスト化したテキストデータを前記好感度と関連付けて記録する受電データベースと、
該受電データベースに記録したテキストデータに基づいて、前記通話のキーワードとオペレータの回答とを学習し、学習したキーワードと、学習したオペレータの回答に該当する回答候補と、オペレータが該回答候補を使用した頻度と、前記感情判定部で演算した好感度とを関連付けて前記知識データベースに記録する学習部と、
を具備することを特徴とする応答方法提案システム。
【請求項2】
前記ユーザ端末の接続先を選択する応答者選択部を更に具備しており、
前記検索部は、前記辞書が抽出したキーワードに対応し、かつ、前記頻度と前記好感度の双方が閾値以上の回答候補を抽出できなければ、前記応答者選択部に対し、接続先を前記チャットボットから前記オペレータ端末に変更するよう指令することを特徴とする、請求項
1に記載の応答方法提案システム。
【請求項3】
前記検索部は、前記辞書が抽出したキーワードに対応し、かつ、前記頻度と前記好感度の双方が閾値以上の回答候補を複数抽出した場合には、前記頻度が大きい順、または、前記好感度が大きい順に、抽出した回答候補を前記オペレータ端末にレコメンドすることを特徴とする、請求項
2に記載の応答方法提案システム。
【請求項4】
前記キーワードは、製品、カテゴリ、用件の
夫々に関するキーワードであることを特徴とする、請求項1から請求項
3の何れか一項に記載の応答方法提案システム。
【請求項5】
ユーザ端末と通信接続したチャットボットに対し、キーワードと回答候補と
オペレータが該回答候補を使用した頻度と好感度を関連付けて記録した知識データベースに基づいて、
応答方法提案システムが応答方法を提案する応答方法提案方法であって、
前記ユーザ端末からの問い合わせをテキスト化したテキストデータからキーワードを抽出するステップと、
抽出したキーワードに対応し、かつ、前記頻度と前記好感度の双方が閾値以上の回答候補を
前記知識データベースから抽出して前記チャットボットに送信するステップと、
前記ユーザ端末とオペレータ端末の通話を録音した音声データに基づいてユーザの好感度を演算するステップと、
前記通話をテキスト化したテキストデータを前記好感度と関連付けて受電データベースに記録するステップと、
該受電データベースに記録したテキストデータに基づいて、前記通話のキーワードとオペレータの回答とを学習し、学習したキーワードと、学習したオペレータの回答に該当する回答候補と、オペレータが該回答候補を使用した頻度と、演算した好感度とを関連付けて前記知識データベースに記録するステップと、
を具備することを特徴とする応答方法提案
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コールセンタの業務を支援する応答方法提案システム、および、応答方法提案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコールセンタでは、ユーザの多様な問い合わせにオペレータが対応しており、複雑、或いは、稀な問い合わせに新任のオペレータ等が十分に対応できない場合もあった。また、多数のユーザからの問い合わせに少数のオペレータで対応する環境下では、オペレータが対応を開始するまで各ユーザが長時間待たされるという問題もあった。
【0003】
これに対し、オペレータとユーザの双方の利便性を改善する従来技術として、特許文献1が知られている。同文献の要約書には、課題として「コールセンタの業務効率を向上できること。」と記載されており、解決手段として「チャットサーバ100は、ユーザUのクライアント101からの問い合わせに対応して予め設定した自動応答メッセージをユーザUのクライアント101に送信し、ユーザUのクライアント101からの返答に対応する予め設定した次の自動応答メッセージをユーザUのクライアント101に送信することを繰り返して、ユーザUのクライアント101が返答した返答情報を複数取得し、自動応答メッセージに対応してユーザUが返答した返答情報の取得後、ユーザUのクライアント101を自動応答メッセージからオペレータOpのクライアント102に接続切り替えを行い、接続切り替えまでの期間中のbot112の自動応答メッセージと返答情報からなる経過情報を、切り替えたオペレータOpのクライアント102に送信する。」と記載されている。すなわち、同文献では、まず、チャットサーバ(bot)が自動応答メッセージを利用してユーザからある程度の返答情報を取得した後、取得した返答情報をオペレータに提示することで、ユーザの待ち時間の短縮と、オペレータの対応負担の軽減を両立している。
【0004】
また、特許文献1の段落0060には、自動応答メッセージの生成方法に関し、「ユーザUとオペレータOpとの間で音声通話を行った場合には、この音声についてもログ115に残しておくことができる。」の記載があり、段落0061には「(7)この後、ログ115に基づき、DB113に新たな問い合わせと回答とをセットにした情報を追加することができる。すなわち、bot112の自動応答のみでユーザUからの問い合わせが完了しなかった場合、ログ115の記録に基づき、オペレータOpの回答と、その際のユーザUの問い合わせとをセットにした情報をDB113に新たに格納する。これにより、DB113をナレッジDBとして活用し、bot112の自動応答の精度を向上することができる。」の記載がある。
【0005】
このように、特許文献1には、ユーザとオペレータの通話をナレッジDBに蓄積しておき、オペレータ応答に先立つ、チャットサーバ(bot)の自動応答にナレッジDBを活用する、コールセンタ支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のコールセンタ支援装置では、ユーザとオペレータの音声通話をその妥当性を問わずナレッジDBに蓄積しているため、ユーザが納得しなかった不適切なオペレータ対応をチャットサーバ(bot)の自動応答に流用すると、チャットサーバ(bot)の不適切な自動応答により、ユーザから不適切な返答情報を取得する可能性もある。
【0008】
その結果、応答を引き継いだオペレータに不適切な返答情報が提示されてしまい、オペレータの回答もユーザが希望する内容と異なってしまう可能性がある。つまり、チャットサーバ(bot)の使用によって、却ってユーザの満足度とオペレータの効率低下を招いてしまう可能性がある。
【0009】
また、特許文献1のコールセンタ支援装置では、チャットサーバ(bot)の自動応答後にオペレータが対応を引き継ぐという運用を想定しており、実質的な対応はオペレータが実施するため、オペレータの負担軽減効果も限定的になってしまう。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、チャットボットがより適切に応答できるようにするとともに、オペレータの対応負担を軽減することができる、コールセンタ支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の応答方法提案システムは、ユーザ端末と通信接続したチャットボットに応答方法を提案するシステムであって、キーワードと回答候補と頻度と好感度を関連付けて記録した知識データベースと、前記ユーザ端末からの問い合わせをテキスト化したテキストデータからキーワードを抽出する辞書と、該辞書が抽出したキーワードに対応し、かつ、前記頻度と前記好感度の双方が閾値以上の回答候補を抽出して前記チャットボットに送信する検索部と、を具備する応答方法提案システムとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明のコールセンタ支援システムによれば、チャットボットがより適切に応答できるようにするとともに、オペレータの対応負担を更に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施例のコールセンタ支援システムの概要図。
【
図3】一実施例の知識DBの作成方法を示すフローチャート。
【
図4】一実施例の知識DBの活用方法を示すフローチャート。
【
図5】一実施例のレコメンドの効果をモデル化した図。
【
図6】一実施例のコールセンタ支援システムによる対応事例。
【
図7】一実施例のコールセンタ支援システムによる別の対応事例。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明にかかる応答方法提案システムおよび応答方法提案方法を詳細に説明する。なお、以下では、応答方法提案システムの一実施例として、エレベータ利用者やビル管理者等のユーザからの、エレベータの運行等に関する要望、問い合わせに対応するコールセンタで使用されるコールセンタ支援システムを例示するが、本発明の応答方法提案システムは、他業務を担うコールセンタで利用されるものであっても良い。
【0015】
<コールセンタ支援システム100の概要>
図1は、一実施例のコールセンタ支援システム100の概要図である。このコールセンタ支援システム100は、コールセンタのオペレータを支援するシステムであり、インターネット等の通信網を介して、ユーザ端末Uと、オペレータ端末OPに接続される。なお、コールセンタ支援システム100は、具体的には、CPU等の演算装置、半導体メモリ等の主記憶装置、ハードディスク等の補助記憶装置、および、通信装置などのハードウェアを備えたサーバである。そして、補助記憶装置に記録された各種のデータベースを参照しながら、主記憶装置にロードされたプログラムを演算装置が実行することで、後述する各機能を実現するが、以下では、このような、コンピュータ分野における周知技術を適宜省略しながら説明する。また、ユーザ端末Uやオペレータ端末OPは、音声通話と画面表示の機能を備えた、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット等である。
【0016】
図1に示すように、コールセンタ支援システム100は、チャットボットCB、感情判定部2、受電データベース(受電DB3)、学習部4、データベース群5、辞書6、検索部7を備えている。また、データベース群5は、会話ログ5a、仕様データベース(仕様DB5b)、計画データベース(計画DB5c)、知識データベース(知識DB5d)を備えている。なお、
図1において、一点鎖線矢印はテキストデータの流れ、破線矢印は主に検索部7が出力したデータの流れ、実線矢印はそれ以外のデータ(テキストデータを含む場合もある)の流れを示している。以下、ユーザからコールセンタに何らかの問い合わせがあった場合の各部の動作を概説する。
【0017】
<チャットボットCBによる対応>
ユーザがユーザ端末Uをコールセンタ支援システム100に接続すると、応答者選択部1は、最初の応答者としてチャットボットCBを選択する。このとき、チャットボットCBは、まず、チャットを利用してユーザに問い合わせ内容の種別を質問し、ユーザの音声回答を録音して音声データを生成するとともに、その音声データを自動的にテキスト化し、テキストデータを生成する。また、チャットボットCBは、テキストデータを会話ログ5aと辞書6に出力するとともに、音声データとテキストデータを感情判定部2に出力する。
【0018】
辞書6は、入力されたテキストデータからキーワードを抽出して検索部7に出力する。なお、ここで抽出されるキーワードは、例えば、「製品」、「カテゴリ」、「用件」の夫々に関するキーワードである。
【0019】
検索部7は、キーワードの組み合わせ等を考慮して、データベース群5(特に、知識DB5d)から妥当と思われる回答候補を抽出し、チャットボットCBを介してチャット形式でユーザ端末Uに送信する。
【0020】
図2は、知識DB5dの内容の一例を示す図である。この知識DB5dは、チャットボットCBやオペレータが、ユーザ対応時に参照するデータベースであり、例えば、「製品」、「カテゴリ」、「用件」、「回答候補」の各キーワードの組み合わせに、「頻度」と「好感度」を関連付けて構成したデータベースである。ここで、「頻度」は、オペレータが「回答候補」相当の回答を使用した事例数を示すデータであり、「好感度」は、オペレータが「回答候補」相当の回答で応答したときのユーザ感情を感情判定部2で数値化したデータである。また、
図2の「回答候補」のうち「頻度」に「-」が登録されたものは状況毎の定型文であり、システム設計者等が予め登録したものである。定型文に分類される「回答候補」は、該当状況下で必須の質問であり後述の閾値による判定が不要であるため、「好感度」には「-」が登録されている。なお、知識DB5dは、オペレータがユーザ対応する毎に更新されるものであるが、更新方法の詳細については後述することとする。
【0021】
例えば、辞書6で抽出した「製品」のキーワードが「エレベータ」であり、「カテゴリ」のキーワードが「故障」であり、「用件」のキーワードが「停止」であれば、検索部7は、その組み合わせに対応した定型文である「ドアは開いていますか?」を回答候補として抽出し、チャットボットCBを介してユーザ端末Uに送信する。
【0022】
また、例えば、辞書6で抽出した「製品」のキーワードが「エレベータ」であり、「カテゴリ」のキーワードが「確認」であり、「用件」のキーワードが「作業時間」であれば、検索部7は、その組み合わせに対応した複数の回答候補の中から、頻度が閾値(例えば、100事例)以上であり、かつ、好感度が閾値(例えば、90%)以上である、「大がかりな作業の為、作業時間を2時間頂いています。」を抽出し、チャットボットCBを介してユーザ端末Uに送信する。
【0023】
このように、検索部7を利用して、頻度と好感度が共に大きい回答候補の抽出を繰り返すことで、一般的な問い合わせであれば、ユーザの高い好感度を維持したまま、チャットボットCBだけで問い合わせを完了させることができる。
【0024】
<オペレータによる対応>
一方、検索部7が知識DB5dから抽出した回答候補が、定型文でなく、頻度または好感度が閾値未満であれば、チャットボットCBでは対応困難な状況に至った可能性が高いため、検索部7は、オペレータによる対応に切り替えるべく、チャットボットCBを介して(または直接)、応答者選択部1にチャットボットCBによる対応の終了を通知する。これにより、応答者選択部1は、ユーザ端末Uの接続先をチャットボットCBからオペレータ端末OPに切り替え、オペレータによる対応が開始される。
【0025】
上記したように、ユーザとチャットボットCBの会話は、テキストデータの形式で会話ログ5aに記録されており、オペレータ端末OPには、検索部7が会話ログ5aから抽出した過去の会話が表示されるため、オペレータは、過去の会話を踏まえて、すなわち、基本的な質疑応答を滞りなく終えた状態から、ユーザ対応を開始することができる。
【0026】
以降、オペレータ端末OPは、オペレータとユーザの会話を録音して音声データを生成するとともに、その音声データを自動的にテキスト化し、テキストデータを生成する。また、オペレータ端末OPは、テキストデータを辞書6に出力するとともに、音声データとテキストデータを感情判定部2に出力する。
【0027】
辞書6に入力されたテキストデータは、上記同様に処理される。そして、検索部7は、上記同様の作用により、知識DB5dから適当な回答候補を抽出し、オペレータ端末OPに提供する。なお、検索部7がチャットボットCBに提供した回答候補は、頻度と好感度の双方が閾値を超えたものであったが、検索部7がオペレータ端末OPに提供する回答候補は、頻度または好感度の一方だけが閾値を超えたものであっても良い。これは、仮に頻度や好感度の小さい回答候補であっても、オペレータの参考になるからである。
【0028】
感情判定部2は、音声データ内のユーザの声のトーン等に基づいてユーザ感情の良否を判定し、その判定結果に基づいて、ユーザ感情を数値化した好感度を演算する。感情の判定基準は、複数の声をサンプリングして「喜び」、「平穏」、「怒り」、「悲しみ」のように分類し、学習にかけて求めた基準である。例えば、良い感情とは、オペレータ対応の開始時には「悲しみ」や「怒り」に分類される感情であったが、オペレータ対応の終了時には「喜び」に分類される感情になったパターンや、始終「平穏」に分類される感情であったパターンである。一方、悪い感情とは、オペレータ対応の終了時に「悲しみ」や「怒り」に分類される感情であったパターンである。なお、感情評価の技術としては、例えば、声を波形に変換して時系列的に解析を行う、CENTRIC株式会社の感情解析システム(abscope VEA、https://centric.co.jp/abscope_vea_info/)を使用することができる。
【0029】
感情判定部2で数値化した好感度は、対応するテキストデータと関連付けて受電DB3に登録される。そして、学習部4は受電DB3に登録されたテキストデータを学習し、知識DB5dを作成または更新する。なお、感情判定部2は、チャットボットCBによる応答中の音声データも解析しており、ユーザの好感度が急激に悪化した場合には、応答者をチャットボットCBからオペレータに切り替えるよう、応答者選択部1に指令する機能も有している。
【0030】
<知識DBの作成方法>
次に、
図3のフローチャートを用いて、知識DB5dの作成方法(または、更新方法)を説明する。
【0031】
ユーザとチャットボットCBの会話が終了すると(S31)、オペレータがユーザへの対応を開始する(S32)。ユーザとオペレータの会話は、オペレータ端末OPによって自動的にデータ化され、音声データとテキストデータが生成される(S33)。
【0032】
オペレータの対応が完了すると(S34)、感情判定部2は、S33で生成した音声データに対し好感度を演算し(S35)、テキストデータと好感度のペアを受電DB4に登録する(S36)。
【0033】
その後、学習部4は、受電DB3に対し機械学習を実行する(S37)。具体的には、受電DB3に登録されたテキストデータに基づいて、「製品」、「カテゴリ」、「用件」の各キーワードを学習するとともに、オペレータの回答も学習する。
【0034】
最後に、学習部4は、学習結果を知識DB5dに登録する(S38)。具体的には、S37で学習したオペレータ回答が新規の内容であれば、「頻度」を1とし「高感度」をS35で求めた好感度としたデータを、学習結果(製品、カテゴリ、用件、回答)に付加して、知識DB5dに追記する。一方、S37で学習したオペレータ回答が既存の内容であれば、該当する「回答候補」の「頻度」を1増やし、「高感度」を更新(例えば、最新の好感度も考慮して平均値を算出)すれば良い。
【0035】
<知識DBの活用方法>
次に、
図4のフローチャートを用いて、知識DB5dに登録された回答候補の活用方法を説明する。
【0036】
ユーザとチャットボットCBの会話が終了すると(S41)、オペレータがユーザへの対応を開始する(S42)。ユーザとオペレータの会話は、オペレータ端末OPによって自動的にデータ化され、音声データとテキストデータが生成される(S43)。
【0037】
S43で生成したテキストデータは、辞書6によってキーワード化され(S44)、検索部7によって、キーワードの組み合わせに該当する、高頻度または高好感度の回答候補が、知識DB5dから抽出される(S45)。そして、抽出した回答候補が、オペレータ端末OPに表示される(S46)。このとき、オペレータ端末OPには、頻度の高い順に、或いは、好感度の高い順に、回答候補が表示され、特に指標の高い回答候補はレコメンド(推奨)される。
【0038】
そして、ユーザ対応が完了すれば、
図4の処理を終了し、ユーザ対応が完了してないければ、S43に戻ってユーザ対応を継続する(S47)。
【0039】
<レコメンドの効果>
次に、
図5のモデルを用いて、レコメンドの効果を説明する。なお、ここでは、オペレータが新任のオペレータであり、自身では最適な対応ができないものとする。
【0040】
ユーザからの問い合わせに対する最初の対応Aは選択肢の無い定型の対応であり、この定型対応により、スコアに1が加算される(S51)。ここで、スコアとは、客観的に演算可能な指標(例えば、上記の好感度)ではなく、ユーザの満足度の大小をイメージした、
図5でのみ使用する仮想的な指標である。
【0041】
次に、対応Aでの会話を踏まえ、検索部7は、適切な回答候補をオペレータ端末OPにレコメンドする(S52)。オペレータがレコメンドされた回答候補を採用し、対応Bに移行すると、スコアに5が加算される(S53)。一方、オペレータが自身の判断で対応Cに移行すると、スコアに3が加算される(S54)。
【0042】
対応Bや対応Cでの会話を踏まえ、検索部7は再度、適切な回答候補をオペレータ端末OPにレコメンドする(S55、S56)。この場合も、オペレータがレコメンドされた回答候補を採用すれば、より高いスコアが加算され(S57、S59)、オペレータが自身の判断で対応すれば、より低いスコアが加算される(S58、S5a)。
【0043】
その結果、レコメンドされた回答候補を採用し続けると、新任のオペレータでも、熟練オペレータ同様の適切な対応を取り続けることができ、高い累積スコアを得ることができる。
【0044】
<第一の対応事例>
次に、
図6を用いて、実際の対応事例を、説明する。
【0045】
まず、ユーザがコールセンタ支援システム100に通信接続すると、チャットボットCBが最初の問い合わせとして、返答用の選択メニューを送信する(CB1)。ここで送信される選択メニューは、例えば、複数候補「1.故障・2.ご要望・3.ご質問・9.その他」である。ユーザは、選択メニューのなかから該当する番号を読み上げ、または、選択操作し、チャットボットCBに返答する(U1)。
【0046】
本事例では、ユーザが「2.ご要望」を選択する。その場合、チャットボットCBが「ご用件は何でしょうか」とユーザに返信する(CB2)。なお、この問い合わせは定型句として登録されている。問い合わせを受信したユーザは、例えば、「エレベータに鍵を落とした」旨の返信を送信する(U2)。
【0047】
ユーザの要望を受信したチャットボットCBは、受信内容をテキスト化し、辞書6に送信する。辞書6では、テキストデータが「要望-鍵拾い」というキーワードに変換される。検索部7はキーワードに基づいて、知識DB5dから回答候補「何階で落とされましたか」を抽出し、問い合わせとして発信する(CB3)。なお、この回答候補は状況把握のためであり、使用頻度、高好感度は考慮していない。問い合わせを受信したユーザは「1階」である旨の返信を発する(U3)。
【0048】
返信を受信したチャットボットCBは、ユーザにエレベータのかご内に掲示された管理番号(図示なし)の入力を要求すると(CB4)、ユーザはキー入力で管理番号を入力する(U4)。この管理番号が入力されるとチャットボットCBは、該当するエレベータの諸情報を記録した仕様DB5bにアクセスし、エレベータ納入先、仕様、住所等のエレベータの基本情報を特定する。
【0049】
チャットボットCBがエレベータの諸情報を取得すると、「オペレータにつなぎます」の返信(CB5)とともに、応答者選択部1が、ユーザ端末Uの接続先をチャットボットCBからオペレータ端末OPに切り替える。
【0050】
ここで、オペレータは、鍵の回収が有償になる旨を告げるが、単に「有償になります」と言うとユーザの感情を害することになりかねない。そこで、オペレータ端末OPにレコメンドされた「申し訳有りませんが、技術員の出動が発生しますので有償になることのご理解をお願いします。」という回答候補を参照し、ユーザの高好感度を維持するような表現でユーザに必要事項を告げる(OP1)。
【0051】
ユーザが納得した返信(U5)を送信すると、オペレータは技術員の対応可否を確認する。このとき、オペレータ端末OPの地図アプリ上に、チャットボットCBが取得したエレベータ住所を表示させ、技術員GPS位置情報で近隣の対応可能な技術員を探す。早急な対応ができない場合も、単に「対応できません」ではなく、オペレータ端末OPにレコメンドされた「対応できる者が近隣に居ませんので、お時間を頂きたいのですが。」という回答候補を参照しながら、問い合わせを発する(OP2)。これにより、ユーザの感情を損ねることなく、ユーザの連絡先を取得することができる(U6)。
【0052】
その後、オペレータは該エレベータの担当者に連絡し、鍵の回収を依頼して対応は完了となる。
【0053】
<第二の対応事例>
次に、
図7を用いて、別の対応事例を説明する。
【0054】
まず、ユーザがコールセンタ支援システム100に通信接続すると、チャットボットCBが最初の問い合わせとして、返答用の選択メニューを送信する(CB1)。ここで送信される選択メニューは、例えば、複数候補「1.故障・2.ご要望・3.ご質問・9.その他」である。ユーザは、選択メニューのなかから該当する番号を読み上げ、または、選択操作し、チャットボットCBに返答する(U1)。
【0055】
本事例では、ユーザが「3.ご質問」を選択したものとする。その場合、チャットボットCBが「ご用件は何でしょうか」とユーザに返信する(CB2)。なお、この問い合わせは定型句として登録されている。問い合わせを受信したユーザは、例えば、「エレベータの点検日を知りたい」旨の返信を送信する(U2)。
【0056】
ユーザの質問を受信したチャットボットCBは、ユーザにエレベータのかご内に掲示された管理番号(図示なし)の入力を要求すると(CB3)、ユーザはキー入力で管理番号を入力する(U3)。
【0057】
管理番号を受信したチャットボットCBは、受信内容をテキスト化し、辞書6に送信し、「質問-点検日」というキーワードに変換され、また、入力された管理番号の点検日と時間を計画DB5cから特定し、知識DB5dから抽出した回答候補「×月×日、PM△時からです」にあてはめて発信する(CB4)。
【0058】
ここで、ユーザから作業時間の問い合わせがあると(U4)、普通に「2時間です」だけでは不足で、回答候補から「大がかりな作業のため2時間頂いています」を抽出してユーザに返信する(CB5)。
【0059】
しかし、作業時間の長さに納得できないユーザが「そんなにかかるのか」と感情を害すると(U5)、感情判定部2がユーザの感情の悪化を検出し、応答者選択部1にオペレータ対応への切り替えを指令するとともに、ユーザに対しオペレータ対応に切り替えることを通知する(CB6)。
【0060】
対応を引き継いだオペレータは、会話ログや、レコメンドされた「エレベータの性能を維持するために必要な作業です。ご理解をお願いします。」との回答候補を参照しながら返信し、ユーザに平静になるように促す(OP1)。そして、ユーザが了解すると(U6)、通信を終了する。
【0061】
以上説明したように、本実施例のコールセンタ支援システムによれば、チャットボットが自動応答時に利用するデータベースの品質を改善することで、チャットボットがより適切に応答できるようにするとともに、同データベースをオペレータにも参照させることで、オペレータの対応負担を更に軽減することができるため、ユーザの感情を損ねることないスムーズな対応が可能だけでなく、オペレータの担当業務の低減が図られる。
【符号の説明】
【0062】
100 コールセンタ支援システム
CB チャットボット
1 応答者選択部
2 感情判定部
3 受電DB
4 学習部
5 データベース群
5a 会話ログ
5b 仕様DB
5c 計画DB
5d 知識DB
6 辞書
7 検索部
U ユーザ端末
OP オペレータ端末