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特許7526717CD38抗体のバリアントおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】CD38抗体のバリアントおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240725BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240725BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K16/46
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P43/00 111
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K45/00
A61K51/10 100
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021500814
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019069028
(87)【国際公開番号】W WO2020012036
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】62/697,730
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/848,874
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507316398
【氏名又は名称】ジェンマブ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】デ ゴージ バート イー シー ジー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリンガ グリーチェ
(72)【発明者】
【氏名】ベウルスケンズ フランク
(72)【発明者】
【氏名】シュールマン ジャニン
(72)【発明者】
【氏名】サテン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アハマディ タハムタン
【審査官】安川 聡
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539352(JP,A)
【文献】特表2015-524387(JP,A)
【文献】国際公開第2016/210223(WO,A1)
【文献】特表2016-532690(JP,A)
【文献】J. Immunol.,2017年02月15日,Vol.198, No.4,pp.1585-1594
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N、C07K、C12P、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE(STN)
UniProt/GeneSeq
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD38に結合する抗体バリアントであって、
SEQ ID NO:1を含む可変重鎖(VH)領域と、
SEQ ID NO:5を含む可変軽鎖(VL)領域と
SEQ ID NO:46を含むCH領域と、
SEQ ID NO:37を含むCL領域と
を含む、前記抗体バリアント。
【請求項2】
2価抗体である、請求項1に記載の抗体バリアント。
【請求項3】
単一特異性抗体または二重特異性抗体である、請求項1または2に記載の抗体バリアント。
【請求項4】
ヒトCD38のシクラーゼ活性に対して阻害効果を有する、かつ/またはFc架橋抗体の存在下でアポトーシスを誘導するが、Fc架橋抗体の非存在下では誘導しない、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体バリアント。
【請求項5】
ヒトCD38を発現する細胞のCDC、ADCC、抗体依存性細胞貧食(ADCP)、トロゴサイトーシス、またはそれらの任意の組み合わせを誘導する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体バリアント。
【請求項6】
細胞傷害剤、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体バリアント。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体バリアントをコードする、核酸または核酸の組み合わせ。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項9】
請求項7に記載の核酸を含む、送達ビヒクル。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体バリアントを産生する組換え宿主細胞であって、請求項7に記載の核酸または請求項8に記載の発現ベクターを含む、組換え宿主細胞。
【請求項11】
真核細胞または原核細胞である、請求項10に記載の組換え宿主細胞。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体バリアントを産生する方法であって、
請求項10または11に記載の組換え宿主細胞を、抗体バリアントを産生するのに適した条件下、培養培地中で培養する段階
を含む、前記方法。
【請求項13】
前記培養培地から抗体バリアントを精製または単離する段階をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体バリアント、請求項7に記載の核酸もしくは核酸の組み合わせ、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載の送達ビヒクル、または請求項10もしくは11に記載の宿主細胞を含む、組成物。
【請求項15】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体バリアント、請求項7に記載の核酸もしくは核酸の組み合わせ、請求項8に記載の発現ベクター、または請求項9に記載の送達ビヒクル、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
CD38発現細胞が関与する疾患を治療する、CD38発現細胞を含む腫瘍に対するCDC応答を誘導する、またはヒトCD38を発現する細胞を含む対象におけるがんを治療もしくは予防するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体バリアント、請求項7に記載の核酸もしくは核酸の組み合わせ、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載の送達ビヒクル、または請求項1415のいずれか一項に記載の組成物を含む、医薬。
【請求項17】
CD38抗体を含む以前の治療に難治性のがんまたはCD38抗体を含む以前の治療の後に再発したがんを治療するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体バリアント、請求項7に記載の核酸もしくは核酸の組み合わせ、請求項8に記載の発現ベクター、請求項9に記載の送達ビヒクル、または請求項1415のいずれか一項に記載の組成物を含む、医薬。
【請求項18】
CD38抗体がダラツムマブである、請求項17に記載の医薬。
【請求項19】
前記がんが、血液のがんである、請求項1618のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
前記血液のがんが、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される、請求項19に記載の医薬。
【請求項21】
前記血液のがんがMMである、請求項19または20に記載の医薬。
【請求項22】
前記がんが、固形腫瘍を含む、請求項1618のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項23】
前記固形腫瘍が、メラノーマ、肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、胃がん(stomach cancer)、卵巣がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮がん、食道または胃腸管のがん、乳がん、卵管がん、脳腫瘍、尿道がん、尿生殖器がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肺腺がん、腎細胞がん(RCC)、腎明細胞がん、腎乳頭状細胞がん、中皮腫、鼻咽頭がん(NPC)、食道または胃腸管のがん、またはそれらのいずれかの転移性病変である、請求項22に記載の医薬。
【請求項24】
前記固形腫瘍が検出可能なCD38発現を欠いている、請求項22または23に記載の医薬。
【請求項25】
前記がんが、CD38を発現するT制御性細胞を含む患者におけるがんである、請求項1624のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項26】
関節リウマチを治療または予防するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体バリアントを含む医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
Fc領域に1つまたは複数の変異を含む抗体バリアント、特に抗CD38抗体バリアント。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD38はII型膜貫通糖タンパク質であり、通常は造血細胞に見られ、固形組織には低レベルで存在する。造血細胞でのCD38の発現は、該細胞の分化および活性化状態によって決まる。分化系列決定がなされた造血細胞は該タンパク質を発現するが、それは成熟細胞によって失われ、活性化されたリンパ球で再び発現される。CD38はB細胞にも発現しており、形質細胞は特に高レベルのCD38を発現している。休止状態のNK細胞と単球の約80%はCD38を低レベルで発現しており、リンパ節胚中心リンパ芽球、濾胞内細胞、樹状細胞、赤血球、血小板など、他のさまざまな血液細胞タイプも同様に発現している(Lee and Aarhus 1993; Zocchi, Franco et al. 1993; Malavasi, Funaro et al. 1994; Ramaschi, Torti et al. 1996)。固形組織に関して、CD38は、腸内では上皮内細胞と粘膜固有層リンパ球によって、脳内ではプルキンエ細胞と神経原線維タングル(neurofibrillary tangle)によって、前立腺では上皮細胞、膵臓ではβ細胞、骨では破骨細胞、眼では網膜細胞、および平滑筋と横紋筋の筋鞘によって発現されている。
【0003】
CD38は多数の血液悪性腫瘍において発現されている。発現は、特に多発性骨髄腫(MM)(Lin, Owens et al. 2004)および慢性リンパ性白血病(CLL)(Damle 1999)の悪性細胞で観察されており、また、ワルデンストレームマクログロブリン血症(Konoplev, Medeiros et al. 2005)、原発性全身性アミロイドーシス(Perfetti, Bellotti et al. 1994)、マントル細胞リンパ腫(Parry-Jones, Matutes et al. 2007)、急性リンパ芽球性白血病(Keyhani, Huh et al. 2000)、急性骨髄性白血病(Marinov, Koubek et al. 1993; Keyhani, Huh et al. 2000)、NK細胞白血病(Suzuki, Suzumiya et al. 2004)、NK/T細胞リンパ腫(Wang, Wang et al. 2015)、および形質細胞白血病(van de Donk, Lokhorst et al. 2012)でも報告されている。
【0004】
CD38の発現が関与している可能性のある他の疾患には、例えば、肺の気管支上皮がん、乳がん(乳房の管および小葉の上皮内層の悪性増殖から発生する)、β細胞から発生する膵臓腫瘍(インスリノーマ)、腸の上皮から発生する腫瘍(例えば、腺がんおよび扁平上皮がん)、前立腺のがん腫、精巣のセミノーマ、卵巣がん、および神経芽細胞腫が含まれる。他の開示もまた、グレーブス病、甲状腺炎などの自己免疫(Antonelli, Fallahi et al. 2001)、1型および2型糖尿病(Mallone and Perin 2006)、ならびに喘息での気道平滑筋細胞の炎症(Deshpande, White et al. 2005)におけるCD38の役割を示唆している。さらに、CD38の発現はHIV感染にも関連している(Kestens, Vanham et al. 1992; Ho, Hultin et al. 1993)。
【0005】
CD38は多機能タンパク質である。CD38に起因する機能には、接着およびシグナル伝達事象における受容体媒介と(エクト)酵素活性との両方が含まれる。エクト酵素として、CD38は、NAD+をサイクリックADPリボース(cADPR)およびADPRの形成の基質として使用するが、ニコチンアミドおよびニコチン酸-アデニンジヌクレオチドリン酸(NAADP)の形成にも使用する。cADPRは、小胞体からのCa2+動員のセカンドメッセンジャーとして機能することが示されている。
【0006】
いくつかの抗CD38抗体は文献に記載されており、例えば、WO 2006/099875 A1、WO2008037257 A2、WO 2011/154453 A1、WO 2007/042309 A1、WO 2008/047242 A1、WO2012/092612 A1; Cotner, Hemler et al. 1981; Ausiello, Urbani et al. 2000; Lande, Urbani et al. 2002; de Weers, Tai et al. 2011; Deckert, Wetzel et al. 2014; Raab, Goldschmidt et al. 2015; Eissler, Filosto et al. 2018; Roepcke, Plock et al. 2018; およびSchooten 2018に記載される。
【0007】
CD38抗体は、CD38発現腫瘍細胞に以下の作用機序のうちの1つまたは複数によって影響を与える可能性がある:補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貧食(ADCP)、プログラム細胞死、トロゴサイトーシス(trogocytosis)、免疫サプレッサー細胞の排除、および酵素活性の調節(van de Donk, Janmaat et al. 2016; Krejcik, Casneuf et al. 2016; Krejcik, Frerichs et al. 2017; Chatterjee, Daenthanasanmak et al. 2018; van de Donk 2018)。しかしながら、2014年に、CD38抗体は、効果的なCDC、ADCC、ADCPを誘導できるだけでなく、CD38酵素活性を効果的に阻害できるものが、これまでに記載されたことはない、と提案された(Lammerts van Bueren, Jakobs et al. 2014)。
【0008】
エフェクター機能の最適化は、例えば、抗原発現細胞に対する免疫応答を引き出す抗体の能力を改善するために、がんまたは他の疾患を治療するための治療用抗体の有効性を向上させることができる。そのような努力は、例えば、以下に記載されている:WO 2013/004842 A2; WO 2014/108198 A1; WO 2018/031258 A1; Dall'Acqua, Cook et al. 2006; Moore, Chen et al. 2010; Desjarlais and Lazar 2011; Kaneko and Niwa 2011; Song, Myojo et al. 2014; Brezski and Georgiou 2016; Sondermann and Szymkowski 2016; Zhang, Armstrong et al. 2017; Wang, Mathieu et al. 2018。
【0009】
しかしながら、当技術分野におけるこれらおよび他の努力にもかかわらず、効力が調節されたCD38治療用抗体の必要性が存在している。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、CD38抗体Cのバリアント、特にFc領域に1つまたは複数の変異を有するバリアントに関する。これらの変異の少なくとも1つは、ヒトIgG1重鎖中のE430、E345、またはS440に対応する残基にあり、ここで、前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0011】
したがって、一局面では、本発明は、ヒトCD38に結合する抗体バリアントに関し、該抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む、抗原結合領域;および
(b)ヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を含む、バリアントFc領域(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)
を含む。
【0012】
一局面では、本発明は、ヒトCD38に結合する抗体バリアントに関し、該抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる);および
(b)SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む、軽鎖
を含む。
【0013】
一局面では、本発明は、ヒトCD38に結合する抗体バリアントに関し、該抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:1を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖(前記アミノ酸残基の番号付けはEUインデックスに従う);および
(b)SEQ ID NO:5を含むVLを含む、軽鎖
を含む。
【0014】
一局面では、本発明は、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントをコードする単離された核酸に関する。
【0015】
一局面では、本発明は、そのような核酸を含む発現ベクターに関する。
【0016】
一局面では、本発明は、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントを産生する組換え宿主細胞に関する。
【0017】
一局面では、本発明は、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントを産生する方法に関し、この方法は、そのような組換え宿主細胞を、抗体バリアントを産生するのに適した条件下、培養培地中で培養する段階を含む。
【0018】
一局面では、本発明は、Fc領域と、CD38に結合する抗原結合領域とを含む親抗体のエフェクター機能を増加させる方法に関し、この方法は、該Fc領域に、ヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を導入することを含み(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)、
前記抗原結合領域は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む。
【0019】
本明細書に記載の局面のいくつかの態様では、1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440YおよびS440Wからなる群より選択され、例えば、E430Gなどである。
【0020】
一局面では、本発明は、Fc領域とCD38に結合する抗原結合領域とを含む親抗体のバリアントを産生する方法に関し、該バリアントは親抗体と比較して増加したエフェクター機能を有し、この方法は、
(a)該Fc領域に、ヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を導入して、バリアント抗体を取得する段階;
(b)親抗体と比較してエフェクター機能が増加しているバリアント抗体を選択する段階;および
(c)組換え宿主細胞において該バリアント抗体を産生させる段階
を含み、
前記抗原結合領域は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む。
【0021】
一局面では、本発明は、そのような方法によって得られた抗体または得ることが可能な抗体に関する。
【0022】
一局面では、本発明は、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物に関する。
【0023】
一局面では、本発明は、医薬として使用するための、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0024】
一局面では、本発明は、CD38を発現する細胞が関与する疾患を治療するのに使用するための、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0025】
一局面では、本発明は、CD38を発現する細胞を含む腫瘍に対するCDC応答を誘導するのに使用するための、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0026】
一局面では、本発明は、ヒトCD38を発現する細胞を含む対象におけるがんを治療または予防するのに使用するための、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0027】
一局面では、本発明は、関節リウマチの治療または予防に使用するための、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0028】
一局面では、本発明は、CD38を発現する細胞を含む疾患を治療するための方法に関し、この方法は、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントを、それを必要とする患者に投与することを含み、任意で、該抗体バリアントまたは薬学的組成物は、治療上有効な量で、かつ/または該疾患を治療するのに十分な時間にわたり投与される。
【0029】
[本発明1001]
ヒトCD38に結合する抗体バリアントであって、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む、抗原結合領域;および
(b)ヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を含む、バリアントFc領域であって、該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる、バリアントFc領域
を含む、前記抗体バリアント。
[本発明1002]
SEQ ID NO:1を含むか、またはSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の同一性、例えば90%、95%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、可変重鎖(VH)領域を含む、本発明1001の抗体バリアント。
[本発明1003]
SEQ ID NO:5を含むか、またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の同一性、例えば90%、95%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、可変軽鎖(VL)領域を含む、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1004]
前記VHが、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって、SEQ ID NO:1と異なる、本発明1002または1003の抗体バリアント。
[本発明1005]
前記VLが、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって、SEQ ID NO:5と異なる、本発明1003または1004の抗体バリアント。
[本発明1006]
SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域と、SEQ ID NO:5の配列を含むVL領域とを含む、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1007]
前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異が、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440YおよびS440Wからなる群より選択される、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1008]
前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異が、E430G、E345K、E430SおよびE345Qに対応する群より選択される、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1009]
前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異がE430Gを含む、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1010]
前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異がE430Gからなる、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1011]
前記バリアントFc領域が1つまたは複数のさらなる変異を含み、該1つまたは複数のさらなる変異が、該1つまたは複数のさらなる変異を含まない抗体バリアントによって誘導される補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を低下させない、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1012]
前記1つまたは複数のさらなる変異が、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失である、本発明1011の抗体バリアント。
[本発明1013]
前記バリアントFc領域が、列挙された変異を除いて、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4のアイソタイプ、またはそれらの混合アイソタイプである、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1014]
前記バリアントFc領域が、列挙された変異を除いて、ヒトIgG1 Fc領域である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1015]
前記バリアントFc領域が、列挙された変異を除いて、ヒトIgG1m(f)、IgG1m(a)、IgG1m(x)、IgG1m(z)のアロタイプ、またはそれらの任意の2つ以上の混合アロタイプである、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1016]
2価抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1017]
全長抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1018]
列挙された変異を除いて、ヒト抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1019]
モノクローナル抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1020]
列挙された変異を除いて、IgG1抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1021]
列挙された変異を除いて、ヒトモノクローナル全長2価IgG1m(f),κ抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1022]
ヒトCD38に結合する抗体バリアントであって、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖であって、該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる、重鎖;
(b)SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む、軽鎖
を含む、前記抗体バリアント。
[本発明1023]
ヒトCD38に結合する抗体バリアントであって、
(a)SEQ ID NO:1を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖であって、該アミノ酸残基の番号付けはEUインデックスに従う、重鎖;および
(b)SEQ ID NO:5を含むVLを含む、軽鎖
を含む、前記抗体バリアント。
[本発明1024]
前記変異がE430Gを含むか、またはE430Gからなる、本発明1022または1023の抗体バリアント。
[本発明1025]
前記ヒトIgG1 CH領域が、ヒトIgG1m(f)、IgG1m(a)、IgG1m(x)もしくはIgG1m(z)のアロタイプ、またはそれらの任意の2つ以上の混合アロタイプである、本発明1022~1024のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1026]
前記CHが、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23またはSEQ ID NO:45の配列を含む、本発明1022~1025のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1027]
前記CHが1つまたは複数のさらなる変異を含む、本発明1026の抗体バリアント。
[本発明1028]
前記1つまたは複数のさらなる変異が、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失である、本発明1027の抗体バリアント。
[本発明1029]
EU番号付けに従って447位のLys(K)が欠失されている、本発明1028の抗体バリアント。
[本発明1030]
前記CH領域がSEQ ID NO:24~SEQ ID NO:33およびSEQ ID NO:46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、本発明1022~1026のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1031]
前記CH領域がSEQ ID NO:24またはSEQ ID NO:46を含み、任意で軽鎖がSEQ ID NO:37を含むCLを含む、本発明1030の抗体バリアント。
[本発明1032]
2価抗体である、本発明1022~1031のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1033]
単一特異性抗体である、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1034]
二重特異性抗体である、本発明1001~1032のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1035]
ヒトCD38のシクラーゼ活性に対して阻害効果を有する、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1036]
ヒトCD38のシクラーゼ活性を少なくとも約40%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%阻害し、任意で、シクラーゼ活性の阻害が、
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり100μLの20mM Tris-HCL中の200,000個のDaudi細胞もしくはWien133細胞を播種する段階、またはウェルあたり100μLの20mM Tris-HCL中の0.6μg/mLのHisタグ付き可溶性ヒトCD38(SEQ ID NO:39)を播種する段階;
(b)各ウェルに1μg/mLのCD38抗体と80μMのNGDを添加する段階;
(c)プラトーに達するまで(例えば、5、10、または30分)蛍光を測定する段階;および
(d)アイソタイプ対照抗体とインキュベートしたウェルなどの対照と比較して、阻害パーセントを決定する段階
を含むアッセイにより決定される、本発明1035の抗体バリアント。
[本発明1037]
Fc架橋抗体の存在下でアポトーシスを誘導するが、Fc架橋抗体の非存在下では誘導しない、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1038]
ヒトCD38を発現する細胞のCDC、ADCC、抗体依存性細胞貧食(ADCP)、トロゴサイトーシス、またはそれらの任意の組み合わせを誘導する、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1039]
ヒトCD38を発現する細胞のCDCを誘導する、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1040]
Daudi細胞(ATCC番号CCL-213)またはRamos細胞(ATCC番号CRL-1596)に対してCDCを誘導し、その結果、Fc領域に1つまたは複数の変異が存在しないことでのみ異なる参照抗体バリアントで得られるものよりも、少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%高い最大溶解をもたらす、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1041]
前記CDCが、
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり0.2%のBSAを添加した培養培地40μLに100,000個のCD38発現細胞をプレーティングする段階;
(b)細胞を40μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に20分間プレインキュベートする段階;
(c)各ウェルを20%のプールした正常ヒト血清と共に37℃で45分間インキュベートする段階;
(d)生死判別色素を添加し、フローサイトメーターで細胞溶解の割合を測定する段階;
(e)非線形回帰を用いて最大溶解を決定する段階
を含むアッセイにより決定される、本発明1040の抗体バリアント。
[本発明1042]
細胞傷害剤、放射性同位体、または薬物にコンジュゲートされている、前記本発明のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1043]
前記本発明のいずれかの抗体バリアントをコードする、単離された核酸。
[本発明1044]
本発明1043の核酸を含む、発現ベクター。
[本発明1045]
本発明1001~1042のいずれかの抗体バリアントの重鎖をコードする、核酸。
[本発明1046]
前記重鎖が、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、核酸であって、該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる、本発明1045の核酸。
[本発明1047]
本発明1001~1042のいずれかの抗体バリアントをコードする、核酸。
[本発明1048]
本発明1001~1042のいずれかの抗体バリアントをコードする核酸の組み合わせ。
[本発明1049]
本発明1045~1048のいずれかの核酸を含む、送達ビヒクル。
[本発明1050]
本発明1001~1042のいずれかの抗体バリアントの軽鎖をコードする核酸を含む、送達ビヒクル。
[本発明1051]
前記軽鎖が、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含み、かつ薬学的に許容される担体を含む、本発明1050の送達ビヒクル。
[本発明1052]
粒子である、本発明1049~1051のいずれかの送達ビヒクル。
[本発明1053]
前記粒子が脂質ナノ粒子(LNP)である、本発明1052の送達ビヒクル。
[本発明1054]
前記LNPが脂質、イオン化可能なアミノ脂質、PEG脂質、コレステロール、またはそれらの任意の組み合わせを含む、本発明1053の送達ビヒクル。
[本発明1055]
本発明1001~1041のいずれかの抗体バリアントを産生する組換え宿主細胞であって、任意で、本発明1043の核酸または本発明1044の発現ベクターを含む、組換え宿主細胞。
[本発明1056]
真核細胞または原核細胞である、本発明1055の組換え宿主細胞。
[本発明1057]
本発明1001~1041のいずれかの抗体バリアントを産生する方法であって、
本発明1055の組換え宿主細胞を、抗体バリアントを産生するのに適した条件下、培養培地中で培養する段階、および任意で、該培養培地から抗体バリアントを精製または単離する段階
を含む、前記方法。
[本発明1058]
Fc領域とCD38に結合する抗原結合領域とを含む親抗体の少なくとも1つのエフェクター機能を増加させる方法であって、該方法が、該Fc領域に、ヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を導入する段階を含み、該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされ、
該抗原結合領域が、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む、前記方法。
[本発明1059]
Fc領域とCD38に結合する抗原結合領域とを含む親抗体のバリアントを産生する方法であって、該バリアントが親抗体と比較して増加したエフェクター機能を有し、該方法が、
(a)該Fc領域に、ヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を導入して、バリアント抗体を取得する段階;
(b)親抗体と比較してエフェクター機能が増加しているバリアント抗体を選択する段階;および
(c)組換え宿主細胞において該バリアント抗体を産生させる段階
を含み、
該抗原結合領域が、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む、前記方法。
[本発明1060]
前記エフェクター機能がCDC、トロゴサイトーシス、またはその両方である、本発明1058または1059の方法。
[本発明1061]
前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異が、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440YおよびS440Wに対応する群から選択される、本発明1058~1060のいずれかの方法。
[本発明1062]
前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異がE430Gを含むか、またはE430Gからなる、本発明1058~1061のいずれかの方法。
[本発明1063]
前記親抗体のFc領域が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4 Fc領域、またはそれらのアイソタイプ混合物である、本発明1058~1062のいずれかの方法。
[本発明1064]
前記親抗体のFc領域がヒトIgG1 Fc領域である、本発明1058~1063のいずれかの方法。
[本発明1065]
前記親抗体がヒト全長IgG1抗体であり、任意で、ヒトモノクローナル全長2価IgG1,κ抗体である、本発明1064の方法。
[本発明1066]
前記親抗体のFc領域が1つまたは複数のさらなる変異を含む、本発明1058~1065のいずれかの方法。
[本発明1067]
前記親抗体が単一特異性抗体または二重特異性抗体である、本発明1058~1066のいずれかの方法。
[本発明1068]
本発明1058~1067のいずれかの方法により得られた抗体または得ることが可能な抗体。
[本発明1069]
本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1055もしくは1056の宿主細胞を含む、組成物。
[本発明1070]
本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、および薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
[本発明1071]
医薬として使用するための、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物。
[本発明1072]
CD38発現細胞が関与する疾患を治療するのに使用するための、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物。
[本発明1073]
CD38発現細胞を含む腫瘍に対するCDC応答を誘導するのに使用するための、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物。
[本発明1074]
ヒトCD38を発現する細胞を含む対象におけるがんを治療または予防するのに使用するための、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物。
[本発明1075]
CD38抗体を含む以前の治療に難治性のがんを治療するのに使用するための、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物。
[本発明1076]
CD38抗体を含む以前の治療の後に再発したがんを治療するのに使用するための、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物。
[本発明1077]
CD38抗体がダラツムマブである、本発明1075または1076の使用のための抗体バリアント。
[本発明1078]
前記がんが血液のがんである、本発明1071~1077のいずれかの使用のための抗体バリアント。
[本発明1079]
血液のがんが、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される、本発明1078の使用のための抗体バリアント。
[本発明1080]
前記がんがMMである、本発明1079の使用のための抗体バリアント。
[本発明1081]
前記がんがCLLである、本発明1079の使用のための抗体バリアント。
[本発明1082]
前記がんがマントル細胞リンパ腫である、本発明1079の使用のための抗体バリアント。
[本発明1083]
前記がんがDLBCLである、本発明1079の使用のための抗体バリアント。
[本発明1084]
前記がんがFLである、本発明1079の使用のための抗体バリアント。
[本発明1085]
前記がんが急性骨髄性白血病(成人)(AML)である、本発明1079の使用のための抗体バリアント。
[本発明1086]
前記がんが固形腫瘍を含む、本発明1071~1077のいずれかの使用のための抗体バリアント。
[本発明1087]
前記固形腫瘍が、メラノーマ、肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、胃がん(stomach cancer)、卵巣がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮がん、食道または胃腸管のがん、乳がん、卵管がん、脳腫瘍、尿道がん、尿生殖器がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肺腺がん、腎細胞がん(RCC)(例えば、腎明細胞がんまたは腎乳頭状細胞がん)、中皮腫、鼻咽頭がん(NPC)、食道または胃腸管のがん、またはそれらのいずれかの転移性病変である、本発明1086の使用のための抗体バリアント。
[本発明1088]
前記固形腫瘍が肺がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1089]
前記固形腫瘍が扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)である、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1090]
前記固形腫瘍が非扁平上皮NSCLCである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1091]
前記固形腫瘍がメラノーマである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1092]
前記固形腫瘍が結腸直腸がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1093]
前記固形腫瘍が前立腺がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1094]
前記固形腫瘍が去勢抵抗性前立腺がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1095]
前記固形腫瘍が胃がん(stomach cancer)である、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1096]
前記固形腫瘍が卵巣がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1097]
前記固形腫瘍が胃がん(gastric cancer)である、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1098]
前記固形腫瘍が肝臓がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1099]
前記固形腫瘍が膵臓がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1100]
前記固形腫瘍が甲状腺がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1101]
前記固形腫瘍が頭頸部の扁平上皮がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1102]
前記固形腫瘍が食道または胃腸管のがんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1103]
前記固形腫瘍が乳がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1104]
前記固形腫瘍が卵管がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1105]
前記固形腫瘍が脳腫瘍である、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1106]
前記固形腫瘍が尿道がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1107]
前記固形腫瘍が尿生殖器がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1108]
前記固形腫瘍が子宮内膜がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1109]
前記固形腫瘍が子宮頸がんである、本発明1087の使用のための抗体バリアント。
[本発明1110]
前記固形腫瘍が検出可能なCD38発現を欠いている、本発明1086~1109のいずれかの使用のための抗体バリアント。
[本発明1111]
前記がんが、CD38を発現するT制御性細胞を含む患者におけるがんである、本発明1074~1110のいずれかの使用のための抗体バリアント。
[本発明1112]
関節リウマチの治療または予防に使用するための、本発明1001~1042のいずれかの抗体バリアント。
[本発明1113]
CD38発現細胞を含む疾患を治療するための方法であって、本発明1001~1042および1068のいずれかの抗体バリアント、本発明1043および1045~1047のいずれかの核酸、本発明1048の核酸の組み合わせ、本発明1044の発現ベクター、本発明1049~1054のいずれかの送達ビヒクル、または本発明1069もしくは1070の組成物を、それを必要とする患者に投与する段階を含む、前記方法。
[本発明1114]
前記抗体バリアントまたは薬学的組成物が、治療上有効な量でかつ/または前記疾患を治療するのに十分な期間にわたり投与される、本発明1113の方法。
[本発明1115]
本発明1073~1112のいずれかの特徴をさらに含む、本発明1113または1114の方法。
本発明のこれらおよび他の局面および態様は、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ヒトIgG1重鎖の残基P247~K447に対応するヒトIgG1m(a)、IgG1m(f)、IgG2、IgG3およびIgG4 Fcセグメントについての、Clustal 2.1ソフトウェアを用いたアミノ酸配列アラインメントを示し、ここで、アミノ酸残基はKabatに記載されるEUインデックスに従って番号付けされる。示したアミノ酸配列は、IgG1m(za)(SEQ ID NO:64; UniProtアクセッション番号P01857)、IgG1m(f)(SEQ ID NO:65)、IgG1m(z)(SEQ ID NO:66)、IgG1m(a)(SEQ ID NO:67)およびIgG1m(x)(SEQ ID NO:68)と指定されたヒトIgG1のアロタイプバリアントの重鎖定常領域の残基130~330;IgG2重鎖定常領域の残基126~326(SEQ ID NO:79; UniProtアクセッション番号P01859);IgG3重鎖定常領域の残基177~377(SEQ ID NO:80; UniProtアクセッション番号P01860);およびIgG4重鎖定常領域の残基127~327(SEQ ID NO:81; UniProtアクセッション番号P01861)に対応する。
図2】CD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430GのCD38発現NALM16細胞への結合を、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-C、およびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例2を参照されたい。
図3】CD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gの、カニクイザルPBMC上に発現されたCD38(A)または高コピー数のヒトCD38を発現するDaudi細胞(B)への結合を、アイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例2を参照されたい。
図4】CDCアッセイにおけるRamos (A)、Daudi (B)、Wien-133 (C)、NALM-16 (D)、REH (E)、RS4;11 (F)、U266 (G)およびRC-K8 (H)腫瘍細胞株の、CD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gによって誘導された溶解パーセントを、CD38抗体IgG1-A、IgG1-BおよびIgG1-Cと比較して示す。詳細については、実施例3を参照されたい。
図5】全血で実施されたCDCアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gが生存NK細胞(A)、T細胞(B)およびB細胞(C)の数に及ぼす影響を、CD38抗体IgG1-A、IgG1-BおよびIgG1-Cと比較して示す。詳細については、実施例3を参照されたい。
図6】クロム放出ADCCアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gによって誘導されたDaudi細胞の溶解パーセントを、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例4を参照されたい。
図7】ADCCレポーターアッセイにおけるCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gの用量依存的なFcγRIIIa架橋を、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例4を参照されたい。
図8】ADCPアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430GがPKH-29pos、CD14posおよびCD19negマクロファージのパーセンテージに及ぼす影響を、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例5を参照されたい。
図9】Fc架橋抗体を用いて(C、E、G)または用いずに(A、B、D、F)実施したアポトーシスアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gによって誘導されたRamos (A)、Daudi (B,C)、Wien-133 (D,E)およびNALM-16 (F,G)腫瘍細胞株の溶解パーセントを、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例6を参照されたい。
図10】CD38の酵素活性を示す。
図11】CD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430GがHisCD38 (A)、Daudi細胞(B)およびWien-133細胞(C)のシクラーゼ活性に及ぼす影響を、経時的なNDG変換%に反映させて、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。
図12】CD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gがマクロファージと45分間共培養した後のDaudi細胞上のCD38発現に及ぼす影響を、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。マクロファージはドナーA(A,B)またはドナーB(B,D)からのものであり、抗体オプソニン化細胞はCD38発現(A,B)またはヒトIgG染色(C,D)について試験された。
図13】CD38抗体バリアントIgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430GがPBMCを含むまたは含まないT制御性細胞上のCD38発現に及ぼす影響を、IgG1-Bと比較して示す。
図14-1】CDCアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G(黒三角)、IgG1-B-E430G(黒丸)およびIgG1-C-E430G(黒四角)によって誘導された、さまざまなB細胞腫瘍細胞株の溶解パーセントを、CD38抗体IgG1-B(白丸)およびアイソタイプ対照抗体(白菱形)と比較して示す。詳細については、実施例3を参照されたい。
図14-2】図14-1の続きの図である。
図14-3】図14-2の続きの図である。
図14-4】図14-3の続きの図である。
図15】表4に示されたEC50値のいくつかの要約を示す。20種の異なるB細胞腫瘍細胞株で抗体IgG1-B、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gによって誘導されたCDCのEC50値が示される。各正方形、三角形または円は、異なるB細胞腫瘍細胞株を表している。AML細胞株ではIgG1-B-E430Gの試験を行わなかったため、AML細胞株で得られるEC50値は含まれていない。
図16-1】CDCアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-C-E430G(黒丸)によって誘導されたさまざまなAML腫瘍細胞株の溶解パーセントを、CD38抗体IgG1-B(白丸)およびアイソタイプ対照抗体(黒四角)と比較して示す。詳細については、実施例3を参照されたい。
図16-2】図16-1の続きの図である。
図17】CDCアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-B-E430G(黒丸)およびIgG1-C-E430G(黒四角)によって誘導されたT制御性細胞の溶解パーセントを、CD38抗体IgG1-B(白丸)と比較して示す。詳細については、実施例3を参照されたい。
図18】クロム放出ADCCアッセイにおいてCD38抗体バリアントIgG1-B-E430G、IgG1-C-E430Gによって誘導されたDaudi細胞、Wien-133細胞、Granta 519細胞、およびMEC-2細胞の溶解パーセントを、CD38抗体IgG-B、IgG1-CおよびIgG1-b12-E430Gと比較して示す。詳細については、実施例4を参照されたい。
図19】T制御性細胞を用いたADCCレポーターアッセイにおけるCD38抗体バリアントIgG1-A-E430G、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gの用量依存的なFcγRIIIa架橋を、CD38抗体IgG1-A、IgG1-B、IgG1-Cおよびアイソタイプ対照抗体と比較して示す。詳細については、実施例4を参照されたい。
図20】CD38抗体バリアントIgG1-C-E430GまたはPBS(陰性対照)のいずれかで処理されたマウスの腫瘍サイズ(mm3)を示す。詳細については、実施例9を参照されたい。
図21】トロゴサイトーシスを測定するためのアッセイのセットアップを示す。1)Daudi細胞をPKH-26(膜染色)およびセルトレース(cell trace)バイオレット(サイトゾル染色)で標識し、CD38抗体でオプソニン化した。2)標識したDaudi細胞とマクロファージを37℃で2時間共培養して、マクロファージを付着させた。3)Daudi細胞からマクロファージへの細胞膜の移動またはトロゴサイトーシス。4)マクロファージ-Daudi相互作用の分離およびマクロファージ内でのDaudi細胞膜の分解。詳細については、実施例8を参照されたい。
図22】新たに診断されたMM患者3名(A、B、およびD)と再発/難治性MM患者1名(C)からの骨髄単核細胞におけるIgG1-C-E430GまたはDarzalex(登録商標)による補体媒介細胞傷害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
本発明の態様を説明する際には、明確にするために特定の用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることを意図したものではなく、各特定の用語は、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的等価物を含むことが理解される。
【0032】
定義
本明細書で使用する用語「CD38」は、一般にSEQ ID NO:38に記載の配列を有するヒトCD38(UniProtKB - P28907 (CD38_HUMAN))を指すが、文脈と矛盾しない限り、そのバリアント、アイソフォームおよびオルソログを指すこともある。S274、Q272R、T237AまたはD202G変異を有するヒトCD38のバリアントは、WO 2006/099875 A1およびWO 2011/154453 A1に記載されている。
【0033】
用語「免疫グロブリン」は、2対のポリペプチド鎖、つまり1対の低分子量軽(L)鎖と1対の重(H)鎖からなる構造的に関連した糖タンパク質のクラスを指し、4本の鎖は全てジスルフィド結合によって相互連結される可能性がある。免疫グロブリンの構造はよく特徴付けられている。例えば、Fundamental Immunology 第7章 (Paul, W.編, 第2版 Raven Press, N.Y. (1989))を参照されたい。簡単に説明すると、各重鎖は典型的には、重鎖可変(VH)領域と重鎖定常(CH)領域から構成される。CH領域は通常、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなる。重鎖は一般的に、いわゆる「ヒンジ領域」でジスルフィド結合を介して相互連結されている。各軽鎖は典型的には、軽鎖可変(VL)領域と軽鎖定常領域から構成され、後者は通常、1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域の間に挟まれた、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる、超可変性の領域(つまり、配列および/または構造的に定義されたループの形態が超可変性であり得る超可変領域)にさらに細分することができる。各VHおよびVL領域は典型的には、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へ次の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196, 901 917 (1987)も参照されたい)。
【0034】
特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本明細書のCDR配列は、DomainGapAlignを使用してIMGTルールに従って同定される(Lefranc MP., Nucleic Acids Research 1999;27:209-212およびEhrenmann F., Kaas Q. and Lefranc M.-P. Nucleic Acids Res., 38, D301-307 (2010);インターネットhttpアドレスwww.imgt.org/も参照されたい)。
【0035】
特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、本発明におけるCHまたはFc領域/Fcドメインのアミノ酸位置への言及は、EU番号付けに従う(Edelman et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May;63(1):78-85; Kabat et al., Sequences of proteins of immunological interest. 第5版 - 1991 NIH発行番号91-3242)。しかし、ヒトIgG1とは別のアイソタイプのCHのアミノ酸残基は、代替的に、アミノ酸残基がEUインデックスに従って番号付けされる野生型ヒトIgG1重鎖の対応するアミノ酸位置で言及されてもよい。具体的には、対応するアミノ酸位置は、図1に示されるように、すなわち、(a)非IgG1定常領域(またはそのセグメント)のアミノ酸配列を、アミノ酸残基がEUインデックスに従って番号付けされたヒトIgG1重鎖(またはそのセグメント)のアミノ酸配列とアラインメントし、(b)そのアミノ酸残基がIgG1重鎖中のどのアミノ酸位置にアラインメントされるかを特定することによって、同定することができる。したがって、そのようなアミノ酸残基の位置は、本明細書では「に対応する位置のアミノ酸残基」と称することができ、その後に、EUインデックスに従って番号付けされた野生型ヒトIgG1重鎖のアミノ酸位置が続く。いくつかの異なるアミノ酸位置のうちの1つまたは複数を指す場合、これは、本明細書では、「に対応する位置からなる群より選択される位置の1つまたは複数のアミノ酸残基の変異」、「に対応する位置の1つまたは複数のアミノ酸残基の変異」、または単に「に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異」と称することができ、その後に、アミノ酸残基がEUインデックスに従って番号付けされたヒト野生型IgG1重鎖の2つ以上のアミノ酸位置(例えば、E430、E345およびS440)が続く。
【0036】
本明細書で使用する用語「ヒンジ領域」は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指すことを意図している。それゆえ、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、EU番号付けに従ってアミノ酸216-230に対応する。
【0037】
本明細書で使用する用語「CH2領域」または「CH2ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指すことを意図している。それゆえ、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、EU番号付けに従ってアミノ酸231-340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0038】
本明細書で使用する用語「CH3領域」または「CH3ドメイン」は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指すことを意図している。それゆえ、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、EU番号付けに従ってアミノ酸341-447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載される他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0039】
本発明の文脈における用語「抗体」(Ab)は、抗原に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子のフラグメント、またはそれらのいずれかの誘導体を指す。本発明の抗体は、免疫グロブリンのFcドメインと抗原結合領域とを含む。抗体は一般に、2つのCH2-CH3領域と連結領域、例えばヒンジ領域を含み、例えば、少なくともFcドメインを含む。こうして、本発明の抗体は、Fc領域と抗原結合領域とを含むことができる。免疫グロブリン分子の重鎖と軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域または「Fc」領域は、免疫系のさまざまな細胞(エフェクター細胞など)、補体活性化の古典的経路の最初の成分であるC1qなどの補体系の成分を含めて、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。本明細書で使用する場合、文脈と矛盾しない限り、免疫グロブリンのFc領域は、典型的には、免疫グロブリンCHの少なくともCH2ドメインとCH3ドメインを含み、かつ連結領域、例えばヒンジ領域を含んでもよい。Fc領域は、典型的には、例えば、2つのヒンジ領域を連結するジスルフィド架橋および/または2つのCH3領域間の非共有結合的相互作用を介して、二量体化された形態である。二量体は、ホモ二量体(2つのFc領域単量体のアミノ酸配列が同一である)またはヘテロ二量体(2つのFc領域単量体のアミノ酸配列が1つまたは複数のアミノ酸で異なる)であり得る。好ましくは、二量体はホモ二量体である。全長抗体のFc領域フラグメントは、例えば、当技術分野でよく知られるように、全長抗体をパパインで消化することによって生成することができる。本明細書で定義される抗体は、Fc領域と抗原結合領域に加えて、免疫グロブリンCH1領域およびCL領域のいずれか一方または両方をさらに含み得る。抗体はまた、二重特異性抗体または類似の分子などの、多重特異性抗体であり得る。用語「二重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる、典型的には重複しない、エピトープに対する特異性を有する抗体を指す。そのようなエピトープは、同じ標的上にあってもよいし、異なる標的上にあってもよい。エピトープが異なる標的上にある場合、そのような標的は、同じ細胞または異なる細胞もしくは細胞タイプ上にあり得る。上記のように、特に明記しない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、本明細書での抗体という用語は、Fc領域の少なくとも一部を含みかつ抗原に特異的に結合する能力を保持する、抗体のフラグメントを含む。そのようなフラグメントは、酵素的切断、ペプチド合成および組換え発現技術などの、任意の公知技術によって提供され得る。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって遂行され得ることが示されている。「Ab」または「抗体」という用語に含まれる結合フラグメントの例には、限定するものではないが、以下が含まれる:1価の抗体(Genmab社によるWO2007059782に記載);2本の重鎖のみで構成される重鎖抗体であって、ラクダなどに天然に存在する抗体(例えば、Hamers-Casterman (1993) Nature 363:446);ThioMab(Roche社, WO2011069104);非対称的で二重特異性抗体様の分子である、鎖交換改変ドメイン(strand-exchange engineered domain)(SEEDまたはSeed-body)(Merck社, WO2007110205);Triomab(Pharma/Fresenius Biotech社, Lindhofer et al. 1995 J Immunol 155:219; WO2002020039);FcΔAdp(Regeneron社, WO2010151792);Azymetric Scaffold(Zymeworks/Merck社, WO2012/058768);mAb-Fv(Xencor社, WO2011/028952);Xmab (Xencor社);二重可変領域抗体(Abbott社, DVD-Ig, 米国特許第7,612,181号);デュアルドメインダブルヘッド抗体(Unilever社; Sanofi Aventis社, WO20100226923);ジ-ダイアボディ(ImClone/Eli Lilly社);ノブ・イントゥ・ホール(Knob-into-hole)抗体フォーマット(Genentech社, WO9850431);DuoBody(Genmab社, WO 2011/131746);二重特異性IgG1およびIgG2(Pfizer/Rinat社, WO11143545);DuetMab(MedImmune社, US2014/0348839);静電ステアリング(Electrostatic steering)抗体フォーマット(Amgen社, EP1870459およびWO 2009089004; Chugai社, US201000155133; Oncomed社, WO2010129304A2);二重特異性IgG1およびIgG2(Rinat neurosciences Corporation, WO11143545);CrossMAb(Roche社, WO2011117329);LUZ-Y(Genentech社);Biclonic(Merus社, WO2013157953);デュアルターゲティングドメイン抗体(GSK/Domantis社);2つの標的を認識するツー・イン・ワン抗体またはデュアルアクションFab(Genentech社, NovImmune社, Adimab社);架橋Mab(Karmanos Cancer Center);共有結合で融合したmAb(AIMM社);CovX-body(CovX/Pfizer社);FynomAb(Covagen/Janssen ilag社);DutaMab(Dutalys/Roche社);iMab(MedImmune社);IgG様二重特異性(ImClone/Eli Lilly社, Shen, J., et al. J Immunol Methods, 2007. 318(1-2): p. 65-74);TIG-body、DIG-bodyおよびPIG-body(Pharmabcine社);デュアルアフィニティリターゲティング分子(Fc-DARTまたはIg-DART, Macrogenics社による, WO/2008/157379, WO/2010/080538);BEAT(Glenmark社);Zybody(Zyngenia社);共通の軽鎖を用いたアプローチ(Crucell/Merus社, US7262028)または共通の重鎖を用いたアプローチ(NovImmune社によるκλBody, WO2012023053);ならびにscFv-融合体のようなFc領域を含む抗体フラグメントに融合させたポリペプチド配列を含む融合タンパク質、例えば、ZymoGenetics/BMS社によるBsAb,Biogen Idec社によるHERCULES(US007951918),Emergent BioSolutions/Trubion社およびZymogenetics/BMS社によるSCORPIONS,Ts2Ab(MedImmune/AZ社,Dimasi, N., et al. J Mol Biol, 2009. 393(3): p. 672-92),Genentech/Roche社によるscFv融合体,Novartis社によるscFv融合体,Immunomedics社によるscFv融合体,Changzhou Adam Biotech社によるscFv融合体(CN 102250246),Roche社によるTvAb(WO 2012025525, WO 2012025530),f-Star社によるmAb2(WO2008/003116),およびデュアルscFv-融合体。抗体という用語は、特に明記しない限り、以下を含むことを理解されたい:モノクローナル抗体(ヒトモノクローナル抗体など)、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単一特異性抗体(2価の単一特異性抗体など)、二重特異性抗体、任意のアイソタイプおよび/またはアロタイプの抗体;例えばSymphogenとMerusが開発した技術(Oligoclonics)によって作成された、抗体混合物(組換えポリクローナル)、WO2015/158867に記載される多量体Fcタンパク質、およびWO2014/031646に記載される融合タンパク質。これらの異なる抗体フラグメントおよびフォーマットは一般に抗体の意味に含まれるが、それらは集合的にかつそれぞれ独立して、本発明のユニークな特徴であり、異なる生物学的特性および有用性を示す。
【0040】
本明細書に記載の「CD38抗体」または「抗CD38抗体」は、抗原CD38に特異的に結合する抗体である。
【0041】
本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する抗体を含むことを意図している。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異、挿入または欠失)を含んでもよい。しかし、本明細書で使用する用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図していない。
【0042】
本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」、「モノクローナルAb」、「モノクローナル抗体組成物」、「mAb」などは、単一分子組成のAb分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。したがって、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域と定常領域を有する、単一の結合特異性を示すAbを指す。ヒトmAbはハイブリドーマから産生させることができ、該ハイブリドーマは、機能性ヒト抗体を産生するように再配列された、ヒト重鎖トランスジーンレパートリーと軽鎖トランスジーンレパートリーを含むゲノムを有する、トランスジェニックマウスなどの、トランスジェニックまたはトランスクロモソーマル非ヒト動物から得られたB細胞を、不死化細胞に融合させたものである。
【0043】
本明細書で使用する「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラスを指し、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgA2、IgE、およびIgM、ならびにそれらの任意のアロタイプ、例えばIgG1m(z)、IgG1m(a)、IgG1m(x)、IgG1m(f)など、およびそれらの混合アロタイプ、例えばIgG1m(za)、IgG1m(zax)、IgG1m(fa)などを含む(例えば、de Lange, Experimental and Clinical Immunogenetics 1989;6(1):7-17を参照されたい)。
【0044】
さらに、各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせることができる。本明細書で使用する用語「混合アイソタイプ」は、あるアイソタイプの構造的特徴を別のアイソタイプからの類似領域と組み合わせてハイブリッドアイソタイプを生成することによって得られる免疫グロブリンのFc領域を指す。混合アイソタイプは、次のIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA1、IgGA2、IgE、またはIgMから選択される2つ以上のアイソタイプからなる配列を有するFc領域を含み、それにより、例えばIgG1/IgG3、IgG1/IgG4、IgG2/IgG3、IgG2/IgG4、またはIgG1/IgAなどの組み合わせを生成することができる。
【0045】
本明細書で使用するときの用語「全長抗体」とは、問題のアイソタイプの野生型抗体に通常見られるものに対応する全ての重鎖および軽鎖の定常ドメインと可変ドメインを含む抗体(例えば、親抗体またはバリアント抗体)を指す。
【0046】
本明細書で使用するときの「全長2価単一特異性モノクローナル抗体」とは、1対の同一のHCと1対の同一のLCによって形成された2価の単一特異性抗体(例えば、親抗体またはバリアント抗体)を指し、定常ドメインと可変ドメインは問題の特定のアイソタイプの抗体に通常見られるものに対応する。
【0047】
本明細書で使用する「抗原結合領域」、「結合領域」または抗原結合ドメインという用語は、抗原に結合することができる抗体の領域を指す。この結合領域は、典型的には、抗体のVHドメインとVLドメインによって定義され、これらのドメインは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域の間に挟まれた、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性の領域(つまり、配列および/または構造的に定義されたループの形態が超可変性であり得る超可変領域)にさらに細分することができる。抗原は、例えば細胞上に存在する、ポリペプチドなどの、任意の分子であり得る。
【0048】
本明細書で使用する用語「標的」は、抗体の抗原結合領域が結合する分子を指す。標的には、産生された抗体に対する任意の抗原が含まれる。用語「抗原」および「標的」は、抗体との関連で交換可能に使用することができ、本発明の任意の局面または態様に関して同じ意味および目的を構成し得る。
【0049】
用語「エピトープ」は、抗体可変ドメインに特異的に結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは通常、アミノ酸、糖側鎖、またはそれらの組み合わせなどの分子の表面グルーピングからなり、通常は特定の3次元構造特性ならびに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で前者への結合は失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープのイムノドミナント成分とも呼ばれる)および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
【0050】
本明細書で使用する「バリアント」は、1つまたは複数のアミノ酸残基が親配列または参照配列とは異なっているタンパク質配列またはポリペプチド配列を指す。バリアントは、例えば、親配列または参照配列に対して少なくとも80%、例えば、90%、95%、97%、98%、または99%の配列同一性を有し得る。さらに、または代替的に、バリアントは、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって親配列または参照配列と異なっていてもよい。したがって、本明細書で交換可能に使用される「バリアント抗体」または「抗体バリアント」は、親抗体または参照抗体と比較して、例えば、抗原結合領域、Fc領域または両方において、1つまたは複数のアミノ酸残基が異なっている抗体を指す。同様に、「バリアントFc領域」または「Fc領域バリアント」は、親または参照Fc領域と比較して、1つまたは複数のアミノ酸残基が異なるFc領域を指し、任意で、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって親または参照Fc領域アミノ酸配列と異なる。親または参照Fc領域は、典型的には、ヒト野生型抗体のFc領域であり、状況に応じて、特定のアイソタイプであり得る。バリアントFc領域は、二量体化された形態で、ホモ二量体であってもよいし、ヘテロ二量体であってもよく、例えば、二量体化Fc領域のアミノ酸配列の一方が変異を含むが、他方は親または参照野生型アミノ酸配列と同一である。Fc領域のアミノ酸配列を含む野生型(通常は親または参照配列)IgG CHおよびバリアントIgG定常領域のアミノ酸配列の例を表1に示す。
【0051】
本発明との関係において、保存的置換は、以下のアミノ酸のクラス内の置換として定義され得る:
- 酸性残基:Asp (D)およびGlu (E)
- 塩基性残基:Lys (K)、Arg (R)、およびHis (H)
- 親水性非荷電残基:Ser (S)、Thr (T)、Asn (N)、およびGln (Q)
- 脂肪族非荷電残基:Gly (G)、Ala (A)、Val (V)、Leu (L)、およびIle (I)
- 非極性非荷電残基:Cys (C)、Met (M)、およびPro (P)
- 芳香族残基:Phe (F)、Tyr (Y)、およびTrp (W)
【0052】
代替の保存的アミノ酸残基置換クラス:
1. A S T
2. D E
3. N Q
4. R K
5. I L M
6. F Y W
【0053】
アミノ酸残基の代替の物理的および機能的分類:
- アルコール基含有残基:SおよびT
- 脂肪族残基:I、L、V、およびM
- シクロアルケニル関連残基:F、H、W、およびY
- 疎水性残基:A、C、F、G、H、I、L、M、R、T、V、W、およびY
- 負に荷電した残基:DおよびE
- 極性残基:C、D、E、H、K、N、Q、R、S、およびT
- 正に荷電した残基:H、K、およびR
- 小さな残基:A、C、D、G、N、P、S、T、およびV
- 非常に小さな残基: A、G、およびS
- ターン形成に関与する残基:A、C、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、P、およびT
- 柔軟性のある残基:Q、T、K、S、G、N、D、E、およびR
【0054】
本明細書で使用する「配列同一性」は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要があるギャップの数と、各ギャップの長さを考慮に入れて、2つの配列によって共有される同一の位置の数の関数としての2つの配列間の同一性パーセントを指す(すなわち、相同性パーセント=同一位置の数/位置の総数×100)。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci 4, 11-17 (1988)のアルゴリズムを使用して、PAM 120 weight residue table、gap length penalty 12およびgap penalty 4を用いて、決定することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48, 444-453 (1970)のアルゴリズムを使用して決定することができる。配列アラインメントのための他のツールはインターネット上で公開されており、EMBL-EBIウェブサイトwww.ebi.ac.uk上のClustal OmegaおよびEMBOSS Needleが含まれるが、これらに限定されない。通常、デフォルト設定が使用され得る。
【0055】
本発明の文脈においては、特に指示のない限り、変異を説明するために以下の表記法が使用される:変異しているアミノ酸の名前、その後に変異している位置番号が続き、その変異が何を含むかが続く。こうして、変異が置換である場合は、前のアミノ酸を置き換えるアミノ酸の名前が含まれ、アミノ酸が欠失される場合は「*」で示され、変異が付加である場合は、付加されるアミノ酸がオリジナルのアミノ酸の後に含まれる。アミノ酸名は1文字コードであっても、または3文字コードであってもよい。したがって、例えば、430位のグルタミン酸のグリシンによる置換はE430Gと示され、430位のグルタミン酸の任意のアミノ酸による置換はE430Xと示され、430位のグルタミン酸の欠失はE430*と示され、E430位のグルタミン酸の後のプロリンの付加はE430EPと示される。
【0056】
本明細書で使用する「免疫抑制細胞」とは、例えば、エフェクターT細胞の活性を抑制しかつ/またはT細胞の増殖を阻害することによって、対象における免疫応答を抑制し得る免疫細胞を指す。そのような免疫抑制細胞の例には、制御性T細胞(Treg)、制御性B細胞(Breg)、および骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、免疫抑制性NK細胞、NKT細胞、マクロファージおよび抗原提示細胞(APC)が存在する。免疫抑制性NK細胞の表現型の一例は、CD56brightCD16-である。
【0057】
「制御性T細胞」または「Tregs」もしくは「Treg」は、他のT細胞および/または他の免疫細胞の活性を、通常はそれらの活性を抑制することによって、調節するTリンパ球を指す。Treg表現型の一例は、CD3+CD4+CD25+CD127dimである。TregはさらにFoxp3を発現する可能性がある。Tregはこの表現型に完全に制限され得ないことを理解されたい。
【0058】
「エフェクターT細胞」または「Teffs」もしくは「Teff」は、腫瘍細胞を殺傷する、および/または体内からの腫瘍細胞のクリアランスをもたらす抗腫瘍免疫応答を活性化するなど、免疫応答の機能を遂行するTリンパ球を指す。Teff表現型の例には、CD3+CD4+およびCD3+CD8+が含まれる。Teffは、IFNγ、グランザイムB、ICOSなどのマーカーを分泌、含有、または発現することができる。Teffはこれらの表現型に完全に制限され得ないことを理解されたい。
【0059】
「骨髄由来サプレッサー細胞」または「MDSCs」もしくは「MDSC」は、マクロファージ/単球マーカーCD11bおよび顆粒球マーカーGr-1/Ly-6Gを発現する造血系統の細胞の特定の集団を指す。MDSC表現型の一例は、CD11b+HLA-DR-CD14-CD33+CD15+である。MDSCはまた、典型的には、成熟抗原提示細胞マーカーMHCクラスIIおよびF480の低発現または検出不能な発現を示す。MDSCは骨髄系統の未成熟細胞であり、マクロファージ、好中球、樹状細胞、単球、顆粒球などの他の細胞タイプにさらに分化し得る。MDSCは、ヒトと動物の正常な成体骨髄に、または脾臓などの正常な造血部位に自然に見られる。
【0060】
「制御性B細胞」または「Breg」もしくは「Bregs」は、免疫応答を抑制するBリンパ球を指す。Breg表現型の一例は、CD19+CD24+CD38+である。Bregは、Bregが分泌するIL-10によって媒介されるT細胞の増殖を阻害することで、免疫応答を抑制し得る。当然ながら、他のBregサブセットが存在しており、例えば、Ding et al., (2015) Human Immunology 76: 615-621に記載されている。
【0061】
本明細書で使用する用語「エフェクター細胞」は、免疫応答のエフェクター相(effector phase)に関与する免疫細胞を指す。例示的な免疫細胞には、骨髄またはリンパ系起源の細胞、例えばリンパ球(B細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞など)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば好中球、顆粒球、マスト細胞、好塩基球などが含まれる。一部のエフェクター細胞は、Fc受容体(FcR)または補体受容体を発現して、特定の免疫機能を果たしている。いくつかの態様では、例えばナチュラルキラー細胞のようなエフェクター細胞は、ADCCを誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージ、好中球、樹状細胞、およびクッパー細胞は、標的細胞の特異的殺傷および/または免疫系の他の成分への抗原の提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与している。いくつかの態様では、ADCCは抗体駆動の古典的補体活性化によってさらに増強され、結果として、活性化されたC3フラグメントの標的細胞上への沈着をもたらし得る。C3切断産物は、骨髄細胞上に発現される補体受容体(CR)、例えばCR3、のリガンドである。エフェクター細胞上のCRによる補体フラグメントの認識は、Fc受容体媒介ADCCの増強を促進する可能性がある。いくつかの態様では、抗体駆動の古典的補体活性化は、標的細胞上にC3フラグメントを導く。これらのC3切断産物は、直接的な補体依存性細胞傷害(CDCC)を促進し得る。いくつかの態様では、エフェクター細胞は標的抗原、標的粒子または標的細胞を貪食することができるが、これは抗体結合に依存し、かつエフェクター細胞により発現されるFcγRによって媒介され得る。エフェクター細胞上の特定のFcRまたは補体受容体の発現は、サイトカインなどの体液性因子によって制御され得る。例えば、FcγRIの発現は、インターフェロンγ(IFNγ)および/またはG-CSFによってアップレギュレートされることがわかっている。この増強された発現は、標的に対するFcγRI保有細胞の細胞傷害性を増加させる。エフェクター細胞は、標的抗原を貪食したり、標的細胞を貪食または溶解したりすることができる。いくつかの態様では、抗体駆動の古典的補体活性化によって、標的細胞上にC3フラグメントがもたらされる。こうしたC3切断産物は、エフェクター細胞による直接的な貧食を促進するか、抗体媒介貧食を増強することによって間接的に促進することができる。
【0062】
本明細書で使用する用語「Fcエフェクター機能」は、ポリペプチドまたは抗体が細胞膜上の、抗原などの、その標的に結合した結果である機能を指すことを意図しており、そこでは、Fcエフェクター機能がポリペプチドまたは抗体のFc領域に依存している。Fcエフェクター機能の例には、以下が含まれる:(i)C1q結合、(ii)補体活性化、(iii)補体依存性細胞傷害(CDC)、(iv)抗体依存性細胞傷害(ADCC)、(v)Fcγ受容体結合、(vi)抗体依存性細胞貧食(ADCP)、(vii)補体依存性細胞傷害(CDCC)、(viii)補体増強細胞傷害、(ix)抗体によって媒介されるオプソニン化抗体の補体受容体への結合、(x)オプソニン化、(xi)トロゴサイトーシス、および(xii)(i)~(xi)のいずれかの組み合わせ。
【0063】
本明細書で使用する用語「補体活性化」とは、表面上の抗体-抗原複合体に結合するC1と呼ばれる大きな高分子複合体によって開始される古典的補体経路の活性化を指す。C1は、6つの認識タンパク質C1qとセリンプロテアーゼのヘテロ四量体C1r2C1s2で構成される複合体である。C1は、C4のC4aとC4bへの切断、およびC2のC2aとC2bへの切断から始まる一連の切断反応を伴う、古典的補体カスケードの初期イベントにおける最初のタンパク質複合体である。C4bは沈着し、C2aと共にC3コンバターゼと呼ばれる酵素活性コンバターゼを形成する;C3コンバターゼは補体成分C3をC3bとC3aに切断し、C5コンバターゼを形成する。このC5コンバターゼはC5をC5aとC5bに分割し、最後の成分が膜に沈着する;それが次に補体活性化の後期イベントを引き起こし、そのイベントでは終末補体成分C5b、C6、C7、C8、C9が集合して膜侵襲複合体(membrane attack complex)(MAC)になる。この補体カスケードの結果、細胞膜に細孔が形成され、補体依存性細胞傷害(CDC)としても知られる細胞の溶解が起こる。補体活性化は、C1qの効力、CDC動態CDCアッセイ(WO2013/004842、WO2014/108198に記載される)を用いて、またはBeurskens et al., J Immunol April 1, 2012 vol. 188 no. 7, 3532-3541に記載される方法Cellular deposition of C3b and C4bにより評価することができる。
【0064】
本明細書で使用する用語「補体依存性細胞傷害」(CDC)とは、抗体が結合している細胞の溶解をもたらす抗体媒介補体活性化のプロセスを指すことを意図しており、このプロセスは、理論に拘束されるものではないが、いわゆる膜侵襲複合体(MAC)の集合によって形成された膜の細孔の結果であると考えられる。CDCを評価するための適切なアッセイは当技術分野で知られており、例えば、実施例3に記載されるような、正常ヒト血清を補体源として使用するインビトロアッセイが含まれる。CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞の最大溶解、またはEC50値を決定するためのアッセイの非限定的な例は、以下の段階を含み得る:
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり0.2%のBSAを添加した培地40μLに約100,000個のCD38発現細胞をプレーティングする段階;
(b)細胞を40μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に20分間プレインキュベートする段階;
(c)各ウェルを20%のプールした正常ヒト血清と共に37℃で45分間インキュベートする段階;
(d)生死判別色素を添加し、フローサイトメーターで細胞溶解の割合を測定する段階;
(e)最大溶解を決定し、かつ/または非線形回帰を用いてEC50値を計算する段階。
【0065】
本明細書で使用する用語「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」または「抗体依存性細胞傷害」(「ADCC」)とは、結合した抗体の定常領域を認識するFc受容体を発現する細胞による抗体被覆標的細胞の殺傷メカニズムを指すことを意図している。ADCCを評価するための適切なアッセイは当技術分野で知られており、例えば、実施例4に記載のアッセイが含まれる。CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞のADCCを調べるためのアッセイの非限定的な例は、以下に記載される51Cr放出アッセイまたはレポーターアッセイの段階を含み得る。
【0066】
51 Cr放出アッセイによるADCC
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり0.2%のBSAを添加した50μLの培地に約5,000個の51Cr標識CD38発現細胞(例えば、Daudi細胞)をプレーティングする段階;
(b)50μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に細胞を15分間プレインキュベートする段階;
(c)各ウェルを、ウェルあたり500,000個の新たに分離した末梢血単核細胞(PBMC)と共に37℃で4時間インキュベートする段階;
(d)ガンマカウンターで75μLの上清中の51Crの放出量を測定する段階;
(e)細胞溶解の割合を(cpmサンプル-cpm自然溶解)/(cpm最大溶解-cpm自然溶解)として計算する段階、ここで、cpmは1分あたりのカウント数である。
【0067】
レポーターアッセイによるADCC
(a)光学的読み取りに適したマルチウェルプレート(例えば、PerkinElmer社からの384ウェルOptiPlates)で、25%の低IgG血清を添加した標準培地(例えば、RPMI 1640)に、10μL中の約5,000個のCD38発現細胞(例えば、Daudi細胞)をプレーティングする段階;
(b)各ウェルを、エフェクター細胞としてFcγRIIIa受容体、V158(高親和性)バリアント、およびホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定して発現する10μLの遺伝子操作したJurkat細胞、ならびに10μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に、37℃で6時間インキュベートする段階;
(c)各ウェルを30μLのルシフェラーゼ基質と共に室温で5分間インキュベートして、発光を測定する段階。
【0068】
本明細書で使用する用語「抗体依存性細胞貧食」(「ADCP」)とは、食細胞による内在化によって抗体被覆標的細胞を排除するメカニズムを指すことを意図している。内在化された抗体被覆標的細胞はファゴソーム(phagosome)と呼ばれる小胞内に含まれ、ファゴソームはその後1つまたは複数のリソソームと融合してファゴリソソーム(phagolysosome)を形成する。ADCPを評価するための適切なアッセイは当技術分野で知られており、例えば、エフェクター細胞としてマクロファージを用いるインビトロ細胞傷害アッセイ、およびvan BijらによりJournal of Hepatology Volume 53, Issue 4, October 2010, Pages 677-685に記載されるビデオ顕微鏡法、および実施例5に記載されるインビトロ細胞傷害アッセイが含まれる。CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞のADCPを調べるためのアッセイの非限定的な例は、以下の段階を含み得る:
(a)新たに分離した単球を、GM-CSF含有培地で5日間インキュベートすることにより、マクロファージに分化させる段階;
(b)マルチウェルプレートでウェルあたり約100,000個のマクロファージをGM-CSF含有樹状細胞培地にプレーティングする段階;
(c)ウェルあたり20,000個の一般的な蛍光膜色素で標識したCD38抗体オプソニン化CD38発現細胞(例えば、Daudi細胞)を37℃で45分間添加する段階;
(d)フローサイトメーターでCD14陽性、CD19陰性、膜色素陽性のマクロファージの割合を測定する段階。
【0069】
本明細書で使用する「トロゴサイトーシス」とは、ドナー細胞から、エフェクター細胞などのアクセプター細胞への、細胞表面分子の移動を特徴とするプロセスを指す。典型的なアクセプター細胞には、T細胞、B細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、好中球、およびNK細胞が含まれる。細胞表面分子、例えばCD38などの、ドナー細胞からアクセプター細胞へのトロゴサイトーシスを介した移動はまた、抗体-抗原複合体のドナー細胞からアクセプター細胞への移動、すなわち、抗体が細胞表面分子に結合している抗体-抗原複合体の移動をもたらすことができる。特に、アクセプター細胞がFcγ受容体(FcγR)を発現するエフェクター細胞である場合は、特殊な形態のトロゴサイトーシスが発生する可能性がある;こうしたアクセプター細胞は、通常は抗体のFc領域にFcγRが結合した後、ドナー細胞上の標的抗原に結合した特定の抗体から成るドナー細胞関連免疫複合体を取り込んで、内在化し得る。トロゴサイトーシスを評価するための適切なアッセイは当技術分野で知られており、例えば、実施例8に記載のアッセイが含まれる。CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞のトロゴサイトーシスを調べるためのアッセイの非限定的な例は、以下を含む。
【0070】
トロゴサイトーシス(Daudi細胞):
(a')新たに分離した単球を、5日間のGM-CSFにより、マクロファージに分化させる段階;
(b')ウェルあたり約100,000個のマクロファージをGM-CSF含有樹状細胞培地にプレーティングする段階;
(c')ウェルあたり約20,000個の、一般的な蛍光膜色素で標識した、CD38抗体オプソニン化Daudi細胞を37℃で45分間添加する段階;
(d')フローサイトメーターでDaudi細胞上のCD38発現を測定する段階、ここで、対照と比較してCD38抗体オプソニン化Daudi細胞上のCD38の減少は、トロゴサイトーシスを示す。
【0071】
トロゴサイトーシス(Treg):
(a)細胞培養培地に、ウェルあたり約500,000個の新たに分離したPBMCを37℃で一晩プレーティングする段階;
(b)ウェルあたり約100,000個の、一般的な蛍光細胞内アミン色素で標識した、CD38抗体オプソニン化Tregを37℃で一晩添加する段階;および
(c)フローサイトメーターでTreg上のCD38発現を測定する段階であって、対照と比較して、CD38抗体オプソニン化Treg上のCD38の減少はトロゴサイトーシスを示す、段階。
【0072】
対照は、問題になっている研究またはアッセイの特定の目的に基づいて、当業者により選択され得る。しかし、対照の非限定的な例としては、(i)抗体の非存在、および(ii)アイソタイプ対照抗体が挙げられる。アイソタイプ対照抗体の一例は、表1に記載されるVH配列とVL配列を有する抗体b12である。本明細書に記載の抗体バリアントのトロゴサイトーシス効果を評価することが望まれるいくつかの態様では、対照は、(iii)異なる抗原結合領域および/もしくは異なるFc領域を有する親抗体または参照抗体であり得る。
【0073】
いくつかの態様では、段階(b)において、蛍光細胞内アミン色素に加えて、またはその代わりに、Tregは一般的な蛍光膜色素で標識される。
【0074】
いくつかの態様では、上で概説したトロゴサイトーシスアッセイの段階(d’)および(c)において、ドナー細胞上のCD38抗体の減少も測定され得る。例えば、CD38抗体がヒトIgG(huIgG)抗体である場合、二次抗体を用いてhuIgGを検出することができる。
【0075】
Daudi細胞(ATCC CCL-213)のほかに、第1のアッセイに適した腫瘍細胞には、表2に記載されるもの、特に高いCD38発現を有するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
Tregのほかに、第2のアッセイに適したCD38発現細胞には、例えば、NK細胞、B細胞、T細胞、単球などの免疫細胞、および表2に記載される腫瘍細胞、特に低いCD38発現レベルを有するものが含まれる。
【0077】
本明細書で使用する用語「ベクター」は、ベクターに連結された核酸セグメントの転写を誘導することができる核酸分子を指すことを意図している。ベクターの1つのタイプは「プラスミド」であり、これは環状の二本鎖DNAループの形をしている。別のタイプのベクターはウイルスベクターであり、この場合には核酸セグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある種のベクターは、そのベクターが導入された宿主細胞内で自律複製する能力がある(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーマル哺乳動物ベクター)。その他のベクター(例えば、非エピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、そのベクターに機能的に連結された遺伝子の発現を誘導する能力がある。そのようなベクターは、本明細書では「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、プラスミドの形をしていることが多い。本明細書では、プラスミドは最も一般的に使用されるベクターの形であるため、「プラスミド」と「ベクター」は交換可能に使用され得る。しかし、本発明は、同等の機能を果たす、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)などの、そのような他の形の発現ベクターを含むことを意図している。
【0078】
本明細書で使用する用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、1つまたは複数の発現ベクターが導入されている細胞を指すことを意図している。例えば、本明細書に記載の抗体バリアントのHCおよびLCは、両方とも、同じ発現ベクターによってコードされていてよく、宿主細胞はその発現ベクターでトランスフェクションされる。あるいは、本明細書に記載の抗体バリアントのHCおよびLCは、異なる発現ベクターによってコードされていてよく、宿主細胞はそれらの発現ベクターでコトランスフェクションされる。当然のことながら、「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫をも指すことを意図している。突然変異または環境の影響により、ある種の改変が後続の世代で起こり得るため、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、それにもかかわらず本明細書で使用する用語「宿主細胞」の範囲内に含まれる。組換え宿主細胞には、例えば、CHO細胞、HEK-293細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、リンパ球細胞などのトランスフェクトーマ、大腸菌(E. coli)などの原核細胞、および植物細胞、真菌などの他の真核細胞宿主が含まれる。
【0079】
本明細書で使用する用語「トランスフェクトーマ」(transfectoma)は、Abまたは標的抗原を発現する組換え真核宿主細胞、例えば、CHO細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、HEK-293細胞、植物細胞、または酵母細胞などの真菌を含む。
【0080】
用語「治療」は、症状または病状を緩和、改善、阻止または根絶(治癒)することを目的として、有効量の本発明の治療上活性な抗体バリアントを投与することを指す。
【0081】
用語「有効量」または「治療上有効な量」は、所望の治療結果を達成するための、必要な投与量および期間にわたる、有効な量を指す。抗体の治療上有効な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を引き出す抗体の能力などの要因により変化し得る。治療上有効な量はまた、抗体バリアントの治療上有益な効果がその毒性または有害作用に上回る量である。
【0082】
発明の具体的な態様
上述したように、本発明は、抗CD38抗体Cのバリアントである抗体に関し、特に、ヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基に変異を含むバリアントFc領域を含む抗体に関する。
【0083】
実施例3に示すように、E430G変異を導入すると、試験した3種全てのCD38 IgG1抗体、A、BおよびCに関して、CDCが増強された。しかし、驚くべきことに、CDC増強の大きさは、試験した抗体クローン間で異なっていた。E430G変異なしで、IgG1-BはすでにCDCの良好な誘導因子であったが、IgG1-CとIgG1-Aは、それぞれCDCを中程度に誘導するか、またはCDCを誘導しなかった。しかしながら、E430G変異の導入後、IgG1-C-E430GはIgG1-B-E430Gと比較してより効果的なCDCを誘導した。特に、CD38発現レベルが低い腫瘍細胞およびT制御性細胞では、IgG1-C-E430GのEC50値はIgG1-B-E430GのEC50値よりも低かった。
【0084】
さらに、本発明による抗体バリアントは、ADCCをも実証することができる。例えば、実施例4に示すように、IgG1-Cは、51Cr放出アッセイでIgG1-Bと比較してより高い最大溶解パーセントを達成し、かつIgG1-Bと比較してADCCレポーターアッセイでFcγRIIIa結合の増加を達成した。E430G変異の導入は、3種全ての抗体について、51Cr放出アッセイで最大溶解パーセントを減少させ、かつADCCレポーターアッセイでFcγRIIIa結合を減少させた。IgG1-C-E430Gは、IgG1-B-E430GおよびIgG1-A-E430Gと比較して51Cr放出アッセイで同様の最大溶解パーセントを誘導し、かつADCCレポーターアッセイで同様のFcγRIIIa結合を誘導した。
【0085】
さらに、CD38シクラーゼ活性を阻害する抗CD38抗体の能力は、本発明による抗体バリアントの形態で保持され得る。例えば、実施例7に示すように、IgG1-C-E430Gは、IgG1-B-E430Gと比較してCD38シクラーゼ活性のより強い阻害を示し、前者は約40%の阻害を、後者は約25%の阻害をもたらした。理論に限定されるものではないが、CD38シクラーゼ活性のより強力な阻害は、細胞質ゾルからのCa2+動員を調節する強力なセカンドメッセンジャーcADPRの産生を減少させる可能性があり、ひいては、Ca2+動員の低下と、増殖およびインスリン分泌などのさまざまな生物学的プロセスを制御する下流経路のシグナル伝達の減少につながる可能性がある。それゆえ、理論に限定されるものではないが、CD38シクラーゼ活性のより強力な阻害は、免疫応答を抑制する免疫サプレッサー細胞の能力に影響を与える、例えば低下させる、可能性がある。
【0086】
調節可能な他の機能性には、トロゴサイトーシスがある。具体的には、Daudi細胞上のCD38発現は、マクロファージおよびCD38抗体との共培養によって大幅に低下した;ただし、CD38発現の低下は、E430G変異型抗体で最も強く見られた(実施例8)。驚いたことに、PBMCと共培養したT制御性細胞上のCD38発現は、E430G変異型CD38抗体とのインキュベーション後にのみ低下した;T制御性細胞を抗体Bとインキュベートした場合には、CD38発現の低下が見られなかった。理論に限定されるものではないが、CD38を発現する非がん性免疫細胞、特に免疫抑制細胞、のトロゴサイトーシスを誘導する本発明による抗体バリアントの能力は、腫瘍細胞がCD38を発現しているか否かにかかわらず、がん患者において腫瘍細胞に対する免疫応答の増加をもたらす可能性がある。
【0087】
本発明の抗体バリアントはまた、実施例9に示すように、インビボで腫瘍細胞を殺傷できる可能性があり、実施例9では、IgG1-C-E430Gの週2回の投与が、最高のCD38 mRNA発現を有する試験した5つのDLBCL PDXモデルのうち2つで腫瘍増殖を減少させた。
【0088】
したがって、一局面では、本発明は、ヒトCD38に結合する抗体バリアントを提供し、該抗体バリアントは、表1にSEQ ID NO:2 (VH-3003-C_CDR1)、SEQ ID NO:3 (VH-3003-C_CDR2)、SEQ ID NO:4 (VH-3003-C_CDR3)、SEQ ID NO:6 (VL-3003-C_CDR1)、AAS (VL-3003-C_CDR2)およびSEQ ID NO:7 (VL-3003-C_CDR3)として記載される抗体CのVHおよびVL CDRを含む抗原結合領域と、ヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を含むバリアントFc領域とを含む。
【0089】
一態様では、ヒトCD38に結合する抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む、抗原結合領域;および
(b)ヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を含む、バリアントFc領域(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)
を含む。
【0090】
さらなる態様では、前記抗体バリアントはさらに、または代替的に、抗原結合領域またはFc領域の特定のアミノ酸配列もしくは特定の変異によって、および/またはエフェクター機能を誘導するかもしくはCD38酵素活性を調節するその能力によって、特徴付けられる。これらについては、以下でさらに説明する。
【0091】
抗原結合領域および可変領域
抗原結合領域は、VH領域およびVL領域などの、CD38への特異的結合を可能にする1つまたは複数の抗体可変ドメインを含む。同様に、重鎖および軽鎖はそれぞれVH領域およびVL領域を含む。以下において、抗原結合領域の配列への言及は、本発明によるバリアント抗体の重鎖および/または軽鎖の配列にも同様に適用され得る。有利には、CDR、VH領域および/またはVL領域は、表1に記載されるように、抗体Cのそれらと同様または同一である。
【0092】
一つの好ましい態様では、抗原結合領域、ならびに/または重鎖および/もしくは軽鎖は、SEQ ID NO:2 (VH-3003-C_CDR1)、SEQ ID NO:3 (VH-3003-C_CDR2)、SEQ ID NO:4 (VH-3003-C_CDR3)、SEQ ID NO:6 (VL-3003-C_CDR1)、AAS (VL-3003-C_CDR2)およびSEQ ID NO:7 (VL-3003-C_CDR3)に記載される、抗体CのCDRを含む。別の好ましい態様では、VHおよびVL配列は抗体Cのそれらの配列であり、すなわち、VH領域はSEQ ID NO:1 (VH-3003-C)の配列を含み、かつVL領域はSEQ ID NO:5 (VL-3003-C)の配列を含む。
【0093】
しかしながら、当技術分野では周知であるように、例えば、抗体のその標的抗原に対する親和性を高めるために、その潜在的な免疫原性を減少させるために、かつ/または宿主細胞によって発現される抗体の産生量を増やすために、抗体のVHおよびVLを変異させることができる。したがって、いくつかの態様では、抗体CのCDR、VHおよび/またはVL配列のバリアントを含む抗体、特に抗体CのVLおよび/またはVH領域の機能的バリアントを含む抗体もまた企図される。機能的バリアントは、例えば1つまたは複数のCDRにおいて、親VHおよび/またはVL配列と比較して1つまたは複数のアミノ酸が異なっていてよいが、その抗原結合領域は、親抗体の親和性および/または特異性の少なくともかなり大きな割合(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)をまだ保持している。典型的には、そのような機能的バリアントは、親配列に対してかなりの配列同一性を保持する。例示的なバリアントには、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって、それぞれの親VHまたはVL領域と異なるものが含まれる。例示的なバリアントには、主に保存的アミノ酸置換によって親配列のVHおよび/またはVLおよび/またはCDR領域と異なるものが含まれる;例えば、バリアントのアミノ酸置換の12、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個は、保存的であり得る。ある場合には、抗体CのVHおよび/またはVLのバリアントを含む抗体は、親抗体よりも高い親和性および/または特異性を伴う可能性がある。本発明の目的のためには、CD38への抗体の結合において該抗体の親和性および特異性を保持させるかまたは改善させるVHおよび/またはVLバリアントが特に好ましい。
【0094】
例えば、WO 2011/154453 A1は、適切なバリアントCDR、VHおよびVL領域のアミノ酸配列を含むCD38抗体を開示しており、そこでは、特定の位置のアミノ酸残基が表1に示される抗体CのCDR、VHおよびVLのものとは異なっている。かくして、これらの位置は、CD38への抗体の結合において該抗体の親和性および特異性を保持または改善しつつ、CDR、VHおよびVL配列の変異を行うことができる候補位置を表している。特に、抗体CのVHおよびVLの機能的バリアントにおいて変異され得るVHおよびVL CDR中の位置は、SEQ ID NO:40~43に示される。
【0095】
したがって、いくつかの態様では、1つまたは複数の特定の変異は、SEQ ID NO:40~43に記載されるCDRにおいて行われ、すなわち、VHおよび/またはVL領域の任意の機能的バリアントは、SEQ ID NO:40 (VH CDR1)、SEQ ID NO:41 (VH CDR2)、SEQ ID NO:42 (VH CDR3)、およびSEQ ID NO:44 (VL CDR3)の1つまたは複数に記載されるCDRの変異を含む。そのような抗体バリアントのVHおよびVL領域は、任意で、抗体Cの元のフレームワーク領域を維持していてよい。一つの特定の態様では、抗原結合領域は、X1がSであるSEQ ID NO:40 (VH CDR1)、X1がR、X2がK、X3がAであるSEQ ID NO:41 (VH CDR2)、X1がA、X2がD、X3がVであるSEQ ID NO:42 (VH CDR3)、SEQ ID NO:43 (VL CDR1)、AAS (VL CDR2)、およびX1がSであるSEQ ID NO:44 (VL CDR3)に記載されるCDRを含む。一つの特定の態様では、抗原結合領域は、X1がRであるSEQ ID NO:40 (VH CDR1)、X1がV、X2がK、X3がTであるSEQ ID NO:41 (VH CDR2)、X1がT、X2がA、X3がFであるSEQ ID NO:42 (VH CDR3)、SEQ ID NO:43 (VL CDR1)、AAS (VL CDR2)、およびX1がNであるSEQ ID NO:44 (VL CDR3)に記載されるCDRを含む。一つの特定の態様では、抗原結合領域は、X1がSであるSEQ ID NO:40 (VH CDR1)、X1がR、X2がK、X3がTであるSEQ ID NO:41 (VH CDR2)、X1がA、X2がD、X3がVであるSEQ ID NO:42 (VH CDR3)、SEQ ID NO:43 (VL CDR1)、AAS (VL CDR2)、およびX1がSであるSEQ ID NO:44 (VL CDR3)に記載されるCDRを含む。一つの特定の態様では、抗原結合領域は、X1がRであるSEQ ID NO:40 (VH CDR1)、X1がV、X2がK、X3がVであるSEQ ID NO:41 (VH CDR2)、X1がT、X2がA、X3がFであるSEQ ID NO:42 (VH CDR3)、SEQ ID NO:43 (VL CDR1)、AAS (VL CDR2)、およびX1がNであるSEQ ID NO:44 (VL CDR3)に記載されるCDRを含む。
【0096】
いくつかの態様では、変異はCDRにおいて行われず、すなわち、VHおよび/またはVL領域の機能的バリアントは、抗体CのVH CDR1~3配列またはVL CDR1~3配列を表す、それぞれSEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:6、AAS、SEQ ID NO:7に示されるCDR配列を保持する。
【0097】
一態様では、VH領域は、SEQ ID NO:1、またはSEQ ID NO:1に対して少なくとも80%の同一性、例えば90%、95%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、VHは、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって、SEQ ID NO:1と異なっていてよい。一態様では、VH領域は、12個以下、例えば5個以下、例えば5、4、3、2または1個のアミノ酸置換でのみSEQ ID NO:1と異なる。アミノ酸置換は、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるような保存的アミノ酸置換であり得る。特定の態様では、変異はVH CDRにおいて行われず、すなわち、バリアントVHは、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4に示される抗体CのCDR配列を保持する。
【0098】
一態様では、VL領域は、SEQ ID NO:5、またはSEQ ID NO:5に対して少なくとも80%の同一性、例えば90%、95%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。例えば、VLは、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって、SEQ ID NO:5と異なっていてよい。一態様では、VL領域は、12個以下、例えば5個以下、例えば5、4、3、2または1個のアミノ酸置換でのみSEQ ID NO:5と異なる。アミノ酸置換は、例えば、本明細書の他の箇所に記載されるような保存的アミノ酸置換であり得る。特定の態様では、変異はVL CDRにおいて行われず、すなわち、バリアントVHは、SEQ ID NO:6、AAS、SEQ ID NO:7に示される抗体CのCDR配列を保持する。
【0099】
一態様では、抗体バリアントは、SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域とSEQ ID NO:5の配列を含むVL領域とを含む。
【0100】
バリアントFc領域、およびCH領域
ヒトIgG1重鎖中のE430、E345、およびS440に対応する位置のアミノ酸残基の変異(該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)は、CDCを誘導する抗体の能力を向上させることができる(例えば、実施例3を参照)。理論に拘束されるものではないが、これらの位置の1つまたは複数のアミノ酸を置換することにより、抗体のオリゴマー化が刺激され、それにより、例えば、C1q結合、補体活性化、CDC、ADCP、内在化、またはインビボ効力をもたらし得る他の関連する機能を増加させるように、エフェクター機能を調節することができると考えられる。
【0101】
本発明は、抗原結合領域とバリアントFc領域とを含むバリアント抗体に関する。
【0102】
特定の態様では、ヒトCD38に結合する抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる);および
(b)SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む、軽鎖
を含む。
【0103】
他の特定の態様では、ヒトCD38に結合する抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:1を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖(前記アミノ酸残基の番号付けはEUインデックスに従う);および
(b)SEQ ID NO:5を含むVL領域を含む、軽鎖
を含む。
【0104】
本発明のバリアント抗体は、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するバリアントFc領域またはヒトIgG1 CH領域を含む。以下において、Fc領域の変異への言及は、ヒトIgG1 CH領域の変異にも同様に適用され得る。
【0105】
本明細書に記載されるように、Fc領域において変異されるべきアミノ酸の位置は、EUインデックスに従って番号付けされる場合、天然に存在する(野生型)ヒトIgG1重鎖におけるその位置に関連して(すなわち、「対応して」)提供され得る。したがって、親Fc領域がすでに1つまたは複数の変異を含む場合、および/または親Fc領域が例えばIgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域を含む場合、例えばEUインデックスに従って番号付けされたヒトIgG1重鎖のE430などの、アミノ酸残基に対応するアミノ酸の位置は、アラインメントによって決定することができる。具体的には、親Fc領域を野生型ヒトIgG1重鎖配列とアラインメントして、ヒトIgG1重鎖配列中のE430に対応する位置の残基を同定する。この目的には、表1に記載される異なるヒトIgG1アロタイプのいずれか1つを含む、任意の野生型ヒトIgG1定常領域アミノ酸配列が有用であり得る。これは図1に示されており、この図は、2つの異なるヒトIgG1アロタイプ(IgG1m(f)およびIgG1m(a))と野生型ヒトIgG2、IgG3およびIgG4との間のアラインメントを示しており、特にヒトIgG1重鎖の残基P247からK447に対応するセグメントのアラインメントを示している;前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0106】
したがって、このセクションの残りの段落および本明細書の他の箇所において、特に明記しない限り、または文脈と矛盾しない限り、言及されるアミノ酸位置は、野生型ヒトIgG重鎖のアミノ酸残基に対応するものであり、その場合に、アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0107】
別個のかつ特定の態様では、バリアントFc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、E430、E345およびS440のうちの1つのみに、E430とE345の両方に、E430とS440の両方に、E345とS440の両方に、またはE430、E345およびS440の全てに変異を含む。いくつかの態様では、バリアントFc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、E430、E345およびS440のうちの1つのみに、E430とE345の両方に、E430とS440の両方に、E345とS440の両方に、またはE430、E345およびS440の全てに変異を含むが、ただし、S440における変異はS440WまたはS440Yである。他の別個のかつ特定の態様では、前記変異はアミノ酸置換である。一態様では、変異は、E430X、E345XおよびS440Xのうちの1つのみ、E430XとE345Xの両方、E430XとS440Xの両方、E345XとS440Xの両方、またはE430X、E345XおよびS440Xの全てのアミノ酸置換であるが、ただし、S440Xの変異はS440YまたはS440Wであることが好ましい。より好ましくは、E430X、E345XおよびS440X変異は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440YおよびS440Wから別個に選択される。
【0108】
一態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440YおよびS440Wからなる群より選択される。
【0109】
好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E430G、E345K、E430SおよびE345Qに対応する群から選択される。
【0110】
一態様では、変異は、例えばE430G、E430S、E430F、またはE430Tに対応するものから選択されるアミノ酸置換E430Xなどの、E430に対応するアミノ酸残基の変異である。一つの好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E430Gを含む。別の好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異はE430Sを含み、任意で、E345およびS440に対応するアミノ酸残基では変異が行われない。特に好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異はE430Gからなり、すなわち、E345およびS440に対応するアミノ酸残基では変異が行われない。
【0111】
一態様では、変異は、例えばE345K、E345Q、E345RおよびE345Yに対応するものから選択されるアミノ酸置換E345Xなどの、E345に対応するアミノ酸残基の変異である。一つの好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E345Kを含む。別の好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異はE345Qを含み、任意で、E430およびS440に対応するアミノ酸残基では変異が行われない。特に好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異はE345Kからなり、すなわち、E430およびS440に対応するアミノ酸残基では変異が行われない。
【0112】
一態様では、変異は、典型的にはS440YおよびS440Wに対応するものから選択されるアミノ酸置換S440Xなどの、S440に対応するアミノ酸残基の変異である。一つの好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異はS440Wを含み、任意で、E430およびE345に対応するアミノ酸残基では変異が行われない。一つの好ましい態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異はS440Yを含み、任意で、E430およびE345に対応するアミノ酸残基では変異が行われない。
【0113】
好ましくは、抗体バリアントは、前記セクションのいずれかに記載のバリアントFc領域を含み、該バリアントFc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のFc領域からなる群より選択されるヒトIgGのFc領域のバリアントである。すなわち、E430、E345およびS440に対応する1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のFc領域からなる群より選択されるヒトIgGのFc領域である親Fc領域において行われる。好ましくは、親Fc領域は、天然に存在する(野生型)ヒトIgG Fc領域、例えば、ヒト野生型IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4 Fc領域、またはそれらの混合アイソタイプである。したがって、バリアントFc領域は、(E430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の)列挙された変異を除いて、ヒトIgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4アイソタイプ、またはそれらの混合アイソタイプであり得る。
【0114】
一態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、野生型ヒトIgG1アイソタイプである。
【0115】
したがって、バリアントFc領域は、(E430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の)列挙された変異を除いて、ヒトIgG1 Fc領域であり得る。
【0116】
特定の態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、ヒト野生型IgG1m(f)アイソタイプである。
【0117】
特定の態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、ヒト野生型IgG1m(z)アイソタイプである。
【0118】
特定の態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、ヒト野生型IgG1m(a)アイソタイプである。
【0119】
特定の態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、ヒト野生型IgG1m(x)アイソタイプである。
【0120】
特定の態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、混合アロタイプのヒト野生型IgG1、例えば、IgG1m(za)、IgG1m(zax)、IgG1m(fa)などである。
【0121】
したがって、バリアントFc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、(E430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の)列挙された変異を除いて、ヒトIgG1m(f)、IgG1m(a)、IgG1m(x)、IgG1m(z)アロタイプ、またはそれらのいずれか2つ以上の混合アロタイプであり得る。
【0122】
特定の態様では、親Fc領域および/またはヒトIgG1 CH領域は、ヒト野生型IgG1m(za)アイソタイプである。
【0123】
特定の態様では、親Fc領域は、ヒト野生型IgG2アイソタイプである。
【0124】
特定の態様では、親Fc領域は、ヒト野生型IgG3アイソタイプである。
【0125】
特定の態様では、親Fc領域は、ヒト野生型IgG4アイソタイプである。
【0126】
野生型ヒトIgGアイソタイプおよびIgG1アロタイプの具体的な例のCH領域アミノ酸配列は、表1に示される。いくつかの態様では、親Fc領域は、そのような野生型CH領域アミノ酸配列のCH2-CH3、または任意で、ヒンジ-CH2-CH3セグメントを含む。
【0127】
したがって、特定の態様では、親Fc領域は、EU番号付けに従って、ヒトIgG1重鎖の231-447に対応するアミノ酸残基を含むヒト野生型IgG1アイソタイプである。例えば、親Fc領域は、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23からなる群より選択される配列のアミノ酸残基114から330(直接番号付け)を含み得る。特定の態様では、親Fc領域は、EU番号付けに従って、ヒトIgG1重鎖の216-447に対応するアミノ酸残基を含むヒト野生型IgG1アイソタイプである。例えば、親Fc領域は、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22およびSEQ ID NO:23からなる群より選択される配列のアミノ酸残基99から330(直接番号付け)を含み得る。治療用抗体の生産について本明細書の他の箇所で説明するように、C末端アミノ酸K447は、欠失または除去されることもある。それゆえ、親Fc領域は、SEQ ID NO:45のアミノ酸残基114から329(直接番号付け)またはアミノ酸残基99から329(直接番号付け)を含み得る。
【0128】
特定の態様では、バリアントFc領域は、EU番号付けに従って、ヒトIgG1重鎖の231-447に対応するアミノ酸残基を含むヒト野生型IgG1アイソタイプのバリアントである。例えば、バリアントFc領域は、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33からなる群より選択される配列のアミノ酸残基114から330(直接番号付け)を含み得る。別の態様では、バリアントFc領域は、SEQ ID NO: 46のアミノ酸残基114から329(直接番号付け)を含み得る。
【0129】
特定の態様では、バリアントFc領域は、EU番号付けに従って、ヒトIgG1重鎖の216-447に対応するアミノ酸残基を含むヒト野生型IgG1アイソタイプのバリアントである。例えば、バリアントFc領域は、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32およびSEQ ID NO:33からなる群より選択される配列のアミノ酸残基99から330(直接番号付け)を含み得る。別の態様では、バリアントFc領域は、SEQ ID NO: 46のアミノ酸残基99から329(直接番号付け)を含み得る。
【0130】
したがって、本発明は、ヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:19(IgGm(za))を含むヒトIgG1 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、に適用することができる。それゆえ、ヒトIgG1 CH領域は、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:19の配列を含み得る。
【0131】
本発明はまた、ヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:20 (IgGm(f))またはSEQ ID NO:45を含むヒトIgG1 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。それゆえ、ヒトIgG1 CH領域は、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:20の配列を含み得る。別の態様では、ヒトIgG1 CH領域は、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:45の配列を含み得る。
【0132】
本発明はまた、ヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:21 (IgGm(z))を含むヒトIgG1 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。それゆえ、ヒトIgG1 CH領域は、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:21の配列を含み得る。
【0133】
本発明はまた、ヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:22 (IgGm(a))を含むヒトIgG1 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。それゆえ、ヒトIgG1 CH領域は、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:22の配列を含み得る。
【0134】
本発明はまた、ヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:23 (IgG1m(x))を含むヒトIgG1 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。それゆえ、ヒトIgG1 CH領域は、列挙された変異を除いて、SEQ ID NO:23の配列を含み得る。
【0135】
他の別個のかつ特定の態様では、ヒトIgG1 CH領域は、SEQ ID NO:24~SEQ ID NO:33およびSEQ ID NO:45からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0136】
特定の態様では、ヒトIgG1 CH領域は、SEQ ID NO:24 (IgG1m(f)-E430G)またはSEQ ID NO:46を含み、任意で、軽鎖はSEQ ID NO:37を含むCLを含む。
【0137】
特定の態様では、抗体バリアントは、アミノ酸配列が同一である2つのHCと、アミノ酸配列が同一である2つのLCとを含む単一特異性抗体である。
【0138】
本発明はまた、ヒトIgG2重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:34を含むヒトIgG2 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG2重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。
【0139】
本発明はまた、ヒトIgG3重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:35を含むヒトIgG3 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG3重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。
【0140】
本発明はまた、ヒトIgG4重鎖を有する抗体分子、例えば、SEQ ID NO:36を含むヒトIgG4 CH領域のアミノ酸配列を含むヒトIgG4重鎖を有する抗体分子、にも適用することができる。
【0141】
しかしながら、1つまたは複数のさらなる変異、すなわち、EUインデックスに従って番号付けしたときにヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応するアミノ酸残基以外の1つまたは複数の他のアミノ酸残基の変異、を含むバリアントFc領域もまた、本明細書に開示される抗体バリアントとして企図される。さらに、または代替的に、Fc領域は混合アイソタイプであってよく、この場合、例えば、異なるCH領域は異なるIgGアイソタイプに由来する。したがって、以下でより詳しく説明するように、親Fc領域は、そのような野生型(天然に存在する)ヒトIgG Fc領域と比較して、1つまたは複数のさらなる変異をすでに含んでいてもよく、または混合アイソタイプであってもよい。
【0142】
一態様では、E430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異が導入される親Fc領域は、例えばSEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36のいずれかに記載される、野生型ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のFc領域と比較して、1つまたは複数のさらなる変異を含むヒトIgG Fc領域である。別の方法で発現されると、E430、E345および/またはS440に変異を含むバリアントFc領域は、例えばSEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36のいずれかに記載される、参照野生型ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4のFc領域などの、参照Fc領域とは1つまたは複数のさらなる変異の点で異なることがある。例えば、E430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を除いて、バリアントFc領域は、アミノ酸残基の、12個以下の変異、例えば11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の変異、例えば置換、挿入または欠失によって、野生型Fc領域と異なっていてもよい。例えば、447位(Eu番号付け)のC末端アミノ酸Lys(K)は欠失されている可能性がある。抗体の産生に使用される一部の宿主細胞は、447位のLysを除去できる酵素を含むことがあり、そのような除去は均質ではないかもしれない。したがって、産物の均質性を高めるために、治療用抗体はC末端Lys(K)を含まずに生産され得る。C末端Lys(K)を含まない抗体を生産するための方法は、当業者に周知であり、該抗体を発現する核酸の遺伝子操作、酵素的方法、および特定の宿主細胞の使用を含む。それゆえに、例えば、親Fc領域はSEQ ID NO:45に記載の配列を含み得る。
【0143】
好ましくは、そのような1つまたは複数のさらなる変異は、本明細書に開示される抗体、すなわち、ヒトIgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を含む抗体の、CDCおよび/またはADCCを誘導する能力を低下させない。より好ましくは、そのような1つまたは複数のさらなる変異は、CDCを誘導する該抗体の能力を低下させない。最も好ましくは、そのような1つまたは複数のさらなる変異は、CDCおよびADCCのいずれかを誘導する該抗体の能力を低下させない。1つまたは複数のさらなる変異の候補は、例えば、本明細書の実施例3および4などに開示されるような、CDCまたはADCCアッセイで試験することができる。例えば、IgG1-C-E430Gなどの本明細書に記載の抗体のCDCは、CDCを誘導する抗体の能力に及ぼすさらなる変異候補の効果を確かめるために、1つまたは複数のさらなる変異の特定の候補の存在下および非存在下に、実施例3に記載のアッセイまたは次のセクションに記載のアッセイ(または同様のアッセイ)で試験することができる。同様に、IgG1-C-E430Gなどの本明細書に記載の抗体のADCCは、ADCCを誘導する抗体の能力に及ぼすさらなる変異候補の効果を確かめるために、さらなる変異の特定の候補の存在下および非存在下に実施例4に記載のアッセイまたは次のセクションに記載のアッセイ(または同様のアッセイ)で試験することができる。
【0144】
好ましくは、2つのHCと2つのLCを含む抗体バリアントにおいて、第1および第2のHCのFc領域は同一であり、結果として、二量体化形態のFc領域はホモ二量体となる。
【0145】
しかし、いくつかの態様では、2つのHCと2つのLCを含む抗体バリアントにおいて、第1のHCのFc領域は、1つまたは複数のアミノ酸が第2のHCのFc領域と異なっていてもよく、結果として、二量体化形態のFc領域はヘテロ二量体となる。例えば、IgG1重鎖中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異(該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)は、Fc領域の一方にのみ存在し得る。したがって、いくつかの態様では、一方のFc領域は、SEQ ID NO:45であるか、またはSEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35およびSEQ ID NO:36から選択されるヒト野生型IgG Fc領域であり得、他方のFc領域は、IgG1重鎖中のE430、E345およびS440に対応する群から選択される前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を除いて、同一であり得る。
【0146】
一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、ヒト抗体である。
【0147】
一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、全長抗体、例えばヒト全長抗体である。
【0148】
一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、2価抗体、例えばヒト2価抗体、例えばヒト2価全長抗体である。
【0149】
一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、モノクローナル抗体、例えばヒトモノクローナル抗体、例えばヒト2価モノクローナル抗体、例えばヒト2価全長モノクローナル抗体である。
【0150】
好ましい態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、IgG1抗体、例えば全長IgG1抗体、例えばヒト全長IgG1抗体、任意でヒトモノクローナル全長2価IgG1,κ抗体、例えばヒトモノクローナル全長2価IgG1m(f),κ抗体である。
【0151】
本発明による抗体バリアントは、有利には、同じエピトープに結合する2つの抗原結合領域を含む、2価の単一特異性フォーマットである。しかし、抗原結合領域の一方が異なるエピトープに結合する二重特異性フォーマットもまた企図される。したがって、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、文脈と矛盾しない限り、単一特異性抗体または二重特異性抗体のいずれかであり得る。
【0152】
したがって、一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、単一特異性抗体、例えばヒト単一特異性抗体、例えばヒト全長単一特異性抗体、例えばヒト全長単一特異性2価モノクローナル抗体、例えばヒト全長2価単一特異性モノクローナル抗体である。
【0153】
別の態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、列挙された変異を除いて、二重特異性抗体、例えば全長二重特異性抗体、任意で、全長二重特異性2価IgG1,κ抗体である。
【0154】
機能の調節
本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、典型的には、補体およびエフェクター細胞の存在下で、ヒトCD38を発現する標的細胞のCDC、ADCC、ADCP、Fc架橋剤の非存在下ではなくFc架橋剤の存在下でのアポトーシス、トロゴサイトーシス、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上、好ましくは全て、を誘導することができる。
【0155】
本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、典型的には、CD38の酵素活性を調節することができる。
【0156】
さらなる態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、CDC、ADCC、ADCP、Fc架橋剤の非存在下ではなくFc架橋剤の存在下でのアポトーシス、トロゴサイトーシス、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を誘導し、かつCD38の酵素活性を調節することができる。
【0157】
補体依存性細胞傷害(CDC):
一態様では、本明細書に開示される抗体バリアントは、CDCを誘導する。特に、本発明の抗体バリアントは、例えばCD38発現細胞の表面または細胞膜上の、CD38に結合した場合に、対照と比較して増大したCDCを媒介することができる。対照は、例えば、バリアント抗体におけるE430、E345および/またはS440の1つまたは複数の変異を除いて、抗体バリアントと同一のアミノ酸配列(典型的には重鎖および軽鎖アミノ酸配列)を有する参照抗体であり得る。あるいは、対照は、異なるVHおよびVL配列を除いて、抗体バリアントと同一のアミノ酸配列(典型的には重鎖および軽鎖アミノ酸配列)を有する参照抗体であり得る。そのような参照抗体は、例えば、表1に示すような、抗体Bまたは抗体AのVHおよびVL配列を代わりに有することができる。好ましくは、参照抗体のVHおよびVL配列は、抗体Bのものである。あるいは、参照抗体は、同じ標的に結合するが、異なるアミノ酸配列を有する抗体であり得る。あるいは、対照は、例えばVHおよびVL配列が表1に示される抗体b12のものであるような、アイソタイプ対照抗体であり得る。
【0158】
したがって、一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体CのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5と、E430、E345および/またはS440の1つまたは複数の変異を除いて、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0159】
別の態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体CのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5と、それぞれSEQ ID NO:20 (IgGm(f))およびSEQ ID NO:37(κ)のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0160】
別の態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体BのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0161】
別の態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体AのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0162】
別の態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体b12のVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:16と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0163】
一つの特定の態様では、CDC応答は最大溶解として記載され、ここで、より高い最大溶解はCDCの増大を反映する。一つの特定の態様では、CDC応答はEC50(最大溶解の半分が観察される濃度)として記載され、ここで、より低いEC50はCDCの増大を示す。一つの特定の態様では、CD38発現標的細胞は、腫瘍細胞、例えばリンパ腫細胞である。リンパ腫標的細胞の非限定的な例としては、以下が挙げられる(括弧内に、商業的供給源を示す):
- Daudi細胞(ATCC CCL-213);
- Ramos細胞(ATCC CRL-1596);
- REH細胞(DSMZ ACC 22);
- Wien-133細胞(BioAnaLab, Oxford, U.K.);
- RS4;11細胞(DSMZ ACC 508);
- NALM-16(DSMZ ACC 680);
- U266(ATCC TIB-196);
- RC-K8(DSMZ ACC 561);
- SU-DHL-8;
- Oci-Ly-7;
- Oci-Ly-19;
- Oci-Ly-18;
- Raji;
- DOHH-2;
- SU-DHL-4;
- WSU-DLCL-2;
- Z-138;
- JVM-13;
- Jeko-1;
- 697;
- Granta 519;
- DB;
- Pfeiffer。
【0164】
CD38を発現する標的細胞はまた、AML細胞であってもよく、例えば、THP1、monomac6、Oci-AML3、KG-1、ML2、U937、Nomo-1、AML-193、MEGAL、MOLM13、HL-60およびOci-M1からなる群より選択されるものであるが、これらに限定されない。
【0165】
別の特定の態様では、CD38発現標的細胞は、腫瘍細胞、例えばリンパ腫細胞または骨髄腫細胞であり、細胞あたりのCD38分子のおおよその平均数は、任意で、実施例1に記載のように測定された場合、以下の範囲のいずれかである:
- 150,000~250,000、例えば約200,000;
- 200,000~300,000、例えば約260,000;
- 80,000~180,000、例えば約130,000;
- 50,000~150,000、例えば約100,000;
- 40,000~120,000、例えば約80,000;
- 30,000~70,000、例えば約50,000;
- 10,000~20,000、例えば約15,000;
- 5,000~15,000、例えば約10,000。
【0166】
一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体と比較して、CD38発現標的細胞に対する増大したCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体BのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む;ここで、CDC応答はEC50であり、CD38発現標的細胞はNALM-16(DSMZ ACC 680)、U266(ATCC TIB-196)およびRC-K8(DSMZ ACC 561)から選択される。
【0167】
好ましい態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体と比較して、CD38発現標的細胞に対する増大したCDCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体CのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5と、それぞれSEQ ID NO:20 (IgGm(f))およびSEQ ID NO:37 (κ)のCHおよびCL領域の配列とを含む;ここで、CDC応答は最大溶解であり、CD38発現標的細胞はDaudi細胞(ATCC CCL-213)およびRamos細胞(ATCC CRL-1596)から選択される。該抗体バリアントは、特に、参照抗体よりも少なくとも50%、例えば少なくとも60%または少なくとも70%高い最大溶解をもたらす可能性がある。
【0168】
CD38発現標的細胞に対してCDCを誘導するIgG抗体などの抗体の能力を評価するのに適した、当業者に公知のインビトロまたはインビボの方法またはアッセイはどれも、使用することができる。好ましくは、そのようなアッセイは、関連部分において、実施例3に記載されるCDCアッセイの段階を含む。
【0169】
CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞の最大溶解またはEC50値を測定するためのアッセイの非限定的な例は、以下の段階を含み得る:
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり0.2%のBSAを添加した培養培地40μLに約100,000個のCD38発現細胞をプレーティングする段階;
(b)細胞を40μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に20分間プレインキュベートする段階;
(c)各ウェルを20%のプールした正常ヒト血清と共に37℃で45分間インキュベートする段階;
(d)生死判別色素を添加し、フローサイトメーターで細胞溶解の割合を測定する段階;
(e)最大溶解を決定し、かつ/または非線形回帰を用いてEC50値を計算する段階。
【0170】
このアッセイに適した腫瘍細胞には、Daudi細胞(ATCC CCL-213)など、表2に記載されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0171】
特定の態様では、抗体バリアントは、Daudi細胞(ATCC番号CCL-213)またはRamos細胞(ATCC番号CRL-1596)に対してCDCを誘導し、参照抗体で得られる最大溶解よりも少なくとも50%、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%高い細胞溶解をもたらす;該参照抗体は、ヒトIgG1重鎖中のE430、E435およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基に変異がないことのみで異なっており、該アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる。一態様では、参照抗体は、抗体CのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5と、それぞれSEQ ID NO:20(IgGm(f))およびSEQ ID NO:37(κ)のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0172】
抗体依存性細胞傷害(ADCC):
一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、ADCCを誘導する。いくつかの態様では、本発明の抗体バリアントは、例えばCD38発現細胞の表面または細胞膜上の、CD38に結合した場合に、ADCCを媒介することができる。E430G変異を含む抗CD38抗体は、E430G変異のない同じ抗体と比較して、やや低いレベルのADCCを誘導することが見出された。本発明の抗体バリアントは、例えばCD38発現細胞の表面または細胞膜上の、CD38に結合した場合に、対照よりも高いADCCを媒介する可能性がある;ここで、対照は、例えば、異なるVHおよびVL配列を除いて、抗体バリアントと同一のアミノ酸配列(典型的には重鎖および軽鎖アミノ酸配列)を有する参照抗体であり得る。そのような参照抗体は、例えば、表1に示すような、抗体Bまたは抗体AのVHおよびVL配列を代わりに有することができる。好ましくは、参照抗体のVHおよびVL配列は、抗体Bのものである。あるいは、対照は、例えばVHおよびVL配列が表1に示される抗体b12のものであるような、アイソタイプ対照抗体であり得る。
【0173】
したがって、一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いADCCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体BのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。一つの特定の態様では、ADCC応答は最大溶解であり、より高い最大溶解はより高いADCCを反映する。一つの特定の態様では、ADCC応答は、FcγRIIIa結合を測定するアッセイで評価され、ここで、より高い結合はより高いADCCを示す。一つの特定の態様では、CD38発現標的細胞は腫瘍細胞である。標的細胞の非限定的な例には、Daudi、Wien-133、Granta 519、MEC-2、および表2に記載される腫瘍細胞株が含まれる。
【0174】
一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体と比較して、CD38発現Daudi細胞に対するより高いADCCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体BのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含み、任意で、ADCC応答は最大溶解またはFcγRIIIa結合である。
【0175】
一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体と比較して、CD38発現Daudi細胞に対するより高いADCCを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体b12のVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:16と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含み、任意で、ADCC応答は最大溶解またはFcγRIIIa結合である。
【0176】
CD38発現標的細胞に対するADCCを誘導するIgG抗体などの抗体の能力を評価するのに適した、当業者に公知のインビトロまたはインビボの方法またはアッセイはどれも、使用することができる。好ましくは、該アッセイは、関連部分において、実施例4に記載の51Cr放出抗体依存性細胞傷害アッセイまたはADCCレポーターバイオアッセイの段階を含む。CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞のADCCを調べるためのアッセイの非限定的な例は、以下に記載される51Cr放出アッセイまたはレポーターアッセイの段階を含み得る。
【0177】
51Cr放出によるADCC:
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり0.2%のBSAを添加した培養培地50μLに約5,000個の51Cr標識CD38発現細胞(例えば、Daudi細胞)をプレーティングする段階;
(b)細胞を50μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に15分間プレインキュベートする段階;
(c)各ウェルを、ウェルあたり500,000個の新たに分離した末梢血単核細胞(PBMC)と共に37℃で4時間インキュベートする段階;
(d)ガンマカウンターで75μLの上清中の51Crの放出量を測定する段階;
(e)細胞溶解の割合を(cpmサンプル-cpm自然溶解)/(cpm最大溶解-cpm自然溶解)として計算する段階、ここで、cpmは1分あたりのカウント数である。
【0178】
レポーターアッセイによるADCC:
(a)光学的読み取りに適したマルチウェルプレート(例えば、PerkinElmer社からの384ウェルOptiPlates)で、25%の低IgG血清を添加した標準培地(例えば、RPMI 1640)に、10μL中の約5,000個のDaudi細胞をプレーティングする段階;
(b)各ウェルを、エフェクター細胞としてFcγRIIIa受容体、V158(高親和性)バリアント、およびホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントを安定して発現する10μLの遺伝子操作したJurkat細胞、ならびに10μLの段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)と共に、37℃で6時間インキュベートする段階;
(c)各ウェルを30μLのルシフェラーゼ基質と共に室温で5分間インキュベートして、発光を測定する段階。
【0179】
抗体依存性細胞貧食(ADCP):
一態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、ADCPを誘導する。いくつかの態様では、本発明の抗体バリアントは、例えばCD38発現細胞の表面または細胞膜上の、CD38に結合した場合に、ADCPを媒介することができる。本発明の抗体バリアントは、例えばCD38発現細胞の表面または細胞膜上の、CD38に結合した場合に、対照よりも高いADCPを媒介することができ、ここで、該対照は、例えばVHおよびVL配列が表1に示される抗体b12のものであるような、アイソタイプ対照抗体である。
【0180】
したがって、一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、CD38発現標的細胞に対して参照抗体よりも高いADCPを誘導し、ここで、該参照抗体は、バリアント抗体のE430、E345および/またはS440の1つまたは複数の変異においてのみ抗体バリアントと異なっている。別の態様では、参照抗体は、抗体b12のVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:16と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0181】
一つの特定の態様では、CD38発現標的細胞は、骨髄腫細胞またはリンパ腫細胞などの、腫瘍細胞である。腫瘍細胞である標的細胞の非限定的な例には、表2に記載されるものが含まれる。
【0182】
CD38発現標的細胞に対してADCPを誘導するIgG抗体などの抗体の能力を評価するのに適した、当業者に公知のインビトロまたはインビボの方法またはアッセイはどれも、使用することができる。好ましくは、該アッセイは、関連部分において、実施例5に記載されるマクロファージベースのADCPアッセイの段階を含む。特に、CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞のADCPを測定するためのアッセイは、以下に記載される段階を含み得る:
【0183】
ADCP:
(a)新たに分離した単球を、GM-CSF含有培地で5日間インキュベートすることにより、マクロファージに分化させる段階;
(b)マルチウェルプレートでウェルあたり約100,000個のマクロファージをGM-CSF含有樹状細胞培地にプレーティングする段階;
(c)ウェルあたり20,000個の一般的な蛍光膜色素で標識したCD38抗体オプソニン化CD38発現細胞(例えば、Daudi細胞)を37℃で45分間添加する段階;
(d)フローサイトメーターでCD14陽性、CD19陰性、膜色素陽性のマクロファージの割合を測定する段階。
【0184】
アポトーシス:
本発明に従って使用するための抗体バリアントは、一態様では、Fc架橋剤の非存在下ではアポトーシスを誘導し得ない。さらなる態様では、抗体バリアントは、Fc架橋剤の存在下でアポトーシスを誘導し得るが、Fc架橋剤の非存在下ではアポトーシスを誘導し得ない。
【0185】
一態様では、Fc架橋剤は抗体である。
【0186】
一態様では、アポトーシスは、実施例6に記載されるように測定することができる。
【0187】
トロゴサイトーシス:
一態様では、本明細書に開示される抗体バリアントは、トロゴサイトーシスを誘導し、例えば、ドナーCD38発現細胞からアクセプター細胞へのCD38のトロゴサイトーシスを誘導する。代表的なアクセプター細胞には、T細胞、B細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、好中球、およびNK細胞が含まれる。好ましくは、アクセプター細胞は、Fcガンマ(Fcγ)受容体を発現するリンパ球、例えば、マクロファージまたはPBMCなどである。特に、本発明の抗体バリアントは、対照と比較して増加したトロゴサイトーシスを媒介し得る。対照は、例えば、バリアント抗体のE430、E345および/またはS440の1つまたは複数の変異を除いて、抗体バリアントと同一のアミノ酸配列(典型的には重鎖および軽鎖アミノ酸配列)を有する参照抗体であり得る。別の態様では、対照は、異なるVHおよびVL配列を除いて、抗体バリアントと同一のアミノ酸配列(典型的には重鎖および軽鎖アミノ酸配列)を有する参照抗体である。例えば、対照は、例えばVHおよびVL配列が表1に示される抗体b12のものであるような、アイソタイプ対照抗体であり得る。
【0188】
トロゴサイトーシスを評価するための適切なアッセイは当技術分野で公知であり、例えば、実施例8に記載のアッセイを含む。CD38抗体によって媒介されるCD38発現細胞のトロゴサイトーシスを測定するためのアッセイの非限定的な例は、以下の段階を含む:
【0189】
トロゴサイトーシス(Daudi細胞):
(a')新たに分離した単球を、5日間のGM-CSFにより、マクロファージに分化させる段階;
(b')ウェルあたり約100,000個のマクロファージをGM-CSF含有樹状細胞培地にプレーティングする段階;
(c')ウェルあたり約20,000個の一般的な蛍光膜色素で標識したCD38抗体オプソニン化Daudi細胞を37℃で45分間添加する段階;
(d')フローサイトメーターでDaudi細胞上のCD38発現を測定する段階、ここで、対照と比較してCD38抗体オプソニン化Daudi細胞上のCD38の減少は、トロゴサイトーシスを示す。
【0190】
トロゴサイトーシス(Treg):
(a)細胞培養培地に、ウェルあたり約500,000個の新たに分離したPBMCを37℃で一晩プレーティングする段階;
(b)ウェルあたり約100,000個の一般的な蛍光細胞内アミン色素で標識したCD38抗体オプソニン化Tregを37℃で一晩(O/N)添加する段階;および
(c)フローサイトメーターでTreg上のCD38発現を測定する段階であって、対照と比較してCD38抗体オプソニン化Treg上のCD38の減少は、トロゴサイトーシスを示す、段階。
【0191】
Daudi細胞(ATCC CCL-213)のほかに、第1のアッセイに適する腫瘍細胞には、表2に記載される細胞、特に高いCD38発現を有するものが含まれるが、これらに限定されない。さらに、第2のアッセイに適するCD38発現細胞には、Tregのほかに、例えば、NK細胞、B細胞、T細胞、単球などの免疫細胞、および表2に記載される腫瘍細胞、特に低いCD38発現レベルを有するものが含まれる。
【0192】
したがって、一態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体よりも高いレベルのCD38発現標的細胞のトロゴサイトーシスを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体CのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:1およびSEQ ID NO:5と、E430、E345および/またはS440の1つまたは複数の変異を除いて抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0193】
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体よりも高いレベルのCD38発現標的細胞のトロゴサイトーシスを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体BのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0194】
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体よりも高いレベルのCD38発現標的細胞のトロゴサイトーシスを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体AのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0195】
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体よりも高いレベルのCD38発現標的細胞のトロゴサイトーシスを誘導し、ここで、該参照抗体は、抗体b12のVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:16と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0196】
CD38酵素活性の調節
本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアントは、典型的には、ヒトCD38の1つまたは複数の酵素活性を調節することができる。一態様では、本明細書に開示される抗体バリアントは、例えば、抗体b12のようなアイソタイプ対照抗体などの対照と比較して、CD38シクラーゼ活性に対する阻害効果を有する。例えば、抗体バリアントは、腫瘍細胞などの細胞によって発現されたCD38のシクラーゼ活性に対する阻害効果、および/またはCD38の可溶性断片(例えば、SEQ ID NO:39)などの単離されたCD38に対する阻害効果を有し得る。
【0197】
CD38シクラーゼ活性を阻害する抗CD38抗体の能力を評価するのに適した、当業者に公知のインビトロまたはインビボの方法またはアッセイはどれも、使用することができる。CD38シクラーゼ活性を試験するための適切なアッセイは、例えば、WO 2006/099875 A1およびWO 2011/154453 A1に記載されている。好ましくは、この方法は、関連部分において、実施例6に記載される特定のアッセイの段階を含み、CD38の基質としてニコチンアミドグアニンジヌクレオチドナトリウム塩(NGD)を用いてシクラーゼ活性を試験する。非蛍光性であるNGDは、CD38によって、蛍光性のcADPRアナログであるサイクリックGDPリボースに環化される(例えば、Comb, Chem High Throughput Screen. 2003 Jun;6(4):367-79Aを参照)。非限定的なアッセイの例は、CD38シクラーゼ活性の阻害を測定するための以下の段階を含む:
(a)マルチウェルプレートで、ウェルあたり100μLの20mM Tris-HCL中の200,000個のDaudi細胞もしくはWien133細胞を播種する段階、またはウェルあたり100μLの20mM Tris-HCL中の0.6μg/mLのHisタグ付き可溶性CD38(SEQ ID NO:39)を播種する段階;
(b)各ウェルに1μg/mLのCD38抗体と80μMのNGDを添加する段階;
(c)プラトーに達するまで(例えば、5、10、または30分)蛍光を測定する段階;および
(d)アイソタイプ対照抗体とインキュベートしたウェルなどの対照と比較して、阻害パーセントを決定する段階。
【0198】
一態様では、そのようなアッセイにおいて、抗体バリアントは、対照、典型的にはアイソタイプ対照抗体の存在下でのCD38シクラーゼ活性と比較して、少なくとも約40%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、例えば約40%から約60%の間で、CD38のシクラーゼ活性、具体的には最大NGD変換パーセントを阻害することができる。例えば、アイソタイプ対照抗体は、抗体b12のVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:12およびSEQ ID NO:16と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含み得る。特定の態様では、このアッセイは、シクラーゼ活性を測定するためにhisCD38(SEQ ID NO:39)を利用する。
【0199】
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体と比較して、CD38シクラーゼ活性の増大した(すなわち、より効果的な)阻害を有し、ここで、該参照抗体は、抗体BのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:8およびSEQ ID NO:9と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0200】
いくつかの態様では、本明細書に開示される任意の局面または態様による抗体バリアントは、参照抗体と比較して、CD38シクラーゼ活性の増大した(すなわち、より効果的な)阻害を有し、ここで、該参照抗体は、抗体AのVHおよびVL領域の配列、すなわち、それぞれSEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11と、抗体バリアントと同一のCHおよびCL領域の配列とを含む。
【0201】
さらに、いくつかの態様では、本明細書に記載される抗体バリアントは、Fc架橋剤の存在下でCD38発現細胞のアポトーシスを誘導するが、Fc架橋剤の非存在下ではアポトーシスを誘導しない。これらの機能性は両方とも、関連部分において、実施例6に記載のアポトーシスアッセイの段階を含むアッセイで測定することができる。一態様では、アポトーシスアッセイは、以下の段階を含み得る:
(a)ウェルあたり100μLの0.2%BSAを添加した培養培地に100,000個のCD38発現腫瘍細胞をプレーティングする段階;
(b)各ウェルを、段階希釈したCD38抗体(0.0002~10μg/mL)および10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG1と共に37℃で一晩インキュベートする段階;
(c)フローサイトメーターで死細胞の割合を測定する段階。
【0202】
コンジュゲート
一局面では、本発明は、薬物、細胞傷害剤、毒素、放射性標識または放射性同位体にコンジュゲートされた抗体バリアントに関する。
【0203】
一態様では、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸を含む抗体バリアントが提供される。放射性標識されたバリアントは、インビトロ診断目的、インビボ診断目的、治療目的、またはそれらの組み合わせに使用することができる。抗体用の放射性標識の非限定的な例には、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、125I、131I、および186Reが含まれる。放射性標識アミノ酸および関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Junghans et al., in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686 (第2版, Chafner and Longo編, Lippincott Raven (1996)、ならびにU.S. 4,681,581、U.S. 4,735,210、U.S. 5,101,827、U.S. 5,102,990 (US RE35,500)、U.S. 5,648,471およびU.S. 5,697,902を参照されたい。例えば、ヨウ素または臭素などのハロゲンの放射性同位体は、クロラミンT法でコンジュゲートさせることができる。
【0204】
一態様では、本発明の抗体バリアントは、放射性同位体または放射性同位体含有キレートにコンジュゲートされる。例えば、該バリアントは、抗体を放射性同位体と複合体化することができるキレート剤リンカー、例えば、DOTA、DTPA、またはチウキセタン(tiuxetan)にコンジュゲートされ得る。該バリアントはさらに、または代替的に、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸または他の放射性標識分子を含むか、またはそれらにコンジュゲートされ得る。放射性標識されたバリアントは、診断および治療の両方の目的で使用することができる。一態様では、本発明のバリアントは、α放射体にコンジュゲートされる。α線を放出する放射性同位体の非限定的な例には、213Bs、225Acおよび227Thが含まれる。
【0205】
一態様では、抗体バリアントは、抗体バリアントを放射性同位体にコンジュゲートさせることができるキレート剤リンカー、例えばチウキセタンに結合される。
【0206】
核酸
抗体は、さまざまな疾患の治療に使用できる治療薬としてよく知られている。抗体を必要とする対象に抗体を投与するための別の方法は、該抗体をコードする核酸または核酸の組み合わせを、該抗体のインビボ発現のために投与する段階を含む。
【0207】
それゆえ、一局面では、本発明はまた、本発明による抗体バリアントの重鎖をコードする核酸に関し、ここで、該重鎖は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む;前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0208】
一局面では、本発明はまた、本発明による抗体バリアントをコードする核酸または核酸の組み合わせに関する。
【0209】
いくつかの態様では、本発明は、抗体バリアントをコードする核酸または核酸の組み合わせに関し、該抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む、抗原結合領域;および
(b)ヒトIgG1重鎖のE430、E345およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を含む、バリアントFc領域(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)
を含む。
【0210】
一態様では、本発明の抗体バリアントは、1つの核酸によってコードされる。それゆえ、本発明の抗体バリアントをコードするヌクレオチド配列は、1つの核酸または同じ核酸分子内に存在する。
【0211】
別の態様では、本発明の抗体バリアントは、核酸の組み合わせによって、通常は2つの核酸によってコードされる。一態様では、該核酸の組み合わせは、該抗体バリアントの重鎖をコードする核酸と、該抗体バリアントの軽鎖をコードする核酸とを含む。
【0212】
いくつかの態様では、本発明は、抗体バリアントをコードする核酸または核酸の組み合わせに関し、該抗体バリアントは、
(a)SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む、重鎖(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる);および
(b)SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む、軽鎖
を含む。
【0213】
一態様では、本発明の抗体バリアントは、1つの核酸によってコードされる。それゆえ、本発明の抗体バリアントをコードするヌクレオチド配列は、1つの核酸または同じ核酸分子内に存在する。
【0214】
別の態様では、本発明の抗体バリアントは、核酸の組み合わせによって、通常は2つの核酸によってコードされる。一態様では、該核酸の組み合わせは、該抗体バリアントの重鎖をコードする核酸と、該抗体バリアントの軽鎖をコードする核酸とを含む。
【0215】
上記のように、前記核酸は、抗体などの治療用タンパク質を、それを必要とする対象に供給するための手段として使用することができる。
【0216】
いくつかの態様では、前記核酸はデオキシリボ核酸(DNA)であり得る。抗体などの治療用タンパク質のインビボ発現に適したDNAおよび該DNAを調製する方法は、当業者によく知られており、Patel A et al., 2018, Cell Reports 25, 1982-1993に記載のものを含むが、それらに限定されない。
【0217】
いくつかの態様では、前記核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)のような、リボ核酸(RNA)であり得る。ある態様では、mRNAは、天然に存在するヌクレオチドのみを含んでいてよい。ある態様では、mRNAは修飾されたヌクレオチドを含んでいてもよく、ここで、修飾されたとは、該ヌクレオチドが天然に存在するヌクレオチドとは化学的に異なることを意味する。ある態様では、mRNAは、天然に存在するヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの両方を含んでいてもよい。
【0218】
対象における抗体などの治療用タンパク質のインビボ発現に適した各種の核酸は、当業者によく知られている。例えば、対象における治療用抗体の発現に適したmRNAは、多くの場合、特定の配列を含む非翻訳領域(UTR)によって挟まれたオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、5'および3'末端はキャップ構造とポリ(A)テールで形成されている(例えば、Schlake et al., 2019, Molecular Therapy Vol. 27 No 4 Aprilを参照されたい)。
【0219】
インビボ発現に適したRNAおよびRNA分子、例えばmRNA、を最適化するための方法の例には、US9,254,311;US9,221,891;US20160185840およびEP3118224に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0220】
インビボ発現のために対象に投与される裸の核酸は、分解されやすく、かつ/または対象において免疫応答を引き起こす傾向がある。さらに、核酸によってコードされる抗体のインビボ発現のために、前記核酸は、典型的には、核酸が対象の細胞内に入るのに適した形態で投与される。インビボ発現のために核酸を送達するためのさまざまな方法が存在しており、機械的方法と化学的方法の両方が含まれる。例えば、そのような方法は、皮膚への核酸のエレクトロポレーションまたはタトゥーイング(tattooing)を含み得る(Patel et al., 2018, Cell Reports 25, 1982-1993)。対象への核酸の投与に適した他の方法には、適切な製剤中の核酸の投与が含まれる。それゆえ、本発明はまた、本発明の核酸を含む送達ビヒクルに関する。
【0221】
いくつかの態様では、前記送達ビヒクルは、本発明による抗体バリアントの重鎖をコードする核酸を含み得る。したがって、前記核酸は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む重鎖をコードし得る;前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる。
【0222】
いくつかの態様では、本発明はまた、本発明による抗体バリアントの軽鎖をコードする核酸を含む送達ビヒクルに関する。したがって、一態様では、前記核酸は、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードし得る。
【0223】
本発明はまた、本発明による抗体バリアントの重鎖をコードする核酸を含む送達ビヒクルと、本発明による抗体バリアントの軽鎖をコードする核酸を含む送達ビヒクルとを含む送達ビヒクルの混合物に関する。したがって、一態様では、前記送達ビヒクルの混合物は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域とを含む重鎖をコードする核酸を含む送達ビヒクル(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる);およびSEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸を含む送達ビヒクルを含む。
【0224】
いくつかの態様では、前記送達ビヒクルは、本発明による抗体バリアントの重鎖および軽鎖をコードする核酸または核酸の組み合わせを含む。
【0225】
したがって、一態様では、前記送達ビヒクルは、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)とを含む重鎖;およびSEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸を含み得る。このように、本発明による抗体バリアントの重鎖および軽鎖をコードする核酸配列は、1つの(同一の)核酸分子内に存在する。
【0226】
別の態様では、前記送達ビヒクルは、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3を含むVH領域と、E430、E345およびS440のうちの1つまたは複数に変異を有するヒトIgG1 CH領域(前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる)とを含む重鎖をコードする核酸;およびSEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含むVL領域を含む軽鎖をコードする核酸を含み得る。このように、本発明による抗体バリアントの重鎖および軽鎖をコードする核酸配列は、別個のまたは異なる核酸分子上に存在する。
【0227】
いくつかの態様では、前記送達ビヒクルは脂質製剤であり得る。該製剤の脂質は、脂質ナノ粒子(LNP)のような粒子であり得る。本発明の核酸または核酸の組み合わせは、該粒子内に、例えば該LNP内に、カプセル化され得る。
【0228】
インビボ発現のために対象に核酸を投与するのに適した各種の脂質製剤は、当業者によく知られている。例えば、該脂質製剤は、典型的には、脂質、イオン化可能なアミノ脂質、PEG脂質、コレステロール、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0229】
治療用抗体の発現のために対象に核酸を投与するのに適した脂質製剤のさまざまな形態およびそれらの調製方法は、当技術分野で周知である。そのような脂質製剤の例には、限定するものではないが、以下に記載されるものが含まれる:US20180170866 (Arcturus社)、EP 2391343 (Arbutus社)、WO 2018/006052 (Protiva社)、WO2014152774 (Shire Human Genetics社)、EP 2 972 360 (Translate Bio社)、US10195156 (Moderna社)、およびUS20190022247 (Acuitas社)。
【0230】
バリアント抗体の生産
別の局面では、本発明はまた、抗体CのCDR、VHおよび/またはVLのアミノ酸配列を含む抗体の少なくとも1つのエフェクター機能を増加させる方法に関し、この方法は、EUインデックスに従って番号付けされたヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する1つまたは複数のアミノ酸残基において該抗体に変異を導入する段階を含む。
【0231】
こうして、特定の態様では、Fc領域とCD38に結合する抗原結合領域とを含む親抗体のエフェクター機能を増加させる方法が提供され、この方法は、該Fc領域に、ヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を導入することを含み、ここで、前記アミノ酸残基はEUインデックスに従って番号付けされる;および
前記抗原結合領域は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む。
【0232】
他の特定の態様では、Fc領域と抗原結合領域とを含む親抗体のバリアントを産生する方法に関し、該バリアントは親抗体と比較してエフェクター機能が増加しており、この方法は、以下の段階:
(a)該Fc領域に、ヒトIgG1重鎖のFc領域中のE430、E345、およびS440に対応する群から選択される1つまたは複数のアミノ酸残基の変異を導入して、バリアント抗体を取得する段階;
(b)親抗体と比較してエフェクター機能が増加しているバリアント抗体を選択する段階;および
(c)組換え宿主細胞において該バリアント抗体を産生させる段階
を含み、
前記抗原結合領域は、SEQ ID NO:2に記載の配列を有するVH CDR1、SEQ ID NO:3に記載の配列を有するVH CDR2、SEQ ID NO:4に記載の配列を有するVH CDR3、SEQ ID NO:6に記載の配列を有するVL CDR1、配列AASを有するVL CDR2、およびSEQ ID NO:7に記載の配列を有するVL CDR3を含む。
【0233】
前述の方法のいずれかの一態様では、エフェクター機能はCDCである。
【0234】
前述の方法のいずれかの一態様では、エフェクター機能はトロゴサイトーシスである。
【0235】
前述の方法のいずれかの一態様では、エフェクター機能はCDCとトロゴサイトーシスである。
【0236】
前述の方法のいずれかの一態様では、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E430G、E430S、E430F、E430T、E345K、E345Q、E345R、E345Y、S440YおよびS440Wに対応する群から選択される。例えば、前記1つまたは複数のアミノ酸残基の変異は、E430Gを含むかまたはE430Gからなる変異であり得る。
【0237】
前述の方法のいずれかの一態様では、親抗体のFc領域は、列挙された変異は別にして、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域、またはそれらのアイソタイプ混合物である。任意で、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:45、およびSEQ ID NO:36として記載される配列のうちの1つのFc領域を含む。特定の態様では、親抗体のFc領域はヒトIgG1のFc領域である。例えば、親抗体は、ヒト全長IgG1抗体、任意でヒトモノクローナル全長2価IgG1,κ抗体であり得る。さらに、親抗体は、単一特異性抗体または二重特異性抗体であってよく、例えば単一特異性抗体である。
【0238】
親抗体のFc領域は通常、天然に存在する(野生型)配列であるが、いくつかの態様では、親抗体のFc領域は、本明細書の他の箇所に記載されるような、1つまたは複数のさらなる変異を含む。
【0239】
本発明はまた、上記の方法のいずれかに従って得られた抗体または得ることが可能な抗体に関する。
【0240】
本発明はまた、本明細書に記載の局面および態様のいずれか1つによる抗体バリアントをコードする単離された核酸およびベクター、ならびに該バリアントをコードするベクターおよび発現系を提供する。抗体およびそれらのバリアントのための適切な核酸構築物、ベクターおよび発現系は当技術分野で公知であり、実施例に記載されるものが含まれるが、それらに限定されない。バリアント抗体が、(例えば、scFv-Fc融合タンパク質のように)単一のポリペプチドに含まれるのではなく、別個のポリペプチドであるHCおよびLCを含む態様では、その重鎖および軽鎖をコードするヌクレオチド配列は、同一の核酸またはベクター内に存在しても、異なる核酸またはベクター内に存在してもよい。
【0241】
一局面では、本発明は、以下を含む核酸または発現ベクターに関する:
(i)本明細書に開示される態様のいずれか1つによる抗体バリアントの重鎖配列をコードするヌクレオチド配列;
(ii)本明細書に開示される態様のいずれか1つによる抗体バリアントの軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列;または
(iii)(i)と(ii)の両方。
【0242】
一局面では、本発明は、本明細書に開示される態様のいずれか1つによる抗体バリアントの重鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸または発現ベクターに関する。
【0243】
一局面では、本発明は、本明細書に開示される態様のいずれか1つによる抗体バリアントの重鎖配列と軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列または発現ベクターに関する。
【0244】
一局面では、本発明は、第1の核酸と第2の核酸の組み合わせ、または第1の発現ベクターと第2の発現ベクターの組み合わせに関し、任意で該組み合わせは同じ宿主細胞内にあり、ここで、第1の核酸または発現ベクターは(i)に記載のヌクレオチド配列を含み、第2のものは(ii)に記載のヌクレオチド配列を含む。
【0245】
本発明との関係において発現ベクターは、例えば、染色体ベクター、非染色体ベクター、合成核酸ベクター(発現制御エレメントの適切なセットを含む核酸配列)などの、任意の適切なベクターであり得る。そのようなベクターの例には、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが含まれる。一態様では、核酸は以下のベクターに含まれる:裸のDNAまたはRNAベクター、例えば線状発現エレメント(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech 17, 355 59 (1997)に記載)、圧縮核酸ベクター(例えば、US 6,077,835および/またはWO 00/70087に記載)、プラスミドベクター、例えばpBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119、「midge」最小サイズの核酸ベクター(例えば、Schakowski et al., Mol Ther 3, 793 800 (2001)に記載)、または沈殿核酸ベクター構築物、例えばCaP04沈殿構築物(例えば、WO200046147;Benvenisty and Reshef, PNAS USA 83, 9551 55 (1986);Wigler et al., Cell 14, 725 (1978);およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics 7, 603 (1981)に記載)。そのような核酸ベクターおよびそれらの使用法は当技術分野で周知である(例えば、US 5,589,466およびUS 5,973,972を参照)。
【0246】
一態様では、ベクターは、細菌細胞内での抗体バリアントの発現に適するものである。そのようなベクターの例には、BlueScript(Stratagene社)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem 264, 5503 5509 (1989))、pETベクター(Novagen社, Madison WI)などの発現ベクターが含まれる。
【0247】
発現ベクターはさらに、または代替的に、酵母系での発現に適したベクターであり得る。酵母系での発現に適したベクターは、どれも使用することができる。適切なベクターには、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGH、を含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al.編, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York (1987);およびGrant et al., Methods in Enzymol 153, 516 544 (1987)にレビューされる)。
【0248】
発現ベクターはさらに、または代替的に、哺乳動物細胞内での発現に適したベクター、例えば選択マーカーとしてグルタミンシンテターゼを含むベクター、例えばBebbington (1992) Biotechnology (NY) 10:169-175に記載されるベクターなど、であり得る。
【0249】
核酸および/またはベクターはまた、分泌/局在化配列をコードする核酸配列を含んでいてもよく、この配列は、新生ポリペプチド鎖などのポリペプチドを細胞周辺腔または細胞培養培地へと向かわせることができる。そのような配列は当技術分野で公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチドを含む。
【0250】
発現ベクターは、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含むか、またはそれらを伴ってもよい。そのようなエレメントの例には、強力な発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサー、ならびにRSV、SV40、SL3 3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌におけるプラスミド産物の複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、および/または便利なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、CMV IEなどの構成的プロモーターとは対照的に、誘導性プロモーターを含み得る。
【0251】
一態様では、抗体バリアントをコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して宿主細胞または宿主動物内に位置付けられかつ/または送達され得る。
【0252】
本発明はまた、本明細書に開示されるような抗体バリアントを産生する組換え宿主細胞を提供し、任意で、該宿主細胞は本発明による単離された核酸またはベクターを含む。典型的には、宿主細胞は、前記核酸またはベクターで形質転換またはトランスフェクションされたものである。請求項の組換え宿主細胞は、例えば、真核細胞、原核細胞、または微生物細胞、例えばトランスフェクトーマであり得る。特定の態様では、宿主細胞は真核細胞である。特定の態様では、宿主細胞は原核細胞である。いくつかの態様では、抗体は重鎖抗体である。しかし、ほとんどの態様では、抗体バリアントは重鎖と軽鎖の両方を含み、それゆえ、該宿主細胞は、同じまたは異なるベクター上の、重鎖と軽鎖の両方をコードする構築物を発現する。
【0253】
宿主細胞の例には、酵母、細菌、植物および哺乳動物細胞、例えば、CHO、CHO-S、HEK、HEK293、HEK-293F、Expi293F、PER.C6、NS0細胞、Sp2/0細胞またはリンパ球細胞が含まれる。一態様では、宿主細胞はCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞である。例えば、一態様では、宿主細胞は、細胞ゲノムに安定的に組み込まれた第1および第2の核酸構築物を含むことができ、ここで、第1の核酸構築物は本明細書に開示される抗体バリアントの重鎖をコードし、第2の核酸構築物は軽鎖をコードする。別の態様では、本発明は、上記で特定したような第1および第2の核酸構築物を含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線状発現エレメントなどの、非組込み型核酸を含む細胞を提供する。
【0254】
一態様では、前記宿主細胞は、タンパク質のAsn結合型グリコシル化が可能な細胞であり、例えば、真核生物細胞、例えば哺乳動物細胞、例えばヒト細胞である。さらなる態様では、前記宿主細胞は、ヒト様またはヒトグリコシル化を有する糖タンパク質を産生するように遺伝子操作された非ヒト細胞である。そのような細胞の例は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の遺伝子組換え体(Hamilton et al., Science 301 (2003) 1244-1246; Potgieter et al., J. Biotechnology 139 (2009) 318-325)およびコウキクサ(Lemna minor)の遺伝子組換え体(Cox et al., Nature Biotechnology 12 (2006) 1591-1597)である。
【0255】
一態様では、前記宿主細胞は、抗体重鎖からC末端リシンK447残基を効率的に除去する能力がない宿主細胞である。例えば、Liu et al. (2008) J Pharm Sci 97: 2426 (参照により本明細書に組み入れられる)の表2は、いくつかのそのような抗体産生系、例えば、Sp2/0、NS/0、またはトランスジェニック乳腺(ヤギ)を記載しており、そこでは、C末端リシンの部分的な除去のみが得られる。一態様では、該宿主細胞は、グリコシル化機構が改変された宿主細胞である。そのような細胞は、当技術分野で記載されており、本発明のバリアントを発現させ、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。例えば、Shields, R.L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1; ならびにEP1176195; WO03/035835; およびWO99/54342を参照されたい。改変グリコフォームを生成するためのさらなる方法は、当技術分野で知られており、限定するものではないが、以下に記載のものが含まれる:Davies et al., 2001, Biotechnol Bioeng 74:288-294; Shields et al, 2002, J Biol Chem 277:26733-26740; Shinkawa et al., 2003, J Biol Chem 278:3466-3473; US6602684; WO00/61739A1; WO01/292246A1; WO02/311140A1; WO 02/30954A1; Potelligent(商標)技術(Biowa社, Princeton, N.J.); GlycoMAb(商標)グリコシル化改変技術(GLYCART biotechnology AG, Zurich, スイス);US 20030115614; Okazaki et al., 2004, JMB, 336: 1239-49;ならびにWO2018/114877; WO2018/114878およびWO2018/114879。
【0256】
さらに別の局面では、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖の1つまたは2つのセットをコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物または植物に関し、該動物または植物は本明細書に開示される抗体バリアントを産生する。
【0257】
一態様では、本明細書に開示される抗体バリアントの産生方法が提供され、この方法は、組換え宿主細胞を、抗体バリアントを産生させるのに適した条件下、培養培地中で培養する段階、および任意で、培養培地から抗体バリアントを精製または単離する段階を含む。
【0258】
一態様では、上記方法によって得られた抗体または得ることが可能な抗体が提供される。
【0259】
組成物およびキット・オブ・パーツ(kit-of-parts)
本発明はまた、本発明による抗体バリアント、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、または本発明による宿主細胞を含む組成物に関する。
【0260】
さらなる態様では、本発明による組成物は、典型的には薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物である。一態様では、薬学的組成物は、本明細書に開示される任意の局面または態様で定義される抗体バリアント、または本明細書で開示される任意の局面または態様で定義される発現ベクターを含有する。
【0261】
さらに別の態様では、本発明は、以下を含む薬学的組成物に関する:
- 本明細書に開示される局面および態様のいずれかで定義される抗体バリアント;および
- 薬学的に許容される担体。
【0262】
薬学的組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 第19版, Gennaro編, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されるような、従来の技術に従って製剤化することができる。本発明の薬学的組成物は、例えば、希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、界面活性剤(例えば、Tween-20またはTween-80のような非イオン性界面活性剤)、安定剤(例えば、糖類またはタンパク質フリーのアミノ酸類)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含むことができる。
【0263】
薬学的に許容される担体としては、本発明の抗体バリアントと生理学的に適合するありとあらゆる適切な溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌及び抗真菌剤、等張化剤、抗酸化剤、吸収遅延剤などが挙げられる。本発明の薬学的組成物中で利用できる適切な水性および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物、植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガム、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステル、および/または種々の緩衝剤が挙げられる。薬学的に許容される担体には、無菌の水溶液または分散液、および無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製のための無菌の粉末が含まれる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。
【0264】
薬学的組成物はまた、薬学的に許容される抗酸化剤を含むことができ、例えば、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、レシチン、没食子酸プロピル、αトコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含む。
【0265】
薬学的組成物はまた、組成物中に、糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムなどの、等張化剤を含むことができる。
【0266】
薬学的組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝剤などの、所定の投与経路に適切な1つまたは複数の補助剤を含むことができ、これらは、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を増強し得る。本発明の薬学的組成物は、制御放出製剤、例えば、インプラント、経皮パッチ、マイクロカプセル化送達システムなど、急速放出から抗体を保護する担体を用いて調製することができる。そのような担体には、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン-酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、および単独でのまたはワックスと一緒のポリ乳酸、または当技術分野で周知の他の材料が含まれる。そのような製剤の調製方法は、一般に、当業者に公知である。
【0267】
無菌の注射用溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、例えば上で列挙したような、諸成分の1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒中に導入し、続いて滅菌精密ろ過を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本の分散媒体と、例えば上で列挙したものからの、必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に導入することによって調製される。無菌の注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、調製方法の例は、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)であり、こうした方法は、前もって滅菌濾過された溶液から、活性成分と任意の追加の所望成分との粉末をもたらす。
【0268】
薬学的組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性を与えることなく、特定の患者、組成物、および投与方法に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように、変化させることができる。選択される投与量レベルは、使用する本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用する特定の化合物の排出速度、治療の持続時間、使用する特定の組成物と併用される他の薬物、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、症状、一般的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含めて、さまざまな薬物動態学的要因に左右されるであろう。
【0269】
薬学的組成物は、任意の適切な経路および方法で投与することができる。一態様では、本発明の薬学的組成物は非経口的に投与される。本明細書で使用する「非経口的に投与される」とは、経腸および局所投与以外の投与方法、通常は注射による投与方法、を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱鞘内、経気管、皮下、表皮下、関節内、皮膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、胸骨内の注射および注入が含まれる。
【0270】
一態様では、薬学的組成物は、静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0271】
本発明はまた、本発明による抗体バリアント、または本発明による抗体バリアントを含む組成物を含む治療における同時使用、個別使用または逐次使用のためのキット・オブ・パーツに関し、任意で、キット・オブ・パーツは抗体バリアントの2回以上の投与量を含む。
【0272】
一態様では、キット・オブ・パーツは、バイアルなどの1つまたは複数の容器内にそのような抗体バリアントまたは組成物を含む。
【0273】
一態様では、キット・オブ・パーツは、治療における同時使用、個別使用または逐次使用のためのそのような抗体バリアントまたは組成物を含む。
【0274】
治療への応用
本発明の抗体バリアントは、CD38を発現する細胞、例えば、CD38を発現する腫瘍細胞または免疫細胞が関与する疾患および障害の治療に関する数多くの治療上の有用性を有する。例えば、抗体バリアントは、例えばインビトロまたはエクスビボで、培養中の細胞に投与されるか、またはさまざまな障害および疾患を治療または予防するために、例えばインビボで、ヒト対象に投与され得る。本明細書で使用する用語「対象」は、抗体の利益を受けるか、または抗体に応答する可能性があるヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図している。対象には、例えば、ヒト患者が含まれ、ヒト患者は、酵素活性などのCD38の機能を調節することによって、かつ/またはCD38発現細胞の溶解を誘導することによって、かつ/またはCD38発現細胞の数を除去/減少させることによって、かつ/または細胞膜上のCD38の量を減少させることによって、治療または改善され得る疾患または障害を有する者である。したがって、抗体バリアントは、以下の生物学的活性のうちの1つまたは複数をインビボまたはインビトロで引き出すために使用することができる:補体の存在下でのCD38を発現する細胞のCDC;CD38シクラーゼ活性の阻害;ヒトエフェクター細胞の存在下でのCD38を発現する細胞の貧食またはADCC;および腫瘍細胞または免疫細胞などのCD38発現細胞のトロゴサイトーシス。
【0275】
したがって、一局面では、本発明は、医薬として使用するための、本発明による抗体バリアント、本発明による核酸もしくは核酸の組み合わせ、本発明による送達ビヒクル、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または本発明による薬学的組成物に関する。
【0276】
一局面では、本発明は、疾患または障害を治療または予防するための医薬の調製における、本発明による抗体バリアント、本発明による核酸もしくは核酸の組み合わせ、本発明による送達ビヒクル、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または本発明による薬学的組成物の使用に関する。
【0277】
一局面では、本発明は、疾患または障害の治療または予防に使用するための、例えばCD38を発現する細胞が関与する疾患または障害の治療または予防に使用するための、例えばCD38を発現する細胞が関与する疾患の治療に使用するための、本発明による抗体バリアント、本発明による核酸もしくは核酸の組み合わせ、本発明による送達ビヒクル、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または本発明による薬学的組成物に関する。一局面では、本発明は、CD38を発現する細胞を含む腫瘍に対するCDC応答を誘導するのに使用するための、本発明による抗体バリアント、本発明による核酸、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または本発明による薬学的組成物に関する。
【0278】
一局面では、本発明は、本発明による抗体バリアント、本発明による核酸もしくは核酸の組み合わせ、本発明による送達ビヒクル、本発明による発現ベクター、本発明による宿主細胞、本発明による組成物、または本発明による薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、疾患または障害の治療方法に関する。
【0279】
一局面では、本発明は、医薬として使用するための任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0280】
一局面では、本発明は、疾患または障害を治療または予防するための医薬の調製における、任意の局面または態様による抗体バリアントの使用に関する。
【0281】
一局面では、本発明は、疾患または障害の治療または予防に使用するための、任意の局面または態様による抗体バリアントに関する。
【0282】
一局面では、本発明は、任意の局面または態様による抗体バリアントを、それを必要とする対象に、典型的には治療上有効な量でかつ/または疾患または障害を治療するのに十分な期間にわたり投与する段階を含む、疾患または障害の治療方法に関する。
【0283】
一局面では、本発明は、医薬として使用するための、任意の局面または態様による抗体バリアントを含む薬学的組成物に関する。
【0284】
一局面では、本発明は、疾患または障害の治療または予防に使用するための、任意の局面または態様による抗体バリアントを含む薬学的組成物に関する。
【0285】
一局面では、本発明は、任意の局面または態様による抗体バリアントを含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に、典型的には治療上有効な量でかつ/または疾患または障害を治療するのに十分な期間にわたり投与する段階を含む、疾患または障害の治療方法に関する。
【0286】
一局面では、本発明は、以下の段階:
- 疾患または障害を患っている対象を選択する段階;および
- 該対象に、任意の局面または態様による抗体バリアントまたは該抗体バリアントを含む薬学的組成物を、典型的には治療上有効な量でかつ/または疾患または障害を治療するのに十分な期間にわたり投与する段階
を含む疾患または障害の治療方法に関する。
【0287】
一態様では、CD38発現細胞が関与する疾患または障害は、がん、すなわち腫瘍形成性障害、例えばCD38を発現する腫瘍細胞または免疫細胞の存在により特徴付けられる障害であり、例えば、B細胞リンパ腫、形質細胞悪性腫瘍、T/NK細胞リンパ腫、骨髄性悪性腫瘍などの血液のがん、ならびに固形腫瘍の悪性腫瘍が含まれる。
【0288】
いくつかの態様では、前記疾患または障害は、CD38を発現する腫瘍細胞が関与するがんである。
【0289】
いくつかの態様では、前記疾患または障害は、CD38を発現する免疫抑制細胞、例えばCD38を発現する非がん性の免疫抑制細胞、が関与するがんである。
【0290】
いくつかの態様では、前記疾患または障害は、腫瘍細胞とCD38を発現する免疫抑制細胞との両方が関与するがんである。
【0291】
いくつかの態様では、前記疾患または障害は、CD38を発現する免疫抑制細胞とCD38を発現しない腫瘍細胞が関与するがんである。
【0292】
さらに他の態様では、前記疾患または障害は、CD38を発現する細胞が関与する炎症性および/または自己免疫性疾患または障害である。
【0293】
さらに他の態様では、前記疾患または障害は、CD38を発現する細胞が関与する代謝障害である。
【0294】
血液のがん:
一局面では、前記疾患または障害は、血液のがんである。そのような血液のがんの例には、以下が含まれる:B細胞リンパ腫/白血病、例えば、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫およびB細胞非ホジキンリンパ腫;急性前骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、および成熟B細胞新生物、例えば、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞急性リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、例えば、低悪性度、中悪性度、高悪性度のFL、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫(MALT型、リンパ節および脾臓型)、有毛細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞白血病、移植後リンパ増殖性疾患、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞白血病、および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)。
【0295】
B細胞非ホジキンリンパ腫の例は、リンパ腫様肉芽腫症、原発性滲出性リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、重鎖病(γ鎖病、μ鎖病、およびα鎖病を含む)、免疫抑制剤による治療によって誘発されるリンパ腫、例えば、シクロスポリン誘発性リンパ腫、およびメトトレキサート誘発性リンパ腫である。
【0296】
本発明の一態様では、CD38発現細胞が関与する障害は、ホジキンリンパ腫である。
【0297】
CD38発現細胞が関与する障害の他の例には、以下を含むT細胞およびNK細胞に由来する悪性腫瘍が含まれる:成熟T細胞およびNK細胞新生物、例えば、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、アグレッシブNK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫/セザリー症候群、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性疾患(原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫C-ALCL、リンパ腫様丘疹症、境界病変)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、非特定型末梢性T細胞リンパ腫、および未分化大細胞リンパ腫。
【0298】
骨髄細胞に由来する悪性腫瘍の例には、急性骨髄性白血病、例えば急性前骨髄球性白血病、および慢性骨髄増殖性疾患、例えば慢性骨髄性白血病が含まれる。
【0299】
いくつかの態様では、血液のがんは、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される。
【0300】
いくつかの態様では、前記がんは、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、および濾胞性リンパ腫(FL)からなる群より選択される。
【0301】
ある態様では、前記がんは、多発性骨髄腫(MM)である。
【0302】
ある態様では、前記がんは、慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0303】
ある態様では、前記がんは、マントル細胞リンパ腫(MCL)である。
【0304】
ある態様では、前記がんは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0305】
ある態様では、前記がんは、濾胞性リンパ腫(FL)である。
【0306】
ある態様では、前記がんは、急性骨髄性白血病(成人)(AML)である。
【0307】
ある態様では、前記がんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)である。
【0308】
固形腫瘍の悪性腫瘍:
一局面では、前記疾患または障害は、固形腫瘍を含むがんである。すなわち、がんを患っている患者には、固形腫瘍がある。
【0309】
固形腫瘍の例には、限定するものではないが、以下が含まれる:メラノーマ、肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、胃がん(stomach cancer)、卵巣がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮がん、食道または胃腸管のがん、乳がん、卵管がん、脳腫瘍、尿道がん、尿生殖器がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、肺腺がん、腎細胞がん(RCC)(例えば、腎明細胞がんまたは腎乳頭状細胞がん)、中皮腫、鼻咽頭がん(NPC)、食道または胃腸管のがん、またはそれらのいずれかの転移性病変。
【0310】
一つの好ましい態様では、固形腫瘍は、Tregなどの免疫抑制細胞を含みかつCD38を発現するがんに由来する。T制御性細胞(Treg)はCD38を高発現することができ、CD38を高発現するTregは、CD38を中程度に発現するTregと比較して、より免疫抑制性である(Krejcik J. et al. Blood 2016 128:384-394)。したがって、理論に限定されるものではないが、トロゴサイトーシスを介してTregに発現されたCD38の量を減少させる本発明による抗体バリアントの能力は、特に、TregがCD38を発現している患者の固形腫瘍の治療を可能にする。Treg上のCD38発現が、対照と比較して、例えば、周知の方法を用いて抗CD38抗体で検出された発現とアイソタイプ対照抗体で検出された発現とを比較して、統計的に有意である場合、TregはCD38を発現している。これは、例えば、血液サンプル、骨髄サンプル、または腫瘍生検などの生物学的サンプルを採取することによって、試験することができる。
【0311】
したがって、一局面では、本発明は、CD38を発現するTregを含む対象における固形腫瘍の治療または予防に使用するための、任意の局面または態様による抗体バリアント、または抗体バリアントを含む薬学的組成物に関する。
【0312】
別の局面では、本発明は、CD38を発現するTregを含む対象における固形腫瘍を治療する方法に関し、この方法は、該対象に、任意の局面または態様による抗体バリアント、または抗体バリアントを含む薬学的組成物を、典型的には治療上有効な量でかつ/または該疾患または障害を治療するのに十分な期間にわたり投与する段階を含む。
【0313】
ある態様では、前記固形腫瘍は、メラノーマである。
【0314】
ある態様では、前記固形腫瘍は、肺がんである。
【0315】
ある態様では、前記固形腫瘍は、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0316】
ある態様では、前記固形腫瘍は、非扁平上皮NSCLCである。
【0317】
ある態様では、前記固形腫瘍は、結腸直腸がんである。
【0318】
ある態様では、前記固形腫瘍は、前立腺がんである。
【0319】
ある態様では、前記固形腫瘍は、去勢抵抗性前立腺がんである。
【0320】
ある態様では、前記固形腫瘍は、胃がん(stomach cancer)である。
【0321】
ある態様では、前記固形腫瘍は、卵巣がんである。
【0322】
ある態様では、前記固形腫瘍は、胃がん(gastric cancer)である。
【0323】
ある態様では、前記固形腫瘍は、肝臓がんである。
【0324】
ある態様では、前記固形腫瘍は、膵臓がんである。
【0325】
ある態様では、前記固形腫瘍は、甲状腺がんである。
【0326】
ある態様では、前記固形腫瘍は、頭頸部の扁平上皮がんである。
【0327】
ある態様では、前記固形腫瘍は、食道または胃腸管のがんである。
【0328】
ある態様では、前記固形腫瘍は、乳がんである。
【0329】
ある態様では、前記固形腫瘍は、卵管がんである。
【0330】
ある態様では、前記固形腫瘍は、脳腫瘍である。
【0331】
ある態様では、前記固形腫瘍は、尿道がんである。
【0332】
ある態様では、前記固形腫瘍は、尿生殖器がんである。
【0333】
ある態様では、前記固形腫瘍は、子宮内膜がんである。
【0334】
ある態様では、前記固形腫瘍は、子宮頸がんである。
【0335】
いくつかの態様では、固形腫瘍の腫瘍細胞は、検出可能なCD38発現を欠いている。固形腫瘍の腫瘍細胞は、固形腫瘍から分離された腫瘍細胞上のCD38発現が、対照と比較して、例えば、周知の方法を用いて抗CD38抗体で検出された発現とアイソタイプ対照抗体で検出された発現とを比較して、統計的に有意でない場合、検出可能なCD38発現を欠いている。これは、例えば、腫瘍から生検などの生物学的サンプルを採取することによって、試験することができる。
【0336】
いくつかの態様では、前記がんは、CD38を発現するT制御性細胞を含む患者におけるがんである。
【0337】
特定の態様では、抗体バリアントは、治療上有効な量でかつ/またはがんを治療するのに十分な期間にわたり投与される。
【0338】
代謝障害:
一局面では、前記疾患または障害は、代謝障害である。すなわち、患者は代謝障害を患っている。
【0339】
いくつかの態様では、代謝障害はアミロイドーシスである。アミロイドーシスは、組織内に不溶性タンパク質の沈着物が存在することによって定義される疾患の広大なグループである。その診断は組織学的所見に基づいて行われる。さらなる態様では、前記アミロイドーシスは、ALアミロイドーシスであり得る。
【0340】
患者:
本発明の抗体バリアントは、1つまたは複数の化合物を用いて疾患または障害に対する少なくとも1つの治療を以前に受けたことがある対象における同じ疾患または障害の治療または予防用であり得る;ここで、該1つまたは複数の化合物は、本発明の抗体バリアントとは異なっている。一態様では、前記疾患または障害は、本明細書に記載された任意の疾患または障害であってよく、例えば、CD38を発現する細胞が関与するがん、炎症性および/または自己免疫性の疾患または障害、あるいはCD38を発現する細胞が関与する代謝性の障害であり得る。
【0341】
例えば、いくつかの態様では、本発明の抗体バリアントは、プロテアソーム阻害薬(PI)および/または免疫調節薬(IMiD)による治療を以前に受けたことがある対象における疾患または障害の治療または予防用であり得る。プロテアソーム阻害薬の例としては、ボルテゾミブ、カーフィルゾミブおよびイクサゾミブが挙げられるが、これらに限定されない。IMiDの例としては、サリドマイド、レナリドマイドおよびポマリドマイドが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる態様では、前記疾患または障害は、がんまたは腫瘍、例えば、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫または骨髄異形成症候群(MDS)であり得る。それゆえ、前記対象は、がん患者、例えば、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫または骨髄異形成症候群(MDS)の患者であり得る。
【0342】
本発明の抗体バリアントは、抗CD38抗体による治療を以前に受けたことがない対象における疾患または障害の治療または予防用であり得る。通常、そのような対象または患者は、抗CD38抗体ナイーブ患者と呼ばれる。一態様では、抗CD38抗体はダラツムマブである;すなわち、該対象または患者は、ダラツムマブによる治療を以前に受けたことがない。それゆえ、一態様では、該対象または患者は、ダラツムマブナイーブ対象/患者である。前記疾患または障害は、本明細書に開示される任意の局面または態様によるがんまたは腫瘍、あるいはアミロイドーシスなどの代謝性疾患であり得る。
【0343】
本発明はまた、CD38抗体を含む少なくとも1つの治療を以前に受けたことがある対象における疾患または障害の治療または予防に使用するための抗体バリアントを提供する。
【0344】
本発明はまた、CD38抗体を含む少なくとも1つの治療を以前に受けたことがあるがん患者を治療する際に使用するための抗体バリアントを提供する。本発明はまた、CD38抗体を含む少なくとも1つの治療を以前に受けたことがある、アミロイドーシスなどの代謝性疾患の患者を治療する際に使用するための抗体バリアントを提供する。そのような以前の治療は、CD38抗体を含む計画された治療プログラムの1つまたは複数のサイクル、例えば、単剤療法または併用療法でのCD38抗体の1つまたは複数の計画されたサイクル、ならびに計画的に投与される一連の治療であった可能性がある。一態様では、以前の治療はCD38抗体単剤療法であった。一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む併用療法であった。例えば、以前の治療は、プロテアソーム阻害薬(PI)および免疫調節薬と併用するCD38抗体であった可能性がある。ある態様では、CD38抗体はダラツムマブである。
【0345】
いくつかの局面では、がん患者はまた、単剤療法としてのダラツムマブの投与が限定的な効果を有する患者であり得る。
【0346】
いくつかの局面では、前記がんは、以前の治療に対して「難治性」または「再発性」であるがんとして特徴付けることができる。さらなる態様では、以前の治療は、PI、IMiD、およびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含むことができ、例えば、CD38抗体はダラツムマブである。典型的には、これは、以前の治療が完全奏効(CR)に達しなかったこと、例えば、がんがCD38抗体の単剤療法または併用療法に非応答性であったこと、またはがんがCD38抗体療法の終了後の所定の期間内に進行したこと、を示している。そのような併用療法の例には、CD38抗体とPIもしくはIMiDとの組み合わせ、またはPIとIMiDとの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。同様に、それは、以前の治療が完全奏効(CR)に達しなかったこと、例えば、がんがPI、IMiD、またはそれらの併用療法に非応答性であったこと、またはがんが該治療の終了後の所定の期間内に進行したこと、を示すかもしれない。当業者は、がんが以前の治療に対して難治性であるかどうかを、利用可能な各がんのガイドラインを含めて、当技術分野で知られていることに基づいて、判断することができる。
【0347】
例えば、多発性骨髄腫では、難治性および再発性疾患は、国際骨髄腫ワークショップコンセンサスパネルを代表してRajkumar、Harousseauらが発表したガイドライン、Consensus recommendations for the uniform reporting of clinical trials: report of the International Myeloma Workshop Consensus Panel, Blood 2011;117:4691-4695に従って特定することができる:
【0348】
難治性骨髄腫は、一次療法またはサルベージ療法中に非応答性である疾患、または最後の治療から60日以内に進行する疾患と定義することができる。非応答性の疾患は、治療中に最小限の奏効しか達成できないか、または進行性疾患(PD)を発症するとして定義される。難治性骨髄腫には、「再発・難治性骨髄腫」と「原発性難治性骨髄腫」の2つのカテゴリーが存在し得る。
【0349】
再発・難治性骨髄腫は、サルベージ療法中に非応答性である疾患、または以前にある時点で最小奏効(MR)以上の奏効を達成したが、その後疾患の経過中に進行した患者において最後の治療から60日以内に進行する疾患、として定義することができる。
【0350】
原発性難治性骨髄腫は、どのような治療を行っても最小奏効以上の奏効を達成したことがない患者において、非応答性である疾患として定義することができる。それには、MR以上を決して達成しない患者であって、Mタンパク質に有意な変化がなくかつ臨床的進行の証拠がない患者、ならびに患者が真のPDの基準を満たす原発性難治性のPDが含まれる。原発性難治性患者の治療効果を報告する際には、これら2つのサブグループ(「非応答・非進行性」および「進行性」)における有効性を個別に記載する必要がある。
【0351】
再発骨髄腫は、以前に治療を受けた骨髄腫であって、進行してサルベージ療法の開始を必要とするが、「原発性難治性骨髄腫」または「再発・難治性骨髄腫」のいずれのカテゴリーの基準も満たさない骨髄腫と定義することができる。
【0352】
多発性骨髄腫における特定の応答(CR、PRなど)およびそれらの試験方法の詳細については、Rajkumar, Harousseau et al., 2011 (前出)を参照されたい。
【0353】
したがって、いくつかの態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、または該抗体バリアントを含む薬学的組成物は、PI、IMiDおよびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含む以前の治療に対して難治性であるがんの治療に使用するためのものである。一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む。特定の態様では、そのがんは使用前に難治性のがんであると確認される。
【0354】
別の態様では、対象におけるがんを治療するための方法が提供され、この方法は、以下の段階:
(i)PI、IMiDおよびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含む以前の治療に対して不応であるとして該対象を特定する段階;および
(ii)該対象に、治療上有効な量の、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、または該抗体バリアントを含む薬学的組成物を投与する段階
を含む。
【0355】
一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む。
【0356】
別の態様では、対象における、PI、IMiDおよびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含む以前の治療に対して難治性のがんを治療するための方法が提供され、この方法は、該対象に、治療上有効な量の、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、または該抗体バリアントを含む薬学的組成物を投与するステップを含む。一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む。
【0357】
いくつかの態様では、PIは、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、およびイキサゾミブからなる群より選択される。
【0358】
いくつかの態様では、IMiDは、サリドマイド、レナリドマイド、およびポマリドマイドからなる群より選択される。
【0359】
いくつかの態様では、CD38抗体は、ダラツムマブである。
【0360】
いくつかの態様では、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、または該抗体バリアントを含む薬学的組成物は、PI、IMiDおよびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含む以前の治療の後で再発したがんの治療に使用するためのものである。一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む。特定の態様では、そのがんは使用前に再発したがんであると確認される。
【0361】
別の態様では、対象におけるがんを治療するための方法が提供され、この方法は、以下の段階:
(i)PI、IMiDおよびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含む以前の治療の後で再発したとして該対象を特定する段階;および
(ii)該対象に、治療上有効な量の、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、または該抗体バリアントを含む薬学的組成物を投与する段階
を含む。
【0362】
一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む。
【0363】
別の態様では、対象における、PI、IMiDおよびCD38抗体のうちの1つまたは複数を含む以前の治療の後で再発したがんを治療するための方法が提供され、この方法は、該対象に、治療上有効な量の、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、または該抗体バリアントを含む薬学的組成物を投与する段階を含む。一態様では、以前の治療はCD38抗体を含む。
【0364】
いくつかの態様では、PIは、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、およびイキサゾミブからなる群より選択される。
【0365】
いくつかの態様では、IMiDは、サリドマイド、レナリドマイド、およびポマリドマイドからなる群より選択される。
【0366】
いくつかの態様では、CD38抗体は、ダラツムマブである。
【0367】
特定の態様では、本発明による抗体バリアントは、治療上有効な量で、かつ/または難治性のがんもしくは再発したがんを治療するのに十分な期間にわたり投与される。
【0368】
いくつかの態様では、難治性がんまたは再発がんは血液のがんである。
【0369】
いくつかの態様では、難治性がんまたは再発がんは、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(成人)(AML)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群より選択される。
【0370】
いくつかの態様では、難治性がんまたは再発がんは、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、および濾胞性リンパ腫(FL)からなる群より選択される。
【0371】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、多発性骨髄腫(MM)である。
【0372】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、慢性リンパ性白血病(CLL)である。
【0373】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、マントル細胞リンパ腫(MCL)である。
【0374】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0375】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、濾胞性リンパ腫(FL)である。
【0376】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、固形腫瘍である。いくつかの態様では、難治性または再発がんは、メラノーマ、肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非扁平上皮NSCLC、結腸直腸がん、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、胃がん(stomach cancer)、卵巣がん、胃がん(gastric cancer)、肝臓がん、膵臓がん、甲状腺がん、頭頸部の扁平上皮がん、食道または胃腸管のがん、乳がん、卵管がん、脳腫瘍、尿道がん、尿生殖器がん、子宮内膜がん、子宮頸がんからなる群より選択される。
【0377】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、メラノーマである。
【0378】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、肺がんである。
【0379】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0380】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、非扁平上皮NSCLCである。
【0381】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、結腸直腸がんである。
【0382】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、前立腺がんである。
【0383】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、去勢抵抗性前立腺がんである。
【0384】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、胃がん(stomach cancer)である。
【0385】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、卵巣がんである。
【0386】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、胃がん(gastric cancer)である。
【0387】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、肝臓がんである。
【0388】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、膵臓がんである。
【0389】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、甲状腺がんである。
【0390】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、頭頸部の扁平上皮がんである。
【0391】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、食道または胃腸管のがんである。
【0392】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、乳がんである。
【0393】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、卵管がんである。
【0394】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、脳腫瘍である。
【0395】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、尿道がんである。
【0396】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、尿生殖器がんである。
【0397】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、子宮内膜がんである。
【0398】
ある態様では、難治性がんまたは再発がんは、子宮頸がんである。
【0399】
自己免疫性および炎症性の疾患および障害:
本発明の別の態様では、CD38を発現する細胞が関与する疾患は、CD38を発現するB細胞、マクロファージ、形質細胞、単球およびT細胞が関与する免疫疾患、例えば、炎症性疾患および/または自己免疫疾患である。CD38を発現するB細胞、形質細胞、単球およびT細胞が関与する免疫疾患の例としては、以下が挙げられる:自己免疫疾患、例えば、乾癬、乾癬性関節炎、皮膚炎、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、呼吸窮迫症候群、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、糸球体腎炎、湿疹、喘息、アテローム性動脈硬化症、白血球接着不全症、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年性糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発性神経障害、免疫介在性血小板減少症、例えば急性特発性血小板減少性紫斑病および慢性特発性血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ(RA)、アトピー性皮膚炎、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ウェゲナー肉芽腫症、オーメン症候群、慢性腎不全、急性感染性単核球症、多発性硬化症、HIV、およびヘルペスウイルス関連疾患。さらなる例は、重度の急性呼吸窮迫症候群および脈絡網膜炎である。さらに、エプスタイン・バーウイルス(EBV)などのウイルスによるB細胞の感染によって引き起こされるかまたは媒介されるものなど、他の疾患および障害が含まれる。
【0400】
一態様では、CD38を発現する細胞が関与する障害は、関節リウマチである。
【0401】
自己抗体および/または過剰なBおよびTリンパ球活性が顕著であり、かつ本発明に従って治療することができる炎症性疾患、免疫疾患および/または自己免疫疾患のさらなる例としては、以下が挙げられる:血管炎および他の血管障害、例えば顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群、および他のANCA関連血管炎、結節性多発動脈炎、本態性クリオグロブリン血症性血管炎、皮膚白血球破砕性血管炎、川崎病、高安動脈炎、巨細胞性関節炎、ヘノッホシェーンライン紫斑病、原発性または孤立性脳血管炎、結節性紅斑、閉塞性血栓動脈炎、血栓性血小板減少性紫斑病(溶血性尿毒症症候群を含む)、および続発性血管炎、例えば皮膚白血球破砕性血管炎(例:B型肝炎、C型肝炎、ワルデンストレームマクログロブリン血症、B細胞新生物、関節リウマチ、シェーグレン症候群、または全身性エリテマトーデスに続発する);さらなる例は、結節性紅斑、アレルギー性血管炎、脂肪織炎、ウェーバー・クリスチャン病、高グロブリン血症性紫斑病、およびバージャー病である;皮膚障害、例えば接触性皮膚炎、線状IgA皮膚症、白斑、壊疽性膿皮症、後天性表皮水疱症、尋常性天疱瘡(瘢痕性類天疱瘡および水疱性類天疱瘡を含む)、円形脱毛症(全身性脱毛症および全頭脱毛症を含む)、疱疹状皮膚炎、多形紅斑、および慢性自己免疫性蕁麻疹(血管神経性浮腫および蕁麻疹様血管炎を含む);免疫介在性血球減少症、例えば自己免疫性好中球減少症、および純赤血球無形成症;結合組織障害、例えばCNSループス、円板状エリテマトーデス、CREST症候群、混合性結合組織病、多発性筋炎/皮膚筋炎、封入体筋炎、続発性アミロイドーシス、クリオグロブリン血症I型およびII型、線維筋痛症、リン脂質抗体症候群、二次性血友病、再発性多発軟骨炎、サルコイドーシス、スティフマン症候群、およびリウマチ熱;さらなる例は好酸球性筋膜炎である;関節炎、例えば強直性脊椎炎、若年性慢性関節炎、成人スティル病、およびSAPHO症候群;さらなる例は仙腸骨炎、反応性関節炎、スティル病、および痛風である;血液障害、例えば再生不良性貧血、原発性溶血性貧血(寒冷凝集素症を含む)、CLLまたは全身性エリテマトーデスに続発する溶血性貧血;POEMS症候群、悪性貧血、およびワルデンシュトレーム高グロブリン血症性紫斑病;さらなる例は、無顆粒球症、自己免疫性好中球減少症、フランクリン病、セリグマン病、ガンマ重鎖病、胸腺腫およびリンパ腫に続発する腫瘍随伴症候群、胸腺腫およびリンパ腫に続発する腫瘍随伴症候群、および第VIII因子阻害剤の形成である;内分泌疾患、例えば多腺性内分泌障害、およびアジソン病;さらなる例は、自己免疫性低血糖症、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性インスリン症候群、ド・ケルバン甲状腺炎、およびインスリン受容体抗体介在性インスリン抵抗性である;肝胃腸障害、例えばセリアック病、ウィップル病、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、および原発性硬化性胆管炎;さらなる例は自己免疫性胃炎である;腎症、例えば急速進行性糸球体腎炎、溶連菌感染後腎炎、グッドパスチャー症候群、膜性糸球体腎炎、およびクリオグロブリン血症性腎炎;さらなる例は微小変化型疾患である;神経障害、例えば自己免疫性ニューロパシー、多発性単神経炎、ランバート・イートン筋無力症候群、シデナム舞踏病、脊髄癆、およびギラン・バレー症候群;さらなる例は、脊髄症/熱帯性痙性麻痺、重症筋無力症、急性炎症性脱髄性多発神経炎、および慢性炎症性脱髄性多発神経炎である;多発性硬化症;心臓および肺の障害、例えばCOPD、線維性肺胞炎、閉塞性細気管支炎、アレルギー性アスペルギルス症、嚢胞性線維症、レフラー症候群、心筋炎、および心膜炎;さらなる例は過敏性肺炎、および肺がんに続発する腫瘍随伴症候群である;アレルギー性疾患、例えば気管支喘息および高IgE症候群;さらなる例は一過性黒内障である;眼科障害、例えば特発性脈絡網膜炎;感染性疾患、例えばパルボウイルスB感染症(ハンド・アンド・ソックス(hands-and-socks)症候群を含む);婦人科-産科疾患、例えば反復流産、習慣性流産、および子宮内胎児発育遅延;さらなる例は婦人科腫瘍に続発する腫瘍随伴症候群である;男性生殖障害、例えば精巣腫瘍に続発する腫瘍随伴症候群;ならびに移植由来の疾患、例えば同種移植拒絶反応、異種移植拒絶反応、および移植片対宿主病。
【0402】
一態様では、前記疾患または障害は、関節リウマチである。
【0403】
投与計画および併用
上記の治療方法および使用方法における投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が得られるように調整される。例えば、単回のボーラスを投与してもよいし、いくつかに分割した用量を経時的に投与してもよいし、治療状況の必要性に応じて用量を比例的に減少または増加させてもよい。非経口組成物は、投与を容易にしかつ投与量を均一にするために、単位剤形として製剤化することができる。
【0404】
抗体バリアントの効率的な投与量および投与計画は、治療される疾患または病状により変化し、当業者によって決定され得る。本発明の抗体バリアントの治療有効量の例示的な非限定的範囲は、約0.001~30mg/kgである。
【0405】
抗体バリアントはまた、がんの発症リスクを減らし、がん進行における事象の発生開始を遅らせ、かつ/またはがんが寛解状態にある場合には再発リスクを低減させるために、予防的に投与することもできる。
【0406】
抗体バリアントはまた、併用療法で、すなわち、治療される疾患または病状に関連する他の治療薬または治療法と組み合わせて、投与することもできる。
【0407】
したがって、一態様では、抗体バリアントは、1つまたは複数のさらなる治療薬、例えば、化学療法剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤および/もしくは免疫調節剤、例えば別の治療用抗体、と併用するためのものである。そのような併用投与は、同時、別個、または逐次的であり得る。同時投与の場合、薬剤は、必要に応じて、1つの組成物として、または別々の組成物として投与することができる。
【0408】
抗体バリアントはまた、放射線療法および/または外科手術および/または自家もしくは同種異系の末梢幹細胞移植または骨髄移植と組み合わせて使用することができる。
【0409】
診断への応用
さらなる局面では、任意の局面または態様による抗体バリアントを含む診断用組成物およびその使用もまた、例えば、上に例示されたCD38発現細胞が関与する疾患のために、企図される。抗体バリアントは、例えば、放射性薬剤(本明細書の他の箇所に記載)または放射線不透剤で標識され得る。一態様では、診断用組成物は、抗体バリアントによる治療から利益を得ると考えられる患者のスクリーニングおよび選択に使用されるコンパニオン診断剤である。
【0410】
一態様では、本発明は、診断方法において使用するための、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、組成物またはキット・オブ・パーツの使用に関する。
【0411】
一態様では、本発明は、ヒトまたは他の哺乳動物の体の少なくとも一部に、本明細書の任意の局面または態様によるポリペプチド、抗体、組成物またはキット・オブ・パーツを投与する段階を含む診断方法に関する。
【0412】
別の態様では、本発明は、ヒトまたは他の哺乳動物の体の少なくとも一部のイメージングにおける、本明細書の任意の局面または態様による抗体バリアント、組成物またはキット・オブ・パーツの使用に関する。
【0413】
別の態様では、本発明は、ヒトまたは他の哺乳動物の体の少なくとも一部をイメージングするための方法であって、本明細書に記載の任意の局面または態様によるバリアント、組成物またはキット・オブ・パーツを投与する段階を含む方法に関する。
【0414】
(表1)アミノ酸配列および核酸配列
【実施例
【0415】
本発明は、限定として解釈されるべきではないが、以下の実施例によってさらに例示される。
【0416】
実施例1:抗体および細胞株
抗体発現構築物
本明細書で使用するヒト抗体およびヒト化抗体の発現のために、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)配列を遺伝子合成(GeneArt遺伝子合成;ThermoFisher Scientific社)により調製し、ヒトIgG重鎖の定常領域(HC)(定常領域ヒトIgG1m(f) HC:SEQ ID NO:20)および/またはヒトκ軽鎖の定常領域(LC):SEQ ID NO:37を含むpcDNA3.3発現ベクター(ThermoFisher Scientific社)中にクローニングした。所望の変異を遺伝子合成により導入した。本願のCD38抗体バリアントは、以前に記載されたCD38抗体IgG1-A(WO 2006/099875 A1, WO 2008/037257 A2, WO 2011/154453 A1;VH:SEQ ID NO:10;VL:SEQ ID NO:11)、IgG1-B(WO 2006/099875 A1, WO 2008/037257 A2, WO 2011/154453 A1;VH:SEQ ID NO:8;VL:SEQ ID NO:9)、およびIgG1-C(WO 2011/154453 A1;VH:SEQ ID NO:1;VL:SEQ ID NO:5)に由来するVHおよびVL配列を有する。一部の実験では、HIV gp120特異的抗体であるヒトIgG1抗体b12を陰性対照として使用した(Barbas et al., J Mol Biol. 1993 Apr 5;230(3):812-23;VH:SEQ ID NO:12;VL:SEQ ID NO:16)。
【0417】
一過性発現の抗体構築物
抗体の重鎖と軽鎖の両方をコードするプラスミドDNA混合物を、本質的にVinkら(Vink et al., 2014 Methods 65(1):5-10)によって記載されるように、293fectin(Life Technologies社)を用いてExpi293F細胞(Gibco社, カタログ番号A14635)に一過性にトランスフェクトした。上清中の抗体濃度を280nmでの吸光度により測定した。抗体含有上清をインビトロアッセイで直接使用するか、または抗体を以下に記載するように精製した。
【0418】
抗体の精製と品質評価
抗体は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。培養上清を0.20μMデッドエンド(dead-end)フィルターでろ過し、5mLのMabSelect SuReカラム(GE Healthcare社)にロードし、洗浄して、0.02Mクエン酸ナトリウム-NaOH、pH3で溶出した。溶出物を精製直後にHiPrep Desaltingカラム(GE Healthcare社)にロードし、抗体を12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl、pH7.4バッファー(B.Braun社またはThermo Fisher社)にバッファー交換した。バッファー交換後、サンプルを0.2μmデッドエンドフィルターで滅菌ろ過した。精製したタンパク質を、ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲルでのキャピラリー電気泳動(CE-SDS)、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)などの、いくつかの生物学的アッセイにより分析した。濃度を280nmでの吸光度で測定した。精製した抗体は2~8℃で保存した。
【0419】
実施例で使用した細胞株を以下の表2に記載する。細胞あたりのCD38およびCD59分子の平均数は、定量的フローサイトメトリー(Qifi, DAKO社)で測定した。
【0420】
(表2)細胞株の概要およびCD38とCD59の発現
ABC=細胞あたりに結合した抗体(Antibodies Bound per Cell)
【0421】
細胞株の起源/供給源は以下の通りである:
【0422】
実施例2:細胞表面に発現されたヒトおよびカニクイザルCD38へのCD38抗体とそのバリアントの結合
Daudi細胞およびNALM16細胞上ならびにカニクイザル由来のPBMC上の細胞表面に発現したCD38への結合は、フローサイトメトリーで測定した。0.2%BSAを含むRPMIに再懸濁した細胞を、ポリスチレン製の96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one社)に100,000細胞/ウェルで播種し、300×g、4℃で3分間遠心分離した。CD38抗体または対照抗体の段階希釈液(3倍段階希釈での最終抗体濃度0.005~10μg/mL)を加え、細胞を4℃で30分間インキュベートした。プレートをFACSバッファー(PBS/0.1%BSA/0.01%アジ化Na)を用いて2回洗浄/遠心分離した。次に、カニクイザルPBMCの分析のために、PBS/0.1%BSA/0.01%アジ化Naで1/100に希釈したR-フィコエリトリン(PE)結合ヤギ抗ヒトIgG F(ab')2(Jackson社)またはFITC結合ヤギ抗ヒトIgG(Southern Biotech社)と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を、FACSバッファーを用いて2回洗浄/遠心分離し、FACSバッファーに再懸濁し、FACS_Fortessa(BD社)を使用して平均蛍光強度を測定することで分析した。結合曲線は、GraphPad Prism V6.04ソフトウェア(GraphPad Software社)内の非線形回帰(可変傾斜を有するシグモイド用量-反応)分析を使用して作成した。
【0423】
図2は、CD38抗体であるIgG1-B、IgG1-CおよびIgG1-AがCD38を発現するNALM16細胞に用量依存的に結合することを示す。これらの抗体に六量体化を促進するE430G変異を導入しても、結合に影響はなかった。
【0424】
図3は、CD38抗体のIgG1-A-E430Gが、カニクイザルPBMC上に発現したCD38に用量依存的に結合するが、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gは結合しないことを示す(A)。カニクイザルB細胞、T細胞およびNK細胞上に発現したCD38への平均結合が示され、FSCおよびSSCに基づいてゲーティングされる。陽性対照として、高コピー数のヒトCD38を発現するDaudi細胞への結合も示される(B)。
【0425】
実施例3:E430G変異型CD38抗体による補体依存性細胞傷害(CDC)
腫瘍細胞株に対するCDC
Daudi細胞、Wien133細胞、Ramos細胞、NALM16細胞、U266細胞、およびRC-K8細胞を、0.2%BSAを含むRPMIに再懸濁し、ポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one社)に1×105細胞/ウェル(40μL/ウェル)の密度でプレーティングした。CD38抗体、そのバリアント、およびアイソタイプ対照抗体を段階希釈し(3倍段階希釈での最終抗体濃度0.0002~10μg/mL)、ウェルあたり40μLの希釈した抗体を添加した。細胞と抗体を室温で20分間プレインキュベートした後、プールした正常ヒト血清(Sanquin社)20μLを各ウェルに添加し、37℃でさらに45分間インキュベートした。その後、プレートを遠心分離し(3分、1200rpm)、上清を廃棄した。細胞ペレットを、0.25μMのtopro-3ヨウ化物(Life Technologies社)を添加したFACSバッファーに再懸濁し、FACS_Fortessa(BD社)でtopro-3ヨウ素陽性細胞の割合を測定することで溶解を検出した。CDCは溶解パーセントとして描かれた。示したデータは、N=3(DaudiおよびNALM16)、N=2(Wien133細胞およびU266細胞)、またはN=1(RC-K8およびRamos)である。アイソタイプ対照抗体は、Daudi細胞およびWien133細胞にのみ含めた。
【0426】
図4は、E430G変異のないCD38抗体B、C、およびAが、Ramos細胞およびDaudi細胞の約85%、約50%、および0%の溶解を誘導することを実証する。これらのCD38抗体による顕著な溶解は、試験した他の細胞株のいずれにも見られなかった。これらのCD38抗体にE430G変異を導入すると、著しく低い抗体濃度で、より高いCDC活性が得られた。E430G変異を持つ3種の抗体はいずれも、Ramos細胞およびDaudi細胞の最大100%の溶解を誘導した。さらに、CD38発現がより低い細胞株では、E430G変異型CD38抗体は最大限の(Wien133)または部分的な(NALM16およびU266)CDCを誘導できたが、E430G変異のないCD38抗体はCDCを誘導しなかった。これらの結果は、E430G変異を持つCD38抗体が、E430G変異のないCD38抗体と比較して、より強いCDCを誘導し、かつ必要なCD38発現がより少なくて済むことを示している。CD38発現レベルが低い腫瘍細胞(NALM-16、RS4;11、およびREH)では、IgG1-C-E430GはIgG1-B-E430Gと比較して低いEC50値を示した。
【0427】
(表3)溶解のEC50値
一部の細胞株は1回だけ試験された(Ramos、RS4;11、REH)。
【0428】
上記のCDCアッセイを、B細胞腫瘍、例えば、DLBCL、バーキットリンパ腫、FL、MCL、B-ALL、CLL、またはMMに由来する、いくつかのさらなる腫瘍細胞株と、抗体IgG1-B、IgG1-B-E430G、IgG1-C-E430G、IgG1-A-E430Gおよびアイソタイプ対照抗体とを用いて、繰り返した。溶解パーセントを抗体濃度に対してプロットし、最大溶解パーセントとEC50値をGraphpad Prism(GraphPad Software社;バージョン8.1.0)ソフトウェアを用いて計算し、表4に示した。これらの結果は図14にも示される。
【0429】
図14は、野生型CD38 mAb IgG1-Bが、高CD38発現細胞株:SU-DHL-8、Oci-LY-7、Oci-LY-19、Ramos、Daudi、Oci-LY-18およびRajiの溶解を誘導したが、膜上にCD38分子をあまり発現しない他の細胞株では誘導しなかったことを示す。IgG1-BにE430G変異を導入すると、野生型IgG1-Bにすでに感受性であった細胞株では著しく低いAb濃度で高いCDC活性が得られ、また、IgG1-B誘導CDCに非感受性であったCD38コピー数のより低い追加の細胞株(例:DOHH2、SU-DHL-4、WSU-DLCL2、Z-138、JVM-13、REH、Jeko-1、Wien-133、697、RS4;11、NALM-16およびJVM-3)の溶解が生じた。CD38発現が非常に低い細胞株(RC-K8およびPfeiffer)またはCD59発現が非常に高い細胞株(DBおよびGranta-519)は、IgG1-BおよびIgG1-B-E430Gへの曝露時に溶解を示さなかった。試験したほぼ全ての細胞株において、IgG1-C-E430GはIgG1-B-E430Gと比較して低い抗体濃度で細胞溶解を誘導したのに対し、IgG1-A-E430Gははるかに高いAb濃度で溶解を誘導した。これは、表4のIgG1-A-E430Gのより高いEC50値にも反映されている。これは、E430G変異型CD38 mAbが野生型CD38抗体と比較してより強力なCDCを誘導し、かつ野生型CD38抗体がCDCを誘導しないCD38発現レベルの低い腫瘍細胞に対してCDCを誘導することを示している。さらに、CDCを誘導するE430G変異型CD38抗体の効力は、さまざまなCD38ターゲティング抗体クローン間で異なっている可能性がある。
【0430】
図15は、表4に示されたEC50値のいくつかの概要を示す。20種の異なるB細胞腫瘍細胞株で抗体IgG1-B、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430Gによって誘導されたCDCのEC50値が示される。各正方形、三角形または円は、異なるB細胞腫瘍細胞株を表している。IgG1-B-E430GはAML細胞株で試験されなかったため、AML細胞株で得られたEC50値を含めなかった。
【0431】
IgG1-C-E430GによるCDCはまた、いろいろな急性骨髄性白血病(AML)細胞株で評価された(図16)。それはB細胞腫瘍細胞株について上述したように行われ、唯一の違いは腫瘍細胞株であった。
【0432】
図16は、CDCが全てのCD38発現AML細胞株でIgG1-C-E430Gによって誘導されたのに対し、CD38陰性AML細胞株ではCDCが観察されなかったことを示している。IgG1-C-E430GによるCDCは、IgG1-Bと比較してはるかに低いEC50値で起こったが、最大細胞溶解は、IgG1-Bと比較してIgG1-C-E430Gの方が高かった(表4)。
【0433】
(表4)最大溶解および溶解のEC50値
【0434】
さらに、野生型およびE430G変異型CD38抗体によるT制御性細胞を用いたCDCの誘導についても調べた。T制御性細胞を、実施例8(T制御性細胞からのCD38のトロゴサイトーシス)に記載されるように作成して、腫瘍細胞株について上述したようにCDCアッセイで試験した。溶解のパーセントをEC50値と共に図17に示す。
【0435】
図17は、IgG1-BがT制御性細胞の溶解を実質的に誘導しなかったことを示している;一方、IgG1-B-E430GおよびIgG1-C-E430GはT制御性細胞の溶解を誘導し、その場合にIgG1-C-E430GはIgG1-B-E430Gと比較して低いEC50値を示した。
【0436】
全血におけるCDC
健康なドナーからの全血をヒルジンチューブに収集し、生理的カルシウムレベル(CDCに必要)に干渉することなく凝固を防止した。50μL/ウェルを96ウェル平底組織培養プレート(Greiner bio-one社)にプレーティングした。CD38抗体、それらのバリアントおよび対照抗体を、0.2%BSAを含むRPMIで段階希釈し(5倍段階希釈での最終抗体濃度0.016~10μg/mL)、ウェルあたり50μLの希釈抗体を添加して37℃で一晩インキュベートした。B細胞に対するCDCの陽性対照として、CD20 Ab IgG1-7D8を、CDCをブロックするための60μg/mLのエクリズマブの存在下および非存在下で、試験した。細胞をポリスチレン製96ウェル丸底プレート(Greiner bio-one社、遠心分離型)に移し、遠心分離し(3分、1200rpm)、ウェルあたり150μLのPBS(B.Braun社)で1回洗浄した。細胞ペレットを、1000倍希釈したアミン反応性生死判別色素(BD社)を含む80μLのPBSに再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。次に、細胞を150μLのPBSで洗浄し、リンパ球フェノタイピング抗体のカクテル(1:200マウス抗ヒトCD3-EF450[OKT3、ebioscience社]、1:50マウス抗ヒトCD19-BV711[HIB19、Biolegend社]および1:100マウス抗ヒトCD56-PE/CF594[NCAM16.2、BD社])を含む80μLのPBSと共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を150μLのPBSで洗浄し、150μLの赤血球溶解液(10mM KHCO3[Sigma社]、0.01mM EDTA[Fluka社]、155mM NH4Cl[Sigma社]を1LのH2O[B.Braun社]に溶解して、pH7.2に調整した)と共に4℃で10分間インキュベートした。細胞を150μLのFACSバッファーで洗浄し、100μLのFACSバッファーに再懸濁し、FACS_Fortessa(BD社)で分析した。生存NK細胞(CD56pos、CD3neg、アミン反応性生死判別色素neg)、T細胞(CD3pos、アミン反応性生死判別色素neg)、およびB細胞(CD19pos、アミン反応性生死判別色素neg)の数を図5に示す。データは、試験した5人のうち1人の代表的なドナーからのデータが示されている。
【0437】
図5は、E430G変異を含むCD38抗体が、健康な血液リンパ球の最小限のCDCを誘導することを示している。陽性対照CD20 Ab IgG1-7D8は、CD20陽性B細胞の特異的CDCを実証したが、これはCDC阻害剤エクリズマブによって完全にブロックされた。野生型IgG1 CD38抗体はB細胞、T細胞およびNK細胞のCDCを誘導しなかった。E430G変異を含むクローンBおよびCと共にインキュベートした後のNK細胞では、いくらかのCDC(IgG1-B-E430Gの最高濃度で約40%のNK細胞溶解)が観察されたが、B細胞とT細胞では観察されなかった。
【0438】
全体として、これらの結果は、E430G変異型CD38抗体が、可変的なCD38発現を有する腫瘍細胞株のパネルに対して幅広いCDC活性を有することを示している。E430G変異を含むCD38抗体はまた、健康なドナーから得られたリンパ球に対しても試験されたが、NK細胞の最大40%の溶解を誘導するにすぎないことが示された。NK細胞は平均15,000のCD38/細胞を発現しており、これはMM細胞株U266に類似している。どちらの細胞型もE430G変異型CD38抗体によるCDCに等しく感受性であり、E430G変異型CD38抗体によるCDCがCD38発現と相関していることが示される。理論に限定されるものではないが、これらのデータに基づいて、E430G変異型CD38抗体によるCDCの閾値は、約15,000のCD38分子/細胞であると考えられる。ほとんどのB細胞腫瘍細胞株は15,000~400,000のCD38分子/細胞の範囲の高レベルのCD38を発現しているが、健康なリンパ球はたった2,000~15,000のCD38分子/細胞を発現しているにすぎないため、これらの細胞はE430G変異型CD38抗体によるCDCに対して傷つきにくくなる。
【0439】
実施例4:E430G変異型CD38抗体による抗体依存性細胞傷害(ADCC)
抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導するE430G変異型CD38抗体の能力を、クロム放出アッセイにより調べた。Daudi細胞を2mLの培養培地(0.2%BSAを添加したRPMI 1640)に採取し(5×106細胞/mL)、それに100μCiの51Cr(クロム-51; PerkinElmer社)を添加した。細胞を37℃の水浴中で振盪しながら1時間インキュベートした。細胞を洗浄(PBS中1500rpm、5分で2回)した後、細胞を培養培地に再懸濁し、トリパンブルー排除によりカウントした。細胞を1×105細胞/mLの密度に希釈し、96ウェル丸底マイクロタイタープレート(Greiner Bio-One社)にピペットで移し、培養培地で希釈した、50μLの濃度系列(3倍希釈での最終濃度0.005~10μg/mL)のCD38抗体またはアイソタイプ対照抗体を添加した。細胞をAbと共に室温(RT)で15分間プレインキュベートした。
【0440】
その間に、健康なボランティア由来の末梢血単核細胞(PBMC)(Sanquin社)を、メーカーの指示に従ってリンパ球分離培地(Bio Whittaker社)を用いて、45mLの採血したてのヘパリン血液(バフィーコート)から分離した。細胞を培養培地に再懸濁した後、トリパンブルー排除により細胞をカウントし、1×107細胞/mLの密度に希釈した。
【0441】
標的細胞とAbとをプレインキュベートした後、50μLのエフェクター細胞を添加して、エフェクター細胞対標的細胞比を100:1にした。細胞を37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。最大溶解を測定するために、50μLの51Cr標識Daudi細胞(5,000個)を100μLの5%Triton-X100とインキュベートした;自然溶解(バックグラウンド溶解)を測定するために、5,000個の51Cr標識Daudi細胞を、抗体またはエフェクター細胞を含まない培地150μL中でインキュベートした。抗体非依存性細胞溶解のレベルは、5,000個のDaudi細胞を抗体なしで500,000個のPBMCとインキュベートすることによって測定した。プレートを遠心分離し(1200rpm、10分)、75μLの上清をマイクロニックチューブに移し、その後、放出された51Crをガンマカウンターを用いてカウントした。抗体を介した溶解の割合は、次のように計算した:
特異的溶解%=(cpmサンプル-cpm自然溶解)/(cpm最大溶解-cpm自然溶解)
ここで、cpmは1分あたりのカウント数である。
【0442】
図6は、アイソタイプ対照(IgG1-b12-E430G)と比較して、CD38抗体で見られた溶解の増加によって示されるように、全てのCD38抗体がDaudi細胞の溶解を誘導できたことを示している。すでに最低の抗体濃度で細胞溶解が認められ、用量依存的効果を観察するために抗体をさらに希釈する必要があったことを示唆している。E430G変異を含むCD38抗体は、野生型抗体と比較して、より低い最大溶解を示した。
【0443】
上記のクロム放出アッセイを、さまざまな健康なボランティア由来の末梢血単核細胞(エフェクター細胞)、次の標的細胞:Daudi、Wien-133、Granta 519およびMEC-2、ならびに抗体IgG1-B-E430G、IgG1-B、IgG1-C-E430G、IgG1-CおよびIgG1-b12-E430Gを用いて繰り返した。それらの結果を図18に示す。
【0444】
図18は、アイソタイプ対照(IgG1-b12-E430G)と比較して、CD38抗体で見られた溶解の増加によって示されるように、全てのCD38抗体がDaudi細胞、Wien-133細胞、Granta 519細胞およびMEC-2細胞の溶解を誘導できたことを示している。ほとんどの場合、用量依存的な標的細胞の溶解が見られたが、異なるPBMCドナー間でいくらかの変動が観察された。
【0445】
ADCCを誘導するCD38抗体の能力は、ADCCのサロゲートとして、FcγRIIIa(CD16)架橋を検出する発光ADCCレポーターバイオアッセイ(Promega社,カタログ番号G7018)を用いて、さらに評価された。エフェクター細胞として、キットは、高親和性FcγRIIIa(V158)と、ホタルルシフェラーゼの発現を駆動する活性化T細胞の核因子(NFAT)応答エレメントとを安定して発現するように改変されたJurkatヒトT細胞を提供する。簡潔に述べると、Daudi細胞またはT制御性細胞(5,000細胞/ウェル)を、384ウェル白色Optiplates(Perkin Elmer社)に、ADCCアッセイバッファー[3.5%の低IgG血清を添加したRPMI-1640培地(Lonza社,カタログ番号BE12-115F)]で播種し、抗体濃度系列(3.5倍希釈での最終濃度0.5~250ng/mL)および解凍したADCCバイオアッセイエフェクター細胞を含む総量30μLで、37℃/5%CO2にて6時間インキュベートした。プレートを室温(RT)へと15分間調整した後、30μLのBio Gloアッセイルシフェラーゼ試薬を添加し、プレートをRTで5分間インキュベートした。ルシフェラーゼ産生を、EnVisionマルチラベルリーダー(Perkin Elmer社)での発光読み取りによって定量化した。バックグラウンドレベルは、標的細胞と抗体のみを添加したウェル(エフェクター細胞なし)から測定した。陰性対照として、標的細胞とエフェクター細胞のみを含むウェル(抗体なし)を使用した。
【0446】
図7は、Daudi細胞で得られた結果を示しており、これは、CD38抗体がレポーターアッセイで測定される用量依存的なFcγRIIIa架橋を誘導するのに非常に効果的であることを示している。E430G変異を含むCD38抗体は、それぞれの野生型抗体と比較して、より低い最大架橋を示し、これは、クロム放出アッセイで得られた結果と一致していた。
【0447】
図19は、T制御性細胞で得られた結果を示しており、これは、CD38抗体がレポーターアッセイで測定される用量依存的なFcγRIIIa架橋を誘導するのに非常に効果的であることを示している。E430G変異を含むCD38抗体は、それぞれの野生型抗体と比較して、より低い最大架橋を示した。
【0448】
実施例5:E430G変異型CD38抗体による抗体依存性細胞貧食(ADCP)
抗体依存性細胞貧食を誘導するE430G変異型CD38抗体の能力は、Overdijk M.B. et al. mAbs 7:2,311-320から適合させた。マクロファージを、メーカーの指示に従ってリンパ球分離培地(Bio Whittaker社)を用いて、健康なボランティア由来のPBMC(Sanquin社)を分離することによって取得した。PBMCから、Dynabeads Untouchedヒト単球分離キット(Invitrogen社)を用いて、ネガティブセレクションにより単球を分離した。分離した単球を、50ng/mLのGM-CSF(Invitrogen社)を添加した無血清樹状細胞培地(CellGenix Gmbh)で3日間培養した後、100ng/mLのGM-CSFを添加した無血清樹状細胞培地で2日間培養して、マクロファージの分化を誘導した。分化したマクロファージを、バーゼン液(Life Technologies社)と細胞スクレイピングを用いて剥離させ、CD1a-FITC(BD社)、CD14-PE/Cy7(BD社)、CD40-APC/H7(BD社)、CD80-APC(Miltenyi biotec社)、CD83-PE(BD社)およびCD86-PerCP-Cy5.5(Biolegend社)による染色についてフローサイトメトリーで特徴付けた。マクロファージを96ウェル平底培養プレート(Greiner bio-one社)にウェルあたり100,000細胞で播種し、100ng/mLのGM-CSFを添加した無血清樹状細胞培地中37℃で一晩付着させた。
【0449】
標的細胞(Daudi)を、メーカーの指示に従ってPKH-26(Sigma社)で標識し、10μg/mLのCD38抗体でオプソニン化し(4℃で30分)、FACSバッファーで3回洗浄し、エフェクター:標的(E:T)比5:1でマクロファージに添加した。プレートを300rpmで短時間回転させてエフェクター細胞と標的細胞を近接させ、37℃で45分間インキュベートした。次に、バーゼン液を用いてマクロファージを収集し、CD14-BV605(biolegend社)およびCD19-BV711(biolegend社)で染色した。貧食は、フローサイトメーター(BD社)で測定して、CD14陽性であり、PKH-26に対しても陽性であるが、CD19に対して陰性である(Daudi細胞にのみ付着しているマクロファージを除外するため)マクロファージの割合として表した。
【0450】
図8は、アイソタイプ対照(IgG1-b12およびIgG1-b12-E430G)と比較して、CD38 Abで見られたPKH-29pos、CD14posおよびCD19negマクロファージの割合の増加によって示されるように、全てのCD38 AbがDaudi細胞のADCPを誘導できたことを示している。使用したドナーに応じて、E430G変異を含むCD38抗体は、野生型抗体と比較して、PKH-29pos、CD14posおよびCD19negマクロファージのより高い割合を示し、E430G変異を導入することによってCD38-Ab介在性貧食が増加され得ることを示唆している。
【0451】
実施例6:腫瘍細胞株でのCD38抗体によるアポトーシスの誘導
CD38抗体によるアポトーシス誘導は、腫瘍細胞株をCD38抗体と一晩インキュベートした後、フローサイトメーターで生細胞/死細胞解析を行うことにより調べた。0.2%BSAを含むRPMIに再懸濁した細胞を、96ウェル平底組織培養プレート(Greiner bio-one社)に100,000細胞/ウェルで播種した。CD38抗体または対照抗体の段階希釈液(4倍段階希釈での最終抗体濃度0.01~10μg/mL)を、10μg/mLのヤギ抗ヒトIgG1(Jackson社)の非存在下または存在下で添加して、追加のFc架橋をもたらした。細胞を37℃で一晩インキュベートし、FACSバッファー(PBS/0.1%BSA/0.01%アジ化Na)を用いて2回洗浄/遠心分離し、1:4000希釈のTopro-3ヨウ素(Life Technologies社)を添加したFACSバッファーに再懸濁した。細胞の生死判別についてFACS_Fortessa(BD社)で解析し、アポトーシス(Topro-3ヨウ素陽性)細胞の割合として表した。
【0452】
図9は、野生型CD38抗体およびE430G変異型CD38抗体が単独ではアポトーシスを誘導しなかったが、Fc架橋抗体の添加により約30%のアポトーシスが誘導されたことを示している。野生型CD38抗体とE430G変異型CD38抗体との間に差は見られなかった。
【0453】
実施例7:PBMCの非存在下でのCD38酵素活性の阻害
CD38シクラーゼ活性の阻害
CD38は、NADをcADPRとADPRに変換するエクト型酵素である。こうした活性は、H2Oの存在に依存する。H2Oが存在すると、NADはADPRに変換され(グリコヒドロラーゼ活性)、cADPRはADPRに変換される(ヒドロラーゼ活性)。NADの約95%は(グリコ)ヒドロラーゼ活性を介してADPRに変換される。H2Oの非存在下では、CD38はそのシクラーゼ活性を利用してNADをcADPRに変える。CD38酵素活性の阻害を測定するために、CD38によって処理された後に蛍光を発するNAD誘導体を用いた。
【0454】
図10は、CD38の酵素活性を示す図である。
【0455】
まず、CD38の基質としてニコチンアミドグアニンジヌクレオチドナトリウム塩ホスホジエステラーゼ(NGD,Sigma社)を用いて、CD38シクラーゼ活性の阻害を測定した。CD38の供給源として、異なるCD38発現レベルを有する腫瘍細胞株だけでなく、組換えhisタグ付きCD38細胞外ドメイン(hisCD38)をも使用した。腫瘍細胞(DaudiおよびWien133)を採取し、20mM Tris-HCLで洗浄した。細胞を20mM Tris-HCLに再懸濁し、200,000細胞/ウェルを96ウェル白色不透明プレート(PerkinElmer社)に100μL/ウェルで播種した。hisCD38は、100μL/ウェルの20mM Tris-HCL中に0.6μg/mLで播種した。CD38抗体を20mM Tris-HCLで100μg/mLに希釈し、10μLを細胞およびhisCD38(最終濃度は9μg/mL)に加えて、室温で20分間インキュベートした。対照ウェルは、CD38抗体の代わりにb12抗体を用いて、または抗体を全く用いずに、インキュベートした。次に、20mM Tris-HCLで希釈した10μL(80μM)のNGDをプレートに添加し、直ちにEnvisionマルチラベルリーダー(PerkinElmer社)で励起340nmおよび発光430nmを用いて、蛍光を測定した。NGDの変換は、図11に示された時点で蛍光を測定することにより、プラトーに達するまで、リアルタイムで追跡した。hisCD38では、蛍光を3分ごとに27分間測定し、Daudi細胞では、蛍光を5、15、30、60、120および185分後に測定し、Wien133細胞では、蛍光を5、15、30、60、150、220、300および360分後に測定した。CD38シクラーゼ活性の阻害は、対照と比較した阻害パーセントとして表した;ここで、対照は、hisCD38とNGDを含むが、Abを含まないサンプルである。試験した各条件につき1つの代表的な実験が示される。
【0456】
図11Aは、NGDがhisCD38シクラーゼ活性によって急速に変換されたことを示している。この変換は約9分後に完了した。CD38 Ab Bの存在下では、NGDの最大変換パーセントは約25%減少し、CD38 Ab Cの存在下では、NGDの最大変換パーセントは約50%減少したが、CD38 Ab AはNGDの総代謝回転に影響を与えなかった。CD38シクラーゼ活性の阻害は、E430G変異の存在によって影響されなかった。同様の結果が図11Bおよび11Cで見られたが、そこでは、Daudi細胞およびWien133細胞上に存在するCD38によるNGDの変換率が測定された。NGD変換の反応速度は、Daudi細胞、特にWien133細胞で少し遅かったが、これは、より少ないCD38分子の存在と相関している可能性がある。それにもかかわらず、CD38シクラーゼ活性の25%阻害がAb Bによって誘導され(約25%阻害)、また、CD38シクラーゼ活性の約40%阻害がAb Cによって誘導されたが、Ab Aは何の効果も示さなかった。野生型抗体とE430G変異型抗体は同様の結果を示し、このことは、抗体により媒介されるCD38シクラーゼ活性の阻害にE430G変異が影響を与えないことを示している。
【0457】
実施例8:E430G変異型CD38抗体による抗体依存性トロゴサイトーシス
Daudi細胞でのE430G変異型CD38抗体によるトロゴサイトーシス:
Daudi細胞でのトロゴサイトーシスを誘導するE430G変異型CD38抗体の能力を評価した。マクロファージを、メーカーの指示に従ってリンパ球分離培地(Bio Whittaker社)を用いて、健康なボランティア由来のPBMC(Sanquin社)を分離することによって取得した。PBMCから、Dynabeads Untouchedヒト単球分離キット(Invitrogen社)を用いて、ネガティブセレクションにより単球を分離した。分離した単球を、50ng/mLのGM-CSF(Invitrogen社)を添加した無血清樹状細胞培地(CellGenix Gmbh)で3日間培養した後、100ng/mLのGM-CSFを添加した無血清樹状細胞培地で2日間培養して、マクロファージの分化を誘導した。分化したマクロファージを、バーゼン液(Life Technologies社)と細胞スクレイピングを用いて剥離させ、CD1a-FITC(BD社)、CD14-PE/Cy7(BD社)、CD40-APC/H7(BD社)、CD80-APC(Miltenyi biotec社)、CD83-PE(BD社)およびCD86-PerCP-Cy5.5(Biolegend社)による染色についてフローサイトメトリーで特徴付けた。マクロファージを96ウェル平底培養プレート(Greiner bio-one社)にウェルあたり100,000細胞で播種し、100ng/mLのGM-CSFを添加した無血清樹状細胞培地中37℃で一晩付着させた。
【0458】
標的細胞(Daudi)を、メーカーの指示に従ってPKH-26(Sigma社)で標識し、10μg/mLのCD38抗体でオプソニン化し(4℃で30分)、FACSバッファーで3回洗浄し、エフェクター:標的(E:T)比5:1でマクロファージに添加した。プレートを300rpmで短時間回転させてエフェクター細胞と標的細胞を近接させ、37℃で45分間インキュベートした。
【0459】
図21は、トロゴサイトーシスを測定するために使用されるアッセイのセットアップを示す。
【0460】
CD38発現およびヒトIgG染色は、それぞれFITC結合CD38クローンAおよびヤギ抗ヒトIgG-FITC(Southern Biotech社)とインキュベートすることによって、Daudi細胞上で測定した。CD38を染色するためにCD38クローンAを使用したが、それは、このAbがクローンBおよびCと比較してCD38上の非重複エピトープを認識するためである。
【0461】
図12は、マクロファージおよびCD38抗体との45分間の共培養を行った後に、Daudi細胞上のCD38発現が著しく低下したことを示している。CD38発現の低下は、E430G変異型CD38抗体で最も強かった。同じ傾向が、抗体オプソニン化Daudi細胞でのヒトIgG染色でも見られた。
【0462】
T制御性細胞でのE430G変異型CD38抗体によるトロゴサイトーシス:
CD38発現が高いT制御性細胞(Treg)は、CD38発現が中程度のTregと比較して免疫抑制性が高い(Krejcik J. et al. Blood 2016 128:384-394)。そのため、Treg上のCD38発現を低下させる戦略は、これらの細胞の免疫抑制効果を低減させる可能性がある。本発明者らは、E430G変異型CD38抗体がトロゴサイトーシスを介してTregでのCD38発現を低下させることができるかどうかを検討した。Tregは、メーカーの指示に従ってリンパ球分離培地(Bio Whittaker社)を用いて、健康なボランティア由来のPBMC(Sanquin社)から分離した。PBMCから、ネガティブセレクションを介してCD4+ T細胞を分離し、続いてTreg分離キット(Miltenyi社)をメーカーの指示に従って用いて、CD4+ CD25+ T制御性細胞を濃縮した。その後、Tregを、5%ヒト血清(Sigma社)、1000U/mL IL-2(peprotech社)、100ng/mLラパマイシン(Sigma社)およびCD3/CD28コーティングビーズ(Gibco社)を添加した無血清樹状細胞培地中5×104細胞/mLで、ビーズ:細胞比4:1にて、37℃で20日間増殖させた。3~4日ごとに、1000U/mLのIL-2および100ng/mLのラパマイシンを添加した無血清樹状細胞培地を用いて、細胞密度を5×105細胞/mLに調整した。T制御性表現型は、以下の抗体を用いたフローサイトメトリー染色を用いて、経時的に追跡した:CCR7-BV785 (Biolegend社)、CD62L-FITC (BD社)、CD4-APC/efluor780 (e-biosciences社)、CD25-PerCP/Cy5 (Biolegend社)、Foxp3-PE/CF594 (BD社)、CTLA4-efluor660 (e-biosciences社)、CD127-PE/CY7およびCD38-GV605 (Biolegend社)。
【0463】
TregからのCD38のAb誘導トロゴサイトーシスを評価するために、Treg(標的細胞)をPBMC(エフェクター細胞)と共培養して、CD38の発現をTreg上でモニターした。簡潔に述べると、PBMCを、リンパ球分離培地(Bio Whittaker社)をメーカーの指示に従って用いてバフィーコート(Sanquin社)から分離し、0.2%BSAを添加したRPMI-1640培地(Lonza社)にウェルあたり5×105細胞の密度で播種し、単球を付着させるために3日間培養した。Tregを、メーカーの指示に従って0.25μMのCellTrace far red(CTFR)で標識し、E430G変異型CD38 Abと37℃で10分間プレインキュベートした。Tregを洗浄し、ウェルあたり1×105個のAbオプソニン化細胞をPBMCと共にプレートに移した。PBMCとTregを300rpmで短時間回転させて細胞を近接させ、37℃で23時間インキュベートした。CD38のトロゴサイトーシスは、CTFR陽性Treg上でFITC結合CD38クローンAを用いてCD38発現をフローサイトメトリーで解析することにより測定した。
【0464】
図13は、T制御性細胞でのCD38発現が、E430G変異型CD38抗体およびPBMCとのインキュベーション後に低下したことを示している。PBMCなしでは、T制御性細胞でのCD38発現の低下は見られず、このことはトロゴサイトーシスを強く示唆している。さらに、PBMCの存在下で、IgG1-BはCD38のトロゴサイトーシスを誘導しなかったが、E430G変異型BおよびCでは強力なCD38発現の低下が誘導された。これは、E430G変異型CD38抗体がCD38のトロゴサイトーシスの増強を引き出すことを示唆している。
【0465】
実施例9:患者由来のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫モデルにおけるE430G変異型CD38抗体Cの抗腫瘍活性
患者由来のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)細胞をCB17.SCIDマウスに皮下接種し、腫瘍の平均体積が約150~250mm3に達した時点で抗体治療(5mg/kgのIgG1-C-E430Gを週2回、静脈内注射;PBSを陰性対照として使用)を開始した。腫瘍体積はキャリパーを用いて2次元で測定され、体積は、次式:V=(L×W×W)/2[式中、Vは腫瘍体積、Lは腫瘍の長さ(最長の腫瘍寸法)、Wは腫瘍の幅(Lに垂直な最長の腫瘍寸法)である]を用いてmm3で表され、図20に経時的に示される。各治療群は1匹のマウスからなる。応答値を計算するために、次式を使用した:(X日目のIgG1-C-E430G治療マウスの腫瘍体積-0日目のIgG1-C-E430G治療マウスの腫瘍体積)/(X日目の対照マウスの腫瘍体積-0日目の対照マウスの腫瘍体積)
X=両方の動物が生きておりかつ腫瘍測定が行われた7日目から25日目までの期間の最終日。
【0466】
応答値は、CD38 mRNA発現と同様に表5に示される。CD38 mRNAレベルが最も高かったモデルはまた、最良の応答を示した。これは、図20のグラフからも見て取れる。したがって、IgG1-C-E430Gの週2回投与は、CD38 mRNA発現が最も高かった5つの試験したDLBCL PDXモデルのうち2つで腫瘍増殖を低減させた。
【0467】
(表5)5つのDLBCL PDXモデルについてのCD38 mRNA発現および算出された応答値の概要
低い応答値は腫瘍の退縮を示す。
【0468】
実施例10:IgG1-C-E430Gは、新たに診断されたMM患者由来の骨髄単核細胞において強力な補体媒介細胞傷害を誘導する
骨髄単核細胞(BM-MNC)は、新たに診断されたMM患者3名と再発/難治性MM患者1名由来の全骨髄穿刺液からFicoll-Hypaque密度勾配法により分離し、使用するまで-80℃で凍結保存した。使用当日にBM-MNCを解凍し、生細胞をカウントして96ウェルプレートに播種した。細胞をIgG1-C-E430GまたはDarzalex(登録商標)の段階希釈液(0.01~10μg/mL)と共に、プレートシェーカー上で室温で15分間インキュベートした。陰性対照として、細胞を未処理にするか、10μg/mLのIgG1-b12とインキュベートした。補体の供給源として、20%の正常ヒト血清を45分間添加し、その後FACS測定で、細胞の絶対数を、フローサイトメトリー用カウントビーズを定数として用いて決定した。全体的な溶解パーセントを決定するために、未処理の対照ウェルを対照値として使用した。多発性骨髄腫細胞の溶解パーセントは、次式を用いて対照に対して決定された:
細胞溶解%=(1-(抗体処理サンプル中の生存細胞数/未処理対照中の生存細胞数)×100%
【0469】
図22Aおよび22Bは、IgG1-C-E430Gが、Darzalex(登録商標)と比較して、新たに診断されたMM患者由来の2つのBM-MNCサンプルにおいて高レベルの溶解を誘導したことを示す。IgG1-C-E430Gにより誘導された最大溶解は84~90%の範囲であったのに対し、Darzalex(登録商標)により誘導された最大溶解は31~55%の範囲であった。他の2つのBM-MNCサンプル、すなわち、以前の治療の一環としてDarzalex(登録商標)を投与されなかった再発/難治性MM患者に由来するもの(図22C)と、新たに診断されたMM患者に由来するもの(図22D)では、IgG-C-E430GまたはDarzalex(登録商標)を用いてもCDCの誘導は認められなかった(図22Cおよび22D)。
【0470】
参考文献リスト
このリストの各文献、または本明細書の他の箇所で引用された各文献は、その全体が参照により本明細書に明確に組み入れられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図14-4】
図15
図16-1】
図16-2】
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
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