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特許7526722高度にエッチングされた粒子表面及び高い靭性指数を有する立方晶窒化ホウ素粒子集団
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】高度にエッチングされた粒子表面及び高い靭性指数を有する立方晶窒化ホウ素粒子集団
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20240725BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20240725BHJP
   B23B 27/20 20060101ALI20240725BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240725BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20240725BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C01B21/064 M
B23B27/14 A
B23B27/20
B24D3/00 320B
B24D3/00 340
B24D3/06 A
C09K3/14 550D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021514589
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019050844
(87)【国際公開番号】W WO2020060841
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】62/732,392
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516053969
【氏名又は名称】ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダリス, アダモス
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー, ドゥム
(72)【発明者】
【氏名】チャン, カイ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1812738(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第106905922(CN,A)
【文献】特表2012-502811(JP,A)
【文献】特表2015-536891(JP,A)
【文献】特表2015-524357(JP,A)
【文献】特表2017-521274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
B23B 27/14
B23B 27/20
B24D 3/00
B24D 3/06
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1300℃以上の温度及び3ギガパスカル以上の圧力においてエッチングされる20重量パーセントから90重量パーセントの反応性ジルコニウム粉末及び10重量パーセントから80重量パーセントの複数の単結晶立方晶窒化ホウ素粒子を含む圧縮ブレンド混合物を含む、複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子であって、1以上のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子のそれぞれが、複数のピット及び複数の溝を有し、複数のピットのそれぞれが、500ナノメートルから1.5ミクロンの幅を有し、複数の溝のそれぞれが、5ミクロンから30ミクロンの長さ、及び100ナノメートルから1ミクロンの深さを有し、複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子が、均一なサブミクロン表面パターンを有する積極的にエッチングされた表面を有し、エッチングされた単結晶粒子が、六方晶窒化ホウ素を含有しない、複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項2】
エッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子の粒子サイズが、10ミクロンから1000ミクロンである、請求項1に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項3】
ピット及び溝で覆われている粒子表面が、20%から60%である、請求項1に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項4】
エッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子がガラスの層でコーティングされている、請求項1に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項5】
ガラスの層の重量パーセントが、エッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子の重量の10%未満である、請求項4に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項6】
エッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子が酸化物で覆われている、請求項1に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項7】
エッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子が金属で覆われている、請求項1に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項8】
金属がニッケルである、請求項7に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項9】
金属がチタンである、請求項7に記載のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子。
【請求項10】
エッチングされた単結晶粒子集団を生成するための方法であって、
20重量パーセントから90重量パーセントの反応性ジルコニウム粉末を10重量パーセントから80重量パーセントの複数の単結晶立方晶窒化ホウ素粒子とブレンドして、ブレンド混合物を形成すること;
ブレンド混合物を圧縮して、圧縮混合物を形成すること;
圧縮混合物を1300℃以上の温度及び3ギガパスカル以上の圧力に供することであって、単結晶立方晶窒化ホウ素粒子と反応性ジルコニウム粉末の反応による複数の単結晶立方晶窒化ホウ素粒子のエッチングと、それによる複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子の形成を引き起こ、温度及び圧力が、窒化ホウ素を立方晶窒化ホウ素相のままにさせるよう制御される、圧縮混合物を1300℃以上の温度及び3ギガパスカル以上の圧力に供すること;及び
複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子を圧縮混合物から回収して、エッチングされた単結晶粒子集団を形成すること、
を含み、
複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子が、均一なサブミクロン表面パターンを有する積極的にエッチングされた表面を有し、エッチングされた単結晶粒子集団が、六方晶窒化ホウ素を含有しない、方法。
【請求項11】
エッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子の粒子サイズが、10ミクロンから1000ミクロンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
複数のエッチングされた単結晶立方晶窒化ホウ素粒子のそれぞれが複数のピット及び複数の溝を含み、複数のピットのそれぞれが、500ナノメートルから1.5ミクロンの幅を有し、複数の溝のそれぞれが、5ミクロンから30ミクロンの長さ、及び100ナノメートルから1ミクロンの深さを有する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、立方晶窒化ホウ素(CBN)粒子、より具体的には、強度にエッチングされた表面及び高い靭性指数(TI)を同時に有するCBN粒子集団に関する。
【0002】
多くのCBNの用途では、強度にエッチングされた(すなわち、粗い)粒子表面を有することが望ましい。そのようなエッチングされた表面は、結合システムにおいてより良好な粒子保持を提供することができ、且つ/又は使用中に自己先鋭化する粒子をもたらすことができる。エッチングされたCBN粒子集団が存在するが、それらは典型的には低いTIを有する。この低いTIにより、それらは特定の用途でパフォーマンスが低下する。したがって、低いTIに悩まされないエッチングされたCBN粒子集団を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、強度にエッチングされた表面及び高いTIを同時に有するCBN粒子集団を提供する上記の目標を達成する。表面は、約1ミクロン及びサブミクロンサイズのピットによって特徴づけられており、この表面の特徴は、ほぼすべてのCBN粒子ファセットに一貫して存在する。しかしながら、CBN粒子集団のTIは、同じ化学組成、結晶構造及び形状を有する、典型的な滑らかな(すなわち、エッチングされていない、粗くない)CBN粒子集団よりも約10-20ポイント低いにすぎない。
【0004】
本発明のCBN粒子集団は、複数のCBN粒子を形成又は入手することにより生成される。反応性金属粉末は、複数のCBN粒子とブレンドされて、ブレンド混合物が形成され、そのブレンド混合物は圧縮されて圧縮混合物が形成される。圧縮混合物は、ある温度及びある圧力に供され、温度は、CBNと反応性金属粉末の反応による複数のCBN粒子のエッチングと、それによる複数のエッチングされたCBN粒子の形成を引き起こすよう制御される。また、温度及び圧力は、窒化ホウ素を立方相のままにさせるよう制御される。その後、複数のエッチングされたCBN粒子は圧縮混合物から回収されて粒子集団が形成される。好ましくは、粒子集団は六方晶窒化ホウ素(HBN)を含まない。
【0005】
本発明の追加の目的、特徴及び利点は、同様の参照番号がいくつかの図の共通部分を指す図面と併せて解釈される場合、その好ましい実施態様の以下の発明を実施するための形態からより容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明によるCBN粒子集団を生成するためのプロセスを示すフロー図である。
図2】エッチング前の複数のCBN粒子を示す走査型電子顕微鏡(SEM)による画像である。
図3】本発明のエッチングプロセスが施された後の、図2のCBN粒子の一つを示すSEMによる画像である。
図4】本発明のエッチングプロセスが施された後の、CBN粒子を示すSEMによる別の画像である。
図5図4の画像のピット及び溝に覆われたパーセンテージ領域の控えめな閾値分析である。
図6図4の画像のピット及び溝に覆われたパーセンテージ領域の中程度の閾値分析である。
図7図4の画像のピット及び溝に覆われたパーセンテージ領域の積極的な閾値分析である。
図8図4の画像のピット及び溝のサイズ分析である。
図9】第1の実験的エッチングプロセス前の複数のCBN粒子を示すSEMによる画像である。
図10】第1の実験的エッチングプロセス後の複数のCBN粒子を示すSEMによる画像である。
図11】第2の実験的エッチングプロセス後の複数のCBN粒子を示すSEMによる画像である。
図12】第3の実験的エッチングプロセス前の複数のCBN粒子を示すSEMによる画像である。
図13】第3の実験的エッチングプロセス後の複数のCBN粒子を示すSEMによる画像である。
図14】いくつかの異なるCBN粒子集団の表面粗さ対TIのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の詳細な実施態様が本明細書に開示される。しかしながら、開示される実施態様は、さまざま且つ代替的な形態で具体化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。図は必ずしも縮尺どおりではなく、特定の構成要素の詳細を示すために、いくつかの特徴が誇張又は最小化されている場合がある。したがって、本明細書に開示される特定の構造的及び機能的詳細は、限定的であると解釈されるべきではなく、単に本発明を使用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0008】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「約」は、それが使用されている数値のプラスマイナス10%を意味する。したがって、約50%は45-55%の範囲を意味する。用語「粒子」とは、離散体を指す。粒子は、結晶又は粒とも考えられる。
【0009】
本発明における使用のためのCBN粒子は、立方構造を形成するのに十分な期間、高圧及び高温の下、アルカリ金属窒化物及びアルカリ土類金属窒化物などの触媒系を使用してHBNから生成することができる。反応生成物は、CBN結晶の形成に熱力学的に有利に働く圧力及び温度条件下で維持される。その後、CBNは、回収方法を使用して、水、酸性溶液又は苛性化学物質の組み合わせを使用して反応生成物から回収される。CBNを生成する他の方法が知られていること、例えば、CBNは温度勾配法又は衝撃波法を介しても調製することができることに、留意されたい。
【0010】
HBNと触媒の両方を提供する出発成分の任意の組み合わせを使用することができる。出発反応混合物の実施態様は、ホウ素供給源、窒素供給源、及び触媒金属供給源を含有し得る。ホウ素供給源は、元素状ホウ素、HBN、又は、反応条件下で元素状ホウ素に分解し得るホウ素水素化物の一つなどの材料であり得る。窒素供給源は、HBNか、反応条件下で窒素供給源を提供し得る触媒金属の窒素含有化合物のいずれかであり得る。触媒金属は、元素状金属として、又は反応条件下で触媒金属に若しくは触媒金属窒化物に分解し得る触媒化合物として、用いることができる。
【0011】
このプロセスは、一つの触媒材料のみを含むCBNへのHBNの触媒変換に限定されない。よって、二つ以上の触媒材料の混合物を用いることができる。それらの混合物は、一又は複数の触媒金属、一又は複数の触媒窒化物、又は金属と窒化物の一又は複数の組み合わせを含み得る。混合物は、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムなどの反応抑制触媒、及びアルカリ金属窒化物及びアルカリ土類金属窒化物などの反応促進触媒を含み得る。さらに、合金も本発明の実行に用いられ得る。これらの合金は、複数の触媒金属の合金、並びに触媒金属と非触媒金属の合金を含む。他の原料の組み合わせも可能である。
【0012】
このプロセスは、超砥粒を製造するのに使用される圧力及び温度を生成することができる任意の種類の装置で行うことができる。使用され得る装置は、米国特許第2,941,241号及び同第2,941,248号に記載されており、これらは参照により本明細書に援用される。他の装置の例には、ベルトプレス、立方体プレス、及び分割球プレスが含まれる。装置は、制御可能な温度及び圧力が所望の期間提供及び維持される反応空間を含む。前述の特許に開示されている装置は、油圧プレスのプラテン間に挿入するための高圧デバイスである。高圧デバイスは、実質的に円筒形の反応領域を画定する環状部材と、環状部材のいずれかの側から実質的に円筒形の反応領域に適合するように設計された2つの円錐形のピストン型部材又はパンチとを含む。環状部材に適合する反応容器は、二つのピストン部材によって圧縮されて、CBN粒子の製造において所望される圧力に到達し得る。所望の温度は、誘導加熱、直接的若しくは間接的な抵抗加熱、又は他の方法などの適切な手段によって得られる。
【0013】
本発明では、上で検討したプロセスにより形成された後、CBN粒子はエッチングされて粗面が得られる。プロセスは、チタン、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム又はリチウムなどの窒化物形成金属をCBNとの反応性金属として使用する。例えば、高温では、CBNはジルコニウムと反応して、窒化ジルコニウム及びホウ化ジルコニウムを形成する。この反応は、CBNの表面にピット及び溝を作成する。反応が生じた後、窒化ジルコニウム及びホウ化ジルコニウムは除去することができ、多くの複雑なポケット又はエッチピットが確立されている著しく粗いCBN表面が明らかになる。このテクスチャは、典型的なCBN粒子上に存在するよりもはるかに鋭い刃先を粒子上に提供する。結果として、工具の性能は、本発明のCBN粒子を用いる応用において改善する。これらの応用は、CBN粒子が樹脂、金属、又はビトリファイド結合システム内に組み込まれる精密研削を含む。本発明のCBN粒子はまた、特に、結合材料が、樹脂、金属、又はガラスフィットを含む場合、ホーニング及び超仕上げにおける性能を改善する。さらに、本発明のCBN粒子は、粒子が工具に電気めっき若しくは電鋳される場合、又は粒子がコーティング内に共堆積されるときに、工具の性能を改善する。
【0014】
本発明のプロセスは、単結晶及び多結晶CBNを含む異なる形態のCBNを用いて使用することができるが、好ましくは、単結晶CBNを用いて使用することができる。本発明は、直径数百ミクロンからミクロンサイズの粉末までの広範囲のCBNサイズに適用される。例示的な一実施態様では、約100ミクロン未満のサイズのCBN粒子が使用される。しかしながら、約100ミクロン超のサイズのCBN粒子も使用することができる。例示的な一実施態様では、CBN粒子のサイズは、約10ミクロンから約1000ミクロンの範囲である。
【0015】
通常、図1に示すように、本発明によるCBN粒子集団を生成するための方法は、工程100で、複数のCBN粒子を形成又は入手すること;工程105で、リチウム、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タングステン、ハフニウム、クロム、コバルト、ニッケル、バナジウム、タンタル、ニオブ、及び鉄などの材料でできた反応性金属粉末をCBN粒子とブレンドすること;工程110で、ブレンド混合物を圧縮すること;工程115で、圧縮混合物を高圧及び高温に供すること;及び工程120でエッチングされたCBN粒子を回収すること、を含む。CBN粒子は、好ましくは、単結晶CBN粒子である。反応性金属粉末は、例えば、ジルコニウムであり得る。反応性金属粉末対CBN粒子の比は、例えば、1:10から10:1であり得る。CBN粒子は、このプロセスにより約5%超の平均重量損失を受け得る。工程115では、温度は約1300℃超であり得、圧力は約3ギガパスカル(GPa)超であり得る。
【0016】
より具体的には、本発明のエッチングされたCBN粒子を作成するためには、約10から約80重量パーセントのCBN粒子と、約20から約90重量パーセントのジルコニウム粒子が、均一混合物を達成する任意の適切な混合方法を使用して混合される。例えば、ジルコニウム及びCBN粒子の秤量された部分は、ジャーに入れられ、密封され、少なくとも約1時間、あるいは、約30分から約1時間混合デバイスに挿入され得る。場合によっては、混合前に結合剤が混合物に添加され得る。結合剤は、粒子表面に潤滑性をもたらし、より高密度のパッキング及び金属粉末とCBNとの間のより緊密な接触を可能にする。結合剤はまた、プレスされた本体をグリーン体として一緒に保持するのに役立つ。
【0017】
その後、混合物は、CBN粒子とジルコニウム粒子の緊密な混合物を作成するよう圧縮される。CBN粒子及びジルコニウム粒子が緊密な混合物を形成し、粒子が互いに非常に近接している限り、CBN粒子及びジルコニウム粒子を圧縮する任意の方法が使用され得る。混合物を圧縮するのに使用される一つの方法は、混合物をプレス上の固定ダイセットの中に置くことであり得る。ダイプレスでは、混合物は、約5,000と約50,000psiの間、約10,000と約40,000psiの間、又は約15,000と約30,000psiの間の圧力に供されて、ペレットが形成される。変形可能な工具を用いる静水圧プレスも、緊密な接触を実現するために使用され得る。あるいは、混合物は、それを数ミリメートルから数インチの厚さの薄いシートにプレスすることにより、例えば、高圧圧縮ロール又はブリケットロールにより、圧縮することができる。形成されたシートは、その後、さらなる処理のためにより小さな部分に切断され得る。ジルコニウム粒子とCBN粒子の混合物を圧縮する別の方法には、圧力下で混合物を混合し、押し出すことが含まれる。CBN粒子とジルコニウム粒子の混合物をペレタイザを介してペレット化すること又は混合物をタンブル装置でタンブルすることも、混合物を圧縮するのに使用することができる代替的な方法である。ジルコニウム粒子とCBN粒子の混合物を圧縮するさらなる方法には、射出成形、混合物を容器中にプレスすること、及びテープ成形が含まれる。これらの方法により形成されたペレット、ブリック、ブリケット、又はケーキは、その後、以下に討論されるようにさらに処理され得る。あるいは、個々のCBN粒子は、ジルコニウム粒子とCBN粒子が互いに近接している限り、イオン注入、スパッタリング、噴霧乾燥、電解コーティング、無電解コーティング、又はその他の適用可能な方法により金属粒子でコーティングすることができる。
【0018】
CBN粒子とジルコニウム粒子の混合物を圧縮した後、ペレット、凝集体、又はその他の凝縮された形態であり得る圧縮混合物は、水素雰囲気、真空雰囲気、又は不活性ガス雰囲気下で炉内に置かれ、約900℃から約2300℃の範囲の温度に加熱される。例えば、約1000℃から約1400℃、約1100℃から約1400℃、又は約1300℃の温度が使用され得る。圧縮混合物は、約5分間から約5時間までの範囲の期間にわたって加熱され得る。例えば、約30分間から約2時間まで、又は約1時間から約2時間までの期間が使用され得る。
【0019】
前のエッチングプロセスとは異なり、圧縮混合物は、この加熱の間に高圧にも供される。例えば、圧縮混合物は、約3から約6GPaの範囲の圧力に供され得る。これを行う理由は、窒化ホウ素の熱力学に関係する。CBNは、通常の大気温度及び圧力条件下では熱力学的に安定ではない。むしろ、CBN相で動的に捕捉される。前のエッチングプロセスの間に加熱されるとき、CBNの少なくともいくつかは、相をHBN(これは、このような条件下での窒化ホウ素の熱力学的に好ましい相である。)に変えることができ、それによりCBN粒子集団のTIを有意に低下させることができる。特に、そのようなプロセスの結果として生じるTIの低下は、典型的には約30である。本発明では、エッチング中に高圧を使用することにより、CBNがHBNに相変化するのが防止されるが、これは、CBNが選択された温度及び圧力条件下で窒化ホウ素の熱力学的に好ましい相であるためである。これは、エッチングプロセスにより生じたTIの低下を減少させるが、低下を完全に排除するわけでない。これは、エッチングそれ自体がCBN粒子集団のTIを低下させるためである。特に、本発明のエッチングプロセスにおけるTIの低下は約10-20にすぎない。結果として、本発明は、高いTIを有するエッチングされたCBN粒子集団を提供することができる。
【0020】
ある例示的な温度及び圧力が提供されたが、以下の二つの目標を満たす任意の温度及び圧力の組み合わせを使用することができる。第1に、温度は、CBNと窒化物形成金属の反応によるCBN粒子の所望のエッチングが生じるのに十分高くなければならない。第2に、温度及び圧力は、窒化ホウ素がCBN相に留まり、HBN相に再び入らない(又は第3の相に入らない)ことを確実にするように選択されなければならない。言い換えれば、温度及び圧力は、窒化ホウ素をCBN相に留まらせるように選択されなければならない。好ましくは、この第2の目標は、エッチングプロセス全体を通して満たされ、CBNのいずれかがHBNへ変換するのを防止する。
【0021】
エッチングが完了し、CBN粒子の反応性金属粒子の圧縮混合物が冷却した後、エッチングされたCBN粒子は、一般的な酸において圧縮混合物を溶解することにより回収される。使用され得る酸には、塩酸、フッ化水素酸、硝酸及びそれらの特定の組み合わせが含まれる。酸(複数可)は、100:1から1000:1の酸対圧縮混合物の比(体積)で添加される。混合物は、その後、例えば約6から約8時間の期間約100℃から約120℃の間に加熱される。次に、溶液は冷却され、遊離したCBN粒子が沈降し、溶液がデカントされる。これらの回収工程は、実質的にすべての反応性金属、金属窒化物及び金属ホウ化物が分解されるまで繰り返される。
【0022】
選択した炉の条件に応じて、金属とCBNとの間に多かれ少なかれ反応が生じ得る。多くの金属粉末がCBNにエッチングされるほど、多くの窒化物及びホウ化物が形成され、よってCBNによってより多くの重量が失われる。窒化物及びホウ化物を完全に溶解するために、より多量の酸又は追加の溶解処理が使用され得る。CBN粒子は、その後、例えば水中で洗浄されて酸及び残留物が除去される。続いて、CBN粒子は、オーブン中で乾燥され、空気乾燥され、マイクロ波乾燥、又は当該技術分野で知られる他の乾燥方法に供される。
【0023】
本発明のCBN粒子は、ラッピング、研削、切削、研磨、ダイシング、焼結研磨剤又は研磨剤成形体、ワイヤソー用ワイヤ、ホーニングを含む多くの用途に有用である。通常、CBN粒子の粗面は、工具又は樹脂結合システム内での粒子の保持に役立つ。粗面はまた、より良好な快削能で高い材料除去率を提供し得る。ある例示的な実施態様では、CBN粒子は、例えば、研削工具、固定研磨ワイヤ、ホーニング工具、ダイシングブレード、研磨フィルム、化学機械研磨(CMP)パッド調節器、研磨コンパウンド、及び複合CBN摩耗コーティングなどの工具に組み込まれる。
【0024】
図2及び図3は、CBN粒子のSEM画像である。図2は、エッチング前のいくつかのCBN粒子を示すが、図3は、本発明のエッチングプロセスが施された後の、これらのCBN粒子の一つを示す。特に、複数のCBN粒子200は図2に見ることができ、CBN粒子200のそれぞれは、複数のファセット205を含む。ファセット205の表面は滑らかである。しかしながら、エッチング後、そのような表面はピット及び溝を示す。例えば、図3では、エッチングされたCBN粒子300は、複数のピット310及び複数の溝315を有するファセット30を含む。本発明では、これらの表面特徴部は、ミクロン及びサブミクロンサイズである。つまり、ピット310は典型的には、幅が約500nmと約1.5ミクロンの間であり、溝315は典型的には、幅が約500nmであり、長さが約5ミクロンと約30ミクロンの間である。ピットと溝の両方の深さは、約100nmと1ミクロンの間である。
【0025】
図3と同様に、図4は、本発明のエッチングされたCBN粒子の表面の高倍率(5,000×)SEM画像である。画像では、暗い領域は明るい領域よりも粒子の奥深くにある。重ねて、表面はピット400及び溝405によって特徴づけられる。分離されたピット400及び溝405は目に見える。図4のエッチングされたCBN粒子の分析により、粒子の何パーセントがピット400又は溝405で覆われているかについての推定値が提供された。控えめな推定値では、粒子表面の20%がピット400又は溝405で覆われており、中程度の推定値は41%、及び積極的な推定値は60%であった。これは図5~7に視覚的に表されており、それぞれ控えめ、中程度、及び積極的な推定値に対応している。分析により、ピット400及び溝405のサイズ情報も提供された。図8に示すように、ピット400及び溝405はどちらも、幅は約1ミクロンであり、溝405の長さは最大約6ミクロンである。予備の断面走査型電子顕微鏡分析は、ピット400及び溝405がどちらも約1ミクロン未満の深さであることを示した。通常、複数のエッチングされた立方晶窒化ホウ素粒子が生成され、立方晶窒化ホウ素粒子のそれぞれは複数のピット及び複数の溝を含み、粒子集団の靭性指数は、同じ化学組成、結晶構造、及び形状を有する、エッチングされておらず、粗くない立方晶窒化ホウ素粒子集団よりも約10から約20ポイント低い。
【0026】
実験
本発明を開発する際に、いくつかの異なるCBN粒子集団が生成された。これらの異なる粒子集団は、本発明により提供される利点を説明するのに役立つ。
【0027】
第1の実験では、積極的にエッチングされた表面及び低いTIを有するCBN粒子集団を生成した。この粒子集団は、優れたぬれ挙動及びエッチングされた表面による研削中の良好な結晶保持を示したが、TIは低すぎると考えられた。図9及び図10は、それぞれエッチング前及びエッチング後の、第1の実験のCBN粒子集団を示す。
【0028】
第2の実験では、積極的にエッチングされた表面及び中程度のTIを有するCBN粒子集団を生成した。重ねて、この粒子集団は、優れたぬれ挙動及びエッチングされた表面による研削中の良好な結晶保持を示した。しかしながら、TIは依然として低すぎると考えられた。図11は、エッチング後の第2の実験のCBN粒子集団を示す。
【0029】
第3の実験では、穏やかにエッチングされた表面及び比較的高いTIを有するCBN粒子集団を生成した。この粒子集団は、妥当なぬれ挙動、研削中の結晶保持、及びTIを示した。図12及び図13は、それぞれエッチング前及びエッチング後の、第3の実験のCBN粒子集団を示す。
【0030】
初めの3つの実験のそれぞれでは、エッチングは大気圧下で行われた。第4の実験では、エッチングは本発明に従って高圧で行われた。生成されたCBN粒子集団は、均一なサブミクロン表面パターン及び高いTIを有する積極的にエッチングされた表面を有した。
【0031】
これらの実験の結果を図14にプロットし、実験1-4をそれぞれEXP1-4とラベル付けした。さらに、CBN-400及びCBN-500とラベル付けした二つのエッチングされていないCBN粒子集団をプロットする。図14から分かるように、表面粗さ及びTIは典型的には反比例する。一つの異常値は本発明のCBN粒子集団であり、これは、粗面と高いTIとの両方を示す。
【0032】
上記に基づいて、本発明が、高いTIと強度にエッチングされた表面とを同時に有するCBN粒子集団を提供することは、容易にわかるべきである。本発明のある好ましい実施態様が示されているが、本発明の精神から逸脱することなく、さまざまな変更又は修正を行うことができることを理解されたい。例えば、酸化物又はニッケル若しくはチタンなどの金属は粒子を覆うことができ、あるいは、粒子はガラスの重量パーセントが好ましくは粒子の重量の10%未満であるガラスの層でコーティングすることができる。概して、本発明は、以下の特許請求の範囲により限定されることのみが意図される。
図1
図2
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図7
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図10
図11
図12
図13
図14