(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】アルカリホスファターゼを含む血液処理装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61M1/36 100
A61M1/36 161
A61M1/36 119
(21)【出願番号】P 2021552762
(86)(22)【出願日】2020-03-06
(86)【国際出願番号】 EP2020055977
(87)【国際公開番号】W WO2020178420
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521395942
【氏名又は名称】ガンブロ ルンディア アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ヤン スバルトイェス
(72)【発明者】
【氏名】マルクス シュトール
(72)【発明者】
【氏名】マルティン レンプファー
(72)【発明者】
【氏名】イザベレ リッツィンガー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー フォッテラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ キューン
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-150433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0304677(US,A1)
【文献】特表2001-506871(JP,A)
【文献】特表2010-524496(JP,A)
【文献】特開平02-029260(JP,A)
【文献】特表2015-522577(JP,A)
【文献】特表2013-520226(JP,A)
【文献】特開平11-267421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液処理を必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するよう構成された、体外血液回路における血液処理装置であって、その上に固定化されたアルカリホスファターゼを有するマトリックスを含む血液処理装置。
【請求項2】
前記血液処理装置が、患者の血液が通過する体外血液回路内に配置され、そして定義された流速で患者の血管系から血液処理装置に血液を輸送し、そして処理された血液を患者に戻すための手段を含む、請求項1に記載の血液処理装置。
【請求項3】
前記血液処理装置が、血液濾過器である、請求項1又は2に記載の血液処理装置。
【請求項4】
前記血液処理装置が、吸着カートリッジである、請求項1又は2に記載の血液処理装置。
【請求項5】
前記血液処理装置が請求項2に記載の体外血液回路に配置され、前記回路がさらに、前記吸着器カートリッジの上流又は下流に配置された血液濾過器を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項6】
前記アルカリホスファターゼ(AP)が、ウシ腸アルカリAPである、請求項1~5のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項7】
前記アルカリホスファターゼ(AP)がAPの組換え型及び/又はキメラ型である、請求項1~6のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項8】
前記血液処理装置が中空線維の束を含む血液濾過器であり、そして前記アルカリホスファターゼ(AP)が前記束の中空線維の少なくとも内腔、及び任意には細孔に固定化される、請求項1~3又は6~7のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項9】
アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されているマトリックス
が、下記:
a. アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムとのコポリマー、
b. ポリスルホン、ポリ(エーテル)スルホン(PES)及び/又はポリアリール(エーテル)スルホン(PAES)、及びポリビニルピロリドン(PVP)、又は
c. ポリスルホン、PES及び/又はPAES、及びPVP、キトサン及び/又は無水マレイン酸-alt-1-オクタデセンから選択された添加剤、
を含むか、又はそれらから成る、請求項1~8のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項10】
前記アルカリホスファターゼ(AP)が、以下:
a. ポリスルホン、ポリ(エーテル)スルホン(PES)及び/又はポリアリール(エーテル)スルホン(PAES)のOH基とAPのCOOH基との間の反応から生じるエステル結合を介して、
b. キトサンのNH
2基とAPのCOOH基との間の反応から生じるペプチド結合を介して、又は
c. 無水マレイン酸-alt-1-オクタデセンによって生成されたCOOH基とAPのNH
2基との間の反応から生じるペプチド結合を介して
、
マトリックスに固定化される、請求項1~9のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項11】
血液処理を必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するよう構成された、請求項1~10のいずれか1項に記載の血液処理装置の製造方法であって、アルカリホスファターゼ(AP)を、マトリックスに固定化することを含む方法。
【請求項12】
血液処理装置が中空線維の束を含む血液濾過器であり、そして前記アルカリホスファターゼ(AP)が前記束の中空線維の少なくとも内腔、及び任意には細孔に固定化される、請求項11に記載の血液処理装置の製造方法。
【請求項13】
前記アルカリホスファターゼ(AP)がマトリックスに共有結合され、カルボジイミド化合物
を用いて前記マトリックス及び/又はAPを処理することを含む、請求項11又は12に記載の血液処理装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血液処理装置、及び定義された流速で患者の血管系から血液処理装置に血液を輸送し、そして処理された血液を患者に戻すための手段を含む、患者の血液が通過する体外血液回路。
【請求項15】
感染症
の治療における
医療装置として使用するための請求項1~10のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項16】
前記感染が敗血症又は敗血症性ショックである、請求項15に記載の使用のための血液処理装置。
【請求項17】
感染症に関連する腎機能障害の治療における
医療装置として使用するための請求項1~10のいずれか1項に記載の血液処理装置。
【請求項18】
前記感染症に関連する腎機能障害が、敗血症に関連する急性腎障害(AKI)である、請求項15~17のいずれか1項に記載の使用のための血液処理装置。
【請求項19】
前記治療が、急性の状況で
の持続的腎代替療法を含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の使用のための血液処理装置。
【請求項20】
患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を体外脱リン酸化し、そして次に処理された血液を患者に戻す工程を含む
処理において使用される、請求項15~19のいずれか1項に記載の使用のための血液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液の体外治療の分野、及び関連する血液濾過器及び吸着器カートリッジ装置に関する。特に、本発明は、敗血症又は敗血症関連急性腎障害(AKI)を治療するためのアルカリホスファターゼ(AP)支援持続的腎代替療法(APA-CRRT)に関する。
【0002】
本発明は、それを必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するよう構成された、体外血液回路における血液処理装置に関し、ここで前記装置はアルカリホスファターゼ(AP)が固定化されたマトリックスを含む。本発明はさらに、本発明の血液処理装置を含む体外血液回路、及び薬剤として使用するための血液治療装置、又は感染症、好ましくは血液又は全身性感染症、例えば敗血症、及び/又は敗血症関連急性腎障害(AKI)を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
敗血症は、現代の抗生物質及び蘇生療法の使用にもかかわらず、重症患者の罹患率及び死亡率の主な原因の1つである。敗血症の結果は全体的に改善したが、死亡率は容認できないほど高いままである。敗血症は米国で最も費用のかかる医療問題であり、200億ドル以上の費用がかかる(Martin GS, et al 2000. N Engl J Med 2003; 348: 1546-54)。敗血症は集中治療室(ICU)で最も一般的な死亡原因の1つであり、その発生率は過去10年間で2倍以上に増加した(Kumar G, et al, Chest 2011; 140: 1223-31)。Surviving Sepsis Campaignのデータによれば、敗血症による死亡率はヨーロッパで41%、そして米国で28.3%である(Levy MM, et al Lancet Infect Dis 2012; 12: 919-24)。
【0004】
急性腎障害(AKI)又は急性腎不全(ARF)は、代謝性アシドーシス、高カリウムレベル、及び体液の不均衡を特徴とする腎濾過機能の急速な喪失である。AKIは重症患者の55~60%で発生し、そして敗血症が最も一般的な根本的な原因である。KI / ARFの全体的な死亡率は約45%であるが、敗血症によって誘発されたARFの死亡率は約70%である(Acute Blood Purification, Suzuki and Hirasawa; Septic Acute Renal Failure, Mori et al, Contrib Nephrol. Basel, Karger, 2010, vol 166, pp 40-46)。
【0005】
敗血症性KIの血液浄化療法には、通常、AKIに寄与するエンドトキシン又はメディエーターなどの病原体の除去、及び腎代替療法(RRT)が含まれる。ポリミキシンB固定化繊維(PMX-DHP)を使用した直接血液灌流によるエンドトキシンの吸着は、腎機能を改善しながら尿量を増加させる(Mori et al, 2010)。しかしながら、現在、敗血症に関連する急性腎障害(SA-AKI)を治療するために確立された薬理学的療法はなく;支持的腎代替療法(RRT)のみが利用可能である。AKIは、炎症、免疫調節不全、及び酸化的損傷を介して発生する微小血管調節不全及び細胞傷害の複雑なカスケードに関連している。これらの経路に関与する特定の酵素又は分子を標的とする一連の新しい治療法は、開発のさまざまな段階にある(Bajwa A. et al. Curr Drug Targets 2009:10:1196-1204)。それらの進歩にもかかわらず、AKIを治療するための手段が切実に必要とされている。
【0006】
敗血症に関連する急性腎臓損傷(SA-AKI)を治療又は予防するための臨床開発中の新しい候補薬は、アルカリホスファターゼ(AP)である。APは、脱リン酸化、膜結合、内因的に発生する酵素であり、敗血症の病因及び細胞外ATPを含む他の炎症誘発性化合物に関与するエンドトキシンの脱リン酸化を通じて無毒化効果を発揮する。APは、リピドA分子がリン酸化されると炎症経路を活性化する循環リポ多糖の脱リン酸化を介して、敗血症AKI中に腎保護をもたらす。さらに、APはATPをアデノシンに変換し、これが腎尿細管細胞に対して保護効果を示す。敗血症では、ミトコンドリアはサイトカイン及び低酸素症に反応して大量のATPを放出する。
【0007】
以前は、健康なボランティア及び敗血症の患者を対象としたAKIの有無にかかわらず、臨床試験により、精製されたウシ腸APの忍容性と潜在的な有効性が確立されて来た(Pickkers P, et al, Eur J Clin Pharmacol 2009;65:393-402; Heemskerk S et al, Crit Care Med 2009;37:417-23); Pickkers P et al, Crit Care 2012;16: R14)。SA-AKIの患者では、ウシ腸APは、内因性クレアチニンクリアランスのエンドポイント、腎代替療法(RRT)の必要性、及びRRTの期間の組み合わせに応じて、腎機能を大幅に改善した。それらの結果に続いて、ヒト組換えAPは、ウシ由来APの薬学的に許容される代替物として開発されて来た。酵素の安定性を改善するために、触媒機能を維持しながら、ヒト腸APのクラウンドメインをヒト胎盤APのクラウンドメインにより置換している(Kiffer-Moreira T, et al, PLoS ONE 2014;9: e89374)。
【0008】
米国特許第6290952号はまた、敗血症を含む感染症によって誘発される臨床的合併症の(全身的)治療に適したAPを含む医薬組成物を開示している。
【0009】
AKIの治療におけるAP投与の進歩及び臨床的可能性にかかわらず、APは、薬剤として対象に投与された場合、その薬物動態に関して多くの不利な点を示している。APは血液から急速に除去され、4時間後に最初に投与された活動の約10%しか存在しない。結果として、APは繰り返し投与する必要があり、レベルは大きく変動し、治療全体を通して最適以下のレベルに達する。上記で概説した困難を考慮すると、この状態の薬理学的治療で明らかな困難なしに安定した生理学的改善を提供するAKI治療のための改善された手段を開発するという分野における重要な必要性が存在する。
【0010】
従って、本発明は、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されたマトリックスを含む血液処理装置に関する。APは以前に固相に固定化されていると説明されている欧州特許第3110977号、国際公開第2013012924号、国際公開第9955828号、及びChelpanova et al, Applied Biochemistry and Microbiology, vol. 52, no. 1, p. 36-42, 2016)。しかしながら、固定化されたAPは、敗血症又はAKIを治療するのに適した体外血液処理装置と関連して説明も又は示唆もされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来技術に照らして、本発明の根底にある技術的問題は、敗血症などの感染症、及び/又はそれに関連する腎不全の治療のための代替及び/又は改善された手段を提供することである。本発明の1つの目的は、それらの状態の薬理学的治療において明白な困難なしに安定した生理学的改善を提供する感染又は腎不全治療のための改善された又は代替の手段を提供することである。本発明の1つの目的は、それを必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するための手段の提供である。
【0012】
本発明は、先行技術で知られている不利な点を回避しながら、そのような手段を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この問題は、独立クレームの機能によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によって提供される。
【0014】
従って、本発明は、それを必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するよう構成された、その上に固定化されたアルカリホスファターゼを有するマトリックスを含む、体外血液回路における血液処理装置に関する。
【0015】
1つの実施形態によれば、血液処理装置は、患者の血液が通過する体外血液回路に配置され、そして定義された流速で患者の血管系から血液処理装置に血液を輸送し、そして処理された血液を患者に戻すための手段を含む。
【0016】
さらなる側面によれば、従って、本発明は、本明細書に記載の血液処理装置、及び定義された流速で患者の血管系から血液処理装置に血液を輸送し、そして処理された血液を患者に戻すための手段を含む、患者の血液が通過する体外血液回路に関する。
【0017】
透析器又は血液濾過器(膜)などの血液処理装置にAPを直接組み込むことの主な利点は、固定化されたAPの高められた安定性、及び身体によるAPのクリアランスの欠如である。薬剤としてのAPの現在の動態は、APの急速なクリアランス及び/又は非活性化を含み、AP活性の低下を4時間後の最初の投与された活性のわずか約10%に導く。体外血液処理装置内にAPを固定化することにより、活性剤のクリアランスが制限又は排除され、経時的な活性の喪失はまったくないか、ごくわずかである。
【0018】
本明細書に記載のアプローチの別の重要な利点は、追加の治療又は投与の必要性がないことである。患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)の体外脱リン酸化に適した血液処理装置にAPを含めることにより、治療は RRT又は他の透析が開始されるとすぐに自動的に組み合わされる。腎不全を患っている患者は、腎機能の低下を補うために、透析治療をすぐに開始することがよくある。これは、死亡のリスクを減らすために治療速度が重要である敗血症のかなりの数の症例で発生する。従って、本発明は、対象のために開始された可能性が高いすでに確立されたRRT治療への活性剤の組み込みを可能にする。
【0019】
体外血液処理装置に組み込まれた場合に必要なAPの量は、静脈内投与されたAPの迅速なクリアランスと継続的な複数回投与の必要性により、静脈内注射と比較してはるかに少なくなる。
【0020】
従って、血液治療装置に固定化されたAPを備えたマトリックスは、以下の複数の利点:有毒な基質がAPと接触している時間を増やし、全身投与した場合の血液からのAPの急速なクリアランスを回避し、APは体外システムを使用して血液にのみ投与されるため、体の他の臓器におけるAPのオフターゲット効果を回避し、AP治療はRRT又は他の透析の開始と同時に発生する可能性があるため、追加の治療の必要性を回避し、それにより、同時に-有毒な基質を脱リン酸化し、そして腎不全を患っている患者の血液から尿毒症毒素、過剰なイオン、水などを除去し、死亡率を回避するために治療速度が重要である敗血症の状況で特に重要なより迅速な治療をもたらす。
【0021】
以下の例に示すように、AP固定化は、以下の複数のマトリックスタイプで達成されているが、これらに限定されない:PES / PVP膜、PES / PVP /無水マレイン酸膜、PES / PVP /キトサン膜、エポキシ官能化吸着樹脂、アミノ官能化吸着樹脂及びポリアクリロニトリルAN69膜。予期せぬことには、前記マトリックスに固定化されたAPは、良好な活性を示し、長時間のフラッシング後に浸出がないか、または無視できる程度であり、そして緩衝液及びヒト血漿の両方において、臨床透析アプローチに関連する長期間にわたって優れた安定性を維持する。体外アプローチを使用する利点と固定化されたAPの予想外に良好な酵素特性との組み合わせは、従来技術に勝る有益で驚くほど効果的な開発を表す。
【0022】
1つの実施形態によれば、血液処理装置は、血液濾過器又は透析器である。
【0023】
そのような実施形態は、2つの機能の組み合わせを提供し、そして本明細書に記載の体外血液回路を介してそれを必要とするヒトの血液又は血漿中の標的タンパク質を脱リン酸化するための装置として有利に利用することができ、なぜならば、装置は
例えば同時に標的タンパク質を脱リン酸化し、そして腎不全に苦しむ患者の血液から尿毒症毒素、過剰なイオン及び水を除去するからである。従って、感染症又は腎不全疾患に苦しむ患者の治療に必要な装置は1つだけである。従って、体外回路は、それ自体、腎不全の治療において血液透析を実施するための標準的な体外回路と基本的に異ならない。従って、腎不全及び敗血症などの感染症に苦しむそのような患者の治療は、大幅に簡素化され、患者の累積治療のコストを削減し、患者及び主治医の治療オプションを増やすのに役立つ可能性がある。
【0024】
1つの実施形態によれば、血液処理装置は、中空繊維の束を含む血液濾過器であり、アルカリホスファターゼ(AP)は、束の前記中空繊維の少なくとも内腔、及び任意には細孔に固定化される。
【0025】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、装置のマトリックスがAPが固定化されている、中空繊維膜、繊維マット又はフラットシート膜であり、少なくとも1つの多糖誘導体又は合成ポリマーから構成され、その例は以下に提供される。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、APは、特に血漿分離膜又はHCO膜などのより大きな細孔膜の場合、細孔表面にも固定化される。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、血液処理装置は、一般的に、中空繊維膜フィルター(血液濾過器)又は透析器として設計することができ、ここで膜は、血液と接触している中空繊維の内腔側でAPが(少なくとも)結合される支持体を構成する。膜は、その内腔側で前記APによりさらに機能化される、腎不全の治療のための血液透析膜、又はその内腔側、あるいは中空繊維及び/又はその細孔の外側にもAPでさらに機能化されている血漿分離膜であり得る。
【0028】
本発明の1つの目的は、敗血症などの感染症又はSA-AKIなどの腎不全に苦しむ患者を同時に治療するために使用することができる血液の浄化のための血液濾過器又は血液透析器を提供することである。この組み合わせたアプローチにより、血液濾過機能はAP治療と組み合わせて、及び潜在的に相乗的に作用し、患者が緊急に必要としているRRTをもたらし、そして同時にLPSなどの感染症に関与する要因を治療する。
【0029】
1つの実施形態によれば、装置は、腎不全および感染症の治療のための血液濾過器であり得、濾過器は、エンドキャップの少なくとも1つに、対象の標的を脱リン酸化するためにAPで機能化されている、樹脂を、例えば、スポンジの形、又は不織布の形でさらに含む。目的の標的は、好ましくは、細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)及び/又はリポ多糖(LPS)である。
【0030】
1つの実施形態によれば、血液処理装置は吸着カートリッジである。
【0031】
1つの実施形態によれば、血液処理装置は、本明細書に記載の体外血液回路内に配置され、回路は、吸着器カートリッジの上流又は下流に配置された(別個の)血液濾過器をさらに含む。
【0032】
1つの実施形態によれば、吸着器カートリッジは、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されたマトリックスを含む。
【0033】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、マトリックスがAPが結合する支持体を含むことを特徴とし、前記支持体は、中空繊維膜、平板膜、繊維マット、樹脂、不織布及びオープン多孔質フォーム、例えばポリウレタン(PU)フォームからなる群から選択される材料を含むか、又はそれらから成る。
【0034】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、支持体が樹脂であり、そして前記樹脂が、アルギン酸塩、キトサン、キチン、コラーゲン、カラギーナン、ゼラチン、セルロース、デンプン、ペクチン及びセファロースから成る群から選択される少なくとも1つのポリマー;ゼオライト、セラミック、セライト、シリカ、ガラス、活性炭、及び木炭から成る群から選択される無機材料;又はその例が下記に提供される合成ポリマーから構成されることを特徴とする。
【0035】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、支持体が樹脂であり、そしてその樹脂が、その例が以下に提供される少なくとも1つの合成ポリマーから構成されることを特徴とする。
【0036】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、支持体が不織布であり、そして前記不織布が、多糖類、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)及びタンパク質からなる群から選択される少なくとも1つの生体高分子、又はTiO2、SiO2又はAl2O3から成る群から選択される少なくとも1つの無機材料、又はその例が以下に提供される少なくとも1つの合成ポリマーから構成されることを特徴とする。
【0037】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、血液処理装置が、APが固定化され、全血で灌流されるマトリックスを含む吸着カートリッジであることを特徴とする。
【0038】
従って、装置は、樹脂又は不織布材料から選択されたマトリックスを含む吸着カートリッジであるか、又はそれを含み得、そのいずれかは、目的の標的(細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ATP)、及び/又はリポ多糖(LPS)、朝敵タンパク質とも呼ばれる)を脱リン酸化するように構成されたAPで機能化される。そのような装置は、血液透析、血液透析濾過、血液濾過又は血漿交換を提供するように構成された、血液治療のための体外回路のメンバーであり得る。
【0039】
装置は、血液回路内の唯一の血液処理装置であるか、又は、例えば、血液透析、血液透析濾過又は血液濾過回路内の追加の血液濾過器又は透析器の上流又は下流に配置することができ、あるいは、代わりに、血液入口又は出口で透析器に直ちに接続され得、ここで装置は全血で灌流されるように構成されている。装置はまた、体外血漿交換回路のメンバーであり得る。ここで、装置は、血漿又はその成分で灌流される。
【0040】
装置はまた、中空繊維膜とフィルターの濾液空間内のマトリックスとを組み合わせるハイブリッドフィルター粗凹地であり得(国際公開第 2014/079680 A1号)、ここで、前記マトリックスは、好ましくは、APで官能化された樹脂から成る。そのようなフィルターは、血液透析、血液透析濾過又は血液濾過を実行するように構成された体外回路のメンバーであり得、前記フィルターは、血液透析、血液透析濾過又は血液濾過のための血液濾過器又は透析器の上流又は下流のいずれかに配置され又は、そのような透析器がない場合、前記回路内の唯一のフィルター装置として使用され得る。このような装置は、全血で使用され得る。
【0041】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置は、血液処理装置が配置されている体外血液回路が、血液から血漿画分を分離することを可能にする血漿透析装置又は遠心分離機ベースの血漿分離システムをさらに含むことを特徴とし、ここで、血液処理装置は、血漿透析器の血漿出口ポートの下流に配置されている。さらなる側面によれば、本発明は、本明細書に記載の血液処理装置を含む体外血液回路に関し、ここで、体外血液回路は、血液又は血漿を、定義された流速及び手段で患者の血管系から血液処理装置に輸送し、そして処理された血液又は血漿を患者に戻すための手段を含む。
【0042】
本発明の活性剤は、アルカリホスファターゼ(AP)である。
【0043】
APは種々の形態で知られており、それぞれは本発明に限定されない。本明細書に記載の装置は、APの機能を発揮する能力、すなわち、それを必要としている患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)の脱リン酸化の能力を特徴とする。特定のタイプのAPは、目的の機能が達成される場合にのみ制限される。APは、アルコール、アミン、ピロリン酸、及びフェノールのリン酸エステルに対して幅広い特異性を有する。それは、タンパク質及び核酸を脱リン酸化するために日常的に使用されており、LPS、ATP及びADPを脱リン酸化することが知られている。
【0044】
リポ多糖(LPS)はグラム陰性菌の外膜の一部であり、敗血症などの重度の感染症で観察される炎症カスケードにおいて主要な役割を果たす。LPSは、パターン認識受容体であるトール様受容体4(TLR4)を介したシグナル伝達を通じて全身性炎症と腎性炎症の両方を誘発し、免疫細胞と近位尿細管上皮細胞(PTEC)に局在し、上皮炎症、内皮炎症、及び低酸素症を引き起こす。敗血症の複雑な病態生理学は、全身性及び腎性の炎症と腎低酸素症の組み合わせを伴うため、効果的に治療するには、これらのプロセスのすべて又は組み合わせを対象とする必要がある。脱リン酸化酵素であるアルカリホスファターゼ(AP)は、このような二重の作用メカニズムを発揮する分子である。
【0045】
APは、オリゴ糖コア成分、多糖鎖、及び2つのリン酸基を有する有毒なリピドA部分で構成されるLPSを解毒することができる。APによるこれら2つのリン酸基の1つを除去すると、毒性のないLPS分子が生成される。これは、TLR4に結合できるが、アンタゴニストとして機能する。
【0046】
APの別の保護メカニズムは、ATPの脱リン酸化であり、これは、細胞ストレス中に放出される内因性シグナル伝達分子であり、例えば炎症及び低酸素症によって誘発される。排泄されたATPは食細胞を引き付け、血小板とNLRP3インフラマソームを活性化し、炎症と組織損傷をさらに増強する。外因性APによる脱リン酸化により、ATPはADP、AMP、及びアデノシンを生成し、後者は4つのアデノシン受容体A1、A2A、A2B、及びA3の1つに結合することによって腎保護及び抗炎症効果を発揮する。潜在的に、APはATPのADP、AMP、そして最終的にはアデノシンへの変換を促進し、それによってアデノシンレベルを増加させ、その抗炎症及び組織保護効果を発揮する。従って、同じ酵素がATPからADPへの変換を触媒し、さらにADPからAMP及びアデノシンへの変換を触媒するため、ADPに対するAPの効果は有益である。
【0047】
上記から明らかなように、それを必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)、及び/又はリポ多糖(LPS)の脱リン酸化は、これらの病理学的シグナル伝達及び細菌分子の悪影響を打ち消すことに向けて効果的な手段を表す。
【0048】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)は、ウシ腸アルカリ性APである。
【0049】
ウシ腸APは、対象によって十分に許容されることが示されており、そしてさまざまな臨床設定で潜在的な有効性を示している。SA-AKIの患者では、内因性クレアチニンクリアランス、腎代替療法(RRT)の必要性、及びRRTの期間の組み合わされたエンドポイント測定に従って、ウシ腸APは腎機能を大幅に改善した。
【0050】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)は、APの組換え型及び/又はキメラ型である。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の組換えAPが本発明で使用される。好ましいAP変異体は、LPSに対して強化された安定性と優れた選択性を示す(Kiffer-Moreira T, et al, PLoS ONE 2014;9: e89374)。
【0052】
胎盤AP(PLAP)の構造に関する初期の研究では、2つの活性Zn2+残基(Zn1及びZn2)とMg2+が占める3番目の金属イオン部位を有する活性部位が明らかになった。Zn2は分子内に埋め込まれていますが、Zn1は簡単にアクセスでき、その反応性を調整できる。Zn1及びZn2の両方が高度に保存されたアミノ酸と協調し、そして突然変異誘発研究は、Zn1の親和性、及び従って、PLAP活性部位の安定性と触媒特性を決定する際の、及び酵素の全体的熱特性を決定する際の残基E429の主要な役割をカバーしなかった。重要なE429残基を含むPLAPのよく特徴付けられたクラウンドメインを腸のヒトAP構造に導入すると、得られたキメラ酵素の触媒機能を維持又は強化しながら、酵素の安定性が向上する。生成された組換えAPは、親のヒト腸APアイソザイムと比較して、熱安定性の大幅な向上、Zn2+結合親和性の向上、トランスリン酸化の増加、ターンオーバー数の増加、基質特異性の狭さを示し、細菌LPSに対して同等の選択性を示す(Kiffer-Moreira T, et al, PLoS ONE 2014;9: e89374)。
【0053】
本発明の装置上のマトリックス材料は、本質的に、ヒトの血液と接触させるのに適しており、APを固定化することができる任意の材料であり得る。
【0054】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されるマトリックス、好ましくは中空繊維膜は、ポリスルホン、ポリ(エーテル)スルホン(PES)及び/又はポリアリール(エーテル)スルホン(PAES)及びポリビニルピロリドン(PVP)を含むか、またはそれらから成る。
【0055】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されるマトリックス、好ましくは中空繊維膜は、ポリスルホン、PES及び/又はPAES、並びにキトサン及び/又は無水マレイン酸-alt-1-オクタデセンから選択される添加剤を含むPVPを含むか、又はそれらから成る。
【0056】
従って、この装置は、血液透析で使用するように設計され、血液透析器の中空繊維の内腔側がアルカリホスファターゼ(AP)で機能化されている中空繊維膜透析器である。
【0057】
本発明の1つの側面によれば、前記血液透析器は、ポリマー及びポリマーブレンドから調製された膜に基づく。膜材料(EVAL(登録商標)を除く)は主に疎水性であるため、親水性添加剤(ポリビニルピロリドン(PVP)又はPEGなど)と組み合わせるか、メタリルスルホネートなどの親水性コポリマーで処理される。
【0058】
本発明に従って使用することができる市販の材料及び透析器の例は、例えば、以下の表に記載されているものを含む。疎水性/親水性ポリマーブレンドから調製された膜は、合成高分子膜の主なタイプである。それらの疎水性ベースの材料は、ポリスルホン又はポリエーテルスルホン(ポリアリールエーテルスルフォン)のいずれかであり、それらはさらに、しばしばPVPである親水性成分を含む。ポリエーテルスルホンベース及びポリスルホンベースの膜は少量の水を含み、他の膜とは対照的に、細孔安定剤を含まない。これらの膜は、ポリアクリロニトリル含有膜と同様に、本発明によれば特に適切である。
【0059】
【0060】
本発明の1つの側面によれば、ポリスルホン/ PVP膜が使用される。全てのポリスルホンベースの透析膜は、特定の分離特性を実現するように設計された発泡体のような支持構造を備えている。発泡体のような支持構造の増加した水力抵抗は、壁の厚さの減少によって部分的に補償される。このタイプの膜の例は、例えば、上記の表に記載されているもの、例えば、Fresenius Medical Careのヘリクソン膜である。
【0061】
本発明の別の側面によれば、ポリエーテルスルホン/ PVP /ポリアミド膜が使用される。いわゆるPolyamix膜は、支持層と呼ばれる外層が非常に開いた指のような形態を特徴とする、独特の非対称の3層構造を持っている。膜の実際の内部分離層は、中間層によって支持された非常に薄い内部スキンで構成されている。この中間層は、非常に透過性のある発泡体のような構造を形成する。従って、対流と拡散に対する低い抵抗が保証される。外層は高い機械的安定性を提供する。
【0062】
本発明のさらに別の側面によれば、ポリエーテルスルホン/ PVP又はポリ(アリール)エーテルスルホン膜が使用される。ポリエーテルスルホン及びポリビニルピロリドンで作られたほとんどの膜は、非対称構造、血液と接触する高密度の選択的内皮、及び支持的な多孔性外層によって特徴付けられる。膜製造パラメーターを適切に調整し、異なる分子量のPVPを使用することにより、基礎となる膜の物理化学的特性、形態学的構造、溶質除去挙動、及び濾過性能を改善できる。
【0063】
PES又はPAESから調製されたものを含む、ポリスルホン/ PVPベースの膜の製造は、他の中空繊維膜の製造に匹敵し、基本的に当技術分野で知られている(例えば、Boschetti-de-Fierro et al., Membrane Innovation in Dialysis, Ronco (ed): Expanded Hemodialysis - Innovative Clinical Approach in Dialysis. Contrib Nephrol. Basel, Karger, 2017, vol 191, pp 100-114を参照のこと)。最適化されたアプリケーションの場合、中空繊維膜の内径は170~220 μ
μmの範囲である。合成ポリマー膜の壁の厚さは25~55 μmである。患者を治療するために選択された透析器の有効な膜表面積は、患者のサイズに合わせて調整する必要がある。小児用フィルター(小さな患者用)の表面積は0.01~0.6m2で、成人用の標準フィルターの範囲は1.0m2~2.4m2である。
【0064】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されるマトリックス、好ましくは中空繊維膜は、アクリロニトリル及びメタリルスルホン酸ナトリウムのコポリマーを含むか、又はそれから成る。
【0065】
従って、血液精製装置は、好ましくは、i)アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムとのコポリマー、ii)ポリエチレンイミン、及びiii)APが固定化されたヘパリンを含むポリアクリロニトリル(PAN)膜を含む。ポリアクリロニトリルは、透析膜用に開発された最初の合成材料であった。Hospalによって開発された古いAN69膜の材料は、アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムのコポリマーである。この組み合わせは非常に重要であり、膜構造に影響を与えるメタリルスルホン酸ナトリウムの添加が含まれる。国際公開第2007 / 148147 A1号は、好ましくはアクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムのコポリマーに基づく膜上への、例えば、陰イオン性又は陰イオン性基を有するポリマーの溶液を、前記ポリマーに関して特定の比率で有機ポリ酸の溶液と混合することにより、コロイド形態及び酸性媒体中でアニオン性又はアニオン化可能基を担持するポリマーの溶液の使用を記載しており、これが膜の表面にグラフトされるポリマーの両方の量、及びこの膜コーティングの表面での遊離カチオン性又はカチオン化可能基の利用可能性の増加をもたらす。記載されている膜は、陰イオン性又は陰イオン化可能な基を有する大量の化合物の結合を可能にする。
【0066】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化されているマトリックス、好ましくは中空繊維膜は、ポリメチルメタクリレートを含むか、又はポリメチルメタクリレートから成る。
【0067】
この実施形態によれば、ポリメチルメタクリレート中空繊維膜が好ましくは、使用される。この高流束膜は、変性ポリメチルメタクリレート(PMMA)から調製される。PMMAベースの血液濾過器は市販されており、敗血症誘発性AKIの治療に使用されている。PMMA膜を含む既知の血液濾過器は、例えば、東レ(Sakai, in: High Performance Membrane Dialyzers. Saito et al., eds. Contributions to Nephrology, Vol 173. Basel: Karger; 2011: 137-147)が提供するFiltryzer(登録商標)NF(NF)及び従来のFiltryzer(登録商標)BG(BG)である。
【0068】
本発明によれば、APは、本発明の装置のマトリックス上に固定化されている。本質的に、マトリックスに固定化するための任意の手段が、本発明において想定されている。いくつかの実施形態によれば、APは、腎不全の治療に使用されるように、体外血液回路の状況において血液での灌流中に安定して付着したままであるように、マトリックスに固定化される。APとマトリックスとの間に安定した付着を提供する任意の形態の固定化、好ましくは、血液回路において本明細書に記載されるような装置の使用中にマトリックスからのAPの損失を全く又は無視できる程度に導く形態の固定化が適切である。
【0069】
本発明のさらなる実施形態によれば、共有(架橋など)及び非共有(イオン相互作用など)の両方の形態の付着が想定される。
【0070】
さらなる発明において、装置に使用される特定のマトリックス材料及び体外血液治療回路における装置の特定の位置に応じて、それらの固定化手段が存在する集団及び化学的性質が可能である。
【0071】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)は、好ましくは、ポリスルホン、ポリ(エーテル)スルホン(PES)及び/又はポリアリール(エーテル)スルホン(PAES)のOH基とAPのCOOH基との間の反応から生じるエステル結合を介して、好ましくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)処理を使用して、マトリックスに固定化される。
【0072】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)は、キトサンのNH2基とAPのCOOH基との間の反応から生じるペプチド結合を介して、好ましくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)処理を使用してマトリックスに固定化される。
【0073】
1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)は、無水マレイン酸-alt-1-オクタデセンによって創造されたCOOH基とAPのNH2基との間の反応から生じるペプチド結合を介して、好ましくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)処理を使用してマトリックスに固定化される。
【0074】
1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)は、OH基とCOOH基との間、又はNH 2基とCOOH基との間の架橋を生成するのに有用であるとして当技術分野で知られている試薬である。タンパク質はNH2及びCOOH基が豊富であるため、EDC化学はAPをマトリックスに固定化する効果的な手段となる。熟練者は、装置で使用される特定のマトリックス(膜)材料に従って、固定化条件及び方法を調整する。
【0075】
カルボン酸(-COOH)は、各ポリペプチド鎖のC末端、及びアスパラギン酸(ASP、D)とグルタミン酸(Glu、E)の側鎖に存在する。第一級アミンと同様に、カルボキシル基は通常、タンパク質構造の表面に存在する。カルボン酸は、EDCなどのカルボイイミドに対して反応性がある。
【0076】
EDC及びその他のカルボジイミドは長さゼロの架橋剤である。それらは通常、標的分子間の最終的なアミド結合架橋の一部になることなく、カルボン酸塩(-COOH)の第一級アミン(-NH2)への直接結合を引き起こす。ペプチド及びタンパク質には複数のカルボキシル及びアミンが含まれているため、EDCを介した直接的な架橋によりポリペプチドがランダムに重合する可能性がある。それにもかかわらず、この反応化学は固定化手順で広く使用されている。
【0077】
EDCはカルボン酸基と反応して、反応混合物中の第一級アミノ基からの求核攻撃によって容易に置換される活性なO-アシルイソ尿素中間体を形成する。一級アミンは元のカルボキシル基とアミド結合を形成し、そしてEDC副産物は可溶性尿素誘導体として放出される。O-アシルイソ尿素中間体は水溶液中で不安定である。アミンとの反応に失敗すると、中間体が加水分解され、カルボキシルが再生され、N-非置換尿素が放出される。EDC架橋は、酸性(pH 4.5)条件で効率的であり、通常、外来のカルボキシル及びアミンを含まない緩衝液で使用される。MES緩衝液(4-モルホリノエタンスルホン酸)は、適切なカルボジイミド反応緩衝液である。リン酸緩衝液及び中性pH(最大7.2)条件は、反応化学と互換性があるが、効率は低くなる。反応溶液中のEDCの量を増やすと、効率の低下を補うことができる。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、固定化は、マトリックス材料又は表面からAPのCOOH基へのOH基の架橋に関する。さらなる実施形態によれば、そのような固定化は、キトサンのNH2基及びAPのCOOH基を架橋することに関係する。さらなる実施形態によれば、そのような固定化は、無水マレイン酸-alt-1-オクタデセン及びAPのNH2基によって生成されたCOOH基を架橋することに関する。
【0079】
APを装置のマトリックスに架橋する代替手段は、熟練した人が利用可能であり、過度の努力なしに使用することができる。マトリックスに応じて、適切な化学物質を使用することができる。一部のマトリックス材料は、APに直接結合するために活性化できる。他の支持体は、架橋剤を使用してタンパク質に結合できる求核試薬又は他の官能基で作られている。DCC及びEDCなどのカルボジイミドは、タンパク質をカルボキシ及びアミンで活性化されたガラス、プラスチック、及び多糖類の担体にカップリングするのに非常に役立つ。カルボジイミドの手順は通常、1段階の方法である。ただし、有機溶媒中で反応を行う場合、又はNHS又はスルホ-NHS化学を使用して反応を促進する場合、2段階の方法が可能である。いくつかの実施形態によれば、スペーサーを使用することができる。有用なスペーサーは、ジアミノジプロピルアミン(DADPA)、エチレンジアミン、ヘキサンジアミン、6-アミノカプロン酸、及びいくつかのアミノ酸又はペプチドのいずれかである。スペーサーアームは、APがマトリックスに近すぎて固定されており、APがその標的にアクセスできない場合、立体効果を克服するのに役立つ。
【0080】
本発明のさらなる側面は、アルカリホスファターゼ(AP)をマトリックスに固定化することを含む、本明細書に記載の血液処理装置を製造するための方法に関し、ここで、前記装置は、それを必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するように構成される。
【0081】
この方法の1つの実施形態によれば、血液処理装置は、中空繊維膜の束を含む血液濾過器であり、アルカリホスファターゼ(AP)は、束の前記中空繊維の少なくとも内腔、及び任意には細孔に固定化される。
【0082】
この方法の1つの実施形態によれば、アルカリホスファターゼ(AP)はマトリックスに共有結合し、この方法は、カルボジイミド化合物、好ましくは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を使用する前記マトリックス及び/又はAPの処理を含む。特定のEDC化学物質を使用する適切な方法及びプロトコルは、以下の実施例でより詳細に開示される。
【0083】
本発明の方法は、装置を製造することが、吸着器又は血液濾過器などの標準的な血液処理装置の構造、機能、又は使用可能性に対する基本的な変更を必要としないので、非常に有益である。既存の血液処理吸着器又は血液濾過器は、活性剤を固定化し、使用するための装置を準備するために、その後(製造後に)APで処理することもできる。透析器は構造的に変化せず、製造後に変更されるだけなので、追加の製造への投資の必要性は限られている。
【0084】
いくつかの実施形態によれば、固定化されたAPを含む、本明細書に記載の方法を使用して生成される体外療法のための装置は、好ましくは、固定化されたAPを含むマトリックスが、0.1~2の濃度、好ましくは0.1~1mmol / LのMg2+、及び5~150、好ましくは10~100μモル/ Lの濃度のZn2+の存在下で前記緩衝液又は溶液に浸漬されている緩衝液又は他の溶液で満たされるか又は貯蔵され得る。必要なAP活性を維持しながら、使用するAPに応じて、上記の値に多少の変動が生じる可能性がある。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置を製造する方法は、好ましくは酸性溶液、より好ましくはクエン酸溶液を使用し、膜、好ましくはポリアクリロニトリル膜、より好ましくはAN69膜又は中空繊維束のPEI被覆工程を含み、続いて グルタルアルデヒド処理及びAP固定化を含む。
【0086】
以下の例に示されているように、その後のGA/AP機能化とAP活性の観点から特に効果的なPEI被覆工程が開発された。好ましい実施形態によれば、ポリアクリロニトリル膜、好ましくはAN69膜又は中空繊維束は、酸性溶液中のPEI(クエン酸溶液中、好ましくは100~300、又は約200mg /k g、好ましくは10~300、好ましくは200mg/kgのPEI)を使用して処理される。
【0087】
1つの実施形態によれば、0.5~5、好ましくは1~3μモル/ gの中空繊維膜の最適PEI密度が使用される(GA及びAP処理の前)。
【0088】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置を製造する方法は、PEI処理膜のGA処理を含み、ここで前記GAは、アルカリ性pH、好ましくは7.1~11のpHの間、より好ましくは7.3~10.5のpH、より好ましくは約7.4又は9.9のpHで膜に適用される。これらのpH値は、効果的なGA処理につながり、その後、予想外に安定して活性的な固定化APにつながる。
【0089】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載の血液処理装置を製造する方法は、PEI及びGA処理膜のAP処理を含み、ここで前記APは、アルカリ性pH、好ましくは7.1~11のpH、より好ましくは7.3-10.5の間のpH、より好ましくは約7.4又は9.9のpH溶液中の膜に適用される。これらのpH値は、予想外に安定した活性的な固定化APにつながる。
【0090】
好ましい実施形態によれば、PEI処理は、好ましくはポリアクリロニトリル膜、より好ましくはAN69膜又は中空繊維束を使用して、7.1~7.8の間、より好ましくは約7.4のpHで実施され、続いて8.5~10.5のpH、より好ましくは約9.9のpHの溶液中でAP処理が行われる。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、APが固定化されたマトリックスは、続いて滅菌される。驚くべきことに、以下で試験されたマトリックスの滅菌は、AP活性の有意な低下をもたらさず、これは臨床応用にとって問題となるでしょう。1つの実施形態によれば、ガンマ滅菌が使用される。1つの実施形態によれば、EtOガス滅菌が使用される。1つの実施形態によれば、熱滅菌(蒸気滅菌)は使用されない。
【0092】
さらなる側面によれば、本発明は、感染症、好ましくは血液又は全身感染症の治療における薬剤として使用するための、本明細書に記載の血液処理装置に関する。
【0093】
さらなる側面によれば、本発明は、細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)及び/又はリポ多糖(LPS)の病理学的レベルに関連する任意の疾患の治療における薬物として使用するための本明細書に記載の血液処理装置に関する。LPSは、複数の感染症に関連する病理学的分子として一般的に知られている。LPSの脱リン酸化及び本発明を用いた分子の解毒は、LPSの病理学的影響の効果的な対抗を可能にする。
【0094】
1つの実施形態によれば、本発明は、敗血症又は敗血症性ショックの治療における医薬品として使用するための、本明細書に記載の血液処理装置に関する。
【0095】
1つの実施形態によれば、本発明は、感染に関連する腎機能障害の治療における医薬品として使用するための、本明細書に記載の血液処理装置に関する。1つの実施形態によれば、感染症に関連する腎機能障害は、敗血症に関連する急性腎障害(AKI、又はSA-AKI)である。
【0096】
1つの実施形態によれば、治療は、急性期、好ましくは集中治療室(ICU)での持続的腎代替療法を含む。
【0097】
1つの側面によれば、本発明は、そのような障害の少なくとも1つの症状を治療又は改善する方法を提供する。
【0098】
従って、本発明のさらなる目的は、病理学的レベルの細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)に関連する障害の少なくとも1つの症状を治療又は改善する方法を提供することであり、ここで、この方法は、本明細書に記載されるように構成されるマトリックス上に患者の血液又は血漿を通し、そして次いで処理された血液を患者に戻すことにより、患者からの血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を体外脱リン酸化する工程を含む。
【0099】
従って、本発明の1つの目的は、感染、好ましくは血液又は全身感染、敗血症又は敗血症性ショック、感染関連腎機能障害又は敗血症関連急性腎障害(AKI)を治療又は予防する装置、体外回路及び方法を提供することであり、ここで、装置は体外血液処理回路に配置され、細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化するように構成されている。
【0100】
本発明は、以下の図によってさらに説明される。本明細書に記載の本発明の範囲を限定することなく、本発明のいくつかの好ましい非限定的な実施形態又は態様のより詳細な図を表すことを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【
図1】
図1は、体外血液治療回路のための装置に組み立てられた血液処理装置に取り付けられた、中空透析膜の管腔に結合されたAPを示す本発明の好ましい実施形態の概略図を示す。
【0102】
【
図2A】
図2は、固定化されたアルカリホスファターゼの活性測定の結果を示す。
図2Aは、修飾された膜に対するAPの活性を測定するために使用される脱リン酸化されたpNPPの吸光度(405nm)の標準曲線を示す。APが固定化された膜サンプルの測定された活性は、各サンプルの重量と共に、μmolのpNPPmin-1で表に示されている。活性は、サンプルの膜重量及び透析器全体の膜重量を使用して、透析器全体の活性に外挿された。
【0103】
【
図2B】
図2は、固定化されたアルカリホスファターゼの活性測定の結果を示す。
図2Bは、エポキシ(ECR8209F)及びNH2(ECR8409F)ビーズに固定化されたAPに反応したpNPP溶液の測定された吸光度を示す。樹脂と市販のpNPP溶液を1:4の比率で混合した後、吸光度の変化を経時的に測定した。未修飾樹脂にAPが含まれていない場合、観察されるシグナルの吸光度を補正した。
【0104】
【
図3】
図3は、血液処理装置を含む体外処理回路の概略図を示す。装置は、APが結合された膜、樹脂、又は不織布ベースの支持体を含むカートリッジ又はフィルターであり得る。回路は血液灌流モードで操作できる。血液処理装置が中空繊維膜フィルター装置である場合、治療モードは、血液透析、血液透析濾過、血液濾過、又は透析液/濾過ポートが閉じたフィルターの血液灌流であり得る。
【0105】
【
図4】
図4は、血液処理装置を含む体外治療回路の概略図を示す。装置は、それぞれAPが結合された、樹脂又は不織布を含む吸着カートリッジ、又は膜を含むフィルターであり得る。血液処理装置は、別個の血液透析器の上流(透析前の設定、
図4A)又は血液透析器の下流(透析後の設定、
図4B)に配置することができる。回路内の機能化されていない血液透析器は、血液透析、血液透析濾過、又は血液濾過モードなど、医療ニーズに応じてさまざまな治療モードで操作できる。
【0106】
【
図5】
図5は、血液処置装置を含む体外治療回路の概略図を示す。装置は血漿で灌流される。示される実施形態によれば、血漿分離フィルターは、全血から血漿を分離するために使用される。血漿フィルターは、0.03μm~2μmの範囲の孔径により標的タンパク質を含む血漿画分を生成する。血漿は、APが結合された不織布、樹脂又は膜支持体に基づくマトリックスを含む血液処理装置を通して灌流される。
【0107】
【
図6】
図6は、エポキシ活性化又はアミノ支持体への標的タンパク質の共有結合の概略図を示す。支持体は、樹脂、中空繊維膜を含む膜、フラットシート膜又は繊維マット、又は不織布であり得る。(A)は、タンパク質のアミノ基を介したタンパク質の支持体への直接結合を示している(実施例6)。(B)は、酵素の共有結合による固定化がアミノ樹脂の使用に基づいていることを示す。アミノ樹脂は、グルタルアルデヒドで事前に活性化してから、酵素の共有結合による固定化に使用できる。アルデヒド基と標的タンパク質のアミノ基との反応は速く、シッフ塩基(イミン)を形成し、酵素と担体の間に安定した多点共有結合をもたらす。イミンの二重結合は、ボロハイドライドでさらに減らすことができる。
【0108】
【
図7】
図7は、AN69中空繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像が、このような中空繊維を束にして使用した場合の透析での使用方法の概略構成と共に示されている。
【0109】
【
図8】
図8は、ミニモジュールのガンマ線滅菌後のAP活性試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0110】
特許及び非特許文献の全ての引用された文書は、参照によりその全体がここに組み込まれる。本書に別段の記載がない限り、すべての用語には通常の技術的意味が与えられる。
【0111】
本発明は、患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を、アルカリホスファターゼ(AP)が固定化された血液濾過器又は吸着カートリッジなどの血液処理装置内のマトリックスに固定化されたAPを使用し、体外的に脱リン酸化し、そして次に、処理された血液を患者に戻すことに基づいている。
【0112】
体外回路及び治療:
本発明の新規な血液処理装置を組み込むことができる体外システムは、先行技術において知られている。体外処置又はシステムは、体外で実行又は配置される医療処置又はシステムである。これは、血液が循環に戻る前、患者の循環から血液を採取して、特定の工程を適用する一般的な手順に関連している。血液を体外に運ぶ装置は、体外血液回路と呼ばれる。管、コネクタ、ポンプなどの適切な装置構成要素は、当業者に利用可能である。
【0113】
本発明によれば、「体外血液浄化」という表現は、好ましくは、患者の体外(体外)の迂回回路内の流れる血液からのクリアランスを通じて体液から物質を除去する工程を指す。前記物質には、内因性毒素(すなわち、尿毒症毒素)、外因性毒物(すなわち、エチレングリコール又は真菌毒素)、投与された薬物、ウイルス、細菌、抗体及びタンパク質(すなわち、IMHA、重症筋無力症)、異常細胞(すなわち、白血病)、及び過剰な水が含まれ得る。治療手順は、間欠的血液透析(HD、HDF、HF)及び持続的腎代替療法(CRRT)を含む血液透析;血液灌流; 及び治療的アフェレーシスが含む。
【0114】
本明細書で使用される「血液」という表現は、赤血球、白血球、及び血漿中に懸濁された血小板を含む、生物の血液のすべての成分を含む全血を指す。「血漿」という表現は、約92%の水、7%のタンパク質、例えばアルブミン、ガンマグロブリン、フィブリノーゲン、補体因子、凝固因子、及び全血の一部を形成するが、もはや赤血球及び白血球及び血小板を含まない、1%のミネラル塩、糖、脂肪、電解質、ホルモン、及びビタミンにより構成される液体を指す。本発明の文脈において、「血漿」という表現はまた、例えば、血清などの、その標準的な意味での上記で定義された血漿の特定の画分を指す。
【0115】
1つの側面によれば、体外血液浄化回路における血流速度は、20ml~700ml /分の間である。本発明による血液処理装置に加えて、又はさらに血液透析器が標的タンパク質を固定化するように構成されている場合のいずれかで、腎不全の治療のための血液透析器を含む体外回路における典型的な透析液の流量は、0.5L/時~800ml/分の範囲である。
【0116】
血液透析では、血液は体外回路を循環し、その組成は、界面にある半透膜を横切る拡散力及び/又は対流力による溶質と水の物質移動によって変更される。溶質の移動の大きさとスペクトルは、膜を横切って加えられる力の性質、溶質の化学的及び物理的特性、特にサイズ、及び膜の構造特性に基づいている。血液透析は、腎不全に苦しむ患者のための標準的な治療法である。
【0117】
血液灌流は、血液透析では効率的に除去できない内因性及び外因性の中毒を管理するために使用される吸着性の体外療法である。吸着は、タンパク質などの溶質が材料表面(マトリックス)に分子的に付着する原理である。血液透析中に発生する血液と透析液の物理的分離とは対照的に、血液灌流中、血液は、血液経路内の溶質を選択的又は非選択的に結合する能力を備えた吸着剤に直接さらされる。
【0118】
治療的アフェレーシスでは、血液は、例えば、遠心分離によって、又は原形質膜又はフィルターによって、その成分画分に分離され、除去されなければならない溶質を含む画分、一般に血漿画分は、患者に戻る前に特別に処理される。本発明は、血漿(標的タンパク質を含む)が患者の流れる血液から除去され、本発明による装置又はマトリックスと接触した後、患者に戻されるアフェレーシス治療を提供する(
図5)。血液処理装置が血漿で灌流される体外回路における典型的な血漿流量は、7ml /分~250ml /分の範囲である。
【0119】
1つの側面によれば、本発明による体外血液回路は、血液透析を実施するように構成されている。この場合、本発明による装置は、例えば、本発明によると、標的タンパク質を固定化するようにさらに構成された血液透析器である。回路は、血液透析、血液透析濾過、血液濾過モードなど、医療ニーズに応じてさまざまな治療モードで操作できる。
【0120】
1つの側面によれば、装置は、腎臓の通常の血液濾過機能を置き換えるために使用される治療に関連する「腎代替療法」(RRT)を実行するように構成される。血液透析、血液濾過、及び血液透析濾過は、連続的又は断続的であり得、動静脈経路(血液が動脈から出て静脈を介して戻る)又は静脈経路(血液が静脈から出て静脈を介して戻る)を使用することができる。 これにより、種々のタイプのRRTをもたらす。
【0121】
例えば、腎代替療法は、以下のグループから選択され得るが、但し、それらだけには限定されない:持続的腎代替療法(CRRT)、持続的血液透析(CHD)、持続的動静脈血液透析(CAVHD)、持続的静脈静脈血液透析(CVVHD)、持続的血液濾過(CHF)、持続的動静脈血液濾過(CAVH又はCAVHF)、持続的静脈静脈血液濾過(CVVH 又はCVVHF)、持続的血液透析濾過(CHDF)、持続的動静脈血液濾過(CAVHDF)、持続的静脈静脈血液濾過(CVVHDF)、間欠的腎代替療法(IRRT)、間欠的血液透析(IHD)、間欠的静脈静脈血液透析(IVVHD)、間欠的血液濾過(IHF)、間欠的静脈静脈血液濾過(IVVH又はIVVHF)、間欠的血液透析濾過(IHDF)及び間欠的静脈静脈血液濾過(IVVHDF)。
【0122】
好ましい実施形態によれば、本発明による体外血液回路は、持続的腎代替療法(CCRT)を提供するように構成される。持続的腎代替療法(CRRT)は、1日24時間の連続療法として提供される低速透析治療であり、主にICU設定の重症患者に提供される。慢性腎不全患者の断続的HDと同様に、CRRTによる溶質除去は、対流(血液濾過)、拡散(血液透析)、又はこれら両方の方法の組み合わせ(血液透析濾過)のいずれかによって達成される。この工程では、医原性アシドーシスと電解質の枯渇、及び過剰な水分除去を防ぐために、補液を使用する必要がある。CRRT及びそれを使用する方法は当技術分野で知られている。
【0123】
別の側面によれば、本発明による体外血液回路は、血液灌流を実行するように構成される。従って、本発明による血液処理装置は、全血で灌流され、体外回路内に配置される(
図3)。本発明の1つの側面によれば、装置は、APが結合された膜、不織布、又は樹脂を含むカートリッジである。1つの側面によれば、カートリッジのマトリックスがAPが結合している中空繊維膜の束で構成されている場合、治療モードは、透析液/濾液ポートを閉じた状態での血液灌流にすることができる。さらに別の側面によれば、カートリッジは、患者の血液に対して血液透析を実行するように構成された血液透析器の下流又は上流に配置することができ(
図4A及び4B)、そして血液透析、血液透析濾過及び血液濾過から選択される異なる治療モードで操作され得る。
【0124】
1つの側面によれば、血液処理装置は、上記のように、フィルターの濾液空間に中空繊維及び樹脂の両方を含むフィルターである。フィルターは、血液灌流モードで操作することができ、又は本発明に従って装置の上流又は下流に配置することができる血液透析器と組み合わせる場合、治療モードは、血液透析、血液透析濾過、又は血液濾過であり得る。本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明による装置は、処理の間に再生され得る。
【0125】
1つの側面によれば、前記装置の中空繊維膜は血漿分離膜であり、血漿の通過を可能にし、そこに含まれる標的と一緒に膜を通過し、濾液空間のマトリックスと相互作用し、それによって標的をAPによって脱リン酸化することを可能にする。浄化された血漿は同じ装置内の中空繊維膜に再び入り、血液は患者に戻ることができる。そのような装置は、国際公開第2014/079681A2号に記載されているように、血液透析器の上流又は下流のいずれかの体外回路に配置することができ、または回路内の唯一の血液灌流装置として使用することができる。別の側面によれば、APはまた、又は排他的に、上記のように血漿分離膜に、例えば、膜の外側及び/又は細孔に結合することができる。濾液空間内の樹脂は、1つの側面によれば、同じ又は異なる標的タンパク質を除去するように構成することができる。
【0126】
典型的には、本発明による装置は、それで処理される血液又は血漿のための少なくとも1つの入口及び少なくとも1つの出口を有する円筒形ハウジングを備えたシリンダーとして設計される。装置が、少なくとも1つの標的タンパク質の除去に加えて、HD、HDF、又はHFの腎不全の治療に役立つ血液透析器である場合、装置はさらに、透析液の入口及び出口を備えている。本発明に従って使用することができる装置構成は、一般に知られており、本発明の範囲内にある。
【0127】
別の実施形態によれば、体外血液回路は、米国特許出願公開第2018/0369783号に記載されているように、患者の血液又は血漿に含まれるタンパク質結合尿毒症毒素を分離するための血液適合性吸着剤を含む。血液適合性吸着剤は、尿毒症毒素を血液透析で透析可能にするために、それらの担体タンパク質に関して分子量が500g / mol未満のタンパク質結合尿毒症毒素の分離に適しており、ここで血液適合性材料は、少なくとも1つの層の固体担体成分上に配置された環状オリゴ糖又はその誘導体に基づくポリマーを含む。従って、この種の血液適合性吸着剤は、通常の体外血液処理(例えば、血液透析又は肝臓透析)をサポートするために、分子量が約500 Daまでの疎水性及び/又は荷電ドメインを有するアルブミン結合毒素(例えば、インドキシル硫酸、p-クレゾール、馬尿酸、又はフェニル酢酸)の選択的且つ効果的な除去に適している。
【0128】
アルカリホスファターゼ:
本明細書で使用される場合、「アルカリホスファターゼ」(AP、ALP、ALKP、ALPase、Alk Phosとしても知られる)又は塩基性ホスファターゼは、本明細書でより詳細に記載されるように、約86キロダルトンのホモ二量体タンパク質酵素である。各モノマーは通常、5つのシステイン残基、2つの亜鉛原子、及びその触媒機能に重要な1つのマグネシウム原子を含み、アルカリ性pH環境で最適に活性を示す。APには、化合物を脱リン酸化するという生理学的役割がある。この酵素は、多くの生物、原核生物、真核生物に同様に見られ、一般的な機能は同じですが、機能する環境に適した構造形態が異なる。酵素は典型的には熱安定性であり、そして本明細書に開示される固定化反応化学に感受性がない-。
【0129】
APの好ましい実施形態は、市販されており(例えば、Sigma-Aldrichから; P0114)、そして確立された技術及び本明細書に記載の技術の両方を使用して装置マトリックスに固定化できるウシ腸アルカリホスファターゼに関する。
【0130】
ウシ腸アルカリホスファターゼは、二量体の膜由来糖タンパク質である。少なくとも3つのアイソフォームが存在し、通常、モノマーごとに2つのN結合型グリカンと1つ以上のO結合型グリカンを有する。市販の製品は、例えば、5mMのTris、5mMのMgCl2及び0.1mMのZnCl2、pH7.0を含む50%グリセロール中、溶液で入手できる。Sigma-Aldrichの1つのDEAユニットbiAPは、通常、1分あたり1μmoleの4-ニトロフェニルホスフェートをpH 9.8、37℃で加水分解する。
【0131】
腸アルカリホスファターゼ(Bos Taurus)の1つの例示的なタンパク質配列は、以下の配列番号1に示されるGenBank:AAA30571.1による。Besman and Coleman(JBiolChem。1985Sep15; 260(20):11190-3)に記載されているウシ腸アルカリホスファターゼのアイソザイムも本発明で想定される。
配列番号1:
MQGACVLLLLGLHLQLSLGLVPVEEEDPAFWNRQAAQALDVAKKLQPIQTAAKNVILFLGDGMGVPTVTATRILKGQMNGKLGPETPLAMDQFPYVALSKTYNVDRQVPDSAGTATAYLCGVKGNYRTIGVSAAARYNQCKTTRGNEVTSVMNRAKKAGKSVGVVTTTRVQHASPAGAYAHTVNRNWYSDADLPADAQMNGCQDIAAQLVNNMDIDVILGGGRKYMFPVGTPDPEYPDDASVNGVRKRKQNLVQAWQAKHQGAQYVWNRTALLQAADDSSVTHLMGLFEPADMKYNVQQDHTKDPTLQEMTEVALRVVSRNPRGFYLFVEGGRIDHGHHDDKAYMALTEAGMFDNAIAKANELTSELDTLILVTADHSHVFSFGGYTLRGTSIFGLAPSKALDSKSYTSILYGNGPGYALGGGSRPDVNDSTSEDPSYQQQAAVPQASETHGGEDVAVFARGPQAHLVHGVEEETFVAHIMAFAGCVEPYTDCNLPAPTTATSIPDAAHLAASPPPLALLAGAMLLLLAPTLY
【0132】
アルカリホスファターゼの1つの例示的な配列は、以下の配列番号2に示されるように、GenBank:AAA51700.1によるヒト前駆体タンパク質である。
配列番号2:
MQGPWVLLLLGLRLQLSLGIIPVEEENPDFWNRQAAEALGAAKKLQPAQTAAKNLIIFLGDGMGVSTVTAARILKGQKKDKLGPETFLAMDRFPYVALSKTYSVDKHVPDSGATATAYLCGVKGNFQTIGLSAAARFNQCNTTRGNEVISVMNRAKKAGKSVGVVTTTRVQHASPAGTYAHTVNRNWYSDADVPASARQEGCQDIATQLISNMDIDVILGGGRKYMFPMGTPDPEYPDDYSQGGTRLDGKNLVQEWLAKHQGARYVWNRTELLQASLDPSVTHLMGLFEPGDMKYEIHRDSTLDPSLMEMTEAALLLLSRNPRGFFLFVEGGRIDHGHHESRAYRALTETIMFDDAIERAGQLTSEEDTLSLVTADHSHLFSFGGYPLRGSSIFGLAPGKARDRKAYTVLLYGNGPGYVLKDGARPDVTESESGSPEYRQQSAVPLDGETHAGEDVAVFARGPQAHLVHGVQEQTFIAHVMAFAACLEPYTACDLAPRAGTTDAAHPGPSVVPALLPLLAGTLLLLGTATAP
【0133】
アルカリホスファターゼの1つの例示的な配列は、以下の配列番号3に示されるように、Gen-Bank:AAB59378.1によるヒトタンパク質である。代替の例示的なヒトAP配列は、GENBANK受託番号AAC97139.1、AAA98616.1、CAA39425.1、AAA98617.1でも知られている。
配列番号3:
MISPFLVLAIGTCLTNSLVPEKEKDPKYWRDQAQETLKYALELQKLNTNVAKNVIMFLGDGMGVSTVTAARILKGQLHHNPGEETRLEMDKFPFVALSKTYNTNAQVPDSAGTATAYLCGVKANEGTVGVSAATERSRCNTTQGNEVTSILRWAKDAGKSVGIVTTTRVNHATPSAAYAHSADRDWYSDNEMPPEALSQGCKDIAYQLMHNIRDIDVIMGGGRKYMYPKNKTDVEYESDEKARGTRLDGLDLVDTWKSFKPRYKHSHFIWNRTELLTLDPHNVDYLLGLFEPGDMQYELNRNNVTDPSLSEMVVVAIQILRKNPKGFFLLVEGGRIDHGHHEGKAKQALHEAVEMDRAIGQAGSLTSSEDTLTVVTADHSHVFTFGGYTPRGNSIFGLAPMLSDTDKKPFTAILYGNGPGYKVVGGERENVSMVDYAHNNYQAQSAVPLRHETHGGEDVAVFSKGPMAHLLHGVHEQNYVPHVMAYAACIGANLGHCAPASSAGSLAAGPLLLALALYPLSVLF
【0134】
例示的な実施形態としてまた、配列番号4のように、GenBank参照配列NP_001622.2によるヒト腸型アルカリホスファターゼ前駆体が含まれる。
配列番号4:
MQGPWVLLLLGLRLQLSLGVIPAEEENPAFWNRQAAEALDAAKKLQPIQKVAKNLILFLGDGLGVPTVTATRILKGQKNGKLGPETPLAMDRFPYLALSKTYNVDRQVPDSAATATAYLCGVKANFQTIGLSAAARFNQCNTTRGNEVISVMNRAKQAGKSVGVVTTTRVQHASPAGTYAHTVNRNWYSDADMPASARQEGCQDIATQLISNMDIDVILGGGRKYMFPMGTPDPEYPADASQNGIRLDGKNLVQEWLAKHQGAWYVWNRTELMQASLDQSVTHLMGLFEPGDTKYEIHRDPTLDPSLMEMTEAALRLLSRNPRGFYLFVEGGRIDHGHHEGVAYQALTEAVMFDDAIERAGQLTSEEDTLTLVTADHSHVFSFGGYTLRGSSIFGLAPSKAQDSKAYTSILYGNGPGYVFNSGVRPDVNESESGSPDYQQQAAVPLSSETHGGEDVAVFARGPQAHLVHGVQEQSFVAHVMAFAACLEPYTACDLAPPACTTDAAHPVAASLPLLAGTLLLLGASAAP
【0135】
配列番号5のようなより短いバージョンもまた想定される:
配列番号5:
VIPAEEENPAFWNRQAAEALDAAKKLQPIQKVAKNLILFLGDGLGVPTVTATRILKGQKNGKLGPETPLAMDRFPYLALSKTYNVDRQVPDSAATATAYLCGVKANFQTIGLSAAARFNQCNTTRGNEVISVMNRAKQAGKSVGVVTTTRVQHASPAGTYAHTVNRNWYSDADMPASARQEGCQDIATQLISNMDIDVILGGGRKYMFPMGTPDPEYPADASQNGIRLDGKNLVQEWLAKHQGAWYVWNRTELMQASLDQSVTHLMGLFEPGDTKYEIHRDPTLDPSLMEMTEAALRLLSRNPRGFYLFVEGGRIDHGHHEGVAYQALTEAVMFDDAIERAGQLTSEEDTLTLVTADHSHVFSFGGYTLRGSSIFGLAPSKAQDSKAYTSILYGNGPGYVFNSGVRPDVNESESGSPDYQQQAAVPLSSETHGGEDVAVFARGPQAHLVHGVQEQSFVAHVMAFAACLEPYTACDLAPPACTTDAAHPVAASLPLLAGTLLLLGASAAP
【0136】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の組換えAPが本発明で使用される。AP変異体は、LPSに対して強化された安定性と優れた選択性を示す(Kiffer-Moreira T、et al、PLoS ONE 2014; 9:e89374)。この配列は、配列番号6に記載されている。
配列番号6:
VIPAEEENPAFWNRQAAEALDAAKKLQPIQKVAKNLILFLGDGLGVPTVTATRILKGQKNGKLGPETPLAMDRFPYLALSKTYNVDRQVPDSAATATAYLCGVKANFQTIGLSAAARFNQCNTTRGNEVISVMNRAKQAGKSVGVVTTTRVQHASPAGTYAHTVNRNWYSDADMPASARQEGCQDIATQLISNMDIDVILGGGRKYMFPMGTPDPEYPADASQNGIRLDGKNLVQEWLAKHQGAWYVWNRTELMQASLDQSVTHLMGLFEPGDTKYEIHRDPTLDPSLMEMTEAALRLLSRNPRGFYLFVEGGRIDHGHHEGVAYQALTEAVMFDDAIERAGQLTSEEDTLTLVTADHSHVFSFGGYPLRGSSIFGLAPGKARDRKAYTVLLYGNGPGYVLKDGARPDVTESESGSPEYRQQSAVPLDEETHGGEDVAVFARGPQAHLVHGVQEQSFVAHVMAFAACLEPYTACDLAPPACTTD
【0137】
いくつかの実施形態によれば、使用されるAP配列は、本明細書に記載のヒト、組換え又はウシAPタンパク質と機能的に同等であり、言い換えれば、そのような機能的同等性は、それを必要とする患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化する能力によって定義される。
【0138】
本明細書に記載のアミノ酸配列の長さの変化もまた、本発明に含まれる。当業者は、配列番号1、2、3、4、5又は6よりも長い又は短いアミノ酸配列変異体を提供することができ、それでも、所望の結果を提供するために、本明細書に記載のAPと十分な類似性を示す。例えば、本明細書に記載されているように、全長型よりも10、20、30、40、50又は最大100アミノ酸少ない配列番号1、2、3、4、5又は6のより短い変異体もまた、効果的な標的脱リン酸化を可能にし得る。従って、APの活性フラグメントも考慮さる。さらに、本明細書に記載されているように、10、20、30、40、50又は最大100個のアミノ酸を含む配列番号1、2、3、4、5又は6のより長い変異体は、AP配列よりも多くの所定の追加配列も有効にすることができる。
【0139】
本発明の他の実施形態によれば、使用されるAPタンパク質は、配列番号1、2、3、4、5又は6に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなり得る。好ましくは、配列変異体は、配列番号1、2、3、4、5又は6に対して少なくとも80%、90%、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を含み、そして好ましくは 本明細書に記載のAPと機能的に類似している。好ましい実施形態によれば、使用されるAPタンパク質は、配列番号1、2、3、4、5又は6に対して少なくとも80%、90%、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を含む。
【0140】
いくつかの実施形態によれば、本発明は、本明細書に記載の膜、支持体又は他のマトリックスに固定化された場合、患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)を脱リン酸化することができる任意のAPをカバーする。
【0141】
本明細書で使用される「脱リン酸化」は、加水分解などによる有機化合物からのリン酸(PO43-)基の除去に関する。リン酸化は可逆的な翻訳後修飾であり、脱リン酸化によって除去することができる。脱リン酸化及びその対応物であるリン酸化は、通常、リン酸エステル及び無水物を分離又は付着させることにより、酵素を活性化及び非活性化するか、又はシグナル伝達を調節する。脱リン酸化の注目すべき発生は、ATPからADP及び無機リン酸塩への変換である。脱リン酸化は、エステル結合を切断する一種の加水分解酵素、又は加水分解酵素(ヒドロラーゼ)を使用する。脱リン酸化で使用される主要な加水分解酵素サブクラスは、APと同様にホスファターゼである。ホスファターゼは、リン酸モノエステルをリン酸イオンと遊離ヒドロキシル(-OH)基を持つ分子に加水分解することにより、リン酸基を除去する。
【0142】
膜材料及び血液濾過器:
1つの側面によれば、装置は、血液透析で使用するように設計され、血液透析器の中空繊維の管腔側がアルカリホスファターゼ(AP)で機能化されている中空繊維膜透析器である。本発明の1つの実施形態によれば、本発明による装置は、ポリスルホン、ポールサースルホン又はポリアリールエーテルスルホン及びポリビニルピロリドンから調製された血液透析中空繊維膜の群から選択される中空繊維膜を含む。
【0143】
本発明による装置を提供するために有利に利用することができる中空繊維膜は、好ましくは、100~500μmの範囲の内径を有する。本発明の1つの実施形態によれば、中空繊維膜は、20~150μmの範囲の壁の厚さを有する。より薄い壁の厚さは、本発明自体による装置での製造中及び使用中の繊維の機械的特性の低下のために不利である。壁の厚さが厚いと、転相プロセスを実行するために長い時間間隔が必要になり、プロセス条件が不安定になり、膜が不安定になるため、不利になる。
【0144】
本発明に従って使用することができる、PES又はPAESから調製されたものを含む、ポリスルホン/ PVPベースの膜は、「高フラックス」(HF)、「中カットオフ」(MCO)、及び「高カットオフ」膜に分類することができる。これらの膜はすべて文献に記載されている。
【0145】
それらの製造は、同じポリマーが含まれていても、これらの膜が持つ定義された特性に関連している。今日、拡散誘起相分離プロセスが主に使用されており、ポリマーの組み合わせと、細孔サイズ及び拡散輸送特性の微調整が可能である。ポリマーは適切な溶媒に溶解され、沈殿は非溶媒浴、好ましくは水で起こる。ポリマー溶液中のポリマーの濃度は、特定のレシピに応じて、約20 wt%である。ポリマー溶液は、環状ダイ(紡糸口金)を通してポンプで送られ、中空繊維を形成する。中空繊維の内部ボイドは、紡糸口金の内部に導入されるボア液(溶媒と非溶媒の混合物)によって形成される。3番目の工程では、中空繊維が非溶媒浴に導かれる。非溶媒浴とボア液は、均一な液体-ポリマー溶液を、拡散溶媒/非溶媒交換(浸漬沈殿)を介して2相システムに変換するために必要である。分離プロセスは、ポリマーが豊富な相のガラス化点で停止する。堅い膜構造はポリマーが豊富な段階で形成され、膜の細孔は液体-ポリマーが少ない段階で形成される。製造プロセス中の膜特性への主な影響は、組成、ポリマー溶液の粘度と温度、添加剤の使用、結晶化または凝集する能力、ノズルの設計、凝固浴の組成、ノズルと凝固浴入口との間の条件、具体的には回転シャフトの温度と湿度、及びさらには熱又は照射による膜の乾燥及び/又は滅菌などの仕上げ処理の可能性もある(例えば、Zweigart et al (2017) 4.11 Progress in the Development of Membranes for Kidney-Replacement Therapy. In: Drioli, E., Giorno, L., and Fontananova, E. (eds.), Comprehensive Membrane Science and Engineering, second edition. vol. 4, pp. 214-247. Oxford: Elsevierを参照のこと)。それ以外の場合、最終的な繊維束とフィルターの性能は、欧州特許第3010629号で説明されているように、繊維のうねりによって影響を受ける。フィルタの最終的な組み立ては、Zweigart et al。、2017に記載されている。本発明による膜及びフィルターは、いくつかの一般的に知られている手段によって滅菌することができる。ガンマ線又は電子ビームを照射することにより、本発明による装置を滅菌することが有利であろう。どちらも標準的な手法である。ガンマ線滅菌の放射線量は5~40kGyである。蒸気滅菌も使用でき、環境への影響と患者への適用の観点から選択する方法である。利用可能な膜を製造する様々な方法にもかかわらず、当業者は、過度の努力なしに適切な膜を選択及び製造することができる。
【0146】
本発明の1つの側面によれば、血液浄化装置は、APが固定化された高フラックス膜を含む。例えば、Polyflux(登録商標)170H(Baxter)、Revaclear(登録商標)(Baxter)、Ultraflux(登録商標)EMIC2(Fresenius Medical Care)、Optiflux(登録商標)F180NR(Fresenius Medical Care)などの装置で使用される高フラックス膜が市場に出回っている。数年間。それらの製造方法は、例えば、米国特許第5,891,338号及び欧州特許第2113298号に記載されている。別の既知の膜は、BellcoのPhylther(登録商標)UPシリーズで使用されている。これらの製品はポリフェニレンをベースにしている。この出願で言及されるポリスルホン又はポリエーテルスルホンベースの膜では、ポリマー溶液は、一般的に、疎水性ポリマーとしてのポリエーテルスルホン又はポリスルホンの10~20重量%、及び親水性ポリマーの2~11重量%、ほとんどの場合、PVPを含み、ここで、前記PVPは、一般的に、低分子及び高分子のPVP成分からなる。得られる高フラックスタイプの膜は、一般に、80~99重量%の前記疎水性ポリマー及び1~20重量%の前記親水性ポリマーから成る。膜の製造中、スピンネレットの温度は一般に25~55℃の範囲にある。それ以外の場合、ポリマーの組み合わせ、プロセスパラメータ、及び性能データは、言及されている参考文献から取得するか、公開されているデータシートから取得できる。本明細書で使用される「高フラックス膜」という表現は、Boschetti-de-Fierro A et alによるデキストラン篩測定によって決定されるように、5kDa~10kDaのMWRO及び25kDa~65kDaのMWCOを有する膜を指す。(血液浄化のための新しいクラスの膜の拡張された特性評価:高カットオフ膜.IntJArtifOrgans 2013; 36(7)、455-463)。血液接触前の平均細孔半径は3.5~5.5 nmの範囲であり、ここで細孔サイズはBoschetti-de-Fierro et al.(2113)によるデキストラン篩係数に基づいてMWCOから決定される。
【0147】
本発明の1つの側面によれば、血液浄化装置は、APが固定された高カットオフ膜で構成されている。このタイプの膜は、国際公開第2004/056460号に最初に開示されており、敗血症に関連する炎症性メディエーターを排除することによる敗血症の治療をすでに主に意図した、特定の初期の高カットオフ膜が記載されている。現在市販されているハイカットオフタイプの膜を利用した高度なダイアライザーは、例えば、septeX及びTheralite(Baxter)である。前記高度な高カットオフ膜の既知の用途には、敗血症(欧州特許第2281625号)、慢性炎症(欧州特許第2161072号)、骨髄腫症及び横紋筋融解症の治療、並びに貧血の治療(米国特許第2012 / 0305487号)が含まれ、これまでで最も探索された治療は骨髄腫腎臓患者の治療である(米国特許第7,875,183B2号)。従って、これらの膜及びフィルターは、急性の状況での使用にすでに十分に適合しており、従って、本発明による治療において特に有用である。本明細書で使用される「高カットオフ膜」又は「高カットオフ膜」という表現は、15~20kDaのMWRO及び170~320kDaのMWCOを有する膜を指す。膜はまた、血液接触前の8~12 nmの、膜の選択層表面上の細孔半径によって特徴付けることができる。誤解を避けるために、所与の膜についてのMWRO及びMWCOの決定は、本明細書で使用されるように、Boschetti-de-Fierro et al. (2013)らの方法に従っている。高カットオフ膜を製造するためのプロセスは、例えば、前述の参考文献に記載されている。国際公開第2004/056460号に既に開示されているように、それらを生成するための重要な要素は、ほぼ同じポリマー組成の高フラックス膜を製造するための回転条件と比較して、紡糸プロセスの温度、すなわち、紡糸口金の温度、紡糸シャフトの温度、及び凝固浴の温度を注意深く制御することである。さらに、セラライト膜などの最新の高カットオフ膜の製造では、ポリマー溶液中の水と溶媒の比率(H2O /溶媒)もわずかに低い値に変更されるが、この溶液のポリマー含有量は それ以外の点では、例えば、Revaclear膜などの高フラックス膜を製造するために使用されるものと類似又は同じである。誤解を避けるために、従来技術の膜及び本発明による膜を説明するために使用されるMWCO及びMWRO値は、合成膜の篩分け特性がそのような接触で変化する可能性があるため、血液又は血漿接触の前に測定された。
【0148】
本発明の1つの側面によれば、血液浄化装置は、APが固定化された中程度のカットオフ膜で構成されている。それらを製造するための同じ及び方法を含むMCO膜及びフィルターは、国際公開第2015/118045 A1号、国際公開第2015/118046 A1号、及び例えば、Zweigart et al.(2017)に記載されている。このようなMCO膜を含む市場で最初の透析器は、Theranova(Baxter)である。前記中程度のカットオフ膜及び透析器は、高フラックス及び高カットオフ透析器の間の性能のギャップを埋める。本明細書で使用される「中程度のカットオフ膜」という表現は、膜が血液又は血液製剤と接触する前のデキストラン篩分け曲線によって決定されるように、9.0kDa~14.0kDaの間の分子保持開始(MWRO)及び55kDa~130kDaの間の分子量カットオフ(MWCO)を有する膜を指す。この非常にユニークな篩分けプロファイルにより、膜は、現在の高フラックス膜では対処できない中型及び大型の尿毒症溶質の除去を可能にするため、現在の高フラックス膜及び透析器の性能を大幅に拡張する。従って、それらは「透過性が増加した膜」とも呼ばれる。同時に、そのような膜は、治療中に許容できないアルブミンの損失に直面する必要なしに、そのような高分子量の化合物に対処することができる。結果として、これらの膜タイプは急性及び慢性の両方の設定で使用できる。誤解を避けるために、本明細書で使用される増加した(又は「拡張された」)透過性を有する膜」という表現は、「中程度の遮断膜」という表現と同等である。
【0149】
本発明のさらに別の実施形態によれば、血液浄化装置は、i)アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムのコポリマー、ii)ポリエチレンイミン、及びiii)APが固定化されたヘパリンを含むポリアクリロニトリル(PAN)膜を含む。ポリアクリロニトリルは、透析膜用に開発された最初の合成材料であった。Hospalによって開発された古いAN69膜の材料は、アクリロニトリルとメタリルスルホン酸ナトリウムのコポリマーである。この組み合わせは重要であり、そして膜構造に大きな影響を与えるメタリルスルホン酸ナトリウムの添加が含まれる。これらの膜は、敗血症又は敗血症誘発性急性腎不全の治療、特に生体液に含まれるエンドトキシンの吸着、すなわち本明細書に記載の標的分子の脱リン酸化を介して、及び/又は体外循環による血液又は血漿に含まれる特定の分子の精製、及び体外血液又は血漿治療中の患者における全身性抗共凝集の低減のために特に有用である。
【0150】
適切な膜を調製するための方法はまた、国際公開第2007/148147 A1号に記載されている。体外血液回路の1つの実施形態によれば、血液処理装置の膜は、膜表面積1m2当たり10~100mg、例えば、25~50mgの量のポリエチレンイミン、及び膜表面積1m2当たり1,500~10,000UI、例えば、3,000~6,000 UI、例えば4,500±1,500UIのヘパリンを含む。1つの実施形態によれば、血液処理装置は、180~260μm、例えば210 μm、又は240 μmの範囲の内径を有する中空繊維膜を含む。1つの実施形態によれば、中空繊維膜の壁強度は、30~60μm、例えば、40~50μmの範囲である。1つの実施形態によれば、拡散及び/又は濾過装置内の膜の全体の表面積は、1~3m2、例えば、1.0~2.2m2の範囲である。1つの実施形態によれば、拡散及び/又は濾過装置の中空繊維膜は、イヌリンについて、60g/l;ミオグロビンについて、> 0.55;及びアルブミンについて、<0.01のタンパク質含有量を有するウシ血漿中で37℃で測定された篩分け係数を示す。拡散及び/又は濾過装置の膜は、吸着によって炎症性メディエーター及びエンドトキシンをそれらの表面に固定化する能力を有する。1つの実施形態によれば、B=400ml/分、QD=700ml/分、UF=100ml/分のHDFモードでのIL-6のクリアランス速度は、20~40 ml/分の範囲である。PAN膜は、ベータ2ミクログロブリン、サイトカイン、内毒素などのタンパク質に対して高い吸着能力を示し、これが、この膜タイプによる敗血症治療の臨床転帰を改善する大きな必要性があるとしても、CRRTなどの急性期治療、特に敗血症誘発性AKIの治療に特に有用にする。
【0151】
開発の初期に存在した膜の特定の欠点は、今日、膜表面をポリカチオン性ポリエチレンイミンでコーティングすることによって克服され、これは、ヘパリンを結合するという追加の利点を有し、従って、透析中により低いヘパリン投与量の投与を可能にし、これは、重症患者にとって大きな利点である。現在、この膜はAN69STとして入手可能であり、CRRTでの使用が知られているEvodialやoXirisなどの市販の透析器で使用されている。AN69膜は、あらゆるタイプのタンパク質、例えばリガンド又は酵素を共有結合するのに非常に適しており、これは生体液の活性又は組成を改変するために使用することができる(例えば、米国特許第6,260,715B1号を参照のこと)。膜のこの特性は、APを前記膜に固定化することによって、本発明による装置を調製するために有利に使用することができる。
【0152】
膜が、より大きなタンパク質の通過を可能にする細孔サイズ、例えば、国際公開第2008/003610 A1号に記載されているような血漿分離膜を有する、さらに別の側面によれば、中空繊維膜の外面及び/又は細孔は、APにより機能化される。あるいは、そのような血漿分離中空繊維膜の内腔側のみがAPにより機能化される。
【0153】
さらに別の態様によれば、装置は、腎不全の治療のための血液透析器であり得、ここでフィルターは、エンドキャップの少なくとも1つに、スポンジの形で、APにより機能化された樹脂、又はAPにより機能化された不織布をさらに含む。
【0154】
患者は、断続的又は連続的に、本発明による装置で治療することができる。連続療法は、急性腎不全(ARF)にのみ使用される。断続的な治療に対する利点には、溶質と水の除去が遅いために生じる耐容性の改善が含まれる。治療は、200~500 mL / 分の血流で血液透析モードで実行される。
【0155】
本発明による装置を提供するために使用される膜が血漿分離膜であるか、さもなければ、本発明による標的の通過を、0.5より高く、好ましくは0.7より高く又は0.9より高い篩係数でかなりの量まで可能にするように構成される、本発明の1つの実施形態によれば、一般的に血液接触層である中空繊維の内層又は内腔は、機能化されておらず、APを担持しない。代わりに、APは、リンカーを介して中空繊維の外層に結合され、任意には、内層を外層と接続する層の少なくとも一部、すなわち膜の細孔にも結合される。従って、APによる官能化は、外側の濾液層にのみ存在し、任意には、膜の外層と内層を接続する細孔表面構造の少なくとも一部に存在する。そのような構成は、例えば、全血中の標的の脱リン酸化に適用でき、そのサイズのために、より大きな血液タンパク質が膜の内腔側に残りながら、内層から外層に通過することができる。標的を含む血液成分が膜の外層に通過すると、それらはAPによって修飾(脱リン酸化)される。
【0156】
吸着材料及び吸着カートリッジ:
装置はまた、いずれかがAPで機能化されている、樹脂又は不織布材料から選択されるマトリックスを含む吸着カートリッジであり得る。そのような装置は、血液透析、血液透析濾過、血液濾過又は血漿交換を提供するように構成された、血液処理のための体外回路のメンバーであり得る。装置は、血液回路内の唯一の血液処理装置であるか、または、例えば、血液透析、血液透析濾過、又は血液濾過回路の透析器の上流又は下流に配置することができるか、又は、すぐに、血液入口又は出口で透析器に接続され得、ここで装置は全血で灌流されるように構成されている。装置はまた、体外血漿交換回路のメンバーであり得、ここで、装置は、血漿又はその成分で灌流される。この装置は、治療用血漿交換(TPE)治療にも使用でき、ここで、血漿は患者から取り出され、そして、次に、代替物、例えば 新鮮凍結血漿により置換される。
【0157】
この装置は、(国際公開第号2014/079680A1号)に記載されているように、フィルターの濾液空間に中空繊維膜とマトリックスを組み合わせたハイブリッドフィルター装置にすることもできる。本発明においては、マトリックスは、本明細書に記載の標的を脱リン酸化するためにAPで官能化された樹脂から成る。そのようなフィルターは、血液透析、血液透析濾過又は血液濾過を実行するために構成された体外回路のメンバーであり得、ここで前記フィルターは、血液透析、血液透析濾過又は血液濾過のために透析器の上流又は下流のいずれかに配置されるか、又はそのような透析器がない場合の前記回路内に単独のフィルターとして使用され得る。 このような装置は、全血で使用できる。
【0158】
患者の血液から標的成分を除去するための体外装置及び方法は、以前に記載されている。例えば、国際公開第号2013/020967A1号は、患者からの血液型抗体の固定及び除去のための装置及びマトリックスの使用を開示している。米国特許第8,969,322B2号は、硫酸デキストランを含む装置を用いて患者の血液から可溶性Flt-1受容体を除去するための体外アフェレーシス手順を記載している。これらのアプローチと同様に、本発明は、APの血液治療装置への固定化、及び敗血症及び腎不全、好ましくはSA-AKIなどの感染症の治療におけるその適合性を採用する。
【0159】
従って、1つの側面によれば、本発明は、患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)及び/又はリポ多糖(LPS)の特異的脱リン酸化のために設計されたマトリックスを含む装置を開示する。別の側面によれば、本発明は、前記デバイスを含む体外回路を開示し、そのような回路が、必要とする患者の血液を効果的に治療するためにどのように構成されるべきかを説明する。さらに別の側面によれば、本発明は、患者の血液中の細胞外アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)及び/又はリン酸化リポ多糖(LPS)のレベルを低下させるための方法を提供し、患者の血液又は血漿を本発明による装置に通すことにより、患者から標的タンパク質を体外で除去することを含む。
【0160】
1つの側面によれば、例えば、ビーズの形で吸着剤を含む本発明による装置は、全血灌流(血液灌流)で使用される場合、装置ごとに、0.5~50000m2の範囲の活性表面をゆうする。別の側面によれば、本発明による前記装置は、全血漿灌流(治療的アフェレーシス)で使用される場合、装置ごとに、0.5~5000m2の範囲の活性表面を有する。さらに別の側面によれば、血液灌流及び/又は全血漿灌流のための前記装置は、装置当たり、0.5~1000m2の範囲の活性表面積を有する。
【0161】
従って、本明細書で使用される「マトリックス」という表現は、本発明によるAPを固定化するために使用することができる材料を指す。本発明の文脈で使用されるようなマトリックスは、いくつかの実施形態によれば、APが結合される支持体を含む。従って、支持体は、他の機能も実行する必要がある場合でも、APのキャリアとして機能する。
【0162】
本発明の1つの特定の実施形態によれば、APは、それを支持体上に固定化するための親和性タグを含む。親和性タグは、それらの産生中にタンパク質を精製するため、及び/又はそれらを本発明のマトリックスの支持体上に固定化するために使用することができる。親和性タグは、短いポリペプチド配列又はタンパク質全体であり、標的タンパク質との融合パートナーとして共発現される。精製と迅速な固定化を容易にすることに加えて、融合タグは、組換えタンパク質の発現と溶解性を高めるのにも有利な場合がある。親和性タグを使用してタンパク質の適切な配向を確保するか、さまざまな配向を使用して、相互作用のために機能ドメインにアクセスできるようにすることができる。異なるタイプの親和性タグが当技術分野で周知であり(Terpe、Appl Microbiol Biotechnol(2003)60:523-533)、ここでポリヒスチジン又はHis6タグが特によく説明されており、本発明によるAPを 支持体資料に結合するための1つのオプションである。APを支持体に結合するために使用できる親和性タグは、C-mycタグ、FLAGタグ、及び血球凝集素(HA)タグを含むグループから選択され得る。
【0163】
本発明の別の実施形態によれば、APタンパク質はまた、APを吸着するために二次リガンドを使用することによって支持体上に固定化され得る。これは、ビオチンと反応した、又はビオチン化された後、固定化されたアビジン又はストレプトアビジンを含む支持体に吸着されたAPを使用することによって達成できる。考えられるビオチン化技術の1つは、APをN-ヒドロキシスクシンイミド-D-ビオチンとpH9でインキュベートすることである。次に、ビオチンのストレプトアビジン又はアビジンへの非共有結合を使用して、これらのタンパク質を固定化することができる。これらの結合は、1013~1015M-1の範囲の会合平衡定数を有する。
【0164】
本発明の別の実施形態によれば、APタンパク質は、以下でさらに詳細に説明されるように、及び/又は先行技術に記載されるように、支持体に共有結合される(Cuatrecasas, J Biol Chem (1970) 245:3059-3065; Nisnevitch et al., J Biochem Biophys Methods (2001) 49:467-480)。共有結合は一般的に、支持体及び/又はタンパク質のいずれか上の官能基の利用に基づくタンパク質の共有非部位特異的付着のいずれかを含む(Nisnevitch et al., J Biochem Biophys Methods (2001) 49:467-480, Section 2.3)。本発明の別の実施形態によれば、タンパク質の共有結合は、タンパク質の部位特異的付着である(Nisnevitch et al., J Biochem Biophys Methods (2001) 49:467-480, Section 2.4; Makaraviciute et al., Biosensors and Bioelectronics (2013) 50:460-471)。本質的に、免疫親和性アプローチで通常行われるように、抗体をマトリックスに付着させるための技術的ガイダンスを適用して、APタンパク質を支持体に固定化することができる。支持体又はマトリックスへの抗体の固定化に関して本明細書に開示される参考文献もまた、モノアーAP変異体の固定化に潜在的に関連すると見なされる。
【0165】
本明細書で使用される「支持体」という表現は、本発明によるAPが結合される「基質」又は「支持体材料」として機能するマトリックスの部分を指す。そのような支持体又は支持材料は、「吸着材料」又は「吸着剤」と呼ばれることもあり、そのような表現は、本明細書で使用される「支持体」という表現に含まれるものとする。
【0166】
別の実施形態によれば、例えばAPを固定化するための固定化方法を指す場合の「支持体」への言及は、本明細書で開示され血液濾過器の膜などの膜にも適用される。
【0167】
本発明による適切な支持体は、均一で、親水性であり、関連するpH範囲及び温度にわたって機械的及び化学的に安定であり、使用中のAPの浸出がないか又は無視できるものでなければならず、選択的であり、最小の非特異的吸収を示し、そしてそれ以外の場合は、血液に適合している必要があり、すなわち、補体系および他の免疫経路の活性化などの副作用を引き起こさず、全血及び/又は血漿の優れた流動特性を有し、そしてAP付着に大きな表面積を提供する。
【0168】
支持体は、樹脂、膜、又は不織布であり得る。本明細書で使用される「樹脂」という表現は、半透明のゲル又はゲルビーズ又は細孔及び不透明な外観を有する微多孔性ビーズの形態をとることができ、又はスポンジの形態をとることができる不溶性材料を指す。そのような樹脂は、天然又はバイオポリマー、合成ポリマー及び無機材料であり得る。アガロース、デキストロース、及びセルロースビーズは、一般的に使用される天然支持体である。合成ポリマー又は有機担体は、主にアクリルアミド、ポリスチレン、及びポリメタクリレート誘導体に基づいているが、多孔質シリカ及びガラスは、いくつかの頻繁に使用される無機担体である。本発明に従って使用することができる他の材料を以下に記載する。
【0169】
本発明の1つの実施形態によれば、樹脂は、から構成される:アルギン酸塩、キトサン、キチン、コラーゲン、カラギーナン、ゼラチン、セルロース、デンプン、ペクチン、及びセファロースから成る群から選択されるポリマー;ゼオライト、セラミック、セライト、シリカ、ガラス、活性炭、及び木炭から成る群から選択される無機材料;又は以下から成る群から選択される合成ポリマー:ポリエチレン(PE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリビニルイデンクロリド(PVDC)、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリレート(PAA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET) 、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルスルホン(PEAS)、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリアミドイミド、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリブタジエン(PBD)、ポリブチレン(PB)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルイミド(PEI) 、ポリエチレン、ポリ乳酸(PLA)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリ(p-フェニレンエーテル)(PPE)、ポリウレタン(PU)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリブテン酸、ポリ(4-アリル-安息香酸)、ポリ(アクリル酸グリシジル)、メタクリル酸ポリグリシジル( PGMA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリジビニルベンゼン(PDVB)、ポリ(アリルグリシジルエーテル)、ポリ(ビニルグリシジルエーテル)、ポリ(ビニルグリシジルウレタン)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、前記ポリマー及び官能基の導入により修飾されたこれらのポリマーのいずれかのコポリマー。本発明の1つの実施形態によれば、支持体は、スチレンジビニルベンゼン(DVB)及び誘導体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)及び誘導体、並びにポリグリシジルメタクリレート(PGMA)及び誘導体から成る群から選択される。
【0170】
本発明のさらに別の実施形態によれば、支持体は不織布である。本明細書で使用される表現「不織布」は、織るか又は編むのではなく、機械的、熱的、又は化学的に繊維又はフィラメントを絡ませることによって(及びフィルムに穴を開けることによって)互いに結合されたシート、布又はウェブ構造として広く定義される材料を指す。それらは、それらの高い濾過効率、高い表面積及び高い透過性のために、本発明による装置の支持材料として効率的に使用することができる多孔質構造を形成する。メルトブロー不織布及びスパンレイド不織布を含む不織布及びそれらの製造方法、並びにそのような不織布を含む装置は、当技術分野で知られており、そして例えば、欧州特許第1922097A1号、国際公開第号2007/025738A2号及びZhao et al., J Mem Sci (2011), 369: 5-12に記載されている。不織布は、以下から構成され得る:多糖類、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びタンパク質から成る群から選択される生体ポリマー、TiO2、SiO2、又はAlO2から成る群から選択された無機材料、又はポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリウレタン(PUR)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリスチレン(PS)及び ポリ塩化ビニル(PVDF)から成る群から選択された合成ポリマー。
【0171】
別の側面によれば、本発明による装置は、国際公開第2014/07680A1号に開示されるようなフィルター装置であり得、これは、装置の濾液空間に中空繊維膜の束と樹脂の両方を含み、樹脂は好ましくはビーズから成る。そのような装置は、少なくとも関連する標的が膜壁を通過することを可能にする膜を選択することによって、本発明による標的を脱リン酸化するための装置として機能するように構成することができる。装置の濾液空間内の樹脂は、マトリックスとして機能し、そして本明細書又は国際公開第2014/07680A1号に開示されているような樹脂支持体を含み、これにAPが本明細書に開示されている方法又は 当技術分野で他の方法で知られているように結合される。
【0172】
APの固定化:
上記のように、本発明によるAPは、支持体又は膜に共有結合し得る。これに関連して、マトリックスの支持体への言及は、膜の特定の材料及び採用された固定化戦略への適用可能性に応じて、血液濾過器の膜にも適用され得る。
【0173】
APを共有結合で取り付けることができるマトリックスの生成の基礎を形成する支持体は、化学的活性化を提供又は促進しなければならず、従って、APの化学的結合を可能にしなければならない。抗体又はそのフラグメントなどの他のリガンドを固定化するための多くのカップリング方法は、当技術分野で周知であり、APを固定化するために使用することができる。一般的に、活性化化学は、広範囲のpH、緩衝液条件、及び温度にわたって安定している必要があり、結合したタンパク質又はリガンド(この場合はAP)の浸出はごくわずかである。カップリング法は、APの不適切な配向、マルチサイト付着、又は立体障害を回避する必要がある。これは、活性酵素部位又はポケットのマスキングを引き起こし、その後、活性の喪失につながる可能性がある。APを支持体に固定するために、部位に向けられたアタッチメント及び/またはスペーサーを検討することができる。マトリックスの体積当たりのAP密度を最適化して、標的のアクセシビリティとアクティビティを促進できる。
【0174】
カップリングは、アミン、アルコール、カルボン酸、アルデヒド、エポキシ基などの一般的な官能基を介して実行できる(
図6A及び6B)。本発明による支持体を調製する方法は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第8,142,844 B2号、米国特許出願第8,142,844A1号、及び米国特許出願第2014 / 0166580A1号に記載されている。これらの参考文献はまた、本発明に従ってマトリックスを生成する際に使用することができるスペーサー基(又は「リンカー」基)を記載している。
【0175】
本発明の一実施形態によれば、APは、直接的に、又はアミン官能基を介したスペーサーの添加下で結合される。最初の工程では、アミン基が支持体に導入される。本発明によれば、アミン基を基質に導入するために多くの方法を使用することができる。例えば、膜沈殿前のポリマー溶液へのアミノ化ポリマー(例えば、アミノ化ポリビニルアルコール)の添加、又はAPTMS((3-アミノプロピル)トリメトキシシラン-テトラメトキシシラン)を使用したヒドロキシル又は/及びカルボキシル基を含む膜のシラン化などの膜の後処理、PEI(ポリ(エチレンイミン))又は他のポリマーの膜表面への単純な吸着、又はアンモニウム又は他の有機アミン蒸気による膜のプラズマ処理を効果的に使用して、アミン基を膜に導入することができる。2番目の工程では、カルボジイミド化合物を使用して、タンパク質のカルボキシル基を活性化し、アミド結合を介して膜表面の第一級アミンに直接結合させることができる。最も一般的に使用されるカルボジイミドは、水性架橋用の水溶性EDC(1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)及び非水性有機合成方法の水不溶性DCC(N ’、N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)である。本発明の他の実施形態によれば、ヒドロキシル基を支持体に導入することができる。多糖類、例えばセルロース又はセルロース誘導体に基づく支持体は、すでに表面上にOH基を持っている。ヒドロキシ基はまた、例えば酸素又は空気によるプラズマ処理によって支持体に導入することができる。無水コハク酸でヒドロキシ基をアシル化した後、得られたO-コハク酸塩は、カルボジイミド又は他のカップリング試薬の存在下で、タンパク質のアミンと反応し、アミド結合を形成することができる。本発明のさらに別の実施形態によれば、カルボン酸基を支持体に導入することができる。カルボン酸基は、二酸化炭素によるプラズマ処理によって支持体に導入できる。タンパク質の固定化には、カルボジイミド/スクシンイミドカップリング化学を使用して、-APのアミン基を介した表面付着を行うことができる。本発明のさらに別の実施形態によれば、カルボニル基(アルデヒド、ケトン)は、その後のAPのカップリングのために導入することができる。アルデヒドは、過ヨウ素酸を使用してOH基を酸化することにより、多糖類ベースの固体支持体上に作成できる。タンパク質の第一級アミン(ポリペプチドのN末端及びリジンの側鎖)は、還元的アミノ化及びシッフ塩基の形成を介してアルデヒドと反応することができる。形成されたシッフ塩基は水溶液中で加水分解し、安定化のためにアルキルアミン結合に還元する必要がある。シアノ水素化ホウ素ナトリウムは、タンパク質の他の化学基を還元することなくこの反応を誘発する穏やかな還元剤である。本発明のさらに別の実施形態によれば、エポキシ基を支持体に導入することができる。表面に高密度エポキシ官能基でコーティングされたいくつかの事前活性化樹脂が市販されており、以下を参照してください。膜へのエポキシ基の導入は、例えば、国際公開第2005/026224A1号に記載されている。開環プロセスで求核試薬と反応するエポキシド基は、タンパク質の一級アミン、チオール、又はヒドロキシル基と反応して、それぞれ安定した二級アミン、チオエステル、及びエーテル結合を形成する。エポキシド基はチオール基と容易に反応し、そして生理学的pH(pH 7.5-8.5)に近い緩衝系を必要とする。エポキシド基は、ヒドロキシル基と反応するために高いpH条件(pH 11-12)を必要とし、アミン基と反応するために中程度のアルカリ性条件(pH> 9)を必要としする。いずれの場合も、さまざまな鎖長のスペーサーを支持体とAPとの間に導入できる。
【0176】
上記及び下記のように、例えば親和性クロマトグラフィーで使用するためのタンパク質を結合するために有利に利用することができるいくつかのタイプの支持体が存在する。親和性支持体は、多糖類などの材料に基づくことができる。適切な多糖は、例えば、セルロース、ニトロセルロース、キトサン、コラーゲン、デンプン、及びアガロース、セファデックス又はセファロースなどの架橋多糖ゲルである。多糖マトリックスの誘導体を調製するための方法は長い間知られており、例えば、米国特許第4,411,832号又は米国特許第3,947,352号に記載されている。支持体はまた、合成有機支持体に基づくことができる。合成高分子マトリックスは、親水性及び疎水性の合成ポリマー及びそれらの組み合わせを含む。合成支持体は、例えば、ポリアクリルアミド支持体又はその誘導体;ポリメタクリレート支持体又はその誘導体; ポリスチレン支持体又はその誘導体; 又はポリエーテルスルホン支持体又はその誘導体からなる支持体の群から選択される支持体を含む。そうでなければ、誘導体化されたシリカ、ガラス又はアズラクトンビーズが本発明による装置で使用され得る。そのような装置は、好ましくは有機支持体を利用する。ビーズの使用は、本発明の文脈において有利であり得る。
【0177】
本発明の1つの実施形態によれば、支持材料は多孔性でなければならず、ここで孔径は10~200nmの範囲にある。親和性アプリケーションの場合、細孔径は30~200nmの範囲ま他は60~200nmの範囲で最適であることがわかっている。しかしながら、カップリングの化学的性質、使用されるスペーサー及びAP型、及び脱リン酸化の標的によっては、他の細孔サイズも有利な場合がある。支持体がビーズの形態で使用される場合、そのようなビーズの直径は、特定の範囲で変化する可能性がある。直径が50~1000μmの範囲のビーズを使用すると有利な場合がある。直径が60~800μm、100~700μm、120~800μmの範囲のビーズを使用することがさらに有利な場合がある。
【0178】
本発明の1つの側面によれば、支持体は、リンカー及び/又はAPをそれに結合するために必要とされる特定の官能基を有する。例えば、多くの機能化樹脂が市販されており、当業者に知られている。スペーサー付き又はスペーサーなしでAPをカップリングするための反応基をすでに有する予備活性化樹脂支持体は市販されており、前述の使用前、つまりAPの結合前、支持体の化学的活性化の工程の多くを排除する。そのような支持体は、一般に、前に定義された樹脂であるが、膜及び/又は不織布支持体の場合、活性化の工程は、一般的に、カップリングの前に実行されなければならない。第一級アミン、スルフヒドリル、アルデヒド、ヒドロキシル及びカルボン酸を含む広範囲のカップリング化学が、APを共有結合するための前記市販の支持体で利用可能である。市販の活性化樹脂の例としては、UltraLinkヨードアセチル樹脂、Car-boLinkカップリング樹脂、Profinity(登録商標)エポキシド樹脂、Affi-Gel 10及び15、エポキシ活性化Se-pharose(登録商標)6B、塩化トレシル活性化アガロース、TosohToyopearl(登録商標)AFAmino又は エポキシ650-M、ChiralVision Immobead(登録商標) 350、Resindion ReliZyme(登録商標) EXE 135又はSEPABEADS(登録商標)、及びエポキシ基で官能化されたPurolite(登録商標)Lifetech(登録商標)メタクリレートポリマーを含む。
【0179】
本発明の1つの実施形態によれば、APのカップリングに使用される支持体はエポキシ官能基である。なぜならば、エポキシ基は、例えばリジン又は求核試薬(アミノ、チオール、フェノール)の-NH2などのさまざまなタンパク質基と非常に安定した共有結合を形成し、そしてpH及び温度の穏やかな条件下で固定化を実行できるためである。
【0180】
本発明の別の実施形態によれば、支持体はビーズの形態をとる。本発明のさらに別の実施形態によれば、支持体は、エポキシ官能化メタクリレートポリマーである。本発明のさらに別の実施形態によれば、支持体は、Tosoh Toyopearl(登録商標)Epoxy 650-M, ChiralVision Immobead(登録商標)350、Resindion ReliZyme(登録商標)EXE 135、Resindion SEPABEADS(登録商標)及びPurolite(登録商標) Lifetech(登録商標)からなる支持体の群から選択される。1つの側面によれば、APを結合することができる官能基としてエポキシ基を有するPurolite(登録商標)Lifetech(登録商標)ECR8209Fエポキシメタクリレートビーズが使用される。それらの平均細孔径は1200~1800Å、そして粒子サイズは150~300 μmである。別の側面によれば、APを結合することができる官能基としてエポキシ基を有するPurolite(登録商標) Lifetech(登録商標)ECR8215Mエポキシメタクリレートビーズが使用される。それらの平均細孔径は600~1200Å、そして粒子サイズは300~710μmである。別の側面によれば、APを結合することができる官能基としてエポキシ基を有するPurolite(登録商標) Lifetech(登録商標) ECR8215Fエポキシメタクリレートビーズが使用される。それらの平均細孔径は1200~1800Å、そして粒子サイズは150~300μmである。
【0181】
本発明の別の実施形態によれば、APを、例えばイオン的に又は複合体形成によって、支持体に非共有結合的に固定化することも可能である。しかしながら、共有結合が、マトリックスから患者の血液又は血漿へのAPの浸出のリスクを回避するために好ましい。
【0182】
本発明の別の実施形態によれば、支持体は膜である。本発明の一実施形態によれば、支持膜は中空繊維膜である。本発明の別の実施形態によれば、多数の中空繊維膜が中空繊維の束に形成され、ハウジングに埋め込まれ、従って、フィルター又は濾過装置を形成する。1つの実施形態によれば、支持体は、血液透析中空繊維膜透析器を含み、ここで、フィルターは、血液透析器、又は血液濾過器である。
【0183】
本発明による装置の支持体として使用するための中空繊維又は平板膜は、以下のものから構成され得る:セルロース、セルロースエステル(酢酸セルロース及び三酢酸セルロース)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリアミド(PA)、その他の窒素含有ポリマー(ポリベンズイミダゾール)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)、ポリビ- ニルピロリドン(PVP)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、これらのポリマーの組み合わせ、及び機能基の導入によって修飾されたそれらのポリマーのいずれか。本発明の1つの実施形態によれば、本発明による膜支持体は、以下から成るポリマーの群から選択されるポリマーを含む:ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、これらのポリマーの組み合わせ及び官能基の導入により修飾されたポリマーそれらのいずれか。本発明の別の実施形態によれば、本発明による膜支持体は、以下から成るポリマーの群から選択されるポリマーを含む:ポリアミド(PA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスルホン(PS)、ポリ- エーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、前記ポリマーの組み合わせ、及び官能基の導入によって修飾されたそれらのポリマーのいずれか。本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明による膜支持体は、以下から成るポリマーの群から選択されるポリマーを含む:ポリビ-ニルピロリドン(PVP)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、及びポリアリールエーテルスルホン(PAES)、前記ポリマーの組合せ、及び官能基の導入によって修飾されたこれらのポリマーのいずれか。
【0184】
膜表面へのAPのその後の結合のためのカップリング反応を実行するために、ポリマー官能化工程が必要であり、例えば、米国特許出願公開第2015/0111194A1号及び米国特許出願公開第2014/0166580A1号に記載されているような既知の方法を使用することができる。例えば、例えばポリエチレンのようなアルカン鎖で作られた合成材料は、それに分子をカップリングするための適切な官能基を含まない。従って、適切な機能基は、ポリマー合成後に化学的に導入する必要がある。ポリマーを修飾する可能性は、適切なガスプラズマを選択することにより、ポリマーに官能基を導入することを可能にするプラズマ機能化の既知の方法である。この方法は、例えば、アンモニアプラズマの使用を含み、ここでアミノ官能基は、処理されたポリマーの表面上に形成される。従って、例えばアンモニアプラズマによるポリエチレンの処理は、一定量のアミノ官能基を有するポリエチレンマトリックスをもたらす。それらのアミノ基は、その後、リンカーの適切な官能基、例えば、カルボキシル基と反応させることができる。あるいは、マトリックスポリマーをプラズマ活性化によって官能化して、カルボキシル基を得ることができる。中空繊維膜を連続的に機能化するための方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0296105 A1号にさらに記載されている。前記方法において、前駆体ガスによって導入される官能基は、アミノ、カルボキシル、アルデヒド、エステル、エポキシ、ヒドロキシル又はスルホン酸基であり得る。本発明による支持体として使用することができる膜は、例えば、当技術分野で知られている血漿分離膜及び血液透析膜、たとえば高フラックス膜、高カットオフ膜又は中程度のカットオフ膜を含むが、これらに限定されない。血漿分離の目標は、分離された血漿画分に血液の総血漿タンパク質を含めることですが、血球及び細胞破片などの血液のより大きな小体成分は膜によって保持される。さらに、そのようなプラズマ分離膜は、高い濾過性能を達成するために、膜の高い表面多孔性及び全多孔性を示さなければならない。また、親水性で自然に濡れる膜構造、長期間安定した濾過のための低いファウリング特性、及び低いタンパク質吸着によって特徴付けられる必要がある。そのようなプラズマ分離膜は、好ましくは、血液と接触する滑らかな表面を有し、従って、血液処理中の溶血を回避又は最小化する。膜は、処理期間全体にわたって一定の篩分け特性と濾過挙動性を示す必要がある。さらに、高い生体適合性、補体活性化が低いか、全くないこと、及び血栓形成性が低いことを示す必要がある。本発明による装置を提供するために使用することができる血漿分離に適した膜は、当技術分野で知られており、例えば、欧州特許第1875 956 A1号又は欧州特許第1875 957 A1号に記載されている。例えば、Revaclear(登録商標)透析器で使用されるような高フラックス膜など、本発明による装置の支持体として改変及び使用することができる他の膜、、欧州特許第2 113 298B1号に記載されている。例えば、Theranova(登録商標)透析器で使用される中程度のカットオフ膜は米国特許出願公開第2017/0165616 A1号に記載されており、例えばTheralite(登録商標)透析器で使用される高カットオフ膜は欧州特許第1 572330A1号に記載されている。
【0185】
医療用途、感染症及び敗血症:
いくつかの実施形態によれば、本発明は、感染症、好ましくは血液又は全身感染症の治療における薬剤として使用するための、本明細書に記載の血液治療装置に関する。いくつかの実施形態によれば、リン酸化されたLPS、又はATP又はADPに関連する任意の感染症を治療することができる。対応する治療法も想定されている。
【0186】
本明細書で使用される場合、本発明の範囲内の「感染」は、病原性又は潜在的に病原性の剤/病原体、生物及び/又は微生物による通常は無菌の組織又は体液の侵入によって引き起こされる病理学的工程を意味し、そして好ましく、細菌、ウイルス、真菌、および/または寄生虫による感染に関連する。従って、感染症は、細菌感染症、ウイルス感染症、及び/又は真菌感染症であり得る。感染症は、局所感染症又は全身感染症である可能性がありまる。本発明の目的のために、ウイルス感染は、微生物による感染と見なされ得る。
【0187】
さらに、感染症に罹患している対象は、同時に複数の感染源に罹患している可能性がある。例えば、感染症に罹患している対象は、細菌感染症及びウイルス感染症;ウイルス感染及び真菌感染;細菌及び真菌感染症;及び細菌感染症、真菌感染症及びウイルス感染症に苦しむ可能性があり、又は潜在的に超感染症を含む、本明細書に記載の感染症の1つ又は複数を含む混合感染症、例えば1つ又は複数のウイルス感染及び/又は1つ又は複数の真菌感染に加えて、1つ又は複数の細菌感染症に苦しむ可能性がある。
【0188】
本明細書で使用される場合、「感染症」は、細菌及び/又はウイルス及び/又は真菌感染症に関連するすべての疾患又は障害を含む。治療される疾患には、いくつかの実施形態によれば、リン酸化されたLPS、又はATP又はADPに関連する、又は本明細書に記載の固定化されたAPによる治療から利益を得るであろうすべての感染症が含まれる。
【0189】
本発明による治療を受けている対象はまた、感染症の追加治療を受けてもよい。本発明の医学的治療は、感染症が診断された場合、又は感染症の症状が決定された場合
、1つ又は複数の「抗生物質」又は「抗生剤」を投与することができる抗生物質治療であり得る。感染症に対する、又は新たな感染症の予防のためのさらなる抗生物質/治療又は治療戦略には、消毒剤、除染製品、リポソームのような抗毒性剤、衛生、創傷ケア、手術の使用が含まれる。前述の抗生剤又は治療戦略のいくつかを、体液療法、血小板輸血、又は血液製剤の輸血と組み合わせることも可能である。
【0190】
本発明の好ましい実施形態によれば、患者は敗血症に罹患していると診断されている。いくつかの実施形態によれば、患者は、重度の敗血症及び/又は敗血症性ショックに苦しんでいると診断された可能性がある。
【0191】
集中治療室のかなりの数の患者が、一般的に「敗血症」又は「敗血症性ショック」として知られる合併症で死亡している。敗血症は、感染に対する身体の圧倒的で生命を脅かす反応であり、組織の損傷、臓器不全、及び死につながる可能性がある。敗血症の一般的なパラメーターは、発熱(コア温度>38.3℃)、低体温症(コア温度<36℃)、心拍数> 90bpm又は特定の年齢の正常値を超える> 2SD、頻呼吸:> 30bpm及び精神状態の変化、並びに糖尿病がない場合の有意な浮腫又は陽性の体液バランス(24時間で>20mL kg-1)及び高血糖症(血漿グルコース>110 mgdL-1又は7.7mM L-1)である。敗血症の兆候に加えて、呼吸困難(肺の問題)、尿量の低下又は欠如(腎臓)、異常な肝機能検査(肝臓)、及び精神状態の変化(脳)などの臓器機能障害の兆候がある場合、敗血症は重度の敗血症に進行する。重症敗血症のほぼすべての患者は、集中治療室(ICU)での治療が必要である。
【0192】
敗血症性ショックは最も重篤なレベルであり、血圧が危険なレベルに低下したときに診断される。さらに、外傷、火傷、膵炎、及び虚血再灌流傷害は、SIRS、全身性炎症反応症候群、多臓器系機能不全症候群(「MODS」)、及び多臓器系障害(「MOSF」)の非感染原因の1つである。SIRSのメカニズムは、本明細書では毒性メディエーター(「TM」)と呼ばれる、宿主由来の炎症性メディエーターの過剰放出である。TMには、さまざまなサイトカイン(腫瘍壊死因子、TNF;インターロイキン;インターフェロン)、さまざまなプロスタグランジン、さまざまな凝固因子(血小板活性化因子、PAF)、さまざまなペプチド、活性酸素代謝物、及び臓器機能不全(心筋抑制因子、MDF)を引き起こすさまざまなよく理解されていないペプチドが含まれる。炎症反応が過剰である場合、重要な臓器組織への損傷又は破壊は、急性腎不全を含む多臓器不全症候群(「MODS」)を引き起こす可能性がある。
【0193】
敗血症は、「感染に対する宿主の反応の調節不全によって引き起こされる生命を脅かす臓器機能障害」として定義されることもある。敗血症性ショックは、循環血液量減少及び平均動脈圧を65mmHg以上に保つための昇圧治療の開始なしに、乳酸レベルが2mモルのlL-1を超えて上昇することとして定義される。臓器機能障害は、連続臓器不全(SOFA)スコアリングシステムにおける2つ以上の増加として定義される(Guletal、Turk JAnaesthesiolReanim。2017Jun; 45(3):129-138)。qSOFAスコアリングシステムによると、以下の3つの臨床基準のうち2つが陽性の場合、敗血症が示される:1.精神状態の変化(GCSスコア<15); 2.収縮期の血圧<100mmHg;3.呼吸数> 22 /分。
【0194】
本明細書で使用される「敗血症」という表現は、前に述べた感染時の敗血症のパラメータ、又は前に述べたqSOFAスクリーニング基準を満たす任意の条件にも適用され、ここで連続臓器不全評価(SOFA)スコアリングシステム及び/又はqSOFA臨床基準の2つ以上の増加が敗血症を示す。臨床的運用化の場合、臓器機能障害は、院内死亡率が10%を超えることに関連する、2ポイント以上の連続臓器不全評価(SOFA)スコアの増加によって表すことができる。敗血症性ショックは、特に深刻な循環器、細胞、及び代謝の異常が敗血症単独よりも高い死亡リスクと関連している敗血症のサブセットとして定義され得る。敗血症性ショックの患者は、血液量減少がない場合に平均動脈圧を65 mm Hg以上、血清乳酸値を2 mmol / L(> 18 mg / dL)以上に維持するという昇圧剤の要件によって臨床的に特定できる。
【0195】
本明細書で使用される場合、「連続臓器不全評価スコア」又は「SOFAスコア」は、集中治療室(ICU)での滞在中の患者の状態を追跡するために使用される1つのスコアである。SOFAスコアは、ヒトの臓器機能の程度又は障害率を決定するためのスコアリングシステムである。スコアは、呼吸器系、心血管系、肝臓系、凝固系、腎臓系、及び神経系にそれぞれ1つずつ、合計6つの異なるスコアに基づいている。平均及び最高の両方のSOFAスコアが結果の予測因子である。ICUでの最初の24~48時間のSOFAスコアの増加は、少なくとも50%から95%までの死亡率を予測する。スコアが9未満の場合、33%の予測死亡率が得られるが、14を超える場合は95%に近いかそれを超える可能性がある。「敗血症」という用語には、SEPSIS-2の定義に基づく重症敗血症又は敗血症性ショックも含まれる。「敗血症」という用語には、SEPSIS-3の定義に該当する被験者も含まれる。本明細書で使用される「敗血症」という用語は、敗血症の発症における全ての可能な段階に関係する。
【0196】
従って、本発明の1つの目的は、特に急性状態において、そして投薬が示されないか又は効果的でない場合、敗血症に苦しむ患者を治療するために使用することができる血液の体外精製及び治療のための装置を提供することである。本発明の別の目的は、臓器不全、特に腎不全、及び敗血症の両方に苦しむ患者を治療するために使用することができる、体外精製及び血液の治療のための装置を提供することである。
【0197】
急性腎不全(ARF)及び敗血症関連急性腎障害(SA-AKI):
急性腎不全(ARF)は、急性腎障害(AKI)とも呼ばれ、代謝性アシドーシス、高カリウム値、体液の不均衡を特徴とする腎濾過機能の急速な喪失である。この状態は通常、血清クレアチニン濃度又は血中尿素窒素(BUN)濃度の上昇によって特徴づけられる。本明細書で使用される場合、「急性腎障害(AKI)」又は「急性腎不全」という用語は、腎機能の突然の持続的な低下に関連している。
【0198】
診断基準は通常、以下の通りであるが、これらに限定されない:48時間以内に> 0.3mg/ dl(26.5μモル/ L)の血清クレアチニンの増加;又は7日以内に発生したことがわかっているか推定される、血清クレアチニンがベースラインの1.5倍への増加;又は6-12hの間、尿量<0.5ml /(kg・h)。重症度に応じて、状態はステージ1、2、及び3に分けられる。腎臓病:グローバル転帰の改善(KDIGO)グループは、これらのステージを以下のように定義する:1.血清クレアチニンはベースラインの1.5~1.9倍に増加するか、6時間のブロック中に> 26.4 μモル / L(0.3 mg / dl)又は尿量<0.5 ml/kg/hに増加し;又は2.血清クレアチニンは2つの6時間のブロックの間にベースライン又は尿量<0.5ml/kg/hの2.0~2.9倍に増加し;及び3.血清クレアチニンがベースラインの3倍を超えて増加したか、353 μモル / L(4 mg/dl)を超えて増加したか、24時間以上の腎代替療法又は尿量<0.3ml/kg/hの開始又は無尿が12時間以上続いた。本明細書で使用される場合、「感染関連腎機能障害」という用語は、感染症に罹患している患者の腎機能の喪失に関連している。
【0199】
腎機能障害は、1970年代以降、複数の感染性病原体に関連して発生することが知られている(Zech et al, Adv Nephrol Necker Hosp. 1971;1:231-58.)。限定されるものではないが、腎病変は、ブドウ球菌敗血症、レプトスパイラル感染、及びリケッチア感染に感染した後の急性腎疾患で発生することが知られている。おそらく感染性ショックを介したグラム陰性敗血症は、尿細管性腎病変をより容易に引き起こす。溶血性敗血症は尿細管壊死を引き起こすことが知られている。肺又は尿路感染症も、重症の場合、腎機能障害を引き起こす可能性がある。
【0200】
本明細書で使用される場合、「敗血症関連急性腎障害(SA-AKI)」という用語は、敗血症を有する患者のAKIに関連する。敗血症はARFの最も一般的なトリガーである。ARFは、中等度の敗血症の患者の約19%、重度の敗血症の23%、及び血液培養が陽性の場合の敗血症性ショックの51%で発生する。敗血症は、その病因に関与する単一のメカニズムの代わりに、適応性及び不適応性の細胞メカニズムのオーケストラ全体に関連付けられており、それぞれを強化し、最終的に臨床SA-AKIを引き起こす。微小循環は、これらのメカニズムが一緒になって統合された有害な作用を発揮する重要な生理学的区画である。これらのメカニズムには、内皮機能障害、炎症、凝固障害、及び損傷に対する適応細胞応答が含まれる。これは最終的に腎不全を引き起こし、敗血症中の腎臓の初期機能障害における重要なイベントは、尿細管周囲の微小血管機能障害が生成する増幅された炎症シグナルに応答した、尿細管上皮細胞の生体エネルギーストレスであるように思われる。
【0201】
従って、本発明は、腎不全及び、例えば、LPSによって誘発される病理学的な負の影響の両方に対処する。リポ多糖(LPS)は、特に発熱、致死性、マクロファージ、及びBリンパ球の活性化などの敗血症時に、複数の急性の病態生理学的影響を誘発する。従って、本発明は、LPSの負の効果を改善し、同時にRRTを提供することに向けたアプローチを提供する。
【実施例】
【0202】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。これらは、本明細書に記載の本発明の範囲を制限することなく、本発明のいくつかの好ましい非限定的な実施形態又は態様の実行可能性に対するサポートを提示することを意図している。
【0203】
実施例1:血液濾過膜へのAPの固定化
膜の調製:
アルカリホスファターゼ(AP)は、本発明の原理アプローチの実証において、様々な膜に固定化された。この表は、使用された膜のさまざまな成分を、膜がキャストされる溶液のパーセンテージで示しています(括弧内に、溶液の総重量50 gの重量が示されている)。
【0204】
【0205】
成分を連続的に攪拌しながら60℃で一晩溶解した。すべての成分を完全に溶解した後、溶液を油浴から取り出し、1時間放冷した。フラットシート膜を、100 μmナイフを使用して電子鋳造機で鋳造した。ナイフをきれいなガラス板の上に置いた。10mLのポリマー溶液を適用した。次に、ポリマーフィルムがガラスプレート全体を覆うまで、モーターを25mm / sで作動させた。モーターを元の位置に戻し、ナイフを取り外し、ガラス板を500mLの脱塩水浴に入れた。5分後、水を真水に交換し、このプロセスを2時間後に繰り返し、膜をさらに4時間水浴に置いた後、60℃で一晩真空下に置き、すべてのNMPを完全に除去した。
【0206】
膜へのアルカリホスファターゼカップリング:
膜を小片(約1x1cm)に切断し、正確な重量を決定した(通常は約3~7mg)。4000U / mgの活性及び24.5mg / mLのタンパク質含有量を持つ合計5mgのアルカリホスファターゼ(Santa Cruz Biotechnology)を、それぞれ100U / μLを含む5μLのアリコートに分けた。各固定化実験では、5μLのアリコートを1 mのMCaCl2を含む1mLの0.5MのTRIS pH8.5に溶解し、500U / mLの溶液を得た。膜は、900μLのMillipore H2O、100μLの500U / mL のAP、及び2.5mg / mLのEDCを含むエッペンドルフに配置した。次に、膜をタンブラーシェーカー上でRTで3~4時間保持し、4℃で一晩置いた。18時間後、膜を50mLの0.5MのNaCl溶液に入れ、未結合のAPを除去するためにタンブラーシェーカー上に置いた。4時間後、洗浄液を1xPBSに交換し、タンブラーシェーカーにさらに2時間放置した。あるいは、膜を、2.5mg / mLのEDCを含む1mLのMES緩衝液を含むエッペンドルフに30分間入れ、取り出して洗浄した後、1mLの50U/ mのLAPに一晩入た。
【0207】
固定化されたアルカリホスファターゼの活性測定:
最後の洗浄ステップの後、膜を1 mLのp-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)液体基質システム(Sigma Aldrich)に入れた。活性を測定するために、75μLのpNPP溶液を除去し、t=10分、20分、30分、及び60分に吸光度を測定した。これらの各時点で、前の時点の吸光度を再度測定し、経時的な吸光度の変化を使用して、膜からのアルカリホスファターゼの放出を評価した(放出は継続的な発色をもたらすため、後の時点での発色とその後の読み取りは吸光度の増加を示す)。次に、吸光度を標準濃度の脱リン酸化pNPP溶液の吸光度と比較し、膜上のアルカリホスファターゼの活性を1分当たりに変換されたpNPPのμモルで決定した。
【0208】
結果:
2つの異なる膜からの結果は、0,06~0,10 μモル分
-1の間で測定された活性を示す。結果を明確にし、さまざまなサンプル膜重量を補うために、活性を透析器全体(20グラムの膜を含む)の活性に外挿し、約560μモル分
-1の活性を示した。アルカリホスファターゼの放出はすべての場合に最小限であり、1つの例外を除いて、平均活性の標準偏差を超えなかった。これらの実験の結果を
図2Aに示す。
【0209】
実施例2a:エポキシ官能化吸着樹脂へのAPの固定化:
まず、樹脂を平衡化する。樹脂を固定化緩衝液で洗浄し、濾過する。樹脂/緩衝液比は1/1(w/v)が好ましい。固定化緩衝液は、APと互換性があるように選択される。このプロセスを2~4回繰り返す。AP溶液は、タンパク質を固定化緩衝液に溶解して調製する。例えば、湿った樹脂1グラム当たり100~200mgのAPを負荷できる。タンパク質濃度は、標準的なタンパク質含有量アッセイを使用して決定できる。APを十分な量の緩衝液に溶解して、樹脂/緩衝液の比率を1:4(w / v)にする。この比率は、使用するタンパク質に応じて最適化できる(範囲は1:1~1:4の範囲で変化します)。固定化は、APタンパク質を含む固定化緩衝液を固定化容器に移すことから始まる。次に、エポキシ官能化樹脂、例えば本明細書に記載のPurolite(登録商標)Life-techTM樹脂を添加する。スラリーを70~80rpmで18時間穏やかに混合し、その後、さらに20時間混合せずに放置する。タンパク質の固定化中の磁気攪拌は、ビーズに損傷を与える可能性があるため、避ける必要がある。固定化は、タンパク質の安定性に応じて、20℃~30℃の温度で実行できる。エポキシ環の劣化(加水分解)を引き起こし、そして微生物の増殖を促進する可能性があるため、固定化は高温で実行すべきでない。最後に、液相を濾別して回収する。液体中のタンパク質含有量を決定し、固定化収率を計算する。次に、樹脂を洗浄緩衝液で洗浄する。このプロセスを、穏やかに攪拌しながら、又はカラム洗浄で2~4回繰り返す。非共有結合タンパク質を完全に脱着させるために、0.5MのNaCl含有緩衝液を使用した追加の洗浄工程を実行する。余分な水分を濾過により除去する。次に、固定化されたapタンパク質は、水分含有量と特異的結合活性の観点から特徴づけることができる。
【0210】
実施例2b:アミノ官能化吸着樹脂へのAPの固定化:
まず、樹脂を平衡化する。樹脂を固定化緩衝液で洗浄し、濾過する。樹脂/緩衝液比は1/1(w/v)が好ましい。固定化緩衝液は、APタンパク質と互換性があるように選択される。第2工程では、25%(w/v)グルタルアルデヒドの溶液から2%グルタルアルデヒド緩衝液を調製する。2%グルタルアルデヒド(v/v)溶液を、固定化緩衝液を使用して調製する。第3工程では、第2工程で調製した2%グルタルアルデヒド緩衝液を樹脂に添加することにより、アミノ樹脂を活性化する。2%グルタルアルデヒド緩衝液の最適量は、樹脂/緩衝液比が1:4(w/v)の範囲内である必要がある。スラリーを20℃~25℃で60分間混合する。次に、ビーズを濾過し、樹脂/緩衝液比1:4(w/v)を使用して固定化緩衝液で洗浄する。事前に活性化された樹脂を48時間以上保管することは避けるべきである。次に、ビーズは固定化工程のために容易である。第4工程では、APタンパク質溶液が調製される。そのために、タンパク質は固定化緩衝液に溶解される。例えば、湿った樹脂1グラム当たり1mg~100mgのAPタンパク質を負荷できる。タンパク質濃度は、標準的なタンパク質含有量アッセイを使用して決定できる。
【0211】
タンパク質を化緩衝液に溶解して、樹脂/化緩衝液の比率を1:4(w/v)にする。この比率の最適化は、今後の試行で追求できる(範囲は1:1~1:4の範囲で変化する)。第5工程では、タンパク質が固定化される。固定化化緩衝液を固定化容器に移し、工程3で調製した事前に活性化されたアミノレジン(Purolite(登録商標)、Lifetech(登録商標)など)を添加する。スラリーヲ70~80rpmで18時間穏やかに混合する。固定中は、ビーズに損傷を与える可能性があるため、磁気攪拌は避ける。固定化は、APタンパク質の安定性に応じて20℃~30℃で実行できる。固定化は、工程3で形成された樹脂上のアルデヒド基の副反応を引き起こす可能性があるため、高温で実行しない。最後に、液相を濾過し、回収する。液体中のタンパク質含有量が決定され、固定化収率が計算される。次に、樹脂を洗浄緩衝液で洗浄する。この工程は、穏やかに攪拌しながら、又はカラム洗浄で2~4回繰り返される。非共有結合タンパク質を完全に脱着させるために、0.5MのNaCl含有緩衝液を使用した追加の洗浄工程を実行できる。余分な水分は濾過により除去される。次に、固定化されたAPタンパク質は、水分含有量と特定の酵素活性の観点から特徴づけることができる。
【0212】
固定化されたアルカリホスファターゼの活性測定:
続いて、APを固定化するために上記のように処理されたエポキシ樹脂とアミノ官能化樹脂の両方を、1 mLのp-ニトロフェニルホスフェート(pNPP)液体基質システム(Sigma Aldrich)に配置した。
【0213】
上記のように、活性を測定するために、75μLのpNPP溶液を除去し、経時的に吸光度を測定した。次に、未修飾の樹脂をAPで処理しなかった場合に得られたバックグラウンド信号について、吸光度を補正した。
【0214】
結果:
エポキシ樹脂とアミノ官能化樹脂の両方の結果は、アッセイで使用される市販のpNPP溶液に基づいて、APが効果的に固定化されて活性であることを示している。これらの実験の結果を
図2Bに示す。
【0215】
実施例3:さまざまなpH条件下でのAPの膜への固定化:
ポリアクリロニトリルAN69膜を使用して、APが膜に結合するための最適化されたpH条件を決定し、その後のAP活性試験で検証した。pH最適化の試験は、「ミニモジュール」として準備された「M-フィルター」膜(MF150)、つまり膜の特性を試験するために一般的に使用される小さなフィルターを使用して実行された。説明されている試験は、それぞれが繊維の束を含むAN69ミニモジュールで実行された。40本の中空繊維が存在する。
【0216】
N69は、透析用途で使用される確立されたポリマーであり、アクリロニトリルとメチルアリルスルホン酸ナトリウムとのコポリマーである。スルホン酸基は、負電荷を有する親水性膜をもたらし、保水によってヒドロゲル構造を形成する。膜のこの組成は、中型のタンパク質が吸着されることを可能にする。AN69中空繊維の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を、このような束が透析でどのように使用されるかを示す概略図と共に
図7に示す。AN69ミニモジュールの内面は、繊維当たり約1cm
2である。これは、ミニモジュール当たり40cm
2の内面に相当する。
【0217】
ミニモジュールは、一般的なホース(Promedt)を使用してポンプ場に取り付けられ、ミニモジュールを介して制御された速度で液体をポンプで送ることができました(Ismatecからポンプで送る)。
【0218】
AN69ミニモジュールに固定化されたAPを準備するために、グルタルアルデヒド(GA)とAPを取り付ける前に、ミニモジュールをポリエーテルイミド(PEI)でコーティングした。AN69膜には負の電荷が存在するため、正に帯電したポリマーはイオン相互作用によって付着する可能性がある。この場合、正に荷電したアミノ基を有するPEIが使用された。PEIの付着は通常、酸性媒体中で行われ、その結果、アミノ基がプロトン化され、電荷密度が増加する。この工程でクエン酸を使用することにより、アルカリ性媒体よりも大量のPEIを膜に結合させることができる。PEI処理の最適化については、以下で詳しく説明する。
【0219】
PEI処理後、APを固定化する前にAN69膜をグルタルアルデヒド(GA)で処理した。グルタルアルデヒドは二機能性スペーサーとして機能し、酵素に結合するための事前に活性化されたポリマー表面を生成する。表面の事前活性化に続いて、同じ反応を介して別の成分に結合できるようにするために、グルタルアルデヒドの遊離アルデヒド基が利用可能である。現在の場合、APはその後、遊離アミノ基を介して2番目の修飾工程で共有結合する。
【0220】
従って、AN69ミニモジュールは次の通りであった:
-グリセリンを除去するためにフラッシュされた(逆浸透水、1.5 mL / 分でミニモジュール当たり5mL、続いて3 mL / 分で5~20 mL)。体積は 空気を取り除くために視覚的に調整された、
-PEIで処理された(200mg / kgのクエン酸溶液中、200mg/kgのPEI、3 mL /分でミニモジュール当たり20mLを使用)、
-フラッシュされた(PBS、ミニモジュール当たり20 mL、3 mL /分) 、-グルタルアルデヒドで処理された(2.5%GA溶液、1.5 mL /分でミニモジュール当たり40mL)、
-フラッシュされた(PBS、ミニモジュール当たり50 mL、1.5 mL / 分)、
-APで処理された(PBSのミニモジュール当たり1000 U AP、20mLを1.5mL / 分で16時間、再循環された)、そして
-最後にすすがれた(PBSで、ミニモジュール当たり50mL、1.5mL/ 分)。
【0221】
読み出しとして、固定化されたAP活性を評価した。PBS緩衝液中の塩化マグネシウム及び塩化亜鉛のマトリックスを含むpNPP基質(パラ-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩六水和物)を含む試験溶液を使用した。膜上のAP活性を定量化するために、ミニモジュールから1本の繊維を切り出した。モジュールを開き、繊維をPBSで洗浄し、各繊維をプレートウェルに配置した。繊維を適切なサイズに切断し、pNPP試験溶液を適用した。読み取りは60分と120分に行われた。いつものように、サンプルは遊離酵素の標準溶液に対して測定されたため、結果は理想的な標準(アルカリ)条件下での遊離APの活性として表された。
【0222】
AP固定化に最適なpH条件を評価するために、(1)グルタルアルデヒドによる膜のコーティング(以下「GA-pH」と表記)及び(2)APのその後の固定化(以下「AP-pH」」と表記)の2つの工程を変更しました)。これらの処理のそれぞれについて、関連する溶液の複数のpH値が試験された。
【0223】
以下の表に、いくつかのプロトコル(I-IV)の結果と、60分及び120分後のU /cm2でのAP活性の結果を示る。説明を簡単にするために、対応する平均値が計算され、表示される。
【0224】
【0225】
IIでの実験では、0.38~0.45U/cm2の範囲で再現性のある高いAP活性が得られた。これは、治療に関連する活性として経験的に推定された下限(0.05U /cm2)の約10倍である。実験IIよりも再現性は低いものの、代替のpH条件も効果的であるように見える。
【0226】
実施例4:さまざまなpH条件下でのビーズへのAPの固定化:
上記の実施例3に類似する実験は、APの固定化のためのマトリックスとしてアミノ官能化ビーズ(Purolite Lifetech ECR 8408F)を使用して実施された。ビーズは、さまざまなpH値でGAを使用して前処理され、その後、同じくさまざまなpH値でAPで処理された。
【0227】
実験は、一定の攪拌下で、900 μLのpNPP溶液中のGA/AP処理ビーズを含む96ウェルプレートで実施した。75 μLの反応液を除去し、別の96ウェルプレートで10、30、60、及び120分に、上記の測光活性測定を使用して分析した。
【0228】
下記の表は、ビーズを固体マトリックスとして使用して10分後に測定されたAP活性の概要を示している。
【0229】
【0230】
上記の結果から観察されるように、AP活性はビーズに結合した後も維持され、最も効果的な固定化条件は、上記のAN69ミニモジュール実験と同様にGA pH 9.9 + AP pH9.9又はGApH 9.9 + AP pH7.4である。これらのビーズ(ホモ二官能性スペーサーグルタジアルデヒド)を使用する場合、ビーズをAPと直接結合しても酵素結合活性が観察されないため、GA工程は重要である。
【0231】
実施例5:AP活性の補因子の調整:
上記の実施例で使用されたAPは市販されており、1mMのMgCl2及び0.1mMのZnCl2の補因子濃度で出荷された。上記のAPの活性試験では、補因子濃度は0.5mMのMgCl2と0.1mMのZnCl2である。PBSの模擬使用試験では、補因子Mg2+及びZn2+もそれぞれ0.5mモル/L及び0.1mモル/Lの濃度で添加されまる(模擬使用安定性試験については、以下を参照のこと)。
【0232】
5mMから0.005mMまでの希釈系のMg2+濃度を滴定するために、実施例3からのAN69膜ミニモジュールを使用してさらなる実験を行った。AP反応のいくらかの減速が観察されたが、異なるマグネシウム濃度の速度論的プロファイル間の明確な違いは観察できず、固定化されたAPがヒト血液サンプルに見られる補因子濃度で適切な活性を示す可能性が高いことを示している。
【0233】
健康な人の血漿中濃度は血清と同様で、0.7から1.0mMの範囲である。従って、装置が臨床で使用されている場合、血液はAP活性をサポートするのに十分な高レベルのマグネシウムを含んでいる。同じことが亜鉛にも当てはまる。血清亜鉛濃度は12.4±1.4μモル/ L(女性では9~22 μモル/ L、男性では12~26 μモル / L)である。
【0234】
この例はまた、固定化されたAPを含む体外療法のための装置が、好ましくは、緩衝液又は他の溶液で満たされるか、又はその中に保存され得、ここで固定化されたAPを含むマトリックスが、0.1~2、好ましくは0.1~1 mモル / Lの濃度のMg2+、及び5~150、好ましくは10~100 μモル / Lの濃度のZn2+の存在下で、前記緩衝液又は溶液に浸漬されることを実証する。
【0235】
実施例6:膜のPEI密度の最適化:
最適なPEIコーティング及び密度は、APA-CRRTについての「TNBS」--テストを使用して試験された。TNBSテストは熟練した人に知られており(2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸に基づく)、そして例えば、膜表面上のアミノ機能の定量分析に使用され得る。TNBSは、反応性アミン分子と反応し、発色性の高い(オレンジ色の)生成物を生成する。この生成物の335~345nmでの吸光度は、プレートリーダー又は分光光度計で測定され得る。アミノ機能は、本実施例のPEIに由来する。
【0236】
試験には50g / LTNBSの溶液を使用した。溶液の吸光度は、逆浸透水に対してブランクにされた光度計で340nmで測定された。15mLの0.1g /Lの TNBS溶液に、1つのミニモジュールからの40本の繊維すべてが取り出され、そして約1cmの長さの断片で溶液に追加される。暗所で室温で30分間振盪した後、それぞれの溶液の上澄みを取り除き、吸光度を測定した。吸光度の減少は、反応性アミンの数と直接相関する。膜上で1~3 μモル/gの中空繊維膜の最適なPEI密度が達成された。
【0237】
実施例3に記載のプロセスでコーティングされた膜は、非常に効率的にAP官能化され得ることが見出された。クエン酸に基づくPEIコーティングプロセス(実施例3を参照;好ましくは、200mg / kgでのクエン酸溶液中の200mg / kgのPEI)が効果的である。同じAN69膜であるが、商業生産ではPEIでプレコーティングされている、プレコーティングされた(PEIコーティング)ST-Filterに基づくPEI / GA / APによる機能化を使用して、さらなる実験も実施した。前処理されたPEI膜へのAPの固定化も成功した。しかしながら、APを有するそれらの中空繊維は、上記のものよりも著しく低い酵素活性を示した。
【0238】
実施例7:PBS及びヒト血漿におけるAP活性のシミュレートされた使用及び安定性:
固定化されたAPが経時的に安定しているかどうかを評価するために、以下の実験を行った。ミニモジュールは、実施例3の実験IIの下で上記のように調製され、次いで実施例3のようにポンプイングステーションに取り付けられた。
【0239】
すべての実験において、ミニモジュールは透析液側で閉じられ、そして適切な培地で内腔側で再循環灌流された。流量及び容量は、72時間の透析をシミュレートするために、それに応じて設定され、これは、急性期治療用の標準的な透析フィルターの最大許容使用時間に相当する。
【0240】
標準的な透析では、約200mL /分~500mL/ 分の流量が使用され、血液量は約5Lである。ここで使用する透析器の内面は、例えば1.5m2である。面積が40cm2のミニモジュールの場合、これにより、流量は0.5mL/ 分~1.3mL /分、プール容量は13mLになる。計算値が実験室試験には低すぎるため、流量を1.5mL /分に設定し、プール容量を20mLに設定した。
【0241】
0. 5mモル/ LのMgCl2及び0.1mモル/ LのZnCl2を含むPBS緩衝液を灌流の培地として使用した。次に、モジュールを37℃の加温フードの下で指定された期間灌流した。特定の時間に、サンプルがプールから採取され、浸出又はウォッシュアウトプロセスの可能性を調査するために活動が測定された。次に、対応するモジュールからの繊維を、さらに処理することなく、上記の活性試験にかけた。
【0242】
活性測定では、72時間灌流前の活性は0.4U/cm2でしたが、試験後の活性は0.7~2.0U/cm2であった。溶出液プールでは活性は観察されず、固定化されたAPの浸出又は洗い流しが発生しないか、又は無視できることを示している。
【0243】
AP補因子の存在下でAP機能化膜を備えたミニモジュールをPBSで灌流すると、固定化された活性は72時間にわたって確実に保持される(又は再現性よく増加する)。灌流前のAPは、補因子がすでにいくらか枯渇していると想定され、補因子は、その後、酵素が緩衝液を介して提供されるため、時間の経過と共に活性を維持するだけでなく増加させる。いずれにせよ、中空繊維膜のAPは非常に安定している。
【0244】
ヒト血漿では、その影響はさらに顕著である。PBS緩衝液の代わりにヒト血漿を使用して実験を繰り返した。ヒト血漿は、本質的に、APの必要な補因子をすでに含んでいる。活性測定では、血漿中の72時間灌流前の活性が0.4U/cm2であったのに対し、試験後の活性は1.6~2.4U/cm2であった。溶出液プールでは活性は観察されなかった。これは、固定化されたAPの浸出又は洗い流しが発生しないか、又は無視できることを示している。
【0245】
実施例8:滅菌後のAP活性の安定性:
臨床製品が潜在的な微生物(病原体)を不活化するには、滅菌技術が必要である。必要なAP活性により、熱処理は可能であるが、蒸気滅菌により膜が損傷したり、酵素が変性したりする可能性があるため、好ましくない。
【0246】
ガンマ線を使用した滅菌は、有望なアプローチとして評価されている。ガンマ線滅菌中、ガンマ線は放射性放射線源によって生成され、放射性放射線源が製品に到達する。ガンマ線は侵入深さが深いため、最終包装の製品の滅菌に使用できる。
【0247】
ガンマ線滅菌は、約30kGyの線量を使用して、上記のようにミニモジュールで実行された。この滅菌方法では、変更プロセスによってまだ湿っているミニモジュール(約0.5gの水分/ミニモジュール)をストッパーで閉じることができ、グリセリンを充填する必要はない。コーティング後(実施例3のように)、血液及び透析液側のミニモジュールを逆浸透水で満たし、そしてストッパーで閉じ、そしてガンマ線滅菌に送った。
【0248】
30.6kGyの線量で滅菌した後、ミニモジュールに含まれる水を集めて保管した。2つのミニモジュール91及び92を、MgCl
2及びZnCl
2の塩溶液で事前にすすいだ。この目的のために、ミニモジュールをホースセットに接続し、そして3mL/分の流量で充填した。次に、ホースを外し、ミニモジュールを30分間放置してから、ポンプで空にして活性試験を行いました。結果を
図8に示す。
【0249】
上記のように、2つのミニモジュール89及び90を直接活性試験にかけた。フラッシュされた2つのミニモジュール91及び92は、約0.5U/cm 2の活性を示した。フラッシュされていないミニモジュール89は、0.02U / cm2という非常に低い活性を示した。ミニモジュール90は約0.3U / cm2のより高い活性を示した。同じ手順で変更され、滅菌されていないミニモジュールは、約0.4U / cm2の活性を示した。従って、水で満たされたミニモジュールの滅菌は、AP活性を評価した場合、4つのミニモジュールのうち3つにほとんど影響を与えない。
【0250】
あるいは、エチレンオキシド(EtO)ガスによる滅菌も行った。ミニモジュールは、ゲル膜が乾燥するのを防ぐために、最初にグリセリンで満たされ、その後、標準的な技術を使用して処理された。エチレンオキシド(EtO)は、低温滅菌に使用される一般的なガスである。微生物の細胞タンパク質や核酸を攻撃するのは無色の有毒ガスである。これは、ルーメンが長く、滅菌が必要であるが高温に耐えられない材料を備えた医療器具を滅菌するために最も一般的に使用されている。
【0251】
ミニモジュールでEtO滅菌を実施し、その後、上記のようにAPの活性を測定した。EtO滅菌により、AP活性がわずかに低下した。5つのミニモジュール(EtO滅菌なしで2つ、EtO滅菌ありで3つ)を試験した後、AP活性は1つのミニモジュールでのみ失われた(おそらく未知の技術的エラーが原因である)。AP活性を保持した2つのミニモジュールでは、初期データにより、活性試験で120分後、滅菌されていない対照と比較して、EtO滅菌後にAP活性の40%が維持されたことが明らかになった。これらの試験結果は暫定的なものであり、繰り返されている。
【0252】
要約すると、膜に固定化されたAP活性を維持するために、ガンマ線滅菌とEtO滅菌の両方が実行可能であるように見える。
【配列表】