(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】色補正構成要素を有する有機発光ダイオードディスプレイ
(51)【国際特許分類】
H10K 50/85 20230101AFI20240725BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20240725BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240725BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240725BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240725BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240725BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
H10K50/85
G02B5/02 B
G02B5/20
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H10K50/10
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2021561596
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 IB2020052774
(87)【国際公開番号】W WO2020212777
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-15
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】メンケ,ステフェン エム.
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,ニコラス シー.
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ,ジャシャン ディー.
【審査官】岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-073219(JP,A)
【文献】特表2012-507831(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035299(WO,A1)
【文献】特開2005-072002(JP,A)
【文献】特開2007-311046(JP,A)
【文献】特表2019-519889(JP,A)
【文献】特開2009-217292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/85
G02B 5/02
G02B 5/20
G09F 9/00
G09F 9/30
H10K 50/10
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を含み、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、OLEDディスプレイパネルと、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを備え、前記ハイブリッド色補正構成要素は、
第1の層と第2の層との間に形成される色補正ナノ構造化境界面と、
前記第1の層および前記第2の層のいずれとも異なる角度変換層であって、前記
色補正ナノ構造化境界面と前記画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設され
、前記色補正ナノ構造化境界面に入射する光の角度分布を変えることによって色補正ナノ構造化境界面による色補正を改善するように構成された角度変換層とを含む、
OLEDディスプレイ。
【請求項2】
前記角度変換層は、
相互連結された細孔及びチャネルを含むポリマー層を含むポリマーフィルム、ポリマーマトリックス内に分散された粒子を含むポリマー層を含むポリマーフィルム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された拡散体
を含む、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項3】
前記角度変換層は、
第3の層と第4の層との間に形成された角度変換ナノ構造化境界面を含
み、
前記第3の層および前記第4の層のそれぞれは、前記第1の層および前記第2の層のいずれとも異なる、請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項4】
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を含み、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを備え、前記ハイブリッド色補正構成要素は、
ナノ構造化境界面と、
角度変換層であって、前記ナノ構造化境界面と前記画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設された角度変換層とを含み、
その他の点では前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同一である、比較OLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
C
45と、観視角が0から45度の間で変化する際の許容可能な最大の白色点色シフトであるWPCS
LA
45とを有する比較画素を含み、WPCS
C
45<WPCS
LA
45であり、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されているとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
45を有する画素を含み、WPCS
45<WPCS
C
45-0.005である、
請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項5】
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されていないとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
0
45を有し、WPCS
0
45>WPCS
LA
45である、請求項
4に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項6】
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を含み、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを備え、前記ハイブリッド色補正構成要素は、
ナノ構造化境界面と、
角度変換層であって、前記ナノ構造化境界面と前記画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設された角度変換層とを含み、
その他の点では前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同一である、比較OLEDディスプレイパネルは、比較サブ画素を含む比較画素を含み、前記比較サブ画素の各々は、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS
C
45と、観視角が0から45度の間で変化する際の許容可能な最大のサブ画素色シフトであるSPCS
LA
45とを有し、SPCS
C
45<SPCS
LA
45であり、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されているとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS
45を有するサブ画素を含み、SPCS
45<SPCS
C
45-0.005である、
請求項1に記載のOLEDディスプレイ。
【請求項7】
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されていないとき、前記サブ画素の各々は、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS
0
45を有し、SPCS
0
45>SPCS
LA
45である、請求項
6に記載のOLEDディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、例えば、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(AMOLED)ディスプレイは、観視方向により色が変化する光出力を発生させることがある。
【発明の概要】
【0002】
本開示のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供され、OLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素の各々は複数のサブ画素を含み、サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを含む。ハイブリッド色補正構成要素は、ナノ構造化境界面と、角度変換層とを含むことができ、角度変換層は、ナノ構造化境界面と画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設されている。
【0003】
本開示のいくつかの態様では、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイが提供され、OLEDディスプレイパネルは、複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素の各々は複数のサブ画素を含み、サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを含む。ハイブリッド色補正構成要素は、ナノ構造化境界面と、角度変換層とを含むことができ、角度変換層は、ナノ構造化境界面と画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設され得る。その他の点では前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同一である、比較OLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCSC
45と、観視角が0から45度の間で変化する際の許容可能な最大の白色点色シフトであるWPCSLA
45とを有する比較画素を含むことができ、WPCSC
45<WPCSLA
45である。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、ハイブリッド色補正構成要素が画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されているとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS45を有する画素を含むことができ、WPCS45<WPCSC
45-0.005である。
【0004】
いくつかの態様では、本開示は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイを提供し、OLEDディスプレイは、複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素の各々は複数のサブ画素を含み、サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを含む。ハイブリッド色補正構成要素は、ナノ構造化境界面と、角度変換層とを含むことができ、角度変換層は、ナノ構造化境界面と画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設され得る。その他の点では前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同一である、比較OLEDディスプレイパネルは、比較サブ画素を含む比較画素を含むことができ、比較サブ画素の各々は、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCSC
45と、観視角が0から45度の間で変化する際の許容可能な最大のサブ画素色シフトであるSPCSLA
45とを有し、SPCSC
45<SPCSLA
45である。画素化されたOLEDディスプレイパネルは、ハイブリッド色補正構成要素が画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されているとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS45を有するサブ画素を含むことができ、SPCS45<SPCSC
45-0.005である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の例示的な実装形態によるハイブリッド色補正構成要素の図である。
【
図2】本開示の例示的な実装形態による、白色点軸方向効率対白色点色シフト性能空間の概略プロットである。
【
図3】本開示の例示的な実装形態による、青色サブ画素軸方向効率対青色サブ画素色シフト性能空間の概略プロットである。
【
図4】本開示の例示的な実装形態によるOLED発光積層体の概略側断面図である。
【
図5】本開示の例示的な実装形態によるOLEDディスプレイパネルの概略上面図である。
【
図6A】本開示の例示的な実装形態による赤色OLED発光積層体の概略側断面図である。
【
図6B】本開示の例示的な実装形態による緑色OLED発光積層体の概略側断面図である。
【
図6C】本開示の例示的な実装形態による青色OLED発光積層体の概略側断面図である。
【
図7】本開示の例示的な実装形態によるOLEDディスプレイの断面図である。
【
図8】本開示の例示的な実装形態によるナノ構造化境界面の図である。
【
図9】本開示の例示的な実装形態によるポリマーフィルムの図である。
【
図10】本開示の例示的な実装形態によるポリマーフィルムの図である。
【
図11】本開示の例示的な実装形態によるポリマーフィルムの図である。
【
図12】本開示の例示的な実装形態によるポリマーフィルムの図である。
【
図13】本開示の例示的な実装形態による例示的な青色OLEDサブ画素の断面図である。
【
図14】本開示の例示的な実装形態による例示的な緑色OLEDサブ画素の断面図である。
【
図15】本開示の例示的な実装形態による例示的な赤色OLEDサブ画素の断面図である。
【
図16A】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素積層体の構成を示す。
【
図16B】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素積層体の構成を示す。
【
図16C】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素積層体の構成を示す。
【
図16D】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素積層体の構成を示す。
【
図16E】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素積層体の構成を示す。
【
図17A】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図13に示されている青色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図17B】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図13に示されている青色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図17C】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図13に示されている青色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図18A】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図14に示されている緑色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図18B】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図14に示されている緑色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図18C】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図14に示されている緑色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図19A】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図15に示されている赤色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図19B】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図15に示されている赤色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図19C】本開示の例示的な実装形態による、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する様々なヘイズレベルについての、
図15に示されている赤色OLEDサブ画素設計の例示的なモデリング結果を示す。
【
図20A】本開示の例示的な実装形態による、体積拡散体の変化するヘイズレベルについての、所与の色補正構成要素の全ての性能点を包囲する白色軸方向効率/白色色シフト性能空間内の例示的な性能境界を示す。
【
図20B】本開示の例示的な実装形態による、体積拡散体の変化するヘイズレベルについての、所与の色補正構成要素の全ての性能点を包囲する白色軸方向効率/白色色シフト性能空間内の例示的な性能境界を示す。
【
図20C】本開示の例示的な実装形態による、体積拡散体の変化するヘイズレベルについての、所与の色補正構成要素の全ての性能点を包囲する白色軸方向効率/白色色シフト性能空間内の例示的な性能境界を示す。
【
図21】本開示の例示的な実装形態による例示的な青色OLEDサブ画素設計を示す。
【
図22A】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素構成を示す。
【
図22B】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素構成を示す。
【
図22C】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素構成を示す。
【
図22D】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素構成を示す。
【
図22E】本開示の例示的な実装形態による例示的なOLEDサブ画素構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し様々な実施形態が例示として示されている添付の図面が参照される。図面は、必ずしも縮尺通りではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されない。
【0007】
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、観視方向により色が変化する光出力を発生させ得る。この効果は、キャビティが強力なOLEDにおいて特に好ましくないことがあり、このOLEDでは、OLEDの発光積層体のカソードとアノードとの間のキャビティの出力は、概ねキャビティ内の観視角の余弦をキャビティ内の光の波長で除したものとして波長及び観視角に依存する。OLEDディスプレイの色シフト及び効率は、OLEDディスプレイの設計パラメータに依存する。例えば、色シフト及び効率の両方は、OLEDディスプレイの層の厚さ及び材料に依存する。従来のOLEDディスプレイでは、OLED層は、色シフトと効率との間の所望の妥協を達成するように選択される。
【0008】
米国特許第10,566,391号(Freierら)、米国特許出願公開第2019/0386251号(Ericksonら)、国際公開第2017/205174号(Freierら)、及び国際公開第2019/204078号(Ericksonら)に記載されているように、ナノ構造化境界面を含む色補正構成要素は、観視方向による色のばらつきを低減するために、OLEDディスプレイパネルの発光層に近接して置かれ得る。色補正構成要素は、トップ発光OLED(TE-OLED)の上面に隣接して、又はボトム発光OLED(BE-OLED)の底面に隣接して置かれ得る。OLEDは、キャビティが強力であるOLED、又はキャビティが弱いOLED、又はキャビティがないOLEDであってもよい。現在のOLED市場は、アクティブマトリックス有機発光ダイオード(active-matrix organic light-emitting diode、AMOLED)ディスプレイで占められており、このディスプレイは、トップエミッション型アーキテクチャを有し、現在、強力マイクロキャビティ設計を採用していることを除いて、いずれの光抽出法も使用しない。この強力キャビティ設計は、高い輝度(brightness)効率を有し得るが、角度的色均一性(angular color uniformity)が、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)の角度的色均一性よりもはるかに悪い。本明細書のいくつかの実施形態では、色補正構成要素は、有利には、AMOLEDなどのキャビティが強力であるOLEDと共に使用される。これは、典型的には、比較的大きな色シフトが、キャビティが強力であるOLED内に存在するからである。
【0009】
OLEDディスプレイは、多くの場合、画素のアレイを含み、各画素は、いくつかのサブ画素を含むことができる。典型的には、各OLEDサブ画素は、赤色光、青色光、又は緑色光を放射する。いくつかの場合では、白色、シアン、マゼンタ、黄色、又は他の色の光を放射するサブ画素が使用されてもよい。OLEDサブ画素は、カソードとアノードとの間に挟まれた有機材料の少なくとも1つの層、多くの場合、いくつかの層を含む。OLEDサブ画素の設計は、放射された光が所望の出力を有するように、各層の厚さ、光学特性、及び電子特性を選択することを含む。OLED層アーキテクチャは、「発光積層体」又は「OLED」積層体と呼ばれることがある。
【0010】
いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、発光積層体に隣接して又は近接して配設された1つ以上の層を含み得る封止材を含む。任意選択的に、発光積層体は、カソードと封止材との間に配設された1つ以上の層を含んでもよい。円偏光子は、封止材に隣接して配設され得る。いくつかの場合では、タッチセンサがOLEDディスプレイに含まれてもよい。任意選択的に、タッチセンサは、封止材と円偏光子との間に含まれてもよい。
【0011】
本開示は、TE-OLEDディスプレイ又はBE-OLEDディスプレイなどの発光ディスプレイについて記載し、この発光ディスプレイは、OLEDサブ画素の発光面と色補正ナノ構造化境界面との間に構成された「角度変換層」(Angular Transformation Layer、ATL)を含むハイブリッド色補正構成要素を含む。
【0012】
図1は、ハイブリッド色補正構成要素110を含むOLEDディスプレイ100の断面図である。ハイブリッド色補正構成要素110は、第1の層111と第2の層113との間のナノ構造化境界面112と、ATL114とを含む。ハイブリッド色補正構成要素は、ATL114がOLED積層体120とナノ構造化境界面112との間にあるように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、色補正ナノ構造化境界面は、第1の層及び第2の層から作製されてもよく、又は第1の層及び第2の層を含んでもよく、第1の層は屈折率n1を有し、第2の層は屈折率n2を有する。第1の層は、ATLと第2の層との間に配設され得る。ナノ構造化境界面は、第1の層と第2の層との間の境界面に存在することができる。ナノ構造化境界面は、第1の層と第2の層との間のトポグラフィ境界であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、ハイブリッド色補正構成要素は、封止材と円偏光子との間に配設されている。いくつかの実施形態では、ハイブリッド色補正構成要素は、封止材とタッチセンサとの間に配設されている。
【0015】
ATLは、OLEDがよって放射された後に色補正ナノ構造化境界面に入射する光の角度分布を変えることによって、色補正ナノ構造化境界面の機能を改善する役割を果たす。ATLにおける光の角度分布は、ATLの屈折率(単数又は複数)によって部分的に決定されるATLの内部伝搬角度によって説明され得る。色補正ナノ構造化境界面に入射する光の角度分布を調整することによって、角度輝度又は色分布を改善するための色補正ナノ構造の能力が向上され得る。ATLを含むいくつかの実施形態では、色補正ナノ構造境界面は、観察者への光の抽出を向上させることができる。いくつかの実施形態では、色補正ナノ構造化境界面は、主に青色OLEDサブ画素と相互作用するように設計されており、ATL素子は、2つ以上のOLEDサブ画素の光放射と相互作用するように設計されている。
【0016】
第1の層における伝搬角度θ1は、スネルの法則によって、ATLにおける伝搬角度θATLと第1の層の屈折率n1とATLの屈折率nATLとによって決定され得る。
【0017】
色補正ナノ構造化境界面に入射する好ましい角度範囲は、θ1,1~θ1,2である。この角度範囲は、スネルの法則を使用して、ATLを出射する好ましい角度範囲θATL,1~θATL,2にマッピングされ得る。
【0018】
ATLがある場合の好ましい角度範囲内の光度は、IP
ATLである。ATLがない場合の好ましい角度範囲内の光度は、Ip
0である。
【0019】
いくつかの実施形態では、ATLは、好ましい角度範囲内に光を方向転換するように調整され、IP
ATL>IP
0である。
【0020】
いくつかの実施形態では、好ましい角度範囲θ1,1~θ1,2は、10~25度、又は15~30度、又は20~35度、又は25~40度である。
【0021】
いくつかの実施形態では、ATLは、ATLが存在しない場合の伝搬角度θpropでθprop>θATL,2であるように進行する光を好ましい角度範囲θATL,1~θATL,2内に方向転換するように調整される。いくつかの実施形態では、ATLは、ATLが存在しない場合の伝搬角度θpropでθprop<θATL,1であるように進行する光を好ましい角度範囲θATL,1~θATL,2内に方向転換するように調整される。
【0022】
いくつかの実施形態では、ATLは、波長λ及びATLが存在しない場合の伝搬角度θ0を有する高波長の光を方向転換するように調整され、それにより、許容可能な最大波長λLAよりも大きいλを有する光が、より大きい伝搬角度内に方向転換され、θ0>θATL,2である。
【0023】
様々な実施形態において、ATLは、体積拡散体若しくは表面拡散体であってもよく、又は、角度変換ナノ構造化境界面を含んでもよく、又は多層光学フィルム(MOF)を含んでもよく、又は特に低屈折率の層を含んでもよい。これらのATLのタイプは、限定することなく組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0024】
観視方向による色のばらつきの低減を定量化するために使用され得るいくつかの変数が存在する。例えば、軸上の指定された色からの観視角による色のシフトが、色シフトを特性評価するために使用され得る。白色軸方向色シフトを指定することは、色シフト性能全体を特性評価する有用な量を提供することが見出されている。色シフトを特性評価するのに有用な量は、観視角がゼロから45度の間で変化する際のディスプレイの画素の最大白色点色シフト(WPCS45)である。ディスプレイを特性評価するのに有用である別の量は、観視角が0から45度の間で変化する際の所与のサブ画素の最大サブ画素色シフト(SPCS45)である。観視角とは、ディスプレイ外部の空気中で決定される、ディスプレイに垂直な方向に対する角度を指す。ディスプレイの内部層における法線方向に対する対応する角度は、スネルの法則によって決定され得る。ディスプレイが湾曲している場合、法線方向とは、特性評価されている光を放射する画素における法線方向を指す。
【0025】
観視角による白色点色シフトは、国際照明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage、CIE)1976の均等色度系(Uniform Chromaticity Scale、UCS)色度図の観点において説明され得る。指定された観視角での白色点色シフトは、ゼロ度観視角での光出力が白色である場合の、指定された観視角での光出力と、ゼロ度(ディスプレイに垂直)観視角での光出力との間の色度距離である。色度距離とは、CIE色度図における2点間のユークリッド距離を指す。例えば、第1の色がCIE1976UCSの色座標(u’1,v’1)を有し、異なる第2の色がCIE1976UCSの色座標(u’2,v’2)を有する場合、2つの色の間の色度距離は、(Δu’v’)2=(u’2-u’1)2+(v’2-v’1)2の正の平方根で与えられる。垂直方向の視野角における白色点は、任意の好適な白色点であることができる。例えば、白色点は、標準的な発光体の白色点と見なされてもよく、又はディスプレイパネルによって生成される白色点と見なされてもよい。白色点はu’,v’座標で指定され得る。
【0026】
指定された観視角でのサブ画素色シフトは同様に、光出力がディスプレイの所与のサブ画素からである場合の、指定された観視角での光出力とゼロ度の(ディスプレイに垂直な)観視角での光出力との間の色度距離として定義される。
【0027】
ディスプレイの輝度及び/又は効率を特性評価することも望ましい。軸上の輝度を特性評価するのに有用な量は、ディスプレイの画素の白色点軸方向効率(WPAE)である。ディスプレイを特性評価するのに有用である別の量は、サブ画素軸方向効率(SPAE)である。SPAEは、ディスプレイが白色光出力を発生させるときの所与のサブ画素(例えば、赤色、緑色、青色など)の効率である。OLEDディスプレイの寿命は、典型的には、青色サブ画素の寿命によって制限される。したがって、青色SPAEを増加させることにより、OLEDディスプレイの寿命を増加させることができる。効率とは、供給される1単位電流当たりに生成される光度を指し、効率はcd/Aで表され得る。
【0028】
OLED積層体及びハイブリッド色補正構成要素を同時に設計すること、又はハイブリッド色補正構成要素の特性に少なくとも部分的に基づいてOLED積層体を設計することにより、最初にOLED積層体を設計して色シフトと効率との間で所望の妥協を提供することと、次いでハイブリッド色補正構成要素を使用して色シフトを更に補正することとによって得られ得る性能利益を超える性能利益が提供され得ることが見出されている。いくつかの実施形態によれば、この結果は、従来のOLEDディスプレイよりも明るいディスプレイ(例えば、WPAE又はSPAEがより高い)、又は色がより均一であるディスプレイ(例えば、WPCS又はSPCSがより低い)のいずれかを作製することである。
【0029】
WPCS0
45は、ハイブリッド色補正構成要素を有さないディスプレイパネルの0から45度の間における最大白色点色シフトを示し、WPCSC
45は、比較ディスプレイパネルの0から45度の間における最大白色点色シフトを示し、WPCS45は、ハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの0から45度の間における最大白色点色シフトを示し、WPAE0は、ハイブリッド色補正構成要素を有さないディスプレイパネルの白色点軸方向効率を示し、WPAECは、比較ディスプレイパネルの白色点軸方向効率を示し、WPAEは、ハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの白色点軸方向効率を示し、SPAECは、比較ディスプレイパネルのサブ画素軸方向効率を示し、SPAEは、ハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイのサブ画素軸方向効率を示し、SPCS0
45は、ハイブリッド色補正構成要素を有さないディスプレイパネルの、観視角が0から45度の間で変化する際の最大サブ画素色シフトを示し、SPCSC
45は、比較ディスプレイパネルの0から45度の間における最大サブ画素色シフトを示し、SPCS45は、ハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの0から45度の間における最大サブ画素色シフトを示す。いくつかの実施形態によれば、あまり望ましくない又は更に通常は許容できない白色点色シフト又はサブ画素色シフトをもたらすようにOLED積層体を設計することは、ハイブリッド色補正構成要素が含まれる場合に、WPCS45-WPAE-SPCS45-SPAE空間内の性能を少なくとも一面で改善する(例えば、WPCS45<WPCSC
45、及び/又はWPAE>WPAEC、及び/又はSPAE>SPAEC、及び/又はSPCS45<SPCSC
45)ことが見出されている。
【0030】
本明細書のディスプレイの別の利点は、いくつかの実施形態によれば、製造のばらつきに対する許容誤差が改善されることである。例えば、いくつかの実施形態によれば、例えば、不完全な厚さ制御を伴う製造に起因する層厚さのばらつきは、例えば、ハイブリッド色補正構成要素を組み込むOLEDディスプレイのWPCS45-WPAEにおける性能のばらつきを、従来のディスプレイパネルにおけるものよりも著しく小さくすることが見出されている。
【0031】
図2は、WPAE-WPCS
45座標における性能空間200を概略的に示すプロットである。性能空間200は、性能曲線210上の点、又は性能曲線210の下方の点、及び性能曲線210の右側の点を含む。性能曲線210は、比較ディスプレイパネルの1つ以上の設計パラメータを変化させることによって達成可能な性能点を表す。比較ディスプレイパネル、本明細書のディスプレイパネル、及び本明細書のディスプレイパネル及びハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイは、同じプロット上に表され得るので、プロットのx軸及びy軸は、WPCS
C
45-WPAE
C軸、WPCS
0
45-WPAE
0軸、及びWPCS
45-WPAE軸として互換可能に参照される。
【0032】
所与のOLEDディスプレイパネルの場合、複数の比較ディスプレイパネルが画定され得、複数の比較ディスプレイパネルは、複数の積層体設計パラメータのうちの1つ以上の値を除いてその他の点ではOLEDディスプレイパネルと同等である。比較ディスプレイパネルは、WPCSC
45-WPAEC空間内の性能点を画定し、性能点の境界に沿って性能曲線210を画定する。性能曲線210は、性能点の境界の左上の部分である。性能曲線210に沿った異なる点は、積層体設計パラメータの適切な選択によって実現され得る異なる性能結果を表す。性能点が性能曲線210上に置かれる場合、WPAECも低下させることなく、より低いWPCSC
45をもたらす、又はWPCSC
45も増加させることなく、より高いWPAECをもたらす設計パラメータの選択はない。
【0033】
典型的には、0から45度の間の観視角における許容可能な最大の最大白色点色シフトであるWPCS45
LA220、及び許容可能な最小の軸方向効率であるWPAEMin230が存在し、これらは用途に依存し得る(例えば、一方又は両方の量は、携帯電話用とテレビ用とで異なり得る)。いくつかの実施形態では、複数の比較ディスプレイパネルは、WPCS45
LAの下方及び上方の両方に延びるWPCSC
45の範囲を有する。いくつかの実施形態では、WPCSC
45の範囲は、少なくとも0.01~0.015に延びる。いくつかのこのような実施形態では、WPCSC
45の範囲は、例えば、少なくとも0.02、又は少なくとも0.009~0.015、又は少なくとも0.008~0.02に延びる。ハイブリッド色補正構成要素を参照することなく性能点を選択する場合、WPAEMinよりも大きい白色点軸方向効率、及びWPCS45
LAよりも小さい0から45度の間の観視角における最大白色点色シフトを有する性能曲線210に沿った点213を選択し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、WPAEMinは、少なくとも25cd/A、又は30cd/A、又は35cd/A、又は40cd/Aである。
【0035】
本明細書によれば、ハイブリッド色補正構成要素の効果を考慮するようにOLEDパネルを設計することは、従来設計されたOLEDパネルにハイブリッド色補正を使用することと比較して、改善された結果をもたらし得ることが見出されている。ディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素を有するディスプレイについての結果を最適化することに関心があり得るので、ディスプレイパネルの性能点の最適な選択は、性能曲線210の下方及び右側にあり得るが、いくつかの場合では、性能曲線210上にもあり得る。
【0036】
例えば、いくつかの実施形態では、ハイブリッド色補正構成要素が含まれる場合、ディスプレイパネルの性能点211は性能点212に変換され、ディスプレイパネルの他の性能点はいずれも、効率などの別の所望の性能属性を犠牲にすることなく、より低い白色点色シフトをもたらすことがない。性能点211は、性能曲線210の下方及び右側にあることに留意されたい。
【0037】
いくつかの実施形態では、色補正構成要素は、ディスプレイパネルの0から45度の間における最大白色点色シフトを、左側に少なくとも0.005、又は少なくとも0.01、又は少なくとも0.015シフトさせる。換言すれば、いくつかの実施形態では、WPCS45
0-WPCS45≧0.005、又はWPCS45
0-WPCS45≧0.01、又はWPCS45
0-WPCS45≧0.015である。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイパネルの設計パラメータの値は、WPCS45
0が、少なくとも0.012、又は少なくとも0.015、又は少なくとも0.016、又は少なくとも0.017、又は少なくとも0.018、又は少なくとも0.019、又は少なくとも0.02であるように選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されるハイブリッド色補正構成要素を有する画素化されたOLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS45を含み、WPCS45<WPCSC
45-0.005である。
【0039】
いくつかの実施形態では、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されるハイブリッド色補正構成要素を有さない画素化されたOLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS0
45を有し、WPCS0
45>WPCSLA
45である。いくつかの実施形態では、WPCSLA
45は、0.02、又は0.025、又は0.03である。
【0040】
いくつかの実施形態では、サブ画素軸方向効率対最大サブ画素色シフトのプロットの観点において、ディスプレイ及びディスプレイパネルの性能を特性評価することが簡便である。例えば、いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイは、複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、画素の各々は複数のサブ画素を含み、サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを含み、色補正構成要素は、ディスプレイが、観視角が0から45度の間で変化する際の最大青色点色シフトであるBPCS45と、青色軸方向効率であるBAEとを有するように構成されている。
【0041】
BPCS0
45は、ハイブリッド色補正構成要素を有さないディスプレイパネルの0から45度の間における最大青色サブ画素色シフトを示し、BPCSC
45は、比較ディスプレイパネルの0から45度の間における最大青色サブ画素色シフトを示し、BPCS45は、ハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの0から45度の間における最大青色サブ画素色シフトを示し、BPAE0は、ハイブリッド色補正構成要素を有さないディスプレイパネルの青色サブ画素軸方向効率を示し、BPAECは、比較ディスプレイパネルの青色サブ画素軸方向効率を示し、BPAEは、ハイブリッド色補正構成要素を含むOLEDディスプレイの青色サブ画素軸方向効率を示す。
【0042】
図3は、BPAE-BPCS
45座標における性能空間300を概略的に示すプロットである。性能空間300は、性能曲線310上の点、又は性能曲線310の下方の点、及び性能曲線310の右側の点を含む。性能曲線310は、比較ディスプレイパネルの1つ以上の設計パラメータを変化させることによって達成可能な性能点を表す。比較ディスプレイパネル、本明細書のディスプレイパネル、及び本明細書のディスプレイパネルとハイブリッド色補正構成要素とを含むOLEDディスプレイは、同じプロット上に示され得るので、プロットのx軸及びy軸は、BPCS
C
45-BPAE
C軸、BPCS
0
45-BPAE
0軸、及びBPCS
45-BPAE軸として互換可能に参照される。
【0043】
所与のOLEDディスプレイパネルの場合、複数の積層体設計パラメータの1つ以上の値を除いてOLEDディスプレイパネルと同等である複数の比較ディスプレイパネルが画定され得る。比較ディスプレイパネルは、BPCSC
45-BPAEC空間内の性能点を画定し、性能点の境界に沿って性能曲線310を画定する。性能曲線310は、性能点の境界の左上の部分である。性能曲線310に沿った異なる点は、積層体設計パラメータの適切な選択によって実現され得る異なる性能結果を表す。性能点が性能曲線310上に置かれる場合、BPCSCも低下させることなく、より低いBPCSC
45をもたらす、又はBPCSC
45も増加させることなく、より高いBPAECをもたらす設計パラメータの選択はない。
【0044】
典型的には、0から45度の間の観視角における許容可能な最大の最大青色サブ画素色シフトであるBPCS45
LA320、及び許容可能な最小の軸方向効率であるBPAEMin330が存在し、これらは用途に依存し得る(例えば、一方又は両方の量は、携帯電話用とテレビ用とで異なり得る)。いくつかの実施形態では、複数の比較ディスプレイパネルは、WPCS45
LAの下方及び上方の両方に延びるBPCSC
45の範囲を有する。ハイブリッド色補正構成要素を参照することなく性能点を選択する場合、BPAEMinよりも大きい青色サブ画素軸方向効率、及びBPCS45
LAよりも小さい0から45度の間の観視角における最大青色サブ画素色シフトを有する性能曲線310に沿った点313を選択し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、BPAEMinは、2cd/A、4cd/A、6cd/A、8cd/A、10cd/A又は12cd/Aである。
【0046】
本明細書によれば、ハイブリッド色補正構成要素の効果を考慮するようにOLEDパネルを設計することは、従来設計されたOLEDパネルにハイブリッド色補正を使用することと比較して、改善された結果をもたらし得ることが見出されている。ディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素を有するディスプレイについての結果を最適化することに関心があり得るので、ディスプレイパネルの性能点の最適な選択は、性能曲線310の下方及び右側にあり得るが、いくつかの場合では、性能曲線310上にもあり得る。
【0047】
例えば、いくつかの実施形態では、ハイブリッド色補正構成要素が含まれる場合、ディスプレイパネルの性能点311は性能点312に変換され、ディスプレイパネルの他の性能点はいずれも、効率などの別の所望の性能属性を犠牲にすることなく、より低い青色サブ画素色シフトをもたらすことがない。性能点311は、性能曲線310に沿うことに留意されたい。
【0048】
いくつかの実施形態では、ハイブリッド色補正構成要素は、ディスプレイパネルの0から45度の間における最大青色サブ画素色シフトを、比較ディスプレイパネルに対して左側にシフトさせ、BPCS45<BPCSC
45-0.005である。
【0049】
いくつかの実施形態では、ハイブリッド色補正構成要素は、ディスプレイパネルの0から45度の間における最大青色サブ画素色シフトを、左側に少なくとも0.005、又は少なくとも0.01、又は少なくとも0.015シフトさせる。換言すれば、いくつかの実施形態では、BPCS45
0-BPCS45≧0.005、又はBPCS45
0-BPCS45≧0.01、又はBPCS45
0-BPCS45≧0.015である。いくつかの実施形態では、OLEDディスプレイパネルの設計パラメータの値は、BPCS45
0が、少なくとも0.015、又は少なくとも0.020、又は少なくとも0.025、又は少なくとも0.030であるように選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されるハイブリッド色補正構成要素を有さない画素化されたOLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度の間で変化する際の最大青色サブ画素色シフトであるBPCS0
45を有し、BPCS0
45>BPCSLA
45である。いくつかの実施形態では、BPCSLA
45は、0.02、又は0.025又は0.03である。
【0051】
設計パラメータの適切な値が識別されると、OLEDディスプレイパネルは、真空蒸着、真空熱蒸着、有機気相堆積、及びインクジェット印刷のうちの1つ以上によって有機層を堆積させることを含み得る従来のOLED製造プロセスを使用して作製され得る。OLEDディスプレイパネルを製造する有用な方法は、米国特許出願公開第2010/0055810(Sungら)、同第2007/0236134号(Hoら)、同第2005/0179373号(Kim)、及び同第2010/0193790号(Yeoら)に記載されている。いくつかの実施形態では、様々な層の光学厚さが設計パラメータとして使用される。層の光学厚さは、層の物理的厚さに層の屈折率を乗じたものである。発光積層体内の層の文脈おいて、光学厚さを決定する際に使用される屈折率は、発光積層体のピーク発光波長における屈折率であると見なされ得る。複素屈折率は、層について定義され得、屈折率の虚部は、層の吸収を特性評価する。別段の指示がない限り、用語「屈折率」とは、「複素屈折率」への言及がない場合には、対応する複素屈折率の実部であると見なされ得る実数の量を指す。
【0052】
OLEDディスプレイパネルの設計パラメータは、発光積層体(例えば、青色サブ画素)のうちのいずれか1つの、又は発光積層体(例えば、青色サブ画素及び緑色サブ画素)の任意の組み合わせの、又は全ての発光積層体の任意の層厚さ又は層光学厚さ又は層材料を含み得る。例えば、カソード層の厚さ若しくは光学厚さ、正孔輸送層の厚さ若しくは光学厚さ、キャッピング層の厚さ若しくは光学厚さ、及び/又は発光積層体のうちの1つ以上の発光層の厚さ若しくは光学厚さは、いくつかの実施形態において有用な設計パラメータである。いくつかの実施形態では、異なる有色サブ画素についての正孔輸送層及び発光層の厚さは、別個の設計パラメータであると考えられるが、OLED発光積層体の他の層の厚さの各々は、発光積層体の各々に共通の設計パラメータであると見なされる。これは、多くの従来の製造プロセスでは、製造コストの制約に起因して、共通層が発光積層体に使用されるからである。
【0053】
図4は、TE-OLED発光積層体400の概略断面図である。TE-OLED発光積層体400は、上部(発光側)から順に、封止材層410、任意選択のバッファ層414、キャッピング層415、カソード416、電子輸送層417、発光層418、電子遮断層419、正孔輸送層420、正孔注入層421、及びアノード422を含む。薄膜封止材(TFE)であり得る封止材層410は、第1の無機層411と第2の無機層413との間に配設された有機層412を含む。有機層412は、マイクロメートルのオーダー(例えば、約6マイクロメートル)の厚さを有してもよく、第1の無機層411及び第2の無機層413は、例えば、約50nm~約2000nmの厚さを有する、例えば、Al
2O
3層、又は窒化ケイ素層、又は当該技術分野において既知の他の無機材料であってもよい。任意選択のバッファ層414は、LiF層であってもよく、例えば、80~500nmの範囲内の厚さを有してもよい。キャッピング層415は、TCTA(トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン)層であってもよく、例えば、30~85nmの範囲内の厚さを有してもよい。カソード416は、マグネシウム-銀合金(例えば、9:1のMg:Ag原子比を有する)であってもよく、例えば6~16nmの範囲内の厚さを有してもよい。電子輸送層417は、例えばBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)層であってもよく、例えば、30~65nmの範囲内の厚さを有してもよい。発光層418は、例えば、ドーパント(例えば、10重量%にて)を有する、Sigma-Aldrich(St.Louis,MO)から入手可能なTPBi(2,2’,2’’-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンゾイミダゾール)を含んでもよく、例えば、15~35nmの範囲内の厚さを有してもよい。好適なドーパントは、Firpic(ビス[2-(4,6ジフルオロフェニル)ピリジナト-C2,N](ピコリナト)イリジウム(III))(青色)、Irppy3(トリス[2-フェニルピリジナト-C2、N]イリジウム(III))(緑色)、及びPQIr((2,4-ペンタンジオナト)ビス[2-(2-キノリニル)フェニル]イリジウム(III))(赤色)を含む。電子遮断層419は、2TNATA(4,4’,4’’-トリス[2-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン)(Sigma-Aldrichから入手可能)層であってもよく、例えば、8~12nmの範囲内の厚さを有してもよい。正孔輸送層420は、青色サブ画素に使用されるより薄い層、赤色サブ画素に使用されるより厚い層、及び緑色サブ画素に使用される中間厚さを有するTCTA(トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン)(Sigma-Aldrichから入手可能)層であってもよく、例えば、90nm~230nmの範囲内の厚さを有してもよい。正孔注入層421は、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)層であってもよく、例えば、5~18nmの範囲内の厚さを有してもよい。アノード682は、アルミニウム層であってもよく、例えば、100nmの厚さを有してもよい。
【0054】
図5は、複数の画素545を含むOLEDディスプレイパネル500の概略上面図であり、画素の各々はサブ画素545a、545b、及び545cを含む。サブ画素545a、545b、及び545cは、典型的には、赤色、緑色、及び青色などの異なる色である。平均画素間隔Pが示されている。間隔Pは、最隣接の画素間のピッチである。ディスプレイパネル500は、サブ画素545a、545b、及び545cに使用される層に応じて、本明細書のディスプレイパネルであってもよく、又は比較ディスプレイパネルであってもよい。いくつかの実施形態では、追加のサブ画素(例えば、黄色)が含まれてもよい。画素及びサブ画素の配置は、
図5に概略的に示されているものと同様であってもよく、又は異なってもよい。例えば、当技術分野で既知のように、三角形パターン、縞模様パターン、斜線パターン、又はペンタイル(PENTILE)マトリックスが使用され得る。例えば、サブ画素の赤色と緑色との対、及びサブ画素の緑色と青色との対を含むペンタイルマトリックスの場合、各画素は、赤色と緑色との対、及び緑色と青色との対を含み、それにより各画素は4つのサブ画素を含むと理解され得る。
【0055】
図6A~
図6Cはそれぞれ、赤色OLED発光積層体675r、緑色OLED発光積層体675g、及び青色OLED発光積層体675bの概略断面図である。各発光積層体675r、675g、及び675bは、発光積層体400に対応し、発光積層体400について説明されているものと同じタイプの層を有する。1つの発光積層体の1つ以上の層で使用される材料が、別の発光積層体で使用されるものと異なってもよい。例えば、異なる有色発光積層体で使用される発光層418は、典型的には、異なる色を提供するために異なる組成を有する。1つの発光積層体の1つ以上の層の層厚さは、別の発光積層体のものと異なってもよい。発光積層体675r、675g、及び675bはまた、サブ画素545a、545b、及び545cに対応し得る。
【0056】
図7は、発光OLED積層体720のエバネッセント領域701に近接してかつエバネッセント領域701の外部に配設されたハイブリッド色補正構成要素710を含む有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ700の断面図である。エバネッセント領域701は、典型的には、発光OLED積層体720からz方向に、可視光の数波長分のみ延びる。OLED積層体720は、
図4に示されているように多くの層を含み得る。内層702は、発光OLED積層体720からハイブリッド色補正構成要素710を分離する。内層702は、発光OLED積層体720のための(例えば、封止材層410に対応する)封止材を含んでもよく、又は、タッチセンサを含んでもよい。ハイブリッド色補正構成要素710は、色補正ナノ構造化境界面712と、ATL714とを含む。ナノ構造化境界面712は、第1の層711と第2の層713との間に配設されている。ATL714は、第1の層711とOLED積層体720との間に配設されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、ATLは、角度変換ナノ構造化境界面を含む。いくつかの実施形態では、角度変換ナノ構造化境界面は、色補正ナノ構造化境界面と同じ設計であってもよく、又は異なる設計であってもよい。いくつかの実施形態では、ATLは、複数の角度変換ナノ構造化境界面を含む。
図8は、第1の層811と第2の層813との間の境界面に位置するナノ構造化境界面812の全般的概略800である。ナノ構造化境界面812は、平均平面814からの変位816を有し、変位816は、h(x,y)として示される。ナノ構造化境界面812は、複数のピーク815と、最隣接のピーク間の平均間隔Sとを有する。本明細書中で使用する場合、平均とは、別段の指定のない限り、単純算術平均を指す。ナノ構造化境界面812の平均平面814からの変位816のばらつき(variance)は、ナノ構造化境界面の性能を説明するのに有用である。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1の層811及び第2の層813は、連続ポリマー相を有するポリマー層である。第1の層811及び第2の層813のうちのいずれかが、屈折率を変化させるために無機ナノ粒子を含んでもよい。このようなナノ粒子は、典型的には、100nm未満の平均サイズを有する(平均サイズは、(6V/π)1/3としてナノ粒子の平均体積V(単純算術平均)から決定され得る)。いくつかの実施形態では、所望のナノ構造化表面を有するツールが、本明細書の他の箇所で更に説明されている連続キャスト及び硬化プロセスにおいて第2の層813を形成するために使用され得る。第1の層811は、例えば、第2の層813のナノ構造化表面を架橋性組成物でバックフィルすることによって形成され得る。バックフィル材料は、例えば、それらに限定されないが、液体コーティング、蒸着コーティング、粉体コーティング、ラミネーション、ディップコーティング、又はロールツーロールコーティングのうちの1つの方法を使用して、第1の層811を形成するために適用され得る。いくつかの実施形態では、バックフィル材料は、ナノ構造化境界面の反対側の平坦面を形成する。第1の層811及び第2の層813の各々は、連続層(例えば、連続ポリマー相を有する層)であってもよい。第1の層811及び第2の層813の各々は、中実層(例えば、硬質若しくは軟質のポリマー層、又は無機層)であってもよい。
【0059】
第2の層813は、架橋樹脂層であってもよく、例えば、1.2から1.6の範囲、又は1.4から1.55の範囲内の屈折率を有してもよい。屈折率は、別段の指定のない限り、又は文脈上他を明確に示すのでない限り、632nmで測定した屈折率を指す。いくつかの実施形態では、第1の層811は、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、又は少なくとも1.75の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、第1の層811は、2.2以下、又は2.1以下、又は2.0以下の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、第1の層811は、第2の層813のものよりも大きい屈折率を有する。第1の層811及び第2の層813は、ナノ構造化境界面812にわたる屈折率コントラスト(第2の層813の屈折率及び第1の層811の屈折率における差の絶対値)を提供する。いくつかの実施形態では、屈折率コントラストは、ナノ構造化境界面812に沿って一定である。いくつかの実施形態では、屈折率コントラストは、0.1、0.2、又は0.3~1.0の範囲内である。いくつかの実施形態では、第2の層813は超低屈折率材料であり、例えば、米国特許出願公開第2012/0038990号(Haoら)に記載されているものであり、1.2~1.35の範囲内の屈折率を有し、第1の層811は、1.6超、又は1.7超の屈折率を有する高屈折率層である。
【0060】
典型的には、ナノ構造化境界面を透過した回折屈折力が屈折率コントラストの2乗に比例するため、大きい屈折率コントラストを有することが望ましく、このことは、第1の層811に高屈折率材料を使用することによって達成され得る。第1の層811に好適な材料の例としては、高屈折率無機材料、高屈折率有機材料、ナノ粒子で充填されたポリマー材料、窒化ケイ素、高屈折率無機材料で充填されたポリマー、及び高屈折率の共役ポリマーが挙げられる。高屈折率ポリマー及びモノマーの例は、C.Yangらによる、Chem.Mater.7,1276(1995)、及びR.Burzynskiらによる、Polymer 31,627(1990)、及び、米国特許第6,005,137号に記載されており、これら全ての文献は、本明細書に矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれている。高屈折率無機材料で充填されたポリマーの例は、米国特許第6,329,058号に記載されている。ナノ粒子で充填されたポリマー材料のナノ粒子の例としては、TiO2、ZrO2、HfO2、又は他の無機材料などの高屈折率材料が挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、ナノ構造化境界面812は、実質的に方位対称のパワースペクトル密度(PSD)を有する。PSDは、xy平面の領域にわたって、
【数1】
とも示される変位h(x,y)(ここで、
【数2】
はxy平面におけるベクトルである)の2次元フーリエ変換の大きさを2乗し、h(x,y)におけるピーク間の平均間隔と比較して十分に大きい領域の面積で除することによって得られ、それによって、2乗されたフーリエ変換の大きさと面積との比は、面積から近似的に独立する。波数ベクトル
【数3】
(kとも示される)におけるPSDは、十分に大きい面積Aについて、
【数4】
と表され得る。典型的には、平均間隔は、1マイクロメートル未満であり、10マイクロメートル×10マイクロメートルの正方形の面積は、PSDを決定するのに十分に大きな面積である。PSDは、長さの4乗の単位(units of length to the fourth power)を有する。PSDの定義から、PSDの2次元フーリエ空間の積分は、ナノ構造化境界面の平均変位からの変位のばらつきの(2π)
2倍に等しいということになる。本明細書に説明されている実質的に方位対称のパワースペクトル密度を使用することは、PSDが好適に選択されたときにOLEDディスプレイの軸出力(on-axis output)(例えば、輝度、色、及びコントラスト)を大きく変更することなく、所望の色補正又は角度変換を提供するのに有用であることが見出されている。本明細書の他の箇所で説明されているパワースペクトル密度を有するナノ構造化境界面は、ナノ構造化表面を有するツールを使用して作製され得る。いくつかの実施形態では、ツールは、基材に部分的に埋め込まれた複数の粒子を含む。ツールを作製するための有用な技術は、米国特許出願公開第2014/0193612号(Yuら)、及び米国特許第8,460,568号(Davidら)に記載されている。ツールのナノ構造化表面は、原子間力顕微鏡法(AFM)によって特性評価され得、これは、例えば高速フーリエ変換を介して表面のPSDを決定するために使用され得る。
【0062】
有用なナノ構造化境界面に関する、及びナノ構造化境界面を作製する方法に関する更なる詳細は、米国特許仮出願第62/342620号(Freierら)、及び同第62/414127号(Ericksonら)、並びに国際公開第2017/205174号(Freierら)に見出され記載されている。
【0063】
いくつかの実施形態では、ATLは、体積拡散体フィルムである又は体積拡散体フィルムを含む。ある拡散体フィルムがOLEDディスプレイパネルに近接して置かれた場合、OLEDディスプレイパネルの色シフトを低減することが見出されている。いくつかの実施形態では、拡散体フィルムは、相互連結された細孔及びチャネルを含むポリマー層を含むポリマーフィルムである。いくつかの実施形態では、拡散体フィルムはポリマー層を含むポリマーフィルムであり、ポリマー層はボイドフリーであり、ポリマーマトリックス内に均一に分散された粒子を含む。
【0064】
用語「ヘイズ」とは、広角光散乱を指し、ディスプレイから放射される光は、全方向に拡散され、コントラストの損失を引き起こす。特に、用語「バルクヘイズ」とは、数ミリメートル(mm)の広いサンプリングビームで測定された広角光散乱を指し、これにより、ポリマーフィルムの当該の数ミリメートルのアパーチャからの平均結果を得る。また、特に、用語「マイクロヘイズ」とは、数十ミクロン(すなわち、100ミクロン未満、例えば、10~40ミクロン)のより小さい照射面積(illuminated area)によって測定される広角光散乱を指し、平均マイクロヘイズ測定値は、多くの測定値からの平均結果を表し、各測定値は、面積が数十ミクロンであり、数ミリメートルのポリマーフィルムにわたって延びる。
【0065】
用語「正規化されたマイクロヘイズ不均一性」とは、少なくとも1mmにわたって、典型的には数ミリメートルにわたって測定されるときの、マイクロヘイズの標準偏差とマイクロヘイズの平均値との比を指す。マイクロヘイズの標準偏差は、マイクロヘイズノイズの尺度である。したがって、正規化されたマイクロヘイズ不均一性は、視覚的なマイクロヘイズノイズとマイクロヘイズ信号との比の基準値(metric)である。
【0066】
用語「透明度」とは、狭角での散乱を指し、光は、強い集光で小さい角度範囲内に拡散される。ある透明度を有する効果は、基本的に、非常に小さな細部が試験片を通していかに良好に見えるかを説明する。
【0067】
ヘイズ、透明度、及び可視光透過率は、ASTM D1003-13試験規格に記載されているように決定され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、ATLは、少なくとも70%(好ましくは少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも85%、又はより好ましくは少なくとも90%)の透明度と、少なくとも85%(好ましくは少なくとも90%)の可視光透過率と、15%~80%(好ましくは20%~80%、より好ましくは30%~70%、及び更により好ましくは30%~50%)のバルクヘイズとの特性を有するポリマーフィルムである又はこのようなポリマーを含む。ある実施形態では、本明細書のポリマーフィルムは、ポリマーフィルムにわたって12%以下(好ましくは10%未満、又はより好ましくは8%未満)の正規化されたマイクロヘイズ不均一性を有する。このようなフィルムは、ATLとして使用された場合、制御された局所的均一性を有する光学拡散体として機能することができる。透明度、透過率、及びバルクヘイズは、Haze Gard Plus(BYK Gardner(Columbia、MD)製)を使用して測定され得、Haze Gard Plusは、ポリマーフィルムの18ミリメートル(mm)アパーチャのサンプリングビームからの測定値を報告する。本明細書のディスプレイの好ましい透明度、透過率、及びヘイズ範囲は、本明細書で使用されるディスプレイパネルの設計空間が異なることに起因して、従来のディスプレイで使用された場合の対応する好ましい範囲と異なることがある。
【0069】
図9で分かるように、いくつかの実施形態では、ATL900は、ポリマーフィルムである又はポリマーフィルムを含み、ポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層910を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリマー層910は、屈折率n
1を有する第1の材料を含む第1のポリマー領域911と、第1のポリマー領域911内に相互連結された細孔及びチャネルのネットワークを含む第2の領域912とを含み、チャネルは、屈折率n
2を有する第2の材料を含む。いくつかの実施形態では、第1の材料は、第1の弾性ポリマー材料及び任意選択の粒子を含む。いくつかの実施形態では、第2の材料は、第2のポリマー材料及び任意選択の粒子、並びに/又は空気を含む。
【0070】
典型的には、複数の相互連結された細孔及びチャネルは、中空トンネル又はトンネル様通路を介して互いに接続された細孔を含む。ある実施形態では、ネットワーク内には、複数の相互連結された細孔及びチャネルがあり得る。ある実施形態では、少量の閉じた又は接続されていない細孔があり得る。
【0071】
典型的には、細孔及びチャネルは、2マイクロメートル以下の平均断面(例えば、球形細孔の直径)を有する。別の言い方をすれば、相互連結された細孔及びチャネルのネットワークは、2マイクロメートル未満のサイズの散乱粒子と同様である角度平均散乱特性を有する。
【0072】
(第1のポリマー領域の)第1の材料は、屈折率n1を有する。(相互連結された第2の領域の)第2の材料は、屈折率n2を有する。これらの領域の材料は、n1がn2と異なるように選択される。ある実施形態では、|n1-n2|は少なくとも0.01である。ある実施形態では、|n1-n2|は、少なくとも0.02、又は少なくとも0.03、又は少なくとも0.04、又は少なくとも0.05、又は少なくとも0.1である。ある実施形態では、|n1-n2|n1は、最大で0.5である。ある実施形態では、n1はn2の0.5内であり、n1はn2の0.4内であり、n1はn2の0.3内であり、n1はn2の0.2内であり、又はn1はn2の0.1内である。この文脈において、「内」は、0.5(又は0.4、又は0.3、又は0.2、又は0.1)内でより高い又はより低いことを意味する。例えば、参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2018/204675号(Haoら)を参照されたい。
【0073】
図10で分かるように、いくつかの実施形態では、ATLは、2つの主表面を有するポリマー層1010を含むポリマーフィルム1000である又はポリマーフィルム1000を含み、ポリマー層1010は、ポリマーマトリックス及び粒子(好ましくはポリマー粒子)を含み、好ましくはボイドフリーである。第1のポリマー層1010は、屈折率n
1を有する第1のポリマーマトリックス1011と、第1のポリマーマトリックス1011内に均一に分散された屈折率n
2を有する粒子1012とを含み、粒子は、第1のポリマー層の体積に基づいて、30体積%未満の量で存在し、400ナノメートル(nm)~3000nmの粒径範囲を有し、n
1は、n
2と異なる。このようなポリマーフィルムは、光学機能光学拡散体を有する。
【0074】
ある実施形態では、ポリマー材料は、接着剤材料である。ある実施形態では、少なくとも1つの接着剤材料は、光学的に透明な接着剤(optically clear adhesive、OCA)を含む。ある実施形態では、光学的に透明な接着剤は、アクリレート、ポリウレタン、ポリオレフィン(ポリイソブチレン(PIB)など)、シリコーン、又はこれらの組み合わせから選択される。例示的なOCAは、静電気防止性の光学的に透明な感圧性接着剤に関する国際公開第2008/128073号(3M Innovative Property Co.)、延伸剥離性OCAに関する国際公開第2009/089137号(Shermanら)、インジウムスズ酸化物に適合したOCAに関する米国特許出願公開第2009/0087629号(Everaertsら)、光透過性接着剤を有する静電気防止性光学構造物に関する米国特許出願公開第2010/0028564号(Chengら)、腐食感受性層に適合する接着剤に関する米国特許出願公開第2010/0040842号(Everaertsら)、光学的に透明な引き伸ばし剥離式接着テープに関する米国特許出願公開第2011/0126968号(Dolezalら)、及び引き伸ばし剥離式接着テープに関する米国特許第8,557,378号(Yamanakaら)に記載されているようなものを含む。好適なOCAは、例えば、3M Company,St.Paul,MN.から入手可能な3M OCA 8146などのアクリル系の光学的に透明な感圧接着剤を含む。
【0075】
粒子は、400ナノメートル(nm)~3000nmの粒径範囲、又は700nm~2.0マイクロメートル(マイクロメートル)の粒径範囲を有する。この文脈において、「粒径」とは、粒子の最長寸法を指し、これは、球形粒子の直径である。「粒径範囲」とは、最小から最大までの粒径の分布を指す(平均ではない)。したがって、粒子は、必ずしも均一な粒径を有さない。粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して決定され得る。
【0076】
粒子は、多面体、平行六面体、ひし形、円筒形、弓形、弓形円筒形、丸みを帯びた形状(例えば、楕円形又は球形又は等軸形)、半球形、ガムドロップ形、ベル形、円錐形、円錐台形、不規則形状、及びこれらの混合物を含む、様々な形状のものであり得る。ある実施形態では、粒子は、球形ビーズである。
【0077】
本明細書のポリマーフィルムは、2つの主表面を有する第1のポリマー層を含んでもよく、第1のポリマー層は、第1のポリマーマトリックスと、第1のポリマーマトリックス内に均一に分散された粒子(好ましくはポリマー粒子)とを含む。粒子は、屈折率n2を有し、粒子が分散されている第1のポリマーマトリックスは、屈折率n1を有し、n1は、n2とは異なる。ある実施形態では、|n1-n2|は少なくとも0.01である。ある実施形態では、|n1-n2|は、少なくとも0.02、又は少なくとも0.03、又は少なくとも0.04、又は少なくとも0.05である。ある実施形態では、|n1-n2|は、最大で0.5である。ある実施形態では、n1はn2の0.5内であり、n1はn2の0.4内であり、n1はn2の0.3内であり、n1はn2の0.2内であり、又はn1はn2の0.1内である。この文脈において、「内」は、0.5(又は0.4、又は0.3、又は0.2、又は0.1)内でより高い又はより低いことを意味する。
【0078】
粒子は、好ましくは有機ポリマー粒子であるが、他の粒子が使用されてもよい。例示的な非有機粒子は、SiO2、Al2O3、ZrO2、ZnO、及びこれらの混合物を含む。有機粒子に使用するための例示的な有機ポリマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのシリコーン、ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、又はこれらの組み合わせから選択される有機ポリマー材料を含む。
【0079】
ある実施形態では、粒子は、第1のポリマー層の体積に基づいて、30体積パーセント(体積%)未満の量で第1のポリマー層内に存在する。ある実施形態では、粒子は、第1のポリマー層の総体積に基づいて、最大25体積%、最大20体積%、又は最大15体積%の量で第1のポリマーマトリックス内に存在する。ある実施形態では、粒子は、第1のポリマー層の総体積に基づいて、少なくとも0.5体積%(又は少なくとも1体積%)の量で第1のポリマーマトリックス内に存在する。
【0080】
ATL構成要素として有用なポリマーフィルムの更なる詳細は、例えば、国際公開第2018/204648号(Haoら)、及び同第2018/204675号(Haoら)に記載されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、ATLは、表面拡散体である又は表面拡散体を含む。表面拡散体は、多くの場合、微細構造化境界面を含み、微細構造化境界面において、微細構造化特徴部は、約1マイクロメートル~約1000マイクロメートルの範囲内の1つの寸法、例えば、長さ、幅、高さ、平均変位、又は特徴部間の間隔を有する。
【0082】
図11は、第1の平坦な主表面1112と第2の平坦な主表面1113との間に微細構造化表面1111を含むATL1100の図である。微細構造化境界面1111は、平均平面1114からの変位1115を有する。微細構造化境界面1111は、複数のピーク1117と、最隣接のピーク間の平均間隔1116とを有する。微細構造化表面1111における光の角度変換に影響を及ぼす因子は、例えば、光学フィルム1110の屈折率、微細構造化表面1111に接触する媒体の屈折率、及び微細構造化表面1111に対する入射光の角度を含んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、国際公開第2018/130926号及び同第2018/130926号(Derksら)に例示的に記載されているようなに、ATLは、微細構造化表面を有する光学フィルムを含む。微細構造化表面は、複数のプリズム構造体の不規則な分布を含み、複数のプリズム構造体は、微細構造化表面の基準平面から角度付けされた複数のファセットを含む。プリズム構造体は、個別に不規則又はランダムであってもよいが、プリズム構造体のファセットは、ファセットの表面方位角分布が基準平面に沿って実質的に均一であり得るように、サイズ決定、角度付け、及び分散されてもよいが、ファセットの面極角分布は、基準平面に垂直入射する光のピーク透過率と相関する極角範囲内に実質的にあってもよい。このファセットの分布は、主表面全体をプリズム構造体で実質的に被覆しながら、ベース角度の均等分布を有する円錐形プリズム構造体の集合の光学分布特性などの円錐形光学分布特性に近似する微細構造化表面の光学分布特性をもたらすことができる。相互接続されたファセット表面の使用は、実質的に光学フィルムの表面全体が微細構造化表面によって被覆されることを可能にする。
【0084】
他の実施形態では、ATLは、主表面から突出する粒子を含む表面拡散体である。
【0085】
いくつかの実施形態では、ATLは、波長及び偏光に依存する部分反射体である又はこのような部分反射体を含む。いくつかの実施形態では、部分反射体は光学積層体を含み、光学積層体は複数の光学繰り返し単位を含み、複数の光学繰り返し単位は、波長及び偏光に依存する所望の反射率及び透過率を提供する。
【0086】
部分反射体は、反射偏光子又は部分反射偏光子と呼ばれることがあり、これは、いくつかの実施形態では、部分反射体が、直交する偏光状態についての反射帯域ではなく、1つの偏光状態についての反射帯域を有するからである。反射帯域は、典型的には、遮断軸に沿って偏光された垂直入射光についての平均反射率を有し、平均反射率は、97%未満、又は95%未満、又は90%未満、又は75%未満、又は60%未満である。反射帯域は、典型的には98%超の平均反射率を提供する従来の多層光学フィルムミラー又は反射偏光子の反射帯域よりも弱くてよい。部分反射体は、制御された帯域端及び入射角で調整された反射率を有する複屈折多層光学フィルムであってもよい。いくつかの実施形態では、部分反射体は、ディスプレイに組み込まれたときに最小の軸上視覚効果を有するように設計されているが、軸外では所望の波長について光学ゲインが得られるように設計されている。本明細書の部分反射板をハイブリッド色補正構成要素におけるATLとして使用することは、ATL内を伝搬する光の所与の角度分布について光度分布を好適に調整できることが見出されている。
【0087】
本明細書の波長及び偏光に依存する部分反射体又は反射偏光子は、典型的には、複数の光学繰り返し単位を含む光学積層体を含む多層光学フィルムであり、光学繰り返し単位の各々は、ポリマー層であり得る第1の層及び第2の層を含む。
図12は、多層光学フィルム1200の例示的な光学繰り返し単位(ORU)の概略斜視図である。
図12は、多層光学フィルム1200の2つの層のみを示すが、多層光学フィルム2200は、1つ以上の連続的なパケット又は積層体に配置された数十又は数百のこのような層(複数の層)を含み得る。フィルム1200は、個別のミクロ層1202、1204を含み、ここで「ミクロ層」とは、このような層の間の複数の境界面で反射する光が、強め合う又は弱め合う干渉を受けて、所望の反射特性又は透過特性を多層光学フィルムにもたらすのに十分に薄い層を指す。ミクロ層1202、1204は一緒に、多層積層体の1つの光学繰り返し単位(ORU)を表すことができ、ORUは、積層体の厚さにわたり繰り返しパターンで繰り返す層の最小の集合である。ミクロ層は、一部の光が隣接するミクロ層の境界面で反射されるように、異なる屈折率特性を有する。紫外、可視、又は近赤外波長で光を反射するように設計された光学フィルムの場合、各ミクロ層は、典型的に、約1マイクロメートル未満の光学厚さ(すなわち、該当する屈折率を物理的厚さに乗じたもの)を有する。しかしながら、所望により、フィルムの外側表面のスキン層、又は、フィルム内に配設されておりミクロ層のパケットを分離させる保護境界層(PBL)などのより厚い層が含められてもよい。いくつかの実施形態では、ミクロ層の単一のパケット又は積層体のみが、本明細書の光学フィルムに含まれる。
【0088】
例示的な多層光学フィルムは、ポリマー材料から構成され、共押出成形プロセス、キャスティングプロセス、及び配向プロセスを使用して作製され得る。米国特許第5,882,774号(Jonzaら)「Optical Film」、米国特許第6,179,948号(Merrillら)「Optical Film and Process for Manufacture Thereof」、米国特許第6,783,349号(Neavinら)「Apparatus for Making Multilayer Optical Films」、及び米国特許出願公開第2011/0272849号(Neavinら)「Feedblock for Manufacturing Multilayer Polymeric Films」を参照されたい。
【0089】
いくつかの実施形態では、ATLは、少なくとも第1の低屈折率層からなり、第1の層は第1の表面及び第2の表面を有し、第1の表面は、OLED積層体と第2の表面との間に配設されている。低屈折率層は、内角の範囲で伝搬する光を第1の表面で全内部反射させる屈折率nlを有する。低屈折率層は、532nmの波長において、nl<1.40未満の屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、nlは、532nmの波長において、1.20~1.40である。いくつかの実施形態では、nlは、532nmの波長において、1.35~1.40である。
【実施例】
【0090】
実施例は、全般的に、整合されたOLEDデバイス及び色補正構成要素の利点の例示として提示される。試験結果は、全般的に、視野角の範囲にわたる輝度及び色シフトの性能基準値に着目している。例えば光学測定使用される作製された試験クーポンは、商業的使用のための最終ディスプレイデバイスと必ずしも同じではない。本明細書の特定の実施例は、限定的と見なされるべきではない。
【0091】
試験方法
いくつかのOLED測定方法は、輝度電流電圧(luminance-current-voltage、LIV)及びエレクトロルミネセントスペクトルの測定を含む。これらの測定は、PR655分光放射計(Photo Research,Inc.Chatsworth CA)、及びKeithley 2400 Sourcemeter(Keithley Instruments Inc.Cleveland OH)を使用してもよい。以下の光学測定値は、色補正構成要素を有する又は有さないOLEDデバイスをPR655カメラに対して回転させることによって、角度の関数として得られた。
【0092】
各OLEDデバイスは、色補正構成要素を有さない場合を対照として試験された。その後、色補正構成要素は、OLEDにラミネートされて、輝度特性及び色特性について再度評価された。
【0093】
拡散性接着剤タイプの色補正構成要素についての透過率、ヘイズ及び透明度の測定は、Hazegard(BYK-Chemie GmbH,Wesel Germany,ASTM D1003-13に従って)を使用してなされた。
【0094】
OLED試料の調製
青色OLED試験クーポンは、約10-7Torrのベース圧で、有機層及び金属層のための標準的な真空熱蒸着を使用して構築された。真空スパッタリングは、約10-3Torrのベース圧で、酸化物層に使用された。スパッタリングされたAl2O3層(50nm)、蒸着によって堆積された有機平滑化層(E-200、EM Index)(2.5μm)、及び第2のAl2O3(50nm)層からなる一連の封止層が、OLEDキャッピング層の上に堆積された。
【0095】
拡散性接着剤タイプの色補正構成要素の調製
拡散接着剤タイプの色補正構成要素のためのいくつかの調製方法は、米国特許第9,960,389号(Haoら)に記載されている。ベース接着剤溶液は以下のように調製された。モノマープレミックスは、EHA(55部)、iBOA(25部)、HEA(20部)、及び0.02部のD-1173を添加することによって調製された。混合物は、紫外線発光ダイオード(UVA-LED)によって生成された紫外線に曝露することによって、窒素(不活性)雰囲気下、部分的に重合されて、約1000センチポアズ(cp)の粘度を有するコーティング可能なシロップ剤を得た。次いで、HDDA(0.15部)、IRGACURE 651(0.15部)、及びKBM-403(0.05部)がシロップに添加されて、均質な接着剤コーティング溶液を形成した。
【0096】
これらの実施例では、拡散接着剤は、1.48の屈折率を有するベースアクリル接着剤マトリックスに充填された2μm径のシリコーンビーズ(TOSPEARL 120A、屈折率1.42、Momentive Performance Materials,Waterford,NYから入手可能)を含んだ。ビーズが最初に接着剤溶液に添加され、次いでオーバーヘッドJiffy LM Pintミキサー(Jiffy Mixer Co.Inc,Corona,CA製)を使用して2時間機械的にかき混ぜられた。機械的かき混ぜ後、混合物が混合ローラ上に追加の24時間置かれた。
【0097】
ナノ構造タイプの色補正構成要素の調製
ナノ構造化フィルムタイプの色補正構成要素は、国際公開第2017/205174号(Freierら)に全般的に記載されている。これらの実施例では、ナノ構造化フィルムは、屈折率マッチングゲル(n=1.46)を使用して、OLEDデバイスにラミネートされた。このナノ構造化フィルムは、125nmの2乗平均平方根振幅(Varとも示される)と、波数25rad/μm-1~37rad/μm-1の間に環状に集中した実質的に方位対称のパワースペクトル密度(PSD)とを有するナノ構造を、低屈折率層と高屈折率層との間で使用した。ベアのOLEDデバイスのベースライン測定後、高屈折率(例えば、n=1.85)ナノ構造化層が、第2の測定のためにOLED積層体にラミネートされた。
【0098】
例示的なOLEDの説明
図13は、青色OLEDサブ画素1300の断面図である。アノード1304は、100nmの厚さのアルミニウム(Al)の層上に堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)から形成される。有機層は、EL022S(Hodogaya Chemical)の87~113nmの厚さの正孔輸送層(HTL)1308、EL301(Hodogaya Chemical)の10nmの厚さのHTL層1312、BH900(Sunfine Chemical)にドープされたBD200(Sunfine Chemical)の10体積%混合物からなる20nmの厚さの発光層(EML)1316、及びTPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1Hベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン、Lumtec)の50nmの厚さの電子輸送層(ETL)1320を含む。フッ化リチウム(LiF)の1.5nmの厚さの電子注入層(EIL)が、ETLとカソードとの間に堆積された。カソード1324は、マグネシウム(Mg)にドープされた銀(Ag)の10体積%混合物から形成される。カソードの上方には、TCTA(4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、Lumtec)の65nmの厚さのキャッピング層(CPL)1328がある。CPLの上方には、E-200(EM Index)の1つの層を取り囲む2つのAl
2O
3の無機層を含む薄膜封止(TFE)1332がある。
【0099】
図14は、緑色OLEDサブ画素1400の断面図である。アノード1404は、100nmの厚さのアルミニウム(Al)の層上に堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)から形成される。有機層は、EL022S(Hodogaya Chemical)の132~158nmの厚さの正孔輸送層(HTL)1408、EL301(Hodogaya Chemical)の10nmの厚さのHTL層1412、TPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1Hベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン、Lumtec)にドープされたIr(ppy)
3(fac-トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)、Lumtec)の10体積%混合物を含む30nmの厚さの発光層(EML)1416、及びTPBi(Lumtec)の50nmの厚さの電子輸送層(ETL)1420を含む。カソード1424は、マグネシウム(Mg)にドープされた銀(Ag)の10体積%混合物から形成される。カソードの上方には、TCTA(4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、Lumtec)の65nmの厚さのキャッピング層(CPL)1428がある。CPLの上方には、E-200(EM Index)の1つの層を取り囲む2つのAl
2O
3の無機層を含む薄膜封止(TFE)1432がある。
【0100】
図15は、赤色OLEDサブ画素1500の断面図である。アノード1504は、100nmの厚さのアルミニウム(Al)の層上に堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)から形成される。有機層は、EL022S(Hodogaya Chemical)の187~213nmの厚さの正孔輸送層(HTL)1508、EL301(Hodogaya Chemical)の10nmの厚さのHTL層1512、TPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1Hベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン、Lumtec)にドープされたIr(mdq)
2(acac)ビス(2-メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトナト)イリジウム(III)、Lumtec)の10体積%混合物からなる30nmの厚さの発光層(EML)1516、及びTPBi(Lumtec)の50nmの厚さの電子輸送層(ETL)1520を含む。カソード1524は、マグネシウム(Mg)にドープされた銀(Ag)の10体積%混合物から形成される。カソードの上方には、TCTA(4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、Lumtec)の65nmの厚さのキャッピング層(CPL)1528がある。CPLの上方には、E-200(EM Index)の1つの層を取り囲む2つのAl
2O
3の無機層を含む薄膜封止(TFE)1532がある。
【0101】
モデリング例
青色、緑色、及び赤色OLEDサブ画素積層体のOLEDの輝度及び色性能が、
図16A~
図16Eに示されている5つの構成における光学モデルを使用してシミュレートされた。
図16Aは対照を示し、
図16Bは散乱のみを示し、
図16Cはナノ構造のみを示し、
図16Dはハイブリッドの散乱-ナノ構造(hybrid, scattering to nanostructure)を示し、
図16Eはハイブリッドのナノ構造-散乱(hybrid, nanostructure to scattering)を示す。これらの構成の説明は以下に示されている。モデルへの入力は、各層の順序、厚さ、屈折率、及び吸光係数を含む。各層の屈折率及び吸光係数は、J.A.Woollam Spectroscopic Ellipsometer上で、可変角度分光エリプソメトリ(VASE)によって測定された。
【0102】
対照構成(16A)1600Aは、色補正構成要素(CCC)が赤色、緑色、又は青色OLEDサブ画素積層体1604A又はTFE 1608Aの上に付加されていない例である。第2の構成(16B)1600Bでは、体積拡散体CCCがTFE 1606Bの上に付加されている。様々なレベルのヘイズ(50、80、及び95%)を有する3つの体積拡散体CCC 1608Bは、サブ画素積層体1604Bの上方にモデリングされている。第3の例(16C)1600Cでは、ナノ構造化フィルムCCC 1612Cが、TFE 1609Cの上にかつサブ画素積層体1604Cの上方に付加されている。第4の例(16D)1600Dでは、体積拡散体CCC 1608Dとナノ構造化フィルムCCC 1612Dとの組み合わせが、TFE 1606Dの上にかつサブ画素積層体1604Dの上方に適用されており、体積拡散体は、TFEとナノ構造化フィルムとの間にある。第5の例(16E)1600Eでは、ナノ構造化フィルムCCC 1612Eと体積拡散体1616Eとの組み合わせが、TFE 1608Eの上にかつサブ画素積層体1604Eの上方に適用されており、ナノ構造化フィルムは、TFEと体積拡散体との間にある。第4の例及び第5の例の両方において、体積拡散体のヘイズレベルは、50、80及び95%ヘイズレベルでモデリングされている。
【0103】
図17A~
図17Cは、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する各ヘイズレベルについての、
図13に示されている青色OLEDサブ画素設計のモデリング結果を示し、
図17Aは、50%ヘイズを有するシナリオを表し、
図17Bは、80%ヘイズを有するシナリオを表し、
図17Cは95%ヘイズを有するシナリオを表す。各プロットは、軸方向の電流効率対0°から45°の間の最大色シフトを比較する。所与の視野角(θ)の色シフトは、CIE1976色空間内の0°(u’
0,v’
0)における色座標とθ(u’
θ,v’
θ)における色座標との間のベクトルの長さとして説明される。曲線に沿った異なる点は、
図13による、異なるHTL厚さを表す。最適なデバイス挙動は、各プロットの左上部分に対応する高効率かつ低色シフトである。各例について、向上した挙動をシグナリングする、対照曲線の上方及び/又は左側にある青色サブ画素積層体設計が存在する。向上の大きさは、体積拡散体内に存在するヘイズのレベルに依存する。各ヘイズレベルについて、TFEとナノ構造化フィルムとの間に体積拡散体を有するハイブリッド構成は、最大の向上を呈する。
【0104】
青色OLEDサブ画素改善は、2つの方法で定量化され得る。第1の方法は、0.01の色シフトを有するデバイスの軸方向効率を追跡する。この方法では、下にある積層体設計が、適用されるCCCに応じて変わり得る。これらの結果が表3にまとめられている。1.1cd/Aから1.5cd/Aへの効率向上は、いずれかのハイブリッドCCCが適用される場合の50%ヘイズ体積拡散体でモデリングされた。また、1.1cd/Aから1.7cd/Aへの効率向上は、TFEとナノ構造化フィルムハイブリッドCCCとの間の80%ヘイズ体積拡散体が適用される場合にモデリングされた。また、1.1cd/Aから1.9cd/Aへの効率向上は、TFEとナノ構造化フィルムハイブリッドCCCとの間の95%ヘイズ体積拡散体が適用される場合にモデリングされた。全ての例において、0.01未満の低い青色色シフトが維持される。
【0105】
【0106】
第2の方法は、0.03よりも大きい初期色シフトを有する単一のサブ画素設計の色シフト及び軸方向効率を追跡する。この例において、これは、107nmのHTL厚さを有する青色サブ画素設計に対応する。結果が表4にまとめられている。0.034から0.017への色シフト改善は、TFEとナノ構造化フィルムハイブリッドCCCとの間の50%ヘイズ体積拡散体が適用される場合にモデリングされた。0.034から0.013への色シフト改善は、TFEとナノ構造化フィルムハイブリッドCCCとの間の80%ヘイズ体積拡散体が適用される場合にモデリングされた。0.034から0.009への色シフト改善は、TFEとナノ構造化フィルムハイブリッドCCCとの間の95%ヘイズ体積拡散体CCC又は95%ヘイズ体積拡散体のいずれかが適用される場合にモデリングされた。
【0107】
【0108】
図18A~
図18Cは、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する各ヘイズレベルについての、
図14に示されている緑色OLEDサブ画素設計のモデリング結果を示し、
図18Aは、50%ヘイズを有するシナリオを表し、
図18Bは、80%ヘイズを有するシナリオを表し、
図18Cは、95%ヘイズを有するシナリオを表す。
図19A~
図19Cは、
図16A~
図16Eに示されている各例、及び体積拡散体内に存在する各ヘイズレベルについての、
図15に示されている赤色OLEDサブ画素設計のモデリング結果を示し、
図19Aは、50%ヘイズを有するシナリオを表し、
図19Bは、80%ヘイズを有するシナリオを表し、
図19Cは、95%ヘイズを有するシナリオを表す。緑色OLEDサブ画素及び赤色OLEDサブ画素の両方について、ナノ構造化フィルムCCCの効果は、予想通り小さい又は微小である。結果として、体積拡散体及び各ハイブリッド例は、体積拡散体内に存在する所与の各ヘイズレベルについて同様の挙動を示す。
【0109】
各例では、各ヘイズレベルについて、表5で分かるように、緑色軸方向効率の2~15%の低減、及び緑色色シフトの15~60%の低減がある。
【0110】
【0111】
赤色OLEDサブ画素について、赤色色シフトの10~40%の低減及び軸方向効率の0~10%の向上が、表6にまとめられているようにモデリングされた。
【0112】
【0113】
各タイプのCCCを有する赤色、緑色、及び青色OLEDサブ画素についてモデリングされた性能では、性能が先行するサブ画素に基づくOLED画素の性能がシミュレートされ得る。潜在的な白色画素設計は、以下の手順に従って選択される。
【0114】
第1に、バランスのとれた色(RMSCB)からの<0.1の2乗平均平方根偏差を有する白色画素設計のみが選択される。RMSCBは以下の式に従って定義され、式中、θは視野角であり、cはサブ画素色であり、CMWは混色ウェイトであり、Eは所与の視野角における効率であり、CIE
yは、所与の視野角におけるCIE 1931色空間内の色点のy座標である。CMW
avgは、所与の視野角における3つの色全ての間の平均混色ウェイトである。
【数5】
【0115】
第2に、<0.04の平均原色(例えば、赤色、緑色、青色)色シフトを有する白色画素設計のみが選択される。
【0116】
全ての白色設計がシミュレートされると、白色軸方向効率/白色色シフト性能空間内の性能境界が描かれ得、この性能境界は、所与のCCCの全ての性能点を包囲する。これらの性能境界は、体積拡散体の変化する各ヘイズレベルについて
図20A~
図20Cに示されており、
図20Aは、50%ヘイズを有するシナリオを表し、
図20Bは、80%ヘイズを有するシナリオを表し、
図20Cは、95%ヘイズを有するシナリオを表す。サブ画素性能と同様に、プロットの左上部分に設計を含む性能曲線が最適である。50%ヘイズ体積拡散体の例については、TFEとナノ構造化フィルムとの間に体積拡散体を有するハイブリッドCCC、及びナノ構造化フィルムのみのCCCについて、同等の性能向上がモデリングされる。80%の例については、TFEとナノ構造化フィルムとの間に体積拡散体を有するハイブリッドCCCが最適である。95%の例については、ナノ構造化フィルムのみのCCCが最適である。0.075未満の白色色シフトを有する白色画素設計のモデリングされた軸方向効率が、表7にまとめられている。
【0117】
【0118】
実験実施例
青色OLEDサブ画素試作品2100が、
図21に詳細に示されている層構造に従って作製された。アノード2104は、100nmの厚さのアルミニウム(Al)の層上に堆積されたインジウムスズ酸化物(ITO)から形成される。金属層及び有機層は、10
-7Torrの圧力で真空熱蒸着によって堆積された。有機層は、EL022S(Hodogaya Chemical)の正孔輸送層(HTL)2108、EL301(Hodogaya Chemical)の10nmの厚さのHTL層2112、BH900(Sunfine Chemical)にドープされたBD200(Sunfine Chemical)の10体積%混合物を含む20nmの厚さの発光層(EML)2116、及びTPBi(Lumtec)の50nmの厚さの電子輸送層(ETL)2120を含む。HTLの厚さは、95~110nmで変化した。カソード2124は、マグネシウム(Mg)にドープされた銀(Ag)の10体積%混合物から形成される。カソードの上方には、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、Lumtec)の65nmの厚さのキャッピング層(CPL)2128がある。CPLの上方には、E-200(EM Index)の1つの層を取り囲む2つのAl
2O
3の無機層を含む薄膜封止(TFE)2132がある。
【0119】
OLEDサブ画素の輝度及び色は、
図22A~
図22Eに示されている5つの構成における視野角の関数として記録された。
図22Aは、サブ画素積層体2204Aと、TFE 2208Aとを含む対照構成2200Aを示し、
図22Bは、サブ画素積層体2204Bと、TFE 2208Bと、体積拡散体2212Bとを含む散乱のみ構成2200Bを示し、
図22Cは、サブ画素積層体2204Cと、TFE 2208Cと、屈折率マッチングゲル2212Cと、ナノ構造化フィルム2216Cとを含むナノ構造のみ構成2200Cを示し、
図22Dは、サブ画素積層体2204Dと、TFE 2208Dと、体積拡散体2212Dと、ナノ構造化フィルム2216Dとを含むハイブリッドの散乱-ナノ構造構成2200Dを示し、
図22Eは、サブ画素積層体2204Eと、TFE 2208Eと、屈折率マッチングゲル2212Eと、ナノ構造化フィルム2216Eと、体積拡散体2220Eとを含むハイブリッドのナノ構造-散乱構成2200Eを示す。輝度及びスペクトルの情報は、PR650分光放射計(Photo Research)を用いて記録された。屈折率マッチングゲル(屈折率=1.46)が、必要に応じてナノ構造化フィルムをTFEに光学的にラミネートするために使用された。体積拡散体の4つの異なるヘイズレベル(25、50、71、及び89%)が、散乱のみ構成及びハイブリッド構成において使用された。
【0120】
【0121】
各構成について可能な効率向上を決定するために、0.02未満の色シフトを呈したサブ画素が選択され、軸方向効率及び色シフトの平均及び標準偏差が表にされた。体積拡散体内に存在する各ヘイズレベルについての各構成の軸方向効率及び色シフトが、表8にまとめられている。25%ヘイズレベル拡散体については、ナノ構造化フィルムのみ及び両方のハイブリッド構成が、1.5cd/Aから1.6cd/Aへの最大効率向上を呈する。50%ヘイズレベル拡散体については、ナノ構造化フィルムのみ、及びTFEとナノ構造化フィルムとの間に散乱を有するハイブリッドが、1.5cd/Aから1.7cd/Aへの最大効率向上を呈する。71%ヘイズレベル拡散体については、散乱のみ、ナノ構造化フィルムのみ、及びTFEとナノ構造化フィルムとの間に散乱を有するハイブリッドが、1.5cd/Aから1.9cd/Aへの最大の効率向上を呈する。89%ヘイズレベル拡散体については、TFEとナノ構造化フィルムとの間に散乱を有するハイブリッドが、1.5cd/Aから2.3cd/Aへの最大の効率向上を呈する。
【0122】
「約(about)」などの用語は、それらが本明細書に使用され記載されている文脈において、当業者には理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用は、それが本明細書に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかでない場合、「約」は、指定された値の10パーセント内を意味すると理解されよう。指定された値の約として与えられた量は、正確に指定された値であり得る。例えば、それが本明細書に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかでない場合、約1の値を有する量は、0.9から1.1の間の値を有することを意味し、値が1であり得ることを意味する。
【0123】
上記で参照されている参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれている参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先される。
【0124】
図内の要素の記載は、別段の指示がない限り、他の図内の対応する要素に等しく適用されると理解されたい。具体的な実施形態が本明細書に例示及び記載されているが、図示及び記載されている具体的な実施形態は、様々な代替形態及び/又は均等の実装形態により、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書に説明されている具体的な実施形態のいずれの適合例又は変形例も包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることを意図する。以下に例示的実施形態を示す。
[項目1]
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を含み、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、OLEDディスプレイパネルと、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを備え、前記ハイブリッド色補正構成要素は、
ナノ構造化境界面と、
角度変換層であって、前記ナノ構造化境界面と前記画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設された角度変換層とを含む、
OLEDディスプレイ。
[項目2]
前記角度変換層は、体積拡散体である、項目1に記載のOLEDディスプレイ。
[項目3]
前記角度変換層は、表面拡散体である、項目1に記載のOLEDディスプレイ。
[項目4]
前記角度変換層は、角度変換ナノ構造化境界面を含む、項目1に記載のOLEDディスプレイ。
[項目5]
前記角度変換層は、複数の角度変換ナノ構造化境界面を含む、項目1に記載のOLEDディスプレイ。
[項目6]
前記角度変換層は、多層光学フィルムを含む、項目1に記載のOLEDディスプレイ。
[項目7]
前記角度変換層は、低屈折率層を含み、前記低屈折率層は、1.4未満の屈折率を有する、項目1に記載のOLEDディスプレイ。
[項目8]
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を含み、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを備え、前記ハイブリッド色補正構成要素は、
ナノ構造化境界面と、
角度変換層であって、前記ナノ構造化境界面と前記画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設された角度変換層とを含み、
その他の点では前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同一である、比較OLEDディスプレイパネルは、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
C
45
と、観視角が0から45度の間で変化する際の許容可能な最大の白色点色シフトであるWPCS
LA
45
とを有する比較画素を含み、WPCS
C
45
<WPCS
LA
45
であり、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されているとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
45
を有する画素を含み、WPCS
45
<WPCS
C
45
-0.005である、
OLEDディスプレイ。
[項目9]
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されていないとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大白色点色シフトであるWPCS
0
45
を有し、WPCS
0
45
>WPCS
LA
45
である、項目8に記載のOLEDディスプレイ。
[項目10]
前記角度変換層は、体積拡散体である、項目8に記載のOLEDディスプレイ。
[項目11]
前記角度変換層は、表面拡散体である、項目8に記載のOLEDディスプレイ。
[項目12]
前記角度変換層は、角度変換ナノ構造化境界面を含む、項目8に記載のOLEDディスプレイ。
[項目13]
前記角度変換層は、低屈折率層を含み、前記低屈折率層は、1.4未満の屈折率を有する、項目8に記載のOLEDディスプレイ。
[項目14]
有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイであって、
複数の画素を含む画素化されたOLEDディスプレイパネルであって、前記画素の各々は複数のサブ画素を含み、前記サブ画素の各々は複数のOLED層を含む、画素化されたOLEDディスプレイパネルと、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されたハイブリッド色補正構成要素とを備え、前記ハイブリッド色補正構成要素は、
ナノ構造化境界面と、
角度変換層であって、前記ナノ構造化境界面と前記画素化されたOLEDディスプレイパネルとの間に配設された角度変換層とを含み、
その他の点では前記画素化されたOLEDディスプレイパネルと同一である、比較OLEDディスプレイパネルは、比較サブ画素を含む比較画素を含み、前記比較サブ画素の各々は、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS
C
45
と、観視角が0から45度の間で変化する際の許容可能な最大のサブ画素色シフトであるSPCS
LA
45
とを有し、SPCS
C
45
<SPCS
LA
45
であり、
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されているとき、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS
45
を有するサブ画素を含み、SPCS
45
<SPCS
C
45
-0.005である、
OLEDディスプレイ。
[項目15]
前記画素化されたOLEDディスプレイパネルは、前記ハイブリッド色補正構成要素が前記画素化されたOLEDディスプレイパネル上に配設されていないとき、前記サブ画素の各々は、観視角が0から45度の間で変化する際の最大色シフトであるSPCS
0
45
を有し、SPCS
0
45
>SPCS
LA
45
である、項目14に記載のOLEDディスプレイ。
[項目16]
前記角度変換層は、体積拡散体である、項目14に記載のOLEDディスプレイ。
[項目17]
前記角度変換層は、表面拡散体である、項目14に記載のOLEDディスプレイ。
[項目18]
前記角度変換層は、角度変換ナノ構造化境界面を含む、項目14に記載のOLEDディスプレイ。
[項目19]
前記角度変換層は、低屈折率層を含み、前記低屈折率層は、1.4未満の屈折率を有する、項目14に記載のOLEDディスプレイ。