(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】組立式コンクリート柱の上柱、上柱成形用型枠、および、組立式コンクリート柱の上柱の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 3/34 20060101AFI20240725BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240725BHJP
E04B 1/21 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
E04C3/34
E04B1/58 503P
E04B1/58 503B
E04B1/21 C
(21)【出願番号】P 2022009316
(22)【出願日】2022-01-25
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】羅 基峰
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-147991(JP,A)
【文献】特開2021-084409(JP,A)
【文献】特開2020-112003(JP,A)
【文献】特開2016-153598(JP,A)
【文献】特開昭61-146505(JP,A)
【文献】実開昭57-168655(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/34
E04B 1/58
E04B 1/21
E04H 12/12
E04C 5/08
E02D 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下柱と結合されて組立式コンクリート柱を形成する組立式コンクリート柱用の上柱であって、
筒状のコンクリート部と、
このコンクリート部の一端部に一体的に配置された継手管と、
この継手管の内部に固着された座板と、
この座板に端部が固定されて前記コンクリート部に埋設された緊張材と、を備え、
前記継手管は、
前記下柱が一端部に挿入される筒状の本体部と、
前記本体部の他端部の内側に一端部が固定され、他端部が前記本体部の他端部よりも突出する筒状の補強部と、を有し、
前記コンクリート部は、
前記継手管の内側から前記座板に亘り形成された一体部と、
前記継手管の他端部から突出し、外面が前記補強部の外面と面一に、または、この外面より外方に突出して形成された突出部と、を有する
ことを特徴とする組立式コンクリート柱の上柱。
【請求項2】
補強部は、縞鋼板により形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の組立式コンクリート柱の上柱。
【請求項3】
補強部の他端部の少なくとも内側に面取り部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の組立式コンクリート柱の上柱。
【請求項4】
補強部の他端部の少なくとも内側を覆う緩衝材を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の組立式コンクリート柱の上柱。
【請求項5】
筒状のコンクリート部と、このコンクリート部の一端部に一体的に配置された継手管と、この継手管の内部に固着された座板と、この座板に端部が固定されて前記コンクリート部に埋設された緊張材と、を備え、前記継手管が、下柱が一端部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の他端部の内側に一端部が固定され、他端部が前記本体部の他端部よりも突出する筒状の補強部と、を有する組立式コンクリート柱用の上柱を製造するための上柱成形用型枠であって、
前記コンクリート部を成形する第一型枠部と、
前記継手管が配置される第二型枠部と、
前記継手管の前記補強部が挿入される型枠開口部を有し、前記第一型枠部と前記第二型枠部との間に配置され、前記継手管の前記本体部の他端部と当接する第三型枠部と、を備える
ことを特徴とする上柱成形用型枠。
【請求項6】
筒状のコンクリート部と、このコンクリート部の一端部に一体的に配置された継手管と、この継手管の内部に固着された座板と、この座板に端部が固定されて前記コンクリート部に埋設された緊張材と、を備え、前記継手管が、下柱が一端部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の他端部の内側に一端部が固定され、他端部が前記本体部の他端部よりも突出する筒状の補強部と、を有する組立式コンクリート柱用の上柱を製造する組立式コンクリート柱用の上柱の製造方法であって、
請求項5記載の上柱成形用型枠を用い、この上柱成形用型枠の第二型枠部内に前記継手管を、前記本体部の他端部を前記上柱成形用型枠の第三型枠部に当接させるとともに前記補強部の他端部の外側を前記上柱成形用型枠の第一型枠部の内側に近接または当接させるように配置し、
前記座板に前記緊張材の端部を固定して前記第一型枠部側に緊張した状態で前記第一型枠部にコンクリートを注入し、前記コンクリート部を前記継手管と一体化するように遠心成形する
ことを特徴とする組立式コンクリート柱の上柱の製造方法。
【請求項7】
第一型枠部にコンクリートを注入する前に、前記第一型枠部の内側と継手管の補強部の他端部の外側との間に漏出防止材を配置しておく
ことを特徴とする請求項6記載の組立式コンクリート柱の上柱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下柱と結合されて組立式コンクリート柱を形成する組立式コンクリート柱の上柱、上柱成形用型枠、および、組立式コンクリート柱の上柱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組立式コンクリート柱(嵌合継手式コンクリート柱)は、一の柱体である上柱のコンクリート部の下端部に嵌合式継手である継手管が一体的に配置され、この継手管に他の柱体である下柱のコンクリート部が挿入接続されて構成される。
【0003】
上柱を製造する際には、継手管の内側に結合されている座板(端板)に緊張材の端部が固定され、緊張材を緊張させた状態でコンクリート部が成形される。このとき、緊張材の緊張力に対して継手管を型枠内に保持するために、継手管の端部を型枠に当接させる方法が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-112003号公報
【文献】特開2021-84409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の方法によって製造された上柱では、組立式コンクリート柱を使用しているときに風などで繰り返し揺すられた場合に、コンクリート部の外面と継手管の内面とが肌別れを抑制することが求められる。
【0006】
また、継手管の端部の表面とコンクリート部の表面との間に段差が生じているため、この段差に雨水が溜まりやすい構造となっている。そのため、溜まった雨水が継手管内面を伝わって腐食が進行しないように、継手管内面に止水ゴムなどの止水材の設置が必要になる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、製造が容易で、かつ、経時的な強度の低下を抑制できる組立式コンクリート柱の上柱、上柱成形用型枠、および、組立式コンクリート柱の上柱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の組立式コンクリート柱の上柱は、下柱と結合されて組立式コンクリート柱を形成する組立式コンクリート柱用の上柱であって、筒状のコンクリート部と、このコンクリート部の一端部に一体的に配置された継手管と、この継手管の内部に固着された座板と、この座板に端部が固定されて前記コンクリート部に埋設された緊張材と、を備え、前記継手管は、前記下柱が一端部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の他端部の内側に一端部が固定され、他端部が前記本体部の他端部よりも突出する筒状の補強部と、を有し、前記コンクリート部は、前記継手管の内側から前記座板に亘り形成された一体部と、前記継手管の他端部から突出し、外面が前記補強部の外面と面一に、または、この外面より外方に突出して形成された突出部と、を有するものである。
【0009】
請求項2記載の組立式コンクリート柱の上柱は、請求項1記載の組立式コンクリート柱の上柱において、補強部は、縞鋼板により形成されているものである。
【0010】
請求項3記載の組立式コンクリート柱の上柱は、請求項1または2記載の組立式コンクリート柱の上柱において、補強部の他端部の少なくとも内側に面取り部が形成されているものである。
【0011】
請求項4記載の組立式コンクリート柱の上柱は、請求項1または2記載の組立式コンクリート柱の上柱において、補強部の他端部の少なくとも内側を覆う緩衝材を備えるものである。
【0012】
請求項5記載の上柱成形用型枠は、筒状のコンクリート部と、このコンクリート部の一端部に一体的に配置された継手管と、この継手管の内部に固着された座板と、この座板に端部が固定されて前記コンクリート部に埋設された緊張材と、を備え、前記継手管が、下柱が一端部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の他端部の内側に一端部が固定され、他端部が前記本体部の他端部よりも突出する筒状の補強部と、を有する組立式コンクリート柱用の上柱を製造するための上柱成形用型枠であって、前記コンクリート部を成形する第一型枠部と、前記継手管が配置される第二型枠部と、前記継手管の前記補強部が挿入される型枠開口部を有し、前記第一型枠部と前記第二型枠部との間に配置され、前記継手管の前記本体部の他端部と当接する第三型枠部と、を備えるものである。
【0013】
請求項6記載の組立式コンクリート柱の上柱の製造方法は、筒状のコンクリート部と、このコンクリート部の一端部に一体的に配置された継手管と、この継手管の内部に固着された座板と、この座板に端部が固定されて前記コンクリート部に埋設された緊張材と、を備え、前記継手管が、下柱が一端部に挿入される筒状の本体部と、前記本体部の他端部の内側に一端部が固定され、他端部が前記本体部の他端部よりも突出する筒状の補強部と、を有する組立式コンクリート柱用の上柱を製造する組立式コンクリート柱用の上柱の製造方法であって、請求項5記載の上柱成形用型枠を用い、この上柱成形用型枠の第二型枠部内に前記継手管を、前記本体部の他端部を前記上柱成形用型枠の第三型枠部に当接させるとともに前記補強部の他端部の外側を前記上柱成形用型枠の第一型枠部の内側に近接または当接させるように配置し、前記座板に前記緊張材の端部を固定して前記第一型枠部側に緊張した状態で前記第一型枠部にコンクリートを注入し、前記コンクリート部を前記継手管と一体化するように遠心成形するものである。
【0014】
請求項7記載の組立式コンクリート柱の上柱の製造方法は、請求項6記載の組立式コンクリート柱の上柱の製造方法において、第一型枠部にコンクリートを注入する前に、前記第一型枠部の内側と継手管の補強部の他端部の外側との間に漏出防止材を配置しておくものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造が容易で、かつ、経時的な強度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態の組立式コンクリート柱の上柱の一部を示す断面図である。
【
図2】同上組立式コンクリート柱の上柱の面取り部の例を(a)ないし(p)に示す説明図である。
【
図3】同上組立式コンクリート柱の上柱の製造方法を示す断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態の組立式コンクリート柱の上柱の一部を示す断面図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態の組立式コンクリート柱の上柱の一部を示す断面図である。
【
図6】同上組立式コンクリート柱の上柱の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1において、1は組立式コンクリート柱を構成する(一の)柱体としての上柱である。上柱1は、図示されない(他の)柱体としての下柱と接続されて組立式コンクリート柱を構成する。上柱1は、柱状のコンクリート部3と、コンクリート部3の軸方向の一方側の端部(下端部)に配置されて一体化された継手管4と、継手管4に配置された座板5と、座板5からコンクリート部3に亘り配置された緊張材6と、を備えている。なお、緊張材6は、図示されない螺旋状の鋼材(螺旋筋)と一体的に鉄筋籠を形成していてもよい。
【0019】
コンクリート部3は、円筒状に形成されており、軸方向に沿って緊張材6が埋設されて緊張力(プレストレス)が付与されている。本実施の形態において、コンクリート部3は、一端部である下端部から他端部である上端部へと径寸法(内径寸法および外径寸法)が徐々に縮小されるテーパ状に形成されているものとするが、これに限られず、両端部に亘り一定または略一定の径寸法(内径寸法および外径寸法)を有する直管状、あるいは、直管状の部分を一部に有する形状に形成されていてもよい。コンクリート部3は、継手管4の内部に位置する一体部8と、継手管4の上端部から突出する突出部9と、を一体的に有する。一体部8は、継手管4の内側から座板5に亘り形成されている。一体部8の外面は、継手管4の内面に密着し、一体部8の下端面は座板5に密着している。
【0020】
突出部9は、継手管4の上端部から軸方向に延びている。突出部9は、一体部8よりもコンクリート部3の軸方向に長く、コンクリート部3の過半を構成している。
【0021】
継手管4は、本体部10と、補強部11と、を一体的に有する。本体部10は、円筒状に形成されており、一端部である下端部に下柱が挿入される部分である。本実施の形態において、本体部10は、一端部である下端部から他端部である上端部へと径寸法(内径寸法および外径寸法)が徐々に縮小されるテーパ状に形成されているものとするが、これに限られず、両端部に亘り一定または略一定の径寸法(内径寸法および外径寸法)を有する直管状、あるいは、直管状の部分を一部に有する形状に形成されていてもよい。
【0022】
補強部11は、円筒状に形成され、本体部10の軸方向の他端部である上端部の内側に一端部である下端部が固定され、他端部である上端部が本体部10の他端部である上端部よりも上方に突出している。つまり、補強部11には、本体部10の内側に一体的に重ねられる第一部分13が一端部である下端部側に設定され、本体部10から突出する第二部分14が他端部である上端部側に設定されている。本実施の形態では、第一部分13の下端部と本体部10の内周面と、および、第二部分14の外周面と本体部10の上端部と、に亘り、溶接部などの固定部15が形成されて、補強部11が本体部10と一体的に固定されている。本実施の形態において、補強部11は、下端部から上端部に亘り、本体部10の形状に応じて径寸法(内径寸法および外径寸法)が徐々に縮小されるテーパ状に形成されているものとするが、これに限られず、両端部に亘り一定または略一定の径寸法(内径寸法および外径寸法)を有する直管状、あるいは、直管状の部分を一部に有する形状に形成されていてもよい。
【0023】
補強部11は、コンクリート部3の一体部8と一体成形される一体成形部である。補強部11は、上端部から内周面および下端部に亘る部分がコンクリート部3の一体部8と接しており、外周面(第二部分14の外周面)がコンクリート部3に対して外方に露出している。つまり、コンクリート部3には、補強部11が嵌合する嵌合凹部16が外周面に形成されている。本実施の形態では、補強部11の外周面は、コンクリート部3の突出部9の外周面と面一または略面一となっている。よって、本体部10の上端部の外径寸法が、コンクリート部3の突出部9の外周面と面一または略面一となっている補強部11の第二部分14の外径寸法より大きいことにより、本体部10と補強部11との継ぎ目である本体部10の上端部に、これら外径寸法の差に基づく外周段差部17が形成されている。つまり、外周段差部17は、本体部10の上端部の端面であって、補強部11の外周面およびコンクリート部3の外周面に対して、径方向に延びる段差面となっている。外周段差部17の最大外径寸法は、コンクリート部3の突出部9の最大外径寸法より大きく設定されている。また、補強部11の下端部(第一部分13)は、継手管4の内部に位置する座板5に対して上方に離れて位置している。そのため、コンクリート部3の一体部8の一部が補強部11と座板5との間に入り込んで、コンクリート部3を継手管4に対して抜け止めする抜け止め部18となっている。
【0024】
補強部11は、本体部10と同一の材質で形成されていてもよいし、異なる材質で形成されていてもよい。好ましくは、補強部11は、コンクリート部3を構成するコンクリートに対して付着が良好な部材により形成されている。一例として、補強部11は、縞鋼板により形成されている。
【0025】
また、好ましくは、補強部11には、面取り部19が少なくとも上端部の内側に形成されている。面取り部19は、コンクリート部3を構成するコンクリートのはじけ防止として形成されている。つまり、面取り部19は、少なくともコンクリート部3と接する部分、本実施の形態では補強部11の第二部分14の上端部の内側に形成されている。
【0026】
面取り部19としては、様々な形状が可能である。例えば、
図2(a)に示されるような角面、
図2(b)に示されるような丸面、
図2(c)に示されるような甲丸面、
図2(d)に示されるような蒲鉾面、
図2(e)に示されるような匙面、
図2(f)に示されるような内丸面、
図2(g)に示されるようなしゃくり面、
図2(h)に示されるような猿頬面、
図2(i)に示されるような銀杏面、
図2(j)に示されるような片銀杏面、
図2(k)あるいは
図2(l)に示されるような几帳面、
図2(m)に示されるような底几帳面、
図2(n)に示されるような紐面、
図2(o)に示されるような胡麻殻面、
図2(p)に示されるような瓢箪面が挙げられる。面取り部19は、その他の様々な形状としてよい。
【0027】
図1に示される座板5は、緊張材6の一端部である下端部が固定されるものである。座板5は、例えば金属により円板状に形成されている。座板5は、継手管4の内部に一体的に取り付けられている。座板5は、継手管4の本体部10の内部に、軸方向に対して直交または略直交する方向に沿って位置する。座板5の外周面は、継手管4(本体部10)の内周面に対し、溶接部などの固定部21により一体的に固定されている。本実施の形態において、固定部21は、座板5の一主面および他主面のそれぞれと継手管4(本体部10)の内周面とに亘り形成されている。座板5は、継手管4(本体部10)の軸方向の中央部よりもコンクリート部3寄り、つまり上端部寄りの位置に配置されている。座板5の上側において、継手管4の本体部10が、コンクリート部3の一体部8と一体成形される一体成形部24となり、座板5の下側において、継手管4の本体部10が、下柱が嵌合される嵌合部25となっている。つまり、嵌合部25は、内部にコンクリート部分を有しない中空部分である。嵌合部25の内方の空間に下柱の上端部が挿入嵌合される。
【0028】
また、座板5の中央部には、コンクリート部3を成形するコンクリートを注入するための開口部27が形成されている。開口部27は、座板5を厚み方向に貫通して形成されている。さらに、座板5には、開口部27の周囲に、緊張材6の下端部を保持するための固定孔28が形成されている。固定孔28は、座板5を厚み方向に貫通して形成されている。本実施の形態において、固定孔28は、開口部27の周囲に、座板5の周方向に複数配置されている。図示される例では、固定孔28は、開口部27の周囲に、座板5の周方向に等間隔または略等間隔に配置されている。
【0029】
緊張材6は、上柱1のコンクリート部3に対し軸方向に圧縮する緊張力を付与するものである。緊張材6としては、PC鋼材などの高強度線状体が好適に用いられる。本実施の形態において、緊張材6は、複数配置されている。緊張材6の一端部は、座板5の固定孔28に固定され、他端部は、上柱1の軸方向の他方側の端部(上端部)に配置される図示されない座板の固定孔に固定されている。
【0030】
そして、上柱1は、
図3に示される上柱成形用型枠30(以下、単に型枠30という)を用いて成形される。型枠30は、柱体成形用型枠である。本実施の形態において、型枠30は、第一型枠部32と、第二型枠部33と、第三型枠部34と、を少なくとも有して構成されている。第一型枠部32ないし第三型枠部34は、少なくともいずれか二つが一体で形成されていてもよいし、それぞれ別体でもよい。本実施の形態において、第一型枠部32ないし第三型枠部34はそれぞれ別体で形成され、互いに組み付けられて一体的となっている。
【0031】
第一型枠部32は、内部にコンクリートが注入されて上柱1のコンクリート部3(
図1)を成形する部分である。第一型枠部32は、円筒状に形成されている。第一型枠部32の軸方向の一端部に第二型枠部33および第三型枠部34が配置される。第一型枠部32の内側は、コンクリート部3(
図1)の形状に応じて形成されている。すなわち、本実施の形態において、第一型枠部32は、一端部側からその反対側の他端部へと、徐々に縮径されるテーパ状に形成されているが、これに限られず、コンクリート部3(
図1)が直管形状である場合には、第一型枠部32の内面は、一端部側から他端部へと一定または略一定の径寸法を有する。
【0032】
第二型枠部33は、継手管4が挿入されて配置される部分である。第二型枠部33の軸方向の長さは、継手管4の軸方向の長さよりも長く形成されている。第二型枠部33は、円筒状に形成されている。第二型枠部33は、継手管4を内部に保持できれば任意の形状としてよいが、例えば両端部に亘り一定または略一定の径寸法を有する直管状に形成されている。第二型枠部33の内径寸法は、第一型枠部32の内径寸法よりも大きく設定されている。本実施の形態において、第一型枠部32は第二型枠部33側が最大径となっているため、第二型枠部33の内径寸法は、第一型枠部32の最大内径よりも大きい。第二型枠部33の端部が、第一型枠部32の端部と対向して配置され、これら第一型枠部32の端部と第二型枠部33の端部との間に、第三型枠部34が配置されている。
【0033】
そして、第三型枠部34は、顎部とも呼び得るもので、上柱1(
図1)の成形時に継手管4の軸方向の他方側の端部と当接して、緊張材6の緊張力を受ける部分である。第三型枠部34は、第一型枠部32と第二型枠部33との境界部に配置されている。第三型枠部34は、円板状に形成され、軸方向と直交または略直交する方向に延びている。また、第三型枠部34には、型枠開口部36が形成されている。型枠開口部36は、第三型枠部34の中央部に形成されている。型枠開口部36は、例えば円形状に形成されている。型枠開口部36は、継手管4の本体部10の最小径寸法よりも小さく、かつ、継手管4の補強部11が挿入可能な径寸法に設定されている。また、第三型枠部34の外縁部は、第一型枠部32および第二型枠部33の外周面よりも外方に延びている。
【0034】
そして、上柱1を成形する際には、型枠30を用い、まず、第二型枠部33の端部に第三型枠部34を配置して、第二型枠部33内に継手管4を設置する。このとき、継手管4は、本体部10の上端部の外周段差部17を第三型枠部34の型枠開口部36の縁部に対して軸方向に当接させ、補強部11が型枠開口部36に挿入されるように配置する。
【0035】
次いで、継手管4の内部にて嵌合部25の部分に、コンクリートの付着を防止するための筒状の付着防止手段(図示せず)を挿入して固定するとともに、第一型枠部32を第三型枠部34に対し第二型枠部33とは反対側から軸方向に組み付けて固定する。この状態で、第三型枠部34の型枠開口部36から突出する補強部11の先端部側が、第一型枠部32に内挿され、補強部11の外周面が第一型枠部32の内周面に当接する。継手管4の本体部10は、第三型枠部34に対し、肉厚の少なくとも一部が突き当てられて支持される。
【0036】
さらに、緊張材6を継手管4の内部の座板5の固定孔28に第一型枠部32とは反対側から挿入して一端部を座板5に固定し、他端部を第一型枠部32側に通して、第一型枠部32内に配置された図示されない座板の固定孔に挿通した状態で、緊張材6の他端部をジャッキ等の緊張手段を用いて第一型枠部32側つまり上柱1(
図1)の上端部側に引っ張って、緊張力Fを与える。このとき、座板5とともに引っ張られる継手管4の本体部10の外周段差部17が第三型枠部34に突き当たって支持されることで、緊張材6の緊張力Fが定着される。
【0037】
この状態で、第一型枠部32内に第二型枠部33側からコンクリートを注入し、所定量充填した後、図示されない閉塞手段により座板5の開口部27を閉塞する。
【0038】
そして、型枠30を遠心成形機に設置し、型枠30を回転させて、その遠心力を利用した遠心締め固めにより、
図1に示されるコンクリート部3を、その下端部側の一体部8が継手管4の補強部11の上端部から補強部11の内側および本体部10の内側に亘り座板5まで形成して継手管4と一体化し、突出部9が補強部11の上端部から上方に延びる、上柱1を成形する。
【0039】
成形完了後、閉塞手段を取り外して座板5の開口部27を開き、かつ、付着防止手段を取り外して、第一型枠部32内に生じている未固化のコンクリートいわゆるノロを排出する。
【0040】
その後、型枠30ごと養生槽に入れ、常圧蒸気養生を行った後、上柱1を型枠30から取り出す。
【0041】
このように、上記の型枠30を用い、第二型枠部33内に継手管4を、本体部10の上端部を第三型枠部34に当接させるとともに補強部11の上端部の外側を第一型枠部32の内側に近接または当接させるように配置し、座板5に緊張材6の端部を固定して第一型枠部32側に緊張した状態で第一型枠部32にコンクリートを注入し、コンクリート部3を継手管4と一体化するように遠心成形することで、筒状のコンクリート部3の下端部に一体的に配置された継手管4に、下柱が下端部に挿入される筒状の本体部10と、下端部が本体部10の上端部の内側に固定され、上端部が本体部10の上端部よりも突出する筒状の補強部11と、を設定し、コンクリート部3を、継手管4の内側から座板5に亘る一体部8と、継手管4の上端部から突出し外面が補強部11の外面と面一の突出部9と、を有するように形成する。したがって、継手管4の本体部10の上端部を外周段差部17として利用して第三型枠部34に当接させて緊張材6の緊張力を支持するため、緊張力を保持するための別途の部材や構造が不要であり、製造が容易であるとともに、外周段差部17の位置は、継手管4自体の本体部10と補強部11との段差であって、コンクリート部3と継手管4との段差ではないため、外周段差部17に仮に雨水などが溜まったとしても、そこから継手管4の内部やコンクリート部3と継手管4との間に水が侵入しにくく、水の侵入に起因する継手管4の腐食やコンクリート部3と継手管4との肌別れを抑制でき、経時的な強度の低下を抑制できる。しかも、雨水の侵入を阻止するための止水ゴムなどの設置が不要であるため、より簡素かつ安価に上柱1を構成できる。
【0042】
補強部11を縞鋼板により形成することで、コンクリート部3を形成するコンクリートが補強部11に付着しやすくなり、継手管4の内面とコンクリート部3の外面とが肌別れが生じにくくなる。そのため、継手管4とコンクリート部3との継ぎ目部分、すなわちコンクリート部3と補強部11の上端部の端面との境界部分から継手管4の内面へと雨水などの水がより侵入しにくくなり、継手管4の腐食を抑制できる。
【0043】
補強部11の上端部の少なくとも内側に面取り部19を形成することで、コンクリート部3の成形時のコンクリートのはじけを面取り部19によって防止して、コンクリート部3と補強部11とを、より強固に密着させることができる。
【0044】
なお、コンクリート部3を構成するコンクリートのはじけ防止として、上記の第1の実施の形態の面取り部19に代えて、
図4に示される第2の実施の形態のように、継手管4の補強部11の上端部に緩衝材40を配置してもよい。ここで、緩衝材40は、継手管4の補強部11(第二部分14)の上端部側を覆う。緩衝材40は、少なくともコンクリート部3と接する部分、本実施の形態では補強部11の第二部分14の上端部の内側を少なくとも覆って形成されている。図示される例では、緩衝材40は、円環状に形成されており、補強部11(第二部分14)の上端部に被せられるキャップ状となっている。すなわち、緩衝材40には、補強部11(第二部分14)の上端部が嵌合される凹部41が形成されている。そして、第1の実施の形態と同様に型枠30を用いて上柱1を成形する。このように、補強部11の上端部の少なくとも内側を覆って緩衝材40を配置することで、コンクリート部3の成形時のコンクリートのはじけを緩衝材40によって防止して、コンクリート部3と補強部11とを、より強固に密着させることができる。
【0045】
次に、第3の実施の形態について、
図5および
図6を参照して説明する。なお、上記の各実施の形態と同様の構成および作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施の形態は、上柱1の製造時にコンクリート部3を成形する際に、
図6に示される漏出防止材45を用いるものである。漏出防止材45は、止水材とも呼ばれるもので、製造時に第一型枠部32の内周面に対して近接する継手管4の補強部11(第二部分14)の上端部の外周面が、第一型枠部32の内周面との間に隙間を生じている場合にこの隙間に配置され、この隙間からコンクリートの漏出を防止するものである。
【0047】
漏出防止材45は、円環状に形成されている。好ましくは、漏出防止材45としては、弾性を有する部材、例えばゴム、あるいはロープなどが円環状に形成されたものが用いられる。
【0048】
そして、上柱1を成形する際には、上記の第1の実施の形態と同様に型枠30を用い、まず、第二型枠部33の端部に第三型枠部34を配置して、第二型枠部33内に、補強部11の上端部に漏出防止材45を巻き付けた継手管4を設置する。このとき、継手管4は、本体部10の上端部の外周段差部17を第三型枠部34の型枠開口部36の縁部に対して軸方向に当接させ、漏出防止材45を含む補強部11が型枠開口部36に挿入されるように配置する。
【0049】
次いで、継手管4の内部にて嵌合部25の部分に、コンクリートの付着を防止するための筒状の付着防止手段(図示せず)を挿入して固定するとともに、第一型枠部32を第三型枠部34に対し第二型枠部33とは反対側から軸方向に組み付けて固定する。この状態で、第三型枠部34の型枠開口部36から突出する補強部11の先端部側が、第一型枠部32に内挿され、補強部11の先端部に位置する漏出防止材45の外周面が第一型枠部32の内周面に当接して第一型枠部32の内側と補強部11の外側との隙間を閉塞する。継手管4の本体部10は、第三型枠部34に対し、肉厚の一部が突き当てられて支持される。
【0050】
以下、第1の実施の形態と同様にして上柱1を製造する。
【0051】
このように、上柱1を製造する際に、第一型枠部32にコンクリートを注入する前に、第一型枠部32の内側と継手管4の補強部11の上端部の外側との間に漏出防止材45を配置しておくことで、第一型枠部32の内側と継手管4の補強部11の上端部の外側との僅かな隙間からコンクリートが漏出することを漏出防止材45によって防止できる。そのため、成形されたコンクリート部3にジャンカなどの成形不良が生じにくく、十分な強度のコンクリート部3を製造できる。
【0052】
この場合、
図5に示されるように、漏出防止材45の厚みに応じて、コンクリート部3の突出部9の外周面が、補強部11(第二部分14)の外周面よりも径方向に突出した段差部47が生じることがある。段差部47は、外周段差部17の最大外径寸法より小さい。また、段差部47は、下側に位置する補強部11(第二部分14)の外径寸法が上側に位置するコンクリート部3の外径寸法より小さい、つまり下方に向く面を有するため、雨水が溜まることがなく、雨水による継手管4の腐食を生じることなどに起因する経時的な強度低下が生じることがない。
【符号の説明】
【0053】
1 上柱
3 コンクリート部
4 継手管
5 座板
6 緊張材
8 一体部
9 突出部
10 本体部
11 補強部
19 面取り部
30 上柱成形用型枠
32 第一型枠部
33 第二型枠部
34 第三型枠部
36 型枠開口部
40 緩衝材
45 漏出防止材