(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】チップ分散軟質ポリウレタンフォームとその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20240725BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20240725BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20240725BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/08 038
C08L75/04
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2022070707
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2017229856の分割
【原出願日】2017-11-30
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 真和
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 忠史
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-261640(JP,A)
【文献】特開2001-064343(JP,A)
【文献】特開2005-320419(JP,A)
【文献】特開平09-302060(JP,A)
【文献】特開昭58-127721(JP,A)
【文献】特開2011-079144(JP,A)
【文献】特開2011-239687(JP,A)
【文献】特開昭58-167627(JP,A)
【文献】特開2003-236873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08L
C08J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質ポリウレタンフォーム内にチップが分散したチップ分散軟質ポリウレタンフォームにおいて、
前記チップは、
粒子径が0.8~5.0mmであり、セル数が30~200個/25mm、硬さが前記軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物であることを特徴とするチップ分散軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
セル数が30~50個/25mmの軟質ポリウレタンフォーム内にチップが分散したチップ分散軟質ポリウレタンフォームにおいて、
前記チップは、粒子径が0.8~5.0mmであり、セル数が30~200個/25mm、硬さが前記軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物であることを特徴とするチップ分散軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、チップを配合したチップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物を発泡させることにより、軟質ポリウレタンフォーム内に前記チップを分散させたチップ分散軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記チップは、
粒子径が0.8~5.0mmであり、セル数が30~200個/25mm、硬さが前記軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物であることを特徴とするチップ分散軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、チップを配合したチップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物を発泡させることにより、セル数が30~50個/25mmの軟質ポリウレタンフォーム内に前記チップを分散させたチップ分散軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、
前記チップは、粒子径が0.8~5.0mmであり、セル数が30~200個/25mm、硬さが前記軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物であることを特徴とするチップ分散軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項5】
前記チップの配合量は、前記ポリオール100重量部に対して5~50重量部であることを特徴とする請求項
3または
4に記載のチップ分散軟質ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧縮時にも良好な通気性を有し、蒸れ難いチップ分散軟質ポリウレタンフォームとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、添加剤が配合されたポリウレタンフォーム組成物から得られる軟質ポリウレタンフォームは、寝具、衣料、車両の内装材等のクッション材やパッド材等として多用されている。
軟質ポリウレタンフォームは、マットレスのように使用時に圧縮される用途においては、高圧縮されるとポリウレタンフォームのセルが潰されて通気性が無くなり、蒸れ易くなってかびが発生し易くなる。
【0003】
なお、冷たい感触が得られるポリウレタンフォームとして、オルガノゲルを分散させたポリウレタンフォーム(特許文献1)、あるいは潜熱蓄熱剤が内包されたマイクロカプセルを配合した蓄熱性軟質低反発性ポリウレタンフォームがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5898626号公報
【文献】特開2001-288240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オルガノゲルや潜熱蓄熱剤が内包されたマイクロカプセルは、それ自体に通気性が無いため、ポリウレタンフォームは高圧縮された際の通気性が乏しく、蒸れ防止効果が低かった。
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、高圧縮時にも通気性が高く、蒸れ難いチップ分散ポリウレタンフォームとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、軟質ポリウレタンフォーム内にチップが分散したチップ分散軟質ポリウレタンフォームにおいて、前記チップは、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物からなることを特徴とする。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記チップの粒子径は、0.5~5mmであることを特徴とする。
【0009】
第3の態様は、第1または第2の態様において、前記チップのセル数は、30~200個/25mmであることを特徴とする。
【0010】
第4の態様は、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒、チップを配合したチップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物を発泡させることにより、軟質ポリウレタンフォーム内に前記チップを分散させたチップ分散軟質ポリウレタンフォームを製造する方法において、前記チップは前記チップ分散軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物からなることを特徴とする。
【0011】
第5の態様は、第4の態様において、前記チップの粒子径は、0.5~5mmであることを特徴とする。
【0012】
第6の態様は、第4または第5の態様において、前記チップのセル数は、30~200個/25mmであることを特徴とする。
【0013】
第7の態様は、第4から第6の何れか一態様において、前記チップの配合量は、前記ポリオール100重量部に対して5~50重量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のチップ分散軟質ポリレウレタンフォームによれば、軟質ポリウレタンフォーム内に分散しているチップは、チップ分散軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物からなるため、軟質ポリウレタンフォームの部分よりも硬く、かつ通気性を有するものである。そのため、前記チップが分散した軟質ポリウレタンフォームの高圧縮時に、前記チップによって軟質ポリウレタンフォームのセルが完全に潰れるのを防ぎ、かつチップの通気性によって高圧縮状態での通気性が確保され、蒸れを防止することができる。
【0015】
また、チップの粒子径を0.5~5mmとすれば、チップ分散軟質ポリウレタンフォームの高圧縮時に、セルが潰れるのをより効果的に防ぎ、通気性を確保することができる。
チップのセル数を、30~200個/25mmとすれば、チップ自体のセルが大きくなって通気性が高くなるため、チップ分散軟質ポリウレタンフォームの高圧縮時に、通気性をより効果的に高めることができる。
【0016】
また、本発明のチップ分散軟質ポリウレタンフォームの製造方法によれば、高圧縮状態での通気性を有し、かつ蒸れ難いチップ分散軟質ポリウレタンフォームを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明のチップ分散軟質ポリウレタンフォームの断面概略図である。
【
図2】実施例及び比較例の配合と物性測定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように本発明のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム10は、軟質ポリウレタンフォーム11内にチップ21が分散した構造からなる。
【0019】
前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10は、マットレス用の場合、チップ21を含む全体の硬さ(JIS K6400)が20~200N、密度(JIS K6400)が20~80kg/m3、セル数(JIS K6400)30~50個/25mm、密度(JIS K6400)16~70kg/m3であるのが好ましい。
【0020】
前記軟質ポリウレタンフォーム11は、前記チップ21を含有しないことを除いて他の成分(配合)を前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10と等しくして軟質ポリウレタンフォーム(チップ無し)を製造した場合の硬さ(JIS K6400)が20~200N、セル数(JIS K6400)が30~50個/25mm、密度(JIS K6400)が16~70kg/m3の範囲になるものが好ましい。
【0021】
前記チップ21は、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物からなり、前記チップ21自体が、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さよりも硬いものからなる。なお、チップを除いた同一配合の組成物を発泡させたものと比べると、前記チップ21が存在しない軟質ポリウレタンフォームの硬さより、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォームのほうが、やや硬いものとなる。前記チップ21は、このチップ分散軟質ポリウレタンフォーム10よりもさらに硬いものを使用する。
前記除膜した軟質ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォームのセル膜が除去されたものであり、セル骨格のみで構成された三次元網状構造からなり、チップ21自体がセル膜の無い三次元網状構造からなる。
【0022】
前記チップ21を、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さよりも硬くすると共にセル膜の無い三次元網状構造とすることで、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の高圧縮時における前記軟質ポリウレタンフォーム11のセルの潰れを防いで通気性を確保し、蒸れを防止する効果が得られる。
【0023】
軟質ポリウレタンフォームのセル膜除去は、公知のセル除膜処理方法によって行うことができる。セル膜除去処理方法としては、軟質ポリウレタンフォームをアルカリ溶液に浸漬してセル膜を溶融する方法や、密閉容器に軟質ポリウレタンフォームを収容し、酸素等の可燃ガスを密閉容器に充填した後に点火することにより爆発させてセル膜を破壊する方法等がある。除膜する軟質ポリウレタンフォームとしては、大気圧下、常温で発泡させるスラブ発泡で形成されたスラブポリウレタンフォームが好ましく、ポリエーテルタイプあるいはポリエステルタイプの何れのタイプでもよい。
【0024】
前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの硬さ、すなわち前記チップ21の硬さは、高すぎる(硬すぎる)と、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10のクッション性が損なわれるため、JIS K6400の硬度が500N以下が好ましく、より好ましくは100~300Nである。
【0025】
前記チップ21を構成する除膜した軟質ポリウレタンフォームのセル数、すなわち前記チップ21のセル数は、セル数が多いと通気性が低くなり、一方セル数が少ないと強度が低下する傾向があるため、好ましくは30~200個/25mmである。
【0026】
前記チップ21の粒子径は、小すぎると前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の高圧縮時にチップ21によるセルの潰れ防止効果及び通気性確保の効果が小さくなり、逆に大すぎると前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10のクッション性が損なわれるようになる。前記チップ21の好ましい粒子径は0.5~5.0mmであり、より好ましい粒子径は0.8~3.0mmである。
【0027】
前記チップ21の粒子径と前記チップ21のセル径(セルサイズ)の関係は、前記チップ21の粒子径がセル径(セルサイズ)よりも大であるのが好ましい。前記チップ21の粒子径21がセル径(セルサイズ)よりも小であると、前記チップ21が、セルの骨格の一部で構成され、三次元網状構造になっていない部分(1つのセル構造に満たない部分)で構成されるようになり、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の高圧縮維持にチップ21によるセルの潰れ防止効果が少なくなる。より好ましい前記チップ21の粒子径は、前記チップ21のセル径(セルサイズ)の1.3~17倍である。前記チップ21のセル径(セルサイズ)は、チップ21を構成する除膜した軟質ポリウレタンフォームのセル径(セルサイズ)である。なお、セル径(セルサイズ)は、セル数を用いて次の式で算出することができる。
セル径(セルサイズ)=[25mm/セル数の値(個/25mm)]
【0028】
前記チップ21の量は、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の全体重量に対して3~60重量%が好ましく、より好適には5~50重量%が好ましい。前記チップ21の量が少なすぎると、前記チップ21による効果が少なくなる一方、多すぎると前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10が重くなると共にクッション性が低下するようになる。
【0029】
前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10は、ポリオール、イソシアネート、発泡剤、触媒及びチップを配合したチップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物から、ポリオールとイソシアネートの反応により得られる。
【0030】
ポリオールとしては、軟質ポリウレタンフォーム用のポリオールを使用することができ、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れでもよく、それらの一種類あるいは複数種類を使用してもよい。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコールにエチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0032】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。
また、ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0033】
ポリオールについては、水酸基価(OHV)が20~300mgKOH/g、官能基数が2~6、重量平均分子量が500~15,000であるポリオールを単独または複数用いることが好ましい。
【0034】
イソシアネートとしては、イソシアネート基を2以上有する脂肪族系または芳香族系ポリイソシアネート、それらの混合物、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートを使用することができる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキサメタンジイソシアネート等を挙げることができ、芳香族ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメリックMDI(クルードMDI)等を挙げることができる。なお、その他プレポリマーも使用することができる。
【0035】
イソシアネートインデックス(INDEX)は、70以上が好ましく、より好ましくは80~115である。イソシアネートインデックスは、イソシアネートにおけるイソシアネート基のモル数をポリオールの水酸基などの活性水素基の合計モル数で割った値に100を掛けた値であり、[イソシアネートのNCO当量/活性水素当量×100]で計算される。
【0036】
発泡剤としては、水、代替フロンあるいはペンタンなどの炭化水素を、単独または組み合わせて使用できる。水の場合は、ポリオールとイソシアネートの反応時に炭酸ガスを発生し、その炭酸ガスによって発泡がなされる。発泡剤としての水の量は、ポリオール100重量部に対して1.0~5.5重量部が好ましい。
【0037】
触媒としては、公知のウレタン化触媒を併用することができる。例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン触媒や、スタナスオクトエートやジブチルチンジラウレート等のスズ触媒やフェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の金属触媒(有機金属触媒とも称される。)を挙げることができ、アミン触媒と金属触媒の何れか一方のみ、あるいは両者の併用でもよい。アミン触媒の量は、ポリオール100重量部に対して0.01~3重量部が好ましい。金属触媒の量は、0又は0.01~1重量部が好ましい。
【0038】
チップは、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物からなり、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10で説明したチップ21である。
なお、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さは、前記チップを含有しないことを除いて、他の成分(配合)を前記チップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物と等しくして製造した軟質ポリウレタンフォーム(チップ無し)の硬さと同等乃至より硬い。また、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の硬さは、前記軟質ポリウレタンフォーム(チップ無し)の硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームの硬さよりも柔らかくなる。
従って、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10の製造に際して使用するチップは、予め前記チップを含有しないことを除いて他の成分(配合)を前記チップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物と等しくして軟質ポリウレタンフォーム(チップ無し)を製造し、得られた軟質ポリウレタンフォーム(チップ無し)の硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームから粉砕したチップを使用することができる。
【0039】
前記チップの配合量は、前記ポリオール100重量部に対して5~50重量部が好ましい。チップの量が少なすぎると前記チップによる効果が小さくなる一方、多すぎると発泡不良を生じ易くなる。また、前記配合量とすることにより、前記チップ分散軟質ポリウレタンフォーム10における前記チップ21の量を好ましい範囲にすることができる。なお、前記チップ21と共にグラフェン等の熱伝導剤などを配合してもよい。
【0040】
また、前記チップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物には、その他の助剤等を加えてもよい。例えば、整泡剤、着色剤等を上げることができる。整泡剤としては、軟質ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、含フッ素化合物系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。着色剤は、チップ分散軟質ポリウレタンフォームの用途等に応じたものを使用できる。
【0041】
前記チップ分散軟質ポリウレタンフォームの製造における発泡は、スラブ発泡が好ましい。スラブ発泡は、チップ配合軟質ポリウレタンフォーム組成物(チップ配合ポリウレタンフォーム原料)を混合させてベルトコンベア上に吐出し、大気圧下、常温で発泡させる方法である。
【実施例】
【0042】
以下の成分を
図2に示す配合で混合し、反応・発泡させて各実施例のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム及び各比較例のチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームを作製した。
・ポリオールA;ポリエーテルポリオール、分子量:700、官能基数3、水酸基価225mgKOH/g、品番:G-700、旭電化工業社製
・ポリオールB;ポリエーテルポリオール、Mw3000、官能基数3、水酸基価56mgKOH/g、品番:GP3050NS、三洋化成工業株式会社製
・発泡剤;水
・アミン触媒;品番:33LV、エアプロダクツ株式会社製
・金属触媒;オクチル酸第一錫、品番:MRH110、城北化学工業株式会社製
・整泡剤;シリコーン系整泡剤、品番:F-650、信越化学工業株式会社製
・ゲル;GL-5000 Peterson社製 成分SEBS(水添スチレン・ブタジエンブロック共重合物、CAS NO 66070-58-4)
・グラフェン;品番:HC-95、Paterson社製
・PCM(潜熱蓄熱剤); 品番:PCM-280 Peterson社製 成分メラミン系PCM(潜熱蓄熱剤)
・チップ小;粒子径0.5mm、除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物、硬さ(JIS K6400):220N、セル数(JIS K6400):80個/25mm、セル径:0.3mm、密度(JIS K6400)75kg/m
3
・チップ中;粒子径2mm、除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物、硬さ(JIS K6400):220N、セル数(JIS K6400):80個/25mm、セル径:0.3mm、密度(JIS K6400)75kg/m
3
・チップ大;粒子径5mm、除膜した軟質ポリウレタンフォームの粉砕物、硬さ(JIS K6400):220N、セル数(JIS K6400):80個/25mm、セル径:0.3mm、密度(JIS K6400)75kg/m
3)
・イソシアネート;T-65、2,4-TDI/2,6-TDI=65/35
【0043】
なお、実施例1~7のチップ分散軟質ポリウレタンフォームの配合においてチップが存在しない軟質ポリウレタンフォーム(比較例1)を初めに製造し、得られた軟質ポリウレタンフォーム(比較例1)の硬さを測定し、その硬さよりも硬い除膜した軟質ポリウレタンフォームを粉砕して得たチップを使用した。
【0044】
実施例1は、ポリオールAを40重量部、ポリオールBを60重量部、発泡剤(水)を2.4重量部、アミン触媒を0.07重量部、金属触媒を0.2重量部、整泡剤を1重量部、チップ中を5重量部、イソシアネートを46重量部とした例である。
【0045】
また、実施例1のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体については、密度(JIS K6400)、硬さ(JIS K6400)、反発性(JIS K6400)、通気性(JIS K6400)について測定した。測定結果は、
図2に示すように、密度40.1kg/m
3、硬さ44N、反発性4%、通気性41L/minであり、通気性の評価が「〇」であった。なお、通気性の評価は、非圧縮時の通気性の評価であり、通気性の値が0~20未満L/minの場合に不良「×」、20~40未満L/minの場合に許容「△」、40~60未満L/minの場合に良「〇」、60L/min以上の場合に最良「◎」とした。
【0046】
さらに、実施例1のチップ分散軟質ポリウレタンフォームから、外径80mm、内径60mm、高さ15mmの環状試験体を打ち抜きにより作製し、次のようにしてエアー漏れ試験を行った。エアー漏れ試験は圧縮時における通気性(蒸れ防止)を評価するための試験であり、圧縮時の通気量が高いほど通気性が大(良好)で蒸れ難くなる。
【0047】
エアー漏れ試験では、
図3に示すように、120×120×厚み10mmのプラスチック製の下板51と、中央に貫通穴55が形成されたプラスチック製の上板53との間に環状試験体Sを挟み、送風機によって送風可能にされた送風管61の先端61aを上板53の貫通穴55に接続し、環状試験体Sの内部中心に送風可能にする。送風管61は、プラスチック製の直径8mmのパイプからなり、貫通穴55に接続した部分については送風管61の周囲から空気が漏れないようにシールする。また、送風管61には送風機と送風管の先端61aとの間に流量計が接続され、また送風機と流量計との間には第1圧力計P1が接続され、さらに流量計と送風管の先端61aとの間に第2圧力計P2が接続されている。そして、下板51と上板53とによって環状試験体Sを中圧縮(70%圧縮(元の厚みに対して30%の厚みに圧縮))した状態と、高圧縮(90%圧縮(元の厚みに対して10%の厚みに圧縮))した状態とし、それぞれの圧縮状態において、送風機から環状試験体Sの内部中心に圧力392kPaで1分間送風し、圧縮状態の環状試験体Sから漏出する空気の量を流量計で測定する。その際、第1圧力計P1は、第2圧力計P2より高圧で、50kPaである。
【0048】
実施例1におけるエアー漏れ試験結果は、中圧縮時(70%圧縮)が22L/min、中圧縮時の評価「〇」、高圧縮時(90%圧縮)が0.4L/min、高圧縮時の評価「〇」であった。エアー漏れ試験における中圧縮時の評価は、通気性の値が0~20未満L/minの場合に不可「×」、20~40未満L/minの場合に良「〇」、40L/min以上の場合に最良「◎」とした。高圧縮時の評価は、通気性の値が0~0.3未満L/minの場合に不可「×」、0.3~0.8未満L/minの場合に良「〇」、0.8L/min以上の場合に最良「◎」とした。
また、実施例1は、通気性及びエアー漏れ試験を考慮した総合評価が「〇」であり、非圧縮時と中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が何れも良好であった。
なお、総合評価は、非圧縮時の通気性(蒸れ難さ)及び高圧縮時の通気性(蒸れ難さ)の評価であり、通気性及びエアー漏れ試験の評価に1つでも「×」が存在する場合に総合評価を「×」とし、通気性及びエアー漏れ試験の評価に「×」が無く、かつ全て「◎」ではない場合に総合評価を「〇」とし、通気性及びエアー漏れ試験の評価が全て「◎」の場合に総合評価を「◎」にした。
【0049】
実施例2は、チップ中を20重量部とし、他を実施例1と同様にした例であり、実施例1と同様にして各物性値を測定した。
実施例2のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体は、密度40kg/m3、セル数39個/25mm、硬さ46N、反発性4%、通気性47L/min、通気性の評価「〇」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)36L/min、中圧縮時の評価「〇」、高圧縮時(90%圧縮)0.6L/min、高圧縮時の評価「〇」、総合評価「〇」であり、非圧縮時と中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が何れも良好であった。
【0050】
実施例3は、チップ中を50重量部とし、他を実施例1と同様にした例であり、実施例1と同様にして各物性値を測定した。
実施例3のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体は、密度41.4kg/m3、セル数40個/25mm、硬さ52N、反発性5%、通気性63L/min、通気性の評価「◎」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)47L/min、中圧縮時の評価「◎」、高圧縮時(90%圧縮)1.2L/min、高圧縮時の評価「◎」、総合評価「◎」であり、非圧縮時と中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が何れも最良であった。
【0051】
実施例4は、チップ小を20重量部とし、他を実施例1と同様にした例であり、実施例1と同様にして各物性値を測定した。
実施例4のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体は、密度40.6kg/m3、セル数39個/25mm、硬さ45N、反発性4%、通気性45L/min、通気性の評価「〇」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)31L/min、中圧縮時の評価「〇」、高圧縮時(90%圧縮)0.5L/min、高圧縮時の評価「〇」、総合評価「〇」であり、非圧縮時と中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が何れも良好であった。
【0052】
実施例5は、チップ大を20重量部とし、他を実施例1と同様にした例であり、実施例1と同様にして各物性値を測定した。
実施例5のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体は、密度39.9kg/m3、セル数41個/25mm、硬さ51N、反発性5%、通気性39L/min、通気性の評価「△」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)25L/min、中圧縮時の評価「〇」、高圧縮時(90%圧縮)0.3L/min、高圧縮時の評価「〇」、総合評価「〇」であり、非圧縮時と中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が許容または良好であった。
【0053】
実施例6は、実施例1の配合において、グラフェンの10重量部とPCMの10重量部を更に配合し、かつチップ中を20重量部とし、他を実施例1と同様にした例であり、実施例1と同様にして各物性値を測定した。
実施例6のチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体は、密度41.4kg/m3、セル数40個/25mm、硬さ52N、反発性4%、通気性42L/min、通気性の評価「〇」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)34L/min、中圧縮時の評価「〇」、高圧縮時(90%圧縮)0.5L/min、高圧縮時の評価「〇」、総合評価「〇」であり、非圧縮時と中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が何れも良好であった。
【0054】
比較例1は、実施例1におけるチップの量を0重量部として得られたチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームの例である。比較例1のチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームについて、実施例1におけるチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体と同様にして物性値を測定し、またセル数についても測定した。
比較例1のチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームは、密度39.8kg/m3、セル数42個/25mm、硬さ45N、反発性4%、通気性33L/min、通気性の評価「△」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)6L/min、中圧縮時の評価「×」、高圧縮時(90%圧縮)0.2未満L/min、高圧縮時の評価「×」、総合評価「×」であり、中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)が劣っていた。
【0055】
比較例2は、実施例1におけるチップに代えてゲル30重量部、グラフェン10重量部、PCM10重量部を配合して得られたチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームの例である。比較例2のチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームについて、実施例1におけるチップ分散軟質ポリウレタンフォーム全体と同様にして物性値を測定し、またセル数についても測定した。
比較例2のチップが分散していない軟質ポリウレタンフォームは、密度41.2kg/m3、セル数40個/25mm、硬さ50N、反発性4%、通気性29L/min、通気性の評価「△」、エアー漏れ試験の中圧縮時(70%圧縮)7L/min、中圧縮時の評価「×」、高圧縮時(90%圧縮)0.2未満L/min、高圧縮時の評価「×」、総合評価「×」であり、中圧縮時及び高圧縮時における通気性(蒸れ難さ)に劣っていた。
【0056】
このように、本発明のチップ分散軟質ポリウレタンフォームは、高圧縮時にも通気性が高く、蒸れ難いものであり、使用時に圧縮されるマットレスや枕などの寝具に好適である。