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特許7526757生分解性ポリエステル樹脂、その製造方法、およびそれを含む生分解性ポリエステル成形品
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  • 特許-生分解性ポリエステル樹脂、その製造方法、およびそれを含む生分解性ポリエステル成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】生分解性ポリエステル樹脂、その製造方法、およびそれを含む生分解性ポリエステル成形品
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/183 20060101AFI20240725BHJP
   C08G 63/78 20060101ALI20240725BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C08G63/183
C08G63/78
C08L101/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022085614
(22)【出願日】2022-05-25
(65)【公開番号】P2022181209
(43)【公開日】2022-12-07
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067191
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522066333
【氏名又は名称】エスケー リーヴィオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK leaveo Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu, Suwon-si, Gyeonggi-do 16338, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、キョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンドン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョンモ
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-176783(JP,A)
【文献】特表2020-528466(JP,A)
【文献】特開2000-001533(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103483522(CN,A)
【文献】特開2021-188038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/183
C08G 63/78
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、
第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位と、を含む生分解性ポリエステル樹脂であって、
前記第1ジオール残基および前記第2ジオール残基はそれぞれ、1,4―ブタンジオール、またはその誘導体の残基であり、
前記芳香族ジカルボン酸残基は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、またはその誘導体の残基であり、
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、アジピン酸、またはその誘導体の残基であり、
前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、
前記第1繰り返し単位の数(X)は、150~900であり、
前記第2繰り返し単位の数(Y)は、150~600であり、
下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル樹脂:
[式1]
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッド(head)で打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度(hardness)である。
【請求項2】
前記第1繰り返し単位の数が、前記第2繰り返し単位の数と同じか、または第1繰り返し単位の数がより多い、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、下記式2で表示される熱収縮率(TS50)が30%以下である、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂:
[式2]
前記式2において、
25は、25℃にて生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の初期長さであり、
50は、50℃の熱風機で5分間滞留した後の生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の長さである。
【請求項4】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、下記式3で表示される熱変形指数(TD50)が0.15以下である、請求項3に記載の生分解性ポリエステル樹脂:
[式3]
前記式3において、
TS50およびISIは前記で定義した通りである。
【請求項5】
前記IAは6KJ/m以上であり、
前記H3Tは32ショアD以上である、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂。
【請求項6】
前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートは、動的粘弾性測定において240℃および振動数5rad/sで測定した貯蔵弾性率(storage modulus)が200000dyne/cm~400000dyne/cmであり、損失弾性率(loss modulus)が220000dyne/cm~450000dyne/cmである、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂。
【請求項7】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、下記式5で表示される水分解度減少率が50%以上である、請求項1に記載の生分解性ポリエステル樹脂:
[式5]
前記式5において、
MnおよびMnは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートを水に浸漬してコンベクション(熱風)オーブン80℃にて水分解加速化を行った後、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した前記生分解性ポリエステルシートの数平均分子量であって、
Mnは、前記生分解性ポリエステルシートの初期数平均分子量であり、
Mnは、水分解加速化実施3ヶ月後の前記生分解性ポリエステルシートの数平均分子量である。
【請求項8】
ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理してスラリーを得る第1段階と、
前記スラリーと脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物、または、前記スラリーをエステル化反応させた反応生成物と脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物を用いて、少なくとも1回以上エステル化反応してプレポリマーを得る第2段階と、
前記プレポリマーを縮重合反応させる第3段階と、を含み、
第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、
第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位と、を含む生分解性ポリエステル樹脂であって、
前記第1ジオール残基および前記第2ジオール残基はそれぞれ、1,4―ブタンジオール、またはその誘導体の残基であり、
前記芳香族ジカルボン酸残基は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、またはその誘導体の残基であり、
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、アジピン酸、またはその誘導体の残基であり、
前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、
前記第1繰り返し単位の数(X)は、150~900であり、
前記第2繰り返し単位の数(Y)は、150~600であり、
下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル樹脂の製造方法:
[式1]
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度である。
【請求項9】
生分解性ポリエステル樹脂を含み、
前記生分解性ポリエステル樹脂は、
第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、
第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位と、を含む生分解性ポリエステル樹脂であって、
前記第1ジオール残基および前記第2ジオール残基はそれぞれ、1,4―ブタンジオール、またはその誘導体の残基であり、
前記芳香族ジカルボン酸残基は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、またはその誘導体の残基であり、
前記脂肪族ジカルボン酸残基は、アジピン酸、またはその誘導体の残基であり、
前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、
前記第1繰り返し単位の数(X)は、150~900であり、
前記第2繰り返し単位の数(Y)は、150~600であり、
下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル成形品:
[式1]
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリエステル樹脂、その製造方法、およびそれを含む生分解性ポリエステル成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する懸念が高まるにつれ、様々な生活用品、特に使い捨て製品の処理問題に対する解決策が求められている。具体的に、高分子材料は安価でありながら加工性などの特性に優れ、フィルム、繊維、包装材、ボトル、容器などの多様な製品を製造するために広く利用されているが、使用済みの製品が寿命となったとき、焼却処理の際には有害物質が排出され、自然的に完全に分解されるためには、種類によっては数百年がかかると言う欠点を有している。
【0003】
このような高分子の限界を克服するために、短時間で分解される生分解性高分子に関する研究が盛んに行われている。生分解性高分子としてポリ乳酸(poly lactic acid、PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutyleneadipate terephthalate、PBAT)、ポリブチレンサクシネート(polybutylene succinate、PBS)などが使用されているが、このような生分解性高分子は、柔軟性に優れ容易に伸びる性質はあるが、実際に完成品として使用する際には耐衝撃性が弱く、破れたり弾けたりする問題が発生し得る。また、硬度特性が劣って射出品など多様な用途(application)拡張が難しく、その用途が制限的である。
【0004】
このような限界を克服しようと、衝撃強度改善剤または相溶化剤などの添加剤を添加する方法が用いられたが、その場合は、生分解性に悪影響を与え微細プラスチック問題を引き起こすと言う問題点がある。
【0005】
従って、生分解が可能でありながら、耐衝撃性および耐久性を改善して、様々な用途拡張が可能な高分子樹脂の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開第2012―0103158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、衝撃吸収エネルギーおよび硬度等の優れた物性、並びに優れた耐衝撃性および耐久性を有するポリエステル樹脂、およびその製造方法を提供することである。
【0008】
さらには、本発明の他の目的は、前記ポリエステル樹脂を用いて前記優れた物性を実現するとともに、生分解性および水分解性にも優れた、環境にやさしい生分解性ポリエステル成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル樹脂を提供する。
【0010】
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッド(head)で打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度(hardness)である。
【0011】
また、本発明は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理してスラリーを得る第1段階と、前記スラリーと脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物、または、前記スラリーをエステル化反応させた反応生成物と脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物を用いて、少なくとも1回以上エステル化反応してプレポリマーを得る第2段階と、前記プレポリマーを縮重合反応させる第3段階とを含み、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、前記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である生分解性ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、生分解性ポリエステル樹脂を含み、前記生分解性ポリエステル樹脂は、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、前記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル成形品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施例による生分解性ポリエステル樹脂は、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とが、特定範囲の繰り返し単位の数の比を有し、樹脂の衝撃強度指数が特定範囲以上を満足することにより、前記生分解性ポリエステル樹脂は、従来に使用されていた生分解性樹脂に比べ、衝撃吸収エネルギーおよび硬度をより向上させ得る。
【0014】
さらには、前記生分解性ポリエステル樹脂は、生分解が可能でありながらも、耐衝撃性、耐久性および成形性に優れた生分解性ポリエステルシート、フィルムおよび成形品を提供し得るので、射出品、3Dフィラメントおよび建築用内装材などの耐久性を要する多様な分野に活用され、優れた特性を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実現例による生分解性ポリエステル樹脂を調製する方法を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明についてより具体的に説明する。
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
また、本明細書に記載された構成要素の物性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0018】
本明細書において、第1、第2、1次、2次などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用されるものであり、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的にのみ使用される。
【0019】
本発明による一実現例において、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル樹脂を提供する。
【0020】
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度である。
【0021】
一般に、生分解性ポリエステル樹脂、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(polybutyleneadipate terephthalate、PBAT)系の樹脂は、柔軟性は優れているものの、耐衝撃性が弱いため破れたり弾けたりしやすく、剛性(stiffness)が弱いため、その用途が非常に制限的であった。しかしながら、射出品のような成形品等の多様な活用が可能となるためには、適切な生分解も可能でありながら、耐衝撃性および耐久性を向上させることが極めて重要である。
【0022】
そのためには、強度などの物性だけでなく、衝撃吸収エネルギー、硬度、および熱収縮率などの物性を適正レベルで実現することが必要である。また、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いて生分解性ポリエステルフィルムおよび射出品のような成形品など多様な活用のためには、インフレーションフィルム工程の際、バブル形成が良くでき、巻き取り(winding)の際にフィルム表面同士の融着のないことはもちろん、さらには190℃以上の高温の射出成形の際、モールド(mold)の表面に融着しないとともに、収縮などの変形を最小化することが必要である。
【0023】
したがって、生分解性ポリエステル樹脂の前記特性を実現するためには、生分解性ポリエステル樹脂の構造、衝撃強度、衝撃吸収エネルギー、硬度、および熱変形性などを制御することが非常に重要である。
【0024】
本発明の一実現例においては、生分解性ポリエステル樹脂が第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含み、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)を特定範囲に調整すると同時に、樹脂の衝撃強度指数を特定範囲に制御することにより、衝撃吸収エネルギーおよび硬度をより向上させることができ、低い熱収縮率、並びに優れた耐衝撃性、耐久性および成形性を有しながらも、最終的に生分解も可能な生分解性ポリエステルシートまたはフィルムを提供することができる。
【0025】
さらには、前記生分解性ポリエステル樹脂は、前記特性を有するシートまたはフィルムだけでなく、成形品、例えば射出品(使い捨て)、3Dフィラメント、建築用内装材などへの適用まで拡張可能であることに技術的意義がある。
以下、生分解性ポリエステル樹脂についてより詳細に説明する。
【0026】
[生分解性ポリエステル樹脂]
本発明の一実現例による生分解性ポリエステル樹脂は、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む。
【0027】
前記第1ジオール残基および前記第2ジオール残基はそれぞれ、1,4―ブタンジオール、1,2―エタンジオール、1,3―プロパンジオール、またはその誘導体の残基を含み、前記芳香族ジカルボン酸残基は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレート、またはその誘導体の残基を含み、前記脂肪族ジカルボン酸残基は、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、またはその誘導体の残基を含む。
【0028】
前記構造を有する生分解性ポリエステル樹脂は、これにより製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の生分解性、水分解性および機械的物性などを向上させ得る。
【0029】
前記ジオール残基は、1,4―ブタンジオール、1,2―エタンジオール、1,3―プロパンジオール、またはその誘導体の残基を含み、具体的に1,4―ブタンジオール、1,2―エタンジオールまたはその誘導体の残基を含み、より具体的に、1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基を含み得る。例えば、前記ジオールが1,4―ブタンジオールを含む場合、生分解性ポリエステル樹脂、またはそれを用いて得られた生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の生分解性、水分解性および機械的物性の向上にさらに有利であり得る。
【0030】
また、前記芳香族ジカルボン酸および前記脂肪族ジカルボン酸がそれぞれ前記成分を含む場合、本発明の調製工程によりジオール成分とより均一に反応することができ、反応効率性を高め得るので、前記物性を有する生分解性ポリエステル樹脂を調製するのにさらに有利であり得る。
【0031】
具体的に、前記第1ジオール残基および前記第2ジオール残基はそれぞれ、1,4―ブタンジオール、またはその誘導体の残基を含み、前記芳香族ジカルボン酸残基はテレフタル酸、またはその誘導体の残基を含み、前記脂肪族ジカルボン酸残基はアジピン酸、コハク酸、またはその誘導体の残基を含み得る。
【0032】
例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂は、1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基と、テレフタル酸またはその誘導体の残基とを含む第1繰り返し単位を含み得る。
【0033】
または、前記生分解性ポリエステル樹脂は、1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基と、ジメチルテレフタレートまたはその誘導体の残基とを含む第1繰り返し単位を含み得る。
【0034】
前記生分解性ポリエステル樹脂は、1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基と、アジピン酸またはその誘導体の残基とを含む第2繰り返し単位を含み得る。
【0035】
または、前記生分解性ポリエステル樹脂は、1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基と、コハク酸またはその誘導体の残基とを含む第2繰り返し単位を含み得る。
【0036】
本発明の実現例による生分解性ポリエステル樹脂は、1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基と、テレフタル酸またはその誘導体の残基とを含む第1繰り返し単位;および1,4―ブタンジオールまたはその誘導体の残基と、アジピン酸またはその誘導体の残基とを含む第2繰り返し単位;を含み得る。
【0037】
前記第1繰り返し単位および第2繰り返し単位が前記構成を満足すると、生分解性および水分解性に優れながらも、物性が向上した生分解性ポリエステルシート、フィルム、または成形品を提供するのにより有利であり得る。
【0038】
一方、前記生分解性ポリエステル樹脂が、生分解が可能でありながらも優れた耐衝撃性および耐久性を提供するとともに、インフレーション成形性および高温における射出成形性に優れ、熱収縮などの形状変形を最小化し得るシート、フィルムまたは成形品を提供するためには、生分解性ポリエステル樹脂を構成する前記繰り返し単位の数を調整することが非常に重要である。
【0039】
本発明の実現例によると、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)は0.8~3.0であり得る。具体的に、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)は、0.82~3.0、0.83~3.0、0.9~2.8、0.9~2.5、0.9~2.4、1.0~2.4、1.1~2.4、1.3~2.4、または1.4~2.4であり得る。
【0040】
前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が前記範囲の未満であると、衝撃吸収エネルギーおよび硬度が減少し、熱収縮率が過剰に増加し得る。特に、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いるインフレーションフィルム工程の際、バブル形状がきちんと揃われなかったり、または片方に伸びて偏ったり、バブルが弾ける等、インフレーション成形性が悪くなるか、または、射出成形の際に生分解性ポリエステル樹脂、シートまたはフィルムが、射出機のモールド表面に融着して、脱着し難くなるか、または収縮などの形状変形が生じ得る。
【0041】
具体的に、前記第1繰り返し単位の数は、150~900、180~900、200~900、300~900、360~900、380~800、400~800、410~780、420~750、または420~740であり得る。
【0042】
前記第2繰り返し単位の数は、150~600、180~550、200~500、220~490、230~490、250~460、280~440、または300~430であり得る。
【0043】
前記第1繰り返し単位の数および前記第2繰り返し単位の数が、それぞれ前記範囲を満足すると、生分解性ポリエステル樹脂またはそれを用いて製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の耐衝撃性および耐久性等の物性を向上させることができ、熱収縮率を低減することができ、インフレーションフィルム工程時または射出成形時に工程性を向上させ、融着または形状変形等を最小化し得る。
【0044】
特に、前記第2繰り返し単位の数を前記範囲に制御すると、生分解性ポリエステル樹脂、またはそれを用いて得られた生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品がさらに頑丈な(tough)ものとなり、強度と伸び率とが複合的に向上することにより、目的とする衝撃吸収エネルギーおよび硬度を達成し得る。
【0045】
本発明の一実現例によると、前記第1繰り返し単位の数が前記第2繰り返し単位の数と同一であるか、または第1繰り返し単位の数がより多くて良い。この場合、本発明において目的とする効果を達成するのにさらに有利であり得る。
【0046】
具体的に、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む前記第2繰り返し単位の数が多いほど、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いたシートの伸び率は上昇し得るが、衝撃吸収エネルギーおよび硬度が減少し得るので、これにより製造された生分解性ポリエステルフィルムまたは成形品の耐衝撃性および耐久性が悪くなることがあり、高温における収縮または形状変形等の問題が生じ得る。
【0047】
一方、前記第1繰り返し単位の数が、前記第2繰り返し単位の数と同一か、または第1繰り返し単位の数がより多い場合、前記問題を解決することができ、本発明において目的とする効果を効果的に達成し得る。特に、本発明の実現例による生分解性ポリエステル樹脂は、分解はゆっくり起こるとしても、耐久性効果が非常に優れるため、建築用内装材等や射出品等に有用に活用することができ、特定期間中に優れた耐久性を保障しながら、最終的に生分解も起こり得る。
【0048】
本発明の一実現例による生分解性ポリエステル樹脂は、下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である。
【0049】
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度である。
【0050】
前記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)は、生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の耐衝撃性および耐久性の程度を示す指標であり、生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギー(IA)と硬度(H3T)との積を100で除した値を示す。
【0051】
前記衝撃強度指数(ISI)は、高いほど耐衝撃性および/または耐久性が高くあり得る。また、前記衝撃強度指数(ISI)は、生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギー(IA)および/または硬度(H3T)が高いほど高くあり得る。
【0052】
このような特性を有する衝撃強度指数(ISI)は、適正範囲を満足するとき、生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムおよび成形品の耐衝撃性および耐久性を同時に向上させ得る。
【0053】
具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂の衝撃強度指数(ISI)は、例えば2.2以上、例えば2.3以上、または例えば3.0以上であり、例えば2.2~5.0、例えば2.3~5.0、例えば2.5~5.0、例えば2.2~4.0、例えば、2.3~4.0、例えば3.0~4.0、例えば3.0~5.0、例えば3.0~4.0、または例えば3.0~3.5であり得る。前記生分解性ポリエステル樹脂の衝撃強度指数(ISI)が2.2以上、具体的に2.2~5.0を満足すると、生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の耐衝撃性および耐久性が適切であるため、様々な分野に活用され優れた特性を発揮し得る。
【0054】
もし、前記生分解性ポリエステル樹脂の衝撃強度指数(ISI)が2.2未満の場合、生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギー(IA)および/または硬度(H3T)が低すぎることとなり、これは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート、フィルム、または成形品の耐衝撃性および耐久性に悪影響を及ぼし得る。また、インフレーション成形性および射出成形性などの成形性にも悪影響を及ぼし得る。特に、粘着特性が酷いため、巻き取りの際にフィルムの表面同士が張り付き、インフレーション成形性が悪くなり得る。
【0055】
前記式1において、IAを示す生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギー(KJ/m)は、フィルム衝撃テスト(Film Impact Test)により面積10cm×10cmの生分解性ポリエステルシート試験片を直径16mm、高さ14mmの三角錐タイプのヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー量を厚さで除した値を算出して得た値であって、下記式7で表示される通りである。
【0056】

【0057】
この際、前記生分解性ポリエステルシートは延伸前の状態であり、これは生分解性ポリエステル樹脂の物性と類似または同一であり得る。
【0058】
前記衝撃吸収エネルギーは、速度因子(factor)が入った面に対する靭性(toughness)を示すものであり、衝撃吸収エネルギー量が高いほど衝撃強度が高くあり得る。
【0059】
前記生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギー(KJ/m)は、6.0KJ/m以上、例えば6.2KJ/m以上、または例えば7.2KJ/m以上であり、例えば6.0KJ/m~10.0KJ/m、例えば、6.0KJ/m~9.5KJ/m、例えば6.0KJ/m~9.0KJ/m、例えば6.2KJ/m~9.5KJ/m、例えば6.2KJ/m~8.5KJ/m、例えば7.1KJ/m~9.0KJ/m、または例えば7.1KJ/m~8.5KJ/mであり得る。
【0060】
前記生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギー(KJ/m)が前記範囲を満足すると、衝撃強度が適切であるので前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の耐衝撃性および耐久性の面から有利であり得る。
【0061】
前記式1において、H3Tを示す生分解性ポリエステル樹脂の硬度(ショアD)は、物質の硬い程度(hardness)を示す尺度であり、前記硬度が高いほどシート、フィルムまたは成形品表面の硬さが大きくなることを示す。
【0062】
前記硬度(ショアD)は、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、生分解性ポリエステル樹脂を用いて厚さ3mmの生分解性ポリエステルシート試験片を作った後、デフェルスコ(DeFelsko)社のショアD試験機で測定し得る。この際、前記生分解性ポリエステルシートは延伸前の状態であり、これは生分解性ポリエステル樹脂の物性と類似または同一であり得る。
【0063】
前記生分解性ポリエステル樹脂の硬度(ショアD)は32以上、例えば38以上、または例えば42以上であり、例えば32~50、例えば38~50、例えば42~50、または例えば42~48であり得る。
【0064】
前記生分解性ポリエステル樹脂の硬度(ショアD)が前記範囲を満足すると、本発明において目的とする衝撃強度指数を達成するのにさらに有利であり、耐衝撃性および耐久性の面から有利であるため、各種成形品の多様な活用が可能である。
【0065】
一方、前記生分解性ポリエステル樹脂は、下記式2で表示される熱収縮率(TS50)が30%以下であり得る。
【0066】
前記式2において、
25は、25℃にて生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の初期長さであり、
50は、50℃の熱風機で5分間滞留した後の生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の長さである。
【0067】
前記式2で表示される熱収縮率(TS50)は、50℃の熱風温度にて生分解性ポリエステルフィルム試験片の熱収縮程度を百分率に換算した値であり、前記生分解性ポリエステルフィルム試験片の初期長さに対する試験片の初期長さと熱風機で滞留後の試験片の長さとの変化量を百分率に算出した値である。
【0068】
前記熱収縮率(TS50)は、生分解性ポリエステルフィルムを方向に関係なく長さ150mm、幅2cmに切って試験片を作った後、常温における初期長さおよび50℃のコンベンション(熱風)オーブンで5分間滞留した後の生分解性ポリエステルフィルム試験片の長さを測定して算出し得る。
【0069】
前記熱収縮率(TS50)は、30%未満、28%以下、26%以下、25%以下、24%以下、23%以下、22%以下、20%以下、20%未満、18%以下、または15%以下であり得る。
【0070】
前記熱収縮率(TS50)が前記範囲以下を満足すると、50℃以上の高温の熱風温度にて熱収縮程度が少なく、インフレーション成形性または射出成形性をより向上させ得ると同時に、生分解性ポリエステルフィルムまたは成形品の物性を改善し得るので、多様な用途拡張にさらに有利であり得る。
【0071】
一方、本発明の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂は、下記式3で表示される熱変形指数(TD50)が0.15以下であり得る。
【0072】
前記式3において、TS50およびISIは前記で定義した通りである。
【0073】
前記式3で表示される熱変形指数(TD50)は、衝撃強度に対して50℃の熱風温度にて生分解性ポリエステルシート、フィルム、または成形品の熱変形程度を示す指標であって、前記熱収縮率(TS50)と前記衝撃強度指数(ISI)によって変わり得る。すなわち、前記熱変形指数(TD50)は、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いて製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の熱収縮率を100で除した値を前記生分解性ポリエステル樹脂(シート試験片)の衝撃強度指数(ISI)で除した値である。
【0074】
前記熱変形指数(TD50)は、例えば0.14以下、例えば0.12以下、例えば0.11以下、例えば0.10以下、例えば0.08以下、例えば0.08未満、または例えば0.07以下であり得る。
【0075】
前記熱変形指数(TD50)が前記範囲以下を満足すると、50℃以上の高温の熱風温度にて衝撃強度に対する熱変形の程度が少ないので耐久性および耐熱性を向上させることができ、インフレーション成形性または射出成形性をより向上させ得ると同時に、生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の物性を改善し得るので、多様な用途拡張にさらに有利であり得る。
【0076】
一方、前記生分解性ポリエステル樹脂は、下記式4で表示される損失正接(tanδ)が1超であり得る。
【0077】


前記式4において、
G'は、動的粘弾性測定において240℃および振動数5rad/sにおける前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートの貯蔵弾性率(storage modulus)であり、
G''は、動的粘弾性測定において240℃および振動数5rad/sにおける前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートの損失弾性率(loss modulus)である。
【0078】
なお、前記ポリエステルシートの貯蔵弾性率および損失弾性率は、ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率および損失弾性率のことを意味し得る。
【0079】
前記生分解性ポリエステル樹脂の損失正接(tanδ)は、動的粘弾性試験機であるRDS(Rheometrics Dynamic Spectrometer、TA Instrument社、Discovery HR 30)を用いて、生分解性ポリエステル樹脂をシートに形成した後、貯蔵弾性率および損失弾性率を測定した後、前記式4を用いて算出され得る。
【0080】
すなわち、前記生分解性ポリエステル樹脂の損失正接(tanδ)は、生分解性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率(G')に対する生分解性ポリエステル樹脂の損失弾性率(G'')の比であって、前記生分解性ポリエステル樹脂の損失弾性率(G'')の値が、生分解性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率(G')の値より大きい場合、すなわち、前記式4で表示される生分解性ポリエステル樹脂の損失正接(tanδ)が1を超え得る。
【0081】
具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂の損失正接(tanδ)は、例えば1.05~1.30、例えば1.05~1.25、例えば1.10~1.25、例えば1.10~1.20、または例えば1.15~1.19であり得る。
【0082】
前記生分解性ポリエステル樹脂の損失正接(tanδ)が前記範囲を満足すると、生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の耐衝撃性、耐久性および成形性を同時に向上させることができ、衝撃吸収エネルギーおよび強度を向上させることができ、熱収縮率および熱変形を最小化し得る。
【0083】
前記生分解性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率(G')は、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いてシートに形成した後に測定することができ、この場合、例えば200000dyne/cm~400000dyne/cm、例えば250000dyne/cm~400000dyne/cm、例えば280000dyne/cm~400000dyne/cm、例えば300000dyne/cm~380000dyne/cm、または例えば310000dyne/cm~360000dyne/cmであり得る。
【0084】
前記生分解性ポリエステル樹脂の損失弾性率(G'')は、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いてシートに形成した後に測定することができ、この場合、例えば220000dyne/cm~450000dyne/cm、例えば270000dyne/cm~430000dyne/cm、例えば290000dyne/cm~430000dyne/cm、例えば310000dyne/cm~420000dyne/cm、または例えば330000dyne/cm~400000dyne/cmであり得る。
【0085】
前記生分解性ポリエステル樹脂の貯蔵弾性率(G')および損失正接(tanδ)がそれぞれ前記範囲を満足すると、生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の耐衝撃性、耐久性および成形性を同時に向上させることができ、衝撃吸収エネルギーおよび強度を向上させることができ、熱収縮率および熱変形を最小化し得る。
【0086】
一方、前記生分解性ポリエステル樹脂を含む生分解性ポリエステルフィルムは、KS M3100―1に基づいて二酸化炭素の発生量を測定した生分解度が50%以上であり、下記式5で表示される水分解度減少率が50%以上であり得る。
【0087】
前記式5において、
MnおよびMnは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートを水に浸漬して、コンベンション(熱風)オーブン80℃にて水分解加速化を実施した後、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した前記生分解性ポリエステルシートの数平均分子量であって、
Mnは、前記生分解性ポリエステルシートの初期数平均分子量であり、
Mnは、水分解加速化実施3ヶ月後の前記生分解性ポリエステルシートの数平均分子量である。
【0088】
なお、前記水分解加速化とは、生分解性ポリエステルシートを水に浸漬して80℃の温度にて加水分解することを意味する。
【0089】
前記水分解度減少率は、生分解性ポリエステルシートの初期数平均分子量と、水分解加速化実施3ヶ月後の数平均分子量とを測定して算出し得る。すなわち、前記生分解性ポリエステルシートの水分解度減少率は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて前記式5で表示される初期数平均分子量に対して、初期数平均分子量と3ヶ月後の生分解性ポリエステルシートの数平均分子量との差を百分率で示したものである。
【0090】
前記生分解性ポリエステルシートの水分解度減少率は、50%以上、52%以上、54%以上、55%以上、58%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、または90%以上であり得る。
【0091】
前記生分解性ポリエステルシートの水分解度減少率が前記範囲を満足することにより、耐久性も確保しながら最終的に生分解も可能となり得る。つまり、本発明の一実現例による生分解性ポリエステルシート、フィルム、または成形品は、分解はゆっくり進むが、長期間の耐久性を維持し得るという利点がある。
【0092】
前記生分解性ポリエステルシートの初期数平均分子量(Mn)は、50000g/mol~70000g/mol、例えば50000g/mol~68000g/molまたは50000g/mol~65000g/molであり得る。
【0093】
前記生分解性ポリエステルシートを80℃の水に浸した後、水分解加速化実施3ヶ月後の生分解性ポリエステルシートの数平均分子量(Mn)は、3000g/mol~40000g/mol、例えば4000g/mol~35000g/molまたは5000g/mol~30000g/molであり得る。
【0094】
前記生分解性ポリエステルシートの初期数平均分子量(Mn)および水分解加速化実施3ヶ月後の生分解性ポリエステルシートの数平均分子量(Mn)の範囲がそれぞれ前記範囲を満足すると、前記水分解度減少率を前記範囲で満足し得るので、海水分解または加湿の条件において生分解が可能となり得る。
【0095】
本発明の実現例による生分解性ポリエステル樹脂の構造および物性は、本発明の一実現例による生分解性ポリエステル樹脂の製造方法を利用することにより効率良く達成し得る。
【0096】
以下、前記生分解性ポリエステル樹脂の製造方法を詳細に説明する。
【0097】
[生分解性ポリエステル樹脂の製造方法]
本発明による他の実現例において、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理してスラリーを得る第1段階と、前記スラリーと脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物、または、前記スラリーをエステル化反応させた反応生成物と脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物を用いて、少なくとも1回以上エステル化反応してプレポリマーを得る第2段階と、前記プレポリマーを縮重合反応させる第3段階とを含み、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む、生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、前記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステル樹脂の製造方法を提供する。
【0098】
本発明の実現例によると、前記生分解性ポリエステル樹脂の製造方法は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理して得られたスラリーを用いて、エステル化反応させてプレポリマーを得て、前記プレポリマーを縮重合反応させることにより、本発明の実現例により目的とする生分解性ポリエステル樹脂の構造および物性を効率良く達成し得る。
【0099】
図1を参照すると、前記生分解性ポリエステル樹脂の製造方法(S100)は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理してスラリーを得る第1段階(S110)を含む。
【0100】
すなわち、前記第1段階は、エステル化反応前の前処理段階として、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し、これらをスラリー化する段階である。
【0101】
前記ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理してスラリー化することにより、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを均一に反応し得るだけでなく、エステル化反応の速度を速く進めるのに効果的であるため、反応効率性を高め得る。
【0102】
特に、テレフタル酸のように、芳香族ジカルボン酸が完全な結晶性を有し、粉末(powder)状である場合、前記ジオールに対する溶解度が非常に低いため、均質反応が起こり難いことがあり得る。したがって、前記スラリー化する前処理過程は、本発明の実現例による優れた物性を有する生分解性ポリエステル樹脂、シート、フィルム、および成形品を提供し、反応効率を増進するにおいて非常に重要な役割を果たし得る。
【0103】
また、前記ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合して前処理工程を行わず、ジオール成分、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸を全て混合してエステル化反応を行うと、前記ジオール成分および前記脂肪族ジカルボン酸の反応が先に行われ得るため、本発明で目的とする第1繰り返し単位および第2繰り返し単位の数の比(X/Y)を満足する生分解性ポリエステル樹脂を実現するのに難しさがあり得る。
【0104】
本発明の実現例により、前記芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である場合、前記テレフタル酸は完全な結晶性を有しており、溶融点なく常圧にて300℃付近で昇華する白色結晶で、前記ジオールに対する溶解度が非常に低いため均質反応が起こり難いので、エステル化反応の前に前処理過程を行うと、テレフタル酸の固体マトリックス内でジオールと反応するための表面積を増加させ、均一な反応を誘導し得る。
【0105】
また、本発明の実現例により、前記芳香族ジカルボン酸がジメチルテレフタレートである場合、前記前処理過程によって前記ジメチルテレフタレートを約142℃~170℃にて溶融状態にして前記ジオールと反応させ得るので、エステル化反応速度をより迅速かつ効率良く行い得る。
【0106】
一方、前記第1段階の前処理段階において、前記芳香族ジカルボン酸の粒径、粒度分布、前処理反応条件等によって、前記生分解性ポリエステル樹脂の構造および物性が変わり得る。
【0107】
例えば、前記芳香族ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、前記テレフタル酸は、粒度分布(PSD)において粒度分析器のMicrotrac(登録商標)S3500(Microtrac社)により測定された平均粒径(D50)が10μm~400μmであり、前記平均粒径(D50)に対する標準偏差(Standard Deviation)が100以下であり得る。前記標準偏差は、分散の平方根のことを意味する。
【0108】
前記テレフタル酸の平均粒径(D50)は、例えば20μm~200μm、例えば30μm~180μm、例えば50μm~100μmであり得る。前記テレフタル酸の平均粒径(D50)が前記範囲を満足すると、ジオールに対する溶解度の向上および反応速度の面からより有利であり得る。
【0109】
もし、前記テレフタル酸の平均粒径(D50)が10μm未満の場合、平均粒径が小さすぎるため、単一1次粒子から凝集した2次粒子に変わり得るので好ましくなく、前記テレフタル酸の平均粒径(D50)が400μmを超えると、平均粒径が大きすぎるため、ジオールに対する溶解度が低下して反応速度が遅くなり、均質化反応を得るのに困難があり得る。
【0110】
また、前記テレフタル酸の平均粒径(D50)に対する標準偏差は、100以下、例えば5~90、例えば5~80、例えば5~70であり得る。前記テレフタル酸の平均粒径(D50)に対する標準偏差が前記範囲を満足すると、ジオールに対する溶解度の向上および反応速度の面からより有利であり得る。
【0111】
さらに、前記テレフタル酸の平均粒径(D50)および標準偏差が前記範囲を満足すると、反応時間を1.5倍以上短縮し得るので、反応効率性の面から好ましい。
【0112】
前記芳香族ジカルボン酸がジメチルテレフタレートである場合、溶融状態で使用するか、粒子状態で測定する際、前記テレフタル酸の平均粒径(D50)および標準偏差と類似の範囲であり得る。
【0113】
前記第1段階の前処理工程においては、前記ジオールと前記芳香族ジカルボン酸とを混合してスラリー撹拌機(タンク)に投入し得る。
【0114】
本発明の実現例によると、前記第1段階の前処理工程では、スラリー化するまでの撹拌力が非常に重要であるため、撹拌機の撹拌翼の数、形状、スラリー化工程条件が極めて重要である。
【0115】
前記スラリー撹拌機は、例えば、最下部がアンカー(anchor)タイプであり、撹拌機(agitator)までの高さが20mm以上であり、2個以上の回転翼が備えられているものが、効率的な撹拌効果を達成するためにより有利であり得る。
【0116】
例えば、前記スラリー撹拌機は、前記撹拌機までの高さが20mm以上、すなわち、反応器と前記撹拌機の最下部との間がほぼくっついていても良く、この場合、沈殿なくスラリーが得られ得る。もし、前記撹拌機の形状および回転翼の数が前記条件を満たさない場合、ジオールと芳香族ジカルボン酸とが初期混合される際、前記芳香族ジカルボン酸が底に沈降することがあり、そうすると相分離が起こり得る。
【0117】
前記第1段階の前処理工程は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合して、60℃~100℃にて50rpm~200rpmで10分以上、例えば10分~200分間撹拌する段階を含み得る。前記前処理工程が、前記温度、速度および撹拌時間を満足すると、相分離なく均一なスラリーを得ることができるので反応効率の面から有利であり、本発明において目的とする生分解性ポリエステル樹脂の物性を効率良く得られる。
【0118】
前記ジオール成分は、1,4―ブタンジオール、1,2―エタンジオール、1,3―プロパンジオール、またはその誘導体を含み得る。
【0119】
具体的に、前記ジオール成分は、前記ジオール成分の総モル数を基準に、95モル%以上、98モル%以上、99モル%以上、または100モル%の1,4―ブタンジオール、1,2―エタンジオール、1,3―プロパンジオール、またはその誘導体を含み得る。前記ジオール成分が、前記範囲の1,4―ブタンジオール、1,2―エタンジオール、1,3―プロパンジオール、またはその誘導体を含むことにより、生分解性ポリエステル樹脂またはそれを用いて得られた生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の生分解性、水分解性および物性などを向上させ得る。
【0120】
前記ジオール成分は一度に投入するか、分割して投入し得る。例えば、前記ジオール成分は、芳香族ジカルボン酸と混合する際と、脂肪族ジカルボン酸と混合する際とに分けて投入し得る。
【0121】
前記芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、ジメチルテレフタレートおよびそれらの誘導体からなる群より選択される1種以上を含み得る。具体的に、前記芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸またはジメチルテレフタレートであり得る。
【0122】
また、前記芳香族ジカルボン酸の成分は、ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、45モル%~70モル%、46モル%~70モル%、48モル%~70モル%、49モル%~70モル%、50モル%~70モル%、52モル%~70モル%、55モル%~70モル%、58モル%~70モル%、または60モル%~70モル%の量で使用され得る。
【0123】
前記芳香族ジカルボン酸のモル比を前記範囲に制御すると、本発明の効果を得るためにさらに有利であり、それを用いて製造された生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは生分解性ポリエステル射出品を始めとする成形品等の耐衝撃性および耐久性をより向上させ得る。
【0124】
図1を再度参照すると、前記生分解性ポリエステル樹脂の製造方法(S100)は、前記スラリーと脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物、または、前記スラリーをエステル化反応させた反応生成物と脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物を用いて、少なくとも1回以上エステル化反応させてプレポリマーを得る第2段階(S120)を含む。
【0125】
前記第2段階のエステル化反応は、前記第1段階で得たスラリーを用いることにより、反応時間が短縮され得る。例えば、前記第1段階で得たスラリーを用いることにより、反応時間を1.5倍以上短縮し得る。
前記第2段階のエステル化反応は、少なくとも1回以上行われ得る。
【0126】
本発明の一実現例によると、前記エステル化反応は、前記スラリーに脂肪族ジカルボン酸、またはジオールおよび脂肪族ジカルボン酸を投入して、エステル化反応を1回行い得る。
【0127】
前記エステル化反応は、250℃以下で0.5時間~5時間行われ得る。具体的に、前記エステル化反応は、180℃~250℃、185℃~240℃、または200℃~240℃にて、副産物の水が理論的に95%に達するまで常圧または減圧下で行われ得る。例えば、前記エステル化反応は、0.5時間~4.5時間、0.5時間~3.5時間、または1時間~3時間行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0128】
前記プレポリマーの数平均分子量は500g/mol~10000g/molであり得る。例えば、前記プレポリマーの数平均分子量は、500g/mol~8500g/mol、500g/mol~8000g/mol、500g/mol~7000g/mol、500g/mol~5000g/mol、または500g/mol~2000g/molであり得る。前記プレポリマーの数平均分子量が前記範囲を満足することにより、縮重合反応において重合体の分子量を効率良く増加させ得る。
【0129】
本発明のまた他の実現例によると、前記エステル化反応は、前記スラリーを1次エステル化反応させる段階と、前記第1エステル化反応させた反応生成物に脂肪族ジカルボン酸、またはジオールおよび脂肪族ジカルボン酸を投入して2次エステル化反応させる段階とを含んで、前記エステル化反応を2回またはそれ以上行い得る。
【0130】
前記エステル化反応を2回以上行うと、前記エステル化反応を1回行う場合に比べて、反応安定性および反応均一性を向上させることができ、目的とする第1繰り返し単位の数および第2繰り返し単位の数の比を調整することができ、本発明の実現例による効果を効率良く達成し得るという利点がある。
【0131】
前記1次エステル化反応および前記2次エステル化反応は、それぞれ250℃以下にて0.5時間~5時間行われ得る。具体的に、前記1次エステル化反応および前記2次エステル化反応は、それぞれ180℃~250℃、185℃~240℃または200℃~240℃にて、副産物の水が理論的に95%に達するまで常圧にて行われ得る。例えば、前記1次エステル化反応および前記2次エステル化反応は、それぞれ0.5時間~4.5時間、0.5時間~3.5時間、または1時間~3時間行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0132】
前記プレポリマーの数平均分子量は500g/mol~10000g/molであり得る。例えば、前記プレポリマーの数平均分子量は、500g/mol~8500g/mol、500g/mol~7000g/mol、1000g/mol~6000g/mol、または2500g/mol~5500g/molであり得る。前記プレポリマーの数平均分子量が前記範囲を満足することにより、縮重合反応において重合体の分子量を効率良く増加させ得るので、強度特性をさらに向上させ得る。
【0133】
前記数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定し得る。具体的に、ゲル透過クロマトグラフィーによって出されたデータは、Mn、Mw、Mpなど様々な項目があるが、そのうち数平均分子量(Mn)を基準にして分子量を測定し得る。
【0134】
前記脂肪族ジカルボン酸の成分は、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、またはその誘導体を含み得る。具体的に、前記脂肪族ジカルボン酸成分は、アジピン酸またはコハク酸を含み得る。
【0135】
また、前記脂肪族ジカルボン酸成分は、前記ジカルボン酸成分の総モル数を基準に、30モル%~55モル%、30モル%~54モル%、30モル%~52モル%、30モル%~51モル%、30モル%~50モル%、30モル%~48モル%、30モル%~45モル%、30モル%~42モル%、または30モル%~40モル%の量で使用され得る。
【0136】
前記脂肪族ジカルボン酸の含有量を前記範囲に制御すると、本発明の効果を得るためにさらに有利であり、それを用いて製造された生分解性ポリエステルシート、フィルム、または生分解性ポリエステル射出品を始めとする成形品等の耐衝撃性および耐久性をより向上させ得る。
【0137】
特に、前記脂肪族ジカルボン酸成分は、線形(linear)鎖からなることにより、生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギーおよび硬度等の物性、並びにインフレーション成形性または射出成形性に影響を与え得る。
【0138】
具体的に、前記脂肪族ジカルボン酸成分の含有量が多すぎると、生分解性ポリエステル樹脂の衝撃吸収エネルギーおよび硬度が減少し、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートまたはフィルムのインフレーション成形性および射出成形性が悪くなり得る。
【0139】
前記第2段階において、前記エステル化反応時点、例えば1次および2次エステル化反応させる場合、1次エステル化反応時点、2次エステル化反応時点、またはその両方にナノセルロースをさらに添加し得る。
【0140】
具体的に、エステル化反応を1回行う場合、エステル化反応時点、例えば脂肪族ジカルボン酸、またはジオールおよび脂肪族ジカルボン酸の投入時点でナノセルロースをさらに添加し得る。
【0141】
また、前記エステル化反応を2回以上行う場合、1次エステル化反応時点、2次エステル化反応時点、またはその両方にナノセルロースを添加し得る。例えば、前記ナノセルロースは、2次エステル化反応時点、すなわち脂肪族ジカルボン酸、またはジオールおよび脂肪族ジカルボン酸の投入時点やエステル化反応初期に添加し得る。そうすると、ナノセルロース分散に効率的であり得る。特に、前記ナノセルロース添加によって生分解性ポリエステル樹脂の強度、衝撃吸収エネルギーおよび硬度等の物性、並びに熱的特性の面から好ましく、生分解性ポリエステルシート、フィルムまたは成形品の強度、耐衝撃性および耐久性等も向上させ得る。
【0142】
前記ナノセルロースは、セルロースナノクリスタル、セルロースナノファイバー、マイクロフィブリル化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ペンチルセルロース、ヘキシルセルロース、およびシクロヘキシルセルロースからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0143】
前記ナノセルロースの直径は1nm~200nmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの直径は、1nm~150nm、1nm~120nm、1nm~100nm、1nm~95nm、5nm~90nm、10nm~80nm、1nm~50nm、5nm~45nm、10nm~60nm、1nm~10nm、10nm~30nm、または15nm~50nmであり得る。
【0144】
また、前記ナノセルロースの長さは5nm~10μmであり得る。例えば、前記ナノセルロースの長さは、5nm~1μm、10nm~150nm、20nm~300nm、200nm~500nm、100nm~10μm、500nm~5μm、300nm~1μm、1μm~10μmであり得る。
【0145】
前記ナノセルロースの直径および長さが前記範囲を満足することにより、生分解性ポリエステル樹脂、またはそれを用いて得た生分解性ポリエステルシート、フィルムおよび成形品の生分解性および物性をさらに向上させ得る。
【0146】
さらに、前記ナノセルロースは、ビーズミル前処理されたものか、または超音波前処理されたものであり得る。具体的に、前記ナノセルロースは、水分散されたナノセルロースがビーズミル前処理されたものか、または超音波前処理されたものであり得る。
【0147】
まず、前記ビーズミル前処理は、湿式ミリング装置により垂直ミルまたは水平ミルで行われ得る。水平ミルが、チャンバ(chamber)内部に充填し得るビーズの量がより多く、機械の片摩耗減少、ビーズの摩耗減少、およびメンテナンスがより容易であるという点から好ましいが、これに限定されるものではない。
【0148】
前記ビーズミル前処理は、ジルコニウム、ジルコン、ジルコニア、石英、および酸化アルミニウムからなる群より選択される1種以上のビーズを用いて行われ得る。
【0149】
具体的に、前記ビーズミル前処理は、0.3mm~1mmの直径を有するビーズを用いて行われ得る。例えば、前記ビーズの直径は、0.3mm~0.9mm、0.4mm~0.8mm、0.45mm~0.7mm、または0.45mm~0.6mmであり得る。ビーズの直径が前記範囲を満足することにより、ナノセルロースの分散性をより向上させ得る。ビーズの直径が前記範囲を超えると、ナノセルロースの平均粒度および粒度偏差が増加して、分散性が低くなり得る。
【0150】
また、前記ビーズミル前処理は、ナノセルロースの比重よりも高いビーズを用いることが、十分なエネルギーを伝達し得るという点で好ましい。例えば、前記ビーズは、水分散されたナノセルロースよりも比重の高いジルコニウム、ジルコン、ジルコニア、石英、および酸化アルミニウムからなる群より選択される1種以上であり、前記水分散されたナノセルロースに比べて4倍以上比重の高いジルコニウムビーズが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0151】
また、前記超音波前処理は、20kHzの超音波(ultrasound)を溶液中に放出して発生する波動により、ナノ粒子を物理的に破砕または粉砕する方法である。
【0152】
前記超音波前処理は、30000J以下のエネルギー量で30分未満の時間で行われ得る。例えば、前記超音波前処理は、25000J以下または22000J以下のエネルギー量で25分以下、20分以下、または18分以下の時間で行われ得る。エネルギー量および実施時間が前記範囲を満足することにより、超音波前処理の効果、すなわち分散性の向上を最大化し得る。エネルギー量が前記範囲を超えると、むしろナノ粒子が再凝集して分散性が低くなり得る。
【0153】
実現例によるナノセルロースは、ビーズミル前処理または超音波前処理されたものであり得る。または、実現例によるナノセルロースは、ビーズミル前処理および超音波前処理のいずれも行われたものであり得る。この際、ビーズミル前処理後に超音波前処理を行うことが、再凝集を防止して分散性を向上させる点で好ましい。
【0154】
実現例による生分解性ポリエステル樹脂の多分散指数(polydispersity index、PDI)は2.0未満である。例えば、前記生分解性ポリエステル樹脂の多分散指数は、2.0未満、1.95以下、または1.9以下であり得る。
【0155】
多分散指数が前記範囲に調整されることにより、耐熱性をさらに向上させ得る。具体的に、多分散指数が前記範囲を超えると、前記生分解性ポリエステル樹脂の耐熱性が低下し得る。したがって、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いてフィルムのような成形品を製造する工程において、高分子劣化の発生率が増加して加工適性および生産性が低くなり得る。
前記多分散指数は、下記式Aに従って計算され得る。
【0156】
前記式Aにおいて、
Mwは、樹脂の重量平均分子量(g/mol)であり、
Mnは、樹脂の数平均分子量(g/mol)である。
【0157】
また、前記ナノセルロースの含有量は、ジオール、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に、例えば3000ppm以下、2500ppm以下、2000ppm以下、1800ppm以下、1500pp、1000ppm以下、900ppm以下、800ppm以下、700ppm以下、600ppm以下、500ppm以下、または400ppm以下の量であり、例えば、100ppm以上、150ppm以上、200ppm以上、250ppm以上、または300ppm以上の量であり得る。前記ナノセルロースの含有量が前記範囲を満足することにより、生分解性、強度、衝撃吸収エネルギー、および硬度などの物性をさらに向上させ得る。
【0158】
前記第2段階のエステル化反応の前に、前記スラリーにチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒をさらに添加し得る。
【0159】
具体的に、エステル化反応を1回行う場合、前記スラリーにチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒をさらに添加し得る。
【0160】
また、前記エステル化反応を2回以上行う場合、各エステル化反応の前に、前記スラリー、前記スラリーを1次エステル化反応させた反応生成物、またはその両方にチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒をさらに添加し得る。
【0161】
具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂は、チタンイソプロポキシド、三酸化アンチモン、ジブチルスズオキシド、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、アンチモニアセテート、カルシウムアセテート、およびマグネシウムアセテートからなる群より選択される1種以上のチタン系触媒、またはゲルマニウムオキシド、ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、テトラメチルゲルマニウム、テトラエチルゲルマニウム、およびゲルマニウムスルフィドからなる群より選択される1種以上のゲルマニウム系触媒を含み得る。
【0162】
また、前記触媒の含有量は、ジオール、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に、100ppm~1000ppmであり得る。例えば、100ppm~800ppm、150ppm~700ppm、200ppm~600ppm、または250ppm~550ppmのチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒を含み得る。触媒の含有量が前記範囲を満足することにより、物性をさらに向上させ得る。
【0163】
前記第2段階のエステル化反応中に、エステル反応の終了時に、またはその両方にリン系安定剤をさらに添加し得る。
【0164】
具体的に、エステル化反応を1回行う場合、エステル化反応中に、エステル反応終了時に、またはその両方にリン系安定剤をさらに添加し得る。
【0165】
また、前記エステル化反応を2回以上行う場合、1次エステル化反応中、2次エステル化反応中、またはその両方に、もしくは1次エステル化反応終了時、2次エステル化反応終了時に、リン系安定剤をさらに添加し得る。
【0166】
具体的に、前記生分解性ポリエステル樹脂は、テトラエチレンペンタアミン等のアミン系高温熱安定剤、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリエチルホスホノアセテート、トリメチルホスフィン、およびトリフェニルホスフィンからなる群より選択される1種以上のリン系安定剤をさらに含み得る。
【0167】
前記リン系安定剤の含有量は、ジオール、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に、3000ppm以下であり得る。具体的に、前記リン系安定剤の含有量は、ジオール、芳香族ジカルボン酸、および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に、例えば、10ppm~3000ppm、20ppm~2000ppm、20ppm~1500ppm、または20ppm~1000ppmであり得る。前記リン系安定剤の含有量が前記範囲を満足することにより、反応過程中の高温による高分子の劣化を制御することができ、高分子の末端基を減らし、カラー(color)を改善し得る。
【0168】
前記第2段階のエステル化反応終了後、シリカ、カリウムまたはマグネシウムのような添加剤、およびコバルトアセテートのような色補正剤からなる群より選択された1種以上を追加でさらに添加し得る。すなわち、エステル化反応終了後、前記添加剤および/または色補正剤を入れて安定化した後、縮重合反応を行い得る。
【0169】
再度図1を参照すると、前記生分解性ポリエステル樹脂の製造方法(S100)は、前記プレポリマーを縮重合反応させる第3段階(S130)を含む。
【0170】
前記縮重合反応は、180℃~280℃、1.0torr以下で1時間~5時間行われ得る。例えば、前記縮重合反応は、190℃~270℃、210℃~260℃、または230℃~255℃にて行われ、0.9torr以下、0.7torr以下、0.2torr~1.0torr、0.3torr~0.9torr、または0.4torr~0.6torrで行われ、1.5時間~5時間、2時間~5時間、または2.5時間~4.5時間行われ得る。
【0171】
また、前記縮重合反応の前に、前記プレポリマーにチタン系触媒またはゲルマニウム系触媒をさらに添加し得る。また、前記縮重合反応の前に、前記プレポリマーにシリカ、カリウム、またはマグネシウムのような添加剤;トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフィン、リン酸、亜リン酸、またはテトラエチレンペンタアミンなどのアミン系安定剤;およびアンチモニトリオキシド、三酸化アンチモン、またはテトラブチルチタネートのような重合触媒からなる群より選択された1種以上をさらに投入し得る。
【0172】
前記重合体の数平均分子量は40000g/mol以上であり得る。例えば、前記重合体の数平均分子量は、43000g/mol以上、45000g/mol以上、または50000g/mol~70000g/molであり得る。前記重合体の数平均分子量が前記範囲を満足することにより、物性、耐衝撃性、耐久性、および成形性をさらに向上させ得る。
【0173】
その後、前記重合体からペレット(pellet)を製造し得る。
具体的に、前記重合体を15℃以下、10℃以下または6℃以下に冷却した後、前記冷却した重合体を切断してペレットを製造し得る。
【0174】
前記切断段階は、当業界で使用されるペレット切断機であれば制限なく使用することができ、ペレットは様々な形状を有し得る。前記ペレットの切断方法としては、アンダーウォーター(underwater)カット法、またはストランド(strand)カット法を含み得る。
【0175】
[生分解性ポリエステルシート]
一方、本発明は一実現例において、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いて生分解性ポリエステルシートを得ることができる。
【0176】
例えば、前記生分解性ポリエステルシートは、前記生分解性ポリエステル樹脂またはポリエステル樹脂ペレットを用いて製造され得る。
【0177】
具体的に、前記調製したポリエステル樹脂を例えば、ステンレス鋼(SUS)枠に入れ、ホットプレス(Hot Press)を用いて約150℃~300℃にて、5Mpa~20Mpaの圧力下で1分~30分間保持した後、脱着し、直ちに18℃~25℃の水で約10秒~5分間冷却して、生分解性ポリエステルシートを製造し得る。
【0178】
[生分解性ポリエステルフィルム]
本発明は、一実現例において、生分解性ポリエステル樹脂を含み、前記生分解性ポリエステル樹脂は、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、前記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である、生分解性ポリエステルフィルムを提供し得る。
【0179】
前記生分解性ポリエステルフィルムの厚さは5μm~200μmであり得る。例えば、前記生分解性ポリエステルフィルムの厚さは、5μm~180μm、5μm~160μm、10μm~150μm、15μm~130μm、20μm~100μm、25μm~80μm、または25μm~60μmであり得る。
【0180】
前記生分解性ポリエステルフィルムの衝撃吸収エネルギー、硬度、および熱収縮率等の物性は、前記生分解性ポリエステル樹脂で言及された範囲を満足し得る。
【0181】
一方、前記生分解性ポリエステルフィルムは、前記生分解性ポリエステル樹脂またはポリエステル樹脂ペレットを用いて製造し得る。
【0182】
具体的に、前記生分解性ポリエステルフィルムの製造方法は、ジオール成分と芳香族ジカルボン酸とを混合し前処理してスラリーを得る第1段階と、前記スラリーと脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物、または、前記スラリーをエステル化反応させた反応生成物と脂肪族ジカルボン酸とを含む混合物を用いて、少なくとも1回以上エステル化反応してプレポリマーを得る第2段階と、前記プレポリマーを縮重合反応して重合体を得る第3段階と、前記重合体からペレットを製造する第4段階と、前記ペレットを乾燥および溶融押出する第5段階とを含む。
【0183】
第1段階~第4段階は前述の通りである。
【0184】
前記第5段階において、前記乾燥は60℃~100℃にて2時間~12時間行われ得る。具体的に、前記乾燥は、65℃~95℃、70℃~90℃、または75℃~85℃にて3時間~12時間、または4時間~10時間行われ得る。ペレットの乾燥工程条件が前記範囲を満足することにより、製造される生分解性ポリエステルフィルム、または成形品の品質をさらに向上させ得る。
【0185】
前記第5段階において、前記溶融押出は270℃以下の温度にて行われ得る。例えば、前記溶融押出は、265℃以下、260℃以下、255℃以下、150℃~270℃、150℃~255℃、または150℃~240℃の温度にて行われ得る。前記溶融押出は、インフレーションフィルム(blown film)工程により行われ得る。
【0186】
本発明の実現例によると、前記生分解性ポリエステルフィルム製造の際、無機物およびその他の添加剤を添加しなくても良い。具体的に、前記生分解性ポリエステルフィルムは、前記生分解性ポリエステル樹脂の特定構造および特定物性の範囲を満足することにより、前記生分解性ポリエステルフィルム製造の際、無機物およびその他の添加剤を添加しなくても、優れた物性および生分解性と水分解性を実現し得る。
【0187】
[生分解性ポリエステル成形品]
本発明は、一実現例において、前記生分解性ポリエステル樹脂を用いて生分解性ポリエステル成形品を製造し得る。
【0188】
すなわち、前記ポリエステル成形品は生分解性ポリエステル樹脂を含み、前記生分解性ポリエステル樹脂は、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位とを含む生分解性ポリエステル樹脂であって、前記第1繰り返し単位の数(X)および前記第2繰り返し単位の数(Y)の比(X/Y)が0.8~3.0であり、前記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)が2.2以上である。
【0189】
具体的に、前記成形品は、前記生分解性ポリエステル樹脂を押出、射出など、当業界に公知の方法により成形して製造されて良く、前記成形品は、射出成形品、押出成形品、薄膜成形品、ブローモールド(blow molding)またはインフレーション成形品、3Dフィラメント、建築用内装材等であり得るが、これに限定されるものではない。
【0190】
例えば、前記成形品は、農業用マルチング(mulching)フィルム、使い捨て手袋、使い捨てフィルム、使い捨て封筒、食品包装材、ごみ袋などとして利用され得るフィルムまたはシート状であっても良く、織物、編物、不織布、ロープ(rope)などとして利用され得る繊維状であっても良く、弁当箱等のような食品包装用容器として利用され得る容器状であっても良い。また、前記成形品は、使い捨て用のストロー、スプーン、プレート皿、フォークなどの様々な形状の成形品でもあり得る。
【0191】
特に、前記成形品は、衝撃吸収エネルギーおよび硬度などの物性はもちろん、特に耐衝撃性および耐久性を向上させ得る前記生分解性ポリエステル樹脂から形成され得るので、低温で保管および輸送される製品の包装材、耐久性を要する自動車用内装材、ゴミ袋、マルチングフィルム、および使い捨て製品に適用すると、優れた特性を発揮し得る。
【0192】
(実施例)
以下、本発明を下記の実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、以下の実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、本発明の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0193】
(実施例1)
[生分解性ポリエステル樹脂の調製]
<第1段階:前処理してスラリーを得る段階>
表1に示すように、1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)およびテレフタル酸(TPA)のモル比(1,4―BDO:TPA)を1:1で混合し、無触媒状態でスラリータンク(スラリータンクの最下部はアンカータイプ、撹拌機までの高さ30mm、3つの回転翼が備えられる)に投入した。この際、前記テレフタル酸(TPA)のD50は50μmであり、前記テレフタル酸(TPA)のD50に対する標準偏差(SD)は40であった。
【0194】
次いで、前記混合物を70℃にて150rpmで30分間撹拌して前処理し、相分離なくスラリーを得た。
【0195】
<第2段階:プレポリマーを得る段階>
前記第1段階で得られたスラリーを、供給ラインを介して反応器に投入し、これにチタン系触媒であるテトラブチルチタネート(Dupont(登録商標)社、Tyzor(登録商標)TnBT)200ppmを投入した後、230℃および常圧にて副産物である水の95%排出されるまで約2時間1次エステル化反応を行った。
【0196】
前記反応生成物にジオール成分の総モル数を基準に1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)40モル%、ジカルボン酸成分の総モル数を基準にアジピン酸(AA)40モル%、およびチタン系触媒であるテトラブチルチタネート(Dupont社、Tyzor TnBT)を、ジオール、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に150ppm投入した後、200℃および常圧にて副産物である水の95%排出されるまで約2時間2次エステル化反応を行い、5000g/molの数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0197】
<第3段階:縮重合反応させる段階>
前記第2段階で得られたプレポリマーに、ジオール、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に、チタン系触媒であるテトラブチルチタネート(Dupont社、Tyzor TnBT)150ppmおよびトリエチルホスフェート安定剤600ppmを入れて約10分間安定化した。その後、前記反応混合物を250℃に昇温した後、0.5torrで4時間縮重合反応を行い、50000g/molの数平均分子量を有する重合体を調製した。これを5℃に冷却した後、ペレット切断機で切断して、生分解性ポリエステル樹脂ペレットを得た。
【0198】
[生分解性ポリエステルシートの製造]
2枚のテフロンシートを準備した後、1枚のテフロンシート上にステンレス鋼(SUS)枠(面積12cm×12cm)を位置させ、前記製造したポリエステル樹脂ペレット約7gをステンレス鋼(SUS)枠(面積12cm×12cm)に入れた後、他の1枚のテフロンシートで覆い、約25cm×25cmの面サイズを有するホットプレス(Hot Press、With Lab社、WL 1600SA)の中央に位置させた。これを、約210℃にて、約10Mpaの圧力下で約3分間保持した後、脱着し、これをすぐに約20℃の水で約30秒間冷却した後、面積約10cm×10cmおよび厚さ約300μmの生分解性ポリエステルシートを製造した。
【0199】
[生分解性ポリエステルフィルムの製造]
前記生分解性ポリエステル樹脂ペレットを80℃にて5時間乾燥した後、インフレーションフィルム押出機(Blown Film Extrusion Line、YOOJIN ENGINEERING社)を用いて160℃にて溶融押出して、厚さ50μmの生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0200】
(実施例2)
下記表1に示すように、D50および標準偏差(SD)の異なるTPAを使用し、1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量を変更し、1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)およびアジピン酸(AA)を添加する際に、1分間の超音波処理したセルロースナノクリスタル(cellulose nanocrystal、CNC)(粒径190nm)700ppmをさらに投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、および生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0201】
(実施例3)
下記表1に示すように、テレフタル酸(TPA)の代わりにジメチルテレフタレート(DMT)を使用し、各原料含有量を変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、および生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0202】
(実施例4)
<第1段階:前処理してスラリーを得る段階>
ジオール成分の総モル数を基準に1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)70モル%およびジカルボン酸成分の総モル数を基準にテレフタル酸(TPA)を70モル%で混合し、無触媒状態でスラリータンク(スラリータンクの最下部はアンカータイプ、撹拌機までの高さ15mm、2つの回転翼が備えられる)に投入した。前記テレフタル酸(TPA)のD50は50μmであり、前記テレフタル酸(TPA)のD50に対する標準偏差(SD)は20であった。
【0203】
その後、前記混合物を80℃にて180rpmで15分間撹拌して前処理し、相分離なくスラリーを得た。
【0204】
<第2段階:プレポリマーを得る段階>
前記第1段階で得られたスラリー、ジオール成分の総モル数を基準に1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)30モル%、およびジカルボン酸成分の総モル数を基準にアジピン酸(AA)30モル%を、供給ラインを介して反応器に投入し、これにチタン系触媒であるテトラブチルチタネート(Dupont社、Tyzor TnBT)をジオール、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に300ppmを投入した後、230℃および常圧にて副産物である水の95%排出されるまで約3時間エステル化反応を行い、約4000g/molの数平均分子量を有するプレポリマーを調製した。
【0205】
<第3段階:縮重合反応させる段階>
前記第2段階で得られたプレポリマーに、チタン系触媒であるテトラブチルチタネート(Dupont社、Tyzor TnBT)をジオール、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に150ppm入れ、これを245℃に昇温した後、0.5torrで4時間の縮重合反応を行い、約50000g/molの数平均分子量を有する重合体を調製した。これを5℃に冷却した後、ペレット切断機で切断して、生分解性ポリエステル樹脂ペレットを得た。
【0206】
[生分解性ポリエステルシートおよびフィルムの製造]
前記実施例1と同様の方法により、生分解性ポリエステルシートおよびフィルムを製造した。
【0207】
(実施例5)
下記表1に示すように、第1および第2段階において、1,4―ブタンジオール(1,4―BDO)、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量、および1分間の超音波処理したセルロースナノクリスタル(CNC)(粒径190nm)の含有量を変更し、第3段階において、チタン系触媒であるテトラブチルチタネート(Dupont社、Tyzor TnBT)をジオール、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸の総重量を基準に200ppmを入れ、これを240℃に昇温したことを除いては、実施例2と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、および生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0208】
(実施例6)
下記表1に示すように、各原料の含有量を変更したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、および生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0209】
(比較例1)
下記表1に示すように、実施例4の第1段階(前処理工程)を行わず、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量を変更し、D50および標準偏差(SD)の異なるTPAを使用したことを除いては、実施例4と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、および生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0210】
(比較例2)
下記表1に示すように、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量を変更したことを除いては、比較例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、および生分解性ポリエステルフィルムを製造した。
【0211】
(比較例3)
下記表1に示すように、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量を変更し、D50および標準偏差(SD)の異なるTPAを使用したことを除いては、比較例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、およびポリエステルフィルムを製造した。
【0212】
(比較例4)
下記表1に示すように、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量を変更し、D50および標準偏差(SD)の異なるTPAを使用したことを除いては、比較例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、およびポリエステルフィルムを製造した。
【0213】
(比較例5)
下記表1に示すように、実施例1の第1段階(前処理段階)を行わず、テレフタル酸(TPA)およびアジピン酸(AA)の量を変更し、D50および標準偏差(SD)の異なるTPAを使用したことを除いては、実施例1と同様の方法により行い、生分解性ポリエステル樹脂、生分解性ポリエステルシート、およびポリエステルフィルムを製造した。
【0214】
【表1】
【0215】
(評価例)
[評価例1:平均粒径(D50)および標準偏差]
<芳香族ジカルボン酸の平均粒径(D50)および標準偏差>
粒度分布(PSD)から、粒度分析器のMicrotrac S3500(Microtrac Inc.)を用いて下記条件で芳香族ジカルボン酸(TPAまたはDMT)の平均粒径(D50)および標準偏差(SD)を求めた。
【0216】
―使用環境―
― 温度:10℃~35℃、湿度:90%RH、非凝縮(non-condensing)maximum
― 区間別平均粒度分布であるD50およびSDを測定した。
前記標準偏差は、分散の平方根のことを意味し、ソフトウェアを用いて算出し得る。
【0217】
<ナノセルロースの粒径>
ナノセルロースについて、Zetasizer(登録商標)Nano ZS(Marven社)を用いて、25℃の温度および175°の測定角度で動的光散乱(Dynamic Light Scattering:DLS)の原理により粒度および粒度偏差を測定した。この際、0.5の信頼区間における多分散指数(PdI)により導出されたピーク(peak)値を粒径として測定した。
【0218】
[評価例2:衝撃吸収エネルギー(IA)]
東洋精機社のフィルム衝撃テスト(Film Impact Test)を用いて衝撃吸収エネルギーを評価した。
【0219】
実施例および比較例で製造された生分解性ポリエステル樹脂を用いて、面積10cm×10cmの生分解性ポリエステルシート試験片を、直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー量を厚さで除した値を算出して、衝撃吸収エネルギー(KJ/m)を得た。前記衝撃吸収エネルギー(KJ/m)の算出式は下記の通りである。
【0220】
【0221】
[評価例3:硬度(ショアD)]
ISO 868、ASTM D2240に基づいて、実施例および比較例で製造された生分解性ポリエステル樹脂を用いて、厚さ3mmの生分解性ポリエステルシート試験片を作った後、デフェルスコ(DeFelsko)社のショアD試験機で硬度を測定した。
【0222】
[評価例4:衝撃強度指数(ISI)]
前記衝撃吸収エネルギーおよび硬度の結果を用いて、下記式1で表示される衝撃強度指数(ISI)を算出した。
【0223】
前記式1において、
IAおよびH3Tは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシート試験片で測定された単位を除いた数値であり、
IAは、面積10cm×10cmの試験片を直径16mmおよび高さ14mmの三角錐のヘッドで打撃を加えたときの衝撃吸収エネルギー(KJ/m)であり、
H3Tは、ISO 868、ASTM D2240に基づいて、厚さ3mmの試験片をショアD試験機で測定する際の硬度である。
【0224】
[評価例5:熱収縮率(TS50)]
実施例および比較例で製造された生分解性ポリエステルフィルムを方向に関係なく長さ150mm、幅2cmに切って試験片を作った後、常温における初期長さおよび50℃のコンベンション(熱風)オーブンで5分間滞留した後の生分解性ポリエステルフィルム試験片の長さを測定しており、下記式2にように算出して熱収縮率を評価した。
【0225】

前記式2において、
25は、25℃にて生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の初期長さであり、
50は、50℃の熱風機で5分間滞留した後の生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルフィルム試験片の長さである。
【0226】
[評価例6:熱変形指数(TD50)]
前記熱収縮率(TS50)および衝撃強度指数(ISI)の結果を用いて、下記式3で表示される熱変形指数(TD50)を算出した。
【0227】

前記式3において、TS50およびISIは前記で定義した通りである。
【0228】
[評価例7:貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正接(tanδ)]
動的粘弾性試験機のRDS(Rheometrics Dynamic Spectrometer、TA Instrument社、Discovery HR 30)を用いて、実施例および比較例で製造された生分解性ポリエステルシート試験片の貯蔵弾性率および損失弾性率をそれぞれ測定した。
【0229】
また、前記貯蔵弾性率および損失弾性率の値を用いて、下記式4で表示される損失正接(tanδ)を計算した。
【0230】

前記式4において、
G'は、動的粘弾性測定において240℃および振動数5rad/sにおける前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートの貯蔵弾性率であり、
G''は、動的粘弾性測定において240℃および振動数5rad/sにおける前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートの損失弾性率である。
【0231】
[評価例8:水分解度減少率]
実施例および比較例で製造された生分解性ポリエステルシートを80℃の水(100%R.H)に浸漬した後、水分解度加速化試験を行った。
【0232】
具体的に、脱イオン水(DI Water)500mLに、実施例および比較例のポリエステルシート5gを入れた後、水が蒸発しないように栓で遮断し、コンベクション(熱風)オーブン80℃にて水分解加速化試験を行った。生分解性ポリエステルシートの湿度環境は水に浸漬するため100%R.Hで行うことと同一である。
【0233】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記式5で表示される、初期数平均分子量に対して3ヶ月後の生分解性ポリエステルシートの数平均分子量を比較した。
【0234】
前記式5において、
MnおよびMnは、前記生分解性ポリエステル樹脂から製造された生分解性ポリエステルシートを水に浸漬して、コンベクションオーブンの80℃にて水分解加速化を行った後、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した前記生分解性ポリエステルシートの数平均分子量であって、
Mnは、前記生分解性ポリエステルシートの初期数平均分子量であり、
Mnは、水分解加速化実施3ヶ月後の前記生分解性ポリエステルシートの数平均分子量である。
【0235】
[評価例9:生分解度]
KS M3100―1に基づいて、二酸化炭素の発生量を測定して生分解度を測定した。具体的に、堆肥工場で製造された堆肥のみある接種源容器を準備し、前記堆肥に前記堆肥の乾燥重量の5重量%の試験片を投入した試験容器を準備した。その後、温度58±2℃、含水率50%、および酸素濃度6%以上の条件で180日間培養し、各容器で発生する二酸化炭素を捕集し、これをフェノールフタレイン水溶液で滴定することにより、各容器で発生する二酸化炭素発生量を測定した。測定された二酸化炭素発生量をもって、下記式6に従って生分解度を計算した。
【0236】
【0237】
[評価例10:インフレーション成形性および射出成形性]
<インフレーション成形性>
インフレーション成形機で160℃の温度にて、下から空気を吹き込んでバブル形成を観察し、巻き取りの際にフィルム表面の剥離有無を観察して、インフレーション成形性を下記のように評価した。
○:バブルの形状が片方に偏ったり破れたりすることなく良好であるか、または巻き取りの際、表面同士が貼り付かない場合
△:バブルの形状が若干形を整えているか、片方に若干伸びて偏るがバブルは弾けない場合、または巻き取りの際、表面同士が若干貼り付くが容易に剥離される場合
×:バブルがまともに形を整えていなかったり、片方に伸びて偏ったり、バブルが弾けたりする場合、または巻き取りの際に表面同士が貼り付いて剥離できない場合
【0238】
<射出成形性>
一方、実施例および比較例で調製した生分解性ポリエステル樹脂を用いて、190℃にて約15分間射出成形機を用いて400μm厚の生分解性ポリエステルシートを得た。生分解性ポリエステルシートについて、下記のように射出成形性を評価した。
○:190℃の温度にて射出成形機のモールドに載置して打ち抜く際に、モールドの表面に貼り付かないため容易に脱着するか、または収縮が起こらず変形がない場合
△:190℃の温度にて射出成形機のモールドに載置して打ち抜く際に、モールドの表面に張り付くが脱着が可能で、または収縮が若干起こってやや変形が生じる場合
×:190℃の温度にて射出成形機のモールドに載置して打ち抜く際に、モールドの表面に張り付いて脱着が難しいか、または収縮が生じて変形が起こる場合
【0239】

【0240】
前記表2から分かるように、特定範囲の第1繰り返し単位および第2繰り返し単位の数の比(X/Y)および衝撃強度指数(ISI)の範囲をいずれも満足する実施例の生分解性ポリエステル樹脂を用いると、耐衝撃性および耐久性が全体的に優れていた。
【0241】
具体的に、実施例1~6の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合、衝撃強度指数(ISI)が2.26以上であり、衝撃強度指数(ISI)が1.23~2.12である比較例1~5に比べて向上した。
【0242】
また、実施例1~6の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合、衝撃吸収エネルギーが6KJ/m以上であり、硬度が32以上であり、熱収縮率が30%以下であり、熱変形指数(TD50)も0.15以下であって、生分解は起こりながら耐衝撃性および耐久性が著しく向上しており、インフレーション成形性および射出成形性のいずれも優れていた。
【0243】
一方、比較例1~5の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合、衝撃吸収エネルギーおよび硬度が、実施例1~6の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合より著しく減少しており、熱収縮率も実施例1~6の生分解性ポリエステルフィルムよりも増加した。
【0244】
また、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位との数の比によって、生分解性ポリエステル樹脂、シートまたはフィルムの物性が変わることが確認できた。
【0245】
具体的に、第1ジオール残基および芳香族ジカルボン酸の残基を含む第1繰り返し単位と、第2ジオール残基および脂肪族ジカルボン酸の残基を含む第2繰り返し単位との数の比を満足しない比較例2、3および5の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合、実施例1~6、比較例1および4の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合に比べて、衝撃強度指数(ISI)が著しく減少し、熱変形指数(TD50)が著しく増加しており、インフレーション成形性および射出成形性も非常に劣っていた。
【0246】
さらに、ナノセルロースを添加することにより、生分解性ポリエステル樹脂、シートまたはフィルムの物性が変わることが確認できた。
【0247】
具体的に、ナノセルロースを添加した実施例2および5の場合、衝撃吸収エネルギー、硬度および衝撃強度指数(ISI)が著しく増加しており、熱収縮率および熱変形指数(TD50)も減少して、耐久性および耐衝撃性がさらに向上したことが分かる。特に、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位の数の比が同一である実施例2および4を比較すると、前記ナノセルロースの有無によって衝撃吸収エネルギー、硬度および熱収縮率が変わることが分かる。すなわち、前記ナノセルロースを添加した場合、物性が全体的に増加した。これは、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位の数の比が同一である実施例3および5の場合も同様である。
【0248】
一方、生分解性ポリエステル樹脂の工程条件によって、生分解性ポリエステル樹脂またはフィルムの物性が変わることが確認できた。
【0249】
具体的に、1次および2次エステル化反応を行って調製した実施例1~3及び5の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合、1次エステル化反応のみを行って調製した実施例4の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合に比べ、適正範囲の衝撃強度指数(ISI)および熱変形指数(TD50)を実現するのにより有利であり、物性も向上したことを確認した。
【0250】
さらに、1次および2次エステル化反応を行っても、スラリー前処理を行っていない比較例5の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合、スラリー前処理を行った実施例の生分解性ポリエステル樹脂を用いた場合に比べ、耐衝撃性および耐久性が減少しており、インフレーション成形性および射出成形性も劣っており、多様な用途拡張は難しいと予測される。
【0251】
一方、前記生分解性ポリエステル樹脂の衝撃強度指数(ISI)が増加するほど、衝撃吸収エネルギーおよび硬度が増加することが確認できた。例えば、実施例1~5の生分解性ポリエステル樹脂の場合、衝撃強度指数(ISI)が2.7以上であり、衝撃強度指数(ISI)が2.25である実施例6、および比較例1~5に比べ、衝撃吸収エネルギーおよび硬度がいずれも向上したことが確認できた。
【0252】
特に、第1繰り返し単位の数が、前記第2繰り返し単位の数と同じか、第1繰り返し単位の数がより多い実施例1~5の場合、本発明において目的とする効果が全体的に向上したことが確認できた。
図1