(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ネジ部品締緩装置、ロボット及びグリッパ
(51)【国際特許分類】
B23P 19/06 20060101AFI20240725BHJP
B25B 23/147 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B23P19/06 E
B25B23/147
(21)【出願番号】P 2022517044
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(86)【国際出願番号】 JP2021015947
(87)【国際公開番号】W WO2021215417
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2020076908
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】西宮 民和
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-274475(JP,A)
【文献】特開平07-017444(JP,A)
【文献】特開平01-135437(JP,A)
【文献】特開2023-79034(JP,A)
【文献】中国実用新案第218137696(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/06
B25B 23/14
B25B 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、トルク付与部と、レンチ部と、レバー部と、把握部と、を有するネジ部品締緩装置であって、
前記筐体は、回転軸及び締緩規制部を有し、
前記トルク付与部は、前記回転軸にトルクを付与するように構成され、
前記レンチ部は、前記回転軸と連関部を介して接続されており、前記回転軸と同軸上で回転可能に構成され、
前記レバー部は、前記回転軸と前記連関部を介して接続されており、前記回転軸周りに旋回可能に構成され、
前記締緩規制部は、前記レンチ部の回転を選択的に規制するように構成され、
前記把握部は、前記レバー部の旋回に連動して、搬送物を把握又は解放するように構成され、
前記レンチ部が回転することで、ネジ部品を締緩するように構成され、
前記締緩規制部が前記レンチ部の回転を規制しているときに、前記トルク付与部が前記回転軸と前記連関部を介して前記レバー部を前記回転軸周りに旋回させる、ネジ部品締緩装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のネジ部品締緩装置において、
規制部をさらに備え、
前記レバー部は、前記規制部によってその移動範囲が規制されるように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載のネジ部品締緩装置において、
付勢手段をさらに備え、
前記レバー部は、前記付勢手段と接続され、これにより非動作時には前記非動作時の位置にとどまるように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れかに記載のネジ部品締緩装置において、
前記レンチ部は、前記ネジ部品と嵌合可能な先端部を有し、
前記先端部は、
前記回転軸に沿って押圧されると、その位置を可変に構成され、
付勢手段と接続されている、
ネジ部品締緩装置。
【請求項5】
請求項1~請求項
4の何れかに記載のネジ部品締緩装置において、
前記締緩規制部が前記搬送物に設けられ、
前記締緩規制部によって前記レンチ部の回転が規制されると、前記搬送物は、前記把握部と前記レンチ部とに挟まれて把握されるように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のネジ部品締緩装置において、
前記搬送物は、前記ネジ部品を備え、
前記ネジ部品は、
締結されると、前記ネジ部品が回転しなくなることで前記レンチ部の回転が規制され、
緩められると、前記締緩規制部によって前記レンチ部の回転が規制され、
前記搬送物は、前記把握部と前記レンチ部とに挟まれて把握されるように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項7】
請求項1~請求項
6の何れかに記載のネジ部品締緩装置において、
前記レバー部は、旋回可能な旋回ジョーを備え、
前記把握部は、
前記旋回ジョーに設けられ、
前記旋回ジョーが旋回することによって、前記搬送物を把握するように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項8】
請求項
7に記載のネジ部品締緩装置において、
固定された固定ジョーをさらに備え、
前記把握部は、前記固定ジョーに設けられ、
前記搬送物は、前記固定ジョーと前記旋回ジョーとに挟まれて把握されるように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項9】
請求項1~請求項
7の何れかに記載のネジ部品締緩装置において、
プランジャを備え、
前記プランジャは、
前記レバー部に接続され、
前記レバー部が旋回すると、前後移動するように構成され、
前記把握部は、前記プランジャの前記前後移動に連動して開閉するように構成される、
ネジ部品締緩装置。
【請求項10】
請求項1~請求項
9の何れかに記載のネジ部品締緩装置において、
前記レバー部は、前記回転軸又は前記回転軸を含む平面を中心として対称な形状を有して設けられる、
ネジ部品締緩装置。
【請求項11】
ロボットであって、
アームの先端にネジ部品締緩装置を備え、
前記ネジ部品締緩装置は、
請求項1~請求項
10の何れかに記載のネジ部品締緩装置であり、
前記アームによってその位置を可変に構成される、
ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ部品締緩装置、ロボット及びグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
生産ラインや産業機械等の分野において、ナットランナー等のネジ部品締緩装置が用いられている(特許文献1参照)。このようなネジ部品締緩装置は、大きなトルクをネジ部品に付与するため、その反力が作業者に負荷としてかかることとなり、安全面又は体力面から好ましくない。そこで、他の固定物に当接させることで当該反力の負荷を軽減するレバー部が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年では、ネジ部品の締緩を自動で行いたい需要が高まっている。しかしながら、ロボットのエンドエフェクタに、ネジ部品締緩装置と搬送物を把握するグリッパとの両方を搭載する必要が生じ、重量化して小型のロボットで取り扱うことが困難となる。
【0005】
本発明では上記事情を鑑み、ネジ部品を締緩するにあたって、小型ロボットを用いた自動化を可能とする技術を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、レバー部を有するネジ部品締緩装置が提供される。このネジ部品締緩装置は、1又は複数の把握部と、レンチ部と、トルク付与部とを備える。把握部の少なくとも1つは、移動することで搬送物を把握又は解放するように構成される。レンチ部は、回転軸周りに回転することで、ネジ部品を締緩するように構成される。トルク付与部は、レンチ部とレバー部との間にトルクを付与するように構成される。
【0007】
本発明に係るネジ部品締緩装置では、ネジ部品の締緩だけではなく、そのネジ部品を含む搬送物の搬送も同一の装置で同じ動力源を用いて実施されることで、小型ロボットを用いたネジ部品の締緩の自動化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の斜視図。
【
図2】
図1にネジ部品を含む搬送物9を加えて図示した斜視図。
【
図3】第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1が搬送物9におけるネジ部品を締緩する態様を示す底面図。
【
図5】第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1が搬送物9を把握する態様を示す底面図。
【
図7】第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図。
【
図8】
図7におけるB-B断面図(締緩動作時の態様)。
【
図9】
図8に対応するB-B断面図(把握動作時の態様)。
【
図10】ネジ部品締緩装置1を用いて、搬送物9を搬送して所望の被締緩対象に締緩する動作の流れを示すアクティビティ図。
【
図11】搬送物9がネジ部品の被締緩対象である場合の一例。
【
図12】第1実施形態の変形例2に係るネジ部品締緩装置1の斜視図。
【
図13】第1実施形態の変形例2に係るネジ部品締緩装置1の正面図。
【
図15】第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の斜視図。
【
図16】第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図。
【
図18】第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図。
【
図20】第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1の斜視図。
【
図21】第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組合せ可能である。
【0010】
1.第1実施形態
第1節では、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1について説明する。
【0011】
1.1 ハードウェア構成
まず、ネジ部品締緩装置1のハードウェア構成について説明する。ネジ部品締緩装置1は、不図示のロボットによってその位置を自在に可変に構成されるものである。換言すると、不図示のロボットは、不図示のアームの先端にロボット連結部7を介してネジ部品締緩装置1を備える。このロボットは、アームによってネジ部品締緩装置1の位置を可変に構成される。
【0012】
図1は、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の斜視図であり、特に
図1Aは正面側、
図1Bは背面側をそれぞれ示している。
図2は、
図1にネジ部品を含む搬送物9を加えて図示した斜視図であり、特に
図2Aは正面側、
図2Bは背面側をそれぞれ示している。
図1A及び
図1B等に示されるようにネジ部品締緩装置1は、トルク付与部2と、レンチ部3と、レバー部4と、一対のジョー5と、締緩規制部6と、ロボット連結部7と、筐体8とを備える。このネジ部品締緩装置1は、レンチ部3によるいわゆる“ナットランナーの機能”と、ジョー5によるいわゆる“グリッパの機能”との双方を有する。
【0013】
グリッパの機能によれば、搬送物9を把握して搬送することができる。
図2B等に示されるように、搬送物9は、ネジ部品を有するものであり、第1実施形態では、上物治具91及びボルト93からなる搬送物9を例にとって説明する。この例では、上物治具91を産業機械等の所定位置にボルト93で固定することが想定されうる。以下、ネジ部品締緩装置1に含まれる各構成要素についてさらに説明する。
【0014】
トルク付与部2は、レンチ部3とレバー部4との間にトルクを付与するように構成される。より、具体的には、トルク付与部2は、レンチ部3及びレバー部4が回転規制されるまで、レンチ部3及びレバー部4を互いに逆向きに回転させる。厳密に言えば、まずレンチ部3が回転し、回転規制された後、レバー部4がレンチ部3の回転とは逆向きに旋回する。
【0015】
一方、レンチ部3の回転がネジ部品の座面接触等によって規制され、且つレバー部4の逆向きの旋回が固定物に当接する等して規制されると、レンチ部3とレバー部4との間にトルクが付与される。
【0016】
特に、本実施形態では、トルク付与部2がレンチ部3を回転させることによる“締緩動作”か、あるいは、レンチ部3の回転を意図的に締緩規制部6で規制することで、レバー部4の逆向きの旋回を利用した“把握動作”かを選択することができる。かかる把握動作及び締緩動作については、各動作の項目において詳しく説明する。
【0017】
図3は、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1が搬送物9におけるネジ部品を締緩する態様を示す底面図である。
図4は、
図3におけるA-A断面図である。
図4に示されるように、トルク付与部2の長手方向に沿って延在する回転軸Rが規定され、この回転軸R周りに回転するようなトルクがレンチ部3とレバー部4との間に付与される。トルク付与部2における動力源は特に限定されず、例えば電動モータでもエアモータでもよい。
【0018】
レンチ部3は、ネジ部品(例えばヘッドが六角穴931を有するボルト93やナット等)を締緩するための部材であり、トルク付与部2によって回転可能に構成されている(
図4参照)。トルク付与部2とレンチ部3とがネジ部品締緩装置1の内部において嵌合し、トルク付与部2からレンチ部3にトルクが伝達される。詳細な構成要素(例えばシャフト、クラッチ、遊星ギヤ等)の連関的な配置については図示していないが、特に限定されるものではない。
【0019】
レンチ部3は、回転軸R周りに回転することで、搬送物9に含まれるネジ部品を締緩するように構成される。より詳細には、レンチ部3は、その先端部においてネジ部品と嵌合可能な六角レンチ31を有する。六角レンチ31にネジ部品が嵌合した状態で六角レンチ31が回転することで、ネジ部品の締緩動作が実行される。六角レンチ31は、回転軸Rに沿って押圧されると、その位置を可変に構成されている。また、六角レンチ31は、バネ33(付勢手段の一例)と接続され、これにより定常時には基本位置にとどまるように構成される。
【0020】
このような構成によって、ボルト93の六角穴931に六角レンチ31を挿入する際の回転位置のアライメントが容易になる。また、ボルト93を緩める際に急にボルト93が飛び出すような事態が起きても、六角レンチ31が押し出されてバネ33によってその衝撃が吸収される。さらに、ボルト93を回転させるとボルト93は回転軸Rに沿って移動するが、バネ33によってその変位が吸収されることで、六角レンチ31と嵌合した状態が維持される。
【0021】
前述の通り、トルク付与部2は、レンチ部3とレバー部4との間にトルクを付与する。したがって、レバー部4は、レンチ部3とは逆向きの旋回を行って固定物等に当接すると、レンチ部3がネジ部品を締め付けるトルクとは逆向きの反力となるトルクを受けることになる。一般的には、ネジ部品の締め付けは大きなトルクが必要だが、レバー部4も同様に大きなトルクが付与される。
【0022】
詳細には、
図2Aに示されるように、ネジ部品の締緩に際しては、後述の旋回ジョー52を搬送物9に当接させてレバー部4からの反力を伝える。また、レバー部4が旋回する方向に何らかの固定物を配置し、これと当接させるように実施してもよい。
【0023】
ところで、本実施形態に係るネジ部品締緩装置1では、レバー部4は、その旋回に連動して、把握部50の少なくとも1つを移動させるように構成される。具体的には、
図1A及び
図2A等に示されるように、レバー部4はL字形状をしており、その下端に回転軸R周りに旋回可能な旋回ジョー52が設けられ、旋回ジョー52に把握部50が設けられ、レバー部4の旋回に連動して、旋回ジョー52が旋回するという構成である。
【0024】
一対のジョー5は、搬送物9を把握可能な把握部50を夫々有する。把握部50の少なくとも1つは、移動することで搬送物9を把握又は解放するように構成される。すなわち、把握部50同士が近づく方向に一対のジョー5を移動させると、搬送物9を把握することができる。一方、その状態から遠ざかる方向にジョー5を移動させると、把握部50による搬送物9の把握が解放される。また、例えば搬送物9に凹部(不図示)が形成され、その内側を内径把握する場合は、把握部50同士が遠ざかる方向に一対のジョー5を移動させると、搬送物9を把握することができる。また、その状態から近づく方向にジョー5を移動させると、把握部50による搬送物9の把握が解放される。
【0025】
図5は、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1が搬送物9を把握する態様を示す底面図である。
図6は、
図5におけるB-B断面図である。
図5に示されるように、本実施形態に係るネジ部品締緩装置1では、一対のジョー5は、固定された固定ジョー51と、旋回可能な旋回ジョー52とを有する。
図3に示される状態から、
図5に示される状態のように、旋回ジョー52が回転軸R周りに旋回することによって、把握部50が搬送物9を把握するように構成される。換言すると、搬送物9は、固定ジョー51及び旋回ジョー52と挟まれて把握されるように構成される。さらに換言すると、夫々に設けられた把握部50によって挟まれて把握される。
【0026】
なお、本実施形態では、把握部50として複数の把握部50a~50cが形成され、複数種類の搬送物9を把握可能な構成を有している。具体的には、
図5に示される例において、把握部50aによって搬送物9が把握されているが、把握部50bを用いてより大型の搬送物9(不図示)を把握させてもよい。さらに、把握部50cを用いて不図示のワークを把握させてもよい。
【0027】
なお、
図4及び
図6を比較することから分かるように、搬送時に把握部50が搬送物9を把握している状態では、回転軸Rと搬送物9におけるボルト93の中心とがずれた状態になる。したがって、搬送完了から締緩開始に際しては、把握部50の把握を解放して搬送物9をいったん所定の位置に配置し、不図示のロボットによってネジ部品締緩装置1の位置を微調整して回転軸Rと搬送物9におけるボルト93の中心との位置合わせを行ってから、締緩動作が実行されるとよい。
【0028】
ところで、一般的なグリッパの一対のジョー5は、同一直線状に配置され、当該直線状に開閉移動することで把握及び解放がなされる。一方、本実施形態では、回転軸R周りの旋回とトルクによる把握のため、把握部50を回転軸Rに対して位置関係の取り方により、把握ストロークや把握力が可変に構成されている。特に、ボルト93の締付けトルクを十分に得るためにトルク付与部2が大きなトルクを発生させる性能を有しており、レバー部4に作用させるトルクも大きく設定できることから、一般的なグリッパよりも大きな把握力を実現することができる。旋回ジョー52に形成された把握部50を回転軸Rに対して近い位置であるように設計すると、より大きな把握力を実現することとなり、一方で、把握部50を回転軸Rに対して遠い位置であるように設計すると、グリッパとしての把握ストロークを大きくすることができる。
【0029】
図7は、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図である。
図8は、
図7におけるC-C断面図であり、特に締緩動作時の態様を示している。
図9は、
図8に対応するC-C断面図であり、特に把握動作時の態様を示している。
図8及び
図9に示されるように、ネジ部品締緩装置1(筐体8)は、規制部82をさらに備えている。レバー部4は、規制部82によってその旋回範囲が規制されるように構成される。より正確には、規制部82は筐体8に設けられた当て部であり、旋回ジョー52と接続されたレバー部4が当て部である規制部82に当接することで、旋回ジョー52の旋回範囲が規制されている。また、搬送物9を把握するにあたって、まずレバー部4を規制部82に当接させることが好ましい。このような構成により、搬送物9を把握させる前準備として、一対のジョー5を開いた位置にすることができる。
【0030】
さらに、レバー部4が不図示の付勢手段と接続され、これによって付勢されることで、定常時(例えば非動作時)には基本位置にとどまるように構成されることが好ましい。これにより、ネジ部品締緩装置1をボルト締緩位置に移動させる際に、旋回ジョー52が搬送物9に衝突することが防止される。
【0031】
締緩規制部6は、ネジ部品締緩装置1の把握動作と締緩動作とを切り換えるための手段である。締緩規制部6は、第1状態(
図9参照)及び第2状態(
図8参照)を選択可能に構成される。第1状態では、締緩規制部6は、レンチ部3と接触することによって、レンチ部3の回転が規制される。具体的には、
図8及び
図9に示されるように、締緩規制部6は、ピン61を有し、ピン61の挿入又は抜出が選択可能に構成されている。ピン61がレンチ部3に設けられたピン挿入孔32に挿入されることによって、レンチ部3の回転が規制される。ピン61の駆動方法は特に限定されず、例えば不図示のエアシリンダ又は電動アクチュエータによって実現されればよい。
【0032】
締緩規制部6により回転が規制されると、レバー部4の旋回に連動してジョー5(把握部50)が移動し、これにより、搬送物9が把握されるように構成される。具体的には、まず搬送物9の把握前にレバー部4を規制部82に当接するように旋回させて把握部50が開いた状態にする。続いて、ロボットを制御して搬送物9の把握位置にネジ部品締緩装置1を移動させるとともに、固定ジョー51と搬送物9とを接近又は軽く当接させる。続いて、レバー部4の旋回によって旋回ジョー52を旋回させて把握部50を搬送物9に当接させることで、搬送物9が一対の把握部50に挟まれた状態となる。この状態でトルク付与部2がトルクを付与することで、搬送物9に対する把握力が発生する。また、トルク付与部2の動作を切り替えてレバー部4を逆旋回させると、搬送物9の把握が解放される。
【0033】
ロボット連結部7は、ネジ部品締緩装置1を具備されるロボットとの連結インターフェースである。ロボット連結部7を介して、ネジ部品締緩装置1の位置をロボットによって制御させることができる。なお、ロボット連結部7の具体的な構成は特に限定されるものではなく、当業者の仕様に沿ったものでよい。また、ロボット連結部7と不図示のロボットとの間には、必要に応じて位置誤差修正装置(不図示)や、バネなどで構成された弾性装置等(不図示)が設けられてもよい。位置誤差修正装置は、ネジ部品締緩装置1が把握した搬送物9を隙間に余裕がない場所に嵌め込む動作をロボットが行う場合に、ロボットの位置決め誤差を補正するように構成される。また、ネジ部品締緩装置1がトルク発生時の振動を有する場合に、この振動を吸収するように構成される。すなわち、不図示のロボットによるロボット位置決め誤差を位置誤差修正装置によって補正することができる。また、位置誤差修正装置は、弾性装置を備え、所望位置に復帰するように構成されてもよい。
【0034】
筐体8は、トルク付与部2と、レンチ部3と、レバー部4との接続部分を覆うように構成されている。また、締緩規制部6によってレンチ部3の回転を規制すると、レバー部4と筐体8の間にトルクがかかる構成となっている。
図1A等に示されるものはあくまでも例示であり、形状等は特に限定されるものではない。
【0035】
1.2 動作の流れ
続いて、ロボットに具備されるネジ部品締緩装置1の動作を説明する。
図10は、ネジ部品締緩装置1を用いて、搬送物9を搬送して所望の被締緩対象に締緩する動作の流れを示すアクティビティ図である。以下、
図10の各アクティビティに沿って説明する。
【0036】
[開始](アクティビティA1)不図示のロボットが動作を開始する。まず、第1状態(把握動作)とするために、締緩規制部6におけるピン61をアクチュエータ等で付勢しながら、ピン挿入孔32に挿入する。逆向きに旋回する把握部50が開く方向にレンチ部3を回転させる。なお厳密に言えば、挿入の位置合わせのためにレンチ部3を若干回転させる必要がある。ピン61を挿入後、レバー部4は規制部82と当接して位置が決まる。開始時に第1状態である場合は、このアクティビティを省略することができる。
【0037】
(アクティビティA2)続いて、把握部50に搬送物9を把握させるために、ジョー5を搬送物9に近接させる。これは、予め定められた位置に搬送物9が載置され、オープンループ制御によって、この位置にジョー5を近接させてもよいし、カメラ等のセンサを用いたフィードバック制御によって、ジョー5を搬送物9に近接させてもよい。あるいは、これらを組み合わせてもよい。
【0038】
(アクティビティA3)続いて、トルク付与部2がレバー部4及びこれに接続された旋回ジョー52を旋回させる。これにより、把握部50が搬送物9を把握する。
【0039】
(アクティビティA4)続いて、搬送物9が把握部50に把握された状態のまま、ロボットによって搬送物9が所望の位置に搬送される。この搬送についても、オープンループ制御又はフィードバック制御が用いられる。
【0040】
(アクティビティA5)続いて、ピン61をピン挿入孔32から抜き出して、第2状態(締緩動作)とする。
【0041】
(アクティビティA6)続いて、搬送物9に含まれるボルト93の六角穴931と、レンチ部3における六角レンチ31とを嵌合させ、且つ旋回ジョー52が搬送物9に近接する位置にネジ部品締緩装置1を移動させる。
【0042】
(アクティビティA7)続いて、トルク付与部2が、ネジ部品の座面に当接するまでレンチ部3を回転させた後、レンチ部3とレバー部4との間にトルクを付与する。これにより、ボルト93が所望の被締緩対象に締結される。
【0043】
(アクティビティA8)最後に、ロボットがネジ部品締緩装置1を定常位置に戻す。[終了]
【0044】
このようなネジ部品締緩装置1を用いることで、ロボットのエンドエフェクタに、ネジ部品締緩装置と、グリッパとの両方を搭載する必要がなくなり、小型ロボットを用いたネジ部品の締緩の自動化が実現されうる。1台の小型ロボットに対して、わざわざネジ部品締緩装置を搭載したエンドエフェクタと、グリッパを搭載したエンドエフェクタとを毎回付け替える手間もなく、より効率的な環境が実現されうる。あるいは、搬送用のロボットと、締緩用のロボットとを別個に準備する必要がなくなり、コストの増加やロボット同士の物理的干渉等の問題を解消することができる。
【0045】
1.3 変形例
続いて、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の変形例について説明する。
【0046】
(変形例1)
前述の第1実施形態では、締緩規制部6がネジ部品締緩装置1に設けられ、搬送物9が上物治具91及びボルト93であって上物治具91が所望の被締緩対象にボルト93を介して締緩される場合について説明した。一方、搬送物9そのものが被締緩対象であり、且つ締緩規制部6が搬送物9からなる場合がある。
図11は、搬送物9がネジ部品の被締緩対象であり、ネジ部品を備える場合の一例を示しており、特に
図11Aは、ボルト93を介して搬送物9を把握する場合、
図11Bはボルト93を介さずに搬送物9を把握する場合を示している。変形例1に係るネジ部品締緩装置1は、このような搬送物9に対して有効なものである。
【0047】
図11Aに示されるように、搬送物9は、締緩規制部6からなり、上物治具91と、Tナット92と、六角穴931を有するボルト93(ネジ部品の一例)と、ピン94と、ピン95とを備える。Tナット92にはネジ孔921が設けられており、ボルト93を締緩させることで、上物治具91とTナット92との締付け具合を調整することができる。なお、締め付けられた状態からボルト93を緩めると、ボルト93がピン95を押圧することによって、上物治具91がTナット92から徐々に離間する。さらに、一定以上緩めると、ピン94とTナット92との干渉によって上物治具91とTナット92とが離間しなくなる。このように離間しなくなった状態を規制状態と呼ぶことにする。
【0048】
六角レンチ31がボルト93の六角穴931に挿入された状態で、ボルト93を緩めて規制状態に到達すると、ボルト93の回転が規制される。換言すると、六角レンチ31を含むレンチ部3の回転が規制されるため、トルク付与部2がレバー部4を、六角レンチ31と逆向きに旋回させて旋回ジョー52に設けられた把握部50が搬送物9を把握する。つまり、ネジ部品が搬送物9に締緩(特に、上物治具91とTナット92を乖離させる方向に締結)されると、レンチ部3の回転が規制され、レバー部4の旋回に連動して旋回ジョー52が旋回し、これにより、搬送物9が把握部50によって把握されるように構成されている。この状態では、搬送物9は、旋回ジョー52(把握部50)と六角レンチ31(レンチ部3)とに挟まれて把握されることとなる。このように、六角レンチ31の回転を用いて、締緩動作と把握動作との両方が実現できるため、変形例1のネジ部品締緩装置1は、固定ジョー51を具備しなくてもよい。
【0049】
また、
図11Bに示されるように、締緩規制部6が搬送物9に設けられるように実施してもよい。このようなネジ部品締緩装置1は、ボルト93(ネジ部品)を使わずに、上物治具91に設けられた締緩規制部6を利用して把握することができる。上物治具91には、六角穴961を有するプラグ96が締緩規制部6としてねじ込まれ、固定されている。このプラグ96の六角穴961に六角レンチ31を嵌合させ、トルク付与部2を動作させると、レンチ部3の回転が規制されているので、搬送物9は、把握部50と六角レンチ31(レンチ部3)とに挟まれて把握される。なお、締緩規制部6が必ずしも六角穴961を有するプラグ96である必要はなく、上物治具91に長穴や溝などを設けて、締緩規制部6としてもよい。
【0050】
(変形例2)
図12は、第1実施形態の変形例2に係るネジ部品締緩装置1の斜視図であり、特に
図12Aは正面側、
図12Bは背面側をそれぞれ示している。
図13は、第1実施形態の変形例2に係るネジ部品締緩装置1の正面図である。
図14は、
図13におけるD-D断面図である。この変形例2に係るネジ部品締緩装置1は、前述の変形例1に係るネジ部品締緩装置1同様、搬送物9そのものが被締緩対象となる場合に有効である。
【0051】
変化例2に係るネジ部品締緩装置1は、第1実施形態又はその変形例1に係るネジ部品締緩装置1とは異なり、一対のジョー5が固定ジョー51を有していない。換言すると、レバー部4は、コの字形状をしており、その下端に回転軸R周りに旋回可能な一対の旋回ジョー52が設けられ、レバー部4の旋回に連動して、旋回ジョー52が旋回する構成である。また、各旋回ジョー52には把握部50が設けられている。なお、把握部50は、別部材が一体となるように設けられてもよいし、旋回ジョー52に一体に形成されてよい。
【0052】
なお、変形例1と同様、搬送物9は、旋回ジョー52と六角レンチ31(レンチ部3)とに挟まれて把握されることとなるため、1つの旋回ジョー52だけを有するように実施しても機能するが、把握時に姿勢を安定させるためには、一対の旋回ジョー52を有することが好ましい。
【0053】
また、変形例2では、筐体8に一対のスプリングプランジャ81が設けられており、このスプリングプランジャ81が、レバー部4における一対のサラ穴43に対して両側から付勢していることに留意されたい。このような構成により、定常時には基本位置にとどまるため姿勢がより安定する。
【0054】
2.第2実施形態
第2節では、第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1について説明する。ただし、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1との共通部分についてはその説明を省略する。
【0055】
図15は、第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1の斜視図であり、特に
図15Aは正面側、
図15Bは背面側をそれぞれ示している。
図16は、第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図である。
図17は、
図16におけるE-E断面図であり、特に締緩動作時の態様を示している。
図18は、第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図である。
図19は、
図18におけるF-F断面図であり、特にレバー部4と同期型ジョー53との位置関係を示している。
【0056】
第1実施形態(変形例1,2を含む)に係るネジ部品締緩装置1では、一対のジョー5が回転軸Rに平行な方向に延在し且つこれに対して対向するように設けられていたが、第2実施形態では、回転軸Rに直交する方向に延在するようなジョー5が設けられている。ここでのジョー5は、同期型ジョー53である。
【0057】
同期型ジョー53は、一対の開閉ジョー531を有し、一対の開閉ジョー531(把握部50)が後述のプランジャ532の前後移動に連動して開閉するように構成されている。このプランジャ532は、レバー部4に接続され、レバー部4が旋回すると、前後移動するように構成されるものである。具体的には、
図19に示されるように、プランジャ532には溝533が設けられ、溝533にレバー部4における突起44が嵌合している。また、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1は、第1実施形態(変形例1,2を除く)に係るネジ部品締緩装置1と同様に、レンチ部3の回転を規制する締緩規制部6を備えているが、エアシリンダ又は電動アクチュエータ式ではなく機械式のものが採用されている。
図15A及び
図15B等に示されるように、第2実施形態に係る締緩規制部6は、押下部63と、横ピン64とを備えている。押下部63を押下すると、ピン61がピン挿入孔32に挿入されてレンチ部3の回転が規制される。一方、横ピン64を旋回させると、ピン61がピン挿入孔32から抜出されてレンチ部3の回転の規制が解消される。かかる押下動作や旋回動作は、ネジ部品締緩装置1をロボット連結部7を介して備える不図示のロボットによって実施されることが好ましい。
【0058】
このような構成により、第1状態(把握動作)において、トルク付与部2がレバー部4を回転軸R周りに反時計回りに旋回させると、プランジャ532がその長手方向に引っ張られる(紙面上方向に移動)。これにより、一対の開閉ジョー531(把握部50)が同期して閉方向に移動して搬送物9に当接する。この状態からトルク付与部2がトルクを付与することで搬送物9に対して把握力を発生させる。一方、トルク付与部2の動作を切り替えて、トルク付与部2がレバー部4を回転軸R周りに時計回りに旋回させると、プランジャ532がその長手方向に押し出される(紙面下方向に移動)。これにより、一対の開閉ジョー531が同期して開方向に移動することで搬送物9の把握が解放される。
【0059】
なお、
図19に示されるように、第1実施形態同様に、筐体8に規制部82が設けられており、レバー部4が規制部82に当接することによってレバー部4の旋回範囲が規制されている。また、プランジャ532の前後移動を開閉ジョー531の開閉移動に変換する構成要素の連関的な配置については図示していないが、特に限定されるものではない。
【0060】
また、
図16等に示されるように、第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1では、レバー部4が当接部45を備えている。搬送物9に含まれるボルト93を締緩する際には、搬送物9の姿勢を維持するように搬送物9と当接部45とが当接される。
【0061】
このようなネジ部品締緩装置1を用いることで、ロボットのエンドエフェクタに、ネジ部品締緩装置と、グリッパとの両方を搭載する必要がなくなり、小型ロボットを用いたネジ部品の締緩の自動化が実現されうる。1台の小型ロボットに対して、わざわざネジ部品締緩装置を搭載したエンドエフェクタと、グリッパを搭載したエンドエフェクタとを毎回付け替える手間もなく、より効率的な環境が実現されうる。あるいは、搬送用のロボットと、締緩用のロボットとを別個に準備する必要がなくなり、コストの増加やロボット同士の物理的干渉等の問題を解消することができる。さらに、グリッパ開閉用の動力を内蔵する必要がなくなる。
【0062】
3.第3実施形態
第3節では、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1について説明する。ただし、第1及び第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1との共通部分についてはその説明を省略する。
図20は、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1の斜視図であり、特に
図20Aは正面側、
図20Bは背面側をそれぞれ示している。
図21は、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1の正面図である。
図22は、
図21におけるG-G断面図であり、特にレバー部4と旋回ジョー52との位置関係を示している。
【0063】
第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1は、
図1A等に示されるように、レバー部4が回転軸Rに対して片側だけに具備されるものであった。一方、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1では、
図20に示されるように、レバー部4が回転軸R又は回転軸Rを含む平面を中心として対称な形状を有して設けられている。締緩動作の際には、回転軸Rの両側に位置するレバー部4の当接部45に搬送物9が挟まれるように構成されている。第1実施形態のようにレバー部4を非対称に実施すると、ネジ部品の寸法差、旋回ジョー52の寸法誤差、又は各部のガタ等の要因により、力のバランスが悪くなり、本来意図する回転方向でない向きに力がかかりロボットに負荷をかけてしまう可能性がある。一方、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1のように、レバー部4を回転軸R、又は回転軸Rを含む平面を中心とした対称形状にすると、左右の当接部45によって均衡がとれ、かかる問題点が解消される。
【0064】
すなわち、
図20に示されるように、対称形状のレバー部4は、一対の当接部45を備え、これらの間に搬送物9がラフに嵌まり込む程度の間隔が維持されるとよい。搬送物9に含まれるボルト93を締緩する際には、搬送物9の姿勢を維持するように搬送物9と一対の当接部45とが当接される。特にレバー部4がネジ部品締緩装置1に対して着脱可能に構成されるとよい。つまり、搬送物9の大きさに合わせて、一対の当接部45が異なる間隔であるようなレバー部4を装着することが好ましい。着脱可能な設計については特に限定されるものではなく、例えば、レバー部4を、取付座と当接部45を備える部品との2つに分割して実施することが考えられる。
【0065】
また、第3実施形態に係るネジ部品締緩装置1は、第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1と同様に、回転軸Rに直交する方向に延在するようなジョー5が設けられている。ここでの一対のジョー5は、一方が固定された固定ジョー51であり、他方がレバー部4と接続された旋回ジョー52である。
【0066】
トルク付与部2がレバー部4を回転軸R周りに反時計回りに旋回させると、旋回ジョー52(把握部50)が固定ジョー51(把握部50)に近づく方向に旋回して搬送物9に当接する。この状態からトルク付与部2がトルクを付与することで搬送物9に対して把握力を発生させる。一方、トルク付与部2の動作を切り替えて、トルク付与部2がレバー部4を回転軸R周りに時計回りに旋回させると、旋回ジョー52が固定ジョー51から遠ざかる方向に旋回して搬送物9の把握が解放される。なお、
図22に示されるように、第1及び第2実施形態同様に、筐体8に規制部82が設けられており、レバー部4が規制部82に当接することによって旋回ジョー52の旋回範囲が規制されている。また、旋回ジョー52の旋回角によらず搬送物9の姿勢を安定させるために、旋回ジョー52における搬送物9との接触部位(把握部50)は、R形状部521として形成されることが好ましい。
【0067】
このようなネジ部品締緩装置1を用いることで、ロボットのエンドエフェクタに、ネジ部品締緩装置と、グリッパとの両方を搭載する必要がなくなり、小型ロボットを用いたネジ部品の締緩の自動化が実現されうる。1台の小型ロボットに対して、わざわざネジ部品締緩装置を搭載したエンドエフェクタと、グリッパを搭載したエンドエフェクタとを毎回付け替える手間もなく、より効率的な環境が実現されうる。あるいは、搬送用のロボットと、締緩用のロボットとを別個に準備する必要がなくなり、コストの増加やロボット同士の物理的干渉等の問題を解消することができる。
【0068】
4.その他
前述の各実施形態を以下の態様によって実施することもできる。
(1)第1実施形態に係るネジ部品締緩装置1において、機械式の締緩規制部6を採用してもよい。同様に、第2実施形態に係るネジ部品締緩装置1において、エアシリンダ又は電動アクチュエータ式の締緩規制部6を採用してもよい。
(2)ネジ部品締緩装置1とは別に、固定ジョー51と、旋回ジョー52とを備えるグリッパを単独で実施してもよい。すなわち、このグリッパは、旋回ジョー52が旋回することによって、固定ジョー51との間に把握力を発生させるように構成される。特に、一般的なグリッパよりも大きな把握力を有するグリッパを実現することができる。旋回ジョー52を回転軸Rに対して近い位置であるように設計すると、より大きな把握力を実現することとなり、一方で、旋回ジョー52を回転軸Rに対して遠い位置であるように設計すると、グリッパとしての把握ストロークを大きくすることができる。
(3)前述の実施形態では、レンチ部3の先端に六角レンチ31が配置されている場合を説明したが、あくまでも一例であり、ネジ部品の形状(例えば、トルクス(登録商標)、スプライン、板形状、十字形状、複数のピン等)に合わせたものが適宜採用されるとよい。
(4)一対のジョー5を、ネジ部品を含む搬送物9を把握・搬送するものとして説明したが、これとは別に、ワークを把握可能な一対のジョー5を実施してもよい。すなわち、ジョー5が搬送物9を把握する位置とは別の位置でワークを把握する形態等が想定されうる。
(5)一対のジョー5を設けず、把握部50がレバー部4に形成されていてもよい。
(6)固定ジョー51が筐体8と一体に形成されていてもよい。
(7)第2実施形態では、同期型ジョー53が一対の開閉ジョー531からなる例を示しているが、開閉ジョー531が3つあるいはそれ以上からなる同期型ジョー53を採用してもよい。
(8)締緩規制部6は、ピン61とピン挿入孔32との構成に限定されず、例えば、ギヤの歯の噛み合わせで規制してもよい。また、ドラムブレーキやディスクブレーキ構造の摩擦力によって規制してもよい。さらに、嵌合等の当接に限らず、磁石やコイル等による電磁気力や流体等を使用した非接触による規制であってもよい。
(9)締緩規制部6は、レンチ部3のトルクを筐体8に伝達するように構成されていれば良く、動摩擦力等によりトルクが伝達されれば、把握に必要なレバー部4の旋回やトルクは確保される(ブレーキをかけながら回転している状態)ため、必ずしもレンチ部3の回転を停止させる必要はない。
(10)締緩規制部6は、トルク付与部2に内蔵されてもよい。具体的には、内蔵するギヤの回転を規制する方法や、内部にクラッチを設けることで規制する方法が想定されうる。
【0069】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記ネジ部品締緩装置において、前記レバー部は、当該レバー部の旋回に連動して、前記把握部の少なくとも1つを移動させるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、締緩規制部をさらに備え、前記締緩規制部は、第1及び第2状態を選択可能に構成され、前記第1状態において、前記レンチ部の回転を規制するように構成され、前記締緩規制部により前記回転が規制されると、前記レバー部の旋回に連動して前記把握部が移動し、これにより、前記搬送物が把握されるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、規制部をさらに備え、前記レバー部は、前記規制部によってその移動範囲が規制されるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、付勢手段をさらに備え、前記レバー部は、前記付勢手段と接続され、これにより定常時には基本位置にとどまるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、前記レンチ部は、前記ネジ部品と嵌合可能な先端部を有し、前記先端部は、前記回転軸に沿って押圧されると、その位置を可変に構成され、付勢手段と接続され、これにより定常時には基本位置にとどまるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、前記把握部はレバー部に設けられ、締緩規制部が前記搬送物に設けられ、前記締緩規制部によって前記レンチ部の回転が規制されると、前記搬送物は、前記把握部と前記レンチ部とに挟まれて把握されるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、前記搬送物は、前記ネジ部品を備え、前記ネジ部品が締緩されると、前記レンチ部の回転が規制され、前記搬送物は、前記把握部と前記レンチ部とに挟まれて把握されるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、前記レバー部は、旋回可能な旋回ジョーを備え、前記把握部は、前記旋回ジョーに設けられ、前記旋回ジョーが旋回することによって、搬送物を把握するように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、固定された固定ジョーをさらに備え、前記把握部は、前記固定ジョーに設けられ、前記搬送物は、前記固定ジョーと前記旋回ジョーとに挟まれて把握されるように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、プランジャを備え、前記プランジャは、前記レバー部に接続され、前記レバー部が旋回すると、前後移動するように構成され、前記把握部は、前記プランジャの前記前後移動に連動して開閉するように構成される、もの。
前記ネジ部品締緩装置において、前記レバー部は、前記回転軸又は前記回転軸を含む平面を中心として対称な形状を有して設けられる、もの。
ロボットであって、アームの先端にネジ部品締緩装置を備え、前記ネジ部品締緩装置は、前記ネジ部品締緩装置であり、前記アームによってその位置を可変に構成される、もの。
もちろん、この限りではない。
【0070】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0071】
1:ネジ部品締緩装置、2:トルク付与部、3:レンチ部、33:バネ、4:レバー部、5:ジョー、50:把握部、50a:把握部、50b:把握部、50c:把握部、51:固定ジョー、52:旋回ジョー、53:同期型ジョー、532:プランジャ、6:締緩規制部、61:ピン、81:スプリングプランジャ、82:規制部、9:搬送物、91:上物治具、93:ボルト、R:回転軸