(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電気化学デバイス及びこれを備える電気機器
(51)【国際特許分類】
H01M 4/64 20060101AFI20240725BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20240725BHJP
【FI】
H01M4/64 A
H01M50/531
(21)【出願番号】P 2022526300
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 CN2021128780
(87)【国際公開番号】W WO2022267294
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】202110694180.8
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】張 益博
(72)【発明者】
【氏名】魏 紅梅
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106684458(CN,A)
【文献】国際公開第2012/127561(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105489836(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/64-4/84
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極シートと、第1端子と、第2端子とを含み、
前記第1電極シートは、複合集電体を含み、
前記複合集電体は、対向して配置される第1表面及び第2表面を有する下地層と、
前記第1表面に設けられた第1導電層と、
前記第2表面に設けられた第2導電層と、を含み、
ここで、前記第1導電層は、第1領域及び第2領域を含み、
前記第1領域は、加熱領域として、
電気化学デバイスを加熱する領域であり、前記第2領域は、塗布領域として、活性材料層を配置する領域であり、
前記第1端子及び前記第2端子は、前記第1領域に電気的に接続されていることを特徴とする電気化学デバイス。
【請求項2】
前記第1端子と前記第2端子との間に第1抵抗R1を有し、R1≧5mΩを満たす、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
正極タブと負極タブとをさらに備え、前記正極タブと前記負極タブとの間に内部抵抗Rを有し、0.05≦R1/R≦5000を満たす、請求項2に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記第2導電層は、第3領域及び第4領域を含み、
前記第3領域は、加熱領域として、前記電気化学デバイスを加熱する領域であり、前記第4領域は、塗布領域として、活性材料層を配置する領域であり、
前記電気化学デバイスは、第3端子及び第4端子をさらに含み、
前記第3端子と前記第4端子は、前記第3領域に電気的に接続され、
前記第3端子と前記第4端子との間に第2抵抗R2を有し、R2≧5mΩを満たす、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
以下の条件の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
i)前記第1領域は、前記第2領域から一体的に延びて形成される。
ii)前記第1領域は、前記複合集電体の長手方向の端部に位置している。
iii)前記第1領域がパターンを含み、
前記パターンの形状は、波形状またはジグザグ状の少なくとも1つを含む。
【請求項6】
以下の条件の少なくとも1つを満たすことを特徴とする請求項4に記載の電気化学デバイス。
iv)前記第3領域は、前記第4領域から一体的に延びて形成される。
v)前記第3領域は、前記複合集電体の長手方向の端部に位置している。
vi)前記第3領域は、パターンを含む。
【請求項7】
以下の条件を満たすことを特徴とする請求項4に記載の電気化学デバイス。
a)前記第1領域、前記第2領域、前記第3領域または前記第4領域の材質は、それぞれ独立に、ニッケル、チタン、銅、銀、金、白金、鉄、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、鉛、インジウムまたは亜鉛の少なくとも1つを含む。
b)前記第1導電層の空孔率が0~60%の範囲であり、第2導電層の空孔率が0~60%の範囲である。
c)前記第1導電層の厚み範囲が0.1μm~10μmであり、前記第2導電層の厚み範囲が0.1μm~10μmである。
d)前記下地層の材質がポリマーを含む。
e)前記下地層の空孔率の範囲が0%~50%である。
f)前記下地層の厚みが1μm~20μmの範囲にある。
g)前記第1電極シートは、前記第2領域の表面に設けられた第1活性材料層をさらに含む。
h)前記第1電極シートは、前記第4領域の表面に設けられた第2活性材料層をさらに含む。
【請求項8】
以下の条件の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項1に記載の電気化学デバイス。
i)前記下地層と前記第1導電層との間には、接着剤を含む接着層が設けられている。
j)前記下地層と前記第2導電層との間には、接着剤を含む接着層が設けられている。
【請求項9】
前記接着層は、導電剤をさらに含み、且つ以下の条件の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項8に記載の電気化学デバイス。
(k)前記接着剤は、ポリアミド、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸エステル系ポリマー、海蓚酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルキトサン、ゼラチン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンオキシド、シリコーン樹脂、エチレンアクリル酸共重合体及びその誘導体のうちの少なくとも1つを含む。
l)前記導電剤が、カーボンナノチューブ、導電カーボン又はグラフェンのうちの少なくとも1つを含む。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の電気化学デバイスを有する電気機器。
【請求項11】
前記電気機器は、スイッチをさらに備え、且つ以下の条件の少なくとも一方を満たすことを特徴とする請求項10に記載の電気機器。
1)前記電気化学デバイスの温度がT1より低い場合、前記スイッチを閉じて、前記第1領域に電流を流す。
2)前記第2導電層は、第3領域を含み、前記第3領域は、加熱領域として、前記電気化学デバイスを加熱する領域であり、
前記電気化学デバイスは、第3端子及び第4端子をさらに含み、
前記第3端子と前記第4端子は、前記第3領域に電気的に接続され、
前記電気化学デバイスの温度がT1より低い場合、前記スイッチを閉じて、前記第3領域に電流を流す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2021年6月22日に提出された中国特許出願202110694180.8の優先権を主張する。
本願は、電池の技術分野に関し、特に、電気化学デバイス及びこれを備える電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の使用は温度に大きく影響されることが知られている。通常、低温環境ではその充電能力が低下して容量が完全に発揮されず、電子コンダクタンス及びイオンコンダクタンスが低下して動力学性能が急激に低下するため、リチウムイオン電池が高倍率充電過程においてリチウム析出が起こり、電池界面を劣化させ、安全リスクがある。同時に、低温環境下では、電池活性材料の容量が低下し、電圧プラトーが低下し、電池のエネルギー密度が損なわれる。
【0003】
従来のリチウムイオン電池の低温性能を向上させる方法には、主に電池を加熱することがある。通常の加熱方式は、外部加熱と内部加熱とに分けられる。外部加熱は、電池または電池モジュールの外に加熱装置を加えることで、電池の低温性能を向上させる。この態様は、加熱効率が低く、向上作用に限界があり、加熱過程での電池の各部の温度差が大きく、電極材料への影響が大きく、電池サイクル性能の悪化を招き、安全リスクがある。内部加熱は、加熱シートを電池の内部に嵌め込み、電池の内部を加熱することで、電池温度の上昇を実現し、電池動力学を向上させ、さらに電池の低温環境下での充放電能力を向上させるものである。内部加熱過程は、昇温レートが速く且つ電池各部の温度差が小さく、電池の急速昇温を実現すると同時に電池へのダメージが小さい。
【0004】
しかしながら、加熱シートの埋め込みが幾つかの問題を引き起こす。例えば、加熱シートが一定の空間を占め、電池のエネルギー密度に影響を及ぼす。また、劣化した加熱シートが電池の内部界面と接触して、循環減衰の加速及び局所的なリチウム析出などの問題を引き起こす。また、加熱シートのコーナーがセパレータに突き刺さり、大きな自己放電問題を起こす。さらに、加熱シートと電池本体との固定が不安定であり、落下時の脱落が起こり易く、電池の破壊などを引き起こす問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本願は、上記内部加熱方式における少なくとも1つの問題を解決するために、自己加熱機能を備えた電気化学デバイス及び電気機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第一局面では、第1電極シートと、第1端子と、第2端子とを有する電気化学デバイスを提供する。第1電極シートは、複合集電体を含み、複合集電体は、対向して配置される第1表面及び第2表面を有する下地層と、第1表面に設けられた第1導電層と、第2表面に設けられた第2導電層とを含み、ここで、第1導電層は、第1領域及び第2領域を含み、第1端子及び第2端子は、第1領域に電気的に接続されており、第1領域は、加熱領域として電気化学デバイスを加熱する。
【0007】
幾つかの態様において、第1端子と第2端子との間には、第1抵抗R1があり、且つR1≧5mΩを満たす。好ましくは、R1≧20mΩである。
【0008】
幾つかの態様において、電気化学デバイスは、正極タブと負極タブとをさらに備え、正極タブと負極タブとの間には、内部抵抗Rがあり、且つ0.05≦R1/R≦5000を満たす。好ましくは、1≦R1/R≦1000である。
【0009】
電気化学デバイスの温度が正常動作温度よりも低い(例えば、約5℃よりも低い)場合には、第1端子と第2端子とが加熱回路を接続し且つ電気化学デバイスを加熱することになる。抵抗R1が電気化学デバイスが正常に動作する時の内部抵抗よりもかなり大きく、且つ充電時に加熱回路の電流を容易に高くすることができるため、電気化学デバイスの内部温度を急速に上昇させて、電気化学デバイスの電気化学性能を迅速に向上させることができる。
【0010】
幾つかの態様において、第1領域は、第2領域から一体的に延びて形成される。
【0011】
幾つかの態様において、第1領域は、複合集電体の長手方向の端部に位置する。
【0012】
幾つかの態様において、第1領域は、パターンを含む。
【0013】
幾つかの態様において、第2導電層は、第3領域及び第4領域を含み、電気化学デバイスは、第3端子及び第4端子をさらに備え、第3端子及び第4端子は、第3領域に電気的に接続され、第3端子と第4端子との間には第2抵抗R2を有し、且つR2≧5mΩを満たす。好ましくは、R2≧20mΩである。ここで、第3領域は、加熱領域として、電気化学デバイスを加熱する。
【0014】
幾つかの態様において、第3領域は、第4領域から一体的に延びて形成される。
【0015】
幾つかの態様において、第3領域は、複合集電体の長手方向における端部に位置する。
【0016】
幾つかの態様において、第3領域は、パターンを含む。
【0017】
幾つかの実施態様では、第1領域、第2領域、第3領域または第4領域の材質は、それぞれ独立に、ニッケル、チタン、銅、銀、金、白金、鉄、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、シリコン、ゲルマニウム、アンチモン、鉛、インジウムまたは亜鉛のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
幾つかの態様において、第1導電層の空孔率の範囲は0%~60%であり、第2導電層の空孔率の範囲は0%~60%である。
【0019】
幾つかの態様において、第1導電層の厚み範囲は0.1μm~10μmであり、第2導電層の厚み範囲は0.1μm~10μmである。
【0020】
幾つかの態様において、下地層の材質は、ポリマーを含む。
【0021】
幾つかの態様において、ポリマーは、絶縁性ポリマーを含む。
【0022】
幾つかの態様において、絶縁性ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン及びその誘導体のうちの少なくとも1種を含む。
【0023】
幾つかの態様において、下地層の空孔率の範囲は0%~50%である。
【0024】
幾つかの態様において、下地層の厚さ範囲は、1μm~20μmである。
【0025】
幾つかの態様において、第1電極シートは、第2領域の表面に設けられた第1活性材料層をさらに含む。
【0026】
幾つかの態様において、第1電極シートは、第4領域の表面に設けられた第2活性材料層をさらに含む。
【0027】
幾つかの態様において、下地層と第1導電層との間には、接着剤を含む接着層が設けられている。
【0028】
幾つかの態様において、下地層と第2導電層との間には、接着剤を含む接着層が設けられている。
【0029】
幾つかの態様において、接着剤は、ポリアミド、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸エステル系ポリマー、海蓚酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルキトサン、ゼラチン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレンカーボネート、ポリエチレンオキシド、シリコーン樹脂、エチレンアクリル酸共重合体及びその誘導体の少なくとも1つを含む。
【0030】
幾つかの態様において、接着層は、導電剤をさらに含む。導電剤は、カーボンナノチューブ、導電カーボン又はグラフェンのうちの少なくとも1つを含む。
【0031】
本願の第2局面では、上記いずれかの電気化学デバイスを有する電気機器を提供する。
【0032】
幾つかの態様において、電気機器は、スイッチをさらに備え、電気化学デバイスの温度がT1よりも低い場合には、スイッチはオンし、第1領域に電流を流し、電気化学デバイスを加熱する。
【0033】
幾つかの態様において、電気機器は、スイッチをさらに備え、電気化学デバイスの温度がT1よりも低い場合、スイッチはオンし、第3領域に電流を流し、電気化学デバイスを加熱する。
【0034】
幾つかの態様において、T1≦5℃である。
【0035】
本発明に係る電気化学デバイス及び電気機器は、複合集電体に加熱回路を接続するために加熱領域を設けることにより、電気化学デバイスの自己加熱機能を実現し、加熱構造の導入方式を最適化し、さらに、従来の加熱方式のエネルギー密度低下、界面接触劣化、自己放電問題の深刻化、落下試験の信頼性リスクなどの問題を効果的に改善した。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本願の一実施形態に係る電気化学デバイスの構成を示す図である。
【
図2】本願の一実施形態に係る複合集電体の構造の模式図である。
【
図3】本願の一実施形態による第1導電層の概略構成図である。
【
図4】本願の一実施形態による第1導電層の概略構成図である。
【
図5】本願の一実施形態による第1導電層の構造を示す模式図である。
【
図6】本願の一実施形態による第2導電層の構造を示す模式図である。
【
図7】本願の一実施形態による第2導電層の構造を示す模式図である。
【
図8】本願の一実施形態による第2導電層の構造を示す模式図である。
【
図9】本願の一実施形態に係る第1導電層及び第2導電層の構成を示す図である。 以下の具体的な実施形態では、上記図面に関連して、本願の実施形態をさらに説明する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書において用いられる技術及び科学用語は、特に定義されない限り、本願実施例に属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じである。本明細書において用いられる用語は、具体的な実施形態を記述する目的のみであり、本願実施例を制限することを意図していない。
【0038】
空間関連用語、例えば「上」などは、図面で説明したような一方の要素又は特徴と他方の要素(複数の要素)又は特徴(複数の特徴)との関係を記述するために、本明細書では説明を簡単にするために使用することができる。なお、空間関連用語は、図示される方向の他に、装置又は装置の使用又は操作における異なる方向を含むことを意図する。例えば、図中の機器をひっくり返せば、他の要素または特徴の「上方」または「上」にあると記述された要素は、他の要素または特徴の「下方」または「下」に定位するように記述される。従って、例示的な用語である「上」は、上と下の方向を含み得る。
【0039】
なお、第1、第2、第3などの用語は、様々な要素、コンポーネント、領域、レイヤー及び/又は一部を本文において説明し得るが、これらの要素、コンポーネント、領域、レイヤーおよび/または一部は、これらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、1つの要素、コンポーネント、領域、レイヤー又は部分と、他の要素、コンポーネント、領域、レイヤー又は部分とを区別するために用いられている。従って、以下の第1要素、コンポーネント、領域、レイヤーや部分を、例示的な実施形態の教示から逸脱しない範囲で、第2要素、コンポーネント、領域、レイヤーや部分と呼ぶことができる。
【0040】
以下、本願の幾つかの実施形態について詳細に説明する。衝突しない場合、下記の実施例及び実施例における特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0041】
図1に示すように、本願発明は、複合集電体101を含む第1電極シート10と、第1端子30と、第2端子50とを備える電気化学デバイス100を提供する。
図1に示される電気化学デバイス100は、第1電極シート10と他の電極アセンブリとが捲回されて構成されているが、この電気化学デバイス100は、第1電極シート10と他の電極アセンブリとが積層されて構成されてもよい。他の電極アセンブリは、第2電極シート20と、第1電極シート10と第2電極シート20との間に設けられたセパレータ40とを備えている。
【0042】
図2に示すように、複合集電体101は、対向して配置される第1表面102及び第1表面104を有する下地層103と、第1表面102に設けられた第1導電層105と、第1表面104に設けられた第2導電層107とを含む。第1導電層105及び第2導電層107は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、レーザパルス蒸着法などにより、下地層103の表面に形成されてもよい。第1導電層105及び第2導電層107は金属メッキ層である。下地層103の両側の金属メッキ層の材質は同じでも異なっていてもよく、例えば、両側が共に銅であるか、一方側が銅であり、他方側がアルミニウムである。両側の金属メッキ層の材質は同じであることが好ましい。
【0043】
図3に示すように、第1導電層105は、第1領域1051と、第2領域1052とを含む。第1タブ60は、第2領域1052に接続される。第1領域1051の長手方向において、第1端子30は第1領域1051の一端に電気的に接続される。第2端子50は、第1領域1051の他端に電気的に接続される。第1端子30と第2端子50との間には、第1抵抗R1を有し、且つR1≧5mΩを満たす。好ましくは、R1≧20mΩである。ここで、第1領域1051は、加熱領域として、電気化学デバイス100を加熱するために用いられる。第2領域1052は、塗布領域として、活性材料層を配置することに用いられる。
【0044】
図3に示すように、第1領域1051は第2領域1052と離間して設けられてもよい。
図4に示すように、第1領域1051は、第2領域1052の一端から一体に延びて形成されてもよい。この場合、第2領域1052を接続する第1タブ60を設けなくてもよい。
図3及び
図4において、第1領域1051は、複合集電体101の長手方向の端部に位置する。なお、第1領域1051は、複合集電体101の長手方向のほぼ中間位置に位置していてもよい。
図5に示すように、第1領域1051は、第2領域1052を離間する2つの部分に分けている。第1領域1051の位置は、電気化学デバイスの構造設計によって調整可能である。例えば、第1領域1051は、
図1に示した捲回式電極アセンブリにおける第1電極シート10の最内周の空箔領域(活物質層が塗布されていない複合集電体)にあってもよいし、捲回式電極アセンブリにおける第1電極シート10の最外周の空箔領域に位置してもよい。積層型の電極アセンブリにおいて、第1領域1051は、電極シートの最も外側の片面領域に位置していてもよいし、電極シートの中のいずれかの層に位置していてもよい。
【0045】
図3乃至
図5に示すように、第1領域1051は、パターンを含む。前記パターンの形状は、波形状、ジグザグ状などを含むが、これらに限定されない。第1導電層105は、金属メッキ層であり、エッチングなどにより部分的に除去されることが可能である。残された金属メッキ層は、電子輸送経路が長くなり、抵抗が高くなるように一定のパターン(例えば、波形状、ジグザグ状など)を形成し、即ち、上記の第1領域1051が形成される。
【0046】
図6に示すように、第2導電層107は、第3領域1071と、第2タブ80が接続された第4領域1072とを含む。電気化学デバイスは、第3端子70と、第4端子90とをさらに含む。第3領域1071の長手方向に沿って、第3端子70は第3領域1071の一端に電気的に接続される。第4端子90は、第3領域1071の他端に電気的に接続されている。第3端子70と第4端子90との間には、第2抵抗R2を有し、且つR2≧5mΩを満たす。好ましくは、R2≧20mΩである。ここで、第3領域1071は、加熱領域として、電気化学デバイス100を加熱するために用いられる。第4領域1072は、塗布領域として、活性材料層を配置することに用いられる。
【0047】
図6に示すように、第3領域1071は、第4領域1072と離間して設けられてもよい。
図7に示すように、第3領域1071は、第4領域1072の一端から一体に延びて形成されていてもよい。この場合、第4領域1072を接続する第2タブ80は設けられていなくてもよい。
図6及び
図7において、第3領域1071は、複合集電体101の長手方向の端部に位置する。この第3領域1071は、複合集電体101の長手方向のほぼ中間位置に位置していてもよい。
図8に示すように、第3領域1071は、第4領域1072を離間する2つの部分に分けている。
【0048】
図6乃至
図8に示すように、第3領域1071は、パターンを含む。前記パターンの形状は、波形状、ジグザグ状などを含むが、これらに限定されない。第2導電層107は、金属メッキ層であり、エッチングなどにより部分的に除去されることが可能である。残された金属メッキ層は、電子輸送経路が長くなり、抵抗が高くなるように一定のパターン(例えば、波形状、ジグザグ状など)を形成し、即ち、上記の第3領域1071が形成される。
【0049】
第1領域1051と第3領域1071は、複合集電体101の厚さ方向への投影は、完全に重なり合ってもよいし、部分的に重なり合ってもよいし、完全に重なり合わなくてもよい。なお、第2導電層107は、第4領域1072のみを含み、第3領域1071を含まない構成であってもよい。このとき、
図9に示すように、第2導電層107における第1領域1051に対応する金属層は除去されてもよい。
【0050】
幾つかの態様において、第1領域1051、第2領域1052、第3領域1071又は第4領域1072の材質は、それぞれ独立に、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、インジウム(In)又は亜鉛(Zn)のうちの少なくとも1つを含む。
【0051】
幾つかの態様において、第1導電層105の空孔率の範囲は0~60%であり、第2導電層107の空孔率の範囲は0~60%の範囲である。第1導電層105及び第2導電層107は、所定の空孔率を有しており、軽量及び活性材料の負荷量の向上に有利である。しかし、空孔率が大きすぎると、第1導電層105及び第2導電層107に空隙が多すぎて、第1導電層105または第2導電層107に沿った内部電子の輸送経路が長くなり、電子の伝導能力が低下し、電気化学デバイスの電気性能に影響を及ぼす。
【0052】
幾つかの態様において、第1導電層105の厚さ範囲は0.1μm~10μmであり、第2導電層107の厚さ範囲は0.1μm~10μmである。第1導電層105または第2導電層107の厚さが上記範囲内であることにより、第1導電層105または第2導電層107が高い電子伝導能力を有し、電気化学性能を保証するとともに、電気化学デバイスがより高いエネルギー密度を有することを保証するのに有利である。
【0053】
幾つかの態様において、下地層103の材質は、ポリマーを含む。前記ポリマーは、絶縁性ポリマーを含む。前記絶縁性ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-コ-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン、ビニロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン及びその誘導体のうちの少なくとも1種を含む。
【0054】
幾つかの態様において、下地層103の空孔率の範囲は、0%~50%である。下地層103が一定の空孔率を有することによって、重量の低減と活性材料負荷量の向上に寄与するとともに、複合集電体101の表面積が増大され、電子輸送経路が改善された。表面積を大きくして電子輸送経路を改善する原理は、空孔率が大きいほど、下地層103の表面は、第1導電層105または第2導電層107を作製する際により大きいな面積が金属層で覆われるようになること、即ち、表面近傍の孔内壁にも一層の金属が蒸着され、実質的に表面の第1導電層105または第2導電層107の一部となることである。
【0055】
幾つかの態様において、下地層103の厚さ範囲は、1μm~20μmである。この下地層103の厚さは、上記範囲内であることにより、機械的強度が高く、下地層103の両側の第1導電層105と第2導電層107との間で互いに連通して破壊が起きないように確保しつつ、電気化学装置がより高いエネルギー密度を持つことを保証する上で有利である。
【0056】
引き続き
図1を参照すると、第1電極シート10は、第2領域の表面に設けられた第1活性材料層106をさらに有する。第1電極シート10は、第4領域の表面に設けられた第2活性材料層108をさらに有する。第1活性材料層106と第2活性材料層108は、極性が同じである活性材料層であり、例えば、共に正極活性材料層である。電気化学デバイス100は、第2電極シート20の電気を導出するための第3タブ91をさらに含む。第3タブ91は、正極タブ又は負極タブであってもよく、一実施例では、第2極片20は負極電極シートであり、第3タブ91は負極タブである。
【0057】
なお、
図1に示すように、第1活性材料層106と第2活性材料層108とは、極性の異なる活性材料層であってもよい。例えば、第1活性材料層106は負極活性材料層であり、第2活性材料層108は正極活性材料層である。
【0058】
幾つかの態様において、下地層103と第1導電層105との間には接着層が設けられている。幾つかの態様において、下地層103と第2導電層107との間には接着層が設けられている。下地層103の両側には接着層を有していても良いし、片側のみが接着層を有していても良い。この接着層は、下地層103と第1導電層105との間、及び下地層103と第2導電層107との間の界面結合力を改善し、複合集電体101の信頼性を向上させるためのものである。
【0059】
さらに、前記接着層は、接着剤を含む。前記接着剤は、ポリアミド(PA)、ポリアミンエステル(PU)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、アクリル酸エステル系ポリマー、海蓚酸ナトリウム(SA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)、ゼラチン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVDF-HFP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、シリコーン樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)及びこれらの誘導体の少なくとも1つを含む。前記下地層103の両側の接着層の材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0060】
さらに、接着層は、導電剤をさらに含む。前記導電剤は、カーボンナノチューブ、導電カーボンまたはグラフェンの少なくとも1つを含む。上記導電剤の添加により、電子伝導パスを更に増加させることができ、電気性能を向上させることができる。
【0061】
また、本願は、上記のいずれかに記載の電気化学デバイスを含む電気機器を提供する。
【0062】
さらに、前記電気機器は、以下の条件の少なくとも一方を満たすスイッチをさらに含む。
1)前記電気化学デバイスの温度がT1より低い場合、前記スイッチを閉じて、第1領域に電流を流して、前記電気化学デバイスを加熱する。
2)前記電気化学デバイスの温度がT1より低い場合、前記スイッチを閉じて、第3領域に電流を流して、前記電気化学デバイスを加熱する。
【0063】
電気化学デバイスの温度が正常動作温度よりも低い(例えば、約5℃よりも低い)場合には、第1端子30と第2端子50とが加熱回路を接続すること、及び/又は、第3端子70と第4端子90とが加熱回路を接続することになる。電気化学デバイスの正常動作時の内部抵抗よりも抵抗R1、R2の方がかなり大きく、発熱量は抵抗と正の相関があり、充電時に加熱回路の電流を容易に上げることができ、電気化学デバイスの内部温度を急速に上昇させることができるため、電気化学デバイスの電気化学性能を迅速に向上させることができる。
【0064】
以下、具体的な実施例及び比較例により本願について説明する。
【0065】
<実施例1>
複合集電体の作製について、厚さが10mのポリエチレンテレフ夕レート(PET)フィルムの表面に、第1導電層及び第2導電層として、厚さが0.3mの金属A1メッキ層を真空蒸着法により両面にそれぞれ作製した。複合集電体の長手方向の一端に、酸性エッチング液の反応により、第1導電層において
図3に示すようなパターンをエッチングし、これを第1領域とする。ここで、第1領域を接続する第1端子と第2端子との間の抵抗R1は1.14Ωである。
【0066】
正極シートの作製について、正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97.5:1.0:1.5の重量比で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を加えて、固形分が0.75となるスラリーを調製し、且つ均一に攪拌した。スラリーを複合集電体の一方側の金属Alメッキ層の塗布領域表面に均一にコーティングし、90℃で乾燥、即ち正極シートの片面塗布を完了する。続いて、上記の工程を繰り返して、複合集電体の他方側にスラリーの塗布及び乾燥を行い、上記過程を終えた後、電極シートの活物質層を4.0g/cm3のタップ密度まで冷間プレスした。その後、タブ溶接やガム紙の粘着などの補助工程が行われて、正極シートの製造を完成する。
【0067】
負極シートの作製について、負極活物質である黒鉛、導電カーボンブラック(Super P)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を96:1.5:2.5の重量比で混合し、脱イオン水を加え、固形分が0.7となるスラリーを調製し、均一に攪拌した。スラリーを金属Cu集電体の一方側の表面に均一に塗布し、110℃で乾燥し、即ち負極シートの片面塗布を完了する。続いて、上記の工程を繰り返して、金属Cu集電体の他方側の表面にスラリーの塗布及び乾燥を行い、上記工程を終えた後、電極シートの活物質層を1.7g/cm3のタップ密度まで冷間プレスした。その後、タブ溶接やガム紙の粘着などの補助工程が行われて、負極シートの製造を完成する。
【0068】
電解液の調製について、乾燥アルゴンの雰囲気において、まず有機溶媒エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、EC:EMC:DEC=30:50:20の質量比で混合した後、有機溶媒にリチウム塩ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を加えて、溶解させ且つ均一に混合し、リチウム塩の濃度が1.15Mの電解液を得た。
【0069】
リチウムイオン電池の作製について、セパレータとして、厚さが15μmのポリエチレン(PE)を用い、上記の正極シート、セパレータ、負極シートをこの順番で積層した後、重ねた電極シートとセパレータとを捲回式電極アセンブリに巻く。ここで、第1領域は、最内輪の片面領域に位置している。次に、前記捲回式電極アセンブリをアルミプラスチックフィルムの外装パッケージの中に入れて、上側をシールした後、注液、化成などの工程を経て、リチウムイオン電池を得た。
【0070】
<実施例2>
実施例2と実施例1との違いは、PETフィルムの厚さが20μmであることにある。
【0071】
<実施例3>
実施例3と実施例1との違いは、PETフィルムの厚さが1μmであることにある。
【0072】
<実施例4>
実施例4と実施例1との違いは、金属Alメッキ層の厚さが1μmであることにある。
【0073】
<実施例5>
実施例5と実施例2との違いは、金属Alメッキ層の厚みが10μmであることにある。
【0074】
<実施例6>
実施例6と実施例1との違いは、金属Alメッキ層の厚さが0.1μmであることにある。
【0075】
<実施例7>
実施例7と実施例1との違いは、下地層の材質がポリイミド(PI)であることにある。
【0076】
<実施例8>
実施例8と実施例4との違いは、下地層の材質がポリブチレンテレフタレート(PBT)であることにある。
【0077】
<実施例9>
実施例9と実施例4との違いは、金属メッキ層の材質がNiであることにある。
【0078】
<実施例10>
実施例10と実施例4との違いは、金属メッキ層の材質がCuであることにある。
【0079】
<実施例11>
実施例11と実施例4との違いは、第1導電層の材質がAlであり、第2導電層の材質がCuであることにある。
【0080】
<実施例12>
実施例12と実施例4との違いは、金属メッキ層の空孔率が30%であることにある。
【0081】
<実施例13>
実施例13と実施例4との違いは、下地層の空孔率が30%であることにある。
【0082】
<実施例14>
実施例14と実施例4との違いは、下地層と両側の金属メッキ層の各々との間に材質がポリウレタンである接着層を設けることにある。
【0083】
<実施例15>
実施例15と実施例4との違いは、下地層と両側の金属メッキ層の各々と間に材質がエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)である接着層を設けることにある。
【0084】
<実施例16>
実施例16と実施例4との違いは、下地層と一方の金属メツキ層との間に材質がポリウレタンである接着層を設けることにある。
【0085】
<実施例17>
実施例17と実施例4との違いは、下地層と両側の金属メッキ層の各々との間に接着層を設け、一方側の接着層の材質がポリウレタンであり、他方側の接着層の材質がエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)であることにある。
【0086】
<実施例18>
実施例18と実施例4との違いは、正極シートの作製前に、まず複合集電体の表面に以下のような方法で下塗り層を作製する。導電カーボンブラック(Super P)と、スチレンブタジエンゴム(SBR)とを、97:3の重量比で混合し、脱イオン水を加えて、固形分が0.85となるスラリーを調製し、且つ均一に攪拌する。スラリーを複合集電体の金属Alメッキ層の塗布領域の表面に均一に塗布し、110℃の条件で乾燥して、下塗り層を得た。
【0087】
<実施例19>
実施例19と実施例4との違いは、パターンのピッチを設けることにより、第1領域に接続される第1端子と第2端子との間の抵抗R1が1.27Ωであることにある。
【0088】
<実施例20>
実施例20と実施例4との違いは、パターンのピッチを設けることにより、第1領域に接続される第1端子と第2端子との間の抵抗R1が28.07Ωであることにある。
【0089】
<実施例21>
実施例21と実施例4との違いは、パターンのピッチを設けることにより、第1領域に接続される第1端子と第2端子との間の抵抗R1が6.25Ωであることにある。
【0090】
<実施例22>
実施例22と実施例4との違いは、パターンのピッチを設けることにより、第1領域に接続される第1端子と第2端子との間の抵抗R1が0.2Ωであることにある。
【0091】
<実施例23>
実施例23と実施例4との違いは、第1領域にパターンを設けず、第1領域に接続される第1端子と第2端子との間の抵抗R1が0.05Ωであることにある。
【0092】
<実施例24>
実施例24と実施例4との違いは、複合集電体において第1領域に対向する第2導電層が除去されたことにある。
【0093】
<実施例25>
実施例25と実施例4との違いは、第2導電層に第3領域が設けられ、且つ第3領域にはパターンが設けられておらず、第3領域に接続される第3端子と第4端子との間の抵抗R2が0.09Ωである点ことにある。
【0094】
<実施例26>
実施例26と実施例4との違いは、第2導電層に第3領域を設け、第3領域のパターンが第1領域と異なっており、第3領域に接続される第3端子と第4端子との間の抵抗R2が1.24Ωである点にある。
【0095】
<実施例27>
実施例27と実施例4との違いは、負極シートのみに複合集電体を用い、且つ複合集電体における金属メッキ層の材料がCuである点にある。
【0096】
<実施例28>
実施例28と実施例4との違いは、負極が同様に複合集電体を用い、且つ複合集電体における金属メッキ層の材料がCuである点にある。
【0097】
<実施例29>
実施例29と実施例4との違いは、第1領域が複合集電体の長手方向の中間部に位置している点である。
【0098】
<実施例30>
実施例30と実施例4との違いは、第1領域が巻き構造の最外周の片面領域にある点である。
【0099】
<実施例31>
実施例31と実施例4との違いは、第1領域が巻き構造の最外輪の空箔領域にある点である。
【0100】
<実施例32>
実施例32と実施例4との違いは、電極アセンブリが積層構造であり、第1領域が電極アセンブリの一番外側の片面領域に位置する点である。
【0101】
<実施例33>
実施例33と実施例32との違いは、第1領域が電極アセンブリの中間層に位置している点である。
【0102】
<実施例34>
実施例34と実施例4との違いは、複合集電体の一方側が金属Cuメッキ層であり、他方側が金属Alメッキ層であり、金属Alメッキ層に第1領域を設けるとともに、金属Alメッキ層の塗布領域に正極活物質層を設け、金属Cuメッキ層に負極活物質層を設ける点である。この複合電極シートとセパレータとが積層された後、自己捲回して捲回式電極アセンブリが形成される。
【0103】
<比較例1>
比較例1と実施例1との違いは、正極シートの製造に通常のAl集電体を用いている点である。
【0104】
<比較例2>
比較例2と比較例1との違いは、捲回式電極アセンブリの中間に加熱Niシートを設置していることである。
【0105】
<比較例3>
比較例3と比較例1との違いは、複合集電体に第1領域を設けず、捲回式電極アセンブリの中間に加熱Niシートを設けた点である。昇温試験について、リチウムイオン電池を零下10℃から50Wの電力で、電池表面の最高温度点が25℃になるまで加熱したとき、電池表面の最大温度差(℃)を試験する。
【0106】
ニードルパンチ試験について、10本のリチウムイオン電池を取って、ニードルパンチ試験を行い、煙も火も出ないものがテストに合格したと認定され、ニードルパンチ試験の通過率=テストに合格したリチウムイオン電池数/10。
【0107】
転落試験について、10本のリチウムイオン電池を取って、転落試験を行い、1.5mの高さから自由落下させて、リチウムイオン電池が故障しないとテストに合格したと認定される。転落試験の通過率=テストに合格したリチウムイオン電池数/10。
【0108】
エネルギー密度試験について、リチウムイオン電池を25℃の環境下で、1Cの充電速度で3.0Vから4.4Vまで充電し、さらに0.1Cの放電速度で3.0Vまで放電し、0.1Cの放電容量を測定する。0.1C放電エネルギー密度=0.1Cの放電容量/リチウムイオン電池の体積。
【0109】
サイクル容量の維持率試験について、リチウムイオン電池を25℃の環境下で、2Cの充電レートで3.0Vから4.4Vまで充電し、さらに0.2Cの放電速度で3.0Vまで放電し、今回の放電容量を初回の放電容量とし、上記の充放電サイクルを50回繰り返して、第50回目の放電における放電容量を測定する。サイクル容量維持率=第50回目の放電容量/初回の放電容量。
【0110】
各実施例及び比較例にて作製されたリチウムイオン電池の組成及び性能試験の結果を表1及び表2に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
表1及び表2の結果から、実施例1-34のリチウムイオン電池は、比較例1-3に比べて、昇温性能を向上させるとともに、リチウムイオン電池のニードルパンチ及び転落の安全性を顕著に向上させることができることが分かる。また、電極アセンブリの中間に加熱Niシートを別個に設けることに比べて、複合集電体に加熱領域を設けることにより、界面接触の劣化が改善されるため、リチウムイオン電池のサイクル性能が向上する。また、下地層、第1導電層及び第2導電層の厚さを制御することで、リチウムイオン電池のエネルギー密度が一層向上されることができる。
【0114】
本願に係る電気化学デバイス及び電気機器は、複合集電体に加熱回路を接続するために加熱領域を設けることにより、電気化学デバイスの自己加熱機能を実現し、加熱構造の導入方式を最適化し、さらに、従来の加熱方式に存在するエネルギー密度低下、界面接触劣化、自己放電問題の深刻化、転落試験の信頼性リスクなどの問題を効果的に改善した。
【符号の説明】
【0115】
100 電気化学デバイス
10 第1電極シート
20 第2電極シート
30 第1端子
40 セパレータ
50 第2端子
60 第1タブ
70 第3端子
80 第2タブ
90 第4端子
91 第3タブ
101 複合集電体
102 第1表面
103 下地層
104 第2表面
105 第1導電層
106 第1活性材料層
107 第2導電層
108 第2活性材料層
1051 第1領域
1052 第2領域
1071 第3領域
1072 第4領域