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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電磁放射線の操作
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/29 20060101AFI20240725BHJP
   G02F 1/03 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
G02F1/29
G02F1/03 503
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022560947
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 EP2021061301
(87)【国際公開番号】W WO2021224108
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】20172735.1
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505325040
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM AG
【住所又は居所原語表記】Schloss Premstaetten, Tobelbaderstr. 30, 8141 Premstaetten, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピレス シンギュラニ アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ファッシング ゲルノット
(72)【発明者】
【氏名】マイ リーチエン
(72)【発明者】
【氏名】プルコ ヨゼフ
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0151168(US,A1)
【文献】特開2006-301630(JP,A)
【文献】特開2021-051293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0146116(US,A1)
【文献】中国実用新案第204129398(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0128334(US,A1)
【文献】特開2006-293018(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03324235(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/057700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁放射線を操作するための光電子デバイス(1)であって、
主延長面を有する基板(2)と、
前記基板(2)の主表面(3)上に配置された少なくとも1つの調整構造(4)であって、前記調整構造(4)は電気光学材料を含み、前記少なくとも1つの調整構造(4)は、前記調整構造(4)の第1の側にある第1の電気接点(7)と、前記調整構造(4)の第2の側にある第2の電気接点(8)とを含む、前記少なくとも1つの調整構造(4)と、
前記少なくとも1つの調整構造(4)を覆うカバー層(10)と、
前記カバー層(10)が光学構造(12)と前記少なくとも1つの調整構造(4)との間に配置されるように、前記カバー層(10)上に配置された光学構造(12)と、
前記第1の電気接点(7)及び前記第2の電気接点(8)に電気的に接続された電圧源(15)であって、前記少なくとも1つの調整構造(4)内に電場を生成するために設けられる、前記電圧源(15)と、
を含み、
前記光学構造(12)は、目標仕様を有し、前記目標仕様は、焦点距離、偏向角、位相遅延、光偏光、及びパターン投影のうちの少なくとも1つを含
前記光学構造(12)の前記目標仕様は、前記少なくとも1つの調整構造(4)内の前記電場を制御することによって変更される、光電子デバイス(1)。
【請求項2】
前記調整構造(4)の少なくとも1つの光学特性は、各々の電場を印加することによって変更される、請求項1に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項3】
前記光学構造(12)は、それぞれが、操作される電磁放射線の波長よりも小さい構造要素(13)を含む、請求項1または2に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項4】
前記光学構造(12)はメタマテリアルを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項5】
前記光学構造(12)は、レンズ、回折格子、ゾーンプレート、位相板、ホログラフィックプレート、及び拡散板を含むグループの1つの要素を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項6】
上面図において、前記調整構造(4)は円周部(18)を含む、先行請求項1から5のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項7】
上面図において、少なくとも1つの別の調整構造(4’)は少なくとも1つの別の円周部(19)を含み、前記少なくとも1つの別の円周部(19)は、前記基板(2)の前記主延長面と平行に延長する横方向(x,y)において円周部(18)を囲む、請求項6に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項8】
調整構造(4)のアレイを形成する複数の調整構造(4)をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項9】
前記第1の電気接点(7)及び前記第2の電気接点(8)は、前記調整構造(4)の各々の側面(9,9’)上に配置され、前記側面(9,9’)は、前記基板(2)の前記主延長面に対して垂直または横方向に延びる、請求項1から8のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項10】
前記第1の電気接点(7)及び前記第2の電気接点(8)は、各々、前記調整構造(4)の上面(5)及び背面(6)上に配置され、前記上面(5)及び前記背面(6)は前記基板(2)の前記主延長面に平行であり、前記上面(5)及び前記背面(6)は前記調整構造(4)の反対側に配置される、請求項1から8のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項11】
複数の調整構造(4’)をさらに含み、前記電圧源(15)によって生成された前記電場は、動作中、前記調整構造(4’)のうちの少なくとも2つにおいて異なる、請求項1から10のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの調整構造(4)において、前記電圧源(15)によって生成された前記電場は、動作中に時間とともに可変である、請求項1から11のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項13】
操作される前記電磁放射線は、赤外線範囲、近赤外線範囲、もしくは可視波長範囲、またはこれらの波長範囲の少なくとも2つに重なる範囲にある、請求項1から12のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項14】
前記調整構造(4)は固体無機材料を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)。
【請求項15】
電子システムは、電磁放射線を放出及び/または感知するために設けられた光電子システムである、請求項1から14のいずれか一項に記載の光電子デバイス(1)を備える電子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁放射線を操作するための光電子デバイスと、光電子デバイスを備える電子システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアは、多くの方法で光学素子の調整機能を実現してきた。当技術は、大きく2つのグループ、すなわち、機械駆動及び電気駆動のタイプのものに分けることができる。前者のグループはMEMSデバイスである。これらの手法は、例えば、レンズ及び/または位相板の相対位置を変更することによってレンズシステムの焦点距離を調整するために、顕微鏡スケールで既知の巨視的ソリューションを複製しようとする。この手法の利点は、概念がすぐに利用可能であり、光学素子に組み込まれている複雑さが少ないことを証明しているが、そのようなデバイスは不利に(kHz範囲で)遅く、アクチュエーター及び製造プロセスはかなり複雑である。
【0003】
電気的に駆動されるソリューションは、さらに2つのサブグループに分けることができる。2つのサブグループとして、すなわち、光学素子自体が制御される電気ゲーティングと、光学素子が埋め込まれた媒体を制御する媒体変調が挙げられる。液晶は後者の具体例である。レンズが液晶に浸されている場合、所定の方法で媒体全体に電位を印加することによって、レンズの焦点距離を調整できる。プロセスの複雑さの軽減は、この方式の最も強力な側面である。しかしながら、速度(液晶はHz範囲で反応する)及び動作上の柔軟性に欠けている。いくつかの液晶は60℃よりも高い温度では動作できない。
【0004】
電気ゲーティング手法では、電場を印加して材料の光学特性(例えば、屈折率)を局所的に変更し、適切な設計により、光学素子を実装できる。電気ゲーティングは、多くの場合、メタ表面と組み合わせて実施される。これは、電気光学材料を使用してメタ表面を設計し、適切な方法でメタ表面上に配置される電気接続を介して電気的に刺激する方法である。この手法の利点として、高度な統合、プロセスの複雑さの軽減、高速性、及び信頼性が挙げられる。しかしながら、この最先端の手法の欠点は、光学機能が単一要素で調整機能と組み合わされることであり、メタ表面を作成するための光学的複雑さ及び材料の制約が高くなる。この設計の複雑さにより、コストが増加するだけでなく、この技術の実装を完全に止めない場合、進行が妨げられる。
【0005】
本発明の目的は、効率的に動作できる電磁放射線を操作するための光電子デバイスを提供することである。
【0006】
この目的は、独立請求項による光電子デバイスによって実現される。複数の実施形態は、従属請求項から派生する。
【発明の概要】
【0007】
ある実施形態では、光電子デバイスは、主延長面を有する基板を備える。基板は主表面及び背面を有する。背面は主表面とは反対側に面している。基板は対象の電磁放射線に対して透過的である。ここでは、そして、以下の「透過的」とは、少なくとも80%または少なくとも90%の透過度を指す。一実施形態では、基板は、半導体材料、例えば、シリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)、またはガリウム砒素(GaAs)を含む。別の実施形態では、基板はガラスを含む。
【0008】
少なくとも1つの調整構造は、基板の主表面上に配置される。これは、調整構造の背面が基板の主表面に面していることを意味する。調整構造は、電気光学材料を含む。いくつかの実施形態では、調整構造は固体無機材料を含む。例えば、調整構造は強誘電体材料を含む。有利には、液晶、ポリマー、または同様の材料を使用する必要がない。強誘電体材料等の固体無機材料は、CMOS技術で容易に製造及び統合でき、例えば、液晶よりも信頼性が高くなる。
【0009】
調整構造は、対象の電磁放射線に対して透過的である。調整構造は電気的に絶縁されている。例えば、調整構造は、チタン酸バリウム(BaTiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb[ZrTi1-x]O)、またはタンタル酸リチウム(LiTaO)を含む。少なくとも1つの調整構造は、横方向に延在し、基板の主延長面と平行に延びる。基板の主延長面に対して垂直に延びる横断方向において、調整構造は厚みを有する。例えば、調整構造の厚さは、少なくとも200nm、最大で2μmである。別の実施形態では、調整構造の厚さは、少なくとも300nm、最大で1μmである。
【0010】
少なくとも1つの調整構造は、調整構造の第1の側にある第1の電気接点と、調整構造の第2の側にある第2の電気接点とを含む。調整構造の第1の側及び第2の側は離されている。これは、第1の側及び第2の側が互いに直接物理的に接触していないことを意味する。第1の電気接点及び第2の電気接点は、残りの調整構造とは異なる材料を含む。第1の電気接点及び第2の電気接点は導電性材料を含む。例えば、第1の電気接点及び第2の電気接点は、インジウムスズ酸化物(ITO)、ドープされたポリシリコンまたは金属を含む。各々、電気接点の材料が残りの調整構造の材料と直接物理的に接触している、調整構造の第1の側及び第2の側の領域は接触エリアを形成する。
【0011】
カバー層は、少なくとも1つの調整構造をカバーする。これは、調整構造が基板及びカバー層によって埋め込まれていることを意味する。カバー層は、基板に面する調整構造の背面とは反対側にある調整構造の上面を覆う。カバー層は、さらに、基板の主延長面に対して垂直または横方向にある調整構造の側面をカバーし得る。しかしながら、調整構造の第1の電気接点及び第2の電気接点はそれでもアクセス可能であり得る。ある実施形態では、カバー層は、基板の材料とは異なる材料を含む。しかしながら、別の実施形態では、カバー層は基板と同じ材料を含む。例えば、カバー層はSiOを含む。
【0012】
光学構造はカバー層上に配置される。横断方向において、光学構造は、少なくとも1つの調整構造の上に配置される。これは、カバー層が光学構造と少なくとも1つの調整構造との間に配置されることを意味する。光学構造は、横方向に延在する層によって形成される。横断方向において、光学構造は厚みを有する。例えば、光学構造の厚さは、少なくとも200nm、最大で2μmである。別の実施形態では、光学構造の厚さは、少なくとも300nm、最大で1μmである。
【0013】
一実施形態では、光学構造は、基板の主延長面と平行に延びる平面を有する。しかしながら、別の実施形態では、光学構造は曲面を有する。光学構造は、また、パターンを形成する構造物表面を有し得る。これは、カバー層とは反対側に面している光学構造の側面が凹部を有し得ることを意味する。一実施形態では、カバー層の一部が露出するように、凹部が光学構造の厚さ全体にわたって延在する。これは、光学構造の一部が互いに離され得ることを意味する。例えば、光学構造は、結晶シリコン(Si)、アモルファスシリコン(aSi)、二酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、ガリウム砒素(GaAs)、またはアルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)を含む。
【0014】
光電子デバイスは、さらに、第1の電気接点及び第2の電気接点に電気的に接続される電圧源を備える。任意の従来の電圧源を使用し得る。一実施形態では、電圧源は基板に統合される。別の実施形態では、電圧源は外部電圧源である。電圧源は、第1の電気接点及び第2の電気接点に直接接続され得る。しかしながら、導電性ワイヤを介した接続も可能である。電圧源は、少なくとも1つの調整構造内に電場を生成するために設けられる。これは、第1の電気接点と第2の電気接点との間に電位差を確立することによって実現される。調整構造が電気的に絶縁されているため、電場は調整構造全体にわたって確立される。少なくとも1つの調整構造内の電場は、時間とともに可変であり得る。さらに、2つ以上の調整構造が存在する場合、電場は調整構造の少なくとも2つにおいて異なり得る。これは、調整構造に異なる電位差をかけることによって実現できる。
【0015】
従来の手法では、電気ゲーティングの調整機能について、電気光学材料の有効性によって課せられた厳しい光学設計上の制約に悩まされている。この欠点は、光学的機能(例えば、レンズ機能)を調整機構と組み合わせて単一要素にしようとする試みから生じると考えられている。
【0016】
この開示で与えられた提案は、両方の機能を有利に分離し、さらに、高度な統合を維持することである。これは、上記に説明した層ベースのシステムによって実現され、光伝搬方向の第1の層は、電気駆動による調整機能用に設計される調整構造である。「光」という用語は、赤外線放射、近赤外線放射、及び可視光を含む一般的な電磁放射線を指し得る。続いて、光学機能を備えた層(光学構造)は調整構造の上にある。光学構造は独立型要素であり、調整構造がなくても適切に機能する。
【0017】
調整構造は完全に調整専用であり、光学機能及び調整機能が離れている。調整構造は、それを通過する光を局所的に遅延させるタスクがある。この局所的遅延は、特定の光学構造に合わせて設計できる。これにより、光学構造は、従来の手法のように調整可能に適した材料によって制約されない。代わりに、光学構造に使用されたものとは異なる材料を使用できる調整専用の要素として調整構造が導入される。
【0018】
さらに、光学構造は所与の入力であり、現在の技術の場合のように調整構造と同時に設計する必要がないため、調整機能を導入するための設計の複雑さが大幅に減少する。対照的に、光学構造のいずれかの既に利用可能な設計を使用できるため、実装コスト及び時間が削減される。調整構造が電磁放射線の入力波面を修正するため、この修正された波面が光学構造を通過するとき、結果について、光学構造の元の目標の偏差が制御されたものになる。
【0019】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、調整構造の少なくとも1つの光学特性は、各々の電場を印加することによって変更される。電場は、電圧源によって生成され、電気接点を介して調整構造に印加される電位差によって確立される。変更される光学特性は、例えば、調整構造に使用された材料の屈折率または光吸収である。特に、光学特性はポッケルス効果によって変化する。ポッケルス効果により、調整構造に使用された材料の屈折率は、印加された電場に線形比例して変化する。一実施形態では、調整構造が電気双極子運動量を有する強誘電体材料を含む場合、電場を印加すると、強誘電体材料の自発分極の方向の変化をもたらす。次に、これは、材料の誘電率の変化ももたらし、材料を伝播する電磁放射線の位相速度に結合される。
【0020】
電位を印加するだけで調整構造に使用された材料の光学特性を変化させることは、調整構造を通過する電磁放射線を制御できることを意味する。有利には、調整可能なレンズまたはプリズム等の光学的にアクティブなデバイスを作成できる。
【0021】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、光学構造は、それぞれが、操作される電磁放射線の波長よりも小さい構造要素を含む。構造要素は、光学構造の構造物表面を形成する。例えば、構造要素は、光学構造の表面上にパターンを形成する。構造要素のサイズは、各方向において操作される電磁放射線の波長よりも小さくなり得る。特に横方向において、構造要素のサイズは波長よりも小さい。これは、操作される電磁放射線が赤外線範囲にある場合、光学構造の構造要素は50μmよりも小さくなり得ることを意味する。操作される電磁放射線が赤外線範囲にある場合、光学構造の構造要素は780nmよりも小さくなり得る。操作される電磁放射線が可視スペクトル内にある場合、光学構造の構造要素をさらに小さくなり得る。
【0022】
上面図では、構造要素の形状は任意であり、用途によって決まる。上面図は、横断方向において基板とは反対側に面している光学構造の側面からの光電子デバイスの図を指す。上面図の構造要素の形状は、電磁放射線が所望の方法で光学構造と相互作用するように設計される。電磁放射線の相互作用は、回折、屈折、位相遅延等によって発生する可能性がある。
【0023】
有利には、電磁放射線の波長よりも小さい構造要素を含む光学構造により、振幅、位相、分散、運動量、及び偏光に関して光特性を完全に制御することが可能である。構造要素の正確な形状、ジオメトリ、サイズ、向き、及び配置により、波をブロック、吸収、増強、または曲げることによって、様々な方法で電磁波を操作することが可能な特性が与えられる。そのような光学構造により、例えば、サブ波長グレーティング、偏光子、バイナリレンズ等の多様な光学素子を製造できる。
【0024】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、光学構造はメタマテリアルを含む。メタマテリアルは、自然発生の材料には見られない特性を有するように設計された材料である。これは、電磁波の伝播特性が動作波長よりもはるかに小さい特徴サイズを有するこれらの材料の構造によって主に定義される材料によって実現できる。これは、メタマテリアルが構成要素の特性からではなく、設計された構造及び形状から特性を導出することを意味する。別の実施形態では、光学構造はメタ表面を含む。メタ表面は、メタマテリアルの2次元の等価物であり、非常に薄い層の離散的なサブ波長構造で構成される。
【0025】
有利には、メタマテリアル及びメタ表面は、バルク材では観察されない方法で電磁放射線の波に影響を与える可能性がある。例えば、メタマテリアルは、複素屈折率の負の実部を有し得る。メタマテリアルまたはメタ表面を含む光学構造により、光電子デバイス内の電磁放射線の伝播を完全に制御することが可能である。
【0026】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、光学構造は、レンズ、回折格子、ゾーンプレート、位相板、ホログラフィックプレート、及び拡散板を含むグループの1つの要素を形成する。レンズが光学構造によって形成される場合、レンズは、例えば、屈折レンズ、フレネルレンズ、またはマイクロレンズ等の任意の従来のレンズであり得る。これは、レンズを形成する光学構造が曲面を有し得ることを意味する。しかしながら、別の実施形態では、レンズはバイナリレンズである。これは、光学構造が、パターンを形成する構造物表面を有することを意味する。これは、カバー層とは反対側に面している光学構造の側面が凹部を有し得ることを意味する。他の実施形態では、光学構造は、回折格子、ゾーンプレート、またはホログラフィックプレートを形成する。これは、光学構造が構造物表面を伴う層によって形成されることを意味する。カバー層とは反対側に面している光学構造の側面が凹部を有し得る。これらの凹部は、規則的または不規則なパターンを形成し得る。光学構造が位相板または拡散板を形成する場合、光学構造の表面は、基板の主延長面に平行であり得る。
【0027】
有利には、光学構造は、任意の所望の光学素子を形成できる。このように、光電子デバイスは、例えば、ビーム成形、ビームステアリング、またはホログラフィの用途のような複数の用途に使用できる。
【0028】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、光学構造は、焦点距離、偏向角、位相遅延、光偏光、及びパターン投影を含むグループの要素である目標仕様を含む。光学構造の目標仕様は、少なくとも1つの調整構造内の電場を制御することによって変更される。光学構造は、独立型光学素子である。これは、光学構造が、調整構造、または調整構造に印加された電場とは独立した目標仕様を含むことを意味する。例えば、光学構造は、入射電磁放射線を集束、偏向、または拡散するために提供される。他の実施形態では、入射電磁放射線を遅延または偏光させるために光学構造が提供される。さらに他の実施形態では、光学構造は、入射電磁放射線を使用して、分析される対象物に光パターンを投影するために、すなわち、構造化された光を生成するために提供される。しかしながら、調整構造に電場を印加することによって、光学構造の目標仕様が変更される。これは、調整構造が電磁放射線の入力波面を修正するためであり、その結果、この修正された波面が光学構造を通過するとき、結果について、光学構造の元の目標仕様との偏差が制御されたものになる。例えば、調整構造は、それを通過する光を局所的に遅延させる。この局所的遅延は、特定の光学構造に合わせて設計できる。電場を印加及び/または変更すると、光学構造の2つ以上の目標仕様にも影響を与える可能性がある。
【0029】
有利には、光学構造の目標仕様を動的に変更できる。これは、例えば、検出対象の物体が動作中に移動するカメラ用途で役立つ。したがって、焦点の変更が可能である。これは、さらに、走査用途のように、放射光が異なる方向に向けられる発光システムに役立つ。その上、光学構造の目標仕様の調整機能により、光電子デバイスを較正でき、製造変動を補償できる。
【0030】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、上面図で、調整構造は円周部を含む。これは、調整構造の円周部をリングとして、もしくはフレームとして、またはリングもしくはフレームの一部として形成できることを意味する。上面図では、円周部は、調整構造がない内側領域を囲んでいる。円周部は、連続的または不連続的であり得る。後者の場合、円周部にギャップがあり得る。これは、円周部が分割リングを形成できることを意味する。有利には、調整構造の円周部の形状は、それを通過する電磁放射線を局所的に操作することを可能にする。
【0031】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、上面図で、少なくとも1つの別の調整構造は、少なくとも1つの別の円周部を含み、少なくとも1つの別の円周部は、横方向において円周部を囲む。これは、少なくとも1つの別の円周部が円周部よりも大きい直径を有することを意味する。別の調整構造は、サイズを除いて調整構造と同じ設定または特性を有し得る。ある実施形態では、光電子デバイスは複数の調整構造を含む。複数の調整構造は、それぞれ、少なくとも1つの別の円周部を含む。しかしながら、複数の調整構造は、それぞれ、2つ以上の別の円周部も含み得る。異なる調整構造の後ろに位置する別の円周部の直径は増加できる。これは、後ろに位置する別の円周部が横方向に前に位置する別の円周部を囲むことができることを意味する。しかしながら、別の円周部は互いに隣り合わせて配置され得るため、これらの円周部は、もう1つの別の円周部がない各々の内側領域を囲む。少なくとも1つの別の円周部は、連続的または不連続的であり得る。後者の場合、別の円周部にギャップがあり得る。これは、別の円周部が分割リングを形成できることを意味する。別の円周部の量及びそれらの互いに対する正確な配置は、所望の調整範囲に依存する。
【0032】
有利には、調整構造、または調整構造の一部は、空間的に局所化された調整構造を個々に調整できるように、リングまたはフレームとして配置できる。これにより、例えば、調整可能なレンズとして、異なる適用シナリオで光電子デバイスを使用することが可能である。
【0033】
さらなる実施形態では、光電子デバイスは、調整構造のアレイを形成する複数の調整構造を含む。調整構造のアレイは、規則的または不規則なグリッドを形成できる。上面図では、調整構造のアレイの要素である各調整構造は、長方形の形状を有し得る。しかしながら、各々の調整構造の多角形または円形も可能である。調整構造の量及び互いに対して正確な配置は、所望の調整範囲によって決まる。
【0034】
有利には、調整構造は、空間的に局所化された調整構造を個々に調整できるように、アレイまたはマトリックスとして配置できる。これにより、例えば、ビームステアリング用途及びホログラフィで、異なる適用シナリオで光電子デバイスを使用することが可能である。
【0035】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、第1の電気接点及び第2の電気接点は、調整構造の各々の側面に配置される。調整構造の側面は、基板の主延長面に対して垂直または横方向に延びる。電気接点の材料が残りの調整構造の材料と直接物理的に接触している側面の領域は、接触エリアを形成する。これは、接触エリアが調整構造の各々の側面に配置されることを意味する。第1電気接点と第2電気接点との間の電位差は、調整構造内に電場をもたらし、その方向は、接触エリアの正確な場所及び電位差の符号に依存する。
【0036】
この配置により、調整構造内の電場を基板の主延長面と平行に向けることが有利に可能である。電場の強さ及び向きは、調整構造の光学特性に影響を与える。
【0037】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、第1の電気接点及び第2の電気接点は、各々、調整構造の上面及び背面に配置される。上面及び背面は、基板の主延長面と平行に延在する。上面及び背面は、調整構造の反対側に配置される。
【0038】
この配置により、有利には、調整構造内の電場を基板の主延長面に対して横断方向に向けることが有利に可能である。電場の強さ及び向きは、調整構造の光学特性に影響を与える。
【0039】
さらなる実施形態では、光電子デバイスは複数の調整構造を含む。電圧源によって生成された電場は、動作中の調整構造のうちの少なくとも2つにおいて異なる。これは、異なる調整構造に各々異なる電場を同時に印加できること、または異なる調整構造が必ずしも同じ電場を示すわけではないことを意味する。電場は強さ及び/または方向が異なり得る。有利には、異なる電場を異なる調整構造に印加することによって、光電子デバイスの光学特性を局所的に変化させることができる。次に、電磁放射線の伝播は、時間だけでなく空間的にも制御できる。
【0040】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、電圧源によって生成された電場は、少なくとも1つの調整構造における動作中に時間とともに可変である。これは、調整構造内の電場を動作中に動的に変化させることができることを意味する。電場を変化させることで、非常に短い時間スケール内で発生する可能性がある。例えば、調整構造内の電場を変化させることで、数ピコ秒(ps)またはそれ以上の速さで行うことができる。上述のように、電場を変化させることによって、光電子デバイスの光学特性も変化する。有利には、光電子デバイスの光学目標仕様は動的に変更できる。これは、例えば、検出対象の物体が動作中に移動するカメラ用途で役立つ。さらに、電場を非常に短時間領域内で変化させることで、デバイスを通過する電磁放射線を超高速で変調することが可能である。
【0041】
光電子デバイスのさらなる実施形態では、操作される電磁放射線は赤外線波長範囲にある。別の実施形態では、操作される電磁放射線は、近赤外波長範囲にある。さらに別の実施形態では、操作される電磁放射線は、近赤外波長範囲にある。さらに別の実施形態では、操作される電磁放射線は、上述の波長範囲の少なくとも2つに重なる範囲にある。基板、調整構造、カバー層、及び光学構造に使用された材料は、各々の波長範囲の電磁放射線に対して透過的である。例えば、操作される電磁放射線が赤外波長範囲にある場合、光電子デバイスの構成要素は、赤外放射に対して透過的な材料を含み得る。操作される電磁放射線が可視波長範囲にある場合、光電子デバイスの構成要素は、可視光に対して透過的な材料を含み得る。調整構造の電気接点は、また、各々の電磁放射線に対して透過的な材料を含み得る。しかしながら、上面図では電気接点の領域が比較的小さくなり得るため、電気接点は電磁放射線に対して透過的でない場合もある。これは、例えば、電気接点が金属を含む場合である。有利には、光電子デバイスは、様々な波長領域に適したものになるように設計できる。これにより、異なる用途で使用することが可能である。
【0042】
さらなる実施形態では、光電子デバイスは電子システムに含まれる。電子システムは、特に、電磁放射線を放出及び/または感知するために設けられた光電子システムである。ある実施形態では、電子システムは照明器または光源を含む。光源は、例えば、フォトダイオードもしくは垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)、または各々、フォトダイオードもしくはVCSELのアレイであり得る。電子システムに含まれる光電子デバイスによって、光源によって放出された電磁放射線を操作できる。例えば、電磁放射線は、増幅、遅延、方向付け、偏光等がもたらされ得る。別の実施形態では、電子システムは、電磁放射線用のセンサーまたは検出器を備える。検出器は、フォトダイオード、光電子増倍管(PMT)もしくはサーモパイル、または各々、それらのアレイであり得る。光電子デバイスによって、電子システムに到達する電磁放射線を操作できる。例えば、電磁放射線は、増幅、遅延、方向付け、偏光等がもたらされ得る。
【0043】
これらの特性により、そのような電子システムは、ビーム形成及びビームステアリングの用途に使用できる。一実施形態では、電子システムはカメラシステムである。例えば、電子システムは3Dカメラであり、構造化された光を使用して、検出対象の物体の深度情報を取得する。特に、光電子システムは、光検出及び測距システム(ライダー)である。別の実施形態では、電子デバイスはホログラム発生器である。さらに別の実施形態では、電子デバイスは携帯電話等のスマートデバイスであり、光電子デバイスは集積光学素子として使用される。光電子デバイスは、微小電気機械システム(MEMS)の技術によって製造できるため、電子システムは小さい寸法を有し得る。
【0044】
以下の図の説明は、さらに、例示的な実施形態を例示及び説明し得る。機能的に同一または同一の効果をもたらす構成要素は、同一の参照番号で示される。同一または実質的に同一の構成要素は、それらが最初に出現する図だけに関して説明され得る。これらの説明は、連続する図で必ずしも繰り返されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】光電子デバイスの実施形態の断面図を示す。
図2】2A~2Dは、光電子デバイスの実施形態の上面図を示す。
図3】光電子デバイスの実施形態の別の上面図を示す。
図4】光電子デバイスの実施形態の別の上面図を示す。
図5】光電子デバイスの実施形態の別の断面図を示す。
図6】光電子デバイスの実施形態の別の断面図を示す。
図7】光電子デバイスの実施形態の別の断面図を示す。
図8】光電子デバイスの実施形態による、シミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1では、光電子デバイス1の実施形態の断面図が示される。図1による実施形態は、主表面3を有する基板2を含む。基板2は主延長面を有する。横方向x,yは、基板2の主延長面と平行に延在する。少なくとも1つの調整構造4が基板2の主表面3に配置される。図1に示される例では、基板2の主表面3に配置される4つの調整構造4がある。横方向x,yにおいて、調整構造4は互いに距離がある。これは、調整構造4が互いに離間していることを意味する。調整構造4は、それぞれ、基板2の主延長面に平行な上面5及び背面6を有する。上面5及び背面6は、調整構造4のそれぞれの反対側に配置される。調整構造4のそれぞれの背面6は基板2に面している。上面5は、基板2とは反対側に面している。
【0047】
調整構造4のそれぞれは、第1の電気接点7及び第2の電気接点8を含む。電気接点7、8は、残りの調整構造4と比較して異なる材料を含む。図1に示される実施形態では、第1の電気接点7は調整構造4の上面5に配置される。第2の電気接点8は、調整構造4の背面6に配置される。電気接点7、8は、各々、上面5の全体を覆う、または背面6の全体を覆う。しかしながら、他の実施形態では、電気接点7、8は、調整構造4の各々の表面5、6の一部だけを覆う。図1に示される実施形態では、調整構造4の側面9は、第1の電気接点7及び第2の電気接点8がない。これは、第1の電気接点7及び第2の電気接点8が互いに物理的または電気的に接続されていないことを意味する。
【0048】
図1による光電子デバイス1は、さらに、カバー層10を含む。カバー層10は、基板2と同じ材料を含み得る。しかしながら、カバー層10は、また、異なる材料を含み得る。カバー層10は、基板2に面する背面6を除いて、少なくとも1つの調整構造4をその全ての側面で覆う。しかしながら、電気接点7、8はそれでもアクセス可能である。少なくとも1つの調整構造4がない領域上で、カバー層10は基板2と直接接触している。カバー層10は上面11を有する。上面11は、基板2の主延長面と平行に延在し得る。
【0049】
カバー層10の上面11には、光学構造12が配置される。基板2の主延長面に垂直な横断方向zにおいて、光学構造12は調整構造4の上にある。カバー層10は、調整構造4と光学構造12との間に配置される。図1に示される実施形態では、光学構造12は、複数の構造要素13を含む。これは、光学構造12が、パターンを形成する構造物表面21を有することを意味する。パターンは、一方の側では凹部14によって形成され、他方の側では構造要素13によって形成される。横断方向Zでは、光学構造12は厚みを有する。図1に示されるように、凹部14が光学構造12の全厚にわたって延在するため、カバー層10の上面11の一部は露出される。これは、光学構造12の構造要素13が互いに離されていることを意味する。しかしながら、図5図7は、下記に説明される光学構造の異なる概念を示す。
【0050】
図1に示されるように、光電子デバイス1は、さらに、電圧源15を備える。電圧源15は、示されるように、外部電圧源15であり得る。しかしながら、電圧源15は、また、基板2に統合できる。電圧源15は、少なくとも1つの調整構造4の第1の電気接点7及び第2の電気接点8に電気的に接続される。提示する目的のために、調整構造4の1つだけが図1の電圧源15に接続される。しかしながら、調整構造4のそれぞれは、同じ電圧源15または別の電圧源15に接続され得る。電圧源15は、第1の電気接点7と第2の電気接点8との間に電位差を生成するために提供される。次に、これにより、少なくとも1つの調整要素4内に電場が生成される。電源15から第1の電気接点7及び第2の電気接点8までの電気接続は、導電性ワイヤ16によって実現される。導電性ワイヤ16は、電気接点と同じ材料または異なる材料を含み得る。導電性ワイヤ16は、図1に示されるように、基板2及びカバー層10に統合できる。電気接点7、8は、導電性ワイヤを介してアクセス可能であり得る。
【0051】
動作中、電磁放射線は、3つの矢印によって示されるように、基板2の背面17に到達する。その後、電磁放射線は、基板2、調整構造4、及びカバー層10を通過し、光学構造12に到達する。光学構造12は、所定の方法で電磁放射線を操作する。光学構造12は、例えば、焦点距離、偏向角等によって電磁放射線を操作する目標仕様を有する。調整構造4に電場を印加することによって、電磁放射線の入力波面は、例えば、位相遅延によって修正されるため、修正された波面が光学構造12を通過するとき、結果は、光学構造12の元の目標仕様との偏差が制御されたものになる。
【0052】
図2A図2Dは、光学構造12の構造要素13の異なる実施形態を上面図で示す。上面図は、基板2とは反対側に面するカバー層10の側面からの光電子デバイス1の図を指す。図2A図2Dは、カバー層10の上面11に配置された各々の構造要素13のうちの1つの詳細だけを示す。他の構造要素までの長さ、幅、及び距離は、特に、操作される電磁放射線の波長よりも小さくなり得る。
【0053】
図2Aは、長方形の形状を有する構造要素13を示し、y方向の構造要素の寸法を指す長さは、x方向の構造要素の寸法を指す幅よりも大きい。しかしながら、構造要素13の割合は、また、等しくなり得る、または、置き換えられ得る。さらに、そのような構造要素13は、横方向x,yに回転できる。横方向x,yにおける構造要素13の向きは、隣接する構造要素13の向きに対して等しくなり得るまたは異なり得る。
【0054】
図2Bは、プラス形状を有するカバー層10の上にある構造要素13を示す。前述の実施形態と同様に、そのような構造要素13は横方向x,yに回転できる。横方向x,yにおける構造要素13の向きは、隣接する構造要素13の向きに対して等しくなり得るまたは異なり得る。
【0055】
図2Cは、L字型を有するカバー層10の上にある構造要素13を示す。前述の実施形態と同様に、そのような構造要素13は横方向x,yに回転できる。横方向x,yにおける構造要素13の向きは、隣接する構造要素13の向きに対して等しくなり得るまたは異なり得る。
【0056】
図2Dは、上面図において湾曲形状を有する、カバー層10の上にある構造要素13を示す。本実施形態では、構造要素13は楕円を形成する。しかしながら、例えば、円について、任意の他の湾曲形状も可能である。
【0057】
構造要素13の示される実施形態の全てが互いに組み合わせることができるため、構造要素13のうちの少なくとも2つが異なる形状を含むようになることに留意されたい。
【0058】
図3には、光電子デバイス1の別の実施形態の上面図が示される。この場合、光電子デバイス1は、基板2及びカバー層10を含み、これらは上面図において円形を有する。光電子デバイス1の調整構造4は、円周部18を含む。この場合、円周部18は、基板2上にリングを形成する。円周部18によって形成されたリングは直径を有し、調整構造4のない領域を囲む。別の調整構造4’は、別の円周部19を含む。別の円周部19は、円周部18よりも大きい直径を有し、横方向x,yにおいて円周部18を囲む。一方の側では、別の円周部はギャップを含む。これは、別の円周部19が分割リングを形成することを意味する。
【0059】
調整構造4及び別の調整構造4’は、また、第1の電気接点7を含む。上述のように、第1の電気接点7は、各々の調整構造4、4’の上面5に配置され、これは、図3の観察者に向かって面する調整構造4、4’の側面を意味する。調整構造4及び別の調整構造4’は、また、各々の調整構造4、4’の背面6に配置される第2の電気接点8を含む。これは、調整構造4、4’の側面に、図3の観察者とは反対側を向いていることを意味する。図3では、第2の電気接点8が第1の電気接点7の下に正確に横断方向zに配置できることを示すために、第2の電気接点8は破線によって描かれる。その結果、斜視図の観察者から見えなくなる。
【0060】
円周部18を含む調整構造4の第1の電気接点7及び第2の電気接点8は、それらが横方向yに円周部18から別の円周部19のギャップを通って光電子デバイス1の周辺領域に到達するように配置される。光電子デバイス1の周辺領域は、調整構造の上に光学構造が存在しないため、光学的に不活性である領域を指す。別の円周部19を含む別の調整構造4’の第1の電気接点7及び第2の電気接点8は、任意の横方向x,yにおいて、別の円周部19から周辺領域に到達する。この配置により、調整構造4、4’のそれぞれの第1の電気接点7及び第2の電気接点8はアクセス可能であり、光電子デバイス1の周辺領域で電圧源15(図示せず)に接続できる。
【0061】
図3に示される実施形態は、上面図において円形を有する構造要素13を含む光学構造12を含む。上面図では、光学構造12によって覆われた全エリアは、円周部18及び別の円周部19によって横方向x,yにおいて囲まれたエリアにほぼ一致する。このエリアは、光学活性エリアと呼ばれ得る。
【0062】
図3に示される実施形態では、光学構造12は、調整可能なメタレンズ、すなわちメタマテリアルを含むレンズを形成するために提供できる。メタレンズは、光学活性エリアに対応する直径を有する。調整構造4及び別の調整構造4’は、メタレンズによって既に実装されている位相関数に補正を導入する。調整構造4、4’のそれぞれの電気接点7、8が別々に配置されるため、各々の調整構造4、4’は電場によって独立して制御できる。このように、必要に応じてレンズの直径に沿って異なる位相遅延を実現できる。
【0063】
図4に示される光電子デバイスの実施形態は、上面図で長方形の形状を有する、基板2及びカバー層10を含む。本実施形態は、さらに、アレイとして配置される複数の調整構造4を含むという点で、図3の実施形態とは異なる。この場合、アレイは6つの調整構造4を含む。図4では、調整構造4のそれぞれの第1の電気接点7だけが示される。しかしながら、第2の電気接点8(図示せず)は、第1の電気接点7の真下に配置できるため、観察者の視点からは見えない。電気接点7、8は、横方向x,yに、各々の調整構造4から光電子デバイス1の異なる周辺領域に向かって延在している。このように、それらは1つ以上の電圧源15(図示せず)に別々に接続できる。次に、これにより、調整構造4のそれぞれに電場を独立して制御することが可能になる。
【0064】
光学構造12は、調整構造4のアレイの上に横断方向zに配置される。横方向x,yにおいて構造要素13を含む光学構造12によって覆われるエリアは、調整構造4のアレイによって覆われたエリアとほぼ同じ大きさであり得る。しかしながら、図4に示されるように、調整構造4のアレイによって覆われた全エリアは、光学構造12によって覆われたエリアよりもわずかに大きくなり得る。両方のエリアの重なり合う領域は、光学活性エリアと呼ばれ得る。
【0065】
図5に示される光電子デバイス1の実施形態は、異なる光学構造12を示すという点で、図1に示される実施形態とは異なる。図5の光学構造12は、また、カバー層10とは反対側に面する構造物表面21を含む。しかしながら、構造要素13は、凹部14が光学構造12の全厚にわたって延在しないので、互いに物理的に接続される。したがって、カバー層10の上面11の一部は、光学構造12が存在するエリアで露出されない。これは、カバー層10が光学構造12によって完全に覆われていることを意味する。構造物表面21は、規則的または不規則的であり得るパターンを形成する。構造要素13は、図2a~図2dに従った形状を含み得る。別の実施形態では、構造要素13は、光学活性エリアにわたって同心リングを形成する。この場合、光学構造12は、ゾーンプレートまたはバイナリレンズを形成する。
【0066】
図5は、少なくとも1つの調整構造4に電気的に接触するための異なる概念を示すという点で、図1とはさらに異なる。この場合、調整構造4のそれぞれは、調整構造4の側面9または別の側面9’に各々配置された、第1の電気接点7及び第2の電気接点8を有する。側面9及び別の側面9’は、基板2の主延長面に対して垂直または横方向に延びる。第1の電気接点7が配置される側面9は、第2の電気接点が配置される別の側面9’から分離される。このように、第1の電気接点7及び第2の電気接点8は、互いに電気的に絶縁される。図5に示されるように、第1の電気接点7及び第2の電気接点8は、調整構造4の各々の側面9,9’の全体を覆うことができる。
【0067】
図6に示される光電子デバイス1の実施形態は、異なる光学構造12の別の変形を示すという点で、図5に示される実施形態とは異なる。この場合、光学構造12は、平面21を伴う層を形成する。これは、カバー層10とは反対側に面する光学構造12の表面21が、基板2の主延長面と平行に延びることを意味する。光学構造12が位相板または拡散板を形成する場合、光学構造12のこの実施形態を使用できる。
【0068】
図7に示される光電子デバイス1の実施形態は、異なる光学構造12の別の変形を示すという点で、図6に示される実施形態とは異なる。この場合、光学構造12は曲面21を有する。これは、カバー層10とは反対側に面する光学構造12の表面21が、基板2の主延長面に対して曲率を示すことを意味する。光学構造12が屈折レンズを形成する場合、光学構造12のこの実施形態を使用できる。
【0069】
図8は、シミュレーションによって得られた関数のグラフを示す。ここで、電磁放射線の強度Iは、光学構造12と、光学構造12の上の横断方向zの位置との間の距離dに対してプロットされる。強度IはW/mの単位で与えられる。距離dはμmの単位で与えられる。
【0070】
この場合、光学構造12は、例えば、図3に関連して説明したようなレンズを形成する。シミュレーションの結果は、レンズを形成する光学構造12の焦点距離を見つけるために使用できる。しかしながら、光学構造12の任意の他の目標仕様も同様の方法で分析できることに留意されたい。
【0071】
3つの異なるシナリオの強度特性が示される。第1のシナリオ(曲線22)は、調整構造4に電場が印加されていない間の電磁放射線の強度Iを示す。第2のシナリオ及び第3のシナリオ(曲線23及び曲線24)は、各々の電場が整調構造4に印加される間の電磁放射線の強度Iを示す。曲線22は、約35μmで明確な最大値を示す。これは、光学構造12の焦点距離がこの距離で識別できることを意味する。また、シミュレーション結果として示されるものとして、光電子デバイス1は、光学構造12によって、調整なしでも、すなわち電場を印加することによって調整モードではない動作モードにおいて、目標仕様が示される。しかしながら、特定の強さ及び方向の電場を印加することによって、最大強度は約45μmの距離dだけシフトする(曲線23)。さらに、曲線24によって示されるように異なる電場を印加することによって、最大強度を反対方向、すなわち約25μmの距離dまでシフトできる。これは、光電子デバイス1の光学特性が、各々の電場を印加することによっていずれかの方向に動的に変化できることを意味する。
【0072】
本明細書に開示される光電子デバイス1の実施形態は、読者が発想の新規の態様を知ることを目的として説明されてきた。好ましい実施形態が示され説明されてきたが、当業者は、特許請求の範囲から不必要に逸脱することなく、開示された概念の多くの変更、修正、同等物、及び置換がなされ得る。
【0073】
本開示は、開示された実施形態、及び上記で具体的に示され、説明されたものに限定されないことを理解されたい。むしろ、別個の従属請求項または明細書に記載された特徴は有利に組み合わされ得る。さらに、本開示の範囲は、当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲に含まれるそれらの変形及び修正を含む。
【0074】
「含む(comprising)」という用語は、特許請求の範囲または発明を実施するための形態で使用される限り、対応する特徴または手順の他の要素またはステップを除外しない。「a」または「an」という用語が特徴に関連して使用される場合、それらの用語は複数のそのような特徴を除外しない。さらに、特許請求の範囲におけるいずれかの参照符号は、範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【0075】
この特許出願は、欧州出願特許第20172735.1号の優先権を主張し、その開示の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 光電子デバイス
2 基板
3 基板の主表面
4 調整構造
4’ 別の調整構造
5 調整構造の上面
6 調整構造の背面
7 第1の電気接点
8 第2の電気接点
9 調整構造の側面
9’ 調整構造の別の側面
10 カバー層
11 カバー層の上面
12 光学構造
13 光学構造の構造要素
14 光学構造の凹部
15 電圧源
16 導電性ワイヤ
17 基板の背面
18 調整構造の円周部
19 別の外周部
20 別の円周部のギャップ
21 光学構造の表面
22 関数グラフの第1の曲線
23 関数グラフの第2の曲線
24 関数グラフの第3の曲線
x,y 横方向
z 横断方向
d 光学構造までの距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8