(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】全直腸間膜切除手術シミュレータ
(51)【国際特許分類】
G09B 23/34 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G09B23/34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023021540
(22)【出願日】2023-02-15
(62)【分割の表示】P 2020533265の分割
【原出願日】2018-12-19
【審査請求日】2023-03-16
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス アニーザ
(72)【発明者】
【氏名】ホフステッター グレゴリー
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/087746(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/059417(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/011436(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/183412(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 23/28-23/34
G09B 9/00
G09B 19/00
A61B 34/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬全直腸間膜切除(TME)手技のための手術シミュレータであって、
近位端と遠位端を有するフレームと、
前記フレームの前記遠位端近くに配置された模擬骨盤内筋膜層と、
前記模擬骨盤内筋膜層と前記フレームの前記遠位端に取り付けられた模擬骨盤底層と、
前記模擬骨盤内筋膜層に取り付けられた模擬直腸間膜層と、を備え、
前記模擬骨盤内筋膜層への前記模擬直腸間膜層の取り付けによって、これらの間に第1の模擬切開平面を定め、前記第1の模擬切開平面は、模擬TME手技において、切開を実施するところへユーザを案内するように構成される、手術シミュレータ。
【請求項2】
前記近位端は、模擬腹腔の少なくとも一部を定め、前記遠位端は、模擬骨盤腔の少なくとも一部を定めることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項3】
前記模擬骨盤内筋膜層、前記模擬骨盤底層、及び前記模擬直腸間膜層は、周方向引張の下に置かれることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項4】
前記模擬骨盤内筋膜層は、前記模擬骨盤底層よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項5】
前記模擬骨盤内筋膜層は、繊維性材料及びシリコーンで作られ、前記模擬骨盤底
層は、シリコーンで作られることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項6】
前記フレームの前記遠位端内に配置された模擬臓側腹膜層と、
前記模擬臓側腹膜層と前記フレームの前記近位端に取り付けられた模擬壁側腹膜と、
前記模擬臓側腹膜層に取り付けられた模擬腸間膜層であって、該模擬腸間膜層及び該模擬臓側腹膜層がその間に第2の模擬切開平面を定める前記模擬腸間膜層と
を備えることを特徴とする請求項1-5のいずれか1項に記載の手術シミュレータ。
【請求項7】
前記模擬直腸間膜層と前記模擬壁側腹膜は互いに接続されてそれらの間に外被を形成し、模擬脂肪充填物が前記模擬直腸間膜層と前記模擬壁側腹膜によって形成された前記外被内に配置されることを特徴とする請求項6に記載の手術シミュレータ。
【請求項8】
前記手術シミュレータは、さらに、前記模擬臓側腹膜層と組み合わされて、前記模擬腸間膜層に取り付けられ、その間に第3の模擬切開平面を定める、模擬トルト筋膜層を備えることを特徴とする請求項7に記載の手術シミュレータ。
【請求項9】
第4の模擬切開平面が、前記模擬直腸間膜層への前記模擬骨盤底層の取り付け部の間に定められることを特徴とする請求項8に記載の手術シミュレータ。
【請求項10】
前記第1の模擬切開平面を定める層の一方は、シリコーンシートで作られ、他方の層は複合シリコーンシートで作られることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項11】
前記第1の模擬切開平面を定める前記模擬直腸間膜層と前記模擬骨盤内筋膜層は、複合シリコーンシートで作られることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項12】
前記手術シミュレータは、さらに、前記模擬骨盤底
層に接続された模擬膀胱と、前記模擬骨盤内筋膜層に接続された模擬前立腺を備えることを特徴とする請求項1に記載の手術シミュレータ。
【請求項13】
前記フレームの前記近位端は開口部を含み、前記手術シミュレータは、さらに前記フレームの前記近位端に接続されて前記開口部を覆う模擬組織層を備えることを特徴とする請求項12に記載の手術シミュレータ。
【請求項14】
前記手術シミュレータは、さらに前記フレームの前記遠位端に模擬直腸を備えることを特徴とする請求項13に記載の手術シミュレータ。
【請求項15】
前記模擬脂肪充填物はポリアクリル酸ナトリウムを含むことを特徴とする請求項7に記載の手術シミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
この出願は、これによりその開示全体が本明細書に完全に定められたかのように引用によって本明細書に組み込まれる2017年12月19日出願の米国仮特許出願第62/607,476号の利益を主張するものである。
【0002】
この出願は、一般的に手術訓練システム及び方法に関し、特に、以下に限定はしないが全直腸間膜切除手技及び技術に関連する様々な手術技術及び手技を指導、練習、及び評価するための模擬組織構造及びモデルに関する。
【背景技術】
【0003】
新しい手術技術を習得中の医学生並びに熟練医師は、彼らが人間患者に対して手術を実施することを認定される前に広範な訓練を受けなければならない。訓練は、様々な組織タイプを切断、貫通、圧着、把持、ステープル留め、焼灼、及び縫合するための様々な医療デバイスを使用する適正技術を指導しなければならない。訓練生が遭遇する場合がある可能性の範囲は広い。例えば、異なる臓器及び患者の生体構造及び疾患が提示される。様々な組織層の厚み及び堅さも身体の部位毎にかつ患者毎に変わることになる。異なる手技は異なる技能を要求する。更に、訓練生は、患者のサイズ及び病状、隣接する解剖学的景観、及びターゲット組織のタイプ、及びそれらが容易にアクセス可能である又は比較的アクセス不能であるか否かのようなファクタによって影響を受ける様々な解剖学的環境で技術を練習しなければならない。
【0004】
様々な指導教材、訓練機、シミュレータ、及びモデル臓器が手術訓練の1又は2以上の態様に対して利用可能である。しかし、遭遇する可能性が高く、かつ内視鏡及び腹腔鏡の低侵襲性経腔手術手技を練習するのに使用することができるモデル又は模擬組織要素に対する必要性が存在する。腹腔鏡手術では、体腔にアクセスするために、かつ腹腔鏡のようなカメラの挿入のためのチャネルを生成するためにトロカール又はカニューレが挿入される。カメラは、1又は2以上のモニタ上でその後に外科医に表示される画像を取り込んだライブビデオフィードを提供する。少なくとも1つの追加の小さい切開部が作られ、それを通して別のトロカール/カニューレが挿入され、モニタ上で観察される手技を実施するために手術器具を通過させることができる通路を生成する。腹部のようなターゲット組織場所は、典型的には、体腔に送気し、かつ外科医によって使用される内視鏡及び器具を受け入れるほど十分に大きい作業空間を生成するための二酸化炭素ガスを送出することによって拡大される。組織腔内の送気圧力は、専用トロカールを使用することによって維持される。腹腔鏡手術は、開腹手技と比較した時にいくつかの利点を提供するが、ターゲット組織は臨床医によって直接に観察されないので高い技能レベルを要求する。ターゲット組織は、小さい開口部を通してアクセスされる手術部位の一部分を表示するモニタ上で観察される。従って、臨床医は、組織平面の視覚的決定、2次元表示画面上での3次元深度知覚、器具の手渡し、縫合、正確な切断、及び組織及び器具操作を練習しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの手技は、直腸間膜外被全体と直腸の一部分とが摘出される末期結腸直腸癌の治療のための全直腸間膜切除(TME、total mesorectal excision)である。この手技は、患者に対して低い局所再発率及び改善された腫瘍学的成果を示している。TME手技は、腹腔鏡手法及び経肛門手法を含む低侵襲技術の組合せを用いて実施することができる。現在、外科医がTME手技に関連する技能を発展させて練習する間に利用する教育ツールの未充足の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の様々な実施形態により、TME手術シミュレータを提供する。手術シミュレータは、近位開口部及び遠位開口部を有するフレームと、近位開口部に接続されてそれを覆う模擬組織層とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、遠位開口部を通って延びる模擬臓器アセンブリを更に含む。
【0007】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬腹腔を定める近位部分及び模擬骨盤腔を定める遠位部分を有するフレームと、近位部分に接続された模擬壁側腹膜層とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬腹腔内に配置された模擬大動脈と、模擬骨盤腔内に配置された模擬前立腺とを更に含む。
【0008】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬壁側腹膜層と、模擬壁側腹膜層に接続されてそれらの間に外被を互いに形成する模擬直腸間膜及び腸間膜層とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、外被内に配置された模擬脂肪充填物を更に含む。
【0009】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬腹腔を定める近位部分及び模擬骨盤腔を定める遠位部分を有するフレームと、模擬骨盤腔内に配置された模擬骨盤内筋膜層と、模擬骨盤内筋膜層とフレームの遠位部分とに取り付けられた模擬骨盤底層とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬骨盤内筋膜層に取り付けられた模擬直腸間膜層を更に含み、模擬直腸間膜層及び模擬骨盤内筋膜層は、それらの間に模擬切開平面を定める。
【0010】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬腹腔を定める近位部分及び模擬骨盤腔を定める遠位部分を有するフレームと、模擬腹腔内に配置された模擬臓側腹膜層と、模擬臓側腹膜層とフレームの近位部分とに取り付けられた模擬腹膜又は壁側腹膜とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬トルト/骨盤内筋膜層に取り付けられた模擬腸間膜層を更に含み、模擬腸間膜層及び模擬トルト/骨盤内筋膜層は、それらの間に模擬切開平面を定める。
【0011】
本発明の付随する特徴の多くは、それらが以上及び以下の説明を参照し、かつ添付図面と共に考察することによってより良く理解されるのでより容易に認められるであろう。
【0012】
本発明は、参照番号がその図面を通して類似の部分を指定する添付図面と共に以下の説明を参照することによって理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータ又はモデルの斜視図である。
【
図2】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの側面図である。
【
図3】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの上面図である。
【
図4A】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの線A-Aに沿って取った前面断面準概略図である。
【
図4B】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの線A-Aに沿って取った前面断面準概略図である。
【
図5A】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの各部分の斜視図である。
【
図5B】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの各部分の分解組立図である。
【
図6】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの各部分の斜視図である。
【
図7】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの側面図である。
【
図8A】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの線B-Bに沿って取った前面断面準概略図である。
【
図8B】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの線B-Bに沿って取った前面断面準概略図である。
【
図9】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの上面図である。
【
図10A】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの曲線C-Cに沿って取った側面断面準概略図である。
【
図10B】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの曲線C-Cに沿って取った側面断面準概略図である。
【
図11A】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの様々な構成の前面断面準概略図である。
【
図11B】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの様々な構成の前面断面準概略図である。
【
図12A】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの様々な構成の前面断面準概略図である。
【
図12B】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの様々な構成の前面断面準概略図である。
【
図13】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータの構成の前面断面準概略図である。
【
図14】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの斜視図である。
【
図15】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの前面図である。
【
図16】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの斜視断面図である。
【
図17】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの上面図である。
【
図18】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの斜視図である。
【
図19】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの斜視断面図である。
【
図20】本発明の様々な実施形態による手術シミュレータのフレームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般的に、TME手術シミュレータ又はモデルは、手術技能訓練及びシミュレーションを支援するために提供される。TMEシミュレータは、互いに取り付けられて剛性フレーム内に位置決めされた様々な模擬臓器及び/又は組織構造アセンブリを含む。模擬臓器構造アセンブリは、異なる模擬組織平面、特に、区別できる模擬切開平面を提供する。アセンブリの様々な特徴は、更に、模擬TME手術手技の訓練を模擬して評価を更に支援する難度及び課題と共に、追加の触覚及び/又は視覚フィードバックを提供する。例えば、様々な模擬臓器構造の変化するサイズ及び/又はアタッチメント、及び/又はそのような構造及びアセンブリの変化する様々な組成及び/又は靱性が提供される。
【0015】
TME手技中に、直腸を取り囲む脂肪直腸間膜外被が直腸の一部分と共に摘出される。この手技は、関連の血液サプライの結紮、並びに骨盤腔及び周囲構造からの直腸及び直腸間膜の周方向授動を必要とする。直腸間膜試料が摘出された状態で、直腸間膜は検査され、かつ当該組織の不完全切開から完全切開の範囲にわたって採点される。これは、直腸間膜のセグメントが間違って切開された直腸管腔の視認性によって決定される。切除された試料の採点は、手術パフォーマンス、並びに局所再発リスクを評価するのに使用することができる。
【0016】
TME手技は、従って、高レベルの熟練技能と骨盤生体構造の理解とを必要とする。様々な実施形態でのTME手術シミュレータは、骨盤生体構造の一部分を模倣し、従って、外科医が自分自身の養成期間中に使用するための学習ツールを提供する臨床的必要性を満たすことができる。様々な実施形態によるTME手術シミュレータは、腹腔鏡手法及び/又は経肛門手法からの模擬TME手技の達成及び/又は完了を可能にする。様々な実施形態により、両方の手法との適合性及び適切な解剖学的目印の現実的な識別に向けて、TME手術シミュレータは、結腸、腸間膜、直腸間膜、トルト筋膜、臓側腹膜(後腹膜)、骨盤内筋膜、前立腺、尿管、性腺血管、精嚢、筋層、骨盤底、IMA、IMV、及び大動脈といった模擬臓器構造、模擬組織、模擬血管構造、及び/又は模擬物質のうちの少なくとも1又は2以上を含む。様々な実施形態では、模擬物質、模擬組織層、及び/又は模擬臓器構造は、エンドユーザ、例えば、外科医が模擬手技を実施することを可能にし、この手技に従って非模擬手技中に遭遇することになるものと類似の現実的な触覚フィードバックを与えるようにも組み立てられる。これは、取りわけ、ユーザが適切な生体構造及び組織の取り扱いの識別に関わる熟練技能開発において訓練を行うことを可能にする。様々な実施形態により、模擬物質は、模擬骨盤内に限定することができ、これは、例えば、TME手技中の湾曲した骨盤底に沿った切開中に発生する限られた可視化を含む骨盤作業空間の現実的な制約を提供する。模擬物質は、様々な実施形態では模擬直腸間膜試料の摘出を可能にし、この試料は、摘出後に、例えば、不完全切開から完全切開の範囲にわたる1~3のスケールで採点することができる。
【0017】
本発明の様々な実施形態によるTME手術シミュレータは、全直腸間膜切除手技を模擬するのに使用される。現実的な訓練環境を提供するために、TME手術シミュレータ又はモデルは、手術手技シミュレーションに向けて腹腔鏡アクセス及び経肛門アクセスを提供する。手術シミュレータは、様々な解剖学的目印及び平面を表すための模擬物質、並びに切開を模擬するための物質を提供し、それによって手術手技中に遭遇する可能性がある合併症をより良く理解するために生体構造及び組織の取り扱いを理解するのに有利な有意な視覚フィードバック及び触覚フィードバックを提供する。更に、TME手術シミュレータは、直腸間膜を模擬するための物質を提供し、それによって直腸間膜を授動、摘出、かつ採点することを可能にする。直腸間膜のようなシミュレータの各部分は、十分に脆弱であり、従って、模擬手技中に損傷を受けることが可能であるように設けられる。これは、次に、手術手技と同じく模擬直腸間膜などを評価及び/又は採点することを可能にする。様々な実施形態では、模擬骨盤内への手術シミュレータの各部分の閉じ込めは、閉じ込められた空間内での現実的な作業課題を呈する。これに加えて、様々な実施形態では、模擬骨盤は、手術手技中の可視化の課題を呈する仙骨の湾曲を模擬するためにその形状内に統合された曲面を有する。TME手術シミュレータは、様々な実施形態では、腹腔鏡訓練機内で模擬手技のための腹腔鏡器具と共に使用することができる。様々な実施形態により、TME手術シミュレータは、TME手技の各手術段階のパフォーマンスのための関連のかつ現実的な生体構造を含む。
【0018】
図1~
図3及び
図14~
図20を参照すると、TME手術シミュレータ10は、模擬骨盤フレーム又はベース20を含む。フレーム20は、様々な実施形態では、シミュレータ10の最も硬い又は最も剛性の部分である。フレームは、それに固定された模擬臓器又は組織構造100を上昇させる及び/又は懸架するプラットフォームを形成する。フレームは、近位端と遠位端を有し、近位端は、その遠位端での狭窄開口部22と比較してより大きい開口部21を有する。様々な実施形態では、フレームは、TME手術シミュレータにアクセスするための特別な限られたアクセス点又はチャネルのみを有する腹腔鏡訓練機の境界内に嵌合するようなサイズにされてそのように成形され、及び/又は気密ではないか又は送気ガスを密封することができない。
【0019】
シミュレータ10の近位部分は、模擬腹腔又はその各部分であり、シミュレータの遠位部分は、模擬骨盤腔又はその各部分である。従って、フレームの近位部分は、フレームの遠位部分よりも高く又はその上方に設定される。同様に、近位部分での模擬臓器及び/又は組織構造は、シミュレータ10の遠位部分でのものとは異なる。しかし、一部の共通の臓器及び/又は組織構造は、近位部分から遠位部分に延びる。図示の実施形態では、フレームの近位端又はその近くに支持体又は脚23が延び、フレームの遠位端又はその近くに支持体又は脚24が延びる。脚23は、フレーム床25の近位部分から延び、脚24は、フレーム床25の遠位部分から延び、フレーム床の近位部分は、フレームの遠位部分よりも高いか又はその上方に位置決めされる。フレーム床25は、側壁26の中に延び、遠位部分では天井又は上部27に延びる。従って、様々な実施形態では、フレームの遠位部分は、閉じ込められた湾曲キャビティ又はエンクロージャを提供し、遠位端でほぼ円形の開口部を提供し、フレームの近位部分は、より大きい開口部を有するより大きい湾曲キャビティを提供する。フレーム床25は、様々な実施形態ではフレームの近位端を始端として横方向に延び、下方に湾曲してフレームの遠位端で折り返す。図示の実施形態では、脚とフレーム床は、一体化される又は単一モノリシック構造として形成され、様々な実施形態ではシミュレータ10に対する模擬作業空間を形成するように互いに接続された別々の構成要素である。様々な実施形態では、フレームは、プラスチック又は類似の剛性材料で形成され、他の様々な実施形態では、フレームを形成するための形状に切断され、例えば、機械的ファスナを用いて互いに取り付けられたプラスチックシートを含む。様々な模擬臓器及び組織構造、アセンブリ、又はサブアセンブリは、フレームによって固定及び/又は支持される。
【0020】
ここで
図4A~
図10Bを同じく参照すると、シミュレータ10は、模擬骨盤底アセンブリと、模擬トルト/骨盤内筋膜アセンブリと、結腸/直腸アセンブリと、腸間膜/直腸間膜アセンブリとを含む。模擬骨盤底アセンブリは、模擬性腺血管32と、模擬大動脈33と、模擬神経34とを含み、繊維性材料の層が、繊維性材料と模擬骨盤底31の間に詰め物のような模擬物質を取り付ける又は他に配置する又はこれらと混ぜ合わせる。様々な実施形態では、模擬骨盤底31、模擬性腺血管32、模擬大動脈33、及び模擬神経34は、全てシリコーンで作られるが、配色される又は他に互いに視覚的及び/又は触覚的に区別される。同様に、模擬血管構造は、これらの構造を更に区別するために異なる太さ又は長さを有し、例えば、模擬大動脈33は、模擬神経34及び模擬性腺血管32よりも太く、及び/又は模擬性腺血管は模擬神経34よりも長い。
【0021】
様々な実施形態により、模擬トルト筋膜アセンブリ又は骨盤内筋膜アセンブリは、模擬トルト筋膜/臓側腹膜/骨盤内筋膜シート又は層41(「トルト/骨盤内筋膜」)と模擬尿管42とを含み、様々な実施形態では、模擬血管は模擬尿管に取り付けられる。模擬トルト/骨盤内筋膜シートは、様々な実施形態では、シートに取り付けられた又は硬化されたシリコーン及び繊維性材料、例えば、詰め物から製造される。模擬尿管及び関連の血管もシリコーンで作られ、模擬トルト/骨盤内筋膜シートに取り付けられ、様々な実施形態ではシートの近位部分及び/又はシートの平滑な又は非繊維性の側に接着又は取り付けられる。様々な実施形態では、模擬尿管、模擬血管、及び模擬トルト/骨盤内筋膜シートは、配色される又は他に互いに視覚的に区別され、例えば、配色される及び/又は触覚的に例えば異なる寸法、太さ、及び/又は長さを有する。
【0022】
図示の実施形態では、模擬性腺血管32、模擬大動脈33、及び模擬神経34は、フレームに取り付けられた模擬骨盤底31に接着され、模擬大動脈33から離れた模擬骨盤底の遠位部分は、切断され、折り畳まれ、かつ同じくフレームに取り付けられるようにも成形される。同様に、模擬性腺血管32、模擬大動脈33、及び/又は模擬神経34は、TME手術シミュレータの近位部分又はその近くでのみアクセス可能及び/又は目視可能であり、それに対して模擬骨盤底は、フレームの全長又は内部に沿って又はそれを通って延びる。模擬尿管42も、TME手術シミュレータの近位部分又はその近くでのみアクセス可能及び/又は目視可能であり、それによってTME手術シミュレータ内で腹腔の各部分がより詳しく模倣される又は厳密に表される。トルト/骨盤内筋膜シートは、骨盤底に接着される又は他に取り付けられ、これらの間に模擬尿管及び模擬血管を配置する。更に、トルト/骨盤内筋膜シートの遠位部分は、TME手術シミュレータの遠位部分にほぼ閉鎖された又は円形又は長円形のエンクロージャを設けるように成形され、形成され、及び/又はシート自体に取り付けられ、それによって同じくTME手術シミュレータ内で骨盤腔の各部分がより詳しく模倣される又はより厳密に表される。
【0023】
様々な実施形態により、TME手術シミュレータの遠位部分では、模擬前立腺43、模擬膀胱44、及び模擬精嚢45が更に設けられ、模擬骨盤内シート41に取り付けられる。図示の実施形態に提供するように、模擬膀胱44は、模擬前立腺43の上方で幾分それを取り囲むように配置され、模擬前立腺43は、そこから延びる模擬尿道46を有する。模擬精嚢45は、模擬前立腺43に隣接するように又はその隣に配置され、様々な実施形態では、模擬前立腺43、模擬膀胱44、模擬精嚢45、及び/又は模擬尿道46は、模擬骨盤底31と模擬骨盤内筋膜シート41の間に配置される。様々な実施形態では、例示していないが、尿管は、手術シミュレータの近位端に向けて膀胱に取り付けられる。様々な実施形態では、模擬骨盤底31は、模擬骨盤内筋膜シート41を覆い、模擬前立腺43、模擬膀胱44、模擬精嚢45、及び/又は模擬尿道46を内部に取り込む又は取り囲むキャビティを形成する又は定める。様々な実施形態により、模擬骨盤内筋膜シート41は、模擬骨盤底31に接着され、模擬骨盤底31は、次に、外向き引張の下で又はフレームの内部から離れるように配置されるが、依然としてフレームの境界内に配置される。様々な実施形態では、模擬骨盤底は、フレームに接着された後にフレーム内に向けて延伸されるか又は引かれ、最終的に模擬骨盤底に対して外向きの引張を与えるか又はそうすることを支援する。
【0024】
様々な実施形態では、模擬膀胱44は、恥骨において模擬骨盤底31に接着され、模擬前立腺43は、模擬直腸53の前側で模擬骨盤内筋膜シート41に接着される。模擬精嚢45は、模擬前立腺43及び模擬膀胱44だけに接着される。様々な実施形態では、模擬前立腺、模擬膀胱、模擬精嚢、模擬尿道、及び/又は模擬トルト/骨盤内筋膜シートは、配色されるか又は他に互いに視覚的に区別され、例えば、配色される及び/又は触覚的に例えば異なる寸法、太さ、及び/又は長さを有する。様々な実施形態では、模擬前立腺、模擬膀胱、模擬精嚢、及び/又は模擬尿道は、全てシリコーンで作られる。
【0025】
様々な実施形態により、結腸/直腸アセンブリは、模擬直腸53に取り付けられた模擬結腸51を含む。模擬結腸は、起伏を有するか又は湾曲、隆起、又は他の面特徴部を有し、それによって実質的に平滑で管状の模擬直腸から区別される。隆起状の結腸から平滑な直腸への移行部は、手術中の視覚目印である直腸S状結腸移行部を形成し、手術シミュレータの様々な実施形態において設けられる。様々な実施形態では、模擬壁側腹膜54は、模擬結腸51に取り付けられた近位端又は近位部分と、模擬直腸53に取り付けられた遠位端又は遠位部分とを有する。更に、模擬壁側腹膜54は、トルト/骨盤内筋膜シートに取り付けられ、これらの間に腸間膜/直腸間膜アセンブリ55を配置する。
【0026】
様々な実施形態では、模擬トルト/骨盤内筋膜シート41を生成するのに使用されるものと同じ材料のシートが切断されてそれ自体に取り付けられ、模擬腸間膜57を形成する。様々な実施形態では、模擬下腸間膜動脈(IMA)52が、例えば、模擬結腸の近位部分で模擬結腸51に取り付けられ、従って、TME手術シミュレータの近位部分でのみアクセス可能/目視可能である。
【0027】
様々な実施形態では、腸間膜/直腸間膜アセンブリは、模擬腸間膜57と、模擬直腸間膜58と、模擬IMA52とを含み、模擬腸間膜57には下腸間膜静脈(IMV)56が取り付けられる。模擬腸間膜は、模擬壁側腹膜54に取り付けられるか又はその中に一体化され、これら2つは接合する。様々な実施形態では、模擬腸間膜57と模擬直腸間膜58は、単一モノリシック構造であり、模擬腸間膜57は、TME手術シミュレータの近位部分にあり、模擬直腸間膜58は、TME手術シミュレータの遠位部分にある。様々な実施形態では、模擬IMA52、模擬IMV56、及び模擬腸間膜57は、TME手術シミュレータの近位部分に又は内に位置決めされ、従って、TME手術シミュレータの近位部分でのみアクセス可能及び/又は目視可能である。様々な実施形態では、模擬IMA及び/又は模擬IMVは、全てシリコーンで作られる。
【0028】
本発明の様々な実施形態により、腹腔鏡手法を使用する模擬TME手技の第1の段階は、模擬壁側腹膜を通した進入である。腸間膜の根は、共通の進入点であり、腸間膜脂肪と後腹壁の間の色の違いによって認識することができる。この進入点は、S状結腸が腹腔鏡器具と共に移動される時の解剖学的層の移動を観察することにより、更に、腸間膜及び腹膜を通る下腸間膜動脈(IMA)の膨張の識別によって認識することができる。解剖学的特徴部の識別は、TME手技に対して必要な開始点を提供することができる。TME手術シミュレータを参照すると、現実的なテンティング及び切開を模擬するために、模擬壁側腹膜54は、模擬腸間膜57よりも剛的に模擬臓側腹膜に接着される又は他に取り付けられる。模擬結腸51は、様々な実施形態では、管状である及び/又はシリコーンで作られる。模擬結腸は、下行結腸を模擬するために模擬壁側腹膜の上に接着される又は他に取り付けられる。様々な実施形態では、模擬腸間膜の弾性及び構造を変化させるために、シート厚が増減され、シートは、低め又は高めのジュロメーター堅さの材料を用いて製造することができる。ユーザが腹腔鏡のエネルギ機器を用いて切開部を生成することを可能にするために、模擬腸間膜57は、様々な実施形態では、導電材料からモールド成形される。模擬腸間膜は、模擬トルト/骨盤内筋膜層41に模擬骨盤上口に至るまで接着されるように組み立てられる。従って、直腸を授動するために腹腔鏡手法によって実施される骨盤下部切開から腹部切開を区別することを可能にする。
【0029】
模擬壁側腹膜54を貫通した状態で、外科医は、模擬IMA52、模擬IMV56、模擬大動脈33,及び/又は模擬尿管42を探し出すために模擬無血管面、例えば、模擬トルト/骨盤内筋膜層41を切開することができる。尿管識別は、手術合併症を回避するのに重要であり、訓練及び模擬効果を更に強化することができる。模擬構造が識別された状態で、模擬大動脈の近くで模擬IMA52を骸骨化、結紮、及び分離することができる。様々な実施形態では、結紮及び分離を模擬するために、これらの模擬臓器及び模擬血管構造、例えば、模擬IMA、模擬IMV、模擬大動脈、及び/又は模擬尿管を切断、ステープル留め、縫合、及び糸結びすることができる。模擬尿管及び模擬大動脈は、模擬TME手技中に模擬IMA52及び模擬IMV56の識別を可能にする。様々な実施形態では、模擬血管構造は、太さが変化し、出血を模擬するために中空のもの又は中空で流体が充填されたものとすることができる。模擬血管構造のうちの1又は2以上は、手術シミュレータ内に接着することなく又は最小限のアタッチメントのみで、例えば、シリコーン構造に緩く直接に接着される又は他に取り付けられた状態で及び/又はこれらのあらゆる組合せで配置することができる。切開は、模擬腹側壁に向けて横方向に続けられ、模擬腸間膜を授動する。
【0030】
様々な実施形態では、模擬無血管面、例えば、模擬トルト/骨盤内筋膜層は、ポリエステル繊維充填物(polyfil)で作られた繊維性詰め物層を含む。繊維性層、例えば、詰め物内の繊維の触覚フィードバックは、腹腔鏡器具を用いた鈍的切開を利用することを可能にするほど十分な抵抗力を与える。繊維内でのこの切開は、層内の模擬血管構造を骸骨化することを可能にする。模擬トルト筋膜の下方に又はそれに隣接して後腹膜又は臓側腹膜に進入する層を表す模擬トルト筋膜と比較して薄い層が存在する。この層(後腹膜/臓側腹膜)の薄さ又は脆弱性、更に拡大解釈して模擬トルト/骨盤内筋膜層41の薄さ又は脆弱性は、TME手術シミュレータによって呈示又は模擬される手術手技中に遭遇する課題であるこの平面に過って進入してしまう可能性の高さを模擬する。様々な実施形態では、模擬トルト筋膜は、結合組織を表す又は模擬して模擬後腹膜又は模擬臓側腹膜、例えば、1又は2以上のシリコーンシートの隣に配置された及び/又はそれに取り付けられた繊維性の層又は充填物、例えば、詰め物である。模擬トルト筋膜及び/又は模擬後腹膜又は模擬臓側腹膜は、模擬壁側腹膜54の隣に配置される及び/又はそれに取り付けられる。
【0031】
様々な実施形態では、模擬トルト/骨盤内筋膜層41は、例えば、繊維性材料とシリコーンとを有し、模擬トルト筋膜層を模擬臓側腹膜層又は模擬後腹膜層を併せて含む複合層41であり、模擬骨盤内筋膜層は、模擬トルト筋膜層と模擬臓側腹膜層又は模擬後腹膜層とが組み合わさった継続部である。従って、様々な実施形態では、模擬トルト筋膜層と模擬後腹膜層又は模擬臓側腹膜層とが合わさって複合層、例えば、繊維性材料とシリコーンとを形成し、模擬骨盤内筋膜層は、この複合層の延長部であり、模擬トルト筋膜層と模擬後腹膜層又は模擬臓側腹膜層とが組み合わさった継続部である。様々な実施形態では、模擬トルト筋膜層と模擬臓側腹膜層又は模擬後腹膜層とは模擬腹腔に配置され、従って、そのように呼ばれ、それに対して模擬骨盤内筋膜層は、模擬骨盤腔に配置され、従ってそのように別様に呼ばれる。従って、本明細書を通じて模擬骨盤内筋膜層という呼称は、模擬トルト/骨盤内筋膜層と互いに交換可能に使用することができる。同様に、本明細書を通じて模擬トルト筋膜と模擬後腹膜又は模擬臓側腹膜との組合せ層又は複合層は、模擬骨盤内筋膜層及び模擬トルト/骨盤内筋膜層と互いに交換可能に使用することができる。
【0032】
様々な実施形態では、後腹膜層をより詳しく区別するか又は強調表示するために、後腹膜層又はその各部分は黄色であるか又は他に色などによって判別可能である。模擬後腹膜層内には、模擬大動脈、模擬神経、及び模擬性腺血管を閉じ込める追加の繊維又は繊維性材料、例えば、詰め物層(模擬トルト筋膜)が存在する。模擬尿管及び模擬神経は、模擬後腹膜41に接着される又は他に取り付けられ、それに対して模擬大動脈33及び模擬性腺血管32は、模擬骨盤底に接着される又は他に取り付けられる。様々な実施形態では、模擬骨盤底31は、ピンク色又は血液/肉色のシリコーンからモールド成形された薄いシートである。様々な実施形態により、模擬神経34、模擬尿管42、及び模擬性腺血管32は、模擬血管構造の対がそれぞれの模擬シート又は模擬層の遠位端よりも近位端で互いに近いようにそれぞれの模擬シート又は模擬層にある角度で傾斜する又は類似の向きに接着されるか又は他に取り付けられる。従って、模擬骨盤下部領域内では、模擬尿管及び模擬性腺血管が模擬直腸間膜58の周りに巻き付けられた時に、模擬血管構造は、模擬膀胱44及び模擬前立腺43の場所で出会う。
【0033】
模擬後腹膜の下の腹腔の外観をより詳しく模擬するために、様々な実施形態では、模擬骨盤底を構成する追加のピンク色のシリコーン層が模擬大動脈及び模擬後腹膜の詰め物層の下に配置される。これは、模擬後腹膜層に遭遇した時の模擬腹腔の色の可視化を可能にする。
【0034】
様々な実施形態により、模擬腸間膜、模擬トルト筋膜、模擬骨盤内筋膜、及び/又は模擬後腹膜を構成するシリコーン及び繊維性層は、シリコーンを用いて接着される。様々な実施形態では、層間を互いに接着するためにシリコーン接着剤又はシアノアクリル酸接着剤及びゴムセメントのような別の接着剤が使用される。シリコーン層を使用する時には、シリコーンは、シリコーン層内で容易に遮蔽することができ、付加量は、シリンジとポリウレタン発泡体のようなスポンジ状材料とを用いて簡単に制御することができる。それはまた、強力なシリコーン対シリコーン結合を生成し、一方で同じく繊維性層にいずれかが存在する場合に接着する。シリコーン腸間膜と繊維性材料の間及び繊維性材料とシリコーン後腹膜層の間のシリコーン対シリコーン結合は、切開を繊維性材料、例えば、詰め物層の範囲に食い留めることを可能にする。同様に、様々な実施形態では、シリコーン後腹膜層と繊維性層の間及び繊維性層と赤色のシリコーン層の間のシリコーン対シリコーン結合は、切開を繊維性材料、例えば、詰め物繊維性層の範囲に食い留めることを可能にする。
【0035】
様々な実施形態により、模擬トルト/骨盤内筋膜層41の範囲の切開での相違を模擬するために、接着剤、シリコーン、及び/又は圧力の量は、使用されかつ変更される。これに加えて、シリコーンで作られた2つの部品が互いに接着し、引き裂かれるか又は引き離される方法を変化させるために様々なジュロメーター堅さのシリコーンが使用される。これは、様々な生体構造の部位に対して有利な様々な鈍的切開技術を模擬する。様々な実施形態により、トルト/骨盤内筋膜シート41内では、模擬後腹膜層と比較して多めの接着剤が使用される。従って、後腹膜内への間違った平面の容易で弛めの切開に対して正しい平面であるトルト/骨盤内筋膜シート内でより困難な切開の触覚フィードバックが与えられる。模擬後腹膜層及び模擬骨盤底31内での切開は、模擬手術手技中に損傷を受ける可能性がある模擬骨盤下部内の生体構造に到るので、トルト/骨盤内筋膜層41と腸間膜/直腸間膜層57、58の間の正しい切開層の範囲に留まることによって手術合併症が回避されることに注意しなければならない。
【0036】
様々な実施形態により、これらの層内、例えば、トルト/骨盤内筋膜層41及び/又は後腹膜シート内に取り付けられた又は一体化された繊維又は繊維性材料は、他の低い断裂強度の材料を含むことができる。これらの材料は、以下に限定されるものではないが、ゲル状の材料及び電気手術エネルギを使用することができる軟質導電材料とするか又はこれらを含むことができる。詰め物などのような繊維性材料を使用することにより、模擬手術手技において観察される繊維の視覚的外観を提供する模擬も強化される。
【0037】
様々な他の実施形態では、繊維性又は繊維状の材料は、様々な模擬層又は模擬シートの中に含まれず又は他に一体化されず、従って、手術シミュレータ内の材料のシート又は層間の間で直接接触が発生する。そのような実施形態では、様々な層の間の差は、色と対比して異なる質感及び材料で示される。しかし、これらの様々な実施形態又はその組合せは、非現実的な視覚フィードバックに起因して模擬TME手術シミュレータを用いて実施される模擬手技に更に高い難度を生成する場合がある。
【0038】
様々な実施形態により、模擬組織層間の間で又はこれらの層から延びるか又はこれらの層間の間に出現する繊維性材料、例えば、詰め物を含むシリコーンシートのモールド成形又は形成は、切開を完全に模擬するのと同じく模擬骨盤内への模擬切開を完了する間にユーザが留まらなければならない切開平面を生成する。これは、更に、過誤に対して拡張された及び/又は現実的なマージンを提供する。更に、様々な実施形態では、繊維性シリコーン複合材料は、模擬手技中に類似の触覚フィードバック及び視覚フィードバックを与え、製造中に模擬手技の難度レベルを変化させるように操作することができる。
【0039】
様々な実施形態により、トルト/骨盤内筋膜層41の模擬切開は、模擬骨盤下部内での模擬切開を行うことができるように模擬左下行結腸及び模擬S状結腸を授動するためにフレームの左側壁に向けて内側から横方向に継続される。下行結腸及びS状結腸は、次に、トルト白線を分離することによってフレームの側壁から遊離される。様々な実施形態により、左側壁に沿う接着線は、2つの組織平面の接合によって生成される白線に似ている。
【0040】
模擬下行結腸及び模擬S状結腸が授動された状態で、模擬骨盤内への後部切開が続く。様々な実施形態では、模擬S状結腸は、手術シミュレータ内で恥骨を模擬するフレームを覆うシリコーン層を通過する。骨盤上口でのTME手技の特別な態様は、外科医が模擬結腸/直腸間膜と模擬トルト/骨盤内筋膜層41の間の正しい切開平面にかつ2つの組織平面の間にあるホーリー平面71として公知の部位に留まることである。この模擬後部切開中に、外科医は、模擬神経34のような目印を認識して正しい切開経路を進んでいることを確認することができる。
【0041】
後端で直腸間膜の周りの周方向切開層を含む層と結腸の周りの周方向切開層を含む層とは手術シミュレータ内の同じ組の層であるので、これらの層の間で同じ接着特性が適用される。従って、ホーリー平面を貫通する切開は、間違った平面を貫通する切開と比較した時により困難又は顕著である。更に、様々な実施形態では、繊維性材料の量を調節することによって模擬手技をより難易度の高いものにすることができる。様々な実施形態では、追加される繊維性材料又は詰め物は、それが追加された薄いシリコーンシートを強化し、模擬層間を互いに接着する時に製造を容易にする。模擬トルト/骨盤内筋膜層41は、TME手術シミュレータ内で後方に継続し、ホーリー平面の外側境界を構成する。模擬直腸間膜及び模擬結腸の周りの周方向切開は、ホーリー平面を模擬する繊維性材料の切開によって模擬される。結腸51の後側の後腹膜空間内には、TME手技に対する目印である模擬神経への1対の薄いシリコーンモールド成形分岐構造が存在する。様々な実施形態では、模擬神経34には、模擬後腹膜の薄い黄色シリコーン層を通して可視化するために例えば白色が配色される。この模擬後腹膜空間内への神経の配置は、解剖学的神経配置を反映する。手術シミュレータ内の後腹膜空間内での切開は、この平面内で模擬神経34に遭遇することを可能にすることになり、それによって間違った平面内の切開が示されると考えられる。
【0042】
様々な実施形態により、TME手術シミュレータ内では、トルト筋膜/後腹膜層と骨盤内筋膜層は、全て一体化される及び/又は同じものである。様々な実施形態により、TME手術シミュレータ内には、模擬腸間膜/直腸間膜層、トルト筋膜/骨盤内筋膜/後腹膜層、及び骨盤底/側壁/腹膜層といった3つの主模擬組織平面又は主模擬組織層が設けられる。これらの組織平面は、腸間膜/直腸間膜57、58とトルト筋膜/臓側腹膜/骨盤内筋膜層41(「トルト/骨盤内筋膜」)の間に発生するホーリー平面71と、トルト筋膜/臓側腹膜/骨盤内筋膜(「トルト/骨盤内筋膜」)と骨盤側壁層の間に発生する間違った平面73とである2つの主切開平面と混同してはならない。
【0043】
間違った平面内への切開は、仙骨前面静脈に関連付けられた問題又は不完全直腸間膜切開をもたらす直腸間膜外被の貫通のような合併症をもたらす場合がある。神経、膀胱、前立腺、及び精嚢のような認識可能な目印を設けることにより、手術シミュレータは、外科医又はユーザが間違った平面を切開しないことを保証する又は支援する。様々な実施形態により、模擬TME手術シミュレータ内では、模擬神経34は直腸間膜及び結腸の後側に配置され、神経を閉じ込める平面内での切開は、間違った平面内での切開を示している。これに加えて、様々な実施形態では、模擬層の弛めの触覚フィードバック及びそこを貫通するより容易な切開は、間違った平面内での切開の第2のインジケータである。この平面内で模擬恥骨に向う結腸の前側への切開の継続は、前立腺43、精嚢45、及び膀胱44の模擬構造に到る。様々な実施形態では、模擬前立腺43及び模擬精嚢45は、シリコーン又はウレタン発泡体を用いてキャスト成形され、シミュレーションを改善するために又はこれらが表す生体構造に対応するように、これらには、例えば、ピグメントブルー及びピグメントホワイトがそれぞれ配色される。様々な実施形態では、模擬膀胱44はシリコーンで作られ、模擬精嚢は、模擬膀胱のいずれかの側に配置される。様々な実施形態では、模擬前立腺は、その下に収まるか又はそこを通って延びるシリコーンモールド成形模擬尿道46を含む。様々な実施形態では、これらの模擬構造は、シミュレーションに関するこれらの構造の解剖学的位置を反映するようにフレーム内に位置決めされる。
【0044】
様々な実施形態では、模擬構成要素を互いに接着するためにシリコーン接着剤又はシアノアクリル酸接着剤のような接着剤を使用することができる。更に、様々な実施形態では、模擬構成要素内でゲル材料、ゴム材料、発泡体材料、及びウレタン材料を使用することができる。様々な実施形態では、シリコーン、シリコーン発泡体、及びウレタン発泡体は、模擬構成要素の外観及び触感、形状、並びに構造を模擬するのに望ましい材料特性を有する。様々な実施形態により、模擬生体構造は、組み立て中に後端で後腹膜を構成する層の上に接着され、後端上で後腹膜層を構成する繊維性材料、例えば、詰め物によっていずれかの側及びその上で囲まれる。手術シミュレータ内でのこの間違った平面への進入は、後端上で後腹膜を構成する黄色の薄層を貫通する切開の結果であると考えられる。
【0045】
様々な実施形態では、適切な模擬解剖学的接合部が設けられることを保証するような特別な又は特定の接着パターン又は他にアタッチメントパターンが、模擬腸間膜構造及び模擬臓器構造に沿って使用される。様々な実施形態により、前部切開を模擬することを可能にする手法の変形は、模擬手技の難度レベルを低下及び/又は増大させるためにそれぞれ厚い又は薄い切開平面を生成するためのシリコーン、発泡体、及び/又は繊維性材料の使用を含む。更に、これらの材料のアセンブリは、模擬TME手技中に異なる作業空間を設けるために他の模擬平面及び模擬層からの相対距離を変更することができる。様々な実施形態により、TME手術シミュレータは、過誤の余地が与えられた難易度の高い手術環境を生成し、模擬TME手技を成功裏に実施し、そのパフォーマンスを評価するのに必要とされる手練、並びに解剖学及び手術の知識の発展を促進する。更に、アタッチメント点又はアタッチメント部位の計画的な配置は、模擬前部切開中に視覚フィードバック及び触覚フィードバックを生成する。
【0046】
様々な実施形態により、模擬組織構造は、質感の視覚インジケータを利用するのとは対照的に色のような視覚インジケータを利用する導電材料からモールド成形することができる。従って、間違った平面内の切開は、様々な模擬組織層内への進入時に色の変化によって識別することができる。様々な実施形態では、間違った平面内の模擬切開は、結腸/直腸アセンブリの横側で拡幅するための手術シミュレータのフレーム内への構造支持体の組み込みを伴う。この組み込みは、間違った切開平面内で遭遇するより容易な切開をより詳しく模擬することができ、追加の模擬送気を提供し、すなわち、外科医により大きい模擬手術作業空間を与えるように機能することができる。様々な実施形態でのこれらの構造支持体は、硬質プラスチックで又は他の模擬組織構造との強力な接着点を生成するシリコーンのような軟質材料で作られる。
【0047】
様々な実施形態によるTME手術シミュレータは、模擬手技中に十分な視覚フィードバック及び触覚フィードバックを外科医に与える。更に、TME手術シミュレータは、それによって付与される模擬切開の難度を調節するように修正することができる。臨床的必要性を満たすために、例えば、繊維性組織、接着剤、及び/又はシリコーン材料の量を増減することによって模擬TME手技の難度レベルを調節することができる。
【0048】
直腸間膜の周りに周方向切開部を生成するために腹腔鏡手法からの模擬切開が実施される。この切開は、脂肪直腸間膜外被を周囲構造から遊離させるためにホーリー平面内で実施される。直腸間膜の周方向授動は、直腸がその遠位端で分離される骨盤底に至るまで続けられる。仙骨の湾曲に起因して、腹腔鏡端部からの切開の可視化は制限を受け、従って、直腸間膜の周りに周方向切開を生成する上で経肛門手法を使用することができる。経肛門端部からの切開と腹腔鏡端部からの切開は、結腸の完全な授動を可能にすることができる。次に、結腸は近位に横切開され、その後に試料が摘出される。摘出後に、試料は、直腸間膜内の裂け目及び直腸壁のいずれかの露出に関して評価される。完全な切開は、外側外被全体を有する平滑な面と無傷の直腸間膜で囲まれた閉じ込められた容積とを示すことになる。
【0049】
様々な実施形態では、模擬直腸間膜構造は、軟質シリコーン及びゲル状材料で作られる。模擬直腸間膜構造から形成されたバルーン又は外被の後側64は前側63よりも大きく、及び/又は近位端と遠位端の両方が縮径し、遠位端では縮径がより明らかである。様々な実施形態では、模擬直腸間膜構造は、バルーンを構成する外側膜を含み、このバルーン又は外被は、脂肪質外被を取り囲む固有筋膜を模擬する。様々な実施形態では、この膜は、薄いバルーン層であり、シリコーンと繊維性材料との複合材からなり、シリコーンを接着剤として用いて追加のシリコーン層を周方向に接着することを可能にする。様々な実施形態での直腸間膜脂肪充填物は、穿刺された時の解剖学的直腸間膜を模擬するように穿刺又は切断時に外側膜から部分的に漏出又は流出するが、依然として変わらずに模擬直腸間膜バルーン外被内で形状を維持する機能を有することができるほど十分なゲル状、軟質、及び/又は流動性のものである。更に、模擬試料は、その摘出のための結腸及び直腸間膜の遠位端の模擬分離中に腹腔鏡ハサミ、把持鉗子、又は解剖器具によって偶発的に破損するほど十分に脆弱である。様々な実施形態では、模擬直腸間膜/腸間膜を充填する脂肪充填物の堅さ及び/又は量に起因して、切除された模擬直腸間膜試料は、材料がどこで漏出したかを示す視覚的な孔隙又は隆起を有することになる。繊維性材料は、いずれか所与の穿刺部位からのゲルの非現実的な吐出を防止するような構造をゲル材料内に生成する。以上により、模擬試料を採点及び評価することができる。模擬試料の評点は、1~3のスケール上に割り当てることができ、この場合に、3は、模擬直腸間膜がいずれの穿孔及び/又は裂け目も伴わずに無傷である完全切開であり、2は、最小限の裂け目及び/又は穿孔しか伴わない不完全切開であり、1は、穿刺、裂け目、及び直腸壁の露出を有する不完全切開である。
【0050】
様々な実施形態では、模擬直腸間膜構造は、軟質又は密の発泡体、シリコーン、導電材料、ゼラチン、及びクレイトン(登録商標)のような様々なゲルのような脂肪充填物61で充填される。模擬試料は、薄い外側膜を有することができ、外側膜をゲル、導電材料、又は発泡体で製造することができ、又は模擬直腸間膜構造がその形状を保持する強度を有する場合は模擬試料は外側層を持たない場合がある。
【0051】
様々な実施形態では、模擬直腸間膜は、組織特性を模擬せず、代わりに模擬切開中に模擬試料上に生成された色パターン及びマーキングによって採点される。そのような実施形態は、ある色の発泡体、シリコーン、又は別の軟質材料で作られた直腸間膜の形状に似たモールド成形構成要素を含むことができる。このモールド成形構成要素は、対比色のシリコーンシートを密に巻き付けるか又はそれで被覆することができる。様々な実施形態では、模擬切開中に模擬試料が穿刺された場合に、構成要素色の露出は、裂け目又は穿刺を示すことができる。
【0052】
様々な実施形態による模擬直腸間膜は、模擬TME手技を実施している時のユーザに現実的な触覚フィードバック及び視覚フィードバックをユーザの手術技術を評価する機能と共に提供する。更に、患者から摘出された試料と同じく模擬直腸間膜は、摘出時に採点することができる。更に、様々な実施形態での模擬直腸間膜は、外側シリコーンシートと共に生成され、それによってTME手術シミュレータ内の他のシリコーン及び繊維性構成要素への接着が可能になる。
【0053】
様々な実施形態により、直腸間膜の前部切開は、薄いシリコーンシートと繊維性材料、例えば、詰め物とで作られた様々な平面を生成することによって模擬される。模擬直腸間膜及び模擬腸間膜57、58は連続構造であり、周囲組織から色及び質感によって区別される。様々な実施形態では直腸間膜及び腸間膜の外被を構成するシートは、色が周囲組織と類似である。様々な実施形態により、腸間膜及び直腸間膜には脂肪充填物61、例えば、脂肪を模擬する黄色ゲル物質が充填される。腸間膜及び直腸間膜の外側境界を形成するシリコーン外被の背後のこの黄色ゲルの存在は、その色をこれらの構造に与える。正しい平面内の模擬切開は、膀胱、精嚢、前立腺、及び尿管のような模擬解剖学的目印によって識別される。様々な実施形態でのこれらの模擬臓器構造は、シリコーンと発泡体材料で作られる。模擬直腸間膜58、模擬腸間膜57、模擬膀胱44、及び模擬尿管42は、模擬TME手技を完了するために外科医がこれらの有利な目印を識別することを可能にするように組み立てられる。様々な実施形態では、正しい切開平面であるホーリー平面内での直腸間膜の周方向切開は、薄いシリコーンシートと詰め物との複合材で作られた円柱を生成することによって模擬される。この薄いシリコーンシートに関しては、ホーリー切開平面を模擬するために詰め物のような薄い繊維性材料層が接着された模擬後腹膜として上述している。様々な実施形態では、模擬直腸間膜と、骨盤下部内で間違った平面と呼ぶ模擬後腹膜を生成する薄いシリコーンシートとは、色及び質感により、更にこれら2つの間に位置し、これらを分離し、かつ模擬直腸間膜の周りの周方向模擬切開の正しい経路を示す模擬ホーリー平面によって区別される。神経、尿管、及び性腺血管のような目印の場所は、模擬TME手技のこの切開態様に対して有用であり、後腹膜の下方にあることによって識別される。模擬トルト/骨盤内筋膜層41の後部に接着された又は他に取り付けられた模擬神経34及び模擬尿管42を含めることは、外科医が正しい平面内で切開していることを確認することを可能にする。
【0054】
模擬トルト/骨盤内筋膜層41は、直腸間膜58の周りに組織平面を形成し、かつ接着剤の計画的配置を使用する様々な実施形態ではシリコーン及び/又は他の類似のアタッチメントは、適切な模擬目印の正しい可視化を保証する。様々な実施形態では、周方向切開を模擬する手法の変形は、模擬手技の難度レベルを低下又は増大させるためにそれぞれ厚め又は薄めの平面を生成するための多め又は少なめのシリコーン、発泡体、又は詰め物材料の使用を含む。ホーリー平面を貫通するより難易度の高い周方向切開を生成するために、接着剤の追加、より強いシリコーン接着、及び/又は模擬直腸間膜58への模擬トルト/骨盤内筋膜層41のアタッチメントと類似のタイプのアタッチメントを使用することができる。様々な実施形態では、ホーリー切開平面及び間違った切開平面内の切開の難度は、これらの平面を互いに接着するのに使用される圧力量を修正することによって調節することができる。更に、ホーリー切開平面及び間違った切開平面内の切開の難度は、隣の外面に対する組織平面のサイズを変化させることによって調節することができる。例えば、トルト筋膜/臓側腹膜/骨盤内筋膜(「トルト/骨盤内筋膜」)層の全体面サイズを骨盤底層と比較して小さくすることにより、トルト/骨盤内筋膜層内により強い外向き延伸又は引張が存在し、従って、ユーザが骨盤を切開する時にこの層を内向きに引くより強い力が存在するので、トルト/骨盤内筋膜と骨盤側壁の間に存在する間違った切開平面を貫通する切開が容易になる。
【0055】
繊維性材料及び/又はアタッチメント、例えば、シリコーン接着剤の量及び/又はタイプ及び圧力など、及び/又はこれらのあらゆる組合せを変更することにより、ホーリー平面及び/又は間違った平面内の切開の難度を制御及び/又は変更することができる。しかし、そのような調節又は変更は、手術シミュレータの触覚フィードバック及び/又は視覚フィードバックを乱す又は修正する可能性があることに注意しなければならない。従って、望ましい切開難度又は切開課題、並びに視覚/触覚フィードバックを適切に与えるために、繊維性材料及び/又はアタッチメントの均衡を必要とする可能性があり、又はそれを調節することができる。描写及び説明の読解を容易にするために、描写したホーリー平面及び/又は間違った平面のサイズ、形状、均一性、及び/又は開度を誇張していることにも注意されたい。繊維性材料及び接着剤などは、例えば、切開平面の全て又は各部分に延びる又は他にそこを占有することになる。切開平面は、手術シミュレータの模擬切開中に顕著に又は他に分離状態になる。
【0056】
様々な実施形態では、模擬直腸間膜58及び模擬トルト/骨盤内筋膜層41に対する導電材料の使用は、模擬TME手技のこのセグメント中のエネルギの使用を可能にすることができる。更に、これらの材料のアセンブリは、他の模擬平面及び模擬組織からの相対距離が模擬TME手技中により大きい又はよりタイトな作業空間を与えることになるように変更することができる。更に、延伸からもたらされる外向き引張及び様々な層又はアセンブリのアタッチメントは、骨盤腔内の切開に対する送気の効果を模擬する。外科医が骨盤腔内において直腸間膜の周りで周方向切開を実施する時に現実の手技では送気が使用されることに起因して、外科医が切開平面内で切断部を生成して鈍的切開を行う時に、送気ガスからの圧力が組織平面を引き離そうとする。
【0057】
これに加えて、この手術シミュレータ内では、詰め物層を通じた模擬シリコーン臓側腹膜層へのシリコーン模擬直腸間膜の接着は、シリコーンに接着しない様々な材料の使用に基づいて達成することができない模擬直腸間膜の穿刺及び断裂への余地を与える。
【0058】
様々な実施形態では、湾曲し、かつ後側で仙骨の湾曲に追従しながら更に膨らむ一方で、恥骨に向く前側では薄めに留まる模擬直腸間膜58の明瞭な形状が存在する。様々な実施形態では、骨盤下部領域内で直腸及び直腸間膜を授動するために、模擬TME手技のための経肛門手法を使用することができる。この手法では、外科医は、直腸にアクセスし、巾着縫合部を生成し、直腸を閉鎖するためのプラットフォーム及び/又はチャネルである経肛門アクセスシステムを使用する。ホーリー平面への進入を達成するために、巾着縫合部の周りに周方向切開部が生成される。経肛門手法からのホーリー平面への進入は、かなりの技能及び解剖学知識を必要とする。様々な実施形態では、模擬直腸内への進入を達成するのに模擬経肛門アダプタが使用される。経肛門アダプタは、手術シミュレータが模擬腹腔鏡訓練機に接合することを可能にする。アダプタは、訓練機の上部及び底部胴体にロックする剛性構成要素を含む。剛性構成要素は、ウレタン又はプラスチックで製造することができる。アダプタの中にモールド成形されるのは、アクセスプラットフォームが内部に接合することができる肛門を模擬する小さい開口部を閉じ込める軟質シリコーン層である。肛門とアダプタの周りの表皮とを模擬する材料の変形は、軟質ゴム状材料又は剛性材料を含むことができる。軟質材料の使用は、可撓性と模擬オリフィス内でアクセス器具を操作する機能とを与える。様々な実施形態では、シリコーンの使用は、模擬TME手術シミュレータ内で見つかる追加のシリコーン構成要素との接合時に強いシリコーン対シリコーン結合を使用することを可能にする。
【0059】
様々な実施形態により、模擬TME手術シミュレータの遠位端では、模擬直腸53は、模擬直腸53を上述したアダプタのオリフィスを通して貫通されるアクセスチャネルの周りに配置することができるようにフレームを超えて延びる。様々な実施形態では、直腸の直径は、直腸をチャネルの周りに延伸させて固定状態に留めることを可能にするようにアクセスチャネルよりも小さい。様々な実施形態では、模擬直腸は、アダプタのシリコーン部分に直接に接着するか又は他に直接に取り付けることができる。従って、アクセスチャネルは、アダプタと結腸の両方を通して同時に挿入されることになり、この挿入は、タイトな圧力嵌めを可能にするサイズの差に起因して、ユーザにとって難易度の高いものである可能性があると考えられる。遠位端で手術シミュレータのフレームよりも大きく、かつ周方向切開層よりも大きい直腸の延長部は、アクセスチャネルが定められた場所に留まるほど十分な長さを与える。様々な実施形態では、フレーム及び/又は切開層は、アダプタと隣接するように延びることができる。更に、これは、手術シミュレータが遠位端でより固く、移動し難くなり、これは解剖学的に非現実的である。
【0060】
アクセスチャネルが配置された状態で、模擬結腸の内腔に遭遇し、巾着縫合を生成するために腹腔鏡器具を使用することができる。様々な実施形態では、模擬直腸53の断裂強度を縫合が生成する力に耐えるほど十分に高くするか又は強くするために、模擬直腸53内にメッシュを埋め込むことができる。様々な実施形態では、直腸を模擬するのに、メッシュを使用することなく及び/又はメッシュとの組合せで、縫合糸を保持する直腸の強度を強める追加の材料が使用される。追加の材料は、シリコーン、クレイトン、他のゴム状材料、及び/又はその組合せを含むことができる。巾着縫合部が生成された状態で、模擬結腸の内腔は閉鎖され、直腸の周りの周方向切開層を露出する。
【0061】
様々な実施形態により、遠位(肛門)端部では、シリコーン外被内に入れられた直腸間膜脂肪充填物61が直腸の後に続き、直腸間膜のシリコーンバルーン又はシリコーン外被の最外層は、トルト/骨盤内筋膜シート又は層に接着される又は他に取り付けられる。直腸間膜と骨盤内筋膜の間の切開平面は、ホーリー平面を表す。様々な実施形態では、模擬骨盤内筋膜シート41は、模擬腹腔鏡手法中に骨盤腔内で後腹膜と呼ぶ黄色の薄層である。骨盤内筋膜と骨盤側壁の間には、間違った切開平面を生成する又は表す別の繊維性材料層が存在する。この繊維性層の周りには、骨盤底/骨盤側壁を視覚的に表すピンク色のシリコーン層が存在する。巾着縫合部の配置時に、模擬直腸及び模擬直腸間膜が締まって模擬切開に向けて正しい(ホーリー)平面及び正しくない(間違った)平面71、73へのアクセスが可能になるように、これらの層は互いに接着される又は他に取り付けられる。これらの切開平面は、直腸間膜と骨盤内筋膜の間及び骨盤内筋膜と骨盤側壁の間に発生する。経肛門進入からの模擬直腸間膜の模擬周方向切開中に、直腸間膜の遠位端での手術シミュレータの模擬平面組織層の頂点の締まりに起因して間違った平面73に簡単に進入することができる。これは、閉じ込められた作業環境を生成し、患者に見ることができるものが模擬される。間違った平面には経肛門手法から進入することができ、間違った平面内への進入は、色及び質感の変化、及びこれらの平面の間の切開の容易さの間の触覚フィードバックによって可視化することができる。ホーリー平面は、間違った平面を貫通する切開と比較してより困難な及び/又はより大きい触覚応答を有する。様々な実施形態では、この触覚フィードバック応答は、これらの平面の中に延びる又はその間を延びる繊維性層の間の接着又はアタッチメントの変動を通して模擬される。
【0062】
様々な実施形態により、経肛門手法による進入は、模擬骨盤構造の形状で変わる場合があり、この構造は、より小さい又はより大きい作業環境を生成するように修正することができ、及び/又は模擬組織層の近接度を変化させ、目印は、模擬TME手技の難度レベルを修正することができる。様々な実施形態では、経肛門手法による模擬進入は、改善された組織構造接合及び模擬送気を可能にし、外科医により多くの量の模擬手術作業空間を与える追加の構造支持体のフレーム内への組み込みを更に伴う場合がある。様々な実施形態では、これらの構造支持体は、硬質プラスチックで、又はシリコーンで作られた他の模擬組織構造との強力な接着点を生成するシリコーンのような軟質材料で製造することができる。様々な実施形態によるTME手術シミュレータの模擬経肛門進入は、骨盤腔内で見られる閉じ込められた空間に似た閉じ込められた作業環境を生成することによって模擬TME手技の完了での十分な課題を与え、TME手技に対する学習目的である間違った平面内への進入に対する余地を与える。更に、模擬直腸53は、外科医が直腸を閉鎖し、ホーリー平面に進入するほど十分に長く巾着縫合部を保持する。様々な実施形態では、模擬直腸間膜は、TME手術シミュレータの経肛門端部では縮径し、患者内の直腸間膜の縮径に似ているか又はそれを模擬する。様々な実施形態では、模擬直腸間膜58は経肛門端部では縮径部を持たないが、患者内に見られる直腸間膜の膨張部に似ているか又はそれを模擬する。類似の変形において、直腸間膜は、脂肪質外被の端から端まで同じ厚みで直腸を封入することができる。様々な実施形態では、直腸間膜の経肛門端部での縮径は、手術シミュレータの経肛門端部のタイトな作業空間内でホーリー平面内にアクセスすることを可能にし、同時にユーザが切開において過度に強引である場合に間違った平面に進入する機能も与える。
【0063】
男性患者での狭い骨盤は、外科医に対して直腸間膜の完全周方向切開の後に腹腔鏡手法から骨盤底に到達するという課題を呈する場合がある。従って、様々な実施形態では、TME手術シミュレータは、模擬組織構造を支持し、骨盤の自然な湾曲を模擬する閉じ込められた作業環境を生成する模擬骨盤構造、例えば、フレーム/ハウジング20、20’を提供する。様々な実施形態では、
図18~
図20に示すように、フレーム20’は、切断され、折り畳まれ、組み立てられ、かつ様々な実施形態では骨盤の深い仙骨湾曲に似るようなプラスチックシート29を含む。この湾曲は、切開中に限られた可視化を生成し、従って、TME手術シミュレータ内に別の模擬特徴部を与える。様々な実施形態では、プラスチックシートは、フレームシート内の開口を通して厚いシリコーンシートと接合される。これらのシリコーンシートは、解剖学的特徴部として機能しないが、代わりに模擬組織構造、例えば、シリコーン組織構成要素をプラスチックフレーム構成要素に固定するのに使用される。様々な実施形態では、シリコーン組織構造をフレーム構成要素と接合されたシリコーンシートに接着するためにシリコーンが使用され、TME手術シミュレータを増強又は強化する耐久性シリコーン結合部が形成される。同様に、様々な実施形態では、模擬組織構造は、ドーム状固定具28にも接着される又は他に取り付けられ、ドーム状固定具28は、更にフレームに締結される又は他に取り付けられて模擬組織構造に対して引張を与える。模擬組織の外向きの延長、延伸、及び/又は引張、例えば、周方向引張は、腹腔鏡手技中に供給される送気を更に模擬することができる。
【0064】
手術中に、送気ガスは、患者の体内の組織平面を延伸する。従って、外科医が組織内に切断部を生成する時に、送気ガスが生成する引張は、組織平面の間を互いから引き離す。これは、外科医が腹腔から骨盤腔に移動する時に特に明白である。これも、間違った切開平面に進入し、切開が骨盤内に続けられる時に、間違った平面内で続行することが何故非常に容易であるかの理由の一部である。従って、様々な実施形態では、TME手術シミュレータの内部、特に骨盤腔内の模擬組織構造は、送気の結果として引張下にある組織平面の挙動を模擬する手法として周方向引張の下に置かれる。
【0065】
様々な実施形態では、フレームは、可撓性を追加して追加の曲げ、切断、シート、及びファスナの必要なしで模擬骨盤の湾曲の形成を可能にする薄いプラスチックシートで作られる。更に、様々な実施形態では、アセンブリに向けて使用されるシリコーンシートは、接着剤及び/又はファスナを用いてフレームに接着することができる。様々な実施形態により、フレームは、ホーリー平面を貫通する後部切開中の限られた視認性を含む難易度の高い閉じ込められた作業環境を与える。更に、様々な実施形態では、フレームは、模擬送気を手術シミュレータに供給し、更に、作業環境を拡幅又は狭窄することによって手術シミュレータの難度レベルを操作するのに利用することができる支持体を生成する。様々な実施形態では、フレームを少なくとも2つの部材又は構成要素によって組み立てるというモジュール性は、TME手術シミュレータのアセンブリを容易にする。
【0066】
様々な実施形態では、TME手術シミュレータの最終アセンブリは、TME手術シミュレータ内で最も内部にあるアセンブリである結腸/直腸/腸間膜/直腸間膜アセンブリを用いて始まる。直腸間膜/直腸アセンブリの周りにトルト/骨盤内筋膜アセンブリが取り付けられ、次に、前立腺アセンブリが追加され、更にトルト筋膜/臓側腹膜/骨盤内筋膜に/その周りに骨盤底が取り付けられる。直腸間膜の周りの定められた場所に軟質層が接着される又は他に取り付けられた後に、軟質サブアセンブリをフレームに接合するプラスチック/シリコーン構成要素が、最終的な軟質サブアセンブリの定められた場所に取り付けられる。このシリコーンサブアセンブリは、その外面が、後にプラスチックフレーム構成要素が最終的に組み立てられた時に達成される内面よりも若干小さいようなものである。シリコーンサブアセンブリ及びプラスチックフレーム内の層の間のこのサイズ不整合は、手術シミュレータの骨盤腔内の全ての組織層の周方向引張をもたらす。様々な実施形態では、この周方向引張は、模擬の現実性を更に改善する模擬送気を提供する手術シミュレータの特徴である。
【0067】
様々な実施形態により、TME手術シミュレータのアセンブリは、完全に組み立てられたフレーム20’又は単一モノリシックフレーム20を用いて始まる。フレーム内に骨盤底/側壁アセンブリが接着される又は他に取り付けられる。骨盤底/側壁にトルト筋膜/臓側腹膜/骨盤内筋膜(「トルト/骨盤内筋膜」)層が接着される又は他に取り付けられ、トルト/骨盤内筋膜層41内に直腸間膜/腸間膜/結腸/直腸アセンブリが接着される又は他に取り付けられる。そのような様式で取り付けられた時に、各連続層は、外向き引張下にある。この外向き引張は、これらの層の間で切開が行われる時にこれらの層又はサブアセンブリを互いから引き離し、それによって腹腔鏡切開中に送気ガスが生成する引張に起因して患者内に発生するものの忠実なシミュレーションを提供する。
【0068】
様々な実施形態により、既に互いに接着された模擬アセンブリ、例えば、模擬直腸間膜58又は骨盤内筋膜層41と共にフレームが形成され、フレームの各部分がこれらの模擬アセンブリの最外層に取り付けられた時に外向きの周方向引張が得られる。フレームが模擬アセンブリ又は模擬層よりも大きいことにより、フレームが組み立てられる又は形成される時にこれらの模擬層は延伸する。フレームの組み立て中に発生するこの延伸は、取り付けられた模擬組織アセンブリに対してこの外向き引張を与える。この外向き引張は、送気ガス又は密封エンクロージャを使用することなく送気を模擬する。
【0069】
この事前生成又は初期生成した外向き引張の結果として、模擬切開が行われる時に対応する模擬アセンブリ又は模擬層間は分離する傾向があり、送気の効果が模擬される。例えば、模擬切開中に、フレームに取り付けられている1又は複数の外側層は、固定されたままに留まるか、又は内側層の重量の放出、材料がフレームに向けて移動する収縮又はそうしようとする傾向、及び/又はその組合せに起因して外向きに又は1又は複数の内側層から離れるように移動しようとする。外側層から分離された内側層は、外向き引張から解除され、従って、内向きに又は外側層から離れるように移動するか又は移動しようとする。内側層の重量、非引張状態又は事前延伸状態に戻る材料の収縮又はそうしようとする傾向、及び/又はその組合せは、更に内側層を外側層から離れるように移動することができる。
【0070】
様々な実施形態では、事前生成された外向き引張は、各模擬アセンブリ又は模擬層が形成される時に形成される。例えば、各模擬アセンブリは、フレームに取り付けられるか又は当該模擬アセンブリとフレームとの間で直前にある模擬層に取り付けられる時に外向き引張を受ける。従って、各模擬アセンブリは事前延伸され、その後に直前の模擬層又はフレームに取り付けられる。このようにして、これらの模擬アセンブリ又は模擬層が手術シミュレータに追加される時に、これらの層に引張が追加され、その結果、これらの層はそれ程強靱ではなく、分離される時に破壊され易く、及び/又は他の模擬層又はフレームに過度に接着又は取り付けられる。本方法では、事前延伸状態にある間にこれらの層に接着剤が追加され、圧力が印加された状態にあり、接着剤及び圧力の量は層サイズとは独立に制御することができるが、望ましい切開品質を達成するためには詰め物の量と併せた全ての特性が均衡状態になければならない。
【0071】
様々な実施形態では、切開及び手術シミュレータの全体の触感に影響を及ぼすように繊維性材料を厚め又は薄めにすることができる。模擬アセンブリ、例えば、骨盤内筋膜層は、湿潤シリコーン層と、防水障壁を与える1又は2以上の層と、繊維性材料との結合を与える1又は2以上の層とを含み、厚めにすることができる。1又は複数のシリコーン層を厚めにすることにより、手術器具によって模擬アセンブリを損傷するか又はその取り扱いを誤ることがより困難になるので、模擬切開をより容易にすることができる。更に、シリコーンを厚めにすることにより、同じサイズ及び形状の薄めの層と比較して外向き引張を高めることができる。
【0072】
図11A~
図11Bを参照すると、本発明の様々な実施形態による模擬骨盤内筋膜41が延伸されない又は最小限にのみ延伸又は他に引張され、模擬直腸間膜58が模擬骨盤内筋膜41と比較してかなり延伸又は他に引張される例示的構成を示すために、延伸/引張の前の構成を
図11Aに示し、後の構成を
図11Bに示している。そのような構成では、模擬直腸間膜58が、事前延伸形態又は非延伸形態に戻ろうとすることに起因して模擬骨盤内層41から分離しようとするので、ホーリー平面71内の切開は、間違った平面73でのものよりも容易である。より容易なホーリー平面切開は、訓練外科医が間違った平面の代わりに「正しい」ホーリー平面内で切開する可能性がより高くなるので、訓練外科医に対してそれ程難易度が高くなく又はそれ程困難ではない。
【0073】
図12A~
図12Bを参照すると、模擬直腸間膜が延伸されない又は最小限にのみ延伸又は他に引張され、模擬骨盤内筋膜41が模擬直腸間膜58と比較してかなり延伸又は他に引張される例示的構成を示すために、延伸/引張の前の構成を
図12Aに示し、後の構成を
図12Bに示している。そのような構成では、模擬直腸間膜58は模擬骨盤内層41から分離しようとせず、内向きに又は模擬骨盤内筋膜層41から離れるように移動するように付勢しようとする傾向を有さない又は最小限にのみ有するので、間違った平面73内の切開は、ホーリー平面71でのものよりも容易である。一方、模擬骨盤内層41は、その事前延伸形態又は非延伸形態に戻ろうとすることになるので、模擬骨盤底から分離しようとするか又は模擬直腸間膜58に向かおうとすることになる。より容易な間違った平面切開は、訓練外科医が「正しい」ホーリー平面の代わりに間違った平面内で切開する可能性があるので、訓練外科医に対してより難易度が高く又はより困難である。
【0074】
図13を参照すると、模擬直腸間膜及び模擬骨盤内筋膜層58、41が外向きの引張又は延伸などの下に置かれることなく定められた場所に接着される又は他に取り付けられるようにこれらの層のサイズがフレームのサイズ及び直前の模擬層の層厚に整合する例示的構成を示すために、中立又は無/最小の延伸/引張構成を示している。様々な実施形態により、この関連において、層が外向き引張を受けず、従って、互いから分離しようとしないか又はそのように事前調整されないことになるので、切開の難度は、繊維性材料、圧力、接着剤/アタッチメント、及び/又はその組合せだけによって制御又は調節される。様々な実施形態では、例えば、
図8Bに示すように、模擬骨盤内筋膜層及び模擬直腸間膜層41、58は、ホーリー平面と間違った平面の両方71、73内に模擬送気効果が存在するように延伸又は他に引張される。従って、様々な実施形態では、模擬骨盤内筋膜層41は、間違った平面切開が若干より容易であるが、模擬直腸間膜も変わらずに延伸されるように模擬直腸間膜58よりも大きく延伸又は他に引張される。
【0075】
様々な実施形態では、最終段階のうちの1つとして、直腸間膜/腸間膜の中に直腸間膜脂肪充填物61、例えば、事前生成された非液体脂肪充填物が注入又は他に導入される。その結果、脂肪充填物は、模擬組織層間を互いに接着する又は他に取り付ける処理に悪影響を及ぼさず、特に、直腸間膜と骨盤内筋膜の間のアタッチメントを強めてこれら2つの層の間のホーリー切開平面を正確に模擬することを可能にする。更に、様々な実施形態では、直腸間膜の外側層は、非常に薄く脆弱にされ、例えば、薄く脆弱なシリコーンシートで製造することができ、それによってTME手術シミュレータの現実性と評価目的に使用される機能とが改善される。
【0076】
様々な実施形態では、模擬脂肪充填物は、ポリアクリル酸ナトリウム、不透明な寒天ゲル、水、及び/又はその組合せを含む。直腸間膜脂肪充填物に対してゼラチン及び寒天ゲルを使用することができることに注意しなければならない。しかし、ゼラチンは低温(例えば、約35°)で融解し、従って、その有用性が限られ、寒天ゲルは、破壊された時に離水を示し、これは、直腸間膜が損傷を受けた時に直腸間膜からの非現実的な水漏れを引き起こす。
【0077】
TME手術シミュレータの識別及び説明を容易にするために様々な図面を準概略的なタイプで提示していることに注意しなければならない。従って、本明細書に提示するTME手術シミュレータは、場所及び/又は模擬構造間の間隔においてこれらの図面が示すように意図的に均一にされていない場合がある。
【0078】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬壁側腹膜層と、模擬壁側腹膜層に接続され、それと共にその間に外被を形成する模擬直腸間膜及び腸間膜層とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、外被内に配置された模擬脂肪充填物を更に含む。様々な実施形態では、模擬脂肪充填物は、ポリアクリル酸ナトリウム、寒天ゲル、及び/又はゲルを含む。様々な実施形態では、模擬直腸間膜及び腸間膜層は、穿刺可能である及び/又は薄い穿刺可能シリコーンシートで作られる。
【0079】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬腹腔を定める近位部分及び模擬骨盤腔を定める遠位部分を有するフレームを含む。様々な実施形態では、模擬骨盤腔内に模擬骨盤内筋膜層が配置され、模擬骨盤内筋膜層とフレームの遠位部分とに模擬骨盤底層が取り付けられる。様々な実施形態では、模擬骨盤内筋膜層に模擬直腸間膜層が取り付けられる。様々な実施形態では、模擬直腸間膜層と模擬骨盤内筋膜層は、これらの間に模擬切開平面を定める。
【0080】
様々な実施形態では、模擬骨盤内筋膜層、模擬骨盤底層、模擬直腸間膜層、及び/又はこれらのあらゆる組合せは、周方向引張の下に置かれ、延伸され、事前延伸され、及び/又は事前引張される。様々な実施形態では、模擬骨盤内筋膜層は、模擬骨盤底層よりも大きい。様々な実施形態では、模擬骨盤内筋膜層は、模擬骨盤底層よりも厚い及び/又は長い。
【0081】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬腹腔を定める近位部分及び模擬骨盤腔を定める遠位部分を有するフレームを含む。様々な実施形態では、模擬臓側腹膜層は、模擬腹腔内に配置される。様々な実施形態では、模擬壁側腹膜は、模擬臓側腹膜層とフレームの近位部分とに取り付けられる。様々な実施形態では、模擬腸間膜層は、模擬臓側腹膜層に取り付けられる。様々な実施形態では、模擬腸間膜層と模擬臓側腹膜層は、これらの間に模擬切開平面を定める。
【0082】
様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬骨盤内筋膜層と模擬直腸間膜層を含み、模擬骨盤内筋膜層及び模擬直腸間膜層のうちの少なくとも一方は、周方向引張の下に置かれ、延伸され、事前延伸され、及び/又は事前引張される。様々な実施形態では、手術シミュレータは、互いに接続されてその間に外被を形成する模擬直腸間膜層及び模擬壁側腹膜層と、外被内に配置された模擬脂肪充填物とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬骨盤内筋膜層と模擬直腸間膜層を含み、模擬骨盤内筋膜層が模擬直腸間膜層に取り付けられてこれらの間に模擬切開平面が定められる。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬臓側腹膜層と模擬腸間膜層を含み、模擬臓側腹膜層が模擬腸間膜層に取り付けられてこれらの間に模擬切開平面が定められる。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬骨盤底層と模擬直腸間膜層を含み、模擬骨盤底層は、模擬直腸間膜層に取り付けられてこれらの間に模擬切開平面を定める。様々な実施形態では、手術シミュレータは、模擬骨盤層と模擬腸間膜層を含み、模擬骨盤底層は、模擬腸間膜層に取り付けられてこれらの間に模擬切開平面を定める。様々な実施形態では、手術シミュレータは、第2の複合シリコーンシートに接続された第1の複合シリコーンシートを含む。様々な実施形態では、第1又は第2の複合シリコーンシートのうちの少なくとも一方は、周方向引張の下に置かれ、延伸され、事前延伸され、及び/又は事前引張される。様々な実施形態では、手術シミュレータは、複合シリコーンシートに接続されたシリコーンシートを含み、これらの間に模擬切開平面が定められる。様々な実施形態では、手術シミュレータは、第2の複合シリコーンシートに接続された第1の複合シリコーンシートを含み、これらの間に模擬切開平面が定められる。様々な実施形態では、手術シミュレータは、複合シリコーンシートに接続されてその間に外被を形成するシリコーンシートと、外被内に配置された模擬脂肪充填物とを含む。様々な実施形態では、手術シミュレータは、シリコーン外被と、ポリアクリル酸ナトリウム及び不透明な寒天のうちの少なくとも一方を含むゲルとを含む。様々な実施形態では、模擬筋膜層は、模擬骨盤内筋膜層、模擬トルト筋膜/臓側腹膜層、模擬トルト筋膜、トルト/骨盤内筋膜層、及び/又はこれらのあらゆる組合せである。様々な実施形態では、手術シミュレータは、フレーム又はベースを含まず、及び/又は様々な実施形態では、フレームなどなしに1又は2以上の模擬構造及び構成要素などを含む。
【0083】
以上の説明は、あらゆる当業者が本発明を製造及び使用し、本明細書に説明する方法を実施することを可能にするために提示したものであり、本発明者が考える本発明を実施する最良のモードを示している。しかし、当業者には様々な修正が明らかなままに留まるであろう。これらの修正は、本発明の開示の範囲内であることが考えられている。異なる実施形態及びそのような実施形態の態様は、様々な図に示されて本明細書を通じて説明されていると考えられる。しかし、各実施形態及びその態様は別々に示す又は説明しているが、これらは、別途明示的に述べない限り、他の実施形態及びその態様のうちの1又は2以上と組み合わせることができることに注意しなければならない。各組合せを明示的に示していないのは、単に本明細書の可読性を容易にするためである。
【0084】
本発明は、ある一定の特定の態様内で説明したが、当業者には多くの追加の修正及び変形が明らかであろう。従って、本発明は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなくサイズ、形状、及び材料の様々な変更を含む具体的に説明したもの以外に実施することができることは理解されるものとする。すなわち、本発明の実施形態は、あらゆる意味で限定ではなく例示であると考えるべきである。