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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】通板装置、プレスシステム及び通板方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/02 20060101AFI20240725BHJP
   B21D 1/05 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B21D43/02 E
B21D1/05 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023067867
(22)【出願日】2023-04-18
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】000128876
【氏名又は名称】株式会社アマダプレスシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】小新井 慎治
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-42420(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162404(WO,A1)
【文献】特開2011-104650(JP,A)
【文献】実開昭58-170116(JP,U)
【文献】特公昭48-20073(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/02
B21D 43/09
B21D 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンコイラから繰り出されたワークにプレス装置によって加工を行うプレスシステムが備える通板装置であって、
前記アンコイラから繰り出されたワークにループを形成するための下降位置と、前記下降位置よりも高い上昇位置との間で移動可能なテーブルを有する昇降装置と、
ワークを矯正する矯正部と、前記矯正部の下方に設けられ、加工に供しないワークを載置する載置台と、を有し、前記矯正部から前記プレス装置に搬送されるワークにS字状のループを形成するレベラと、
ワークを切断する切断動作状態又はワークを切断しないように退避した退避状態となるカッターと、ワークを前記矯正部に導く第1状態と、ワークを前記載置台に導く第2状態とを切り替え可能な切替手段と、を有する切断装置と、
前記アンコイラから繰り出されたワークの先端から所定長さを切断する指令が入力される操作部と、
前記操作部の入力に応じて前記昇降装置、前記レベラ、前記切断装置を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記操作部から前記指令が入力された場合には、前記テーブルを前記上昇位置に移動させ、前記カッターを前記切断動作状態とし、前記切替手段を前記第2状態とし、前記カッターから前記先端までの長さのワークの一部が前記載置台に載置された状態で前記カッターによりワークを切断する、通板装置。
【請求項2】
前記載置台は、前記カッターにより切断されたワークを載置する、請求項1に記載の通板装置。
【請求項3】
前記昇降装置は、前記アンコイラに装着されるコイル状のワークの外径に応じて、前記テーブルから前記ワークに向かって伸びた状態と、前記テーブルの下方に収納された状態との間で移動可能な伸縮ガイドを有する、請求項1に記載の通板装置。
【請求項4】
前記載置台は、ローラーコンベアである、請求項1に記載の通板装置。
【請求項5】
前記指令を第1指令としたとき、前記操作部は、ワークを切断することなく前記先端を前記プレス装置に導く第2指令が入力され、
前記制御手段は、前記操作部から前記第2指令が入力された場合には、前記テーブルを前記下降位置に移動させ、前記カッターを前記退避状態とし、前記切替手段を前記第1状態とし、前記先端を前記プレス装置に導くとともに、前記下降位置にある前記テーブル上にループを形成する、請求項1に記載の通板装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通板装置を備える、プレスシステム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の通板装置を用いた通板方法であって、
前記操作部から前記指令が入力されたことに応じて、
前記制御手段により前記テーブルを前記上昇位置に移動させる上昇工程と、
前記制御手段により前記切替手段を前記第2状態とする切替工程と、
前記制御手段により前記アンコイラから前記先端を繰り出す繰り出し工程と、
前記制御手段により前記カッターを前記切断動作状態とするカッター起動工程と、
前記カッターから前記先端までの長さのワークの一部が前記載置台に載置された状態で前記カッターにより前記ワークを切断する切断工程と、
を備える、通板方法。
【請求項8】
請求項5に記載の通板装置を用いた通板方法であって、
前記操作部から前記第2指令が入力されたことに応じて、
前記制御手段により前記カッターを前記退避状態とするカッター退避工程と、
前記制御手段により前記切替手段を前記第1状態とする切替工程と、
前記制御手段により前記アンコイラから前記先端を繰り出す繰り出し工程と、
前記制御手段により前記テーブルを前記下降位置に移動させる下降工程と、
前記先端を前記プレス装置に導くとともに、前記下降位置にある前記テーブル上にループを形成するループ形成工程と、
を備える、通板方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通板装置、プレスシステム及び通板方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速化されたプレスシステムにおいては、ワークの巻き癖等を矯正しつつワークを搬送するレベラ等の送り装置で、矯正後のワークにS字状のループを形成させるものがある(例えば、特許文献1参照)。S字状のループを形成させることで、フィードロールの送り方向と、ループのR形状部までのワークの方向が同じ直線状となり、またループの下部はガイドコロによって支えられループが揺れにくくなる。このため、いわゆるダウンループの課題とされていた、ループの揺れに起因するワークの変形や傷、送り装置の負荷変動等を低減できる。ワークのループは、アンコイラとレベラとの間にも形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-104650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アンコイラから巻き出されたワークをレベラの入口にセットする、いわゆる通板作業は、作業者による手作業で行われている。具体的には、作業者はアンコイラから繰り出され下に垂れ下がったワークの先端を手で持って上に持ち上げてレベラの入口に通板している。S字状のループを形成して搬送するシステムの場合、ワークの板厚は例えば0.15~0.5mmと薄く、端部が鋭利であるため、その端部を手で持つことには危険を伴う。
【0005】
また、コイル材は、保管中や運搬中に粉塵等が付着していたり傷が付いていたりするため、コイル材の傷等がある部分、例えば最初の1巻き分が切断、除去されることもある。このとき、作業者は廃棄する分のワークを切断が可能な位置に案内する作業が必要となる。そしてワークを切断する際には、ワークをカッターで切断する作業者及びワークを手で押さえる作業者、の最低でも2名の作業者が必要となる。また、カッターによる切断作業においても危険を伴う。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、ワークの通板作業を安全に効率よく行うことができる通板装置、プレスシステム及び通板方法を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を備える。
【0008】
(1)アンコイラから繰り出されたワークにプレス装置によって加工を行うプレスシステムが備える通板装置であって、前記アンコイラから繰り出されたワークにループを形成するための下降位置と、前記下降位置よりも高い上昇位置との間で移動可能なテーブルを有する昇降装置と、ワークを矯正する矯正部と、前記矯正部の下方に設けられ、加工に供しないワークを載置する載置台と、を有し、前記矯正部から前記プレス装置に搬送されるワークにS字状のループを形成するレベラと、ワークを切断する切断動作状態又はワークを切断しないように退避した退避状態となるカッターと、ワークを前記矯正部に導く第1状態と、ワークを前記載置台に導く第2状態とを切り替え可能な切替手段と、を有する切断装置と、前記アンコイラから繰り出されたワークの先端から所定長さを切断する指令が入力される操作部と、前記操作部の入力に応じて前記昇降装置、前記レベラ、前記切断装置を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記操作部から前記指令が入力された場合には、前記テーブルを前記上昇位置に移動させ、前記カッターを前記切断動作状態とし、前記切替手段を前記第2状態とし、前記カッターから前記先端までの長さのワークの一部が前記載置台に載置された状態で前記カッターによりワークを切断する、通板装置。
【0009】
(2)前記(1)に記載の通板装置を備える、プレスシステム。
【0010】
(3)前記(1)に記載の通板装置を用いた通板方法であって、前記操作部から前記指令が入力されたことに応じて、前記制御手段により前記テーブルを前記上昇位置に移動させる上昇工程と、前記制御手段により前記切替手段を前記第2状態とする切替工程と、前記制御手段により前記アンコイラから前記先端を繰り出す繰り出し工程と、前記制御手段により前記カッターを前記切断動作状態とするカッター起動工程と、前記カッターから前記先端までの長さのワークの一部が前記載置台に載置された状態で前記カッターにより前記ワークを切断する切断工程と、を備える、通板方法。
【0011】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、ワークの通板作業を安全に効率よく行うことができる通板装置、プレスシステム及び通板方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のプレスシステムの構成を示す概略正面図である。
図2図2は、実施形態のプレスシステムのブロック図である。
図3図3は、実施形態の昇降装置、切断装置及びレベラを示す概略正面図である。
図4図4は、(a)切り替えガイドが上昇しているときのワークの搬送方向を示す図、(b)切り替えガイドが下降しているときのワークの搬送方向を示す図である。
図5図5は、実施形態のプレス装置の構成を示す概略斜視図である。
図6図6は、実施形態のプレスシステムを操作する操作部の構成を示す概略図である。
図7図7は、通板動作の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明において、プレスシステムのプレス装置において加工が行われているときに、ワーク(コイル材)が搬送される方向を搬送方向という。また、ワークに加工が施される高さを加工高さといい、加工高さを搬送方向に沿って結んだ仮想線をパスライン(生産ライン)という。なお、加工高さは、例えば、プレスシステムが設置されている床面やプレス装置の金型の下型やボルスタを基準とした高さである。
【0015】
[実施形態]
<プレスシステム>
図1は、本実施形態のプレスシステム1の構成を示す概略斜視図である。図1にはワークの搬送方向及び上流、下流、上下方向、パスラインPL(一点鎖線)も示す。図2は、本実施形態のプレスシステム1のブロック図である。図3は、本実施形態のアンコイラ100、昇降装置200、切断装置300、レベラ400の構成を示す図であり、搬送方向(上流、下流)及び上下方向も示す。本実施形態のプレスシステム1は、アンコイラ100、昇降装置200、切断装置300、レベラ400、フィードロール500、プレス装置600、操作部700を備えている。アンコイラ100、レベラ400、フィードロール500は、プレス装置600の加工動作に連動して動作する。また、昇降装置200及び切断装置300は、プレス装置600による加工動作中は、加工の妨げとならないような状態を維持している。プレスシステム1は、床面10に設置される。以降の説明では、図1図5を参照しながら各装置の構成・機能について説明する。
【0016】
<アンコイラ>
ワーク120を保持する保持装置であるアンコイラ100は、マンドレル110、押さえ112、制御部130、モータ140、シリンダ150を有している。マンドレル110には、プレス装置600の加工の対象物であり、コイル状に巻かれたワーク120(コイル材)が保持されている。例えば、コイル状に巻かれたワーク120の内径がマンドレル110によって保持され、マンドレル110が回転することによりワーク120を繰り出す。
【0017】
押さえ112は、コイル状に巻かれたワーク120の外径を押さえ、コイル状のワーク120がばらけることを防止するとともに、マンドレル110の回転によるワーク120の繰り出し動作を補助している。なお、ワーク120の外径は、例えば800mmや1400mm等、種々の大きさのものがある。
【0018】
モータ140は、マンドレル110の回転を駆動する。シリンダ150は、押さえ112の移動を駆動し、押さえ112をワーク120の外径を押さえている状態(押さえ状態)と、ワーク120から離れている状態(開放状態)とに切り替える。制御部130は、プレス装置600による加工動作と連動するように、モータ140によってマンドレル110を回転させて、ワーク120の巻きほぐしを行う。
【0019】
アンコイラ100は、プレス装置600による加工動作中、ワーク120がなくなるまで、一定の速度でワーク120をレベラ400側に供給する。すなわち、アンコイラ100は、プレス装置600の動作に応じた速度でワーク120を供給する。ワーク120は、例えば、薄板鋼鈑等の材質のものも含む。
【0020】
また、アンコイラ100は、ワーク120がマンドレル110に装着されたとき、ワーク120の先端をレベラ400にセットする動作(以下、通板動作という。)が行われる際に、マンドレル110の回転を開始したり停止したりすることもできる。また、マンドレル110は、ワーク120を送り出す方向に回転(以下、正転とする。)するだけでなく、ワーク120を巻き取る方向に回転(以下、逆転とする。)することもできる。
【0021】
<昇降装置>
昇降装置200は、伸縮ガイド210、昇降テーブル220、シリンダ230、モータ240、制御部250を有している。
【0022】
伸縮ガイド210は、昇降テーブル220の下方に設けられており、図1に実線で示す、アンコイラ100に向かって伸びた(前進した)状態210aとなることができる。また、伸縮ガイド210は、図1に破線で示す、昇降テーブル220の下方に収納された(後退した)状態210bとなることができる。伸縮ガイド210は、状態210aと状態210bとの間で伸縮することができる。
【0023】
伸縮ガイド210は、アンコイラ100に外径が小さいワーク120が装着されているときには、アンコイラ100に向けて伸ばされ、伸縮ガイド210の先端がワーク120の外周面に接し、ワーク120の先端を受け取る。一方、伸縮ガイド210は、アンコイラ100に外径が大きいワーク120が装着されており、伸縮ガイド210を伸ばさなくても昇降テーブル220上にワーク120の先端を受け取ることができる場合には、昇降テーブル220の下方に収納された状態となる。なお、伸縮ガイドの先端にローラが付属していてもよい。この場合、伸縮ガイドがアンコイラ100に向けて伸びる際、ローラがワーク120の外周面に接し、この状態を維持する。伸縮ガイド210は、ワーク120の外径に応じて伸縮することで、ワーク120の先端が昇降テーブル220に乗らずに落下することを防止する。
【0024】
昇降テーブル220は、通板動作時にワーク120の先端を受け取ることができる位置に上昇することができる。また、昇降テーブル220は、加工動作時にワーク120にループ(U字状のループ:ダウンループ)を形成することができる位置に下降することができる。図1図3では、昇降テーブル220が上昇したときの位置を実線で上昇位置220aとして示し、昇降テーブル220が下降したときの位置を破線で下降位置220bとして示している。
【0025】
ここで、コイル状のワーク120の重量は例えば2t~5tもあるため、アンコイラ100のマンドレル110は、プレス装置600による加工動作にあわせて回転の停止及び回転の再開をすることができない。このため、アンコイラ100は、プレス装置600による加工動作中、一定の速度で回転する。一方、アンコイラ100の下流側のレベラ400では、プレス装置600の加工にあわせてワーク120を搬送しており、アンコイラ100とレベラ400との間でワーク120の搬送速度に差が生じる。両者に生じた搬送速度の差を吸収するためのバッファ量として、アンコイラ100の下流側ではワーク120にループを形成している。昇降テーブル220は、下降位置220bにあるときにワーク120により形成されたループを支えている。
【0026】
シリンダ230は、伸縮ガイド210を駆動し伸縮させる。モータ240は、昇降テーブル220を駆動し上下方向に移動させる。制御部250は、シリンダ230を制御することで伸縮ガイド210の伸縮動作を制御し、モータ240を制御することで昇降テーブル220の上下移動を制御する。
【0027】
<切断装置>
切断装置300は、材料押さえ310、カッター320、切り替えガイド330、シリンダ340、シリンダ350、シリンダ360、制御部370を有している。
【0028】
材料押さえ310は、通板動作とともに切断動作が行われる場合に、ワーク120をクランプしワーク120が動かないようにする。なお、材料押さえ310は、プレス装置600による加工動作中には、ワーク120の搬送を妨げないようにワーク120を押さえていない位置に退避する。シリンダ340は、材料押さえ310がワーク120を押さえた状態と、ワーク120を押さえていない(開放)状態との切り替え時の駆動を行う。制御部370は、シリンダ340を制御することで材料押さえ310の状態を切り替える。
【0029】
カッター320は、図1の紙面に直交する方向(前後方向)、すなわち、ワーク120の幅方向に移動することが可能である。カッター320は、例えば自走式のカッターであり、前後方向における後側(奥側)を初期位置(ホームポジション)とし、奥側から手前側に向かって移動しながらワーク120を切断する。初期位置(ホームポジション)は退避状態でもある。
【0030】
カッター320がホームポジションに位置しているときにはワーク120とは干渉せず、プレス装置600による加工動作中にはカッター320がホームポジションに維持されることにより搬送されるワーク120にカッター320が接触することはない。なお、カッター320が、退避位置から一往復してワーク120を切断する動作を行う準備ができている状態、又は、切断を行っている状態を含めて、切断動作状態という。また、ホームポジションを手前側としてもよい。
【0031】
シリンダ350は、カッター320の走行を駆動する。制御部370は、シリンダ350を制御することでカッター320によるワーク120の切断を制御する。なお、作業者が手動でカッター320を奥側から手前側(又はその逆)に移動させることで、ワーク120を切断してもよい。
【0032】
切り替えガイド330は、ワーク120の進行方向を切り替える切替手段である。切り替えガイド330は、ワーク120をレベラ400の後述する幅ガイド410(又は矯正部430)に導く状態(第1状態)と、ワーク120をレベラ400の後述するローラーコンベア450に導く状態(第2状態)と、を切り替える。なお、図1図3において、切り替えガイド330の第1状態である位置330bを破線で示し、第2状態である位置330aを実線で示す。
【0033】
切り替えガイド330は、幅ガイド410にワーク120を導くとき、下方に移動する(下降)。切り替えガイド330は、ローラーコンベア450にワーク120を導くとき、上方に移動する(上昇)。シリンダ360は、切り替えガイド330を駆動する。制御部370は、シリンダ360を制御することで切り替えガイド330の状態を切り替える。
【0034】
(切り替えガイドの切り替えとワークの搬送方向)
図4は、切り替えガイド330とワーク120の搬送方向を示す図である。図4(a)は、切り替えガイド330が上昇しているとき(位置330a)、すなわち第2状態のワーク120の搬送方向を示す図である。切り替えガイド330が位置330aにあるとき、ワーク120は切り替えガイド330の下方を通り、図中矢印A1に示すように、ローラーコンベア450へと搬送される。ワーク120は、プレスシステム1全体では、図1の実線で示す120Aのように搬送される。
【0035】
図4(b)は、切り替えガイド330が下降しているとき(位置330b)、すなわち第1状態のワーク120の搬送方向を示す図である。切り替えガイド330が位置330bにあるとき、ワーク120は切り替えガイド330の上方を通り、図中矢印A2に示すように、矯正部430へと搬送される。ワーク120は、プレスシステム1全体では、図1の破線で示す120Bのように搬送される。
【0036】
<レベラ>
レベラ400は、アンコイラ100に保持されたワーク120についた巻き癖等を矯正しながらワーク120を搬送する(供給する、送り出す、ともいう)送り装置として機能している。レベラ400は、幅ガイド410、ピンチロール420、矯正部430、ガイド440、ローラーコンベア450、モータ460、制御部470を有している。
【0037】
レベラ400には、アンコイラ100側からは一定の速度でワーク120が供給され、レベラ400からはフィードロール500との間のループに一定速度で矯正されたワーク120を供給する。フィードロール500はプレス装置600に加工に応じて間欠的にワーク120を搬送する。ここで、間欠的にワーク120を搬送するとは、フィードロール500が、プレス装置600の動作に応じた速度で運転・停止を繰り返しながらワーク120を搬送することを意味する。
【0038】
このように、レベラ400では、アンコイラ100から供給されるワーク120が矯正部430によって搬送される速度と、フィードロール500がプレス装置600に間欠的に供給する速度とが異なる。このため、その差分を吸収するためのバッファ量としてワーク120がS字状のループを形成する量(以下、ループ量という。)が変動する。
【0039】
幅ガイド410は、切断装置300から搬送されてきたワーク120が幅方向にずれないようにガイドしている。幅ガイド410は、例えば作業者により手動で操作されることで、ワーク120の幅方向の移動を規制する。なお、幅ガイド410をモータにより移動可能としてもよい。
【0040】
ピンチロール420は、矯正部430の入口側のロールであり、ワーク120を挟持し、ワーク120を下流側へと搬送する。ピンチロール420は、ワーク120を挟持する閉状態と、ワーク120を開放する開状態と、になる。ピンチロール420には、例えばレバー(不図示)が接続されており、レバーが操作されることにより開閉する。ピンチロール420が閉状態であるとき、モータ460により回転する。
【0041】
矯正部430は、アンコイラ100から送られてきたワーク120の巻き癖等を矯正する装置であり、ワークロール(不図示)を有している。矯正部430のワークロールは、モータ460により回転する。なお、矯正部430の詳細な構成や矯正動作等は公知であるため説明を省略する。
【0042】
ガイド440は、矯正部430によって矯正されたワーク120を上部に導くための部材である。ガイド440は、矯正されたワーク120が適切な曲げ半径(いわゆるR)を維持しながら、かつ、ワーク120にガイド440と摩擦で傷等が発生しないような状態を維持しながら、ワーク120をレベラ400の上部に導く。ワーク120は、ガイド440によってS字状のループ(以下、S字ループという。)の下の曲線を描くことになる。ガイド440によって上部に導かれたワーク120は、S字ループの上の曲線を描きつつ、フィードロール500へ送られる。
【0043】
ローラーコンベア450は、矯正部430の下方に設けられており、プレス装置600による加工動作中に、矯正部430による巻き癖等の矯正やワーク120の搬送とは干渉しない位置に設けられている。ローラーコンベア450は、加工に供しないワーク120を載置する載置台である。カッター320によるワーク120の切断が行われる場合、切断前は、カッター320からワーク120の先端までの長さのワーク120の一部がローラーコンベア450に載置された状態となる。カッター320によってワーク120が切断されると、切断されたワーク120の全部が、ローラーコンベア450上(載置台上)に載置される。
【0044】
ローラーコンベア450は、切り替えガイド330が上方向に移動している状態(第2状態)で導かれたワーク120を支える部分であり、ローラー(不図示)はワーク120の搬送に連動して回転する。カッター320によってワーク120が切断されると、ワーク120の切断部分は自重でローラーコンベア450上に落下する。なお、切断されたワーク120は、そのままローラーコンベア450に残しておいてもよいし、取り除いてもよい。制御部470は、モータ460を制御し、ピンチロール420や矯正部430のワークロール(不図示)を回転させる。なお、本実施形態ではローラーコンベア450を載置台としたが、加工の妨げにならず切断前及び切断後のワーク120を載置することが可能であれば、他の構成であってもよい。
【0045】
<フィードロール>
フィードロール500は、レベラ400から搬送されてきたワーク120をプレス装置600に導くロールである。なお、本実施形態では、レベラ400とフィーダであるフィードロール500とを別体として構成しているが、これらを一体に構成してもよい。以上説明した、昇降装置200、切断装置300、レベラ400、操作部700は、通板装置に含まれる。
【0046】
<操作部>
操作部700は、アンコイラ100から繰り出されたワーク120の先端から所定長さを切断する指令(第1指令)が入力される。なお、所定長さは、傷等によって加工に使用できないワーク120の長さである。また、操作部700は、ワーク120を切断することなくワーク120の先端をプレス装置600に導く第2指令も入力される。なお、操作部700の詳細は、図6を用いて後述する。
【0047】
<プレス装置>
図1のプレス装置600について、図2図5を用いて説明する。図5は、本実施形態のプレス装置600の構成を示す概略斜視図であり、例えば、一体型ストレートサイドフレーム型又はCフレーム型のプレス装置600の概略図である。図5には、ワーク120の搬送方向や搬送方向における上流(左)、下流(右)、上下方向、及び前後方向(正面、背面)も示している。プレス装置600は、筐体602の内外に、駆動モータ604、伝達機構606、クランク軸608、コンロッド610、スライド612、ボルスタ622を有して構成される。また、プレス装置600は、コントローラ614、記憶部615、表示部616、入力部618、を有している。さらに、プレス装置600は、センサ624、ロータリーエンコーダ625、ギブ626を有している。
【0048】
駆動モータ604は、例えばサーボ制御されるサーボモータであり、回転量及び回転方向を制御しつつ伝達機構606、クランク軸608、コンロッド610を介して後述する金型603を上下移動させるものである。伝達機構606は、例えばギヤやベルト等の伝達部材を有して構成され、駆動モータ604のモータ軸の回転をクランク軸608へと伝達するものである。駆動モータ604への制御信号はコントローラ614から送られるようになっている。
【0049】
クランク軸608及びコンロッド610は、伝達機構606により伝達されたモータ軸の回転移動を往復移動(本実施形態では、上下移動)に変換するためのものである。モータ軸の回転によりクランク軸608が回転し、クランク軸608に一端近傍が連結されたコンロッド610にその回転が伝達されてコンロッド610が上下移動(昇降移動)するようになっている。
【0050】
また、クランク軸608には、クランク軸608の回転に連動して、オン信号又はオフ信号を出力するロータリーカムスイッチ(不図示)が設けられている。ロータリーカムスイッチは、例えばクランク軸608の回転が所定の角度となったとき、言い換えれば加工動作中の所定のタイミングとなったときに、オン信号又はオフ信号を出力する。ロータリーカムスイッチがオン信号(又はオフ信号)を出力するタイミングを、以下、出力タイミングという。コントローラ614は、ロータリーカムスイッチから出力される信号に基づいて、プレスシステム1の他の装置と連動し、加工動作を行っている。
【0051】
コンロッド610の他端近傍にはスライド612が連結されている。コンロッド610の上下移動に伴いスライド612がギブ626に沿って上下移動するようになっている。プレス装置600においては、スライド612と対向するようにボルスタ622が配置されている。スライド612のボルスタ622と対向する側の面(本実施形態では下面)に金型603の一部としての上型603aが装着される。ボルスタ622のスライド612と対向する側の面(本実施形態では上面)に金型603の一部として、上型603aと対になる下型603bが装着される。
【0052】
上型603aと下型603bとの間に加工の対象物としてのワーク120を配置し、上型603aと下型603bとで押圧することにより、プレス装置600によるワーク120に対するプレス加工(以下、単に加工ともいう)が行われる。ワーク120は、例えば図5中左(上流)側から右(下流)側に搬送される。
【0053】
詳しくは、コントローラ614により制御されて駆動モータ604が回転する。駆動モータ604の回転が伝達機構606、クランク軸608を介してコンロッド610へと伝達され、スライド612が上下移動する。スライド612の下方移動によって上型603aと下型603bとが押圧され、ワーク120のプレス加工が行われる。すなわち、プレス装置600において、駆動モータ604、伝達機構606、クランク軸608、コンロッド610、スライド612がプレス部を構成する。伝達機構606には、クランク軸608の回転数を検知するための回転数検知手段であるロータリーエンコーダ625が設けられている。コントローラ614は、ロータリーエンコーダ625によりクランク軸608の回転数を検知することで、スライド612の位置を検知することが可能である。また、コントローラ614は、ロータリーエンコーダ625の検知結果に基づいてクランク軸608の角度を検知することも可能であり、角度検知手段としても機能する。なお、角度検知手段には上述したロータリーカムスイッチを含めてもよい。
【0054】
加工の際の荷重を検知する荷重検知手段であるセンサ624は、プレス装置600がワーク120にプレス加工を行う際に、コンロッド610に働く荷重を検知するためのセンサで、例えばロードセルである。センサ624は、例えば、筐体602に設置された歪ゲージであってもよい。センサ624は、コンロッド610のいずれかの位置(例えば、中央近傍位置)に設置されていてもよい。さらに、センサ624は複数設置されていてもよく、例えば筐体602の左右の歪をそれぞれ検知し、検知した結果を加算してトータルの荷重としてもよい。なお、図5において、表示部616が配置されている側がプレス装置600の前側である。
【0055】
コントローラ614は、記憶部615に記憶されている各種プログラムに従ってプレス装置600を制御する。記憶部615には、使用される金型603ごとに対応するプログラム(モーションプログラム)が記憶されている。また、金型603に関する情報(例えば、金型の仕様を含む。)も記憶されている。表示部616は、プレス装置600の状態を示すデータを表示する。入力部618は、プレス装置600を操作するために必要なデータを入力するために用いられる。入力部618は、加工に必要なパラメータをユーザーが入力する際に用いられる。コントローラ614は、プレス装置600とプレスシステム1の他の装置とが互いに連動して加工を行うように制御している。
【0056】
以上説明したプレスシステム1において、各装置の制御部は、互いに情報をやり取りし協働してプレスシステム1全体を制御する制御手段として機能する。なお、プレスシステム1は、プレスシステム1全体を制御する別の制御手段を有していてもよい。また、本実施形態では、操作部700を別に設けたが、例えばプレス装置600の入力部618を操作部700として用いる等、各装置が操作部を有している場合には、それらを操作部として用いてもよい。
【0057】
<プレスシステムの操作部>
図6は、プレスシステム1が備える操作部700を示す図である。操作部700は、アンコイラ100、昇降装置200、切断装置300、レベラ400の操作を1つの操作部で集中して行うことができるように、以下に説明するボタンを集約させたものである。操作部700は、アンコイラ操作部710、昇降装置操作部720、切断装置操作部730、レベラ操作部740を有している。
【0058】
アンコイラ操作部710は、「コイル押さえ」を制御するための押さえボタン712a、開放ボタン712b、「アンコイラ拡縮」を制御するための拡大ボタン714a、縮小ボタン714bを有している。アンコイラ操作部710は、「アンコイラ回転」を制御するための正転ボタン716a、逆転ボタン716b、「ループ形成」を制御するための起動ボタン718を有している。
【0059】
押さえボタン712aは、押さえ112によりコイル状のワーク120の外径を押さえる際に使用するボタンである。開放ボタン712bは、押さえ112によるワーク120の外径の押さえを開放する際に使用するボタンである。拡大ボタン714aは、マンドレル110の半径を拡大させるときに使用するボタンである。縮小ボタン714bは、マンドレル110の半径を縮小させるときに使用するボタンである。これらのボタンは、アンコイラ100にコイル状のワーク120をセットするときにワーク120の内径にマンドレル110を合わせるため、又は、アンコイラ100からワーク120を取り外すとき等に用いられる。
【0060】
正転ボタン716aは、ワーク120を巻き出す方向にマンドレル110を回転させるときに使用するボタンである。逆転ボタン716bは、ワーク120を巻き取る方向にマンドレル110を回転させるときに使用するボタンである。起動ボタン718は、アンコイラ100と昇降装置200との間にU字状のループを形成させるときにアンコイラ100の回転を起動するために使用するボタンである。
【0061】
昇降装置操作部720は、「テーブル昇降」を制御するための上昇ボタン722a、下降ボタン722b、「伸縮ガイド」を制御するための前進ボタン724a、後退ボタン724bを有している。昇降装置操作部720は、「テーブルセット」を制御するための起動ボタン726、「テーブル退避」を制御するための起動ボタン728を有している。
【0062】
上昇ボタン722aは、昇降テーブル220の上下方向における微調整を行う際に、昇降テーブル220を上昇させるときに使用するボタンである。下降ボタン722bは、昇降テーブル220の上下方向における微調整を行う際に、昇降テーブル220を下降させるときに使用するボタンである。前進ボタン724aは、伸縮ガイド210をアンコイラ100に向かって伸ばすとき(前進させるとき)に使用するボタンである。後退ボタン724bは、伸縮ガイド210を昇降テーブル220の下方に収納する方向に移動させるときに使用するボタンである。
【0063】
起動ボタン726は、昇降テーブル220を通板動作時の高さに移動させるときに使用するボタンである。起動ボタン728は、昇降テーブル220を加工動作時の高さに移動させるときに使用するボタンである。
【0064】
切断装置操作部730は、「材料押さえ」を制御するための押さえボタン732a、開放ボタン732b、「切り替えガイド」を制御するための上昇ボタン734a、下降ボタン734bを有している。アンコイラ操作部710は、「カッター起動」を制御するための起動ボタン736a、停止ボタン736bを有している。切断装置操作部730は、「カッター走行」を制御するための前進ボタン738a、後退ボタン738b、「カット自動」を制御するための起動ボタン739を有している。
【0065】
押さえボタン732aは、材料押さえ310によってワーク120を押さえるときに使用するボタンである。開放ボタン732bは、ワーク120を押さえていた材料押さえ310をワーク120から離すとき(開放するとき)に使用するボタンである。上昇ボタン734aは、ワーク120をローラーコンベア450に導くために、切り替えガイド330を上昇させるときに使用するボタンである。
【0066】
下降ボタン734bは、ワーク120をレベラ400の幅ガイド410に導くために、切り替えガイド330を下降させるときに使用するボタンである。起動ボタン736aは、カッター320によりワーク120を切断するために、カッター320を起動するときに使用するボタンである。停止ボタン736bは、カッター320によるワーク120の切断後にカッター320を停止させるために使用するボタンである。前進ボタン738aは、カッター320を図1等の手前側に移動させる(前進させる)ときに使用するボタンである。後退ボタン738bは、カッター320を図1等の奥側に移動させる(後退させる)ときに使用するボタンである。起動ボタン739は、上述したカッター走行やカッター起動等の一連の操作を、手動ではなく自動で行うときに使用するボタンである。
【0067】
レベラ操作部740は、「レベラ駆動」を制御するための正転ボタン742a、逆転ボタン742b、「自動挿入」を制御するための起動ボタン744を有している。正転ボタン742aは、モータ460により駆動されるロールを、ワーク120をプレス装置600に搬送する方向に回転させるときに使用するボタンである。逆転ボタン742bは、モータ460により駆動されるロールを、搬送方向とは逆の方向に回転させるときに使用するボタンである。起動ボタン744は、ワーク120の先端を自動でレベラ400内に挿入するときに使用するボタンである。
【0068】
<通板動作及び/又は切断動作>
図7は、本実施形態のプレスシステム1を用いて、通板動作及び/又は切断動作を行うときの通板方法の流れを説明する図である。ここで、通板動作及び/又は切断動作が開始される前のプレスシステム1の初期状態は以下のとおりである。アンコイラ100は、所定の外径のコイル状のワーク120を保持している。押さえ112は、ワーク120の外径を押さえている。昇降テーブル220は、移動することができる範囲内の最下端に位置している。伸縮ガイド210は、昇降テーブル220の下方にあり引っ込んだ状態(昇降テーブル220の下方に収納された状態)である。切断装置300の材料押さえ310は、ワーク120を押さえていない(アンクランプ状態)。カッター320は、切り始めの前段階、すなわちホームポジションにあり退避している。なお、上述の状態にする際には、図6で説明した操作部700の各ボタンが用いられる。以上の状態から、例えば、プレスシステム1はステップ(以下、Sとする。)602以降の通板動作を開始する。
【0069】
S702でプレスシステム1は、起動ボタン726が押下されたことに応じて、制御部250によりモータ240を駆動して昇降テーブル220を通板動作時の高さ(上昇位置220a)まで上昇させる(上昇工程)。S704でプレスシステム1は、制御部250によりシリンダ230を駆動して伸縮ガイド210をワーク120の外径に応じて伸ばす(前進)。S706でプレスシステム1は、制御部370によりシリンダ360を駆動して切り替えガイド330を上方向に移動させて(位置330a)、ワーク120を下方向、すなわち、ローラーコンベア450の方へ導くように切り替える(切替工程)。
【0070】
S708でプレスシステム1は、正転ボタン716aが押下されたことに応じて、制御部130によりモータ140を駆動しマンドレル110を回転させてワーク120の先端を繰り出す(繰り出し工程)。これによりワーク120の先端は、伸縮ガイド210、昇降テーブル220、切り替えガイド330の下を通ってローラーコンベア450に導かれる。これにより、ワーク120の先端は、ローラーコンベア450に到達する。
【0071】
プレスシステム1は、正転ボタン716aが押下されている間、言い換えれば、ワーク120の先端からカッター320までのワーク120の長さが、作業者にとって必要な長さ、すなわち廃棄する長さとなるまでマンドレル110を回転させる。S710でプレスシステム1は、正転ボタン716aが押下されなくなったら、言い換えれば、作業者にとって必要な長さが搬送されたら、制御部250によりマンドレル110の回転を一時停止させる。
【0072】
S712でプレスシステム1は、起動ボタン739が押下されたことに応じて、制御部370によりシリンダ340を駆動して材料押さえ310を下降させる。S714でプレスシステム1は、起動ボタン739が押下されたタイミングから、材料押さえ310の下降位置を検出するセンサがON(第1時間という。)したら、制御部370によりシリンダ350を駆動してカッター320の移動を開始し、ワーク120の切断を開始する(カッター起動工程)。なお、カッター320は、ホームポジションから前進し、前進端を検出するセンサがONした後、後退する、すなわちホームポジションから一往復する(切断工程)。プレスシステム1は、起動ボタン739が押下されたタイミングから第1時間及びカッター320が一往復して後退端を検出するセンサがONしたら、制御部370によりシリンダ340を駆動して材料押さえ310を上昇させる。なお、ここまでの処理で操作部700から各ボタンが押下されることで入力された指令は第1指令に相当する。なお、上記の一連の動作を、各動作を行うのに十分な時間が経過したら、制御部370によりシリンダ340を駆動するようにしてもよい。
【0073】
S716でプレスシステム1は、作業者にとって必要な長さ分のワーク120の切断が完了したか否かを判断する。なお、プレスシステム1は、一連の切断動作が完了した後、所定時間内に再度起動ボタン739が押下されなければ、必要な長さのワーク120の切断が完了したと判断する。一方、プレスシステム1は、所定時間内に、さらに起動ボタン739が押下されると、必要な長さ分のワーク120の切断が完了しておらず、追加の切断が必要と判断する。S716でプレスシステム1は、必要な長さ分のワーク120の切断が完了していないと判断した場合には、処理をS708に戻し、切断が完了したと判断した場合には、処理をS718に進める。なお、ワーク120の切断が完了したか否かの判断は、作業者が目視で行ってもよい。
【0074】
S718でプレスシステム1は、制御部370によりシリンダ340を駆動して材料押さえ310を上昇させる。S720でプレスシステム1は、制御部370によりシリンダ360を駆動して切り替えガイド330を下方向に移動させて(位置330b)、ワーク120を上方向、すなわち、幅ガイド410の方へ導くように切り替える(切替工程)。S722でプレスシステム1は、正転ボタン716aが押下されたことに応じて、制御部130によりモータ140を駆動してマンドレル110の回転を開始させ、ワーク120を繰り出す(繰り出し工程)。なお、正転ボタン716aが押下されなくなるまで、ワーク120が繰り出される。S724でプレスシステム1は、ワーク120の先端が幅ガイド410、ピンチロール420(レベラ入口)に到達したことで正転ボタン716aが押下されなくなったことに応じて、制御部130によりマンドレル110の回転を停止させる。S726でプレスシステム1は、幅ガイド410によりワーク120の幅方向が規制され、レバー(不図示)によりピンチロール420が閉状態となってワーク120が挟持されて、操作部700により次のボタンが押下されるのを待つ。
【0075】
S728でプレスシステム1は、起動ボタン728が押下されたことに応じて、制御部250によりシリンダ230を駆動して伸縮ガイド210を昇降テーブル220の下方に収納する(後退)。S730でプレスシステム1は、制御部250によりモータ240を駆動して昇降テーブル220を加工動作時の位置(下降位置220b)まで下降させる(下降工程)。S732でプレスシステム1は、ループ形成の起動ボタン718が押下されたことに応じて、アンコイラ100を回転させてワーク120を繰り出し、昇降テーブル220上にループを形成する(ループ形成工程)。なお、ここまでの処理で操作部700から各ボタンが押下されることで入力された指令は第2指令に相当する。
【0076】
S734でプレスシステム1は、自動挿入の起動ボタン744が押下されたことに応じて、ワーク120の先端をフィードロール500まで搬送させて挿入し、プレス装置600による加工動作の準備を終え、一連の処理を終了する。なお、レベラ400は、レベラ400内にワーク120の先端が挿入されたことを検知するセンサ(不図示)を有している。このため、レベラ400は、このセンサによりワーク120の先端が内部に挿入されたことを検知するとモータ460の駆動を停止するとともに、アンコイラ100の制御部130に通知する。アンコイラ100の制御部130は、レベラ400側でワーク120の搬送が停止されたことに応じてアンコイラ100の回転を停止する。フィードロール500についても同様のセンサを有しており、同様の動作を行うことができる。
【0077】
なお、図7のフローチャートでは、S704及びS728で伸縮ガイド210の伸縮動作が行われている。伸縮ガイド210は、外径が大きいワーク120の場合、短いストロークで伸縮し、外径が小さいワーク120の場合、長いストロークで伸縮する。なお、昇降テーブル220がワーク120を受け取ることが可能であれば、必ずしも伸縮ガイド210の伸縮動作を行わなくてもよい。
【0078】
このように、プレスシステム1は、各装置が有する制御部が協働して動作することにより、操作部700から上述した第1指令が入力された場合には、次のように動作する。すなわち、プレスシステム1は、昇降テーブル220を上昇位置220aに移動させ、カッター320を切断動作状態とし、切り替えガイド330を第2状態(位置330a)とする。そして、プレスシステム1は、カッター320から先端までの長さのワーク120の一部がローラーコンベア450に載置された状態でカッター320によりワーク120を切断する。
【0079】
また、プレスシステム1は、操作部700から上述した第2指令が入力された場合には、昇降テーブル220を下降位置220bに移動させ、カッター320を退避状態とし、切り替えガイド330を第1状態(位置330b)とする。そしてプレスシステム1は、ワーク120の先端をプレス装置600に導くとともに、下降位置220bにある昇降テーブル220上にループを形成する。
【0080】
以上、本実施形態によれば、ワークの通板作業を安全に効率よく行うことができる通板装置、プレスシステム及び通板方法を提供することができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能であり、例えば以下のような変形が可能である。
【0082】
上述した実施形態では、操作部700を用いて各装置を制御したが、例えば、昇降装置200における伸縮ガイド210の前進、後退については、次のように構成してもよい。例えば、制御部250が記憶部を有し、記憶部にはワーク120の外径と伸縮ガイド210の伸縮動作の情報とが関連付けられて記憶されていてもよい。これにより、制御部250は、アンコイラ100にセットされたワーク120の外径の情報に関連付けられた伸縮ガイド210の伸縮動作の情報を読み出し、シリンダ230を制御することができる。これにより、制御部250がワーク120の外径にあった長さに伸縮ガイド210を伸ばすことができる。他の部材についても、コイル状のワーク120の内径、外径、幅、厚み、材質等と関連付けて制御することが可能なものであれば、同様に制御するようにしてもよい。
【0083】
[趣旨1]
本発明の通板装置は、
アンコイラから繰り出されたワークにプレス装置によって加工を行うプレスシステムが備える通板装置であって、
前記アンコイラから繰り出されたワークにループを形成するための下降位置と、前記下降位置よりも高い上昇位置との間で移動可能なテーブルを有する昇降装置と、
ワークを矯正する矯正部と、前記矯正部の下方に設けられ、加工に供しないワークを載置する載置台と、を有し、前記矯正部から前記プレス装置に搬送されるワークにS字状のループを形成するレベラと、
ワークを切断する切断動作状態又はワークを切断しないように退避した退避状態となるカッターと、ワークを前記矯正部に導く第1状態と、ワークを前記載置台に導く第2状態とを切り替え可能な切替手段と、を有する切断装置と、
前記アンコイラから繰り出されたワークの先端から所定長さを切断する指令が入力される操作部と、
前記操作部の入力に応じて前記昇降装置、前記レベラ、前記切断装置を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記操作部から前記指令が入力された場合には、前記テーブルを前記上昇位置に移動させ、前記カッターを前記切断動作状態とし、前記切替手段を前記第2状態とし、前記カッターから前記先端までの長さのワークの一部が前記載置台に載置された状態で前記カッターによりワークを切断する。
【0084】
[趣旨2]
前記載置台は、前記カッターにより切断されたワークを載置してもよい。
【0085】
[趣旨3]
前記昇降装置は、前記アンコイラに装着されるコイル状のワークの外径に応じて、前記テーブルから前記ワークに向かって伸びた状態と、前記テーブルの下方に収納された状態との間で移動可能な伸縮ガイドを有してもよい。
【0086】
[趣旨4]
前記載置台は、ローラーコンベアであってもよい。
【0087】
[趣旨5]
前記指令を第1指令としたとき、前記操作部は、ワークを切断することなく前記先端を前記プレス装置に導く第2指令が入力され、
前記制御手段は、前記操作部から前記第2指令が入力された場合には、前記テーブルを前記下降位置に移動させ、前記カッターを前記退避状態とし、前記切替手段を前記第1状態とし、前記先端を前記プレス装置に導くとともに、前記下降位置にある前記テーブル上にループを形成してもよい。
【0088】
[趣旨6]
本発明のプレスシステムは、上記通板装置を備える。
【0089】
[趣旨7]
本発明の通板方法は、
上記通板装置を用いた通板方法であって、
前記操作部から前記指令が入力されたことに応じて、
前記制御手段により前記テーブルを前記上昇位置に移動させる上昇工程と、
前記制御手段により前記切替手段を前記第2状態とする切替工程と、
前記制御手段により前記アンコイラから前記先端を繰り出す繰り出し工程と、
前記制御手段により前記カッターを前記切断動作状態とするカッター起動工程と、
前記カッターから前記先端までの長さのワークの一部が前記載置台に載置された状態で前記カッターにより前記ワークを切断する切断工程と、
を備える。
【0090】
[趣旨8]
本発明の通板方法は、
上記通板装置を用いた通板方法であって、
前記操作部から前記指令が入力されたことに応じて、
前記制御手段により前記カッターを前記退避状態とするカッター退避工程と、
前記制御手段により前記切替手段を前記第1状態とする切替工程と、
前記制御手段により前記アンコイラから前記先端を繰り出す繰り出し工程と、
前記制御手段により前記テーブルを前記下降位置に移動させる下降工程と、
前記先端を前記プレス装置に導くとともに、前記下降位置にある前記テーブル上にループを形成するループ形成工程と、
を備える。
【符号の説明】
【0091】
1 プレスシステム
10 床面
100 アンコイラ
110 マンドレル
120 ワーク
130 制御部
140 モータ
150 シリンダ
200 昇降装置
210 伸縮ガイド、210a、210b 状態
220 昇降テーブル、220a 上昇位置、220b 下降位置
230 シリンダ
240 モータ
250 制御部
300 切断装置
320 カッター
330 ガイド、330a 位置、330b 位置
340 シリンダ
350 シリンダ
360 シリンダ
370 制御部
400 レベラ
410 幅ガイド
420 ピンチロール
430 矯正部
440 ガイド
450 ローラーコンベア
460 モータ
470 制御部
500 フィードロール
600 プレス装置
602 筐体
603 金型、603a 上型、603b 下型
604 駆動モータ
606 伝達機構
608 クランク軸
610 コンロッド
612 スライド
614 コントローラ
615 記憶部
616 表示部
618 入力部
622 ボルスタ
624 センサ
625 ロータリーエンコーダ
626 ギブ
700 操作部
710 アンコイラ操作部
【0092】
712a ボタン、712b 開放ボタン、714a 拡大ボタン、714b 縮小ボタン、716a 正転ボタン、716b 逆転ボタン、718 起動ボタン
720 昇降装置操作部
【0093】
722a 上昇ボタン、722b 下降ボタン、724a 前進ボタン、724b 後退ボタン、726 起動ボタン、728 起動ボタン
730 切断装置操作部
【0094】
732a ボタン、732b 開放ボタン、734a 上昇ボタン、734b 下降ボタン、736a 起動ボタン、736b 停止ボタン、738a 前進ボタン、738b 後退ボタン、739 起動ボタン
740 レベラ操作部
742a 正転ボタン、742b 逆転ボタン、744 起動ボタン
PL パスライン
【要約】
【課題】ワークの通板作業を安全に効率よく行うことができる通板装置、プレスシステム及び通板方法を提供すること。
【解決手段】昇降装置200、レベラ400、切断装置300、操作部700、制御部250、370、470を備え、プレスシステム1は、操作部700から指令が入力された場合には、昇降テーブル220を上昇位置に移動させ、カッター320を切断動作状態とし、切り替えガイド330を第2状態とし、カッター320から先端までの長さのワーク120の一部がローラーコンベア450に載置された状態でカッター320によりワークを切断する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7