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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】結束材
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
H05K9/00 Q
H05K9/00 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023081884
(22)【出願日】2023-05-17
(62)【分割の表示】P 2019054478の分割
【原出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2023101572
(43)【公開日】2023-07-21
【審査請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】植村 浩行
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-006095(JP,U)
【文献】特開2002-368478(JP,A)
【文献】特開2004-111782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線ケーブル用の結束材において、
合成樹脂発泡体からなる基材と、
前記基材の片面に積層された電磁波遮蔽層と、
前記電磁波遮蔽層に積層されて一端または両端が結束材の外部に位置し、前記電磁波遮蔽層と導通しているアース線と、
前記アース線を覆って前記電磁波遮蔽層に積層された保護フィルム層と、
前記基材の他面に積層された粘着層とからなり、
前記結束材は、配線ケーブルを外側から挟むように、前記粘着層を内側に折りたたんで使用されることを特徴とする結束材。
【請求項2】
以下の(1)~(7)の少なくとも1つを満足する請求項1に記載の結束材。
(1)前記基材の合成樹脂発泡体は、発泡倍率が5~100倍である。
(2)前記アース線の両端が前記結束材の外部に位置し、前記アース線は、前記結束材内で分離している。
(3)前記合成樹脂発泡体の発泡倍率が10~50倍である。
(4)前記合成樹脂発泡体はポリプロピレン製である。
(5)前記基材の厚みは3~6mmである。
(6)前記合成樹脂発泡体は、オレフィン系樹脂発泡体の連続気泡構造、半連続気泡構造、独立気泡構造のいずれかである。
(7)前記材の通気度が80ml/(cm・s)未満である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線や電線等の配線ケーブルを結束するのに用いられる電磁波シールド性を有する結束材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波シールド材として、絶縁材料からなるベースシート3と、この表面に設けられたアルミ製の導電層5と、この導電層5を挟んでベースシート3に固定された熱変換型電波吸収材7と、一端が上記導電層5に接続されたアースリード9を備え、ベースシートの両端付近に設けられた面ファスナーあるいは粘着テープ等の固定手段からなるものがある(特許文献1)。
【0003】
特許文献1の電磁波シールド材は、電子機器における配線ケーブルに巻き付けられ、両端付近の面ファスナー等の固定手段によって配線ケーブルの外周に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-332484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の電磁波シールド材は、配線ケーブルに巻き付けられ、その状態で電磁波シールド材の両端付近の面ファスナー等の固定手段により固定されるため、電磁波シールド材が配線ケーブルの外周で回転したり、配線ケーブルに沿ってずれたり(滑ったり)する問題がある。
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、配線ケーブルの外周で回転したり、ずれたりしない取り付けが可能で、電磁波シールド性を有する結束材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、配線ケーブル用の結束材において、合成樹脂発泡体からなる基材と、前記基材の片面に積層された電磁波遮蔽層と、前記電磁波遮蔽層に積層されて一端または両端が結束材の外部に位置し、前記電磁波遮蔽層と導通しているアース線と、前記アース線を覆って前記電磁波遮蔽層に積層された保護フィルム層と、前記基材の他面に積層された粘着層とからなることを特徴とする。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記保護フィルム層は、前記アース線の露出を可能にする切れ目が、前記アース線に沿って設けられていることを特徴とする。
【0008】
第3の態様は、第2の態様において、前記切れ目はミシン目であることを特徴とする。
【0009】
第4の態様は、第2の態様または第3の態様において、前記アース線は、一端側が、前記保護フィルム層の切れ目の破断した部分で露出し、該露出部分が前記電磁波遮蔽層から剥がされた状態からなることを特徴とする。
【0010】
第5の態様は、第1の態様から第4の態様の何れか一態様において、前記電磁波遮蔽層は、金属溶射層からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の結束材は、使用時、粘着層が内側にされ、配線ケーブルを挟むように折り畳まれて粘着層が重ね合わされることにより、結束材の電磁波遮蔽層で配線ケーブルを包囲し、電磁波をシールドする。また、配線ケーブルを挟んで重ね合わされた粘着層が配線ケーブルと接触して粘着層の粘着性により配線ケーブルに固定されるため、結束材が配線ケーブルの外周で回転したり、ずれたりすることがなく、結束材を配線ケーブルの所定位置に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1形態の第1例に係る結束材の斜視図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3】第1形態の第1例に係る結束材の使用状態の一例を示す斜視図である。
図4】第1形態の第2例の斜視図である。
図5】第1形態の第2例における切れ目を破断させてアース線の一部を電磁波遮蔽層から剥がした状態を示す斜視図である。
図6】第1形態の第3例の斜視図である。
図7】第1形態の第4例の斜視図である。
図8】第2形態の斜視図である
図9図8のB-B断面図である。
図10】第3形態の斜視図である。
図11図10のC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び図2に示す第1形態の第1例の結束材10は、所定寸法のシート状からなり、基材11と、基材11の片面の電磁波射遮蔽層15と、アース線21と、保護フィルム層25と、基材11の他面の粘着層27とからなる。結束材10は、使用時、粘着層27を内側にして、図3に示すように、通信ケーブルや、自動車用配線(自動車用ワイヤーハーネスなど)等の配線ケーブル50を外側から挟むように折りたたまれ、それによって対向することになった粘着層27同士が重ねられ、粘着することによって配線ケーブル50の所定位置に固定される。
【0014】
基材11は、合成樹脂発泡体からなる。合成樹脂発泡体としては、オレフィン系樹脂発泡体が好ましい。オレフィン系樹脂発泡体として、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等が挙げられる。
【0015】
基材11のオレフィン系樹脂発泡体は、発泡倍率が5~100倍、好ましくは10~50倍であり、また基材11の厚みは、0.5~6mm、好ましくは0.6~4mm、より好ましくは0.7~3mmである。オレフィン系樹脂発泡体の発泡倍率が5倍未満あるいは基材11の厚みが0.5mm未満の場合、基材11の緩衝性に劣り、結束材10を配線ケーブルに固定した際の結束固定性に劣ったり、作業性が悪くなったりする。一方、オレフィン系樹脂発泡体の発泡倍率が100倍を超えたり、基材11の厚みが6mmを超えたりると、結束時の作業性が悪くなったり、結束材10を折りたたんで配線ケーブルに固定した際の結束材10の厚みが大きくなりすぎて、邪魔になったりする。
【0016】
基材11のオレフィン系樹脂発泡体は、連続気泡構造、半連続気泡構造、独立気泡構造のいずれでもよい。連続気泡構造とすることにより、基材11が圧縮変形し易くなり、結束材10で配線ケーブルを挟んだ際の作業性が良好になる。連続気泡構造は、配合により連続気泡としたものでも、あるいは独立気泡構造で形成された発泡体を、カレンダーロール等によりクラッシングして独立気泡を破壊(破裂)して連続気泡構造としたものの何れでもよい。
【0017】
基材11を構成するオレフィン系樹脂発泡体は、粘着層27が積層される表面にスキン層(被膜)があっても無くてもよい。スキン層を無くすことにより、オレフィン系樹脂発泡体の表面に気泡による凹凸が存在し、その凹凸によって粘着層27をオレフィン系樹脂発泡体(基材11)の表面から剥がれ難くできる。なお、オレフィン系樹脂発泡体の表面のスキン層は、オレフィン系樹脂発泡体が溶融押出成形等で製造される際に形成され、その後に表面のカット等により除去される。
【0018】
また、電磁波遮蔽層15が積層される基材11の片面には、ホットメルト接着剤等の接着剤を介することなく直接積層されたオレフィン系樹脂またはオレフィン系熱可塑性エラストマーからなるフィルムの保護層(図示せず)を設けるのが好ましい。基材11の片面への保護層の直接積層は、公知のダイレクトラミネートあるいは押出ラミネートにおけるシングルラミネートで行なうことができる。保護層のダイレクトラミネートあるいは押出ラミネート(シングルラミネート)は、基材11を構成するオレフィン系樹脂発泡体のシートが巻かれたロールから巻き出したオフィン系樹脂発泡体のシート上に、押出機からオレフィン系樹脂またはオレフィン系熱可塑性エラストマーのフィルムを押し出し、冷却ロールを通して巻き出すことにより行うことができる。
【0019】
電磁波遮蔽層15は、金属層からなり、基材11の片面の全体に設けられている。電磁波遮蔽層15の金属層は、アルミ箔等の金属箔、導電繊維層、金属溶射層からなる。特に金属溶射層は、基材11との一体性から好ましいものである。なお、金属箔あるいは金属繊維層の場合は、粘着剤で基材11の片面に貼着される。
【0020】
金属溶射層は、シート状の基材11の表面に金属が溶射されることで形成されている。金属溶射層の目付量は、電磁波遮蔽層15の電磁波シールド性能の観点から、90g/m2以上であることが好ましく、電磁波遮蔽層が積層される結束材10のフレキシブル性の観点から、280g/m2以下であることが好ましい。
【0021】
金属溶射では、基材11の表面に多数の金属粒子を衝突させ、金属溶射層は、扁平に潰れた金属粒子が堆積することで形成される。金属溶射で用いられる金属の種類は、例えば、亜鉛、アルミニウム、銅又はこれらの金属の合金等である。金属溶射としては、燃焼ガスを熱源とするフレーム式溶射、高速フレーム式溶射、爆発溶射や電気を熱源とするアーク式溶射、プラズマ溶射、RFプラズマ溶射、線爆溶射等を用いることができる。なかでもアーク溶射は、金属溶射層の形成速度が速く、金属溶射層の目付量を精度高く制御できる点で好ましい。
【0022】
電磁波遮蔽層15として金属溶射層を採用する場合、基材11は、スキン層(被膜)が形成されているか、又はスキン層(被膜)がなくても低通気性となっている。ここで、発泡体シートからなる基材11が低通気性であるとは、JIS L 1096A法に準拠してフラジール形通気性試験機を用いて測定した基材11(厚み0.5~6mm)の通気度が80ml/(cm2・s)未満であることを意味する。なお、基材11の通気度は、2ml/(cm2・s)以上50ml/(cm2・s)以下であることが好ましい。
【0023】
具体的には、シート状基材11は、発泡シートで構成され、発泡シートの表層部にスキン層が形成されている。基材11が低通気性の発泡シートで構成される場合、その発泡シートには、半連続気泡構造の発泡シートが含まれる。ここで、「半連続気泡構造」とは、独立気泡と異なり、気泡に小さな気孔を有する構造であって、連続気泡構造と比較して、隣り合う気泡どうしの気孔が小さい構造のものを意味し、具体的には、JIS L 1096A法のフラジール形法による通気度が2ml/(cm2・s)以上80ml/(cm2・s)未満となる構造をいう。
【0024】
このように、シート状基材11が、スキン層が形成され、又はスキン層が無くとも低通気性となっていて、その基材11の上に金属溶射層が形成されるので、基材11に溶射される金属粒子が基材11の内部に浸透することが抑えられ、金属溶射層の厚みの均一化が図られる。その結果、電磁波シールド性能の向上が図られる。
【0025】
アース線21は、電磁波遮蔽層15の表面に積層されている。アース線21は、電磁波遮蔽層15に積層された部分の少なくとも一部で金属線部分が露出し、該露出した金属線部分が電磁波遮蔽層15と接触してアース線21と電磁波遮蔽層15が電気的に導通している。アース線21の一端は、結束材10の外部に位置して前記車体等の金属部分に接続可能にされ、他端は結束材10の内部に位置している。なお、アース線21は結束材10の内部を通って両端が結束材10の外部に位置するものであってもよい。
【0026】
保護フィルム層25は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂のフィルムからなり、アース線21を覆って電磁波遮蔽層15に積層される。保護フィルム層25は、裏面に設けた粘着剤の層23によって電磁波遮蔽層15に貼着されている。粘着剤としては、オレフィン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を挙げることができる。
【0027】
基材11の他面の粘着層27は、自己粘着性を有する粘着剤で構成されている。自己粘着性とは、同じ粘着剤同士については粘着性を発揮し、異なる相手については粘着性を発揮しない性質をいう。自己粘着性を有する粘着剤の場合、同じ粘着剤同士を重ねて軽く押圧することによって粘着し、引き剥がすのに適度な引き剥がし力を必要とする。自己粘着性を有する粘着剤は、天然ゴムラテックスに、粘着助剤を配合したもので構成される。粘着助剤としては、タッキファイヤー(粘着付与剤)としてテルペン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、石油系樹脂(脂肪酸系、芳香剤系)等と、酸化防止剤としてフェノール系酸化防止剤と、溶剤としてトルエン等の有機溶剤とが挙げられる。
【0028】
また、自己粘着性を有する粘着剤には、添加物として、ポリオレフィン系エマルジョンを含むことが好ましい。ポリオレフィン系エマルジョンは、乳化剤や分散剤を使用して水中にポリオレフィン樹脂粒子を分散させたものである。水性分散体を用いることで、前記粘着層27の厚みを薄くすることができ、結束材10の柔軟性を高め、結束作業性を向上させることができる。ポリオレフィン系エマルジョンは、公知の種々の製造方法で製造したものでも、あるいは市販品を用いてもよい。公知の製造方法としては、例えば水性媒体中の乳化剤存在下で乳化重合したり、溶融樹脂及び水性媒体を剪断力存在下で撹拌混合したりする方法が挙げられる。
【0029】
前記粘着層27は、基材11の他面の気泡による凹凸面に公知のラミネータあるいはアプリケータ等で粘着剤を塗布することによって形成できる。その際、塗布された粘着剤の粘度が低いと、粘着剤が基材11の凹凸面の凸部表面から凹部内へ流れ易くなって凸部表面で粘着剤の付着量が少なくなり、粘着力が充分に発揮できなくなる。
【0030】
基材11の凹凸面の凸部表面での粘着剤の付着量を増やすため、粘着剤には、粘性制御剤(レオロジーコントロール剤)を配合して、粘度を高めるのが好ましい。粘性制御剤としては、ウレタンエマルジョン系、カルボン酸Na塩系、クレイなど、公知の粘性制御剤を使用することができる。粘性制御剤の配合量は、粘性制御剤を含まない粘着剤の100重量部に対して0.3~3.0重量部配合することが好ましく、より好適には0.4~2.5重量部配合することが好ましい。粘性制御剤が配合された粘着剤の好ましい粘度(JIS K 7117-1)の範囲は、0.3min-1での粘度が14,000~180,000mPa・s、より好適には30,000~150,000mPa・s、30min-1での粘度が410~4200mPa・s、より好適には800~3500mPa・sである。
また、次式で算出されるTI(チクソトロピーインデックス)の値は35~56、より好適には37~55が好ましい。
TI=B0.3/B30=(B型粘度計により25℃で測定した0.3回転での値)/(B型粘度計により25℃で測定した30回転での値)
【0031】
自己粘着性を有する粘着剤の製造は、ホモミキサータンク内に粘着助剤や粘性制御剤等を仕込んだ後、4500回転/分程度の回転速度で、正回転と逆回転をそれぞれ30分程度行ない、その後に所定量の天然ゴムラテックスを配合することにより行うことができる。基材11に対する粘着層27の厚み(粘着層の厚み)は、特に限定されないが、10~50μm程度が好ましい。
【0032】
第1形態の第2例の結束材10Aについて説明する。第2例の結束材10Aは、第1例の結束材10と同様の積層構造からなり、図4に示すように、アース線21に沿って保護フィルム層25に切れ目(破断線)29が形成されている。保護フィルム層25の切れ目29は、アース線21を露出可能にするために設けられている。切れ目29は、意図しない破断を防ぐため、ミシン目で構成されるのが好ましい。例えば、アース線21の一端側の一部を結束材10Aの途中から引き出したい場合、図5に示すように、保護フィルム25を図2に示す粘着剤の層23と共に切れ目29で破断し、切れ目29の破断した部分29Aから、アース線21の一端側の一部を露出させ、結束材10Aの外部へ引き出す。
【0033】
第1形態の第3例の結束材10Bについて説明する。第3例の結束材10Bは、第1例の結束材10と同様の積層構造からなり、図6に示すように、アース線21が結束材10Bの内部を通り、両端が結束材10Bの外部に位置する例であり、他は第1例と同様である。第3例は、第2例のように、保護フィルム層25にアース線21に沿って切れ目29が形成されていてもよい。
【0034】
第1形態の第4例の結束材10Cについて説明する。第4例の結束材10Cは、第1例の結束材10と同様の積層構造からなり、図7に示すように、結束材10C内でアース線21が分離し、両端が結束材10Cの外方に位置する例であり、他は第1例と同様である。なお、結束材10C内では、アース線21が電磁波遮蔽層と電気的に導通している。
【0035】
第2形態の結束材10Dについて説明する。第2の形態の結束材10Dは、図8及び図9に示すように、基材11Dの片面に保護層13Dが積層され、該保護層13Dにアース線21Dが積層され、該アース線21Dを覆って、保護層13Dに電磁波遮蔽層15Dが積層され、基材11Dの他面には粘着層27Dが積層されている。
【0036】
基材11Dは、第1形態の基材11と同様の合成樹脂発泡体からなる。基材11Dの片面に積層された保護層13Dは、第1形態の基材11の片面に積層された保護層(図示せす)と同様であり、基材11Dの片面にホットメルト接着剤等の接着剤を介することなく直接積層されたオレフィン系樹脂またはオレフィン系熱可塑性エラストマーなどのフィルムからなる。
【0037】
アース線21Dは、電磁波遮蔽層15Dが積層される部分において、少なくとも一部で金属線部分が露出し、該露出した金属線部分が電磁波遮蔽層15Dと接触してアース線21Dと電磁波遮蔽層15Dが電気的に導通している。アース線21Dの一端は、結束材10Dの外部に位置し、車体等の金属部分に接続可能にされ、他端は結束材10D内に位置する。なお、アース線21Dは結束材10D内を通り、両端が結束材10Dの外部に位置するものであってもよい。
【0038】
電磁波遮蔽層15Dは、導電性布材からなり、裏面に設けられた粘着剤の層23Dによって基材11Dの片面の保護層13Dに貼着されている。導電性布材はポリエステル繊維に銅又はニッケルをメッキしたもの)+ウレタンコートからなり、例えば日本ジッパーチュービング株式会社、DK020FR等を挙げることができる。また、粘着剤の層23Dは、低VOC対応の金属粒子が混入された導電性ノンハロゲン難燃性アクリル系粘着剤からなる導電性粘着層であり、ロールコーター等によって導電性布材の裏面に設けられる。
【0039】
基材11Dの他面の粘着層27Dは、自己粘着性を有する粘着剤で構成され、第1形態における粘着層27と同様である。
【0040】
第2形態の結束材10Dは、図3に示した第1形態の結束材10の使用状態と同様に、粘着層27Dを内側にして、通信ケーブルや、自動車用配線(自動車用ワイヤーハーネスなど)等の配線ケーブルを外側から挟むように折りたたまれ、それによって対向するようになった粘着層27D同士が重ねられ、粘着することによって配線ケーブル50の所定位置に固定される。
【0041】
このように、第2形態は、配線ケーブル用の結束材において、合成樹脂発泡体からなる基材と、前記基材の片面に積層された保護層と、前記保護層に積層されたアース線と、前記アース線を覆って前記保護層に積層され、前記アース線と電気的に導通している電磁波遮蔽層と、基材の他面に積層された粘着層とよりなることを特徴とする。
【0042】
第3形態の結束材10Eについて説明する。第3形態の結束材10Eは、図10及び図11に示すように、基材11Eの片面に粘着剤の層23Eが積層され、該粘着剤の層23Eにアース線21Eが積層され、アース線21Eを覆って電磁波遮蔽層15Eが粘着剤の層23Eに積層され、該電磁波遮蔽層15Eに保護フィルム25Eが積層され、基材11Eの他面に粘着層27Eが積層されている。
【0043】
基材11Eは、第1形態の基材11と同様の合成樹脂発泡体からなる。基材11Eの片面に積層された粘着剤の層23Eは、オレフィン系粘着剤からなり、ロールコーター等により設けられる。
【0044】
アース線21Eは、電磁波遮蔽層15Eが積層される部分において、少なくとも一部で金属線部分が露出し、該露出した金属線部分が電磁波遮蔽層15Eと接触してアース線21Eと電磁波遮蔽層15Eが電気的に導通している。アース線21Eの一端は、結束材10Dの外部に位置し、車体等の金属部分に接続可能にされ、他端は結束材10Eの内部に位置する。なお、アース線21Eは、結束材10Eの内部を通り、両端が結束材10Eの外部に位置するものであってもよい。
【0045】
電磁波遮蔽層15Eは、金属層からなる。金属層はアルミ箔等の金属箔、導電繊維層、金属溶射層などからなり、基材11Eの片面の全体及びアース線21Eを覆って粘着剤の層23Eに積層され、粘着材の層23Eの粘着性で固定される。電磁波遮蔽層15Eは、保護フィルム層25Eの裏面に一体に形成されている。電磁波遮蔽層15Eを保護フィルム層25Eの裏面に一体に設ける方法としては、金属溶射、金属メッキ等が挙げられる。金属溶射層は、第1形態の第1例と同様のものが挙げられる。
【0046】
保護フィルム層25Eは、第1形態の保護フィルム層25と同様の材質からなる。保護フィルム層25Eは、前記のように電磁波遮蔽層15Eと一体に形成されており、電磁波遮蔽層15Eと共に粘着剤の層23Eの粘着性で基材11Eに固定されている。
【0047】
基材11Dの他面の粘着層27Dは、自己粘着性を有する粘着剤で構成され、第1形態における粘着層27と同様である。
【0048】
第3形態の結束材10Dは、図3に示した第1形態の結束材10の使用状態と同様に、粘着層27Eを内側にして、通信ケーブルや、自動車用配線(自動車用ワイヤーハーネスなど)等の配線ケーブルを外側から挟むように折りたたまれ、それによって対向するようになった粘着層27E同士が重ねられ、粘着することによって配線ケーブルの所定位置に固定される。
【0049】
前記のように、第3形態は、配線ケーブル用の結束材において、合成樹脂発泡体からなる基材と、前記基材の片面に積層された粘着剤の層と、前記粘着剤の層に積層されたアース線と、前記アース線を覆って前記粘着剤の層に積層され、前記アース線と電気的に導通している電磁波遮蔽層と、前記電磁波遮蔽層に積層された保護フィルムと、前記基材の他面に積層された粘着層とからなることを特徴とする。
【0050】
このように、本発明の結束材は、使用時、粘着層が内側にされ、配線ケーブルを挟むように折り畳まれて粘着層同士が重ね合わされることにより、配線ケーブルの周囲を結束材の電子波遮蔽材で包囲し、電磁波をシールドする。また配線ケーブルを挟んで重ね合わされた粘着層が配線ケーブルと接触して粘着層の粘着性により電線材に固定されるため、結束材が配線ケーブルの外周で回転したり、ずれたりすることがなく、結束材を所定位置に固定することができる。
【符号の説明】
【0051】
10、10A、10B、10C、10D、10E 結束材
11、11D、11E 基材
粘着剤の層 23、23D、23E
13D 保護層
15 、15D、15E 電磁波遮蔽層
21、21D、21E アース線
25、25E 保護フィルム層
27、27D、27E 粘着層
29 保護フィルム層の切れ目
50 配線ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11