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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】経口用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20240725BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240725BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L33/105
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023171110
(22)【出願日】2023-10-02
(65)【公開番号】P2024053551
(43)【公開日】2024-04-15
【審査請求日】2024-01-26
(31)【優先権主張番号】P 2022159652
(32)【優先日】2022-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
(72)【発明者】
【氏名】霜田 祐一
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-065462(JP,A)
【文献】特開2012-105642(JP,A)
【文献】特開2014-195445(JP,A)
【文献】特開2014-187928(JP,A)
【文献】特開2016-086950(JP,A)
【文献】特開2008-031150(JP,A)
【文献】特開2022-115178(JP,A)
【文献】特開2023-051305(JP,A)
【文献】Heung-Bin Lim, et al.,Physicochemical Characteristics and Volatile Compounds Analysis of Coffee Brews according to Coffee,J Korean Soc Food Sci Nutr,2017年,46(6),pp.730-738
【文献】河野洋一, 藤田和弘,コーヒー豆中のクロロゲン酸類と総ポリフェノールの分析,分析化学,2016年,Vol.65, No.6,pp.331-334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 33/105
A23F 5/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)クロロゲン酸類 5~20質量%
(B)カフェイン 0.001質量%以上0.4質量%未満、及び
(C)4-ビニルグアイアコール 0.1~60質量ppm
を含有し
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が3×10-4以上1100×10-4以下である、経口用組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が1×10-6以上300×10-6以下である、請求項1記載の経口用組成物。
【請求項3】
成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が1×10-4以上500×10-4以下である、請求項1又は2記載の経口用組成物。
【請求項4】
更に、成分(D)としてラクトンを含む、請求項1記載の経口用組成物。
【請求項5】
成分(D)がγ-ブチロラクトンを含む、請求項記載の経口用組成物。
【請求項6】
成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]が3×10-4以上1200×10-4以下である、請求項又は記載の経口用組成物。
【請求項7】
成分(C)と成分(D)との質量比[(D)/(C)]が0.1~50である、請求項又は記載の経口用組成物。
【請求項8】
固体経口用組成物である、請求項1、2、及びのいずれか1項に記載の経口用組成物。
【請求項9】
液体経口用組成物である、請求項1、2、及びのいずれか1項に記載の経口用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロゲン酸類は、ポリフェノールの一種であり、抗酸化作用や血圧降下作用等の生理作用を有することが報告されており、クロロゲン酸類を多く含む素材としてコーヒー豆が知られている。コーヒー豆は、焙煎度が高くなるにつれ、香りが豊かで嗜好性の高いものになるが、焙煎度が高くなると、コーヒー豆中に存在するクロロゲン酸類の相当量が分解してしまう。そのため、クロロゲン酸類を最大限に利用するには、クロロゲン酸類試薬又は低焙煎度若しくは未焙煎のコーヒー豆を原料として用いることが有利であるが、これらを原料として用いると、クロロゲン酸類由来のえぐみが強いため、継続して摂取する上で障害となりやすい。このようなクロロゲン酸類由来のえぐみを抑制する技術として、例えば、4-ビニルグアヤコールをクロロゲン酸類に対して特定の質量比で含有させることが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、嗜好性飲料の呈味改善技術として、例えば、酸度が低く、カフェインを含有する飲料において、β-ダマセノン及びグアヤコールをそれぞれ一定量含有させることで、カフェインによる苦味を抑制できることが報告されている(特許文献2)。更に、焙煎コーヒー豆に加水及び加熱して気化し、フルフリルアルコール及びγ-ブチロラクトンを含む気化画分を濃縮・回収し、それを容器詰コーヒー飲料に添加することにより、ボディを増強できるとの報告もある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-65462号公報
【文献】特開2019-213512号公報
【文献】国際公開第2010/147222号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、クロロゲン酸類試薬又は低焙煎度若しくは未焙煎のコーヒー豆を原料として用い、クロロゲン酸類の生理効果を強化した経口用組成物を開発すべく検討したところ、高濃度のクロロゲン酸類にカフェインを含有させると、カフェイン含有量によって異なる呈味挙動を示すことを見出した。即ち、高濃度のクロロゲン酸類に微量のカフェインを含有させると渋味が感じられることを本発明者らは見出した。
本発明の課題は、渋味が抑制された経口用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、高濃度のクロロゲン酸類及び微量のカフェインを含む経口用組成物において、カフェインに対して4-ビニルグアイアコールを特定の質量比で含有させることで、渋味を抑制できることを見出した。更に、4-ビニルグアイアコールにラクトンを組み合わせて含有させることで、渋味の抑制効果を増強できることを本発明者らは見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔12〕を提供するものである。
〔1〕次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)クロロゲン酸類 5~20質量%
(B)カフェイン 0.001質量%以上0.4質量%未満、及び
(C)4-ビニルグアイアコール
を含有し
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が3×10-4以上1100×10-4以下である、経口用組成物。
〔2〕成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が1×10-6以上300×10-6以下である、前記〔1〕記載の経口用組成物。
〔3〕成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が1×10-4以上500×10-4以下である、前記〔1〕又は〔2〕記載の経口用組成物。
〔4〕成分(C)の含有量が0.1~60質量ppmである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔5〕更に、成分(D)としてラクトンを含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔6〕成分(D)がγ-ブチロラクトンを含む、前記〔5〕記載の経口用組成物。
〔7〕成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]が3×10-4以上1200×10-4以下である、前記〔5〕又は〔6〕記載の経口用組成物。
〔8〕成分(C)と成分(D)との質量比[(D)/(C)]が0.1~50である、前記〔5〕~〔7〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔9〕固体経口用組成物である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔10〕液体経口用組成物である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一に記載の経口用組成物。
〔11〕(C)4-ビニルグアイアコールを有効成分とし、次の成分(A)、及び(B);
(A)クロロゲン酸類 5~20質量%、及び
(B)カフェイン 0.001質量%以上0.4質量%未満
を含有する経口製品の渋味抑制剤であって、
(C)4-ビニルグアイアコールを、(B)カフェインに対する質量比[(C)/(B)]として3×10-4以上1100×10-4以下となる割合で共存させる、渋味抑制剤。
〔12〕次の成分(A)、及び(B);
(A)クロロゲン酸類 5~20質量%、及び
(B)カフェイン 0.001質量%以上0.4質量%未満
を含有する経口製品の渋味抑制方法であって、
(C)4-ビニルグアイアコールを、(B)カフェインに対する質量比[(C)/(B)]として3×10-4以上1100×10-4以下となる割合で共存させる、渋味抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、渋味が抑制された経口用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔経口用組成物〕
本発明の経口用組成物は、成分(A)としてクロロゲン酸類を含有する。ここで、本明細書において「クロロゲン酸類」とは、3-カフェオイルキナ酸、4-カフェオイルキナ酸及び5-カフェオイルキナ酸のモノカフェオイルキナ酸と、3-フェルラキナ酸、4-フェルラキナ酸及び5-フェルラキナ酸のモノフェルラキナ酸と、3,4-ジカフェオイルキナ酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸及び4,5-ジカフェオイルキナ酸のジカフェオイルキナ酸を併せての総称である。本発明においては上記9種のうち少なくとも1種を含有すればよい。なお、成分(A)は、塩や水和物の形態であってもよい。塩としては生理学的に許容されるものであれば特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩を挙げることができる。
【0010】
成分(A)は、飲食品の分野において通常使用されているものであれば由来は特に限定されず、例えば、化学合成品でも、天然物由来品でも構わない。天然物由来品としては、例えば、植物抽出物を挙げることができる。抽出に使用される植物としては、成分(A)が含まれていれば特に限定されないが、例えば、ヒマワリ種子、リンゴ未熟果、コーヒー豆、シモン葉、マツ科植物の球果、マツ科植物の種子殻、サトウキビ、南天の葉、ゴボウ、ナスの皮、ウメの果実、フキタンポポ、ブドウ科植物が挙げられる。植物は、1種又は2種以上使用することができる。なお、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、植物抽出物は、濃縮又は乾燥してもよく、クロロゲン酸類の純度を高めるために精製しても構わない。濃縮、乾燥及び精製の各方法は、公知の方法を採用すればよい。
【0011】
本発明の経口用成物中の成分(A)の含有量は5~20質量%であるが、成分(A)が有する生理効果を増強させる観点から、6質量%以上が好ましく、6.5質量%以上がより好ましく、7質量%以上が更に好ましく、また渋味抑制の観点から、18質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好ましく、16質量%以下が更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の成分(A)の含有量は、好ましくは6~18質量%であり、より好ましくは6.5~17質量%であり、更に好ましくは7~16質量%である。ここで、本明細書において、成分(A)の含有量は上記9種の合計量に基づいて定義される。なお、成分(A)が塩又は水和物の形態である場合、成分(A)の含有量は、遊離酸であるクロロゲン酸類に換算した値とする。成分(A)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0012】
本発明の経口用組成物は、成分(B)としてカフェインを含有する。成分(B)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。
【0013】
本発明の経口用組成物中の成分(B)の含有量は0.001質量%以上0.4質量%未満であるが、本発明の効果を享受しやすい範囲という観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.3質量%以下が好ましく、0.25質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましく、0.15質量%以下がより更に好ましい。また、本発明の経口用組成物中の成分(B)の含有量は、好ましくは0.005~0.3質量%であり、より好ましくは0.005~0.25質量%であり、更に好ましくは0.03~0.2質量%であり、より更に好ましくは0.05~0.15質量%である。なお、成分(B)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、液体クロマトグラフィで分析することが可能である。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0014】
本発明の経口用組成物は、渋味抑制の観点から、成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が、1×10-4以上であることが好ましく、3×10-4以上がより好ましく、5×10-4以上が更に好ましく、そして500×10-4以下が好ましく、300×10-4以下がより好ましく、100×10-4以下が更に好ましい。また、本発明の経口用組成物中の上記質量比[(B)/(A)]は、好ましくは1×10-4以上500×10-4以下であり、より好ましくは3×10-4以上300×10-4以下であり、更に好ましくは5×10-4以上100×10-4以下である。
【0015】
本発明の経口用組成物は、成分(C)として4-ビニルグアヤコールを含有する。ここで、「4-ビニルグアヤコール」は、焙煎コーヒー飲料における後味のキレの阻害物質だけでなく、清酒において煙臭、薬品臭又は香辛料臭といった異臭物質としても知られているが、本発明においては、成分(C)を、成分(B)に対する質量比が特定の範囲内となるように含有させることで、意外にも、高濃度のクロロゲン酸類に微量のカフェインが含まれたときに特異的に生ずる渋味を抑制できることを見出したものである。なお、成分(C)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。
【0016】
本発明の経口用組成物は、成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が3×10-4以上1100×10-4以下であるが、渋味抑制の観点から、4×10-4以上が好ましく、6×10-4以上がより好ましく、8×10-4以上が更に好ましく、また4-ビニルグアヤコール由来の薬品臭の抑制の観点から、400×10-4以下が好ましく、250×10-4以下がより好ましく、150×10-4以下が更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の上記質量比[(C)/(B)]は、好ましくは4×10-4以上400×10-4以下であり、より好ましくは6×10-4以上250×10-4以下であり、更に好ましくは8×10-4以上150×10-4以下である。なお、質量比[(C)/(B)]は、成分(B)及び成分(C)の各含有量の単位を揃えて算出するものとする。
【0017】
また、本発明の経口用組成物は、成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、渋味抑制の観点から、1×10-6以上が好ましく、3×10-6以上がより好ましく、5×10-6以上が更に好ましく、40×10-6以上がより更に好ましく、また4-ビニルグアヤコール由来の薬品臭の抑制の観点から、300×10-6以下が好ましく、180×10-6以下がより好ましく、120×10-6以下が更に好ましく、80×10-6以下がより更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の上記質量比[(C)/(A)]は、好ましくは1×10-6以上300×10-6以下であり、より好ましくは3×10-6以上180×10-6以下であり、更に好ましくは5×10-6以上120×10-6以下であり、より更に好ましくは40×10-6以上80×10-6以下である。なお、質量比[(C)/(A)]は、成分(A)及び成分(C)の各含有量の単位を揃えて算出するものとする。
【0018】
本発明の経口用組成物中の成分(C)の含有量は、渋味抑制の観点から、0.1質量ppm以上が好ましく、0.3質量ppm以上がより好ましく、0.7質量ppm以上が更に好ましく、6質量ppm以上がより更に好ましく、また4-ビニルグアヤコール由来の薬品臭の抑制の観点から、60質量ppm以下が好ましく、25質量ppm以下がより好ましく、20質量ppm以下が更に好ましく、15質量ppm以下がより更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の成分(C)の含有量は、好ましくは0.1~60質量ppmであり、より好ましくは0.3~25質量ppmであり、更に好ましくは0.7~20質量ppmであり、6~15質量ppmである。なお、成分(C)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0019】
更に、本発明の経口用組成物は、成分(D)としてラクトンを含有してもよい。ラクトンは、独特の臭気を有する化合物として知られているが、本発明者らは、ラクトン単独で含有させても、高濃度のクロロゲン酸類に微量のカフェインが含まれたときに特異的に生ずる渋味を抑制できないものの、4-ビニルグアイアコールと組み合わせて含有させると、渋味抑制効果を増強できることを見出したものである。なお、成分(D)は、原料に由来するものでも、新たに加えられたものでもよい。
【0020】
成分(D)はラクトンであれば特に限定されないが、渋味の抑制の観点から、好ましくはγ-ブチロラクトン、γ-デカラクトン及びδ-デカノラクトンから選択される1以上であり、より好ましくはγ-ブチロラクトンである。
【0021】
本発明の経口用組成物は、成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]が、渋味抑制の観点から、3×10-4以上が好ましく、8×10-4以上がより好ましく、20×10-4以上が更に好ましく、またラクトン由来の異臭抑制の観点から1200×10-4以下が好ましく、500×10-4以下がより好ましく、300×10-4以下が更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の上記質量比[(D)/(B)]は、好ましくは3×10-4以上1200×10-4以下であり、より好ましくは8×10-4以上500×10-4以下であり、更に好ましくは20×10-4以上300×10-4以下である。なお、質量比[(D)/(B)]は、成分(B)及び成分(D)の各含有量の単位を揃えて算出するものとする。
【0022】
また、本発明の経口用組成物は、成分(C)と成分(D)との質量比[(D)/(C)]が、渋味抑制の観点から、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.5以上が更に好ましく、またラクトン由来の異臭抑制の観点から、50以下が好ましく、25以下がより好ましく、15以下が更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の上記質量比[(D)/(C)]は、好ましくは0.1~50であり、より好ましくは0.5~25であり、更に好ましくは1.5~15である。
【0023】
本発明の経口用組成物中の成分(D)の含有量は、渋味の抑制の観点から、0.1質量ppm以上が好ましく、0.5質量ppm以上がより好ましく、1.5質量ppm以上が更に好ましく、またラクトン由来の異臭抑制の観点から、90質量ppm以下が好ましく、60質量ppm以下がより好ましく、40質量ppm以下が更に好ましい。そして、本発明の経口用組成物中の成分(D)の含有量は、好ましくは0.1~90質量ppmであり、より好ましくは0.5~60質量ppmであり、更に好ましくは1.5~40質量ppmである。なお、成分(D)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0024】
本発明の経口用組成物は、所望により、甘味料、酸味料、アミノ酸、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、香料、果汁、植物エキス、エステル、色素、乳化剤、乳成分、ココアパウダー、調味料、植物油脂、酸化防止剤、保存料、pH調整剤、ゲル化剤、担体等の添加剤を1種又は2種以上を含有することができる。添加剤の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲内で適宜設定することができる。
【0025】
本明細書において「経口用組成物」とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において専ら経口摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本発明の経口用組成物は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を構成する飲食品を幅広く含むものを意味する。
【0026】
本発明の経口用組成物は、常温(20℃±15℃)において、液状でも、固形状でもよく、適宜の形態を採り得る。
【0027】
本発明の経口用組成物は、コーヒー飲料を除く経口用組成物に対して好ましく用いられる。コーヒー飲料は、通常、フルフリルメルカプタン(以下、「成分(E)」と称する)の含有量が0.00006質量%以上であるため、本発明の経口用組成物と物として明確に区別することができる。即ち、本発明の経口用組成物は、成分(E)の含有量が0.00006質量%未満であり、好ましくは0.00003質量%未満であり、より好ましくは0.00001質量%未満であり、更に好ましくは実質的に含有しない。ここで、本明細書において「実質的に含有しない」とは、本発明の経口用組成物中に成分(E)が全く存在しないことのみならず、検出限界未満の濃度であることも包含する概念である。なお、成分(E)の含有量は、通常知られている測定法のうち測定試料の状況に適した分析法により測定することが可能であり、例えば、GC/MS法により測定することができる。具体的には、後掲の実施例に記載の方法が挙げられる。なお、測定の際には装置の検出域に適合させるため、試料を凍結乾燥したり、装置の分離能に適合させるため試料中の夾雑物を除去したりする等、必要に応じて適宜処理を施してもよい。
【0028】
本発明の経口用成物において、成分(A)として天然物由来品を使用する場合、クロロゲン酸類含量の観点から、浅焙煎コーヒー豆、生コーヒー豆が好ましい。ここで、本明細書において「浅焙煎コーヒー豆」とは、L値が30以上60以下の焙煎コーヒー豆をいう。浅焙煎コーヒー豆のL値は、成分(A)の生理効果の観点から、32以上が好ましく、34以上がより好ましく、36以上が更に好ましく、38以上が更に好ましく、40以上がより更に好ましい。なお、本明細書において「L値」とは、黒をL値0とし、白をL値100として、焙煎コーヒー豆の明度を色差計で測定したものである。コーヒー豆の豆種及び産地は、特に限定されない。また豆種、産地の異なるコーヒー豆を1種又は2種以上を使用してもよい。
【0029】
一方、コーヒー飲料は、通常、L値30未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を原料として使用する。したがって、本発明の経口用組成物は、好ましくはL値30未満、より好ましくは32未満、更に好ましくは34未満、より更により好ましくは36未満、より更に好ましくは38未満、殊更に好ましくは40未満の焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を原料として用いた経口用組成物(例えば、コーヒー飲料)を包含しない概念である。なお、コーヒー飲料中のコーヒー分の含有量は、内容量100g中にコーヒー生豆換算で1g以上の焙煎コーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものである。ここで「生豆換算値」は、焙煎コーヒー豆1gが生コーヒー豆1.3gに相当するものとする(改訂新版・ソフトドリンクス、監修:全国清涼飲料工業会、発行:光琳 、平成元年12月25日発行 421頁記載)。また、コーヒー飲料の種類は特に限定されないが、例えば、令和元年8月19日に改正施行された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の第2条で定義されるコーヒー飲料等、即ち「コーヒー」、「コーヒー飲料」、「コーヒー入り清涼飲料」及び「コーヒー入り炭酸飲料」を挙げることができる。
【0030】
成分(B)~(D)は、化学合成品(例えば、試薬)でも、天然物由来品でも構わない。天然物由来品は、例えば、植物が挙げられ、抽出物でも構わない。成分(B)を含む植物としては、例えば、コーヒー豆、茶葉が挙げられるが、これらに限定されない。また、成分(C)を含む植物としては、例えば、コーヒー豆、米ぬか、麦類のふすまが挙げられるが、これらに限定されない。更に、成分(D)を含む植物としては、例えば、コーヒー豆、ブドウ、あんずの果肉が挙げられるが、これらに限定されない。植物は、1種又は2種以上使用することができる。なお、植物抽出物の抽出方法及び抽出条件は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。また、植物抽出物は、濃縮物でも乾燥物でも構わない。
【0031】
本発明の経口用組成物の好適な態様としては、例えば、固体経口用組成物、液体経口用組成物を挙げることができる。以下、各組成物について、好適な実施形態に即して説明する。
【0032】
本発明の固体経口用組成物は、常温(20℃±15℃)において固体であればその形状は特に限定されず、例えば、粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状等の種々のものが挙げられる。本発明の固体経口用組成物の固形分量は、通常90質量%以上であり、好ましくは93質量%以上であり、より好ましくは95質量%以上であり、更に好ましくは97質量%以上である。なお、かかる固形分量の上限は特に限定されず、100質量%であっても構わない。ここで、本明細書において「固形分量」とは、試料1gを105℃の電気恒温乾燥機で3時間乾燥して揮発物質を除いた残分の質量をいう。
【0033】
本発明の固体経口用組成物としては、例えば、食品、医薬品、医薬部外品を挙げることができる。中でも、本発明の効果を享受しやすい点で、固形食品が好ましく、粉末食品が更に好ましい。
本発明の固体経口用組成物が固形食品である場合、例えば、飴、キャンディー、ガム、チョコレート、クッキーパン等の菓子類;サプリメント等の健康・美容・栄養補助食品を挙げることができる。
また、本発明の固体経口用組成物が医薬品、医薬部外品である場合、その剤型としては、例えば、顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤等が挙げられる。また、錠剤とする場合には、割線を入れた分割錠とすることもできる。
中でも、固体経口用組成物としては、サプリメント、散剤、錠剤、顆粒剤が好ましい。
【0034】
本発明の固体経口用組成物は、固形形態とするために、必要に応じて許容される担体を含有することができる。例えば、賦形剤(例えば、ワキシーコーンスターチ、サツマイモでんぷん、ジャガイモでんぷん等のでんぷん;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、還元パラチノース、トレハロース、パラチノース等の糖アルコール;乳糖;オリゴ糖;結晶セルロース;軽質無水ケイ酸;リン酸水素カルシウム等)、結合剤(例えば、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、硬化油等)、崩壊剤(例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、二酸化ケイ素等)、嬌味剤(例えば、ステビア等)、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、保存剤、品質安定剤、希釈剤等の担体が挙げられる。
【0035】
また、本発明の固体経口用組成物は、インスタント飲料組成物としてもよい。ここで、本明細書において「インスタント飲料組成物」とは、所定の用法にしたがい液体で希釈して還元飲料として経口摂取されるものをいう。液体は飲料に還元できれば特に限定されず、例えば、水、炭酸水、牛乳、豆乳等が挙げられ、液体の温度は問わない。なお、希釈倍率は、所定の用法にしたがえばよいが、通常30~800質量倍、好ましくは80~600質量倍である。
【0036】
本発明の固体経口用組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を採り得る。例えば、成分(A)~(C)、必要に応じて他の成分を、成分(A)及び成分(B)の各含有量、成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が上記範囲内となるように混合して製造することができる。なお、成分(A)~(C)及び他の成分の混合順序は特に限定されず、任意の順序で混合することができる。混合方法としては、撹拌、震盪等の適宜の方法を採用することができるが、混合装置を使用しても構わない。混合装置の混合方式は、容器回転型でも、容器固定型でもよい。容器回転型として、例えば、水平円筒型、V型、ダブルコーン型、立方体型等を採用することができる。また、容器固定型として、例えば、リボン型、スクリュー型、円錐形スクリュー型、パドル型、流動層型、フィリップスブレンダ-等を採用することができる。
【0037】
また、本発明の固体経口用組成物は、公知の造粒法により造粒物としてもよい。造粒方法としては、例えば、噴霧造粒、流動層造粒、圧縮造粒、転動造粒、撹拌造粒、押出造粒、粉末被覆造粒等が挙げられる。なお、造粒条件は、造粒方法により適宜選択することができる。また、錠剤とする場合には、湿式打錠及び乾式打錠のいずれでもよく、公知の圧縮成形機を使用することができる。
【0038】
本発明の固体経口用組成物は、包装体に充填することができる。包装体としては、例えば、ビン、缶、瓶、箱型容器、スティック型包装体、ピロー型包装体等を挙げることができる。なお、本発明の固体経口用組成物を包装体に充填する際には、市販の充填機を使用してもよい。本発明の固体経口用組成物は、例えば、1回摂取分を小分け包装することが可能である。インスタント飲料組成物である場合には、例えば、瓶等に容器詰し飲用する際にカップ1杯分をスプーン等で計量するもの、1杯分を収容したカップタイプ、カップ1杯分毎に小分け包装したスティックタイプ等とすることができる。なお、容器内及び包材内は窒素ガスを充填してもよく、また包材は酸素透過性の低いものが品質維持の点で好ましい。
【0039】
本発明の液体経口用組成物は、常温(20℃±15℃)において流動性を有すれば、その形態は特に限定されず、例えば、液体、濃縮液状、ゲル状、ゼリー状を挙げることができる。
【0040】
本発明の液体経口用組成物の製品形態としては、例えば、RTD(レディ・トゥ・ドリンク)型飲料組成物;ヨーグルト、加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;ドリンク剤等の健康・美容・栄養補助食品を挙げることができる。ここで、本明細書において「RTD型飲料組成物」とは、希釈せずにそのまま飲用可能な飲料をいう。
【0041】
中でも、液体経口用組成物としては、RTD型飲料組成物が好ましい。RTD型飲料組成物の形態としては、例えば、液体、濃縮液状、ゲル状、ゼリー状を挙げることができる。形態が濃縮液状、ゲル状、ゼリー状である場合、容器に備え付けられた吸い口やストローから飲料組成物を吸引できればよく、その固形分濃度は特に限定されない。
【0042】
RTD型飲料組成物のpH(20℃)は、風味の観点から、好ましくは3以上であり、より好ましくは3.5以上であり、更に好ましくは4以上であり、また好ましくは7以下であり、より好ましくは6.5以下であり、更に好ましくは6以下である。なお、pHは、20℃に温度調整をしてpHメータにより測定するものとする。
【0043】
RTD型飲料組成物は、非アルコール飲料でも、アルコール飲料でもよい。ここで、本明細書において「非アルコール飲料」とは、アルコール濃度が1v/v%未満のものをいい、アルコールが全く含まれていない飲料、アルコール濃度が0.00v/v%である飲料も包含される。なお、本明細書において「アルコール」とは特に明記しない限り、エタノールを意味する。
非アルコール飲料としては、例えば、茶飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、乳飲料、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、エンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、ニアウォーター、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等を挙げることができる。
アルコール飲料としては、例えば、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等が挙げられる。
【0044】
RTD型飲料組成物は、容器詰でもよい。容器としては通常の包装容器であれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等が挙げられる。
【0045】
RTD型飲料組成物が容器詰飲料組成物である場合、加熱殺菌済でもよい。加熱殺菌方法としては、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されない。
【0046】
本発明の液体経口用組成物は、常法にしたがって製造することが可能であり、適宜の方法を採り得る。例えば、成分(A)~(C)、必要に応じて他の成分を、成分(A)と成分(B)の各含有量、成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が上記範囲内となるように液体とともに混合して製造することができる。成分(A)~(C)及び他の成分の混合順序は特に限定されず、任意の順序で混合することができる。なお、液体としては、例えば、水、炭酸水、牛乳、豆乳が挙げられ、液体の温度は問わない。
【0047】
〔渋味抑制剤及び渋味抑制方法〕
本発明の渋味抑制剤は、(C)4-ビニルグアイアコールを有効成分とし、5~20質量%の(A)クロロゲン酸類と、0.001質量%以上0.4質量%未満の(B)カフェインを含有する経口製品の渋味抑制剤であって、(C)4-ビニルグアイアコールを(B)カフェインに対する質量比[(C)/(B)]として3×10-4以上1100×10-4以下となる割合で共存させるものである。
また、本発明の渋味抑制方法は、5~20質量%の(A)クロロゲン酸類と0.001質量%以上0.4質量%未満の(B)カフェインを含有する経口製品の渋味抑制方法であって、(C)4-ビニルグアイアコールを(B)カフェインに対する質量比[(C)/(B)]として3×10-4以上1100×10-4以下となる割合で共存させるものである。
【0048】
経口製品としては、経口摂取可能なものであれば特に限定されず、液状でも、固形状でもよい。例えば、成分(A)及び成分(B)を含有する、飲食品、医薬品又は医薬部外品等を挙げることができる。中でも、飲食品が好ましい。
飲食品としては、例えば、成分(A)及び成分(B)を含有する飲料又はインスタント飲料、成分(A)及び(B)を含有する食品を挙げることができる。なお、飲食品は、飲食品の種類に応じて、常法にしたがって製造することができる。
なお、経口製品中の成分(A)及び成分(B)の各含有量、成分間の各質量比については、上記において説明したとおりである。
【0049】
また、経口製品の渋味抑制を増強するために、(C)4-ビニルグアイアコールとともに(D)ラクトンを共存させてもよい。なお、成分(D)の具体的態様、経口製品中の成分(D)の含有量、成分間の質量比については、上記において説明したとおりである。
【0050】
医薬品及び医薬部外品の剤型は特に限定されず、例えば、経口投与用製剤が挙げられ、例えば、液剤、シロップ剤等の公知の剤型を採用することができる。また、製剤化の際は、公知の添加剤を配合することができる。なお、医薬品及び医薬部外品は、常法にしたがって製造することができる。
【0051】
上述した実施形態に関し、本発明は以下の態様を更に開示する。
【0052】
<1> 次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)クロロゲン酸類 5~20質量%
(B)カフェイン 0.001質量%以上0.4質量%未満、及び
(C)4-ビニルグアイアコール
を含有し
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が3×10-4以上1100×10-4以下である、経口用組成物。
【0053】
<2> 成分(A)の含有量が、好ましくは6質量%以上であり、より好ましくは6.5質量%以上であり、更に好ましくは7質量%以上であり、そして、好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは17質量%以下であり、更に好ましくは16質量%以下である、前記<1>記載の経口用組成物。
<3> 成分(A)の含有量が、好ましくは6~18質量%であり、より好ましくは6.5~17質量%であり、更に好ましくは7~16質量%である、前記<1>記載の経口用組成物。
【0054】
<4> 成分(B)の含有量が、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、更に好ましくは0.05質量%以上であり、そして、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.25質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下であり、より更に好ましくは0.15質量%以下である、前記<1>~<3>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<5> 成分(B)の含有量が、好ましくは0.005~0.3質量%であり、より好ましくは0.005~0.25質量%であり、更に好ましくは0.03~0.2質量%であり、より更に好ましくは0.05~0.15質量%である、前記<1>~<3>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0055】
<6> 成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が、好ましくは1×10-4以上であり、より好ましくは3×10-4以上であり、更に好ましくは5×10-4以上であり、そして、好ましくは500×10-4以下であり、より好ましくは300×10-4以下であり、更に好ましくは100×10-4以下である、前記<1>~<5>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<7> 成分(A)と成分(B)との質量比[(B)/(A)]が、好ましくは1×10-4以上500×10-4以下であり、より好ましくは3×10-4以上300×10-4以下であり、更に好ましくは5×10-4以上100×10-4以下である、前記<1>~<5>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0056】
<8> 成分(C)の含有量が、好ましくは0.1質量ppm以上であり、より好ましくは0.3質量ppm以上であり、更に好ましくは0.7質量ppm以上であり、より更に好ましくは6質量ppm以上であり、そして、好ましくは60質量ppm以下であり、より好ましくは25質量ppm以下であり、更に好ましくは20質量ppm以下であり、より更に好ましくは15質量ppm以下である、前記<1>~<7>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<9> 成分(C)の含有量が、好ましくは0.1~60質量ppmであり、より好ましくは0.3~25質量ppmであり、更に好ましくは0.7~20質量ppmであり、より更に好ましくは6~15質量ppmである、前記<1>~<7>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0057】
<10> 成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が、好ましくは4×10-4以上であり、より好ましくは6×10-4以上であり、更に好ましくは8×10-4以上であり、そして、好ましくは400×10-4以下であり、より好ましくは250×10-4以下であり、更に好ましくは150×10-4以下である、前記<1>~<9>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<11> 成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が、好ましくは4×10-4以上400×10-4以下であり、より好ましくは6×10-4以上250×10-4以下であり、更に好ましくは8×10-4以上150×10-4以下である、前記<1>~<9>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0058】
<12> 成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、好ましくは1×10-6以上であり、より好ましくは3×10-6以上であり、更に好ましくは5×10-6以上であり、より更に好ましくは40×10-6以上であり、そして、好ましくは300×10-6以下であり、より好ましくは180×10-6以下であり、更に好ましくは120×10-6以下であり、より更に好ましくは80×10-6以下である、前記<1>~<11>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<13> 成分(A)と成分(C)との質量比[(C)/(A)]が、好ましくは1×10-6以上300×10-6以下であり、より好ましくは3×10-6以上180×10-6以下であり、更に好ましくは5×10-6以上120×10-6以下であり、より更に好ましくは40×10-6以上80×10-6以下である、前記<1>~<11>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0059】
<14> 好ましくは、更に成分(D)としてラクトンを含有する、前記<1>~<13>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<15> 成分(D)が、好ましくはγ-ブチロラクトン、γ-デカラクトン及びδ-デカノラクトンから選択される1以上であり、より好ましくはγ-ブチロラクトンである、前記<14>記載の経口用組成物。
【0060】
<16> 成分(D)の含有量が、好ましくは0.1質量ppm以上であり、より好ましくは0.5質量ppm以上であり、更に好ましくは1.5質量ppm以上であり、そして、好ましくは90質量ppm以下であり、より好ましくは60質量ppm以下であり、更に好ましくは40質量ppm以下である、前記<14>又は<15>記載の経口用組成物。
<17> 成分(D)の含有量が、好ましくは0.1~90質量ppmであり、より好ましくは0.5~60質量ppmであり、更に好ましくは1.5~40質量ppmである、前記<14>又は<15>記載の経口用組成物。
【0061】
<18> 成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]が、好ましくは3×10-4以上であり、より好ましくは8×10-4以上であり、更に好ましくは20×10-4以上であり、そして、好ましくは1200×10-4以下であり、より好ましくは500×10-4以下であり、更に好ましくは300×10-4以下である、前記<14>~<17>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<19> 成分(B)と成分(D)との質量比[(D)/(B)]が、好ましくは3×10-4以上1200×10-4以下であり、より好ましくは8×10-4以上500×10-4以下であり、更に好ましくは20×10-4以上300×10-4以下である、前記<14>~<17>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0062】
<20> 成分(C)と成分(D)との質量比[(D)/(C)]が、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.5以上であり、更に好ましくは1.5以上であり、そして、好ましくは50以下であり、より好ましくは25以下であり、更に好ましくは15以下である、前記<14>~<19>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<21> 成分(C)と成分(D)との質量比[(D)/(C)]が、好ましくは0.1~50であり、より好ましくは0.5~25であり、更に好ましくは1.5~15である、前記<14>~<19>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0063】
<22> 好ましくはコーヒー飲料を除く、前記<1>~<21>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<23> 好ましくは成分(E)としてフルフリルメルカプタンを含み、成分(E)の含有量が、好ましくは0.00006質量%未満であり、より好ましくは0.00003質量%未満であり、更に好ましくは0.00001質量%未満であり、より更に好ましくは実質的に含有しない、前記<1>~<22>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0064】
<24> 成分(A)が、好ましくは浅焙煎コーヒー豆及び生コーヒー豆から選択される1以上に由来するものである、前記<1>~<23>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<25> 浅焙煎コーヒー豆のL値が、好ましくは30以上であり、より好ましくは32以上であり、更に好ましくは34以上であり、更に好ましくは36以上であり、更に好ましくは38以上であり、より更に好ましくは40以上であり、そして、好ましくは60以下である、前記<24>記載の経口用組成物。
<26> 浅焙煎コーヒー豆のL値が、好ましくは30~60であり、より好ましくは32~60であり、更に好ましくは34~60であり、更に好ましくは36~60であり、更に好ましくは38~60であり、より更に好ましくは40~60である、前記<24>記載の経口用組成物。
【0065】
<27> 焙煎コーヒー豆のL値が、好ましくはL値30未満であり、より好ましくは32未満であり、更に好ましくは34未満であり、更により好ましくは36未満であり、更に好ましくは38未満であり、より更に好ましくは40未満である焙煎コーヒー豆を含む焙煎コーヒー豆を原料として用いた経口用組成物を除く、前記<1>~<26>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【0066】
<28> 好ましくは固体経口用組成物である、前記<1>~<27>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<29> 好ましくは常温(20℃±15℃)において固体である、前記<28>記載の経口用組成物。
<30> 形状が、好ましくは粉末状、顆粒状、錠状、棒状、板状又はブロック状である、前記<28>又は<29>記載の経口用組成物。
<31> 固形分量は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは93質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上であり、より更に好ましくは97質量%以上である、前記<28>~<30>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<32> 好ましくは食品、医薬品又は医薬部外品であり、更に好ましくは固形食品又は粉末食品である、前記<28>~<31>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<33> 好ましくは菓子、サプリメント、健康食品、美容食品又は栄養補助食品であり、更に好ましくはサプリメントである、前記<28>~<32>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<34> 好ましくは顆粒剤、散剤、錠剤、丸剤、チュアブル剤又はトローチ剤であり、更に好ましくは散剤、錠剤又は顆粒剤である、前記<28>~<32>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<35> 好ましくは賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、保存剤、品質安定剤及び希釈剤から選択される1以上の担体を含有する、前記<28>~<34>のいずれか一に記載の経口用組成物。
<36> 好ましくはインスタント飲料組成物である、前記<28>~<35>のいずれか一に記載の経口用組成物。
【実施例
【0067】
1.クロロゲン酸類及びカフェインの分析
分析機器はHPLCを使用した。装置の構成ユニットの型番は次の通りである。
・UV-VIS検出器:SPD-20A((株)島津製作所)
・カラムオーブン:CTO-20AC((株)島津製作所)
・ポンプ:LC-20AD((株)島津製作所)
・オートサンプラー:SIL-20AC((株)島津製作所)
・カラム:Cadenza CD-C18 内径4.6mm×長さ150mm、粒子径3μm(インタクト(株))
【0068】
分析条件は次の通りである。
・サンプル注入量:10μL
・流量:1.0mL/min
・UV-VIS検出器設定波長:325nm(クロロゲン酸類)、270nm(カフェイン)
・カラムオーブン設定温度:35℃
・溶離液A:50mM酢酸、0.1mM 1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、10mM 酢酸ナトリウム、5(V/V)%アセトニトリル溶液
・溶離液B:アセトニトリル
【0069】
濃度勾配条件(体積%)
時間 溶離液A 溶離液B
0.0分 100% 0%
10.0分 100% 0%
15.0分 95% 5%
20.0分 95% 5%
22.0分 92% 8%
50.0分 92% 8%
52.0分 10% 90%
60.0分 10% 90%
60.1分 100% 0%
70.0分 100% 0%
【0070】
・3-カフェオイルキナ酸 : 5.3min
・5-カフェオイルキナ酸 : 8.8min
・4-カフェオイルキナ酸 :11.6min
・3-フェルラキナ酸 :13.0min
・5-フェルラキナ酸 :19.9min
・4-フェルラキナ酸 :21.0min
・3,4-ジカフェオイルキナ酸:36.6min
・3,5-ジカフェオイルキナ酸:37.4min
・4,5-ジカフェオイルキナ酸:44.2min
ここで求めたarea%から5-カフェオイルキナ酸(東京化成工業社)を標準物質とし、クロロゲン酸類の含有量(質量%)を求めた。
【0071】
・カフェイン :19.1min
ここで求めたarea%からカフェイン(富士フィルム和光純薬)を標準物質とし、カフェインの含有量(質量%)を求めた。
【0072】
2.4-ビニルグアヤコール及びラクトンの分析
試料をバイアルにサンプリングし、SPMEファイバーによりヘッドスペースの香気成分を吸着し、GC/MS測定に供した。
【0073】
分析条件は次の通りである。
HS-GC/MS条件
・測定機器;HP6890(Agilent社製)
・カラム :VF-WAX 内径0.25mm×長さ60m、膜厚0.25μm(ジーエルサイエンス(株))
・カラム温度 :35℃(4min)→3℃/min→130℃→5℃/min→ 240℃(15min)
・カラム圧力 :定流量モード(31kPa)
・カラム流量 :l.5mL/min(He)
・注入口温度 :240℃
・注入方式 :スプリットレス
・検出器温度 :200℃
・キャリアガス:ヘリウム
・スキャンモード;m/z 30~500
【0074】
購入試薬をエタノールで溶解させて、段階希釈し、標品を調製した。所定濃度の標品を試料に添加し、試料単体と同様にSPMEファイバーに吸着させ、GC/MS測定を行った。なお、4-ビニルグアイアコール、γ-ブチロラクトン、γ-デカラクトン及びδ-デカノラクトンの定量は、以下のm/zのピーク面積を用いた。
【0075】
・γ-ブチロラクトン:42
・γ-デカラクトン :85
・δ-デカノラクトン:99
・4-ビニルグアイアコール:150
【0076】
製造例1
生コーヒー豆抽出物の製造
生コーヒー豆エキスパウダー(固形分90g)を、エタノール濃度60質量%のエタノール水溶液360gに溶解させ、酸性白土(ミズカエース#600、水澤化学社製)45gと混合し、珪藻土をプレコートした濾紙でろ過した。ろ過液を、ヤシ殻活性炭を34mL充填したカラム、及びH形カチオン交換樹脂を31mL充填したカラムに通液してカラム処理液を得た。カラム処理液を濃縮することによりクロロゲン酸製剤を得た。得られたクロロゲン酸製剤中のクロロゲン酸類含有量は38質量%、カフェイン濃度は0.0質量%であった。
【0077】
実施例1~13、比較例1~2及び参考例1
表1に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製し、得られた固体経口用組成物について分析を行い、次の官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
官能評価
各実施例、比較例及び参考例で得られた固体経口用組成物を摂取したときの「渋味」について、専門パネル3名が下記の評価基準とすることに合意したうえで官能試験を実施した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終評点を決定した。
【0079】
渋味の評価基準
比較例1の固体経口用組成物の渋味の評点を「1」とし、参考例1の固体経口用組成物渋味の評点を「5」として、下記の基準にしたがって行った。
評点5:渋味を感じない
4:渋味をほとんど感じない
3:渋味をやや感じる
2:渋味を感じる
1:渋味を強く感じる
【0080】
【表1】
【0081】
実施例14~20、比較例3及び参考例2
表2に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製し、得られた固体経口用組成物について分析を行い、次の官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0082】
官能評価
各実施例、比較例及び参考例で得られた固体経口用組成物を摂取したときの「渋味」について、専門パネル3名が下記の評価基準とすることに合意したうえで官能試験を実施した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終評点を決定した。
【0083】
渋味の評価基準
比較例3の固体経口用組成物の渋味の評点を「1」とし、参考例2の固体経口用組成物渋味の評点を「5」として、下記の基準にしたがって行った。
評点5:渋味を感じない
4:渋味をほとんど感じない
3:渋味をやや感じる
2:渋味を感じる
1:渋味を強く感じる
【0084】
【表2】
【0085】
実施例21~23、比較例4及び参考例3
表3に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製し、得られた固体経口用組成物について分析を行い、次の官能評価を行った。その結果を表3に示す。
【0086】
官能評価
各実施例、比較例及び参考例で得られた固体経口用組成物を摂取したときの「渋味」について、専門パネル3名が下記の評価基準とすることに合意したうえで官能試験を実施した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終評点を決定した。
【0087】
渋味の評価基準
比較例4の固体経口用組成物の渋味の評点を「1」とし、参考例3の固体経口用組成物渋味の評点を「5」として、下記の基準にしたがって行った。
評点5:渋味を感じない
4:渋味をほとんど感じない
3:渋味をやや感じる
2:渋味を感じる
1:渋味を強く感じる
【0088】
【表3】
【0089】
実施例24~26、比較例5及び参考例4
表4に示す各成分を均一に混合して固体経口用組成物を調製し、得られた固体経口用組成物について分析を行い、次の官能評価を行った。その結果を表4に示す。
【0090】
官能評価
各実施例、比較例及び参考例で得られた固体経口用組成物を摂取したときの「渋味」について、専門パネル3名が下記の評価基準とすることに合意したうえで官能試験を実施した。そして、各専門パネルが決定した評点に基づいて、協議により最終評点を決定した。
【0091】
渋味の評価基準
比較例5の固体経口用組成物の渋味の評点を「1」とし、参考例4の固体経口用組成物渋味の評点を「5」として、下記の基準にしたがって行った。
評点5:渋味を感じない
4:渋味をほとんど感じない
3:渋味をやや感じる
2:渋味を感じる
1:渋味を強く感じる
【0092】
【表4】
【0093】
表1~4から、高濃度のクロロゲン酸類に微量のカフェインを含有させたときに生ずる渋味を、カフェインに対して4-ビニルグアイアコールを一定の量比で含有させることで抑制できることがわかる。更に、この渋味の抑制効果は、ラクトン単独では奏されないが、ラクトンを4-ビニルグアイアコールとともに含有させることで増強することが分かる。