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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電池および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20240725BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240725BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240725BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240725BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M50/443 B
H01M50/457
H01M50/451
H01M50/434
H01M50/443 E
H01M50/46
H01M50/489
H01M50/42
H01M50/426
H01M50/414
H01M50/417
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023503513
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 CN2020103296
(87)【国際公開番号】W WO2022016378
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】賀 俊
(72)【発明者】
【氏名】鄭 強
(72)【発明者】
【氏名】方 占召
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-160792(JP,A)
【文献】特開2000-149997(JP,A)
【文献】特開2013-235824(JP,A)
【文献】特表2020-507188(JP,A)
【文献】特開2019-192339(JP,A)
【文献】特開2017-027852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M50/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極タブと、陰極タブと、前記陽極タブと前記陰極タブとの間に位置するセパレータと、を含む電極アセンブリと、電解液と、を備える電池であって、
前記電解液は、リチウム塩と有機溶媒とを含み、前記有機溶媒が、鎖状カルボン酸エステル系化合物を含み、前記鎖状カルボン酸エステル系化合物の前記有機溶媒中の質量割合は、10%~70%であり、
前記セパレータは、基材と、第1コート層と、第2コート層とを含み、前記基材は、対向する第1面および第2面を含み、前記第1コート層および前記第2コート層は、前記第1面および前記第2面にそれぞれ設けられ、前記第1コート層は、前記陽極タブに向かい、前記第2コート層は、前記陰極タブに向かい、前記第1コート層は、着剤を含み、前記接着剤は、第1接着剤であり、前記第1接着剤の平均粒径は、0.3μm≦D50≦3μmであり、前記第2コート層は、前記第1接着剤よりも平均粒径が大きい第2接着剤を含み、前記第2接着剤の、前記第2コート層中の質量比は、85%~95%であり、前記第2接着剤の平均粒径は、4μm≦D50≦15μmであることを特徴とする電池。
【請求項2】
前記鎖状カルボン酸エステル系化合物は、下記式Iで表される化合物より選ばれる一種又は複数種であり、
ここで、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルコキシル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基、置換または無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基から選ばれ、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1コート層の面積重量は0.5mg/5000mm2~5mg/5000mm2であり、前記第2コート層の面積重量は2.0mg/5000mm2~10mg/5000mm2であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項4】
前記第1コート層の厚さは、0.2μm~4μmであり、前記第2コート層の厚さは、5μm~20μmであることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項5】
前記第1接着剤および前記第2接着剤の少なくとも一方は、コアシェル構造であり、前記第1接着剤および前記第2接着剤は、それぞれ独立に、フッ化ビニリデン、へキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩素化プロピレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、スチレン、テトラフルオロエチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルの単独重合体または共重合体の少なくとも一種から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項6】
前記第1コート層は、増粘剤をさらに含み、前記第1接着剤の質量は、前記第1コート層の全質量の88%~99.5%であり、前記増粘剤の質量は、前記第1コート層の全質量の0.5%~12%であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項7】
前記第1コート層は、湿潤剤をさらに含み、前記第1接着剤の質量は、前記第1コート層の全質量の88%~92.5%であり、前記増粘剤の質量は、前記第1コート層の全質量の0.5%~2%であり、前記湿潤剤の質量は、前記第1コート層の全質量の7%~10%であることを特徴とする請求項に記載の電池。
【請求項8】
前記第2コート層は、第3接着剤をさらに含み、記第3接着剤の、前記第2コート層中の質量比は、5%~15%であることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記セパレータは、前記基材の前記第1および前記第2の少なくとも一方に設けられたセラミック層をさらに備え、前記セラミック層は、前記基材と、前記第1コート層および/または前記第2コート層との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の電池を備えることを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の分野に関し、特に、電池及び前記電池を有する電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、比エネルギー量が大きい、作動電圧が高い、自己放電率が低い、体積が小さい、重量が軽い等の利点を有しており、消費電子分野で広く応用されている。電気自動車や携帯電子装置の高速な発展に伴い、電池の性能(例えばサイクル性能)に対する人びとの要求が高まっている。
【0003】
従来技術では、リチウムイオン電池の低温サイクル性能と高温サイクル性能との両立は一般に困難であり、例えば、電池を低温環境下で使用できるようにするためには、電解液溶媒を最適化し(例えば、低粘度溶媒を大量に添加する)、電解液の低温での粘度を低下させ、かつ電気伝導度を向上させて、リチウムイオン電池の低温性能を向上させる必要があるが、上記電解液系では、電池の高温貯蔵と高温サイクル性能を劣化させてしまう。また、例えば、セパレータとタブとの界面接着力を確保し、電池のガス発生副反応を抑制し、電池の高温サイクルや貯蔵性能を改善するためには、通常、高い接着性能を有するセパレータが用いられるが、高い接着性能を有するセパレータは、電池の低温サイクル性能の向上に不利である。このため、同様に、実際の使用におけるリチウムイオン電池に対する要求を、最終的に満たすことはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の上記の欠点を解決するためには、高い低温サイクル性能と高い高温サイクルと貯蔵性能を両立できる電池を提供する必要がある。
【0005】
本出願の実施形態は、陽極タブと、陰極タブと、前記陽極タブと前記陰極タブとの間に位置するセパレータと、を含む電極アセンブリと、電解液と、を備える電池であって、前記電解液は、リチウム塩と有機溶媒とを含み、前記有機溶媒が、鎖状カルボン酸エステル系化合物を含み、前記鎖状カルボン酸エステル系化合物の前記有機溶媒中の質量割合は、10%~70%であり、前記セパレータは、基材と、第1コート層と、第2コート層とを含み、前記基材は、対向する第1面および第2面を含み、前記第1コート層および前記第2コート層は、前記第1面および前記第2面にそれぞれ設けられ、前記第1コート層は、前記陽極タブに向かい、前記第2コート層は、前記陰極タブに向かい、前記第1コート層は、第1接着剤を含み、前記第2コート層は、前記第1接着剤よりも平均粒径が大きい第2接着剤を含む電池を提供する。
【0006】
本出願の幾つかの実施形態において、前記鎖状カルボン酸エステル系化合物は、下記式Iで表される化合物より選ばれる一種又は複数種であり、
ここで、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルコキシル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基、置換または無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基から選ばれ、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基から選ばれる。
【0007】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第1接着剤の平均粒径は、0.3μm≦D50≦3μmであり、前記第2接着剤の平均粒径は、4μm≦D50≦15μmである。
【0008】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第1コート層の面積重量は0.5mg/5000mm~5mg/5000mmであり、前記第2コート層の面積重量は2.0mg/5000mm~10mg/5000mmである。
【0009】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第1コート層の厚さは、0.2μm~4μmであり、前記第2コート層の厚さは、5μm~20μmである。
【0010】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第1接着剤および前記第2接着剤の少なくとも一方は、コアシェル構造であり、前記第1接着剤および前記第2接着剤は、それぞれ独立に、フッ化ビニリデン、へキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩素化プロピレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、スチレン、テトラフルオロエチレン、ブタジエンおよびアクリロニトリルの単独重合体または共重合体の少なくとも一種から選ばれる。
【0011】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第1コート層は、増粘剤をさらに含み、前記第1接着剤の質量は、前記第1コート層の全質量の88%~99.5%であり、前記増粘剤の質量は、前記第1コート層の全質量の0.5%~12%である。
【0012】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第1コート層は、湿潤剤をさらに含み、前記第1接着剤の質量は、前記第1コート層の全質量の88%~92.5%であり、前記増粘剤の質量は、前記第1コート層の全質量の0.5%~2%であり、前記湿潤剤の質量は、前記第1コート層の全質量の7%~10%である。
【0013】
本出願の幾つかの実施形態において、前記第2コート層は、第3接着剤をさらに含み、前記第2接着剤の、前記第2コート層中の質量比は、85%~95%であり、前記第3接着剤の、前記第2コート層中の質量比は、5%~15%である。
【0014】
本出願の幾つかの実施形態において、前記セパレータは、前記基材の前記第1表面および前記第2表面の少なくとも一方に設けられたセラミック層をさらに備え、前記セラミック層は、前記基材と、前記第1コート層および/または前記第2コート層との間に設けられている。
【0015】
本出願の実施形態は、上述したいずれかの電池を備える電子機器を提供する。
【0016】
本発明の電池は、両面異質セパレータ(すなわち、セパレータの基材両側の第1コート層と第2コート層の接着剤粒子の平均粒子径が異なる)と高含有量鎖状カルボン酸エステル電解液とが結合した形態を採り、両面異質セパレータと高含有量鎖状カルボン酸エステル電解液とが相互に影響し、共に電池は、高い低温サイクル性能と高い高温サイクルと貯蔵性能とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電池の構成模式図である。
図2図2は、図1に示す電池の内部構造を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係るセパレータの構成模式図である。
図4図4は、本発明の他の実施形態に係るセパレータの構成模式図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態に係るセパレータの構成模式図である。
図6図6は、本発明のさらに別の実施形態に係るセパレータの構成模式図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る電子装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記の目的、特徴、および利点をより明確に理解できるように、以下、本発明について、図面および具体的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、衝突しない場合には、本発明の実施形態および実施形態における特徴は、互いに組み合わせることができる。以下の説明では本発明を十分に理解するために、多くの具体的な詳細が述べられているが、記載された実施形態は本願の一部の実施形態にすぎず、すべての実施形態ではない。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本願の技術分野に属する技術者が一般に理解するものと同じ意味である。本願の明細書において本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけであり、本願を制限することを目的とするものではない。本明細書で使用される用語「および/または」は、1つまたは複数の関連する列挙されたアイテムのすべておよび任意の組合せを含む。
【0019】
本願の各実施例において、本願を限定するのではなく説明を容易にするために、本願特許出願明細書および特許請求の範囲で使用される用語「接続」は、直接的であれ間接的であれ、物理的または機械的接続に限定されるものではない。「上」、「下」、「上方」、「下方」、「左」、「右」等は、相対位置関係を表すためにのみ使用され、記述された対象の絶対位置が変化すると、その相対位置関係も変化する。
【0020】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態では、電極アセンブリ10と、電解液20とを備える電池100が提供され、電極アセンブリ10は、陽極タブ11と、陰極タブ12と、陽極タブ11及び陰極タブ12の間にセパレータ13とを有する。
【0021】
電解液20は、リチウム塩と有機溶媒とを含み、有機溶媒は、鎖状カルボン酸エステル系化合物を含み、鎖状カルボン酸エステル系化合物の有機溶媒の質量比は、10~70%である。幾つかの実施形態においては、鎖状カルボン酸エステル系化合物の有機溶媒の質量比が20%~60%である。
【0022】
図3を併せて参照すると、セパレータ13は、基材130と、第1コート層131と、第2コート層132とを含む。基材130は、対向する第1面1301と第2面1302とを含み、第1コート層131と第2コーティング132は、それぞれ第1面1301と第2面1302とに設けられる。第1コート層131は陽極タブ11に向かい、第2コート層132は陰極タブ12に向かい、第1コート層131は第1接着剤1311を含み、第2コート層132は第1接着剤1311よりも平均粒径が大きい第2接着剤1321を含む。
【0023】
本発明の電池100では、両面異質セパレータ(すなわち、セパレータ13の基材130の両側の第1コート層131と第2コート層132の接着剤粒子の平均粒径が異なる)と、高含有量鎖状カルボン酸エステル電解液とが結合した形態を採用する。セパレータ13の第1コート層131は、平均粒径の小さい第1接着剤1311を用いることで、接着性が強く、高い接着コート層としてタブ界面との接着性を向上させることができるため、鎖状カルボン酸エステルとタブとの間の界面におけるガス発生を抑制し、電池100の高温サイクル性能や貯蔵性能を改善することができ、同時に、セパレータ13の第2コート層132は、大粒子のポリマーコート層であり、捲回後にセパレータ13とタブとの間に一定の隙間を残すことができるため、第2コート層132の一側に電解液20の移送経路を形成することができ、注液中に電解液20の浸潤に有利であり、低温での電解液20の移送を改善し、タブのリチウム析出の問題を改善することができるため、電池100の高温サイクル性能や貯蔵性能を高く確保しつつ、電池100の低温サイクル性能を効果的に向上させることができる。また、鎖状カルボン酸エステルの低粘度と高導電率等の特徴においても、セパレータ13の第1コート層131の接着性が強いと、第1コート層131の側の電解液20の濡れ性が悪く、移送速度が低いという問題が改善され、電池100の低温サイクル性能がさらに向上する。
【0024】
したがって、本発明では、両面異質セパレータ及び高含有量鎖状カルボン酸エステル電解液が相互に影響することにより、共に電池100は、高い低温サイクル性能及び高い高温サイクルと、貯蔵性能とを両立することができる。
【0025】
一実施形態において、鎖状カルボン酸エステル系化合物は、下記式Iで表される化合物から選ばれる1種又は2種以上である。
【0026】
ここで、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルコキシル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基、置換または無置換の炭素数6~30のアリールオキシ基から選ばれ、Rは水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換の炭素数1~20のアルキル基、置換または無置換の炭素数1~20のアルケニル基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基から選ばれる。
【0027】
一実施形態において、鎖状カルボン酸エステル系化合物は、ギ酸メチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸n-プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸n-ペンチル、プロピオン酸イソペンチル、n-酪酸エチル、n-ブチルn-プロピオネート、プロピルイソブチレート、n-ペンチルn-ブチレート、n-ペンチルイソブチレート、n-ブチルn-ブチレート、イソブチレートイソブチレートおよびn-ペンタン酸n-ペンチルからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0028】
あるいは、鎖状カルボン酸エステル系化合物は、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、及び酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0029】
一実施形態では、第1接着剤1311の平均粒径が0.3μm≦D50≦3μmであり、第1接着剤1311の平均粒径が小さすぎると、タブとセパレータ13の熱圧過程でセパレータ13の細孔を塞ぎやすくなり、イオンチャネルが阻害され、電池100の動力学性能が低下し、さらに電池100のサイクル性能、特に低温サイクル性能が低下する。第1接着剤1311の平均粒径が大き過ぎると、接着力の発揮に影響を及ぼし、第1コート層131は界面ガス発生を効果的に抑制できないため、電池100の高温サイクル性能及び貯蔵性能の向上に限界がある。幾つかの実施形態においては、第1接着剤1311の平均粒子径は、0.6μm≦D50≦0.8μmである。
【0030】
一実施形態では、第2接着剤1321の粒径が4μm≦D50≦15μmであり、第2接着剤1321の平均粒径が小さすぎると、隙間を提供する役割を果たすことができず、電池100の低温サイクル性能を向上させるのに不利であるとともに、過大な平均粒径によっても接着性能が大きく低下する。幾つかの実施形態においては、第2接着剤1321の粒径は、4μm≦D50≦10μmである。
【0031】
ここで、「D50」という用語は、材料が体積基準の粒子分布において、小粒径から測定し、体積累積50%になるときに対応する粒径を意味する。物理的意味は、粒径がそれより大きい粒子の体積含有量が全粒子の50%を占め、それより小さい粒子の体積含有量も全粒子の50%を占めることである。
【0032】
一実施形態では、第1コート層131の面積重量は0.5mg/5000mm~5mg/5000mmであり、第1コート層131の面積重量が少なすぎると、接着力が悪く、タブ界面との接着性向上や界面ガス発生抑制の役割を果たしにくいため、電池100の高温サイクル性能や貯蔵性能の向上に限界があり、第1コート層131の面積重量が大きすぎると、リチウムイオン経路が閉塞しやすくなり、電池100の動力学性能の低下を招き、電池100のサイクル性能にも影響を与える。幾つかの実施例では、第1コート層131の面積重量は1.5mg/5000mm~2.5mg/5000mmである。
【0033】
一実施形態では、第2コート層132の面積重量が2.0mg/5000mm~10mg/5000mmであり、第2コート層132の面積重量が少なすぎると、界面の隙間を提供する役割を果たさず、電池100の低温サイクル性能を向上させるのに不利であり、面積重量が大きすぎると、電池100のエネルギー密度に影響を与える。いくつかの実施例において、第2コート層132の面積重量は、4mg/5000mm~8mg/5000mmである。
【0034】
一実施形態では、第1コート層131の厚さは0.2μm~4μmであり、第2コート層132の厚さは5μm~20μmである。本発明の第1コート層131は、厚さが薄く、電池100のエネルギー密度の向上に有利である。
【0035】
一実施形態において、第1接着剤1311は、コアシェル構造または非コアシェル構造である。ここで、コアシェル構造のコアの主成分はポリマーであり、該ポリマーは、1種の重合性モノマーが重合した単独重合体であってもよく、2種または2種以上の重合性モノマーが重合した共重合体であってもよく、前記重合性モノマーは、アクリレート系モノマー、芳香族モノビニル化合物又はモノカルボン酸またはジカルボン酸の酸無水物から選ばれる。幾つかの実施形態では、コアシェル構造のコアは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレンアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の単独重合体又は共重合体の少なくとも一種から選択され、これらの単独重合体又は共重合体は、1種を単独で使用してもよく、2種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
コアシェル構造のシェルは、1種の重合性モノマーの単独重合体、又は、2種または2種以上の重合性モノマーの共重合体共重合体であってもよく、前記重合性モノマーは、アクリル酸エステル、芳香族モノビニル化合物又はビニルニトリル性(vinyl nitrile)化合物から選ばれる。幾つかの実施形態では、コアシェル構造のシェルは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルの単独重合体または共重合体の少なくとも1種から選択される。これらの単独重合体又は共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
非コアシェル構造の主成分はモノマーであり、該モノマーは、1種の重合性モノマーの単独重合体、又は、2種または2種以上の重合性モノマーの共重合体であってもよく、前記重合性モノマーは、アクリル酸エステル、芳香族モノビニル化合物又はビニルニトリル性化合物から選ばれる。いくつかの態様において、非コアシェル構造は、アクリル酸、アクリル酸エステル、ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、エチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、プロピレンの単独重合体または共重合体の少なくとも1種から選択される。これらの単独重合体又は共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
一実施形態において、第2接着剤1321は、コアシェル構造又は非コアシェル構造であり、第2接着剤1321は、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、クロロプロピレン、アクリル酸、アクリル酸エステル、スチレン、テトラフルオロエチレン、ブタジエン及びアクリロニトリルの単独重合体又は共重合体の少なくとも1種から選択される。これらの単独重合体又は共重合体は、1種を単独で使用してもよいし、2種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
一実施形態において、第1コート層131は、増粘剤をさらに含み、増粘剤の役割は、スラリーの安定性を増加させ、スラリーの沈降を防止することである。第1接着剤1311の質量は、第1コート層131の全質量の88%~99.5%である。増粘剤の質量は、第1コート層131の全質量の0.5%~12%である。本発明は、増粘剤の種類に限定されず、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムであってよい。
【0040】
さらに、第1コート層131は湿潤剤をさらに含み、湿潤剤の役割はスラリー表面エネルギーを低下させ、塗布漏れを防止することである。第1接着剤1311の質量は、第1コート層131の全質量の88%~92.5%であり、増粘剤の質量は、第1コート層131の全質量の0.5%~2%であり、湿潤剤の質量は、第1コート層131の全質量の7%~10%である。一実施形態において、湿潤剤は、ジメチルシロキサン、ポリエチレンオキシド、オキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体及びジオクチルソジウムスルホサクシネートからなる群の少なくとも一種から選択される。
【0041】
一実施形態では、第2コート層132は、第3接着剤1322をさらに含み、第3接着剤1322は、補助接着剤として機能し、第2接着剤1321を基材130に接着する。第2接着剤1321の第2コート層132の質量比は85%~95%であり、第3接着剤の第2コート層132の質量比は5%~15%である。第3接着剤1322の含有量が低すぎると接着性能が著しく低下し、含有量が高すぎると電池100の倍率性能が悪くなる。幾つかの実施形態では、第3接着剤1322は、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、スチレン、クロロスチレン、フルオロスチレン、メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリロニトリル及びブタジエンの単独重合体又は共重合体からなる群より選択される少なくとも一種である。
【0042】
図4から図6を併せて参照すると、一実施形態において、セパレータ13は、基材130の第1表面1301および第2表面1302の少なくとも一方に設けられたセラミック層133をさらに含み、セラミック層133は、基材130と第1コート層131および/または第2コーティング132との間に設けられる。セラミック層133は、セパレータ13の耐熱性および耐パンク性を向上させるためのものである。セラミック層133のセラミックの種類としては、アルミナ、ベーマイト、チタニア、シリカ、ジルコニア、二酸化スズ、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0043】
図4に示すように、セラミック層133の数は1つであり、第2コート層132と基材130との間に位置する。図5に示すように、セラミック層133の数は1つであり、第1コート層131と基材130との間に位置する。図6に示すように、セラミック層133の数は2つであってもよく、一方のセラミック層133は第1コート層131と基材130との間に位置し、他方のセラミック層133が第2コート層132と基材130との間に位置する。
【0044】
幾つかの実施形態では、セラミック層133の厚みは、0.5μm~6μmである。
【0045】
幾つかの実施形態では、基材130は、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから選択される一種又はその組み合わせでもよい。基材130は、1種類の材質の膜から単層構造を構成してもよいし、1つまたは複数種の材質の膜から多層複合構造を構成してもよい。基材130の厚みは、3~20μmであればよく、本発明はここでは限定されない。
【0046】
なお、本発明の電池100は、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池などを含むことができる。電池100がリチウムイオン電池であることを例に挙げて説明する。
【0047】
本発明が提供するリチウムイオン電池100は、上述のセパレータ13を用いているが、その他の構成要素としては、陰極タブ12、陽極タブ11および電解液20などを含む。例えば、陰極活物質(コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム等から選ばれる)、接着剤、導電剤、溶媒等をスラリーとし、A1箔に塗布し、乾燥、冷間プレスし、電池100の陰極タブ12を作製することができる。陽極活物質(グラファイト、シリコン、シリコン炭素などから選ばれる)、接着剤、分散剤、導電剤(導電カーボンブラック、層状の黒鉛、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンなどから選ばれる)などをスラリーとし、Cu箔上に塗布し、乾燥、冷間プレスし、電池100の陽極タブ11を作製する。電解液20は、有機溶媒とリチウム塩とを含む。
【0048】
リチウム塩としては、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiN(CFSO(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SOF))(LiFSI)、リチウムビス(オキサラート)ボレートLiB(C(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラート)ボレートLiBF(C)(LiDFOB)の少なくとも1種を挙げることができる。
【0049】
有機溶媒には、鎖状カルボン酸エステル系化合物の他に、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(EMC)、γ-ブチロラクトン(BL)、テトラヒドロフラン(THF)の1種または複数種以上が含まれる。
【0050】
具体的に挙げた上記化合物のうちの1種または複数を有機溶媒として選択して鎖状カルボン酸エステル系化合物と組み合わせて使用することにより、電解液20をリチウムイオン電池100に適用した後、リチウムイオン電池100の電気化学的性質、例えば、倍率性、サイクル性能、貯蔵後の容量保持率をさらに向上させることができる。
【0051】
図7を参照すると、本発明の一実施形態は、電子装置200をさらに提供する。電子装置200は、上述した電池100を備える。ここで、電子装置200は、移動体通信装置、タブレットPC、ノートパソコンなどの消費者向け電子装置、電動工具、ドローン、エネルギー貯蔵装置、動力装置などであってもよい。一実施形態において、電子装置200は電気自動車である。
【0052】
以下、実施例および比較例により本発明について説明する。ここで、第1コート層と基材との間、または第2コート層と基材との間にセラミック層を設けてもよいし、第1コート層と基材との間、および第2コート層と基材との間にセラミック層を設けてもよく、これらの実施形態も本発明の目的を達成することができる。当業者は、これらの実施形態も本発明の範囲にあることを理解するであろう。
【0053】
実施例1
陽極タブの作製:陽極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO)、導電性カーボンブラック(SuperP)、ポリフッ化ビニリデン(PR1DF)を重量比で97.5:1.0:1.5となるように混合し、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を加え、固形分75%となるスラリーを作製し、均一に撹拌した。スラリーを陰極集電体アルミニウム箔の片面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレス、裁断工程を経て陰極タブを得た。
【0054】
陽極タブの作製:陽極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(SuperP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)を重量比で96:1.5:2.5となるように混合し、溶媒として脱イオン水(HO)を加え、固形分が70%となるスラリーを作製し、均一に攪拌した。スラリーを陽極集電体銅箔の片面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスし、裁断工程を経て陽極タブを得た。
【0055】
両面異質セパレータの作製:(1)基材としてPEフィルムを用い、厚さは、9μmである。
【0056】
(2)セラミックス層の作製:まず、セラミック層ペースト液(組成は質量比35:10:55のアルミナセラミックス、ブタジエン-スチレン重合体、脱イオン水を含む)を作製し、具体的には、まず、ブタジエン-スチレン重合体と脱イオン水の合計30kgを、容積60Lのダブルプラネタリーミキサーに添加し、45℃で3時間分散させた後、さらに、アルミナセラミックス16.1kgを攪拌機に入れ、45℃で2時間高速分散させた後、ナノ粉砕機を用いてボールミルを行い、時間は、1.5時間であり、粉砕媒体が直径6μmの球形ジルコニアビーズであり、耐熱コーティング液を得た。その後、転写塗布方式を用いて基材の片面にセラミック層ペースト液を塗布し、塗布速度は、6m/min、塗布厚みは、3μmであり、次いで、オーブンにて3段階で乾燥させ、各オーブンの長は3mであり、オーブンの設定温度は、50℃、60℃、60℃であり、セラミック層を得て、セラミック層の面積重量は、0.23mg/cmである。
【0057】
(3)第1コート層の作製:第1接着剤であるポリアクリル酸(D50=0.7μm)を攪拌機に添加し、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを添加して均一に攪拌混合し、湿潤剤であるジメチルシロキサンを加え、次いで脱イオン水を加えて攪拌して粘度を調整し、第1コート層スラリーを得て、そのうち、第1接着剤、増粘剤および湿潤剤の質量比は、それぞれ91wt%、0.5wt%および8.5wt%であり、セラミック層上に第1コート層スラリーを均一に塗布した後、オーブン内で3段階で乾燥させ、各オーブンの長は3mであり、オーブンの設定温度は、50℃、60℃、60℃であり、第1コート層を得て、第1コート層の面積重量は、0.9mg/5000mmであった。
【0058】
(4)第2コート層の作製:第2接着剤であるPVDF(D50=7μm)を攪拌機に添加し、第3接着剤であるアクリロニトリルを添加し、均一に攪拌混合し、脱イオン水を加えて攪拌して粘度を調整して、第2コート層スラリーを得て、このうち、第2接着剤と第3接着剤の質量比がそれぞれ90wt%及び10wt%であり、基材のセラミック層が設けられていない他方の面に、第2コート層スラリーを均一に塗工した後、オーブン内で3段階で乾燥させ、各オーブンの長は3mであり、オーブンの設定温度は、50℃、60℃、60℃であり、第2コート層を得て、第2コート層の面積重量は、2.5mg/5000mmである(説明の便宜上、以下、両面異質セパレータ1と称する)。
【0059】
電解液の作製:含水量<10ppmのアルゴン雰囲気のグローブボックス中で、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、及びプロピオン酸エチル(EP)を質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:60:10とした後、有機溶媒に十分に乾燥したリチウム塩ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を加えて溶解し、均一に混合し、電解液を得た。
【0060】
全電池の作製:陽極タブ、セパレータ、陽極タブを順に積層し、セパレータの第1コート層を陽極タブに対向させ、第2コート層を陰極タブに対向させ、捲回して電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装に収容し、作製した電解液を注入して封止し、化成、脱気、エッジカット等のプロセスを経て全電池を得た。
【0061】
実施例2
電解液の作製:エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:50:20となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0062】
実施例3
電解液の作製:エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:40:30となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0063】
実施例4
電解液の作製:エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:30:40となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0064】
実施例5
電解液の作製:エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:20:50となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0065】
実施例6
電解液の作製:エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:10:60となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0066】
実施例7
電解液の作製:ジエチルカーボネート(DEC)無添加、エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:EP=15:15:70となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0067】
実施例8
両面異質セパレータの作製:実施例4と同じ基材を用い、同時に実施例4と同様の方法で、セラミック層、第1コート層ペースト、及び第2コート層ペーストを作製した後、セラミック層の一方の表面に第2コート層ペーストを塗布し、基材のセラミック層が設けられていない他方の面に第1コート層ペーストを塗布し(説明の便宜上、以下、両面異質セパレータ2と称する)、他のステップは、実施例4と同様である。
【0068】
比較例1
電解液の作製:炭酸エステルを添加せず、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)と、ポリカーボネート(PC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、質量比でEC:PC:DEC=15:15:70とした。
【0069】
低接着力セパレータの作製:(1)実施例1と同じ基材を用いた。
【0070】
(2)実施例1と同様の方法でセラミック層を作製した。
【0071】
(3)低接着力コート層の作製:接着剤であるPVDF(D50=70μm)を攪拌機に入れて均一に攪拌し、さらに補助接着剤であるアクリロニトリルを加えて均一に攪拌混合を続け、さらに脱イオン水を加えて粘度を調整し、接着剤であるPVDFと補助接着剤の質量比をそれぞれ90wt%、10wt%とし、このスラリーをセラミックコート層およびPE基材のセラミックコート層が設けられていない面にそれぞれ均一に塗布した後、3段階で乾燥させ、各オーブンの長は3mであり、オーブンの設定温度は、50℃、60℃、60℃であり、低接着力コート層を得て、低接着力コート層の面積重量は、1.5mg/5000mmである。その他のステップは実施例1と同様である。
【0072】
比較例2
高粘着力セパレータの作製:(1)実施例1と同じ基材である。
【0073】
(2)実施例1と同様の方法でセラミック層を作製した。
【0074】
(3)高接着力コート層の作製:接着剤であるポリアクリル酸(D50=0.7μm)を攪拌機に加えて均一に撹拌し、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え均一に攪拌混合し、湿潤剤であるジメチルシロキサンを加え、最後に脱イオン水を加えて粘度を調整し、接着剤であるポリアクリル酸、増粘剤、湿潤剤の質量比は、それぞれ91wt%、0.5wt%、8.5wt%であり、このスラリーをセラミックコート層およびPE基材のセラミックコート層が設けられていない面にそれぞれ均一に塗布した後、3段階で乾燥させ、各オーブンの長は3mであり、オーブンの設定温度は、50℃、60℃、60℃であり、高接着力コート層を得て、高接着力コート層の面積重量は、0.9mg/5000mmである。他のステップは、比較例1と同様である。
【0075】
比較例3
電解液の作製:エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:DEC:EP=15:15:64:6となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0076】
比較例4
電解液の作製:ジエチルカーボネート(DEC)無添加、エチレンカーボネート(EC)、ポリカーボネート(PC)、およびプロピオン酸エチル(EP)を、質量比EC:PC:EP=13:13:74となるように混合し、他のステップは、実施例1と同様である。
【0077】
比較例5
セパレータの作製:実施例1と同じである。他のステップは、比較例1と同様である。
【0078】
比較例6
セパレータの作製、比較例1と同じ、他のステップは、実施例4と同様である。
【0079】
比較例7
セパレータの作製、比較例2と同じ、他のステップは、実施例4と同様である。
【0080】
実施例および比較例で得られた電池について、セパレータ接着力試験、低温サイクル容量保持率、高温サイクル容量保持率および高温貯蔵性能試験をそれぞれ測定し、その結果を表1に示す。
【0081】
セパレータ接着力試験工程は、セパレータと陽極および陰極タブとの乾圧接着力を180°剥離試験基準で試験し、セパレータ、陽極および陰極タブを54.2mm×72.5mmのサンプルに裁断し、セパレータのうち第1コート層を陽極と複合し、ホットプレスを用いて、ホットプレス条件は85℃、1MPaで85秒間ホットプレスし、複合したサンプルを15mm×54.2mmの小さな片に裁断し、180°剥離試験基準でセパレータの陽極への接着力を試験する。同様に、セパレータのうち第2コート層を陰極と複合し、ホットプレスを用いてホットプレスを行い、ホットプレス条件は85℃、1MPaで85秒間ホットプレスし、複合したサンプルを15mm×54.2mmの小さな片に裁断し、180°剥離試験基準でセパレータの陰極への接着力を試験する。
【0082】
低温サイクル容量保持率試験工程は、以下のステップを含む。12℃の温度で電池を30分間静置した後、0.7C倍率で4.45Vまで定電流充電し、さらに4.35V倍率で0.05Cまで定電圧充電し、5分間静置した後、0.5C倍率で3.0Vまで定電流放電し、これは、1つの充放電サイクル工程であり、このときの放電容量を電池の初回放電容量であり、その後、それぞれ充放電サイクルを500回行った後、電池サイクル500回後の容量保持率は、を次式により算出した。
【0083】
サイクル500回後の容量保持率(%)=(500回後の放電容量/初回放電容量)×100%。
【0084】
高温サイクル容量保持率試験工程は、45℃の温度で電池を30分間静置した後、0.7C倍率で4.45Vまで定電流充電し、さらに4.35Vで0.05Cまで定電圧充電し、5分間静置した後、0.5C倍率で3.0Vまで定電流放電し、これは、1つの充放電サイクル工程であり、このときの放電容量は電池の初回放電容量であり、その後、それぞれ500回の充放電サイクル工程を行い、同様の方法で電池サイクル後の容量保持率を計算する。
【0085】
高温貯蔵性能試験工程は、化成後の電池を室温で0.7Cの倍率で4.45Vまで定電流充電し、4.35Vで0.05Cまで定電圧充電して電池の厚さを測定してHと表記し、電池を80℃の恒温箱に入れて8時間保温して、電池の厚さを測定してHと表記した。電池は8h高温貯蔵後の厚さ膨張率(%)=(H-H)/H×100%。
【0086】
【表1】
【0087】
表1のデータから分かるように、比較例1はカルボン酸エステルを含まない電解液と従来の低接着力セパレータを用いて電池を作製したが、比較例1に比べて比較例2はカルボン酸エステルを含まない電解液と従来の高接着力セパレータを用いているため、高温貯蔵や高温サイクル性能は改善されたが、電解液が同様にカルボン酸エステルを含まないため、動力学性能や低温サイクル性能に劣る。比較例5は、カルボン酸エステルを含まない電解液及び両面異質セパレータを用いた場合、比較例1が低接着力セパレータを用いた場合に比べて、比較例5のセパレータとタブとの界面の接着力が向上するため、高温サイクル及び貯蔵性能が高く、比較例2が従来の高接着力セパレータを用いた場合に比べて、比較例5は、大粒子接着剤を有しているため、比較的高い低温サイクル性能を有している。しかし、比較例5の電解液はカルボン酸エステルを含まないため、比較例5の低温サイクル性能が比較例1に比べて低下し、比較例5の高温サイクル及び貯蔵性能が比較例2に比べて低下した。
【0088】
実施例1-7は同時に高含有量カルボン酸エステル電解液および両面異質セパレータを採用し、比較例5は両面異質セパレータのみを使用し、高含有量カルボン酸エステル電解液を使用しなかった場合に比べて、実施例1-7は高温サイクルおよび貯蔵性能を確保しつつ低温サイクル性能を向上することができ、カルボン酸エステル含有量が増加するにつれて電池の低温サイクル性能改善が顕著になる。実施例8は、別の異なる構造の両面異質セパレータを用い、電池は同様に高い低温サイクルおよび高温サイクルと貯蔵性能を有しており、異なる構造の両面異質セパレータとは、電池の低温サイクルおよび高温サイクルと貯蔵性能に積極的に働くことを示している。
【0089】
比較例6が高含有量カルボン酸エステル電解液及び従来の低接着力セパレータを用いた場合に比べて、実施例4は、両面異質セパレータを導入し、セパレータとタブ界面を強化し、副反応を減少させることができるため、低温サイクル性能を担保しつつ、電池の高温サイクル及び貯蔵性能を向上させることができる。比較例7が高含有量カルボン酸エステル電解液及び従来の高接着力セパレータを用いた場合に比べて、実施例4のセパレータは、大きな粒子接着剤を有しているため、低温での電解液の浸潤及び輸送が改善されるので、高い低温サイクル性能を有する。
【0090】
それと同時に、実施例1~7に比べて、比較例3の電解液ではカルボン酸エステル含量が10%未満で動力学不足で低温サイクル性能が悪化し、比較例4の電解液はカルボン酸エステル含量が70%より高く、電解液の高温での副反応が激化したため、電池の高温サイクルや貯蔵性能が著しく悪化した。
【0091】
以上の実施形態は、本発明の技術案を限定するものではなく単に説明してきたが、以上の好ましい実施形態を参照して本発明を詳細に説明してきたが、本発明の技術案を修正ないし均等置換することは本発明の技術案の精神と範囲を逸脱しない限り、当業者は理解するであろう。
【符号の説明】
【0092】
10 電極アセンブリ
11 陽極タブ
12 陰極タブ
13 セパレータ
20 電解液
100 電池
200 電子装置
130 基材
131 第1コート層
132 第2コート層
133 セラミック層
1301 第1面
1302 第2面
1311 第1接着剤
1321 第2接着剤
1322 第3接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7