(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20240725BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/02 301A
(21)【出願番号】P 2023503904
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008835
(87)【国際公開番号】W WO2022186268
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2021033609
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30~令和4年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超高圧水素インフラ本格普及技術研究開発事業/水素ステーションのコスト低減等に関連する技術開発/本格普及期に向けた次世代ステーション・充填技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸司
(72)【発明者】
【氏名】蓮仏 達也
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0173607(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0185068(US,A1)
【文献】特表2016-526136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0023180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
F17C 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが蓄圧された蓄圧器から第1被充填タンクに燃料ガスを供給する第1ガス供給経路と、
前記蓄圧器から第2被充填タンクに燃料ガスを供給する第2ガス供給経路と、
前記第1ガス供給経路を通じて前記第1被充填タンク内に供給される燃料ガスの圧力上昇率を制御し、前記第2ガス供給経路を通じて前記第2被充填タンク内に供給される燃料ガスの圧力上昇率を制御する制御器と、
を備えたガス充填装置において、
前記制御器は、
前記蓄圧器から前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの圧力差に応じて、前記第1被充填タンクの圧力上昇率または前記第2被充填タンクの圧力上昇率を、基準圧力上昇率よりも低くすることを特徴とするガス充填装置。
【請求項2】
前記基準圧力上昇率は、前記蓄圧器から前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとのうちのいずれか一方の被充填タンクにのみ燃料ガスを供給するときの前記一方の被充填タンクの圧力上昇率であることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項3】
前記制御器は、
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとのうちの一方の被充填タンクの圧力上昇率を前記基準圧力上昇率から低下させた場合、他方の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が終了すると、前記一方の被充填タンクの圧力上昇率を前記基準圧力上昇率にすることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項4】
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が高い側の被充填タンクを高圧側被充填タンクとし、
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が低い側の被充填タンクを低圧側被充填タンクとした場合に、
前記制御器は、
前記高圧側被充填タンクが燃料ガスの供給停止する圧力としての目標終了圧力に達する時間に対して所定時間遅れて前記低圧側被充填タンクが目標終了圧力に達するように、前記低圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項5】
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が高い側の被充填タンクを高圧側被充填タンクとし、
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が低い側の被充填タンクを低圧側被充填タンクとした場合に、
前記制御器は、
前記高圧側被充填タンクが第1所定圧力に達したときに前記低圧側被充填タンクの圧力が前記第1所定圧力よりも第2所定圧力低くなるように、前記低圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項6】
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が高い側の被充填タンクを高圧側被充填タンクとし、
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が低い側の被充填タンクを低圧側被充填タンクとした場合に、
前記制御器は、
前記高圧側被充填タンクと前記低圧側被充填タンクとが同時に燃料ガスの供給停止する圧力としての目標終了圧力に達するように、前記高圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項7】
前記制御器は、
前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに、前記第1被充填タンク内の圧力と前記第2被充填タンク内の圧力とに応じて圧力上昇率の変更の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【請求項8】
前記蓄圧器は、複数の蓄圧器により構成され、かつ、前記第1ガス供給経路と前記第2ガス供給経路との両方に接続された共通の多段蓄圧器であることを特徴とする請求項1に記載のガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば車両の被充填タンクに水素ガス等の燃料ガスを充填(供給)するガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、充填装置の充填ノズルと蓄圧器とを接続する充填経路(ガス供給経路)を備え、充填ノズルを介して蓄圧器内の燃料ガス(水素ガス)を車両のタンク(被充填タンク)へ充填(供給)する燃料ガス充填制御システムが記載されている。特許文献1の燃料ガス充填制御システムは、燃料ガスを車両のタンクへ充填するときに、そのときの車両のタンクの圧力に応じて設定された目標終了圧力となるように燃料ガスの圧力上昇率を制御する。また、特許文献2,3には、複数の蓄圧器により構成された多段蓄圧器を備えた水素供給システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-190621号公報
【文献】特開2018-084328号公報
【文献】特開2018-084329号公報
【発明の概要】
【0004】
燃料ガス充填制御システムとして、複数の被充填タンクへ燃料ガスを充填できるように構成することが考えられる。即ち、燃料ガス充填制御システムとして、例えば、複数の充填経路を備えると共に、この複数の充填経路で蓄圧器を共有する構成とすることが考えられる。より具体的には、例えば、「第1充填経路」および「第1充填経路に接続された第1充填ノズル」と、「第1充填経路から分岐した第2充填経路」および「第2充填経路に接続された第2充填ノズル」とを備える構成とする。そして、第1充填経路および第2充填経路で蓄圧器を共有して複数の被充填タンクへ並行して燃料ガスを充填できるように構成する。
【0005】
このような構成によれば、第1充填経路を通じて第1被充填タンクへ燃料ガスの充填を行っているときに、第2充填経路を通じて第2被充填タンクへ燃料ガスの充填を行うことができる。しかし、この場合、例えば、両方の被充填タンクに対する燃料ガスの充填を開始したときの圧力によっては、圧力が高い側(高圧側)のタンクの圧力が上昇しにくくなる可能性がある。即ち、燃料ガスの充填を開始したときの蓄圧器の圧力と第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力との関係によっては、圧力が高い側(高圧側)のタンクの圧力が上昇しにくくなる可能性がある。これにより、高圧側のタンクの充填完了までの時間が長くなる、または、充填が途中で終了してしまう可能性がある。
【0006】
本発明の一実施形態の目的は、蓄圧器から複数のタンクに燃料ガスを充填(供給)するときに、高圧側のタンクの充填完了までの時間が長くなること、または、充填が途中で終了してしまうことを抑制できるガス充填装置を提供することにある。
【0007】
本発明の一実施形態は、燃料ガスが蓄圧された蓄圧器から第1被充填タンクに燃料ガスを供給する第1ガス供給経路と、前記蓄圧器から第2被充填タンクに燃料ガスを供給する第2ガス供給経路と、前記第1ガス供給経路を通じて前記第1被充填タンク内に供給される燃料ガスの圧力上昇率を制御し、前記第2ガス供給経路を通じて前記第2被充填タンク内に供給される燃料ガスの圧力上昇率を制御する制御器と、を備えたガス充填装置において、前記制御器は、前記蓄圧器から前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの圧力差に応じて、前記第1被充填タンクの圧力上昇率または前記第2被充填タンクの圧力上昇率を、基準圧力上昇率よりも低くする。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、蓄圧器から複数の被充填タンク(第1被充填タンク、第2被充填タンク)に燃料ガスを供給(充填)するときに、高圧側の被充填タンクに対する燃料ガスの供給(充填)が完了するまでの時間が長くなること、または、燃料ガスの供給(充填)が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態によるガス充填装置を蓄圧器、圧縮機等と共に示す模式的な全体構成図である。
【
図2】
図1中のガス充填装置を模式的に示す構成図である。
【
図3】
図1中の総合制御盤(制御器)により行われる処理を示す流れ図である。
【
図4】
図3中の「A」、「B」に続く処理を示す流れ図である。
【
図5】
図4中の「C」、「D」に続く処理を示す流れ図である。
【
図6】
図4中のS21の「協調制御」の処理を示す流れ図である。
【
図7】
図5中のS41の「協調復帰」の処理を示す流れ図である。
【
図8】第1の実施形態による第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力の時間変化の一例を示す特性線図である。
【
図9】第2の実施形態による第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力の時間変化の一例を示す特性線図である。
【
図10】第3の実施形態による第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力の時間変化の一例を示す特性線図である。
【
図11】変形例による第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力の時間変化の一例を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態によるガス充填装置として、車両の被充填タンクに水素ガスを充填する水素ガス充填装置を例に挙げ、添付図面に従って説明する。なお、
図3ないし
図7に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0011】
図1ないし
図8は、第1の実施形態を示している。
図1および
図2において、水素ガス充填装置1は、例えば、燃料電池自動車(FCV)等の車両51,52(
図2)の被充填タンク53,54(
図2)に、圧縮状態の水素ガス(水素燃料)を充填する。水素ガス充填装置1は、例えば、水素ガス供給ステーション(水素ステーション)と呼ばれる設備(燃料供給所)に設置されている。水素ガス充填装置1は、ガス蓄圧器である多段蓄圧器2等と共に、水素燃料供給システム3の一部を構成している。
【0012】
即ち、水素燃料供給システム3は、水素ガス充填装置1と、多段蓄圧器2と、圧縮機4とを含んで構成されている。水素ガス充填装置1は、車両51,52の燃料タンクとなる被充填タンク53,54に水素ガス(燃料ガス)を充填する。多段蓄圧器2は、高圧に圧縮された水素ガスを蓄圧する。圧縮機4は、水素ガスを圧縮する。水素ガス充填装置1は、充填機構としてのディスペンサユニット5と、ガス供給管路7,8と、制御器としての総合制御盤9とを含んで構成されている。ディスペンサユニット5は、多段蓄圧器2の水素ガスを車両51,52の被充填タンク53,54に充填する。ガス供給管路7,8は、多段蓄圧器2からディスペンサユニット5のディスペンサ筐体6内にわたって延びる。総合制御盤9は、多段蓄圧器2から車両51,52の被充填タンク53,54への水素ガスの供給(充填)の制御を行う。
【0013】
実施形態では、総合制御盤9は、多段蓄圧器2から車両51,52の被充填タンク53,54への水素ガスの供給(充填)の制御を行うことに加えて、後述の水素供給源から多段蓄圧器2への水素ガスの供給(蓄圧)の制御も行う。即ち、実施形態では、総合制御盤9は、多段蓄圧器2から車両51,52の被充填タンク53,54に対する水素ガスの供給(充填)の制御(車両充填制御)と、図示しない水素供給源から多段蓄圧器2に対する水素ガスの供給(蓄圧)の制御(蓄圧制御)とを行う。しかし、これに限らず、例えば、車両充填制御を行う制御盤(充填用の制御器、充填制御部)と蓄圧制御を行う制御盤(蓄圧用の制御器、蓄圧器制御部)とを別々に構成し、これらの制御盤(制御器)を通信線で接続する構成としてもよい。この場合、例えば、車両充填制御を行う制御盤(充填用の制御器、充填制御部)をディスペンサ筐体6内に設けてもよい。
【0014】
多段蓄圧器2は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵する水素ガス供給源(燃料ガス供給源)である。即ち、多段蓄圧器2には、燃料ガスとなる水素ガスが蓄圧されている。多段蓄圧器2は、ガス供給管路7,8によってディスペンサユニット5に接続されている。多段蓄圧器2は、ガス供給管路7,8の上流側で、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部を構成している。多段蓄圧器2は、使用下限圧力を多段にした複数の蓄圧器2A,2B,2C、例えば、第1蓄圧器2A、第2蓄圧器2B、第3蓄圧器2Cにより構成されている。第1蓄圧器2A、第2蓄圧器2B、第3蓄圧器2Cは、それぞれガスボンベ(ガス容器、ガスシリンダ)により構成されている。
【0015】
実施形態では、第1蓄圧器2Aは、使用下限圧力が最も低くなるまで使用する低圧バンク(1st.BNK、低圧蓄圧器)に対応する。第2蓄圧器2Bは、使用下限圧力が中間の中圧バンク(2nd.BNK、中間蓄圧器)に対応する。第3蓄圧器2Cは、使用下限圧力が高い高圧バンク(3rd.BNK、高圧蓄圧器)に対応する。なお、実施形態では、多段蓄圧器2として、3つの蓄圧器2A,2B,2Cを備えた構成としているが、2つ、または、4つ以上の蓄圧器により構成してもよい。また、複数の蓄圧器2A,2B,2Cを備えた多段蓄圧器2ではなく、1つの蓄圧器としてもよい。
【0016】
多段蓄圧器2は、図示しない水素供給源から圧縮機4を介して高圧の水素ガスが供給される。即ち、多段蓄圧器2は、圧縮機4を介して水素供給源に接続されている。水素供給源の吐出側と圧縮機4との間を接続する管路には、図示しない開閉弁、逆止弁等が設けられている。水素供給源は、例えば、水素ガスが充填されたガス容器(シリンダ)の集合体であるカードル、水素ガスを貯留する容積の大きい中間蓄圧器、水素ガスを製造する水素製造装置、および/または、水素を充填して配送する水素トレーラーに対応する。多段蓄圧器2には、水素供給源の水素ガスが圧縮機4で昇圧されて蓄圧される。
【0017】
コンプレッサ(昇圧器)である圧縮機4は、例えば、往復動圧縮機により構成されている。圧縮機4は、例えば、複数段で水素ガスを圧縮する多段式の圧縮機として構成することができる。圧縮機4の吐出側は、多段蓄圧器2の第1蓄圧器2Aと第1管路10により接続されている。第1管路10には、第1開閉弁13が設けられている。また、圧縮機4の吐出側は、多段蓄圧器2の第2蓄圧器2Bと第2管路11により接続されている。第2管路11には、第2開閉弁14が設けられている。さらに、圧縮機4の吐出側は、多段蓄圧器2の第3蓄圧器2Cと第3管路12により接続されている。第3管路12には、第3開閉弁15が設けられている。第1開閉弁13、第2開閉弁14および第3開閉弁15は、総合制御盤9からの制御信号に基づいて開閉される。これにより、第1開閉弁13、第2開閉弁14および第3開閉弁15は、それぞれの管路10,11,12内で水素ガスの流通を許容または遮断する。
【0018】
水素供給源の水素ガスは、例えば、図示しないレギュレータによって低圧(例えば、0.6MPa)に減圧された状態で圧縮機4の吸込側に供給される。圧縮機4は、総合制御盤9と接続されている。圧縮機4は、総合制御盤9からの指令に基づいて、水素供給源から低圧で供給される水素ガスを圧縮しながら多段蓄圧器2の各蓄圧器2A,2B,2Cに供給する。圧縮機4は、多段蓄圧器2の各蓄圧器2A,2B,2C内が所定の高圧(例えば、82MPa)になるまで圧縮する。換言すれば、圧縮機4は、吐出側の圧力が所定の高圧(例えば、82MPa)になるまで圧縮する。圧縮機4から蓄圧器2A,2B,2Cのいずれに水素ガスを供給するかは、総合制御盤9により開閉弁13,14,15の開閉を制御することにより決定される。この場合、圧縮機4から1つの蓄圧器に水素ガスを供給するように制御してもよいし、2つ以上の蓄圧器に同時に水素ガスを供給するように制御してもよい。
【0019】
多段蓄圧器2は、2つのガス供給管路7,8、即ち、A系統(第1ガス供給経路)に対応する第1ガス供給管路7およびB系統(第2ガス供給経路)に対応する第2ガス供給管路8に接続されている。
図1に示すように、ガス供給管路7,8は、多段蓄圧器2からディスペンサユニット5に向けて延びている。
図2に示すように、ガス供給管路7,8は、ディスペンサユニット5のディスペンサ筐体6内に配設されている。ガス供給管路7,8は、ディスペンサユニット5の充填ノズル26A,26Bを介して車両51,52の被充填タンク53,54に接続される。
【0020】
図1に示すように、多段蓄圧器2の各蓄圧器2A,2B,2Cは、いずれも、第1ガス供給管路7と第2ガス供給管路8との両方に接続されている。この場合、第1蓄圧器2Aは、第4開閉弁16を介して第1ガス供給管路7と接続されており、第5開閉弁17を介して第2ガス供給管路8と接続されている。第2蓄圧器2Bは、第6開閉弁18を介して第1ガス供給管路7と接続されており、第7開閉弁19を介して第2ガス供給管路8と接続されている。第3蓄圧器2Cは、第8開閉弁20を介して第1ガス供給管路7と接続されており、第9開閉弁21を介して第2ガス供給管路8と接続されている。実施形態では、水素ガスを蓄圧する蓄圧器は、複数の蓄圧器2A,2B,2Cにより構成され、かつ、第1ガス供給管路7と第2ガス供給管路8との両方に接続された共通の多段蓄圧器2となっている。
【0021】
また、第1ガス供給管路7および第2ガス供給管路8には、ディスペンサユニット5側からの直充填要求に基づいて、圧縮機4で昇圧した水素を直接ディスペンサユニット5側へ供給できるように、直充填管路22が接続されている。第1ガス供給管路7および第2ガス供給管路8は、多段蓄圧器2を迂回する直充填管路22を介して圧縮機4と直接的に接続されている。直充填管路22は、第10開閉弁23を介して第1ガス供給管路7と接続されており、第11開閉弁24を介して第2ガス供給管路8と接続されている。
【0022】
このように、実施形態では、多段蓄圧器2および圧縮機4からディスペンサユニット5のA系統(第1ガス供給管路7)およびB系統(第2ガス供給管路8)に個別に水素を供給できる構成となっている。即ち、実施形態の水素ガス供給ステーションでは、複数のガス供給管路7,8で多段蓄圧器2および圧縮機4を共有する設備となっている。なお、実施形態のディスペンサユニット5は、2系統を一体としたダブル型のディスペンサユニットとして構成されている。しかし、これに限らず、例えば、1系統毎に独立したシングル型のディスペンサユニットを2台備えた構成、即ち、A系統のディスペンサユニットとB系統のディスペンサユニットとを備えた構成としてもよい。
【0023】
ここで、多段蓄圧器2からディスペンサユニット5のA系統(第1ガス供給管路7)を通じて車両51の被充填タンク53に水素ガスを供給(充填)するときの各蓄圧器2A,2B,2Cの切換えについて説明する。後述するように、車両51の被充填タンク53に充填ノズル26Aが接続された状態で、多段蓄圧器2から車両51の被充填タンク53に対して水素ガスの供給が開始される。このとき、例えば、全ての開閉弁13,14,15,16,17,18,19,20,21,23,24が閉弁した状態から第4開閉弁16が開弁することにより、低圧バンク(低圧蓄圧器)となる第1蓄圧器2Aから被充填タンク53に水素ガスの供給が開始される。第4開閉弁16が開弁すると、第1蓄圧器2Aと被充填タンク53との差圧に基づいて、第1蓄圧器2A内に蓄圧された水素ガスが被充填タンク53側へと移動し、被充填タンク53の圧力が徐々に上昇する。これに伴い、第1蓄圧器2A内の圧力が徐々に低下する。
【0024】
図8中の特性線61は、車両51の被充填タンク53の圧力の時間変化の一例を示している。被充填タンク53の圧力が徐々に上昇し、所定の圧力(例えば、
図8中のA点)に達すると、第4開閉弁16が閉弁すると共に第6開閉弁18が開弁する。これにより、第1蓄圧器2Aからの水素ガスの供給が停止すると共に、中圧バンク(中間蓄圧器)となる第2蓄圧器2Bから被充填タンク53に水素ガスの供給が開始される。即ち、被充填タンク53に水素ガスを供給する蓄圧器が、第1蓄圧器2Aから第2蓄圧器2Bに切換えられる。
図8中の「△」は、被充填タンク53と接続される蓄圧器2A,2B,2Cの切換えが行われる点に対応する。
【0025】
第6開閉弁18が開弁すると、第2蓄圧器2Bと被充填タンク53との差圧に基づいて、第2蓄圧器2B内に蓄圧された水素ガスが被充填タンク53側へと移動し、被充填タンク53の圧力の上昇が継続する。これに伴い、第2蓄圧器2B内の圧力が徐々に低下する。そして、被充填タンク53の圧力が所定の圧力(例えば、
図8中のB点)に達すると、第6開閉弁18が閉弁すると共に第8開閉弁20が開弁する。これにより、第2蓄圧器2Bからの水素ガスの供給が停止すると共に、高圧バンク(高圧蓄圧器)となる第3蓄圧器2Cから被充填タンク53に水素ガスの供給が開始される。即ち、被充填タンク53に水素ガスを供給する蓄圧器が、第2蓄圧器2Bから第3蓄圧器2Cに切換えられる。
【0026】
第8開閉弁20が開弁すると、第3蓄圧器2Cと被充填タンク53との差圧に基づいて、第3蓄圧器2C内に蓄圧された水素ガスが被充填タンク53側へと移動し、被充填タンク53の圧力がさらに上昇する。これに伴い、第3蓄圧器2C内の圧力が徐々に低下する。そして、被充填タンク53の圧力が水素ガスの供給を停止する目標終了圧力(Pe)に達すると、第8開閉弁20が閉弁し、第3蓄圧器2Cからの水素ガスの供給が停止する。これにより、多段蓄圧器2から車両51の被充填タンク53に対する水素ガスの供給が終了する。このように、水素ガスの供給に用いる蓄圧器2A,2B,2Cを順次切換える構成を採用した場合は、蓄圧器2A,2B,2Cの圧力と車両51の被充填タンク53の圧力との差を大きく保つことができる。これにより、水素ガスの供給の完了までの時間を短くできる。
【0027】
次に、ディスペンサユニット5について、
図2を参照しつつ説明する。なお、
図2では、2台の車両51,52に水素ガスを供給(充填)している状態を示している。即ち、
図2では、A系統(第1ガス供給管路7)により車両51の被充填タンク53に水素ガスを供給(充填)し、かつ、B系統(第2ガス供給管路8)により車両52の被充填タンク54に水素ガスを供給(充填)している状態を示している。実施形態のディスペンサユニット5は、2系統のガス供給経路(燃料供給経路)を有している。このため、実施形態のディスペンサユニット5は、2台の車両51,52で利用することも1台の車両51(または車両52)で利用することもできる。
【0028】
なお、以下の説明では、A系統(第1ガス供給管路7)を通じて水素ガスが供給される車両51を第1車両51とし、B系統(第2ガス供給管路8)を通じて水素ガスが供給される車両52を第2車両52とする。これは、単に、2つの系統のうち一方の系統(例えば、A系統)を便宜的に「第1」とし、他方の系統(例えば、B系統)を便宜的に「第2」とするだけである。このため、例えば、一方の系統をB系統(第2)とし、他方の系統をA系統(第1)としてもよい。また、後述する
図3ないし
図7の流れ図では、「DSP-A」は、A系統(第1)に対応し、「DSP-B」は、B系統(第2)に対応する。「DSP」は、「ディスペンサ」の略である。
【0029】
図2に示すように、ディスペンサユニット5は、ディスペンサ筐体6、充填ホース25A,25B、充填ノズル26A,26B、流量調整弁27A,27B、遮断弁28A,28B、冷却器29(熱交換器29A,29B)、流量計30A,30B、1次圧力センサ31A,31B、2次圧力センサ32A,32B、温度センサ33A,33B、脱圧弁34A,34B、ノズル掛け35A,35B、外気温センサ36を含んで構成されている。
図2では、ディスペンサユニット5内に設けられた部材のうち、A系統(第1ガス供給管路7)に関する部材(機器)には符号の添え字として「A」を付しており、B系統(第2ガス供給管路8)に関する部材(機器)には符号の添え字として「B」を付している。また、図示は省略するが、ディスペンサユニット5は、充填の開始、停止の操作を行うためのスイッチ、即ち、A系統用の充填開始スイッチおよび充填停止スイッチと、B系統用の充填開始スイッチおよび充填停止スイッチを備えている。
【0030】
図1に示すように、ディスペンサ筐体6は、ディスペンサユニット5の外形をなす建屋を構成する。ディスペンサ筐体6は、例えば上,下方向に長尺な直方体状に形成されている。
図2に示すように、ディスペンサ筐体6内には、ガス供給管路7,8、流量調整弁27A,27B、遮断弁28A,28B、冷却器29(熱交換器29A,29B)、1次圧力センサ31A,31B、2次圧力センサ32A,32B、温度センサ33A,33B等が収容されている。ディスペンサ筐体6には、水素ガスの充填作業を行う作業者(係員)または利用者(顧客)が視認し易い位置に、液晶モニタ、液晶タッチパネル等の表示部37(
図1)が設けられている。
【0031】
図1および
図2に示すように、ディスペンサ筐体6の外部には、第1充填ノズル26Aが取外し可能に掛止めされる第1ノズル掛け35Aと、第2充填ノズル26Bが取外し可能に掛止めされる第2ノズル掛け35Bとが設けられている。ノズル掛け35A,35Bは、充填ノズル26A,26Bを保持する保持部に相当する。実施形態では、1つのディスペンサユニット5に複数(より具体的には2つ)の充填ノズル26A,26Bを有する構成(ダブル型のディスペンサユニット)を例に挙げて説明するが、例えば、1つのディスペンサユニットに1つの充填ノズルを有する構成(シングル型のディスペンサユニット)としてもよい。また、例えば、1つのディスペンサユニットに3つ以上の充填ノズルを有する構成としてもよい。
【0032】
図2に示すように、ガス供給管路7,8は、ディスペンサ筐体6内に配設されている。ガス供給管路7,8は、加圧状態の水素ガスを多段蓄圧器2から充填ホース25A,25B側に向けて供給する。このために、ガス供給管路7,8は、上流側が多段蓄圧器2に接続されており、下流側がディスペンサ筐体6の外部へと延びる充填ホース25A,25Bに接続されている。即ち、ガス供給管路7,8は、多段蓄圧器2側が上流側となり、充填ホース25A,25B側が下流側となっている。充填ホース25A,25Bは、可撓性を有する耐圧ホースが用いられている。実施形態では、第1ガス供給管路7および第1充填ホース25Aが第1ガス供給経路(A系統)に対応し、第2ガス供給管路8および第2充填ホース25Bが第2ガス供給経路(B系統)に対応する。
【0033】
充填ホース25A,25Bは、基端側がガス供給管路7,8の下流側に接続されている。即ち、第1充填ホース25Aは、基端側が第1ガス供給管路7の下流側に接続されており、第2充填ホース25Bは、基端側が第2ガス供給管路8の下流側に接続されている。第1充填ホース25Aの先端には、第1車両51に搭載された第1被充填タンク53に連結される第1充填ノズル26Aが設けられている。第2充填ホース25Bの先端には、第2車両52に搭載された第2被充填タンク54に連結される第2充填ノズル26Bが設けられている。充填ホース25A,25Bは、ガス供給管路7,8と共に、水素ガス充填経路(燃料ガス充填経路)を構成している。水素ガス充填経路は、水素ガスを燃料として走行する車両51,52の被充填タンク53,54に水素ガスを充填するための経路(管路)である。
【0034】
充填ノズル26A,26Bは、充填ホース25A,25Bを介してガス供給管路7,8の下流側に接続されている。充填ノズル26A,26Bは、充填ホース25A,25Bの先端側に気密状態で接続されており、所謂充填カップリングを構成している。充填ノズル26A,26Bは、充填ホース25A,25Bを介してディスペンサ筐体6(より具体的には、ガス供給管路7,8)と接続されている。充填ノズル26A,26Bの内部には、例えば、水素ガスの流通を許可する「開位置」と水素ガスの流通を遮断する「閉位置」とに切換えられる弁部が設けられている。
【0035】
充填ノズル26A,26Bの先端側は、接続カプラとなっており、被充填タンク53,54の接続口となる充填口53A,54Aに着脱可能に接続される。即ち、充填ノズル26A,26Bの接続カプラは、充填ノズル26A,26B内の管路(図示せず)を通じて車両51,52の被充填タンク53,54に水素ガスを供給するときに、被充填タンク53,54の充填口53A,54Aに気密状態で着脱可能に接続される。また、充填ノズル26A,26Bは、被充填タンク53,54の充填口53A,54Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。これにより、充填ノズル26A,26Bは、水素ガスの充填時に充填口53A,54Aから不用意に外れることを抑制できる。
【0036】
多段蓄圧器2内の高圧な水素ガスは、充填ノズル26A,26Bが被充填タンク53,54の充填口53A,54Aに対してロック機構によりロックされた状態で、ガス供給管路7,8、充填ホース25A,25Bおよび充填ノズル26A,26Bを通じて車両51,52の被充填タンク53,54に充填される。即ち、水素ガス充填装置1は、充填ノズル26A,26Bを備えている。水素ガス充填装置1は、充填ノズル26A,26Bを用いて車両51,52の被充填タンク53,54へ水素ガスを充填する。充填ノズル26A,26Bは、充填作業が行われていないときに、ノズル掛け35A,35Bに保持される。
【0037】
図2に示すように、ガス供給管路7,8の途中には、ガス供給管路7,8を流れる燃料の流量を調整可能に制御する制御弁としての流量調整弁27A,27Bが設けられている。また、ガス供給管路7,8の途中には、流量調整弁27A,27Bよりも下流側に位置して遮断弁28A,28Bが設けられている。流量調整弁27A,27Bおよび遮断弁28A,28Bは、ガス供給管路7,8を流れる水素ガスの流量および圧力を制御する制御機器を構成している。流量計30A,30B、1次圧力センサ31A,31B、2次圧力センサ32A,32Bおよび温度センサ33A,33Bは、ガス供給管路7,8を流れる水素ガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。なお、ガス供給管路7,8の上流側から下流側に向けて設けられている流量計30A,30B、流量調整弁27A,27B、遮断弁28A,28Bの配置(順番)は、
図2中に示した順番に限定されない。
【0038】
流量調整弁27A,27Bは、車両51,52の被充填タンク53,54への水素ガスの流通を制御する。流量調整弁27A,27Bは、例えば空圧作動式の弁装置であり、エアの供給で開弁し、制御信号で制御圧(エア圧)を制御して弁開度が調整される。流量調整弁27A,27Bは、制御装置である総合制御盤9の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給管路7,8内を流れる水素ガスの流量、水素ガス圧を可変に制御する。遮断弁28A,28Bは、ガス供給管路7,8の途中部位(例えば、熱交換器29A,29Bと2次圧力センサ32A,32Bとの間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。遮断弁28A,28Bは、総合制御盤9からの制御信号に基づいて開閉されることにより、ガス供給管路7,8内で水素ガス(燃料ガス、充填ガス)の流通を許容または遮断する。なお、制御装置は、各機器の制御を総合して行うものに限らない。例えば、ディスペンサ筐体内に設けられ充填に関する制御を行う充填制御部、蓄圧器の開閉弁の制御を行う蓄圧器制御部等の複数の制御部(制御器)を備え、かつ、当該複数の制御部(制御器)を制御装置で総合制御するようにしてもよい。
【0039】
総合制御盤9は、充填ノズル26A,26Bを介して車両51,52の被充填タンク53,54に水素ガスを充填するとき、または、水素ガスの充填を停止(終了)するときに、流量調整弁27A,27Bおよび遮断弁28A,28Bの開閉弁制御を行う。流量調整弁27A,27Bおよび遮断弁28A,28Bは、ガス供給管路7,8の途中に設けられており、開弁することにより多段蓄圧器2内の水素ガスを充填ノズル26A,26Bへ供給する供給制御弁に相当する。
【0040】
冷却器29は、ガス供給管路7,8内を流れる水素ガスを冷却するための冷却装置である。冷却器29は、被充填タンク53,54に充填される水素ガスの温度上昇を抑えるため、ガス供給管路7,8の途中位置で水素ガスを冷却する。冷却器29は、流量調整弁27A,27Bと遮断弁28A,28Bとの間に位置してガス供給管路7,8の途中部位に設けられた熱交換器29A,29Bと、熱交換器29A,29Bに冷媒管路を介して接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構を備えたチラーユニット(図示せず)とを含んで構成されている。
【0041】
冷媒管路は、チラーユニットと熱交換器29A,29Bとの間で冷媒(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を流通させる。チラーユニットは、冷媒管路を介して熱交換器29A,29Bとの間に冷媒を循環させる。これにより、冷却器29の熱交換器29A,29Bは、ガス供給管路7,8内を流れる水素ガスと冷媒との間で熱交換を行い、充填ホース25A,25Bに向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、-33~-40℃)まで低下させる。
【0042】
ディスペンサ筐体6内には、ガス供給管路7,8の途中に位置してコリオリ式の流量計30A,30Bが設けられている。流量計30A,30Bは、ガス供給管路7,8内を流通する被測流体の質量流量を計測する。流量計30A,30Bは、例えば1次圧力センサ31A,31Bと流量調整弁27A,27Bとの間でガス供給管路7,8内を流れる水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測結果に対応する信号(流量パルス)を総合制御盤9へと出力する。総合制御盤9は、車両51,52の被充填タンク53,54に対する水素ガスの充填量を演算し、水素ガス燃料の払出し量(給油量に相当)を表示部37等で表示する。これにより、例えば顧客等に表示内容を報知する。
【0043】
1次圧力センサ31A,31Bは、流量計30A,30Bおよび流量調整弁27A,27Bよりも上流側に位置してガス供給管路7,8に設けられている。1次圧力センサ31A,31Bは、多段蓄圧器2からガス供給管路7,8内に供給される水素ガスのガス圧力を検出する。1次圧力センサ31A,31Bは、総合制御盤9と接続されている。1次圧力センサ31A,31Bは、多段蓄圧器2側でガス供給管路7,8内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を総合制御盤9へと出力する。
【0044】
2次圧力センサ32A,32Bは、遮断弁28A,28Bよりも下流側(即ち、充填ノズル26A,26B側)に位置してガス供給管路7,8に設けられている。2次圧力センサ32A,32Bは、多段蓄圧器2から供給される水素ガスの圧力、より具体的には、車両51,52の被充填タンク53,54の圧力、または、被充填タンク53,54内の圧力にほぼ相当する管路途中の圧力を検出する。2次圧力センサ32A,32Bも、総合制御盤9と接続されている。2次圧力センサ32A,32Bは、充填ノズル26A,26Bの近傍でガス供給管路7,8内の圧力(即ち、被充填タンク53,54の圧力)を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を総合制御盤9へと出力する。
【0045】
温度センサ33A,33Bは、2次圧力センサ32A,32Bよりも充填ノズル26A,26B側に位置してガス供給管路7,8の途中に設けられている。温度センサ33A,33Bは、ガス供給管路7,8内を流れる水素ガスの温度を検出する。温度センサ33A,33Bも、総合制御盤9と接続されている。温度センサ33A,33Bは、ガス供給管路7,8中の水素ガスの温度を測定し、測定した温度に応じた検出信号を総合制御盤9へと出力する。なお、温度センサ33A,33Bと2次圧力センサ32A,32Bとの配置関係は、
図2に示す配置に限らず、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0046】
外気温センサ36は、ディスペンサ筐体6内に設けられ、ディスペンサ筐体6の周囲温度を検出する。外気温センサ36も、総合制御盤9と接続されている。外気温センサ36は、環境温度となる周囲の温度を測定し、測定した温度に応じた検出信号を総合制御盤9へと出力する。外気温センサ36の検出値(外気温度)は、例えば水素ガスを車両51,52の被充填タンク53,54に供給するときの圧力上昇率(基準圧力上昇率:APRR.A,APRR.B)、目標終了圧力(Pe)等の設定に用いられる。
【0047】
図示は省略するが、ディスペンサ筐体6の前面側には、ディスペンサユニット5の操作部となる充填開始スイッチ、充填停止スイッチ(より具体的には、A系統用の充填開始スイッチ、充填停止スイッチと、B系統用の充填開始スイッチ、充填停止スイッチ)が設けられている。充填開始スイッチ、充填停止スイッチは、例えば燃料供給所(水素ステーション)の作業者が手動操作可能なスイッチである。充填開始スイッチは、水素ガスの充填を開始するときに操作される。充填停止スイッチは、水素ガスの充填中にガスの充填を停止するときに操作される。充填開始スイッチ、充填停止スイッチは、操作状態に応じた信号を総合制御盤9にそれぞれ出力する。これにより、総合制御盤9は、これらの信号に応じて遮断弁28A,28Bを開弁または閉弁させる。また、POS等の外部機器(図示せず)と総合制御盤9は接続され、当該外部機器に設けられたプリセットスイッチにより被充填タンク53,54に充填する水素ガスの充填量の設定がなされる。
【0048】
ガス供給管路7,8の遮断弁28A,28Bよりも下流側には、例えば充填ホース25A,25B側からガス圧力を脱圧するための脱圧管路38A,38Bが分岐して設けられている。脱圧管路38A,38Bの途中には、例えば電磁式または空圧作動式の弁装置である脱圧弁34A,34Bが設けられている。脱圧弁34A,34Bは、充填ホース25A,25B(充填ノズル26A,26B)を用いた水素ガスの充填作業が完了し、遮断弁28A,28Bが閉弁されたときに、総合制御盤9からの信号に基づいて開弁制御される。
【0049】
充填ノズル26A,26B(の接続カプラ)を被充填タンク53,54の充填口53A,54Aから取外す場合には、充填ホース25A,25B内の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁34A,34Bを一時的に開弁して脱圧管路38A,38Bの先端側を大気に開放させる。これにより、充填ホース25A,25B側の水素ガスは、外部に放出されて充填ホース25A,25B内の圧力が大気圧レベルまで減圧される。この結果、充填ノズル26A,26Bは、被充填タンク53,54の充填口53A,54Aから取外し可能となる。
【0050】
図1に示すように、表示部37は、ディスペンサ筐体6の前面側に設けられている。表示部37は、水素ガスの充填作業を行う作業者が視認し易い高さ位置に配置され、水素ガスの充填作業に必要な情報表示を行う。表示部37は、例えば、液晶モニタ、液晶タッチパネル等により構成されている。表示部37は、総合制御盤9が充填プロトコルに準拠した充填制御を行っているときに、総合制御盤9からの制御信号により、例えば車両51,52の被充填タンク53,54に対する水素ガスの充填状態(水素ガス供給量、異常発生等)を表示する。表示部37が液晶タッチパネルの場合、操作部となる充填開始スイッチ、充填停止スイッチおよびプリセットスイッチを表示部37により構成してもよい。
【0051】
ノズル掛け35A,35Bは、例えばディスペンサ筐体6の側面側に設けられている。第1ノズル掛け35Aには、第1充填ノズル26Aが取外し可能に掛止めされる。第2ノズル掛け35Bには、第2充填ノズル26Bが取外し可能に掛止めされる。ノズル掛け35A,35Bには、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)に充填ノズル26A,26Bが掛止めされる。水素ガスを充填するときは、充填作業の作業者によりノズル掛け35A,35Bから充填ノズル26A,26Bが取外される。ノズル掛け35A,35Bは、ディスペンサ筐体6の側面側に充填ノズル26A,26Bを収容するノズル収容部に相当する。
【0052】
水素ガスを燃料として走行駆動される車両51,52は、例えば
図2に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両51,52は、例えば燃料電池と電動モータとを含んで構成される駆動装置(図示せず)、
図1中に点線で示す被充填タンク53,54等を備えている。被充填タンク53,54は、水素ガスが充填される耐圧構造をもった容器として構成され、例えば車両51,52の後部側に搭載されている。なお、被充填タンク53,54は、車両51,52の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成としてもよい。
【0053】
被充填タンク53,54には、充填ノズル26A,26Bの接続カプラが着脱可能に取付けられる充填口53A,54A(レセプタクル)が設けられている。車両51,52の被充填タンク53,54内には、充填ノズル26A,26Bが充填口53A,54Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。このとき、充填ノズル26A,26Bは、ロック機構により充填口53A,54Aに対して不用意に外れることがないようにロックされる。ディスペンサユニット5は、冷却された水素ガスを車両51,52の被充填タンク53,54に差圧を利用して充填する。なお、充填口53A,54Aには内部に逆止弁が設けられ、充填ノズル26A,26Bから車両51,52の被充填タンク53,54への水素ガスの流通を許容し、被充填タンク53,54から充填ノズル26A,26Bへの水素ガスの流通を阻止する。
【0054】
総合制御盤9は、圧縮機4、開閉弁13,14,15,16,17,18,19,20,21,23,24、流量調整弁27A,27B、遮断弁28A,28B、脱圧弁34A,34B等を制御する制御器(コントローラ、コントロールユニット)を構成している。総合制御盤9は、圧縮機4、開閉弁13,14,15,16,17,18,19,20,21,23,24、流量調整弁27A,27Bおよび遮断弁28A,28Bの制御を行うことにより、充填対象となる被充填タンク53,54への燃料供給を制御する。特に、総合制御盤9は、供給制御弁となる開閉弁16,17,18,19,20,21、流量調整弁27A,27Bおよび遮断弁28A,28Bを開閉制御することにより、車両51,52の被充填タンク53,54への水素ガスの供給を制御する充填制御手段を構成している。
【0055】
総合制御盤9は、例えば、CPU、メモリ等を備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。総合制御盤9の入力側は、流量計30A,30B、1次圧力センサ31A,31B、2次圧力センサ32A,32B、温度センサ33A,33B、外気温センサ36、充填開始スイッチ、充填停止スイッチ等が接続されている。一方、総合制御盤9の出力側は、圧縮機4、開閉弁13,14,15,16,17,18,19,20,21,23,24、流量調整弁27A,27B、遮断弁28A,28B、脱圧弁34A,34B、表示部37等と接続されている。なお、総合制御盤9に限らず、例えば、ディスペンサ筐体内に設けられた充填制御部に流量計30A等が接続されてもよい。
【0056】
総合制御盤9は、「車両51の被充填タンク53」および/または「車両52の被充填タンク54」に「充填ノズル26A」および/または「充填ノズル26B」を接続した状態で、充填開始スイッチが操作されたときに、「開閉弁16,18,20のいずれかと流量調整弁27Aと遮断弁28A」および/または「開閉弁17,19,21のいずれかと流量調整弁27Bと遮断弁28B」に開弁信号を出力して開弁すべき弁を開弁させる。これにより、多段蓄圧器2内の水素ガスを被充填タンク53内および/または被充填タンク54内に供給するガス充填作業が開始される。
【0057】
また、総合制御盤9は、例えば流量計30A,30B、1次圧力センサ31A,31B、2次圧力センサ32A,32Bおよび温度センサ33A,33Bの測定結果を監視しつつ、「開閉弁16,17,18,19,20,21の開閉」および「流量調整弁27A,27Bの開度」を所定の制御方式(例えば、定圧上昇制御方式または定流量制御方式)で調整する。即ち、総合制御盤9は、例えば水素ガスの充填時に2次圧力センサ32A,32Bにより検出された圧力値から得られる圧力上昇率(昇圧率)が所定の圧力上昇率に一致するように開閉弁16,17,18,19,20,21の開閉および流量調整弁27A,27Bの開度を制御する。
【0058】
これにより、総合制御盤9は、多段蓄圧器2から車両51,52の被充填タンク53,54内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な状態に制御することができる。このとき、総合制御盤9は、流量計30A,30Bからの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、2次圧力センサ32A,32Bにより検出された水素ガスの圧力値が目標終了圧力(Pe)に達したときに、開弁中の弁を閉弁させて燃料の充填を停止する。
【0059】
また、水素ガスの充填中に充填停止スイッチが操作された場合には、例えば水素ガスの充填量や圧力値が目標に達していなくても、充填動作を強制的に停止すべく開弁中の弁が総合制御盤9からの信号により閉弁される。その後、総合制御盤9は、脱圧弁34A,34Bを開弁させて遮断弁28A,28Aよりも下流側の水素ガスを、脱圧管路38A,38Bに放出させ、充填ノズル26A,26Bを減圧した後に脱圧弁34A,34Bを閉弁する。
【0060】
総合制御盤9のメモリは、例えば不揮発性メモリ、RAM、ROM等により構成されている。総合制御盤9のメモリには、例えば、後述の
図3ないし
図7に示す処理フローを実行するための処理プログラム、即ち、充填制御処理用のプログラムが格納されている。また、メモリには、基準圧力上昇率(APRR.A,APRR.B)および目標終了圧力(Pe)を決定するために用いられるルックアップテーブル(Lookup table)等の充填制御マップが格納されている。
【0061】
充填制御マップは、充填圧力区分(例えば、70MPa級、35MPa級等)、供給燃料温度区分(例えば、-40℃、-20℃等)、および、被充填タンク53,54の容量区分に応じて、基準圧力上昇率、目標終了圧力等が、外気温センサ36の検出値(外気温)と被充填タンク53,54の初期圧力とに対応して設定されている。従って、基準圧力上昇率、目標終了圧力等は、外気温センサ36により検出された外気温(環境温度)と被充填タンク53,54の初期圧力とから、対応する区分の充填制御マップを参照することにより得ることができる。
【0062】
このように、実施形態の水素燃料供給システム3は、ガス充填装置1を備えている。ガス充填装置1は、第1ガス供給経路としての第1ガス供給管路7(および第1充填ホース25A)と、第2ガス供給経路としての第2ガス供給管路8(および第2充填ホース25B)と、制御器としての総合制御盤9とを備えている。第1ガス供給管路7は、多段蓄圧器2から第1車両51に搭載された第1被充填タンク53に水素ガスを供給する。第2ガス供給管路8は、多段蓄圧器2から第1車両51とは別の第2車両52に搭載された第2被充填タンク54に水素ガスを供給する。多段蓄圧器2には、燃料ガスとなる水素ガスが蓄圧されている。
【0063】
多段蓄圧器2は、複数の蓄圧器2A,2B,2Cにより構成され、かつ、第1ガス供給管路7と第2ガス供給管路8との両方に接続されている。即ち、多段蓄圧器2は、第1ガス供給管路7と第2ガス供給管路8との共通の蓄圧器である。総合制御盤9は、第1ガス供給管路7を通じて第1被充填タンク53内に供給される水素ガスの圧力上昇率を制御する。また、総合制御盤9は、第2ガス供給管路8を通じて第2被充填タンク54内に供給される水素ガスの圧力上昇率を制御する。この場合、総合制御盤9は、例えば、流量調整弁27A,27Bの開度を調整することにより圧力上昇率を制御することができる。
【0064】
ところで、複数の蓄圧器を共用する複数のディスペンサにおいて、同じ蓄圧器から水素ガス(水素燃料)の供給を受けて複数のタンクに同時に充填を行うときに、それぞれのタンクの圧力(充填圧力)が異なる場合がある。このような場合、圧力が低い側のタンクにしか水素ガスが供給されない傾向となり、圧力が高い側のタンクへの水素ガスの流量が、充填を停止する閾値(流量下限)以下になる可能性がある。これにより、圧力が高い側のタンクへの充填が目標終了圧力(例えば、満タンの圧力)に達する前に終了してしまう可能性がある。このような現象は、蓄圧器と車両のタンクの圧力差が小さくなる充填時、より具体的には、高圧バンク(高圧蓄圧器)による充填を行っているとき、または、直充填経路を通じて充填を行っているときに発生する。
【0065】
ここで、例えば、圧力が高い側のタンクの充填を継続できるように、高圧充填のときに用いるための予備蓄圧器を備える構成とすることが考えられる。しかし、この場合は、予備蓄圧器が必要になる分、予備蓄圧器のない構成と比較してコストが増加する可能性がある。また、例えば、1台目の車両(圧力が高い側の車両)の充填中に2台目の車両(圧力が低い側の車両)の充填を開始するときに、この開始のタイミングを遅らせることが考えられる。しかし、この場合には、2台目の車両の充填開始の操作を行ったときに、この操作を行ったにも拘わらず充填が開始されなくなる。この結果、水素ガスの充填作業を行う作業者に、違和感、不快感(イライラ感)を与える可能性がある。
【0066】
そこで、実施形態では、総合制御盤9は、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53(第1車両51)と第2被充填タンク54(第2車両52)との両方に水素ガスを充填(供給)するときに、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との圧力差に応じて、第1被充填タンク53の圧力上昇率または第2被充填タンク54の圧力上昇率を、基準圧力上昇率(APRR.A,APRR.B)よりも低くする。この場合、基準圧力上昇率(APRR.A,APRR.B)は、例えば、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54とのうちのいずれか一方の被充填タンク53(54)にのみ水素ガスを充填するときの一方の被充填タンク53(54)の圧力上昇率に対応する。
【0067】
図8は、第1の実施形態による第1被充填タンク53の圧力と第2被充填タンク54の圧力の時間変化の一例を示している。
図8中、実線の特性線61は、第1車両51(FCV1)の第1被充填タンク53の圧力の時間変化を表しており、破線の特性線62は、第2車両52(FCV2)の第2被充填タンク54の圧力の時間変化を表している。実施形態では、先行して水素ガスが充填される先行車両を第1車両51とし、第1車両51に対して後から水素ガスが充填される後続車両を第2車両52としている。また、後続車両となる第2車両52の充填が開始されるときの第1被充填タンク53の圧力をPA0とし第2被充填タンク54の圧力をPB0とした場合に、PA0>PB0としている。
【0068】
即ち、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスの充填を開始するときに圧力が高い側の被充填タンク(即ち、高圧側被充填タンク)を第1被充填タンク53としている。また、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスの充填を開始するときに圧力が低い側の被充填タンク(即ち、低圧側被充填タンク)を第2被充填タンク54としている。そして、車両51,52の被充填タンク53,54に対する水素ガスの充填を停止する圧力を目標終了圧力Peとしている。なお、先行車両を第2車両とし、後続車両を第1車両としてもよい。また、高圧側被充填タンクを第2被充填タンクとし、低圧側被充填タンクを第1被充填タンクとしてもよい。また、第1被充填タンク53の目標終了圧力Peと第2被充填タンク54の目標終了圧力Peとが異なる値でもよい。また、
図8中の「△」は、被充填タンク53と接続される蓄圧器2A,2B,2Cの切換えが行われる点に対応する。後述する
図9の「△」についても、同様である。また、被充填タンク54も同様である。
【0069】
第1の実施形態では、総合制御盤9は、高圧側被充填タンク(第1被充填タンク53)が目標終了圧力Peに達する時間に対して所定時間TL遅れて低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)が目標終了圧力Peに達するように、低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)の圧力上昇率APRR2.Bを基準圧力上昇率APRR.Bよりも低くする。即ち、総合制御盤9は、流量調整弁27Bの開度を調整することにより、低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)の圧力上昇率(変化率)を、基準圧力上昇率APRR.Bよりも小さい圧力上昇率APRR2.B(<APRR.B)にする。
【0070】
所定時間TL(遅延時間TL)は、例えば、両方の被充填タンク53,54に水素ガスの充填を行っても、高圧側被充填タンク(第1被充填タンク53)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aに維持できることが可能な時間(例えば、60秒)として設定することができる。より具体的には、所定時間TLは、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを供給するときに、多段蓄圧器2の高圧蓄圧器となる第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給されないような圧力上昇率を得ることができる時間として設定することができる。このような所定時間TLは、予め実験、計算、シミュレーション等により求める。
【0071】
また、実施形態では、総合制御盤9は、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスの充填を開始するときに、第1被充填タンク53内の圧力PA0と第2被充填タンク54内の圧力PB0とに応じて圧力上昇率の変更の有無を判定する。即ち、総合制御盤9は、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Ptよりも大きい場合、低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bよりも低くする。これに対して、総合制御盤9は、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下の場合、第1被充填タンク53の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aのままとし、かつ、第2被充填タンク54の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bにする。
【0072】
所定の値Ptは、両方の被充填タンク53,54に対して基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bで水素ガスの充填を継続できるか否かの判定値として設定することができる。即ち、所定の値Ptは、両方の被充填タンク53,54に対して基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bで水素ガスの充填を行うと、高圧側被充填タンクに対する水素ガスの供給(充填)が完了するまでの時間が長くなるか否かの閾値(境界値)、または、水素ガスの供給(充填)が途中で終了してしまうか否かの閾値(境界値)として設定することができる。具体的には、所定の値Ptは、両方の被充填タンク53,54に対して基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bで水素ガスの充填を行うと、多段蓄圧器2の高圧蓄圧器となる第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給される状態となるか否かの閾値(境界値)として設定することができる。このような所定の値Ptは、予め実験、計算、シミュレーション等により求める。
【0073】
さらに、実施形態では、総合制御盤9は、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54とのうちの一方の被充填タンクとなる低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bから低下させた場合、他方の被充填タンクとなる高圧側被充填タンク(第1被充填タンク53)に対する水素ガスの充填が終了すると、低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bにする。即ち、
図8に示すように、低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)の圧力上昇率は、圧力PBcの点で変化している。この場合、高圧側被充填タンク(第1被充填タンク53)の充填が終了するまでは、基準圧力上昇率APRR.Bよりも傾きが小さい圧力上昇率APRR2.Bで低圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)に水素ガスが充填される。高圧側被充填タンク(第1被充填タンク53)の充填が終了すると、この時点までの圧力上昇率APRR2.Bよりも傾きが大きい基準圧力上昇率APRR.Bで圧側被充填タンク(第2被充填タンク54)に水素ガスが充填される。
【0074】
このように、実施形態の水素燃料供給システム3は、水素ガスが蓄圧された複数(例えば、3つ)の蓄圧器2A,2B,2Cからなる多段蓄圧器2と、多段蓄圧器2から水素ガスの供給を受けて燃料電池自動車(FCV)へ水素ガスを充填するディスペンサユニット5とを備えた設備となっている。ディスペンサユニット5は、多段蓄圧器2を共用する複数(例えば、2つ)のガス供給管路7,8を有しており、この複数のガス供給管路7,8を通じて複数(例えば、2台)の燃料電池自動車(第1車両51、第2車両52)に充填できるよう構成されている。即ち、ディスペンサユニット5は、第1ガス供給管路7により第1車両51に対する水素ガスの充填中に、第2ガス供給管路8により第1車両51に対する水素ガスの充填を開始すること(複数台同時充填)が可能となっている。
【0075】
図8に示すように、先ず、第1車両51の第1被充填タンク53に対する充填が開始される。このとき、予め定められた規格である充填プロトコルにより決定される圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aとする。即ち、総合制御盤9は、充填の開始に伴って基準圧力上昇率APRR.Aを決定する。また、総合制御盤9は、併せて、目標終了圧力Peも決定する。基準圧力上昇率APRR.Aおよび目標終了圧力Peは、充填を開始するときの第1被充填タンク53の初期圧力と外気温(環境温度)とから決定される。
【0076】
このために、総合制御盤9には、充填制御マップ、即ち、初期圧力と外気温と圧力上昇率と終了圧力との対応関係が予め格納されている。総合制御盤9は、充填制御マップを用いて充填開始時の初期圧力と外気温(環境温度)とに対応する圧力上昇率および終了圧力を求め、この求めた圧力上昇率および終了圧力を基準圧力上昇率APRR.Aおよび目標終了圧力Peとする。基準圧力上昇率APRR.Aは、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53にのみ水素ガスを充填するときに設定される圧力上昇率に対応する。総合制御盤9は、第1被充填タンク53の圧力が圧力上昇率APRR.Aで上昇するように流量調整弁27Aの開度を調整する。
【0077】
次に、第2車両52の第2被充填タンク54に対する充填が開始される。これにより、2台同時充填が開始される。このとき、総合制御盤9は、第2被充填タンク54の初期圧力PB0と外気温(環境温度)とから充填制御マップを用いて基準圧力上昇率APRR.Bおよび目標終了圧力Peを算出する。これと共に、総合制御盤9は、それぞれの被充填タンク53,54の圧力を比較する。このときの圧力、即ち、同時充填開始時の第1被充填タンク53の圧力をPA0とし、同時充填開始時の第2被充填タンク54の圧力(=第2被充填タンク54の初期圧力)をPB0とする。実施形態では、第1被充填タンク53の圧力PA0および第2被充填タンクの圧力PB0は、ディスペンサユニット5の吐出側の圧力センサである2次圧力センサ32A,32Bの検出値(または、この検出値から演算される推定値)を用いる。しかし、これに限定されず、例えば、車両側の圧力センサ、例えば、被充填タンクに設けられた圧力センサの検出値(または、この検出値から演算される推定値)を用いてもよい。
【0078】
総合制御盤9は、第1被充填タンク53の圧力PA0と第2被充填タンク54との圧力PB0とに応じて圧力上昇率の変更の有無を判定する。即ち、総合制御盤9は、圧力差(|PA0-PB0|)が所定の圧力Ptよりも大きいか否かを判定する。総合制御盤9は、圧力差(|PA0-PB0|)が所定の圧力Ptよりも大きいと判定した場合、同時充填開始時に圧力の低い側である第2被充填タンク54の圧力上昇率を変更する。この場合、総合制御盤9は、第2被充填タンク54に対して基準圧力上昇率APRR.Bで充填したと仮定した場合に、予め設定された遅延時間TLで充填終了圧力Peとなる圧力PBcを求める。即ち、次の数1式より、圧力PBcを算出する。なお、基準圧力上昇率APRRは、環境温度により決定されるので、APRR.A≒APRR.Bとなる。
【0079】
【0080】
総合制御盤9は、同時充填開始時に圧力の高い側である第1被充填タンク53の充填が終了するまでの時間TA、即ち、第1被充填タンク53に対して基準圧力上昇率APRR.Aで充填を行ったと仮定した場合に第1被充填タンク53の圧力が目標終了圧力Peに達するまでの時間TAを求める。即ち、次の数2式より、時間TAを算出する。
【0081】
【0082】
総合制御盤9は、数2式の時間TAと数1式の圧力PBcから第2被充填タンク54の圧力上昇率APRR2.Bを算出する。具体的には、総合制御盤9は、第1被充填タンク53の充填が終了するまでの時間TAで、第2被充填タンク54の圧力が同時充填開始時の圧力PB0から数1式の圧力PBcとなるような圧力上昇率APRR2.Bを求める。即ち、次の数3式より、圧力上昇率APRR2.Bを算出する。
【0083】
【0084】
総合制御盤9は、第2被充填タンク54の充填を圧力上昇率APRR2.Bで行う。即ち、総合制御盤9は、第2被充填タンク54の圧力が圧力上昇率APRR2.Bで上昇するように流量調整弁27Bの開度を調整する。総合制御盤9は、第1被充填タンク53の充填が終了すると、第2被充填タンク54の充填を基準圧力上昇率APRR.Bで行う。即ち、総合制御盤9は、第1被充填タンク53の充填が終了すると、第2被充填タンク54の圧力が圧力上昇率APRR2.Bで上昇するように流量調整弁27Bの開度を調整する。これにより、第2被充填タンク54の充填を所定時間TL遅らせることができる。
【0085】
所定時間TLは、多段蓄圧器2の高圧蓄圧器である第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給されないように設定する。また、例えば、充填の最後に直充填管路22を通じて直充填を行う構成の場合には、所定時間TLは、直充填管路22から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給されないように設定する。
【0086】
このように、総合制御盤9は、複数台同時充填を行っているときに、充填圧力が低い側の車両となる第2車両52の充填終了時間を、充填圧力が高い側の車両となる第1車両51の充填終了時間から予め設定された時間TL分だけ遅らせる。このとき、総合制御盤9は、第2車両52の充填速度(圧力上昇率)として、予め設定された時間TL分だけ充填終了を遅らせることのできる遅延充填速度(遅延圧力上昇率APRR2.B)を算出する。総合制御盤9は、同時充填中、第2車両52に対して遅延充填速度(遅延圧力上昇率APRR2.B)で充填する。総合制御盤9は、同時充填が終了すると、即ち、第1車両51の充填が終了すると、第2車両52に対して基準充填速度(基準圧力上昇率APRR.B)で充填する。
【0087】
次に、総合制御盤9で行われる制御処理(水素ガスの充填制御処理)について、
図3ないし
図7を参照しつつ説明する。なお、
図3ないし
図7の制御処理は、例えば、総合制御盤9に通電している間、所定の制御周期(例えば、10ms)で繰り返し実行される。また、
図3ないし
図5では、A系統(第1ガス供給管路7)に関する処理を「DSP-A」とすると共にステップ番号の添え字として「(A)」を付しており、B系統(第2ガス供給管路8)に関する処理を「DSP-B」とすると共にステップ番号の添え字として「(B)」を付している。
【0088】
例えば、これから充填を行う車両(第1車両51)がA系統(第1ガス供給管路7側)の停車位置に到着すると、
図3ないし
図5の「DSP-A」に関する処理、即ち、ステップ番号に添え字(A)が付された処理が開始される。また、例えば、これから充填を行う車両(第2車両52)がB系統(第2ガス供給管路8側)の停車位置に到着すると、
図3ないし
図5の「DSP-B」に関する処理、即ち、ステップ番号に添え字(B)が付された処理が開始される。以下、A系統(第1ガス供給管路7側)の処理である「DSP-A」の処理を主として説明する。「DSP-B」に関する処理については、B系統(第2ガス供給管路8側)の処理である点で相違する以外、「DSP-A」の処理と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0089】
S1(A)では、充填ノズル26Aがノズル掛け35Aから外され、充填ノズル26Aが車両51の被充填タンク53の充填口53Aに接続された否かを判定する。S1(A)で、充填ノズル26Aが充填口53Aに接続されたと判定された場合は、S2(A)に進む。S2(A)では、車両51の情報を受信する。即ち、総合制御盤9は、車両51と無線通信等を行い、車両51の情報、例えば、被充填タンク53の容量等の情報を取得する。続くS3(A)では、充填開始の操作がされたか否かを判定する。即ち、S3(A)では、A系統用の充填開始スイッチが操作されたか否かを判定する。S3(A)で、A系統用の充填開始スイッチが操作されたと判定された場合は、S4(A)に進む。
【0090】
S4(A)では、DSP情報を計測する。即ち、S4(A)では、充填制御マップを用いて基準圧力上昇率、目標終了圧力等を求めるために必要な状態量、具体的には、環境温度(外気温)と被充填タンク53の圧力(初期圧力)を計測する。環境温度(外気温)は、外気温センサ36により計測(検出)し、被充填タンク53の圧力(初期圧力)は、2次圧力センサ32A,32Bにより計測(検出)する。この場合、被充填タンク53の圧力(初期圧力)は、S4(A)に続くS5(A)の初期圧測定充填処理を行ったときに計測する。即ち、S5(A)では、被充填タンク53の圧力(初期圧力)を計測するために、被充填タンク53に少量のガス供給を行う。総合制御盤9は、そのときのガス流量と2次圧力センサ32A,32Bの圧力等に基づいて被充填タンク53の圧力(初期圧力)を計測(演算)する。
【0091】
S5(A)に続くS6(A)では、S4(A)およびS5(A)の処理で計測した環境温度および初期圧力に基づいて、基準充填速度に対応する基準圧力上昇率APRR.Aおよび目標終了圧力Peを算出する。この場合、基準圧力上昇率APRR.Aおよび目標終了圧力Peは、充填制御マップ(初期圧力と外気温と圧力上昇率と終了圧力との対応関係)を用いて算出する。S6(A)で基準圧力上昇率APRR.Aおよび目標終了圧力Peを算出したら、
図3の「A」および
図4の「A」を介して、
図4のS7(A)に進む。
図3のS6(A)に続く
図4のS7(A)では、DSP-B(B系統)の充填が開始されているか否かを判定する。S7(A)で「NO」、即ち、DSP-B(B系統)の充填が開始されていないと判定された場合は、S8(A)に進む。S7(A)で「YES」、即ち、DSP-B(B系統)の充填が開始されていると判定された場合は、S21の協調制御の処理に進む。
【0092】
S8(A)では、DSP-A(A系統)による本充填制御を行う。即ち、S8(A)では、「S6(A)で算出された基準圧力上昇率APRR.A」または「S21の協調制御処理(より具体的には、
図6のS32)で算出された圧力上昇率APRR2.A」で被充填タンク53に対する水素ガスの充填を行う。このとき、総合制御盤9は、被充填タンク53に対して基準圧力上昇率APRR.Aまたは圧力上昇率APRR2.Aで水素ガスの充填を行うことができるように、開閉弁16,18,20の開閉、遮断弁28Aの開閉および流量調整弁27Aの開度を制御する。
【0093】
S8(A)に続くS9(A)では、DSP-A(A系統)による充填を終了するか否かを判定する。即ち、S9(A)では、総合制御盤9は、被充填タンク53の圧力が目標終了圧力Peに達したか否かを判定する。ここで、例えば、目標終了圧力Peが最大充填圧力(満タンに対応する圧力)の場合、被充填タンク53の圧力が目標終了圧力Peに達したときに、被充填タンク53と多段蓄圧器2の高圧蓄圧器である第3蓄圧器2Cは、ほぼ同じ圧力(目標終了圧力Pe)になる。このため、総合制御盤9は、例えば、被充填タンク53に対する水素ガスの充填速度が0になった場合、または、0の状態が所定時間継続した場合に、目標終了圧力Peに達したと判定し、充填を終了するようにすることができる。なお、ここでは、目標終了圧力Peに達したか否かで充填終了を判断しているが、これに限らず、例えば、燃料ガスの圧力と燃料ガスの温度とに応じて予め設定された燃料ガスの充填率(SOC)が所定値になった場合に、充填終了したものと判断してもよい。更に、高圧蓄圧器(第3蓄圧器2C)から充填時に被充填タンクが目標終了圧力に近付くと、蓄圧器とタンクの圧力差が小さくなり流量が低下し、流量が流量下限以下または流量下限以下を所定時間継続した場合、充填を終了するか、直充填に移行してもよい。
【0094】
S9(A)で「NO」、即ち、被充填タンク53の圧力が目標終了圧力Peに達していないと判定された場合は、S7(A)の前に戻り、S7(A)以降の処理を繰り返す。一方、S9(A)で「YES」、即ち、被充填タンク53の圧力が目標終了圧力Peに達したと判定された場合は、
図4の「C」および
図5の「C」を介して、
図5のS41の協調復帰の処理に進む。そして、後述するS41の協調復帰処理を行ったら、S10(A)に進み、ホース内の脱圧を行う。
【0095】
即ち、S10(A)では、脱圧弁34Aを一時的に開弁して充填ホース25A側の水素ガスを放出し、充填ホース25A内の圧力を減圧する。続くS11(A)では、充填ノズル26Aがノズル掛け35Aに戻されたか否かを判定する。S11(A)で、充填ノズル26Aがノズル掛け35Aに戻されたと判定された場合は、S12(A)に進む。S12(A)では、精算を行う。即ち、総合制御盤9は、充填中に流量計30Aからの流量パルスを積算することにより求めた水素ガス燃料の払出し量(給油量に相当)が支払われたか否かを判定する。S12(A)で、精算がされたと判定された場合には、DSP-Aの処理を終了する。即ち、
図3のDSP-Aの処理の開始を待つ待機状態となる。なお、支払われたか否かについては、外部の精算機(POS等)が判定してもよい。例えば、総合制御盤9は、充填量の情報を通信により精算機へ送信し、精算機から支払われたか否かの情報を受信するようにしてもよい。
【0096】
次に、
図4のS21の処理、即ち、協調制御処理について説明する。
図4のS7(A)で「YES」と判定されると、または、S7(B)で「YES」と判定されると、S21の協調制御処理に進む。
図6は、S21の協調制御処理を示している。S21の処理が開始されると、S22に進む。S22では、充填圧力PA0,PB0を取得する。即ち、S22では、S21に進んだときの第1被充填タンク53の圧力PA0と第2被充填タンク54の圧力PB0を取得する。この圧力PA0,PB0は、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に対する水素ガスの充填(同時充填)を開始するときのそれぞれの被充填タンク53,54の圧力(充填圧力)または現時点での制御目標圧力(同時充填開始時点の目標圧力)である。
【0097】
続くS23では、圧力上昇率APRR.A,APRR.Bを取得する。即ち、S23では、
図3のS6(A)で算出した基準圧力上昇率APRR.AおよびS6(B)で算出した基準圧力上昇率APRR.Bを取得する。続くS24では、第1被充填タンク53の圧力上昇率または第2被充填タンク54の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aまたは基準圧力上昇率APRR.Bから変更するか否かを判定する。即ち、S24では、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差の絶対値(|PA-PB|)が所定の値Ptよりも大きいか否かを判定する。S24で「NO」、即ち、圧力差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下であると判定された場合は、「戻る」に進む。即ち、
図6の「戻る」を介して、
図4のS8(A)およびS8(B)に進む。
【0098】
一方、S24で「YES」、即ち、圧力差(|PA-PB|)が所定の値Ptよりも大きいと判定された場合は、S25に進む。S25では、S22で取得した圧力PA0,PB0を比較する。具体的には、第1被充填タンク53の圧力PA0が第2被充填タンク54の圧力PB0よりも大きいか否かを判定する。S25で「YES」、即ち、第1被充填タンク53の圧力PA0が第2被充填タンク54の圧力PB0よりも大きいと判定された場合は、S26に進む。この場合は、第1被充填タンク53が高圧側被充填タンクとなり、第2被充填タンク54が低圧側被充填タンクとなる。そして、S26からS28の処理で、第2被充填タンク54の圧力上昇率APRR2.Bを算出する。
【0099】
即ち、S26では、前述の数1式より、第2被充填タンク54に対して基準圧力上昇率APRR.Bで充填したと仮定した場合に、予め設定された遅延時間TLで充填終了圧力Peとなる圧力PBcを求める。続くS27では、前述の数2式より、第1被充填タンク53の充填が終了するまでの時間TA、即ち、第1被充填タンク53に対して基準圧力上昇率APRR.Aで充填を行った場合に第1被充填タンク53の圧力が目標終了圧力Peに達するまでの時間TAを求める。続くS28では、前述の数3式より、第2被充填タンク54の圧力上昇率APRR2.B、即ち、時間TAで第2被充填タンク54の圧力が同時充填開始時の圧力PB0から圧力PBcとなるような圧力上昇率APRR2.Bを算出する。続くS29では、第2被充填タンク54の圧力上昇率を、基準圧力上昇率APRR.BからS28で算出した圧力上昇率APRR2.Bに変更し、「戻る」に進む。即ち、
図6の「戻る」を介して、
図4のS8(A)およびS8(B)に進む。
【0100】
一方、S25で「NO」、即ち、第1被充填タンク53の圧力PA0が第2被充填タンク54の圧力PB0以下であると判定された場合は、S30に進む。なお、S30ないしS33の処理は、高圧側被充填タンクが第2被充填タンク54であり、低圧側被充填タンクが第1被充填タンク53である点で相違する以外、S26ないしS29の処理と同様である。即ち、S30ないしS33の処理は、第1被充填タンク53の圧力上昇率として、基準圧力上昇率APPR.Aよりも低い圧力上昇率APRR2.Aを算出すると共に、第1被充填タンク53の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.AからS32で算出した圧力上昇率APRR2.Aに変更する点で相違する以外、S26ないしS29の処理と同様である。このため、S30ないしS33の処理は省略する。
【0101】
次に、
図5のS41の処理、即ち、協調復帰処理について説明する。協調復帰処理では、
図4のS21の協調制御処理(より具体的には、
図6のS29またはS33)で変更した圧力上昇率を基準圧力上昇率に戻す。即ち、
図4のS9(A)で「YES」と判定されると、または、S9(B)で「YES」と判定されると、
図5のS41の協調復帰処理に進む。
図7は、S41の協調復帰処理を示している。S41の処理が開始されると、S42に進む。S42では、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Ptよりも大きいか否かを判定する。S24で「NO」、即ち、圧力差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下であると判定された場合は、S43からS45の処理を介することなく「戻る」に進む。即ち、
図7の「戻る」を介して、
図5のS10(A)またはS10(B)に進む。この場合、
図4のS9(A)から
図5のS41に進んだときは
図5のS10(A)に進み、
図4のS9(B)から
図5のS41に進んだときは
図5のS10(B)に進む。
【0102】
一方、S42で「YES」、即ち、圧力差(|PA-PB|)が所定の値Ptよりも大きいと判定された場合は、S43に進む。S43では、S22で取得した第1被充填タンク53の圧力PA0が同じくS22で取得した第2被充填タンク54の圧力PB0よりも大きいか否かを判定する。S43で「YES」と判定された場合は、S44で第2被充填タンク54の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bに戻し、「戻る」に進む。これにより、圧力上昇率APRR2.Bで充填中の第2被充填タンク54の圧力上昇率が基準圧力上昇率APRR.Bとなり、この基準圧力上昇率APRR.Bで第2被充填タンク54に対する充填が継続される。S43で「NO」と判定された場合は、S45で第1被充填タンク53の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aに戻し、「戻る」に進む。これにより、圧力上昇率APRR2.Aで充填中の第1被充填タンク53の圧力上昇率が基準圧力上昇率APRR.Aとなり、この基準圧力上昇率APRR.Aで第1被充填タンク53に対する充填が継続される。
【0103】
以上のように、第1の実施形態によれば、総合制御盤9は、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを充填するときに、第1被充填タンク53の圧力PA0と第2被充填タンク54の圧力PB0の差に応じて、第1被充填タンク53の圧力上昇率または第2被充填タンク54の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bよりも低くする。このため、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを充填するときに、高圧側の被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)に対する水素ガスの充填が完了するまでの時間が長くなること、または、水素ガスの充填が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【0104】
即ち、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを充填するときに、例えば、第1被充填タンク53の圧力と第2被充填タンク54の圧力との差が大きく、かつ、高圧側の被充填タンクの圧力と多段蓄圧器2の圧力との差が小さい場合を考える。このような場合、高圧側の被充填タンクに対して水素ガスが充填されにくくなり、高圧側の被充填タンクの圧力が上昇しにくくなる可能性がある。より詳しくは、高圧側の被充填タンクの圧力と多段蓄圧器2の高圧蓄圧器である第3蓄圧器2Cの圧力との差が小さい場合に、この第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを供給すると、高圧側の被充填タンクに対して水素ガスが充填されにくくなり、高圧側の被充填タンクの圧力が上昇しにくくなる可能性がある。これにより、高圧側の被充填タンクに対する水素ガスの充填が完了するまでの時間が長くなる、または、水素ガスの充填が途中で終了してしまう可能性がある。
【0105】
そこで、第1の実施形態では、
図8に示すように、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを充填するときに、低圧側の被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bよりも低くする(APRR2.Bにする)。これにより、高圧側の被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aに維持しつつ水素ガスの充填を継続できるようにしている。この場合、
図8に蓄圧器2A,2B,2Cの切換え点を「△」で示すように、高圧蓄圧器となる第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給されないようにしている。
【0106】
即ち、第1の実施形態では、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)が目標終了圧力Peに達してから所定時間TL後に低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)が目標終了圧力Peに達するようにしている。そして、所定時間TLを、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aに維持できることが可能な時間に設定している。換言すれば、所定時間TLは、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)が目標終了圧力Peに近付いたときに多段蓄圧器2の第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが充填されないような時間として設定している。
【0107】
このため、高圧側の被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)に対する水素ガスの充填が完了するまでの時間が長くなること、または、水素ガスの充填が途中で終了してしまうことを抑制できる。また、第1の実施形態では、予備蓄圧器が必要ないため、コストを低減できる。また、第1の実施形態では、充填開始の操作を行っても充填が開始されないことがない(充填しない状態で待たせることがない)。このため、水素ガスの充填作業を行う作業者に違和感、不快感(イライラ感)を与えることを抑制できる。さらに、低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)への充填の遅延を必要最小限に留めることができ、充填時間を無駄に遅延することを抑制できる。
【0108】
第1の実施形態では、基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bは、多段蓄圧器2から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54とのうちのいずれか一方の被充填タンク53(54)にのみ水素ガスを充填するときの圧力上昇率としている。このため、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスを充填するときに、低圧側の被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率APRR2.Bは、多段蓄圧器2から第2被充填タンク54にのみ水素ガスを充填するときの基準圧力上昇率APRR.Bよりも低くなる。
【0109】
第1の実施形態では、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)の充填が終了すると低圧側の被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bにする。このため、低圧側の被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率を低下させたまま(APRR2.Bとしたまま)の場合と比較して、低圧側の被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)に対する水素ガスの供給が終了する時間を短縮できる。
【0110】
第1の実施形態では、圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くするか否かを、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力とに応じて判定する。このため、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Ptよりも大きい場合は、低圧側の被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることができる。これに対して、第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下の場合は、第1被充填タンク53の圧力上昇率および第2被充填タンク54の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bのままにできる。
【0111】
次に、
図9は、第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、高圧側の被充填タンクが第1所定圧力に達したときに低圧側の被充填タンクの圧力が第1所定圧力よりも第2所定圧力低くなるように、低圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることにある。なお、第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図9に示すように、第2の実施形態では、2台同時充填が開始されると、総合制御盤9は、同時充填開始時に圧力の高い側である第1被充填タンク53が予め設定された第1所定圧力PA1に達する充填時間TA1を求める。即ち、次の数4式より、充填時間TA1を算出する。
【0113】
【0114】
総合制御盤9は、同時充填開始時に圧力の低い側である第2被充填タンク54の圧力上昇率を、数4式で算出した充填時間TA1後に第1所定圧力PA1よりも第2所定圧力Pd低い圧力PB1(目標圧力PB1ともいう)となるような圧力上昇率APRR2.Bを求める。即ち、次の数5式より、圧力上昇率APRR2.Bを算出する。
【0115】
【0116】
総合制御盤9は、第2被充填タンク54の圧力が目標圧力PB1に達するまで第2被充填タンク54の充填を圧力上昇率APRR2.Bで行う。総合制御盤9は、第2被充填タンク54の圧力が目標圧力PB1に達したら、第2被充填タンク54の充填を基準圧力上昇率APRR.Bで行う。なお、総合制御盤9は、第1被充填タンク53の充填が終了したら、第2被充填タンク54の充填を基準圧力上昇率APRR.Bで行ってもよい。
【0117】
即ち、第2の実施形態では、第2被充填タンク54の充填速度(充填速度)を、基準充填速度(基準圧力上昇率APRR.B)よりも低くして充填を行う。そして、第2被充填タンク54の圧力が目標圧力PB1に達した場合、または、第1被充填タンク53の充填が終了した場合に、第2被充填タンク54の充填速度(充填速度)を基準充填速度(基準圧力上昇率APRR.B)に戻す。
【0118】
これにより、充填の終盤で、第1被充填タンク53と第2被充填タンク54とに第2所定圧力Pdの圧力差を確保する。第1所定圧力PA1および第2所定圧力Pd(即ち、圧力差Pd)は、多段蓄圧器2の高圧蓄圧器である第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給されないように設定する。また、例えば、充填の最後に直充填管路22を通じて直充填を行う構成の場合には、第1所定圧力PA1および第2所定圧力Pd(即ち、圧力差Pd)は、直充填管路22から第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが供給されないように設定する。例えば、第1所定圧力PA1は、第2蓄圧器2Bから第3蓄圧器2Cに切換わる圧力(または、直充填管路22による直充填に切換わる圧力)よりも小さい圧力に設定することができる。また、第2所定圧力Pdは、この圧力差Pdがあれば、低圧側被充填タンクに充填する蓄圧器が第2蓄圧器2Bから第3蓄圧器2Cに切換わる前に高圧側被充填タンクの充填が終了するような圧力に設定することができる。
【0119】
このように、第2の実施形態では、総合制御盤9は、複数台同時充填を行っているときに、充填圧力が高い側の車両となる第1車両51の充填圧力が、予め設定された第1所定圧力PA1となる充填時間TA1を求める。また、総合制御盤9は、充填圧力が低い側の車両となる第2車両52の充填圧力が、充填時間TA1後に第1所定圧力PA1よりも予め設定された圧力差Pdだけ低い圧力PB1となる第2充填速度(圧力上昇率APRR2.B)を求める。総合制御盤9は、同時充填中、第2車両52に対して第2充填速度(圧力上昇率APRR2.B)で充填する。総合制御盤9は、充填時間TA1経過すると、または、第1車両51の充填が終了すると、第2車両52に対して基準充填速度(基準圧力上昇率APRR.B)で充填する。
【0120】
第2の実施形態は、上述の如き充填を行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第2の実施形態では、総合制御盤9は、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)が第1所定圧力PA1に達したときに低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力が第1所定圧力PA1よりも第2所定圧力Pd低くなるように、低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Bよりも低くする。
【0121】
この場合、第1所定圧力PA1および第2所定圧力Pd(圧力差Pd)を、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aに維持できることが可能な圧力に設定している。換言すれば、第1所定圧力PA1および第2所定圧力Pd(圧力差Pd)は、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)が目標終了圧力Peに近付いたときに多段蓄圧器2の第3蓄圧器2Cから第1被充填タンク53と第2被充填タンク54との両方に水素ガスが充填されないような時間として設定している。これにより、第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に、高圧側の被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)に対する水素ガスの充填が完了するまでの時間が長くなること、または、水素ガスの充填が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【0122】
次に、
図10は、第3の実施形態を示している。第3の実施形態の特徴は、高圧側の被充填タンクと低圧側の被充填タンクとが同時に目標終了圧力に達するように、高圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることにある。なお、第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0123】
図10に示すように、第3の実施形態では、2台同時充填が開始されると、総合制御盤9は、同時充填開始時に圧力の低い側である第2被充填タンク54が目標終了圧力Peに達するまでの充填時間TBを求める。即ち、次の数6式より、充填時間TBを算出する。
【0124】
【0125】
総合制御盤9は、同時充填開始時に圧力の高い側である第1被充填タンク53の圧力上昇率を、数6式の充填時間TBで目標終了圧力Peに達するような圧力上昇率APRR2.Aを求める。即ち、次の数7式より、圧力上昇率APRR2.Aを算出する。
【0126】
【0127】
総合制御盤9は、第2被充填タンク54の充填が開始されると、第1被充填タンク53の充填を圧力上昇率APRR2.Aで行う。総合制御盤9は、第2被充填タンク54の充填を基準圧力上昇率APRR.Bで行う。これにより、総合制御盤9は、第1被充填タンク53の圧力と第2被充填タンク54の圧力とを目標終了圧力Peに同時に達するようにでき、かつ、同時に充填を終了することができる。このような同時終了制御により、多段蓄圧器2と被充填タンク53,54の圧力差が小さくなる充填、即ち、高圧蓄圧器となる第3蓄圧器2Cによる充填を、ほぼ同一の充填圧力で行うことができる。また、充填の最後に直充填管路22を通じて直充填を行う構成の場合には、直充填管路22からの直充填を、ほぼ同一の充填圧力で行うことができる。そして、充填圧力差を低減できるため、2台の車両51,52(2つの被充填タンク53,54)に対して均等に充填できる。
【0128】
このように、第3の実施形態では、総合制御盤9は、複数台同時充填を行っているときに、充填圧力が高い側の車両となる第1車両51の充填速度(圧力上昇率)として、充填圧力が低い側の車両となる第2車両52と第1車両51との充填が同時終了するような充填速度(圧力上昇率APRR2.A)を求める。総合制御盤9は、同時充填中、第1車両51に対して求めた充填速度(圧力上昇率APRR2.A)で充填し、第2車両52に対して基準充填速度(基準圧力上昇率APRR.B)で充填する。
【0129】
第3の実施形態は、上述の如き充填を行うもので、その基本的作用については、上述した第1の実施形態および第2の実施形態によるものと格別差異はない。特に、第3の実施形態では、総合制御盤9は、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)と低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)とが同時に目標終了圧力Peに達するように、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aよりも低くする。
【0130】
このため、第3の実施形態では、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)と低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)とが同時に目標終了圧力に達する。これにより、充填の終盤に、高圧蓄圧器となる第3蓄圧器2Cから高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)と低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)との両方に対して水素ガスの充填が行われるときに、ほぼ同じ圧力で充填を行うことができる。即ち、2台の車両51,52(2つの被充填タンク53,54)に対して均等に充填できる。
【0131】
なお、前述の第1の実施形態および第2の実施形態では、同時充填を開始するときの第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下の場合、第1被充填タンク53の圧力上昇率および第2被充填タンク54の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.A,APRR.Bにする場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、同時充填を開始するときの第1被充填タンク53内の圧力と第2被充填タンク54内の圧力との差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下の場合に、第3の実施形態のようにしてもよい。
【0132】
即ち、圧力差(|PA-PB|)が所定の値Pt以下の場合に、総合制御盤9は、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)と低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)とが同時に目標終了圧力Peに達するように、高圧側被充填タンク(例えば、第1被充填タンク53)の圧力上昇率を基準圧力上昇率APRR.Aよりも低くしてもよい。この場合には、圧力上昇率の調整幅(圧力上昇率を低くする程度)を小さくでき、かつ、高圧側被充填タンクと低圧側被充填タンクとに対してほぼ均等に水素ガスを供給できる。
【0133】
また、第1の実施形態ないし第3の実施形態では、同時充填の開始時点から圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くする構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、
図11に示す変形例のように、同時充填の開始から所定時間Ts経過した時点でそれぞれの被充填タンク53,54の圧力PA0,PB0を計測し、この時点から低圧側被充填タンク(例えば、第2被充填タンク54)の圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くしてもよい。即ち、圧力上昇率の変更するタイミングを所定時間Ts遅らせてもよい。これにより、充填初期の圧力上昇率を既定(基準圧力上昇率)の状態にでき、水素ガスの温度(プレクール温度)を規定温度(被充填タンクの温度の過上昇を抑制できる温度)に維持できる。
【0134】
即ち、圧力上昇率を低くすると、冷却器29(熱交換器29A,29B)にて冷やされる水素ガスの量が減り、車両に供給される水素ガスの温度が規定温度まで冷えない場合がある。例えば、圧力上昇率を低くすると、本充填開始30秒後までに水素ガスの温度が規定温度まで冷えない場合がある。これに対して、同時充填の開始から所定時間Ts経過後に圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くする場合には、被充填タンクに供給(充填)される水素ガスの温度を規定温度まで冷やすことができる。
図11に示す変形例は、第2の実施形態で圧力上昇率の変更タイミングを所定時間Ts遅らせた(具体的には、高圧側被充填タンクが所定圧力PA1に達したときに、低圧側被充填タンクが高圧側被充填タンクの圧力に対しPd低い所定圧力PB1となるよう遅らせる)場合を示しているが、第1の実施形態および第3の実施形態についても、同様に遅らせることができる。
【0135】
また、第1実施形態では、
図6のS22で取得する被充填タンク53,54の圧力PA0,PB0、即ち、基準圧力上昇率よりも低くする圧力上昇率の算出を行うときに用いる圧力として、計測値、即ち、圧力センサ(より具体的には、2次圧力センサ32A,32B)の検出値を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、総合制御盤9で算出される制御目標値、または、センサ値から検出される推定値等を用いてもよい。また、被充填タンクの圧力(充填圧力)は、ディスペンサユニットの出口側の圧力を用いてもよいし、被充填タンク内の圧力(燃料電池自動車の容器圧力)を用いてもよい。このことは、第2の実施形態、第3の実施形態、変形例でも同様である。
【0136】
各実施形態および変形例では、第1被充填タンク53または第2被充填タンク54の圧力上昇率を低くする。この低くする圧力上昇率は、同時充填を開始するとき、または、圧力上昇率を変更するときの被充填タンク53,54の圧力PA0,PB0を用いて算出する。このとき、算出される圧力上昇率によっては、水素ガスの充填速度が予め設定された充填を停止する閾値(下限充填速度)よりも小さくなる可能性がある。そこで、例えば、算出された圧力上昇率(充填速度)が、充填を停止する閾値(下限充填速度)よりも小さくなる場合には、閾値(下限充填速度)を算出された圧力上昇率よりも低い別の閾値(下限充填速度)にする。これにより、水素ガスの充填を継続できる。
【0137】
また、算出された圧力上昇率によっては、予め定められた規格である充填プロトコルにより決定される当初の圧力上昇率(充填速度)、即ち、基準圧力上昇率(基準充填速度)以上になる可能性もある。この場合は、圧力上昇率(充填速度)を変更しなくてもよい。例えば、基準圧力上昇率(基準充填速度)としてもよい。さらに、同時充填開始時に第1被充填タンクと第2被充填タンクとのうちの少なくともいずれか一方の被充填タンクの圧力が、予め設定された充填圧力以上の場合、充填速度の変更を行わないようにしてもよい。
【0138】
各実施形態および変形例では、車両51,52の被充填タンク53,54に圧縮された水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、車両以外の被充填タンク(タンク、容器等)に水素ガスを充填するときに用いることもできる。また、水素ガス充填装置1のディスペンサユニット5を、他の場所に水素ガスを給送するための管路(水素給送管路)の途中に設置してもよい。さらに、燃料ガスとして水素ガスを例に挙げて説明したが、天然ガス(NG)、プロパンガス(LPG)等の水素ガス以外の燃料ガスを用いる構成(ガス充填装置)としてもよい。
【0139】
各実施形態および変形例では、複数のガス供給経路として、第1ガス供給管路7と第2ガス供給管路8とを備える構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、3つ以上のガス供給経路を備える構成としてもよい。また、各実施形態および変形例では、3つの蓄圧器2A,2B,2Cにより構成された多段蓄圧器2を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、多段蓄圧器は、2つの蓄圧器により構成してもよいし、4つ以上の蓄圧器により構成してもよい。さらに、多段蓄圧器に代えて、1つの蓄圧器を備える構成、即ち、1つの蓄圧器を複数のガス供給経路(例えば、第1ガス供給経路、第2ガス供給経路)に接続させた構成としてもよい。
【0140】
各実施形態および変形例は例示であり、異なる実施形態および変形例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0141】
以上説明した実施形態および変形例に基づくガス充填装置として、例えば下記に述べる態様のものが考えられる。
【0142】
第1の態様としては、燃料ガスが蓄圧された蓄圧器から第1被充填タンクに燃料ガスを供給する第1ガス供給経路と、前記蓄圧器から第2被充填タンクに燃料ガスを供給する第2ガス供給経路と、前記第1ガス供給経路を通じて前記第1被充填タンク内に供給される燃料ガスの圧力上昇率を制御し、前記第2ガス供給経路を通じて前記第2被充填タンク内に供給される燃料ガスの圧力上昇率を制御する制御器と、を備えたガス充填装置において、前記制御器は、前記蓄圧器から前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの圧力差に応じて、前記第1被充填タンクの圧力上昇率または前記第2被充填タンクの圧力上昇率を、基準圧力上昇率よりも低くする。
【0143】
この第1の態様によれば、蓄圧器から第1被充填タンク(例えば、第1車両に搭載された第1被充填タンク)と第2被充填タンク(例えば、第1車両とは別の第2車両に搭載された第2被充填タンク)との両方に燃料ガスを供給するときに、高圧側の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が完了するまでの時間が長くなること、または、燃料ガスの供給が途中で終了してしまうことを抑制できる。即ち、蓄圧器から第1被充填タンクと第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、例えば、第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力との差が大きく、かつ、高圧側の被充填タンクの圧力と蓄圧器の圧力との差が小さい場合を考える。このような場合、高圧側の被充填タンクに対して燃料ガスが供給されにくくなり、高圧側の被充填タンクの圧力が上昇しにくくなる可能性がある。これにより、高圧側の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が完了するまでの時間が長くなる、または、燃料ガスの供給が途中で終了してしまう可能性がある。そこで、蓄圧器から第1被充填タンクと第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、第1被充填タンクの圧力上昇率または第2被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くする。このため、例えば、低圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることにより、高圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率に維持しつつ燃料ガスの供給を継続できる。この結果、高圧側の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が完了するまでの時間が長くなること、または、燃料ガスの供給が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【0144】
第2の態様としては、第1の態様において、前記基準圧力上昇率は、前記蓄圧器から前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとのうちのいずれか一方の被充填タンクにのみ燃料ガスを供給するときの前記一方の被充填タンクの圧力上昇率である。
【0145】
この第2の態様によれば、蓄圧器から第1被充填タンクと第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、第1被充填タンクの圧力上昇率または第2被充填タンクの圧力上昇率を、いずれか一方の被充填タンクにのみ燃料ガスを供給するときの圧力上昇率(基準圧力上昇率:単独で充填する場合の上昇率)よりも低くすることができる。
【0146】
第3の態様としては、第1の態様または第2の態様において、前記制御器は、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとのうちの一方の被充填タンクの圧力上昇率を前記基準圧力上昇率から低下させた場合、他方の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が終了すると、前記一方の被充填タンクの圧力上昇率を前記基準圧力上昇率にする。
【0147】
この第3の態様によれば、他方の被充填タンクの供給が終了すると一方の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率にするため、一方の被充填タンクの圧力上昇率を低下させたままの場合と比較して、一方の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が終了する時間を短縮できる。
【0148】
第4の態様としては、第1の態様ないし第3の態様のいずれかにおいて、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が高い側の被充填タンクを高圧側被充填タンクとし、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が低い側の被充填タンクを低圧側被充填タンクとした場合に、前記制御器は、前記高圧側被充填タンクが燃料ガスの供給を停止する圧力としての目標終了圧力に達する時間に対して所定時間遅れて前記低圧側被充填タンクが目標終了圧力に達するように、前記低圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くする。
【0149】
この第4の態様によれば、高圧側被充填タンクが目標終了圧力(燃料ガスの供給を停止する圧力)に達してから所定時間後に低圧側被充填タンクが目標終了圧力(燃料ガスの供給を停止する圧力)に達する。このため、所定時間を、例えば、「高圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率に維持できることが可能な時間」に設定することにより、高圧側被充填タンクに対する燃料ガスの供給が完了するまでの時間が長くなること、または、燃料ガスの供給が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【0150】
第5の態様としては、第1の態様ないし第3の態様のいずれかにおいて、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が高い側の被充填タンクを高圧側被充填タンクとし、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が低い側の被充填タンクを低圧側被充填タンクとした場合に、前記制御器は、前記高圧側被充填タンクが第1所定圧力に達したときに前記低圧側被充填タンクの圧力が前記第1所定圧力よりも第2所定圧力低くなるように、前記低圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くする。
【0151】
この第5の態様によれば、高圧側被充填タンクが第1所定圧力に達したときに低圧側被充填タンクの圧力が第1所定圧力よりも第2所定圧力低くなる。このため、第1所定圧力および第2所定圧力を、例えば、「高圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率に維持できることが可能な圧力」に設定することにより、高圧側被充填タンクに対する燃料ガスの供給が完了するまでの時間が長くなること、または、燃料ガスの供給が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【0152】
第6の態様としては、第1の態様または第2の態様において、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が高い側の被充填タンクを高圧側被充填タンクとし、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに圧力が低い側の被充填タンクを低圧側被充填タンクとした場合に、前記制御器は、前記高圧側被充填タンクと前記低圧側被充填タンクとが同時に燃料ガスの供給を停止する圧力としての目標終了圧力に達するように、前記高圧側被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くする。
【0153】
この第6の態様によれば、高圧側被充填タンクと低圧側被充填タンクとが同時に目標終了圧力(燃料ガスの供給を停止する圧力)に達する。このため、例えば、第1被充填タンクの圧力と第2被充填タンクの圧力との差が小さい場合に、高圧側被充填タンクと低圧側被充填タンクとが同時に目標終了圧力に達するようにできる。これにより、圧力上昇率の調整幅(圧力上昇率を低くする程度)を小さくでき、かつ、高圧側被充填タンクと低圧側被充填タンクとに対してほぼ均等に燃料ガスを供給できる。
【0154】
第7の態様としては、第1の態様ないし第6の態様のいずれかにおいて、前記制御器は、前記第1被充填タンクと前記第2被充填タンクとの両方に燃料ガスの供給を開始するときに、前記第1被充填タンク内の圧力と前記第2被充填タンク内の圧力とに応じて圧力上昇率の変更の有無を判定する。
【0155】
この第7の態様によれば、圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くするか否かを、第1被充填タンク内の圧力と第2被充填タンク内の圧力とに応じて判定できる。このため、例えば、第1被充填タンク内の圧力と第2被充填タンク内の圧力との差が所定の値よりも大きい場合に、第1被充填タンクの圧力上昇率または第2被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くし、第1被充填タンク内の圧力と第2被充填タンク内の圧力との差が所定の値以下の場合に、第1被充填タンクの圧力上昇率および第2被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率のままにできる。なお、第1被充填タンク内の圧力と第2被充填タンク内の圧力との差が所定の値以下の場合に、両方の被充填タンクが同時に目標終了圧力に達するように、高圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くしてもよい。
【0156】
第8の態様としては、第1の態様ないし第7の態様のいずれかにおいて、前記蓄圧器は、複数の蓄圧器により構成され、かつ、前記第1ガス供給経路と前記第2ガス供給経路との両方に接続された共通の多段蓄圧器である。
【0157】
この第8の態様によれば、多段蓄圧器から第1被充填タンクと第2被充填タンクとの両方に燃料ガスを供給するときに、「多段蓄圧器の1つの蓄圧器」から「第1被充填タンクと第2被充填タンクとの両方」に燃料ガスが供給されないように、低圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることができる。特に、第1被充填タンクの圧力および第2被充填タンクの圧力が高いとき、換言すれば、両方の被充填タンクの圧力が目標終了圧力に近いときに、多段蓄圧器の複数の蓄圧器のうちの1の蓄圧器(高圧蓄圧器)から第1被充填タンクと第2被充填タンクとの両方に燃料ガスが供給されないように、圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることができる。即ち、低圧側の被充填タンクの圧力上昇率を基準圧力上昇率よりも低くすることにより、1の蓄圧器(高圧蓄圧器)から高圧側の被充填タンクと低圧側の被充填タンクとの両方に燃料ガスが供給されないようにできる。これにより、高圧側の被充填タンクに対する燃料ガスの供給が完了するまでの時間が長くなること、または、燃料ガスの供給が途中で終了してしまうことを抑制できる。
【0158】
なお、上記の実施態様においては、充填対象を第1車両に設けられた第1被充填タンクおよび第2車両に設けられた第2被充填タンクとして説明したが、これに限らず、例えば、第1車両(第2車両)の車体内に第1被充填タンクおよび第2被充填タンク(複数のタンク)が搭載されたものに適用してもよいのはもちろんである。
【0159】
なお、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されず、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0160】
本願は、2021年3月3日付け出願の日本国特許出願第2021-033609号に基づく優先権を主張する。2021年3月3日付け出願の日本国特許出願第2021-033609号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組込まれる。
【符号の説明】
【0161】
1 水素ガス充填装置(ガス充填装置)
2 多段蓄圧器(蓄圧器)
3 水素燃料供給システム
5 ディスペンサユニット
7 第1ガス供給管路(第1ガス供給経路)
8 第2ガス供給管路(第2ガス供給経路)
9 総合制御盤(制御器)
25A 第1充填ホース(第1ガス供給経路)
25B 第2充填ホース(第2ガス供給経路)
51 第1車両
52 第2車両
53 第1被充填タンク
54 第2被充填タンク