(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】磁気変調リンク構造、磁気歯車アセンブリ及び複合モータ
(51)【国際特許分類】
F16H 49/00 20060101AFI20240725BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F16H49/00 A
H02K7/10 A
(21)【出願番号】P 2023509412
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2021109495
(87)【国際公開番号】W WO2022110866
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】202011376814.7
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512306405
【氏名又は名称】グリー エレクトリック アプライアンシーズ インク オブ ズーハイ
【氏名又は名称原語表記】GREE ELECTRIC APPLIANCES, INC. OF ZHUHAI
【住所又は居所原語表記】Qianshan Jinji West Road,Zhuhai, Guangdong, 519070, P.R. CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡 余生
(72)【発明者】
【氏名】陳 彬
(72)【発明者】
【氏名】馬 暁皓
(72)【発明者】
【氏名】李 権鋒
(72)【発明者】
【氏名】桂 鵬千
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155253(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107196484(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 49/00
H02K 7/10
H02K 49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気変調リンク構造であって、
複数の変調ユニット(41)と、複数の接続部と、を含み、前記接続部を介して隣接する2つずつの前記変調ユニット(41)を接続することにより形成され、第1回転子構造(10)と第2回転子構造(30)とにより囲まれた環状隙間(100)内に設けられるように構成され、
前記変調ユニット(41)の前記第1回転子構造(10)に面する側に凹溝構造(411)が形成され、前記凹溝構造(411)の両側のそれぞれに弧状シュー部(412)が形成され、前記弧状シュー部(412)の前記第2回転子構造(30)に面する縁部は、前記弧状シュー部(412)の内部を通る磁力線に平行となるように、円弧状輪郭線
(4121)を有する、ことを特徴とする磁気変調リンク構造。
【請求項2】
各前記変調ユニット(41)はいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、隣接する2つの前記変調ユニット(41)のうち一方の前記変調ユニット(41)の第1側にある前記弧状シュー部(412)と、他方の前記変調ユニット(41)の第2側にある前記弧状シュー部(412)とは同一の前記接続部に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項3】
前記接続部は透磁材料から製造され、同一の前記接続部に接続される隣接する2つの前記弧状シュー部(412)と前記接続部とにより磁気ブリッジ構造が形成され、且つ前記弧状シュー部(412)の前記接続部から離れた一端は前記磁気ブリッジ構造のブリッジヘッド、前記接続部は前記磁気ブリッジ構造のブリッジコアとなる、ことを特徴とする請求項2に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項4】
前記磁気ブリッジ構造のブリッジヘッドの厚さはt1、前記変調ユニット(41)の外周面から前記弧状シュー部(412)のシュー底部までの厚さはt2とされ、且つ前記t1と前記t2は、0.25≦t1/t2≦0.3を満たす、ことを特徴とする請求項3に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項5】
前記磁気ブリッジ構造のブリッジコアの厚さはt3とされ、且つ前記t3はt3≦0.5mmを満たす、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項6】
前記凹溝構造(411)の溝壁面は曲率半径をr1とする第1円弧面であり、前記弧状シュー部(412)の前記第2回転子構造(30)に面する側の表面と、前記接続部の前記第2回転子構造(30)に面する側の表面とが滑らかに移行するように設けられ、円弧移行面が形成され、且つ前記円弧移行面は前記弧状シュー部(412)の内部を通る磁力線に平行に設けられるように前記円弧状輪郭線
(4121)を有し、前記円弧移行面の曲率半径がr2であり、且つ前記r1と前記r2はr2=5×r1を満たす、ことを特徴とする請求項3又は4に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項7】
各前記変調ユニット(41)の第1側と第2側がなす角はa1、隣接する2つの前記変調ユニット(41)のうち一方の前記変調ユニット(41)の第1側と他方の前記変調ユニット(41)の第1側がなす角はa2とされ、且つ前記a1と前記a2は0.4≦a1/a2≦0.5を満たし、且つ前記r1と前記a1は0.2≦r1/a1≦0.3を満たす、ことを特徴とする請求項6に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項8】
前記接続部は非透磁性材料から製造され、前記弧状シュー部(412)の前記接続部から離れた一端の厚さはt4、前記変調ユニット(41)の外周面から前記弧状シュー部(412)のシュー底部までの厚さはt5とされ、且つ前記t4と前記t5は0.25≦t4/t5≦0.3を満たす、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項9】
前記弧状シュー部(412)のシュー表面は曲率半径をr3とする第2円弧面であり、前記凹溝構造(411)の溝壁面は曲率半径をr4とする第3円弧面であり、且つ前記r3と前記r4は、r3=4×r4を満たす、ことを特徴とする請求項8に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項10】
各前記変調ユニット(41)はいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、各前記変調ユニット(41)の第1側と第2側がなす角はa3、各前記変調ユニット(41)の2つの弧状シュー部(412)のシューヘッドがなす角はa4とされ、且つ前記a3と前記a4は0.5≦a3/a4≦0.6を満たし、且つ前記r4と前記a3は0.2≦r4/a3≦0.3を満たす、ことを特徴とする請求項9に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項11】
前記接続部と前記変調ユニット(41)は一体成形される、ことを特徴とする請求項3に記載の磁気変調リンク構造。
【請求項12】
磁気歯車アセンブリであって、
回転軸構造(20)の外周側に外嵌され、外周面に第1磁性素子(11)が設けられるように構成される第1回転子構造(10)と、
前記第1回転子構造(10)の外周側に外嵌され、内周面に第2磁性素子(31)が設けられる第2回転子構造(30)と、
前記第1磁性素子(11)と前記第2磁性素子(31)とにより囲まれた環状隙間(100)内に設けられ、請求項1~4のいずれか1項に記載の磁気変調リンク構造である磁気変調リンク構造(40)と、を含む、ことを特徴とする磁気歯車アセンブリ。
【請求項13】
前記第1回転子構造(10)の回転数が前記磁気変調リンク構造(40)の回転数よりも大きく、前記第2回転子構造(30)の回転数が零である、ことを特徴とする請求項12に記載の磁気歯車アセンブリ。
【請求項14】
前記磁気変調リンク構造(40)と前記第1磁性素子(11)は隙間を空けて設けられ、且つ前記磁気変調リンク構造(40)と前記第2磁性素子(31)は隙間を空けて設けられる、ことを特徴とする請求項12に記載の磁気歯車アセンブリ。
【請求項15】
前記第1磁性素子(11)は複数であり、複数の前記第1磁性素子(11)は前記第1回転子構造(10)の周方向に間隔を空けて設けられ、及び/又は第2磁性素子(31)は複数であり、複数の前記第2磁性素子(31)は前記第2回転子構造(30)の周方向に間隔を空けて設けられる、ことを特徴とする請求項12に記載の磁気歯車アセンブリ。
【請求項16】
請求項12に記載の前記磁気歯車アセンブリを含む、ことを特徴とする複合モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触式伝動装置の技術分野に関し、具体的には、磁気変調リンク構造、磁気歯車アセンブリ及び複合モータに関する。
【0002】
本開示は、出願番号が202011376814.7、出願日が2020年11月30日、発明の名称が「磁気変調リンク構造、磁気歯車アセンブリ及び複合モータ」である中国特許出願を基にして、その優先権を主張しており、以下に、当該中国特許出願の開示内容全体が本開示に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
磁気歯車アセンブリは、一般に、内回転子、磁気変調リング、及び外回転子を含み、そのうち、内回転子の外周面と外回転子の内周面のいずれにも永久磁石が設けられている。磁気変調リングは複数の鉄心を等間隔に組み立てて環状構造となるが、従来の磁気変調リングでの鉄心が略矩形構造であり、略矩形構造の磁気変調リングの磁場変調作用には限りがある。しかも鉄心間での磁束漏れが深刻であり、その結果として磁気歯車アセンブリの出力トルクが低下してしまう。また、磁気変調リングの加工製作過程において、隣接する2つの略矩形の鉄心の間に接続の役割を果たす磁気ブリッジを追加する必要があるが、上記の磁気ブリッジはその構造が合理的でないため、磁束漏れの程度が深刻であり、磁気歯車アセンブリの出力トルクの更なる低下を招くことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の主な目的は、従来技術における、磁気変調リンクでの鉄心が略矩形構造であり、略矩形構造の磁気変調リンクの磁場変調作用に限りがあり、しかも鉄心間での磁束漏れが深刻であり、その結果として磁気歯車アセンブリの出力トルクが低下してしまうという問題を解決する磁気変調リンク構造、磁気歯車アセンブリ及び複合モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を実現するために、本開示の一態様によれば、複数の変調ユニットと、複数の接続部と、を含み、接続部を介して隣接する2つずつの変調ユニットを接続することにより形成され、第1回転子構造と第2回転子構造とにより囲まれた環状隙間内に設けられ、
変調ユニットの第1回転子構造に面する側に凹溝構造が形成され、凹溝構造の両側のそれぞれに弧状シュー部が形成され、前記弧状シュー部の前記第2回転子構造に面する縁部は、前記弧状シュー部(412)の内部を通る磁力線に平行となるように、円弧状輪郭線を有する磁気変調リンク構造を提供する。
【0006】
いくつかの実施例では、隣接する弧状シュー部は接続部を介して接続される。
【0007】
いくつかの実施例では、接続部は透磁材料から製造され、隣接する2つの弧状シュー部と接続部とにより磁気ブリッジ構造が形成され、且つ弧状シュー部の接続部から離れた一端は磁気ブリッジ構造のブリッジヘッド、接続部は磁気ブリッジ構造のブリッジコアとなる。
【0008】
いくつかの実施例では、磁気ブリッジ構造のブリッジヘッドの厚さはt1、変調ユニットの外周面から弧状シュー部のシュー底部までの厚さはt2とされ、且つt1とt2は0.25≦t1/t2≦0.3を満たす。
【0009】
いくつかの実施例では、磁気ブリッジ構造のブリッジコアの厚さはt3とされ、且つt3はt3≦0.5mmを満たす。
【0010】
いくつかの実施例では、凹溝構造の溝壁面は曲率半径をr1とする第1円弧面であり、弧状シュー部の第2回転子構造に面する側の表面と、接続部の第2回転子構造に面する側の表面とが滑らかに移行するように設けられ、円弧移行面が形成され、且つ円弧移行面の円弧状輪郭線が円弧移行面の内部を通る磁力線に平行に設けられ、円弧移行面の曲率半径がr2であり、且つr1とr2はr2=5×r1を満たす。
【0011】
いくつかの実施例では、各変調ユニットはいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、各変調ユニットの第1側と第2側がなす角はa1、隣接する2つの変調ユニットのうち一方の変調ユニットの第1側と他方の変調ユニットの第1側がなす角はa2とされ、且つa1とa2は0.4≦a1/a2≦0.5を満たし、且つr1とa1は0.2≦r1/a1≦0.3を満たす。
【0012】
いくつかの実施例では、接続部は非透磁性材料から製造され、弧状シュー部の接続部から離れた一端の厚さはt4、変調ユニットの外周面から弧状シュー部のシュー底部までの厚さはt5とされ、且つt4とt5は0.25≦t4/t5≦0.3を満たす。
【0013】
いくつかの実施例では、弧状シュー部のシュー表面は曲率半径をr3とする第2円弧面であり、凹溝構造の溝壁面は曲率半径をr4とする第3円弧面であり、且つr3とr4はr3=4×r4を満たす。
【0014】
いくつかの実施例では、各変調ユニットはいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、各変調ユニットの第1側と第2側がなす角はa3、各変調ユニットの2つの弧状シュー部のシューヘッドがなす角はa4とされ、且つa3とa4は0.5≦a3/a4≦0.6を満たし、且つr4とa3は0.2≦r4/a3≦0.3を満たす。
【0015】
いくつかの実施例では、接続部と変調ユニットは一体成形される。
【0016】
本開示の別の態様によれば、回転軸構造の外周側に外嵌され、外周面に第1磁性素子が設けられる第1回転子構造と、第1回転子構造の外周側に外嵌され、内周面に第2磁性素子が設けられる第2回転子構造と、第1磁性素子と第2磁性素子とにより囲まれた環状隙間内に設けられ、上記の磁気変調リンク構造である磁気変調リンク構造と、を含む磁気歯車アセンブリを提供する。
【0017】
いくつかの実施例では、第1回転子構造の回転数が磁気変調リンク構造の回転数よりも大きく、第2回転子構造の回転数が零である。
【0018】
いくつかの実施例では、磁気変調リンク構造と第1磁性素子は隙間を空けて設けられ、且つ磁気変調リンク構造と第2磁性素子は隙間を空けて設けられる。
【0019】
いくつかの実施例では、第1磁性素子は複数であり、複数の第1磁性素子は第1回転子構造の周方向に間隔を空けて設けられ、及び/又は第2磁性素子は複数であり、複数の第2磁性素子は第2回転子構造の周方向に間隔を空けて設けられる。
【0020】
本開示の別の態様によれば、磁気歯車アセンブリを含む複合モータであって、磁気歯車アセンブリは上記の磁気歯車アセンブリである複合モータを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の技術的解決手段によれば、変調ユニットに凹溝構造と2つの弧状シュー部を付与するように変調ユニットの構造を変更することによって、磁気歯車アセンブリの運転中、凹溝構造は変調ユニットの間での磁束密度高調波の変化の度合を効果的に低下させることができ、それにより渦電流損を可能な限り減少させ、また、弧状シュー部の内部を通る磁力線に可能な限り平行となるように弧状シュー部の縁部が円弧状輪郭線を有することによって、可能な限り多くの磁力線がスムーズに通過することを確保し、隣接する2つの変調ユニット間での磁束漏れを効果的に低下させ、それにより磁気歯車アセンブリの出力トルクを大幅に向上させる。
【0022】
本開示の一部となる明細書の図面は本開示をさらに理解するために提供されるものであり、本開示の例示的な実施例及びその説明は本開示を解釈するものであり、本開示を不適に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示に係る任意選択的な実施例の磁気歯車アセンブリが回転軸構造に取り付けられたときの構造概略図を示す。
【
図2】
図1における磁気歯車アセンブリの磁気変調リンク構造の概略図を示し、該図においては、接続部と変調ユニットが一体成形されている。
【
図3】
図1における磁気歯車アセンブリの磁気変調リンク構造の概略図を示し、該図においては、非透磁材料から製造される接続部が省略されている。
【
図4】
図1における磁気歯車アセンブリの出力トルクのt1/t2に伴う変化の曲線を示す。
【
図5】
図1における磁気歯車アセンブリの出力トルクのa1/a2に伴う変化の曲線を示す。
【
図6】
図1における磁気歯車アセンブリの渦電流損のr1/a1に伴う変化の曲線を示す。
【
図7】
図1における磁気歯車アセンブリの出力トルクのr1/a1に伴う変化の曲線を示す。
【
図8】本開示に係る任意選択的な実施例の磁気ブリッジ構造と従来の磁気ブリッジ構造の出力トルクの比較図を示す。
【
図9】本開示に係る任意選択的な実施例の磁気歯車アセンブリの磁力線の磁気変調リンク構造における分布を示す。
【
図10】インナーエアギャップでの径方向磁束密度高調波の分布の比較を示す。
【
図11】インナーエアギャップでの接線方向磁束密度高調波の分布の比較を示す。
【
図12】本開示に係る任意選択的な実施例の磁気変調リンク構造と従来の磁気変調リンク構造の出力トルクの比較図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本開示の実施例における技術的解決手段について、本開示の実施例における図面を参照しつつ明確かつ十分に説明するが、もちろん、説明される実施例は本開示の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。実際には、以下の少なくとも1つの例示的な実施例の説明は単に例示的なものであり、本開示及びその適用又は使用のいかなる制限としても決して用いられない。本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提として取得した他のすべての実施例は、本開示の特許範囲に属する。
【0025】
従来技術における、磁気変調リンクでの鉄心が略矩形構造であり、略矩形構造の磁気変調リンクの磁場変調作用に限りがあり、しかも鉄心間での磁束漏れが深刻であり、磁気歯車アセンブリの出力トルクが低下してしまうという問題を解決し、本開示は、磁気変調リンク構造、磁気歯車アセンブリ及び複合モータを提供し、複合モータは磁気歯車アセンブリを含み、磁気歯車アセンブリは上記磁気歯車アセンブリ及び下記の磁気歯車アセンブリである。
【0026】
図1に示すように、磁気歯車アセンブリは、第1回転子構造10と、第2回転子構造30と、磁気変調リンク構造40と、を含み、第1回転子構造10は回転軸構造20の外周側に外嵌され、第1回転子構造10の外周面に第1磁性素子11が設けられ、第2回転子構造30は第1回転子構造10の外周側に外嵌され、第2回転子構造30の内周面に第2磁性素子31が設けられ、磁気変調リンク構造40は第1磁性素子11と第2磁性素子31とにより囲まれた環状隙間100内に設けられ、磁気変調リンク構造40は上記磁気変調リンク構造及び下記磁気変調リンク構造である。
【0027】
なお、本開示の実施例では、第1回転子構造10の回転数が磁気変調リンク構造40の回転数よりも大きく、第2回転子構造30の回転数が零である。
【0028】
なお、本開示の実施例では、磁気変調リンク構造40と第1磁性素子11は隙間を空けて設けられ、且つ磁気変調リンク構造40と第2磁性素子31は隙間を空けて設けられる。このようにして、磁気歯車アセンブリが非接触式のトルク伝達を実現することが確保される。
【0029】
図1に示すように、第1磁性素子11は複数であり、複数の第1磁性素子11は第1回転子構造10の周方向に間隔を空けて設けられ、及び/又は第2磁性素子31は複数であり、複数の第2磁性素子31は第2回転子構造30の周方向に間隔を空けて設けられる。
【実施例1】
【0030】
図2に示すように、磁気変調リンク構造は、複数の変調ユニット41を含み、接続部を介して隣接する2つの変調ユニット41を接続することにより形成され、第1回転子構造10と第2回転子構造30とにより囲まれた環状隙間100内に設けられ、変調ユニット41の第1回転子構造10に面する側に凹溝構造411が形成され、凹溝構造411の両側のそれぞれに弧状シュー部412が形成される。
【0031】
変調ユニット41に凹溝構造411と2つの弧状シュー部412を付与するように変調ユニット41の構造を変更することによって、磁気歯車アセンブリの運転中、凹溝構造411は変調ユニット41の間での磁束密度高調波の変化の度合を効果的に低下させることができ、それにより渦電流損を可能な限り減少させ、また、弧状シュー部412の内部を通る磁力線に可能な限り平行となるように弧状シュー部412の縁部が円弧状輪郭線4121を有することによって、可能な限り多くの磁力線がスムーズに通過することを確保し、隣接する2つの変調ユニット41の間での磁束漏れを効果的に低下させ、それにより磁気歯車アセンブリの出力トルクを大幅に向上させる。
【0032】
なお、本実施例では、磁気変調リンク構造の加工製造の難度を低減させるために、任意選択的に、隣接する弧状シュー部412は接続部を介して接続される。また、接続部と変調ユニット41は一体成形される。このようにして、後続の磁気変調リンク構造の積層成形が確保される。
【0033】
図2に示すように、接続部は透磁材料から製造され、隣接する2つの弧状シュー部412と接続部により磁気ブリッジ構造が形成され、且つ弧状シュー部412の接続部から離れた一端は磁気ブリッジ構造のブリッジヘッド、接続部は磁気ブリッジ構造のブリッジコアとなる。磁気ブリッジ構造のブリッジヘッドの厚さはt1、変調ユニット41の外周面から弧状シュー部412のシュー底部までの厚さはt2とされ、且つt1とt2は0.25≦t1/t2≦0.3を満たす。このようにして、ブリッジヘッドの厚さt1と変調ユニット41の外周面から弧状シュー部412のシュー底部までの厚さt2との比を最適化することによって、ブリッジヘッドの厚さt1と変調ユニット41の外周面から弧状シュー部412のシュー底部までの厚さt2との比が小さすぎるため、磁力線をうまくガイドできないことを回避し、また、ブリッジヘッドの厚さt1と変調ユニット41の外周面から弧状シュー部412のシュー底部までの厚さt2との比が大きすぎるため、磁束漏れが生じることを回避できる。
【0034】
図2に示すように、磁気ブリッジ構造のブリッジコアの厚さはt3とされ、且つt3はt3≦0.5mmを満たす。このようにして、磁気ブリッジ構造のブリッジコアが厚すぎるため深刻な磁束漏れが生じることを回避できる。
【0035】
図2に示すように、凹溝構造411の溝壁面は曲率半径をr1とする第1円弧面であり、弧状シュー部412の第2回転子構造30に面する側の表面と、接続部の第2回転子構造30に面する側の表面とが滑らかに移行するように設けられ、円弧移行面が形成され、且つ円弧移行面の円弧状輪郭線
4121は円弧移行面の内部を通る磁力線に平行に設けられ、円弧移行面の曲率半径がr2であり、且つr1とr2はr2=5×r1を満たす。このようにして、可能な限り多くの磁力線が磁気ブリッジ構造をスムーズに通過することを確保し、磁束漏れを可能な限り減少させる。
【0036】
図2に示すように、各変調ユニット41はいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、各変調ユニット41の第1側と第2側がなす角はa1、隣接する2つの変調ユニット41のうち一方の変調ユニット41の第1側と他方の変調ユニット41の第1側がなす角はa2とされ、且つa1とa2は0.4≦a1/a2≦0.5を満たし、且つr1とa1は0.2≦r1/a1≦0.3を満たす。このようにして、変調ユニット41の密度が高すぎるため磁力線をガイドできないことを回避できる。
【実施例2】
【0037】
本実施例では、実施例1との相違点は以下のとおりである。
図3に示すように、接続部は非透磁性材料から製造され、弧状シュー部412の接続部から離れた一端の厚さはt4、変調ユニット41の外周面から弧状シュー部412のシュー底部までの厚さはt5とされ、且つt4とt5は0.25≦t4/t5≦0.3を満たす。このようにして、磁気ブリッジ構造の存在による磁束漏れを可能な限り減少させることに有利であり、それにより磁気歯車アセンブリの出力トルクを可能な限り大きくすることを確保する。
【0038】
なお、本実施例では、各変調ユニット41を接続して磁気変調リンク構造を形成することを容易にするために、非透磁材料から製造された接続部を介して各変調ユニット41を接続することによって、後続の積層成形に有利でありながら、磁気変調リンク構造を取り付けやすくする。
【0039】
図3に示すように、弧状シュー部412のシュー表面は曲率半径をr3とする第2円弧面であり、凹溝構造411の溝壁面は曲率半径をr4とする第3円弧面であり、且つr3とr4はr3=4×r4を満たす。このようにして、弧状シュー部412が磁力線を可能な限りガイドすることを確保し、それにより磁力線が弧状シュー部412をスムーズに通過することを確保する。
【0040】
図3に示すように、各変調ユニット41はいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、各変調ユニット41の第1側と第2側がなす角はa3、各変調ユニット41の2つの弧状シュー部412のシューヘッドがなす角はa4とされ、且つa3とa4は0.5≦a3/a4≦0.6を満たし、且つr4とa3は0.2≦r4/a3≦0.3を満たす。このようにして、磁力線が弧状シュー部412をスムーズに通過することを確保し、それにより磁束漏れを可能な限り減少させ、さらに磁気歯車アセンブリの出力トルクを向上させる。
【0041】
なお、本開示の実施例では、各変調ユニット41はいずれも対向して設けられる第1側と第2側を有し、第1側及び第2側は磁気変調リンク構造の反時計回り方向において定義されてもよく、磁気変調リンク構造の時計回り方向において定義されてもよい。
【0042】
図4には、磁気歯車アセンブリの出力トルクのt1/t2に伴う変化の曲線が示されている。
図4から分かるように、t1/t2=0.2の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはピークとなり、約51Nmであり、t1/t2<0.2の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはt1/t2の比の増大につれて増大し、t1/t2>0.2の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはt1/t2の比の増大につれて減少する。
【0043】
図5には、磁気歯車アセンブリの出力トルクのa1/a2に伴う変化の曲線が示されている。
図5から分かるように、a1/a2<0.4の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはa1/a2の比の増大につれて増大し、0.4≦a1/a2≦0.6の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクのa1/a2に伴う変化の曲線は基本的になだらかであり、a1/a2>0.6の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはa1/a2の比の増大につれて減少する。
【0044】
図6には、磁気歯車アセンブリの渦電流損のr1/a1に伴う変化の曲線が示されている。
図6から分かるように、r1/a1=6の場合、磁気歯車アセンブリの渦電流損は最低であり、r1/a1<6の場合、磁気歯車アセンブリの渦電流損はr1/a1の比の増大につれて減少し、r1/a1>6の場合、磁気歯車アセンブリの渦電流損はr1/a1の比の増大につれて増大する傾向にある。
【0045】
図7には、磁気歯車アセンブリの出力トルクのr1/a1に伴う変化の曲線が示されている。
図7から分かるように、r1/a1≦0.3の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはr1/a1の比の増大につれてなだらかに減少する傾向にあり、r1/a1>0.3の場合、磁気歯車アセンブリの出力トルクはr1/a1の比の増大につれて素早く減少する傾向にあり、且つ後者の傾きが前者の傾きよりも大きい。
【0046】
図8には、実施例1の磁気ブリッジ構造と従来の磁気ブリッジ構造の出力トルクの比較図が示されている。
図8から分かるように、本開示に係る磁気ブリッジによる接続方式は、磁気歯車アセンブリが従来の磁気ブリッジによる接続方式を用いた磁気歯車アセンブリよりも大きな出力トルクを出力することを確保できる。
【0047】
図9には、実施例1の磁気歯車アセンブリの磁力線の、磁気変調リンク構造における分布が示されている。
図9においては、Aは磁力線を示す。
【0048】
図10には、インナーエアギャップでの径方向磁束密度高調波の分布の比較が示されている。
【0049】
図11には、インナーエアギャップでの接線方向磁束密度高調波の分布の比較が示されている。
【0050】
図12には、実施例1の磁気変調リンク構造と従来の磁気変調リンク構造の出力トルクの比較図が示されている。本開示に係る磁気変調リンク構造は、磁気歯車アセンブリが従来の磁気変調リンク構造の磁気歯車アセンブリよりも大きな出力トルクを出力することを確保できる。
【0051】
なお、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されるものであり、本開示に係る例示的な実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用される場合、単数形はまた、文脈で別途明示的に指摘されない限り、複数形も含むことを意図しており、また、「包含する」及び/又は「含む」という用語が本明細書で使用される場合、特徴、ステップ、動作、デバイス、アセンブリ、及び/又はそれらの組み合わせの存在を示すことも理解されるべきである。
【0052】
特に断らない限り、これらの実施例に説明される部品及びステップの相対的な配置、数値式及び数値は、本開示の範囲を制限しない。一方、図面に示された各部分の寸法は、説明を容易にするために、実際の比例関係に基づいて描かれていないことが理解されるべきである。当業者に知られている技術、方法及び装置については、詳細な検討は行われないかもしれないが、適切な場合には、述べた技術、方法及び装置は、特許される明細書の一部とみなされるべきである。本明細書に示され、検討されているすべての例において、任意の具体値は、限定としてではなく、単なる例示的なものとして解釈されるべきである。したがって、例示的な実施例の他の例は、異なる値を有することが可能である。なお、以下の図面において、類似の符号及び文字が類似の項目を示しているので、ある項目が1つの図面で定義されれば、それ以降の図面では、それについてさらに検討する必要はない。
【0053】
説明を容易にするために、ここでは、図に示されているような1つのデバイス又は特徴と他のデバイス又は特徴との空間的位置関係を説明するために、「・・・上にある」、「・・・上方にある」、「・・・上面にある」、「上の」のような空間的相対用語を使用することができる。なお、空間相対用語は、図に記載されたデバイスの方向に加えて、使用又は動作における異なる方向を含むことを意図している。例えば、図面におけるデバイスを反転した場合、「他のデバイス又は構造の上方」又は「他のデバイス又は構造の上」と記載されているデバイスは、それ以降、「他のデバイス又は構造の下方」又は「他のデバイス又は構造の下」と位置づけられる。したがって、例示的な用語「・・・上方にある」は、「・・・上方にある」及び「・・・下方にある」という2つの方向を含むことができる。このデバイスはまた、他の異なる方法で(90度回転又は他の向きで)位置決めされてもよく、ここで使用される空間相対説明について適切に説明されてもよい。
【0054】
なお、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明するためにのみ使用されるものであり、本開示に係る例示的な実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形は、文脈で別途明示的に指摘されない限り、複数形も含むことを意図しており、また、「包含する」及び/又は「含む」という用語が本明細書で使用される場合、特徴、ステップ、動作、デバイス、アセンブリ、及び/又はそれらの組み合わせの存在を示すことも理解されるべきである。
【0055】
なお、本開示の明細書、特許請求の範囲、及び上記の図面における用語「第1」、「第2」などは、特定の順序又は優先順位を記述するために使用されるのではなく、類似の対象を区別するために使用される。このように使用されるデータは、本明細書に説明される本開示の実施形態が、本明細書に図示又は説明されるもの以外の順序で実施されることを可能にするために、適宜交換されてもよいことが理解されるべきである。
【0056】
以上は、本開示の好ましい実施例にすぎず、本開示を限定するものではなく、本開示は、当業者にとって様々な変更及び変更が可能である。本開示の精神及び原則を逸脱することなく行われるいかなる補正、均等置換や改良などは、いずれも本開示の特許範囲に含まれるべきである。