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  • 特許-接着剤組成物、ゴム補強材および物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】接着剤組成物、ゴム補強材および物品
(51)【国際特許分類】
   C09J 109/08 20060101AFI20240725BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240725BHJP
   C08L 9/08 20060101ALI20240725BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240725BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C09J109/08
C09J11/06
C08L9/08
C08K5/13
B60C9/00 A
B60C9/00 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023518530
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2021017129
(87)【国際公開番号】W WO2022124630
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173509
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158503
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,オク ファ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミン ホ
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003572(WO,A1)
【文献】特開2008-303378(JP,A)
【文献】特開平10-053709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
D06M 13/00- 15/715
C08L 9/08,21/02
B60C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然由来酸(acid)、窒素化合物、およびラテックスを含み、
前記自然由来酸は、自然由来のタンニン酸(tannic aicd)を含み、
前記窒素化合物は、アンモニア(NH )、アニリン、トリメチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびエチルアミンからなるグループより選択された1つ以上を含み、
前記ラテックスは、ビニル-ピリジンラテックス(VPラテックス)であり、
ウベローデ粘度計を用いて常温で測定された相対粘度が2.30~3.00の範囲を満たす、接着剤組成物。
【請求項2】
前記ラテックス100重量部を基準にして、前記自然由来酸5~50重量部を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
組成物全体含量100重量%を基準にして、前記自然由来酸を1.0重量%以上含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ラテックス100重量部を基準にして、前記窒素化合物0.5~25重量部を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
組成物全体含量100重量%を基準にして、前記窒素化合物を0.5重量%以上含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
溶媒をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
組成物全体含量100重量%を基準にして、前記溶媒を35重量%以上含む、請求項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
組成物全体含量100重量%を基準にして、前記溶媒を50重量%以上含む、請求項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記溶媒は水を含む、請求項またはに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
繊維を含むローコード(raw cord)と、前記ローコード上に形成されたコーティング層とを含み、
前記コーティング層は請求項1による接着剤組成物を含む、ゴム補強材。
【請求項11】
前記ローコードは、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維、およびガラス繊維からなる群より選択される1以上を含む、請求項10に記載のゴム補強材。
【請求項12】
色差計による測定時、L*値が50~60であり、a*値が4.5~10であり、b*値が10~25である、請求項10に記載のゴム補強材。
【請求項13】
前記ゴム補強材はタイヤ用コード(cord)である、請求項10に記載のゴム補強材。
【請求項14】
請求項10によるゴム補強材を含む物品。
【請求項15】
前記物品がタイヤである、請求項14に記載の物品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2020年12月11日付韓国特許出願第10-2020-0173509号および2021年11月17日付韓国特許出願第10-2021-0158503号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、接着剤組成物、ゴム補強材(例:コード(cord))および物品(例:タイヤ)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ゴム構造物の強度などを補強するために繊維補強材が使用される。例えば、ゴムタイヤには、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維やポリビニルアルコール繊維などが補強材として使用されうる。そして、繊維によっては、ゴムとの接着性が良くない場合もあるため、接着剤を繊維表面にコーティングした後に、ゴムと繊維の接着性を補完することもある。例えば、タイヤコード用ポリエステル繊維(ローコード、raw cord)とタイヤ用ゴムとの間の接着力を向上させるために、ポリエステル繊維に接着剤が塗布される。
【0004】
従来の技術において、前記用途の接着剤にはレゾルシノール-ホルムアルデヒド(Resorcinol-Formaldehyde:RF)またはこれに由来する成分が使用されるのが一般的であった。しかし、フェノール類であるレゾルシノール(Resorcinol)と、発癌物質として知られたホルムアルデヒド(Formaldehyde)を含むRFは、人体に有害であり、RFを含む接着剤廃液に対しては、事後管理と後処理に関する追加の費用が発生することもある。
【0005】
一方、接着剤組成物を繊維補強材上にコーティングする方式としては、浸漬(dipping)や噴射などが考慮されうる。前記方式が適用されたコード製造過程で、接着剤組成物を成す各成分は、組成物に含まれる溶媒内で均一に混合され分散されていなければならない。また、各成分が均一に混合され分散されている組成物が、浸漬や噴射された以降にも繊維補強材(例:ローコード)の表面上に、均一に適正量でコーティングされることが重要である。接着剤組成物を成す成分同士の間で混合が十分に行われないか、溶媒の過剰量の使用などによって組成物の流れが過度に高まれば、接着力が確保されないためである。
【0006】
したがって、人体に対する有害性が低く環境にやさしいながらも、従来技術の製品(接着剤、コードおよび/またはタイヤ)に対比して同等水準以上の物性を提供するのであって、それ以外にも工程上の便宜のような改善点を提供することができる技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願の一つの目的は、人体に対する有害性が低く環境にやさしい接着剤を提供することである。
【0008】
本出願の他の目的は、その用途で従来技術の接着剤に対比して同等水準以上の物性を提供することができる接着剤を提供することである。
【0009】
本出願の他の目的は、接着力に優れた接着剤を提供することである。
【0010】
本出願の他の目的は、接着剤コーティング関連工程で、工程上の便宜を提供することができる接着剤を提供することである。
【0011】
本出願の他の目的は、前記接着剤を用いて製造された補強材(例:コード(cord))およびこれを含む物品(例:タイヤ(tire))を提供することである。
【0012】
本出願の前記目的およびその他の目的は、以下に説明される本出願によって全て解決できる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願によれば、自然由来または天然由来の酸(acid)、窒素化合物、およびラテックスを含み、所定の粘度を満たす接着剤組成物;前記接着剤組成物のコーティング層と繊維コード(cord)とを含むゴム補強材;および前記ゴム補強材を含む物品が提供される。
【0014】
本明細書で、「常温」とは特別に減温または加温が行われていない状態の温度であって、例えば、15~30℃範囲の温度を意味することができる。具体的に、前記温度範囲内で、常温は、17℃以上、19℃以上、21℃以上または23℃以上の温度でありうるのであって、また、29℃以下、または27℃以下の温度でありうる。また、本出願で特別に他に言及しない以上、数値化された特性の評価が行われる温度は、常温でありうる。
【0015】
本明細書で、特別に他に定義しない以上、「固形分含量」とは、組成物、または組成物に含まれる各成分に関する、水分または液体成分(例:溶媒)を蒸発させて残った有効成分(固体形態であることもある)の含量を意味しうる。水分または液体成分(例:溶媒)の蒸発のための条件は、特に制限されないが、例えば、約0.5~3時間にわたって70~100℃範囲の加温(加熱)条件を適用することができる。
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態による、接着剤と、これを用いて製造されたゴム補強材および物品などについて説明する。
【0017】
本出願に関する一例で、本出願は、接着剤組成物に関するものである。前記接着剤組成物は、自然由来の酸(acid)、窒素化合物、およびラテックスを含む。
【0018】
従来の技術で、タイヤ用接着剤組成物は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(Resorcinol-Formaldehyde:RF)成分を含むことが一般的であった。しかし、本出願の発明者は、RF(Resorcinol-Formaldehyde)の使用による環境または人体有害問題を解決するために、自然由来酸を含む接着剤組成物を発明した。自然由来酸成分を含む本出願の接着剤組成物は、RFが使用されていた従来の技術と対比して無害で環境にやさしいだけでなく、後述の実験例で確認されるように、その用途において、従来の技術と対比して同等以上の水準の物性を提供し、工程上の便宜を提供することができるという利点がある。
【0019】
本出願で「自然由来酸(acid)」は人工的に合成された酸(acid)成分と区別するために使用される用語であって、植物および/または微生物に由来した酸、または、植物および/または微生物に由来した物質を含む酸を意味しうる。例えば、前記自然由来酸は、植物の皮、木のこぶ(oak galls)または葉から抽出される成分でありうる。より具体的に、ブラックワトル(Mimosa wattle)(モリシマアカシア; Acacia mollissima)、ケブラチョ(Quebracho)(Schnopsis sp)、およびラジアータパイン(Radiata pine)(Pinus radiate)などといった植物に、相当な量のタンニンが含まれており、このような植物が、自然由来酸を抽出するのに使用される。このような自然由来酸は、例えば、ヒドロキシ基を有する芳香族化合物、即ち、フェノールまたはポリフェノール系化合物でありうる。
【0020】
一つの例示で、前記自然由来酸は、自然由来のタンニン酸(tannic aicd)であるか、これを含むことができる。タンニン酸は、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物であって、ガロール(gallol)単位および/またはカテコール(chatechol)単位を有しうる物質として知られている。そして、このようなタンニン酸は、植物を含む自然に由来した様々の物質が混合されたものであってもよい。
【0021】
前記のような自然由来酸は、ヒドロキシ基を有する芳香族構造を有するので、水素結合および/または疎水性結合を通じて、組成物に適切な凝集を提供することができる。また、後述のように、コードに特有の色相(または色差)を提供することができる。
【0022】
一つの例示で、前記自然由来酸は、後述の図6のような赤外線吸収ピーク特性を有することができる。具体的に、前記自然由来酸は、赤外線分光法による分析の際に、波数1650cm-1以下で吸収ピークを示すものでありうる。
【0023】
図6のように、自然由来のタンニン酸と異なり、合成タンニン酸は波数約1707cm-1で吸収ピークを示し、これはC=O結合に対応するピークである。これはタンニン酸を合成する過程中にC=Oを含む単位が、自然由来のタンニン酸よりも、より多く生成されるためであると考えられる。C=O結合が多い場合、水との親和度が高いため、同一含量の自然由来のタンニン酸を含む接着剤よりも、合成タンニン酸を含む接着剤が、より薄く水っぽいものとなりうる。このことは、後述の粘度特性の確保にとり障害になりうる。また、後述の実施例と比較例3を通じて確認される色差の差も、赤外線吸収ピーク分析により確認される構造上の差によって示されると考えられる。
【0024】
本出願の具体例で、前記接着剤組成物は、ウベローデ粘度計(Ubbelohde viscometer)を用いて常温で測定された相対粘度(RV:relative viscosity)が、2.30以上3.00以下の範囲を満たす。
【0025】
前記「相対粘度」は、基準溶媒粘度(特性)に対する組成物の粘度(特性)比率を意味するものであって、相対粘度の測定時に使用される基準溶媒は、水(例:脱塩水(demineralized water)または純水)でありうる。具体的に、前記相対粘度(RV)は、ウベローデ粘度計の所定目盛区間を前記組成物が通過するまでかかった時間(T)と、同一の大きさの目盛区間を水(例:脱塩水)が通過するまでかかった時間(T)を測定した後、TをTで割ることで計算することができる。同一条件で同一の粘度計によって測定されたTとTによって計算される相対粘度は、無次元の定数として取り扱うことができる。より詳しくは、図1を参照して後述の実験に関連して説明する。
【0026】
具体的に、前記相対粘度の下限は、例えば、2.31以上、2.32以上、2.33以上、2.34以上、2.35以上、2.36以上、2.37以上、2.38以上、2.39以上、2.40以上、2.41以上、2.42以上、2.43以上、2.44以上、2.45以上、2.46以上、2.47以上、2.48以上、2.49以上、2.50以上、2.51以上、2.52以上、2.53以上、2.54以上、2.55以上、2.56以上、2.57以上、2.58以上、2.59以上、2.60以上、2.61以上、2.62以上、2.63以上、2.64以上、2.65以上、2.66以上、2.67以上、2.68以上、2.69以上、2.70以上、2.71以上、2.72以上、2.73以上、2.74以上、2.75以上、2.76以上、2.77以上、2.78以上、2.79以上、2.80以上、2.81以上、2.82以上、2.83以上、2.84以上、2.85以上、2.86以上、2.87以上、2.88以上、2.89以上または2.90以上でありうる。相対粘度が前記範囲未満である場合には、組成物の製造と硬化の過程で形成された低分子量ポリマーが、被着物に転写されながら接着力が低下するという問題があり、それに基づいて、その用途に合う十分な物性(例:機械的強度など)が提供されないことがある。また、相対粘度が前記範囲より低い場合には流れが相対的に大きいため、被着物上に十分なコーティング層が形成され得ないのでありうる。
【0027】
そして、前記組成物の相対粘度の上限は、例えば、2.99以下、2.98以下、2.97以下、2.96以下、2.95以下、2.94以下、2.93以下、2.92以下、2.91以下、または2.90以下でありうるのであり、より具体的には2.89以下、2.88以下、2.87以下、2.86以下、2.85以下、2.84以下、2.83以下、2.82以下、2.81以下、2.80以下、2.79以下、2.78以下、2.77以下、2.76以下、2.75以下、2.74以下、2.73以下、2.72以下、または2.71以下でありうる。相対粘度が前記範囲を超過する場合には、組成物の製造および/または硬化の過程で形成された高分子量ポリマー同士の間の凝集力が大きくなることで、被着物上に接着剤が均一に分布(または塗布)しにくくなるので、接着力が低下するという問題がある。それにより、その用途に合う十分な物性(例:機械的強度など)が提供されないのでありうる。
【0028】
結果的に、前述の相対粘度範囲を満たす接着剤組成物は、下記実験例で示されるように、優れた接着力を提供し、接着剤製造と適用に関する工程性と生産性を改善する。
【0029】
前述の粘度は、例えば、後述の接着剤組成物の成分および含量を適切に調節して得ることができる。
【0030】
一つの例示で、前記組成物は、組成物全体の含量100重量%を基準にして、前記自然由来酸を1.0重量%以上含むことができる。当該含量は、自然由来酸が組成物内で占める固形分の含量を意味することができる。具体的に、前記自然由来酸の含量の下限は、例えば、1.5重量%以上、2.0重量%以上、2.5重量%以上、3.0重量%以上、3.5重量%以上、4.0重量%以上、4.5重量%以上、5.0重量%以上、5.5重量%以上または6.0重量%以上でありうる。そして、その上限は、例えば、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、または5重量%以下でありうる。前記含量を満たす場合、粘着剤が適正水準の粘度と接着力を提供するのに有利である。
【0031】
一つの例示で、前記自然由来酸は、溶媒(水または有機溶媒)に分散された状態で、他の組成物構成成分と混合されうる。この場合、先に説明された全体の組成物の粘度を満たすことができる範囲内で、自然由来酸の成分を分散させる溶媒の含量と種類が決定される。
【0032】
窒素化合物は、タンニン酸を含む組成物の酸度を調節する目的で使用される。具体的に、前記窒素化合物は、タンニン酸を含む組成物の酸度を調節して安定した接着性能を発揮するようにする。
【0033】
窒素化合物の具体的な種類は、前述の窒素化合物の機能に障害にならない水準で選択されうる。例えば、前記窒素化合物は、アンモニア(NH)、アニリン、トリメチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、およびエチルアミンからなるグループより選択された1つ以上を含むことができる。
【0034】
一つの例示で、前記組成物は、組成物全体含量100重量%を基準にして、前記窒素化合物を0.5重量%以上含むことができる。当該含量は、窒素化合物が組成物内で占める固形分含量を意味することができる。具体的に、前記窒素化合物の含量の下限は、例えば、1.0重量%以上、1.5重量%以上、または2.0重量%以上でありうる。そして、その上限は、例えば、5.0重量%以下、4.5重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、または3.0重量%以下でありうる。前記含量を満たす場合、適正な酸度の調節を通じて、安定した接着性能を確保することに有利である。
【0035】
一つの例示で、前記窒素化合物は、溶媒(水または有機溶媒)に分散した状態で、他の組成物の構成成分と混合されうる。この場合、先に説明された全体の組成物の粘度を満たすことができる範囲内で、窒素化合物成分を分散させる溶媒の含量と種類が決定される。
【0036】
ラテックス成分は、組成物の用途を考慮して使用される成分である。具体的に、前記接着剤組成物は、ゴム複合体やゴム補強材のような被着物強化の用途に使用することができ、ラテックスは被着物との親和性、混和性、または接着力を確保することに有利である。場合によって、接着剤組成物に含まれるラテックス成分は、被着物を形成するゴム成分と同一のものを選択することができる。
【0037】
先に説明された、全体の組成物の粘度を満たすことができるといったように、本出願に反しなければ、前記組成物に使用できるラテックスの種類は特に制限されない。
【0038】
一つの例示で、前記ラテックスとしては、天然ゴムラテックス、ビニル-ピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス(Vinyl-Pyridine-Styrene-Butadiene-copolymer Latex)といったビニル-ピリジンラテックス(以下、“VPラテックス”)、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル系共重合体ラテックス、ブチルゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、またはこれらの変性ラテックスなどを使用することができる。変性ラテックスと関連して、ラテックスを変成する方法やラテックスの具体的な種類は制限されない。例えば、ビニル-ピリジン-スチレン-ブタジエン系共重合体をカルボキシル基などで変成した変性ラテックスを使用することができる。
【0039】
下記に説明される全体の組成物の粘度を満たすことができるといったように本出願に反しなければ、市販中のラテックスも使用することができる。例えば、市販中のVPラテックスとして、Denaka社のLM-60、APCOTEX社のVP-150、Nippon A&L社のVB-1099、Closlen社の5218、またはCloslen社の0653などを使用することができる。
【0040】
一つの例示で、前記説明されたラテックスのうちの1つ以上を含むラテックス成分が接着剤組成物に使用されてもよい。
【0041】
一つの例示で、前記ラテックスは、溶媒(水または有機溶媒)に分散した状態で、他の組成物の構成成分と混合されうる。この場合、先に説明された全体の組成物の粘度を満たすことができる範囲内で、ラテックス成分に使用される溶媒の含量と種類が決定される。
【0042】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、組成物の全体含量を基準にして、前記ラテックスを5重量%以上含むことができる。ここで、前記含量は、組成物中にてラテックス固形分が占める含量を意味することができる。具体的に、前記ラテックスの含量の下限は、例えば、6.0重量%以上、7.0重量%以上、8.0重量%以上、9.0重量%以上、10.0重量%以上、11.0重量%以上、12.0重量%以上、13.0重量%以上、14.0重量%以上、または15.0重量%以上でありうるのであり、その上限は、例えば、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、または15重量%以下でありうる。前記範囲を満たす場合、接着剤が使用されるゴム含有被着物に対する親和性、混和性、および/または接着力を確保することに有利である。
【0043】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、前記ラテックス100重量部を基準にして、前記自然由来酸成分5~50重量部を含むことができる。例えば、前記自然由来酸成分の含量の下限は、6重量部以上、7重量部以上、8重量部以上、9重量部以上、10重量部以上、11重量部以上、12重量部以上、13重量部以上、14重量部以上、15重量部以上、16重量部以上、17重量部以上、18重量部以上、19重量部以上、20重量部以上、21重量部以上、22重量部以上、23重量部以上、24重量部以上、25重量部以上、26重量部以上、27重量部以上、28重量部以上、29重量部以上、30重量部以上、31重量部以上、32重量部以上、33重量部以上、34重量部以上、35重量部以上、36重量部以上、37重量部以上、38重量部以上、39重量部以上、または40重量部以上でありうる。そして、前記自然由来酸成分の含量の上限は例えば、49重量部以下、48重量部以下、47重量部以下、46重量部以下、45重量部以下、44重量部以下、43重量部以下、42重量部以下、41重量部以下、40重量部以下、39重量部以下、38重量部以下、37重量部以下、36重量部以下、35重量部以下、34重量部以下、33重量部以下、32重量部以下、31重量部以下、30重量部以下、29重量部以下、28重量部以下、27重量部以下、26重量部以下、25重量部以下、24重量部以下、23重量部以下、22重量部以下、21重量部以下、20重量部以下、19重量部以下、18重量部以下、17重量部以下、16重量部以下、15重量部以下、14重量部以下、13重量部以下、12重量部以下、11重量部以下、または10重量部以下でありうる。前記範囲を満たす場合、安定した接着性能を確保することができ、タイヤコード用接着剤としての適した粘度を有することができる。
【0044】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、前記ラテックス100重量部を基準にして、前記窒素化合物0.5~25重量部を含むことができる。例えば、前記窒素化合物の含量の下限は例えば、1.0重量部以上、1.5重量部以上、2.0重量部以上、2.5重量部以上、3.0重量部以上、3.5重量部以上、4.0重量部以上、4.5重量部以上、5.0重量部以上、5.5重量部以上、6.0重量部以上、6.5重量部以上、7.0重量部以上、7.5重量部以上、8.0重量部以上、8.5重量部以上、9.0重量部以上、9.5重量部以上、10.0重量部以上、10.5重量部以上、11.0重量部以上、11.5重量部以上、12.0重量部以上、12.5重量部以上、13.0重量部以上、13.5重量部以上、14.0重量部以上、14.5重量部以上、15.0重量部以上、15.5重量部以上、16.0重量部以上、16.5重量部以上、17.0重量部以上、17.5重量部以上、18.0重量部以上、18.5重量部以上、19.0重量部以上、19.5重量部以上、または20重量部以上でありうる。そして、前記窒素化合物の含量の上限は例えば、24.5重量部以下、24.0重量部以下、23.5重量部以下、23.0重量部以下、22.5重量部以下、22.0重量部以下、21.5重量部以下、21.0重量部以下、20.5重量部以下、20.0重量部以下、19.5重量部以下、19.0重量部以下、18.5重量部以下、18.0重量部以下、17.5重量部以下、17.0重量部以下、16.5重量部以下、16.0重量部以下、15.5重量部以下、15.0重量部以下、14.5重量部以下、14.0重量部以下、13.5重量部以下、13.0重量部以下、12.5重量部以下、12.0重量部以下、11.5重量部以下、11.0重量部以下、10.5重量部以下、10.0重量部以下、9.5重量部以下、9.0重量部以下、8.5重量部以下、8.0重量部以下、7.5重量部以下、7.0重量部以下、6.5重量部以下、6.0重量部以下、5.5重量部以下、5.0重量部以下、4.5重量部以下、4.0重量部以下、3.5重量部以下、3.0重量部以下、2.5重量部以下、2.0重量部以下、1.5重量部以下、または1.0重量部以下でありうる。前記含量範囲を満たす場合、酸度調節を通じて安定した接着性能を確保することができる。
【0045】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、溶媒をさらに含むことができる。接着剤に含まれる溶媒成分は、固形分として含量が測定されうる、前述の他の成分を除いた成分を意味することができる。例えば、前記溶媒成分は、非-固形分成分と称することができる。
【0046】
前記溶媒は例えば、公知の有機溶媒および水の中から選択される1つ以上を含むことができる。公知の有機溶媒は、特に制限されず、トルエンやエタノールなどを例として挙げることができる。
【0047】
一つの例示で、前記接着剤組成物において溶媒成分は水(water)を含むか水であってもよい。
【0048】
また、本出願の具体例で、人体に対する有害性と引火性を考慮して、前記接着剤組成物は、溶媒成分として有機溶媒(例:トルエンやエタノールなど)を使用せず水を含むことができる。または、前記接着剤組成物の溶媒としては、少量の有機溶媒と共に、過剰量の水を使用することができる。
【0049】
一つの例示で、接着剤組成物の全体の重量を基準にして、前記接着剤組成物中の溶媒の含量は、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、または90重量%以上でありうる。そして、前記溶媒の含量の上限は例えば、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、または50重量%以下でありうる。
【0050】
一つの例示で、前記含量範囲で含まれる溶媒は、水(water)であるか水を含むことができる。
【0051】
また他の例示で、前記溶媒含量の過剰量または大部分を水が占めることができる。例えば、組成物に含まれる溶媒成分含量中の過剰量(例:接着剤組成物の全体の重量を基準にして約35重量%以上または40重量%以上)が水であってもよく、溶媒中の水を除いた残りの残余含量(例:接着剤組成物の全体の重量を基準にして30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下、または5重量%以下)を有機溶媒などが占めることができる。
【0052】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、水系組成物または水性組成物であってもよい。具体的に、前記溶媒は過剰量の水と少量の有機溶媒を含むものであってもよい。または前記溶媒は水でありうる。
【0053】
特に制限されないが、接着剤組成物において溶媒として使用される水は脱塩水(または純水、Demineralized water)でありうる。
【0054】
一つの例示で、粘度が測定される組成物の全体重量を基準にして、前記水の含量は、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、または90重量%以上でありうる。そして、前記水含量の上限は、例えば、95重量%以下、90重量%以下、85重量%以下、80重量%以下、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、または45重量%以下でありうる。
【0055】
一つの例示で、前記全体の組成物中の溶媒の含量は、溶媒として混合される水の含量を意味することができる。
【0056】
また一つの例示で、前記全体の組成物中の溶媒の含量は、溶媒として混合される水の含量だけでなく、例えば、溶媒に分散したラテックスを他の成分と混合して組成物を形成する場合のように、固形分成分を分散させるための溶媒(例:有機溶媒および/または水)の含量までも含むものを意味することができる。
【0057】
溶媒に関連した含量が前記範囲未満である場合、組成物を形成する各成分の分散性と混和の程度が劣化し、コーティング作業性が悪くなり、被着材上に形成された接着層が有する接着力が低下しうる。また、前記溶媒の含量が前記範囲を超過する場合には、被着材上に接着層を形成するのが容易でないことから、ゴム補強材やゴム複合体において要求される物性を十分に発揮せず、乾燥に長時間がかかるといったように工程性が良くなく生産費用が増加する。
【0058】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、タイヤやタイヤコード関連技術分野で知られた公知の接着剤(構成)成分を少量でさらに含むことができる。この時、少量とは、前記ラテックス成分、酸成分、および窒素化合物の中から最も多く使用される成分より少ない含量で組成物に含まれることを意味することができる。または、前記少量とは、前記ラテックス成分、酸成分、および窒素化合物の中から最も少なく使用される成分よりも少ない含量で組成物に含まれることを意味することができる。
【0059】
使用可能な公知の接着剤構成成分としては、例えば、イソシアネート、エポキシ、ウレタン、または各種添加剤などが挙げられる。イソシアネート、エポキシ、ウレタンといった化合物の具体的な種類は、本出願の技術課題の達成に反しない水準で選択することができ、その含量も、本出願の技術課題の達成に反しない水準で、少量で使用することができる。
【0060】
一つの例示で、前記接着剤組成物は、溶媒に、溶媒以外の他の成分が混合されて形成されたものであってもよい。具体的に、本出願の具体例で、前記接着剤組成物は、自然由来酸(acid)、窒素化合物、ラテックス、および溶媒の混合物であってもよい。または、前記接着剤組成物は、自然由来酸(acid)、窒素化合物、ラテックス、溶媒、および公知の接着剤構成成分の混合物であってもよい。例えば、前記組成物は、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、または75重量%以上であって、85重量%以下、または80重量%以下である溶媒(非-固形分成分)を含み、残りの残余含量だけの固形分を含むことができる。そして、溶媒以外の他の成分、即ち、固形分成分は、例えば、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、または25重量%以下であり、15重量%以上または20重量%以上でありうる。または、前記含量の固形分成分と、残余量の溶媒(非-固形成分)が組成物を形成することができる。
【0061】
本出願に関する具体例で、前記接着剤組成物は、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(Resorcinol-Formaldehyde:RF)またはこれに由来する成分を含まない。即ち、本出願の組成物は、即ち、RF-フリー(free)の組成物でありうる。それにより、RF成分を使用していた従来の技術に対比して、人体に有害でなく、環境にやさしい接着剤組成物を提供することができる。また、このような接着剤組成物の使用は、事後管理と後処理の費用を節減するという利点を提供する。
【0062】
本出願に関する具体例で、前記接着剤組成物は着色剤(色相付与剤、colorant)を含まなくてもよい。
【0063】
通常、コード形成用繊維は、白色(white)系列の色を帯び、繊維に塗布される接着剤は透明である。そして、白色のタイヤコード用繊維(または繊維基材)上に透明な接着剤組成物が塗布される場合、接着剤組成物が目的とするタイヤコードの物性を確保することができる程度に、十分にそして均一に塗布(またはコーティング)されたかを確認する作業が要求され、白色の繊維上に塗布された透明接着剤のコーティングの程度を確認することは容易でない。これに関連して、従来の技術では、着色剤(colorant)を接着剤成分に含ませることで、接着剤が塗布されたコードの色を確認する方式でもって接着剤が十分に塗布されるかを確認した。しかし、着色剤は、接着剤が移動または保管される条件にしたがって、いわゆる核剤として機能するため、全体の組成物の粘度を増加させる。接着剤の粘度増加は、接着剤のコーティング性を低下させ、結果的にはコードと関連した接着力の低下および接着力に付随する、その他の物性の低下を誘発する。
【0064】
反面、本出願では、後述の実験のように所定範囲の色差値(L、aおよびb値)をコードに付与することができる自然由来酸成分が使用されるため、タイヤコード用繊維(または繊維基材)に対する接着剤のコーティングの程度(例:十分で均一なコーティングが行われたか)が、簡単かつ簡便に確認されうる。それにより、時間と費用が節減される。そして、前記接着剤が十分で均一にコーティングされたコードは、そうでないコードに対比して、優れた物性を提供するという利点も有する。
【0065】
本出願に関する他の一例で、本出願はゴム補強材に関するものである。ゴム補強材は、例えば、ベース基材上に前述の接着剤がコーティングされたタイヤコードでありうる。前記ベース基材は、繊維成分を含むローコード(raw cord)でありうる。
【0066】
具体的に、前記ゴム補強材(例:タイヤコード)は、繊維を含むローコード(raw cord);および、前記ローコード上に形成されたコーティング層を含むことができる。前記コーティング層は、前述の接着剤組成物から形成されたコーティング層であるか、これを含むものであって、前記ローコードの表面を囲む形状にコーティングされうる。
【0067】
前記ローコードは、フィラメント繊維に撚りをかけて形成された繊維織物であるか、これを含むことができる。本出願の具体例で、前記ローコードは1本以上の繊維(例:マルチフィラメント)が撚り合わされて形成されたものであってもよい(例:上撚りおよび/または下撚り)。例えば、前記ローコードは2プライまたは3プライコードであってもよい。
【0068】
前記ローコードに含まれる繊維は、特に制限されないが、例えば、ポリエステル繊維(例:PET繊維)、ナイロン繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維(例:リヨセル繊維、レーヨン繊維)、およびガラス繊維からなる群より選択される1つ以上を含むことができる。
【0069】
一つの例示で、前記ローコードはハイブリッドコードであってもよい。例えば、前記ローコードはアラミド下撚り糸とナイロン下撚り糸を含むことのように、互いに異なる種類の繊維を有する下撚り糸を上撚りして形成されたハイブリッドコードであってもよい。
【0070】
互いに異なる種類の下撚り糸が上撚りされて形成されたハイブリッドコードの場合、下撚り糸同士の間の物性(例:モジュラスなど)の差に起因して、耐疲労特性が低いのでありうるのであり、このことに起因してタイヤの安定性が良くないのでありうる。しかし、前記説明された接着剤組成物は、被着材であるハイブリッドローコード上にて適正なコーティング層を形成するだけでなく、被着材であるハイブリッドローコードと、それに隣接するタイヤ構成との間に優れた接着力を付与するため、ハイブリッドコードの使用によるタイヤの耐疲労特性低下の問題を、ある程度改善することができると期待される。
【0071】
一つの例示で、前記ローコードを形成するのに使用される繊維糸(fiber strands)の撚り数は、上撚りおよび/または下撚りにおいて、150以上900TPM(twist per meter)以下でありうる。例えば、前記撚り数は、200TPM以上、250TPM以上、300TPM以上、350TPM以上、400TPM以上、450TPM以上、500TPM以上、または550TPM以上でありうる。また、前記撚り数の上限は、例えば、850TPM以下、800TPM以下、750TPM以下、700TPM以下、650TPM以下、600TPM以下、550TPM以下、500TPM以下、450TPM以下、または400TPM以下でありうる。
【0072】
特に制限されるわけではないが、前記ローコードの総繊度は400~9000dtex範囲でありうる。具体的に、機械的物性の確保などを考慮するとき、前記ローコードの総繊度は、1300dtex以上、1350dtex以上、1400dtex以上、1450dtex以上、1500dtex以上、1550dtex以上、1600dtex以上、1650dtex以上、1750dtex以上、または1800dtex以上でありうるのであり、その上限は、例えば、2000dtex以下、1950dtex以下、1900dtex以下、1850dtex以下、1800dtex以下、1750dtex以下、1700dtex以下、1650dtex以下、または1600dtex以下でありうる。
【0073】
一つの例示で、前記コーティング層は、前記説明された接着剤組成物から形成されたコーティング層であるか、これを含むものでありうる。具体的に、前記タイヤコードは、ローコード上に前記接着剤組成物をコーティングして形成されたものでありうる。接着剤組成物をコーティングする方式は特に制限されない。例えば、公知のディッピングまたは噴射方式によってコーティングが行われうる。
【0074】
本出願の具体例によれば、ローコードの表面に、前述の接着剤組成物がコーティングされたゴム補強材(例:タイヤコード)は、後述の色差値を満たすことができる。
【0075】
一つの例示で、前記タイヤコードが含むコーティング層は、第1コーティング層;および、前記第1コーティング層上に形成された第2コーティング層を含むことができる。具体的に、前記タイヤコードは、ローコード、第1コーティング層、および、第2コーティング層を、順に含むことができる(図2参照)。
【0076】
特に制限されないが、第1コーティング層と第2コーティング層とは、視認可能な境界を有しうる。
【0077】
一つの例示で、前記第1コーティング層は、第2コーティング層と同一の成分を含むことができる。
【0078】
また一つの例示で、前記第1コーティング層は、第2コーティング層とは異なる成分を含むことができる。
【0079】
具体的に、第1コーティング層と第2コーティング層が互いに異なる成分を含む場合、第1コーティング層は、反応活性基付与成分を含む第1コーティング層形成組成物(第1コーティング液)に、前記ローコードをディッピングして形成されたものでありうる。即ち、第1コーティング層は、前記ローコードまたはその表面を取り囲むように形成される。第1コーティング層に使用される反応活性基付与成分の種類は、特に制限されないが、例えば、第1コーティング液は、エポキシおよびイソシアネートの中から選択される1つ以上の化合物を含むことができる。前記第1コーティング層形成組成物(第1コーティング液)が含む溶媒成分は、特に制限されないが、第2コーティング層との混和性などを考慮するとき、第2コーティング層形成組成物に含まれるものと同一の溶媒(例:水)が、第1コーティング層形成組成物に含まれうる。そして、第2コーティング層は、第1コーティング層が表面に形成されたタイヤコード(またはタイヤコード前駆体)を、第2コーティング層形成組成物(第2コーティング液)にディッピングして形成されたものであって、第2コーティング層形成組成物(第2コーティング液)は、前述の粘度を満たす接着剤組成物と同一のものであってもよい。
【0080】
一つの例示で、前記第1コーティング液は、イソシアネート化合物およびエポキシ化合物を含むことができる。この場合、十分な架橋と適正水準の硬化が行われるように、エポキシ化合物とイソシアネート化合物とは、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2の重量比で使用できる。
【0081】
また一つの例示で、前記含量範囲を満たすことを前提にして、全体の組成物内でイソシアネート化合物の重量は、エポキシ化合物の重量よりも大きいのでありうる。
【0082】
ローコード表面に反応活性基を付与するための第1コーティング層;および、前述の接着剤を含む第2コーティング層が、順次に形成されたゴム補強材(例:タイヤコード)は、後述の色差値を満たすことができる。
【0083】
一つの例示で、前記ゴム補強材(例:タイヤコード)は色差計L、aおよびb値が所定の範囲を満たす。具体的に、前記タイヤコードは、L値が50~60範囲であり、a値が4.5~10範囲であり、b値が10~25範囲を満たす。L値は黒色と白色との比率を意味し、a値は赤色と緑色との比率を意味し、b値は黄色と青色との比率を意味する。前記のような色差は、接着剤成分の色に起因することである。タイヤコードに使用される繊維は、通常、白色系列を有するため補強材(例:タイヤコード)が前記のような色差を有するということを通じて、接着剤組成物が均一にコーティングされたかを肉眼で簡単に確認することができる。前記タイヤコードの色差は、例えば、所定面積に複数のコード撚り糸が一方向に細かく羅列されたコード試片2つを準備した後、いずれか一つの試片コード撚り糸が羅列された方向と、他の一つの試片コード撚り糸が羅列された方向とが90°をなすようにして、これら試片を重ね合わせて測定することができる。この際、所定の長さ(例:1cm)範囲で一方向に羅列されるコードの個数は、10~25個の範囲、例えば、13個以上または15個以上、そして22個以下、20個以下、または18個以下でありうる。このような色差の測定には、色差測定計(CCM、X-rite color-eye 7000A)が使用できる。
【0084】
一つの例示で、前記コードは、ASTM D4393による接着力評価の際、その接着力が10kgf以上でありうる。前記接着力は、15kgf以上、15.5kgf以上、16kgf以上、16.5kgf以上、または17kgf以上でありうる。具体的な接着力測定方法は次の通りである。まず、0.6mmの厚さのゴムシート、コード地、0.6mm厚さのゴムシート、コード地、0.6mmの厚さのゴムシートを順次に積層し、60kg/cmの圧力にて170℃で15分間加硫してサンプルを製作し、サンプルを裁断して1インチの幅を有する試片を製造する。そして、製造された試片に対して、ASTM D4393にしたがい、万能材料試験器(Instron社)を用いて25℃で125mm/minの速度で剥離試験を行ってコードの接着力を測定する。
【0085】
本出願に関するまた他の一例で、本出願はゴム補強材の製造方法に関するものである。前記ゴム補強材の製造方法は、ゴム補強材用ベース基材上にコーティング液を塗布してコーティング層を形成する段階を含む。
【0086】
前記コーティング液をベース基材上に塗布する方式は、特に制限されないが、例えば、噴射または浸漬であってもよく、好ましくは浸漬であってもよい。
【0087】
一つの例示で、前記ゴム補強材はタイヤコードでありうる。
【0088】
一つの例示で、前記ベース基材は、繊維基材、具体的にはローコード(raw cord)であってもよい。ローコードの形成材料などに関する説明は前述の通りである。
【0089】
一つの例示で、前記コーティング液は、前述の接着剤組成物であってもよい。
【0090】
一つの例示で、前記方法は、ゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング液を塗布してベース基材上に第1コーティング層を形成する段階;および、前記第1コーティング層上に第2コーティング液を塗布することで、第1コーティング層上に第2コーティング層を形成する段階を含むことができる。
【0091】
前記第1コーティング液をベース基材上に塗布するか、第1コーティング層上に第2コーティング液を塗布する方式は特に制限されないが、例えば、噴射または浸漬であってもよく、好ましくは浸漬であってもよい。
【0092】
第1および/または第2コーティング層形成のためのコーティング液塗布後には、必要に応じて、コーティング液に対する乾燥および/または硬化を行うことができる。
【0093】
一つの例示で、前記の第1コーティング液および第2コーティング液の成分は、同一であるか、または異なりうる。
【0094】
例えば、第1コーティング液は、繊維基材などに反応性基を付与するために、エポキシ化合物とイソシアネート化合物を含むことができる。ここで、十分な架橋と適正水準の硬化が行われるように、エポキシ化合物とイソシアネート化合物とは、4:1~1:4、3:1~1:3、または2:1~1:2の重量比で使用できる。
【0095】
一つの例示において、前記第1コーティング液は溶媒を含むことができる。即ち、第1コーティング液はエポキシ化合物、イソシアネート化合物、および溶媒を含むことができる。
【0096】
溶媒が不足している場合、浸漬による1次コーティングが円滑に行われないのであり、溶媒の含量が過度に多い場合、ゴム補強用ベース基材に反応性基が十分に付与されない。このような点などを考慮するとき、第1コーティング液全体重量に対して溶媒は94~99重量%の含量を有し、エポキシ化合物とイソシアネート化合物の混合物は1~6重量%の含量を有する。即ち、第1コーティング液は、全体の重量に対して、エポキシ化合物とイソシアネート化合物からなる混合物1~6重量%、および溶媒94~99重量%を含む。特に制限されないが、第1コーティング液に含まれるかまたは使用できる溶媒は、第2コーティング液の溶媒と同一の成分を含むことができる。
【0097】
一つの例示で、ゴム補強材用ベース基材は第1コーティング液に浸漬された後、乾燥される。具体的に、浸漬によってゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング液が塗布される。その後、第1コーティング液が乾燥および硬化されて、第1コーティング層が形成される。
【0098】
本出願による具体例で、前記ベース基材上に塗布された第1コーティング液に対する乾燥は100~160℃の温度で30~150秒間行うことができる。また、本出願の具体例で、前記乾燥以後に、200~260℃の温度で30~150秒間乾燥された第1コーティング液を硬化する段階を行うことができる。前記乾燥および硬化により、ゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング層が形成される。前記条件の乾燥および硬化を通じて、ゴム補強材用ベース基材上に第1コーティング層が安定的に形成される。
【0099】
特に制限されないが、前記浸漬、乾燥、および/または硬化の過程中に、ローコードには0.05~3.00g/d範囲の張力が印加されうる。しかし、本発明の他の一実施形態がこれに限定されるのではなく、ローコードに張力が印加されなくてもよい。
【0100】
一つの例示で、エポキシ化合物とイソシアネート化合物を含む第1コーティング液と異なる第2コーティング液は、前述の粘度を満たす接着剤組成物であってもよい。具体的に、前記第2コーティング液は少なくとも自然由来酸、窒素化合物、およびラテックスを含むことができる。
【0101】
本出願による具体例で、前記方法は、反応活性基が付与されたゴム補強材用ベース基材上に、即ち、第1コーティング層上に、第2コーティング層を形成する段階をさらに含むことができる。第2コーティング層を形成する過程(例:方式と条件)は、第1コーティング層を形成するのと同一に、または類似するように行われうる。
【0102】
例えば、ベース基材および第1コーティング層の上に第2コーティング液が塗布されて、第2コーティング層が形成される。またはベース基材および第1コーティング層の上に第2コーティング液が塗布され、その後、第2コーティング液に対する乾燥と硬化が行われうる。第2コーティング液の塗布は、浸漬や噴射などによって行うことができる。
【0103】
本出願に関する具体例で、前記第2コーティング液に対する乾燥は、100~160℃の温度で30~150秒間行うことができる。また、本出願に関する具体例で、前記乾燥後に、前記第2コーティング液に対する硬化は200~260℃の温度で30~150秒間行うことができる。前記条件の乾燥および硬化によって、第1コーティング層上に第2コーティング層が安定的に形成されうる。その結果、コーティング層を有するゴム補強材が提供される。
【0104】
特に制限されないが、前記浸漬、乾燥、および/または硬化の過程中に、ローコードには0.05~3.00g/d範囲の張力が印加されてもよい。しかし、本発明の他の一実施形態がこれに限定されるのではなく、ローコードに張力が印加されなくてもよい。
【0105】
本出願の一例によるゴム補強材の製造方法を、図2および図3を参照して説明すれば以下の通りである。
【0106】
ローコード10は、第1ワインダ100に巻かれている状態で、製造および/または流通がされうる。そして、ローコード10が、第1コーティング槽200に溜められている第1コーティング液21’に浸漬されて、ローコード10上に塗布される。前記浸漬工程時には、張力、浸漬時間、および温度が適切に調節されうるのであり、これは当業者によって適切に調節されうる。
【0107】
その次に、ローコード10に塗布された第1コーティング液21’が乾燥および硬化される。乾燥は、乾燥装置300で行うことができる。乾燥と硬化に関する温度や時間などの条件は、前述の通りである。
【0108】
その次に、第1コーティング層21上に第2コーティング層22を形成する段階が行われる。第2コーティング層形成の段階は、第1コーティング層21によって活性基が付与されたローコード10に、ゴム系接着組成物を付与する段階である。第2コーティング層形成には、第1コーティング液と異なる組成を有する第2コーティング液を使用することができ、第1コーティング層形成と同様に浸漬(dipping)工程が適用されうる。
【0109】
第2コーティング層22の形成のために、第1コーティング層21でもってコーティングされたローコード10が第2コーティング液22’に浸漬される。第2コーティング液22’は第2コーティング槽400に溜められている。前記浸漬によって第1コーティング層21上に第2コーティング液22’が印加される。前記浸漬工程時には、張力、浸漬時間、および温度が適切に調節されうるのであり、これは当業者によって適切に調節されうる。
【0110】
その次に、第2コーティング液22’に対する乾燥および硬化が行われる。前記乾燥と硬化は乾燥装置500で行うことができる。乾燥と硬化に関する温度や時間などの条件は前述の通りである。
【0111】
前記のような過程を経て、第1コーティング層21上に第2コーティング層22が形成される。このように製造されたタイヤコード30は第2ワインダ600に巻き取られる。
【0112】
前記のように、浸漬(dipping)によって形成されたコーティング層を有するタイヤコード30を、ディップコード(dipped cord)と称することができる。
【0113】
本出願に関するまた他の一例で、本出願は、前記ゴム補強材を含む物品(またはゴム複合体)に関するものである。前記ゴム複合体は、例えば、タイヤであってもよい。前記タイヤは、前述のタイヤコードを含む。
【0114】
前記タイヤは、タイヤコード以外に、一般に知られた構成(例:前記タイヤはトレッド、ボディプライ、ベルト、サイドウォール、ビード、インナーライナー、キャッププライ、またはエイペックスなど)を有することができる(図4参照)。
【発明の効果】
【0115】
本出願の一例によれば、人体にあまり有害でなく環境にやさしいだけでなく、コード製造工程の便宜を提供し、費用を節減することができるようにする接着剤を提供することができる。また、本出願は、従来の技術に対比して同等水準以上の物性(例:接着力)を提供することができる接着剤を提供する発明の効果を有する。また、本出願の他の一例によれば、前記接着剤を用いて製造されたゴム補強材(例:タイヤコード)および物品(例:タイヤ)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
図1】本出願の接着剤組成物が有する相対粘度を測定する方法を説明するためにウベローデ粘度計を概略的に示したものである。
図2】本出願の一例により、接着剤組成物を用いて製造されうるタイヤコードの断面を概略的に示したものである。
図3】タイヤコードの製造過程を概略的に示したものである。
図4】本出願の一例により接着剤組成物を用いて製造されうるタイヤの断面を概略的に示したものである。
図5a】色差測定と関連したサンプルの様子を概略的に示したもの(1)である。具体的に、図5aは一つの試片(S1またはS2)の例示である。
図5b】色差測定と関連したサンプルの様子を概略的に示したもの(2)である。具体的に、図5bは2つの試片(S1、S2)が交差する様子を概略的に表現したものである。
図6】赤外線分光法により、実施例に使用された自然由来タンニン酸、比較例3に使用された合成タンニン酸、および比較例4のRF(2価フェノール)の波長分析結果を示したグラフである。当該図面において、最も上端(または左側)に示されたグラフがRFに関するものであり、最も下端(または右側)に示されたグラフが合成タンニン酸に関するものであり、中間に示されたグラフが自然由来タンニン酸に関するものである。共通して確認される約1600~1620cm-1の波数付近で観察されるピークは、芳香族環(aromatic ring)に対するピークである。RF縮合体とタンニン酸は共通してベンゼン環を有しているが、RFは有害物質として知られている。反面、粉塵の直接的な吸入を除けば、タンニン酸は有害でない物質である。一方、自然由来タンニン酸と合成タンニン酸の場合には約1700cm-1の波数付近のピークの有無によって区別されることが確認される。1700cm-1の波数付近のピークは、C=O結合にて現れるピークであり、このようなピークは、タンニン酸を人工的に合成する過程で生成されたC=O結合によるものと考えられる。即ち、自然由来タンニン酸ではC=O含む単位がより少ない点から、合成タンニン酸と自然由来タンニン酸が区別されるとみることができる。
【発明を実施するための形態】
【0117】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。但し、これは発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されるのではない。
【実施例
【0118】
実施例および比較例組成物の製造
下記表1のように含量(重量%)比率であることを除いて、同一の条件で混合と攪拌を行って、実施例および比較例の組成物を製造した。具体的に、各成分を混合し、約20℃で24時間攪拌した。
【0119】
【表1】
【0120】
単位:重量%
1)溶媒(非-固形成分):実施例および比較例で投入された水(純水)の含量は約40~50重量%であり、それ以外には、酸、窒素化合物、およびラテックスを分散することに使用された溶媒である。
2)酸成分:特に他に記載しない以上、自然由来のタンニン酸が使用された。
3)ラテックス:VPラテックスが使用された。
4)比較例3では、Sigma-Aldrich社で製造した合成タンニン酸(Tannic Acid)を使用した。
5)参考例1では、酸成分であるRF(2価フェノール)としてコーロンインダストリーで製造したHiRENOL KOSABOND-R50を使用した。
【0121】
実験1:実施例および比較例組成物の相対粘度測定
前記表1に記載された成分を有する接着剤組成物粘度は、ウベローデ粘度計(Ubbelohde viscometer)を用いて、恒温水槽(約25℃)にて30分間放置された後、測定された。具体的に、以下のような過程を経て脱塩水をウベローデ粘度計に一定量入れた後、脱塩水の粘度特性を測定し、同様の方法で組成物の粘度特性を測定した後、既に測定された脱塩水の粘度特性を基準にして相対粘度を計算した。その結果は表2のとおりである。
【0122】
図1を参照して粘度測定過程を説明すれば下記の通りである。
【0123】
(1)ウベローデ粘度計A管に試料(組成物または脱塩水)を注入する。
【0124】
(2)恒温水槽を25℃に設定した後、C部分が水槽に浸るように固定し30分間放置する。
【0125】
(3)ピペットフィラーを用いて試料がC部分の中間までくるようにする。
【0126】
(4)その後、試料を下へ流れるようにし、試料の液面がBの上目盛を通過してBの下目盛を通過するまでかかった時間を測定する。
【0127】
(5)測定した時間を下記の相対粘度計算式に適用して相対粘度を求める。
【0128】
<相対粘度計算式>
相対粘度=T/T
【0129】
上記式中、Tは接着剤組成物がBの上目盛を通過してBの下目盛を通過するまでかかった時間であり、Tは脱塩水(Demineralized water)がBの上目盛を通過してBの下目盛を通過するまでかかった時間である。
【0130】
【表2】
【0131】
表1および2を通じて、組成物を形成する成分およびその含量によって接着剤組成物の粘度が変わるということが確認される。接着剤の成分、含量および粘度は、後述の実験のように、色相特性と接着力に影響を与える。
【0132】
実験2:ディップコードの色差測定
ポリエステル原糸を用いて360TPMの撚り数を有する下撚り糸(Z-方向)2本を準備した後、2本の下撚り糸を、360TPMの撚り数で共に上撚り(S-方向)して、合撚糸(1650dtex/2合)を製造した。このように製造された合撚糸を、ローコード(raw cord)10として使用した。
【0133】
ポリエステルローコード(raw cord)を第1コーティング液に浸漬した後、乾燥温度150℃および硬化温度240℃にて、それぞれ約1分間処理して第1コーティング層21を形成することによって、ローコードに反応活性基を付与した。この際、第1コーティング液は、製造例2で使用された成分のうちの一部であるエポキシ化合物とイソシアネート化合物とが約1:2の重量比で、97重量%の脱塩水(demineralized water)と共に混合されて製造されたものである。
【0134】
その次に、第1コーティング層が形成されたローコードを第2コーティング液(前述の実施例および比較例で製造された接着剤組成物)に浸漬し乾燥および硬化して第2コーティング層22を形成した。この時、乾燥温度150℃および硬化温度235℃でそれぞれ約1分ずつ処理して乾燥および硬化が行われた。第1コーティング液への浸漬工程および第2コーティング液への浸漬工程は連続的に行われ、この際の張力条件は0.5g/dにした。前記のような過程を経てディップコード(Dipped Cord)の形態にタイヤコード(tire cord)30を製造した。
【0135】
製造されたタイヤコードを裁断して5cm×5cmの大きさの正四角形試片2つ(S1、S2)を準備した。具体的に、1cm当り15~16個が存在するように、複数のコード糸筋(cord strands)が一方向に細かく羅列された試片2つ(S1、S2)を準備した後、試片(S1)のコードが羅列された方向と、試片(S2)のコードが羅列された方向とが、90°になるようにこれら試片を重ね合わせ、これを色差測定のためのサンプルとした(図5aおよび図5b参照)。
【0136】
色差測定計(CCM、X-rite color-eye7000A)を用いて各サンプルの色差(L、a、b)を10回測定し、その算術平均値を求めた。その結果は下記表3のとおりである。
【0137】
【表3】
【0138】
他の成分と共に適正含量の自然由来タンニン酸を含む実施例は前述のL*、a*、およびb*値を示すということが確認される。即ち、実施例によるタイヤコードは濃い赤褐色を帯びた。反面、比較例1~3は共通的に前記色差値のうちのL*値を満たさないことが確認される。
【0139】
具体的に、肉眼で確認時、参考例1は浅い茶色を示し、実施例はより濃い赤褐色系列の色を示した。これは、実施例と比較する時、参考例1のL*値およびa*値が大体において低く、a*値は大体において高いためであると判断される。
【0140】
また、大体において、実施例に対比して、Lとb値が低い比較例の場合には大体において紫色を示した。
【0141】
実験3:接着力評価
実験2で製造されたタイヤコードに対する単位面積当りの接着力を評価した。前記接着力評価はASTM D4393の方法を用いて、タイヤコードの接着剥離強度を測定する方式で行われた。
【0142】
具体的に、0.6mm厚さのゴムシート、コード地(実験2で製造された試片のうちの一つであるSに対応)、0.6mm厚さのゴムシート、コード地(実験2で製造された試片のうちの一つであるSに対応)、0.6mm厚さのゴムシートを順次に積層し、60kg/cmの圧力にて170℃で15分間加硫してサンプルを製作した。そして、サンプルを裁断して1インチの幅を有する試片を製造した。参考として、前記ゴムシートは下記表4に記載された組成を有するものであって、タイヤを構成するカーカスに使用されるシートである。このようなゴムシートを用いた積層体を使用することによって、カーカス層に対するタイヤコードの接着力を確認することができる。
【0143】
製造された試片に対して、万能材料試験器(Instron社)を用いて、25℃で125mm/minの速度で剥離試験を行うことでカーカス層に対するタイヤコードの接着力を測定し、測定された接着力の相対的な大きさを表5に記載した。ここで、剥離時発生する荷重の3回平均値を接着力として算定した。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
表5を通じて、実施例が比較例に対比して、より強い接着力を提供するということが確認される。
【0147】
また、参考例2と実施例を比較してみれば、本願発明は、従来の技術に対比して同等水準以上の接着力を提供するだけでなく、人体に対する有害性が低く環境にやさしいということが分かる。
【符号の説明】
【0148】
10:ローコード
11:下撚り糸
12:下撚り糸
20:コーティング層
21:第1コーティング層
21’:第1コーティング液
22:第2コーティング層
22’:第2コーティング液
30:タイヤコード
100:第1ワインダ
200:第1コーティング槽
300:第1乾燥装置
400:第2コーティング槽
500:第2乾燥装置
600:第2ワインダ
1000:トレッド
2000:ショルダー
3000:サイドウォール
4000:キャッププライ
5000:ベルト
6000:ボディプライまたはカーカス
7000:インナーライナー
8000:エイペックス
9000:ビード
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6