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特許7526890大動脈弁置換のための医療用インプラントシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】大動脈弁置換のための医療用インプラントシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240725BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20240725BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/966
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023524692
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 US2021056235
(87)【国際公開番号】W WO2022087398
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/104,694
(32)【優先日】2020-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、ドンミン
(72)【発明者】
【氏名】オコナー、ティム
(72)【発明者】
【氏名】オサリバン、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン、アイデン
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0071085(US,A1)
【文献】特許第6554094(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0325663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0071733(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0268514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00-2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用インプラントシステムであって、前記医療用インプラントシステムは:
送達システムと;
前記送達システムに解放可能に連結される医療用インプラントであって、長尺状かつ低プロファイルの送達構成から半径方向に拡張された展開構成に移動可能であるとともに、
管状のアンカー部材と、
前記管状のアンカー部材に固定される複数の弁尖と、
を含む、医療用インプラントと;
前記医療用インプラントを組織に固定するように構成された第1の固定機構と;
前記第1の固定機構を展開するように構成された送達針を含む固定機構送達システムと、
を備え
前記送達針は天然の弁尖を貫通するように構成された鋭い先端部を含む、医療用インプラントシステム。
【請求項2】
前記第1の固定機構は、送達構成から展開構成に半径方向に拡張可能である、請求項1に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項3】
前記第1の固定機構の第1の部分は前記医療用インプラントの内面に隣接して配置されるように構成され、前記第1の固定機構の第2の部分は、天然の組織に隣接して配置されるように構成される、請求項1または請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項4】
前記第1の固定機構が、第1の拡張可能バスケットと、第2の拡張可能バスケットと、それらの間に延在する長尺状の連結部材とを備える、請求項1または請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項5】
前記第1の固定機構が螺旋巻きを含む、請求項1または請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項6】
前記第1の固定機構が、第1の保持特徴部と、第2の保持特徴部と、前記第1の保持特徴部と前記第2の保持特徴部との間に延在する弾性コイルとを備える、請求項1または請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項7】
前記第1の固定機構が、リングによって相互接続された1つ以上の湾曲した歯を備える、請求項1または請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項8】
前記固定機構送達システムは、ピッグテールカテーテルをさらに備え、前記送達針は前記ピッグテールカテーテルの管腔を通って前進するように構成されている、請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項9】
前記ピッグテールカテーテルが、その半径方向外側表面を通って延びる開口部を備え、前記送達針が前記開口部から出るように構成される、請求項に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項10】
前記医療用インプラントを組織に固定するように構成された第2の固定機構および前記医療用インプラントを組織に固定するように構成された第3の固定機構をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の医療用インプラントシステム。
【請求項11】
前記第1の固定機構は、第1の天然の弁尖に係合するように構成され、前記第2の固定機構は、第2の天然の弁尖に係合するように構成され、前記第3の固定機構は、第3の天然の弁尖に係合するように構成される、請求項10に記載の医療用インプラントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイス、ならびに医療デバイスを製造および/または使用するための方法に関する。より詳細には、本開示は、置換心臓弁のための取付機構に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途、例えば血管内用途のために、多種多様な体内医療デバイスが開発されてきた。これらのデバイスのうちのいくつかは、ガイドワイヤ、カテーテル、医療デバイス送達システム(例えば、ステント、グラフト、置換弁等)等を含む。これらのデバイスは、様々な異なる製造方法のいずれか1つによって製造され、様々な方法のいずれか1つに従って使用されてもよい。既知の医療デバイスおよび方法の各々は、特定の利点および欠点を有する。代替的な医療デバイス、ならびに医療デバイスを製造および使用するための代替的な方法を提供することが常に求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、医療デバイスのための設計、材料、製造方法、および使用代替物を提供する。
第1の例において、医療用インプラントを弁にて固定するための方法は、血管系を通って送達システムを標的位置まで前進させるステップと、送達システムを近位に後退させて、送達システムの管腔内に担持される医療用インプラントを露出させるステップと、医療用インプラントを折り畳まれた送達構成から拡張された展開構成まで半径方向に拡張させるステップと、血管系を通って固定機構送達システムを標的位置まで前進させるステップと、固定機構送達システムから第1の固定機構を展開させるステップであって、第1の固定機構は、天然の組織および医療用インプラントの一部に係合するように構成される、展開させるステップと、第1の固定機構を展開した後に、医療用インプラントを送達システムから解放するステップと、を備え得る。
【0004】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1固定機構はクリップアセンブリであってもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、クリップアセンブリは、一対のクリップアームの間に天然の組織および医療用インプラントの一部を受け入れるように構成されてもよい。
【0005】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、固定機構送達システムは、交連クランプカテーテルを備えてもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構は、送達構成から展開構成へと半径方向に拡張可能であってもよい。
【0006】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構の第1の部分は、医療用インプラントの内面に隣接して配置されるように構成されてもよく、第1の固定機構の第2の部分は、天然の組織に隣接して配置されるように構成されてもよい。
【0007】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構は、第1の拡張可能バスケットと、第2の拡張可能バスケットと、それらの間に延在する長尺状の連結部材とを備えてもよい。
【0008】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構は、螺旋巻き(helical winding)を備えてもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構は、第1の保持特徴部と、第2の保持特徴部と、第1の保持特徴部と第2の保持特徴部との間に延在する弾性コイルとを備える。
【0009】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構は、リングによって相互接続された1つ以上の湾曲した歯(tines)を備えてもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、固定機構送達システムは、送達針を備えてもよい。
【0010】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、固定機構送達システムは、ピッグテールカテーテルをさらに備えてもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、ピッグテールカテーテルは、その半径方向外側表面を通って延びる開口部を備えてもよく、送達針は、開口部から出るように構成されてもよい。
【0011】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、方法は、第2の固定機構および第3の固定機構を展開することをさらに含んでもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1の固定機構は、第1の天然弁尖に係合するように構成されてもよく、第2の固定機構は、第2の天然弁尖に係合するように構成されてもよく、第3の固定機構は、第3の天然弁尖に係合するように構成されてもよい。
【0012】
別の例において、弁にて医療用インプラントを固定するための方法は、血管系を通って送達システムを標的位置まで前進させるステップと、送達システムを近位に後退させて、送達システムの管腔内に担持される医療用インプラントを露出させるステップと、医療用インプラントを折り畳まれた送達構成から拡張された展開構成まで半径方向に拡張させるステップと、血管系を通って交連クランプカテーテルを標的位置まで前進させるステップと、第1のクリップアセンブリを交連クランプカテーテルから展開するステップであって、第1のクリップアセンブリは、天然の組織および医療用インプラントの一部を一対のクリップアーム間に受け入れるように構成される、展開するステップと、第1のクリップアセンブリを展開した後に、医療用インプラントを送達システムから解放するステップと、を備え得る。
【0013】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、方法は、第2のクリップアセンブリおよび第3のクリップアセンブリを展開することをさらに備えてもよい。
【0014】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、第1のクリップアセンブリは、第1の天然弁尖に係合するように構成されてもよく、第2のクリップアセンブリは、第2の天然弁尖に係合するように構成されてもよく、第3のクリップアセンブリは、第3の天然弁尖に係合するように構成されてもよい。
【0015】
別の例において、医療用インプラントを弁にて固定するための方法は、血管系を通って送達システムを標的位置まで前進させるステップと、送達システムを近位に後退させて、送達システムの管腔内に担持されるドッキングリングを半径方向に拡張するステップであって、ドッキングリングは、複数の開口部と、その外面から半径方向に延在する1つ以上の固定棘とを含む管状部材を備える、ステップと、送達システムを前進させて、送達システムの管腔内に担持される医療用インプラントをドッキングリングに隣接して位置付けるステップと、医療用インプラントを折り畳まれた送達構成から拡張された展開構成に半径方向に拡張するステップと、医療用インプラントを送達システムから解放するステップとを備え得る。医療用インプラントの外面は、ドッキングリングの内面に接触し、かつ摩擦係合するように構成されてもよい。
【0016】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、ドッキングリングは、その内側および/または外側表面上に配置されたコーティングをさらに備えてもよい。
【0017】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、医療用インプラントは、その一部の上に配置されたシールを備えてもよい。
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、医療用インプラントのシールは、ドッキングリングのコーティングに摩擦係合してもよい。
【0018】
上記の例のいずれかの代わりに、またはそれに加えて、別の例では、1つ以上の固定棘は、天然の組織を貫通するように構成されてもよい。
いくつかの実施形態、態様、および/または例の上記の概要は、本開示の各開示された実施形態またはすべての実装を説明することを意図していない。以下の図面および詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【0019】
本開示は、添付の図面に関連して様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することで、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】展開構成にある例示的なインプラントの一部の斜視図である。
図2】体内で展開された形態にある図1の例示的なインプラントの概略図である。
図3】例示的な交連クランプカテーテルの部分断面図である。
図4】クリップアセンブリと共に体内で展開された構成にある図1の例示的なインプラントの概略図である。
図5】例示的な固定部材送達システムとともに体内で展開された構成にある図1の例示的なインプラントの概略図である。
図6】例示的なピッグカテーテルである。
図7】別の例示的なピッグカテーテルである。
図8】例示的な送達針の遠位端領域の部分断面図であり、移植可能な固定部材がその管腔内に装填されている。
図9】部分的に展開された構成にある図8の移植可能な固定部材を示す。
図10】別の部分的に展開された構成にある図8の移植可能な固定部材を示す。
図11】展開された構成にある図8の移植可能な固定部材を示す。
図12】複数の例示的な固定部材と共に体内で展開された構成にある図1の例示的なインプラントの概略図である。
図13A】拡張形態にある別の例示的な移植可能な固定部材の概略側面図である。
図13B】折り畳まれた構成にある図13Aの例示的な固定部材の概略側面図である。
図14】拡張形態にある別の例示的な移植可能な固定部材の概略側面図である。
図15A】拡張形態にある別の例示的な移植可能な固定部材の概略側面図である。
図15B】折り畳まれた構成にある図13Aの例示的な固定部材の概略側面図である。
図15C図15Aの例示的な移植可能な固定部材の代替構成の側面図である。
図16】展開された構成にある図15Aの移植可能な固定部材を示す。
図17】例示的な送達システムの部分断面図である。
図18】体内で展開構成にある例示的なドッキングリングの概略図である。
図19図18のドッキングリングとともに体内で展開された構成にある図1の例示的インプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の態様は、様々な修正形態および代替形態を受け入れることができるが、それらの詳細は、例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、本開示の態様を説明される特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。逆に、本発明は、本開示の精神および範囲内に入るすべての修正形態、均等物、および代替形態を包含するものである。
【0022】
以下の説明は、必ずしも縮尺通りではない図面を参照して読まれるべきであり、同様の参照番号は、いくつかの図を通して同様の要素を示す。詳細な説明および図面は、特許請求の範囲に記載された発明を例示することを意図したものであり、限定することを意図していない。当業者は、説明されるおよび/または示される様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せおよび構成で配置され得ることを認識するであろう。詳細な説明および図面は、特許請求される発明の例示的な実施形態を示す。
【0023】
以下に定義される用語については、特許請求の範囲または本明細書の他の箇所において異なる定義が与えられない限り、これらの定義が適用されるものとする。
全ての数値は、本明細書において、明示的に示されているか否かにかかわらず、用語「約」によって修飾されると想定される。数値の文脈における「約」という用語は、一般に、当業者が引用された値と同等である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と考えるであろう数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数を含み得る。「約」という用語の他の使用(すなわち、数値以外の文脈における)は、別段の指定がない限り、本明細書の文脈から理解され、それと一致するように、それらの通常の慣習的な定義(複数可)を有すると仮定され得る。
【0024】
端点による数値範囲の記載は、端点を含むその範囲内の全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
様々な構成要素、特徴および/または仕様に関するいくつかの適切な寸法、範囲および/または値が開示されているが、本開示によって引用された当業者は、所望の寸法、範囲および/または値が明示的に開示されたものから逸脱し得ることを理解するであろう。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、「または」という用語は、内容が明らかに別のことを指示しない限り、「および/または」を含む意味で一般に使用される。
【0026】
「近位」、「遠位」、「前進」、「後退」、それらの変形などの相対的な用語は、概して、デバイスのユーザ/オペレータ/マニピュレータに対する様々な要素の位置決め、方向、および/または動作に関して考慮されてもよく、「近位」および「後退」は、ユーザにより近いまたはユーザに向かうことを示し、または参照し、「遠位」および「前進」は、ユーザからより遠いまたはユーザから離れることを示し、または参照する。
【0027】
本明細書における「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、または特性を含まなくてもよいことを示すことに留意されたい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が実施形態に関連して説明されている場合、明示的に説明されているか否かにかかわらず、明確に反対のことが述べられていない限り、そのような特徴、構造、または特性を他の実施形態に関連してもたらすことは、当業者の知識の範囲内であろう。すなわち、以下で説明される様々な個々の要素は、特定の組合せで明示的に示されていなくても、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するために、または説明される実施形態(複数可)を補完および/または強化するために、互いに組合せ可能または配置可能であると考えられる。
【0028】
明確にするために、説明および/または特許請求の範囲の全体にわたって、ある特定の識別する数値命名法(例えば、第1、第2、第3、第4など)を使用して、様々な説明および/または特許請求の範囲の特徴を命名および/または区別する場合がある。数値命名法は限定を意図するものではなく、単なる例示であることを理解されたい。いくつかの実施形態において、簡潔さおよび明確さのために、以前に使用された数値命名法の変更およびそれからの逸脱が行われ得る。すなわち、「第1の」要素として識別された特徴は、後に「第2の」要素、「第3の」要素などと称されてもよく、または完全に省略されてもよく、および/または異なる特徴が「第1の」要素と称されてもよい。各例における意味および/または名称は、当業者には明らかであろう。
【0029】
経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)は、大動脈弁狭窄症を治療するためにますます多くの患者において使用されている。一般に、純粋な大動脈弁逆流症(PAR)は、TAVRに対する相対的禁忌と考えられる。大動脈弁逆流症(AR)は、心血管罹患率および死亡率の比較的一般的な原因であり得、アメリカ人男性および女性のそれぞれ最大13.0%および8.5%に見出され得る。ARは、TAVRを受けている患者にとって、塞栓形成、弁移動、および術後逆流のリスクの増加に起因する合併症の増加と関連付けられ得る。このリスクは、大動脈弁狭窄症のTAVR患者とは対照的に、AR患者には石灰化がないため、TAVR弁が天然の弁の石灰化によって定位置に固定されるため、デバイスの設置が困難になることで強調されると考えられる。本開示は、石灰化に依存しない固定機構を利用することによって生来のAR(native AR)の管理に使用するための人工弁に関する。本開示は、大動脈弁置換に関して説明されるが、本明細書に説明されるデバイスおよび方法は、所望に応じて、他の解剖場所において使用されてもよいことが企図される。
【0030】
図1は、例示的な医療用インプラントシステム10の一部の斜視図である。医療用インプラントシステム10のいくつかの特徴は、簡略化のために図1に示されていないか、または概略的に示されていることに留意されたい。医療用インプラントシステム10は、様々な医療用デバイスを解剖学的構造内のいくつかの場所に送達および/または展開するために使用され得る。少なくともいくつかの実施形態において、医療用インプラントシステム10は、置換心臓弁の経皮的送達のために使用され得る置換心臓弁システム(例えば、置換大動脈弁システム)であってもよい。しかしながら、医療用インプラントシステム10は、僧帽弁置換、弁修復、弁形成術などを含む他の介入、または他の同様の介入に使用することもできるため、これに限定することを意図していない。
【0031】
医療用インプラントシステム10は、概して、送達システム12と、医療用インプラント14の送達中に送達システム12に結合され、送達システム12の管腔内に配置され得る医療用インプラント14(弁置換インプラント等であるが、これに限定されない)とを含むカテーテルシステムとして説明され得る。いくつかの実施形態において、ハンドルまたはアクチュエータが、送達システム12の近位端に配置されてもよい。概して、ハンドルは、送達システム12の位置を操作するように、ならびに医療用インプラント14の展開を補助するように構成されてもよい。
【0032】
医療用インプラントシステム10の使用に先立って、患者は、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンおよび/または心エコー図を使用してスクリーニングされてもよい。使用時、医療用インプラントシステム10は、大腿動脈または橈骨動脈等であるがこれらに限定されない動脈アクセスを介して、血管系を通って対象領域に隣接する位置まで経皮的に前進させられてもよい。例えば、医療用インプラントシステム10は、欠陥のある大動脈弁(または他の心臓弁)に隣接する位置まで、血管系を通って、大動脈弓を横断して前進させられてもよい。送達時、医療用インプラント14は、概して、送達システム12内に長尺状かつ低プロファイルの(low profile)「送達」構成で配置されてもよい。一旦配置されると、送達システム12は、医療用インプラント14を露出させるために後退させられてもよい。医療用インプラント14は、(例えば、図1に示されるように)解剖学的構造内への移植に好適である概して短縮されたより大きな断面プロファイルを有する「展開」構成へと同医療用インプラント14を半径方向に拡張するために作動されてもよい。医療用インプラント14が解剖学的構造内で好適に展開されると、送達システム12は、血管系から除去され、医療用インプラント14を「解放」構成でその位置に残して、例えば、天然の(native)大動脈弁の好適な置換体として機能することができる。少なくともいくつかの介入において、医療用インプラント14は、天然の弁の内部に展開されてもよい(例えば、天然の弁はその位置に残されて、切除されない)。代替的に、天然の弁が除去されてもよく、医療用インプラント14が置換体としてその位置に配置されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、送達システム12は、それを貫通して延在する1つ以上の管腔を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、送達システム12は、第1の管腔、第2の管腔、第3の管腔、および第4の管腔を含んでもよい。概して、1つ以上の管腔は、送達システム12の全長に沿って延在する。しかしながら、1つ以上の管腔のうちの1つ以上が送達システム12の全長の一部のみに沿って延在する、他の実施形態が想定される。例えば、いくつかの実施形態において、第4の管腔は、送達システム12の遠位端のすぐ手前で停止してもよく、および/またはその遠位端で充填されて、送達システム12の遠位端の近位で第4の管腔を効果的に終端させてもよい。
【0034】
送達システム12の第1の管腔内には、例えばアクチュエータ部材50などの少なくとも1つのアクチュエータ部材が配置されてもよく、アクチュエータ部材50は、医療用インプラント14を送達構成と展開構成との間で作動させる(すなわち、拡張および/または伸長させる)ために使用されてもよい。場合によっては、アクチュエータ部材(複数可)50は、本明細書では、「アクチュエータ要素」という用語と呼ばれるか、または互換的に使用され得る。換言すれば、医療用インプラントシステム10は、少なくとも1つのアクチュエータ部材50を含むことができる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアクチュエータ部材50は、2つのアクチュエータ部材50、3つのアクチュエータ部材50、4つのアクチュエータ部材50、または別の適切なもしくは所望の数のアクチュエータ部材50を含んでもよい。説明のみを目的として、医療用インプラントシステム10および/または医療用インプラント14は、3つのアクチュエータ部材50を備えて示されている。
【0035】
少なくともいくつかの実施形態において、第1の管腔は、低摩擦ライナ(例えば、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)ライナ)で裏打ちされてもよい。ピン解放マンドレル20が、第2の管腔内に配置されてもよい。少なくともいくつかの実施形態において、第2の管腔は、ハイポチューブライナで裏打ちされてもよい。第3の管腔はガイドワイヤ管腔であってもよく、いくつかの実施形態において、第3の管腔はまた、ハイポチューブライナで裏打ちされてもよい。いくつかの実施形態において、第4の管腔は、非伸縮性ワイヤまたは他の補強部材を収容するために使用されてもよい。非伸縮性ワイヤまたは他の補強部材の形態は様々であってもよい。いくつかの実施形態において、非伸縮性ワイヤは、ステンレス鋼編組の形態をとってもよい。非伸縮性ワイヤは、編組の両側に配置された一対の長手方向に延在するアラミドおよび/またはパラアラミドストランド(例えば、KEVLAR(登録商標))を任意選択で含んでもよい。一般に、非伸縮性ワイヤは、第4の管腔「内に配置される(disposed within)」のではなく、第4の管腔内に埋め込まれてもよい。加えて、非伸縮性ワイヤは、遠位端領域に隣接する位置まで延在してもよいが、送達システム12の遠位端まで完全に延在しなくてもよい。例えば、第4の管腔の短い遠位部分は、送達システム12の遠位端に隣接してポリマー材料で充填されてもよい。
【0036】
送達システム12はまた、遠位端領域から遠位に延在するガイドワイヤチューブ延長部を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ノーズコーン(nose cone)がガイドワイヤチューブ延長部に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、ノーズコーンは、概して、非外傷性形状を有するように設計される。いくつかの実施形態において、ノーズコーンはまた、医療用インプラント14の送達中に送達システム12の遠位先端部に当接するように構成されたリッジ(ridge)またはレッジ(ledge)を含んでもよい。
【0037】
図1は、医療用インプラントシステム10および/または医療用インプラント14のいくつかの選択された構成要素を示す。例えば、ここでは、医療用インプラント14が、「送達」構成と「展開」構成との間で可逆的に作動可能である管状アンカー部材または編組40に固定され得る複数の弁尖16(valve leaflet)(例えば、ウシ心膜)を含み得ることが分かる。いくつかの実施形態において、アンカー部材または編組40は、形状または構成が実質的に円筒形であってもよい。アンカー部材または編組40のためのいくつかの好適であるが非限定的な材料、例えば、金属材料またはポリマー材料が、以下に説明され得る。いくつかの実施形態において、医療用インプラント14は、アンカー部材または編組40を「展開」構成で固定するように構成された複数の係止機構を含んでもよい。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアクチュエータ部材50は、複数の係止機構と係合し、アンカー部材または編組40を「送達」構成と「展開」構成との間で作動させるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、1つのアクチュエータ部材50は、1つの係止機構に対応し、それと係合し、および/またはそれを作動させてもよい。いくつかの実施形態において、1つのアクチュエータ部材50は、2つ以上の係止機構に対応し、それと係合し、および/またはそれを作動させてもよい。他の構成も企図される。
【0038】
複数のアクチュエータ部材50および/または対応する係止機構が、医療用インプラント14に含まれてもよいが、明確かつ簡潔にするために、以下の説明の多くは、これらの要素の単一の例に限定される。当業者であれば、以下に説明する実施例の特徴および動作が、複数の係止機構および/または複数のアクチュエータ部材50の全ての例に等しく適用され得ることを容易に認識するであろう。複数の係止機構および/または複数のアクチュエータ部材50のためのいくつかの好適であるが非限定的な材料、例えば、金属材料またはポリマー材料が、以下に説明され得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、複数の係止機構はそれぞれ、例えば、弁尖16の交連部分において、軸方向に移動可能な支柱部材76(支柱部材76は、「交連支柱(commissure post)」と称されることもある)と、アンカー部材または編組40に固定して取り付けられるバックル部材58とを備えてもよい。換言すれば、少なくともいくつかの実施形態において、医療用インプラント14は、複数の支柱部材76および対応する複数のバックル部材58を含むことができる。他の構成および対応も企図される。いくつかの実施形態において、支柱部材76は、「展開」構成においてバックル部材58に係合してもよい。いくつかの実施形態において、支柱部材76は、「送達」構成においてバックル部材58から軸方向または長手方向に離間されてもよい。支柱部材76および/またはバックル部材58のためのいくつかの好適であるが非限定的な材料、例えば、金属材料またはポリマー材料が、以下に説明され得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、軸方向に移動可能な支柱部材76の遠位端は、縫合糸、テザー、接着剤、または他の好適な要素96等によって、アンカー部材または編組40の遠位部分に固定および/または取り付けられてもよい(すなわち、固定して取り付けられる、移動可能に取り付けられる、取り外し可能に取り付けられる等)。いくつかの実施形態において、支柱部材76は、アンカー部材または編組40に対して軸方向または長手方向に移動可能であってもよく、および/またはバックル部材58は、アンカー部材または編組40に固定して取り付けられてもよい。バックル部材58がアンカー部材または編組40に移動可能または取外し可能に取り付けられ得る他の実施形態が企図される。いくつかの実施形態において、支柱部材76は、アンカー部材または編組40に固定して取り付けられてもよく、バックル部材58は、アンカー部材または編組40に固定して取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、支柱部材76およびバックル部材58のうちの一方は、アンカー部材または編組40に固定して取り付けられてもよく、他方は、アンカー部材または編組40に移動可能または取外し可能に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、支柱部材76は、アンカー部材または編組40に移動可能または取外し可能に取り付けられてもよく、バックル部材58は、アンカー部材または編組40に移動可能または取外し可能に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、支柱部材76は、アンカー部材または編組40の遠位端に固着または取り付けられてもよい(すなわち、固定して取り付けられる、移動可能に取り付けられる、取り外し可能に取り付けられる等)。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、アンカー部材または編組40の近位部分に固定または取り付けられてもよい。いくつかの実施形態において、バックル部材58は、アンカー部材または編組40の近位端に、またはそれに固定または取り付けられてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、医療用インプラント14は、個々の対応する支柱部材76において、それに隣接して、および/またはそれを(少なくとも部分的に)使用して、アンカー部材または編組40に固定された複数の弁尖16のうちの1つ以上を含んでもよい。弁尖16はまた、アンカー部材または編組40の基部または遠位端に固定されてもよい。複数の支柱部材76に隣接して(例えば、整列して)配置されるのは、対応する複数のバックル部材58である。図示された例において、1つのバックル部材58が、3つの支柱部材76の各々に隣接してアンカー部材または編組40に取り付けられている。したがって、アンカー部材または編組40は、合計して、3つのバックル部材58と、それに取り付けられた3つの支柱部材76とを有する。同様に、1つのアクチュエータ部材50が、各支柱部材76およびバックル部材58と動作可能に関連付けられてもよく、図示された例では合計3つのアクチュエータ部材50である。より少ないまたはより多いバックル部材58、支柱部材76、およびアクチュエータ部材50が利用され得る他の実施形態が企図される。いくつかの実施形態において、シール44は、アンカー部材または編組40の周囲に配置されてもよく、用語が示唆するように、展開時に対象の標的部位または領域内および/または標的部位または領域に対して医療用インプラント14を封止するのに役立ち得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、医療用インプラント14と送達システム12との間の取り付けは、カプラ32の使用によって行われてもよい。いくつかの実施形態において、カプラ32は、概して、送達システム12の周囲に配置され得る、および/またはそれに取り付けられ得る、円筒形基部(図示せず)を含んでもよい。バックル部材58のうちの1つの近位端で医療用インプラント14と係合するようにそれぞれ構成された複数のフィンガ34(例えば、2つ、3つ、4つなど)が、基部から遠位に突出している。フィンガ34とバックル部材58とを一緒に保持するのをさらに助けるために、カプラ32のフィンガ34の周りにカラー36を配置することができる。ガイド38は、カラー36の近位のフィンガ34の各々を覆って(over)配置されてもよく、カプラ32のフィンガ34に隣接して延在する(かつそれに対して軸方向に摺動可能である)複数のアクチュエータ部材50と関連付けられたカプラ32のフィンガ34を維持するように機能してもよい。最後に、ピン解放アセンブリ18は、支柱部材76、バックル部材58、およびアクチュエータ部材50を互いに関連付けた状態に保つ連結構造であってもよい。いくつかの実施形態において、ピン解放アセンブリ18は、コイル状接続部24を介して互いに接合され、フェルール22によってピン解放マンドレル20に保持され得る複数の個々のピン部材26を含んでもよい。カプラ32、複数のフィンガ34、カラー36、ガイド38、ピン解放アセンブリ18、複数の個々のピン部材26、ピン解放マンドレル20、および/またはフェルール22のためのいくつかの好適であるが非限定的な材料、例えば、金属材料またはポリマー材料が、以下に説明され得る。
【0043】
送達時、医療用インプラント14は、バックル部材58の突出近位端と結合されているカプラ32のフィンガ34(および連結部を覆って配置されたカラー36によってその位置に保持されている)の結合によって、かつ複数のアクチュエータ部材50および支柱部材76を一緒に固定するピン部材26によって、送達システム12の遠位端に固定され得る。医療用インプラント14が目的の標的部位または領域に前進させられるとき、送達システム12は、医療用インプラント14を露出させるために引き抜かれるか、または後退させられてもよい(または医療用インプラント14は、送達システム12に対して遠位に前進させられてもよい)。次いで、複数のアクチュエータ部材50を使用して、複数のアクチュエータ部材50を近位方向に後退させて支柱部材76を引っ張ってバックル部材58と係合させることによって、医療用インプラント14および/またはアンカー部材または編組40を軸方向に短縮および/または半径方向に拡張し、「送達」構成から拡張または「展開」構成(例えば、図1に示すような)に「係止」することができる。最後に、ピン部材26を取り外すことができ、それによって複数のアクチュエータ部材50を支柱部材76から分離し、それによって複数のアクチュエータ部材50およびカプラ32のフィンガ34を医療用インプラント14から引き抜くこと(withdrawn)ができ、それによって医療用インプラント14(および/またはアンカー部材または編組40)を標的部位または対象領域において「解放」構成で展開する。換言すれば、「展開」構成と「解放」構成との間の1つの違いは、ピン部材26が支柱部材76に取り付けられているか否かである。「展開」構成では、ピン部材26は、依然として支柱部材76に取り付けられており、したがって、例えば、医療用インプラント14を再配置するために、医療用インプラント14(および/またはアンカー部材もしくは編組40)が、複数のアクチュエータ部材50の遠位前進を介して係止解除されることを可能にする。いくつかの実施形態において、複数の弁尖16の少なくとも一部は、アンカー部材または編組40の中心長手方向軸に沿った共通位置でバックル部材58の少なくとも一部と軸方向または長手方向に重なってもよく、これにより、いくつかの実施形態において、医療用インプラント14の全長または高さをより短くすることができる。
【0044】
図2は、大動脈弁82において展開された構成にある、少なくとも送達システム12および医療用インプラント14を含む例示的な医療用インプラントシステム10の概略図を示す。上述したように、医療用インプラントシステム10の使用前に、患者は、CTスキャンおよび/または心エコー図を用いてスクリーニングされてもよい。動脈アクセスは、血管系を通ってシステムを送達するために使用されてもよい。概して、送達システム12は、血管系を通って前進させられ、医療用インプラント14が送達システム12内で折り畳まれた送達構成にある状態で、大腿動脈を介して大動脈弓80の中へまたはそれに向かって操向されてもよい。場合によっては、送達システム12は、ガイドワイヤ伝いに前進させられてもよいが、これは必須ではない。いくつかの実装では、ガイドワイヤおよび送達システム12、ピッグテールカテーテル(明示的に図示せず)ならびに/または他のデバイスは、ガイドワイヤが送達システム12を先導する状態で、一緒に追跡されてもよい(例えば、ガイドワイヤをある距離前進させ、次いで、送達システム12をガイドワイヤ伝いにほぼ同じ距離前進させる)。場合によってはガイドワイヤが柔軟であるか、または剛性を欠く場合、ガイドワイヤは、送達システム12の内側に導入され、次いで、血管系内の他のデバイスよりも先に前進させられてもよい。
【0045】
送達システム12は、大動脈弓80の下降部分の中へ前進させられてもよい。そのように提供されるとき、ピッグテールカテーテルは、次いで、送達システム12を通って前進させられてもよい(それが送達システム12とともにまたは送達システム12より前に前進させられなかった場合)。いくつかの実施形態において、ピッグテールカテーテルは、大動脈アーチ80の上昇部分の中へ前進させられてもよく、そこで、放射線不透過性液または造影剤を送達し、手技の可視化を促進してもよい。他の実施形態において、ピッグテールカテーテルは、大動脈弁82の尖または弁尖84に、またはそれに対して位置付けられてもよい。例えば、1つ以上のピッグテールカテーテルは、非冠状動脈尖(NCC)および/または右冠状動脈尖(RCC)に位置付けられてもよい。送達システム12の追跡は、例えば、放射線不透過性マーカ(例えば、送達システム12の遠位端にある)および/または放射線不透過性液もしくは造影剤を使用して、蛍光透視鏡下で行われてもよい。放射線不透過性液または造影剤は、ピッグテールカテーテルおよび/または送達システム12を介して提供されてもよい。場合によっては、ガイドワイヤまたはTAVRワイヤを挿入し、次いで医療用インプラント14を前進させる前に、放射線不透過性液または造影剤を使用して大動脈造影を行ってもよい。
【0046】
医療用インプラント14が標的位置にあるか、または標的位置に隣接すると、送達システム12は、医療用インプラント14を露出させるために引き抜かれるか、または後退させられてもよい(または医療用インプラント14は、送達システム12に対して遠位に前進させられてもよい)。次いで、複数のアクチュエータ部材50を使用して、上述したように、複数のアクチュエータ部材50を近位方向に後退させて支柱部材76を引っ張ってバックル部材58と係合させることによって、医療用インプラント14および/またはアンカー部材もしくは編組40を軸方向に短縮および/または半径方向に拡張して、送達構成から拡張または展開構成(例えば、図2に示すような)に係止することができる。医療用インプラント14は、天然の弁82の弁尖84と置換させてもよく、または弁尖84が切除されてもよいことが企図される。医療用インプラント14が完全に係止されると、医療用インプラント14は、依然として送達システム12に連結されながら、血行動態安定性を維持することが可能な完全に機能的な弁であり得る。
【0047】
医療用インプラント14を展開構成から解放構成に移動させる前に、同医療用インプラント14を隣接する組織に固定することが望ましい場合があることが企図される。場合によっては、1つまたは複数の固定機構またはクリップアセンブリ104a、104b(集合的に104)を使用して、医療用インプラント14を隣接する組織に固定することができる。いくつかの事例では、固定機構は、限定するものではないが、Boston Scientific,Corporation製のResolution(商標)ClipまたはResolution 360(商標)等の止血クリップであってもよい。固定機構104はクリップとして記載されているが、天然の組織への医療用インプラント14の取り付けを可能にする任意の構造が使用され得ることが企図される。
【0048】
クリップアセンブリ104を展開するために、交連クランプカテーテル、または固定機構送達システム130が、血管系を通って医療用インプラント14の移植位置まで前進させられてもよい。場合によっては、交連クランプカテーテル130は、図2に示されるように、送達システム12の外側にある血管系を通って前進させられてもよい。他の場合には、交連クランプカテーテル130は、送達システム12の管腔を通って前進させられてもよい。交連クランプカテーテル130は、1つ以上のクリップアセンブリ104を送達して、医療用インプラント14を天然の組織に固定するために使用され得る。クリップアセンブリ104は、天然の組織(限定されるものではないが、例えば天然の弁尖84等)および医療用インプラント14の一部の両方を把持するように構成されてもよい。
【0049】
概して、クリップアセンブリ104は、交連クランプカテーテル130の遠位端に装填または結合されてもよい。次いで、交連クランプカテーテル130は、クリップアセンブリ104が標的位置に隣接するように、(例えば、血管系を通って、または送達システム12の管腔を通って)前進させられてもよい。次に、クリップアセンブリ104を展開することができる。場合によっては、クリップを展開することは、交連クランプカテーテル130の一部を回転させてクリップアセンブリ104を解放することを含んでもよい。他の場合には、軸方向に変位された機構が、クリップアセンブリ104を解放するために利用され得る。これらはいくつかの例にすぎない。必要に応じて、他の解放機構を使用してもよい。
【0050】
場合によっては、クリップアセンブリ104は、医療用インプラント14の1つ以上の交連(例えば、医療用インプラント14の弁尖16が当接する場所)に、またはその付近に位置付けられてもよい。同一の交連クランプカテーテル130が、複数のクリップアセンブリ104を送達するために使用され得る。例えば、第1のクリップアセンブリ104aは、医療用インプラント14および天然の組織に展開または固定されてもよく、交連クランプカテーテル130は、身体から除去され、第2のクリップアセンブリ104bは、交連クランプカテーテル130内に装填される。次いで、交連クランプカテーテル130は、血管系または送達システム12を通って標的場所に前進させられ、第2のクリップアセンブリ104bを展開してもよい。これは、所望の数のクリップアセンブリ104に対して繰り返され得る。例示的なクリップ送達システムは、同一出願人による発明の名称が「HEMOSTASIS RELOADABLE CLIP RELEASE MECHANISM」である米国特許第10,624,642号明細書に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
図3は、例示的なクリップアセンブリ104および例示的な交連クランプカテーテル130の遠位端領域の断面図を示す。クリップアセンブリ104は、交連クランプカテーテル130の遠位部分上に装填可能であり得る。交連クランプカテーテル130は、標的領域(例えば、大動脈弁または他の治療領域)におけるクリップアセンブリ104の展開後に、新しいクリップアセンブリ104が交連クランプカテーテル130上に装填され、それにより同じ交連クランプカテーテル130が、新しいクリップアセンブリ104を標的領域の第2の部分に送達するために使用され得るように構成され得る。クリップアセンブリ104は、一対のクリップアーム106を含んでもよく、その近位端108は、本実施形態において、カプセル112内に摺動可能に受容されるヨーク110に連結される。クリップアーム106は、その遠位端114がカプセル112内に引き込まれていないときに互いから離れて組織受承構成に移動するように付勢されてもよい。カプセル112内に引き込まれると、カプセル112の内面は、クリップアーム106を拘束し、その遠位端114を組織クリッピング構成で一緒に保持することができる。ヨーク110は、クリップアーム106を組織受承構成と組織クリッピング構成との間で移動させるために、カプセル112内で長手方向に摺動可能であってもよい。
【0052】
クリップアーム106の各々は、近位端108から遠位端114まで延在し得る。クリップアーム106の各々の遠位端114は、クリップアーム106の他方の遠位端114に向かって横方向内側に突出して、それらの間の標的組織の把持を容易にすることができる。しかしながら、これは必須ではない。遠位端114は、例えば、歯および/または突起等の他の把持特徴部をさらに含んでもよい。クリップアーム106は、クリップアーム106を組織把持構成でカプセル112内に係止するための特徴部を含んでもよい。例えば、クリップアーム106の近位端108の各々は、そこから横方向外向きに延在する係止タブ116を含んでもよい。クリップアーム106は、クリップアーム106が組織クリッピング構成に係止されているときに、クリップアーム106の各々の係止タブ116が外向きに跳ねてカプセル112の一部分に係止係合するように付勢される。係止タブ116のカプセル112との係合は、クリップアセンブリ104を組織クリッピング構成に係止し、クリップアーム106の遠位端114間に受承される任意の組織および/または医療デバイス(限定されるものではないが、医療用インプラント14等)を確実に把持し、クリップアーム106がカプセル112から近位に移動されることを防止する。ヨーク110をカプセル112に対して移動させると、それに応じてクリップアーム106をカプセル112に対して移動させることとなり、その結果、クリップアーム106は、ヨーク110の移動を介して組織受承構成と組織クリッピング構成との間で移動され得る。
【0053】
ヨーク110は、交連クランプカテーテル130の制御部材132の拡大端部134を受容するように構成され得る。例示的な一実施形態において、拡大端部134は、ヨーク110の対応するサイズおよび形状のソケット内に受承されるボールとして構成されてもよい。カプセル112に対する制御部材132の長手方向の移動は、組織受承構成と組織クリッピング構成との間のクリップアーム106の移動を制御し得る。
【0054】
カプセル112は、近位端118から遠位端120まで長手方向に延在し、それを貫通して長手方向に延在するチャネル122を含む。チャネル122は、ヨーク110およびクリップアーム106の少なくとも近位部分をその中に受容するようなサイズおよび形状にされ得る。クリップアーム106の近位端108は、係止タブ116が直径増大部分124の内部に係合し、それによってクリップアセンブリ104を組織クリッピング構成に係止するまで、少なくとも部分的に外向きに跳ね返ることを可能にしてもよい。直径増大部分124は、係止タブ116が直径増大部分124に係合するように制御ワイヤ拡大端部134をさらに近位に動かすことによってクリップアセンブリ104を組織クリッピング構成で係止することが望まれるまで、クリップアーム106を組織受承構成とクリッピング構成の間で繰り返し動かすことができるようにカプセル112に沿って位置決めされている。交連クランプカテーテル130からクリップアセンブリ104を解放するために、制御部材132は、拡大された遠位端部134がヨーク110を係合解除するまで近位に後退させられ得る。制御部材132をさらに近位に作動すると、カプセル112をヨーク110(したがって、クリップアセンブリ104)から係合解除できる。
【0055】
図2に戻ると、場合によっては、少なくとも1つのクリップアセンブリ104が、医療用インプラント14の各交連に位置付けられてもよい。そのような事例では、3つの交連を有する医療用デバイス14は、3つのクリップアセンブリ104を有し得る。他の場合では、交連のうちの1つ以上は、それに隣接して固定される2つ以上のクリップアセンブリ104を有してもよい。いくつかの交連は、クリップアセンブリ104を備えていなくてもよいことがさらに企図される。例えば、医療用インプラント14を身体の組織に固定するために、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上のクリップアセンブリ104が使用されてもよい。クリップアセンブリ104は、交連支柱76、編組40、交連支柱76を編組40に固定するために使用される1つまたは複数の縫合糸96(例えば、図1参照)などに結合され得ることが企図される。医療用インプラント14の他の部分を所望に応じて使用してもよい。
【0056】
クリップアセンブリ104が展開される(例えば、医療用インプラント14および天然の組織に固定される)と、臨床医は、医療用インプラント14の安定性を試験してもよい。医療用インプラント14が安定していないか、または脱落の危険性があると考えられる場合、臨床医は、追加のクリップアセンブリ104を医療用インプラント14および天然の組織に固定してもよい。医療用インプラント14が安定すると、臨床医は、図4に示されるように、医療用インプラント14を「展開」構成から「解放」構成に移動させてもよい。医療用インプラント14が解放された後、送達システム12および任意の他の構成要素(交連クランプカテーテル130、ピッグテールカテーテル、ガイドワイヤ等を含むが、それらに限定されない)は、それらがまだ除去されていない場合、除去されてもよい。
【0057】
図5~12は、大動脈弁82に、またはその付近に医療用インプラント14を固定するための代替的な方法およびシステムを示す。図5~12は、大動脈弁82に関して記載されているが、方法およびシステムは、必要に応じて、他の解剖学的位置において使用され得ることが企図される。送達システム12および医療用インプラント14は、上記と同様の様式で送達されてもよい。概して、送達システム12は、医療用インプラント14が送達システム12内で折り畳まれた送達構成にある状態で、大腿動脈を介して大動脈弓80の中へ、または大動脈弓80に向かって操縦され得る。場合によっては、送達システム12は、ガイドワイヤ伝いに前進させられてもよいが、これは必須ではない。いくつかの実装では、ガイドワイヤおよび送達システム12、ピッグテールカテーテル200、および/または他のデバイスは、ガイドワイヤが送達システム12を先導する状態で、一緒に追跡されてもよい(例えば、ガイドワイヤをある距離前進させ、次いで、送達システム12をガイドワイヤ伝いにほぼ同じ距離前進させる)。場合によってはガイドワイヤが柔軟であるか、または剛性を欠く場合、ガイドワイヤは、送達システム12の内側に導入され、次いで、血管系内の他のデバイスよりも先に前進させられてもよい。
【0058】
送達システム12は、大動脈弓80の下降部分の中へ前進させられてもよい。そのように提供されるとき、ピッグテールカテーテル200は、次いで、送達システム12を通って前進させられてもよい(それが送達システム12とともに前進させられなかった場合)。場合によっては、ピッグテールカテーテル200は、送達システム12の外部の血管系を通って、または送達システム12に沿って前進させられてもよい。いくつかの実施形態において、ピッグテールカテーテル200は、大動脈アーチ80の上昇部分の中へ前進させられてもよく、そこで、放射線不透過性液または造影剤を送達し、手技の可視化を促進してもよい。ピッグテールカテーテル200の遠位端領域202は、ほぼ弓形形状(これは必須ではないが)を有してもよく、その中に1つ以上の開口204a、204b、204c、204d(集合的に204)を含んでもよい。1つ以上の開口204は、ピッグテールカテーテル200の管腔と流体連通してもよく、放射線不透過性液または造影剤を送達するように構成されてもよい。他の実施形態において、ピッグテールカテーテル200は、大動脈弁82の尖または弁尖84に、またはそれに対して位置付けられてもよい。いくつかの実施形態において、ピッグテールカテーテル200は、本明細書でより詳細に説明されるように、放射線不透過性液または造影剤の送達のための第1の場所、およびアンカーデバイスの送達のための第2の場所に送達されてもよい。送達システム12の追跡は、例えば、放射線不透過性マーカ(例えば、送達システム12の遠位端にある)および/または放射線不透過性液もしくは造影剤を使用して、蛍光透視鏡下で行われてもよい。放射線不透過性液または造影剤は、ピッグテールカテーテル200および/または送達システム12を介して提供されてもよい。
【0059】
医療用インプラント14が標的位置にある、または標的位置に隣接すると、送達システム12は、医療用インプラント14を露出させるために引き抜かれるか、または後退させられてもよい(または医療用インプラント14は、送達システム12に対して遠位に前進させられてもよい)。図5は、大動脈弁82に隣接するピッグテールカテーテル200を示すが、医療用インプラントの展開中、ピッグテールカテーテル200は、所望に応じて、大動脈弓80または別の位置に位置付けられてもよい。複数のアクチュエータ部材50を使用して、上述したように、複数のアクチュエータ部材50を近位方向に後退させて支柱部材76を引っ張ってバックル部材58と係合させることによって、医療用インプラント14および/またはアンカー部材もしくは編組40を軸方向に短縮および/または半径方向に拡張して、送達構成から拡張または展開構成(例えば、図5に示すような)に係止することができる。医療用インプラント14は、天然の弁82の弁尖84と置き換えてもよく、または弁尖84が切除されてもよいことが企図される。医療用インプラント14が完全に係止されると、医療用インプラント14は、依然として送達システム12に連結されながら、血行動態安定性を維持することが可能な完全に機能的な弁であってもよい。
【0060】
医療用インプラント14を展開構成から解放構成に移動させる前に、同医療用インプラント14を隣接する組織に固定することが望ましい場合があることが企図される。場合によっては、ピッグテールカテーテル200は、医療用インプラント14を天然の弁尖84のうちの1つ以上に固定するために使用され得るアンカーを送達するために使用されてもよい。図6は、例示的なピッグテールカテーテル200の遠位端領域202の拡大斜視図である。ピッグテールカテーテル200は、体外に留まるように構成された近位端から遠位端領域202まで延びる管状の長尺状シャフト206を含む。長尺状シャフト206は、その近位端から遠位端領域202まで延在する第1の管腔208を含む。ある場合には、管腔208は、長尺状シャフト206の遠位端210の近位で終端してもよく、他の場合には、管腔208は、遠位開口部214を画定するように遠位端210まで延在してもよい。いくつかの実施形態において、長尺状シャフト206は、第2の管腔216を含んでもよい。場合によっては、第2の管腔216は、長尺状シャフト206の遠位端210の近位で終端してもよく、他の場合には、管腔208は、遠位開口部218を画定するように遠位端210まで延在してもよい。そのように提供される場合、2つ以上の管腔208、216は、並んでもしくは同一線上の配置で、管配置内の同軸もしくは管内で、またはそれらの組み合わせで配置されてもよい。そのように提供される場合、2つ以上の管腔208、216は、互いから流体的に隔離されてもよいことがさらに企図される。
【0061】
外部付勢力がない場合、または展開構成では、遠位端領域202は、湾曲したピッグテールまたはJ字形状をとるように構成される。遠位端領域202は、所望に応じて、360度未満または360度超を含む所望の任意の程度の湾曲を有し得ることが企図される。遠位端領域202は、例えば、管腔208、216のうちの1つ以上の中に摺動可能に配置されるガイドワイヤもしくは補剛部材、またはピッグテールカテーテル200の外側表面を覆って配置されるより剛性の管(外側シース102等であるが、これに限定されない)によって、ほぼ直線状または送達構成に付勢されてもよい。これらは単なる例であり、ピッグテールカテーテル200を特定の構成に限定することを意図するものではない。
【0062】
ピッグテールカテーテル200は、サイドポート212を含む。単一のサイドポート212のみが図示されているが、ピッグテールカテーテル200は、必要に応じて、2つ以上のサイドポート212を含んでもよい。いくつかの実施形態において、第1の組の開口204は、放射線不透過性液源および/または造影剤源と流体連通してもよく、サイドポート212は、移植可能なアンカー部材または固定部材をピッグテールカテーテル200の第2の管腔216から患者内に展開するように構成されてもよい。例えば、移植可能なアンカー部材は、本明細書でより詳細に説明されるように、剛性ガイドワイヤまたは他の押圧要素を使用して、サイドポート212から大動脈弁82の天然の弁尖84および医療用インプラント14の中に押し出されてもよい。サイドポート212は、押圧要素がピッグテールカテーテル200に対して垂直に出るように配置されてもよい。
【0063】
場合によっては、第1の組の開口部204は、ピッグテールカテーテル200の遠位端領域202が展開構成にあるときに、第1の組の開口部204が遠位端領域202(またはその凹面上)の湾曲に対して半径方向内向きに位置付けられる、または向けられるように、長尺状シャフト206上に位置付けられてもよい。しかしながら、これは必須ではない。場合によっては、第1の組の開口部204は、ピッグテールカテーテル200の遠位端領域202が展開構成にあるときに、第1の組の開口部204が遠位端領域202(またはその凸面上)の湾曲に対して半径方向外向きに配置または方向付けられる(明示されていない)ように、長尺状シャフト206上に配置されてもよい。第1の組の開口部204の位置は、遠位端領域202の半径方向内側または外側表面に限定されないことが企図される。第1の組の開口204は、所望に応じて、長尺状シャフト206の周りの任意の円周方向位置、または円周方向位置の組み合わせに位置付けられてもよいことが企図される。
【0064】
場合によっては、サイドポート212は、ピッグテールカテーテル200の遠位端領域202が展開構成にあるときに、サイドポート212が遠位端領域202(またはその凸面上)の湾曲に対して半径方向外向きに配置または方向付けられるように、長尺状シャフト206上に配置されてもよい。しかしながら、これは必須ではない。場合によっては、サイドポート212は、ピッグテールカテーテル200の遠位端領域202が展開構成にあるときに、サイドポート212が遠位端領域202(またはその凹面上)の湾曲に対して半径方向内向き(明示されていない)に配置または方向付けられるように、長尺状シャフト206上に配置されてもよい。サイドポート212の位置は、遠位端領域202の半径方向内側または外側表面に限定されないことが企図される。サイドポート212は、長尺状シャフト206の周りの任意の円周方向位置、または円周方向位置の組み合わせに位置付けられてもよいことが企図される。
【0065】
図7は、別の例示的なピッグテールカテーテル300の拡大部分側面図である。ピッグテールカテーテル300は、体外に留まるように構成された近位端から遠位端領域302まで延びる管状の長尺状シャフト306を含む。長尺状シャフト306は、少なくとも、放射線不透過性液および/または造影剤を送達するように構成される第1の管腔308と、移植可能な放射線不透過性マーカを送達するように構成される第2の管腔318とを含む。2つ以上の管腔308、318は、並んでもしくは同一線上の配置で、管配置内の同軸もしくは管内で、またはそれらの組み合わせで配置されてもよい。2つ以上の管腔308、318は、別の管腔から流体的に隔離されてもよい。
【0066】
長尺状シャフト306は、第1の管腔308を画定する第1の部分314と、第2の管腔318を画定する第2の部分316とを含んでもよい。第1の部分314および第2の部分316は、互いに同じ長さを有する必要はないことが企図される。いくつかの実施形態において、長尺状シャフト306は、並列した管腔308、318を形成するように、単一モノリシック構造として押出成形されてもよい。他の実施形態において、長尺状シャフト306は、並列して配置され、接着剤などによって接続される第1および第2の別個の押出チューブなどの他の適切な手段によって形成されてもよい。
【0067】
第1の管腔308は、第1の部分314の近位端からその遠位端310に向かって延在してもよい。場合によっては、第1の管腔308は、第1の部分314の遠位端310の近位で終端してもよく、他の場合には、第1の管腔308は、遠位開口部(明示せず)を画定するように、遠位端310まで延在してもよい。第2の管腔318は、第2の部分316の近位端からその遠位端320に向かって延在してもよい。第2の管腔318は、遠位開口部322(例えば、遠位に面する)を画定するように、遠位端320まで延在してもよい。しかしながら、これは必須ではない。場合によっては、第2の管腔318は、遠位端320の近位で終端してもよい。そのような例では、移植可能な固定部材が第2の管腔318を通って前進し、そこから出ることを可能にするためにサイドポートが設けられてもよい。
【0068】
外部付勢力がない場合、または展開構成では、遠位端領域302は、湾曲したピッグテールまたはJ字形状をとるように構成される。遠位端領域302は、所望に応じて、360度未満または360度超を含む所望の任意の程度の湾曲を有し得ることが企図される。遠位端領域302は、例えば、管腔308内に摺動可能に配置されたガイドワイヤもしくは補剛部材、またはピッグテールカテーテル300の外面を覆って配置されたより剛性の管(例えば、外側シースであるが、これに限定されない)によって、ほぼ直線状または送達構成に付勢されてもよい。これらは単なる例であり、ピッグテールカテーテル300を特定の構成に限定することを意図するものではない。
【0069】
第1の部分314は、一組の穴または開口304a、304b、304c、304d(集合的に304)を含む。一組の開口部304は、必要に応じて、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の開口部を含んでもよい。一組の開口部304は、放射線不透過性液源および/または造影剤源と流体連通してもよい。これは、そのように所望される場合、別個の管腔308、318を通る放射線不透過性液および移植可能な固定部材の送達を可能にし得る。本明細書で説明されるように、第2の部分316は、遠位開口部322を含んでもよく、それを通って、移植可能な固定部材が展開可能である。例えば、移植可能な固定部材は、本明細書でより詳細に説明されるように、剛性ガイドワイヤまたは他の押圧要素を使用して、遠位開口部322から大動脈弁82の天然の弁尖84および医療用インプラント14内に押し出されてもよい。
【0070】
場合によっては、一組の開口部304は、ピッグテールカテーテル300の遠位端領域302が展開構成にあるときに、一組の開口部304が遠位端領域202(またはその凹面上)の湾曲に対して半径方向内向きに位置付けられる、または向けられるように、長尺状シャフト314上に位置付けられてもよい。しかしながら、これは必須ではない。場合によっては、第1の組の開口部304は、ピッグテールカテーテル300の遠位端領域302が展開構成にあるときに、第1の組の開口部304が遠位端領域302(またはその凸面上)の湾曲に対して半径方向外向きに配置または方向付けられる(明示されていない)ように、長尺状シャフト306上に配置されてもよい。一組の開口部304の位置は、遠位端領域302の半径方向内側または外側の表面に限定されないことが企図される。一組の開口部304は、所望に応じて、部分314の周りの任意の円周方向位置、または円周方向位置の組み合わせに位置付けられてもよいことが企図される。
【0071】
図5に戻って、移植可能なアンカーまたは固定部材を展開するために、送達針250は、ピッグテールカテーテル200の管腔208を通って前進させられ得る。移植可能な固定部材の送達は、図6に示されるピッグテールカテーテル200に関して説明されるが、限定されるものではないが、ピッグテールカテーテル300等の他のピッグテールカテーテル、または他の送達デバイスもしくはシステムが、所望に応じて使用されてもよいことに留意されたい。送達針250は、遠位端252から、体外に留まるように構成された近位端まで延在し得る。送達針250の遠位端252は、角度が付けられてもよく、またはそうでなければ、身体組織を貫通するように構成される鋭い先端部を画定してもよい。移植可能な固定部材およびプッシュワイヤを取り囲むように構成された管腔254は、送達針250の遠位端252から近位端まで延在してもよい。
【0072】
例示的な送達針250の遠位端領域256の部分断面図を示す図8を簡単に参照すると、移植可能な固定部材270は、その管腔254内に装填され得る。移植可能な固定部材270は、折り畳まれた送達構成(図8に示されるような)から拡張された展開構成(例えば、図11を参照)に拡張可能であってもよい。移植可能な固定部材270は、所望に応じて、遠位開口部258または近位開口部(明示的に図示せず)を通って送達針250の管腔254内に装填されてもよい。プッシュワイヤ290もまた、送達針250の管腔254内に装填されてもよい。移植可能な固定部材270が近位開口部を介して送達針250内に装填される場合、プッシュワイヤ290は、移植可能な固定部材270を、管腔254を通って同移植可能な固定部材270の遠位端252に隣接する位置まで押すために使用され得ることが企図される。移植可能な固定部材270が遠位開口部258を介して装填される場合、プッシュワイヤ290は、(移植可能な固定部材270の前または後に)近位開口部を介して、または移植可能な固定部材270の前に遠位開口部258を介して装填されてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材270およびプッシュワイヤ290は、ピッグテールカテーテル200を通って送達針250を前進させる前に、送達針250内に装填されてもよい。他の場合には、移植可能な固定部材270およびプッシュワイヤ290は、送達針250がピッグテールカテーテルを通って前進した後に、送達針250内に装填されてもよい。
【0073】
移植可能な固定部材270は、第1の拡張可能バスケットまたは遠位拡張可能バスケット272と、第2の拡張可能バスケットまたは近位拡張可能バスケット274とを含むことができる。バスケット272、274は、形状記憶材料または超弾性材料(例えば、ニチノールであるが、これに限定されない)から形成され得、その結果、バスケット272、274は、展開の際に自己拡張することが企図される。他の場合において、バスケット272、274は、バスケット272、274を折り畳まれた送達構成から拡張された展開構成に移動させるために、作動機構に連結され得る。バスケット272、274は、長尺状の連結部材276によって連結することができる。バスケット272、274は、半径方向に圧縮する力(例えば、送達針250の内側表面)がない場合、直径が拡張し得る。バスケット272、274は、ステントと同様の織られたまたは編まれた構造を有してもよい。しかしながら、これは必須ではない。いくつかの場合において、バスケット272、274は、レーザ切断されてもよく、または任意の他の折り畳み可能な構造であってもよい。拡張形態において、バスケット272、274は、送達針250の外径260よりも大きい断面寸法を有し得る。本明細書でより詳細に説明されるように、これは、移植可能な固定部材270を所望の位置に固定するのに役立ち得る。
【0074】
図5に戻ると、医療用インプラント14が「展開」構成になると、ピッグテールカテーテル200の遠位端領域202は、天然の弁尖84のうちの少なくとも1つの近くに、またはそれに隣接して位置付けられ得る。ピッグテールカテーテル200は、サイドポート212が天然の弁尖84に隣接するように配向される。送達針250は、事前に位置付けられていない場合、ピッグテールカテーテル200の管腔208を通って前進させられてもよい。送達針250は、サイドポート212を出るように、遠位に前進させられてもよい。場合によっては、送達針250は、ニチノール等であるが、それに限定されない、形状記憶材料または超弾性材料から形成されてもよい。送達針250は、送達針250の遠位端領域256の「記憶された」形状が、送達針の近位端領域の長手方向軸に対して湾曲するように、熱処理または硬化されてもよい。送達針250の遠位端領域256は、ピッグテールカテーテル200の管腔208内でほぼ直線状の構成に付勢され、それを貫通する前進を促進してもよい。送達針250の遠位端領域256がピッグテールカテーテル200を出ると、遠位端領域256は湾曲した「記憶された」形状に戻ることができる。これは、送達針250を天然の弁尖84に向かって方向付けるのに役立ち得る。他の実施形態において、送達針250は、その近位端から遠位端252までほぼ直線状であってもよい。
【0075】
移植可能な固定部材270の展開は、図9図11に関して説明される。図9図11は、図5の領域Aの拡大図を示しており、移植可能な固定部材270が様々な展開段階にある。送達針250の遠位端252は、天然の弁尖84を通って、ならびに医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44を通って押し込まれ得る。遠位端252が医療用インプラント14の管腔内に配置されると、図9に示すように、遠位バスケット272が送達針250から展開されるまで、プッシュワイヤ290を遠位に作動させて、移植可能な固定部材270を送達針250の管腔254から押し出すことができる。移植可能な固定部材270の送達は、移植可能な固定部材270の正確な展開を可能にするように、蛍光透視鏡下で行われてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材270、送達針250、および/またはプッシュワイヤ290は、移植可能な固定部材270の展開を容易にするために、1つまたは複数の放射線不透過性マーカを含んでもよい。遠位バスケット272が管腔254を出ると、遠位バスケット272は、その拡張構成を回復し得る。遠位バスケット272の拡張形状は、遠位バスケット272が、貫通する送達針250によって形成された医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の開口部を通過することができないように、送達針250の外径より大きくてもよい。
【0076】
遠位バスケット272が展開されると、送達針250は、図10に示されるように、遠位端252が天然の弁尖84の第1の側面86に隣接するまで、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の側壁の厚さならびに天然の弁尖84の厚さを貫通して近位に後退させられてもよい。本明細書で使用される場合、天然の弁尖84の第1の側86は、医療用インプラント14と接触していない弁尖84の側である。近位バスケット274と送達針250の内面との間の摩擦係合は、送達針250が近位に後退させられるとき、近位バスケット274を管腔254内に維持してもよい。場合によっては、送達針250の近位後退は、遠位バスケット272を、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の内面と係合させ得る。
【0077】
遠位端252が天然の弁尖84の第1の側86に配置されると、図11に示すように、近位バスケット274が送達針250から展開されるまで、プッシュワイヤ290を遠位に作動させて、移植可能な固定部材270を送達針250の管腔254から押し出すことができる。近位バスケット274が管腔254を出ると、近位バスケット274は、その拡張構成を回復し得る。近位バスケット274の拡張形状は、近位バスケット274が、貫通する送達針250によって形成された天然の弁尖84内の開口部を通過することを妨げられるように、送達針250の外径より大きくてもよい。長尺状の連結部材276は、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の側壁と天然の弁尖84とを組み合わせた厚さにほぼ等しい長さを有し得ることが企図される。他の場合には、長尺状の連結部材276は、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の側壁と天然の弁尖84とを組み合わせた厚さ未満の長さを有してもよい。これにより、移植可能な固定部材270は、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44ならびに天然の弁尖84に圧縮力を加えることができる。さらに他の場合には、長尺状の連結部材276は、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の側壁と天然の弁尖84とを組み合わせた厚さよりも大きい長さを有してもよい。これにより、移植可能な固定部材270と医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44と天然の弁尖84との間のいくらかの相対移動が可能になり得る。
【0078】
移植可能な固定部材270を送達する方法は、医療用インプラント14を体内に固定するために所望の回数だけ繰り返されてもよい。移植可能な固定部材270は、天然の弁尖84の各々を通って固定され得ることが企図される。しかしながら、これは必須ではない。医療用インプラント14は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上を含むがこれらに限定されない、所望の任意の数の移植可能な固定部材270で固定されてもよい。場合によっては、複数の移植可能な固定部材270を送達針250の管腔254内に装填して、2つ以上の移植可能な固定部材を送達するために送達針250を身体から除去する必要がないようにすることができる。他の場合には、送達針250は、各移植可能な固定部材270の送達後に除去され、追加の移植可能な固定部材270が再装填されてもよい。
【0079】
移植可能な固定部材270が展開される(例えば、医療用インプラント14および天然の組織に固定される)と、臨床医は、医療用インプラント14の安定性を試験することができる。医療用インプラント14が安定していないか、または脱落の危険性があると考えられる場合、臨床医は、医療用インプラント14と天然の組織(例えば、弁尖84)との間に1つ以上の追加の移植可能な固定部材270を送達および展開してもよい。医療用インプラント14が安定すると、臨床医は、図12に示されるように、医療用インプラント14を「展開」構成から「解放」構成に移動させてもよい。医療用インプラント14が解放された後、送達システム12および任意の他の構成要素(ピッグテールカテーテル200、ガイドワイヤ等を含むが、それらに限定されない)は、それらがまだ除去されていない場合、除去されてもよい。
【0080】
図13Aは、展開または拡張構成において、医療用インプラント14を身体の組織(例えば、天然の弁尖84)に固定するための別の例示的な移植可能なアンカーまたは固定部材400の概略側面図である。図13Bは、第2の、すなわち半径方向に折り畳まれた送達構成にある移植可能な固定部材400を示す。場合によっては、移植可能な固定部材400は、拡張展開構成よりも送達構成において細長く(例えば、より長く)てもよいが、これは必須ではない。拡張構成において、移植可能な固定部材400は、螺旋巻きであってもよく、または近位端404から遠位端402まで延在する略ばね様形状を有してもよい。ピッチ(例えば、1つのコイルの中心から隣接するコイルの中心までの距離)、巻きの角度、および/または隣接する巻きの間隔は、所望の効果を達成するために変更され得る。例えば、拡張構成において互いに接触する隣接する巻きを有する移植可能な固定部材400は、隣接する巻きの間にある程度の空間を有する移植可能な固定部材400よりも、移植可能な固定部材400が展開されたときに医療用インプラントおよび天然の組織に大きな圧縮力を及ぼすことがある。
【0081】
移植可能な固定部材400は、ニチノールなどであるがこれに限定されない形状記憶材料または超弾性材料から形成され得ることが企図される。移植可能な固定部材400は、移植可能な固定部材400の「記憶された」形状が図13Aのコイル状拡張構成になるように、熱処理または硬化されてもよい。移植可能な固定部材400は、移植可能な固定部材400の送達を容易にするために、送達針(例えば、送達針250)の管腔内で、図13Bに示すように、ほぼ直線構成に付勢されてもよい。移植可能な固定部材400が送達針から出ると、移植可能な固定部材400は、コイル状の「記憶された」形状に戻ることができる。移植可能な固定部材400は、その遠位端402および近位端404に配置された1つまたは複数の保持特徴部408、410を含むことができる。場合によっては、図示された保持特徴部408、410のうちの1つのみが存在してもよく、または保持特徴部のいずれも存在しなくてもよい。場合によっては、保持特徴部408、410は、非外傷性であってもよい。保持特徴部408、410は、フィラメント406の断面寸法よりも大きい断面寸法を有する、ほぼ球状または球根状の形状を有してもよい。保持特徴部408、410は、移植可能な固定部材400が展開されると、移植可能な固定部材400を所望の位置に維持するのを助けることができる。保持特徴部408、410は、所望に応じて他の形状をとってもよいことが企図される。
【0082】
移植可能な固定部材400は、本明細書に記載の移植可能な固定部材270と同様の方法で展開されてもよい。例えば、移植可能な固定部材400は、本明細書に記載の送達針250などであるがこれに限定されない送達針内に装填されてもよく、送達針は、本明細書に記載のピッグテールカテーテル200、300などであるがこれに限定されないピッグテールカテーテルを通って前進される。送達針の遠位端は、天然の弁尖を通って、ならびに医療用インプラントの側壁、アンカー部材、および/またはシールを通って押動されてもよい。遠位端が医療用インプラントの管腔内に配置されると、本明細書に記載のプッシュワイヤ290などであるがこれに限定されないプッシュワイヤを遠位に作動させて、移植可能な固定部材400の一部が送達針から展開されるまで、移植可能な固定部材400の遠位端領域を送達針の管腔から押し出すことができる。移植可能な固定部材400の送達は、移植可能な固定部材400の正確な展開を可能にするために蛍光透視鏡下で行われてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材400、送達針、および/またはプッシュワイヤは、移植可能な固定部材400の展開を容易にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカを含んでもよい。移植可能な固定部材400の遠位端402が管腔から出ると、移植可能な固定部材400の展開された部分は、その拡張構成を回復することができる。移植可能な固定部材400の拡張形状は、移植可能な固定部材400が貫通する送達針によって形成された開口部を通過することができないように、送達針の外径より大きくてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材400は、少なくとも1つの巻回が展開されるまで遠位に前進されてもよい。しかしながら、これは必須ではない。それが所望されるのであれば、1つの完全な巻回未満のものが、医療デバイス(medial device)の管腔内に展開され得ることが企図される。
【0083】
移植可能な固定部材400の遠位端領域が少なくとも部分的に展開(または拡張)されると、送達針は、送達針の遠位端が天然の弁尖の第1の側に隣接するまで、医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールの側壁の厚さならびに天然の弁尖の厚さを通って近位に後退され得る。本明細書で使用される場合、天然の弁尖の第1の側は、医療用インプラントと接触していない弁尖の側である。移植可能な固定部材400の近位端領域と送達針の内面との間の摩擦係合は、送達針が近位に後退させられるときに、移植可能な固定部材400の近位端領域を管腔内に維持することができる。場合によっては、送達針の近位後退は、移植可能な固定部材400の遠位端領域をアンカー部材の内側表面および/または医療用インプラントのシールと係合させてもよい。
【0084】
送達針の遠位端が天然の弁尖の第1の側に配置されると、プッシュワイヤを遠位に作動させて、移植可能な固定部材400の残りの部分が送達針から展開されるまで、移植可能な固定部材400を送達針の管腔から押し出すことができる。移植可能な固定部材400の近位端領域が管腔から出ると、移植可能な固定部材400の近位端領域は、その拡張構成を回復することができる。移植可能な固定部材400の近位端領域の拡張形状は、移植可能な固定部材400の近位端領域が、貫通する送達針によって形成された天然の弁尖内の開口を通過することができないように、送達針の外径よりも大きくてよい。医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールの側壁の厚さ並びに天然の弁尖を通過する移植可能な固定部材400の部分は、ほぼ直線状の構成を有してもよく、または図13Aの拡張構成および図13Bの送達構成の中間である湾曲した構成を有してもよいことが企図される。
【0085】
移植可能な固定部材400を送達する方法は、医療用インプラントを体内に固定するために所望の回数だけ繰り返されてもよい。移植可能な固定部材400は、天然の弁尖のそれぞれを通って固定され得ることが企図される。しかしながら、これは必須ではない。医療用インプラント14は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上を含むがこれらに限定されない、所望の任意の数の移植可能な固定部材400で固定されてもよい。場合によっては、複数の移植可能な固定部材400は、送達針が、2つ以上の移植可能な固定部材400を送達するために身体から取り外される必要がないように、送達針の管腔内に装填されてもよい。他の場合には、送達針は、各移植可能な固定部材400の送達後に除去され、追加の移植可能な固定部材400が再装填されてもよい。
【0086】
移植可能な固定部材400が展開されると(例えば、医療用インプラントおよび天然の組織に固定されると)、臨床医は、医療用インプラントの安定性を試験することができる。医療用インプラントが安定していないか、または脱落の危険性があると考えられる場合、臨床医は、医療用インプラントと天然の組織(例えば、弁尖)との間に1つ以上の追加の移植可能な固定部材400を送達および展開してもよい。医療用インプラント14が安定すると、臨床医は、医療用インプラント14を「展開」構成から「解放」構成に移動させてもよい。医療用インプラントが解放された後、送達システムおよび任意の他の構成要素(ピッグテールカテーテル、ガイドワイヤ等を含むが、それらに限定されない)は、それらがまだ除去されていない場合、除去されてもよい。
【0087】
図14は、展開または拡張構成において、医療用インプラントを身体の組織(例えば、天然の弁尖)に固定するための別の例示的な移植可能なアンカーまたは固定部材450の概略側面図である。明示的に示されていないが、移植可能な固定部材450は、送達構成に半径方向に折り畳まれてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材450は、拡張展開構成よりも送達構成において細長く(例えば、より長く)てもよいが、これは必須ではない。拡張構成では、移植可能な固定部材450は、近位端454から遠位端452まで延在するほぼスプール状または「I」形状を有してもよい。移植可能な固定部材450は、その遠位端452および近位端454に位置付けられた保持特徴部458、460を含んでもよい。近位端454および遠位端452は、それらの間に延在する弾性コイル456と相互接続されてもよい。場合によっては、図示される保持特徴部458、460のうちの1つのみが存在してもよく、または保持特徴部458、460のうちのいずれも存在しなくてもよい。場合によっては、保持特徴部458、460は、非外傷性であってもよい。保持特徴部458、460は、その高さ464に対して狭い厚さ462を有するほぼ平面の三次元形状を有してもよい。保持特徴部458、460のいくつかの例示的断面は、長方形、円形、多角形、卵形等を含んでもよいが、それらに限定されない。保持特徴部458、460は、弾性コイル456の断面寸法より大きい高さ464または別の断面寸法を有してもよい。保持特徴部458、460は、移植可能な固定部材450が展開されると、移植可能な固定部材450を所望の位置に維持するのを助けることができる。保持特徴部458、460は、所望に応じて他の形状をとってもよいことが企図される。相互接続弾性コイル456は、天然の弁尖および医療用インプラント側壁の組み合わされた厚さに及ぶように伸張され得る弾性材料から形成され得る。
【0088】
移植可能な固定部材450は、少なくとも部分的に、ニチノールなどであるがこれに限定されない形状記憶材料または超弾性材料から形成され得ることが企図される。移植可能な固定部材450は、移植可能な固定部材450の「記憶された」形状が図14の拡張構成であるように、熱処理または硬化されてもよい。移植可能な固定部材450は、移植可能な固定部材450の送達を容易にするために、送達針(例えば、送達針250)の管腔内で半径方向に圧縮された構成に付勢され得る。移植可能な固定部材450が送達針から出ると、移植可能な固定部材450は、拡張された「記憶された」形状に戻ることができる。
【0089】
移植可能な固定部材450は、本明細書に記載の移植可能な固定部材270と同様の方法で展開されてもよい。例えば、移植可能な固定部材450は、本明細書に記載の送達針250などであるがこれに限定されない送達針内に装填されてもよく、送達針は、本明細書に記載のピッグテールカテーテル200、300などであるがこれに限定されないピッグテールカテーテルを通って前進される。送達針の遠位端は、天然の弁尖を通って、ならびに医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールの側壁を通って押動されてもよい。遠位端が医療用インプラントの管腔内に配置されると、本明細書に記載のプッシュワイヤ290などであるがこれに限定されないプッシュワイヤを遠位に作動させて、移植可能な固定部材450の遠位保持特徴部458が送達針から展開されるまで、移植可能な固定部材450を送達針の管腔から押し出すことができる。移植可能な固定部材450の送達は、移植可能な固定部材450の正確な展開を可能にするために蛍光透視鏡下で行われてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材450、送達針、および/またはプッシュワイヤは、移植可能な固定部材450の展開を容易にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカを含んでもよい。移植可能な固定部材450の遠位保持特徴部458が管腔から出ると、移植可能な固定部材450の展開された部分は、その拡張構成を回復することができる。移植可能な固定部材450の拡張形状は、移植可能な固定部材450が貫通する送達針によって形成された開口部を通過することができないように、送達針の外径より大きくてもよい。
【0090】
移植可能な固定部材450の遠位保持特徴部458が展開(または拡張)されると、送達針は、送達針の遠位端が天然の弁尖の第1の側に隣接するまで、医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールの厚さならびに天然の弁尖の厚さを通って近位に後退され得る。本明細書で使用される場合、天然の弁尖の第1の側は、医療用インプラントと接触していない弁尖の側である。移植可能な固定部材450の近位保持特徴部460と送達針の内面との間の摩擦係合は、送達針が近位に後退させられるときに、移植可能な固定部材450の近位端領域を管腔内に維持することができる。場合によっては、送達針の近位後退は、移植可能な固定部材450の遠位保持特徴部458を、アンカー部材の内面および/または医療用インプラントのシールと係合させ得る。
【0091】
送達針の遠位端が天然の弁尖の第1の側に配置されると、プッシュワイヤを遠位に作動させて、移植可能な固定部材450の残りの部分が送達針から展開されるまで、移植可能な固定部材450を送達針の管腔から押し出すことができる。移植可能な固定部材450の近位保持特徴部460が管腔から出ると、移植可能な固定部材450の近位保持特徴部460は、その拡張構成を回復することができる。移植可能な固定部材450の近位保持特徴部460の拡張形状は、移植可能な固定部材450の近位端領域が、貫通する送達針によって形成された天然の弁尖内の開口部を通過することができないように、送達針の外径より大きくてもよい。相互接続弾性コイル456は、医療用インプラントのアンカー部材の側壁および/またはシールと天然の弁尖とを合わせた厚さにほぼ等しい長さを有し得ることが企図される。他の場合には、相互接続弾性コイル456は、医療用インプラント14のアンカー部材および/またはシールの側壁と天然の弁尖とを組み合わせた厚さよりも短い長さを有してもよい。これにより、移植可能な固定部材450は、医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールならびに天然の弁尖に圧縮力を及ぼすことができる。さらに他の場合には、相互接続弾性コイル456は、医療用インプラントのアンカー部材の側壁および/またはシールと天然の弁尖とを組み合わせた厚さよりも大きい長さを有してもよい。これにより、移植可能な固定部材450と医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールと天然の弁尖との間のいくらかの相対移動が可能になり得る。
【0092】
移植可能な固定部材450を送達する方法は、医療用インプラントを体内に固定するために所望の回数だけ繰り返されてもよい。移植可能な固定部材450は、天然の弁尖のそれぞれを通って固定され得ることが企図される。しかしながら、これは必須ではない。医療用インプラント14は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上を含むがこれらに限定されない、所望の任意の数の移植可能な固定部材450で固定されてもよい。場合によっては、複数の移植可能な固定部材450は、送達針が、2つ以上の移植可能な固定部材450を送達するために身体から取り外される必要がないように、送達針の管腔内に装填されてもよい。他の場合には、送達針は、各移植可能な固定部材450の送達後に除去され、追加の移植可能な固定部材450が再装填されてもよい。
【0093】
移植可能な固定部材450が展開されると(例えば、医療用インプラントおよび天然の組織に固定されると)、臨床医は、医療用インプラントの安定性を試験することができる。医療用インプラントが安定していないか、または脱落の危険性があると考えられる場合、臨床医は、医療用インプラントと天然の組織(例えば、弁尖)との間に1つ以上の追加の移植可能な固定部材450を送達および展開してもよい。医療用インプラント14が安定すると、臨床医は、医療用インプラント14を「展開」構成から「解放」構成に移動させてもよい。医療用インプラントが解放された後、送達システムおよび任意の他の構成要素(ピッグテールカテーテル、ガイドワイヤ等を含むが、それらに限定されない)は、それらがまだ除去されていない場合、除去されてもよい。
【0094】
図15Aは、展開または拡張構成において、医療用インプラントを身体の組織(例えば、天然の弁尖)に固定するための別の例示的な移植可能なアンカーまたは固定部材500の概略斜視図である。図15Bは、第2の、すなわち半径方向に折り畳まれた送達構成にある移植可能な固定部材500の概略側面図を示す。場合によっては、移植可能な固定部材500は、拡張展開構成よりも送達構成において細長く(例えば、より長く)てもよいが、これは必須ではない。移植可能な固定部材500は、医療用インプラントに固定するように構成された1つ以上のフックまたは歯(tines)502を含んでもよい。場合によっては、移植されると、歯502は、医療用インプラントを貫通し、天然の弁尖内に延在してもよいが、これは必須ではない。移植可能な固定部材500は、4つの歯502を含むものとして示されているが、移植可能な固定部材500は、限定はしないが、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上など、任意の数の歯502を含み得ることが企図される。歯502は、リング504によって相互接続されてもよい。
【0095】
移植可能な固定部材500は、同移植可能な固定部材500を移植場所に前進させるために、歯502を(図15Bに図示されるように)まっすぐになった構成に偏らせることができるニチノールまたは他の形状記憶材料から形成されてもよい。歯502は、例えば、送達針を使用して、前進の間、直線構成に維持されてもよく、移植可能な固定部材500が所望の場所にあるとき、図15Aに示される湾曲形状をとることを可能にされてもよい。換言すれば、歯502は、直線状構成で天然の弁尖および/または医療用インプラントの中に前進させることができ、移植場所が確認されると、送達針は、歯502が屈曲し、移植可能な固定部材500を医療用インプラントおよび/または組織壁に取り付けることを可能にするように除去されてもよい。
【0096】
場合によっては、移植可能な固定部材500は、非外傷性の(atraumatic)近位端バンパー506をさらに含んでもよい。バンパー506は、必要に応じて、リング504および/または歯502と同じ材料または異なる材料から形成されてもよい。バンパー506は、プッシュワイヤが遠位押圧力を及ぼすための表面を提供するように、概して中実の断面を有してもよい。バンパー506は、ほぼ半球形状を有するものとして示されているが、バンパー506は、任意の所望の形状をとることができる。いくつかの実施形態において、移植可能な固定部材500は、図15Cに示すように、バンパー506を含まなくてもよい。
【0097】
移植可能な固定部材500は、本明細書に記載の移植可能な固定部材270と同様の方法で展開されてもよい。例えば、移植可能な固定部材500は、本明細書に記載の送達針250などであるがこれに限定されない送達針内に装填されてもよく、送達針は、本明細書に記載のピッグテールカテーテル200、300などであるがこれに限定されないピッグテールカテーテルを通って前進される。移植可能な固定部材270の送達とは対照的に、移植可能な固定部材500を送達するために、送達針は、天然の弁尖または医療用インプラントを通って送達されなくてもよい。
【0098】
例えば、送達針は、天然弁尖の第1の側に前進させられてもよい。本明細書で使用される場合、天然の弁尖の第1の側は、医療用インプラントと接触していない弁尖の側である。送達針の遠位端が天然の弁尖の第1の側に隣接すると、本明細書に記載のプッシュワイヤ290などであるがこれに限定されないプッシュワイヤを遠位に作動させて、移植可能な固定部材500を送達針の管腔から押し出すことができる。移植可能な固定部材500が遠位方向に前進すると、歯502は、最初に天然の弁尖を貫通して通過し、次に医療用インプラントのアンカー部材および/またはシールを貫通して通過することができる。歯502は、所定の屈曲部分508が送達針の管腔を出るまで、および/または組織/インプラント壁を通って延在するまで、それらのほぼ直線状の構成に維持されてもよい。拘束力が所定の屈曲部508から解放されると、移植可能な固定部材500は、その拡張した展開構成をとることができる。移植可能な固定部材500は、図16に示されているように、リング504が弁尖84の第1の側86に接触するような大きさであってもよく、図16は、移植可能な固定部材500を展開構成で、かつ弁尖84および医療用インプラント14と係合している状態を示している。歯502の先端または端部510は、屈曲して後方に反り、医療用インプラント14のアンカー部材40および/またはシール44の内面に接触してもよい。これは、移植可能な固定部材500が医療用インプラントおよび/または天然の弁尖84から係合解除されるのを防止し得る。
【0099】
移植可能な固定部材500の送達は、同移植可能な固定部材500の正確な展開を可能にするために蛍光透視鏡下で行われてもよい。場合によっては、移植可能な固定部材500、送達針、および/またはプッシュワイヤは、移植可能な固定部材500の展開を容易にするために、1つ以上の放射線不透過性マーカを含んでもよい。
【0100】
移植可能な固定部材500を送達する方法は、医療用インプラントを体内に固定するために所望の回数だけ繰り返されてもよい。移植可能な固定部材500は、天然の弁尖のそれぞれを通って固定され得ることが企図される。しかしながら、これは必須ではない。医療用インプラント14は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上を含むがこれらに限定されない、所望の任意の数の移植可能な固定部材500で固定されてもよい。場合によっては、複数の移植可能な固定部材500は、送達針が、2つ以上の移植可能な固定部材500を送達するために身体から取り外される必要がないように、送達針の管腔内に装填されてもよい。他の場合には、送達針は、各移植可能な固定部材500の送達後に除去され、追加の移植可能な固定部材500が再装填されてもよい。
【0101】
移植可能な固定部材500が展開されると(例えば、医療用インプラントおよび天然の組織に固定されると)、臨床医は、医療用インプラントの安定性を試験することができる。医療用インプラントが安定していないか、または脱落の危険性があると考えられる場合、臨床医は、医療用インプラントと天然の組織(例えば、弁尖)との間に1つ以上の追加の移植可能な固定部材500を送達および展開してもよい。医療用インプラント14が安定すると、臨床医は、医療用インプラント14を「展開」構成から「解放」構成に移動させてもよい。医療用インプラントが解放された後、送達システムおよび任意の他の構成要素(ピッグテールカテーテル、ガイドワイヤ等を含むが、それらに限定されない)は、それらがまだ除去されていない場合、除去されてもよい。
【0102】
図17図19は、大動脈弁82またはその付近に医療用インプラント14を固定するための別の代替的な方法およびシステムを示す。図17~19は、大動脈弁82に関して記載されているが、この方法およびシステムは、必要に応じて、他の解剖学的位置において使用され得ることが企図される。概して、システム600は、最初に、天然の弁尖84と係合する固定棘(securement barbs)612を伴うドッキングリング610を送達するように構成されてもよい。次いで、医療用インプラント14は、ドッキング部材610の管腔内に送達され得る。ドッキングリング610の内側表面と医療用インプラント14の外側表面との間の摩擦係合は、医療用インプラント14の近位および/または遠位の移動を低減または防止し得る。
【0103】
送達システム600は、医療用インプラント14およびドッキングリング610の両方を半径方向に折り畳まれた送達構成に拘束するように構成された外側シース602を含んでもよい。医療用インプラント14は、内側管状部材604を覆って(over)配置されてもよい。内側長尺シャフト606は、内側管状部材604内に摺動可能に配置されてもよい。場合によっては、ドッキングリング610は、必要に応じて、内側管状部材604または内側長尺シャフト606を覆って配置されてもよい。ノーズコーン608は、内側長尺シャフト606に連結され得る。
【0104】
概して、送達システム600は、本明細書に記載される送達システム12と同様の様式で、大動脈弓80に前進させられてもよい。遠位端領域614が大動脈弁82に隣接して位置付けられると、外側シース602は、ドッキングリング610を露出させるように近位に後退させられてもよい(またはドッキングリング610は、外側シース602に対して遠位に前進させられてもよい)。ドッキングリング610は、形状記憶材料または超弾性材料(例えば、ニチノールであるが、これに限定されない)から形成されてもよく、その結果、ドッキングリング610は、展開の際に自己拡張する。必要に応じて、他の適切な材料を使用することもできる。
【0105】
大動脈弁82内に展開されたドッキングリング610の概略図である図18をさらに参照すると、ドッキングリング610は、天然の弁尖84に係合し得る。ドッキングリング610は、複数の開口を含む管状部材であってもよく、例えば、ステント状構造を有するレーザ切断管状部材または編組フィラメント615であるが、これらに限定されない。ドッキングリング610は、「送達」構成(例えば、図17に示されるような)と「解放」構成との間で作動可能である。いくつかの実施形態において、ドッキングリング610は、形状または構成が実質的に円筒形であってもよい。ドッキングリング610は、その外側表面から半径方向に延在する1つ以上の固定棘612を含み得る。固定棘612は、天然の弁尖84を貫通するか、またはそうでなければ係合するように構成された湾曲したフック状構造であってもよい。場合によっては、固定棘612は、血流に沿った移動に抵抗するように構成された湾曲形状を有し得る。例えば、固定棘612は、血液の流れがドッキングリング610の固定を補助するように成形され得る。ドッキングリング610は、外側および/または内側カバーまたはシール616をさらに含んでもよい。シール616は、ドッキングリング610と医療用インプラント14との間の摩擦係合を促進し得る。
【0106】
ドッキングリング610が解放構成に作動されると、送達システム600は、医療用インプラント14がドッキングリング610に隣接するように、ドッキングリング610の管腔618を通って遠位に前進させられてもよい。送達システム600は、医療用インプラント14を露出させるために引き抜かれるかまたは後退させられてもよい(または医療用インプラント14は、送達システム600に対して遠位に前進させられてもよい)。次いで、医療用インプラント14は、図19に示されるように、送達構成から拡張または展開構成に軸方向に短縮および/または半径方向に拡張される。医療用インプラント14が完全に係止されると、医療用インプラント14は、依然として送達システム600に連結されながら、血行動態安定性を維持することが可能な完全に機能的な弁であってもよい。
【0107】
拡張されると、医療用インプラント14の外面は、ドッキングリング610の内面に接触し、摩擦係合し得る。例えば、医療用インプラント14のシール44は、ドッキングリング610のシール616に係合してもよい。医療用インプラント14と固定されたドッキングリング610との間の摩擦係合は、医療用インプラントを所望の位置に固定する。場合によっては、医療用インプラントのシール44および/またはドッキングリング610のシール616は、それらの間の摩擦を増加させるための特徴部を含んでもよい。例えば、シール44、616は、その表面を粘着性にし、相対運動に抵抗するようにコーティングで処理されてもよい。他の例では、シール44、616のうちの1つまたは複数は、その表面積を増加させ、したがって摩擦係合を増加させるために、限定されるものではないが、溝、くぼみ、隆起などの特徴部を付与するための粗面化処理を含むことができる。
【0108】
ドッキングリング610および医療用インプラント14が展開されると、臨床医は、医療用インプラント14の安定性を試験してもよい。医療用インプラント14が安定していないか、または脱落の危険性があると考えられる場合、臨床医は、医療用インプラントを再捕捉し、より望ましい位置に再配置する。医療用インプラント14が安定すると、臨床医は、図19に示されるように、医療用インプラント14を「展開」構成から「解放」構成に移動させてもよい。医療用インプラント14が解放された後、送達システム600および任意の他の構成要素(ピッグテールカテーテル、ガイドワイヤ等を含むが、それらに限定されない)は、それらがまだ除去されていない場合、除去されてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態において、送達システム12、600および/または医療用インプラント14、固定機構104、270、400、450、500、および/またはドッキングリング610および/またはそれらの構成要素は、金属、金属合金、ポリマー(そのいくつかの例が以下に開示される)、金属-ポリマー複合材料、セラミック、それらの組み合わせなど、または他の好適な材料から作製され得る。適切な金属および合金のいくつかの例としては、304V、304L、および316LVステンレス鋼などのステンレス鋼;軟鋼;線形弾性および/または超弾性ニチノールなどのニッケル-チタン合金;ニッケル-クロム-モリブデン合金などの他のニッケル合金(例えば、INCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)などのUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)などのUNS:N10276、他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル-銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、NICORROS(登録商標)400などのUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)などのUNS:N10665)、その他のニッケル-クロム合金、その他のニッケル-モリブデン合金、その他のニッケル-コバルト合金、その他のニッケル-鉄合金、その他のニッケル-銅合金、その他のニッケル-タングステンまたはタングステン合金など;コバルト-クロム合金、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、白金富化ステンレス鋼、チタン、これらの組み合わせなど、または他の適切な材料が挙げられる。
【0110】
本明細書で言及されるように、市販のニッケル-チタンまたはニチノール合金のファミリー内には、「線形弾性(linear elastic)」または「非超弾性」と称されるカテゴリーがあり、これは、従来の形状記憶および超弾性の種類と化学的に類似し得るが、別個の有用な機械的特性を示し得る。線形弾性および/または非超弾性ニチノールは、線形弾性および/または非超弾性ニチノールが、その応力/歪み曲線において、超弾性ニチノールが示すような実質的な「超弾性プラトー」または「フラグ領域」を示さないという点で、超弾性ニチノールと区別され得る。代わりに、線形弾性および/または非超弾性ニチノールでは、回復可能なひずみが増加するにつれて、応力は、塑性変形が始まるまで、実質的に線形、またはいくらかであるが必ずしも完全に線形ではない関係で、あるいは少なくとも、超弾性ニチノールで見られ得る超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域より線形である関係で、増加し続ける。したがって、本開示の目的のために、線形弾性および/または非超弾性ニチノールはまた、「実質的に」線形弾性および/または非超弾性ニチノールと称されてもよい。
【0111】
場合によっては、線形弾性および/または非超弾性ニチノールはまた、線形弾性および/または非超弾性ニチノールが、実質的に弾性のままでありながら(例えば、塑性変形前に)、最大約2~5%の歪みを受け入れることができ、一方、超弾性ニチノールは、塑性変形前に最大約8%の歪みを受け入れることができるという点で、超弾性ニチノールと区別することができる。これらの材料は両方とも、塑性変形前に約0.2~0.44パーセントの歪みしか許容できないステンレス鋼(その組成に基づいて区別することもできる)などの他の線形弾性材料と区別することができる。
【0112】
いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたって示差走査熱量測定(DSC)および動的金属熱分析(DMTA)分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金において、摂氏約-60度(℃)~約120℃の範囲で、DSCおよびDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化がなくてもよい。したがって、そのような材料の機械的曲げ特性は、一般に、この非常に広い温度範囲にわたる温度の影響に対して不活性であり得る。いくつかの実施形態において、周囲温度または室温での線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金の機械的曲げ特性は、例えば、それらが超弾性プラトーおよび/またはフラグ領域を示さないという点で、体温での機械的特性と実質的に同じである。換言すれば、広い温度範囲にわたって、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、その線形弾性および/または非超弾性の特徴および/または特性を維持する。
【0113】
いくつかの実施形態において、線形弾性および/または非超弾性ニッケル-チタン合金は、約50~約60重量パーセントのニッケルの範囲であってもよく、残りは本質的にチタンである。いくつかの実施形態において、組成は、約54~約57重量パーセントのニッケルの範囲である。好適なニッケル-チタン合金の一例は、日本国神奈川県所在の古河テクノマテリアル社(Furukawa Techno Material Co.)から市販されているFHP-NT合金である。他の適切な材料は、ULTANIUM(商標)(Neo-Metricsから入手可能)およびGUM METAL(商標)(Toyotaから入手可能)を含むことができる。いくつかの他の実施形態において、所望の特性を達成するために、超弾性合金、例えば、超弾性ニチノールを使用することができる。
【0114】
少なくともいくつかの実施形態において、送達システム12、600および/または医療用インプラント14、固定機構104、270、400、450、500、および/またはドッキングリング610および/またはその構成要素の一部または全てはまた、放射線不透過性材料でドープされてもよく、放射線不透過性材料から作製されてもよく、あるいはそうでなければ放射線不透過性材料を含んでもよい。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーンまたは別の撮像技術で比較的明るい画像を生成することができる材料であると理解される。この比較的明るい画像は、医療用インプラントシステム10のユーザがその位置を決定するのを助ける。放射線不透過性材料のいくつかの例としては、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填材が充填されたポリマー材料などが挙げられるが、これらに限定されない。加えて、他の放射線不透過性マーカーバンドおよび/またはコイルもまた、同じ結果を達成するために、医療用インプラントシステム10の設計に組み込まれ得る。
【0115】
いくつかの実施形態において、ある程度の磁気共鳴撮像(MRI)適合性が、医療用インプラントシステム10に付与される。例えば、送達システム12、600および/または医療用インプラント14、固定機構104、270、400、450、500、および/またはドッキングリング610および/またはそれらの構成要素もしくは部分は、画像を実質的に歪めず実質的なアーチファクト(すなわち、画像内のギャップ)を作らない材料で作製されてもよい。例えば、特定の強磁性材料は、MRI画像にアーチファクトを生成する可能性があるので、適切でない場合がある。送達システム12、600および/または医療用インプラント14、固定機構104、270、400、450、500、および/またはドッキングリング610および/またはその構成要素もしくは部分はまた、MRI装置が撮像することができる材料から作製されてもよい。これらの特性を示すいくつかの材料は、例えば、タングステン、コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、PHYNOX(登録商標)などのUNS:R30003)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)などのUNS:R30035)、ニチノールなど、およびその他を含む。
【0116】
シースまたは被覆部(図示せず)は、送達システム12の一部または全体を覆って配置されてもよく、医療用インプラントシステム10のためのほぼ平滑な外側表面を画定し得る。しかしながら、他の実施形態において、そのようなシースまたは被覆部は、送達システム12が外側表面を形成し得るように、医療用インプラントシステム10の一部または全部に存在しなくてもよい。シースは、ポリマーまたは他の好適な材料から作製されてもよい。好適なポリマーのいくつかの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、DuPontから入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、Polyurethane85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えば、DSM Engineering Plasticsから入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテルまたはエステル系コポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレートおよび/またはDuPontから入手可能なHYTREL(登録商標)などの他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、Bayerから入手可能なDURETHAN(登録商標)またはElf Atochemから入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、商標名PEBAX(登録商標)で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、MARLEX(登録商標)高密度ポリエチレン、MARLEX(登録商標)低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(EMS American Grilonから入手可能なGRILAMID(登録商標)など)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBSおよび/またはSIBS 50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、生体適合性ポリマー、その他の適切な材料、またはそれらの混合物、組み合わせ、そのコポリマー、ポリマー/金属複合体などが挙げられる。いくつかの実施形態において、シースは、液晶ポリマー(LCP)と混合することができる。例えば、混合物は約6%までのLCPを含有することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、医療用インプラントシステム10の外面(例えば、送達システム12の外面を含む)は、サンドブラスト、ビードブラスト、重炭酸ナトリウムブラスト、電解研磨等が施されてもよい。これらの実施形態ならびにいくつかの他の実施形態において、コーティング、例えば、潤滑性、親水性、保護、または他のタイプのコーティングが、シースの一部または全体にわたって適用されてもよく、あるいはシースを伴わない実施形態において、送達システム12の一部または医療用インプラントシステム10の他の部分にわたって適用されてもよい。代替として、シースは、潤滑性、親水性、保護、または他のタイプのコーティングを備えてもよい。フルオロポリマーなどの疎水性コーティングは、デバイスの取り扱いおよびデバイスの交換を改善する乾燥潤滑性を提供する。潤滑性コーティングは、操縦性を改善し、病変横断能力を改善する。好適な潤滑性ポリマーは、当該技術分野において周知であり、シリコーン等、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアリーレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体、アルギン、糖類、カプロラクトン等の親水性ポリマー、ならびにそれらの混合物および組み合わせを含んでもよい。親水性ポリマーは、適切な潤滑性、結合性、および溶解性を有するコーティングを生成するために、それら自体の間で、または処方された量の水不溶性化合物(いくつかのポリマーを含む)とブレンドされてもよい。
【0118】
コーティングおよび/またはシースは、例えば、コーティング、押出、共押出、断続層共押出(ILC)、またはいくつかのセグメントの端と端との融合によって形成されてもよい。層は、その近位端から遠位端にかけて均一な剛性または剛性の漸減を有してもよい。剛性の漸減は、ILCによるように連続的であってもよく、または別個の押出管状セグメントを一緒に融合することによるように段階的であってもよい。外層に放射線不透過性充填材料を含浸させて、X線撮影による可視化を容易にすることができる。当業者は、これらの材料が本発明の範囲から逸脱することなく広く変更できることを認識するであろう。
【0119】
本開示は、多くの点で例示的なものにすぎないことを理解されたい。本発明の範囲を超えることなく、詳細に、特に形状、サイズ、およびステップの配置に関して変更を行うことができる。これは、適切である範囲で、他の実施形態で使用される1つの例示的な実施形態の特徴のいずれかの使用を含むことができる。本発明の範囲は、言うまでもなく、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
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