(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】電気部品用筐体
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20240725BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H05K5/02 J
H05K7/20 N
(21)【出願番号】P 2023527128
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 IB2021000400
(87)【国際公開番号】W WO2022259006
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】524017168
【氏名又は名称】アンペア エス.ア.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 聡一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 礼
(72)【発明者】
【氏名】窪田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】飯山 忠明
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/175928(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/124074(WO,A1)
【文献】特開2016-059242(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104298327(CN,A)
【文献】中国実用新案第211831654(CN,U)
【文献】特開平10-178151(JP,A)
【文献】特開2011-233726(JP,A)
【文献】国際公開第2020/169998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00-5/06
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品を収容する電気部品用筐体であって、
前記電気部品を載置する樹脂製のベース部と、
前記電気部品を覆うように前記ベース部に取り付けられる金属製のカバー部と、
前記ベース部の底面を覆うように前記ベース部の底面に当接する金属板と、
前記ベース部の厚さ方向に前記ベース部を貫通する貫通孔内に設けられる導電性部材と、を備え、
前記導電性部材は、前記電気部品のグランド端子と前記金属板とを電気的に接続し、
前記ベース部は、前記電気部品を冷却する冷媒が流れる冷媒流路を備え、
前記冷媒流路は、前記電気部品が載置された位置の下方を通り、
前記導電性部材は、前記電気部品の直下において、前記電気部品及び前記電気部品の前記グランド端子に接続する導体と一体化して締結される、
電気部品用筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の電気部品用筐体であって、
前記ベース部は、下方に向かって開口する開口部を有するベース本体と、当該開口部を覆うように前記ベース本体に接合される樹脂板とから構成され、
前記冷媒流路は、前記樹脂板により前記開口部を封止することで形成され、
前記ベース本体と前記樹脂板との接合部位が前記冷媒流路に沿って形成される、
電気部品用筐体。
【請求項3】
請求項2に記載の電気部品用筐体であって、
前記電気部品の下方における前記冷媒流路には、前記開口部の内周面から前記冷媒流路の幅方向中央に向かって突出する突出部が形成されており、
前記突出部の下面には前記接合部位が形成され、
前記導電性部材は、前記突出部の近傍に設けられる、
電気部品用筐体。
【請求項4】
請求項2に記載の電気部品用筐体であって、
前記導電性部材は、前記電気部品の下方における前記冷媒流路の近傍において、前記接合部位を避けるようにクランク状に屈曲して設けられる、
電気部品用筐体。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一つに記載の電気部品用筐体であって、
前記電気部品は、前記冷媒流路内の冷媒に接触するフィンを備え、
前記電気部品の下方の前記冷媒流路内には、前記冷媒流路を横断する補強材が前記冷媒流路の底面から上方に向かって立設され、
前記補強材は、前記補強材の先端を前記冷媒が通過するように前記冷媒流路よりも低く構成される、
電気部品用筐体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載の電気部品用筐体であって、
前記導電性部材は、前記電気部品用筐体の中央部付近に設けられ、
前記金属板は、前記導電性部材に固定される、
電気部品用筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
WO2019/175928には、電子部品を内部に収容する電子部品用筐体が開示されている。この電子部品用筐体では、電子部品を載置する部位を加工が容易で軽量な樹脂材料により構成し、電子部品を覆う部位を金属材料により構成している。
【発明の概要】
【0003】
ところで、内部に電気(電子)部品を収容する筐体においては、筐体外部からの電磁ノイズの影響及び筐体外部への電磁ノイズの影響を低減するために、筐体内の電気部品のグランド端子を筐体の金属部位にアース接続(電気的に接続)する必要がある。しかしながら、電気部品を載置する部位を樹脂材料で構成する筐体において、電気部品をアース接続するには、電気部品のグランド端子をアース線により金属部位の内壁に接続した状態で筐体を組み立てる必要があり、組立作業が困難になる。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、組立作業性の良い電気部品用筐体を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様によれば、電気部品を収容する電気部品用筐体が提供される。電気部品用筐体は、電気部品を載置する樹脂製のベース部と、電気部品を覆うようにベース部に取り付けられる金属製のカバー部と、ベース部の底面を覆うようにベース部の底面に当接する金属板とを備える。また、電気部品用筐体は、ベース部の厚さ方向にベース部を貫通する貫通孔内に設けられる導電性部材を備え、導電性部材は、電気部品のグランド端子と金属板とを電気的に接続する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態による電気部品用筐体の断面模式図である。
【
図2】
図2は、第2実施形態による電気部品用筐体の断面模式図である。
【
図3】
図3は、第3実施形態による電気部品用筐体の断面模式図である。
【
図4】
図4は、第4実施形態による電気部品用筐体の底面図である。
【
図6】
図6は、第5実施形態による電気部品用筐体の断面模式図である。
【
図7】
図7は、第5実施形態による電気部品用筐体の底面図である。
【
図8】
図8は、比較例による電気部品用筐体における膜振動を説明する図である。
【
図9】
図9は、第5実施形態による電気部品用筐体における膜振動を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態に係る電気部品用筐体100について説明する。
【0009】
図1は、第1実施形態による電気部品用筐体100の断面模式図であり、電気部品用筐体100を側面方向から見た断面図である。
【0010】
電気部品用筐体100は、インバータ1や平滑コンデンサ2等の電気部品を収容する筐体である。電気部品用筐体100は、インバータ1及び平滑コンデンサ2を載置する樹脂製のベース部3と、インバータ1及び平滑コンデンサ2を覆うようにベース部3に取り付けられる金属製のカバー部4と、ベース部3の底面34を覆うようにベース部3の底面34に当接する金属板5とを備える。また、ベース部3には、インバータ1が載置された位置の下方を通る冷媒流路31と、内部に導電性部材6が設けられた貫通孔32が形成されている。
【0011】
電気部品用筐体100に収容されるインバータ1は、半導体素子を内蔵するパワーモジュール11及び制御回路を備える制御基板12等を備え、電力を直流または交流に変換する機能を有している。インバータ1は、ボルト等により、電気部品用筐体100のベース部3に固定されている。また、インバータ1は、グランド端子13を備え、グランド端子13は、バスバー(導体)14を介して導電性部材6に電気的に接続している。
【0012】
電気部品用筐体100に収容される平滑コンデンサ2は、コンデンサケースにコンデンサ素子を収容して構成され、不図示のボルト等によりベース部3に固定されている。
【0013】
ベース部3は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリフタルアミド(PPA)等の電気絶縁性の樹脂材料により板状部材として構成され、載置面33にインバータ1及び平滑コンデンサ2を搭載する。ベース部3を樹脂材料により構成することで、電気部品用筐体100の軽量化、低コスト化及び加工性の向上が実現される。ベース部3の底面34には、底面34の外形よりも大きい鉄またはアルミニウム等からなる金属板5が当接している。即ち、ベース部3の底面34は金属板5により覆われている。
【0014】
ベース部3は、冷媒流路31を形成するための開口部35を備える第1部材(ベース本体)36と、第2部材(樹脂板)37とを備える。第1部材36の開口部35は下方に向かって開口し、第2部材37は、開口部35を覆うように第1部材36に溶着(接合)される。このように、第2部材37により開口部35を封止することで形成された空間が冷媒流路31となる。冷媒流路31の周囲には、第1部材36と第2部材37との接合部位38が冷媒流路31に沿って形成されている。なお、
図1では、第1部材36の上方も開口し、当該上方の開口部分はインバータ1により覆われているが、必ずしもこれに限られず、第1部材36の上方は閉じられていてもよい。
【0015】
冷媒流路31はベース部3におけるインバータ1が載置された位置の下方を通り、冷媒流路31内にはインバータ1を冷却する冷却水が流れる。インバータ1の下部にはフィン15が設けられており、フィン15は冷媒流路31内を流れる冷却水に接触している。これによりインバータ1が効率よく冷却される。なお、インバータ1は、フィン15を通す複数の孔を備える基板等を介してベース部3に固定してもよい。また、インバータ1は、フィン15を設けて冷却水に接触させることが好ましいが、必ずしもこれに限られず、フィン15を設けていなくてもよい。
【0016】
また、ベース部3は、ベース部3の厚さ方向にベース部3を貫通する貫通孔32を備え、貫通孔32内には、インバータ1のグランド端子13に電気的に接続する導電性部材6が設けられている。なお、導電性部材6の設置の詳細は後述する。
【0017】
カバー部4は、例えばアルミニウム等の金属材料により形成され、インバータ1及び平滑コンデンサ2の周囲を覆うようにベース部3に取り付けられる。カバー部4は、側壁の内側部位にベース部3の載置面33に当接する端面を有する段部41が形成され、側壁の先端面42は、ベース部3の底面34に当接する金属板5の外周縁に当接する。カバー部4、ベース部3及び金属板5は、カバー部4の段部41とベース部3の載置面33とが当接する部分において金属板5の外側からボルト等により共締めされることにより締結される。このようにして、金属製のカバー部4と金属板5とによってインバータ1及び平滑コンデンサ2を完全に覆うことで、電気部品用筐体100の電磁シールド性を高めることができる。
【0018】
上記のように構成された電気部品用筐体100では、ベース部3を樹脂製にすることで、軽量化、低コスト化及び加工性の向上を実現するとともに、金属製のカバー部4及び金属板5により周囲を覆うことで電磁シールド性を高めている。
【0019】
ところで、内部に電気(電子)部品を収容する筐体においては、筐体外部からの電磁ノイズの影響及び筐体外部への電磁ノイズの影響を低減するために、筐体内の電気部品のグランド端子を筐体の金属部位にアース接続(電気的に接続)する必要がある。しかしながら、電気部品を載置するベース部を樹脂材料で構成する筐体においては、アース線等を用いて電気部品のグランド端子を金属部位にアース接続する場合、アース線を金属部位の内壁に接続した状態で筐体を組み立てる必要があり、組立作業が困難になる。例えば、本実施形態において、インバータ1のグランド端子13と金属製のカバー部4とをアース線等により接続した状態で電気部品用筐体100を組み立てることは作業が困難である。また、組立作業を可能にするためには、アース線のハーネス長を長くする必要があるが、アース線のハーネス長が長くなると、アース線のインダクタンスが上昇、電磁ノイズ低減に関する性能(EMC性能)が低下する虞がある。
【0020】
そこで、本実施形態では、電気部品用筐体100のベース部3にベース部3の厚さ方向に貫通する貫通孔32を設け、貫通孔32にインバータ(電気部品)1のグランド端子13と金属板5とを電気的に接続する導電性部材6を設けることとした。ベース部3の貫通孔32に導電性部材6を設けることで、電気部品用筐体100の組立時には、グランド端子13と導電性部材6とを接続した状態で金属板5と導電性部材6とを締結(当接)するだけでインバータ(電気部品)1のグランド端子13をアース接続することができる。従って、アース線等を電気部品用筐体100の金属部位(カバー部4)の内壁に接続した状態で電気部品用筐体100を組み立てる必要がなく、組立作業性が向上する。また、組立作業のためにアース線のハーネス長を長くする必要がないため、EMC性能の低下を抑制できる。
【0021】
以下、導電性部材6の設置及び電気部品用筐体100の組立方法の詳細を説明する。
【0022】
図1に示すように、電気部品用筐体100のベース部3には、ベース部3の厚さ方向にベース部3を貫通する貫通孔32が形成され、貫通孔32内には、アルミ等の金属からなる導電性部材6が設けられている。導電性部材6と貫通孔32の内周面との間は、不図示のシール部材によりシールされている。導電性部材6の上面61には、インバータ1のグランド端子13に接続するバスバー14がボルト等により固定されている。一方、導電性部材6の底面62は、ベース部3の底面34を覆う金属板5の上面に当接し、金属板5は、金属板5の側からボルト等により導電性部材6の底面62に固定されている。これにより、インバータ1のグランド端子13と金属板5とは、導電性部材6を介して電気的に接続される。
【0023】
なお、好ましくは、貫通孔32はインバータ1にできるだけ近い位置に形成される。これにより、インバータ1のグランド端子13と導電性部材6との間の距離を短くすることができ、バスバー14の長さを短くすることができる。
【0024】
電気部品用筐体100を組み立てる際には、まず、インバータ1のグランド端子13に接続するバスバー14をボルト等により導電性部材6に接続(固定)する。次に、カバー部4、ベース部3及び金属板5を締結するとともに、金属板5が導電性部材6の底面62に当接するように、金属板5の側からボルト等により金属板5と導電性部材6とを締結する。このように、金属板5を導電性部材6に締結することでインバータ1をアース接続するため、アース線をカバー部4や金属板5の内壁に接続した状態で電気部品用筐体100を組み立てる必要がない。従って、電気部品用筐体100の組立性が向上する。
【0025】
上記した第1実施形態の電気部品用筐体100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0026】
電気部品用筐体100は、インバータ1及び平滑コンデンサ2(電気部品)を載置する樹脂製のベース部3と、インバータ1及び平滑コンデンサ2(電気部品)を覆うようにベース部3に取り付けられる金属製のカバー部4とを備える。また、電気部品用筐体100は、ベース部3の底面34を覆うようにベース部3の底面34に当接する金属板5と、ベース部3の厚さ方向にベース部3を貫通する貫通孔32内に設けられる導電性部材6とを備える。導電性部材6は、インバータ1(電気部品)のグランド端子13と金属板5とを電気的に接続する。このように、グランド端子13と電気的に接続する導電性部材6をベース部3に設けているため、電気部品用筐体100の組立時に、金属板5と導電性部材6とを当接させるだけでインバータ1(電気部品)のグランド端子13はアース接続される。即ち、アース線等を電気部品用筐体100のカバー部4(金属部位)の内壁に接続した状態で電気部品用筐体100を組み立てる必要がなく、組立作業性が向上する。
【0027】
また、電気部品用筐体100の組立時に、金属板5と導電性部材6とを当接させるだけでインバータ1(電気部品)のグランド端子13がアース接続されるため、組立作業のためにアース線のハーネス長を長くする必要がない。従って、EMC性能の低下を抑制できる。
【0028】
電気部品用筐体100は、ベース部3がインバータ1(電気部品)を冷却する冷却水(冷媒)が流れる冷媒流路31を備え、冷媒流路31はインバータ1(電気部品)が載置された位置の下方を通る。これにより、インバータ1(電気部品)が効率よく冷却される。
【0029】
なお、本実施形態のようにベース部3にインバータ1を冷却する冷媒流路31を設けることが好ましいが、冷媒流路31は必須の構成ではない。即ち、冷媒流路31を設けていなくても、組立作業性の向上という効果を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態においては、冷媒流路31はインバータ1が載置された位置の下方を通る構成としたが、冷媒流路31は、平滑コンデンサ2が載置された位置の下方も通るように形成されていてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、開口部35を覆うように第2部材37を第1部材36に溶着して冷媒流路31を形成しているが、第2部材37と第1部材36の接合方法は溶着に限られず、既知の如何なる方法を用いてもよい。例えばガスケットシールを用いて接合してもよい。
【0032】
(第2実施形態)
図2を参照して、第2実施形態による電気部品用筐体100を説明する。なお、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
図2は、第2実施形態による電気部品用筐体100の断面模式図である。
図2に示すように、本実施形態では、冷媒流路31の形状が第1実施形態と異なる。
【0034】
図2に示すように、本実施形態においてもベース部3に冷媒流路31が形成されているが、インバータ1の下方における冷媒流路31には、開口部35の内周面から冷媒流路31の幅方向中央に向かって突出する突出部39が形成されている。即ち、ベース部3の第1部材(ベース本体)36は、インバータ1が載置された位置の下方において、突出部39が形成されるように延設された部分を有している。そして突出部39の下面には、第1部材36と第2部材(樹脂板)37とが溶着(接合)される接合部位38が形成されている。
【0035】
また、
図2に示すように、ベース部3の貫通孔32内に設けられる導電性部材6は、突出部39の近傍であって、インバータ1の直下に設置され、上面61がインバータ1の底面に当接している。導電性部材6とインバータ1とが当接する位置の上方では、インバータ1のグランド端子13に接続されるバスバー14がインバータ1に接しており、この位置においてバスバー14、インバータ1のパワーモジュール11及び導電性部材6が、バスバー14の側からボルト等により共締めされている。一方、導電性部材6の底面62は、ボルト等によりベース部3の底面34を覆う金属板5に締結されている。これにより、グランド端子13と金属板5とは、導電性部材6を介して電気的に接続される。
【0036】
ここで、導電性部材6(貫通孔32)を接合部位38がある位置に設けると、冷媒流路31のシール性が低下してしまうため、導電性部材6は、接合部位38を避けて設置する必要がある。従って、冷媒流路31が突出部39を有していない場合、導電性部材6は冷媒流路31の周囲の接合部位38を避けて冷媒流路31から離れた位置に設けなければならない。これに対し、本実施形態では、インバータ1の下方の冷媒流路31に、開口部35の内周面から冷媒流路31の幅方向中央に向かって突出する突出部39が形成され、突出部39の下面に接合部位38が形成されている。このように突出部39の下面に接合部位38が形成されているため、導電性部材6を突出部39の近傍、即ちインバータ1の下方の冷媒流路31の近傍に設置することができる。従って、インバータ1と導電性部材6との距離を短くすることができる。これにより、インバータ1のグランド端子13と導電性部材6とを繋ぐバスバー14を短くできるため、バスバー14のインダクタンスが低減し、EMC性能が向上する。
【0037】
また、導電性部材6をインバータ1の下方の冷媒流路31の近傍に設置することができるため、
図2に示すように、導電性部材6をインバータ1の直下に設置することも可能になる。前述のとおり、本実施形態では、導電性部材6は、インバータ1の直下に設置され、グランド端子13(に接続されるバスバー14)と、インバータ1のパワーモジュール11と、導電性部材6とは、ボルト等により一体化して締結されている。即ち、インバータ1をベース部3に固定する固定部材(ボルト等)と、グランド端子13に接続されるバスバー14(導体)を導電性部材6に固定する固定部材(ボルト等)とを別個にしていない。従って、部品数が削減され、コンパクト且つ安価にインバータ1(電気部品)のアース接続を実現することができる。
【0038】
上記した第2実施形態による電気部品用筐体100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0039】
電気部品用筐体100は、インバータ1(電気部品)の下方における冷媒流路31に、開口部35の内周面から冷媒流路31の幅方向中央に向かって突出する突出部39が形成されており、突出部39の下面に接合部位38が形成される。また、導電性部材6は、突出部39の近傍に設けられる。このように突出部39の下面に接合部位38を形成し、導電性部材6を突出部39の近傍、即ちインバータ1の下方の冷媒流路31の近傍に設置している。これにより、インバータ1と導電性部材6とを繋ぐバスバー(導体)14を短くすることができ、バスバー(導体)14のインダクタンスが低減し、EMC性能が向上する。
【0040】
電気部品用筐体100は、導電性部材6がインバータ1(電気部品)の直下において、インバータ1(電気部品)及びインバータ1(電気部品)のグランド端子13に接続するバスバー14(導体)と一体化して締結される。即ち、インバータ1(電気部品)をベース部3に固定する固定部材(ボルト等)と、グランド端子13に接続されるバスバー14(導体)を導電性部材6に固定する固定部材(ボルト等)とを別個にしていない。従って、部品数が削減され、コンパクト且つ安価にインバータ1(電気部品)のアース接続を実現することができる。
【0041】
なお、本実施形態のように導電性部材6をインバータ1の直下に設置することが好ましいが、導電性部材6の設置位置は必ずしもこれに限られず、突出部39の近傍であれば任意の位置に設けてよい。導電性部材6を突出部39の近傍に設置すれば、インバータ1と導電性部材6との距離を短くすることができ、ECM性能は向上する。
【0042】
(第3実施形態)
図3を参照して、第3実施形態による電気部品用筐体100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
図3は、第3実施形態による電気部品用筐体100の断面模式図である。
図3に示すように、本実施形態では、導電性部材6の形状が他の実施形態と異なる。
【0044】
図3に示すように、本実施形態においてもベース部3に冷媒流路31が形成されている。また、冷媒流路31の周囲には、第1部材36と第2部材37との接合部位38が冷媒流路31に沿って形成されている。
【0045】
ここで、前述のとおり、導電性部材6を接合部位38がある位置に設けると、冷媒流路31のシール性が低下してしまうため、導電性部材6は、接合部位38を避けて設置する必要がある。一方、接合部位38を避けるために導電性部材6をインバータ1の下方の冷媒流路31から離れた位置に設けると、インバータ1と導電性部材6とを繋ぐバスバー14の距離が長くなり、EMC性能が低下する虞がある。そこで本実施形態では、導電性部材6を、接合部位38を避けるようにクランク状に屈曲して設けることとした。これにより、導電性部材6をインバータ1の下方における冷媒流路31の近傍に設置でき、インバータ1と導電性部材6との距離を短くすることができる。従って、インバータ1と導電性部材6とを繋ぐバスバー14を短くすることができ、バスバー14のインダクタンスが低減し、EMC性能が向上する。
【0046】
以下、本実施形態の電気部品用筐体100における導電性部材6の形状の詳細を説明する。
【0047】
図3に示すように、導電性部材6は、インバータ1の下方における冷媒流路31の近傍に設けられている。導電性部材6の上面61は、インバータ1の直下に位置し、インバータ1の底面に当接している。導電性部材6とインバータ1とが当接する位置の上方では、インバータ1のグランド端子13に接続されるバスバー14がインバータ1に接しており、この位置においてバスバー14、インバータ1のパワーモジュール11及び導電性部材6が、バスバー14の側からボルト63等により共締めされている。ベース部3の貫通孔32及び貫通孔32内の導電性部材6は、上部において冷媒流路31から離れる方向に屈曲し、接合部位38がある位置よりも外側の位置において下方に向かって屈曲している。即ち、導電性部材6は、インバータ1の下方の冷媒流路31近傍において、接合部位38を避けるようにクランク状に屈曲して設けられている。導電性部材6の底面62は、金属板5の上面に当接し、ボルト64等により金属板5に固定されている。なお、ボルト63とボルト64とは、電気部品用筐体100の高さ(上下)方向において、オーバーラップしている。
【0048】
このように導電性部材6を、接合部位38を避ける形状にしてインバータ1の下方の冷媒流路31近傍に設けているため、インバータ1と導電性部材6との距離を短くすることができる。また、導電性部材6をクランク状に屈曲して設けているため、バスバー14と導電性部材6の上面61とを固定するボルト63と、導電性部材6の底面62と金属板5とを固定するボルト64とを、電気部品用筐体100の高さ(上下)方向において、オーバーラップさせて設けることができる。これにより、導電性部材6及びベース部3の高さを低くすることができ、より省スペース化及び低コスト化される。さらに、導電性部材6をインバータ1の直下に設置し、グランド端子13(に接続されるバスバー14)と、インバータ1と、導電性部材6とを一体化して締結している。このため、インバータ1(電気部品)をベース部3に固定する固定部材(ボルト等)と、グランド端子13に接続されるバスバー14(導体)を導電性部材6に固定する固定部材(ボルト等)とを別個にする必要がなく、部品数が削減される。従って、よりコンパクト且つ安価にインバータ1(電気部品)のアース接続を実現できる。
【0049】
上記した第3実施形態による電気部品用筐体100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0050】
電気部品用筐体100は、導電性部材6が、インバータ1(電気部品)の下方における冷媒流路31の近傍において、接合部位38を避けるようにクランク状に屈曲して設けられる。このように導電性部材6を、接合部位38を避ける形状にしてインバータ1の下方の冷媒流路31近傍に設けているため、インバータ1(電気部品)と導電性部材6との距離を短くすることができる。従って、インバータ1(電気部品)と導電性部材6とを繋ぐバスバー14(導体)を短くすることができ、インダクタンスが低減し、EMC性能が向上する。
【0051】
また、導電性部材6をクランク状に屈曲して設けているため、バスバー14と導電性部材6の上面61とを固定するボルト63(固定部材)と、導電性部材6の底面62と金属板5とを固定するボルト64(固定部材)とを、電気部品用筐体100の高さ(上下)方向において、オーバーラップさせて設けることができる。これにより、導電性部材6及びベース部3の高さを低くすることができ、より省スペース化及び低コスト化される。
【0052】
電気部品用筐体100は、導電性部材6がインバータ1(電気部品)の直下において、インバータ1(電気部品)及びインバータ1(電気部品)のグランド端子13に接続するバスバー14(導体)と一体化して締結される。即ち、インバータ1(電気部品)をベース部3に固定する固定部材(ボルト等)と、グランド端子13に接続されるバスバー14(導体)を導電性部材6に固定する固定部材(ボルト等)とを別個にしていない。従って、部品数が削減され、よりコンパクト且つ安価にインバータ1(電気部品)のアース接続を実現することができる。
【0053】
なお、本実施形態のように導電性部材6をインバータ1の直下に設置することが好ましいが、導電性部材6の設置位置は必ずしもこれに限られず、インバータ1の下方における冷媒流路31の近傍であれば任意の位置に設けてよい。導電性部材6をインバータ1の下方における冷媒流路31の近傍に設置すれば、インバータ1と導電性部材6との距離を短くすることができ、ECM性能は向上する。
【0054】
(第4実施形態)
図4及び
図5を参照して、第4実施形態による電気部品用筐体100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図4は、第4実施形態による電気部品用筐体100の底面図であり、
図5Aは、
図4のA-A線に沿った断面図、
図5Bは、
図4のB-B線に沿った断面図である。本実施形態では、冷媒流路31に補強材7が設けられている点が他の実施形態と異なる。
【0056】
図4に示すように、冷媒流路31は、冷却水が電気部品用筐体100内に流入する流路入口311、インバータ1を冷却した冷却水が電気部品用筐体100の外部に流出する流路出口312を有する。また、冷媒流路31は、流路入口311と流路出口312との間において、他の部分よりも流路幅が広く、上面(底面)視で略矩形状に形成された矩形部313を有している。矩形部313の上方には、インバータ1がベース部3に搭載されている。冷媒流路31の周囲には、冷媒流路31に沿って接合部位38が形成されている。
【0057】
矩形部313は、四角のうち、電気部品用筐体100の中心に最も近い角部が冷媒流路31の内側に向かって入り込んでいる。この入り込んだ部分に導電性部材6が設置されている。これにより、矩形部313上方のインバータ1の直下に導電性部材6を配置することができ、導電性部材6とインバータ1との距離を短くすることができる。従って、インバータ1と導電性部材6とを繋ぐバスバー14の距離を短くでき、バスバー14のインダクタンスが低減され、EMC性能が向上する。また、導電性部材6を上面視でインバータ1の内側(インバータ1の直下)に配置するため、より省スペース化される。
【0058】
また、矩形部313内には、電気部品用筐体100の中心に最も近い角部と、これと対向する角部とを結ぶ対角線上に、ベース部3の剛性を確保する補強材7が冷媒流路31を横断して設けられている。一方、補強材7が配置される対角線と直交する対角線上にある2つの角部には、それぞれ矩形部313に冷却水が流入する矩形部入口314と矩形部313から冷却水が流出する矩形部出口315とが形成されている。なお、
図4に示すように、矩形部入口314及び矩形部出口315は、矩形部313内に比して冷媒流路31の流路幅が狭く形成されている。
【0059】
図5A及び
図5Bに示すように、矩形部313内の冷却水には、インバータ1のフィン15が接触している。矩形部313内の補強材7は、第1部材(ベース本体)36の一部を構成し、冷媒流路31の底面(即ち、第2部材(樹脂板)の上面)から上方に向かって立設されている。好ましくは、補強材7の底面は第2部材(樹脂板)37の上面に当接し、補強材7の底面と第2部材37とが当接する接合部位38において、補強材7と第2部材とは溶着等により接合される。このように補強材7が第2部材37に接合されることで、ベース部3の剛性がより強化される。また、補強材7は、冷媒流路31よりも低く構成されている。これにより、冷媒流路31内の冷却水は、補強材7の先端71を通過して流れる。即ち、
図5Aの矢印で示すように、冷媒流路31内の冷却水は、まず、矩形部入口314から補強材7の先端71(冷媒流路31の上方)に向かって流れ、補強材7の先端71から矩形部出口315に向かって流れる。これにより、冷媒流路31(矩形部313)内の冷却水が下方に偏ることが抑制され、冷却水がインバータ1のフィン15を伝って万遍なく流れる。従って、インバータ1の冷却効率が上昇する。
【0060】
また、矩形部入口314及び矩形部出口315は、矩形部313内に比して冷媒流路31の流路幅が狭く形成されているため、矩形部313内における冷却水の流速が上昇し、インバータ1の冷却効率がより上昇する。
【0061】
なお、本実施形態では、補強材7を第1部材(ベース本体)36の一部として構成しているが、必ずしもこれに限られず、例えば補強材7を第1部材36とは別個の部材として設けてもよい。
【0062】
上記した第4実施形態による電気部品用筐体100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0063】
電気部品用筐体100は、インバータ1(電気部品)が冷媒流路31内の冷却水に接触するフィン15を備える。また、インバータ1(電気部品)の下方の冷媒流路31内に、冷媒流路31を横断する補強材7が第2部材(樹脂板)37から立設され、補強材7は、補強材7の先端71を冷却水が通過するように冷媒流路31よりも低く構成されている。これにより、冷媒流路31内の冷却水が下方に偏ることが抑制され、冷却水がインバータ1のフィン15を伝って万遍なく流れる。従って、インバータ1の冷却効率が上昇する。
【0064】
なお、本実施形態のように、冷媒流路31に他の部分よりも流路幅の広い矩形部313を設け、矩形部313内の流速を上昇させることが好ましいが、必ずしも矩形部313を設けていなくてもよい。インバータ1の下方の冷媒流路31内に冷媒流路31を横断する補強材7を設ければ、冷却水の偏りが抑制され、インバータ1の冷却効率は上昇する。
【0065】
(第5実施形態)
図6~
図9を参照して、第5実施形態による電気部品用筐体100を説明する。なお、他の実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
図6は、第5実施形態による電気部品用筐体100の断面模式図であり、
図7は、電気部品用筐体100の底面図である。本実施形態では、導電性部材6が電気部品用筐体100の中央部付近に設けられている。
【0067】
図6に示すように、本実施形態においても、他の実施形態と同様に、インバータ1のグランド端子13と金属板5とが、ベース部3の貫通孔32内の導電性部材6を介して電気的に接続されている。導電性部材6の底面62は金属板5の上面に当接し、金属板5は、ボルト64等により導電性部材6の底面62に固定されている。
【0068】
また、導電性部材6は、電気部品用筐体100の中央部付近に設けられ、
図7に示すように、導電性部材6と金属板5とは、電気部品用筐体100の中央部付近においてボルト64等により金属板5の側から締結されている。なお、金属板5の周縁部は、ボルト等によりベース部3及びカバー部4に共締めされている(
図6、
図7)。
【0069】
ここで電気部品用筐体において、ベース部の底面を覆う金属板は一般的に剛性が低いため、当該金属板の周縁部のみがベース部に固定されていると、金属板の中央部が膜振動してしまう。例えば、
図8に示す電気部品用筐体100’では、金属板5’が、金属板5’の周縁部においてのみベース部3’及びカバー部4’に固定されているため、金属板5’の中央部が膜振動してしまう。その結果、低周波において共振が発生し、電気部品用筐体100’の音振性能が悪化する。
【0070】
これに対し、本実施形態では、ベース部3の底面34を覆う金属板5が、周縁部においてボルト等によりベース部3及びカバー部4に固定されるとともに、電気部品用筐体100の中央部付近においてボルト64等により導電性部材6に固定されている。これにより、
図9に示すように、金属板5が振動しても共振が抑制され、音振性能の悪化が抑制される。
【0071】
なお、導電性部材6が電気部品用筐体100の中央部付近ではない位置に設けられている場合でも、ボルト等により金属板5を導電性部材6に固定していれば音振性能の悪化をある程度抑制することができる。但し、導電性部材6を電気部品用筐体100の中央部付近に配置して金属板5を導電性部材6に固定することで、音振性能の悪化をより効果的に抑制することができる。
【0072】
上記した第5実施形態による電気部品用筐体100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0073】
電気部品用筐体100は、導電性部材6が電気部品用筐体100の中央部付近に設けられ、ベース部3の底面34を覆う金属板5が導電性部材6に固定される。これにより、金属板5が、電気部品用筐体100の中央部付近において導電性部材6に固定されるため、金属板5が振動しても共振が抑制され、音振性能の悪化が抑制される。
【0074】
なお、いずれの実施形態においても、電気部品用筐体100にインバータ1及び平滑コンデンサ2を収容する構成としたが、電気部品用筐体100に収容される電気部品はこれらに限られない。また、電気部品用筐体100に収容される電気部品の個数も任意であり、例えば一つの電気部品でもよく、また複数の電気部品を収容してもよい。
【0075】
また、いずれの実施形態においても、インバータ1のグランド端子13と導電性部材6とをバスバー14により電気的に接続しているが、必ずしもこれに限られない。例えば、グランド端子13と導電性部材6とを接続する導体として、ワイヤハーネス等を用いてもよい。
【0076】
また、いずれの実施形態においても、冷媒流路31を流れる冷媒を冷却水としたが、冷媒はこれに限られず、例えば冷媒ガスであってもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0078】
上記した各実施形態は、それぞれ単独の実施形態として説明したが、適宜組み合わせてもよい。