(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-24
(45)【発行日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ロストモーションエンジンバルブ作動システム内のロッカー制御
(51)【国際特許分類】
F01L 1/18 20060101AFI20240725BHJP
F01L 13/00 20060101ALI20240725BHJP
F01L 13/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F01L1/18 D
F01L13/00 302C
F01L13/06
(21)【出願番号】P 2023528408
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(86)【国際出願番号】 IB2021053904
(87)【国際公開番号】W WO2022106907
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-12
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413266
【氏名又は名称】ジェイコブス ビークル システムズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ、ガブリエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】シルバ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ドン
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0264584(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0131946(US,A1)
【文献】特表2009-522487(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105863766(CN,A)
【文献】中国実用新案第201461013(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/00
F01L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つを作動させるため
のシステムであって、
主イベント運動及び少なくとも1つの補助運動を定義する少なくとも1つの運動源と、
前記運動源から前記少なくとも1つのバルブに運動を伝達するためのロッカーであって、前記運動源から運動を受容するように配置された運動源側と、前記少なくとも1つのバルブに運動を誘導するように配置されたバルブ側と、を有する、ロッカーと、
前記ロッカーバルブ側と協働して前記ロッカーのバルブ側から前記少なくとも1つのバルブに運動を伝達するバルブトレインであって、
前記バルブトレインが、前記ロッカー上に配設されたロストモーション構成要素を含み、前記ロストモーション構成要素は、前記ロストモーション構成要素が、ロッカー運動を前記少なくとも1つのバルブに伝達する、アクティブ化状態に構成可能であり、前記ロストモーション構成要素が、
それが起こらなければ前記少なくとも1つのバルブに伝達されるであろう運動を吸収する、非アクティブ化状態に構成可能である、バルブトレインと、
前記ロストモーション構成要素が前記非アクティブ化状態にあるときに、前記ロッカーの前記運動を制御するように適合され
、及び、前記内燃機関の固定部分に固設されたロッカー運動制御構成要素と、を備える、システム。
【請求項2】
前記運動源上に定義された前記少なくとも1 つの補助ブレーキ運動が、カムのサブベース円部分に定義されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ロストモーション構成要素が、前記カムの前記サブベース円部分に対応する運動量を失うように適合されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ロッカー運動制御構成要素が、付勢機構を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記付勢機構において、前記ロッカーを前記バルブ側に向かって付勢する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記付勢機構が、ばねを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ばねが、平坦ばねである、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記バルブトレインが、バルブブリッジと、前記バルブブリッジと係合するためのe フットと、を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、前記eフットを前記バルブブリッジと接触させたままに維持するためのeフット付勢構成要素を更に備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記eフット付勢構成要素が、eフットカップと協働するばねを備える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ばねが、前記eフットカップ上の環状肩部と係合する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記eフットは、長さが延伸可能であるように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記eフットが、制限されたストロークを有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記ストロークが、eフットカップの底面と、前記eフットカップの上端の内側に延在するリップと、によって定義される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記eフットは、前記ロッカーが前記ブリッジと組み立てられていないときに、前記eフットが前記ロッカー上に組み立てられたままであるように、定義された制限まで延伸可能であるように構成されている、請求項8に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照及び優先権の主張)
本出願は、2020年11月20日に出願された「LOST MOTION ROCKER BRAKE BIASING SYSTEM」と題する米国仮出願第63/198,902号に対する優先権を主張するものであり、その主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、概して、内燃機関のバルブを作動させるためのシステムに関する。より具体的には、本開示は、ロストモーションバルブ作動システムに特に好適であるロッカーアーム運動を制御するための特徴を有するエンジンバルブ作動システムに関する。
【背景技術】
【0003】
内燃機関は、動作中に1つ以上の燃焼室への可燃性成分、通常は燃料及び空気の流れを制御するためのバルブ作動システムを必要とする。そのようなシステムは、エンジン動作中の吸気バルブ及び排気バルブの運動及びタイミングを制御する。正出力モードでは、燃料及び空気を燃焼用のシリンダに入れるために吸気バルブが開かれ、続いて燃焼生成物がシリンダから逃げることを可能にするように排気バルブが開かれる。この動作は、通常、エンジンの「正出力」動作と呼ばれ、正出力動作中にバルブに適用される運動は、通常、「主イベント」バルブ作動運動と呼ばれる。エンジンブレーキ(動力吸収)をもたらす運動などの補助バルブ作動運動は、エンジンバルブのうちの1つ以上に付与される「補助」イベントを使用して達成され得る。
【0004】
主イベントの正出力動作モード中のバルブの動きは、通常、運動源として1つ以上の回転カムによって制御される。バルブトレイン内に配設されたカムフォロア、プッシュロッド、ロッカーアーム、及び他の要素は、カム表面からバルブへの運動の直接転送を提供する。バルブブリッジを使用すると、単一の上流バルブトレインから複数のバルブに運動を付与し得る。補助イベントの場合、補助イベントバルブの動きを容易にするために、「ロストモーション」デバイスがバルブトレインにおいて利用され得る。ロストモーションデバイスは、それぞれのカム表面単独による作動の結果として別様に発生する運動と比較して、バルブ運動が修正される技術解決策のクラスを指す。ロストモーションデバイスは、バルブの主イベント動作に加えて、又はその代替として、補助イベントの選択的発生を容易にするために、その長さ、剛性、又は圧縮性が変化及び制御されるデバイスを含み得る。補助イベントはまた、別個の補助又はブレーキカム及びバルブトレインを使用して、1つ以上のバルブに補助運動を付与して、補助イベントの選択的発生を容易にし得る、専用カムシステムによって容易にされ得る。
【0005】
ブレーキ、及び他の補助ロストモーション用途では、複数のバルブイベントは、アクチュエータピストンなどのロストモーション要素の選択的伸長又は後退に基づいて、アクティブ化又は非アクティブ化される同じカムローブ及び異なるイベントに組み込まれ得る。ロストモーションカムシステムは、通常、同じカムローブ上に異なるプロファイルのリフトセクションを有する少なくとも1つのカムを使用して、それぞれの主イベント及び1つ以上の補助イベントに運動を付与する。これらの異なるプロファイルのリフトセクションは、バルブトレイン内に位置するピストン又はアクチュエータなど、別個のロストモーション機構を使用してアクティブ化又は非アクティブ化される。補助イベントの例は、エンジンブレーキ、早期排気バルブ開放(early exhaust valve opening、EEVO)、遅延吸気バルブ閉鎖(late intake valve closing、LIVC)リフトイベント、及び内部排気ガス再循環イベント(internal exhaust gas recirculation event、IEGR)を含み、バルブセット内の1つ以上のバルブ(すなわち、それぞれのシリンダについて2つの排気バルブ)に付与され得る。ロストモーションブレーキシステムなどのロストモーション補助バルブリフトシステムは、ロストモーションカムに関連付けられた単一のロッカーと、主イベント運動において2つのエンジンバルブを作動させるためのロッカーに関連付けられたバルブブリッジと、を採用し得る。バルブのうちの1つにおける補助バルブリフト又はブレーキ運動は、補助バルブリフト又はブレーキアクチュエータによって容易にされ、この補助バルブリフト又はブレーキアクチュエータは、ロッカー内に収納され得、ブリッジ内に配設され、ブリッジに対して独立した運動を提供するブリッジピンを介して、バルブに補助又はブレーキ運動を選択的に付与し得る、ロストモーションデバイスである。補助バルブリフト又はブレーキアクチュエータは、ロストモーションカム上の補助又はブレーキングイベントリフトプロファイルセクション又はローブが、エンジンブレーキなどの補助イベントが所望されるときにのみバルブ上に補助又はブレーキ運動をもたらすように、選択的にアクティブ化及び非アクティブ化される。
【0006】
いくつかのロストモーションバルブ作動システムは、1つ以上のカム上のサブベース円ロストモーションプロファイルを利用し得る。そのようなシステムでは、主イベントバルブリフトプロファイルが、カムベース円の上のカムに提供され得るが、ロストモーションプロファイルは、カムベース円の下の同じカムに提供される。主イベント運動中、ロストモーションアクチュエータが非アクティブ化された状態で、ロストモーションギャップがバルブトレイン内で生成され、サブベース円プロファイルは、結果として、失われ、エンジンバルブに渡されない。ロストモーションアクチュエータがアクティブ化されると、バルブトレイン内のロストモーションギャップが取り上げられ、補助運動プロファイルはエンジンバルブに伝達され得る。
【0007】
ロストモーションロッカーブレーキシステムを含むロストモーションシステムの設計の周辺の1つの固有の懸念は、補助バルブリフト(ロストモーション)アクチュエータが非アクティブ化されたときに、関連するバルブトレイン内のギャップが作成され得ることである。作成されたギャップは、サブベース円補助運動プロファイルを利用するロストモーションシステムにおいて特に大きくなり得る。そのような場合、バルブトレイン内にギャップの存在から生じ得る制御されていない運動の程度を防止又は低減するために、ロッカーアームの運動を制御する必要がある。
【0008】
そのようなロストモーション環境におけるロッカー制御のための既存の解決策は、ロッカーのカム側をカムに向かって付勢する付勢機構を利用しており、これにより、バルブトレインにギャップを引き起こすイベント中でも、ロッカーカムフォロアはカムと常に接触しているので、これらのイベント中のロッカーの制御されていない運動が防止される。これらの結果を達成する付勢機構は、ばねバー、アクチュエータピストンばね、又はアンダーマウントロッカー付勢ばねを含み得る。
【0009】
先行技術のカム側ロッカー付勢の解決策は、欠点を有さないわけではない。例えば、そのような解決策では、特にサブベース円補助イベントが利用されるとき、補助運動リフトアクチュエータが非アクティブ化状態にあるとき、ブレーキオフ状態でカムローラ(フォロア)とカムローブとの間の接触を維持するために、数百ニュートン程度の力の強い付勢力、及び適切に設計された付勢構成要素が必要とされ得る。そのような付勢力が必要とされる理由は、補助運動リフトアクチュエータが非アクティブ化されたときに、ロッカーアームの全質量が、典型的にはカムによって生成される加速力及び減速力にさらされ、結果として、ロッカーアーム及びカムフォロアが、別様にカム表面から分離する傾向があり得るためである。
【0010】
したがって、先行技術における上述した欠点などに対処するシステムを提供することが有利であろう。
【発明の概要】
【0011】
前述の課題に対して、一態様によれば、本開示は、ロストモーションシステムにおいて適用され得るロッカー運動を制御するための特徴を有するバルブ作動システムの様々な実施形態を提供する。より具体的には、本開示は、付勢構成要素が、エンジンバルブに向かう方向にロッカーのバルブ側を付勢するように配置及び適合されたシステムを説明する。追加の態様は、バルブブリッジと協働してギャップを排除し、ロッカー及びバルブブリッジの制御を更に強化する、eフット上の付勢構成要素を提供し得る。eフットには、eフットがバルブブリッジと接触していないとき(すなわち、ロッカー及びブリッジが分解されるとき)であっても、eフットを組み立てられた状態に維持するために、定義されたストローク及び保持特徴が更に提供され得る。説明されるシステムは、通常ならばバルブトレイン内にギャップが存在し得るロストモーション構成要素の非アクティブ化中でも、ロッカー制御を容易にする。
【0012】
一態様によれば、本開示は、内燃機関において2つ以上のエンジンバルブのうちの少なくとも1つを作動させるためのシステムを提供し、システムは、主イベント運動及び少なくとも1つの補助運動を定義する少なくとも1つの運動源と、運動源から少なくとも1つのバルブに運動を伝達するためのロッカーであって、運動源から運動を受容するように配置された運動源側と、少なくとも1つのバルブに運動を誘導するように配置されたバルブ側と、を有する、ロッカーと、ロッカーのバルブ側と協働してロッカーのバルブ側から少なくとも1つのバルブに運動を伝達するバルブトレインであって、バルブトレインが、ロッカー上に配設されたロストモーション構成要素を含み、ロストモーション構成要素は、ロストモーション構成要素が、補助ロッカー運動を少なくとも1つのバルブに伝達する、アクティブ化状態に構成可能であり、ロストモーション構成要素が、それが起こらなければ少なくとも1つのバルブに伝達されるであろう運動を吸収する、非アクティブ化状態に構成可能である、バルブトレインと、ロストモーション構成要素が非アクティブ化状態にあるときに、ロッカーの運動を制御するように適合されたロッカー運動制御構成要素と、を備える。
【0013】
更なる態様によれば、運動源上に定義された少なくとも1つの補助ブレーキ運動は、カムのサブベース円部分に定義されている。
【0014】
更なる態様によれば、ロストモーション構成要素は、カムのサブベース円部分に対応する運動量を失うように適合されている。
【0015】
更なる態様によれば、ロッカー運動制御構成要素は、付勢機構を含む。
【0016】
更なる態様によれば、付勢機構は、ロッカーをバルブ側に向かって付勢する。
【0017】
更なる態様によれば、付勢機構は、ばねを含む。
【0018】
更なる態様によれば、ばねは、平坦ばね、コイルばね又はねじりばねである。
【0019】
更なる態様によれば、バルブトレインは、バルブブリッジと、バルブブリッジと係合するためのeフットと、を含む。
【0020】
更なる態様によれば、システムは、eフットをバルブブリッジと接触させたままに維持するためのeフット付勢構成要素を更に備える。
【0021】
更なる態様によれば、eフット付勢構成要素は、eフットカップと協働するばねを備える。
【0022】
更なる態様によれば、ばねは、eフットカップ上の環状肩部と係合する。
【0023】
更なる態様によれば、eフットは、長さが延伸可能であるように構成されている。
【0024】
更なる態様によれば、eフットは、制限されたストロークを有する。
【0025】
更なる態様によれば、eフットストロークは、eフットカップの底面と、eフットカップの上端の内側に延在するリップと、によって定義される。
【0026】
更なる態様によれば、eフットは、ロッカーがブリッジと組み立てられていないときに、eフットがロッカー上に組み立てられたままであるように、定義された制限まで延伸可能であるように構成されている。
【0027】
本開示の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになり、上記の態様は、包括的又は限定的であるとみなされるべきでない。上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、本開示の発明的態様の実施例を提供することを意図しており、決して、添付の特許請求の範囲で定義された範囲を限定又は拘束するものと解釈されるべきでない。
上記及び他の本発明の付随する利点及び特徴は、全体を通して同様の参照符号が同様の要素を表す添付図面とともに、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。説明及び実施形態は、本開示の態様に従う例示的な実施例として意図されており、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に限定されることを意図していないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の態様による、ロッカー付勢構成要素を含む、例示的なロストモーションロッカーアセンブリ、eフット、及びバルブブリッジの斜視図である。
【
図2】
図1の例示的なロストモーションロッカーアセンブリ、eフット、及びバルブブリッジの分解斜視図である。
【
図3】ロストモーション構成要素が非アクティブ化状態にある、
図1の例示的なロストモーションロッカー、eフット、及びバルブブリッジの内部特徴を示す断面図である。
【
図4】ロストモーション構成要素がアクティブ化状態にある、
図1の例示的なロストモーションロッカー、eフット、及びバルブブリッジの内部特徴を示す断面図である。
【
図5】2つのバルブ及びロッカーシャフトを有するエンジン環境における例示的なロストモーションロッカー、eフット、及びバルブブリッジの側面図である。
【
図6】圧縮(ブレーキオフ)状態における例示的なeフット構成の詳細断面図である。
【
図7】ストローク制限状態(ブレーキオン)における例示的なeフット構成の詳細断面図である。
【
図8】カムのサブベース円部分に定義された補助運動を有する例示的なカムプロファイルの断面図である。
【
図9】付勢構成要素が分解図で示されている、例示的な2バルブ開放ロストモーションロッカーブレーキの斜視図である。
【
図10】付勢構成要素が組み立てられて示されている、
図9の例示的なシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示の態様による例示的なバルブ作動システムにおける構成要素の機能は、最初に全体的に説明され、そしてより詳細な例示的な実装形態の文脈で説明される。これらの全体的及び例示的な説明は、本開示に反映される発明に関して例示的であり、包括的又は限定的ではないことを意図している。
【0030】
図1~
図5及び
図8を参照すると、例示的なバルブ作動システム10は、ロッカー100、ロストモーション構成要素200、バルブブリッジ及びeフットアセンブリ300、並びにロッカー付勢構成要素400を含み得る。ロッカー100は、主ロッカー本体104、ロッカーシャフトジャーナル102の両側のバルブ側110及びカム側120を含み得る。カム側120は、カムの形態(
図8参照)の運動源から運動を受容し得るカムローラ又はフォロア122を含み得る。カムフォロア122は、フォロアシャフト124によって主ロッカー本体104に固設され得る。前述のように、ロッカー本体104は、ロストモーション構成要素200を収容するための一体型ボア及び空洞、並びに当技術分野で一般に知られているように、ロストモーション構成要素200をアクティブ化及び非アクティブ化するために使用される油圧流体を制御するための制御構成要素及び通路を含み得る。
【0031】
ロッカー100のバルブ側110は、eフット及びバルブブリッジアセンブリ300を含み得、これは、主イベント運動を、ロッカー100から、バルブブリッジ310に、かつ最終的には、バルブブリッジ310からの運動を受容するように配置されている2つのエンジンバルブ(
図5参照)に伝達するための主イベント負荷経路の一部分を構成し得る。ブリッジピン312は、ブリッジボア314内に延在して、ロストモーション構成要素200(アクティブ化時)からの運動をエンジンバルブのうちの1つに伝動し、それによって、この1つのエンジンバルブの補助イベント及び補助運動を提供し得る。
【0032】
図3及び
図4に最もよく見られるように、ロストモーション構成要素200は、延伸されたときに、ブリッジピン312の端部に係合して、それに運動を伝動するアクチュエータピストン210を含み得る。アクチュエータピストン210は、ロストモーションアクチュエータポスト220及びロストモーションアクチュエータばねと協働して、ロッカー100に対するアクチュエータピストン210の摺動移動を提供しながら、アクチュエータピストン210をロッカー100に固設し得る。アクチュエータピストン210は、ロストモーション構成要素200がアクティブ化されたとき、油圧下で延伸し、ロストモーション構成要素200が非アクティブ化されたとき、ロストモーションアクチュエータばねの力の下で後退し得る。ロストモーションアクチュエータポスト220は、ロッカー100に対するロストモーションアクチュエータポスト220の軸方向位置の調整を可能にするように、ねじ付き締結具222でロッカー100に固設され得る。本開示から認識されるように、ロストモーション構成要素200は、ロストモーション構成要素200がアクティブ化されると、補助運動をロッカー100からブリッジピン312に、及びエンジンバルブのうちの1つに伝達して、この1つのエンジンバルブの補助運動をサポートする、補助負荷経路の一部分を構成し得る。
図3は、非アクティブ化状態におけるロストモーション構成要素200を示し、ピストン210は、ロッカー100内に後退している。
図4は、アクティブ化状態におけるロストモーション構成要素200を示し、ピストン210は、ロッカー100から延伸し、延伸位置にあるブリッジピン312と係合している。
【0033】
本開示の態様によれば、付勢構成要素400は、この例では、台座450又はエンジンオーバーヘッド環境内の他の固定構造から延在する平坦ばね410として提供され、ねじ付き締結具(すなわち、マシンボルト)430でそれに固設され得る。平坦ばね410は、ある程度の弾力性及び可撓性を有するばね鋼又は他の材料で構築され得る。平坦ばね410のロッカー係合端412は、制御構成要素を収容するための湾曲ハウジング又はボス部分106などのロッカー本体104の一部分に係合するように成形及び位置決めされ得る(
図1及び
図5を参照)。平坦ばね(又は板ばね)410は、ロッカー110のバルブ側をバルブに向かって(すなわち、
図1及び
図5のロッカージャーナル102を中心に反時計回りに)押す傾向のある方向に、ロッカー100のバルブ側110に付勢力を及ぼすように配置及び適合され得る。本開示から認識されるように、例示的な平坦ばね410の代わりに、他の機構及び配置を利用して、ロッカー100のバルブ側付勢を提供し得る。例えば、圧縮ばねは、ロッカー100のバルブ側に配置され、エンジンの固定部分に固設されて、バルブ側力を及ぼし得る。代替的に、ねじりばねは、ロッカーシャフト又は他の構造の周りに配置されて、そのような力を及ぼし得る。また更に、実装を提供する油圧ピストン、張力ばね、又は他の力が使用され得る。
【0034】
本開示から認識されるように、ロストモーション構成要素200がアクティブ化されると、運動源のサブベース円補助運動プロファイルは、エンジンバルブのうちの1つに伝達され得る。更に
図8を参照すると、例示的な運動源500は、主イベントバルブ運動を定義するためにベース円530を越えて半径方向に延在する主イベントプロファイル520を有するカム510を含み得る。補助イベントを定義し得る補助イベントプロファイル540及び550は、ベース円530内(下)に提供され得る。本開示から認識されるように、ロッカー100が付勢構成要素400によってバルブの方向に付勢されるとき、ロストモーション構成要素200が非アクティブ化されると、主イベント運動のみがカム510から伝達される。ロストモーション構成要素の非アクティブ化状態では、カム500のサブベース円表面がカムフォロア122に遭遇すると、カムローラ122と運動源500との間にギャップが存在することになり、それにより、補助運動プロファイル540及び550によって定義されるサブベース円補助運動は、ロッカー100に伝達されなくなる。一方、ロストモーション構成要素200がアクティブ化されると、補助運動プロファイル540及び550は、カムフォロア122と係合することになり、それにより、それらによって定義される補助運動は、ブリッジピン312を介して、エンジンバルブのうちの1つに伝達されることになる。
【0035】
図5は、ロッカー100のバルブ側110に係合する付勢構成要素400を示す側面図である。特に、平坦ばね又は板ばね410の弓状ロッカー係合端412は、ロッカー100の円筒形又は丸形ハウジング部分106に係合するように配置されている。
図5はまた、バルブブリッジ310に係合する一対のエンジンバルブ、並びにロッカーシャフトジャーナル102内に配設されたロッカーシャフト108を示す。
【0036】
本開示の態様によれば、eフット及びブリッジアセンブリ300には、ロッカー及びバルブトレイン構成要素の更なる制御、並びに他の利点を提供する特徴が提供され得る。より具体的には、eフット付勢機構が提供されて、eフットとバルブブリッジとの間の接触を維持するようにロッカー及びeフットを制御し得る。再び
図1~
図5を参照し、更に
図6及び
図7を参照すると、eフット及びバルブブリッジアセンブリ300は、ねじ付き締結具322を用いてロッカー100のバルブ側110に固設されたeフットポスト320を含み得る。eフットポスト320は、eフット台座又はカップ330上の対応する形状の表面336に係合するための、その上に半球形表面326を有する枢動端324を含み得る。eフット付勢ばね340は、eフット台座330上の環状肩部332とロッカー100上の座面160(
図6)との間に着座され得る。したがって、ばね340は、台座330をバルブブリッジ310に対して押し付ける傾向がある付勢力をeフット台座330に提供し得る。バルブ側付勢機構では、eフット付勢機構300は、eフット台座330をバルブブリッジと接触させたままに保って、ハンドオフイベント、過渡イベント、又はバルブ閉鎖イベント中の過剰なブリッジ動態を防止するように有利に機能する。例えば、ロストモーションロッカーアクチュエータピストンがインボード排気バルブをアクティブ化するとき、例えば、ブレーキ動作において、通常ならば、大きいギャップが、eフット台座330とバルブブリッジ310との間に形成され得る。eフット付勢機構300は、そのような大きいギャップの形成を防止し、バルブトレイン構成要素に追加の制御及び安定性を提供し得る。
【0037】
本開示の一態様によれば、eフット台座330は、全ての可能な動作条件の位置を調整するために、eフットポスト320に対する事前定義されたストローク又は長さ「S」の移動(
図6)を提供され得る。
図6は、eフット台座330に対して、かつeフット台座330内で最下位位置にあるeフットポスト320を示す。この位置は、主イベント運動がバルブブリッジ310に付与されるブレーキオフ(ロストモーション構成要素非アクティブ化)位置に対応し得る。
図7は、eフット台座330に対するストローク長S内の中間位置におけるeフットポスト320を示す。この位置は、ブレーキオン(ロストモーション構成要素アクティブ化)に対応し得、ここでは、eフット台座のストローク「S」が提供されない場合、通常ならばeフット台座330とバルブブリッジ310との間にギャップが存在することになる。制限されたストロークを実装するために、eフット台座330は、台座330の上端から内側に延在し、かつeフットポスト端324の肩部328に係合し、それによってeフット台座330に対するeフットポスト320の更なる移動を制限するように配置及び適合された、ストローク制限リップ337又は他の干渉構造を含み得る。この事前定義されたストロークは、eフット付勢機構と組み合わせて、典型的には通常ならばeフット台座330とバルブブリッジ310との間に小さいギャップをもたらすであろうブレーキオフ(又はロストモーション構成要素非アクティブ化)状態、又は典型的には通常ならばeフット台座330とバルブブリッジ310との間に大きいギャップをもたらすであろうブレーキオン(ロストモーション構成要素アクティブ化)状態を含む、全ての動作条件のためのeフット位置の調整を容易にする。
【0038】
本開示の別の態様によれば、eフット台座には、バルブブリッジ310が存在しないとき(すなわち、組み立て前又は取り外し中に)、eフットポスト320上にeフット台座330を保持するための保持機構が提供され得る。ストローク制限リップ337は、eフットポスト320からのeフット台座330の取り外しを防止する程度まで延在するように形成され得る。例えば、ストローク制限リップ337は、eフットポスト320が台座330内に位置付けられた後、台座330の上縁の内部に形成され得る。代替的に、Cクリップ又は他の拡張デバイスは、台座330の内部に形成されたチャネル又は溝内に配設され、台座330がeフットポスト320に設置された後に、その位置に設置され得る。
【0039】
図9は、本開示の態様による別の例示的なバルブ作動システムの斜視分解図であり、
図10は、その斜視組み立て図である。この例では、2バルブ開放ロストモーションロッカーブレーキが適用される。認識されるように、
図1~
図8の例示的なシステムのブリッジピン312は除去される。両方のバルブは、バルブブリッジ1310を介して同じ運動で動作し、バルブブリッジ1310は、統合された折り畳み又はロストモーション構成要素1200を介して運動を受容し得る。この例では、両方のバルブは、運動源及びロストモーション構成要素1200のアクティブ化/非アクティブ化に応じて、補助イベント又は主イベント運動を行うように動作され得る。ロッカーは、付勢構成要素1400でバルブ側に付勢され、付勢構成要素1400は、締結具1430でエンジンヘッド台座に固定され、かつロッカーのバルブ側1110と係合する板ばね1410を含み得る。この例示的なシステム構成は、単一バルブのロストモーションのアクティブ化を実装するために必要とされる構成要素のためにインボードバルブがアクセス可能ではない場合など、
図1~
図8の上で説明される例における単一バルブのロストモーションが実現可能でないことがあるエンジンに好ましい場合がある。2バルブのロストモーションの例示的なシステム構成は、他のバルブトレイン制限により、排気バルブごとに単一のロッカーアームを必要とするエンジンにも好ましい場合がある。認識されるように、統合されたロストモーション構成要素1200は、シリンダ非アクティブ化のために利用され得る。
【0040】
本開示から認識されるように、上で説明される実施形態は、当技術分野に対して利点及び改善を提供する。例えば、1つの利点は、ブレーキオフ状態におけるロッカー質量を制御するために必要な付勢ばね力が、本明細書に開示されるバルブ側付勢構成では大幅に低減され得ることである。ロッカーアームのバルブ側はバルブに向かって付勢されるため、サブベース円カムイベントは、ロストモーション要素が非アクティブ化されたときにロッカーアームの運動をもたらさない。結果として、ロッカーアームは、カム表面との接触を維持するために大きい付勢力を必要としない。ロッカーによってバルブにカムによって付与される唯一の運動イベントは、主イベントである。したがって、標準バルブばねは、そのような主イベント運動中にロッカーをカムと接触させたままに保つようにサイズ決定され得る。大きい付勢力に対するこの必要性を排除することにより、バルブトレイン構成要素の設計を簡略化し、コストを低減することができる。更に、システムは、より低い重量を有し得る。結果として、重量の増加から、及びエンジン動作中のより大きい付勢力の使用から生じる寄生損失が低減され得、燃費が改善され得る。別の利点は、先行技術と比較して、製造及び組み立てが簡略化され、より費用効果的になり得ることである。本開示による上で説明される例示的なシステムを動作させるのに十分な付勢力を有する平坦ばね又は板ばねは、先行技術のシステムにおけるロッカーアーム制御に必要な非常に大きい付勢力を有するコイルばねと比較して、より容易にかつより低いコストで作製され得る。
【0041】
本実装形態は、特定の例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、特許請求の範囲に記載されているような本発明のより広範な趣旨及び範囲を逸脱することなく、様々な修正及び変更がこれらの実施形態に行われ得ることが明らかであろう。したがって、明細書及び図面は、限定的ではなく例示的なものであるとみなされるべきである。