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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】インダクタおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240726BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20240726BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240726BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F41/02 D
H01F41/04 B
H01F27/28 147
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021056465
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022153771
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】本田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 敦
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-092617(JP,A)
【文献】特開2013-161892(JP,A)
【文献】特開昭60-150504(JP,A)
【文献】特開2017-228741(JP,A)
【文献】特開2013-105566(JP,A)
【文献】特開2010-232421(JP,A)
【文献】特開2006-252942(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235539(WO,A1)
【文献】特開昭52-033084(JP,A)
【文献】特開2009-123418(JP,A)
【文献】国際公開第2020/179298(WO,A1)
【文献】特開2010-147216(JP,A)
【文献】特開2021-027201(JP,A)
【文献】特開2002-033213(JP,A)
【文献】特開2006-150217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 41/02
H01F 41/04
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆した平角導線を巻回したコイルと、前記コイルを金属磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料で埋設したインダクタであって、前記コイルの巻回部と前記複合磁性材料との間にはコーティング層が設けられ、前記コーティング層の前記コイルの巻回部の角部の最小厚さを、前記コーティング層の前記コイルの巻回部の外周面の平均厚みの25%以上とし、且つ、前記コイルは、上下2段にフラットワイズ巻きされたものであり、前記平角導線の端部と前記巻回部の壁面とのなす角において、前記コーティング層のフィレット部が形成され、前記フィレット部の厚みを前記コーティング層の前記コイルの巻回部の角部の最小厚さの2倍以上、10倍以下としたインダクタ。
【請求項2】
前記コーティング層の前記コイルの巻回部の外周面の平均厚みを1μm以上、20μm以下とした請求項1記載のインダクタ。
【請求項3】
前記コーティング層にポリイミド膜を用いた請求項1記載のインダクタ。
【請求項4】
金属磁性体粉末とバインダ材料とを混合して磁性体シートを作る工程と、絶縁被覆した平角導線を巻回してコイルを作る工程と、前記コイルの表面にコーティング層を形成する工程と、前記コーティング層を形成した前記コイルを前記磁性体シートに挟んでプレスし、熱硬化させる工程と、を備えたインダクタの製造方法であって、前記コーティング層を形成する工程ではコーティング樹脂を静電塗布することにより前記コーティング層を形成することにより、前記コーティング層の前記コイルの巻回部の角部の最小厚さを、前記コーティング層の前記コイルの巻回部の外周面の平均厚みの25%以上としたインダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導線を巻いてコイルが形成され、コイルが磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料で形成された成形体内に埋設されたインダクタおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年携帯電話や車載デバイスにおける電子部品に対する小型化のニーズが高まっている。これに対し、コイルを磁性材料の内部に埋設することによって、小さいサイズにおいても所定のインダクタンス値が得られるように設計されたコイル部品が開発されている。特に車載デバイスにおいてはさらに大きな電流を流せるよう求められ、コイルとして平角導線を巻回したものが用いられている。
【0003】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-49597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常コイルは絶縁被覆した導線を巻回しているが、平角導線を巻回し、磁性体に金属磁性粉を用いると、巻回したコイルの角部で絶縁被覆が薄くなり絶縁耐圧が劣化しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、絶縁被覆した平角導線を巻回したコイルと、コイルを金属磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料で埋設したインダクタであって、コイルの巻回部と複合磁性材料との間にはコーティング層が設けられ、コーティング層のコイルの巻回部の角部の最小厚さを、コーティング層のコイルの巻回部の外周面の平均厚みの25%以上としたものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように行うことにより、高インダクタンスで、耐電流性、耐電圧性に優れたインダクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態におけるインダクタの斜視透視図
図2】本発明の一実施の形態におけるインダクタの断面図
図3】本発明の一実施の形態におけるコイルと固定フレームの上面図
図4】本発明の一実施の形態におけるコイルコーティング工程の図
図5】本発明の一実施の形態におけるインダクタの断面図
図6】本発明の一実施の形態におけるコイルの図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態におけるインダクタについて、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態におけるインダクタの斜視透視図、図2図1におけるコイル中心軸L0を含み、成形体端面、すなわち導線端部が存在する面の中心をとおる面の断面図である。
【0011】
成形体12は、磁性体粉末とバインダ材料とを含有する複合磁性材料で形成され、磁性体粉末としてはFe、Si、Cr、Bの合金が使用され、バインダ材料としてはシリコン樹脂が、それぞれ用いられる。成形体のサイズは幅2.5mm、奥行き2.0mm、厚み1.2mmである。成形体の内部にはコイル11が埋め込まれている。
【0012】
コイル11は、平板状の銅製の導線の表面に電着により絶縁被膜が施されたものが用いられる。この絶縁被膜の平均厚みは約5μm、角部の厚みは約2μmとなっている。導線の厚み寸法は0.05mm、幅寸法は0.30mmである。この導線の幅方向がコイル11の巻軸と平行になるような形態で、フラットワイズ巻きにて2段に巻回されている。コイル11は楕円形状となるように巻回され、その長径は1.9mm、短径は1.6mmである。このコイル11の上にさらにポリイミドからなるコーティング層18が設けられている。このコーティング層18のコイル巻回部の外周面の平均厚みを約5.8μm、コイルの巻回部の角部の最小厚さ(図2のT)を約3.1μmとしている。このような絶縁性の高いコーティング層18をコイル11に施すことにより、コイル11の絶縁性を高めることができ、外部電極15とコイル11の間に発生する電圧によるショートを防ぐことができる。通常ディップ方式でコーティング層を形成すると、コーティング液の粘度が高いと膜厚が過剰になりインダクタンス値が劣化する傾向があり、逆に粘度が低い場合は対象物の角部からコーティング液が流れ落ちて角部に全く付着しない部分が発生する可能性がある。導線端部13はコイル11の外周部を沿うように引き出され、成形体12の両端面に形成された外部電極15に接続される。
【0013】
成形体12の両端面には外部電極15が形成される。この外部電極15は、銀の粉末と樹脂を混ぜて作られた導線性ペースト材を成形体12の両端面に塗布して硬化させたものであり、その厚みは0.05~0.1mm程度である。この導線は絶縁被膜に覆われているが、切断面17で切断することによって銅が露出している状態となるため、外部電極15と電気的に接続することができる。外部電極15は、はんだ付けでの実装性をもたせるため、表面にニッケルおよびスズのメッキを施している。
【0014】
また導線端部13がコイル11の上段と下段の境目に配置され、導線端部13とコイル11の巻回部壁面のなす角においてコーティング層18のフィレット部が形成され、フィレット部の厚みがコイル外周部のコーティング層15の厚み平均値の約3倍としている。
【0015】
ここで、フィレット部の厚みの定義を説明する。図2において、導線端部13の表面上の辺L1と、コイルの巻回部外周面上の辺L2の交点をPとし、Pからコーティング層18の表面までの最短距離Xをフィレット部の厚みとする。
【0016】
なお、図2の断面図は導線端部13の引き出し方向と垂直で、導線端部13とコイル11の巻回部が最も近づく部分を通るようにとるものとする。
【0017】
上述の厚みをもつフィレット部を形成することにより、成形体12の成形工程においてコイル11の変形を抑制し、インダクタンス値の変化の少ない、品質のよいインダクタを製造することができる。
【0018】
コーティング層18のコイル11の巻回部の角部の最小厚さを、コーティング層18のコイル11の巻回部の外周面の平均厚みの25%以上とすることが望ましい。角部の最小厚さが平均厚みの25%よりも薄くなると、耐電圧性が十分に確保できない。
【0019】
またコーティング層18のコイル11の巻回部の外周面の平均厚みを1μm以上、20μm以下とすることが望ましい。外周面の平均厚みが1μmよりも薄くなると耐電圧性が十分に確保できない。外周面の平均厚みが20μmよりも厚くなると、インダクタンス値が十分に確保できない。
【0020】
さらに平角導線の導線端部13と巻回部の壁面とのなす角において、コーティング層18のフィレット部が形成されフィレット部の厚みをコーティング層18のコイル11の巻回部の角部の最小厚さの2倍以上、10倍以下とすることが望ましい。フィレット部の厚みが巻回部の角部の最小厚さの2倍より薄くなると、成形工程においてコイルの変形を十分に抑止しにくくなる。フィレット部の厚みが巻回部の角部の最小厚さの10倍よりも厚くなると、インダクタンス値が十分に確保できない。
【0021】
次に本発明のインダクタの製造方法について説明する。
【0022】
まず混錬工程を行う。磁性体粉末とバインダ材料とを混錬しスラリー状態にする。磁性体粉末としてはFe、Si、Cr、Bの合金が使用され、バインダ材料としてはシリコン樹脂が、それぞれ用いられる。
【0023】
次にシート化工程を行う。スラリーを平らな土台の上に流してシート状態にし、乾燥させる。これにより磁性シートが形成される。磁性シートは乾燥後、適切なサイズにカットされる。
【0024】
その一方で、導線を巻線機にて巻回し、コイルの形成を行う。導線は、平板状の銅製の導線の表面に絶縁被膜が施されたものが用いられる。導線の幅方向がコイルの巻軸と平行になるような形態で、フラットワイズ巻きにて2段に巻回する。このとき、導線の引き出し部が巻回部の外周に位置するように導線を巻回する。また、2つの引き出し部は巻回部の外周から互いに反対方向に引き出されるようにする。さらに、導線端部の引き出し方向がコイルの短径方向と平行となるように、なおかつ導線端部の幅方向がコイルの長径方向と平行となるように、導線に対してねじり加工および折り曲げ加工が施される。
【0025】
導線端部の加工後、コイルをステンレス製の固定フレームの上に固定する。図3は本発明の一実施の形態におけるコイルと固定フレームの図である。図3における固定フレーム14は厚み0.1mmのプレートで、格子状となっており、固定フレーム14の格子の上に約9個のコイル11を接合する。格子にコイル端子を乗せ、端子と格子を接着剤で固定する。接着剤は熱硬化性のエポキシ系接着剤を用いる。
【0026】
次にコイルコーティング工程を行う。固定フレーム14および複数のコイル11にたいして、静電塗布装置にてコーティング剤を塗布し、コイルの該表面にコーティング層18を形成する。コーティング剤はポリイミド樹脂を用いる。
【0027】
次に積層成形プレス工程を行う。コイル11が接着された固定フレーム14の上下に磁性シートを積層し、熱及び荷重をかけてプレス成形する。プレス成形時の温度は120~180℃程度で、熱により磁性シートの流動性が高まる。コイルの周囲の隙間は磁性シートの変形および圧入によって埋め尽くされ、磁性シートは密着、硬化して一体化する。このような工程を経て複数のコイルが接合された固定フレームは磁性シートの内部に埋設される。
【0028】
次に熱硬化工程を行う。熱プレスにより成形した磁性シートを180℃2時間の熱硬化工程により完全に硬化させて成形体としての必要な強度を確保する。
【0029】
次に個片化工程を行う。ダイシング装置にて磁性シートを切断し、個別のコイルを含む成形体に個片化する。このとき切断面17が導線端部13上を通るように切断されることで、コイル端子の切断面17を成形体12の端面に露出させる。また固定フレーム14はダイシングによって完全に除去し、成形体12内部には残らないようにする。
【0030】
最後に電極形成工程を行う。個片化させた成形体11の端面に導電性ペースト材を塗布し、加熱によって乾燥および硬化させる。その後、導電性ペースト材の表面をメッキ処理することにより外部電極15が形成され、インダクタとして完成する。電極形成工程において、成形体の端面に導線端部13の切断面17が露出されているため、導線端部13は外部電極15と切断面において電気的に接合される。
【0031】
次に、コイルコーティングの工程についてより詳細に説明する。
【0032】
従来から用いられる一般的なコーティング方式としては、対象物を液体に漬け込むディップ方式や、噴射スプレーによって霧状となった液体を対象物に吹きかける噴射スプレー方式などがよく用いられるが、ディップ方式はコーティング液の粘度が高いと膜厚が過剰になる傾向があり、逆に粘度が低い場合は対象物の角部からコーティング液が流れ落ちて角部に膜がつきにくくなるため、角部をふくめた対象物の表面全体を1~20μm程度の膜厚で均一となるようにコントロールすることが難しい。
【0033】
また噴射スプレー方式では粘度の高いコーティング液だと噴射が困難になるため、コーティング液の粘度を低下させる必要があるが、この場合も上記と同様に角部に膜がつきにくくなる。
【0034】
したがって平角導線を用いた本発明のコイルにおいては、平角の角部に対するコーティング層の確保を考えると上記のディップ方式や噴射スプレー方式は適さない。
【0035】
そこで本発明のインダクタの製造方法においては、高粘度のコーティング液であっても霧状のスプレーを発生させることのできる静電塗布工法によってコイルの表面部をコーティングする。
【0036】
図4はコイルコーティング工程における塗布工程の図である。コイル11および固定フレーム14は、金属製の固定治具16のうえに設置される。固定フレーム14と固定治具16はポリイミド製の粘着テープで固定されている。固定治具16は水平に対して45°の角度となるように斜めに傾けられている。また固定治具16は電位0Vとなるようにアースに接地されている。さらに固定治具16はヒーターによって加熱され80~100℃に保たれている。
【0037】
上記のような状態で保持された固定治具16、コイル11、固定フレーム14の上部にはコーティング液21を供給するノズル19が設置されている。ノズル19は約10kVの電位となるように電圧が印加されている。このようなノズル19からコーティング液21が噴出される。コーティング液21はポリイミド樹脂と溶剤の混合物であり、溶剤としてはNメチルピロリドンが用いられる。コーティング液21の粘度は1~5Pa・s程度となるように溶剤量が調整されている。このような粘度のコーティング液21を使用することにより、コイル11の角部に形成されるコーティング層18の厚みを確保することができる。
【0038】
ノズル19から噴出されたコーティング液21は正の電荷を帯びているため、ノズル19から落下するにしたがって、静電気的反発力によって次第に液体が分散し微粒子化する。このような静電気の作用により、高粘度のコーティング液であっても微粒子化することができる。
【0039】
コイル11の上面は水平に対して45°傾いているため、上部から降りかかるコーティング液21は、コイル11の上面、外周面、および角部にそれぞれ塗布される。コーティング液21が微粒子化されているため、各部に塗布されるコーティング液21は、各部の表面状でムラのない均一なコーティング層18を形成する。また、コイル11の導線端部13と外周面との間にフィレット部が形成される。また固定治具16は80℃以上に加熱されているため、コイル11もまた固定治具16からの伝熱によって加熱されている。コイル11の表面にコーティング液21が付着すると、コーティング液21に含まれる溶剤が熱によって蒸発し、コーティング液21中に含まれるポリイミド樹脂の濃度が高まって粘度が増加することにより、コイル11の角部からコーティング液21が流れ落ちにくくなり、角部の膜厚が確保される。
【0040】
固定フレーム14の全体に均一にコーティング液を塗布するため、ノズル19は固定フレーム14の上部を一定の速度で移動させながら、コーティング液21の塗布を行う。
【0041】
固定フレーム14の表面の塗布を完了させたのち、固定フレーム14を固定治具16から取り外して反転させた状態で再び固定治具16に固定し、固定フレーム14の裏面の塗布を行う。
【0042】
固定フレーム14の裏面の塗布が完了させたのち、固定フレーム14と固定治具16を加熱炉に入れて120℃で30分間乾燥させる。その後、200℃で1時間以上加熱させる。200℃の加熱工程でコーティング層18におけるポリイミド樹脂を完全に硬化させる。加熱が完了したら固定フレーム14を固定治具から取り外してコイルコーティング工程は完了である。
【0043】
上記の工程によって得られたコーティング層18の膜厚は、コイル11外周部の平均膜厚が5.8μm、角部の最小厚みは3.1μm、角部の最小厚みは外周部の平均厚みの59%程度となっている。
【0044】
なお、上記の膜厚測定箇所については図5図6を用いて説明する。図5は、図2のうち、コイル11とコーティング層18のみを抜き出したものである。図6はコイル11を軸方向上部からみた図である。図5図6の黒丸のように膜厚の測定点を示した。図5、6に示すようにコイル角部の最小厚みはコイル外径の周上の角部の8点とコイル内径の周上の8点の合計16点のコーティング層厚みを計測し、16点の中で最も値の小さいものをとった。また、コイル外周部の厚みは導線の長手方向の中心部の表面に形成されたコーティング層の厚みを、上段、下段のそれぞれにおいて周方向4点とった合計8点の平均値をとった。
【0045】
また、本工程で形成されたコーティング層はポリイミド樹脂製のものである。一般的にコーティング樹脂としてよく用いられる樹脂としては、ポリイミド樹脂の他に、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などが挙げられるが、エポキシ樹脂やシリコン樹脂のガラス転移点が180℃以下であるのに対し、ポリイミド樹脂のガラス転移点は220℃以上と、比較的高温である。そのため、コイルコーティング工程の後工程である積層プレス工程での120~180℃の高温成形工程においても、コーティング層が十分な硬さを維持することができるため、コイル11の絶縁膜を保護することができる。また、ポリイミド樹脂はエポキシ樹脂やシリコン樹脂よりも耐電圧が高いため、インダクタとしての耐電圧をより高めることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のインダクタおよびその製造方法は、高インダクタンスで、耐電流性、耐電圧性に優れたインダクタを得ることができ、産業上有用である。
【符号の説明】
【0047】
11 コイル
12 成形体
13 導線端部
14 固定フレーム
15 外部電極
16 固定治具
17 切断面
18 コーティング層
19 ノズル
21 コーティング液
図1
図2
図3
図4
図5
図6