(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】タンク取付構造
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20240726BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20240726BHJP
B60K 15/067 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F02M37/00 301D
B60K15/03 B
B60K15/067
F02M37/00 301J
(21)【出願番号】P 2020162978
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】303002158
【氏名又は名称】三菱ふそうトラック・バス株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直龍
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223145(JP,A)
【文献】特開2003-120455(JP,A)
【文献】特開2001-233067(JP,A)
【文献】実開昭62-137727(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B60K 15/03ー15/067
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を貯留するタンクをブラケットで保持して車両に搭載するタンク取付構造において、
前記タンクは、少なくとも側壁部、背面壁部、及び底壁部、を有し、
前記側壁部
及び前記背面壁部の上部に
延びる、凹み部が形成され、
前記底壁部に、タンク外部と接続される接続部が下方に張り出しており、
前記ブラケットは、前記タンクの側壁部に対応する側面部
と、前記背面壁部に対応する背面部
と、前記底壁部に対応する底面部
と、及び、前記側面部または前記背面部の前記タンク側に形成された凸部と、を有し、
前記底面部には前記接続部が挿通可能な開口部が形成され、
前記凸部は、前記タンクが前記ブラケットに取り付けられた状態
において、前記凹み部の凹み空間内に配置さ
れるタンク取付構造。
【請求項2】
前記タンクは、前記接続部に、前記タンクが前記ブラケットに取り付けられた状態で、前記ブラケットの前記底面部よりも下方にて前記背面壁部側且つ前記開口部の開口縁よりも外側に延びる延出部が形成されている請求項1に記載のタンク取付構造。
【請求項3】
前記凹み部は、前記タンクにて規定されている前記流体の貯留上限液面よりも上側に形成されている請求項1または2に記載のタンク取付構造。
【請求項4】
前記凹み部は、前記側壁部及び前記背面壁部が共有する角部分に形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【請求項5】
前記凹み部は、前記タンクを前記ブラケットに取り付ける過程における
前記タンクに対する
前記凸部の移動軌跡を含む溝形状をなしている請求項1から3のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【請求項6】
前記凸部は、前記ブラケットの側面部に形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【請求項7】
前記凸部は、前記ブラケットの背面部に形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【請求項8】
さらに、前記タンクを前記ブラケットに固定するバンドブラケットを備え、
前記凸部は、前記バンドブラケットを固定するのに用いるウェルドナットである請求項1から7のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【請求項9】
前記タンクは前記流体として還元剤を貯留するタンクである請求項1から8のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【請求項10】
前記車両はサイドレールを備えており、前記タンクは前記ブラケットを介してサイドレールの外側側面に取り付けられる請求項1から9のいずれか一項に記載のタンク取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のタンク取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、流体を貯留し、その流体を外部の装置に供給するタンクが備えられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、排気浄化用の還元剤を貯留するための還元剤タンクが備えられるものがある。この還元剤タンクは、ブラケットを介して車両に取り付けられる。また、還元剤タンクに貯蔵されている還元剤は、上部に接続される還元剤供給配管を介して還元剤供給ポンプに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、還元剤タンクの下部にタンクとタンク外部との接続部が設けられることがある。この接続部としては、例えば、供給部(還元剤供給配管や還元剤供給ポンプなど)や還元剤の品質や量を検出する検出部などが考えられる。
【0006】
この還元剤タンクをブラケットを介し車両に取り付ける場合、還元剤タンク下部の接続部とブラケットの底面との干渉を避けるため、例えば、還元剤タンクを斜めの状態で、ブラケットに挿入しながら取り付けしなければならない場合があるが、作業者が誤って真上から還元剤タンクを取り付けて、接続部とブラケットの底面と干渉してしまう虞がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンクをブラケットに対し適切な方向からしか取り付けることができないようにして、タンク下部の接続部とブラケットとの干渉を回避できるタンク取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
(1)本適用例に係る、流体を貯留するタンクをブラケットで保持して車両に搭載するタンク取付構造において、前記タンクは、少なくとも側壁部、背面壁部、及び底壁部、を有し、前記側壁部又は前記背面壁部の上部に、凹み部が形成され、前記底壁部に、タンク外部と接続される接続部が下方に張り出しており、前記ブラケットは、前記タンクの側壁部に対応する側面部、前記背面壁部に対応する背面部、及び前記底壁部に対応する底面部を有し、前記底面部には前記接続部が挿通可能な開口部が形成され、前記側面部または前記背面部には、前記タンクが前記ブラケットに取り付けられた状態で、前記凹み部の凹み空間内に配置される凸部が形成されている、ことを特徴とする。
【0010】
上記適用例に係る車両のタンクの取付構造によれば、凸部がタンクの取り付けの目安(ガイド)となり、タンクをブラケットに取り付ける際に、タンクがブラケットの形状に沿って鉛直方向に挿入されるのを防ぐことができる。その結果、タンクをブラケットに対し、適切な方向からしか取り付けることができないようになり、タンク下部の接続部との干渉を避けることができる。つまり、ブラケットの開口部の開口面積を必要以上に大きくする必要もなくなり、底面部における支持面積を広く取り、ブラケットにおけるタンクに対する支持強度も確保することができる。
【0011】
(2)上記(1)の適用例に係る前記タンク取付構造において、前記タンクは、前記接続部に、前記タンクが前記ブラケットに取り付けられた状態で、前記ブラケットの前記底面部よりも下方にて前記背面壁部側且つ前記開口部の開口縁よりも外側に延びる延出部が形成されていてもよい。このようにタンクの接続部における延出部が、タンクがブラケットに取り付けられた状態で、ブラケットの底面部よりも下方にて背面壁部側且つ開口部の開口縁よりも外側に延びている場合でも、凹み部に凸部を収めてタンクを取り付けることで、底面部と干渉することなく、延出部を開口部に挿通させることができる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)の適用例に係るタンク取付構造において、前記凹み部は、前記タンクにて規定されている前記流体の貯留上限液面よりも上側に形成されていてもよい。これにより、タンクの貯留容量を減らすことなく凹み部を設けることができる。
【0013】
(4)上記(1)から(3)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、前記凹み部は、前記側壁部及び前記背面壁部が共有する角部分に形成されていてもよい。これにより、タンクに対して簡易な加工で凹み部を形成することができる。
【0014】
(5)上記(1)から(3)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、前記凹み部は、前記タンクを前記ブラケットに取り付ける過程におけるタンクに対する凸部の移動軌跡を含む溝形状をなしていてもよい。このような凹み部の形状により、タンクの取付時には溝形状に沿って凸部を通すようにタンクを移動させることで、より確実に接続部とブラケットの底面部との干渉を回避することできる。
【0015】
(6)上記(1)から(5)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、前記凸部は、前記ブラケットの側面部に形成されていてもよい。これにより、ブラケットに対して簡易な加工で凸部を形成することができる。
【0016】
(7)上記(1)から(5)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、前記凸部は、前記ブラケットの背面部に形成されていてもよい。これにより、簡易な構成で凸部を設けることができる、
【0017】
(8)上記(1)から(7)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、さらに、前記タンクを前記ブラケットに固定するバンドブラケットを備え、前記凸部は、前記バンドブラケットを固定するのに用いるウェルドナットでもよい。これにより、部品点数やコストの増加を招くことなく、ブラケットに凸部を設けることができる。
【0018】
(9)上記(1)から(8)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、前記タンクは前記流体として還元剤を貯留するタンクでもよい。このように、タンクが貯留する流体は排気処理装置で用いる還元剤(例えば尿素水)であることで、例えば、車両や排気処理装置の製造時の組み立てや、メンテナンス時にタンクを容易に且つ安全に着脱することできる。
【0019】
(10)上記(1)から(9)のいずれかの適用例に係るタンク取付構造において、前記車両はサイドレールを備えており、前記タンクは前記ブラケットを介してサイドレールの外側側面に取り付けられてもよい。例えば、トラックのサイドレールにおいては、前記タンクの容量確保のため、前記トラックの前後方向に広げようとしても、他の部品とのレイアウトの関係上、前記トラックの前後方向に広げることに制限がある場合がある。この場合は、前記タンクの容量確保のため、前記タンクを前記トラックの上下方向に延ばすことになる。しかし、前記ブラケットの底面部も前記トラックの車両前後方向に広げられない。この場合、前記底面部の支持強度確保のため、前記タンクの底壁部に接続される接続部を挿通させるための開口部の形状が制約され、前記タンクを前記ブラケットに真上から取り付けると前記底面部と前記接続部が干渉する場合がある。本タンク取付構造においては、このような場合でも、前記底面部と前記接続部が干渉することを回避しながら、前記タンクを前記ブラケットに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタンク取付構造を備える車両の全体構成を上方から見た概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るタンク取付構造の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタンクの側面図である。
【
図4】
図2に示すタンク取付構造の縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るタンク取付構造の下面図である。
【
図6】
図2に示すタンク取付構造の部分上面図である。
【
図8】(a)タンクの第1変形例、(b)タンクの第2変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るタンク取付構造を備える車両1を上方から見た概略構成図である。なお、以下の説明では、車両1の進行方向を基準にして前後・左右(幅)・上下方向を規定する。
【0023】
車両1は、例えば、運送を目的とするトラックである。車両1は、車両1の前後方向に沿って延在し互いに平行に配置される左右一対のサイドレール11R、11L(以下、特に左右の区別が必要ない場合はサイドレール11という)と、これらサイドレール11R、11Lを接続するよう幅方向に延在する複数のクロスメンバ12とから構成されるラダーフレーム10を備える。そして、ラダーフレーム10は、キャブ2、車輪機構3、駆動装置(不図示)、排気処理装置20、タンク取付部30、その他の艤装品を支持する。具体的には、ラダーフレーム10の前部にキャブ2及び図示されていない前輪の車輪機構が設けられ、ラダーフレーム10の後部に後輪の車輪機構3が設けられている。本実施形態における車両1はキャブ2下に設けられたエンジンを駆動源としている。なお、車両は駆動源としてモータも備えるハイブリッド電気自動車であってもよい。
【0024】
排気処理装置20は、例えば、エンジンの排気中の窒素酸化物(NOx)を浄化するために還元剤として尿素を用いたSCR(Selectve Catalytic Reduction)触媒を有し、
図1に示すように、車両1のキャブ2後方において右サイドレール11Rの外側に配置されている。SCR触媒を用いた排気処理装置20は、排気が流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的に排気中の窒素酸化物(NOx)を還元剤と反応させる性質を備えた触媒を設け、排気中のNOxを選択的にSCR触媒に吸着させる。そして、排気処理装置20は、SCR触媒の排気上流側の排気通路中に尿素水を噴射し、尿素水中の尿素を加水分解して還元剤であるアンモニア(NH
3)をSCR触媒に供給する。これにより、排気処理装置20は、SCR触媒に吸着したNOxを還元して窒素(N
2)と水(H
2O)に分解して排出させることで、NOxの排出濃度を低減させることが可能である。
【0025】
タンク取付部30は、
図1に示すように、車両1のキャブ2後方において、左サイドレール11Lに排気処理装置20と幅方向において対向して配置されている。
【0026】
以下、タンク取付部30の構造について詳しく説明する。
図2は本発明の一実施形態に係るタンク取付部30の斜視図である。
【0027】
タンク取付部30は、流体を貯留するタンク31をブラケット32で保持する構造をなしている。本実施形態においてタンク31は、貯留する流体を上述のSCR触媒で用いる尿素水とする尿素水タンクである。タンク31は、排気処理装置20や車両1の制御装置と図示しない配管や配線で接続されている。ブラケット32は、左サイドレール11Lの外側側面に取り付けられている。
【0028】
ブラケット32は、主に、タンク31を保持する保持部33と、タンク31を上側から押さえるバンド部34と、保持部33の下側に設けられて後述するタンク31の下部構造である接続部312を保護するための下部構造保護部35と、から構成されている。ブラケット32は、主に板状部材を屈曲させて形成され、素材は、例えば鉄等の金属である。
【0029】
保持部33は、車両前方側と車両後方側に互いに平行に配置される2つの側面部331a、331b、前記2つの側面部331a、331bのそれぞれの車幅方向内側の端部と接続され、車幅方向内側に面して配置される背面部332、及び、2つの側面部331a、331bの下端と背面部332の下端と接続され水平に配置される底面部333と、を有している。これら側面部331a、331b、背面部332、底面部333により形成される空間は、タンク31を収容し保持できる大きさを有している。
【0030】
側面部331a、331bは、車両前後方向から見たときに、車幅方向外側上方の位置に斜辺が形成される略直角三角形の形状で、斜辺の少なくとも一部にフランジ334が形成されている。
【0031】
背面部332は、左サイドレール11Lにボルト、ナット等の固定部材により取り付けられる。これにより、ブラケット32は、背面部332が左サイドレール11Lの側面に面して配置され、固定支持される。底面部333は、タンク31の重量を支える部分であり、詳しい構成は後述する。
【0032】
バンド部34は、車幅方向内側に配置される内側バンドブラケット34aと、車幅方向外側に配置される外側バンドブラケット34bを有している。各バンドブラケット34a、34bはそれぞれ、タンク31の上壁部304に接しながら横断し両側壁部301a、301bの一部を覆うように細長い板状部材をタンク31の上部構造に沿って略コの字形状に形成したものである。
【0033】
各バンドブラケット34a、34bの両端には取付孔が形成されており、前記取付孔にボルト40a、40b、41a、41b(
図2ではボルト40a、41aのみ図示)が挿入され、ブラケット32の側面部331a、331bに設けられているウェルドナットに締結されることで固定される。各バンドブラケット34a、34bの固定を解除すると、タンク31の拘束が解かれ、タンク31を取り外すことが可能となる。このようにして、ブラケット32は、タンク31を着脱可能に保持する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係るタンク31の側面図である。
【0035】
タンク31は、例えば樹脂で形成された略立方体形状の容器である。具体的には、タンク31は、ブラケット32に取り付けられた状態の向きを基準として、車両前方側と車両後方側に互いに平行に配置される2つの側壁部301a、301bと、前記2つの側壁部301a、301bの車幅方向内側の端部と接続される背面壁部302、及び車幅方向外側の端部と接続される正面壁部303を有している。また、タンク31は、2つの側壁部301a、301b、背面壁部302、及び正面壁部303の上端と接続されている上壁部304及び下端と接続されている底壁部305を有している。正面壁部303は、上側が傾斜した傾斜面303aを有している。
【0036】
タンク31は、正面壁部303の傾斜面303a上部に、前記傾斜面303aに対して垂直方向に注入口311が突出している。また、注入口311の横から正面壁部303に沿って下方に延び、底壁部305に接続された液量ゲージ306が設けられている。液量ゲージ306は、タンク31内の流体の液面に沿って印又は液面が上下することで、タンク31内の流体の貯留量を把握可能である。
【0037】
また、タンク31の下部には、底壁部305から下方に略円柱状の接続部312が張り出している。接続部312には、排気処理装置20と図示しない供給管を介して接続される吐出口312a(延出部)と、車両の制御装置と図示しない配線を介して接続される端子部312b(延出部)とを有している。これら吐出口312a、端子部312bはそれぞれ接続部312から背面壁部302側に向けて延びている。
【0038】
また、タンク31は、前側及び後側の側壁部301a、301bの車幅方向内側の上部角部であり、背面壁部302及び上壁部304の車幅方向内側の両角部に、側壁部301a、301bの面からそれぞれ前後方向内側に凹んだ凹み部313a、313bが形成されている。なお、
図3では後側の側壁部301b及び凹み部313aのみが図示されている。凹み部313a、313bは、タンク31を前後方向から見て、略矩形状をなしている。
【0039】
図4は、
図2に示すタンク取付部30の車幅方向に沿った縦断面図である。
【0040】
タンク31の注入口311は、円筒体311aが容器内部に延びており、
図4に示す液面は、前記円筒体311aのタンク内部先端部分の位置にある。この液面位置はタンク31の仕様として設定されているタンク31の貯留上限位置である。タンク31の凹み部313は、その大部分が貯留上限の液面より上側のいわゆるエアボリューム314の範囲に形成されている。
【0041】
タンク31内には、底壁部305に、内部の尿素水を排気処理装置20に供給するためのポンプ312cや尿素水の品質や量を検出するセンサ類312dが配置されている。
【0042】
次に、ブラケット32の底面部333の形状とタンク31の接続部312の配置関係について説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係るタンク取付部30の下面図である。
【0043】
ブラケット32の底面部333は、
図5に示すように、中央部分に開口部335が形成されている。開口部335は、車幅方向内側の開口縁がタンク31の接続部312よりも大きい半円状をなしており、車幅方向外側の開口縁もタンク31の接続部312の円柱部分よりも大きい形状をなしている。つまり、開口部335は、タンク31が取り付けられた状態で、接続部312が挿通可能な形状である。
一方で、同状態において、接続部312の一部である吐出口312a及び端子部312bは、開口部335の開口縁より外側に延びている。開口部335の車幅方向の長さL1は吐出口312a及び端子部312bを含めた接続部312の車幅方向の長さL2よりも短い。すなわち、タンク31がブラケット32に取り付けられた状態では、
図4からも明らかなように、上下方向において、吐出口312a及び端子部312bとタンク31の底壁部305との間にはブラケット32の底面部333が介在している。
【0044】
また、開口部335の車幅方向外側の開口縁は、ブラケット32の底面部333の一部をなす補強板36により形成されている。補強板36は、底面部333においてタンク31を支持する支持面積を確保するために設けられており、取り外しも可能である。前記補強板36を取り外すと開口部335の車幅方向外側は開放される。この開口部335の開放幅W1は、タンク31の接続部312の前後方向幅W2よりも狭い。なお補強板36は取り外す可能でなく、溶接等で設けられていてもよい。
【0045】
このように構成された底面部333は、タンク31取付時に、タンク31をブラケット32に対して鉛直に下すと、後述する凸部42a、42bがない場合、吐出口312a及び端子部312bは開口部335を通らず、底面部333と干渉する。また、補強板36を取り外した状態で、タンク31をブラケット32に対して車幅方向に移動させたとしても、接続部312は開口部335の開放端を通らず、底面部333と干渉する。
【0046】
次に、タンク31の凹み部313a、313bとブラケット32の凸部42a、42bとの配置関係について説明する。
図6は
図2に示すタンク取付部30の部分上面図である。具体的には、ブラケット32の背面部332側の部分上面図である。
【0047】
ブラケット32の前側及び後側の側面部331a、331bの車幅方向内側の上部には、タンク31がブラケット32に取り付けられた状態で、凹み部313a、313bの凹み空間内に配置される凸部42a、42bが形成されている。前記凸部42a、42bは上述した内側バンドブラケット34aを固定するボルト40a、40bと締結するウェルドナットである。両凸部42a、42bの前後方向の間隔は、タンク31の両側壁部301a、301bの間隔よりも狭く、両凹み部313a、313b間の間隔よりも広い。このため、タンク31取付時に、タンク31をブラケット32に対して鉛直に下すと、吐出口312a及び端子部312bが底面部333と干渉するよりも前に、タンク31の側壁部301a、301bが凸部42a、42bと干渉することになる。
【0048】
次に、タンク31のブラケット32への取り付け方法について説明する。
図7には、タンク31の取付時の動きを示す側面図が示されている。
【0049】
上述したように、タンク31はブラケット32に対して鉛直方向に下せば、まずタンク31の側壁部301a、301bが凸部42a、42bと干渉し、車幅方向に移動させても接続部312が底面部333に干渉する。
【0050】
そこで、本実施形態のタンク31及びブラケット32では、まず
図7にて点線で示すように、タンク31の車幅方向外側が高くなるよう傾斜させた状態で、凹み部313a、313bにブラケット32の凸部42a、42bが収まるように移動させる。そして、
図7の湾曲矢印で示すような軌跡で、凹み部313a、313bにブラケット32の凸部42a、42bが収まった状態でタンク31の車幅方向外側を下ろしていくことで、吐出口312a及び端子部312bを含めた接続部312がブラケット32の底面部333に干渉することなく、ブラケット32に収まるように取り付けられる。
【0051】
このように、タンク31の側壁部301a、301bの上部に凹み部313a、313bを形成し、ブラケット32の側面部に凹み部313a、313bの凹み空間内に配置される凸部42a、42bを径生成することで、凸部42a、42bがタンク31の取り付けの目安(ガイド)となる。これにより、タンク31をブラケット32に取り付ける際に、タンク31がブラケット32の形状に沿って鉛直方向に挿入されるのを防ぐことができる。その結果、タンク31をブラケット32に対し、適切な方向からしか取り付けることができないようになり、タンク31下部の接続部312、特に吐出口312aや端子部312bとブラケット32の底面部333との干渉を避けることができる。つまり、ブラケット32の開口部335の開口面積を必要以上に大きくする必要もなくなり、底面部333における支持面積を広く取り、ブラケット32におけるタンク31に対する支持強度も確保することができる。
【0052】
特にタンク31の接続部312における吐出口312aや端子部312bが、タンク31がブラケット32に取り付けられた状態で、ブラケット32の底面部333よりも下方にて背面壁部302側且つ開口部335の開口縁よりも外側に延びている場合でも、凹み部313a、313bに凸部42a、42bを収めてタンク31を取り付けることで、底面部333と干渉することなく、吐出口312aや端子部312bを開口部335に挿通させることができる。
【0053】
また、凹み部313a、313bが、タンク31にて規定されている貯留上限液面よりも上側、すなわちエアボリューム314の範囲に形成されていることで、タンク31の貯留容量を減らすことなく凹み部313a、313bを設けることができる。
【0054】
また、凹み部313a、313bを側壁部301a、301b及び背面壁部302が共有する角部分に形成することで、タンク31に対して簡易な加工で凹み部313a、313bを形成することができる。
【0055】
また、凸部42a、42bをブラケット32の側面部331a、331bに形成することで、ブラケット32に対して簡易な加工で凸部42a、42bを形成することができる。また、特に本実施形態のように、タンク31の両側壁部301a、301bのそれぞれに凹み部313a、313bを形成し、ブラケット32の両側面部331a、331bに凸部42a、42bを形成することで、タンク31が車両前後方向に傾くのを抑制し、安定的に取り付けることができるようになる。
【0056】
また、凸部42a、42bは、内側バンドブラケット34aを固定するのに用いるウェルドナットとすることで、部品点数やコストの増加を招くことなく、ブラケット32に凸部42a、42bを設けることができる。
【0057】
また、タンク31が貯留する流体は排気処理装置20で用いる還元剤(尿素水)であることで、車両1や排気処理装置20のメンテナンス時にタンク31を容易に且つ安全に着脱することできる。
【0058】
また、本実施形態のタンク取付部30はレイアウトに制限があるサイドレールの側面においても、十分な支持強度のタンク取付構造を実現することができる。
【0059】
以上で本発明に係るタンク取付部30の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0060】
上記実施形態において、凸部42a、42bはブラケット32の側面部331a、331bに設けられているが、凹み部が形成する凹み部空間に収まる形状であれば、例えば凸部をブラケットの背面部に設けてもよい。これにより、簡易な構成で凸部を設けることができる。また、より簡易な構成とすべく、一方の側面部のみに凸部を設けてもよい。
【0061】
また、上記実施形態において、凹み部313a、313bは側面視矩形状であるが、凹み部は、タンクをブラケットに取り付ける過程におけるタンクに対する凸部の移動軌跡を含む溝形状であってもよい。具体的には、
図8に(a)タンクの第1変形例、(b)タンクの第2変形例を示す側面図が示されており、以下同図に基づき凹み部の変形例について説明する。なお、上記実施形態と同じ構成については、同じ符号を付して説明する。
【0062】
図8(a)に示す第1の変形例のタンク31’では、凹み部313a’、313b’はタンク31’の取付時に描く円弧状の軌跡に沿って、側面視円弧状の溝形状をなしている。このような凹み部の形状により、タンク31’の取付時には溝形状に沿って凸部42a、42bを通すようにタンク31’を移動させることで、より確実に接続部312とブラケット32の底面部333との干渉を回避することできる。
【0063】
図8(b)に示す第1の変形例のタンク31’’では、凹み部313a’’、313b’’は側壁部301a’’、301b’’上部において背面壁部302’’側に延びた直線状の溝形状をなしている。このような凹み部の形状とすることでタンク31’’に対する加工を抑えることできる。
【0064】
また、上記実施形態では、凸部42a、42bがウェルドナットであるが、他の部品により凸部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 :車両
11 :サイドレール
20 :排気処理装置
30 :タンク取付部
31 :タンク
32 :ブラケット
33 :保持部
34 :バンド部
34a :内側バンドブラケット
34b :外側バンドブラケット
35 :下部構造保護部
36 :補強板
40a、40b:ボルト
42a、42b:凸部
301a、301b:側壁部
302 :背面壁部
303 :正面壁部
303a :傾斜面
304 :上壁部
305 :底壁部
311 :注入口
312 :接続部
312a :吐出口
312b :端子部
313a、313b:凹み部
314 :エアボリューム
331a、331b:側面部
332 :背面部
333 :底面部
334 :フランジ
335 :開口部