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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240726BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 50/54 20210101ALI20240726BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20240726BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/533
H01M50/54
H01M10/0585
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020566132
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046296
(87)【国際公開番号】W WO2020149019
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019004568
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神山 遊馬
(72)【発明者】
【氏名】松田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】荒木 義朗
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003843(WO,A1)
【文献】特開2016-110892(JP,A)
【文献】特開2014-072145(JP,A)
【文献】特開2012-004096(JP,A)
【文献】特開2018-006113(JP,A)
【文献】特開平08-167407(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029944(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/084244(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/00-10/39
H01M50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極板がセパレータを介して積層された積層電極体と、
前記複数の電極板の各々の一端から突出した複数の電極タブと、
前記積層電極体を収容する開口を有する外装体と、
前記開口を封口する封口板と、
前記封口板に設けられ、前記複数の電極タブと接続部で接続される集電体と、
前記接続部と前記積層電極体の間で前記複数の電極タブを束ねる結束部と、を備え、
全ての前記複数の電極タブは屈曲した屈曲部を有し、
前記結束部は、樹脂部材で前記複数の電極タブを挟持する構造又は接着剤で前記複数の電極タブを接着する構造を有し、前記屈曲部で全ての前記複数の電極タブを結束する、二次電池。
【請求項2】
前記結束部の一端が前記封口板に固定されている、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記結束部は、前記封口板から離れている、請求項に記載の二次電池。
【請求項4】
前記集電体は、前記複数の電極タブが前記電極板から突出する方向に対して略垂直に設置されており、前記複数の電極タブは、前記接続部において、前記集電体と略平行である、請求項1~3のいずれか1項に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の外装体に収容された電極体は、外部からの振動や衝撃によって、外装体内で動くことがある。特許文献1には、積層型二次電池の正極板と負極板との位置がずれる積層ズレを抑制するために、電極体側面にスペーサーを挿入して電極体を外装体に対して固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/113271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、積層型二次電池には電極体から突出した複数の電極タブで電極体を吊り下げて保持する構造を備えるものがあり、そのような構造を備える積層型二次電池は、外部からの振動や衝撃により破損してしまうという問題があることが判明した。本開示の目的は、電極タブの破損を抑制した二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様である二次電池は、複数の電極板がセパレータを介して積層された積層電極体と、複数の電極板の各々の一端から突出した複数の電極タブと、積層電極体を収容する開口を有する外装体と、開口を封口する封口板と、封口板に設けられ、複数の電極タブと接続部で接続される集電体と、接続部と積層電極体の間で複数の電極タブを束ねる結束部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、電極タブの破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態の一例である角形二次電池を示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿った断面図である。
図3】実施形態の一例である積層電極体を示す斜視図である。
図4図2の正極タブ周辺を拡大した断面図である。
図5図2のB-B線に沿った断面において、正極タブ周辺を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願発明者の検討により、電極タブで電極体を吊り下げて保持する構造を有する積層型二次電池においては、外部からの振動や衝撃により電極タブが破損してしまうという問題があることが判明した。特許文献1に開示されたように、電極体側面にスペーサーを挿入して電極体を外装体に対して固定すると、電極体を外装体に挿入しづらいという新たな課題が生じてしまい問題である。また、近年、電池の高容量化が進んでおり、充電時と放電時で電極体の大きさが大きく変わるため、電極体を外装体に対して固定してしまうと、充放電時に電極体に圧縮応力や引張応力が加わって電極体が変形して内部短絡を引き起こす可能性があるという問題もある。そこで、本願発明者は、外部からの振動や衝撃による電極タブの破損を抑制する方法を検討し、本開示の一形態である二次電池を発明するに至った。
【0009】
本開示の一態様である二次電池は、複数の電極板がセパレータを介して積層された積層電極体と、複数の電極板の各々の一端から突出した複数の電極タブと、積層電極体を収容する開口を有する外装体と、開口を封口する封口板と、封口板に設けられ、複数の電極タブと接続部で接続される集電体と、接続部と積層電極体の間で複数の電極タブを束ねる結束部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。なお、本明細書及び図1図5の紙面縦方向を「上下方向」とする。
【0011】
図1及び図2を用いて、実施形態の一例である二次電池100の構成を説明する。図1は、実施形態の一例である二次電池100の外観を示す斜視図であり、図2は、図1におけるA-A線を含む上下方向の断面図である。図1~2に示すように、二次電池100は、開口を有する外装体1と、当該開口を封口する封口板2とを有する電池ケース20を備える。外装体1及び封口板2は、それぞれ金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金製とすることができる。外装体1は、底部1a、一対の大面積側壁1b及び一対の小面積側壁1cを有し、底部1aと対向する位置に開口を有する角形の有底筒状の外装体である。図1に示す二次電池100は、角形の外装体1(角形の電池ケース20)を有する角形二次電池の例であるが、本実施形態の二次電池は、これに限定されず、円筒形の外装体(円筒形の電池ケース)を有する円筒形二次電池、樹脂シートをラミネートして形成されたラミネート形の外装体(ラミネート形の電池ケース)を有するラミネート形二次電池等でもよい。封口板2は、角形の外装体1の開口縁部にレーザー溶接等により接続される。
【0012】
封口板2は電解液注入孔17を有する。電解液注入孔17は、後述する電解液を注入した後、封止栓18により封止される。また、封口板2は、ガス排出弁19を有する。このガス排出弁19は電池内部の圧力が所定値以上となった場合に作動し、電池内部のガスを電池外部に排出する。
【0013】
封口板2には、電池ケース20外に突出するように正極端子10が取り付けられている。具体的には、正極端子10は、封口板2に形成された正極端子取り付け孔に挿入されており、正極端子取り付け孔の電池外側に配置された外部側絶縁部材13、電池内側に配置された内部側絶縁部材12により封口板2と電気的に絶縁された状態で封口板2に取り付けられている。正極端子10は、電池ケース20内で正極集電体8と電気的に接続している。正極集電体8は、内部側絶縁部材12を挟んで封口板2に設けられている。内部側絶縁部材12及び外部側絶縁部材13はそれぞれ樹脂製であることが好ましい。
【0014】
また、封口板2には、電池ケース20外に突出するように負極端子11が取り付けられている。具体的には、負極端子11は、封口板2に形成された負極端子取り付け孔に挿入されており、負極端子取り付け孔の電池外側に配置された外部側絶縁部材15、電池内側に配置された内部側絶縁部材14により封口板2と電気的に絶縁された状態で封口板2に取り付けられている。負極端子11は、電池ケース20内で負極集電体9と電気的に接続している。負極集電体9は、内部側絶縁部材14を挟んで封口板2に設けられている。内部側絶縁部材14及び外部側絶縁部材15はそれぞれ樹脂製であることが好ましい。
【0015】
二次電池100は積層電極体3と電解液を備え、外装体1は積層電極体3と電解液を収容する。後述するように、積層電極体3は、正極板31と負極板32とがセパレータ33を介して積層された積層構造を有している。積層電極体3の上部において、正極板31及び負極板32から各々正極タブ5及び負極タブ6が突出しており、正極タブ5及び負極タブ6は、それぞれ正極集電体8及び負極集電体9に接続部40で溶接等により接続されている。接続部40と積層電極体3との間で、正極タブ5及び負極タブ6はそれぞれ結束部41によって束ねられている。
【0016】
二次電池100は、積層電極体3と外装体1との間に配置される絶縁シート16を備えることができる。絶縁シート16は、例えば、外装体1と同様に、上部に開口を有する有底箱状又は袋状の形状を有している。絶縁シート16が上部に開口を有する有底箱状又は袋状の形状を有することで、積層電極体3を絶縁シート16の開口から挿入し、絶縁シート16によって積層電極体3を覆うことができる。
【0017】
絶縁シート16の素材は、電気的な絶縁性、電解液に侵されない化学的安定性、及び二次電池100の電圧に対して電気分解しない電気的安定性を有する素材であれば、特に限定されない。絶縁シート16の素材としては、例えば、工業的な汎用性、製造コスト及び品質安定性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレン等の樹脂材料を用いることができる。なお、絶縁シート16は、上述の箱状又は袋状等のようなケース状の形状に限定されない。例えば、横方向と縦方向の二方向に延在する平面形状の絶縁シート16を、積層電極体3の周りに、横方向と縦方向の二方向に巻き付けてもよい。これにより、平面形状の絶縁シート16によって、積層電極体3を覆うことができる。
【0018】
電解液は、溶媒と、溶媒に溶解した電解質塩とを含む。溶媒は、非水溶媒及び水溶媒のいずれも使用できる。非水溶媒を使用した場合には、電解液は非水電解液となる。非水溶媒には、例えばカーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。カーボネート類としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類が挙げられる。非水溶媒は、上記の溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。なお、電解液は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩は、リチウム塩を含む。リチウム塩には、従来の二次電池100において支持塩として一般に使用されているLiPF6等を用いることができる。また、適宜ビニレンカーボネート(VC)等の添加剤を添加することもできる。
【0019】
次に、図3を用いて積層電極体3及び電極タブ4(正極タブ5及び負極タブ6)について詳説する。積層電極体3は、複数の電極板30がセパレータ33を介して積層された、換言すれば正極板31と負極板32がセパレータ33を介して交互に積層された、積層構造を有する。正極板31は、金属製の正極芯体と、正極芯体上に形成された正極活物質を含む正極活物質層31aを有する。正極芯体には、アルミニウムなどの正極板31の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。正極芯体の厚みは、例えば10~20μmである。負極板32は、金属製の負極芯体と、負極芯体上に形成された負極活物質を含む負極活物質層32aを有する。負極芯体には、銅などの負極板の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極芯体の厚みは、例えば5~15μmである。二次電池100では、正極板31の大きさは負極板32の大きさよりも僅かに小さくするのが好ましい。
【0020】
積層電極体3を形成する複数の電極板30の各々の一端からは電極タブ4が突出している。換言すれば、正極板31の一端からは正極タブ5が突出し、負極板32の一端からは負極タブ6が突出している。各正極板31は略同じ位置に正極タブ5を有するので、積層電極体3において正極タブ5は積層方向に一列に並んでいる。同様に、各負極板32は略同じ位置に負極タブ6を有するので、積層電極体3において負極タブ6は積層方向に一列に並んでいる。
【0021】
正極タブ5には、アルミニウムなどの正極板31の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いられる。正極タブ5の厚みは、例えば10~20μmである。負極タブ6には、銅などの負極板の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極芯体の厚みは、例えば5~15μmである。本実施形態では、正極芯体又は負極芯体にそれぞれ他の導電部材を接続し、正極タブ5又は負極タブ6としている。なお、正極芯体が延出して正極タブ5を構成し、負極芯体が延出して負極タブ6を構成することも可能である。正極タブ5の根元部分には絶縁層ないし、正極芯体よりも電気抵抗が高い保護層を設けることが好ましい。
【0022】
正極活物質層31aは、正極活物質、カーボン等の導電助剤、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)等の結着剤を含み、正極芯体の両面に設けられることが好ましい。正極板31は、正極芯体上に正極活物質、導電助剤、及び結着剤等を含む正極活物質スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラー等により圧縮して正極活物質層31aを正極芯体の両面に形成することにより作製できる。なお、正極活物質層31aは、正極芯体の片面にのみ設けることもできる。
【0023】
正極活物質には、例えばリチウム金属複合酸化物が用いられる。リチウム金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好適なリチウム金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有するリチウム金属複合酸化物である。具体例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム金属複合酸化物が挙げられる。なお、リチウム金属複合酸化物の粒子表面には、酸化タングステン、酸化アルミニウム、ランタノイド含有化合物等の無機化合物粒子などが固着していてもよい。
【0024】
負極活物質層32aは、負極活物質、及びスチレンブタジエンゴム(SBR)等の結着材、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を含み、負極芯体の両面に設けられることが好ましい。負極板32は、負極芯体上に負極活物質、及び結着剤等を含む負極活物質スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、ローラー等により圧縮して負極活物質層32aを負極芯体の両面に形成することにより作製できる。なお、負極活物質層32aは、負極芯体の片面にのみ設けることもできる。
【0025】
負極活物質には、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛などの黒鉛が用いられる。負極活物質には、Si、Sn等のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が用いられてもよく、これらが黒鉛と併用されてもよい。当該化合物の具体例としては、SiOx(0.5≦x≦1.6)で表されるケイ素化合物が挙げられる。
【0026】
セパレータ33には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。セパレータ33は、例えばポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、及びアラミドから選択される少なくとも1種を主成分とする多孔質基材を含み、ポリオレフィンが好ましく、特にポリエチレン、及びポリプロピレンが好ましい。セパレータ33は、樹脂製の多孔質基材のみで構成されていてもよく、多孔質基材の少なくとも一方の面に無機物粒子等を含む耐熱層などが形成された複層構造であってもよい。また、樹脂製の多孔質基材が、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン等の複層構造を有していてもよい。セパレータ33は、例えば、平均孔径が0.02~5μm、空孔率が30~70%である。
【0027】
図4は、正極タブ5周辺を拡大した断面図である。以下、図4及び図5では結束部41について説明するが、正極タブ5に結束部41を設けた場合を例示する。負極タブ6について同様の構造を適用した場合にも、当然、同じ効果を得ることができる。正極タブ5及び負極タブ6の両方に結束部41を設けることが好ましい。各正極板31の一端から突出した複数の正極タブ5は、正極集電体8と接続部40で接続されている。接続部40と積層電極体3の間において複数の正極タブ5を結束部41で束ねることで、外部からの振動や衝撃によって正極タブ5同士が相対的に移動して擦れて摩耗してしまうことを抑制することができる。特に、正極タブ5が金属の箔であると、正極タブ5の幅方向の両端部(図4の正極タブ5の左右辺)にバリが発生する場合があり、正極タブ5同士が擦れた際の摩耗が激しいので、結束部41の効果が顕著である。
【0028】
図5を用いて、結束部41の好ましい形態について説明する。図5は、図2のB-B線に沿った断面において、正極タブ5周辺を拡大した断面図である。積層電極体3の上部から突出した複数の正極タブ5は、一定の間隔で一列に並んでおり、積層方向の略半分で二つに分けられ、それぞれ積層方向に沿って正面手前側と正面奥側(図5の左右)に集められて溶接等によって正極集電体8に接続部40で接続されている。複数の正極タブ5は、接続部40においては相互に溶接等によって固定されているので擦れることはないが、接続部40と積層電極体3との間においては外部からの振動や衝撃によって積層電極体3が積層方向に動くことで正極タブ5の間の距離が狭い部分で擦れを生じる。二次電池100の高容量化を図るために電池ケース20内の容積に対して積層電極体3は大部分を占めるので、積層電極体3と正極集電体8が近く、正極タブ5は屈曲部42で大きく屈曲している。屈曲部42においては、正極タブ5が積層方向に屈曲することで正極タブ5同士の間隔が狭くなっているので、特に屈曲部42において正極タブ5同士による擦れが生じやすく、また、一部のタブに応力が集中しやすい。
【0029】
複数の正極タブ5は屈曲した屈曲部42を有し、結束部41は、屈曲部42で複数の正極タブ5を結束することができる。屈曲部42においては、正極タブ5同士が接近するので外部からの振動や衝撃によって正極タブ5同士が擦れやすく、また、一部のタブに応力が集中しやすい。屈曲部42に結束部41を設けて正極タブ5を結束することで、屈曲部42における正極タブ5の摩耗や一部タブへの応力集中を抑制することができる。
【0030】
結束部41は、樹脂部材で複数の正極タブ5を挟持する構造を有することができる。図4及び図5に示す実施形態の一例における樹脂部材(結束部41)は、正極タブ5の幅よりも長い矩形形状を有しており、その両端を熱融着等でお互いに接着することで正極タブ5を挟持する。なお、正極タブ5を挟持することができる形状であれば、湾曲形など矩形以外の形状を選択しても良い。万一何らからの影響で樹脂部材が破損して正極タブ5から外れてしまった場合であっても、樹脂部材であれば意図しない通電を生じさせることはないので、電池の信頼性を高めることができる。樹脂部材としては、絶縁性のものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレン等が使用できる。
【0031】
結束部41は、接着剤で複数の正極タブ5を接着する構造を有することができる。実施形態の一例としては、屈曲部42において複数の正極タブ5同士を接着剤で接着することができる。接着剤で接着することで屈曲部42での正極タブ5同士の擦れを抑制できる。接着剤としては、複数の正極タブ5を接着できるものであれば特に限定されないが、アクリル系、あるいはエポキシ系等の熱硬化性樹脂接着剤を用いることができる。なお、上述の樹脂部材を用いて挟持する構造と併用することもできる。
【0032】
結束部41の一端が封口板2に固定されていることができる。この場合、結束部41が封口板2に固定されることで、正極タブ5は外部からの振動や衝撃を受けても動かなくなるので、正極タブ5同士の擦れをより確実に抑制することができる。また、結束部41の一端が内部側絶縁部材12又は内部側絶縁部材14を介して封口板2に固定されていてもよい。固定する方法としては、結束部41を内部側絶縁部材12又は内部側絶縁部材14に接着、嵌合、カシメなどで固定する方法や、結束部41の樹脂部材を内部側絶縁部材12又は内部側絶縁部材14と一体成形する方法がある。内部側絶縁部材12又は内部側絶縁部材14、及び結束部41がどちらも樹脂製であれば、結束部41は内部側絶縁部材12又は内部側絶縁部材14に接着しやすく、結束部41は内部側絶縁部材12又は内部側絶縁部材14と一体成形しやすい。
【実施例
【0033】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
<実施例>
正極活物質としてLiNi0.5Co0.2Mn0.32、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)及び導電材としてカーボンを92:4:4の重量比で混合した後、N-メチル-2-ピロリドンに分散させて、正極合材スラリーを調製した。このスラリーを正極芯体としての厚み15μmのアルミニウム箔にコーティングした後、乾燥させ、ローラーで圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、方形状の正極芯体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。なお、正極の端部に正極芯体を露出させることで正極タブを設けた。
【0035】
負極活物質として天然黒鉛、バインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロースを96:2:2の重量比で混合した後、水に分散させて、負極合材スラリーを調製した。このスラリーを負極芯体としての厚み10μmの銅箔にコーティングした後、乾燥させ、ローラーで圧縮した後、所定の電極サイズに切断し、方形状の負極芯体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。なお、負極の端部に負極芯体を露出させることで負極タブを設けた。
【0036】
負極板、セパレータとしてのポリエチレン、正極板の順で複数積層した積層電極体を作製した。そして、作製した積層電極体を、上部に開口を有する箱状の絶縁シートに挿入した。積層電極体の正極タブ及び負極タブを、封口板に取り付けた正極端子および負極端子にそれぞれ接続し、これを一度角形の外装体に挿入して正極タブ及び負極タブが屈曲する屈曲部の位置を確認した。そして、屈曲部で正極タブ及び負極タブをそれぞれ挟持するように一対の樹脂部材を押し当てて熱融着にて固定した。その後、外装体の開口を封口板で封口して、二次電池を作製した。
【0037】
本願においては、電解液を注入せずに後述する振動試験を行った。電解液を注入しない場合には、電解液を注入した場合に比べて外部からの振動や衝撃に対して積層電極体が動きやすいので、電解液を注入しない場合の方がより厳しい試験となる。
【0038】
<比較例>
結束部を設けなかったこと以外は、実施例と同様に二次電池を作製した。
【0039】
<振動試験>
振動試験は、実施例及び比較例の二次電池を積層電極体の積層方向に振動させて行った。振動試験は、1回の振動試験サイクルで、ピーク加速度10Gで25Hzを所定時間、正弦波対数で掃引することにより波数を変化させながら二次電池を振動させた。加振を与えた後、5万回サイクル毎に正極タブ及び負極タブに破損がないかをX線透過像により確認し、破損が確認されたサイクル回数で評価した。
【0040】
実施例及び比較例の二次電池の結果を表1にまとめた。表1に示す値は、比較例の破損が確認されたサイクル回数を1としたときの相対値である。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から分かるように、電極タブを結束部で結束した実施例は、結束部を設けなかった比較例と比べて、4.9倍の耐久性があった。したがって、複数の電極板がセパレータを介して積層され、複数の電極板の各々から突出した複数の電極タブを有する積層電極体と、積層電極体を収容する開口を有する外装体と、開口を封口する封口板と、封口板に設けられ、複数の電極タブと接続する集電体と、複数の電極タブを束ねる結束部と、を有する二次電池は、電極タブの破損を抑制することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 外装体、2 封口板、3 積層電極体、4 電極タブ、5 正極タブ、6 負極タブ、7 集電体、8 正極集電体、9 負極集電体、10 正極端子、11 負極端子、12,14 内部側絶縁部材、13,15 外部側絶縁部材、16 絶縁シート、17 電解液注入孔、18 封止栓、19 ガス排出弁、20 電池ケース、30 電極板、31 正極板、31a 正極活物質層、32 負極板、32a 負極活物質層、33 セパレータ、40 接続部、41 結束部、42 屈曲部、100 二次電池。
図1
図2
図3
図4
図5