(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】光記録媒体、情報の記録方法及び情報の読出方法
(51)【国際特許分類】
G11B 7/2572 20130101AFI20240726BHJP
G11B 7/004 20060101ALI20240726BHJP
G11B 7/2403 20130101ALI20240726BHJP
G11B 7/24035 20130101ALI20240726BHJP
G11B 7/24038 20130101ALI20240726BHJP
G11B 7/244 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G11B7/2572
G11B7/004
G11B7/2403
G11B7/24035
G11B7/24038
G11B7/244
(21)【出願番号】P 2024521584
(86)(22)【出願日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2023012102
(87)【国際公開番号】W WO2023223673
(87)【国際公開日】2023-11-23
【審査請求日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2022081188
(32)【優先日】2022-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 伸治
(72)【発明者】
【氏名】横山 麻紗子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 康太
(72)【発明者】
【氏名】小原 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】荒瀬 秀和
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-260748(JP,A)
【文献】特開平02-003124(JP,A)
【文献】特開2003-006920(JP,A)
【文献】特開平04-049537(JP,A)
【文献】国際公開第2006/051765(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/24 - 7/259
G11B 7/00 - 7/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層と、
前記記録層の上に位置し、多孔性有機構造体を含む誘電体層と、
を備え
、
前記多孔性有機構造体は、固有微多孔性ポリマーであり、
前記固有微多孔性ポリマーは、下記式(1)で表される構成単位を含む、光記録媒体。
【化1】
前記式(1)において、R
1
からR
18
は、互いに独立して、H、B、C、N、O、F、Si、P、S、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含み、Xは、互いに独立して、F、Cl、Br又はIである。
【請求項2】
前記多孔性有機構造体は、50m
2/g以上の比表面積を有する、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
前記多孔性有機構造体は、0.3nm以上50nm以下の平均孔径を有する、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項4】
前記多孔性有機構造体は、0.3nm以上3nm以下の平均孔径を有する、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項5】
前記固有微多孔性ポリマーは、下記式(2)で表される構成単位を含む、請求項
1に記載の光記録媒体。
【化2】
【請求項6】
前記記録層は、非線形光学特性を有する有機化合物を含む、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項7】
前記非線形光学特性が二光子吸収特性である、請求項
6に記載の光記録媒体。
【請求項8】
390nm以上420nm以下の波長を有する光を発する光源を準備し、
前記光源からの前記光を集光して、請求項1から
7のいずれか1項に記載の光記録媒体における前記記録層に照射する、
ことを含む、情報の記録方法。
【請求項9】
請求項
8に記載の記録方法によって記録された情報の読出方法であって、
前記読出方法は、
前記光記録媒体における前記記録層に対して光を照射することによって、前記記録層の光学特性を測定し、
前記記録層から情報を読み出す、
ことを含む、情報の読出方法。
【請求項10】
前記光学特性は、前記記録層で反射した光の強度である、請求項
9に記載の読出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光記録媒体、情報の記録方法及び情報の読出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光情報記録媒体の記録容量を増加させるための技術として、多層体に情報を記録する3次元記録が知られている。3次元記録の分野では、記録密度を向上させるために、より微細な集光スポットを実現する必要がある。集光させたレーザー光の回折限界の観点から、より微細な集光スポットを実現するために、短い波長を有するレーザー光が用いられる。このレーザー光としては、Blu-ray(登録商標)ディスクの規格である405nmの中心波長を有するレーザー光が挙げられる。このように、405nmの中心波長を有するレーザー光を用いた光記録媒体が知られている。
【0003】
光記録媒体は、例えば、記録層と、記録層の上に位置する誘電体層とを備えている(例えば、特許文献1)。特許文献1において、光情報記録材料からなる記録層を備えた光記録媒体は、ホログラム記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術においては、光記録媒体の記録感度について改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様における光記録媒体は、
記録層と、
前記記録層の上に位置し、多孔性有機構造体を含む誘電体層と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、記録感度が改善された光記録媒体を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態にかかる光記録媒体の概略構成を示す断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の一実施形態にかかる光記録媒体を用いた情報の記録方法に関するフローチャートである。
【
図2B】
図2Bは、本開示の一実施形態にかかる光記録媒体を用いた情報の読出方法に関するフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施例で用いた固有微多孔性ポリマーの固体
13C-NMRスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本開示の基礎となった知見)
低コストかつ大容量な光記録媒体として、多層光記録媒体が特に注目を集めている。多層光記録媒体は、例えば、色素を含む記録層と、ポリマーを含む誘電体層とが交互に積層された記録デバイスである。記録層の色素は、例えば、非線形光学特性を有する。誘電体層のポリマーは、典型的には、非多孔性ポリマーである。記録層の材料として、非線形光学特性を有する色素を用いる場合、記録層の物性を空間選択的に変化させることが可能であり、これにより、記録メモリを大容量化することができる。
【0010】
光記録媒体において、記録層は、例えば、樹脂と、光を吸収することによって発熱する色素とを含む。記録層では、色素が記録光を吸収することによって熱が発生する。発生した熱が樹脂に伝搬し、樹脂の形状などが変化することによって記録マークが形成される。記録マークの形成に必要な光照射エネルギーに基づいて、光記録媒体の記録感度を評価することができる。なお、記録感度の評価は、光照射エネルギーと相関するパルス幅に基づいて行うこともできる。
【0011】
仮に、光記録媒体が誘電体層を備えておらず、記録層が空気と接している場合、空気の断熱の効果によって、記録層で発生した熱は、記録層で有効に利用される。この場合、樹脂の変形が容易に生じるため、記録感度が良好である。しかし、記録層の上に、非多孔性の誘電体層を積層すると、空気による断熱の効果が得られず、記録層が放熱しやすい。このように、積層構造を有する光記録媒体では、記録感度の低下が課題である。
【0012】
積層構造を有する光記録媒体は、例えば、非線形光吸収色素を含む記録層と、非多孔性の誘電体層とを交互に積層することによって製造される。しかし、この方法では、誘電体層の積層に伴い、記録層の熱物性及び強度が変化し、励起波長での記録感度が大幅に低下することがある。
【0013】
以上のように、低コストかつ大容量な光記録媒体を実現させる方法としては、非線形光吸収色素を含む記録層の上に、記録再生波長に対して高い光透過性を有する誘電体層を導入し、これらの層を交互に積層させることが考えられる。しかし、従来では、誘電体層を積層させることによって、記録再生条件において、記録層に対する断熱性や機械強度が変化し、その記録感度が低下する傾向がある。
【0014】
本発明者らは、検討の結果、多孔性有機構造体を含む誘電体層が記録感度の低下を抑制することを新たに見出した。特に、この誘電体層は、短波長域の波長を有する光を用いた場合の記録感度の低下を抑制することに適している。本明細書において、短波長域は、405nmを含む波長域を意味し、例えば、390nm以上420nm以下の波長域を意味する。特に、多孔性有機構造体を含む誘電体層は、405nm付近の波長を有する光を用いた場合の記録感度の低下を抑制することに適している。
【0015】
(本開示に係る一態様の概要)
本開示の第1態様にかかる光記録媒体は、
記録層と、
前記記録層の上に位置し、多孔性有機構造体を含む誘電体層と、
を備える。
【0016】
第1態様によれば、誘電体層は、多孔性有機構造体に起因して細孔を有する。この細孔中の空気による断熱効果によれば、例えば、記録操作を行ったときに記録層で発生した熱が記録層から放出されることを抑制できる。記録層で発生した熱が記録層で有効に利用されるため、光記録媒体の記録感度が改善される。
【0017】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様にかかる光記録媒体では、前記多孔性有機構造体は、50m2/g以上の比表面積を有していてもよい。
【0018】
本開示の第3態様において、例えば、第1又は第2態様にかかる光記録媒体では、前記多孔性有機構造体は、0.3nm以上50nm以下の平均孔径を有していてもよい。
【0019】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つにかかる光記録媒体では、前記多孔性有機構造体は、0.3nm以上3nm以下の平均孔径を有していてもよい。
【0020】
第2から第4態様にかかる光記録媒体では、記録感度が改善されている。
【0021】
本開示の第5態様において、例えば、第1から第4態様のいずれか1つにかかる光記録媒体では、前記多孔性有機構造体は、固有微多孔性ポリマーであってもよい。
【0022】
第5態様に記載された固有微多孔性ポリマーは、例えば、捩じれた剛直な主鎖骨格を有し、主鎖骨格同士の絡み合いが抑制されている。そのため、固有微多孔性ポリマーを含む誘電体層は、ナノメートルサイズの細孔を有する傾向がある。ナノメートルサイズの細孔構造によれば、記録再生光の光散乱を抑制できる傾向がある。この細孔構造は、細孔中の空気による断熱効果を生み出すため、光記録媒体の記録感度を向上させることにも適している。
【0023】
本開示の第6態様において、例えば、第5態様にかかる光記録媒体では、前記固有微多孔性ポリマーは、下記式(1)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【化1】
前記式(1)において、R
1からR
18は、互いに独立して、H、B、C、N、O、F、Si、P、S、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含み、Xは、互いに独立して、F、Cl、Br又はIである。
【0024】
本開示の第7態様において、例えば、第5又は第6態様にかかる光記録媒体では、前記固有微多孔性ポリマーは、下記式(2)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【化2】
【0025】
第6から第7態様に記載された固有微多孔性ポリマーでは、主鎖骨格のパイ共役系が短い。この固有微多孔性ポリマーでは、記録再生光の吸収が抑制される傾向がある。さらに、この固有微多孔性ポリマーでは、窒素原子に対して、水素原子、又は、アルキル基などの置換基が導入されることによって、カチオンが生じている。言い換えると、固有微多孔性ポリマーがカチオン性の主鎖骨格を有している。この固有微多孔性ポリマーは、親水性を有し、高極性溶媒に可溶である。この場合、疎水性の記録層に対して、固有微多孔性ポリマーを含む塗布液を塗布して誘電体層を作製しやすい。
【0026】
本開示の第8態様において、例えば、第1から第7態様のいずれか1つにかかる光記録媒体では、前記記録層は、非線形光学特性を有する有機化合物を含んでいてもよい。
【0027】
本開示の第9態様において、例えば、第8態様にかかる光記録媒体では、前記非線形光学特性が二光子吸収特性であってもよい。
【0028】
第8から第9態様によれば、光記録媒体の記録容量を容易に増加することができる。
【0029】
本開示の第10態様にかかる情報の記録方法は、
390nm以上420nm以下の波長を有する光を発する光源を準備し、
前記光源からの前記光を集光して、第1から第9態様のいずれか1つにかかる光記録媒体における前記記録層に照射する、
ことを含む。
【0030】
第10態様によれば、高い記録密度で光記録媒体に情報を記録することができる。
【0031】
本開示の第11態様にかかる情報の読出方法は、例えば、第10態様にかかる記録方法によって記録された情報の読出方法であって、
前記読出方法は、
前記光記録媒体における前記記録層に対して光を照射することによって、前記記録層の光学特性を測定し、
前記記録層から情報を読み出す、
ことを含む。
【0032】
本開示の第12態様において、例えば、第11態様にかかる読出方法では、前記光学特性は、前記記録層で反射した光の強度であってもよい。
【0033】
第11から第12態様によれば、光記録媒体から容易に情報を読み出すことができる。
【0034】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0035】
(実施形態)
図1は、本開示の一実施形態にかかる光記録媒体100の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、光記録媒体100は、記録層10及び誘電体層20を備えている。誘電体層20は、記録層10の上に位置し、例えば、記録層10と直接接している。光記録媒体100は、記録層10及び誘電体層20の積層構造を有する。誘電体層20は、多孔性有機構造体を含む。
【0036】
光記録媒体100は、複数の記録層10を備えていてもよい。複数の記録層10は、例えば、光記録媒体100の厚さ方向に並んでいる。光記録媒体100において、記録層10の数は、特に限定されず、例えば2以上1000以下である。複数の記録層10を備えた光記録媒体100は、三次元光メモリとして機能する。光記録媒体100の具体例は、三次元光ディスクである。
【0037】
誘電体層20は、例えば、2つの記録層10の間に位置する中間層であってもよい。光記録媒体100は、複数の誘電体層20を備えていてもよい。光記録媒体100において、複数の記録層10と複数の誘電体層20とが交互に並んでいてもよい。言い換えると、複数の記録層10と複数の誘電体層20とが交互に積層されていてもよい。一例として、複数の記録層10は、それぞれ、2つの誘電体層20の間に配置されており、2つの誘電体層20のそれぞれに直接接している。光記録媒体100において、誘電体層20の数は、特に限定されず、例えば3以上1001以下である。
【0038】
[誘電体層]
上述のとおり、誘電体層20は、多孔性有機構造体を含む。本明細書において、多孔性有機構造体は、多孔質構造を有する有機化合物を意味する。例えば、多孔性有機構造体によれば、塗布法によって、多孔質構造を有する薄膜を容易に形成することができる。塗布法とは、多孔性有機構造体を含む塗布液を塗布し、得られた塗布膜を乾燥させることによって薄膜を作製する方法である。誘電体層20は、例えば、発泡剤を用いて形成された孔を含まない。言い換えると、誘電体層20は、例えば、実質的に発泡体を含まない。
【0039】
多孔性有機構造体としては、固有微多孔性ポリマー(PIM:Polymer of intrinsic microporosity)、金属有機構造体(MOF:Metal organic framework)、共有結合性有機構造体(COF:Covalent organic framework)、水素結合性有機構造体(HOF:Hydrogen-bonded organic frameworks)などが挙げられる。多孔性有機構造体は、例えば、PIMである。PIMは、ポリマーの主鎖骨格同士の絡み合いが抑制されることによって生じた多孔質構造を有する多孔質構造体を意味する。
【0040】
固有微多孔性ポリマーは、例えば、下記式(1)で表される構成単位を含む。
【化3】
【0041】
式(1)において、R1からR18は、互いに独立して、H、B、C、N、O、F、Si、P、S、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む。
【0042】
R1からR18は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、酸素原子を含む基、窒素原子を含む基、硫黄原子を含む基、ケイ素原子を含む基、リン原子を含む基、又はホウ素原子を含む基であってもよい。
【0043】
ハロゲン原子としては、F、Cl、Br、Iなどが挙げられる。本明細書では、ハロゲン原子をハロゲン基と呼ぶことがある。
【0044】
炭化水素基の炭素数は、特に限定されず、例えば1以上20以下であり、1以上10以下であってもよく、1以上5以下であってもよい。炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。
【0045】
炭化水素基としては、脂肪族飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂肪族不飽和炭化水素基などが挙げられる。脂肪族飽和炭化水素基は、アルキル基であってもよい。脂肪族飽和炭化水素基としては、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH(CH3)CH2CH3、-C(CH3)3、-CH2CH(CH3)2、-(CH2)3CH3、-(CH2)4CH3、-C(CH2CH3)(CH3)2、-CH2C(CH3)3、-(CH2)5CH3、-(CH2)6CH3、-(CH2)7CH3、-(CH2)8CH3、-(CH2)9CH3、-(CH2)10CH3、-(CH2)11CH3、-(CH2)12CH3、-(CH2)13CH3、-(CH2)14CH3、-(CH2)15CH3、-(CH2)16CH3、-(CH2)17CH3、-(CH2)18CH3、-(CH2)19CH3などが挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。脂肪族不飽和炭化水素基としては、-CH=CH2、-C≡CH、-C≡CCH3、-C(CH3)=CH2、-CH=CHCH3、-CH2CH=CH2などが挙げられる。
【0046】
ハロゲン化炭化水素基とは、炭化水素基に含まれる少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子によって置換された基を意味する。ハロゲン化炭化水素基は、炭化水素基に含まれる全ての水素原子がハロゲン原子によって置換された基であってもよい。ハロゲン化炭化水素基としては、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルケニル基などが挙げられる。
【0047】
ハロゲン化アルキル基としては、-CF3、-CH2F、-CH2Br、-CH2Cl、-CH2I、-CH2CF3などが挙げられる。ハロゲン化アルケニル基としては、-CH=CHCF3などが挙げられる。
【0048】
酸素原子を含む基は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルデヒド基、エーテル基、アシル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する置換基である。
【0049】
ヒドロキシル基を有する置換基としては、例えば、ヒドロキシル基そのもの、及び、ヒドロキシル基を有する炭化水素基が挙げられる。この置換基において、ヒドロキシル基は、脱プロトン化して-O-の状態であってもよい。ヒドロキシル基を有する炭化水素基としては、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CH(OH)CH3、-CH2C(OH)(CH3)2などが挙げられる。
【0050】
カルボキシル基を有する置換基としては、例えば、カルボキシル基そのもの、及び、カルボキシル基を有する炭化水素基が挙げられる。この置換基において、カルボキシル基は、脱プロトン化して-CO2
-の状態であってもよい。カルボキシル基を有する炭化水素基としては、-CH2CH2COOH、-C(COOH)(CH3)2、-CH2CO2
-などが挙げられる。
【0051】
アルデヒド基を有する置換基としては、例えば、アルデヒド基そのもの、及び、アルデヒド基を有する炭化水素基が挙げられる。アルデヒド基を有する炭化水素基としては、-CH=CHCHOなどが挙げられる。
【0052】
エーテル基を有する置換基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、アルケニルオキシ基、オキシラニル基、及び、これらの官能基のうち少なくとも1つを有する炭化水素基が挙げられる。アルコキシ基に含まれる少なくとも1つの水素原子は、N、O、P及びSからなる群より選ばれる少なくとも1つの原子を含む基によって置換されていてもよい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、2-メトキシエトキシ基、ブトキシ基、2-メチルブトキシ基、2-メトキシブトキシ基、4-エチルチオブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、エイコシルオキシ基、-OCH2O-、-OCH2CH2O-、-O(CH2)3O-などが挙げられる。ハロゲン化アルコキシ基としては、-OCHF2、-OCH2F、-OCH2Clなどが挙げられる。アルケニルオキシ基としては、-OCH=CH2などが挙げられる。アルコキシ基などの官能基を有する炭化水素基としては、-CH2OCH3、-C(OCH3)3、2-メトキシブチル基、6-メトキシヘキシル基などが挙げられる。
【0053】
アシル基を有する置換基としては、例えば、アシル基そのもの、及びアシル基を有する炭化水素基が挙げられる。アシル基としては、-COCH3などが挙げられる。アシル基を有する炭化水素基としては、-CH=CHCOCH3などが挙げられる。
【0054】
エステル基を有する置換基としては、例えば、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、及び、これらの官能基のうち少なくとも1つを有する炭化水素基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、-COOCH3、-COO(CH2)3CH3、-COO(CH2)7CH3などが挙げられる。アシルオキシ基としては、-OCOCH3などが挙げられる。アシルオキシ基などの官能基を有する炭化水素基としては、-CH2OCOCH3などが挙げられる。
【0055】
窒素原子を含む基は、例えば、アミノ基、イミノ基、シアノ基、アジ基、アミド基、カルバメート基、ニトロ基、シアナミド基、イソシアネート基及びオキシム基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する置換基である。
【0056】
アミノ基を有する置換基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、4級アミノ基、及び、これらの官能基のうち少なくとも1つを有する炭化水素基が挙げられる。この置換基において、アミノ基は、プロトン化していてもよい。3級アミノ基としては、-N(CH3)2などが挙げられる。1級アミノ基などの官能基を有する炭化水素基としては、-CH2NH2、-CH2N(CH3)2、-(CH2)4N(CH3)2、-CH2CH2NH3
+、-CH2CH2NH(CH3)2
+、-CH2CH2N(CH3)3
+などが挙げられる。
【0057】
イミノ基を有する置換基としては、例えば、イミノ基そのもの、及びイミノ基を有する炭化水素基が挙げられる。イミノ基としては、-N=CCl2などが挙げられる。
【0058】
シアノ基を有する置換基としては、例えば、シアノ基そのもの、及びシアノ基を有する炭化水素基が挙げられる。シアノ基を有する炭化水素基としては、-CH2CN、-CH=CHCNなどが挙げられる。
【0059】
アジ基を有する置換基としては、例えば、アジ基そのもの、及びアジ基を有する炭化水素基が挙げられる。
【0060】
アミド基を有する置換基としては、例えば、アミド基そのもの、及びアミド基を有する炭化水素基が挙げられる。アミド基としては、-CONH2、-NHCHO、-NHCOCH3、-NHCOCF3、-NHCOCH2Cl、-NHCOCH(CH3)2などが挙げられる。アミド基を有する炭化水素基としては、-CH2CONH2、-CH2NHCOCH3などが挙げられる。
【0061】
カルバメート基を有する置換基としては、例えば、カルバメート基そのもの、及びカルバメート基を有する炭化水素基が挙げられる。カルバメート基としては、-NHCOOCH3、-NHCOOCH2CH3、-NHCO2(CH2)3CH3などが挙げられる。
【0062】
ニトロ基を有する置換基としては、例えば、ニトロ基そのもの、及びニトロ基を有する炭化水素基が挙げられる。ニトロ基を有する炭化水素基としては、-C(NO2)(CH3)2などが挙げられる。
【0063】
シアナミド基を有する置換基としては、例えば、シアナミド基そのもの、及びシアナミド基を有する炭化水素基が挙げられる。シアナミド基は、-NHCNで表される。
【0064】
イソシアネート基を有する置換基としては、例えば、イソシアネート基そのもの、及びイソシアネート基を有する炭化水素基が挙げられる。イソシアネート基は、-N=C=Oで表される。
【0065】
オキシム基を有する置換基としては、例えば、オキシム基そのもの、及びオキシム基を有する炭化水素基が挙げられる。オキシム基は、-CH=NOHで表される。
【0066】
硫黄原子を含む基は、例えば、チオール基、スルフィド基、スルフィニル基、スルホニル基、スルフィノ基、スルホン酸基、アシルチオ基、スルフェンアミド基、スルホンアミド基、チオアミド基、チオカルバミド基及びチオシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する置換基である。
【0067】
チオール基を有する置換基としては、例えば、チオール基そのもの、及び、チオール基を有する炭化水素基が挙げられる。チオール基は、-SHで表される。
【0068】
スルフィド基を有する置換基としては、例えば、アルキルチオ基、アルキルジチオ基、アルケニルチオ基、アルキニルチオ基、チアシクロプロピル基、及び、これらの官能基のうち少なくとも1つを有する炭化水素基が挙げられる。アルキルチオ基に含まれる少なくとも1つの水素原子は、ハロゲン基によって置換されていてもよい。アルキルチオ基としては、-SCH3、-S(CH2)F、-SCH(CH3)2、-SCH2CH3などが挙げられる。アルキルジチオ基としては、-SSCH3などが挙げられる。アルケニルチオ基としては、-SCH=CH2、-SCH2CH=CH2などが挙げられる。アルキニルチオ基としては、-SC≡CHなどが挙げられる。アルキルチオ基などの官能基を有する炭化水素基としては、-CH2SCF3などが挙げられる。
【0069】
スルフィニル基を有する置換基としては、例えば、スルフィニル基そのもの、及びスルフィニル基を有する炭化水素基が挙げられる。スルフィニル基としては、-SOCH3などが挙げられる。
【0070】
スルホニル基を有する置換基としては、例えば、スルホニル基そのもの、及びスルホニル基を有する炭化水素基が挙げられる。スルホニル基としては、-SO2CH3などが挙げられる。スルホニル基を有する炭化水素基としては、-CH2SO2CH3、-CH2SO2CH2CH3などが挙げられる。
【0071】
スルフィノ基を有する置換基としては、例えば、スルフィノ基そのもの、及びスルフィノ基を有する炭化水素基が挙げられる。この置換基において、スルフィノ基は、脱プロトン化して-SO2
-の状態であってもよい。
【0072】
スルホン酸基を有する置換基としては、例えば、スルホン酸基そのもの、及びスルホン酸基を有する炭化水素基が挙げられる。この置換基において、スルホン酸基は、脱プロトン化して-SO3
-の状態であってもよい。
【0073】
アシルチオ基を有する置換基としては、例えば、アシルチオ基そのもの、及びアシルチオ基を有する炭化水素基が挙げられる。アシルチオ基としては、-SCOCH3などが挙げられる。
【0074】
スルフェンアミド基を有する置換基としては、例えば、スルフェンアミド基そのもの、及びスルフェンアミド基を有する炭化水素基が挙げられる。スルフェンアミド基としては、-SN(CH3)2などが挙げられる。
【0075】
スルホンアミド基を有する置換基としては、例えば、スルホンアミド基そのもの、及びスルホンアミド基を有する炭化水素基が挙げられる。スルホンアミド基としては、-SO2NH2、-NHSO2CH3などが挙げられる。
【0076】
チオアミド基を有する置換基としては、例えば、チオアミド基そのもの、及びチオアミド基を有する炭化水素基が挙げられる。チオアミド基としては、-NHCSCH3などが挙げられる。チオアミド基を有する炭化水素基としては、-CH2SC(NH2)2
+などが挙げられる。
【0077】
チオカルバミド基を有する置換基としては、例えば、チオカルバミド基そのもの、及びチオカルバミド基を有する炭化水素基が挙げられる。チオカルバミド基としては、-NHCSNHCH2CH3などが挙げられる。
【0078】
チオシアノ基を有する置換基としては、例えば、チオシアノ基そのもの、及びチオシアノ基を有する炭化水素基が挙げられる。チオシアノ基を有する炭化水素基としては、-CH2SCNなどが挙げられる。
【0079】
ケイ素原子を含む基は、例えば、シリル基及びシロキシ基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する置換基である。
【0080】
シリル基を有する置換基としては、シリル基そのもの、及び、シリル基を有する炭化水素基が挙げられる。シリル基としては、-Si(CH3)3、-SiH(CH3)2、-Si(OCH3)3、-Si(OCH2CH3)3、-SiCH3(OCH3)2、-Si(CH3)2OCH3、-Si(N(CH3)2)3、-SiF(CH3)2、-Si(OSi(CH3)3)3、-Si(CH3)2OSi(CH3)3などが挙げられる。シリル基を有する炭化水素基としては、-(CH2)2Si(CH3)3などが挙げられる。
【0081】
シロキシ基を有する置換基としては、シロキシ基そのもの、及び、シロキシ基を有する炭化水素基が挙げられる。シロキシ基を有する炭化水素基としては、-CH2OSi(CH3)3などが挙げられる。
【0082】
リン原子を含む基は、例えば、ホスフィノ基及びホスホリル基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する置換基である。
【0083】
ホスフィノ基を有する置換基としては、例えば、ホスフィノ基そのもの、及び、ホスフィノ基を有する炭化水素基が挙げられる。ホスフィノ基としては、-PH2、-P(CH3)2、-P(CH2CH3)2、-P(C(CH3)3)2、-P(CH(CH3)2)2などが挙げられる。
【0084】
ホスホリル基を有する置換基としては、例えば、ホスホリル基そのもの、及び、ホスホリル基を有する炭化水素基が挙げられる。ホスホリル基を有する炭化水素基としては、-CH2PO(OCH2CH3)2などが挙げられる。
【0085】
ホウ素原子を含む基は、例えば、ボロン酸基を有する置換基である。ボロン酸基を有する置換基としては、例えば、ボロン酸基そのもの、及び、ボロン酸基を有する炭化水素基が挙げられる。
【0086】
一例として、R7及びR8からなる群より選ばれる少なくとも1つは、メチル基などのアルキル基であってもよい。R17及びR18からなる群より選ばれる少なくとも1つは、水素原子、又は、メチル基などのアルキル基であってもよい。R1からR6及びR9からR16は、水素原子であってもよい。
【0087】
式(1)において、Xは、互いに独立して、F、Cl、Br又はIである。Xは、Clであってもよい。
【0088】
固有微多孔性ポリマーは、下記式(2)で表される構成単位を含んでいてもよい。
【化4】
【0089】
固有微多孔性ポリマーは、例えば、上記の式(1)で表される構成単位、又は式(2)で表される構成単位を主成分として含む。固有微多孔性ポリマーは、下記式(3)又は(4)で表されてもよい。
【化5】
【0090】
式(3)において、R1からR18及びXは、式(1)について上述したものと同じである。式(3)及び(4)において、nは、整数である。
【0091】
上記の式(1)で表される構成単位、又は式(2)で表される構成単位を含む固有微多孔性ポリマーは、主鎖骨格のパイ共役系が短い傾向がある。この固有微多孔性ポリマーでは、記録再生光の吸収が抑制される傾向がある。特に、この固有微多孔性ポリマーでは、短波長域の波長を有する光の吸収が抑制される傾向がある。
【0092】
上述のとおり、多孔性有機構造体は、多孔質構造を有する。そのため、多孔性有機構造体について、窒素吸着法を行った場合、窒素ガスの吸着量が大きい傾向がある。一例として、多孔性有機構造体について、窒素吸着法により求めた窒素ガスの吸着量Aは、例えば、50cm3/g以上であり、100cm3/g以上であってもよく、200cm3/g以上であってもよく、250cm3/g以上であってもよい。吸着量Aの上限値は、特に限定されず、例えば1000cm3/gである。
【0093】
窒素ガスの吸着量Aは、次の方法によって特定することができる。まず、粉末の多孔性有機構造体について、窒素ガスの吸脱着測定を行う。窒素ガスの吸脱着測定は、温度77Kの条件で、相対圧力P/P0を0から1の範囲で調整して行う。測定結果に基づいて、相対圧力P/P0と、窒素ガスの吸着量との関係を示す吸着等温線を作成する。このとき、窒素ガスの吸着量は、標準状態(STP:Standard Temperature and Pressure)での値に換算する。吸着等温線から、相対圧力P/P0が1であるときの窒素ガスの吸着量を読み取り、吸着量Aとして特定する。
【0094】
多孔性有機構造体の比表面積aは、例えば、50m2/g以上であり、100m2/g以上であってもよく、300m2/g以上であってもよく、500m2/g以上であってもよい。比表面積aの上限値は、特に限定されず、例えば3000m2/gである。比表面積aは、吸着量Aについて上述した吸着等温線のデータをBET(Brunauer-Emmett-Teller)法で変換することによって得られる。
【0095】
多孔性有機構造体の全細孔容積vは、例えば、0.1cm3/g以上であり、0.2cm3/g以上であってもよく、0.3cm3/g以上であってもよく、0.4cm3/g以上であってもよい。全細孔容積vの上限値は、特に限定されず、例えば1.0cm3/gである。全細孔容積vは、吸着量Aについて上述した吸着等温線のデータをBJH(Barrett-Joyner-Halenda)法で変換することによって得られる。
【0096】
多孔性有機構造体の平均孔径dは、例えば、50nm以下であり、30nm以下であってもよく、10nm以下であってもよく、5nm以下であってもよく、3nm以下であってもよく、2nm以下であってもよい。平均孔径dが小さい多孔性有機構造体は、記録再生光の光散乱を抑制することに適している。平均孔径dの下限値は、特に限定されず、例えば0.3nmである。平均孔径dは、0.3nm以上50nm以下であってもよく、0.3nm以上3nm以下であってもよい。
【0097】
多孔性有機構造体の平均孔径d(nm)は、多孔性有機構造体の比表面積a(m2/g)及び全細孔容積v(cm3/g)を下記式に代入することによって算出することができる。平均孔径dは、多孔性有機構造体に含まれる全ての孔を1つの円筒形細孔とみなした場合の当該円筒形細孔の直径に相当する。
平均孔径d=4×103×全細孔容積v/比表面積a
【0098】
誘電体層20は、例えば、多孔性有機構造体を主成分として含む。「主成分」とは、誘電体層20に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。誘電体層20は、例えば、実質的に多孔性有機構造体からなる。「実質的に・・・からなる」は、言及された材料の本質的特徴を変更する他の成分を排除することを意味する。ただし、誘電体層20は、多孔性有機構造体の他に不純物を含んでいてもよい。
【0099】
誘電体層20の厚さは、特に限定されず、例えば5nm以上100μm以下である。ただし、誘電体層20の厚さは、100μmを上回っていてもよい。
【0100】
なお、多孔性有機構造体を含む誘電体層20では、記録再生波長、特に短波長域の波長、に対する光透過性が高い傾向がある。誘電体層20では、高い断熱性及び機械強度を両立できる傾向もある。後述するとおり、誘電体層20が断熱性を有することによって、光記録媒体100の記録感度を改善することができる。
【0101】
[記録層]
記録層10は、例えば、光学特性を有する有機化合物Cを含む。光学特性は、典型的には、光吸収特性である。一例として、有機化合物Cは、短波長域の波長を有する光を吸収して、基底状態から遷移状態に変化することができる。有機化合物Cは、遷移状態から基底状態に戻るときに、熱を発生させてもよい。
【0102】
有機化合物Cは、例えば、非線形光学特性、特に非線形光吸収特性を有していてもよい。詳細には、有機化合物Cは、短波長域の波長を有する光に対して、非線形光学特性を有していてもよい。非線形光学特性の一例としては、二光子吸収特性が挙げられる。ただし、有機化合物Cは、短波長域の波長を有する光に対して、一光子吸収特性を有していてもよい。本明細書では、光学特性を有する有機化合物Cを単に色素と呼ぶことがある。
【0103】
有機化合物Cは、炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合及び炭素-炭素三重結合からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。有機化合物Cは、芳香環をさらに含んでいてもよい。有機化合物Cに含まれる芳香環は、炭素原子から構成されているものであってもよく、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含む複素芳香環であってもよい。有機化合物Cに含まれる芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、チオフェン環などが挙げられる。有機化合物Cは、芳香環としてベンゼン環を含んでいてもよい。有機化合物Cに含まれる芳香環の数は、特に限定されず、例えば2以上であり、3以上であってもよく、5以上であってもよい。芳香環の数の上限値は、特に限定されず、例えば15である。有機化合物Cにおいて、複数の芳香環が、炭素-炭素二重結合、炭素-窒素二重結合及び炭素-炭素三重結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合によって連結していてもよい。有機化合物Cに含まれる複数の芳香環は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
有機化合物Cの具体例としては、下記式(5)で表される色素28Evが挙げられる。色素28Evは、短波長域の波長を有する光に対して、二光子吸収特性を有する化合物である。
【化6】
【0105】
有機化合物Cの他の例としては、クマリン6などが挙げられる。クマリン6は、短波長域の波長を有する光に対して、一光子吸収特性を有する化合物である。
【0106】
記録層10における有機化合物Cの含有率は、例えば50wt%未満であり、30wt%以下であってもよく、10wt%以下であってもよい。有機化合物Cの含有率の下限値は、特に限定されず、例えば2wt%である。
【0107】
記録層10は、有機化合物C以外に、バインダーとして機能する樹脂をさらに含んでいてもよい。樹脂の具体例としては、ポリビニルカルバゾールが挙げられる。
【0108】
記録層10における樹脂の含有率は、例えば50wt%以上であり、70wt%以上であってもよく、90wt%以上であってもよい。樹脂の含有率の上限値は、特に限定されず、例えば98wt%である。
【0109】
記録層10は、例えば、1nm以上100μm以下の厚さを有する薄膜である。ただし、記録層10の厚さは、100μmを上回っていてもよい。
【0110】
[光記録媒体の作製方法]
光記録媒体100は、例えば、次の方法によって作製できる。まず、記録層10の材料を溶剤と混合して塗布液を作製する。溶剤としては、例えば、低極性溶媒を用いることができる。この塗布液をスピンコートなどの方法で基材に塗布し、得られた塗布膜を乾燥させることによって薄膜の記録層10を作製する。
【0111】
次に、多孔性有機構造体を溶剤と混合して塗布液を作製する。溶剤としては、例えば、高極性溶媒を用いることができる。この塗布液をスピンコートなどの方法で記録層10の上に塗布し、得られた塗布膜を乾燥させることによって誘電体層20を作製する。必要に応じて、複数の記録層10と複数の誘電体層20とを交互に作製することによって光記録媒体100を得ることができる。
【0112】
なお、上記の式(1)で表される構成単位、又は式(2)で表される構成単位を含む固有微多孔性ポリマーでは、窒素原子に対して、水素原子、又は、アルキル基などの置換基が導入されることによって、カチオンが生じている。そのため、この固有微多孔性ポリマーは、親水性を有し、高極性溶媒に可溶である。この場合、疎水性の記録層に対して、固有微多孔性ポリマーを含む塗布液を塗布して誘電体層を作製しやすい。
【0113】
[光記録媒体の使用方法]
本実施形態の光記録媒体100は、例えば、短波長域の波長を有する光を利用する。一例として、光記録媒体100は、390nm以上420nm以下の波長を有する光を利用する。光記録媒体100で利用される光は、例えば、その焦点付近において、高い光子密度を有する。光記録媒体100で利用される光の焦点付近でのパワー密度は、例えば、0.1W/cm2以上1.0×1020W/cm2以下である。この光の焦点付近でのパワー密度は、1.0W/cm2以上であってもよく、1.0×102W/cm2以上であってもよく、1.0×105W/cm2以上であってもよい。光記録媒体100で利用される光源としては、例えば、チタンサファイアレーザーなどのフェムト秒レーザー、又は、半導体レーザーなどのピコ秒からナノ秒のパルス幅を有するパルスレーザーを用いることができる。
【0114】
次に、光記録媒体100を用いた情報の記録方法について説明する。
図2Aは、光記録媒体100を用いた情報の記録方法に関するフローチャートである。まず、ステップS11において、390nm以上420nm以下の波長を有する光を発する光源を準備する。光源としては、例えば、チタンサファイアレーザーなどのフェムト秒レーザー、又は、半導体レーザーなどのピコ秒からナノ秒のパルス幅を有するパルスレーザーを用いることができる。次に、ステップS12において、光源からの光をレンズなどで集光して、光記録媒体100における記録層10に照射する。詳細には、光源からの光をレンズなどで集光して、光記録媒体100における記録領域に照射する。集光に用いるレンズのNA(開口数)は特に制限されない。一例として、NAが0.8以上0.9以下の範囲のレンズを用いてもよい。この光の焦点付近でのパワー密度は、例えば、0.1W/cm
2以上1.0×10
20W/cm
2以下である。この光の焦点付近でのパワー密度は、1.0W/cm
2以上であってもよく、1.0×10
2W/cm
2以上であってもよく、1.0×10
5W/cm
2以上であってもよい。本明細書において、記録領域とは、記録層10に存在し、光が照射されることによって情報を記録できるスポットを意味する。
【0115】
上記の光が照射された記録領域では、物理変化又は化学変化が生じ、これにより、記録領域の光学特性が変化する。例えば、記録領域で反射する光の強度、記録領域での光の反射率、記録領域での光の吸収率、記録領域での光の屈折率、記録領域から放射される蛍光の光の強度、蛍光の光の波長などが変化する。一例として、記録領域で反射する光の強度、又は、記録領域から放射される蛍光の光の強度が低下する。これにより、記録層10、詳細には記録領域、に情報を記録することができる(ステップS13)。
【0116】
次に、光記録媒体100を用いた情報の読出方法について説明する。
図2Bは、光記録媒体100を用いた情報の読出方法に関するフローチャートである。まず、ステップS21において、光記録媒体100における記録層10に対して光を照射する。詳細には、光記録媒体100における記録領域に対して光を照射する。ステップS21で用いる光は、光記録媒体100に情報を記録するために利用した光と同じであってもよく、異なっていてもよい。次に、ステップS22において、記録層10の光学特性を測定する。詳細には、記録領域の光学特性を測定する。ステップS22では、例えば、記録領域の光学特性として、記録領域で反射した光の強度、又は、記録領域から放射された蛍光の光の強度を測定する。ステップS22では、記録領域の光学特性として、記録領域での光の反射率、記録領域での光の吸収率、記録領域での光の屈折率、記録領域から放射された蛍光の光の波長などを測定してもよい。次に、ステップS23において、記録層10、詳細には記録領域、から情報を読み出す。
【0117】
情報の読出方法において、情報が記録された記録領域は、次の方法によって探すことができる。まず、光記録媒体の特定の領域に対して光を照射する。この光は、光記録媒体に情報を記録するために利用した光と同じであってもよく、異なっていてもよい。次に、光が照射された領域の光学特性を測定する。光学特性としては、例えば、当該領域で反射した光の強度、当該領域での光の反射率、当該領域での光の吸収率、当該領域での光の屈折率、当該領域から放射された蛍光の光の強度、当該領域から放射された蛍光の光の波長などが挙げられる。測定された光学特性に基づいて、光が照射された領域が記録領域であるか否かを判定する。例えば、当該領域で反射した光の強度が特定の値以下である場合に、当該領域が記録領域であると判定する。一方、当該領域で反射した光の強度が特定の値を上回っている場合に、当該領域が記録領域ではないと判定する。なお、光が照射された領域が記録領域であるか否かを判定する方法は、上記の方法に限定されない。例えば、当該領域で反射した光の強度が特定の値を上回っている場合に、当該領域が記録領域であると判定してもよい。また、当該領域で反射した光の強度が特定の値以下である場合に、当該領域が記録領域ではないと判定してもよい。記録領域ではないと判定した場合、光記録媒体の他の領域に対して同様の操作を行う。これにより、記録領域を探すことができる。
【0118】
光記録媒体100を用いた情報の記録方法及び読出方法は、例えば、公知の記録装置によって行うことができる。記録装置は、例えば、光記録媒体100における記録領域に光を照射する光源と、記録領域の光学特性を測定する測定器と、光源及び測定器を制御する制御器と、を備えている。
【0119】
本実施形態の光記録媒体100では、記録層10に記録光が照射されたときに、有機化合物Cが記録光を吸収し、基底状態から遷移状態に変化する。この有機化合物Cが遷移状態から基底状態に戻るときに、例えば、熱が生じる。この熱によって、例えば、記録領域に存在するバインダーが変質し、記録マークが形成される。
【0120】
本実施形態の光記録媒体100において、誘電体層20は、多孔性有機構造体に起因する細孔を有する。この細孔中の空気による断熱効果によれば、例えば、記録操作を行ったときに記録層10で発生した熱が記録層10から放出されることを抑制できる。記録層10で発生した熱が記録層10で有効に利用されるため、光記録媒体100の記録感度が改善される。
【0121】
光記録媒体100の記録感度は、例えば、次の方法によって評価することができる。まず、レーザーを用いて、光記録媒体100の記録層10に記録光を照射する。これにより、レーザーからの光が集光する焦点付近において、記録層10に含まれる樹脂の形状が変化する。この変化を生じさせるために必要な最小の光照射エネルギーを特定し、記録に必要な最小の光照射エネルギーとみなす。この光照射エネルギーに基づいて、光記録媒体100の記録感度を評価することができる。なお、記録感度の評価は、光照射エネルギーと相関するパルス幅に基づいて行ってもよい。本実施形態の光記録媒体100では、従来と比べて、比較的短いパルス幅の記録光によって記録操作を行うことができる。
【実施例】
【0122】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は一例であり、本開示は以下の実施例に限定されない。
【0123】
[固有微多孔性ポリマーの合成]
まず、下記式(6)で表される固有微多孔性ポリマーの前駆体(シグマアルドリッチ社製)を準備した。
【化7】
【0124】
次に、ジアセトンアルコール(東京化成工業社製)5mLに、上記の前駆体200mg、及び濃度12mol/Lの塩酸(富士フィルム和光純薬社製)0.2mLを加えて、50℃で1時間攪拌した。これにより、前駆体と塩酸とが反応し、上述の式(4)で表される固有微多孔性ポリマーが合成された。反応液を室温まで放冷し、ジアセトンアルコール及び塩酸を真空蒸留にて留去することによって、目的とする式(4)の固有微多孔性ポリマーを得た。固有微多孔性ポリマーは、
1H-NMR及び固体
13C-NMRにより同定した。
図3は、固有微多孔性ポリマーの固体
13C-NMRスペクトルを示すグラフである。固有微多孔性ポリマーの
1H-NMRスペクトル及び固体
13C-NMRスペクトルは、以下のとおりであった。
1H NMR (500 MHz, DMSO d6): δ(ppm) 7.26-6.83 (br, m, 4H), 4.84-4.60 (br, s, 2H),4.24 (br, s, 4H), 3.47 (br, s), 1.83 (br, m), 1.42 (br, m, 4H). 固体
13C NMR: δ(ppm) 158.6-136.7, 130.0-112.1, 80.8, 67.6, 58.2, 41.8, 39.5-32.3, 25.6-14.9.
【0125】
得られた固有微多孔性ポリマーについて、上述の方法によって、窒素ガスの吸着量A、比表面積a、全細孔容積v及び平均孔径dを測定した。結果を表1に示す。
【0126】
【0127】
(実施例1)
まず、記録層の材料を含む記録層用塗布液を調製した。詳細には、ジクロロベンゼン20mLに、ポリビニルカルバゾール(PVK)1g及びクマリン6色素105mgを加え、80℃で12時間加熱攪拌することによって、記録層用塗布液を調製した。次に、誘電体層の材料を含む誘電体層用塗布液を調製した。詳細には、ジアセトンアルコール5mLに、上記の式(6)で表される固有微多孔性ポリマーの前駆体200mg、及び濃度12mol/Lの塩酸1mLを加えて、室温で1時間攪拌することによって、誘電体層用塗布液を調製した。誘電体層用塗布液では、式(4)で表される固有微多孔性ポリマーが合成されていた。
【0128】
次に、スピンコーターにより記録層用塗布液を石英基板の上に塗布し、塗布膜を乾燥させることによって記録層を作製した。さらに、スピンコーターにより誘電体層用塗布液を記録層の上に塗布し、塗布膜を乾燥させることによって誘電体層を作製した。これにより、誘電体層が記録層に積層された実施例1の光記録媒体を得た。実施例1の光記録媒体において、誘電体層は、固有微多孔性ポリマーに起因する細孔を有していた。
【0129】
(実施例2)
クマリン6色素に代えて、上述の式(5)で表される色素28Evを53mg用いたことを除き、実施例1と同じ方法によって、実施例2の光記録媒体を得た。
【0130】
(比較例1)
ジアセトンアルコール24mLに、酢酸セルロース1gを加えて、80℃で12時間攪拌して誘電体層用塗布液を調製したことを除き、実施例1と同じ方法によって、比較例1の光記録媒体を得た。なお、酢酸セルロースが多孔質構造を有していないため、比較例1の光記録媒体において、誘電体層は、多孔質構造を有していなかった。ポリビニルカルバゾールを含む層の上に、酢酸セルロースの層を積層可能であることは、例えば、Thin Solid Films, 2007, Vol. 515, p.3887-3892などに開示されている。
【0131】
(比較例2)
クマリン6色素に代えて、上述の式(5)で表される色素28Evを53mg用いたことを除き、比較例1と同じ方法によって、比較例2の光記録媒体を得た。
【0132】
<記録感度の測定>
実施例及び比較例の光記録媒体について、中心波長405nm、ピークパワー100mWの記録光を、NA0.85のレンズを通して1パルス照射して、記録操作を行った。この記録操作は、記録光のパルス幅を10ナノ秒から5ミリ秒の範囲で調整して繰り返し行った。これにより、記録層に記録マークを形成するために必要な最小のパルス幅を特定した。結果を表2に示す。
【0133】
【0134】
表2からわかるとおり、多孔性有機構造体である固有微多孔性ポリマーを含む誘電体層を備えた実施例の光記録媒体では、比較例と比べて、記録に必要な最小のパルス幅が短く、記録感度が改善されていた。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本開示の光記録媒体は、三次元光メモリなどの用途に利用できる。
【符号の説明】
【0136】
10 記録層
20 誘電体層
100 光記録媒体