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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/65 20210101AFI20240726BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20240726BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240726BHJP
   C25B 9/05 20210101ALI20240726BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20240726BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C25B9/65
C25B1/02
C25B9/00 Z
C25B9/05
C25B9/23
C01B3/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023564825
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2022040945
(87)【国際公開番号】W WO2023100583
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2021193865
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中植 貴之
(72)【発明者】
【氏名】酒井 修
(72)【発明者】
【氏名】可児 幸宗
【審査官】菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】特許第6928922(JP,B1)
【文献】特開昭52-142286(JP,A)
【文献】特表2017-520899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 9/65
C25B 1/02
C25B 9/00
C25B 9/05
C25B 9/23
C01B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜を挟んで、アノードおよびカソードを備える電気化学セルと、
前記カソード上に設けられたカソードセパレータと、
前記アノードおよび前記カソード間に電圧を印加する電圧印加器と、
前記カソードで生成された圧縮水素に晒され、かつ水素脆化耐性を有する金属材料の金属プレートで構成される給電板と、を備え、
前記金属プレートは、前記電圧印加器に接続される第1端子を含み、
前記第1端子は、前記第1端子よりも抵抗の低い第2端子と直接接続され、
前記第2端子は、前記電圧印加器に直接接続され、かつ前記第1端子は、前記第2端子を介して前記電圧印加器に接続される、圧縮装置。
【請求項3】
前記金属材料は、SUS316またはSUS316Lである、請求項1または2に記載の圧縮装置。
【請求項4】
前記第2端子は、銅を含む材料で構成される、請求項1-3のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化などの環境問題、石油資源の枯渇などのエネルギー問題から、化石燃料に代わるクリーンな代替エネルギー源として水素が注目されている。水素は燃焼しても基本的に水しか生成せず、地球温暖化の原因となる二酸化炭素が排出されず、かつ窒素酸化物などもほとんど排出されないので、クリーンエネルギーとして期待されている。また、水素を燃料として高効率に利用する装置としては燃料電池があり、自動車用電源向け、家庭用自家発電向けに開発および普及が進んでいる。
【0003】
例えば、燃料電池車の燃料として使用される水素は、一般的に、数十MPaに圧縮された高圧状態で車内の水素タンクに貯蔵される。そして、このような高圧の水素は、一般的に、低圧(常圧)の水素を機械式の圧縮装置によって圧縮することで得られる。
【0004】
ところで、来るべき水素社会では、水素を製造することに加えて、水素を高密度で貯蔵し、小容量かつ低コストで輸送または利用し得る技術開発が求められている。特に、燃料電池の普及促進には水素供給インフラを整備する必要があり、水素を安定的に供給するために、高純度の水素を製造、精製、高密度貯蔵する様々な提案が行われている。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1では、電解質膜を挟んで配されたアノードおよびカソード間に所望の電圧を印加することによって、水素含有ガス中の水素の精製および昇圧が行われる電気化学式水素ポンプが提案されている。なお、カソード、電解質膜およびアノードの積層体を膜-電極接合体(以下、MEA:Membrane Electrode Assembly)という。こ
のとき、アノードに供給される水素含有ガスは、不純物が混入していてもよい。例えば、水素含有ガスは、製鉄工場などからの副次生成の水素ガスでもよいし、都市ガスを改質した改質ガスでもよい。
【0006】
また、例えば、特許文献2では、水の電気電解で発生した低圧の水素がMEAを用いて昇圧される差圧式の水電解装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6928922号公報
【文献】特許第6129809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、一例として、水素圧縮動作の効率低下が従来よりも抑制され得る圧縮装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様(aspect)の圧縮装置は、電解質膜を挟んで、アノードおよびカソードを備える電気化学セルと、アノードおよびカソード間に電圧を印加する電圧印加器と、カソードで生成された圧縮水素に晒され、かつ水素脆化耐性を有する金属プレートと、を備え、金属プレートは、電圧印加器に接続される第1端子を含み、第1端子は、第1端子よりも抵抗の低い第2端子と直接接続され、第2端子は、電圧印加器に直接接続され、かつ第1端子は、第2端子を介して前記電圧印加器に接続される。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様の圧縮装置は、水素圧縮動作の効率低下が従来よりも抑制され得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態の電気化学式水素ポンプにおけるスタックの一例を示す図である。
図3A図3Aは、実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプにおける給電板の端子接続部分の一例を示す図である。
図3B図3Bは、実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプにおける給電板の端子接続部分の一例を示す図である。
図4図4は、図3Aおよび図3Bの端子接続部分における端子抵抗の低減効果を検証した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来例では、電気化学式水素ポンプおよび水電解装置などの圧縮装置において、電圧印加器の電圧を電気化学セルに印加するための金属プレートの端子構成が十分に検討されていない。具体的には、圧縮水素に晒される金属プレートは、水素脆化耐性を有する導電材料で構成する必要がある。しかし、この場合、抵抗率が小さい導電材料を選ぶことが困難な可能性がある。すると、抵抗率が大きい導電材料で構成された端子における端子抵抗に起因して電圧印加器の電圧が上昇する可能性がある。その結果、圧縮装置の水素圧縮動作の効率が低下する可能性がある。
【0013】
そこで、本開示の第1態様の圧縮装置は、電解質膜を挟んで、アノードおよびカソードを備える電気化学セルと、アノードおよびカソード間に電圧を印加する電圧印加器と、カソードで生成された圧縮水素に晒され、かつ水素脆化耐性を有する金属プレートと、を備え、金属プレートは、電圧印加器に接続される第1端子を含み、第1端子は、第1端子よりも抵抗の低い第2端子と直接接続され、第2端子は、電圧印加器に直接接続され、かつ第1端子は、第2端子を介して電圧印加器に接続される。
【0014】
かかる構成によると、本態様の圧縮装置は、水素圧縮動作の効率低下が従来よりも抑制され得る。
【0015】
具体的には、本態様の圧縮装置においては、圧縮水素に晒される金属プレートの素材として水素脆化耐性が高い材料を選定し得るとともに、第2端子の素材として、金属プレート(第1端子)を構成する材料よりも抵抗率が小さい材料を選定し得る。これにより、本態様の圧縮装置は、第2端子が電圧印加器に直接接続され、かつ金属プレートの第1端子が第2端子を介して電圧印加器に接続されるので、金属プレートの第1端子が電圧印加器に直接接続される場合に比べて端子抵抗を低減することができる。よって、本態様の圧縮装置は、端子抵抗に起因する電圧印加器の電圧上昇が適切に抑制される。
【0016】
なお、上記の「第1端子は、第2端子を介して電圧印加器に接続される」とは、第1端子は、第2端子を介して電圧印加器に電気的に接続されることを意味する。
【0017】
本開示の第2態様の圧縮装置は、第1態様の圧縮装置において、金属プレートは、圧縮水素が流れる流路を備えていてもよい。
【0018】
本開示の第3態様の圧縮装置は、第1態様または第2態様の圧縮装置において、金属プレートは、SUS316またはSUS316Lで構成されていてもよい。
【0019】
SUS316およびSUS316Lは、様々な種類のステンレスの中で耐酸性および水素脆化耐性などの視点で高い特性を備えるので、金属プレートの素材としてSUS316またはSUS316Lを選択すると都合がよい。
【0020】
本開示の第4態様の圧縮装置は、第1態様から第3態様のいずれか一つの圧縮装置において、第2端子は、銅を含む材料で構成されていてもよい。
【0021】
かかる構成によると、本態様の圧縮装置は、第2端子の素材として、安価であって抵抗率が小さい、銅含有の導電材料を選択することで、かかる導電材料を選択しない場合に比べて、第2端子の高導電性および低コスト化が可能となる。
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも上記の各態様の一例を示すものである。よって、以下で示される形状、材料、構成要素、および、構成要素の配置位置および接続形態などは、あくまで一例であり、請求項に記載されていない限り、上記の各態様を限定するものではない。また、以下の構成要素のうち、上記の各態様の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比などについては正確な表示ではない場合がある。
【0023】
(実施形態)
以下の実施形態では、上記圧縮装置の一例である電気化学式水素ポンプの構成および動作について説明する。ただし、以下に説明する装置構成は、例えば、上記圧縮装置の一例である水電解装置の構成にも適用することができる。
【0024】
[装置の全体構成]
図1は、実施形態の電気化学式水素ポンプの一例を示す斜視図である。
【0025】
電気化学式水素ポンプ100は、MEA(電気化学セル)を含む水素ポンプユニット10(図2参照)が積層されたスタック100Aと、電圧印加器102と、を備える。
【0026】
各電気化学セルでは、一対のセパレーターのそれぞれが、電気化学セルのアノードおよびカソードのそれぞれを外側から挟んでいる。この場合、アノードに接触するアノードセパレーターは、アノードに水素含有ガスを供給するための導電性の板状の部材である。この板状の部材は、アノードに供給する水素含有ガスが流れるガス流路を備える。カソードに接触するカソードセパレーターは、カソードから圧縮水素(H)を外部に排出するための導電性の板状の部材である。この板状の部材は、カソードと外部とを連結するための連絡経路80および連絡経路81(図2参照)を備える。なお、アノードセパレーターのガス流路は、アノードセパレーターと別に設けることもできるが、アノードセパレーターの表面にガス流路の溝を、例えば、サーペンタイン状に加工することが一般的である。
【0027】
そして、電気化学セルの外側には、これを機械的に固定するとともに、隣接する電気化学セル同士を互いに電気的に直列に接続するための上記のセパレーターが配置されている。電気化学セルとセパレーターを交互に重ねて、電気化学セルを10~200個程度、積層して、スタック100Aを両側から、一対の給電板11、12および一対の絶縁板13、14を介して一対の端板15、16で挟み、両端板15、16を複数の締結器17で締め付けるのが一般的な積層締結構造である。
【0028】
以上の場合、アノードセパレーターのそれぞれのサーペンタイン状のガス流路に外部から適量の水素含有ガスを供給するには、アノードセパレーターのそれぞれにおいて、適宜の管路から溝状の連絡経路を分岐させ、連絡経路の下流端が、アノードセパレーターのそれぞれのガス流路の一端と連結するように構成する必要がある。このような管路のことをアノードガス導入マニホールドといい、このアノードガス導入マニホールドは、スタック100Aの各部材のそれぞれの適所に設けられた貫通孔の連なりにより構成されている。
【0029】
アノードセパレーターのそれぞれのサーペンタイン状のガス流路から外部に余剰の水素含有ガスを排出するには、アノードセパレーターのそれぞれにおいて、適宜の管路から溝状の連絡経路を分岐させ、連絡経路の下流端が、アノードセパレーターのそれぞれのガス流路の他端と連結するように構成する必要がある。このような管路のことをアノードガス導出マニホールドといい、このアノードガス導出マニホールドは、スタック100Aの各部材のそれぞれの適所に設けられた貫通孔の連なりにより構成されている。
【0030】
カソードセパレーターのそれぞれのカソードから外部に高圧の圧縮水素を排出するには、カソードセパレーターのそれぞれにおいて、適宜の管路と連絡経路80および連絡経路81とが連結するように構成する必要がある。このような管路のことをカソードガス導出マニホールドといい、このカソードガス導出マニホールドは、スタック100Aの各部材のそれぞれの適所に設けられた貫通孔の連なりにより構成されている。
【0031】
電気化学式水素ポンプ100は、水素ポンプユニット10における、積層方向の両端上に設けられた一対の端板15、16と、一対の端板15、16を積層方向に締結する締結器17と、を備える。
【0032】
締結器17は、複数の水素ポンプユニット10および一対の端板15、16を積層方向に締結することができれば、どのような構成であってもよい。例えば、締結器17として、ボルトおよび皿ばね付きナットなどを挙げることができる。
【0033】
これにより、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、複数の水素ポンプユニット10が、上記積層方向において、締結器17の締結圧により積層状態で適切に保持される。すると、水素ポンプユニット10の各部材間でシール部材(例えば、図2のOリング45および面シール材40)のシール性が適切に発揮されるとともに、各部材間の接触抵抗が低減する。
【0034】
電圧印加器102は、アノードANとカソードCAとの間に電圧を印加する装置である。具体的には、電圧印加器102の高電位が、アノードANに印加され、電圧印加器102の低電位が、カソードCAに印加されている。電圧印加器102は、アノードANおよびカソードCA間に電圧を印加できれば、どのような構成であってもよい。例えば、電圧印加器102は、アノードANおよびカソードCA間に印加する電圧を調整する装置であってもよい。このとき、電圧印加器102は、バッテリ、太陽電池、燃料電池などの直流電源と接続されているときは、DC/DCコンバータを備え、商用電源などの交流電源と接続されているときは、AC/DCコンバータを備える。電圧印加器102は、例えば、水素ポンプユニット10に供給する電力が所定の設定値となるように、アノードANおよびカソードCA間に印加される電圧、アノードANおよびカソードCA間に流れる電流が調整される電力型電源であってもよい。
【0035】
[スタックの構成]
次に、スタック100Aの構成の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0036】
図2は、実施形態の電気化学式水素ポンプにおけるスタックの一例を示す図である。図2には、図1の電気化学式水素ポンプ100の平面視において、スタック100Aの中心と、高圧の圧縮水素が流れるカソードガス導出マニホールド(図示せず)の中心と、を通過する直線を含むスタック100Aの垂直断面が示されている。
【0037】
上記のとおり、スタック100Aには、複数の水素ポンプユニット10が積層されている。図2に示す例では、4個の水素ポンプユニット10が積層されているが、水素ポンプユニット10の個数はこれに限定されない。つまり、水素ポンプユニット10の個数は、電気化学式水素ポンプ100が圧縮する水素量などの運転条件をもとに適宜の数に設定することができる。
【0038】
図2に示す例では、水素ポンプユニット10のそれぞれにおいて、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27は一体化されている。具体的には、バイポーラプレート29(双極板)が、水素ポンプユニット10Aのアノードセパレーター26として機能するとともに、水素ポンプユニット10Bのカソードセパレーター27として機能する。これにより、電気化学式水素ポンプ100の部品点数を削減することができる。例えば、セパレーターの個数を削減できるとともに、セパレーター間に設けられたシール部材(例えば、Oリング)を無くすことができる。
【0039】
アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27の接合は、どのような構成であってもよい。例えば、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27は、拡散接合、ボルト締結などの機械的な接合、接着、溶接などの様々な手法で接合することができる。また、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27を接合する前には、カソードセパレーター27およびアノードセパレーター26の接合面の一方、または、両方に、電気化学式水素ポンプ100の温度を調整するための熱媒体が流れる流路溝(図示せず)を設けてもよい。
【0040】
ただし、図示を省略するが、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27は、別体で構成されていてもよい。
【0041】
水素ポンプユニット10は、電解質膜21と、アノードANと、カソードCAと、カソードセパレーター27と、アノードセパレーター26と、面シール材40と、Oリング45と、を備える。そして、水素ポンプユニット10において、電解質膜21、アノード触媒層24、カソード触媒層23、アノード給電体25、カソード給電体22、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27が積層されている。
【0042】
アノードANは、電解質膜21の一方の主面上に設けられている。アノードANは、アノード触媒層24と、アノード給電体25とを含む電極である。
【0043】
カソードCAは、電解質膜21の他方の主面上に設けられている。カソードCAは、カソード触媒層23と、カソード給電体22とを含む電極である。
【0044】
ここで、一般的に、電気化学式水素ポンプ100では、カソード触媒層23およびアノード触媒層24が電解質膜21に一体的に接合された触媒層付き膜CCM(Catalyst Coated Membrane)が使用されることが多い。
【0045】
そこで、触媒層付き膜CCMのアノード触媒層24およびカソード触媒層23のそれぞれに、上記のアノード給電体25およびカソード給電体22がそれぞれ設けられている。これにより、電解質膜21は、アノードANとカソードCAとによって挟持されている。
【0046】
電解質膜21は、プロトン伝導性を備える高分子膜である。電解質膜21は、プロトン伝導性を備えていれば、どのような構成であってもよい。例えば、電解質膜21として、フッ素系高分子電解質膜、炭化水素系高分子電解質膜を挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、例えば、電解質膜21としてNafion(登録商標、デュポン社製)、Aciplex(登録商標、旭化成株式会社製)などを用いることができる。
【0047】
アノード触媒層24は、電解質膜21の一方の主面に接するように設けられている。アノード触媒層24は、触媒金属として、例えば、白金を含むが、これに限定されない。
【0048】
カソード触媒層23は、電解質膜21の他方の主面に接するように設けられている。カソード触媒層23は、触媒金属として、例えば、白金を含むが、これに限定されない。
【0049】
カソード触媒層23およびアノード触媒層24の触媒担体としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛などのカーボン粒子、導電性の酸化物粒子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
カソード触媒層23およびアノード触媒層24では、触媒金属の微粒子が、触媒担体に高分散に担持されている。また、これらのカソード触媒層23およびアノード触媒層24中には、電極反応場を大きくするために、プロトン伝導性のイオノマー成分を加えることが一般的である。
【0051】
カソード給電体22は、カソード触媒層23上に設けられている。また、カソード給電体22は、多孔性材料で構成され、導電性およびガス拡散性を備える。さらに、カソード給電体22は、電気化学式水素ポンプ100の動作時にカソードCAおよびアノードAN間の差圧で発生する構成部材の変位、変形に適切に追従するような弾性を備える方が望ましい。
【0052】
なお、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、カソード給電体22として、カーボン繊維で構成した部材が用いられている。例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトなどの多孔性のカーボン繊維シートでもよい。
【0053】
ただし、カソード給電体22の基材として、カーボン繊維シートを用いなくもよい。例えば、カソード給電体22の基材として、チタン、チタン合金、ステンレススチールなどを素材とする金属繊維の焼結体、これらを素材とする金属粒子の焼結体などを用いてもよい。
【0054】
アノード給電体25は、アノード触媒層24上に設けられている。また、アノード給電体25は、多孔性材料で構成され、導電性およびガス拡散性を備える。さらに、アノード給電体25は、電気化学式水素ポンプ100の動作時にカソードCAおよびアノードAN間の差圧で発生する構成部材の変位、変形を抑制可能な高剛性であることが望ましい。
【0055】
具体的には、アノード給電体25の基材として、例えば、チタン、チタン合金、ステンレススチール、カーボンなどを素材とした繊維焼結体、粉体焼結体、エキスパンドメタル、金属メッシュ、パンチングメタルなどを用いてもよい。
【0056】
アノードセパレーター26は、アノードAN上に設けられた部材である。カソードセパレーター27は、カソードCA上に設けられた部材である。具体的には、アノードセパレーター26のアノードAN側のアノードANに対向する領域(中央部)には、アノード給電体25が接触している。また、カソードセパレーター27の中央部には凹部が設けられ、この凹部内に、カソード給電体22が収容されている。
【0057】
以上のアノードセパレーター26およびカソードセパレーター27は、例えば、チタン、ステンレス、金などの金属シートで構成されていてもよいが、これに限定されない。例えば、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27は、カーボン、または、チタン、ステンレスなどの金属の薄膜が表面に形成された樹脂などで構成されていてもよい。なお、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27をステンレスで構成する場合、アノードセパレーター26およびカソードセパレーター27の素材としてSUS316またはSUS316Lを選択することが望ましい。これは、SUS316およびSUS316Lが様々な種類のステンレスの中で耐酸性および水素脆化耐性などの視点で高い特性を備えるからである。
【0058】
ここで、「水素脆化耐性」とは、非特許文献1(村上敬宜、「水素脆化メカニズムと水素機器強度設計の考え方」、株式会社養賢堂発行、2012、p213-p216)によると、水素ガス中とヘリウムガス中の切欠け試験片の引張強度と平滑試験片の絞りを判断基準に、これらが、どちらも低下しない材料特性で、例えば、水素とヘリウムのガス圧力と温度がそれぞれ69MPaと295Kの試験条件にて、ヘリウムガスの引張強度に対する水素ガス中の引張強度の比、および、ヘリウムガスの絞りに対する水素ガス絞りの比がともに1である材料特性のことをいうと記載されている。また、非特許文献1には、オーステナイト系ステンレス鋼、アルミ合金、銅合金は「脆化しない」グループに属すると記載されている。このような「水素脆化耐性」を有する代表的な鋼材として、「JISG4304:熱間圧延ステンレス鋼板および鋼帯」、または、「JISG4305:冷間圧延ステンレス鋼版および鋼帯」に記載の材料であって、上記オーステナイト系ステンレス鋼に属するSUS316またはSUS316Lが該当する。
【0059】
以上により、カソードセパレーター27およびアノードセパレーター26で電気化学セルを挟むことにより、水素ポンプユニット10が形成されている。
【0060】
[電圧印加用の端子構成]
次に、電気化学セルに電圧を印加するための端子構成の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0061】
まず、給電板11は、上記積層方向において一方の端に位置するカソードセパレーター27と電気的に接触しており、給電板12は、上記積層方向において他方の端に位置するアノードセパレーター26と電気的に接触している。
【0062】
ここで、給電板11および給電板12は、一般的に、カソードCAで生成された圧縮水素に晒される。図1に示す例では、給電板11および給電板12のそれぞれの適所には、カソードガス導出マニホールドが貫通している。つまり、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100において、給電板11および給電板12がそれぞれ、本開示の「金属プレート」の一例に相当する。また、給電板11および給電板12のそれぞれにおけるカソードマニホールドを構成する貫通孔11Hおよび貫通孔12H(図3Aおよび図3B参照)がそれぞれ、本開示の「カソードで生成された圧縮水素が流れる流路」の一例に相当する。
【0063】
このため、給電板11および給電板12は、水素脆化耐性を有する導電材料で構成する必要がある。例えば、給電板11および給電板12は、チタン、ステンレスなどの金属シート、カーボン、または、チタン、ステンレスなどの金属の薄膜が表面に形成された樹脂などで構成することが望ましい。給電板11および給電板12をステンレスで構成する場合は、給電板11および給電板12の素材としてSUS316またはSUS316Lを選択することが望ましい。これは、SUS316およびSUS316Lが様々な種類のステンレスの中で耐酸性および水素脆化耐性などの視点で高い特性を備えるからである。
【0064】
ここで、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100においては、給電板11は、電圧印加器102に接続される第1端子11Aを含み、第1端子11Aは、第1端子11Aよりも抵抗の低い第2端子107と直接接続され、第2端子107は、電圧印加器102に直接接続され、かつ第1端子11Aは、第2端子107を介して電圧印加器102に接続される。つまり、電圧印加器102の配線103の端子と第2端子107とが接触するとともに、第2端子107と第1端子11Aとが接触する。これにより、第1端子11Aは、第2端子107を介して電圧印加器102に電気的に接続される。
【0065】
なお、第1端子11Aおよび第2端子107の抵抗Rは、以下の式(1)により算出することができる。
R=ρ×L/S・・・(1)
式(1)において、抵抗率ρ(Ω・m)は、電流の流れにくさ表す比例定数であって材料固有の数値である。例えば、室温における金属材料のρ(Ω・m)の値は、以下の表1とおりである。
【0066】
【表1】
式(1)において、断面積Sは、端子の厚み(図3Aおよび図3Bの端子断面図で説明すると、図中の端子の縦方向の長さ)と端子の幅(図3Aおよび図3Bの端子断面図で説明すると、図中の端子の奥行方向の長さ)との積に相当する。
【0067】
式(1)において、長さLは、端子の長さ(図3Aおよび図3Bの端子断面図で説明すると、図中の端子の横方向の長さ)に相当する。
【0068】
図1に示す例では、第1端子11Aは、給電板11を構成する金属プレートの一部であって、金属プレートの側面から外側に帯状に突出する突出部である。第2端子107は、第1端子11Aと面接触で重畳する帯状かつ平板状の部材である。電圧印加器102の配線103の端子および第2端子107間の接続、および、第2端子107および第1端子11A間の接続は、図示しない連結部材(例えば、ボルトとナット)により行われる。なお、第2端子107の詳細は、第1実施例および第2実施例で説明する。
【0069】
また、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100においては、給電板12は、電圧印加器102に接続される第1端子12Aを含み、第1端子12Aは、第1端子12Aよりも抵抗の低い第2端子108と接続され、第2端子108は、電圧印加器102に直接接続され、かつ第1端子12Aは、第2端子108を介して電圧印加器102に接続される。つまり、電圧印加器102の配線104の端子と第2端子108とが接触するとともに、第2端子108と第1端子12Aとが接触する。
【0070】
なお、第1端子12Aおよび第2端子108の抵抗Rは、第1端子11Aおよび第2端子107と同様、式(1)により算出することができる。
【0071】
図1に示す例では、第1端子12Aは、給電板12を構成する金属プレートの一部であって、金属プレートの側面から外側に帯状に突出する突出部である。第2端子108は、第1端子12Aと面接触で重畳する帯状かつ平板状の部材である。そして、電圧印加器102の配線104の端子および第2端子108間の接続、および、第2端子108および第1端子12A間の接続は、図示しない連結部材(例えば、ボルトとナット)により行われる。なお、第2端子108の詳細は、第1実施例および第2実施例で説明する。
【0072】
図示を省略するが、電気化学式水素ポンプ100を備える水素システムを構築することもできる。この場合、水素システムの水素圧縮動作において必要となる機器は適宜、設けられる。例えば、水素システムには、アノードANから排出される高加湿状態の水素含有ガスと、外部の水素供給源から供給される低加湿状態の水素含有ガスとが混合された混合ガスの露点を調整する露点調整器(例えば、加湿器)が設けられていてもよい。このとき、外部の水素供給源の水素含有ガスは、例えば、水電解装置で生成されてもよい。
【0073】
また、水素システムには、例えば、電気化学式水素ポンプ100の温度を検出する温度検出器、電気化学式水素ポンプ100のカソードCAから排出された水素を一時的に貯蔵する水素貯蔵器、水素貯蔵器内の水素ガス圧を検出する圧力検出器などが設けられていてもよい。
【0074】
電気化学式水素ポンプ100の構成および水素システムにおける図示しない様々な機器は例示であって、本例に限定されない。例えば、アノードガス導出マニホールドを設けずに、アノードガス導入マニホールドを通してアノードANに供給する水素含有ガス中の水素を全てカソードCAで圧縮するデッドエンド構造が採用されてもよい。
【0075】
[動作]
以下、電気化学式水素ポンプ100の水素圧縮動作の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0076】
以下の動作は、例えば、図示しない制御器の演算回路が、制御器の記憶回路から制御プログラムを読み出すことにより行われてもよい。ただし、以下の動作を制御器で行うことは、必ずしも必須ではない。操作者が、その一部の動作を行ってもよい。以下の例では、制御器により動作を制御する場合について説明する。
【0077】
まず、電気化学式水素ポンプ100のアノードANに低圧の水素含有ガスが供給されるとともに、電圧印加器102の電圧が、第1端子11Aおよび第2端子107と、第1端子12Aおよび第2端子108とを通じて、電気化学セルに与えられる。
【0078】
すると、アノードANのアノード触媒層24において、酸化反応で水素分子がプロトンと電子とに分離する(式(2))。プロトンは電解質膜21内を伝導してカソード触媒層23に移動する。電子は電圧印加器102を通じてカソード触媒層23に移動する。
【0079】
そして、カソード触媒層23において、還元反応で水素分子が再び生成される(式(3))。なお、プロトンが電解質膜21中を伝導する際に、所定水量の水が、電気浸透水としてアノードANからカソードCAにプロトンと同伴して移動することが知られている。
【0080】
このとき、図示しない流量調整器を用いて、水素導出経路の圧損を増加させることにより、カソードCAで生成された水素(H)を圧縮することができる。なお、流量調整器として、例えば、水素導出経路に設けられた背圧弁、調整弁などを挙げることができる。アノード:H(低圧)→2H+2e ・・・(2)
カソード:2H+2e→H(高圧) ・・・(3)
このようにして、電気化学式水素ポンプ100では、電圧印加器102で電圧を印加することで、アノードANに供給される水素含有ガス中の水素がカソードCAにおいて圧縮される。これにより、電気化学式水素ポンプ100の水素圧縮動作が行われ、カソードCAで圧縮された水素は、適時に水素需要体に供給される。水素需要体として、燃料電池、水素貯蔵器、水素インフラの配管などを挙げることができる。例えば、カソードCAで圧縮された水素は、水素需要体の一例である水素貯蔵器に一時的に貯蔵されてもよい。また、水素貯蔵器で貯蔵された水素は、適時に、水素需要体の一例である燃料電池に供給されてもよい。
【0081】
以上のとおり、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、水素圧縮動作の効率低下が従来よりも抑制され得る。
【0082】
具体的には、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100においては、圧縮水素に晒される給電板11の素材として水素脆化耐性が高い材料を選定し得るとともに、第2端子107の素材として、給電板11(第1端子11A)よりも抵抗率が小さい材料を選定し得る。また、圧縮水素に晒される給電板12の素材として水素脆化耐性が高い材料を選定し得るとともに、第2端子108の素材として、給電板12(第1端子12A)よりも抵抗率が小さい材料を選定し得る。
【0083】
以上により、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、第2端子107が電圧印加器102に直接接続され、かつ給電板11の第1端子11Aが第2端子107を介して電圧印加器102に接続されるので、給電板11の第1端子11Aが電圧印加器102に直接接続される場合に比べて端子抵抗を低減することができる。また、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100では、第2端子108が電圧印加器102に直接接続され、かつ給電板12の第1端子12Aが第2端子108を介して電圧印加器102に接続されるので、給電板12の第1端子12Aが電圧印加器102に直接接続される場合に比べて端子抵抗を低減することができる。
【0084】
よって、本実施形態の電気化学式水素ポンプ100は、端子抵抗に起因する電圧印加器102の電圧上昇が適切に抑制される。
【0085】
(第1実施例)
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、以下に説明する第2端子107および第2端子108の構成以外は、実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様である。
【0086】
第2端子107および第2端子108はそれぞれ、上記のとおり、給電板11および給電板12のそれぞれを構成する導電材料よりも抵抗率が低い材料で構成される。第2端子107および第2端子108はそれぞれ、銅を含む材料で構成されていてもよい。例えば、第2端子107および第2端子108はそれぞれ、銅の純度が約99.90%以上の純銅で構成されていてもよいし、銅を含む合金で構成されていてもよい。前者の純銅として、例えば、タフピッチ銅、無酸素銅を例示することができる。後者の合金として、例えば、黄銅を例示することができる。
【0087】
また、第2端子107および第2端子108の表面には、耐食性および表面硬度を向上させる目的でニッケル、スズ、金などでメッキする方がよい。高導電性および低コストが両立する端子としては、銅を含む材料で構成された、ニッケルメッキの部材を挙げることができる。
【0088】
以上のとおり、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、第2端子107および第2端子108の素材として、安価であって抵抗率が小さい、銅含有の導電材料を選択することで、このような導電材料を選択しない場合に比べて、第2端子107および第2端子108の高導電性および低コスト化が可能となる。
【0089】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記特徴以外は、実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0090】
(第2実施例)
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、以下に説明する第2端子107および第2端子108の構成以外は、実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様である。
【0091】
図3Aおよび図3Bは、実施形態の第2実施例の電気化学式水素ポンプにおける給電板の端子接続部分の一例を示す図である。図3Aに、給電板11における端子接続部分の断面が示され、図3Bに、給電板12における端子接続部分の断面が示されている。
【0092】
図3Aに示すように、第2端子107は、第1端子11Aの一方の主面と面接触するように重畳する第1バスバー107Aと、第1端子11Aの他方の主面と面接触するように重畳する第2バスバー107B(追加バスバー)と、を備える。ただし、図3Aの第2端子107の構成は例示であって、本例に限定されない。例えば、第2端子107は、第2バスバー107Bを備えてなくてもよい。
【0093】
ここで、第1バスバー107Aと第1端子11Aと第2バスバー107Bとは、これらが積層部分200を構成するように適宜の連結部材(例えば、ボルトとナット)で固定される。つまり、第1端子11Aの両主面のそれぞれが、第1バスバー107Aおよび第2バスバー107Bのそれぞれの主面と面接触することで、第1端子11Aは、第1バスバー107Aおよび第2バスバー107Bによって挟まれている。ボルトおよびナットによって所望の締結力が上記各部材に付与されると、第1バスバー107Aと第1端子11Aとの間の接触抵抗、および、第1端子11Aと第2バスバー107Bとの間の接触抵抗を低減することができる。
【0094】
また、第1バスバー107Aは、積層部分200よりも外側に延在しており、第1バスバー107Aの延在部分300の主面が、配線103の端子105と面接触している。第1バスバー107Aと配線103の端子105とは、これらが積層状態となるように適宜の連結部材(例えば、ボルトとナット)で固定される。ボルトおよびナットによって上記各部材に所望の締結力が付与されると、第1バスバー107Aと配線103の端子105との間の接触抵抗を低減することができる。
【0095】
以上のとおり、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、第1端子11Aの片方の主面にのみバスバーを配する場合に比べて、第1バスバー107Aと第1端子11Aと第2バスバー107Bとが重畳する積層部分200の体積が増加するので、積層部分200の体積抵抗が改善され、その結果、給電板11における端子接続部分の端子抵抗を低減することができる。
【0096】
特に、材料コスト低減のために給電板11を薄い金属プレートで構成する場合、金属プレートの厚みが薄い程、金属プレートの側面から外側に帯状に突出する第1端子11Aの抵抗が大きくなるが、本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記の如く、積層部分200の体積を増加させることで、第1端子11Aの抵抗増加が適切に抑制される。
【0097】
なお、給電板12における端子接続部分の構成は、上記内容から容易に理解できるので説明を省略する。ただし、図3Bの第2端子108の構成は例示であって、本例に限定されない。例えば、第2端子108は、第2バスバー108Bを備えてなくてもよい。
【0098】
[検証実験]
図4は、図3Aおよび図3Bの端子接続部分における端子抵抗の低減効果を検証した結果の一例を示す図である。図4において、横軸に、電気化学式水素ポンプ100の水素圧縮動作開始からの経過時間が取られ、縦軸に、電圧印加器102の電圧が取られている。
【0099】
<実験条件>
本検証実験では、電気化学セルに供給される電流密度が約2.5A/cmに設定され、カソードCAの圧縮水素の圧力が約1.0MPaに設定された。
【0100】
給電板11および第1端子11Aを構成する部材、および、給電板12および第1端子12Aを構成する部材はそれぞれ、SUS316Lで構成された金メッキの金属プレートが使用された。
【0101】
第2端子107および第2端子108を構成する部材はそれぞれ、純銅で構成されたニッケルメッキの第1バスバー107Aおよび第2バスバー107B、および、純銅で構成されたニッケルメッキの第1バスバー108Aおよび第2バスバー108Bがそれぞれ使用された。
【0102】
<実験結果>
図4には、第2端子107および第2端子108を使用した場合における電圧印加器102の電圧が点線で示されており、第2端子107および第2端子108を使用しない場合における電圧印加器102の電圧が実線で示されている。つまり、後者の場合、図3Aおよび図3Bの端子接続部分において、第2端子107および第2端子108が設けられずに、配線103の端子105および配線104の端子106をそれぞれ、第1端子11Aおよび第1端子12Aのそれぞれに直接接続させた。
【0103】
図4に示すように、第2端子107および第2端子108を使用しない場合(図4の実線)と比べて、図4の点線で示す如く、第2端子107および第2端子108を使用することによって、電圧印加器102の電圧が低下することがわかった。これにより、第2端子107および第2端子108によって、図3Aおよび図3Bの端子接続部分における端子抵抗の低減効果を検証することができた。
【0104】
本実施例の電気化学式水素ポンプ100は、上記特徴以外は、実施形態または実施形態の第1実施例の電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0105】
(変形例)
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、以下に説明する給電板11および給電板12の構成以外は、実施形態の電気化学式水素ポンプ100と同様である。
【0106】
実施形態の電気化学式水素ポンプ100においては、カソードセパレーター27と給電板11とが別体で構成され、アノードセパレーター26と給電板12とが別体で構成されているが、かかる構成は、例示であって本例に限定されない。
【0107】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、カソードセパレーター27と給電板11とが一体で構成された金属部材を備える。また、本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、アノードセパレーター26と給電板12とが一体で構成された金属部材を備える。
【0108】
例えば、カソードセパレーター27と給電板11とが拡散接合などで一体化されていてもよい。また、アノードセパレーター26と給電板12とが拡散接合などで一体化されていてもよい。
【0109】
以上の場合、上記の金属部材が、本開示の「金属プレート」の一例に相当する。また、金属部材におけるカソード導出マニホールドを構成する貫通孔が、本開示の「カソードで生成された圧縮水素が流れる流路」の一例に相当する。さらに、カソードセパレーターとして機能する金属部材における連絡経路80および連絡経路81が、本開示の「カソードで生成された圧縮水素が流れる流路」の一例に相当する。
【0110】
なお、本変形例の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果は、実施形態の電気化学式水素ポンプ100が奏する作用効果と同様であるので説明を省略する。
【0111】
本変形例の電気化学式水素ポンプ100は、上記特徴以外は、実施形態、実施形態の第1実施例-第2実施例のいずれかの電気化学式水素ポンプ100と同様であってもよい。
【0112】
なお、実施形態、実施形態の第1実施例-第2実施例および実施形態の変形例は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせても構わない。
【0113】
また、上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良および他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示の一態様は、水素圧縮動作の効率低下が従来よりも抑制され得る圧縮装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10 :水素ポンプユニット
10A :水素ポンプユニット
10B :水素ポンプユニット
11 :給電板
11A :第1端子
11H :貫通孔
12 :給電板
12A :第1端子
12H :貫通孔
13 :絶縁板
14 :絶縁板
15 :端板
16 :端板
17 :締結器
21 :電解質膜
22 :カソード給電体
23 :カソード触媒層
24 :アノード触媒層
25 :アノード給電体
26 :アノードセパレーター
27 :カソードセパレーター
29 :バイポーラプレート
40 :面シール材
45 :Oリング
80 :連絡経路
81 :連絡経路
100 :電気化学式水素ポンプ
100A :スタック
102 :電圧印加器
103 :配線
104 :配線
105 :端子
106 :端子
107 :第2端子
107A :第1バスバー
107B :第2バスバー
108 :第2端子
108A :第1バスバー
108B :第2バスバー
200 :積層部分
300 :延在部分
AN :アノード
CA :カソード
CCM :触媒層付き膜
図1
図2
図3A
図3B
図4