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特許7526978ウェアラブルデバイス用布帛及びこれを備えるウェアラブルデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ウェアラブルデバイス用布帛及びこれを備えるウェアラブルデバイス
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/00 20190101AFI20240726BHJP
   D21H 13/50 20060101ALI20240726BHJP
   A41D 31/04 20190101ALI20240726BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20240726BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALN20240726BHJP
【FI】
A41D31/00 503N
D21H13/50
A41D31/04 B
A41D31/04 Z
A41D31/00 502E
A41D13/00 102
D04H1/4242
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019115551
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2020033683
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2018159421
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】竹村 一哉
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-128548(JP,A)
【文献】特開2000-160475(JP,A)
【文献】特開2000-042126(JP,A)
【文献】国際公開第2005/028719(WO,A1)
【文献】特開2018-131695(JP,A)
【文献】特開平08-260360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00
D04H 1/4242
A61B 5/256
D06M 11/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルデバイスにおいて導電性材料として使用されるウェアラブルデバイス用布帛であって、
前記布帛が繊維状炭素材料を含み、前記繊維状炭素材料が繊維状活性炭である、ウェアラブルデバイス用布帛(ただし、金属銀の膜で被覆されている繊維状炭素材料を含む場合を除く)
【請求項2】
前記繊維状炭素材料がさらに炭素繊維を含む、請求項1に記載のウェアラブルデバイス布帛。
【請求項3】
前記布帛が不織布である、請求項1又は2に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項4】
前記ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する前記繊維状炭素材料の含有割合が20~90質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項5】
前記ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する前記繊維状炭素材料の含有割合が30~60質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項6】
さらに、繊維状炭素材料以外の繊維を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項7】
さらに、粒状又は粉末状のカーボンブラックを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項8】
1m2あたりの質量が20g/m2以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項9】
見かけ密度が0.05~0.2g/cm3である、請求項1~8のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項10】
体積抵抗率が100Ω・cm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛が導電性材料として用いられている、ウェアラブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェアラブルデバイス用布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入出力、演算、通信機能を有する電子機器を身体に極近接、ないしは密着した状態で使用することを意図したウェアラブルデバイスが開発されている。ウェアラブルデバイスには腕時計、メガネ、イヤホンのようなアクセサリ型の外形を有するウェアラブルデバイス、衣服に電子機能を組み込んだテキスタイル集積型のウェアラブルデバイス等が知られている。ウェアラブルデバイスには、電力供給や信号伝送等に用いられる導電性材料が必要であり、現在様々な開発がなされている。
【0003】
ウェアラブルデバイス用布帛として、伸縮性を有するストレッチャブル導電層と、前記ストレッチャブル導電層の一表面に形成されたホットメルト接着剤層とを含み、前記ストレッチャブル導電層は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されているストレッチャブル導電性フィルムが、前記ホットメルト接着剤層を介して生地に貼り付けられてなる、ウェアラブルデバイス用布帛が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該ウェアラブルデバイス用布帛によれば、上記導電性フィルムがテキスタイル生地に容易に貼り付けることができ、かつ導電性および伸縮性を有するとされている。
【0004】
また、ウェアラブルデバイス用布帛として、編組織においてループが繋がって進む方向をコース方向又はコースと定義する編地であって、前記ループが導電糸によって形成されていると共に、弾性糸が前記コース方向で引き締め力を生じる配置で設けられており、編地の非伸長時には前記弾性糸による引き締め力によりコース方向で隣接する前記導電糸のループ同士が接触状態を保持する一方で編地のコース方向への伸長時には前記導電糸のループ同士が前記弾性糸による引き締め力に抗して離反可能となっている導電性伸縮編地が知られている(例えば、特許文献2参照。)。該導電性伸縮編地によれば、伸縮性及び柔軟性が豊富で伸長を繰り返した際の復元性をも備えた編地でありながら、伸長時と非伸長時とで電気抵抗が変化する特性を備え、更には通気性や透湿性、吸水性などを得ることも可能であることから、ウェアラブル素材として好適に使用できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-1011124号公報
【文献】国際公開第2017/010236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が検討したところ、特許文献1に開示されているウェアラブルデバイス用布帛は、導電性フィラーとして銀等の金属が用いられているところ、フィルムのエラストマー中に充填されている導電性フィラーが空気中に露出するため、導電性フィラーが汗等により腐食する虞があるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示されている導電性伸縮編地は、導電糸がメッキ線等の金属成分が糸表面に露出したものであるところ、やはり露出した金属成分が汗等により腐食する虞があるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、導電性能を示しつつ、汗等に対する耐食性に優れた、ウェアラブルデバイス用布帛の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決すべく本発明者が検討したところ、ウェアラブルデバイス用布帛として繊維状炭素材料を含むものとすることにより、導電性能を示しつつ、汗等に対する耐食性に優れるものとできることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.繊維状炭素材料を含む、ウェアラブルデバイス用布帛。
項2.前記繊維状炭素材料が繊維状活性炭である、項1に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項3.前記繊維状炭素材料が繊維状活性炭及び炭素繊維である、項1に記載のウェアラブルデバイス布帛。
項4.前記布帛が不織布である、項1~3のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項5.前記ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する前記繊維状炭素材料の含有割合が20~90質量%である、項1~4のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項6.前記ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する前記繊維状炭素材料の含有割合が30~60質量%である、項1~5のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項7.さらに、繊維状炭素材料以外の繊維を含む、項1~6のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項8.さらに、粒状又は粉末状のカーボンブラックを含む、項1~7のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項9.1mあたりの質量が20g/m以上である、項1~8のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項10.見かけ密度が0.05~0.2g/cmである、項1~9のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項11.体積抵抗率が100Ω・cm以下である、項1~10のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛。
項12.項1~11のいずれか1項に記載のウェアラブルデバイス用布帛を備える、ウェアラブルデバイス。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛によれば、繊維状炭素材料を含むことから、導電性能を示しつつ、汗等に対する耐食性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料を含む。
【0013】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、炭素材料を含むことにより、汗等に対する耐食性に優れる。そして、炭素材料の形状が繊維状であることにより、炭素材料間の接触による接触抵抗を抑制でき、導電性能を示してウェアラブルデバイスに好適に用いることが可能となる。
【0014】
本発明において用いる炭素材料とは、稲垣道夫編「解説・カーボンファミリー」(アグネ承風社、2001年発行)第1章に記載されている炭素材料の定義に従い、元素「炭素」を主成分とする全ての材料、黒鉛のみでなくダイヤモンド、フラーレン、カルビンも含めた全ての材料を炭素材料と呼ぶ。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、気相法炭素繊維、ダイヤモンドライクカーボン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンからなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。なお、本発明において、繊維状炭素材料は、繊維形成成分が炭素材料であるものであり、例えば、合成樹脂により形成される繊維中に炭素材料微粒子を含むもの、又は合成樹脂により形成される繊維表面に炭素材料を被覆したものは含まない。異種の繊維状炭素材料を組み合わせる場合、その具体的な組合せとしては、例えば、繊維状活性炭と炭素繊維の組合せが挙げられる。
【0015】
繊維状炭素材料における炭素原子含有量としては、85質量%以上が好ましく、90質量%以上が好ましい。また、繊維状炭素材料における酸素原子含有量としては、5質量%以下が挙げられ、3質量%以下が挙げられる。このような組成とするには、炭素原子量が多く、酸素原子量が少ない原料とすることが挙げられ、例えば、石炭ピッチ、石油ピッチ又はポリアクリロニトリルを原料とすることが挙げられる。なお、上記炭素原子含有量は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ社製JM-11により測定されるものであり、上記酸素原子含有量は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ社製JMO-10により測定されるものである。
【0016】
繊維状炭素材料の中でも、炭素繊維又は繊維状活性炭が好ましく、ウェアラブルデバイスを身に付けるユーザーから発生する臭気成分等の吸着性能を向上させる観点から、繊維状活性炭が好ましい。
【0017】
本発明において用いる炭素材料のうち、繊維状活性炭の種類としては、特に制限されないが、例えば、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、フェノール樹脂系、石炭ピッチ系、石油ピッチ系等の繊維を不融化し、炭化処理した後、水蒸気、二酸化炭素を含有する雰囲気中、所定温度で所定時間保持することによって賦活することにより製造される任意の繊維状活性炭を採用することができる。ウェアラブルデバイス用布帛の導電性能をより一層低いものとする観点から、これらの中でも、石炭ピッチ系、石油ピッチ系、ポリアクリロニトリル系の繊維状活性炭が好ましい。繊維状活性炭は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明において用いる繊維状炭素材料の強度としては、特に制限されないが、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の使用時における炭塵に起因するざらつきをより抑制する観点から、JIS K 1477:2007に準じて測定される繊維強度が、0.10GPa以上であることが好ましく、0.15GPa以上がより好ましい。上限値は特に制限されないが、例えば、0.50GPa以下が挙げられる。本発明において、繊維状炭素材料の強度は、JIS K 1477:2007 7.3.2に準じて測定して算出される値である。
【0019】
本発明において用いる繊維状炭素材料の比表面積としては、特に制限されない。ところで、通常、布帛の導電性能を高める手法としては、導電材料の含有比率や断面積を大きくすることが考えられる。しかしながら、本発明者の検討によれば、驚くべきことに、上記手法とは全く異なる手法、すなわち、繊維状炭素材料の比表面積を最適化することによりウェアラブルデバイス用布帛の導電性能をさらに高め得ることを見出した。そして、本発明者がさらに検討を重ね、繊維状炭素材料の比表面積を、500~4000m/g、好ましくは1000~2000m/g、より好ましくは1200~1400m/gとすることにより、ウェアラブルデバイス用布帛の導電性能をより一層優れたものとすることを見出した。なお、本発明において、比表面積は、窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値である。
【0020】
本発明において用いる繊維状炭素材料は、ミクロ細孔容積率が80%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、92%以上がさらに好ましい。ミクロ細孔容積率を上記範囲とすることにより、繊維状炭素材料の強度を高め、ウェアラブルデバイス用布帛の使用時における炭塵に起因するざらつきをより抑制することができる。また、上記ミクロ細孔容積率の上限値としては、ウェアラブルデバイス用布帛の導電性能をより一層優れたものとする観点から、99%以下が挙げられ、95%以下がより好ましく挙げられる。本発明において、ミクロ細孔容積率は、QSDFT法によって算出されるものである。QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。そして、上記QSDFT法で測定、算出される全細孔容積と、上記QSDFT法で測定、算出される直径2nm以下の細孔容積から、以下の式(1)によりミクロ細孔容積率を求める。
ミクロ細孔容積率(%)
=(直径2nm以下の細孔容積)/(全細孔容積)×100(%)・・・(1)
【0021】
本発明において用いる繊維状炭素材料の繊維径としては、特に制限されないが、例えば、5~30μmが挙げられ、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の導電性能と、炭塵に起因するざらつきの抑制と、をより両立させる観点から、10~20μmが好ましく挙げられる。なお、繊維状炭素材料の平均繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡によって測定及び算出をする。
【0022】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛において、当該布帛の質量に対する繊維状炭素材料の含有割合としては、例えば、5~100質量%が挙げられ、20~100質量%が好ましく挙げられる。中でも、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の導電性能と、炭塵に起因するざらつきの抑制と、をより両立させる観点から、ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する繊維状炭素材料の含有割合として10~90質量%が挙げられ、20~90質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。また、本発明のウェアラブルデバイス用布帛1mあたりに含まれる繊維状炭素材料の質量としては、導電性能をより優れたものとする観点から、10~500g/mが挙げられ、さらに導電性能と炭塵に起因するざらつきの抑制との両立をより図りやすくする観点から、好ましくは30~200g/m、より好ましくは150~180g/mが挙げられる。
【0023】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料以外の他の材料を含むことができる。当該他の材料としては、高分子化合物材料とすることが挙げられる。当該高分子化合物材料としては、天然由来の高分子化合物材料や、合成樹脂材料とすることが挙げられる。該高分子化合物材料の形状としては、粒状、粉状又は繊維状が挙げられる。本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、粒状、粉状又は繊維状の高分子化合物材料を含むものとすることができ、また、粒状、粉状又は繊維状の高分子化合物材料の一部が溶融されて繊維状炭素材料と接着されたものとすることができる。
【0024】
繊維状炭素材料以外の他の材料として、バインダー成分として寄与させる目的で、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料を含むことが好ましい。これにより、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の使用時における炭塵に起因するざらつきをより抑制することができる。上記合成樹脂としては、特に制限されないが、例えば、低融点ポリエステル、低融点ポリアミド、ポリオレフィン(例えばポリエチレン又はポリプロピレン)、アクリル系ラテックス等が挙げられ、ウェアラブルデバイス用布帛の成形性をより向上させる観点から、低融点ポリエステル及びアクリル系ラテックスが好ましい。なお、上記合成樹脂が融点を持たない場合は、軟化点を融点とする。また、本発明において、融点は、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC7)を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とする。
【0025】
融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料の形状としては、粒状又は繊維状とすることができる。中でも、繊維状とすることにより、繊維状炭素材料の表面が溶融した合成樹脂材料によって一層被覆されにくくなる。繊維状である上記合成樹脂を含む材料としては、融点が200℃以下の合成樹脂単一成分からなる全融型繊維、又は、鞘部が融点が200℃以下の合成樹脂により構成され、芯部が前記鞘部を構成する合成樹脂より融点が30℃以上高い合成樹脂により構成される、芯鞘型繊維、が挙げられ、当該芯鞘型繊維とすることがより好ましい。当該芯鞘型繊維としては、芯部が融点220~280℃、好ましくは230~280℃の合成樹脂により構成され、鞘部が融点80~180℃、好ましくは90~160℃の合成樹脂により構成されるものであることが好ましい。
【0026】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料以外の材料として、繊維状炭素材料以外の繊維(ただし、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料を除く。)を含むことができる。当該繊維としては、融点が200℃を越える高分子化合物からなる繊維が挙げられ、例えば、キュプラ繊維、ポリノジック繊維、レーヨン繊維等の再生繊維やアセテートなどの半合成繊維等のセルロース系繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維等のポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン系繊維、ナイロン66等のポリアミド系繊維、綿、麻等の天然由来繊維等が挙げられる。また、合成樹脂中に導電性微粒子を含有する導電部を有する合成繊維等も挙げられる。上記融点が200℃を越える高分子化合物からなる繊維の中でも、ウェアラブルデバイス用布帛の強度をより高める観点からは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、セルロース系繊維又は天然由来繊維を含むことが好ましい。
【0027】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、上記繊維状炭素材料以外の繊維(ただし、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料を除く。)として、パルプを含むことができる。これにより、ウェアラブルデバイス用布帛においてパルプが繊維状炭素材料を絡めやすくなり、炭塵に起因するざらつきの抑制をしやすくなる。パルプとしては、セルロース系パルプ、アクリル系パルプが挙げられる。また、パルプの繊維径は5~30μmであることが好ましく、5~25μmであることがより好ましい。また、パルプの濾水度としては、JIS P 8121-2:2012に準じて測定される濾水度が10~200mLであることが好ましい。
【0028】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛において、該布帛の質量に対する、繊維状炭素材料以外の繊維(融点が200℃を越える高分子化合物からなる繊維、融点が200℃以下の合成樹脂を含む繊維及びパルプを含む。)の含有割合としては、特に制限されないが、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の導電性能と、炭塵に起因するざらつきの抑制と、をより両立させる観点から、10~90質量%が挙げられ、30~70質量%が好ましく、40~60質量%がより好ましい。
【0029】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料以外の他の材料として、繊維状以外の炭素材料を含むことができる。繊維状以外の形態としては、例えば、粒状、粉末状、鱗片状、球状等が挙げられる。
【0030】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状以外の炭素材料として、粒状又は粉末状活性炭を含むものとすることができる。これにより、ウェアラブルデバイスを身に付けるユーザーから発生する臭気成分等の吸着性能をより向上させることができる。この場合、粒状又は粉末状活性炭の平均粒径(メジアン径)としては、特に制限されないが、例えば、ウェアラブルデバイス用布帛の製造時及び使用時における粉末状活性炭の脱落防止効果をより高める観点から、30~120μmが好ましい。また、この場合、ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する粒状及び粉末状活性炭の含有割合としては、10~40質量%が挙げられる。一方で、本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、ウェアラブルデバイス用布帛の導電性能をより一層優れたものとする観点から、粒状及び粉末状活性炭の含有割合を小さくすることが好ましく、例えば、ウェアラブルデバイス用布帛の質量に対する粒状及び粉末状活性炭の含有割合が5質量%以下とすることが挙げられ、粒状及び粉末状活性炭を含まないものとすることもできる。これは、粒状又は粉末状活性炭を含む場合、粒状又は粉末状活性炭同士の接触による接触抵抗が大きくなりやすいことによる。
【0031】
また、本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状以外の炭素材料として、粒状又は粉末状の導電性カーボンブラックを含むことができる。当該カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。当該カーボンブラックは、布帛中に均一に分散された状態で存在するものとしても良い。また、当該カーボンブラックの比表面積としては、500~2000m/gが挙げられる。
【0032】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛の形態としては、織物、編物及び不織布からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。
【0033】
上記布帛の形態が織物及び編物の場合は、例えば、原料繊維を用いて予め織物又は編物の形態として該織物又は編物を炭素化したり、例えばウェアラブルデバイス用布帛に含まれる炭素材料を活性炭とする場合は炭素化された織物又は編物をさらに賦活したり、又は、繊維状炭素材料を用いて製織又は製編したりすることにより得ることができる。
【0034】
上記織物及び編物の組織としては、特に制限されない。織物の場合、例えば、平織、綾織、朱子織、斜文織、三次元織等が挙げられる。また、編物の場合、例えば、緯編(平編、リブ編、両面編、パール編)、経編(トリコット編、ラッセル)等が挙げられる。
【0035】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛の形態が不織布の場合、当該不織布の種類としては特に制限されない。例えば、乾式法により得られる不織布、湿式法により得られる不織布、原料繊維を用いて直接紡糸法により得られる不織布を炭素化したもの等が挙げられる。乾式法により得られる不織布としては、例えば、エアレイド又はカード法(カードウェブ法)により得られる短繊維構造体による不織布及び当該不織布をニードルパンチ加工を施して積層一体化したニードルパンチ不織布が挙げられる。湿式法により得られる不織布としては、繊維状炭素材料を含む溶液を、パルパー、ビーター、リファイナーなどの装置を用いて混合、せん断し、均一に分散したスラリーを作製し、得られたスラリーをワイヤー上に流し、脱水、乾燥して得られる、湿式抄紙不織布が挙げられる。直接紡糸法により得られる不織布としては、原料繊維を用いてメルトブローン法又はスパンボンド法により得られる不織布を、炭素化して得られるものが挙げられる。
【0036】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛の、1mあたりの質量としては、特に制限されないが、例えば、20g/m以上であることが好ましく挙げられ、30~250g/mがより好ましく挙げられる。また、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の厚さとしては、特に制限されないが、0.2~3.0mmが挙げられ、導電性能とウェアラブルデバイスの薄型化とをより両立させる観点から、0.2~1.5mmが好ましく、0.3~0.5mmがより好ましい。なお、本発明において、ウェアラブルデバイス用布帛の1mあたりの質量は、JIS L 1913:2010 6.2に準じて、布帛の単位面積当たりの質量(g/m)を坪量する。また、本発明において、ウェアラブルデバイス用布帛の厚さは、当該布帛を10cm×15cmmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、該サンプルの四隅において厚み測定器(株式会社ミツトヨ製商品名ダイヤルシックネスゲージ)を用いて、該布帛の厚さを測定し、得られた四隅の厚さの測定値4点の平均値をシートの厚さ(mm)とする。
【0037】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛の見かけ密度(g/cm、=ウェアラブルデバイス用布帛1mあたりの質量(g/m)/ウェアラブルデバイス用布帛厚さ(mm)×1000-1)としては、0.05~0.25g/cmが好ましい。また、本発明のウェアラブルデバイス用布帛の下記式(2)で計算される繊維状炭素材料の分布密度(g/cm)としては、0.02~0.20g/cmが好ましく、0.03~0.20g/cmがより好ましく、0.03~0.12g/cmが特に好ましい。
繊維状炭素材料の分布密度(g/cm)=ウェアラブルデバイス用布帛1mあたりに含まれる繊維状炭素材料の質量(g/m)/ウェアラブルデバイス用布帛厚さ(mm)×1000-1 ・・・式(2)
【0038】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料を含むことから、導電性能を示しつつ、汗等に対する耐食性に優れる。本発明のウェアラブルデバイス用布帛が有する導電性能の好適な例として、以下の方法で求められる体積抵抗率が、100Ω・cm以下であるものが挙げられ、好ましくは50Ω・cm以下、より好ましくは10Ω・cm以下が挙げられる。
【0039】
<本発明のウェアラブルデバイス用布帛の体積抵抗率の測定・算出方法>
抵抗値の測定機として株式会社マザーツール社製のカード型マルチメータMT-4050を用い、ウェアラブルデバイス用布帛を縦5mm、横150mmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、当該測定サンプルの縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の一方の端から5mmの部分と、縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の他方の端から5mmの部分とに、それぞれ上記測定機付属のテストリードを接続し、モードつまみを抵抗測定(Ω)に合わせ、そのときの抵抗値(kΩ)を測定する。そして、得られた抵抗値を用い、下記式(3)により体積抵抗率(Ω・cm)を算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)
=抵抗値(kΩ)×50×布帛厚さ(mm)/15 ・・・式(3)
【0040】
本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料を含むことから、導電性能を示しつつ、汗等に対する耐食性に優れる。ウェアラブルデバイス用布帛が適用されるウェアラブルデバイスとしては特に制限されないが、例えば、本発明のウェアラブルデバイス用布帛が、当該ウェアラブルデバイス用布帛のユーザーの皮膚に接触又は密着するように配置されている、ウェアラブルデバイスが挙げられる。具体的には、本発明のウェアラブルデバイス用布帛が当該ウェアラブルデバイス用布帛のユーザーの生体情報センサーとして用いられるウェアラブルデバイス、本発明のウェアラブルデバイス用布帛が衣服圧や足裏の圧力等を測定するセンサーとして用いられるウェアラブルデバイスが挙げられる。また、本発明のウェアラブルデバイス用布帛は、炭素材料が繊維状であるため、屈曲性にも優れたものとすることができる。従って、例えば、本発明のウェアラブルデバイス用布帛が、屈曲性を有するウェアラブルデバイスの配線部として用いられる、ウェアラブルデバイスとすることもできる。さらに、ウェアラブルデバイスとして、本発明のウェアラブルデバイス用布帛がキャパシタ電極として用いられるものを除くものとすることもできる。
【実施例
【0041】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0042】
(実施例1)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-10)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略することがある。)、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)=43/57の割合となるようにして、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、1mあたりの質量45g/m、厚さ0.38mmのウェアラブルデバイス用布帛である乾式不織布を作製した。
【0043】
(実施例2)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)=58/42の割合となるように供給して、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、1mあたりの質量58g/m、厚さ0.45mmのウェアラブルデバイス用布帛である乾式不織布を作製した。
【0044】
(実施例3)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)=58/42の割合となるように供給して、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、1mあたりの質量56g/m、厚さ0.32mmのウェアラブルデバイス用布帛である乾式不織布を作製した。
【0045】
(実施例4)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-10)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)、融点が200℃を越える繊維であるPET繊維、及びパルプ(日本エクスラン株式会社製、品名;Bi-PUL)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)/(PET繊維)/(パルプ)=60/30/7/3の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥しつつ上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量68g/m、厚さ0.60mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0046】
(実施例5)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)、及びパルプ(日本エクスラン株式会社製、品名;Bi-PUL)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)/(パルプ)=87/10/3の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥しつつ上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量83g/m、厚さ0.87mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0047】
(実施例6)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-10)と、繊維状炭素材料以外の材料として、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=40/60の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量60g/m、厚さ0.31mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0048】
(実施例7)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7)と、繊維状炭素材料である炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製、品名;ドナカーボS-232、繊維径13μm、繊維長5.5mm)と、繊維状炭素材料以外の材料として、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(炭素繊維)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=20/20/60の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量55g/m、厚さ0.25mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0049】
(実施例8)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7)と、繊維状炭素材料である炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製、品名;ドナカーボS-232、繊維径13μm、繊維長5.5mm)と、繊維状炭素材料以外の材料として、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(炭素繊維)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=30/10/60の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量63g/m、厚さ0.25mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0050】
(実施例9)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7)と、繊維状炭素材料以外の材料として、粉末状のケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、品名;カーボンECP)と、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(ケッチェンブラック)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=30/10/60の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量65g/m、厚さ0.24mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0051】
(実施例10)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7)と、繊維状炭素材料以外の材料として、粉末状のケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、品名;カーボンECP)と、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(ケッチェンブラック)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=20/20/60の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量62g/m、厚さ0.21mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0052】
(実施例11)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)=87/13の割合となるようにして、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、1mあたりの質量86g/m、厚さ0.75mmのウェアラブルデバイス用布帛である乾式不織布を作製した。
【0053】
(実施例12)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)=82/18の割合となるようにして、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、1mあたりの質量130g/m、厚さ1.50mmのウェアラブルデバイス用布帛である乾式不織布を作製した。
【0054】
(実施例13)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂を含む材料である芯鞘型繊維(ユニチカ株式会社製、品名;メルティ4080、芯部PET、鞘部融点110℃の低融点ポリエステルである芯鞘型繊維)とを、質量比が(繊維状活性炭)/(芯鞘型繊維)=82/18の割合となるようにして、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、1mあたりの質量184g/m、厚さ1.98mmのウェアラブルデバイス用布帛である乾式不織布を作製した。
【0055】
(実施例14)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=60/40の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量53g/m、厚さ0.32mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0056】
(実施例15)
繊維状炭素材料である繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-15)と、繊維状炭素材料以外の材料として、アクリル系ラテックス、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維及びポリオレフィン系繊維を、質量比が、(繊維状活性炭)/(アクリル系ラテックス)/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=87/5/8の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量69g/m、厚さ0.67mmのウェアラブルデバイス用布帛である湿式不織布を作製した。
【0057】
(比較例1)
粉末状活性炭(大阪ガスケミカル社製、品名;HG17-067)、アクリル系ラテックス、PET繊維、木質パルプ、及びポリオレフィン系繊維を、質量比が(粉末状活性炭)/(アクリル系ラテックス)/(PET繊維)/(木質パルプ)/(ポリオレフィン繊維)=70/5/8/11/6の割合となるようにして、パルパーを用いて混合し、均一に分散したスラリーを作製した。得られたスラリーを所定の流量でワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法による1mあたりの質量102g/m、厚さ0.32mmの布帛である湿式不織布を作製した。
【0058】
評価方法
各実施例及び比較例につき、以下の方法により評価をおこなった。
【0059】
<繊維状炭素材料の比表面積>
窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定した。
【0060】
<繊維状炭素材料の強度>
JIS K 1477:2007 7.3.2に準じて測定して算出した。
【0061】
<繊維状炭素材料のミクロ細孔容積率>
Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなった。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出した。そして、上記QSDFT法で測定、算出された全細孔容積と、上記QSDFT法で測定、算出された直径2nm以下の細孔容積から、以下の式によりミクロ細孔容積率を求めた。
ミクロ細孔容積率(%)
=(直径2nm以下の細孔容積)/(全細孔容積)×100(%)
【0062】
<繊維状炭素材料の繊維径>
繊維状活性炭の繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡によって測定して算出した。
【0063】
<ウェアラブルデバイス用布帛の1mあたりの質量>
JIS L 1913:2010 6.2に準じて、布帛の単位面積当たりの質量(g/m)を秤量した。
【0064】
<ウェアラブルデバイス用布帛の厚さ>
ウェアラブルデバイス用布帛を10cm×15cmmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、該サンプルの四隅において厚み測定器(株式会社ミツトヨ製ダイヤルシックネスゲージ)を用いて、該布帛の厚さを測定し、得られた四隅の厚さの測定値4点の平均値をシートの厚さ(mm)とした。
【0065】
<ウェアラブルデバイス用布帛の見かけ密度>
上記ウェアラブルデバイス用布帛の1mあたりの質量の値及びウェアラブルデバイス用布帛の厚さの値を用い、下記式により算出した。
ウェアラブルデバイス用布帛の見かけ密度(g/cm
=ウェアラブルデバイス用布帛1mあたりの質量(g/m)/ウェアラブルデバイス用布帛厚さ(mm)×1000-1
【0066】
<ウェアラブルデバイス用布帛における繊維状炭素材料の分布密度>
ウェアラブルデバイス用布帛1mあたりに含まれる繊維状炭素材料の質量(g/m)及び上記ウェアラブルデバイス用布帛の厚さの値から、下記式により算出した。
繊維状炭素材料の分布密度(g/cm)=ウェアラブルデバイス用布帛1mあたりに含まれる繊維状炭素材料の質量(g/m)/ウェアラブルデバイス用布帛厚さ(mm)×1000-1
【0067】
<ウェアラブルデバイス用布帛の抵抗値及び体積抵抗率>
抵抗値の測定機として株式会社マザーツール社製のカード型マルチメータMT-4050を用い、ウェアラブルデバイス用布帛を縦5mm、横150mmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、当該測定サンプルの縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の一方の端から5mmの部分と、縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の他方の端から5mmの部分とに、それぞれ上記測定機付属のテストリードを接続し、モードつまみを抵抗測定(Ω)に合わせ、抵抗値(kΩ)を測定した。そして、得られた抵抗値を用い、下記式により体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。体積抵抗率が100Ω・cm以下のものを導電性能があるとして合格とした。
体積抵抗率(Ω・cm)
=抵抗値(kΩ)×50×布帛厚さ(mm)/15
【0068】
<ウェアラブルデバイス用布帛の使用時における炭塵に起因するざらつきの官能評価>
上記官能評価は、得られた布帛を水平な台の上に展張し、10人のパネラーにより、手で触ったときの炭塵に起因するざらつき感を官能評価した。「炭塵に起因するざらつき感がある」「炭塵に起因するざらつき感がほとんど感じられない」の2段階で評価し、10人中9人以上が「炭塵に起因するざらつき感がほとんど感じられない」と評価した場合は○、10人中4~8人が「炭塵に起因するざらつき感がほとんど感じられない」と評価した場合は△、10人中0~3人が「炭塵に起因するざらつき感がほとんど感じられない」と評価した場合は×とした。△以上を「炭塵に起因するざらつき感がほとんど感じられない」として合格とした。
【0069】
前記ウェアラブルデバイス用布帛の抵抗値及び体積抵抗率を評価した結果を表1に示す。また、表1には、使用した繊維状炭素材料の物性、ウェアラブルデバイス用布帛の他の物性等についても併せて示す。
【0070】
【表1】
【0071】
実施例1~15のウェアラブルデバイス用布帛は、繊維状炭素材料を含むことから、導電性能を示し、汗等に対する耐食性に優れるものであった。
【0072】
中でも、実施例1、2及び3とを比較すると、実施例1及び2は、繊維状炭素材料の比表面積が1000~2000m/gであったことから、実施例3と比較して導電性能により優れたものであった。
【0073】
一方、比較例1は、繊維状炭素材料を含まないものであったことから、導電性能に劣るものであった。