(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】歩行補助器
(51)【国際特許分類】
A61H 3/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A61H3/00 A
(21)【出願番号】P 2020179335
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502020168
【氏名又は名称】ユーバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】長竹 善弘
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-92881(JP,A)
【文献】特開2008-183228(JP,A)
【文献】中国実用新案第211750863(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に離間配置される一対の側枠と、これら側枠の前部を回転可能に連結して前記側枠を開閉可能にする前枠を備え、
前記側枠と前記前枠との間に斜めに橋渡しされる連結杆を備えた歩行補助器であって、
前記連結杆
の両端がそれぞれ前記側枠と前記前枠に対して相対回転可能に枢支されるとともに、前記連結杆の両端のうちの少なくとも一端が、前記側枠または前記前枠に対して、前記側枠を開いた状態での位置決めが可能なスライダを介してスライド可能に保持され、
前記連結杆には、前記連結杆自体の長さを調節して前記側枠の開き角度を変更する長さ調節機構を備えた
歩行補助器。
【請求項2】
前記長さ調節機構がターンバックル胴を備えたターンバックルで構成された
請求項1に記載の歩行補助器。
【請求項3】
前記ターンバックル胴における長手方向両端のねじ部の間に設けられた長手方向と直交する方向に貫通する空洞部に、前記ターンバックル胴の前記ねじ部に螺合するターンバックルボルトが遊嵌する貫通穴を有した筒状の補助部材を備えた
請求項2に記載の歩行補助器。
【請求項4】
前記補助部材の外周面の一部が前記ターンバックル胴の前記空洞部から突出している
請求項3に記載の歩行補助器。
【請求項5】
前記前枠が一対の左前枠と右前枠で構成されるとともに、上下方向に離間配置されたテレスコピック機構からなる複数本の横杆を有し、
前記横杆の前記テレスコピック機構を構成する大径部分の端部に、前記横杆同士の間に選択的に突っ張る突っ張り手段が設けられ、
前記横杆における前記突っ張り手段で突っ張られる相対向面における前記大径部分の端部に、前記大径部分の内側に収まり前記突っ張り手段で押圧される小径部分を露出させる切欠き部が形成された
請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の歩行補助器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば病人や身体障がい者、歩行困難者などの使用者が進退を支えて歩行等の助けにする歩行補助器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような歩行補助器として、身体の左右両側と前を枠で囲む形態のものがある。このタイプの歩行補助器として、下記特許文献1に開示されているものを案出した。
【0003】
特許文献1の歩行補助器は、左右に離間配置される一対の側枠と、これらの前部を回転可能に連結する前枠を備え、側枠と前枠との間に斜めに橋渡しされる連結杆を備えて折りたたみ可能に構成されている。側枠の脚部は長さ調節可能であり、前枠の長さ、つまり歩行補助器の幅も変更可能である。このように歩行補助器は使用者の体格に応じて形態を変更できる構成である。
【0004】
また、連結杆について、その両端は側枠と前枠に対して相対回転可能に枢支されるとともに、連結杆における側枠に連結される一端はスライダを介してスライド可能に保持される。またスライダには、側枠を開いた状態で連結杆との相対位置を固定するロック手段が設けられる。
【0005】
このような構成であるので、連結杆の側枠に対する枢支位置を、側枠の前端から後方側に離すことができ、荷重のかかる部位を分散させ、安定性を高められる。このため、特に使用者が長身である場合に、歩行補助器の高さを高くしても、がたつきのない安定した使用を可能にでき、使用者の体格に合わせて形態を変更できる機能を有意なものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、連結杆は1本の棒部材からなり、長さが決まっている。またロック手段による位置固定は1カ所に設定されている。このため、側枠の開き角度を変更することはできない。
【0008】
そこでこの発明は、使用者の体格の違いはもちろん身体の状態に応じても最適な使用形態を得られるように形態変更機能をさらに向上できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのための手段は、左右に離間配置される一対の側枠と、これら側枠の前部を回転可能に連結して前記側枠を開閉可能にする前枠を備え、前記側枠と前記前枠との間に斜めに橋渡しされる連結杆を備えた歩行補助器であって、前記連結杆に長さ調節機構を備えた歩行補助器である。
【0010】
この構成では、側枠と前枠との間に斜めに橋渡しされる連結杆の長さが長さ調節手段によって変更されることで、側枠の開き角度を使用者の体格等に合わせられる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、連結杆の長さを調節して側枠の開きを変更する長さ調節機構を備えたので、体格等に応じての形態変更機能をさらに向上できる。
【0012】
しかも、連結杆自体の長さを変更するので、変形前後における連結杆とその両端部の態様に変化を生じさせないようにできる。このため、例えば連結杆の端が飛び出て邪魔になるなどの不都合はなく、体格等の違いにかかわらず良好な使用状態を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】連結杆の両端部分とその取付け部分を示す断面図。
【
図7】横杆における突っ張り手段を備える部位を裏面から見た状態を示す背面図。
【
図8】横杆における突っ張り手段を備える部位を裏面から見た状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0015】
図1に歩行補助器11の斜視図を示す。この歩行補助器11は使用者の左右両側と前を囲む形態であり、使用者が左右の上端を手で握って身体を支えて使用するものである。
【0016】
まず、歩行補助器11の概略構造を説明する。
【0017】
歩行補助器11は、左右に離間配置される一対の側枠13と、これら側枠13の前部を連結する前枠15を備えている。前枠15は側枠13の上下方向の中間部に設けられる。側枠13と前枠15は基本的にアルミ等の軽量の金属パイプで構成されている。
【0018】
側枠13は使用時において前後に配置される2本の伸縮可能な脚部31,32を有し、脚部31.32の上端はハンドル杆33で連結されている。一対の脚部31,32は、下方が開くように若干傾斜している。これら一対の脚部31,32における長手方向の中間部には、脚部31,32同士を連結して脚部31,32の間隔を保持する間隔保持部34が設けられている。
【0019】
ハンドル杆33を有する脚部31,32の上端部は、一対の側枠13が相対向する方向に若干傾斜している。ハンドル杆33には、手に対する接触を和らげる弾性と柔軟性と防滑性を兼ね備えたグリップ35が一体形成されている。
【0020】
前枠15は、上下方向に離間配置された複数本、具体的には2本の横杆51,52を有しており、これら横杆51,52は長手方向に伸縮可能である。すなわち、前枠15は一対の左前枠15aと右前枠15bで構成されており、横杆51,52はテレスコピック機構で構成されている。
【0021】
使用者にとって左側に位置するものを左前枠15aとし、右側に位置するものを右前枠15bとする。左前枠15aの横杆51,52がテレスコピック機構を構成する大径部分51a,52aであり、右前枠15bの横杆51,52がテレスコピック機構を構成する小径部分51b,52bである。
【0022】
前枠15の平面視形状は、
図2にも示したように、長手方向の中間部を前方へせり出した形状であり、中間部で直線状をなす直線部51c,52cと、両側部で直線部51c,52cに対して斜めに傾く傾斜部51d,52dを有している。
【0023】
なお、
図2は歩行補助器11の平面図であるが、平面上に置いた歩行補助器11をまっすぐ上から見た状態ではなく、2本の横杆51,52が重なり合う角度で見た状態を示している。
【0024】
2本の横杆51,52のうち上側に位置する一方の横杆51は断面円形であり、下側に位置する他方の横杆52の断面形状は上下方向に長い長円形である。
【0025】
前枠15の長手方向の両端、すなわち左前枠15aと右前枠15bの傾斜部51d,52dの端には、側枠13の前側の脚部31を回転可能に保持する保持筒部53が形成されている。保持筒部53は、直線部51c,52cの長手方向に対して交差する上下方向に延びるものである。前述のように側枠13の脚部31,32に前後方向の傾きをつけ、一対の側枠13に下部が若干開く方向の傾きをつけているため、保持筒部53には、直線部51c,52cの長手方向に対して適宜の傾斜が付されている。
【0026】
2本の横杆51,52の大径部分51a,52a、つまり左前枠15aの横杆51,52同士は、横杆51,52と直交する方向に延びる金属パイプ製の縦杆54で一体に結合されている。この縦杆54のほか、前枠15は、横杆51,52を保持するとともに横杆51,52同士の間に選択的に突っ張ってそれらの間隔を矯正する突っ張り手段55を備えている。
【0027】
概略構造が以上のとおりである歩行補助器11は、側枠13の脚部31,32の長さを変更することで高さを調節でき、前枠15の長さを変更することで左右方向の幅を調節できる。これらの調節機構に加えて、側枠13を前枠15の保持筒部53で保持することによって、左右の側枠13を前枠15に重ね合わせるように折りたたみが可能であるうえに、
図2に仮想線で示したように、使用時における側枠13の開き角度の調節もできる。
【0028】
つぎに、各部の詳細について説明する。
【0029】
側枠13における伸縮可能な脚部31,32は内筒部36と外筒部37からなるテレスコピック機構で構成されている。脚部31,32の長さを固定する構造は、内筒部36に内蔵された板ばね(図示せず)と、板ばねの端部に備えられ外筒部37に向けて付勢された突起(図示せずと)と、外筒部37に形成された位置調節穴37aで構成される。位置調節穴37aは外筒部37の周面における内側の面、つまり一対の脚部31,32の相対向する面に長手方向に沿って複数形成されている。
【0030】
側枠13の上端部には、グリップ35の下方に位置するハンドル下枠38が設けられている。ハンドル下枠38は金属パイプで構成され、水平に延びる横棒部38aと、横棒部38aの先端から上に延びる縦棒部38bを有している。横棒部38aの基端は、後側に位置する脚部32に結合一体化され、縦棒部38bの上端はハンドル杆33のグリップ35よりも前に対して下から結合一体化されている。
【0031】
前枠15は、
図3に示したような前述の左前枠15aと右前枠15bで構成されている。テレスコピック機構で構成される2本の横杆51,52における左前枠15aの部分は大径部分51a,52aであり、右前枠15bの部分である小径部分51b,52bが挿入される。
【0032】
前枠15の保持筒部53に回転可能に保持された一対の側枠13は、前枠15に対して略直角に開いて相対向する使用時の形態を保持しつつ、折りたたみを許容するため、側枠13と前枠15との間に斜めに橋渡しされる連結杆71を備えている。
【0033】
連結杆71の両端は、側枠13と前枠15に対して相対回転可能に枢支される。また連結杆71の少なくとも一端は、側枠13又は前枠15に対してスライダ72を介してスライド可能に保持され、スライダ72には、側枠13を開いた状態で連結杆71との相対位置を固定するロック手段73が設けられている。
【0034】
図示例では、連結杆71の一端を側枠13に設けられたスライダ72に枢支し、他端を前枠15に設けられた固定部74に枢支している。
【0035】
また連結杆71には長さ調節機構71aが備えられている。
【0036】
図4に、連結杆71、スライダ72、ロック手段73及び固定部74の構造を、
図5に長さ調節機構71aの構造を示す。
【0037】
連結杆71は、
図4に示したように基本的に直線状をなす棒状であり、その長手方向の一端に、スライダ72に対して枢支されるスライダ側枢支部71bが適宜角度に折り曲げて形成されている。連結杆71の他端には、固定部74に対して枢支される固定部側枢支部71cが適宜角度に折り曲げて形成されている。スライダ側枢支部71bと固定部側枢支部71cは、おおよそ相反する方向に延びている。
【0038】
スライダ72は、ハンドル下枠38の横棒部38aにスライド可能に設けられ、固定部74は、前枠15、具体的には左前枠15aと右前枠15bにおける上側に位置する一方の横杆51の傾斜部51dに設けられている。
【0039】
横棒部38aに備えられるスライダ72は、横棒部38aの長手方向に沿ってスライド可能である。すなわち、横棒部38aに被さる逆U字形状のスライド保持部材75と、スライド保持部材75の下端部であって横棒部38aよりも下に位置する垂下片部75aに枢着されるレバー部材76を備えている。
【0040】
スライド保持部材75は、内面における横棒部38aの下部に相当する部位に、内方に張り出すガイド突起(図示せず)を有しており、横棒部38aの表面での安定した移動を可能にしている。一対の垂下片部75aには枢着穴が形成されており、この枢着穴に軸部材77を通して垂下片部75a間に前述のレバー部材76が枢着される。
【0041】
レバー部材76は、軸部材77が挿通される支点作用部76aと、支点作用部76aから後方に延びる力点部76bを有している。支点作用部76aは、左右一対の起立壁78を有しており、これら起立壁78aに軸部材77が挿通される。起立壁78の下端同士は、基板部79で連結されている。
【0042】
支点作用部76aの基板部79における軸部材77位置よりも前方には、連結杆71のスライダ側枢支部71bを挿通する長穴80が形成されている。
【0043】
レバー部材76の内側には、金属製の補強部材81が内蔵されている。補強部材81は、レバー部材76の相似形のような形状であり、レバー部材76と同様に支点作用部と力点部を有している。補強部材81はレバー部材76の内側に嵌め込まれるとともに、軸部材77で枢着することによってレバー部材76と一体化する。
【0044】
補強部材81の支点作用部における基板部82の、レバー部材76の長穴80に対応する部位には、貫通した操作穴83が形成されている。操作穴83は、レバー部材76の長穴80と同じ幅で円形をなす幅広部83aと、幅広部83aよりも幅狭の幅狭部83bを、前方から順に連通状態で有している。
【0045】
幅広部83aの幅は、断面円形をなす前述した連結杆71のスライダ側枢支部71bの断面形状が嵌合対応する大きさである。幅狭部83bは、連結杆71のスライダ側枢支部71bに形成された小径部84が嵌合対応する大きさである。小径部84は、スライダ側枢支部71bの長手方向の中間部に補強部材81の基板部82の厚さよりも厚い適宜長さにわたって他の部位よりも細く形成された部位である。小径部84を有するため、小径部84の上端と下端には、段差部が形成されることになる。
【0046】
ハンドル下枠38の横棒部38aの下面には、連結杆71の側枠13側の端であるスライダ側枢支部71bが下から刺さって嵌る嵌合穴85が形成されている。嵌合穴85は、連結杆71の横断面形状に嵌合する大きさである。嵌合穴85の形成位置は、連結杆71の長さ調節機構71aを縮めた状態で左右の側枠13を直角に開いて相対向させ、スライダ側枢支部71bの軸心を幅広部83aの中心に位置させたときに、スライダ72に保持されたスライダ側枢支部71bに対応する位置である。
【0047】
レバー部材76を枢支する軸部材77の周囲には、ばね部材86が保持されている。ばね部材86は、補強部材81とレバー部材76を前方が上に上がる方向に付勢している。レバー部材76内のばね部材86は、ハンドル下枠38の横棒部38aとは非接触であり、スライダ72のスライド動作に支障はないように保持される。
【0048】
連結杆71の固定部側枢支部71cが枢支される固定部74は、断面形状が円形の横杆51の傾斜部51dに嵌められる断面C字状の本体部74aと、本体部74aの両端に形成された突片74bを有している。一対の突片74bは平面視三角形状であり、突片74b間には、横杆51に対する相対回転不可の遊びのない強固な固定を行わせるため、スペーサ74cが保持されている。突片74bとスペーサ74cには貫通穴74dが形成され、貫通穴74dには、連結杆71の固定部側枢支部71cを回転可能に挿通保持する金属パイプからなる介装部材87が内蔵される。介装部材87の長さは、貫通穴74dの長さよりもわずかに長く設定されている。
【0049】
連結杆71の固定部側枢支部71cには、雄ねじ88が形成されており、雄ねじ88には介装部材87を挟むようにナット89が螺合されて、固定部74に対する固定部側枢支部71cの回転可能な固定がなされる。
【0050】
連結杆71はスライダ側枢支部71bと固定部側枢支部71cの間に前述の長さ調節機構71aを有するが、この長さ調節機構71aは、所望の長さに確定した固定ができる機構であるのが望ましい。ここで、「確定した固定」とは、例えば互いに摺動し得るように組み合わせた部材同士の位置関係をねじ等の締め付け力で固定するのではなく、使用者が体重をかけても不測の位置ずれが生じない係止や嵌合によって固定することである。長さは、連続的に調節するものでも、段階的に調節するものでもよい。このような長さ調節機構71aとしては、例えばねじ送りによるもの、前述したテレスコピック機構と突起の係脱によるものなどがある。
【0051】
図示例の歩行補助器11では、連結杆71の長さ調節機構71aをターンバックル91で構成している。すなわち、
図5に示したように、長さ調節機構71aはターンバックル胴92と、2本のターンバックルボルト93,94を有している。
【0052】
ターンバックル胴92は長手方向の両端に雌ねじからなるねじ部92a,92bを有し、一方のねじ部92aは右ねじ、他方のねじ部92bは左ねじである。2本のターンバックルボルト93,94のうち一方のターンバックルボルト93の雄ねじ93aを有する部分と反対側には、前述したスライダ側枢支部71bが形成されている。また他方のターンバックルボルト94の雄ねじ94aを有する部分と反対側には、前述した固定部側枢支部71cが形成されている。
【0053】
またターンバックル胴92は、長手方向両端のねじ部92a,92bの間に、長手方向と直交する方向に貫通する空洞部92cを有しており、この空洞部92cには、空洞部92cに嵌る大きさの棒状をなす補助部材95が備えられる。補助部材95は筒状であり、中心にはターンバックルボルト93,94が遊嵌する貫通穴95aを有している。
【0054】
補助部材95は合成樹脂製であり、
図5のA-A断面図である
図6に示したように、断面形状は空洞部92cの開口から突出する方向のほうが長い略長円形である。しかも、補助部材95の外周面の一部である断面略長円形の長軸に対応する両側の面は、ターンバックル胴92の空洞部92cから突出している。つまり補助部材95の外周面における空洞部92cの開口に対応する部位に突出面95bが形成されている。
【0055】
この補助部材95はターンバックルボルト93,94の雄ねじ93a,94aを隠すものであるとともに、ターンバックル胴92を回転して長さ調節する際の手の対する接触を和らげる。このため、補助部材95の突出面95bには、図示しないが補助部材95の長手方向に延びる凹溝を形成して滑り止め機能をもたせてもよい。
【0056】
またターンバックルボルト93,94の雄ねじ93a,94aにおけるターンバックル胴92より外側の位置には、止め部材96が保持されている。止め部材96はナットで構成され、ターンバックル胴92を回転して所望の長さにした長さ調節機構71aにおいて、ターンバックル胴92の両端に接してターンバックル胴92の回転を阻止するものである。
【0057】
前枠15の長さ変更ための構成は、前述したようにテレスコピック機構からなり、2本の横杆51,52は左前枠15aの大径部分51a,52aと右前枠15bの小径部分51b,52bで構成されている。長さは段階的に調節可能な構成であり、裏面側、つまり使用者が正対する方向から見た
図7に示したように、上側に位置する一方の横杆51における小径部分51bの外周面における裏面側には、内蔵された板ばね56によって付勢される係止突起57が保持されている。小径部分51bの長手方向における係止突起57の位置は適宜設定される。
【0058】
この小径部分51bが嵌る大径部分51aには、係止突起57が係止する複数の位置調節穴58が大径部分51aの長手方向に沿って配設されている。
【0059】
一方の横杆51と他方の横杆52における大径部分51a,52aの先端部には、
図7に仮想線で示したように前述した突っ張り手段55が備えられる。
【0060】
突っ張り手段55が固定される上下に配設された一方の横杆51の大径部分51aと他方の横杆52の大径部分52aは、それぞれの先端が切り揃えられた形状ではなく、
図7や、表面側を示す
図8に示したように、異形である。すなわち、横杆51,52における突っ張り手段55で突っ張られる相対向面における大径部分51a,52aの端部に、大径部分51a,52aの内側に収まり突っ張り手段55で押圧される小径部分51b,52bを露出させる切欠き部59が形成されている。
【0061】
切欠き部59は、上側に位置する一方の横杆51の大径部分51aにおいてはその下側に形成され、下側に位置する他方の横杆52の大径部分52aにおいてはその上側に形成されている。切欠き部59は、断面半円弧状の部分に形成するとよく、その長さは、押圧を行う部材の大きさを考慮して設定される。切欠き部59を有することにより、切欠き部59より上側又は下側には、突出部60が形成されることになる。
【0062】
突っ張り手段55は、
図9の(a)に示したように、上側に位置する大径部分51aに嵌合する短筒状の上側嵌合部61と、下側に位置する大径部分52aに嵌合する短筒状の下側嵌合部62と、これらを連結する連結部63を有している。
【0063】
突っ張り手段55の下側嵌合部62と、これが嵌る他方の横杆52との間には、
図10に示したように、横杆52の小径部分52bが大径部分52aから抜けるのを防止するための抜け止める防止構造が形成されている。すなわち、下側嵌合部62の背面から横杆52に対して、抜け止めのためのねじ部材64が螺合されている。ねじ部材64の長さは、ねじ部材64の頭を下側嵌合部62の表面と面一にしたときに、大径部分52aを超えて小径部分52bまで達する長さである。
【0064】
ねじ部材64にはタッピングねじが用いられ、大径部分52aには、ねじ部材64が螺合している。一方、小径部分52bには、
図7に示したように、ねじ部材64の先端との干渉を防ぐ凹溝65が、小径部分52bの長手方向に沿って形成されている。
【0065】
凹溝65の幅は、ねじ部材64よりも幅広であり、ねじ部材64は、非矯正時において凹溝65の幅方向の下方に位置するように設けられている。これは、横杆51,52同士の間に突っ張る突っ張り手段55を機能させるためである。
【0066】
すなわち、突っ張り手段55の上側嵌合部61と下側嵌合部62は、
図9に示したように、先端側部66と基端側部67を有している。先端側部66は、大径部分51a,52aの先端、具体的には突出部60の先に位置して小径部分51b,52bが嵌る内筒嵌合面61a,62aを有している。基端側部67は、先端側部66との間に間隔を設けて形成され、大径部分51a,52aの切欠き部59より基端側部分が嵌るとともに大径部分51a,52aを一対の横杆51,52の相反する方向に若干移動可能にする長穴面61b,62bを有している。
【0067】
上側嵌合部61における先端側部66と基端側部67の間には、回動可能なレバー68が設けられる。レバー68は、一方の横杆51に挿嵌される回動軸筒68aと、回動軸筒68aの周面から回動軸筒68aの長手方向と直交する方向に延びる平行な2本のレバー片68bと、レバー片68b同士を連結する覆い部68cを有している。
【0068】
下側嵌合部62における先端側部66と基端側部67の間には、作用部材69が設けられる。作用部材69は、他方の横杆52に挿嵌される保持筒69aと、保持筒69aの周面から上側嵌合部61に向けて突出して、前述したレバー68における2本のレバー片68bと同一平面上に並ぶ2枚の突片69bを有している。保持筒69aの大きさは、大径部分52aに嵌合対応する大きさである。
【0069】
レバー片68b間と突片69b間には、リンク部材70が相対回転可能に枢支されている。リンク部材70の長さやその両端の枢支位置などは、
図9の(a)、(b)に示したような非矯正状態から、
図11の(a)、(b)に示した矯正状態とした際に、一対の横杆51,52を相反する方向に付勢して若干押し広げることができるように設定されている。非矯正状態は、レバー68を引き起こして、横杆51,52の中心線位置を内筒嵌合面61a,62aを有する部分の中心線位置に一致させた状態である。矯正状態は、レバー68を傾倒させて覆い部68cで先端側部66と基端側部67の間の空間を閉じた状態である。非矯正状態から矯正状態に移行することによって、突っ張り手段55は、その長穴面61bを横杆51に、長穴面62bを横杆52に対して押し当てて、一対の横杆51,52の間で突っ張る。この突っ張りによって、前枠15に張りを与えてがたつきを防止する。
【0070】
なお、
図9、
図11の(a)は正面図であり、(b)はその側面図である。
【0071】
以上のように構成された歩行補助器11は、次のように使用される。
【0072】
歩行補助器11を折りたたみ状態から側枠13を開いた使用形態に変形するには、側枠13を前枠15から離す方向に回動する。側枠13の回転に伴って連結杆71と固定部74及びスライダ72との間で相対回転しながら、スライダ72はハンドル下枠38の横棒部38aを前方に移動する。連結杆71のスライダ側枢支部71bが横棒部38aの嵌合穴85に対応する位置に移動すると、ロック手段73のばね部材86の付勢力によりスライダ側枢支部71bが嵌合穴85に嵌合して位置固定される。
【0073】
このときの側枠13の開き角度は、連結杆71の長さによって決まる。つまり、長さ調節機構71aによって連結杆71の長さを長くしていると、側枠13の開き角度は大きくなる。
【0074】
側枠13の角度の調節は、側枠13を開いた状態で行える。具体的には、止め部材96をターンバックル胴92から離してターンバックル胴92を回転する。所望の長さにしたのち、止め部材96をターンバックル胴92の端面に押し付ける。
【0075】
ターンバックル91を用いているので、長さ調節は無段階で連続的に行えるうえに、操作が容易である。
【0076】
ターンバックル胴92の回転に際しては、補助部材95がターンバックルボルト93,94を覆っているので操作しやすく、しかも、補助部材95の外周面の一部である突出面95bがターンバックル胴92から突出しているので、この点からも操作しやすい。
【0077】
しかも、連結杆71の長さ調節は左右の連結杆71ごとに行えるので、所望の形態に応じた変形が自由にできる。
【0078】
使用状態から折りたたむ変形は、ロック手段73のレバー部材76における力点部76bを引き上げて、ロック手段73による位置固定を解除する。つまり、レバー部材76の力点部76bをばね部材86による付勢力に抗して引き上げることで、スライダ側枢支部71bを嵌合穴85から外す。これによって横棒部38a上を自由に移動できるようになったスライダ72は、側枠13を閉じる回動動作に伴って、横棒部38aの長手方向の後方に向かって移動して、折りたたみ状態になる。スライダ72がスライドすることで折りたたみ状態になるので、連結杆71の長さに関係なく、折りたたみ変形を実行できる。
【0079】
使用状態においては、左右の側枠13は前枠15に対して斜めに橋渡しされる連結杆71で開いた状態に固定される。このため、連結杆71の側枠13に対する枢支位置は、側枠13の前端ではなく後方側に離すことができる。この結果、荷重のかかる部位を分散させることができ、荷重を良好に支えられる構造となり、安定性が高まり、がたつきのない安定した使用を可能にすることができる。つまり、長身の使用者が使用しやすいように、脚部31,32を長くして使用するような場合でも高い安定性が得られる。
【0080】
そのうえ、前述のように連結杆71の長さを適宜変更することで、使用者の体形はもちろん身体の状態に合った形態に変形できるので、使用しやすい。しかも左右の側枠13の開き角度はそれぞれ変更できるので、身体により適した形態での使用ができる。
【0081】
また、前枠15も長さ調節可能であるので、この点からも使用者の身体に最適な形態にして使用することができる。しかも、その前枠15の長さ調節のための部位である2本の横杆51,52には、これらの間で突っ張って両者の間隔を広げる方向に矯正する突っ張り手段55を備えているので、歩行補助器11に荷重がかかった際のたわみの発生を積極的に防止できる。このため、使用時の形態安定性を得られ、がたつき防止効果と共に、安定性の良い使用に大いに貢献する。
【0082】
しかも、突っ張り手段55が作用する部位は、横杆51,52の大径部分51a,52aの先端部に切欠き部59を形成しているので、小径部分51b,52bとなる。つまり、突っ張り手段55が突っ張る際に作用させる押圧力は、小径部分51b,52bに直接作用する。このため、突っ張る作用がより良好に行え、安定性の向上が図れる。
【0083】
切欠き部59の隣接位置には突出部60が形成されているので、前枠15の組立てに際して小径部分51b,52bを大径部分51a,52aに対し差し込むときに、一対の突出部60が差し込みのためのガイドとして機能する。このため、切欠き部59がなく、直角に切断された形態の場合と比べて、差し込み作業が容易である。
【符号の説明】
【0084】
11…歩行補助器
13…側枠
15…前枠
51,52…横杆
51a,52a…大径部分
51b,52b…小径部分
55…突っ張り手段
59…切欠き部
71…連結杆
71a…長さ調節機構
91…ターンバックル
92…ターンバックル胴
92a,92b…ねじ部
92c…空洞部
93,94…ターンバックルボルト
95…補助部材
95a…貫通穴
95b…突出面