(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物、並びに、疼痛抑制物質のスクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/713 20060101AFI20240726BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240726BHJP
A61P 29/02 20060101ALI20240726BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20240726BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240726BHJP
【FI】
A61K31/713 ZNA
A61P25/04
A61P29/02
C12Q1/6813 Z
C12N15/113 140Z
(21)【出願番号】P 2020198147
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 達英
(72)【発明者】
【氏名】和中 明生
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】SNX25 Polyclonal antibody SDS (13294-1-AP, Proteintech),2019年
【文献】SNX25 Antibody SDS (NBP1-80784, Novusbio),2019年
【文献】SNX25 Polyclonal Antibody SDS (bs-4070R, Bioss),2021年12月09日,https://www.biossantibodies.com/datasheets/bs-4070R
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 1/00-43/00
C12Q 1/00-1/70
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SNX25の発現を阻害するSNX25遺伝子のsiRNA、shRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有することを特徴とする疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項2】
前記疼痛は神経障害性疼痛であることを特徴とする請求項1に記載の疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項3】
前記神経障害性疼痛が、ウィルス感染障害性神経因性疼痛、代謝障害性神経因性疼痛、脊柱管狭窄性神経因性疼痛、薬物副作用性神経因性疼痛、神経切断性神経因性疼痛、神経障害性神経因性疼痛、及び/又は病巣圧迫性神経因性疼痛であることを特徴とする請求項2に記載の疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項4】
前記疼痛は侵害受容性疼痛であることを特徴とする請求項1に記載の疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項5】
前記侵害受容性疼痛は炎症性疼痛であることを特徴とする請求項4に記載の疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項6】
前記siRNAは、アンチセンス鎖RNAが配列番号1に示される塩基配列に相補的な配列番号2に示される塩基配列のオリゴリボヌクレオチドであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物。
【請求項7】
被験物質とSNX25を発現する細胞を接触させる工程と、前記細胞のSNX25の発現量を測定する工程と、該発現量を被験物質と接触させない前記細胞におけるSNX25の発現量と比較し、SNX25の発現量を低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする疼痛抑制物質のスクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物、並びに、疼痛抑制物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
痛みのタイプは、組織の損傷を伴う急性疼痛と、組織の損傷を伴わない慢性疼痛とに分類される。急性疼痛では、熱、化学的刺激、機械的衝撃等が皮膚、関節、筋肉あるいは内臓等に加わることで、局所的に発痛物質と呼ばれる様々な化学物質が産生・遊離され、これが一次知覚神経を興奮させることで痛みが発生する。この場合、興奮した知覚神経は、その情報を脊髄へ伝え、さらに上位中枢(延髄・中脳・視床)を経由して、最終的に大脳皮質知覚領にて痛みと認識される。
【0003】
慢性疼痛は、組織の損傷や病変が治癒した後も長期間に亘って残存する痛みであり、痛みに対する感受性が高まった状態や、本来痛みと感じない触覚刺激すらも痛みと感じるような状態が特徴として現れる。慢性疼痛状態では、上述した痛みの伝達経路のいずれか(特に脊髄・脳)に可塑的な変化が生じることで刺激に対する感受性が高まっていると推察されている。
【0004】
急性疼痛にせよ慢性疼痛にせよその発生メカニズムや神経系における伝達機構は多様でありその全貌は明らかではない。既存の治療法(非ステロイド系抗炎症性鎮痛剤やオピオイド等)ではコントロール困難な症例も多く存在する。
【0005】
最近、核内受容体とされるタンパク質REV-ERBが代謝や免疫の調節等の様々な生理学的プロセスに関与していることがわかり(非特許文献1)、その一例として、糖尿病や脂質異常症の病態の基盤となっている炎症が、合成リガンドとして、REV-ERB作動薬であるSR9009又はGSK4112を投与すると、その炎症を抑制することが判明している。
【0006】
そこで、脳や脊髄等の疼痛伝達経路における炎症反応が、疼痛を惹起する発症メカニズムの一つであるという知見があるが、しかしながら、現実には、疼痛に対しては現在使用されている代表的な鎮痛薬であるアスピリンやロキソプロフェンといった非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs; NSAIDs)では十分な治療効果が得られておらず、抗炎症薬が直ちに疼痛治療に有益であることを意味するものではない。
【0007】
現在、疼痛軽減のための種々の薬剤の使用乃至提案が試みられているが、それらは鎮痛効果の点で必ずしも満足できるものではない(特許文献1,2,3)。上記NSAIDsは、発痛物質プロスタグランジンを産生する酵素であるシクロオキシゲナーゼを抑制することにより鎮痛作用をもたらすものであるが、疼痛を効果的に軽減するためには、疼痛メカニズムを明らかにし効果的な疼痛治療を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-214586号公報
【文献】特開2015-129160号公報
【文献】特開2009-242360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、効果的な疼痛緩和を可能とする疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物を提供することを目的とする。また本発明は効果的な疼痛緩和を可能とする疼痛抑制物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物は、SNX25の発現を阻害するSNX25遺伝子のsiRNA、shRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有することを特徴とする。
【0011】
また本発明にかかる疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物は、SNX25と特異的に結合する抗体を有効成分として含有することを特徴とする。
【0012】
また本発明にかかる疼痛抑制物質のスクリーニング方法は、被験物質とSNX25を発現する細胞を接触させる工程と、前記細胞のSNX25の発現量を測定する工程と、該発現量を被験物質と接触させない前記細胞におけるSNX25の発現量と比較し、SNX25の発現量を低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、効果的な疼痛緩和を可能とする疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】機械刺激を与えるvon Freyフィラメント試験の概要及び機械刺激試験の結果を示す図である。
【
図2】化学刺激を与えるホルマリンテストの概要及び化学刺激試験の結果を示す図である。
【
図3】SNX25が新規疼痛因子であることを説明する図である。
【
図4】siRNAによりSNX25の遺伝子発現量が低下したことを示すin vitro試験結果を示す図である。
【
図5】SNX25ヘテロノックアウトマウス(SNX25-KO (SNX25 +/-)マウス)によるvon Freyフィラメント試験の結果を示す図である。
【
図6】SNX25ヘテロノックアウトマウス(SNX25-KO (SNX25 +/-)マウス)によるホルマリンテストの結果を示す図である。
【
図7】マクロファージ特異的(Cx3cr1-CreERT2マウスを用いた)にSNX25をKOしたマウスによるvon Freyフィラメント試験及びホルマリンテストの結果を示す図である。
【
図8】SNX25-KO (SNX25 +/-)マウスでによるアロディニアに対する鎮痛効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0016】
SNX(sorting nexin、ソーティングネキシン)は、エンドサイトーシスネットワーク内のコンパートメントからの積荷選別、およびシグナル伝達で役割を果たすタンパク質のファミリーであり、TGF-β受容体を含む膜タンパク質の輸送を調節する。SNX25(Sorting Nexin 25、ソーティングネキシン25)は、リソソームでの分解ためにTGF-β受容体をエンドソーム選別し、TGF-βシグナル伝達を調節する。本件発明者は細胞内トラフィッキングに関わる遺伝子が疼痛に関わることを新知見として見出しかかる事実に基づいて本発明を完成させた。
【0017】
本発明にかかる疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物は、SNX25の発現を阻害するSNX25遺伝子のsiRNA、shRNA又はアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する。
【0018】
また本発明にかかる疼痛の予防及び/又は治療用医薬組成物は、SNX25と特異的に結合する抗体を有効成分として含有する。
【0019】
本明細書において、「治療」には、症状を治癒すること、症状を改善すること及び症状の進行を抑えることが含まれる。一方、「予防」には疾患の発症を抑えること及び遅延させることが含まれ、疾患になる前の予防だけでなく、治療後の疾患の再発に対する予防も含まれる。
【0020】
疼痛には、心因性疼痛、侵害受容性疼痛又は神経障害性疼痛があるが、本発明にかかる疼痛の予防及び/又は治療用医薬品組成物は、好ましくは、侵害受容性疼痛又は神経障害性疼痛を対象とする。
【0021】
神経障害性疼痛は、ウィルスの感染によって神経が障害されたり、糖尿病など代謝障害によって神経が障害されたり、脊柱管狭窄によって神経が圧迫又は障害されたり、抗癌剤のような傷害性の強い薬物の副作用によって神経が障害されたり、事故や怪我によって神経が切断又は障害されたり、癌の腫瘍組織のような病巣によって神経が圧迫されたりする、様々な神経因性の疼痛である。
【0022】
神経障害性疼痛は、特に限定されるものではないが例えば、ウィルス感染障害性神経因性疼痛、代謝障害性神経因性疼痛、脊柱管狭窄性神経因性疼痛、薬物副作用性神経因性疼痛、神経切断性神経因性疼痛、神経障害性神経因性疼痛、又は、病巣圧迫性神経因性疼痛である。
【0023】
侵害受容性疼痛は、組織の損傷を感知する痛みの受容器(侵害受容器)への刺激に起因する痛みで、侵害受容器は大半が皮膚と内臓に分布している。この損傷には、切り傷、挫傷、骨折、挫滅創(ざめつそう)、熱傷など、組織が傷つくものがすべて含まれる。侵害受容性疼痛は、例えば炎症性疼痛である。炎症性疼痛は、炎症によって組織の侵害受容器が刺激を受けて生じる痛みである。
【0024】
SNX25の発現の抑制は、SNX25の発現を抑制する作用を有する化合物を用いて実施できる。例えば、SNX25の発現を特異的に抑制する作用を有する低分子量化合物である。SNX25の発現を特異的に抑制するとは、SNX25の発現を強く抑制するが、他のタンパク質の発現は抑制しないか、弱く抑制することを意味する。低分子量化合物は、ペプチド、ポリペプチド、核酸、有機化合物及び無機化合物である。この低分子量化合物の分子量は、例えば7000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは500以下の化合物である。
【0025】
SNX25の発現を抑制する作用を有する化合物として、例えばSNX25の発現をRNA干渉の手法により低下又は消失させる作用を有するsiRNA(small interfering RNA)を例示できる。siRNAは標的遺伝子のmRNAを分解してその発現を抑制する短鎖二重鎖RNAである。
【0026】
SNX25の発現を抑制する作用を有するsiRNAは、SNX25遺伝子の部分配列からなるRNA(センス鎖)と該RNAの塩基配列に相補的な塩基配列からなるRNA(アンチセンス鎖)とを、該遺伝子のmRNAの配列に基づいて設計し、化学合成法により合成し、得られた両RNAをアニーリングさせることで製造することができる。siRNAを構成するセンスRNA及びアンチセンスRNAは、各々20個から30個のヌクレオチドからなることが好ましい。また、各々3'末端に、オーバーハング配列と呼ばれるヌクレオチドを結合させることが好ましい。オーバーハング配列はRNAをヌクレアーゼから保護する作用を有する。
【0027】
SNX25の発現を抑制する作用を有するsiRNAとして、該siRNAの二重鎖RNA部分が配列番号1に記載の塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドと該塩基配列の相補的塩基配列で表されるオリゴヌクレオチドからなるsiRNAがあげられる(配列番号2)。
【0028】
センス配列: CGUACAAUGCUCGCAGAAA[dt][dt] 配列番号1
アンチセンス配列: UUUCUGCGAGCAUUGUACG[dt][dt] 配列番号2
【0029】
また、SNX25の発現を抑制する作用を有する化合物として、shRNAを例示できる。shRNAは、ヘアピン構造を有する短鎖二重鎖RNAであり、siRNAと同様、RNA干渉により遺伝子の発現を抑制する。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAとが例えばオリゴヌクレオチド等により連結され、センスRNA由来部分とアンチセンスRNA由来部分が二重鎖を形成するため、ヘアピン様構造を有する。shRNAは、センスRNAとアンチセンスRNAに加え、これら2つのRNAを連結し且つループ構造を形成するようなオリゴヌクレオチドを含むRNAを、SNX25をコードする遺伝子のmRNAの塩基配列に基づいて設計して製造できる。
【0030】
SNX25の発現を抑制する作用を有する化合物として、例えばSNX25のアンチセンスオリゴヌクレオチドを例示できる。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子であるSNX25のmRNAの一部にハイブリダイズすることが可能な(すなわち、相補的な)核酸塩基配列を含む、一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。理論に拘束されるものではないが、本発明においてアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAとDNA-RNAハイブリッドを形成し、RNase Hによって切断されることによって標的RNAを分解し、その結果、標的遺伝子の発現を抑制し得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドがハイブリダイズし得る標的遺伝子のmRNAの領域は、3'UTR、5'UTR、エキソン、イントロン、コード領域、翻訳開始領域、翻訳終結領域又は他の核酸領域を含み得る。
【0031】
またSNX25と特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、本発明の抗体は、抗体断片であってもよく、抗体断片としては、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、scFv等が挙げられる。本発明の抗体は、酵素、蛍光物質、放射性化合物、ビオチン等により標識化されたものであってもよい。
【0032】
本発明の抗体は、任意の種類の分子と抗体との共有結合により修飾又は複合化された、抗体誘導体を包含することも可能である。このような抗体誘導体として、例えば、アセチル化、グリコシル化、アミド化、PEG化、リン酸化、既知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的開裂、又は細胞内配位子又は他のタンパク質あるいは低分子化合物への結合により修飾されている抗体が挙げられる。
【0033】
本発明の抗体は、商業的に取得することも可能であり、例えばProteintech社(cat# 13294-1-AlaP)を利用することができ、この抗体は下記に示される配列番号3に示される配列を認識する。
Ala Pro Pro Thr Thr Ile Arg Ser Lys Glu Gln Ser Gln Glu Thr Lys Gln Arg Ala Gln Gln Lys Ieu Ieu Glu Asn Ile Pro Asp Met Ieu Gln Ser Ieu Val Gly Gln Gln Asn Ala Arg His Gly Ile Ile Lys Ile Phe Asn Ala Ieu Gln Glu Thr Arg Ala Asn Lys His Ieu Ieu Tyr Ala Ieu Met Glu Ieu Ieu Ieu Ile Glu Ieu Cys Pro Glu Ieu Arg Val
【0034】
また本発明の抗体はとして例えばNovusbio社(NBP1-80784)を利用することができ、この抗体は下記に示される配列番号4に示される配列を認識する。
Thr Asn Gln Ile Asn Glu Gln Ala Ser Phe Ala Val Asn Lys Ieu Arg Glu Ieu Asn Glu Lys Ieu Glu Tyr Lys Arg Gln Ala Ieu Asn Ser Ile Gln Asn Ala Pro Lys Pro Asp Lys Lys Ile Val Ser Lys Ieu Lys Asp Glu Ile Ile Ieu Ile Glu Lys Glu Arg Thr Asp Ieu Gln Ieu His Met Ala Arg Thr Asp Trp Trp Cys Glu Asn Ieu Gly Met Trp Lys Ala Ser Ile Thr Ser Gly Glu Val Thr Glu Glu Asn Gly Glu Gln Ieu Pro Cys Tyr Phe Val Met Val Ser Ieu Gln Glu Val Gly Gly Val Glu Thr Lys Asn Trp Thr Val Pro Arg Arg Ieu Ser Glu Phe Gln Asn Ieu His Arg Lys Ieu Ser Glu Cys Val Pro Ser Ieu Lys Lys Val Gln Ieu Pro Ser Ieu Ser Lys Ieu Pro Phe Lys Ser Ile Asp Gln Lys Phe Met Glu Lys Ser Lys Asn Gln Ieu Asn Lys Phe Ieu Gln Asn Ieu Ieu Ser Asp Glu Arg Ieu Cys Gln Ser Glu Ala Ieu Tyr Ala Phe Ieu Ser Pro Ser Pro Asp Tyr Ieu Lys Val Ile Asp Val Gln Gly Lys Lys Asn Ser Phe Ser Ieu Ser Ser Phe Ieu Glu Arg Ieu Pro Arg Asp Phe Phe Ser His Gln Glu Glu Glu Thr Glu Glu Asp Ser Asp Ieu Ser Asp Tyr Gly Asp Asp Val Asp Gly Arg Lys Asp Ala Ieu Ala Glu Pro Cys Phe Met Ieu Ile Gly Glu Ile Phe Glu Ieu Arg Gly Met Phe Lys Trp Val Arg Arg Thr Ieu Ile Ala Ieu Val Gln Val Thr Phe Gly Arg Thr Ile Asn Lys Gln Ile Arg Asp Thr Val Ser Trp Ile Phe Ser Glu Gln Met Ieu Val Tyr Tyr Ile Asn Ile Phe Arg Asp Ala Phe Trp Pro Asn Gly Lys Ieu Ala Pro Pro Thr Thr Ile Arg Ser Lys Glu Gln Ser Gln Glu Thr Lys Gln Arg Ala Gln Gln Lys Ieu Ieu Glu Asn Ile Pro Asp Met Ieu Gln Ser Ieu Val Gly Gln Gln Asn Ala Arg His Gly Ile Ile Lys Ile Phe Asn Ala Ieu Gln Glu Thr Arg Ala Asn Lys His Ieu Ieu Tyr Ala Ieu Met Glu Ieu Ieu Ieu Ile Glu Ieu Cys Pro Glu Ieu Arg Val His Ieu Asp Gln Ieu Lys Ala Gly Gln Val
【0035】
また本発明の抗体はとして例えばBioss社(cat# bs-4070R)を利用することができ、この抗体は下記に示される配列番号5に示される配列を認識する。
His Arg Lys Ieu Ser Glu Cys Val Pro Ser Ieu Lys Lys Val Gln Ieu Pro Ser Ieu Ser Lys Ieu Pro Phe Lys Ser Ile Asp Gln Lys Phe
【0036】
また本発明の抗体として例えばabcam社(cat# ab183756)を利用することができる。
【0037】
本発明にかかる医薬組成物は、有効成分に加えて1種又は2種以上の医薬用担体を含むことが好ましい。医薬組成物中に含まれる有効成分は、例えば0.00001~20重量%、好ましくは0.0001~10重量%である。医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて使用され、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤及び賦形剤を例示できる。
【0038】
また、所望により安定化剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤等を適宜使用することもできる。
【0039】
安定化剤は、ヒト血清アルブミンや通常のL-アミノ酸、糖類、セルロース誘導体を例示できる。L-アミノ酸は、例えばグリシン、システイン等である。糖類は例えばグルコース、マンノース等の単糖類、マンニトール、イノシトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ等の多糖類等である。セルロース誘導体は、例えばメチルセルロース、エチルセルロース等である。
【0040】
緩衝剤は、例えばホウ酸、リン酸、酢酸等である。等張化剤は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム等である。キレート剤は、例えばエデト酸ナトリウム等である。界面活性剤は、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系等が包含される。
【0041】
医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与経路、投与形態、疾患の種類等に応じて選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり0.01μg~100mg程度、好ましくは0.1μg~1mg程度の範囲である。投与量は1日1回~数回に分けて投与することができ、数日又は数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
【0042】
投与経路は、全身投与又は局所投与のいずれも可能である。非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、筋肉内等への投与を挙げることができる。また経口経路で投与することもできる。更に、経粘膜投与又は経皮投与も可能である。
【0043】
投与形態は、各種の形態が可能である。例えば錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。
【0044】
本実施形態に係る医薬組成物を体内に導入する手法は、特に限定されるものではないが、例えばsiRNAを体内に導入する手法として超音波による導入法を利用することができる。超音波による導入法によれば、細胞組織に対して超音波を照射する際に発生するキャビテーションによって細胞膜に一時的な孔が生成され(sonoporation現象)、この孔を介して導入できる。なお、導入効率を高めるため、マイクロバブルから構成される超音波造影剤を投与して、超音波造影剤が破砕する際に発生するマイクロジェットのsonoporation現象によって遺伝子導入を行なうことが好ましい。更に、好ましくは、リアルタイムに照射野を確認することができる超音波診断装置を使用して導入する。超音波診断装置は、超音波を送信すると共に、反射した超音波を受信する役割を持つプローブと、受信した信号に様々な処理をする処理部と、リアルタイムに画像を表示するディスプレイ部と、を備えて構成される。このような超音波診断装置を使用することにより照射野をモニターしながら導入できるため、目的とする領域のみに本実施形態に係る治療剤を効率的に導入することができる。
【0045】
SNX25の発現を抑制する作用を有する化合物がsiRNAである場合、核酸を有効成分として含む遺伝子治療剤を調製することができる。遺伝子治療剤が、遺伝子が導入された細胞を含む形態に調製される場合は、該細胞をリン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液、細胞内組成液用注射剤中に配合した形態等に調製することもできる。遺伝子治療剤は、また、プロタミン等の遺伝子導入効率を高める物質と共に投与されるような形態に調製することもできる。
【0046】
遺伝子治療剤を用いる治療法は、上記遺伝子を直接体内に導入するインビボ法と、患者の体内より標的とする細胞を一旦取り出して体外で遺伝子を導入して、その後、該細胞を体内に戻すエクスビボ法の両方の方法を包含する。遺伝子の体内又は細胞内への導入法として、非ウイルス性のトランスフェクション法、あるいはウイルスベクターを利用したトランスフェクション方法をいずれも適用できる。
【0047】
本発明の疼痛抑制物質のスクリーニング方法は、被験物質とSNX25を発現する細胞を接触させる工程と、前記細胞のSNX25の発現量を測定する工程と、該発現量を被験物質と接触させない前記細胞におけるSNX25の発現量と比較し、SNX25の発現量を低下させる被験物質を選択する工程とを含むことを特徴とする。
【0048】
本発明のスクリーニング方法は、SNX25を用いるものであればよい。本発明のスクリーニング方法で用いるSNX25はタンパク質でもよく、遺伝子でもよい。またSNX25がタンパク質の場合、全長タンパク質でもよく、機能断片でもよい。
【0049】
本発明のスクリーニング方法に用いるSNX25は、どのような生物由来のSNX25でもよく、特に限定されないが、哺乳動物のSNX25が好ましい。哺乳動物としては、ヒト、チンパンジー、サル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、モルモットなどが好ましく、より好ましくはヒトである。
【0050】
被験物質としては、例えば、核酸、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物の組織抽出液、血漿等を好ましく用いることができる。ただし、これらに限定されない。被験物質は、新規な物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。これら被験物質は塩を形成していてもよい。被験物質の塩としては、生理学的に許容される酸や塩基との塩が用いられる。
【0051】
SNX25を発現する細胞は、生体内の細胞でもよく、培養細胞でもよい。培養細胞は、初代培養細胞でもよく、細胞株でもよい。細胞株として、例えば、Hela細胞などが挙げられる。またSNX25をコードするDNAを含む組換え発現ベク
ターで形質転換したSNX25発現形質転換細胞を用いることができる。
【0052】
被験物質と細胞を接触させる工程は、被験物質と細胞が接触できる方法であればどのような方法でもよく、特に限定されない。例えば、培養細胞を用いる場合には、培地に被験物質を添加する方法などが挙げられる。例えば、生体において被験物質と細胞とを接触させる場合には、経口投与、静脈内投与、腹腔内投与等の全身投与、標的臓器や標的組織への局所投与などが挙げられる。
【0053】
SNX25の発現量の測定は、SNX25のタンパク質量を測定してもよく、SNX25のmRNA量を測定してもよい。タンパク質量を測定する場合は、公知の方法で細胞からタンパク質を抽出し、公知のタンパク質量測定方法を用いて定量することができる。公知のタンパク質量測定方法としては、例えば、ウエスタンブロット法、ELISA法、RIA法、タンパク質測定試薬を用いる方法などが挙げられる。mRNA量を測定する場合は、公知の方法で細胞からRNAを抽出し、公知のmRNA量測定方法を用いて定量することができる。公知のmRNA量測定方法としては、ノーザンブロット法、RT-PCR法、定量RT-PCR法などが挙げられる。
【0054】
被験物質を接触させない対照群におけるSNX25のタンパク質量又はmRNA量と比較して、被験物質を接触させた場合にSNX25のタンパク質量又はmRNA量が減少していれば、当該被験物質を目的物質として選択することができる。被験物質がSNX25のタンパク質量又はmRNA量を減少させる程度は特に限定されないが、例えば、被験物質を接触させていない細胞のタンパク質量又はmRNA量と比較して50%以下に減少させる被験物質が好ましく、25%以下に減少させる被験物質がより好ましい。
【実施例】
【0055】
(1)実施例1「新規疼痛因子の同定」
BAC(bacterial artificial chromosome:大腸菌人工染色体)は100kb~300kbからなる長い遺伝子をクローニングできるベクターであり、大腸菌での相同組換技術によって容易にレポーター遺伝子を任意に導入でき、このBACを受精卵に導入することにより、BACトランスジェニックマウスを作成できる。
【0056】
本発明者はBACトランスジェニックマウス(以下、TGマウス)において機械刺激、化学刺激に対する反応が著しく鈍麻になっていることを偶然見出した。
【0057】
機械刺激を与える試験としてvon Freyフィラメント試験(Makoto Tsuda, Kazuya Kuboyama, Tomoyuki Inoue, Kenichiro Nagata, Hidetoshi Tozaki-Saitoh, Kazuhide Inoue(2009) Molecular Pain, 5:28、 S.R. Chaplan, F.W. Bach, J.W. Pogrel, J.M.Chung, T.L. Yaksh (1994) Journal of Neuroscience Methods, 53:55-63、及び Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)を採用した(
図1)。
【0058】
実験開始1時間前にマウスをワイヤー製メッシュの上に乗せ、個別にガラス製容器をかぶせて環境に馴化させた。その後、メッシュの下からvon Frey フィラメント(North Coast Medical, Inc.)を用いて機械性侵害刺激法を行った。この方法は決まった圧力を加えることができる太さの異なるvon Frey フィラメントを、マウスの後肢足裏に垂直に曲がるまで押し付け、逃避反応を引き起こすか否かを観察するものである。疼痛閾値の評価法としては、up-down刺激法を用いた。この方法では中程度のフィラメントから開始し、フィラメント刺激で逃避反応が認められたら、その一つ下の太さのフィラメントで刺激し、反応が認められないときは一つ上の太さのフィラメントの刺激を行う。この方法での値は、刺激に対する反応が陽性から陰性、あるいは陰性から陽性へと変化した前後の2反応を最初の反応とし、その後4回(計6回)同様のup-down刺激で得られた成績から計算式(S.R.Chaplan, F.W. Bach, J.W. Pogrel, J.M.Chung, T.L. Yaksh (1994) Journal of Neuroscience Methods, 53:55-63)で50%閾値を求める。
【0059】
その結果を
図1に示す。
図1中のグラフは平均値±標準誤差(WT n=6, TG n=8)で示した。
図1中、WTは野生型マウス(C57BL6)を示し、TGはBACトランスジェニックマウスを示す。有意差の検定は、Tukey-Kramerの検定により行った。「**」は、WTと比較したとき、p<0.01であることを示す。
【0060】
機械刺激による疼痛誘発では、TGマウスは野生型マウスと比較して疼痛刺激へ鈍感になっていることを認めた(
図1)。
【0061】
化学刺激を与える試験としてホルマリンテスト(Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)を採用した(
図2)。
【0062】
マウスをホルマリン投与前に1匹ずつ測定用プラスチックケージに入れて、30分以上馴化させた。その後、マウスの左後肢足裏に5% ホルマリン液10μ Lを皮下投与した。投与後は直ちに測定用プラスチックケージに入れて60分間測定を行った。処理足を舐める又は噛む行動を疼痛の指標とし、これらの疼痛行動を示した累積時間を測定した。測定時間はホルマリン投与後60分までとし、5分毎に区切って測定を行った。
【0063】
その結果を、
図2に示す。
図2中のグラフは平均値± 標準誤差(n=6)で示した。
図2中、WT及びTGは前記と同様である。有意差の検定は、Tukey-Kramerの検定により行った。「**」は前記と同様である。「*」はWTと比較したとき、p<0.05であることを示す。
【0064】
化学刺激による疼痛誘発では、化学刺激後0~5分では化学刺激による疼痛が生じ、25~35分では引き続き炎症による痛みが生じる。実際、WTマウスでは、化学刺激後0~5分と30~35分に疼痛を感じる時間の2つのピークが生じた(
図2)。一方TGマウスでは化学刺激による疼痛にも炎症による疼痛にも鈍感であることが示された。TGマウスでは、ホルマリン投与の局所部位においても発赤や腫脹の程度が著しく減弱していた。このことから、末梢における免疫システムに何らかの異常が起き、その結果、疼痛行動が減弱したことが示唆された。
【0065】
TGマウスはBACトランスジーン(198kb)の挿入によって、その領域の内在性の遺伝子の発現を阻害又は変動させ、その結果生じる何らかの遺伝子の機能異常により、疼痛刺激に対する行動変化が起きたと仮説を立てた。
【0066】
次世代シークエンサーを用いた順遺伝学的なスクリーニングにより、トランスジーンが8番染色体に挿入されていること、挿入部位近傍に位置するSorting nexin 25 (SNX25)の遺伝子制御が破綻していることを明らかにし、これによりSNX25を新規疼痛因子として同定した(
図3)。
【0067】
(2)実施例2「全身でSNX25の発現を半分にしたSNX25ヘテロノックアウトマウス」
SNX25に特異的なsiRNAとして下記を使用した。
【0068】
センス配列: CGUACAAUGCUCGCAGAAA[dt][dt] 配列番号1
アンチセンス配列: UUUCUGCGAGCAUUGUACG[dt][dt] 配列番号2
【0069】
このsiRNAをマクロファージに培養条件下(in vitro)で導入(終濃度25 pmol, 24時間導入)したところ、
図4に示すようにSNX25の遺伝子発現量が有意に減弱した。
【0070】
上記のsiRNAの効果をin vitroで確認できたので、この配列番号2記載のsiRNAを使用してマウスの全身でSNX25の発現を遺伝学的に半分にしたSNX25ヘテロノックアウトマウス(SNX25-KO (SNX25 +/-)マウス)を作製した。作製したこのSNX25-KO (SNX25 +/-)マウスでもTGマウス同様に痛み行動が減弱するかを検証した。
【0071】
機械刺激を与える試験として実施例1と同様にvon Freyフィラメント試験を採用した。その結果を
図5に示す。
図5中のグラフは平均値±標準偏差(n=10)で示した。
図5中(SNX25 +/+)マウスは全身でSNX25の発現が遺伝学的に正常であり、(SNX25 +/-)マウスは全身でSNX25の発現を遺伝学的に半分にしたSNX25ヘテロノックアウトマウスである。「**」はp<0.01であることを示す。
【0072】
機械刺激による疼痛誘発では、(SNX25 +/-)マウスは(SNX25 +/+)マウスと比較して疼痛刺激へ鈍感になっていることが確認できた(SNX25 +/+ n=16, SNX25 +/- n=28) (
図5)。
【0073】
化学刺激を与える試験として実施例1と同様にホルマリンテストを採用した。その結果を
図6に示す。
図6中のグラフは平均値±標準誤差(n=6)で示した。
図6中(SNX25 +/+)マウスは全身でSNX25の発現が遺伝学的に正常であり、(SNX25 +/-)マウスは全身でSNX25の発現を遺伝学的に半分にしたSNX25ヘテロノックアウトマウスである。「**」はp<0.01であることを示す。「*」はp<0.05であることを示す。
【0074】
化学刺激による疼痛誘発では、(SNX25 +/-)マウスは(SNX25 +/+)マウスと比較して疼痛刺激へ鈍感になっていることが確認できた(
図6)。
【0075】
(3)実施例3「免疫細胞でSNX25の発現を欠損させたSNX25ノックアウトマウス」
実施例1で記載したように、TGマウスの解析から、末梢における免疫システムに何らかの異常が起き、その結果、疼痛行動が減弱したことが示唆された。実施例2における全身でSNX25の発現を半分にしたSNX25ヘテロノックアウトマウスでは、痛み行動が減弱したが、このマウスでは全身でSNX25の発現を低減させているため詳細な疼痛機序が見出せない。
【0076】
SNX25が疼痛に及ぼす責任部位は本当にマクロファージかを明らかにするために、前述の配列番号2記載のsiRNAを使用してマクロファージ特異的(Cx3cr1-CreERT2マウスを用いた)にSNX25をKOしたマウスを作製した(このマウスは体内でCreタンパク質が活性化するとマクロファージでSNX25がKOされる。Creタンパク質を活性化させるにはタモキシフェンの入った餌をマウスに与える)。このマウスに対して行動解析を行なった結果、実施例2における全身でSNX25の発現を半分にしたSNX25ヘテロノックアウトマウスと同様に機械刺激、化学刺激に対して鈍感になっていることが明らかになった(
図7)。
【0077】
(4)実施例4「神経障害性疼痛モデルを使用した鎮痛効果の検証」
神経障害性疼痛は、その神経損傷の形式により2種類に分類される。1つは完全神経損傷に伴う神経障害性疼痛であり、もう1つは不完全神経損傷に伴う神経障害性疼痛である。この2種類の神経障害性疼痛は異なる臨床像を示す。実施例4では不完全神経損傷によるモデルとしてWoolfモデルを採用した。このモデルは2000年にハーバード大学のWoolfにより報告されたものである。マウスの坐骨神経の枝である総腓骨神経と脛骨神経を片側のみ結紮することにより作製する末梢神経損傷モデルである。この損傷の形式により、Spared Nerve injuryモデルとも呼ばれる。このモデルではvon Freyテストにより痛覚過敏の程度を検討することができ、特に機械刺激性アロディニアが強く発症することがこのモデルの特徴である。
【0078】
Woolfモデルマウスでは、神経損傷後、通常では痛みを引き起こさないような非侵害刺激(接触や軽度の圧迫、非侵害的な温冷刺激など)で痛みを生じてしまう感覚異常(アロディニア)が認められる。しかしながらWoolfモデルマウスに対して前述の配列番号2記載のsiRNAを使用し全身でSNX25の発現を半分にしたSNX25-KO (SNX25 +/-)マウスでは
図8に示すようにアロディニアの程度が減弱し、鎮痛効果を見出すことができた。
【産業上の利用可能性】
【0079】
疼痛治療として利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0080】
配列番号2:siRNA
配列番号3~5:抗体
【配列表】