(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】支持具及び支持構造
(51)【国際特許分類】
A47F 5/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A47F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2020202641
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520335118
【氏名又は名称】武部 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100181881
【氏名又は名称】藤井 俊一
(72)【発明者】
【氏名】武部 清志
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-113676(JP,A)
【文献】特開2011-130804(JP,A)
【文献】実開昭60-169118(JP,U)
【文献】実開昭52-005791(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 1/00-13/08
F16B 2/00- 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の保持溝に嵌る嵌入部と、確保対象に接触してそれを保持する支持部を備え、
前記嵌入部は、曲げ成形が施されたバネ線が横ずれ可能に重ねられた重積構造を備えることを特徴とする支持具。
【請求項2】
前記嵌入部は、巻回線が弾性的に密着して重積された螺旋状巻き線であることを特徴とする請求項1に記載の支持具。
【請求項3】
前記嵌入部と支持部は、一連の螺旋状巻き線として形作られていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の支持具。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の支持具の嵌入部と、前記嵌入部が嵌る保持溝とからなる支持具の固定構造であって、
前記嵌入部は、前記保持溝の幅より広い定常厚を持ち、重積構造となっているバネ線の横ずれと当該バネ線に対する重積方向への加圧を与えられることにより保持溝に嵌る嵌入厚に圧縮され、前記保持溝に弾性的に保持されることを特徴とする支持具の固定構造。
【請求項5】
前記嵌入部は二重の重積構造であって、前記保持溝の幅と略等しい嵌入厚に圧縮されることを特徴とする請求項4に記載の支持具の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状の枠材又は板状の板材(以下「基体」という)に、他の基体若しくは棚板、物品、又は当該物品を支持する為のホルダー(以下「物品等」という)を支持するための支持具及びそれを用いた支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、商品のディスプレイを目的とする棚等において、その棚板等は、当該棚を形作る前記基体に様々な支持具を固定し、当該支持具に載置し又は係止等することで支持されている。
また、前記物品等の支持位置の調整を要する場合には、前記支持具の固定手段に着脱可能な構成が採られている場合もある。
【0003】
例えば、棒状の枠材で物品等を支持する場合には、連結ビームに、リベットで取付金具を取り付ける手法(下記特許文献1参照)、支柱を取付具で弾性的に挟持する手法(下記特許文献2及び特許文献3参照)、又は天板、腹板、背板及び支持部を順次略直角に折り曲げ成形してなる外部クリアケースを掛ける手法(下記特許文献4参照)などが用いられている。
【0004】
一方、板状の基板で物品等を支持する場合には、基板が備える透孔にツメ部を嵌め入れて様々な形状を持つ支持具を固定する手法(下記特許文献5参照)、縦型リング状の係止部を係止孔へ挿入し当該係止部が短スリットに嵌着する様に回転方向変換させて係止固定せしめる手法(下記特許文献6参照)、スタンド本体が備える上下取付孔にブラッケットの挿入板及び突当板を挿入することによってスタンド本体にブラケットを固定する手法(下記特許文献7参照)、ブラケットが備える一対の切欠部と当該ブラケットに装着されるアダプターの係合片とでアンカーボルトを咬持する手法(下記特許文献8参照)などが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平7-16318号公報
【文献】特開2001-61354号公報
【文献】特開2014-125731号公報
【文献】特開2007-14720号公報
【文献】特開昭63-153334号公報
【文献】実開昭62-155663号公報
【文献】特開2008-99833号公報
【文献】実開平3-117188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の手法は、いずれにあっても材料の裁断や曲げ加工など支持具の製造に複雑な加工を要するという問題がある。
また、合成樹脂などを用いる場合には金型の製作に多大なコストを要する場合もある。
加えて、支持具と当該支持具が固定される枠材又は板材とで連結し得る構造が相互に設けられる手法である場合には、当該支持具が適用できる場合が限定されるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、製造に手間がかからず低コストであり、且つ汎用性の高い支持具及びそれを用いた支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明による支持具は、基体の保持溝に嵌る嵌入部と、確保対象に接触してそれを保持する支持部を備え、前記嵌入部は、曲げ成形が施されたバネ線が横ずれ可能に重ねられた重積構造(重ねて積み上げられた構造)を備えることを特徴とする。
前記嵌入部は、巻回線が一巻き毎に弾性的に密着して重積された螺旋状巻き線とすることができる。また、前記嵌入部と支持部は、一連の螺旋状巻き線として支持具を形作ることもできる。
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明による支持具の固定構造は、上記支持具の嵌入部と、前記嵌入部が嵌る保持溝とからなる支持具の固定構造であって、前記嵌入部は、前記保持溝の幅より広い定常厚を持ち、重積構造となっているバネ線の横ずれと当該バネ線に対する重積方向への加圧を与えられることにより保持溝に嵌る嵌入厚に圧縮され、前記保持溝に弾性的に保持されることを特徴とする。
前記嵌入部は、二重の重積構造であって、前記保持溝の幅と略等しい嵌入厚に圧縮される構成を採ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による支持具によれば、保持溝へ嵌め入れる際、重積構造となっているバネ線に横ずれが生じ、且つ前記保持溝の内面から当該バネ線に対する重積方向への加圧が与えられることにより当該嵌入部が保持溝に嵌る嵌入厚に圧縮されるため、当該保持溝の長さや幅が許す限り支持具の配置や嵌入密度を変えて様々なものを保持できる汎用性を得ることができる。
【0011】
また、螺旋状巻き線など巻回線が連続する重積構造を採ることによって、製造に手間がかからず低コストな支持具となり、バネ線の太さを適正に調節することによって装着性及び支持強度の調整も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による支持具の一例を示す(A)背面図、(B)平面図、(C)左側面図、(D)正面図、(E)右側面図及び(F)底面図である。
【
図2】本発明による支持具の装着過程の一例を示す左側面図である。
【
図3】本発明による支持具の固定構造の一例を示す(A)左側面図、(B)平面図、(C)背面図である。
【
図4】本発明による支持具の固定構造の実施態様例を示す正面図である。
【
図5】本発明による支持具の固定構造の実施態様例を示す(A)正面図及び(B)A-A矢視断面図である。
【
図6】本発明による支持具の固定構造の実施態様例を示す(A)B-B矢視断面図、(B)正面図及び(C)C-C矢視断面図である。
【
図7】本発明による支持具の固定構造の実施態様例を示す(A)横断面図及び(B)要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による支持具及び支持具の固定構造の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1の支持具は、基体3の保持溝4に嵌る嵌入部1と、確保対象に接触してそれを保持する支持部2を備える(
図2参照)。
【0014】
この例の嵌入部1と支持部2は、巻回線5が弾性的に密着して重なる一連の螺旋状巻き線である。ここで螺旋とは、3次元曲線の一種であって、一定の軌道で回転しながらその軌道が当該回転の軸方向へ移動する線形である。
前記螺旋状巻き線は、弾性的な復元性が維持されたバネ線からなる。
前記螺旋状巻き線は、前記嵌入部1となる部分が基体3の保持溝4に嵌る際には、巻回線5相互の横ずれと、当該横ずれに伴って生じる巻回線5間の傾斜と、当該傾斜した巻回線5の先端部の陥没とが相俟って当該先端部における螺旋状巻き線の厚みが圧縮され、前記嵌入部1となる部分が基体3の保持溝4から離脱した際には、当該バネ線の復元力により元の厚みに復帰する。
前記バネ線の断面形状は、円形又は楕円形であることが望ましいが、多角形状を採用することもできる。
【0015】
前記嵌入部1は、螺旋状巻き線が形作る重積構造の一部である。
例えば、均一な軌道の巻回線5が複数重に連続することで均一な断面形状を形作る支持具において、円筒状の螺旋状巻き線を支持具とする場合には、当該螺旋状巻き線が形作る円弧の一部を嵌入部1とし、多角柱状その他の異形形状の螺旋状巻き線を支持具とする場合には、巻回線5相互の横ずれが生じ、当該横ずれに伴って巻回線5間に傾斜が生じ、当該傾斜した巻回線5の先端部が隣接する巻回線5の内側に陥没し得る形状の部分(例えば先細り形状の部分)を嵌入部1とする。
前記嵌入部1は、保持溝4内に安定した姿勢で保持されることが望ましいため、螺旋状となったバネ線の両端部が存在する領域は避ける事が望ましい。また、保持溝の内面に対して滑らない様に、例えば嵌入部1の表面に梨地処理や塗装を施すなど、摩擦係数が高くなる処理を施すことも望ましい。
【0016】
尚、前記先細り形状は、支持具を構成するバネ線の横ずれに伴って、支持具を構成する巻回線5の一部が相互に支持相手を喪失し、巻回線5の弾性による変形とも相俟ってその前方に位置する巻回線5の内側に、後方に位置する巻回線5の先端部が陥没する作用が生じる形状であって、前記円弧のみならず、湾曲又は屈曲などの曲げ成形が成されたことで全体として先細りとなる形状である。
【0017】
この例の支持部2は、当該支持具において、基体3の保持溝4に嵌入している嵌入部1に続く部分であって、基体3の保持溝4から外に露出した部分である。
支持部2の形状は、重積構造にある巻回線5相互の横ずれが生じ、当該横ずれに伴って巻回線5間に傾斜が生じ、且つ当該傾斜した巻回線5の先端部が隣接する巻回線5の内側に陥没するという嵌入部1の機能を妨げない形状であれば、支持(確保)対象、支持態様又は支持強度に応じて適宜選択することができる。
また、その形態は、一連の螺旋状巻き線等の重積構造の一部に限定されるものではなく、嵌入部1を備える螺旋状巻き線等に、支持部としての別部材を連結し又は固定する構成を採ることもできる。
【0018】
図1に示す支持具は、二巻の円筒状巻回線5,5が弾性的に密着した重積構造の螺旋状巻き線である。
巻回線5の太さは、保持溝4の幅よりも細く、保持溝4の幅を巻回数で除した太さより太くする。
また、前記支持具の厚みは、前記基体3に刻まれた保持溝4に嵌入される前は、当該保持溝4の幅より厚く当該保持溝4の幅の2倍未満であって、好ましくは1.1倍から1.3倍の定常厚を持ち、前記保持溝4に嵌入された時、当該保持溝4の幅と略等しい厚み(嵌入厚)に圧縮されるものとする。
【0019】
この支持具が螺旋状に成形されている結果、前記嵌入部1は、前記保持溝4の幅より大きい定常厚を持ちながらも、前記保持溝4の開口部に押し当てられたことにより、重積構造となっている巻回線5に横ずれが生じ、且つ前記保持溝4の内面から当該バネ線に対する重積方向への加圧が与えられることにより当該嵌入部1が保持溝4に嵌る嵌入厚に圧縮され、当該嵌入部1が当該バネ線の復元力により前記保持溝4に弾性的に保持されることとなる。
尚、嵌入部1に与えられる弾性係数は、求められる支持強度に応じて適宜調整する。
【0020】
前記保持溝4に嵌入部1を嵌め入れる操作は、先ず、嵌入部1とする部分の最も外側の巻回線(先行巻回線)5のみを保持溝4に挿し入れる第一操作を行い、続いて、当該差し入れた部分を中心として、当該嵌入部1を当該保持溝4の開口部において直立する様に螺旋軸方向へ回転させつつ同嵌入部1を同保持溝4へ挿し入れる第二操作を行うことによって容易に行うことができる。
【0021】
この時、第一操作の完了時において、前記先行巻回線5が保持溝4に進入すると共に、隣接する巻回線(後行巻回線)5の側面が保持溝4の開口部内縁に当接し、第二操作の完了時において、嵌入部1の前記後行巻回線5が前記先行巻回線5の内側へ陥没した状態で前記基体3の保持溝4へ一体的に進入する(
図2参照)。
【0022】
前記二巻の巻回線5,5を持つ支持具において、支持具の厚みを保持溝4の幅の1.1倍から1.3倍に設定した場合には、前記第二操作に伴って、嵌入部1の後行巻回線5がその側面に沿ってより円滑に保持溝4に進入することとなる。
前記後行巻回線5は、弾性的な復元力により先行巻回線5の内側から脱出しようとするが、当該復元力により保持溝4内で突っ張り作用が生じることとなり、当該保持溝4における支持具の良好な固定状態が維持される。
上記支持具は、例えば、以下の用途に用いることができる。
【実施例1】
【0023】
図4乃至
図6は、フォトスタンドとしても用いられるシートホルダーの支持具Xとして採用した例である。
このシートホルダーは、基体3たるアルミ合金製の枠材(以下「枠材3」と記す)と、当該枠材3を支持する支持台6とで構成されている。
前記枠材3は、四側方のうちの三方に前記保持溝4を備える押出型材であって、前記三方のうちの中央に位置する保持溝(以下「内溝4」という)が対向するようにU字状に曲げ成形されている。
前記支持台6は、円盤状に成形され、その中央部に、前記枠材3を逆U字状に起立させた状態で保持する。
【0024】
上記シートホルダーは、硬直性をもったシート(写真やパネル等)7やアクリル板等の透明な板に挟まれた書面などのシート(確保対象)7を保持するが、その際、対向する一対の内溝4に嵌められた確保対象の落下止めとして、当該一対の内溝4に嵌入する手法(
図4及び
図6下部並びに
図5上部参照)、内溝4を挟む表裏各一対の外溝4,4のいずれかに四つの支持具Xを嵌入し確保対象の上下を挟む手法(
図5下部及び
図6上部参照)、又は支持具Xの内溝4に嵌入された巻回線5,5の隙間に確保対象を挟む手法(
図4上部参照)を採ることができる。
【実施例2】
【0025】
図7に示す例は、収納等を目的とするキャビネットの棚板8を前記支持具Xで支持する例である。
この例は、キャビネットを構成する板材11の内面に、直線的な保持溝4が一連又は間欠的に刻まれた対をなす枠材3を、その保持溝4,4の開口部が相対向する様に側方に向けて垂直に固定し(水平の固定する構成も可能)、その保持溝4に支持具Xの嵌入部1を嵌め入れ、当該支持具Xの支持部2に棚板8を載置した例である。
この例では、支持具Xによる支持位置(又は支持高)は、キャビネットの側板の内壁に固定された枠材3の位置で一定に定まる。
尚、前記キャビネットは、前記板材11の内面に前記保持溝4を設ける構成を採ることもできる。
【0026】
前記保持溝4が一連の溝である場合には、当該保持溝4の長さが許す限り、支持に必要な強度や位置に応じて必要な数だけ必要な密度で支持具Xを嵌め入れることができる。
また、円筒状の支持具Xを採用した場合には、支持具Xを保持溝4に嵌入したまま当該保持溝4に沿って転がすことで嵌入部1となる部位を適宜変化させつつ支持位置を容易に移動させることができ、微調整も容易となる。
【0027】
保持溝4に装着した支持具Xについて、支持強度の補強、位置ずれの防止又は保持溝4からの離脱防止の要請がある場合には、例えば前記保持溝4を横断して当該保持溝4の側壁を貫通する支持孔9を穿設し、当該支持孔9と、当該保持溝4に装着された支持具Xの環の内側を連通するピン10を装着する構成を採ることができる。
【符号の説明】
【0028】
X 支持具,
1 嵌入部,2 支持部,
3 基体(枠材),4 保持溝,
5 巻回線,
6 支持台,7 シート,8 棚板,
9 支持孔,10 ピン,11 板材,