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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ランナーユニット
(51)【国際特許分類】
   E05F 7/04 20060101AFI20240726BHJP
   E05D 15/06 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
E05F7/04
E05D15/06 117
E05D15/06 119
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020210597
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097169
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390021153
【氏名又は名称】株式会社SKB
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】中山 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 萌子
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-81323(JP,A)
【文献】特開2012-97488(JP,A)
【文献】実開昭63-17268(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0037427(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D15/00-15/58
E05F1/00-13/04
17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上レール(2)で移行案内されるランナー本体(8)と、
下荷重型の戸パネル(4)の上部左右に埋設固定されるホルダー(9)と、
ホルダー(9)に装着固定されるランナー台(10)と、
ランナー本体(8)に組付けられてランナー台(10)を支持するランナー軸(11)と、
ランナー台(10)とランナー軸(11)の間に設けられて、戸パネル(4)の跳上がり動作を規制する跳上防止機構(12)とを備えており、
ランナー軸(11)は、ランナー本体(8)のランナー側連結穴(18)およびランナー台(10)の台側連結穴(33)に対して左右方向に傾動可能に連結されており、
跳上防止機構(12)は、台側連結穴(33)の周囲壁に設けられた固定係合体(35)と、ランナー軸(11)に設けられた可動係合体(36)とを備え、
固定係合体(35)は、左右方向に対向状に形成された、山部と谷部とが連続する歯列で構成されており、
可動係合体(36)の左右方向の幅寸法(b)は、固定係合体(35)を構成する左右の歯列の狭隘部分の対向間隔(e)よりも小さく設定されており、
ランナー軸(11)がランナー台(10)に対して左右いずれかへ傾動したとき、可動係合体(36)が固定係合体(35)の上下2箇所と係合するように構成されていることを特徴とするランナーユニット。
【請求項2】
ランナー台(10)の台側連結穴(33)の前後壁のそれぞれに縦溝(34)が形成されており、
固定係合体(35)を構成する歯列が、縦溝(34)の左右の溝側面のそれぞれに対向状に形成されており、
可動係合体(36)が、ランナー軸(11)の前後のそれぞれの上下2個所に固定されたピンで形成されている請求項1に記載のランナーユニット。
【請求項3】
ランナー台(10)の台側連結穴(33)の内面の上下2箇所に、内面に雌ねじ部を有するナット体(61)が設けられており、
固定係合体(35)を構成する歯列が、ナット体(61)の雌ねじ部であり、
可動係合体(36)が、ランナー軸(11)に形成された雄ねじ部(62)で構成されている請求項1に記載のランナーユニット。
【請求項4】
ランナー台(10)の台側連結穴(33)の内面の上下2箇所のそれぞれに、左右一対の短尺の第1ラック体(65)が設けられており、
固定係合体(35)を構成する歯列が、第1ラック体(65)のラック歯であり、
可動係合体(36)が、ランナー軸(11)の左右側面に形成された山部と谷部とが連続する長尺の第2ラック体(66)で構成されている請求項1に記載のランナーユニット。
【請求項5】
ランナー本体(8)の走行体(16)の移行軌跡に臨む上レール(2)の天井壁に、前後一対の補助レール(2b)が下向きに突設されており、
ランナー本体(8)のランナーボディ(15)の前後面の下部に、上レール(2)のレール部(2a)の下面で受止められる規制壁(20)が張り出し形成されている、請求項1ないし4のいずれかひとつに記載のランナーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下荷重型の戸パネルを開閉案内するランナーユニットに関し、なかでも戸パネルの跳上がりを防ぐ跳上防止機構を備えるランナーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
戸パネルの跳ね上がりを防ぐ跳上防止機構は、例えば特許文献1に開示されている(発明の名称:引戸の上部ガイド装置)。特許文献1の上部ガイド装置は、上荷重型(吊下式)の引戸(戸パネル)に適用されるものであり、当該引戸の上部に固定される引戸固定体と、引戸固定体から上方に突出する吊用連結シャフトと、このシャフトの先端部に取付けられるランナ体と、ランナ体のローラ取付部に連結されるランナ本体部と、ランナ本体部で支持される押圧部材などで構成される。ランナ本体部は、下向きに開口する移動許容溝が形成された部材取付部を備えており、その上面前後に跳上抑制突起部が上向きに突設されている。移動許容溝は、ランナ体から遠ざかる向きに上り傾斜されている。押圧部材は、移動許容溝と同様に上面が上り傾斜する左右に長い台形状の板状体からなり、板状の面壁に傾斜ガイド孔が形成されている。押圧部材は、その板状の面壁が移動許容溝に嵌込まれた状態で、傾斜ガイド孔が部材取付部に装着したスライドボス部(ガイドピン)で支持されている。常態における押圧部材の下面は、引戸の頂面に当接している。特許文献1の上部ガイド装置では、引戸が閉じ端寄りで跳上がりかけたとき、ランナ体およびランナ本体部が押圧部材で押上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-150242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の上部ガイド装置では、跳上抑制突起部が上レールの天井壁に当接することで引戸の跳上がりを抑制するが、ローラ取付部とは別に、左右長が大きなランナ本体部と、ランナ本体部で支持される押圧部材とを設ける必要があるため、跳上防止機構の全体コストが嵩むことが避けられない。また、押圧部材とランナ本体部とが、移動許容溝とスライドボス部を介して相対スライド可能に連結されているため、引戸の跳上がり力が大きくなると、跳上抑制突起部が上レールの天井壁で受け止められた状態のままで、押圧部材がランナ本体部の移動許容溝の傾斜上端へ向かってずれ動く余地があり、その場合には、押圧部材がずれ動いた分だけ、引戸が跳ね上がるおそれがある。押圧部材がランナ本体部の移動許容溝の傾斜上端へ向かってずれ動くと、引戸の跳ね上がり阻止のタイミングが遅れるおそれもある。
【0005】
本発明の目的は、跳上防止機構を設けることに伴う新規部品の追加や、構造の変更を最小限にして、全体コストを著しく削減し低コスト化できるうえ、戸パネルの跳上がりを遅滞なく的確に阻止できるランナーユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るランナーユニット5は、上レール2で移行案内されるランナー本体8と、下荷重型の戸パネル4の上部左右に埋設固定されるホルダー9と、ホルダー9に装着固定されるランナー台10と、ランナー本体8に組付けられてランナー台10を支持するランナー軸11と、ランナー台10とランナー軸11の間に設けられて、戸パネル4の跳上がり動作を規制する跳上防止機構12を備えている。ランナー軸11は、ランナー本体8のランナー側連結穴18およびランナー台10の台側連結穴33に対して左右方向に傾動可能に連結されている。跳上防止機構12は、台側連結穴33の周囲壁に設けられた固定係合体35と、ランナー軸11に設けられた可動係合体36とを備える。固定係合体35は、左右方向に対向状に形成された、山部と谷部とが連続する歯列で構成されている。可動係合体36の左右方向の幅寸法bは、固定係合体35を構成する左右の歯列の狭隘部分の対向間隔eよりも小さく設定されている。そして、ランナー軸11がランナー台10に対して左右いずれかへ傾動したとき、可動係合体36が固定係合体35の上下2箇所と係合するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
ランナー台10の台側連結穴33の前後壁のそれぞれに縦溝34が形成されている。固定係合体35を構成する歯列が、縦溝34の左右の溝側面のそれぞれに対向状に形成されている。可動係合体36が、ランナー軸11の前後のそれぞれの上下2個所に固定されたピンで形成されている。
【0008】
ランナー台10の台側連結穴33の内面の上下2箇所に、内面に雌ねじ部を有するナット体61が設けられている。固定係合体35を構成する歯列が、ナット体61の雌ねじ部であり、可動係合体36が、ランナー軸11に形成された雄ねじ部62で構成されている。
【0009】
ランナー台10の台側連結穴33の内面の上下2箇所のそれぞれに、左右一対の短尺の第1ラック体65が設けられている。固定係合体35を構成する歯列が、第1ラック体65のラック歯であり、可動係合体36が、ランナー軸11の左右側面に形成された山部と谷部とが連続する長尺の第2ラック体66で構成されている。
【0010】
ランナー本体8の走行体16の移行軌跡に臨む上レール2の天井壁に、前後一対の補助レール2bが下向きに突設されている。ランナー本体8のランナーボディ15の前後面の下部に、上レール2のレール部2aの下面で受止められる規制壁20が張り出し形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のランナーユニット5のように、ランナー軸11を、ランナー本体8のランナー側連結穴18およびランナー台10の台側連結穴33に対して左右傾動可能に連結し、ランナー軸11がランナー台10に対して左右いずれかへ傾動したとき、可動係合体36が固定係合体35の上下2箇所と係合するように構成されていると、戸パネル4が開閉移動されるときには、ランナー軸11は、ランナー台10に対して左右いずれかへ傾動して、可動係合体36を固定係合体35の上下2個所と係合させることができる。そして、この状態から戸パネル4が跳ね上がろうとすると、当該戸パネル4の跳ね上がり動作は、固定係合体35と可動係合体36の上下2箇所の係合箇所を介してランナー軸11に伝えられ、続いてランナー軸11を介してランナー本体8に伝えられ、最後にランナー本体8が上レール2で受止められることで、戸パネル4の跳ね上がりが規制される。以上のように、戸パネル4が開閉移動するときのランナー軸11が、左右いずれかへ傾動して、可動係合体36が固定係合体35の上下2個所と係合するようにしていると、戸パネル4が跳上がりかけた時点で、その跳上がり動作を遅滞なくランナー本体8に伝えることができるので、戸パネル4の跳ね上がりを遅滞なく的確に阻止することができる。
【0012】
加えて、上荷重型(吊下式)ではなく、戸パネル4の全荷重が下レールで支持される下荷重型の戸パネル4を装着対象とするランナーユニット5においては、例えばランナー軸11を介してランナー本体8とランナー台10とが固定されている形態を採った場合には、戸パネル4の寸法差や戸枠の寸法差などに由来して、上レール2に対するランナー本体8の高さ位置や戸パネル4に対するランナー本体8の高さ位置にズレが生じると、走行不良やランナー本体8の上レール2からの脱落(脱輪)などの問題が生じるおそれがある。このため、下荷重型の戸パネル4を装着対象とするランナーユニット5において、ランナー軸11を介してランナー本体8とランナー台10とが固定されている形態を採った場合には、戸パネル4の上レール2に対する組み付け時に、ランナー本体8の高さ位置を厳密に設定する必要があり、作業効率良く引戸装置を構築することができない。
これに対して本発明のように、ランナー軸11の可動係合体36の左右方向の幅寸法bが、ランナー台10の固定係合体35を構成する左右の歯列の狭隘部分の対向間隔eよりも小さく設定されていると、例えば戸パネル4が停止し、ランナー軸11が垂直姿勢となったとき、可動係合体36と固定係合体35との間の係合状態はリセットされるので、戸パネル4の寸法差や戸枠の寸法差の影響を受けて、走行不良や脱落(脱輪)などの問題が生じることはない。以上より、本発明によれば、引戸装置の構築時におけるランナー本体8の高さ調整は不要であり、より作業効率よく、引戸装置を構築することが可能となる。
【0013】
固定係合体35を構成する歯列が、ランナー台10の台側連結穴33の前後壁のそれぞれに形成された縦溝34の左右の溝側面に形成されており、可動係合体36が、ランナー軸11の前後のそれぞれの上下2個所に固定されたピンで形成されている形態を採ることができる。このように、固定係合体35が台側連結穴33の縦溝34の左右の溝側面に形成されていると、可動係合体36を固定係合体35の上側の前後2個所と下側の前後2個所において係合させることができる。以上より、縦溝34の溝側面に形成された固定係合体35の歯列に対して、ランナー軸11の上下2箇所に固定された可動係合体36であるピンが係合することで、戸パネル4の跳上がり動作を、ランナー軸11を介してランナー本体8に確実に伝えることができるので、戸パネル4の跳ね上がりを遅滞なく的確に阻止することができる。
【0014】
ランナー台10の台側連結穴33の内面の上下2箇所に、内面に雌ねじ部を有するナット体61が設けられており、固定係合体35を構成する歯列が、ナット体61の雌ねじ部であり、可動係合体36が、ランナー軸11に形成された雄ねじ部62で構成することができる。これによれば、上下2箇所に設けられたナット体61の雌ねじ部である固定係合体35の歯列に対して、可動係合体36であるランナー軸11の雄ねじ部62が係合することで、戸パネル4の跳上がり動作を、ランナー軸11を介してランナー本体8に確実に伝えることができるので、戸パネル4の跳ね上がりを遅滞なく的確に阻止することができる。新規部品として2個のナット体61を用意して、各ナット体61をランナー台10に組付け、さらにランナー軸11にねじ加工を施して雄ねじ部62を形成すればよいので、跳上防止機構12を備えたランナーユニット5の全体コストを削減して低コスト化できる。
【0015】
ランナー台10の台側連結穴33の内面の上下2箇所のそれぞれに、左右一対の短尺の第1ラック体65が設けられており、固定係合体35を構成する歯列が、第1ラック体65のラック歯であり、可動係合体36が、ランナー軸11の左右側面に形成された山部と谷部とが連続する長尺の第2ラック体66で構成することができる。これによれば、上下2箇所に設けられた第1ラック体65の固定係合体35の歯列に対して、可動係合体36であるランナー軸11の第2ラック体66が係合することで、戸パネル4の跳上がり動作を、ランナー軸11を介してランナー本体8に確実に伝えることができるので、戸パネル4の跳ね上がりを遅滞なく的確に阻止することができる。新規部品として4個の第1ラック体65を用意して、各ラック体65をランナー台10に組付け、さらにランナー軸11に転造加工などによりラック歯を形成すればよいので、跳上防止機構12を備えたランナーユニット5の全体コストを削減して低コスト化できる。
【0016】
上レール2の天井壁に下向きの補助レール2bを突設し、ランナーボディ15の前後面に、上レール2のレール部2aの下面で受止められる規制壁20を張り出し形成すると、戸パネル4が跳上がろうとするとき、走行体16が補助レール2bで受止められ、同時に規制壁20がレール部2aで受止められるので、戸パネル4の跳ね上がりを確実に阻止することができる。また、ランナー本体8の跳ね上がり動作が、レール部2aと補助レール2bの2箇所で受止められるので、戸パネル4の跳ね上がり動作によって、ランナーユニット5が損傷することを抑えて、ランナーユニット5の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1に係るランナーユニットを示す縦断正面図であり、図3におけるB―B線断面図である。
図2】本発明の実施例1に係るランナーユニットが適用される引戸装置の正面図であり、戸パネルが閉じ途中にある状態を示している。
図3図2におけるA―A線断面図である。
図4】引戸装置の要部の正面図である。
図5】ランナーユニットの組付け途中状態を示す一部破断正面図である。
図6】本発明の実施例2に係るランナーユニットを示す縦断正面図である。
図7】本発明の実施例2に係るランナーユニットの分解断面図である。
図8】ランナー軸とナット体の噛合状態を示す横断平面図である。
図9】本発明の実施例3に係るランナーユニットを示す縦断正面図である。
図10】本発明の実施例3に係るランナーユニットの分解断面図である。
図11】ランナー軸とラック体の噛合状態を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1) 図1ないし図5に本発明に係るランナーユニットを引戸装置に適用した実施例1を示す。この実施例における前後、左右、上下とは、図2図3に示す交差矢印と、矢印の近傍の前後、左右、上下の表記に従う。図2に示すように、引戸装置は開口枠1と、同枠1の上下に固定した上レール2および下レール3で開閉案内される戸パネル4とを備える。戸パネル4は、上レール2の内部に設けた一対の吊車型のランナーユニット5・5と、下レール3で移行案内される戸車6に支持されて、閉じ位置と全開放位置の間でスライド開閉可能に構成されている。上レール2は、下向きに開口する断面がC字状のアルミニウム条材からなり、下面の前後にレール部2aが設けられており(図3参照)、後述する走行体16の移行軌跡に臨む天井壁には、前後一対の補助レール2b(上レール2の天井壁に相当する)が下向きに突設されている。下レール3は逆ハ字状のレール面3aと、レール面3aの間に凹み形成される規制溝3bとを備えたアルミニウム条材からなる。戸パネル4の閉じ端側には取手7が設けられている。戸パネル4は下荷重型であり、つまり戸パネル4の全荷重は戸車6を介して下レール3で受け止められている。引戸装置は引違い開閉される複数の戸パネル4を備えるものであってもよい。
【0019】
図1においてランナーユニット5は、上レール2で移行案内されるランナー本体8と、戸パネル4の上部左右に埋設固定されるホルダー9と、ホルダー9に対して側方から装着固定されるランナー台10と、ランナー本体8に組付けられてランナー台10を支持するランナー軸11などで構成される。ランナー軸11は、軸部11aの上部にフランジ部11bが一体に形成された鋼材部品からなる。ランナー台10とランナー軸11の間には、戸パネル4の跳上がりを防ぐ跳上防止機構12が設けられている。ランナー本体8は、左右横長のプラスチック成型品からなるランナーボディ15と、ランナーボディ15の左右に前後一対ずつ配置される4個のローラー(走行体)16と、これらのローラー16を軸支するローラー軸17などで構成される。
【0020】
図3に示すようにランナーボディ15は前後に分割されており、分割面に凹み形成したランナー側連結穴18にランナー軸11が左右方向に傾動可能に嵌込み連結される。そのために、ランナー軸11が断面円形に形成されているのに対して、ランナー側連結穴18の断面は左右に長い長円状に形成されている。ランナー側連結穴18の上部には、ランナー軸11のフランジ部11bを受入れるフランジ穴19が形成されており、フランジ穴19もランナー側連結穴18と同様に、断面が左右に長い長円状に形成されている。ランナーボディ15の前後面の下部には、戸パネル4が跳上がろうとするとき、レール部2aの下面で受止められる規制壁20が張り出し形成されている(図3参照)。図4に示すように、ランナー本体8の開放端には、アシスト装置21が連結されている。
【0021】
図5に示すようにホルダー9は、水平の下壁24と垂直の内奥壁25と、これら両壁24・25と一体の前後壁26・26を備えた、上面と左側面が開口するダイキャスト成形品である。前後壁23・23には、後述するロック構造のロック溝27と、ロック構造のロックピン39をロック溝27に向かって落とし込み案内するガイド面28とが形成されている。ホルダー9は、戸パネル4の左右上隅に形成した装着溝29に嵌め込まれて、下壁24と内奥壁25の上下が3個のビス30で戸パネル4に固定されている。
【0022】
図1および図5においてランナー台10は、その右半部にランナー軸11を連結するための台側連結穴33が上下貫通状に形成されたプラスチック成型品からなり、台側連結穴33の左方に、ホルダー9に装着したランナー台10の分離を防ぐロック構造が設けられている。ランナー台10の基本構造は、従来のランナー台10の構造を概ね踏襲している。ランナー軸11が断面円形に形成されているのに対して、台側連結穴33の断面は左右に長い長円状に形成されており、ランナー軸11が台側連結穴33に対して左右方向に傾動可能に連結されている。
【0023】
跳上防止機構12は、台側連結穴33の前後壁に形成した縦溝34の溝側面に左右対向状に形成される固定係合体35と、ランナー軸11の前後のそれぞれの上下2個所に固定した可動係合体36とで構成される。固定係合体35を構成する歯列は、個々の噛合歯35aが二等辺三角形状の山部と谷部が連続する鋸歯形状に形成されている。可動係合体36は、鋼材製の円形のピンからなり、当該ピンの直径(左右方向の幅寸法)bは、左右の固定係合体35を構成する歯列の対向間隔(歯列の狭隘部分の対向間隔)eより小さく、かつ噛合歯35aの隣接ピッチPより大きく設定されている。ピンである可動係合体36は、ランナー軸11を台側連結穴33に差込んだ状態で、縦溝34の外からランナー軸11に形成したピン穴に打込むことにより、ランナー軸11に固定される。可動係合体36を構成するピンの前後長さはランナー台10の前後厚みと同じに設定されており、可動係合体36は、ランナー軸11が台側連結穴33から抜出るのを防ぐストッパーとしても機能している(図5参照)。
【0024】
上記のように、可動係合体36の直径bが、左右の固定係合体35を構成する歯列の対向間隔eより小さく設定されていると、ランナーボディ15で吊持された垂直姿勢のランナー軸11は、固定係合体35と干渉することなく縦溝34内を上下に相対移動できるので、例えば戸車6を上下調整して戸パネル4とランナーボディ15の上下間隔が調整されるような場合でも、ランナー軸11と固定係合体35の上下位置を調整し直す手間を省くことができる。また、例えば戸パネル4が停止し、ランナー軸11が垂直姿勢となったとき、可動係合体36と固定係合体35との間の係合状態はリセットされるので、戸パネル4の寸法差や開口枠(戸枠)1の寸法差の影響を受けて、ランナーユニット5に走行不良や脱落(脱輪)などの問題が生じることはない。以上より、本実施例によれば、引戸装置の構築時や構築後におけるランナー本体8の高さ調整は不要であり、より作業効率よく、引戸装置を構築することが可能となる。
【0025】
ホルダー9とランナー台10の間には、ホルダー9に装着したランナー台10の分離を防ぐロック構造が設けられている。ロック構造は、ホルダー9の前後壁26・26に設けたロック溝27と、ランナー台10のピン溝10aに組付けられて、ロック溝27に沿って係脱スライドするロックピン39と、ロックピン39をロック位置に向かって移動付勢するロックばね40と、ランナー台10に組付けられて、ロックピン39をロック解除操作するロック解除レバー41などで構成される。ロック解除レバー41は、ランナー台10を前後に挟む横臥三角形状のレバー本体42と、ランナー台10の左側面を塞ぐ指掛けレバー43とを一体に備えたプラスチック成型品からなる。レバー本体42には、ロックピン39を捕捉するピン溝44が形成されており、全体が鳥のくちばし状とされている。ピン溝44は三角形のレバー頂部で開口しており、その溝奥でロックピン39を捕捉している。ロック解除レバー41は、レバー本体42のピン溝44の左方が、スプリングピン45でランナー台10に組付けられており、同ピン45を中心にして往復揺動できる。図1に示す状態から、指掛けレバー43の上端に指先をあてがって、左側方へ引き寄せ操作すると、ロック解除レバー41は反時計回転方向へ揺動するので、ロック溝27に係合していたロックピン39を、ピン溝44でロックばね40の付勢力に逆らいながらロック解除位置まで押上げ操作できる。この状態で、ランナー台10をホルダー9から抜き出して分離できる。ロック構造は、従来のロック構造と同じである。
【0026】
図4においてアシスト装置21は、上向きに開口するケーシング48と、ケーシング48内に配置されるシリンダー型のダンパー49、蓄力ばね50、およびトリガー体51と、ダンパーロッドが接合されるスライダー52と、スライダー52をスライド案内するガイド軸53と、トリガー体51を待機姿勢と作動姿勢に切換え操作するトリガー切換え具54などで構成されており、戸パネル4の閉じ動作をアシストする。ケーシング48の両端には、それぞれエンドブロック55・56が固定されており、図4に向かって左側のエンドブロック55とスライダー52でガイド軸53の両端を軸支し、両者55・52の間に圧縮ばねからなる蓄力ばね50が配置されている。ケーシング48と左側のエンドブロック55は、閉じ端側のランナーボディ15にビス57で連結されている。ダンパー49は、スライダー52と右側のエンドブロック56の間に配置されている。
【0027】
戸パネル4が閉じ操作されるときのアシスト装置21は、蓄力ばね50の弾性力で戸パネル4を閉じ端寄りから閉じ位置までゆっくりと閉じ操作する。詳しくは図4に示すように、トリガー体51の係合爪部51aがケーシング48の底壁の係合穴48aに係合した状態(待機姿勢)で戸パネル4が閉じ端寄りまで閉じ操作されると、トリガー体51の上部の切欠部の右縁がトリガー切換え具54で受止められ、トリガー体51がばね58の付勢力に抗して時計回転方向へ揺動操作されて作動姿勢に切換わる。同時にトリガー体51の切欠部の左縁が、トリガー切換え具54で移動不能に受止められて、トリガー体51の係合爪部51aがケーシング48の係合穴48aから分離して両者の係合が解除される。このように、トリガー体51が作動姿勢に切換わった状態では、それまで圧縮変形されていた蓄力ばね50のばね力が、左側のエンドブロック55とランナーユニット5を介して戸パネル4に作用する。そのため、戸パネル4はダンパー49の緩衝作用を受けながら、閉じ端寄りから閉じ位置までゆっくりと閉じ移動する。
【0028】
戸パネル4が閉じ位置から開放操作されると、トリガー体51がトリガー切換え具54に受止められた状態のまま、ランナーユニット5とケーシング48が開放方向へ移動するので、蓄力ばね50はエンドブロック55で圧縮変形されて蓄力される。そして、ケーシング48の係合穴48aがトリガー体51の係合爪部51aの真下まで移動すると、トリガー体51はばね58のばね力で反時計回転方向へ揺動操作される。トリガー体51が揺動するのに伴って、係合爪部51aが係合穴48aに落込み係合して待機姿勢に切換り、その位置に保持される。待機姿勢に切換ったトリガー体51は、トリガー切換え具54の下面側をくぐり抜けることができるので、以後、アシスト装置21は戸パネル4に同行して開放移動し、戸パネル4が再び閉じ端寄りまで閉じ操作されるまで待機姿勢を保持し続ける。なお、この実施例では、アシスト装置21が戸パネル4の閉じ動作をアシストする場合について説明したが、アシスト装置21は、戸パネル4の閉じ動作をアシストすることに加えて、戸パネル4を開放端寄りから全開放位置まで開放するときの開放動作をアシストする機能を備えていてもよい。
【0029】
以上のように構成したランナーユニット5においては、ランナー台10に形成した固定係合体35と、ランナー軸11の上下に固定したピン状の可動係合体36とで跳上防止機構12を構成したので、跳上防止機構12を設けることに伴う新規部品の追加や、ランナー台10における構造の変更を最小限にできる。具体的には、ピン状の2個の可動係合体36を新規部品として追加し、ランナー台10の成型時に鋸刃状の固定係合体35を形成すればよいので、ランナー体とは別に、左右長が大きなランナー本体部と押圧部材を設ける必要があった従来の上部ガイド装置に比べて、跳上防止機構12を備えたランナーユニット5の全体コストを著しく削減し低コスト化できる。
【0030】
上記構成のランナーユニット5では、戸パネル4が開閉移動するときのランナー軸11は、ランナー台10に対して左右いずれかへ傾動して、可動係合体36が固定係合体35の上下2個所と噛合した状態で、ランナー本体8を戸パネル4に追随移動させる。また、戸パネル4が開放位置から勢いよく閉じ操作されるような場合には、戸パネル4が閉じ端寄りで跳上がろうとする傾向があり、とくにアシスト装置21を備えている引戸開閉構造の場合には、トリガー体51の切欠部の右縁がトリガー切換え具54に衝突するため、戸パネル4が跳上がりやすい。戸パネル4が跳上がりかけると、ホルダー9およびランナー台10が僅かに上方移動するが、この跳上がり動作は互いに噛合う固定係合体35と可動係合体36を介してランナー軸11に伝えられ、さらにランナー軸11からランナー本体8に伝えられる。そのため、戸パネル4が跳上がりかける間もなくローラー16が補助レール2bで受止められ、さらに規制壁20がレール部2aの下面で受止められるので、戸パネル4の跳上がり動作が規制され、戸車6が下レール3から脱輪するのを防止できる。また、ランナー本体8の跳ね上がり動作が、レール部2aと補助レール2bの2箇所で受止められるので、戸パネル4の跳ね上がり動作によって、ランナーユニット5が損傷することを抑えて、ランナーユニット5の耐久性を向上できる。
【0031】
ピン状の可動係合体36が固定係合体35に係合され状態では、図1に示すように可動係合体36の周面が固定係合体35の噛合歯35aの間で受止められるので、戸パネル4の閉じ動作が停止され、あるいは戸パネル4が開放方向へ操作されない限りは、ランナー軸11の傾動姿勢を安定した状態で維持し続けられる。また、固定係合体35の歯列が台側連結穴33の前後壁の左右に対向形成されているので、可動係合体36を固定係合体35の上側の前後2個所と下側の前後2個所において係合させることができる。したがって、可動係合体36と固定係合体35が強固に係合する状態で、戸パネル4の跳上がり動作を、ランナー台10からランナー軸11へ確実に伝えて、戸パネル4の跳ね上がりを遅滞なく的確に阻止することができる。
【0032】
(実施例2) 図6ないし図8に、本発明の実施例2に係るランナーユニット5を示す。実施例2のランナーユニット5では、跳上防止機構12を構成する固定係合体35および可動係合体36を、それぞれ三角形状の山部と谷部が連続するねじ山形状に形成するようにした。詳しくは、固定係合体35を台側連結穴33の内面上下に装着固定したナット体61の雌ねじ部で構成し、可動係合体36を鋼材部品からなるランナー軸11に形成した雄ねじ部62で構成した。ナット体61は既存の六角ナットからなり、図8に示すようにランナー台10に形成した装着穴63に前面側から差込み係合するようにした。また、雄ねじ部62のねじ山径を、ナット体61のねじ穴の内径より小さく設定して、ランナー軸11を台側連結穴33の内部で傾動可能とし、戸パネル4が開閉移動するときのランナー軸11が、ランナー台10に対して左右いずれかへ傾動し、雄ねじ部62の上下2個所のねじ山が上下のナット体61の雌ねじ部のねじ山と噛合って、ランナー本体8を戸パネル4に追随移動させるようにした。この実施例では、雄ねじ部62を呼び径がM5のねじ軸で形成し、ナット体61を呼び径がM6の六角ナットで形成することにより、可動係合体36の雄ねじ部62のねじ山径(左右方向の幅寸法)bが、ナット体61のねじ穴の内径(歯列の狭隘部分の対向間隔)eより小さくなるようにした。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例3においても同じとする。
【0033】
上記のように、実施例2では跳上防止機構12の固定係合体35をナット体61の雌ねじ部で構成し、可動係合体36をランナー軸11に形成した雄ねじ部62で構成したので、新規部品として2個のナット体61を用意して、各ナット体61をランナー台10の装着穴63に差込み係合し、さらにランナー軸11にねじ加工を施して雄ねじ部62を形成すればよいので、跳上防止機構12を備えたランナーユニット5の全体コストを削減して低コスト化できる。さらに、いずれも鋼材部品であるナット体61と雄ねじ部62で跳上防止機構12を構成するので、戸パネル4に大きな跳上げ力が作用するような場合であっても、互いに噛合うねじ山が変形し、あるいはねじ山が欠けるのを確実に防止することができ、したがって跳上防止機構12を強靭化して耐久性を向上できる。
【0034】
(実施例3) 図9ないし図11に、本発明の実施例3に係るランナーユニット5を示す。実施例3のランナーユニット5では、固定係合体35をランナー台10の台側連結穴33の内面上下の左右に固定した短尺の第1ラック体65で構成し、可動係合体36をランナー軸11の左右側面に形成した長尺の第2ラック体66で形成した。図10に示すように、第1ラック体65は、前後に長いラックベース65aの後半部に一群のラック歯65bを形成し、さらにラックベース65aの上下に係合リブ65cを形成したダイキャスト成型品で構成した。ランナー台10の上下4個所には、第1ラック体65を装着するためのラック装着溝67が左右対向状に形成されており、これらのラック装着溝67に、ラック歯65bどうしが左右に対向する状態で各第1ラック体65を差込み係合することにより、第1ラック体65をランナー台10に固定した。ランナー軸11の第2ラック体66を構成するラック歯は、第1ラック体65のラック歯65bと同じサイズに形成し、両第2ラック体66の頂部間の左右寸法(左右方向の幅寸法)bが、第1ラック体65の対向間隔(歯列の狭隘部分の対向間隔)eより小さくなるように設定した。
【0035】
上記のように、実施例3では跳上防止機構12の固定係合体35を第1ラック体65で構成し、可動係合体36をランナー軸11に形成した第2ラック体66で構成したので、新規部品として4個の第1ラック体65を用意して、各第1ラック体65をランナー台10のラック装着溝67に差込み係合し、さらにランナー軸11に転造加工などにより第2ラック体66を形成すればよいので、跳上防止機構12を備えたランナーユニット5の全体コストを削減して低コスト化できる。また、ランナー軸11が左右いずれかへ傾動して可動係合体36のラック歯と固定係合体35のラック歯65bとが噛合(係合)した状態では、両係合体35・36がねじ山状に形成してある場合に比べて、両係合体35・36のラック歯の噛合面積が大きくなるので、跳上防止機構12の強度および耐久性を向上できる利点がある。
【0036】
実施例1において、可動係合体36は丸軸状のピンである必要はなく、三角形、菱形などの断面が多角形状のピンであってもよい。固定係合体35および可動係合体36は、ねじ山形状やラック歯形状以外に、三角形状の山部と谷部が連続する鋸歯形状やギヤ歯形状に形成されていてもよい。
【0037】
下荷重型の戸パネル4においては、同パネル4の重量は戸車6で支持されているので、ランナー本体8には下向きの荷重はほとんど作用しない。そのため、ランナー本体8が備える走行体16は、ローラー軸17で軸支されるローラーである必要はない。例えば走行体16をローラーと同形状の円盤で構成し、該円盤をランナーボディ15と一体に形成する。この場合には、円盤がレール部2a上を摺動することでランナー本体8が左右方向に走行できる。走行体16をランナーボディ15と一体に形成した円盤で構成したランナー本体8によれば、ローラー軸17を省略でき、また、ランナーボディ15にローラーを組付ける必要がない分、ランナー本体8の製造コストを低減できる。
【符号の説明】
【0038】
2 上レール
2a レール部
2b 補助レール
4 戸パネル
8 ランナー本体
9 ホルダー
10 ランナー台
11 ランナー軸
12 跳上防止機構
16 走行体(ローラー)
18 ランナー側連結穴
20 規制壁
33 台側連結穴
34 縦溝
35 固定係合体
36 可動係合体
61 ナット体
62 雄ねじ部
65 第1ラック体
66 第2ラック体
b 左右方向の幅寸法
e 左右の歯列の狭隘部分の対向間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11