(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】化合物、有機光電子素子および表示装置
(51)【国際特許分類】
C07D 209/86 20060101AFI20240726BHJP
C07D 405/12 20060101ALI20240726BHJP
C07D 409/12 20060101ALI20240726BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240726BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240726BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240726BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240726BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240726BHJP
【FI】
C07D209/86 CSP
C07D405/12
C07D409/12
H05B33/14 A
H05B33/22 D
H10K59/10
G09F9/30 365
H10K30/50
(21)【出願番号】P 2021542440
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 KR2020001444
(87)【国際公開番号】W WO2020159266
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0012105
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513298491
【氏名又は名称】エルティー・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LT Materials Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】113-19, Dangha-Ro, Namsa-Myeon, Cheoin-Gu, Yongin-si, Gyeonggi-do 17118, korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジン-ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン-ウー
(72)【発明者】
【氏名】ドン,グァン-イル
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0035376(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第107936957(CN,A)
【文献】国際公開第2018/164239(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0090688(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0098130(KR,A)
【文献】特表2016-507475(JP,A)
【文献】国際公開第2011/059099(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/061824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Ar
1は、
下記化学式2-5であり、
【化10】
前記化学式2-5において、
R
f
~R
i
は、それぞれ独立して、水素、非置換のC6~C60アリール基、または非置換のC2~C60ヘテロアリール基であり、
Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して
、非置換のC6~C60アリール基、または下記化学式3-1~3-4のいずれか1つであり、
L
1~L
3は、それぞれ独立して、単結合
、非置換の
フェニレン基、また
は非置換の
ジメチルフルオレニレン基であり、
n1~n3は、互いに独立して、0~2の整数の1つであり、
R
1~R
6は、それぞれ独立して、水
素であり、
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
前記化学式3-1~化学式3-4において、
Xは、-O-、-S-、または-CR
xR
y-であり、
R
xおよびR
yは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基
、非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基であるか、互いに融合して環を形成し、
R
b~R
eは、それぞれ独立して、水
素である。
【請求項2】
前記Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して、下記のグループIの置換基のいずれか1つである、請求項1に記載の化合物:
【化11】
前記グループIにおいて、
*は、結合位置を意味する。
【請求項3】
前記化学式1で表される化合物は、下記のグループIIの化合物のいずれか1つである、請求項1に記載の化合物。
【化12】
【請求項4】
陽極および陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層とを含み、
前記有機層は、請求項1~
3のいずれか1項に記載の化合物を含む有機光電子素子。
【請求項5】
前記有機層は、正孔輸送層を含み、
前記正孔輸送層は、前記化合物を含む、請求項
4に記載の有機光電子素子。
【請求項6】
請求項
4に記載の有機光電子素子を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年1月30日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2019-0012105号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
【0002】
化合物、有機光電子素子および表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
有機光電子素子(organic optoelectronic diode)は、電気エネルギーと光エネルギーとを相互変換可能な素子である。
【0004】
有機光電子素子は、動作原理によって大きく2つに分けられる。一つは、光エネルギーによって形成されたエキシトン(exciton)が電子と正孔とに分離され、電子と正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されながら電気エネルギーを発生する光電素子であり、もう一つは、電極に電圧または電流を供給して電気エネルギーから光エネルギーを発生する発光素子である。
【0005】
有機光電子素子の例としては、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池、および有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)などが挙げられる。
【0006】
このうち、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)は、近年、平板表示装置(flat panel display device)の需要増加によって大きく注目されている。有機発光素子は、電気エネルギーを光に変換させる素子であって、有機発光素子の性能は、電極の間に位置する有機材料によって多くの影響を受ける。
【0007】
有機発光素子は、2つの電極の間に有機薄膜を配置させた構造を有している。このような構造の有機発光素子に電圧が印加されると、2つの電極から注入された電子と正孔が有機薄膜で結合して対をなした後、消滅しながら光を発する。前記有機薄膜は、必要に応じて単層または多層から構成される。
【0008】
有機薄膜の材料は、必要に応じて発光機能を有することができる。例えば、有機薄膜材料としては、それ自体が単独で発光層を構成できる化合物が使用されてもよく、またはホスト-ドーパント系発光層のホストまたはドーパントの役割を果たす化合物が使用されてもよい。
【0009】
その他にも、有機薄膜の材料として、正孔注入、正孔輸送、電子ブロック、正孔ブロック、電子輸送、電子注入などの役割を果たす化合物が使用されてもよい。
【0010】
有機発光素子の性能、寿命または効率を向上させるために、有機薄膜の材料の開発が求められ続けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一実施形態は、高効率および長寿命の有機光電子素子を実現できる化合物を提供する。
【0012】
他の実施形態は、前記化合物を含む有機光電子素子を提供する。
【0013】
さらに他の実施形態は、前記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願の一実施形態は、下記化学式1で表される化合物を提供する。
【0015】
【化1】
前記化学式1において、Ar
1は、置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基であり、
Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6~C60アリール基、または下記化学式3-1~3-4のいずれか1つであり、
L
1~L
3は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC6~C60アリーレン基、または置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリーレン基であり、
n1~n3は、互いに独立して、0~2の整数の1つであり、
R
1~R
6は、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、または置換もしくは非置換のC6~C60アリール基である。
【0016】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
前記化学式3-1~化学式3-4において、
Xは、-O-、-S-、または-CR
xR
y-であり、
R
xおよびR
yは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基であるか、互いに融合して環を形成し、
R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基である。
【発明の効果】
【0017】
本出願の一実施態様に係る前記化学式1で表される化合物を有機光電子素子の有機物層の材料として用いる場合、正孔注入および正孔輸送能力がさらに強化され、高効率および長寿命の有機光電子素子を実現することができる。
【0018】
本出願の一実施態様に係る前記化学式1で表される化合物は、材料の結晶化が抑制され、薄膜の安定性が向上する特性がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
【
図2】一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
【
図3】一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が制限されず、本発明は後述する特許請求の範囲の範疇によってのみ定義される。
【0021】
本明細書において、「置換もしくは非置換」とは、重水素;ハロゲン基;-CN;C1~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基;C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルケニル基;C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキニル基;C3~C60の単環もしくは多環のシクロアルキル基;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロシクロアルキル基;C6~C60の単環もしくは多環のアリール基;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリール基;-SiRR’R”;-P(=O)RR’;C1~C20のアルキルアミン基;C6~C60の単環もしくは多環のアリールアミン基;C2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリールアミン基、および置換もしくは非置換のアルコキシ基からなる群より選択された1以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記置換基のうちの2以上が結合した置換基で置換もしくは非置換であるか、前記置換基の中から選択された2以上の置換基が連結された置換基で置換もしくは非置換であることを意味する。また、これらは、隣接した置換基と追加的に環を形成してもよい。
【0022】
例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。すなわち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。前記追加の置換基は、追加的にさらに置換されていてもよい。前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;-CN;置換もしくは非置換のC1~C60の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基;置換もしくは非置換のC3~C60の単環もしくは多環のシクロアルキル基;置換もしくは非置換のC6~C60の単環もしくは多環のアリール基;または置換もしくは非置換のC2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリール基である。
【0023】
本出願の一実施態様によれば、前記「置換もしくは非置換」とは、重水素、ハロゲン基、-CN、-SiRR’R”、-P(=O)RR’、C1~C20の直鎖もしくは分枝鎖のアルキル基、C6~C60の単環もしくは多環のアリール基、およびC2~C60の単環もしくは多環のヘテロアリール基からなる群より選択された1以上の置換基で置換もしくは非置換であり、前記R、R’およびR”は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;重水素;-CN;重水素、ハロゲン基、-CN、C1~C20のアルキル基、C6~C60のアリール基、およびC2~C60のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC1~C60のアルキル基;重水素、ハロゲン、-CN、C1~C20のアルキル基、C6~C60のアリール基、およびC2~C60のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC3~C60のシクロアルキル基;重水素、ハロゲン、-CN、C1~C20のアルキル基、C6~C60のアリール基、およびC2~C60のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC6~C60のアリール基;または重水素、ハロゲン、-CN、C1~C20のアルキル基、C6~C60のアリール基、およびC2~C60のヘテロアリール基で置換もしくは非置換のC2~C60のヘテロアリール基である。
【0024】
前記「置換」という用語は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は水素原子の置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0025】
本明細書において、前記ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素であってもよい。
【0026】
本明細書において、前記アルキル基は、C1~C60の直鎖もしくは分枝鎖を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。前記アルキル基の炭素数は1~60、具体的には1~40、さらに具体的には1~20であってもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、前記アルケニル基は、C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。前記アルケニル基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には2~20であってもよい。具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、アリル基、1-フェニルビニル-1-イル基、2-フェニルビニル-1-イル基、2,2-ジフェニルビニル-1-イル基、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル基、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル基、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0028】
本明細書において、前記アルキニル基は、C2~C60の直鎖もしくは分枝鎖を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。前記アルキニル基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には2~20であってもよい。
【0029】
本明細書において、前記シクロアルキル基は、C3~C60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、多環とは、シクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、シクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記シクロアルキル基の炭素数は3~60、具体的には3~40、さらに具体的には5~20であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これらに限定されない。
【0030】
本明細書において、前記アルコキシ基は、C1~C10アルコキシ基であってもよいし、より具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などであってもよい。
【0031】
本明細書において、前記シリル基は、-SiRR’R”で表されてもよいし、前記Rの定義は、前述した通りである。より具体的には、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルエチルシリル基などが可能である。
【0032】
本明細書において、前記ホスフィンオキシド基は、-P(=O)RR’で表されてもよいし、前記RおよびR’の定義は、前述した通りである。より具体的には、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、メチルエチルホスフィンなどが可能である。
【0033】
本明細書において、フルオレニル基は、9番位置に多様な置換基が含まれた置換基を意味する。具体的には、9番位置に2個の水素、2個のアルキル基、2個のアリール基、2個のヘテロアリール基が置換されたフルオレニル基を含む概念で使われる。より具体的には、9-di-H-フルオレニル基、9-ジ-メチル-フルオレニル基、9-ジ-フェニル-フルオレニル基などが使用できる。
【0034】
本明細書において、前記ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロ原子としてO、S、Se、N、またはSiを含み、C2~C60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、多環とは、ヘテロシクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、ヘテロシクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記ヘテロシクロアルキル基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には3~20であってもよい。
【0035】
本明細書において、前記アリール基は、C6~C60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、多環とは、アリール基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、アリール基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基などであってもよい。前記アリール基は、スピロ基を含む。前記アリール基の炭素数は6~60、具体的には6~40、さらに具体的には6~25であってもよい。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ナフチル基、アントリル基、クリセニル基、フェナントレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、フェナレニル基、ピレニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、インデニル基、アセナフチレニル基、ベンゾフルオレニル基、スピロビフルオレニル基、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル基、これらの縮合環基などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0036】
本明細書において、前記スピロ基は、スピロ構造を含む基であって、C15~C60であってもよい。例えば、前記スピロ基は、フルオレニル基に2,3-ジヒドロ-1H-インデン基またはシクロヘキサン基がスピロ結合した構造を含むことができる。具体的には、下記のスピロ基は、下記構造式の基のいずれか1つを含むことができる。
【0037】
【0038】
本明細書において、前記ヘテロアリール基は、ヘテロ原子としてS、O、Se、N、またはSiを含み、C2~C60の単環もしくは多環を含み、他の置換基によって追加的に置換されていてもよい。ここで、前記多環とは、ヘテロアリール基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味する。ここで、他の環基とは、ヘテロアリール基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基などであってもよい。前記ヘテロアリール基の炭素数は2~60、具体的には2~40、さらに具体的には3~25であってもよい。前記ヘテロアリール基の具体例としては、ピリジル基、ピロリル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、フラニル基、チオフェン基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、フラザニル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ジチアゾリル基、テトラゾリル基、ピラニル基、チオピラニル基、ジアジニル基、オキサジニル基、チアジニル基、ジオキシニル基、トリアジニル基、テトラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、キナゾリニル基、イソキナゾリニル基、キノゾリリル基、ナフチリジル基、アクリジニル基、フェナントリジニル基、イミダゾピリジニル基、ジアザナフタレニル基、トリアザインデン基、インドリル基、インドリジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチオフェン基、ベンゾフラン基、ジベンゾチオフェン基、ジベンゾフラン基、カルバゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ジベンゾカルバゾリル基、フェナジニル基、ジベンゾシロール基、スピロビ(ジベンゾシロール)、ジヒドロフェナジニル基、フェノキサジニル基、フェナントリジル基、イミダゾピリジニル基、チエニル基、インドロ[2,3-a]カルバゾリル基、インドロ[2,3-b]カルバゾリル基、インドリニル基、10,11-ジヒドロ-ジベンゾ[b,f]アゼピン基、9,10-ジヒドロアクリジニル基、フェナントラジニル基、フェノチアチアジニル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾリル基、5,10-ジヒドロジベンゾ[b,e][1,4]アザシリニル、ピラゾロ[1,5-c]キナゾリニル基、ピリド[1,2-b]インダゾリル基、ピリド[1,2-a]イミダゾ[1,2-e]インドリニル基、5,11-ジヒドロインデノ[1,2-b]カルバゾリル基などが挙げられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0039】
本明細書において、前記アミン基は、モノアルキルアミン基;モノアリールアミン基;モノヘテロアリールアミン基;-NH2;ジアルキルアミン基;ジアリールアミン基;ジヘテロアリールアミン基;アルキルアリールアミン基;アルキルヘテロアリールアミン基;およびアリールヘテロアリールアミン基からなる群より選択されてもよいし、炭素数は特に限定されないが、1~30のものが好ましい。前記アミン基の具体例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、ジビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基、ビフェニルナフチルアミン基、フェニルビフェニルアミン基、ビフェニルフルオレニルアミン基、フェニルトリフェニレニルアミン基、ビフェニルトリフェニレニルアミン基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0040】
本明細書において、アリーレン基は、アリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したアリール基の説明が適用可能である。また、ヘテロアリーレン基は、ヘテロアリール基に結合位置が2つあるもの、すなわち2価の基を意味する。これらは、それぞれ2価の基であることを除けば、前述したヘテロアリール基の説明が適用可能である。
【0041】
本明細書において、正孔特性とは、電場(electric field)を加えた時、電子を供与して正孔を形成できる特性をいうもので、HOMO準位に沿って伝導特性を有し、陽極で形成された正孔の発光層への注入、発光層で形成された正孔の陽極への移動、および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0042】
正孔特性を有する置換基としては、正孔特性を有する置換もしくは非置換のC6~C60アリール基、正孔特性を有する置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のアリールアミン基、または置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基などがある。
【0043】
より具体的には、前記正孔特性を有する置換もしくは非置換のC6~C60アリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のフェナントレニル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のスピロ-フルオレニル基、置換もしくは非置換のターフェニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のペリレニル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0044】
より具体的には、正孔特性を有する置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基は、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のインドールカルバゾリル基などである。
【0045】
前記置換もしくは非置換のアリールアミン基および置換もしくは非置換のヘテロアリールアミン基の窒素に結合した置換基であるアリール基またはヘテロアリール基は、より具体的には、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニリル基、置換もしくは非置換のp-ターフェニル基、置換もしくは非置換のm-ターフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、置換もしくは非置換のペリレニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、置換もしくは非置換のフラニル基、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のピロリル基、置換もしくは非置換のピラゾリル基、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のトリアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサゾリル基、置換もしくは非置換のチアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル基、置換もしくは非置換のチアジアゾリル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル基、置換もしくは非置換のインドリル基、置換もしくは非置換のキノリニル基、置換もしくは非置換のイソキノリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のナフチリジニル基、置換もしくは非置換のベンズオキサジニル基、置換もしくは非置換のベンズチアジニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、置換もしくは非置換のフェノチアジニル基、置換もしくは非置換のフェノキサジニル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0046】
また、電子特性とは、電場を加えた時、電子を受け取ることができる特性をいうもので、LUMO準位に沿って伝導特性を有し、陰極で形成された電子の発光層への注入、発光層で形成された電子の陰極への移動、および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0047】
前記電子特性を有する置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基は、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のテトラゾリル基、置換もしくは非置換のキノリニレン基、置換もしくは非置換のイソキノリニレン基、置換もしくは非置換のピリジニレン基、置換もしくは非置換のピリミジニレン基、置換もしくは非置換のトリアジニレン基、置換もしくは非置換のフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のイソフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾイソフラニル基、置換もしくは非置換のオキサゾリン基、置換もしくは非置換のベンゾオキサゾリン基、置換もしくは非置換のオキサジアゾリン基、置換もしくは非置換のベンゾオキサジアゾリン基、置換もしくは非置換のオキサトリアゾリル基、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のイソチアゾリン基、置換もしくは非置換のベンゾイソチアゾリン基、置換もしくは非置換のチアゾリン基、置換もしくは非置換のベンゾチアゾリン基、置換もしくは非置換のピリダジニル基、置換もしくは非置換のベンゾピリダジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のベンゾピラジニル基、置換もしくは非置換のフタラジニル基、置換もしくは非置換のベンゾキノリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナントロリニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0048】
より具体的には、前記電子特性を有する置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基は、下記化学式X-1~X-5のいずれか1つであってもよい。
【0049】
【0050】
本出願の一実施態様において、Lnは、直接結合(または単結合);置換もしくは非置換のアリーレン基;または置換もしくは非置換のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0051】
他の実施態様において、Lnは、直接結合;置換もしくは非置換のC6~C60のアリーレン基;または置換もしくは非置換のC2~C60のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0052】
さらに他の実施態様において、Lnは、直接結合;置換もしくは非置換のC6~C40のアリーレン基;または置換もしくは非置換のC2~C40のヘテロアリーレン基であってもよい。
【0053】
前記Lnにおけるnは、置換基を区分するための数字を意味する。
【0054】
例えば、前記nは、1~3の整数である。すなわち、本明細書において、前記Lnは、それぞれL1、L2、およびL3で表されてもよい。
【0055】
以下、一実施形態に係る化合物を説明する。
【0056】
一実施形態に係る化合物は、下記化学式1で表される。
【0057】
【化8】
前記化学式1において、Ar
1は、置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基であり、Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6~C60アリール基、または下記化学式3-1~3-4のいずれか1つであり、L
1~L
3は、それぞれ独立して、単結合、置換もしくは非置換のC6~C60アリーレン基、または置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリーレン基であり、n1~n3は、互いに独立して、0~2の整数の1つであり、R
1~R
6は、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、または置換もしくは非置換のC6~C60アリール基である。
【0058】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
前記化学式3-1~化学式3-4において、Xは、-O-、-S-、または-CR
xR
y-であり、R
xおよびR
yは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基であるか、互いに融合して環を形成し、R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基である。
【0059】
化学式1で表される化合物は、アミン基の置換基のいずれか1つがターフェニレン基であり、前記ターフェニレン基のアミン基が結合している位置から最も遠くにあるフェニル基を基準としてオルト(ortho)位に置換もしくは非置換のヘテロアリール基が結合した構造である。
【0060】
アミン基とターフェニレンの結合構造から、HOMO電子雲が拡張され、これによって、HOMOエネルギーレベルを高めて正孔注入および正孔輸送能力がさらに強化され、これを適用した素子の駆動電圧を低下させることができる。
【0061】
同時に、ターフェニレンのアミン基が結合している位置から最も遠くにあるフェニル基を基準としてオルト位に結合した置換もしくは非置換のヘテロアリール基から、HOMOエネルギーレベルを高めて正孔注入および正孔輸送能力がさらに強化され、高効率および長寿命を期待することができる。
【0062】
これは、ターフェニレンのアミン基が結合している位置から最も遠くにあるフェニル基を基準としてパラ(para)位に結合した置換もしくは非置換のヘテロアリール基を含む化合物と比較する時、立体的大きさが増加して分子間相互作用が減少するため、材料の結晶化が抑制され、薄膜の安定性が向上する特性がある。
【0063】
また、前記化学式1の構造に多様な置換基を導入することにより、導入された置換基固有の特性を有する化合物を合成することができる。例えば、有機発光素子の製造時に使用される正孔注入層物質、正孔輸送層物質、発光層物質、電子輸送層物質、および電荷生成層物質に主に使用される置換基を前記コア構造に導入することにより、各有機物層で求める条件を満たす物質を合成することができる。
【0064】
さらに、前記化学式1の構造に多様な置換基を導入することによりエネルギーバンドギャップを微細調節可能にし、一方で、有機物の間における界面での特性を向上させ、物質の用途を多様化することができる。
【0065】
一方、前記化合物は、ガラス転移温度(Tg)が高くて熱的安定性に優れる。このような熱的安定性の増加は、素子に駆動安定性を提供する重要な要因になる。
【0066】
一例として、前記Ar1は、下記化学式2-1~2-5のいずれか1つであってもよい。
【0067】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
前記化学式2-1~化学式2-5において、X
1は、-NR
x-、-O-、または-S-であり、
R
h~R
iは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C60アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基である。
【0068】
前記化学式2-1~2-5から、化合物の剛直性、耐熱性が向上した特性を有し、低い電界強度を有して、正孔の移動速度が改善される効果を期待することができる。
【0069】
より具体的には、前記Ar1は、置換もしくは非置換のカルバゾリル基であってもよい。この時、HOMO電子雲が拡張され、これによって、HOMOエネルギーレベルを高めて正孔注入および正孔輸送能力がさらに強化され、これを適用した素子の駆動電圧を低下させることができる。
【0070】
より具体的には、前記Ar1は、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基であってもよい。この時、化合物は、剛直性、耐熱性が向上した特性を有し、低い電界強度を有して、正孔の移動速度が大きい特徴を有する。
【0071】
前記Ar1は、置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基であってもよい。同じく、化合物は、剛直性、耐熱性が向上した特性を有し、低い電界強度を有して、正孔の移動速度が大きい特徴を有する。
【0072】
前記Rh~Riは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC6~C60アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C60ヘテロアリール基である。
【0073】
前記Rh~Riは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC6~C40アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C40ヘテロアリール基である。
【0074】
前記Rh~Riは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C20ヘテロアリール基である。
【0075】
前記Rh~Riは、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基である。
【0076】
前記Rh~Riは、それぞれ独立して、水素、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、またはジベンゾチオフェニル基である。
【0077】
前記Ar
2およびAr
3は、それぞれ独立して、下記のグループIの置換基のいずれか1つであってもよい。
【化18】
前記グループIにおいて、*は、結合位置を意味する。
【0078】
前記Ar2およびAr3の置換基が前記グループIの置換基の1つである場合、正孔移動度が改善され、正孔輸送層に用いても低い駆動値の特性を有する。
【0079】
より具体的には、前記Ar2およびAr3のいずれか1つは、下記化学式3-1~3-4のいずれか1つであってもよい。
【0080】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
前記化学式3-1~化学式3-4において、Xは、-O-、-S-、または-CR
xR
y-であり、R
xおよびR
yは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基であり、R
b~R
eは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C60アルキル基、またはC6~C60アリール基である。
【0081】
前述した一例の化合物は、下記のグループIIの化合物のいずれか1つで表されてもよい。
【化23】
【0082】
前述した化合物または組成物は、有機光電子素子用であってもよいし、有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物は、化学気相蒸着のような乾式成膜法によって形成される。
【0083】
以下、上述した有機光電子素子用化合物または有機光電子素子用組成物を適用した有機光電子素子を説明する。
【0084】
有機光電子素子は、電気エネルギーと光エネルギーとを相互変換可能な素子であれば特に限定されず、例えば、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池、および有機感光体ドラムなどが挙げられる。
【0085】
また、本出願の一実施態様において、第1電極と、前記第1電極に対向して備えられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層とを含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化学式1で表されるヘテロ環化合物を含む有機発光素子を提供する。
【0086】
本出願の一実施態様において、前記第1電極は、陽極であってもよく、前記第2電極は、陰極であってもよい。
【0087】
他の実施態様において、前記第1電極は、陰極であってもよく、前記第2電極は、陽極であってもよい。
【0088】
前記化学式1で表されるヘテロ環化合物に関する具体的な内容は、前述したものと同じである。
【0089】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は、青色有機発光素子であってもよいし、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、前記青色有機発光素子の材料として使用できる。
【0090】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は、緑色有機発光素子であってもよいし、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、前記緑色有機発光素子の材料として使用できる。
【0091】
本出願の一実施態様において、前記有機発光素子は、赤色有機発光素子であってもよいし、前記化学式1によるヘテロ環化合物は、前記赤色有機発光素子の材料として使用できる。
【0092】
本発明の有機発光素子は、前述したヘテロ環化合物を用いて1層以上の有機物層を形成することを除けば、通常の有機発光素子の製造方法および材料によって製造できる。
【0093】
前記ヘテロ環化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法のみならず、溶液塗布法によって有機物層に形成される。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらのみに限定されるものではない。
【0094】
ここでは、有機光電子素子の一例である有機発光素子の他の例を、図面を参照して説明する。
【0095】
図1~3に本出願の一実施態様に係る有機発光素子の電極と有機物層の積層順序を例示した。しかし、これらの図面によって本出願の範囲が限定されることを意図したわけではなく、当技術分野にて知られている有機光電子素子の構造が本出願にも適用可能である。
【0096】
図1によれば、基板100上に、陽極200、有機物層300、および陰極400が順次に積層された有機発光素子が示される。しかし、このような構造のみに限定されるものではなく、
図2のように、基板上に、陰極、有機物層、および陽極が順次に積層された有機発光素子が実現されてもよい。
【0097】
図3は、有機物層が多層の場合を例示したものである。
図3による有機発光素子は、正孔注入層301、正孔輸送層302、発光層303、正孔阻止層304、電子輸送層305、および電子注入層306を含む。しかし、このような積層構造によって本出願の範囲が限定されるものではなく、必要に応じて、発光層を除いた残りの層は省略されてもよく、必要な他の機能層がさらに追加されてもよい。
【0098】
前記化学式1で表される化合物は、有機発光素子において電子輸送層、正孔輸送層、発光層の材料などに使用できる。
【0099】
陽極材料としては、比較的仕事関数の大きい材料を用いることができ、透明導電性酸化物、金属または導電性高分子などを使用することができる。前記陽極材料の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO2:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0100】
陰極材料としては、比較的仕事関数の低い材料を用いることができ、金属、金属酸化物、または導電性高分子などを使用することができる。前記陰極材料の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO2/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0101】
正孔注入材料としては、公知の正孔注入材料を用いることもできるが、例えば、米国特許第4,356,429号に開示された銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、または文献[Advanced Material,6,p.677(1994)]に記載されているスターバースト型アミン誘導体類、例えば、トリス(4-カルバゾイル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、4,4’,4”-トリ[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、1,3,5-トリス[4-(3-メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン(m-MTDAPB)、溶解性のある導電性高分子であるポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Polyaniline/Dodecylbenzenesulfonic acid)、またはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Poly(3,4-ethylenedioxythiophene)/Poly(4-styrenesulfonate))、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Polyaniline/Camphor sulfonic acid)、またはポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(Polyaniline/Poly(4-styrene-sulfonate))などを使用することができる。
【0102】
正孔輸送材料としては、ピラゾリン誘導体、アリールアミン系誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体などが使用可能であり、低分子または高分子材料が使用されてもよい。
【0103】
電子輸送材料としては、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタンおよびその誘導体、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタンおよびその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレンおよびその誘導体、ジフェノキノン誘導体、8-ヒドロキシキノリンおよびその誘導体の金属錯体などが使用可能であり、低分子物質のみならず、高分子物質が使用されてもよい。
【0104】
電子注入材料としては、例えば、LiFが当業界にて代表的に使用されるが、本出願がこれに限定されるものではない。
【0105】
発光材料としては、赤色、緑色または青色発光材料が使用可能であり、必要な場合、2以上の発光材料を混合して使用することができる。この時、2以上の発光材料を個別的な供給源として蒸着して使用するか、予備混合して1つの供給源として蒸着して使用することができる。また、発光材料として蛍光材料を使用してもよいが、燐光材料として使用してもよい。発光材料としては、単独として陽極と陰極からそれぞれ注入された正孔と電子を結合して発光させる材料が使用されてもよいが、ホスト材料とドーパント材料が共に発光に関与する材料が使用されてもよい。
【0106】
発光材料のホストを混合して用いる場合には、同一系のホストを混合して使用してもよく、異なる系のホストを混合して使用してもよい。例えば、Nタイプのホスト材料またはPタイプのホスト材料のいずれか2種類以上の材料を選択して発光層のホスト材料として使用することができる。
【0107】
本出願の一実施態様に係る有機発光素子は、使用される材料によって、前面発光型、後面発光型、または両面発光型であってもよい。
【実施例】
【0108】
以下、実施例を通じて上述した実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0109】
以下、実施例および合成例で使用された出発物質および反応物質は、特別な言及がない限り、Sigma-Aldrich社、TCI社、tokyo chemical industry、またはP&H techから購入したか、公知の方法により合成した。
【0110】
(有機光電子素子用化合物の製造)
[製造例A1-1]中間体A(1)の合成
【化24】
【0111】
中間体A(1)-P3の合成
カルバゾール(Carbazole)(40g、1eq)、1-ブロモ-2-ヨードベンゼン(1-bromo-2-iodobenzene)(70g、1.5eq)、CuI(6.3g、0.2eq)、K3PO4(70g、2eq)、トランス-1,2-シクロヘキサンジアミン(trans-1,2-cyclohexanediamine)(19g、1eq)、およびトルエン(toluene)(600ml)を、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(4時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、メチレンクロライド(Methylene chloride、MC)だけで濾過(filter)した後、カラム分離をして、P3を約65g得た。
Step yield=96%
【0112】
中間体A(1)-P2の合成
P3(65g、1eq)、ビス(ピナコラト)ジボロン(bis(pinacolato)diboron)(65g、1.5eq)、PdCl2(dppf)(11g、0.1eq)、KOAc(50g、3eq)、およびジオキサン(Dioxane)800mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(6時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、シリカ/セライト(Silica/celite)を用いて濾過(filter)をして、P2を約60g得た。
Step yield=83%
【0113】
中間体A(1)-P1の合成
P2(60g、1eq)、4-ブロモ-4’-ヨード1,1’-ビフェニル(4-bromo-4’-iodo1,1’-biphenyl)(63g、1.3eq)、Pd(Pph3)4(7.8g、0.05eq)、K2CO3(28g、1.5eq)、トルエン(toluene)600ml、エタノール(Ethanol)100ml、およびH2O100mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(4時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、メチレンクロライド(Methylene chloride、MC)だけで保温濾過(hot filter)を2回実施して、P1を33g得た。
Step yield=54%
【0114】
[製造例A1-2]中間体A(2)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに2-フェニル-カルバゾール(2-phenyl-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(2)を合成した。
【0115】
[製造例A1-3]中間体A(3)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに3-フェニル-カルバゾール(3-phenyl-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(3)を合成した。
【0116】
[製造例A1-4]中間体A(4)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに4-フェニル-カルバゾール(4-phenyl-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(4)を合成した。
【0117】
[製造例A1-5]中間体A(5)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに1-フェニル-カルバゾール(1-phenyl-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(5)を合成した。
【0118】
[製造例A1-6]中間体A(6)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに2,7-フェニル-カルバゾール(2,7-phenyl-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(6)を合成した。
【0119】
[製造例A1-7]中間体A(7)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに3,6-フェニル-カルバゾール(3,6-phenyl-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(7)を合成した。
【0120】
[製造例A1-8]中間体A(8)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに2-(ナフタレン-1-イル)-9H-カルバゾール(2-(naphthalen-1-yl)-9H-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(8)を合成した。
【0121】
[製造例A1-9]中間体A(9)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)-9H-カルバゾール(2-(dibenzo[b,d]furan-4-yl)-9H-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(9)を合成した。
【0122】
[製造例A1-10]中間体A(10)の合成
中間体A(1)-P3の合成において、カルバゾール(carbazole)の代わりに2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-9H-カルバゾール(2-(dibenzo[b,d]thiophen-4-yl)-9H-carbazole)を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、中間体A(10)を合成した。
【0123】
[製造例1-a]ビフェニルアミン(Biphenylamine)の合成
4-ブロモ-ベンゼンアミン(4-bromo-benzenamine)(30g、1eq)、フェニルボロン酸(Phenyl boronicacid)(25.52g、1.5eq)、Pd(Pph3)4(10g、0.05eq)、K2CO3(36g、1.5eq)、トルエン(toluene)600ml、EtOH100ml、およびH2O100mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(3時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、メチレンクロライド(Methylene chloride、MC)およびヘキサン(Hexane、Hx)の比をMC:Hx=1:5としてシリカ濾過(silica filter)して、ビフェニルアミン(Biphenylamine)を19g得た。
Step yield=64%
【0124】
[製造例1-b]N-[1,1’-ビフェニル]-3-イル[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[1,1’-Biphenyl]-3-yl[1,1’-biphenyl]-4-amine)の合成
ビフェニルアミン(Biphenylamine)(15g、1eq)、3-ブロモビフェニル(3-bromobiphenyl)(25g、1.2eq)、Pd2(dba)3(2.4g、0.03eq)、t-BuONa(12.5g、1.5eq)、t-Bu3P(1.05g、0.06eq)、およびトルエン(toluene)400mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(4時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、メチレンクロライド(Methylene chloride、MC)およびヘキサン(Hexane、Hx)の比をMC:Hx=1:5としてカラム分離して、N-[1,1’-ビフェニル]-3-イル[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[1,1’-Biphenyl]-3-yl[1,1’-biphenyl]-4-amine)を18g得た。(step yield=71%)
【0125】
[製造例1-c]N-[4-(4-ジベンゾフラニル)フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[4-(4-dibenzofuranyl)phenyl]-[1,1’-Biphenyl]-4-amine)の合成
ビフェニルアミン(Biphenylamine)(19g、1.3eq)、4-(4-ブロモフェニル)-ジベンゾフラン(4-(4-bromophenyl)-Dibenzofuran)(28g、1eq)、Pd2(dba)3(2.4g、0.03eq)、t-BuONa(12.5g、1.5eq)、t-Bu3P(1.05g、0.06eq)、およびトルエン(toluene)400mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(4時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、濾過して固体を得た。(28g)前記固体をトルエン(toluene)を用いた保温濾過(hot filter)をして、N-[4-(4-ジベンゾフラニル)フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[4-(4-dibenzofuranyl)phenyl]-[1,1’-Biphenyl]-4-amine)を18g得た。(step yield=51%)
【0126】
[製造例1-d]N-[4-(3-ジベンゾフラニル)フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[4-(3-dibenzofuranyl)phenyl]-[1,1’-Biphenyl]-4-amine)の合成
前記製造例1-cの合成法において、4-(4-ブロモフェニル)-ジベンゾフラン(4-(4-bromophenyl)-Dibenzofuran)を3-(4-ブロモフェニル)-ジベンゾフラン(3-(4-bromophenyl)-Dibenzofuran)に変更したことを除いてすべてを同様にして、N-[4-(3-ジベンゾフラニル)フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[4-(3-dibenzofuranyl)phenyl]-[1,1’-Biphenyl]-4-amine)を合成した。
【0127】
[製造例1-e]N-[4-(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[4-(2-dibenzofuranyl)phenyl]-[1,1’-Biphenyl]-4-amine)の合成
前記製造例1-cの合成法において、4-(4-ブロモフェニル)-ジベンゾフラン(4-(4-bromophenyl)-Dibenzofuran)を2-(4-ブロモフェニル)-ジベンゾフラン(2-(4-bromophenyl)-Dibenzofuran)に変更したことを除いてすべてを同様にして、N-[4-(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-[1,1’-ビフェニル]-4-アミン(N-[4-(2-dibenzofuranyl)phenyl]-[1,1’-Biphenyl]-4-amine)を合成した。
【0128】
[製造例1-f]N-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)ジベンゾ[b,d]フラン-4-アミン(N-([1,1’-biphenyl]-3-yl)dibenzo[b,d]furan-4-amine)の合成
ジベンゾ[b,d]フラン-4-アミン(dibenzo[b,d]furan-4-amine)(13g、1eq)、3-ブロモビフェニル(3-bromobiphenyl)(25g、1.2eq)、Pd2(dba)3(2.4g、0.03eq)、t-BuONa(12.5g、1.5eq)、t-Bu3P(1.05g、0.06eq)、およびトルエン(toluene)400mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(3時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、メチレンクロライド(Methylene chloride、MC)およびヘキサン(Hexane、Hx)の比をMC:Hx=1:5としてカラム分離して、N-([1,1’-ビフェニル]-3-イル)ジベンゾ[b,d]フラン-4-アミン(N-([1,1’-biphenyl]-3-yl)dibenzo[b,d]furan-4-amine)を16g得た。(step yield=73%)
【0129】
[製造例1-g]N-(4-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)フェニル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(N-(4-(dibenzo[b,d]furan-4-yl)phenyl)-9,9-dimethyl-9H-fluoren-2-amine)の合成
9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(9,9-dimethyl-9H-fluoren-2-amine)(10g、1eq)、4-(4-ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]フラン(4-(4-bromophenyl)dibenzo[b,d]furan(28g、1.2eq)、Pd2(dba)3(2.4g、0.03eq)、t-BuONa(12.5g、1.5eq)、t-Bu3P(1.05g、0.06eq)、およびトルエン(toluene)400mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(4時間(h))
9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(9,9-dimethyl-9H-fluoren-2-amine)(10g、1eq)、4-(4-ブロモフェニル)ジベンゾ[b,d]フラン(4-(4-bromophenyl)dibenzo[b,d]furan(28g、1.2eq)、Pd2(dba)3(2.4g、0.03eq)、t-BuONa(12.5g、1.5eq)、t-Bu3P(1.05g、0.06eq)、およびトルエン(toluene)400mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(4時間(h))
【0130】
[製造例1-h]2-(ナフタレン-1-イル)-9H-カルバゾール(2-(naphthalen-1-yl)-9H-carbazole)の合成
2-ブロモ-9H-カルバゾール(2-bromo-9H-carbazole)(7.5g、1eq)、ナフタレン-1-イルボロン酸(naphthalen-1-ylboronic acid)(8.2g、1.65eq)、Pd(Pph3)4(2g、0.05eq)、K2CO3(13g、3eq)、トルエン(toluene)150ml、EtOH50ml、およびH2O50mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(5時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、濾過して固体を得た。前記固体をMeOHで洗った後、2-(ナフタレン-1-イル)-9H-カルバゾール(2-(naphthalen-1-yl)-9H-carbazole)を8g得た。(step yield=89%)
【0131】
[製造例1-i]2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)-9H-カルバゾール(2-(dibenzo[b,d]furan-4-yl)-9H-carbazole)の合成
前記製造例1-hの合成法において、ナフタレン-1-イルボロン酸(naphthalen-1-ylboronic acid)をジベンゾ[b,d]フラン-4-イルボロン酸(dibenzo[b,d]furan-4-ylboronic acid)に変更したことを除いてすべてを同様にして、2-(ジベンゾ[b,d]フラン-4-イル)-9H-カルバゾール(2-(dibenzo[b,d]furan-4-yl)-9H-carbazole)を合成した。(step yield=95%)
【0132】
[製造例1-j]2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-9H-カルバゾール(2-(dibenzo[b,d]thiophen-4-yl)-9H-carbazole)の合成
前記製造例1-hの合成法において、ナフタレン-1-イルボロン酸(naphthalen-1-ylboronic acid)をジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イルボロン酸(dibenzo[b,d]thiophen-4-ylboronic acid)に変更したことを除いてすべてを同様にして、2-(ジベンゾ[b,d]チオフェン-4-イル)-9H-カルバゾール(2-(dibenzo[b,d]thiophen-4-yl)-9H-carbazole)を合成した。(step yield=85%)
【0133】
化合物A1-1の合成
中間体A(1)-P1(10g、1eq)、ビス(ビフェニル)アミン(bis(biphenyl)amine)(8g、1.1eq)、Pd(OAc)2(0.21g、0.05eq)、t-BuONa(2.62g、1.5eq)、t-Bu3P(0.37g、0.1eq)、およびtoluene200mlを、1口丸底フラスコ(1-1-neck-round bottom flask、1-neck-r.b.f)に入れて撹拌した。(1.5時間(h))
前記撹拌が終わった反応液を、濾過(filter)して固体を得た。(約11g、step yield=75%)前記固体をトルエン(toluene)を用いた保温濾過(hot filter)をして、HPLC99.96%の物質が6g得られた。
【0134】
前記物質を全量昇華精製して、薄黄色固体の化合物A1-1を3.1g得た。
【0135】
前記化合物A1-1の合成方法において、ビス(ビフェニル)アミン(bis(biphenyl)amine)の代わりに下記表1の代替化合物を用いたことを除いてすべての段階を同様にして、下記表1の化合物を合成した。
【0136】
【0137】
また、前記化合物A1-1の合成方法において、中間体A(1)-P1の代わりに下記表2の中間体Iを用い、ビス(ビフェニル)アミン(bis(biphenyl)amine)の代わりに下記表2の中間体IIを用いたことを除いてすべてを同様にして、下記表2の化合物を合成した。
【0138】
【0139】
前記製造例と同様の方法で本明細書に記載の化合物を製造し、その製造された化合物の合成確認結果を確認するために、FD-質量分析計(FD-MS:Field desorption mass spectrometry)および1H NMR(CDCl3,200Mz)を測定して、その測定値を下記表3および表4に示した。下記表3は、製造された化合物のFD-質量分析計(FD-MS:Field desorption mass spectrometry)の測定値であり、下記表4は、製造された化合物の一部の1H NMR(CDCl3,200Mz)の測定値を示す。
【0140】
【0141】
(有機発光素子の作製)
1,500Åの厚さにITOが薄膜コーティングされたガラス基板を、蒸留水超音波洗浄した。蒸留水洗浄が終わると、アセトン、メタノール、イソプロピルアルコールなどの溶剤で超音波洗浄をし乾燥させた後、UV洗浄機でUVを用いて5分間UVO処理した。以後、基板をプラズマ洗浄機(PT)に搬送させた後、真空状態でITOの仕事関数および残膜除去のためにプラズマ処理をして、有機蒸着用熱蒸着装置に搬送した。
【0142】
前記ITO透明電極(陽極)上に、共通層の正孔注入層を2-TNATA(4,4’,4’’-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenylamine)で形成した。
【0143】
前記正孔注入層上に、下記表5に記載の化合物を用いて正孔輸送層を形成させた。
【0144】
前記実施例に含まれた物質を用いて、比較物質として6種を形成させた。
【0145】
下記表5に記載の比較例1~6に使用された化合物は、下記の通りである。
【0146】
【0147】
その上に、発光層を次のように熱真空蒸着させた。発光層は、ホストとして9-[4-4,6-diphenyl-1,3,5-triazin-2-yl)phenyl]-9’-phenyl-3,3’-Bi-9H-carbazoleの化合物を400Å蒸着し、緑色燐光ドーパントはIr(ppy)3を7%ドーピングして蒸着した。以後、正孔阻止層としてBCPを60Å蒸着し、その上に、電子輸送層としてAlq3を200Å蒸着した。最後に、電子輸送層上にリチウムフルオライド(lithium fluoride:LiF)を10Åの厚さに蒸着して電子注入層を形成した後、電子注入層上にアルミニウム(Al)陰極を1,200Åの厚さに蒸着して陰極を形成することにより、有機電界発光素子を製造した。
【0148】
一方、OLED素子の作製に必要なすべての有機化合物は、材料ごとにそれぞれ10-6~10-8torr下で真空昇華精製して、OLEDの作製に使用した。
【0149】
評価:駆動電圧の改善、発光効率および寿命上昇効果の確認
前記実施例および比較例による有機発光素子の駆動電圧および寿命特性を評価した。具体的な測定方法は下記の通りであり、その結果は次の通りである。
【0150】
(1)電圧変化による電流密度の変化の測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら、電流-電圧計(Keithley2400)を用いて単位素子に流れる電流値を測定し、測定された電流値を面積で割って結果を得た。
【0151】
(2)電圧変化による輝度変化の測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら、輝度計(Minolta Cs-1000A)を用いて、その時の輝度を測定して結果を得た。
【0152】
(3)発光効率の測定
前記(1)および(2)から測定された輝度と電流密度および電圧を用いて同一の電流密度(10mA/cm2)の電流効率(cd/A)を計算した。
【0153】
(4)寿命の測定
製造された有機発光素子に対して、ポラロニクス寿命測定システムを用いて、下記表11の実施例および比較例の素子を、初期輝度(cd/m2)を24000cd/m2で発光させ、時間経過による輝度の減少を測定して、初期輝度対比90%に輝度が減少した時点をT90寿命として測定した。
【0154】
(5)駆動電圧の測定
電流-電圧計(Keithley2400)を用いて、15mA/cm2における各素子の駆動電圧を測定して結果を得た。
【0155】
【表5】
前記表5を参照すれば、本発明に係る化合物は、比較例の化合物に比べて、駆動電圧が低下し、寿命および発光効率が向上したことを確認することができる。特に、カルバゾール基が2個以上置換されると、TSおよび蒸着温度が増加して寿命が減少し、高い駆動電圧および低い効率を有する。
【0156】
これは、アミン基の置換基のいずれか1つがターフェニレン基であり、前記ターフェニレン基のアミン基が結合している位置から最も遠くにあるフェニル基を基準としてオルト(ortho)位に置換もしくは非置換のヘテロアリール基が結合した構造である本出願の化合物は、HOMO電子雲が拡張され、これによって、HOMOエネルギーレベルを高めて正孔注入および正孔輸送能力がさらに強化され、これを適用した素子の駆動電圧を低下させることができ、高効率および長寿命を期待することができることを意味する。
【0157】
同時に、ターフェニレンのアミン基が結合している位置から最も遠くにあるフェニル基を基準としてパラ(para)位に結合した置換もしくは非置換のヘテロアリール基を含む化合物と比較する時、立体的大きさが増加して分子間相互作用が減少するため、材料の結晶化が抑制され、薄膜の安定性が向上する特性があることを確認することができる。
【0158】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の種々の変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0159】
100:基板
200:陽極
300:有機物層
301:正孔注入層
302:正孔輸送層
303:発光層
304:正孔阻止層
305:電子輸送層
306:電子注入層
400:陰極