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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】医療用弁装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/06 20060101AFI20240726BHJP
   A61M 39/26 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A61M39/06 122
A61M39/06 110
A61M39/26
A61M39/06 130
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022041857
(22)【出願日】2022-03-16
(65)【公開番号】P2023136316
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592148993
【氏名又は名称】東郷メディキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】森永 典明
(72)【発明者】
【氏名】山下 健太朗
(72)【発明者】
【氏名】安藤 寛和
【審査官】川上 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-039771(JP,A)
【文献】米国特許第05199948(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/06
A61M 39/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に導入される細長形状の導入部材を挿通可能な挿通孔を有する本体ユニットと、
前記挿通孔を塞ぐように前記本体ユニットに組付けられた止血弁とを備えており、
前記止血弁は前記本体ユニットに組付けられていない自然状態で上面と下面とを有する平板状であり、上面から下面側に向かって前記止血弁の厚みの途中まで延びる第1スリットと、該第1スリットと交差し下面から上面側に向かって前記止血弁の厚みの途中まで延びる第2スリットとが形成され、これら前記第1スリットおよび前記第2スリットによって前記止血弁の中心に前記導入部材を挿通可能な通路が形成され、
前記止血弁は、前記第1スリットおよび前記第2スリットが形成された中央部と、前記中央部の周りの周縁部とを有し、
前記本体ユニットは、前記止血弁の上面に当接するキャップ部材と、前記第2スリットの端部が挟み込まれるように前記止血弁の下面のうち前記周縁部の下面の一部及び前記中央部の一部に当接する弁保持部材とを有しており、
前記止血弁は、前記本体ユニットに前記上面が前記導入部材の挿通方向上流側に配置され、前記下面が前記導入部材の挿通方向下流側に配置され、前記弁保持部材により中心へ向けて変形され、前記キャップ部材により規制され、前記中央部が撓むように変形し、前記自然状態と比べて周辺から中心に向かうほど下流側に位置するように変形されることによって前記第1スリットが閉じ、前記第2スリットが開くように前記本体ユニットに組付けられていることを特徴とする医療用弁装置。
【請求項2】
前記弁保持部材が前記中央部に当接する部分は、前記中央部の下面及び/又は周縁の一部であることを特徴とする請求項1に記載の医療用弁装置。
【請求項3】
前記止血弁の前記中央部の周縁には、テーパ部が設けられており、
前記弁保持部材が前記中央部に当接する部分は、テーパ部であることを特徴とする請求項2に記載の医療用弁装置。
【請求項4】
前記弁保持部材の前記中央部に当接する部分には、テーパ部が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の医療用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルなどを挿入する際に使用される医療用弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルを用いた血管内治療などを行う場合、血管からの出血を抑制する必要があり、特許文献1に記載の止血性を高めた医療用弁装置などの技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-39771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、保持部材は、第1スリットおよび第2スリットが形成された中央部を避けて、止血弁の下面のうち周縁部の下面のみに当接するため、陰圧がかかった際に、スリットが開いてエアを引き込んでしまうおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決したものであり、止血性を保持しつつ、エアの引き込みを抑制できる医療用弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の代表的な構成は、生体内に導入される細長形状の導入部材を挿通可能な挿通孔を有する本体ユニットと、
前記挿通孔を塞ぐように前記本体ユニットに組付けられた止血弁とを備えており、
前記止血弁は本体ユニットに組付けられていない自然状態で上面と下面とを有する平板状であり、上面から下面側に向かって前記止血弁の厚みの途中まで延びる第1スリットと、
該第1スリットと交差し下面から上面側に向かって前記止血弁の厚みの途中まで延びる第2スリットとが形成され、これら第1スリットおよび第2スリットによって前記止血弁の中心に前記導入部材を挿通可能な通路が形成され、
前記止血弁は、前記第1スリットおよび前記第2スリットが形成された中央部と、前記中央部の周りの周縁部とを有し、
前記本体ユニットは、前記止血弁の上面に当接するキャップ部材と、前記第2スリットの端部が挟み込まれるように前記止血弁の下面のうち記周縁部の下面の一部及び前記中央部の一部に当接する弁保持部材とを有しており、
前記止血弁は、前記本体ユニットに前記上面が前記導入部材の挿通方向上流側に配置され、前記下面が前記導入部材の挿通方向下流側に配置され、前記弁保持部材により中心へ向けて変形され、前記キャップ部材により規制され、前記中央部が撓むように変形し、前記自然状態と比べて周辺から中心に向かうほど下流側に位置するように変形されることによって前記第1スリットが閉じ、前記第2スリットが開くように前記本体ユニットに組付けられていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、止血性を保持しつつ、エアの引き込みを抑制できる医療用弁装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の医療用弁装置を用いたYコネクタの断面図である。
図2】第1実施形態のキャップ部材と弁保持部材とを分解して示す断面図である。
図3】第1実施形態の自然状態の止血弁を示す図であり、(a)止血弁の上面図、(b)止血弁の側面図、(c)止血弁の下面図である。
図4】第1実施形態の組付け状態の止血弁を説明するための断面図である。
図5】他の実施形態の医療用弁装置の止血弁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
本発明の医療用弁装置の第1実施形態について、図1~4を用いて説明する。図1は本実施形態の医療用弁装置を用いたYコネクタ1の断面図である。図2は本実施形態のキャップ部材7と弁保持部材8とを分解して示す断面図である。図3は本実施形態の自然状態の止血弁5を示す図である。図4は本実施形態の組付け状態の止血弁5を説明するための断面図である。図1図4に示すように、本実施形態の医療用弁装置は、従来技術である特許文献1(特開2014-39771号公報)の課題を解決するものであり、特許文献1(特開2014-39771号公報)に記載の医療用弁装置において、止血弁、弁保持部材の形状を変えたものである。以下の説明では図1の状態で上側を導入部材2の挿入方向上流側である基端側とし、下側を導入部材2の挿入方向下流側である先端側として説明する。
【0010】
(Yコネクタ1、医療用弁装置)
図1図4に示すように、Yコネクタ1は、本実施形態の医療用弁装置を有している。本実施形態の医療用弁装置は、本体ユニット4と、止血弁5とを備えている。本体ユニット4は、生体内に導入される細長形状の導入部材2を挿通可能な挿通孔3を有する。止血弁5は、挿通孔3を塞ぐように本体ユニット4に組付けられている。
止血弁5は、本体ユニット4に組付けられていない自然状態で上面44と下面45とを有する平板状である。止血弁5には、第1スリット48と、第2スリット49とが形成されている。第1スリット48は、上面44から下面45側に向かって止血弁5の厚みの途中まで延びる。第2スリット49は、第1スリット48と交差し下面45から上面44側に向かって止血弁5の厚みの途中まで延びる。第1スリット48および第2スリット49によって、止血弁5の中心に導入部材2を挿通可能な通路50が形成されている。止血弁5は、第1スリット48および第2スリット49が形成された中央部51と、中央部51の周りの周縁部52とを有している。
本体ユニット4は、キャップ部材7と、弁保持部材8とを有している。キャップ部材7は、止血弁5の上面44に当接する。弁保持部材8は、止血弁5の下面45のうち周縁部52の一部及び中央部51の一部に当接する。
止血弁5は、本体ユニット4に上面44が導入部材2の挿通方向上流側に配置され、下面45が導入部材2の挿通方向下流側に配置され、弁保持部材8により中心へ向けて変形され、キャップ部材7により規制され、中央部51が撓むように変形し、前記自然状態と比べて周辺から中心に向かうほど下流側に位置するように変形されることによって第1スリット48が閉じ、第2スリット49が開くように本体ユニット4に組付けられている。
【0011】
本体ユニット4は、主管部材6と、キャップ部材7と、止血弁5を保持する弁保持部材8とを有する。主管部材6は、メインブランチ9と、サブブランチ10とを有している。主管部材6は、Y字状に形成され、管状をなしている。サブブランチ10は、メインブランチ9の途中位置から分岐して設けられ、管状をなしている。メインブランチ9のメイン孔11とサブブランチ10のサブ孔12とは連通されている。
【0012】
メインブランチ9の先端部には、Yコネクタ1をガイディングカテーテルに装着するためのローテータ13が取付けられている。ローテータ13は二重円筒状をなしており、内孔14はメイン孔11と同一軸線上にあり、外孔15にはその周壁にガイディングカテーテルを装着するための装着溝が形成されている。Yコネクタ1に挿通されるカテーテルやガイドワイヤなどといった導入部材2は、メイン孔11内を通りガイディングカテーテル内に導入される。サブブランチ10の延出方向の端部には、生理食塩水や造影剤などといった液剤を供給するための液剤供給器等が接続される。
【0013】
メインブランチ9のメイン孔11の基端側はテーパ状段差部16を介して拡径されており、その拡径部18には固定弁19が収容されている。固定弁19は、外面を拡径部18の内面に対して密接状として、さらにテーパ状となった端面をテーパ状段差部16に対して密接状として保持されている。この場合、固定弁19の固定弁孔20はメイン孔11と同一軸線上にある。主管部材6の基端部17、具体的にはメインブランチ9の基端部17にはキャップ部材7が組付けられており、キャップ部材7の内部には止血弁5を保持する弁保持部材8が収容されている。
【0014】
キャップ部材7は、有底の円筒状に形成され、周壁部21と底部22とを有する。キャップ部材7の底部22にはその中央に底部22を貫通するキャップ孔23が形成されている。周縁部24は、キャップ孔23の周縁にキャップ部材7の底部22から外方に向けて突出するように形成されている。キャップ部材7はメインブランチ9に螺着されることによって組付けられる。キャップ部材7の先端側の開口25に対してメインブランチ9の基端部17が挿入される。この場合、キャップ部材7はメインブランチ9と同一軸線上にある。
【0015】
弁保持部材8は、円筒状に形成されており、弁保持部材8を貫通する保持部材孔31の先端の開口側には基端の開口側に向けて拡径されたテーパ面32が形成されており、基端の開口側には段差部331、332を介して拡径された拡径部34が形成されている。段差部331は段差部332より基端の開口側に設けられている。拡径部34の内径D1が段差部331の内径D2よりも大きくなるように形成されている。段差部331の内径D2が段差部332の内径D3よりも大きくなるように形成されている。段差部331、332および拡径部34によって止血弁5を受入れる弁受入部35が形成されている。段差部331の基端側の外面は、後述する止血弁5の周縁部52の一部と当接する当接面361とされている。 段差部332の基端側の外面は、後述する止血弁5の中央部51の一部と当接する当接面362とされている。
【0016】
弁保持部材8はキャップ部材7に螺着されることによって組付けられる。弁受入部35の外面にはキャップ部材7のねじ山28に対応させてねじ溝38が形成されている。弁保持部材8はキャップ部材7にねじ込まれることによって、弁受入部35の基端側端面39がキャップ部材7の底部22に密接可能な構成となっている。弁保持部材8は、弁受入部35に止血弁5を保持した状態で、弁受入部35が形成された側の端面をキャップ部材7の底部22に向くようにキャップ部材7の開口25に挿入され、キャップ部材7のねじ山28とねじ溝38とをかみ合わせキャップ部材7にねじ込まれ、弁受入部35の基端側端面39がキャップ部材7の底部22に密接した状態でキャップ部材7に接着されている。
【0017】
キャップ部材7がメインブランチ9に取り付けられた状態において、弁保持部材8のテーパ面32が形成された側の端部はメイン孔11に入り込んでいる。そして、弁保持部材8はメインブランチ9の内面に密接状となっており、さらには固定弁19の基端側端面と密接状となっている。
【0018】
キャップ部材7には止血弁5を開閉するためのオープナ40が取り付けられている。オープナ40は円筒状をなす筒体41と、フランジ体42とを備え、筒体41を貫通するオープナ孔64が形成されている。筒体41は、止血弁5を収容する前の状態において開口25からキャップ部材7の外方に突出するように装着されており、その装着後においてキャップ部材7の外方に突出した端部にフランジ体42が固定されている。筒体41の先端部に形成された突起部がキャップ部材7の底部22にて受けられることで、筒体41のキャップ部材7からの抜けが防止されている。上記のように取り付けられた状態において、オープナ40はキャップ部材7および止血弁5と同一軸線上にあり、軸線方向に移動可能となっている。そして、オープナ40がキャップ部材7から最も突出した最大突出位置にある場合、筒体41の先端部は止血弁5の上面44と接しているか僅かに離間された位置にある。
【0019】
(止血弁5)
図3は、自然状態の止血弁5を示す図であり、図3(a)は止血弁5の上面図、図3(b)は止血弁5の側面図、図3(c)は止血弁5の下面図である。図3(b)では第1スリット48および第2スリット49は破線で示されている。
【0020】
止血弁5は、弾性材料を用いて形成されており、本体ユニット4に組付けられていない自然状態で上面44と下面45とを有する平板状である。止血弁5には上面44から下面45側に向かって止血弁5の厚みの途中まで延びる第1スリット48と、第1スリット48と交差し下面45から上面44側に向かって止血弁5の厚みの途中まで延びる第2スリット49とが形成されている。第1スリット48および第2スリット49によって止血弁5の中心に導入部材2を挿通可能な通路50が形成されている。通路50は導入部材2を挿通可能であれば、自然状態で閉じた通路50でも良い。
【0021】
止血弁5は、第1スリット48および第2スリット49が形成された中央部51と、中央部51の周りの周縁部52とを有し、中央部51の下面45は、周縁部52の下面45から突出している。具体的には止血弁5は自然状態で全体として円盤状に形成され、基端側に配置される円盤状の第1弁部55と、先端側に配置され、第1弁部55よりも外径が小さい円盤状の第2弁部56とを有する。第1弁部55と第2弁部56との中心は一致し、第2弁部56の径方向外側に突出する第1弁部55によって止血弁5の周縁部52が形成されている。
【0022】
本実施形態では第1スリット48は、2つの切れ込み61a,61bによって形成されている。第1スリット48を形成する2つの切れ込み61a,61bは互いに90度の角を形成するように止血弁5の中心で交わっている。また第2スリット49も第1スリット48と同様に、2つの切れ込み62a,62bによって形成されている。第1スリット48を形成する2つの切れ込みは互いに90度の角を形成するように止血弁の中心で交わっている。第1スリット48を形成する切れ込み61a,61bと、第2スリット49を形成する切れ込み62a,62bとは止血弁5を上面44側または下面45側から見たとき(平面視したとき)に45度の角度を形成するように交差している。なお第1スリット48および第2スリット49は、止血弁5の中心に導入部材2を挿通可能な通路50を形成する構成であればよく、たとえば各スリットを1の切れ込みで形成してもよく、2以上の切れ込みで形成してもよく、各スリットの各切れ込み同士が形成する角度も任意である。また止血弁5に第1スリット48および第2スリット49に加えて、他のスリット、孔などを形成し通路50を形成してもよい。
【0023】
第1スリット48は、その切れ込み61a,61bが第1弁部55の厚み途中で終端するように形成されている。第2スリット49は、その切れ込み62a,62bが第2弁部56を超えて第1スリット48の終端位置で終端している。第1スリット48が第1弁部55の厚み途中で終端することによって、止血弁5が本体ユニット4に組付けられた状態(以下、組付け状態という場合がある)で、第1スリット48が厚み方向全体で好適に密接して閉じることができる。なお、本発明はかかる構成に限定されるものではなく、第1スリット48は、その切れ込み61a,61bが第1弁部55を超えて第2スリット49の終端位置で終端し、第2スリット49はその切れ込み62a,62bが第2弁部56の厚み途中で終端するように形成してもよい。かかる構成であっても、第1弁部55は横方向からの押圧を受けるために第1スリット48は好適に密接して閉じることができる。
【0024】
止血弁5の最大外径、言い換えれば、第1弁部55の外径D4は、自然状態で止血弁5が弁保持部材8により半径方向中心に向けて押圧されて保持可能で、止血弁5が半径方向中心に押圧されたとき、止血弁5の基端側への変形がキャップ部材7によって規制されるような外径であればよい。具体的には自然状態で弁保持部材8の拡径部34に止血弁5の周縁部52がはまり込み、弁受入部35の拡径部34によって止血弁5の周縁部52が半径方向中心へ向けて押圧されるような外径であればよい。止血弁5の第1弁部55は、弁受入部35の拡径部34の内径D1より大きい外径D4に設定される。
第1弁部55の厚みT1は、止血弁5を弁受入部35に保持したときに、止血弁5の上面44が弁受入部35の基端側端面39から基端側に突出しない厚みであればよい。第2弁部56の外径D5は、段差部331の内径D2よりも小さい外径に設定されている。これにより、第2弁部56が半径方向に規制されることがなく、第2スリット49をスムーズに開くことができる。第2弁部56の厚みT2は、止血弁5を弁受入部35に保持したときに、第2弁部56が段差部331を導入部材2の挿入方向下流側に越えて入り込まない厚みであればよい。
【0025】
図4は、組付け状態の止血弁5を説明するための断面図である。なお図4ではキャップ部材7、弁保持部材8および止血弁5のみを記載し、その他の主管部材6などの構成は省略する。図4に示すように、止血弁5は、本体ユニット4に上面44が導入部材2の挿通方向上流側に配置され、下面45が導入部材2の挿通方向下流側に配置されるように組付けられる。止血弁5は本体ユニット4に組付けられた状態では、自然状態と比べて止血弁5の周辺から中心に向かうほど導入部材2の挿通方向下流側に位置するように変形する。止血弁5は変形されることによって自然状態と比較して第1スリット48が密接するように閉じ、第2スリット49が開くように本体ユニット4に組付けられている。ここで止血弁5の通路50は、挿通孔3と同一軸線上となるように組付けられている。具体的には、止血弁5は組付け状態では、止血弁5の第1弁部55が弁保持部材8の弁受入部35により半径方向中心に向けて押圧されて変形する。止血弁5が弁保持部材8の弁受入部35により半径方向中心に向けて押圧された際に、止血弁5の上面44はキャップ部材7により規制され、止血弁5の下面45のうち周縁部52の下面451の一部と中央部51の下面452の一部に当接する弁保持部材8とにより規制され、止血弁5が保持される。
段差部332が形成されているので、止血弁5を変形させたとき、止血弁5が導入部材2の下流側に脱落することを抑制することができる。また、段差部332が形成されているので、陰圧がかかった際に、意図せずスリットが開いてしまうことを抑制でき、エアの引き込みを抑制できる。
【0026】
(Yコネクタ1の使用)
以上説明したYコネクタ1の使用について簡単に説明する。カテーテルやガイドワイヤなどといった導入部材2は、Yコネクタ1の基端側からオープナ40のオープナ孔64に挿入され、挿通孔3に挿通される。この場合、導入部材2の外面に対して止血弁5が密接状態となる。よって、止血弁5よりもYコネクタ1の基端側への血液の漏れが抑制されている。挿通孔3に挿通された導入部材2はローテータ13に装着されたガイディングカテーテル内に導入され、ガイディングカテーテルを介して体内に導入される。
【0027】
導入部材2の導入操作時において、止血弁5よりも先端側にエアが混入した場合や、一時的に複雑な操作が必要となった場合には、オープナ40を押圧操作することでオープナ40の筒体41が止血弁5の通路50に挿通され止血弁5が開放状態となる。開放状態ではオープナ40の筒体41の先端が止血弁5の通路50を先端側に越えて完全に貫通する。このように筒体41の先端が通路50を完全に貫通することによってエア抜きや複雑な操作を容易に行うことができる。各操作が終了した場合には、オープナ40を最大突出位置に移動させることによって、止血弁5が自ずと閉塞状態となる。
【0028】
その後、導入部材2が治療対象位置に到達した場合などには、キャップ部材7を回転操作する。これにより、固定弁19が圧縮状態となり、導入部材2がその位置からずれないように留置される。当該留置が完了したら、適宜治療を行う。治療に際しては、主管部材6のサブブランチ10に液剤供給器等の機器を接続し、造影剤などの液剤を供給する。この供給された液剤は、メインブランチ9のメイン孔11を介してガイディングカテーテル内に入り、治療対象位置に投与される。なお、留置位置の変更、さらには治療終了後の導入部材2の抜き取りにあたっても、上記と同様あるいは逆の操作が可能である。
【0029】
本実施形態のYコネクタ1は、生体内に導入される細長形状の導入部材2を挿通可能な挿通孔3を有する本体ユニット4と、挿通孔3を塞ぐように本体ユニット4に組付けられた止血弁5とを備えており、止血弁5は本体ユニット4に組付けられていない自然状態で上面44と下面45とを有する平板状であり、上面44から下面45側に向かって止血弁5の厚みの途中まで延びる第1スリット48と、第1スリット48と交差し下面45から上面44側に向かって止血弁5の厚みの途中まで延びる第2スリット49とが形成され、第1スリット48および第2スリット49によって止血弁5の中心に導入部材2を挿通可能な通路50が形成され、止血弁5は、自然状態と比べて周辺から中心に向かうほど下流側に位置するように変形されることによって第1スリット48が閉じ、第2スリット49が開くように本体ユニット4に組付けられている。
【0030】
(効果)
上記構成のYコネクタ1によれば、止血弁5は、本体ユニット4に組付けられた状態では、自然状態と比べて周辺から中心に向かうほど下流側に位置するように変形される。したがって本体ユニット4の挿通孔3に血液が逆流した場合でも止血弁5の中心が上流側に変位して止血弁5と導入部材2との間に隙間が形成されることを抑制することができる。また止血弁5は、上記のように変形されているので、組付け状態では、自然状態と比べて第1スリット48がより密接して閉じる構成となっている。したがって止血弁5を通された導入部材2と止血弁5とがより密接する。これによって本体ユニット4の挿通孔3に血流が逆流した場合であっても、止血弁5と導入部材2との間に隙間が形成されることを抑制することができる。さらに止血弁5に下流側から圧力が加えられ、止血弁5の中心が上流側に変位することがあっても下流側の第2スリット49が閉じる方向に変位するので、止血弁5と導入部材2との間に隙間が形成されることを抑制することができる。このようにYコネクタ1の止血性を良好なものとすることができる。さらに、段差部332が形成されているので、陰圧がかかった際に、意図せずスリットが開いてしまうことを抑制でき、エアの引き込みを抑制できる。
(他の実施形態)
本発明の医療用弁装置の他の実施形態について、図5を用いて説明する。図5は他の実施形態の医療用弁装置の止血弁5の断面図である。本実施形態の医療用弁装置は、図5(a)に示すように、上記第1実施形態の医療用弁装置の止血弁5の第2弁部56(中央部51)の周縁にテーパ部510を設け、段差部332の当接面362と当接させたものである。なお、テーパ部は、止血弁56の周縁部側に設けるだけではなく、図5(b)に示すように、弁保持部材8の段差部332の当接面362に設けてもよい。また、テーパ部は、止血弁56の周縁部側と、弁保持部材8の段差部332の当接面362の両方に設けてもよい。
本実施形態によっても、上記第1実施形態と同様に、段差部332が止血弁5の第2弁部56(中央部51)の周縁に設けられたテーパ部510に当接しているため、陰圧がかかった際に、意図せずスリットが開いてしまうことを抑制でき、エアの引き込みを抑制できる。
【0031】
なお、上記実施形態では、Yコネクタ1に対して本発明を適用したが、導入部材2を挿通可能な挿通孔3を有する本体ユニット4と、挿通孔3を塞ぐように組付けられた止血弁5とを備える他の医療用弁装置(たとえばシースイントロデューサ)に適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
1…Yコネクタ、2…導入部材、3…挿通孔、4…本体ユニット、5…止血弁、7…キャップ部材、8…弁保持部材、44…止血弁の上面、45…止血弁の下面、48…第1スリット、49…第2スリット、50…通路、51…中央部、52…周縁部
図1
図2
図3
図4
図5