(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】美容システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
A61N1/32
(21)【出願番号】P 2022089769
(22)【出願日】2022-06-01
【審査請求日】2023-01-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】300003525
【氏名又は名称】株式会社ブルーム・クラシック
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】田部 早巳
(72)【発明者】
【氏名】柴田 壽博
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-137721(JP,A)
【文献】特開2001-269382(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0127074(US,A1)
【文献】特開2009-028269(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109078266(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111744116(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の波動を対象者に印加する印加手段と、
前記所定の周波数を表す
触覚を前記対象者に付与する付与手段と、を備え、
前記付与手段は
、前記対象者に装着された振動発生部
を、前記所定の周波数に対応する周波数で振動させることによって、前記所定の周波数を表す
触覚を前記対象者に付与する、
美容システム。
【請求項2】
前記所定の周波数はシューマン共振周波数である、請求項1に記載の美容システム。
【請求項3】
前記印加手段は、前記所定の周波数の電磁波を電磁波発生部から発生させることによって、前記所定の周波数の波動を前記対象者に印加する、請求項1に記載の美容システム。
【請求項4】
前記電磁波発生部からの電磁波の発生期間に関する情報を取得する期間情報取得手段を備え、
前記印加手段は、取得した情報に対応する発生期間において電磁波を前記電磁波発生部から発生させる、請求項3に記載の美容システム。
【請求項5】
前記振動発生部
における振動の振幅に関する情報を取得する振幅情報取得手段を備え、
前記付与手段は、取得した情報に対応する振幅を有する振動
で前記振動発生部
を振動させる、請求項1に記載の美容システム。
【請求項6】
前記振動発生部
における振動の発生期間に関する情報を取得する期間情報取得手段を備え、
前記付与手段は、取得した情報に対応する発生期間におい
て前記振動発生部
を振動させる、請求項1に記載の美容システム。
【請求項7】
前記対象者に印加される波動の周波数に関する情報を取得する周波数情報取得手段を備え、
前記印加手段は、取得した情報に対応する周波数の波動を前記対象者に印加し、
前記付与手段は、取得した情報に対応する周波数を表す
触覚を前記対象者に付与する、請求項1に記載の美容システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象者に電磁波等の波動を印加(照射)することによって、例えば対象者の皮膚等の美容効果を得る美容システムが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された技術では、患者のカウンセリング情報に基づいて、患者に対する電磁波の照射条件を決定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような美容システムに用いられる電磁波等の波動は、視覚等によって知覚することが困難である。このため、美容施術を受ける対象者が、美容施術中に、自身に波動が印加されていること、特に、どの程度の周波数の波動が印加されているかを知覚することができない虞があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、対象者に印加されている波動の周波数に関する情報を当該対象者が容易に知覚することの可能な美容システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、所定の周波数の波動を対象者に印加する印加手段と、前記所定の周波数を表す感覚を前記対象者に付与する付与手段と、を備える、美容システムを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の美容システムによれば、対象者に印加されている波動の周波数に関する情報を当該対象者が容易に知覚することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る美容システムの基本構成を概略的に示す図である。
【
図4】美容システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る美容システムの主要な処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】美容システムの各機能について、美容装置と、管理装置との間の分担例を示す図である。
【
図9】細胞に電磁波を印加したことによる、細胞遊走作用を表す結果である。なお、画像下部のバーの長さは、0.6mmである。
【
図10】細胞に電磁波を印加したことによる、細胞遊走作用を表す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
(1)美容システムの基本構成
図1は、本発明の一実施形態に係る美容システムの基本構成を概略的に示す図である。本実施形態に係る美容システムは、
図1に示すように、箱型の美容装置10と、1つ以上の電磁波発生部20と、1つ以上の振動発生部30と、から構成されている。美容装置10と、電磁波発生部20及び振動発生部30の各々とは、信号を送受信するためのケーブルで接続されている。本実施形態において、美容装置10は、所定の周波数の波動を美容施術の対象者に印加し、当該所定の周波数を表す感覚を当該対象者に付与するように構成されている。
【0011】
なお、
図1に示す例では、電磁波発生部20及び振動発生部30が別々に美容装置10に接続されているが、電磁波発生部20及び振動発生部30の各々が1つの筐体(例えば、プローブケース等)に収容されており、当該筐体が1本のケーブルで美容装置10に接続されてもよい。ここで、電磁波発生部20及び振動発生部30は、共通の1本のケーブルを介して美容装置10によって別々に制御されてもよいし、1本のケーブル内に収容された個別のケーブルを介して美容装置10によって制御されてもよい。この場合、電磁波発生部20及び振動発生部30の各々が筐体に収容されているので、所定の周波数の波動(ここでは、電磁波)及び当該周波数を表す感覚(ここでは、振動)を1つの筐体から発生させることが可能になる。これにより、筐体を用いて、所定の周波数の波動及び当該周波数を表す感覚をより容易に知覚することができる。
【0012】
電磁波発生部20及び振動発生部30の各々は、美容施術の際に対象者に装着されるように構成されている。具体的に説明すると、電磁波発生部20及び振動発生部30の各々は、対象者の顔面に装着可能な美容用マスクMの外表面に設けられた複数のポケット(図の例では、P1~P12の12個のポケット)のうち何れかのポケットに挿入可能に構成されている。これにより、電磁波発生部20から発生した電磁波を対象者に印加することができるとともに、振動発生部30から発生した振動を対象者に付与することができる。ここで、美容用マスクMは、人の顔面における額から顎までの間及び両頬間を覆い被せることが可能な形状を有しており、鼻呼吸を可能にする矩形の切り欠きCが中央部に形成されている。なお、美容用マスクMは、例えば、実用新案登録第3123202号公報に記載された技術を用いて構成されてもよい。
【0013】
本実施形態において、電磁波発生部20は、所定の周波数の電磁波を発生する少なくとも1つ(
図1に示す例では、2つ)の電極を含む。これにより、少なくとも1つの電極を用いて、所定の周波数の電磁波を対象者に印加することができる。ここで、少なくとも1つの電極の各々から発生する電磁波の周波数は、ケーブルを介して美容装置10から受信した信号(例えば、電流や所定の制御信号等)に応じて変化してもよい。また、電磁波発生部20は、ケーブルを介して美容装置10から受信した信号に応じて、少なくとも1つの電極の各々から発生する電磁波の周波数を制御する制御回路を備えてもよい。なお、少なくとも1つの電極の各々から発生する電磁波の周波数は、一部又は全ての電極間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
本実施形態において、振動発生部30は、所定の周波数に対応する周波数の振動を発生する少なくとも1つ(
図1に示す例では、1つ)の振動モータを含む。これにより、少なくとも1つの振動モータを用いて、所定の周波数に対応する周波数の振動を対象者に付与することができる。ここで、少なくとも1つの振動モータの各々から発生する振動の周波数は、ケーブルを介して美容装置10から受信した信号(例えば、電流や所定の制御信号等)に応じて変化してもよい。また、少なくとも1つの振動モータの各々から発生する振動の振幅や振動の期間は、ケーブルを介して美容装置10から受信した信号に応じて変化してもよい。さらに、振動発生部30は、ケーブルを介して美容装置10から受信した信号に応じて、少なくとも1つの振動モータの各々から発生する振動の周波数、振幅及び期間を制御する制御回路を備えてもよい。なお、少なくとも1つの振動モータの各々から発生する振動の周波数、振幅及び期間は、一部又は全ての振動モータ間で同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
(2)美容装置の構成
図2及び
図3を参照して、本実施形態における美容装置10の構成について説明する。
図2は、美容装置10の内部構成を示すブロック図であり、
図3は、本実施形態における美容装置10の平面図である。
【0016】
図2に示すように、美容装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、記憶装置14と、表示処理部15と、表示部16と、入力部17と、通信インタフェース部18と、を備えており、各部間の制御信号又はデータ信号を伝送するためのバス10aが設けられている。
【0017】
CPU11は、電源が美容装置10に投入されると、ROM12又は記憶装置14に記憶された各種のプログラムをRAM13にロードして実行する。本実施形態では、CPU11は、ROM12又は記憶装置14に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、後述する周波数情報取得手段41、振幅情報取得手段42、期間情報取得手段43、印加手段44及び付与手段45(
図4に示す)の機能を実現する。
【0018】
記憶装置14は、例えば、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、磁気記憶装置(例えばHDD(Hard Disk Drive)、フロッピーディスク(登録商標)、磁気テープ等)、光ディスク等の不揮発性の記憶装置であってもよいし、RAM等の揮発性の記憶装置であってもよく、CPU11が実行するプログラムやCPU11が参照するデータを格納する。また、記憶装置14には、後述する振幅データ(
図5に示す)及び期間データ(
図6に示す)が記憶されている。
【0019】
表示処理部15は、CPU11から与えられる表示用データを表示部16に表示する。本実施形態において、表示部16は、美容装置10の上面に設けられており、
図3に示すように、振動発生部30から発生する振動の大きさ(振幅レベル)を表示する振幅表示部16aと、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間の長さを表示する期間表示部16bと、電磁波発生部20から発生する電磁波の周波数を表示する周波数表示部16cと、を含む。
【0020】
本実施形態において、振幅表示部16aは、複数(図の例では、6つ)の振動発生部30(
図3の例では、m1~m6として示されている)毎に、振幅レベルをH(High)、M(Middle)及びL(Low)の3段階で表示するように配置された複数(図の例では、18個)のランプで構成されている。また、期間表示部16bは、電磁波発生部20からの電磁波及び各振動発生部30からの振動のうち少なくとも1つの発生期間の長さをT1、T2及びT3(ここでは、T3>T2>T1>0)の3段階で表示するように配置された複数(図の例では、3つ)のランプで構成されている。さらに、周波数表示部16cは、電磁波の周波数を表示するLCD(Liquid Crystal Display)表示器で構成されている。
【0021】
なお、振幅表示部16a及び期間表示部16bの各々がLCD表示器で構成されてもよいし、振幅表示部16a、期間表示部16b及び周波数表示部16cの全てが1つのLCD表示器で構成されてもよい。
【0022】
本実施形態において、入力部17は、美容装置10の上面に設けられており、
図3に示すように、振動発生部30から発生する振動の大きさ(振幅レベル)を入力するための振幅入力部17aと、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間の長さを入力するための期間入力部17bと、電磁波発生部20から発生する電磁波の周波数を入力するための周波数入力部17cと、電磁波及び振動の発生の開始又は停止を指示するための指示入力部17dと、含む。
【0023】
本実施形態において、振幅入力部17aは、複数(ここでは、6つ)の振動発生部30の各々に対応するように配置された複数(ここでは、6つ)の釦で構成されており、何れかの釦が押下される毎に、当該何れかの釦に対応付けられた振動発生部30の振幅レベルが、H、M、L、H、…の順に切り替えられるようになっている。また、期間入力部17bは、1つの釦で構成されており、当該釦が押下される毎に、電磁波発生部20からの電磁波及び各振動発生部30からの振動のうち少なくとも1つの発生期間の長さが、T1、T2、T3、T1、…の順に切り替えられるようになっている。さらに、周波数入力部17cは、電磁波の周波数を上げるための第1釦と、電磁波の周波数を下げるための第2釦と、から構成されており、第1釦が押下される毎に、電磁波の周波数が所定値(例えば、0.1Hzや1Hz等)ずつ上がり、第2釦が押下される毎に、電磁波の周波数が所定値(例えば、0.1Hzや1Hz等)ずつ下がるようになっている。ここで、電磁波の周波数は、所定の範囲(例えば、0.1Hz~30Hz等)内で任意に設定されてもよい。さらにまた、指示入力部17dは、1つの釦で構成されており、当該釦が押下される毎に、電磁波及び振動の発生及び停止が交互に繰り返されるようになっている。なお、指示入力部17dによって電磁波及び振動の発生が開始された場合、所定時間(例えば、10分等)が経過した後に、電磁波及び振動の発生が自動的に停止されてもよい。また、電磁波の発生が開始した際の電磁波の周波数は、例えば、所定の周波数(後述するシューマン周波数等)に設定されてもよいし、複数の異なる周波数(後述するシューマン周波数を含む)の中から所定の釦等(図示省略)を用いて任意に選択されてもよい。
【0024】
入力部17は、振幅入力部17a、期間入力部17b、周波数入力部17c及び指示入力部17dの各々の釦の押下(操作)入力を認識してCPU11へ出力するためのインタフェース回路を含む。
【0025】
なお、美容装置10がタッチパネル入力方式の装置である場合には、入力部17は、主として表示画面に指先又はペンで触れることによるタッチパネル方式の入力を受け付けてもよい。ここで、タッチパネル入力方式は、静電容量方式等の公知の方式であってもよい。
【0026】
また、美容装置10が音声入力可能な装置である場合には、入力部17は、音声入力用のマイクを含むように構成されてもよいし、外付けのマイクを介して入力された音声データをCPU11へ出力するためのインタフェース回路を備えてもよい。
【0027】
通信インタフェース部18は、ケーブルを介して電磁波発生部20及び振動発生部30の各々と信号の送受信を行うためのインタフェース回路を含む。
【0028】
(3)美容システムにおける各機能の概要
本実施形態の美容システムで実現される機能について、
図4を参照して説明する。
図4は、本実施形態の美容システムで主要な役割を果たす機能を説明するための機能ブロック図である。
図4の機能ブロック図では、印加手段44及び付与手段45が本発明の美容システムの主要な構成に対応している。他の手段(周波数情報取得手段41、振幅情報取得手段42及び期間情報取得手段43)は必ずしも必須の構成ではないが、本発明をさらに好ましくするための構成要素である。
【0029】
周波数情報取得手段41は、対象者に印加される電磁波(波動)の周波数に関する情報を取得する機能を備える。
【0030】
周波数情報取得手段41の機能は、例えば以下のように実現される。美容装置10のCPU11は、例えば、入力部17の指示入力部17dが押下されることによって電磁波及び振動の発生を開始する場合に、電磁波発生部20から発生させる電磁波の周波数の初期値(例えば、後述するシューマン周波数(例えば、7.8Hz)等)を、対象者に印加される電磁波の周波数として取得する。ここで、電磁波の周波数の初期値は、RAM13又は記憶装置14に記憶されていてもよい。また、CPU11は、対象者に印加される電磁波の周波数を、入力部17の周波数入力部17cの第1釦又は第2釦が押下される毎に所定値ずつ増加又は減少することによって取得してもよい。なお、CPU11は、対象者に印加される電磁波の周波数の値を、例えばRAM13又は記憶装置14に記憶してもよい。
【0031】
振幅情報取得手段42は、振動発生部30から発生させる振動の振幅に関する情報を取得する機能を備える。
【0032】
振幅情報取得手段42の機能は、例えば以下のように実現される。美容装置10のCPU11は、例えば、入力部17の指示入力部17dが押下されることによって電磁波及び振動の発生を開始する場合に、
図5に示す振幅データにアクセスして、各振動発生部30の振動の振幅の初期値(例えば、振幅レベル「H」に対応するX(X>0)cm等)を、振動発生部30から発生させる振動の振幅として取得する。ここで、振幅データは、入力部17の振幅入力部17aを用いて入力される振幅レベル(図の例では、H、M及びL)毎に、振動発生部30から発生させる振動の振幅(図の例では、X、Y及びZ(0<Z<Y<X)cm)が対応付けられた状態で記述されているデータである。また、CPU11は、入力部17の振幅入力部17aの複数の釦のうち何れかの振動発生部30に対応する釦が押下されると、当該釦の押下に応じて切り替えられた振幅レベル(H、M又はL)に対応する振幅の値(X、Y又はZ)を、当該何れかの振動発生部30から発生させる振動の振幅として取得してもよい。なお、CPU11は、複数の振動発生部30の各々の振動の振幅の値を、例えばRAM13又は記憶装置14に記憶してもよい。
【0033】
期間情報取得手段43は、電磁波発生部20からの電磁波及び振動発生部30からの振動のうち少なくとも1つの発生期間に関する情報を取得する機能を備える。
【0034】
期間情報取得手段43の機能は、例えば以下のように実現される。美容装置10のCPU11は、例えば、入力部17の指示入力部17dが押下されることによって電磁波及び振動の発生を開始する場合に、
図6に示す期間データにアクセスして、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間(ここでは、電磁波及び振動の発生期間)の初期値(例えば、期間「T1」に対応する「単位時間(例えば、10秒)の25%(例えば、2.5秒)」)を、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間として取得する。この場合、単位時間が経過する毎に、単位時間のうち25%の期間内で電磁波及び振動のうち少なくとも1つが発生する。ここで、期間データは、入力部17の期間入力部17bを用いて入力される期間(図の例では、T1、T2及びT3)毎に、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間(図の例では、「単位時間の25%」、「単位時間の50%」及び「単位時間の75%」)が対応付けられた状態で記述されているデータである。また、CPU11は、入力部17の期間入力部17bの釦が押下されると、当該釦の押下に応じて切り替えられた期間(T1、T2又はT3)に対応する期間の値(「単位時間の25%」、「単位時間の50%」又は「単位時間の75%」)を、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間として取得してもよい。なお、CPU11は、発生期間の値を、例えばRAM13又は記憶装置14に記憶してもよい。
【0035】
なお、ここでは、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間が3段階に分類されている場合を一例として説明したが、発生期間は、3段階以外の複数の段階に分類されていてもよい。また、ここでは、電磁波及び振動のうち少なくとも1つの発生期間が、単位時間に対する所定の割合で表されている場合を一例として説明したが、発生期間は、例えば、所定の数値(例えば、10秒、20秒、30秒等)で表されてもよい。さらに、電磁波の発生期間は、各電磁波発生部20において同一になるように構成されてもよいし、少なくとも1つの電磁波発生部20において異なるように構成されてもよい。さらにまた、振動の発生期間は、各振動発生部30において同一になるように構成されてもよいし、少なくとも1つの振動発生部30において異なるように構成されてもよい。
【0036】
印加手段44は、所定の周波数の電磁波(波動)を対象者に印加する機能を備える。ここで、所定の周波数の電磁波(波動)は、対象者の細胞に印加されるものであってもよい。また、印加手段44は、所定の周波数の電磁波を電磁波発生部20から発生させることによって、所定の周波数の電磁波(波動)を対象者に印加してもよい。これにより、電磁波発生部20を用いて、所定の周波数の電磁波を対象者に印加することが可能になる。
【0037】
ここで、所定の周波数はシューマン共振周波数(例えば、7.8Hz)であってもよい。なお、シューマン共振(Schumann Resonances)とは、地球の大きさと共鳴・共振する電磁共振現象であり地球表面に定在している。その共振周波数は1次から順に、約7.8Hz、14.1Hz、20.3Hz、26.4Hz、32.4Hzとなる。本実施形態の特に好ましい態様において、対象者の細胞に印加される電磁波(波動)のシューマン共振周波数は、7.7~7.9Hz、13.9~14.3Hz、20.0~20.6Hz、26.0~26.8Hzであってよいが、これらのうち7.7~7.9Hz及び13.9~14.3Hzが好ましく、特に7.7~7.9Hzが好ましい。
【0038】
好ましくは、シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによって、例えば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによる、抗菌ペプチドの発現促進作用を通して、抗菌機能、免疫調節機能、抗炎症機能、創傷治癒機能等、皮膚の防御機能を強化することができる。
(2)シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによる、サーチュイン1の発現促進作用を通して、細胞遊走機能、創傷誘発性自然免疫機能、表皮の再上皮化機能、肉芽組織形成機能、血管新生機能及び創傷治癒機能等、皮膚の防御機能を強化することができる。
(3)シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによる、細胞遊走作用及び/又は細胞増殖作用を通して、創傷治癒機能を促進することができる。
【0039】
(4)シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによる、miR-181a発現抑制作用、miR-181b発現抑制作用を通して、サーチュイン1の発現を促進し、細胞遊走機能、創傷誘発性自然免疫機能、表皮の再上皮化機能、肉芽組織形成機能、血管新生機能及び創傷治癒機能等、皮膚の防御機能を強化することができる。
(5)シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによる、miR-132発現抑制作用を通して、細胞増殖機能を強化することができる。
(6)シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することによる、miR-145発現促進作用、miR-4654発現促進作用、miR-647発現抑制作用及びmiR-1973発現抑制作用を通して、乾癬、肥厚性瘢痕、尋常性疣贅、熱損傷等の炎症性皮膚疾患の治癒機能を強化することができる。
【0040】
ここで、シューマン共振周波数の波動を細胞に印加することにより発現が調節されるmiRNAは、以下の表1のとおりである。なお、下記表中のmiRBaseは、英国マンチェスター大学が管理する主要なmiRNAオンラインデータベース(http://www.mirbase.org)である。
【0041】
【0042】
また、細胞に印加される波動は、矩形波であってもよいし、正弦波であってもよいが、細胞レベルで良い効果が得られるという点において矩形波であることが好ましい。
【0043】
なお、シューマン共振周波数の波動を細胞に印加する場合の効果については、後述する実施例において説明する。
【0044】
さらに、印加手段44は、周波数情報取得手段41の機能に基づいて取得した情報に対応する周波数の電磁波(波動)を対象者に印加してもよい。これにより、取得した情報に基づいて、任意の周波数の電磁波を対象者に印加することが可能になる。
【0045】
さらにまた、印加手段44は、期間情報取得手段43の機能に基づいて取得した情報に対応する発生期間において電磁波を電磁波発生部20から発生させてもよい。これにより、取得した情報に基づいて、任意の発生期間内に電磁波を対象者に印加することが可能になる。
【0046】
印加手段44の機能は、例えば以下のように実現される。美容装置10のCPU11は、例えば、入力部17の指示入力部17dが押下されることによって電磁波及び振動の発生を開始する場合に、RAM13又は記憶装置14に記憶された電磁波の周波数の初期値に対応する周波数の電磁波を発生するための信号(例えば、電流や制御信号等)を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して各電磁波発生部20に送信する。このようにして、周波数の初期値(例えば、シューマン共振周波数(例えば、7.8Hz))に対応する周波数の電磁波が各電磁波発生部20から発生して対象者に印加される。
【0047】
また、CPU11は、周波数情報取得手段41の機能に基づいて、対象者に印加される電磁波の周波数に関する情報を取得すると、RAM13又は記憶装置14に記憶された周波数の値に対応する周波数の電磁波を発生するための信号を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して各電磁波発生部20に送信してもよい。このようにして、周波数入力部17cを用いて入力された任意の周波数に対応する周波数の電磁波が各電磁波発生部20から発生して対象者に印加される。
【0048】
さらに、CPU11は、期間情報取得手段43の機能に基づいて、電磁波発生部20からの電磁波の発生期間に関する情報を取得すると、RAM13又は記憶装置14に記憶された発生期間において電磁波を発生するための信号を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して各電磁波発生部20に送信してもよい。このようにして、期間入力部17bを用いて入力された任意の発生期間において各電磁波発生部20から電磁波が発生して対象者に印加される。
【0049】
付与手段45は、所定の周波数を表す感覚を対象者に付与する機能を備える。また、付与手段45は、所定の周波数に対応する周波数の振動を対象者に装着された振動発生部30から発生させることによって、所定の周波数を表す感覚を対象者に付与してもよい。これにより、対象者は、所定の周波数に応じた振動発生部30の振動数によって、自身に印加されている電磁波の周波数を容易に知覚することができる。
【0050】
さらに、付与手段45は、周波数情報取得手段41の機能に基づいて取得した情報に対応する周波数を表す感覚を対象者に付与してもよい。これにより、取得した情報に基づいて、任意の周波数を表す感覚を対象者に付与することが可能になる。
【0051】
さらにまた、付与手段45は、振幅情報取得手段42の機能に基づいて取得した情報に対応する振幅を有する振動を振動発生部30から発生させてもよい。これにより、取得した情報に基づいて、任意の振幅の振動を対象者に付与することができるので、例えば、複数の対象者毎に適切な振幅の振動を付与することができる。
【0052】
また、付与手段45は、期間情報取得手段43の機能に基づいて取得した情報に対応する発生期間において振幅を振動発生部30から発生させてもよい。これにより、取得した情報に基づいて、任意の発生期間内に振動を対象者に付与することが可能になる。
【0053】
付与手段45の機能は、例えば以下のように実現される。美容装置10のCPU11は、例えば、入力部17の指示入力部17dが押下されることによって電磁波及び振動の発生を開始する場合に、RAM13又は記憶装置14に記憶された電磁波の周波数の初期値に対応する周波数の振動を発生するための信号(例えば、電流や制御信号等)を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して各振動発生部30に送信する。このようにして、周波数の初期値(例えば、シューマン共振周波数(例えば、7.8Hz))に対応する周波数の振動が各振動発生部30から発生して対象者に付与される。
【0054】
ここで、本実施形態では、各振動発生部30から発生する振動の周波数が、電磁波発生部20から発生する電磁波の周波数と一致している場合を一例として説明しているが、各振動発生部30から発生する振動の周波数は、電磁波発生部20から発生する電磁波の周波数と異なっていてもよい。例えば、振動の周波数は、電磁波の周波数の所定の倍数であってもよいし、電磁波の周波数を所定の計算式に代入することによって得られた値であってもよい。
【0055】
また、CPU11は、周波数情報取得手段41の機能に基づいて、対象者に印加される電磁波の周波数に関する情報を取得すると、RAM13又は記憶装置14に記憶された周波数の値に対応する周波数の振動を発生するための信号を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して各振動発生部30に送信してもよい。このようにして、周波数入力部17cを用いて入力された任意の周波数に対応する周波数の振動が各振動発生部30から発生して対象者に付与される。
【0056】
さらに、CPU11は、振幅情報取得手段42の機能に基づいて、複数の振動発生部30のうち何れかの振動発生部30から発生させる振動の振幅に関する情報を取得すると、RAM13又は記憶装置14に記憶された振幅の値に対応する振幅を当該何れかの振動発生部30に発生させるための信号(例えば、電流や制御信号等)を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して当該何れかの振動発生部30に送信してもよい。このようにして、振幅入力部17aを用いて入力された任意の振幅を有する振動が各振動発生部30から発生して対象者に付与される。
【0057】
さらにまた、CPU11は、期間情報取得手段43の機能に基づいて、振動発生部30からの振動の発生期間に関する情報を取得すると、RAM13又は記憶装置14に記憶された発生期間において振動を発生するための信号を生成し、生成した信号を、通信インタフェース部18及びケーブルを介して各振動発生部30に送信してもよい。このようにして、期間入力部17bを用いて入力された任意の発生期間において各振動発生部30から振動が発生して対象者に付与される。
【0058】
(4)本実施形態の美容システムの主要な処理のフロー
次に、本実施形態の美容システムにより行われる主要な処理のフローの一例について、
図7のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
美容装置10のCPU11は、印加手段44の機能に基づいて、例えば電磁波発生部20等を用いて、所定の周波数の電磁波(波動)を対象者に印加する(ステップS100)。ここで、CPU11は、所定の周波数の電磁波を電磁波発生部20から発生させることによって、所定の周波数の電磁波を対象者に印加してもよい。また、所定の周波数はシューマン共振周波数(例えば、7.8Hz)であってもよい。さらに、CPU11は、期間情報取得手段43の機能に基づいて取得した情報に対応する発生期間において電磁波を電磁波発生部20から発生させてもよい。
【0060】
次に、美容装置10のCPU11は、付与手段45の機能に基づいて、所定の周波数を表す感覚を対象者に付与する(ステップS102)。ここで、CPU11は、所定の周波数に対応する周波数の振動を対象者に装着された振動発生部30から発生させることによって、所定の周波数を表す感覚を対象者に付与してもよい。また、CPU11は、振幅情報取得手段42の機能に基づいて取得した情報に対応する振幅を有する振動を振動発生部30から発生させてもよい。さらに、CPU11は、期間情報取得手段43の機能に基づいて取得した情報に対応する発生期間において振幅を振動発生部30から発生させてもよい。
【0061】
なお、美容装置10のCPU11は、周波数情報取得手段41の機能に基づいて取得した情報に対応する周波数の電磁波(波動)を対象者に印加してもよい。また、CPU11は、周波数情報取得手段41の機能に基づいて取得した情報に対応する周波数を表す感覚を対象者に付与してもよい。
【0062】
上述したように、本実施形態の美容システムによれば、対象者に印加される電磁波(波動)の周波数を表す感覚(振動)が当該対象者に付与されるので、対象者は、付与された感覚によって、自身にどの程度の周波数の電磁波が印加されているかを容易に知覚することができる。
【0063】
なお、上述した各手段41~45の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されていてもよい。このプログラムを記録した記憶媒体は、
図2に示す美容装置10のROM12、RAM13又は記憶装置14であってもよい。また、記憶媒体は、例えばCD-ROMドライブ等のプログラム読取装置に挿入されることで読み取り可能なCD-ROM等であってもよい。さらに、記憶媒体は、磁気テープ、カセットテープ、フレキシブルディスク、MO/MD/DVD等であってもよいし、半導体メモリであってもよい。
【0064】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0065】
例えば、上述した実施形態では、印加手段44が、所定の周波数(例えば、シューマン共振周波数)の電磁波(波動)を対象者に印加する場合を一例として示しているが、本発明は、印加手段44が、当該所定の周波数を含む所定の周波数帯内の何れかの周波数の電磁波(波動)を対象者に印加する態様も含むことに留意されたい。
【0066】
また、上述した実施形態では、電磁波発生部20及び振動発生部30が、対象者の顔面に装着される美容用マスクMのポケットP1~P12に挿入されることによって対象者に装着される場合を一例として説明したが、本発明は、この場合に限られない。例えば、電磁波発生部20及び振動発生部30は、美容用マスクMを用いることなく、対象者の顔面等に直接装着可能に構成されてもよい。
【0067】
さらに、上述した実施形態では、電磁波の周波数に対応する周波数の振動が感覚として対象者に付与される場合を一例として説明したが、本発明は、この場合に限られない。例えば、電磁波の周波数に対応する周波数を表す音声情報や視覚情報(例えば、画像情報)等が感覚として対象者に付与されてもよい。
【0068】
さらにまた、上述した実施形態では、周波数情報取得手段41、振幅情報取得手段42及び期間情報取得手段43が、入力部17を用いて情報が入力されることによって、当該情報を取得する場合を一例として説明したが、本発明は、この場合に限られない。例えば、周波数情報取得手段41、振幅情報取得手段42及び期間情報取得手段43のうち少なくとも1つは、インターネットやLAN(Local Area Network)等の通信網を介して美容装置10と通信可能に接続された装置から送信された情報を受信することによって、当該情報を取得してもよい。
【0069】
さらに、上述した実施形態では、美容装置10によって、周波数情報取得手段41、振幅情報取得手段42、期間情報取得手段43、印加手段44及び付与手段45の各機能を実現する構成としたが、本発明は、この構成に限られない。例えば、インターネットやLAN(Local Area Network)等の通信網を介して美容装置10と通信可能に接続された管理装置(例えば、汎用のパーソナルコンピュータやサーバコンピュータ等)によって、上記各手段41~45のうち少なくとも1つの手段の機能を実現する構成としてもよい。この場合、
図4に示した機能ブロック図の各機能は、
図8(a),(b)に示すように、美容装置10と管理装置との間で任意に分担されてもよい。
【0070】
また、管理装置は、複数の美容装置10と通信を行うように構成されてもよく、例えば、管理装置が取得した情報(例えば、波動の周波数に関する情報、振動の振幅に関する情報、及び、振動の期間に関する情報のうち少なくとも1つ)を各美容装置10に送信してもよい。これにより、管理装置を用いて、複数の美容装置10の各々の動作を制御することが可能になる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を示すが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。
【0072】
〔試験例1:細胞遊走作用試験〕
単一ドナーの小児由来正常ヒト表皮角化細胞(NHEK,PromoCell社製,継代数2~4)を、Keratinocyte Growth Medium2(KGM2,PromoCell社製)を用いて37℃、5%CO2下で培養した。培養後、NHEKは12×104cells/mLの濃度で35mmディッシュに1ディッシュ当たり2mLずつ播種した。コンフルエントまで培養後、さらに24時間培養した(G0期)。200μLピペットチップで35mmディッシュに十字を描いて細胞を剥離した後、培地(KGM2)で洗浄し、さらに24時間培養した。これを比較例1とした(n=3)。
【0073】
また、細胞剥離時及び培養24時間後に、7.83Hz超低周波パルス発生器(Walfront社製,製品名「CF-FM783-BA」,作業電流1mV)上で10分間放置し、電磁波を印加した以外は比較例1と同様に培養した(n=3)。これらを実施例1とした。
【0074】
さらに、細胞剥離後に、マイコプラズマ由来の合成ジアシル化リポペプチド(Fibroblast-Stimulating Lipopeptide,アディポジェン ライフ サイエンス社製,FSL-1)を終濃度で0.1μg/mL含有する培地(KGM2)を用いて24時間培養した以外は比較例1と同様に培養した(n=3)。ジアシル化リポペプチドは、Toll様受容体(TLR)に認識されることで抗菌ペプチドの産生を促進することが知られている。これらを比較例2とした。
【0075】
培養24時間後、実施例1及び比較例1~2において、ピペットチップで細胞を剥離して作成した溝周辺の状態を顕微鏡で観察した。顕微鏡の写真を
図9に示す。
【0076】
比較例1(A)及び比較例2(B)と比較して、7.83Hzの電磁波(シューマン共振周波数の波動)を印加した実施例1(C)では、優れた細胞遊走作用が認められた。
【0077】
〔試験例2:β-ディフェンシン2及びカテリシジンの発現促進作用試験〕
試験例1の細胞遊走作用試験(顕微鏡観察)後、実施例1及び比較例1~2のそれぞれについて、培地を除去し、リン酸緩衝液で洗浄した。次いで、1% sodium dodecyl sulfate(ニッポンジーン社製)1mLを添加して細胞を回収した。この細胞懸濁液をボルテックスで十分攪拌した後、180μLを採取した。これに1%KOH(ナカライテスク社製)1μL及び20mg/mL Proteinase K Solution(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)20μLを添加し、37℃、15分インキュベートした。インキュベート後、RNA Clean XP(ベックマン・コールター社製)を各100μL添加し、攪拌後マグネットスタンド上で5分静置した。上清を除去し、85%エタノールで2回洗浄後、10分間乾燥し30μLのNuclease-Free Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を加えた。マグネットスタンド上で5分間静置し、上清をRNA溶液とした。
【0078】
0℃下、200μLのPCRチューブ(バイオ・ラッド社製,クリア,ドームキャップ)にSuper Script IV VILO Master Mix (サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)1に対しNuclease-free water2.5の割合で調製し、ボルテックスで攪拌後、別のPCRチューブに各14.0μL分注した。これに上で得られたRNA溶液を各6.0μL添加し、サーマルサイクラー(バイオ・ラッド社製,製品名「T100 Thermal Cycler」)を用いて、逆転写反応(25℃10分、50℃10分、85℃5分)を行い、cDNA溶液を得た。
【0079】
cDNAの増幅には、Taqman Gene Expression Assays(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた。具体的には、β-ディフェンシン2を増幅可能なプライマー及びプローブを含有するTaqman Gene Expression Assays(DEFB4A/DEFB4B,アッセイID: Hs00175474_m1)を用い、カテリシジン(CAMP,アッセイID: Hs00189038_m1)、及び内在性コントロールとしてのβ-アクチン(ACTB,アッセイID:Hs99999903_m1)も同様とした。Taqman Gene Expression Assays1に対し、TaqPath qPCR Master Mix, CG(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)10、Nuclease-free water5の割合で調製し、Nuclease-freeチューブに入れ、ボルテックスで攪拌後、スピンダウンした。これをPCRチューブ(バイオ・ラッド社製,ホワイト,フラットキャップ)に各16.0μL分注し、cDNA溶液(実施例1,比較例1又は比較例2)を各4.0μL添加し、ピペッティング、ボルテックスで攪拌後、スピンダウンした。
【0080】
これらのサンプルを用いてリアルタイムPCR(バイオ・ラッド社製,製品名「C1000 Touch Thermal Cycler」)を実施した。PCR条件は、25℃2分、95℃20秒、95℃3秒(1)、60℃30秒(2)((1)→(2)を40サイクル)で行った。β-ディフェンシン2及びカテリシジンの発現量は、β-アクチン発現量にて標準化した。β-ディフェンシン2及びカテリシジンの発現促進率は、標準化した比較例1(無処理)の各遺伝子の発現量の平均値を1として、その相対値を算出した。結果を表2に示す。
【0081】
【0082】
表2により、細胞に7.83Hzの電磁波(シューマン共振周波数の波動)を印加した実施例1は、比較例1(無処理)と比べて、β-ディフェンシン2及びカテリシジンの発現が促進されていた。また、実施例1は、ジアシル化リポペプチドを添加した比較例2と比べても、β-ディフェンシン2及びカテリシジンの発現がより促進されていた。
【0083】
〔試験例3:細胞増殖作用試験〕
単一ドナーの小児由来正常ヒト表皮角化細胞(NHEK,PromoCell社製,継代数2~4)はKeratinocyte Growth Medium2(KGM2,PromoCell社製)を用いて37℃、5%CO2下で培養した。培養後、NHEKを4×104cells/mLの濃度で96ウェルプレートに1ウェル当たり100μLずつ播種し、96時間培養した。
【0084】
培養24、48及び72時間後に、7.83Hz超低周波パルス発生器(Walfront社製,製品名「CF-FM783-BA」,作業電流1mV)上で10分間放置し、電磁波を印加した(n=6)。10分間に一定の振幅の電磁波(矩形波)を印加し続けたものを実施例2とした。また、10分間に正弦波(振幅は矩形波と同じ)の電磁波を印加したものを実施例3とした。さらに、コントロールとして、無処理のウェルも用意し(n=6)、比較例3とした。
【0085】
培養96時間後に培養液を除去し、リン酸緩衝液(シグマアルドリッチ ジャパン社製)で洗浄後、50μg/mLニュートラルレッド(NR,ナカライテスク社製)を各ウェルに100μL添加し、3時間培養した。NR液を除去し、固定液(1%ホルムアルデヒド)200μLを添加して細胞を固定した。固定液を除去後、抽出液(1%酢酸,50%2-プロパノール)を各ウェルに100μL添加し、細胞内に取り込まれたNRを抽出した。540nmの吸光度をマイクロプレートリーダー(ナルジェヌンクインターナショナル社製,製品名「Immuno Mini NJ-2300」)で測定した。540nmの吸光度の値を表3に示す。細胞増殖率は、比較例3(無処理)の540nm吸光度の平均値を1として、その相対値を算出した。結果を表3に示す。
【0086】
【0087】
表3により、細胞に7.83Hzの電磁波(シューマン共振周波数の波動)を印加した実施例2および3では、比較例3(無処理)と比較して細胞増殖が促進されており、実施例2では、比較例3(無処理)と比較して、2.81倍の細胞増殖作用が認められ、実施例3でも1.16倍の細胞増殖作用が認められた。
【0088】
〔試験例4:サーチュイン1の発現促進作用試験〕
単一ドナーの小児由来正常ヒト表皮角化細胞(NHEK,PromoCell社製,継代数2~4)を、Keratinocyte Growth Medium2(KGM2,PromoCell社製)を用いて37℃、5%CO2下で培養した。培養後、NHEKを3×104cells/mLの濃度でT25フラスコに5mLずつ播種し(n=3~5)、さらに72時間培養した。これを比較例4とした。
【0089】
また、播種後、培養24、48及び72時間後に、7.83Hz超低周波パルス発生器(Walfront社製,製品名「CF-FM783-BA」,作業電流1mV)上で10分間放置し、電磁波を印加した。これを実施例4とした。
【0090】
培養72時間後、実施例4及び比較例4について、試験例2と同様に細胞を回収しRNA溶液を得た後、逆転写を行ってcDNA溶液を得た。
【0091】
cDNAの増幅には、Taqman Gene Expression Assays(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた。具体的には、サーチュイン1(SIRT1,アッセイID:Hs01009006_m1)及び内在性コントロールとしてβ―アクチン(ACTB,アッセイID:Hs99999903_m1)を用いた。そして、試験例2と同様にリアルタイムPCRを実施した。
サーチュイン1の発現量は、β-アクチン発現量にて標準化した。サーチュイン1の発現促進率は、標準化した比較例4(無処理)の遺伝子の発現量の平均値を1として、その相対値を算出した。結果を表4に示す。
【0092】
【0093】
表4により、細胞に7.83Hzの電磁波(シューマン共振周波数の波動)を印加した実施例4では、比較例4(無処理)と比べて、サーチュイン1の発現が促進されていると認められた。
【0094】
〔試験例5:エクソソームのmiRNA解析〕
NHEKは3×104cells/mLの濃度でT25フラスコに5mLずつ播種した(n=2)。培養24,48及び72時間後に7.83Hz超低周波パルス発生器(Walfront社製,製品名「CF-FM783-BA」,作業電流1mV)上で10分間放置し、電磁波を印加した。これを実施例5とした。7.83Hzの電磁波を印加しないものを比較例5(無処理)とした。それぞれ培養72時間後に培養上清をExoQuick-TC(システムバイオサイエンス社製)に供してエクソソームを回収した。回収したエクソソーム(n=2)をPBS300μLで懸濁後、-80℃で保存した。エクソソームからRNAを抽出した後、東レ株式会社が提供する受託解析サービスを利用してmiRNA発現量を解析した。当該受託解析サービスでは、3D-Gene miRNA Labeling kit(東レ社製)により標識を行い、3D-Gene Human miRNA Oligo chip(ver.22,東レ社製,2,632種のmiRNA検出用プローブを搭載)に対し、32℃、16時間ハイブリダイゼーションを行った後、スキャナー(3D-Gene Scanner 3000,東レ社製)を用いて画像を取得し、数値化ソフト(3D-Gene Extraction software,東レ社製)を用いて解析した。
【0095】
検出した値の中央値が25となるように測定値を補正したうえで、全2,632種の補正値の75%パーセンタイル値にて標準化してそれぞれの発現量とし、実施例5と比較例5とを比較した。
【0096】
miR-145-5p及びmiR-4654は、比較例5でバックグラウンドと同程度であった発現量が、実施例5では発現が顕著に促進されていた。発現変動比の比較のため、比較例5での補正値を1として発現変動比を算出すると、miR-145-5pは12.19倍、miR-4654は12.40倍となった。
miR-181a-2-3p、miR-181b-2-3p、miR-132-3p、miR-647及びmiR-1973は、比較例5で有意な発現量が検出されたが、実施例5では発現量がバックグラウンドと同程度まで顕著に減少していた。発現変動比の比較のため、実施例5での補正値を1として発現変動比を算出すると、miR-181a-2-3pは0.087倍、miR-181b-2-3pは0.116倍、miR-132-3pは0.090倍、miR-647は0.089倍、miR-1973は0.091倍と算出された。
【0097】
〔試験例6:細胞遊走作用試験〕
単一ドナーの大人由来正常ヒト真皮線維芽細胞(HF,継代数4)を10%牛胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(DMEM,ナカライテスク社製)を用いて37℃、5%CO2下で培養した。培養後、HFは2×104cells/mLの濃度で35mmディッシュに1ディッシュ当たり2mLずつ播種した。コンフルエントまで培養後、さらに24時間培養した(G0期)。200μLピペットチップで35mmディッシュに十字を描いて細胞を剥離した後、培地(DMEM)で洗浄し、さらに24時間培養した。これを比較例6とした(n=3)。
【0098】
また、細胞剥離時に本美容装置10の電磁波発生部20上に35mmディッシュを10分間放置し、矩形波の電磁波を印加した。電磁波の印加は周波数(7.8Hz)、期間(T1,T2,T3)及び振幅(L,M,H)の組み合わせで行った。
=期間=
T1:電磁波の印加0.032秒,印加せず0.096秒の繰り返し
T2:電磁波の印加0.064秒,印加せず0.064秒の繰り返し
T3:電磁波の印加0.096秒,印加せず0.032秒の繰り返し
=振幅=
L:0.6V
M:1.5V
H:2.5V
【0099】
T1-Lを実施例6、T1-Mを実施例7、T1-Hを実施例8、T2-Lを実施例9、T2-Mを実施例10、T2-Hを実施例11、T3-Lを実施例12、T3-Mを実施例13、T3-Hを実施例14とした。電磁波を印加した以外は比較例6と同様に培養した(n=3)
【0100】
培養24時間後、リン酸緩衝液で洗浄し、メタノール(富士フィルム和光純薬製)2mLで固定し、メタノール除去、風乾後に5%ギムザ染色液(ナカライテスク社製)2mLで染色した。水洗浄、風乾後に実施例6~14及び比較例6において、ピペットチップで細胞を剥離して作成した溝周辺の状態を写真撮影した。写真を
図10に示す。
【0101】
比較例6と比較して、7.8Hzの電磁波を印加した実施例6~14では、優れた細胞遊走作用が認められた。細胞遊走作用は、印加時間が長いほど(T1<T2<T3)、また振幅が大きいほど(L<M<H)促進され、実施例14(T3-H)で最大の細胞遊走作用が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0102】
上述したような本発明の美容システムは、例えば皮膚の防御機能を強化する等の美容サービスに好適に利用することができるので、その産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0103】
10…美容装置
20…電磁波発生部
30…振動発生部
41…周波数情報取得手段
42…振幅情報取得手段
43…期間情報取得手段
44…印加手段
45…付与手段
M…美容用マスク
【配列表】