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特許7527037炉、流体供給器、流体改質システム及び流体改質方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】炉、流体供給器、流体改質システム及び流体改質方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 14/08 20060101AFI20240726BHJP
   B01J 19/26 20060101ALI20240726BHJP
   B22D 1/00 20060101ALI20240726BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20240726BHJP
   F27B 14/18 20060101ALI20240726BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20240726BHJP
   F27D 3/14 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F27B14/08
B01J19/26
B22D1/00 Z
B22D43/00 A
F27B14/18
F27D3/16 Z
F27D3/14 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022518640
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2020058714
(87)【国際公開番号】W WO2021053602
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】2019/06187
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(73)【特許権者】
【識別番号】522111585
【氏名又は名称】バーンスター テクノロジーズ(ピーティーワイ)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エステルハウゼ、ベルナルド デ ヴァール
(72)【発明者】
【氏名】ブラント、ヨハン フランソワ
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-145570(JP,A)
【文献】特開2003-207283(JP,A)
【文献】特表平5-500555(JP,A)
【文献】特開2018-171562(JP,A)
【文献】実開昭60-083900(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 11/00 - 15/20
B01J 19/26
B22D 1/00
B22D 43/00
F27B 17/00 - 19/04
F27D 3/00 - 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体本体を内部に保持するためのチャンバを画定する容器と、
前記チャンバの前記液体本体の液面より下に流体を導入するための流体入口であって、前記流体を液体と相互作用させて、前記相互作用による生成物を前記チャンバから排出するための出口に向けて液体中を移動させるための流体入口と、
前記液体本体の前記液面の近くに操作可能に配置された堰と、前記堰とは離隔して配置されて前記流体入口と流体連通するポートとを有する液体循環通路であって、前記液体が前記堰を超えて前記液体循環通路及び前記ポートを介して流れることを可能とする液体循環通路と、
を備える炉。
【請求項2】
前記ポートは、前記液体を吸引して前記流体と混合させるように構成され、混合物が前記流体入口を通って前記チャンバに導入される、請求項1に記載の炉。
【請求項3】
前記混合物は前記液体を通って移動させられ、前記堰は、前記液体本体が前記堰を超えて流れるときに前記液体の前記液面を制御するために、前記液体本体の意図された液面の近くに操作可能に配置される、請求項2に記載の炉。
【請求項4】
前記炉は流体改質器として運転可能であり、前記流体を1以上のその構成要素に分解させるように構成される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の炉。
【請求項5】
前記炉は、前記液体からの前記生成物を分離するように構成された生成物除去装置を含む、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の炉。
【請求項6】
前記生成物除去装置は、前記チャンバ内の前記液体本体の表面を掬い取るためのスキミング装置である、請求項5に記載の炉。
【請求項7】
前記生成物除去装置は、前記生成物を前記出口から排出するための前記出口に連通する、請求項5又は請求項6に記載の炉。
【請求項8】
前記生成物は、流体生成物および固体生成物を含み、前記出口は前記流体生成物と前記固体生成物の一方又は両方を排出するように構成される、請求項5~請求項7のいずれか一項に記載の炉。
【請求項9】
前記出口は、前記生成物除去装置と連通する、上向き角度を有する排出通路であり、前記生成物除去装置は、前記固体生成物が前記上向き角度を有する排出通路に沿って強制的に押し出され、その一方で前記流体生成物は漏洩することができるようになっており、前記生成物除去装置と前記上向き角度を有する排出通路は、前記液体が前記上向き角度を有する排出通路内に意図せずに移動させられた場合、前記液体は重力の影響で前記チャンバ内へ逆流可能となっており、それによって前記液体を前記固体生成物から分離するように構成される、請求項8に記載の炉。
【請求項10】
前記スキミング装置には、前記液体本体の表面を自動的に掬い取って前記生成物をそこから分離する可動部材が含まれ、前記スキミング装置の前記可動部材を駆動するための駆動装置が提供される、請求項6に記載の炉。
【請求項11】
前記生成物除去装置はポンプであり、前記ポンプは、使用時に前記液体からの前記生成物を分離するように配置された複数のベーン又はローブを含む、請求項5に記載の炉。
【請求項12】
貫流する前記流体を加速するための流体加速素子が前記流体入口に設けられ、前記流体加速素子は流体循環通路に流体連通する、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の炉。
【請求項13】
前記流体加速素子は、ベンチュリ、ノズル、アスピレータ、エデュケータ、イジェクタ、又はジェットポンプのいずれかである、請求項12に記載の炉。
【請求項14】
前記流体加速素子は、前記流体を前記液体と混合して泡を生成させるように構成される、請求項12又は請求項13に記載の炉。
【請求項15】
前記容器は、使用時に前記液体本体として溶融材料を保持するように配置される、請求項4に記載の炉。
【請求項16】
前記溶融材料は溶融金属又は溶融塩である、請求項15に記載の炉。
【請求項17】
前記炉は、前記流体を前記チャンバ内に導入するための入口に流体連通する流体供給管を含む、請求項16に記載の炉。
【請求項18】
前記流体供給管によって導入される前記流体は、前記溶融金属又は溶融塩と相互作用するように選択された供給ガス又は供給液体である、請求項17に記載の炉。
【請求項19】
流体供給器であって、
使用時に液体本体を保持するために容器に固定されるように配置された上端と、
前記容器内の前記液体本体の液面より下に提供されるように配置された下端と、
前記容器の前記液体本体の液面より下に流体を導入して、前記流体を液体と相互作用させて貫通して移動させるようになった、前記下端の付近の流体入口と、
前記液体本体の液面近くに操作可能に配置可能な堰と、その堰とは離隔して配置されて前記流体入口に流体連通するポートとを有し、前記上端から前記下端に向かって延在する液体循環通路であって、前記液体が前記堰を超えて、前記液体循環通路及び前記ポートを介して流れることを可能とするようになった、液体循環通路と、
を備える、流体供給器。
【請求項20】
流体を改質する方法であって、
液体を保持するためのチャンバを内部に画定する容器の中の液体本体を加熱し、
前記チャンバ内の前記液体本体の液面より下に、入口を介して流体を導入し、前記流体を前記液体と相互作用させて、前記相互作用による生成物を前記チャンバから排出するための出口に向けて前記流体を前記液体を通って移動させ、
前記液体本体の前記液面の近くに操作可能に配置された堰と、前記堰から離れて配置されて流体入口と流体連通するポートとを有する、液体循環通路を利用し、
前記液体が前記堰を超えて、前記液体循環通路及び前記ポートを貫通して流れることを可能とする、
ことを含む、流体改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年9月19日出願の南アフリカ共和国仮特許出願第2019/06187号の優先権を主張し、この出願を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、炉、反応炉及び改質器に関する。より具体的には、これに限るものではないが、本発明は高温液体内で流体を改質するための、炉、反応器又は改質器に関する。
【背景技術】
【0003】
炉、反応器又は改質器内の浮遊物質を除去する現在の方法は、炉の容器又はチャンバを開放することを必要とする。容器を定期的に開放して大気に晒すことが必要であり、金属精錬炉の場合には、溶融液体表面又は溶融金属液面を手持ち又は機械式のレーキ、柄杓又は類似の器具でこすって、浮遊物(スラグと呼ばれることがある)を除去する。
【0004】
炉内の高温液体の正確な液面を制御することは困難又は不可能な場合がある。溶融金属が炉内に封じられている場合の液面制御は特に難しい可能性がある。改質器は、器内の加熱液体に流体を導入して化学反応を生じさせ、それにより流体を処理する装置である。燃料改質器は、炭化水素を代替製品に変換可能な化学合成の一種である、水蒸気改質、オートサーマル改質又は部分酸化を可能とする装置である。現在知られている改質器、及び特に溶融金属を利用する燃料ガス改質器は、改質すべきガスを溶融金属に接触させる前に、一般的にその金属を個別加熱する必要があるという欠点を有する。したがって、溶融金属は別の加熱容器から改質器へ移し替える必要があり、それは危険な手順であるばかりでなく、熱損失および非効率をもたらし得るものである。このように多くの改質プロセスには、個別の酸化式若しくは通常燃焼加熱式若しくはアーク炉式の鍋又はバッファタンクが必要とされ、溶融金属は通常その炉から改質器へポンプで汲み上げるか機械的に移動される。
【0005】
溶融金属炉又は改質器は、溶融金属表面に、固体、泡状又は液体のスラグの組み合わせを生成する可能性がある。このスラグは、炉で製造され得る製品品質を阻害し、悪影響を及ぼす可能性がある。スラグ除去の既知の方法は、面倒で非効率的である。改質器内部では溶融金属表面又は液体表面上に、スラグ又は廃棄物の層が形成され得る。現在知られているシステム及び方法では、この廃棄物を液体表面からタイミングよく除去することができず、また手持ち若しくは機械式のレーキ、柄杓又は類似の器具を挿入してスラグを除去するために、容器を開放して内容物を大気に晒す必要がある。これにより、廃棄物又はスラグと、その改質器又は炉内で製造される他の製品との間の接触が長くなる可能性があり、望ましくない反応又は望ましくない副産物の生成を生じる可能性がある。
【0006】
炉内の溶融金属の温度を上昇または変化させると、体積(及びしたがって溶融金属の液面高さ)を、炉又は反応炉内で変化させる可能性がある。現在の炉又は反応炉は、炉又は反応炉内の液面高さを効果的に制御する手段を持っていない。液面高さが変動するために、運転中に自動的かつ制御してスラグを除去することは多くの課題を有するか又は不可能である。通常、炉を開ける前に、炉の運転を停止するか、安全モードで運転することが必要である。そうしてスラグ層を手動でこすり落としてから炉の運転が継続される。金属を精錬するためには、炉内に高温度(例えば約1000℃を超える温度)が必要とされる。このような高温は、材料及び機械的運転において課題をもたらす可能性がある。このような温度における効果的な液面制御は、現在知られているシステム及び方法では困難又は不可能であり得る。従来の平鍋及び炉では、機械的なこすり落とし、掻き出し、タッピング、あるいは柄杓を利用して、スラグを除去する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上記の欠点及び課題に対処し、あるいは既知の装置、システム及び方法に対する少なくとも有効な代替手段提供の余地がある。
【0008】
上に述べた本発明の背景に関する議論は、本発明の理解を容易にすることのみを意図するものである。上記の議論は、参照した資料のいかなるものも本出願の優先日において当分野における共通の一般的知識の一部であることを承認又は認めるものではないことを理解されたい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、液体の本体を内部に保持するためのチャンバを画定する容器と、チャンバの液体本体の液面より下に流体を導入するための流体入口であって、流体を液体と相互作用させて、相互作用による生成物をチャンバから排出するための出口に向けて液体中を移動させるための流体入口と、液体本体の液面近くに操作可能に配置された堰と、堰とは離隔して配置されて流体入口と流体連通するポートとを有する液体循環通路であって、液体が堰を超えて液体循環通路及びポートを介して流れることを可能とする液体循環通路と、を備える炉が提供される。
【0010】
更なる特徴として、液体を吸引して流体と混合させるように構成されるポートが提供され、混合物は入口を介してチャンバ内に導入されて、液体を貫通して移動させられる。また、堰は、液体が堰を超えて流れるときに液体本体の液面を制御するために、液体本体の所望の又は意図された液面の近くに操作可能に配置される。
【0011】
また更なる特徴として、生成物は流体生成物及び/又は固体生成物、あるいはそれらの組み合わせを含み、出口は流体生成物と固体生成物の一方又は両方を排出するように配置され、流体生成物はガス生成物であり、代わって流体生成物は、泡若しくは泡沫、又は液体生成物である。
【0012】
なお更なる特徴として、炉は流体改質器として運転可能であり、炉は、流体を生成物の一部を形成し得る1以上の構成要素に分解又は化学変化させ、容器は、使用時に液体本体として溶融材料を保持するように構成され、また、溶融材料は溶融金属又は溶融塩あるいはそれらの組み合わせである。
【0013】
更なる特徴として、炉は生成物除去装置又はクリーニング装置を含み、生成物除去装置又はクリーニング装置は、チャンバ内の液体本体の表面をスキミングするスキミング装置であり、スキミング装置は使用時に生成物を液体から分離するように構成され、スキミング装置は生成物を排出する出口と連通し、生成物除去装置又はスキミング装置は、使用時に生成物を分離させるために液体本体の表面を自動スキミングする可動部材を含み、スキミング装置又は生成物除去装置の可動部材を駆動するために駆動装置が提供され、駆動装置は、歯車又は同様の機械的駆動装置を有する電気モータである。
【0014】
また更なる特徴として、スキミング装置又は生成物除去装置はポンプであり、可動部材はポンプのベーンであり、ポンプは回転ローブポンプであり、可動部材は回転ローブポンプのベーン又はローブであり、ポンプは、液体から固体生成物及び/又は流体生成物を分離するように構成された複数のベーン又はローブを含む。
【0015】
なお更なる特徴として、流体加速素子は通過する流体を加速するために流体入口に設けられ、流体加速素子は流体循環通路のポートと流体連通し、流体加速素子は、ベンチュリ、ノズル、アスピレータ、エデュケータ、イジェクタ、又はジェットポンプである。
【0016】
更なる特徴として、流体加速素子は、流体を液体と混合させて泡又はナノバブルを生成させるように構成される。
【0017】
また更なる特徴として、出口は、生成物除去装置又はスキミング装置と連通する、上向き角度を有する排出通路又は開口であり、生成物除去装置又はスキミング装置は、固体生成物が上向き角度を有する排出通路に沿って強制的に押し出され、その一方でガス生成物又は流体生成物は漏洩することができるようになっており、生成物除去装置又はスキミング装置と上向き角度を有する排出通路とは、例えば、液体が意図せずに又はその他で上向き角度を有する排出通路に入り込んだとしても、重力の影響で液体がチャンバに流れて戻ることを可能とするような構成であり、それにより液体を固体生成物から分離可能となっている。
【0018】
なお更なる特徴として、出口は、水平な通路、又は流体生成物が出口から排出又はタップ可能となるように下向きの角度を有する排出通路であり、下向きの角度を有する排出通路は、任意の適切な角度又は水平に対して斜めの角度に配置されている。
【0019】
更なる特徴として、炉は入口と流体連通した流体供給管を含み得る。流体供給管は円筒形であってよい。あるいは、楕円形、正方形、矩形又は流体用導管を提供可能な他の任意の断面形状であってよい。
【0020】
更なる特徴として、液体循環通路が炉の頂部から炉の底部へ延在する細長い通路であり、
液体循環通路が液体循環チューブであり、液体循環チューブは流体供給管の周りに設けられ、任意選択により、液体循環チューブは流体供給管に同心状に配置され、液体循環チューブの下端にはプラグが含まれ、プラグはその中に流体加速素子を有し、かつ液体循環チューブと流体加速素子との間に流体連通を提供するポートを画定する。液体循環チューブは円筒形であってよい。あるいは、楕円形、正方形、矩形又は液体用導管を提供可能な他の任意の断面形状であってよい。
【0021】
また更なる特徴として、例えば、液体循環チューブの上端における溝によって、液体循環チューブの上端に堰を画定することも可能である。
【0022】
なお更なる特徴として、液体循環チューブと流体供給管が、チャンバ内に操作可能に下降されるロッド形状部品の一部を形成し、そのロッド形状部品を炉の頂部に固定して、堰が液体本体の所望の液面を規定することが可能である。
【0023】
更なる特徴として、液体循環チューブは炉の頂部に取り外し自在に取り付け可能であり、液体循環チューブは、バヨネット型接続具などのクイックリリース型の接続具で炉の頂部に着脱自在に取り付け可能であり、あるいはスナップフィット又はねじ接続具も使用可能である。
【0024】
また更なる特徴として、炉は流体分散素子を含み、流体分散素子は、複数の開口を含むプレートであり、流体分散素子は液体循環通路の下端に固定されてよい。
【0025】
なお更なる特徴として、セパレータが出口の下流に設けられて、流体生成物と固体生成物とを分離し、その分離装置には冷却機構と熱伝達又は熱遮蔽装置が設けられてよい。
【0026】
更なる特徴として、炉が容器のチャンバ内の液体を高温に加熱するための加熱素子を含み、故熱素子は電気加熱コイルであり、電気加熱コイルは誘導加熱を与える誘導コイルであり、液体は周囲温度より高い温度、あるいは少なくとも220℃まで加熱され、好ましい動作範囲は800~1000℃、あるいは好ましい動作温度は約1100℃である。
【0027】
また更なる特徴として、容器は圧力容器であり、容器は外層及び内層を含み、加熱要素は容器の内層と外層の間に設けられてよい。
【0028】
なお更なる特徴として、炉は容器のチャンバの内部からの熱伝達を禁止するための断熱材料を含むことが可能である。
【0029】
更なる特徴として、液体本体は、溶融金属、溶融塩、又はそれらの組み合わせなどの溶融材料本体であり、溶融金属は、金属合金であり、溶融金属は、ビスマス、ニッケル、白金、銅、鉄、コバルト、クロム、モリブデン、シリコン、アルミニウム、マンガンから成る群から選択される1以上の金属元素、あるいはこれらの組み合わせを含む。
【0030】
また更なる特徴として、流体供給管によって導入される流体は、溶融金属又は溶融塩と相互作用するように選択された供給ガス又は供給液体であり、供給ガスは、メタン、プロパン、エタン、ブタンから成る群から選択される炭化水素系ガス、及びシランや硫化水素などの水素含有化合物であり、供給液体は、炭化水素系液体、廃油及び有機オイル、並びにプラスチックから成る群から選択される液体であり、供給液体には任意で固体粒子が含まれる。
【0031】
本発明の別の態様では、流体改質システムが提供される。このシステムは、液体本体を内部に保持するためのチャンバを画定する容器と、チャンバの液体本体の液面より下に流体を導入するための流体入口であって、流体を液体と相互作用させて、相互作用による生成物をチャンバから排出するための出口に向けて液体中を移動させる、流体入口と、液体本体の液面近くに操作可能に配置された堰と、その堰とは離隔して配置されて流体入口と流体連通するポートとを有する液体循環通路であって、液体が堰を超えて、液体循環通路及びポートを介して流れることを可能とする、液体循環通路と、を備える。
【0032】
本発明の別の態様によると、流体供給器が提供される。これは、使用時に液体本体を保持するために容器に固定されるように構成された上端と、容器内の液体本体の液面より下に提供されるように配置された下端と、容器の液体本体の液面より下に流体を導入して、流体を液体と相互作用させ、液体を通って移動させるようになった、下端付近の流体入口と、液体本体の液面近くに操作可能に配置可能な堰と、その堰とは離隔して配置されて流体入口と流体連通するポートとを有し、液体が堰を超えて、液体循環通路及びポートを介して流れることを可能とするようになった、上端から下端に向かって延在する液体循環通路と、を備える。
【0033】
更なる特徴として、液体を吸引して流体と混合させ、その混合物が入口を介してチャンバ内に導入されるように構成されたポートが提供され得る。
【0034】
また更なる特徴として、流体供給器は入口と流体連通した流体供給管を含み、流体供給器は、流体改質構成要素として動作可能である。流体供給管は円筒形であってよい。あるいは、楕円形、正方形、矩形又は流体用導管を提供可能な他の任意の断面形状であってよい。
【0035】
なお更なる特徴として、流体供給器の上端は、使用時に液体本体を保持するチャンバを画定する容器を含む炉に固定されるようになっており、液体本体は、溶融金属又は溶融塩などの溶融材料である。
【0036】
更なる特徴として、流体加速素子は、通過する流体を加速するために流体入口に設けられ、流体加速素子は、流体循環通路のポートと流体連通し、流体加速素子は、ベンチュリ、ノズル、アスピレータ、エデュケータ、イジェクタ、又はジェットポンプである。
【0037】
また更なる特徴として、流体加速素子は、使用時に流体を液体と混合させて泡又はナノバブルを生成させるように構成される。
【0038】
なお更なる特徴として、液体循環通路が上端から下端へ延在する細長い通路であり、液体循環通路が液体循環チューブであり、液体循環チューブは流体供給管の周りに設けられ、任意選択により、液体循環チューブは流体供給管に同心状に配置され、液体循環チューブの下端にはプラグが含まれ、プラグはその中に流体加速素子を有し、かつ液体循環チューブと流体加速素子との間に流体連通を提供するポートを画定する。液体循環チューブは円筒形であってよい。あるいは、楕円形、正方形、矩形又は液体用導管を提供可能な他の任意の断面形状であってよい。
【0039】
更なる特徴として、液体循環通路又はチューブの上端によって、例えば液体循環通路の上端における溝によって、堰が画定され得る。
【0040】
また更なる特徴として、流体供給器は、ロッド形状の部品であり、ロッド形状部品又は流体供給器は容器又はチャンバ内部へ操作可能に下降可能であり、ロッド形状部品又は流体供給器は、堰が液体本体の所望液面を画定することができるように、容器の頂部に固定可能である。
【0041】
なお更なる特徴として、流体供給器は、バヨネット型接続具などのクイックリリース型の接続具で容器の頂部に着脱自在に取り付け可能であり、あるいはスナップフィット又はねじ接続具も使用可能である。
【0042】
本発明の別の態様によると、流体を改質する方法が提供される。この方法は、液体を保持するためのチャンバを内部に画定する容器内の液体本体を加熱し、チャンバの液体本体の液面より下に入口を介して流体を導入し、流体を液体と相互作用させて、相互作用による生成物をチャンバから排出するための出口に向けて液体中を移動させ、液体本体の液面近くに操作可能に配置される堰と、堰から離れて配置されて流体入口と流体連通するポートとを有する、液体循環通路を利用し、液体が堰を超えて、液体循環通路及びポートを貫通して流れることを可能とする、ことを含む。
【0043】
更なる特徴として、ポートを介して液体を吸引して流体と混合させ、その混合物が入口を介してチャンバ内に導入されるステップを含む方法が提供され得る。
【0044】
また更なる特徴として、液体本体の加熱ステップが液体本体内に熱勾配を生成することを含み、この方法が、容器内の材料、金属又は塩を、材料、金属又は塩が溶融して液体本体となるまで加熱し、液体本体内に含まれる材料、金属又は塩が液相になると、液体循環通路を挿入してそれを液体本体の液面より下に潜入させて堰が液体本体の液面の近くになるようにすることを含む。
【0045】
なお更なる特徴として、この方法が生成物除去装置又は洗浄装置を提供することを含み、生成物除去装置は、チャンバ内の液体本体の表面をスキミングするスキミング装置であり、また、この方法は、生成物除去装置が、生成物を除去するために液体本体の表面を自動的にスキミング又は洗浄するように構成されることを含む。
【0046】
更なる特徴として、この方法は、液体が堰を超えて流れるときに液体本体の液面を制御するために、液体本体の所望又は意図された液面の近くに堰が操作可能に配置されるように位置決めするステップを含む。
【0047】
次に本発明の実施形態を、添付図面を参照して例示としてのみ記載する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】炉又は反応装置の例示的実施形態の正面図である。
図2図1の線E-Eに沿う断面図であり、炉の内部構成要素または部品をより詳細に示す。
図3図1の線P-Pに沿う断面図であり、炉の頂部近くに位置する粒子収集及びスキミング装置を示す。
図4図2の「F」で示す部分の拡大図であり、炉の頂部をより詳細に示す。
図5図2の「G」で示す部分の拡大図であり、流体加速素子をより詳細に示す。
図6図4の「H」で示す部分の拡大図であり、液体循環通路又はチューブの頂部付近に位置する堰を示す。
図7図1の例示的な炉の立体図であり、炉の頂部の拡大図も示す。
図8】例示的な流体改質方法の、高レベルのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
高温の液体からスラグまたは生成物を除去するための炉、改質器または反応器が提供される。改質器は、改質器内部の高温液体の液面より下にガス又は流体を導入するように構成される。改質器には、高温液体の表面をスキミングするための自動スキマが含まれてもよい。流体又はガスを炉内に導入又はポンプ輸送又は注入するための、好ましくは炉内の液体表面より下にある入口に向かって、液体を高温液体表面から搬送する導管またはチューブが設けられる。炉内の高温液体は、通常、溶融金属又は溶融塩又はそれらの組み合わせであってよい。ただし、それ以外の種類の液体も使用され得る。入口において液体が流体と混合され、その後改質器又は炉の内部に注入又は導入される。サイフォン装置又は堰を使用して、液体を、上方の液体表面から導管を介して入口へ向けて流れるようにすることができる。導管の下方部分と入口との間に流体連通ポートが提供され得る。導管は狭窄部又はノズルを含むことができ、そこを介して流体が入口に向かって、押し出し又は吹き出し、吸い込み、吸引又は真空吸引され得る。狭窄部は、アスピレータ、ノズル、エデュケータ、イジェクタ、ベンチュリ又はジェットポンプなどの流体加速素子と称されることもある。流体改質システム及び流体改質方法もまた、開示の実施形態によって提供され得る。また、液体本体表面の清浄化方法も開示される。
【0050】
図を参照すると、炉(10)又は改質器の例示的実施形態が提供されている。炉又は改質器は、液体本体(16)、好ましくは周囲よりも高温の液体をその中に保持するチャンバ(14)を画定する容器(12)又はコンテナを含み得る。チャンバ(14)内の液体本体(16)の液面(22)より下に流体(20)を導入するための流体入口(18)(図5及び図6に示す)が提供され得る。本実施形態において流体(20)は、液体(16)と相互作用させられ、相互作用による生成物(26)をチャンバ(14)から排出するための出口(24)に向かって、液体中を移動させられる。液体(16)を循環させるために、液体循環通路(28)が提供又は実装されることが好ましい。液体循環通路(28)には、通路(28)の上端(32)、又はその近くに(図6に示すような)堰(30)が含まれ得る。液体循環通路(28)は、液面設定装置とも称され、その液面(22)から入口(18)に向かう液体(16)の流れの制御に使用可能である。液面(22)は、堰30を配置することで、導入される供給流体(20)の量の増減に拘わらず、また加熱素子(46)に提供されるエネルギが変動するときの液体(16)の温度変動に拘わらず、正確に制御可能である。本実施形態において、堰(30)は液体本体(16)の液面(22)の近くに操作可能に配置され、液体(16)が、堰(30)を超えて通路(28)を通り、流体入口(18)に流体連通しているポート(34)を通って流れることを可能とする。ポート(34)は好ましくは堰(30)から離れて位置する。図5の断面図により詳細を示すように、ポート(34)は、そこを通して液体(16)を吸引して流体(20)に混合するように構成され、そうしてその混合物(36)を入り口(18)を介してチャンバ(14)に導入することができる。本実施形態では、液体循環通路(28)は、液体(16)を液面(22)からポート(34)へ運ぶためのチューブ又は導管である。液体循環チューブは円筒形であってよい。あるいは、楕円形、正方形、矩形又は液体用導管を提供可能な他の任意の断面形状であってよい。
【0051】
図1では、炉(10)又は改質器の容器(12)は円筒形容器であってもよいが、他の形状も可能である。炉(10)は、頂部(38)と底部(40)を含む。炉の頂部(38)を閉じるために、カバー、キャップ、栓又は蓋(42)が提供され得る。蓋(42)は、炉(10)を閉じるためにその頂部(38)に一致する輪郭、曲線、傾斜、又はその他の形状となっている。ここに示す例示的実施形態では、出口(24)は蓋(42)に設けられた(例えば穿孔された)穴であってよく、それは炉(10)の容器(12)の外周(44)から、チャンバ(14)の内部に向かって延在し得る。出口(24)は、図2、4、6から明らかなように、炉(10)のチャンバ(14)の中央領域又は内部から外周(44)に向かって傾斜して、かつ上向きに延在し得る。容器(12)のチャンバ(14)内の液体(16)を高温に加熱するために加熱素子(46)を設けることができる。例示的実施形態において、加熱素子(46)は誘導加熱するための電気加熱コイルである。ただし、他のタイプの加熱方式もまた使用可能である。液体本体(16)は、例えば液体金属であってよいし、金属をその金属の融点まで加熱して溶融させてもよい。ただし、本開示は、例えば塩と固体などの異なる種類の材料を加熱するための炉にまで展開される。炉(10)は、金属を加熱して液体(16)にすることが可能である。液体(16)は周囲温度よりも高い温度、又は少なくとも220~1200℃の温度に加熱され得る。ただし、液体が220℃未満の温度(例えば50℃超又は100℃超の温度)にまで加熱される実施形態もあり得る。好ましい操作範囲の800~1000℃が使用され得る。液体(16)の操作温度は、好ましくは約1100℃であり得る。液体本体(16)が溶融金属である場合、溶融金属は、液体金属触媒又は液体触媒と称する場合がある。炉は、流体改質器として操作可能である。ここでは推奨されないが、炉内の液体本体として水又は他の液体を加熱することも可能である。
【0052】
ここで、図4及び図6の拡大図を参照すると、炉には、流体入口(18)の上流に流体供給源又は流体供給管(48)が含まれ得る(図5に示す)。流体供給源(48)は、入口(18)を介してチャンバ(14)内に流体(20)を導入するために、入口(18)に流体連通可能である。流体供給源(48)は流体供給器(50)の一部を構成し得るものであって、ロッド形状の部品又はユニットであって、炉(10)の頂部(38)から炉内へ降下させる操作が可能であり、又は容器(12)に取り付けることが可能である。ロッド形状の部品(50)は、炉の頂部(38)に固定されて、使用時に堰(30)が液体本体(16)の液面(22)又はその近くになるように配置可能である。液体(16)の液面(22)と堰(30)との間の相互作用を促進するために、炉(10)の底部(40)からの堰(30)の垂直高さ(31)は予め決定又は規定され得る(図2及び図6参照)。液体(16)の液面(22)は、使用時にチャンバ(14)内に含まれる液体(例えば溶融金属、又はその他の高温液体)の量、並びに運転中に変位可能な液体循環通路(28)の体積に依存し得る。流体供給器(50)は、液体循環通路(28)又は液体循環チューブを形成し得る外管を含むことができる。流体供給管(48)は、外管(28)の内部に設けられた内管であってよい。いくつかの実施形態では、内管は外管と同心状に設けられてもよい。ただし、それらが互いに同心ではない実施形態、及び/又は流体供給管が液体循環通路から分離されている実施形態も可能である。外管(28)は、金属(これは液体(16)が金属である場合には、例えば高融点を有し得る)などの、耐熱性及び/又は剛性の高い材料で作られてもよい。外管(28)又は液体循環通路は、堰(30)又はゲートを画定する溝(54)又は開口を含んでもよい。1以上の溝又は開口が使用可能である。堰(30)は、液体循環通路(28)の上端(32)、又はその近くに画定することができる。液体が堰(30)を越えて流れて液体循環通路(28)に注がれるので、炉(10)の運転中に、高温液体(16)の液面(22)を維持、一定に保持、あるいは制御するように堰(30)を配置することが可能である。これは図6の方向矢印(52)によって図示される。液体(16)の液面(22)は、オーバフロー高さと呼ばれることもある。流体供給管は円筒形であってよい。あるいは、楕円形、正方形、矩形又は流体用導管を提供可能な他の任意の断面形状であってよい。
【0053】
流体供給器(50)は炉(10)とは分離して提供されてもよいし、あるいは既存の炉に後付けで設置されてもよい。流体供給器は、流体改質構成要素として動作可能であってもよい。本開示は、容器(12)に固定されるようになった上端51を有する流体供給器(50)まで含む。容器は、密閉容器であっても、開放容器であってもよいことは理解されるであろう。容器(12)は、使用時に液体本体(16)を保持するためのチャンバ(14)を画定し得る。流体供給器の上端(51)は、近位端と呼ばれることもある。容器は必ずしも炉の一部を構成する必要はない(かつ容器は液体を保持するための単なる容器であってもよい)ことは理解されるであろう。ただし本発明の好ましい実施形態では、容器は炉の一部を構成する。流体供給器(50)はさらに、容器(12)又はチャンバ(14)内の液体本体(16)の液面(22)より下に設けられるように配置された下端(53)を含むことが可能である。流体供給器の下端(53)は、遠位端と呼ばれることもある。本実施形態においては、流体供給器(50)はさらに、下端(53)の近くに流体入口(18)を含む。これは流体(20)を容器(12)又はチャンバ(14)内に、容器(12)又はチャンバ(14)内の液体本体(16)の液面(22)より下に導入して、流体(20)を液体(16)と相互作用させ、かつ液体の中を通って移動させるためのものである。本実施形態では、液体循環通路(28)が流体供給器(50)の一部を構成し、それが上端(51)から下端(53)に向かって延在する。液体循環通路(28)には堰(30)が含まれ、本実施形態ではこれが、容器(12)内の液体本体(16)の液面(22)近くに操作可能、すなわち使用時に配置可能である。液体循環通路はさらに、堰(30)から離れて配置されかつ流体入口(18)に流体連通するポート(34)を含み、液体(16)が液体循環通路(28)を介して堰(30)を越えて、ポート(34)を通って容器(12)すなわちコンテナ、あるいはチャンバ(14)に入り、容器(12)内の液体(16)と相互作用するようになっている。
【0054】
液体循環通路(28)は、炉(10)の頂部(38)(又は頂部(38)近くの場所)から、炉の底部(40)に向かって延びる細長い通路であってもよい。液体循環通路(28)の下端(56)には、流体加速素子(58)があってもよい。本実施形態では、流体加速素子(58)は、液体循環通路(28)の下端(56)を塞ぐプラグ(60)の内部に設けられるか又は収容されてもよい。プラグ(60)はポート(34)を画定又は包含することができ、これが液体循環通路(28)と流体加速素子(58)の間の流体連通を提供するようになっていてもよい。流体加速素子(58)は入口(18)の上流に設けられてもよい。流体加速素子(58)には狭小部が含まれ、そこを通過する流体(20)を加速するようになっていてもよい。流体加速素子(58)は、ポート(34)と流体連通してよい。これは、液体循環通路(28)から流体加速素子(58)へと延びる、1以上の絞り又は開口の形態であってもよい。ポート(34)はプラグ(60)本体によって画定されてもよいし、あるいは液体循環通路(28)の一部を構成してもよい。本実施形態において、流体加速素子(58)はベンチュリ型の装置を形成する。ただし、他のタイプの流体加速素子も使用可能であり、例えばこれに限らないが、アスピレータ、ノズル、エデュケータ、イジェクタ、噴流ポンプや、導管の任意の狭小部などである。機械式ポンプもまた使用可能である。流体加速素子(58)は、入口(18)に向かって円錐形の断面形状を有してもよいし、あるいは、円錐台又は液体内に流体の気泡の形成を促進し得る任意の形をした断面形状であってもよい。また、流体加速素子は流体供給器に対して一体形成されるか、又はその他の形で設けられて、プラグ内への収容を必要としない実施形態も可能であることも理解されるであろう。
【0055】
液体循環通路(28)又はチューブは、流体供給器(50)の上端(51)からその下端(53)にまで延びる細長い通路であってよい。本実施形態では、液体循環通路(28)又はチューブは、流体供給管(48)の周りに設置され、任意選択により流体供給管(48)と同心円状に配置されてもよい。液体循環通路(28)又はチューブの下端(56)には内部に加速素子(58)を有するプラグ(60)が含まれてもよく、これが好ましくは、液体循環チューブ(28)と流体加速素子(58)との間の流体連通を提供するポート(34)を画定する。流体加速素子(58)は一体化されたディフューザを含んでもよい。本実施形態において、垂直方向に一体化されたディフューザが提供され、これは、図5に方向矢印(64)で図示するように、供給流体(20)を液体(16)内へ散在させることができる。流体加速素子(58)は、流体(20)を液体(16)と混合させて混合物(36)を形成するように構成されてもよい。圧力差又は圧力降下が、例えば液体循環通路(28)と流体加速素子(58)との間で生成される可能性がある。言い換えれば、ポート(34)の上に圧力差が存在し得る。この圧力差が、液体(16)をポート(34)を通って流体加速素子(58)に向かって引き込ませることができる。さらに、重力もまた液体(16)をポートに引き込み、ポート(34)を貫通して流れさせることができる。したがって、液体(16)はポート(34)を通って流体加速素子(58)に引き込まれ得る。そこで液体(16)が流体(20)に混合される。供給流体(20)は流れを形成可能であり、液体(16)はこの流体の流れに吸引されるか引き寄せられる。液体(16)はこうしてこの流体(20)の流れの中に吸引(すなわち「真空吸引」)される。これに代わり、液体は、圧力、重力、又はポンプによってポート(34)を介して吹き込まれるか強制的に押し込まれてもよい。
【0056】
前述したように液体(16)が流体(20)に混合されるとき、また、流体(20)が流体加速素子(58)で加速されるとき、気泡又はナノバブルが生成され得る。供給流体(20)が気体又は気体状物質であり、液体が溶融金属である場合、気泡又はナノバブルが生成され得る。流体加速素子(58)が省略され(そして例えばポート(34)に接続された直線的なチューブ又は通路で置き換えられ)、かつ供給流体が流体供給源(48)を加圧することで入口(18)に導入されるような実施形態が可能であることを理解されたい。流体供給源(48)への圧力は、ポンプ又はピストンなどの機械装置を使用して提供可能であり、また、油圧的、電気機械的、電磁気的に提供することも可能である。そのような実施形態においては、液体(16)をポート(34)を介して引き出すか又は押出して、それを供給流体(20)と相互作用させることにより、混合物(36)が生成され得る。流体加速素子(58)を必要とせずに、供給流体(20)の流れ(及び/又は重力)によって液体をポート(34)を通して引き出し、入口(18)に向かわせることも可能である。あるいは、液体循環通路(48)を介する液体(16)の移動にポンプなどの液体移動装置を使用することもあり得る。
【0057】
混合物(36)が形成されると、入口(18)に向かって移動する。そしてそこから、図5の方向矢印(64)に示すように、チャンバ(14)の中へ排出あるいは導入される。炉(10)は、底部(40)の近くに流体分散素子(67)を含んでもよい。流体分散素子(67)は、メッシュ板などの、複数の開口を有するプレートであってよい。流体分散素子(67)は液体循環通路(28)の下端(56)に固定されてよい。流体分散素子(67)は、流体(20)及び/又は混合物(36)の、チャンバ(14)内の液体本体(16)の中への分散を促進させるために配置されてもよい。供給ガスが供給流体(20)として使用される場合には、流体分散素子(67)が気泡を液体本体(16)の中へ分散させ、混合物又はガスが液体(16)を通って気泡化することを可能とする。液体の主要部分はチャンバ(14)内の液体(16)の本体内にあり、その一方で使用時にある量の液体本体(16)が、好ましくは重力の影響のもとに、液体循環通路(28)を通って流れることが可能であることを理解されたい。液体循環通路(16)内の液体(16)の量は、チャンバ(14)内の液体本体(16)の残りから分離され得る。
【0058】
液体循環チューブ又は通路(28)は、炉(10)の頂部(38)に着脱自在に装着することができ、流体供給器(50)の一部を構成可能である。炉(10)の頂部(38)への液体循環チューブ(28)の上端(32)の取り付けを容易にするために供給流体フランジ(68)とも呼ばれるフランジが設けられてもよい。このフランジ(68)は流体供給器(50)の上端(51)の一部も構成可能である。液体循環チューブ又は通路(28)は、バヨネット型接続具などのクイックリリース型の接続具で上端(38)に着脱自在に装着することが可能である。あるいは、スナップフィット、クイックリリース、又はねじ接続具も使用可能である。流体供給器(50)はこうして蓋(42)の開口(70)(図6に示す)の中へ降下させることが可能であり、その後フランジ(68)は蓋(42)に固定可能である。液体循環チューブ(28)及び/又は流体供給器(50)は、液体(16)が冷却される前、あるいは何らかのメンテナンスのために、取り外すことが可能なようにも構想される。流体供給器は必ずしも蓋(42)を介してチャンバ(14)内へ降ろされる必要はなく、容器(12)の側面又は周縁(44)で、又は別の方法で、容器(12)に取り付けられてもよいことは理解されるであろう。
【0059】
容器(12)は圧力容器であってもよいし、圧力下で操作されるように構成されてもよい。図4の拡大断面図からより明確なように、容器(12)は外層(72)と内層(74)を含んでよい。本実施形態では、加熱素子(46)が容器(12)の内層(74)と外層(72)の間に設けられてもよい。チャンバ(14)は、例えば加熱される液体(16)が溶融金属である場合、高融点の高強度金属などの剛性材料で作製され得る槽(76)などの容器によって画定可能である。外層(72)は炉(10)の外周(44)を画定することができ、容器(12)に構造的完全性を提供し得る。炉が運転されるときの構造強度を提供するために、例えば使用時の高い操業圧力に対する抵抗を提供するために、外層(72)は高強度の剛性材料で構築されてもよい。内層(74)は、容器(12)のチャンバ(14)内部からの熱伝達を阻止するために、耐熱性材料及び/又は絶縁性材料でできていてもよい。内層は例えばセラミック材料で作製されて構造強度を提供してもよい。
【0060】
例示的実施形態において、使用中は加熱素子(46)を利用してチャンバ(14)内の液体(16)の加熱、(及び/又は内部の熱勾配を形成)を行うことが可能であり、流体(20)は流体入口(18)を介してチャンバ(14)内の液体(16)の液面(22)の下にポンプ輸送されるかあるいは導入されてよい。流体(20)及び/又は流体と液体(16)の混合物(36)は、入口(18)から排出可能であり、チャンバ(14)内の液体本体16)と相互作用することができる。流体(20)及び/又は混合物(36)は、液体(16)内を移動して出口(24)に向かうことが可能である。入口(18)を容器の底部(40)の近く(及び/又はチャンバ(14)の底部の近く)に設けることが有利であると考えられる。これは、入口が底部の近くにあれば、液体本体(16)を通る流体(及び/又は混合物(36))の移動が促進され、流体又は混合物が貫通して移動して、最終的に液体本体(16)の液面高さ(22)の表面にまで上るのに時間がかかるために、流体(20)又は混合物(36)と液体本体(16)との間の反応時間が長くなり得るからである。出口(24)は相互作用の生成物(26)をチャンバ(14)から排出するように配置可能である。供給流体(20)は供給液体又は供給ガスであってよいことは理解されるであろう。
【0061】
図6を参照すると、前述の相互作用の生成物(26)は、概して流体の生成物(80)と概して固体の生成物(82)とを含むことができる。出口(24)は流体生成物(80)と固体生成物(82)の一方又は双方を排出するように構成可能である。生成され得る固体生成物(82)の例は、グラファイト及び/又はグラフェンの形態の炭素であってよい。ただし他の固体生成物もまた生成可能である。流体生成物のみ、あるいは固体生成物のみが生成される実施形態が可能なことを理解されたい。本実施形態では、流体生成物は気体生成物(80)であってよい。ただし、流体生成物は、泡、泡沫、又は液体生成物であってよい。出口(24)は上向きに角度がつくか傾斜していてもよく、したがって、出口は上向き角度を有する排出通路であってよい。出口が蓋に穿孔された孔の形態である場合、この孔は角度がついた、すなわち傾斜した面(84)を有し、チャンバ(14)の内側から炉(10)の外周部(44)に向かって上向きに傾斜した、上向き角度を有する排出通路(図3の断面図にも示す)を持ってもよい。排出通路すなわち出口(24)は、生成物除去装置(78)と連通してもよい。これはスキミング装置又は洗浄装置とも呼ばれ、詳細を以下で述べる。
【0062】
本実施形態では、生成物除去装置(78)は、図3、4,6の断面図でより明らかなように、炉(10)又は改質器の蓋(42)に設けられるか、取り付けられるか、又はそこに収容されてよい。生成物除去装置(78)は、図6に示すように、チャンバ(14)内の液体本体(16)の表面すなわち液面(22)を掬い取るためのスキミング装置であってよい。スキミング装置(78)は、使用中の液体(16)から、その液面すなわち上面(22)を掬い取ることにより生成物(26)を分離するように構成可能である。スキミング装置は、生成物を出口(24)から排出するために出口(24)に連通することが可能である。本実施形態では、スキミング装置(78)には、使用時に液体本体(16)の表面(22)を自動的に掬い取って、そこから生成物(26)を分離するための可動部材(86.1)が含まれる。駆動装置(90)が設けられて、スキミング装置(78)の可動部材(86.1)を駆動してもよい。図に示す例示的実施形態において、駆動装置(90)には1以上のギヤ(88)が設けられ、それが電気モータ又は他のエネルギ変換装置(図示せず)によって駆動可能である。ギヤ(88)は、可動部材(86.1)を回転させるために同期して回転する平歯車であってよい。スキミング装置(78)は、ローブポンプなどのポンプであってよく、可動部材(86.1)は、回転ローブポンプのベーン又はローブであってよい。例示的実施形態では、2つのローブ(86.1、86.2)が設けられ、これが駆動装置(90)によって互いに相対的に回転可能である。他の可動部材の使用も可能であり、1枚ベーン又はローブのポンプ、3枚以上のベーン又はローブのポンプもまた使用可能である。また、液体本体の上面すなわち液面を掬い取って生成物を除去するために、他のタイプの自動スキミング装置を使用することも可能である。
【0063】
排出通路又は出口(24)はスキミング装置(78)と連通して設けることができる。スキミング装置(78)は、固体生成物(82)(カーボン又は他の固体生成物など)が上向き角度を有する排出通路(84)に沿って押し出されるように配置可能であり、その一方で気体又は流体の生成物(80)を出口(24)を介して漏洩させることを可能とする。気体又は流体の生成物は、例えばベーン又はローブ(86.1)と蓋(42)の間の開口(81)を通して漏洩させてもよい。回転ローブ(86.1、86.2)は回転して、液体の表面(22)又は液面を操作可能に掬い取り、液体(16)と注入又は導入された供給流体(20)との間の相互作用の生成物(26)をスキミングして排除することができる。任意選択により、分離装置又はセパレータ(図示せず)を出口(24)の下流に設けて、流体生成物(80)及び固体生成物(82)を冷却及び分離することが可能である。スキミング装置(78)と上向き角度を有する排出通路(84)の配置は、例えば、液体が意図せず又はその他の理由で上向き角度を有する排出通路(84)に入り込んだとしても、液体(16)が重力の影響でチャンバ(14)に流れて(例えば開口(81)を通って)戻ることが可能なような構成であり、それにより液体(16)を生成物(26)から分離可能としている。出口が水平な通路である、あるいは流体生成物を出口から排出するために下向きに角度のついた通路である、他の実施形態もあり得る。下向きに角度のついた、又は傾斜した通路が使用される場合、スキミング装置(78)は省略されてもよい。例えば、生成物(26)の1つが液体であり、その他の生成物が気体である場合、あるいは流体生成物しかない場合に、生成物除去装置(78)は省略可能であり、第2の堰又はサイフォン又は下向き傾斜の通路を使用して生成物をチャンバ(14)から排出させることも可能である。
【0064】
したがって、出口が、チャンバ(14)の内部とは異なる液面で液体生成物を滴り落とすために使用され得る、第2の堰(図示せず)となっている実施形態が可能である。いくつかの実施形態では、硫化水素ガスHSが改質器又は炉(10)で改質され得る。硫化水素ガスは流体供給管(48)内に導入可能であり、液体(16)(溶融金属などの)との相互作用で改質することが可能である。そして生成物には水素ガスHと硫黄ガス、あるいは(操作温度及び炉(10)の配置に依存して)液体硫黄又は固体硫黄が含まれ得る。液体硫黄の場合には、第2の堰を使用して液体硫黄を排出可能である。液体硫黄は、115℃から445℃の間で排出され得ることが予想される。さらに、浮遊又は浮揚性生成物(26)の場合においては、生成物の1つが液体生成物である場合、第2の堰、弁又はゲートでの吸い上げ又は滴下によって、液体又は溶融金属表面(22)から排出又は滴下させることも可能である。液体生成物はまた液体(16)が堰(30)を越えて流れる位置又はその近くで吸い上げ又は滴下することが可能である。
【0065】
液体(16)は溶融金属又は溶融塩であってよいが、他の液体も炉(10)又は改質器で加熱することが可能である。溶融金属の場合、使用される金属は金属合金であってよい。すなわち、ビスマス、錫、銀、水銀、ニッケル、白金、パラジウム、鉄、銅、亜鉛、コバルト、モリブデンから成る群から選択される1以上の金属元素、モリブデン、タングステン、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛の硫化物などの遷移金属硫化物、又はこれらの組み合わせを含んでよい。流体供給管(48)により導入される流体(20)又は供給流体は、その場合によって、溶融金属、塩又は液体(16)と相互作用するように選択される供給ガス又は供給液体であってよい。供給ガスは硫化物系のガスであってよく、例えば硫化水素であってよい。供給液体が使用される場合、供給液体は、硫黄含有のオイル及び潤滑剤、二硫化炭素、ジメチルジスルフィド、及びジフェニルジスルフィドから成る群から選択される液体であってよい。
【0066】
図8に流体の改質方法(100)の例を示す。この方法には、容器(12)のチャンバ(14)内の液体本体(16)を加熱することが含まれてよい。加熱(102)は液体本体(16)に熱勾配を生成させるように導入することが可能である。液体本体(16)に含まれる材料(金属など)が液相になったら、流体供給器(50)をチャンバ(14)に挿入してよい。あるいは前もってチャンバに設けておいてもよい。流体(20)は、入口(18)を使って、チャンバ(14)内の液体本体(16)の液面(22)より下に導入されてよい(104)。流体(20)は液体(16)と相互作用させられて、相互作用による生成物(26)をチャンバ(16)から排出するためにそこを通って出口(24)に向かって移動する(106)。この方法(100)は、液体循環通路(28)を利用して、液体本体(16)の液面(22)の近くに堰(30)を提供又は動作可能に配置することを含んでよい(108)。本方法は、さらに、堰(30)から離れて位置し、入口(18)と流体連通する、ポート(34)を利用又は提供することを含んでよい(109)。液体(16)は、液体循環通路(28)を通って堰(30)を越えて、流体入口(18)と流体連通するポート(34)に向かって(かつ好ましくはそこを通って)流れることが可能であってよい(110)。液体(16)は、ポート(34)を通って引き込まれて流体(20)と混合させられてよい(112)。そして混合物が入口(18)を通ってチャンバ(14)内へ導入されてよい(114)。生成物26は、任意で生成物除去装置(78)を利用することによって、出口24を通って排出することで除去されてよい(115)。任意選択により、本方法(100)は、(例えば1以上の生成物が液体又は流体である場合)1以上の生成物(26)を流体供給源の中へ再循環させることも含み得る。本開示は、液体本体の表面の洗浄方法も含む。本方法は、液体本体表面を洗浄するための洗浄装置(生成物除去装置(78)など)を提供することも含んでよい。
【0067】
任意選択により、液体本体(16)を加熱するステップ(102)は、液体本体に熱勾配を生成することを含んでよい。この方法は、容器内の材料、金属、又は塩を、液体本体を形成するために材料、金属、又は塩が溶けるまで加熱することも含まれてよい。この方法はさらに、液体本体内に含まれる材料、金属、又は塩が液相になると、液体循環通路(28)(及び/又は流体供給器(50))を挿入して、液体循環通路又は流体供給器の下端(56、53)を液体本体の液面より下に沈めて、堰(30)が液体本体の液面(22)の近くに動作可能に位置するようにすることが含まれる。
【0068】
液体(16)の表面を掬い取って、表面又は液面(22)から粒子を除去するために、液面高さ(22)は制御されてよい。炉又は改質器(10)は、溶融金属及び/又は塩を含む任意の種類の液体又は溶融材料に対して液面高さを制御するために使用可能である。スキミングは、自動的かつ運転中に実行可能であって、生成物をそこから除去するために容器(12)を開放する必要はない。このことは、出願人が認識している既知の炉又は改質器に対する利点を提供し得る。既知の炉では、浮遊材料又は浮遊物を除去する目的で金属表面を手動でかき集める又は削り取るために、炉を大気開放することが必要である。本開示では、したがってダウンタイムを減らすことが可能であり、出願者が認識している先行技術のシステムまたは方法よりも効率的である可能性がある。また、流体供給器(50)は既存の炉の液面制御を可能とするために後付けで設置することも想定される。
【0069】
溶融金属と塩との組み合わせが加熱液体(16)の一部を構成可能である。炉は流体改質器とも呼ばれることがある。あるいは、炉が流体改質器として稼働可能な場合もある。容器(12)は、使用中の液体本体として溶融材料を保持するように配置されてもよい。組み合わせ又は混合物が加熱されて、その混合物の融点より高い温度に保持され得る。溶融金属又は液体(16)の昇温又は高温と触媒効果により、(供給流体と液体(16)との間の相互作用の結果として)供給流体(20)をその1以上の構成要素へ分解又は崩壊させることができる。例示的な実施形態では、供給ガス(20)としてメタン(CH4)を、また液体本体(16)として溶融金属を使用してもよい。構成要素(生成物(26)の一部を構成する)には、例えば、固体グラファイト及び/又はグラフェン及び/又は炭素繊維及び/又はカーボンブラック製品(82)(これは固体製品と呼ばれることがある)を形成し得る炭素と、水素ガス(H)又は流体生成物(80)とが含まれてよい。炭素製品(82)の密度は液体金属(16)の密度よりも低いので、炭素は溶融金属(16)の表面又は液面(22)にまで上昇してそこに浮遊可能である。溶融金属(16)上に浮遊する物質(固体グラファイト、流体、泡、又はその他の固体生成物(26)など)は、「スラグ」と呼ばれることがある。ただし、本明細書を通じて「スラグ」という用語は廃棄物のみを含むものとして見なすべきではない。浮遊物質又は生成物が有用と考えられる場合もあるので、「スラグ」は他の製品を含む場合がある。水素製品ガス(H)(80)は、発泡して溶融金属表面へ上昇し、さらに処理して利用することが可能である。生成物又は浮遊物質(液体、固体又は気体)(26)をルーツローブ又はベーン(86.1、86.2)(あるいは、他のタイプの掃引装置、かき取り装置又はその他の生成物除去装置)で除去することは、炉(10)又は改質器によって実行されてもよい。
【0070】
さらに、炉又は改質器(10)は、液面(22)を自動制御することが可能であり、容器(12)内の材料の量の制御も可能である。表面のスキミングはスキミング装置(78)によって継続的(及び/又は自動的)に実行可能であり、それによって気体、液体又は固体の生成物(26)(液体(16)の表面に形成される任意の物体又はスラグを含む)を連続的に除去可能とすることができる。チャンバ(14)内部及び/又は容器(12)内部は、閉鎖環境、又は加圧環境、又は不活性環境又は真空環境に維持することが可能である。この環境は生成物(26)の除去を容易にする可能性がある。本開示は、容器(12)の全面被覆を可能とし、それにより供給流体(20)を適用してチャンバ(14)内の空いた空間を占有することができる。
【0071】
本開示は、追加的な計装機器、ポンプ、制御設備を必要とせずに、供給流体(20)及び/又は堰(60)の使用により液体本体(16)の液面(22)を自動的に制御し得るという、利点を提供可能である。液面高さ(22)は、液体(16)を液体循環通路(28)、及び/又は流体加速素子(58)(これは流下ノズルとも呼ばれる)を通して循環させることにより維持又は制御可能である。液体循環通路(28)は流体供給源(48)と同心である必要はなく、液体循環通路の長さ方向の一部が流体供給源(48)とは離隔する実施形態が可能であることを理解されたい。そのような実施形態においては、液体(16)は液体循環通路(28)から供給流体(20)の流れの中に(たとえ流体加速素子(58)が省略されているとしても)吸引されるか引き寄せられ得る。供給流体(20)には圧力をかけることが可能であって、これにより液体(16)又は溶融金属の堰(30)を越える流れを生じさせる。堰(30)は、ゲート又はオーバフロー開口と呼ばれることもある。堰、ゲート、オーバフロー開口が炉(10)の外部から、例えばバルブやその他の炉(10)の外から操作可能な開閉装置を使用して、開放、調節、あるいは閉鎖することのできる実施形態も可能である。堰は、液面高さ(22)を制御するために容器(12)の底部(40)から所定の高さに調節又は設定することが可能である。
【0072】
液体(16)の表面又は液面(22)に形成される生成物(26)の種類は、使用される供給流体(20)の種類、及び液体(16)、溶融金属、塩、又は使用されるそれらの組み合わせに依存する。生成物除去装置(78)は、液面(22)又は表面に浮遊する任意の粒子を継続的に除去するように配置できる。固体生成物(82)には、例えば微細粒子又は大きな塊が含まれ得る。本実施形態では、生成物の除去は、図6に図示するように、1以上のローブ又はベーン(86.1、86.2)を液面(22)より下に少しだけ潜らせることにより達成可能である。これらのベーン又はローブ(86.1、86.2)は、次に駆動装置(90)によって回転又は移動され、出口(24)に向かって延在する、傾いた又は傾斜した又は上向き角度を有する排出通路(84)へ、浮遊物質又は固体を強制移動あるいは押し出すための積極的な移動機構として作用することができる。液体(16)はしたがって、重力によって固体又は流体生成物(26)から分離可能であり、液体(16)はチャンバ(14)内へ流れて戻ることができる。生成物除去装置(78)は、このように完全な流体蜜なシールを提供するような配置又は構成とはなっていなくて(例えば開放空間(81)によって)、液体(16)がローブ又はベーンを越えて逆流可能となっていてもよい。本開示の表面スキミング能力を強化するために、気体などの流体生成物(80)が少なくとも部分的に流体供給源(48)に再循環して戻る実施形態もあり得る。改質器(10)は、流体改質用システム(10)とも呼ばれることがある。生成物除去装置(78)又はクリーニング装置が液体(16)の表面又は液面(22)の清浄化に使用され得るので、液体本体の表面を清浄化するシステムも提供され得る。チャンバ(14)の内部で、チャンバ(14)の屋根(15)は角度がつくか傾斜するか又は湾曲していてもよい。本実施形態では、屋根はドーム形状である。屋根(15)の形状は生成物を出口(26)に向かって(そして生成物除去装置(78)が使用される場合にはそれに向かって)、移動可能とするように構成され得る。ベーン又はローブ(86.1、86.2)が(ガス生成物が生成される場合に)ガス生成物(80)の流れと共に回転することで、その生成物を液体表面(22)から掃引して、角度のついた排出通路(84)の中へ、そして出口(24)に向かって送ることができる。
【0073】
生成物除去装置(78)又はスキミング装置は2つのルーツローブ又はベーン(86.1、86.2)を有してもよい。ただし、これらのルーツローブ又はベーン(86.1、86.2)を使用する代わりに、業界で知られるその他の多くの従来の手段によって、生成物(26)を駆動又は変位させることも可能である。例えば、液体(16)の表面(22)に対してポンプ作用、撹拌、削り取り、シミング、スキミング、洗浄又は拭き取りをする、マルチローブ、ギヤタイプ、ベーンタイプ、及びそのほかの任意の機械的手段が使用可能である。微粒子又は微小粒子を含む固体生成物(82)の場合には、ガス又は生成ガスを液体表面にブローイングするか再循環させるか、あるいは他の任意の手段によって表面を真空排気するだけで、これらの微粒子は除去され得る。流体生成物(80)もまた、真空排気するか、ブローイング又は圧力印加によって除去することも可能である。また、複数のスキミング装置が、複数の段階、レベル、又は層で使用されてもよい。例えば、上層が第1のスキミング装置でスキミングされ、下のレベルは第2のスキミング装置でスキミングされてもよい。任意の数のスキミング装置が使用されてもよい。これは多層スキミングと呼ばれ、液体本体の上面より低いレベルでの物質のチャンバからの除去が可能である。
【0074】
開示した実施形態は、流体加速素子(58)を介した供給流体(20)の流入による液体(16)(溶融金属など)の循環が、供給流体(20)を液体(16)中に効率的に混合させて希釈させ、それによりマイクロスケールバブルおよびナノスケールバブルなどの気泡を生成する、という利点を提供し得る。これらのマイクロスケールバブル又はナノスケールバブルは、供給流体(20)と液体(16)の間の接触時間及び反応時間を増加させることができる。開示した実施形態はまた、液体(16)が実質的に容器(12)の内部に留まり、出願人が認識している既知のシステムの場合のような2次的な貯蔵や加熱容器を必要としないで済むという利点を提供できる。このことは、効率的なエネルギ集積及び余剰熱又は廃熱の効果的な使用を可能とする。容器(12)に使用される断熱材料(74)によって、また改質プロセスの間、液体がチャンバ(14)内に留まることができるので、熱損失もまた低減可能である。容器(12)は、電気誘導コイル又は加熱素子(46)で加熱及び/又は温度制御可能な単一容器が提供され得る。加熱素子(46)に供給する電力は、再生可能エネルギ源又は高効率エネルギ源によって発電されるかそれに基づいており、不要の炭素排出をすることなく流体(炭化水素系流体など)の改質を可能とする。すなわち本開示の実施形態によって炭素排出量の低減又は制限が可能である。例えば、水力、太陽又は風力によるエネルギが加熱素子の電力供給に使用される場合、本開示は顕著な炭素排出を生じることなく、生成物(水素など)の製造に供することができる。供給ガスが炭化水素系ガスであり、例えば、メタン、プロパン、エタン、ブタンなどから成る群から選択され得ることも想定される。
【0075】
液体(16)が溶融金属である場合、溶融金属表面に、固体、泡状、泡沫状又は液体のスラグの組み合わせが形成され得る。このスラグは、その炉で製造しようとするあらゆる製品の品質を阻害し、及び/又は品質に有害な効果を与える可能性がある。本開示の実施形態は、液体(16)の表面から、任意の浮遊物質(スラグを含む)を、適切又は効果的に、かつタイミングよく除去することを促進し得る。これにより、通常であれば廃棄物となったであろう生成物を、価値のある製品として利用可能とし、及び/又は液体表面からの物質の除去により製造を意図した製品の品質が向上する可能性がある。スラグ又は物質の層は、液体(16)の表面又は液面(22)から自動的又は連続的に除去することが可能であり、その物質と、改質器又は炉(10)で製造されたガス又は流体製品(80)との間の接触が長引くことを防止し得る。この生成物(26)(あるいは他の除去された物質)の好タイミング又は効率的な除去は、不要な反応又は不要な副産物の生成を軽減可能である。
【0076】
加熱素子(46)は、液体(16)、塩、又は溶融金属の温度を変えるために使用可能である。これにより、熱変化の結果として液体(16)が膨張又は収縮するために液面(22)の変動を引き起こし得る。液面(22)は堰(30)をオーバフローさせることにより制御可能である。運転温度、液体又は溶融金属の種類、及び液面高さ(22)は、したがって、堰(30)の位置によって制御又は事前に規定され得る。供給流体を導入することもまた液面(22)に影響し、導入される供給流体(20)の量もまた(例えば堰(30)と共に)液面(22)を制御するために変化させることができる。供給流体(20)が気体である場合、溶融金属又は液体(16)における可変ガスの滞留は、炉又は反応器(10)内での密度及び体積(したがって液体の液面(22)を変化させ得る。本開示はしたがって、堰(30)と連動して能動的に、又はプロアクティブに実行されうる液体の液面制御を可能とする。言い換えると、液体の液面(22)は効率的な改質プロセスを提供するように予め設定可能である。前述の液面制御は、液面(22)を正確に制御可能であるので、現在知られている炉又は改質器に勝る利点を提供し得ることが理解されるであろう。液面(22)の正確な制御は、液体(16)の一定に管理された液面(22)又は表面から、スラグ、物質又は生成物を、安定した、自動的及び/又は効果的な除去を可能とする。生成物(26)の除去は、液面(22)の制御及びチャンバ(14)内の液体(16)の占有体積の制御も容易にすることができる。液面(22)はまた、通路(28)を通る液体の循環によって一定に保つことが可能である(例えば、底面からの堰の高さに保持され得る)。
【0077】
炉(10)が金属を加熱又は精錬するために使用される場合、チャンバ内には高温(例えば、約1000℃を越える温度)が必要とされる場合がある。このような高温は、材料及び機械操作の面において課題を生じる可能性がある。ただし、本開示では、機械的介入や複雑な計装機器を必要とせずに液面の自動制御を可能とし得る。液体金属(あるいは他の液体)は前述したように供給流体(20)を導入することによって撹拌可能である。この撹拌は、チャンバ(14)の内部での機械的介入なしで実行可能である。炉又は改質器(10)は、液体の液面(22)より下に供給流体(20)を導入するシステムを提供可能であり、また改質プロセスを促進するために液体(16)の循環を提供可能である。このシステムは、閉システム又は実質的な閉システム、あるいは密閉システム、あるいは加圧システムと呼ばれることがある。供給ガスの場合、高温液体(12)の中への供給ガスの拡散が起こり得る。供給ガスと生成物の間、又は生成物流と炉又は反応器(10)との間に熱集積も達成され得る。熱は加熱された液体から混合物(36)(循環する液体を含む)に移動し、かつ供給流体へも熱が移動し得る。供給流体には冷却流体もまた含まれ得る。冷却流体は供給流体と共にチャンバ内へ導入されてもよいし、あるいは冷却流体を別の場所に導入するために個別の冷却流体供給源が設けられてもよい。複数の流体供給源が設けられる実施形態、あるいは供給流体又は複数の異なる種類の供給流体をチャンバ(14)内の異なる領域に排出するために複数の流体供給器が設けられる実施形態、なども可能である。
【0078】
出口(24)は(例えば図2では)炉(10)の頂部(38)の近くにあるように示されているが、出口が炉の底部(40)の近くに設けられる実施形態も可能であることを理解されたい。そのような実施形態においては、生成物は例えば液体(16)よりも密度が高く、底部に向かって沈む可能性がある。この場合、生成物除去装置は底部の近くに設けることが可能である。そのような実施形態では、入り口は依然として液面(22)の下に設けられてもよいが、底部からは離れた例えば液体本体の中央部分、又は頂部(38)の近くに設けてもよい。堰、あるいはそれと同等のゲート又は開口部などの装置もまた、こうして底部近くに設けることが可能であり、その場合液体はゲートから上方へ搬送されて頂部(38)のより近くで供給流体(20)と混合され得る。そのような実施形態では、流体加速素子(58)は頂部付近に設け得ることが想定される。さらには、本開示では、液体を加熱するための、分離した酸化炉、又は従来の燃焼加熱炉又はアーク炉ポット又はバッファタンクの使用は必要ないことが理解されるであろう。これは、加熱素子(例えば誘導加熱を用いた)が炉(10)の内部で液体を加熱することができ、炉(10)が供給流体を処理するため、又は供給流体を高温液体と反応させるための改質器として使用され得るからである。容器又はタンクに対して、供給流体又は供給ガスを導入してチャンバ内の空き空間を占有させ、また液体の液面高さを制御するために、タンクブランケティング(tank blanketing)又はタンクパディング(tank padding)を行うことが可能である。
【0079】
前述の説明は例示を目的として提示したものであり、網羅的であること、又は本発明を開示した正確な形態に限定することを意図するものではない。関連技術の当業者は上記の開示に関して多くの修正、変形が可能であることを理解するであろう。明細書に使用した言語は、主として読みやすさと教示を目的として選択されたものであり、発明の主題を正確に記述しあるいは制限を示すために選択されたものではない。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろこれに基づく出願時に発行される特許請求の範囲によって限定されることが意図されている。したがって、本発明の実施形態の開示は、例示的であって、以下の特許請求の範囲に提示される本発明の範囲を制限することを意図していない。
【0080】
最後に、本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、文脈上そうでないことが要求されない限り、「含む」という用語、又は「含んでいる」、「含んだ」などの変形は、記載の整数又は整数群を含むが、他の任意の整数又は整数群を排除するものではないことを示すものとして理解されるであろう。
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8