(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】スプリアスを調整するグラウンドポストを含む広帯域ダイプレクサ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/203 20060101AFI20240726BHJP
H01P 7/08 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01P1/203
H01P7/08
(21)【出願番号】P 2022562962
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2022001803
(87)【国際公開番号】W WO2022265180
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076506
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518432137
【氏名又は名称】イナートロン インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Innertron, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホ クァンミョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン テワン
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-035036(JP,A)
【文献】特開昭60-248001(JP,A)
【文献】特開昭63-039204(JP,A)
【文献】特開平07-162181(JP,A)
【文献】特開平11-312902(JP,A)
【文献】米国特許第06147575(US,A)
【文献】実開昭63-198203(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/203
H01P 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域ダイプレクサ(Diplexer)において、
低域通過フィルタ(LPF)及び高域通過フィルタ(HPF)を含む、PCB(Printed Circuit Board)基板と、
前記PCB基板を実装するための、ハウジングと、を含み、
前記PCB基板は、
前記ハウジングの内部で前記ハウジングの上面及び下面のそれぞれから離隔されて形成された、誘電体層と、
前記誘電体層の上面の少なくとも一部領域上に形成された、第1導電パターンと、
前記誘電体層の下面の少なくとも一部領域上に形成された、第2導電パターンと、を含み、
前記ハウジングは、
前記ハウジングの側面と離隔されて、前記ハウジングの上面から前記ハウジングの下面まで垂直に延長され、前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンの何れも形成されない前記誘電体層の一部領域を貫通する、少なくとも一つのグラウンドポストを含
み、
前記PCB基板は、
前記ハウジングの側面に備えられた接続口を介してアンテナ入出力ポート、4G入出力ポート、及び5G入出力ポートとそれぞれ連結され、
前記低域通過フィルタは、
前記アンテナ入出力ポートと前記4G入出力ポートとの間で4G帯域の通過機能を実行し、
前記高域通過フィルタは、
前記アンテナ入出力ポートと前記5G入出力ポートとの間で5G帯域の通過機能を実行し、
前記ハウジングは、
前記アンテナ入出力ポートと前記低域通過フィルタが接続される導電パターン部分に近接して配置された第1グラウンドポストと、
前記アンテナ入出力ポートと前記高域通過フィルタが接続される導電パターン部分に近接して配置された第2グラウンドポストと、
前記高域通過フィルタを構成する二つの共振器のそれぞれにマッチングされる二つのスタブの間に配置された第3グラウンドポストと、
前記ハウジングの下面のうち、前記第2導電パターンの少なくとも一部と対向する一領域から前記第2導電パターンの方向に垂直に延長されて、前記第2導電パターンと近接離隔された一地点まで形成された、少なくとも一つの第4グラウンドポストと、を含み、
前記第4グラウンドポストは、
前記ハウジングの下面のうち、前記高域通過フィルタの共振器にマッチングされる前記第2導電パターンの一部分と対向する一領域から、前記第2導電パターンの方向に垂直に延長され、
前記第4グラウンドポストの全体が、前記高域通過フィルタの共振器の一つにマッチングされるスタブの垂直下方向に形成されている、広帯域ダイプレクサ。
【請求項2】
前記グラウンドポストは、
前記低域通過フィルタにマッチングされる第1信号のスプリアス(Spurious)が前記高域通過フィルタにマッチングされる第2信号のターゲット帯域に及ぶす影響を縮小させる、請求項1に記載の広帯域ダイプレクサ。
【請求項3】
前記グラウンドポストは、直径が5~6mmで、高さが11~12mmの円柱状で、
前記グラウンドポストの上面は前記ハウジングの上面と接続され、前記グラウンドポストの下面は前記ハウジングの下面と接続される、請求項1に記載の広帯域ダイプレクサ。
【請求項4】
前記低域通過フィルタは、
第1伝送零点を有する共振器を具現する第1スタブと、
第2伝送零点を有する共振器を具現する第2スタブと、
第3伝送零点を有する共振器を具現する第3スタブと、
前記4G入出力ポートと前記第1スタブとの間を連結する第1ストリップラインと、
前記第1スタブと前記第2スタブとを連結する第2ストリップラインと、
前記第2スタブと前記第3スタブとの間を連結する第3ストリップラインと、
前記第3スタブと前記アンテナ入出力ポートとを連結する第4ストリップラインと、を含み、
前記高域通過フィルタは、
第4伝送零点を有する共振器を具現する第4スタブと
第5伝送零点を有する共振器を具現する第5スタブと、
前記5G入出力ポートと前記第4スタブとを連結する第1オープンカップリング部と、
前記第4スタブと前記第5スタブとの間を連結する第2オープンカップリング部と、
前記第5スタブと前記アンテナ入出力ポートとの間を連結する第3オープンカップリング部と、を含む、請求項
1に記載の広帯域ダイプレクサ。
【請求項5】
前記第4グラウンドポストは、高さが3~5mmの四角柱状である、請求項
1に記載の広帯域ダイプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広帯域ダイプレクサに関するもので、より詳しくは、低域通過フィルタ(4G)で発生するスプリアスの高域通過フィルタ(5G)に対する干渉を除去するための広帯域ダイプレクサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のアンテナを用いるマッシブマイモ(Massive MIMO、Multiple-input and multiple-output)システムは、チャネル容量を極大化して、信号の信頼性を確保するための5G通信の核心技術である。
【0003】
一つのアンテナごとに複数のフィルタが内蔵されることができる本システムで、それぞれの周波数バンドフィルタ(Band Filter)を含む一つの広帯域ダイプレクサ(Wide Band Diplexer、WBD)が活用されることができる。
【0004】
一方、ダイプレクサは、キャビティまたは印刷回路基板(PCB)の形態に具現されることができる。ただ、キャビティに基づくフィルタの場合、各キャビティの共振周波数を調整するチューニングボルトとキャビティとの間の結合量を調節するチューニングボルトのフィルタ特性がチューニングされる過程が必要となり、この過程でフィルタ特性が全てのフィルタに同一に適用されにくいという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、4G及び5Gそれぞれの信号を処理するためのPCB構造の広帯域ダイプレクサを提供する。
【0006】
具体的には、本開示は、低域(4G)及び高域(5G)の位相遅延を一定に具現しながらも、スプリアス(spurious)による干渉を防止することができるPCBに基づくダイプレクサを提供する。
【0007】
本開示の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されなかった本開示の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解され得、本開示の実施例によってより明らかに理解され得る。また、本開示の目的及び長所は、特許請求範囲に示した手段及びその組合によって実現され得ることを容易に理解し得るはずである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る広帯域ダイプレクサ(Diplexer)は、低域通過フィルタ(LPF)及び高域通過フィルタ(HPF)を含むPCB(Printed Circuit Board)基板、及び前記PCB基板を実装するためのハウジングを含む。前記PCB基板は、前記ハウジングの内部で前記ハウジングの上面及び下面のそれぞれから離隔されて形成された誘電体層、前記誘電体層の上面の少なくとも一部領域上に形成された第1導電パターン、及び前記誘電体層の下面の少なくとも一部領域上に形成された第2導電パターンを含む。前記ハウジングは、前記ハウジングの側面と離隔されて、前記ハウジングの上面から前記ハウジングの下面まで垂直に延長され、前記第1導電パターン及び前記第2導電パターンの何れも形成されない前記誘電体層の一部領域を貫通する、少なくとも一つのグラウンドポストを含む。
【0009】
前記グラウンドポストは、前記低域通過フィルタにマッチングされる第1信号のスプリアス(Spurious)が前記高域通過フィルタにマッチングされる第2信号のターゲット帯域に及ぼす影響を縮小させることができる。
【0010】
前記グラウンドポストは、直径が5~6mmで、高さが11~12mmの円柱状で、前記グラウンドポストの上面は前記ハウジングの上面と接続され、前記グラウンドポストの下面は、前記ハウジングの下面と接続されることができる。
【0011】
一方、前記PCB基板は、前記ハウジングの側面に備えられた接続口を介してアンテナ入出力ポート、4G入出力ポート、及び5G入出力ポートとそれぞれ連結されることができる。ここで、前記低域通過フィルタは、前記アンテナ入出力ポートと前記4G入出力ポートとの間で4G帯域の通過機能を実行し、前記高域通過フィルタは、前記アンテナ入出力ポートと前記5G入出力ポートとの間で5G帯域の通過機能を実行することができる。
【0012】
この時、前記ハウジングは、前記アンテナ入出力ポートと前記低域通過フィルタが接続される導電パターン部分に近接して配置された第1グラウンドポスト、前記アンテナ入出力ポートと前記高域通過フィルタが接続される導電パターン部分に近接して配置された第2グラウンドポスト、及び前記高域通過フィルタを構成する二つの共振器のそれぞれにマッチングされる二つのスタブの間に配置された第3グラウンドポストを含むことができる。
【0013】
前記低域通過フィルタは、第1伝送零点を有する共振器を具現する第1スタブ、第2伝送零点を有する共振器を具現する第2スタブ、第3伝送零点を有する共振器を具現する第3スタブ、前記4G入出力ポートと前記第1スタブとの間を連結する第1ストリップライン、前記第1スタブと前記第2スタブとを連結する第2ストリップライン、前記第2スタブと前記第3スタブとの間を連結する第3ストリップライン、及び前記第3スタブと前記アンテナ入出力ポートとを連結する第4ストリップラインを含むことができる。また、前記高域通過フィルタは、第4伝送零点を有する共振器を具現する第4スタブ、第5伝送零点を有する共振器を具現する第5スタブ、前記5G入出力ポートと前記第4スタブとを連結する第1オープンカップリング部、前記第4スタブと前記第5スタブとの間を連結する第2オープンカップリング部、及び前記第5スタブと前記アンテナ入出力ポートとの間を連結する第3オープンカップリング部を含むことができる。
【0014】
一方、前記ハウジングは、前記ハウジングの下面のうち、前記第2導電パターンの少なくても一部と対向する一領域から前記第2導電パターンの方向に垂直に延長されて、前記第2導電パターンと近接離隔された一地点まで形成された、少なくとも一つの第4グラウンドポストをさらに含むことができる。
【0015】
この場合、前記第4グラウンドポストは、前記ハウジングの下面のうち、前記高域通過フィルタの共振器にマッチングされる前記第2導電パターンの一部分と対向する一領域から、前記第2導電パターンの方向に垂直に延長されることができる。
【0016】
前記第4グラウンドポストは、高さが3~5mmの四角柱状であり得る。
【0017】
本開示の一実施形態に係る広帯域ダイプレクサは、低域通過フィルタ(LPF)及び高域通過フィルタ(HPF)を含むPCB(Printed Circuit Board)基板、及び前記PCB基板を実装するためのハウジングを含む。前記PCB基板は、前記ハウジングの内部で前記ハウジングの上面及び下面のそれぞれから離隔されて形成された誘電体層、前記誘電体層の上面の少なくとも一部領域上に形成された第1導電パターン、及び前記誘電体層の下面の少なくとも一部領域上に形成された第2導電パターンを含む。前記ハウジングは、前記ハウジングの下面のうち、前記第2導電パターンの少なくとも一部と対向する一領域から前記第2導電パターンの方向に垂直に延長されて、前記第2導電パターンと近接離隔された一地点まで形成された、少なくとも一つのグラウンドポストを含む。
【発明の効果】
【0018】
本開示に係る広帯域ダイプレクサは、PCBに基づくダイプレクサであって、位相遅延特性に影響を与えるチューニング工程が排除されて、生産性が向上されることはもちろん、コストを節減するという効果を奏する。
【0019】
本開示に係る広帯域ダイプレクサは、PCB構造のフィルタは、無チューニング方式で一律的な位相遅延特性を有することができるという長所がある。
【0020】
本開示に係る広帯域ダイプレクサは、低域通過フィルタを通じて発生した低域信号のスプリアスによって高域通過フィルタに対する干渉が発生する状況を抑制するという効果を奏する。
【0021】
本開示に係る広帯域ダイプレクサは、低域通過フィルタ及び高域通過フィルタそれぞれの孤立度が向上されて、信号処理品質が向上されるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の一実施形態に係るダイプレクサの構造を説明するための斜視図である。
【
図2a】
図1に示したダイプレクサの構成を説明するための平面図(上面図)である。
【
図2b】
図1に示したダイプレクサを構成する低域通過フィルタ及び高域通過フィルタそれぞれの等価回路を示した図面である。
【
図3】
図1に示したダイプレクサの信号特性及びスプリアス関連問題を説明するためのグラフである。
【
図4a】本開示の一実施形態によってスプリアスを解決するためのグラウンドポストを含むダイプレクサの構造を説明するための図面である。
【
図5】
図4a~
図4bに示したダイプレクサの信号特性を説明するための グラフである。
【
図6a】本開示の一実施形態によってスプリアスを解決するためのグラウンドポストを含むダイプレクサの構造を説明するための図面である。
【
図7】
図6a~
図6bに示したダイプレクサの信号特性を説明するための グラフである。
【
図8】本開示の一実施形態によってスプリアスを解決するためのグラウンドポストを含むダイプレクサの構造を説明するための図面である。
【発明を実施するための具体的な内容】
【0023】
本開示に対して具体的に説明する際に先立って、本明細書及び図面の記載 方法について説明する。
【0024】
まず、本明細書及び特許請求範囲で用いられる用語は、本開示の多様な実施形態での機能を考慮して一般的な用語を選択した。しかしながら、このような用語は、当該技術分野に従事する技術者の意図や法律的または技術的解釈及び新しい技術の出現などによって異なり得る。また、一部用語は出願人が任意に選定した用語もある。このような用語に対しては、本明細書で定義された意味に解釈され得、具体的な用語の定義がない場合、本明細書の全般的な内容及び当該技術分野における通常の技術的常識に基づいて解釈され得る。
【0025】
また、本明細書に添付された各図面に記載された同じ参照番号または符号は、実質的に同じ機能を実行する部品または構成要素を示す。説明及び理解の便宜のために互いに異なる実施形態でも同じ参照番号または符号を用いて説明する。すなわち、複数の図面で同じ参照番号を有する構成要素を全部図示したとしても、複数の図面が一つの実施例を意味するのではない。
【0026】
また、本明細書及び特許請求範囲では、構成要素の間の区別のために、「第1」、「第2」などのように序数を含む用語が用いられることができる。このような序数は、同一または類似する構成要素を互いに区別するために用いられ、このような序数の使用によって用語の意味が限定して解釈されてはならない。一例として、このような序数と結合された構成要素は、その数字によって使用手順や配置順序などが制限されてはならない。必要によって、各序数は互いに取り替えて用いられることもできる。
【0027】
本明細書で単数の表現は文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「構成される」などの用語は、明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないことに理解されるべきである。
【0028】
また、本開示の実施形態において、ある部分が他の部分と連結されているとする時、これは直接的な連結以外に、他の構成を介した間接的な連結の場合も含む。また、ある部分がある構成要素を含むという意味は、特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0029】
図1は、本開示の一実施形態に係るダイプレクサの構造を説明するための斜視図である。
図1のダイプレクサ10は、基地局アンテナに実装されることができるが、これに限定されない。例えば、ダイプレクサ10は、基地局以外にも多様な端末装置に実装されることができる。
【0030】
図1を参照すると、ダイプレクサ10は、PCB基板を実装するためのハウジング100を含むことができる。一例として、ハウジング100の内部は真空状態であり得る。
【0031】
ハウジング100は、
図1のように、上面、下面、及び複数の側面が備えられた角の付いた形態でPCB基板を実装するように具現されることができる。ここで、複数の側面は、隣接した側面と垂直に連結された複数の平面に該当することができる。一方、ハウジングは、このほかにも多様な形態が可能であることはもちろんである。
【0032】
ハウジング100の内部には、誘電体層210、第1導電パターン220-1、及び第2導電パターン220-2で構成されたPCB基板が含まれることができる。
【0033】
具体的には、誘電体層210は、ハウジングの上面及び下面のそれぞれから離隔されて形成されることができ、誘電体層210の上面には第1導電パターン220-1が形成され、誘電体層210の下面には第2導電パターン220-2が形成されることができる。
【0034】
このように、本開示に係るダイプレクサ10は、誘電体層の両面に形成された導電パターン220-1、2を含むストリップライン形態のPCB基板を含むことができ、PCB基板がハウジング100内に含まれた形態に具現されることができる。ここで、第1導電パターン220-1及び第2導電パターン220-2を通じて具現される線路の間のカップリング、線路上の共振、多重インピーダンス連結の原理を通じて各フィルタが具現される。
【0035】
この時、ハウジング100の表面(ex.ハウジングの上面、下面など)は、グラウンドに該当することができるが、第1導電パターン220-1及び第2導電パターン220-2のそれぞれは、ハウジングの表面に接続されずに離隔された形態である。
【0036】
図2aは、
図1に示したダイプレクサ10の構成を説明するための平面図(上面図)である。
【0037】
図2aを参照すると、ダイプレクサ10のPCB基板は、アンテナ入出力ポート1、4G入出力ポート2、5G入出力ポート3とそれぞれ連結されることができる。具体的には、前述したポート1、2、3は、ハウジング100の側面に備えられたそれぞれの接続口を介して第1導電パターン220-1と接続されることができる。
【0038】
図2aを参照すると、ダイプレクサ10のPCB基板は、機能的に低域通過フィルタ(LPF、Low Pass Filter)201及び高域通過フィルタ(HPF、High Pass Filter)202に分けられることができる。
【0039】
一方、ハウジング100は、低域通過フィルタ201と高域通過フィルタ202との間の電気的信号を遮断するために、直方体構造で低域通過フィルタ201と高域通過フィルタ202との間が一部凹入された形態に形成されることができる(
図2a参照)。
【0040】
低域通過フィルタ201は、アンテナ入出力ポート1と4G入出力ポート2との間で、4G帯域の通過機能を実行することができる。そして、高域通過フィルタ202は、アンテナ入出力ポート1と5G入出力ポート3との間で5G帯域の通過機能を実行することができる。
【0041】
両面の導電パターン220-1、2は、互いに一部が対称の形状で対向することができ、多数のビアホール221を通じて互いに連結されることができる。一般的に、マイクロストリップ形態のPCB基板で利用されるビアホールとは違って、本開示に係るビアホール221は、グラウンド(ハウジング表面)に関係なく誘電体層210両面の導電パターン220-1、2を互いに連結するという差異点がある。
【0042】
図2aを参照すると、両面の導電パターン220-1、2を通じて5つのスタブST1~ST5が配置されることができる。一例として、各スタブは、インダクタLの役割を果たす短絡回路スタブST-Lと、キャパシタCの機能を果たすオープンスタブST-Cとからなって、直列LC回路を具現することができる。ここで、直列LC回路のL値とC値は、四角パッチ型スタブの長さと幅によって調整されることができ、それにより、伝送零点も調整されることができる。キャパシタの場合、誘電体層210を間に挟んで互いに対向するように構成された両面の導電パターンの一部を通じて具現されることができる。
【0043】
この時、三つのスタブST1~ST3は、低域通過フィルタ201を構成し、残り二つのスタブST4~ST5は、高域通過フィルタ202を構成することができる。
【0044】
具体的には、低域通過フィルタ201は、第1伝送零点を有する共振器を具現する第1スタブST1、第2伝送零点を有する共振器を具現する第2スタブST2、及び第3伝送零点を有する共振器を具現する第3スタブST3を含むことができる。また、低域通過フィルタ201は、4G入出力ポート2と第1スタブST1との間を連結する第1ストリップライン、第1スタブST1と第2スタブST2とを連結する第2ストリップライン、第2スタブST2と第3スタブST3との間を連結する第3ストリップライン、及び第3スタブST3とアンテナ入出力ポート1とを連結する第4ストリップラインをそれぞれ含むことができる。
【0045】
また、高域通過フィルタ202は、第4伝送零点を有する共振器を具現する第4スタブST4、第5伝送零点を有する共振器を具現する第5スタブST5、5G入出力ポート3と第4スタブST4とを連結する第1オープンカップリング部、第4スタブST4と第5スタブST5との間を連結する第2オープンカップリング部、及び第5スタブST5とアンテナ入出力ポート1との間を連結する第3オープンカップリング部をそれぞれ含むことができる。
【0046】
図2bは、
図1に示したダイプレクサを構成する低域通過フィルタ及び高域通過フィルタそれぞれの等価回路を示した図面である。低域通過フィルタ201に備えられたそれぞれのストリップラインはインダクタにマッチングされ、高域通過フィルタ202に備えられたそれぞれのオープンカップリング部はキャパシタにマッチングされることができる。
【0047】
図3は、
図1に示したダイプレクサの信号特性及びスプリアス関連問題を説明するためのグラフである。
図3は、
図1に示したダイプレクサのSパラメータ特性グラフに該当する。
【0048】
図3のグラフで、アンテナ入出力ポート1であるポート1(Port 1)に信号を印加した時、ポート1に戻る電力の比は反射係数であって、S(1、1)に該当する。ポート1から4G入出力ポートであるポート2(Port 2)に伝達される電力の比は透過係数であって、S(2、1)に該当する。ポート1から5G入出力ポートであるポート3(Port 3)への伝達は、透過係数であって、S(3、1)の特性に該当する。
【0049】
図3のグラフで、横軸は、周波数(GHz)を示し、縦軸は、信号の大きさ(dB)を示す。
【0050】
本開示に係るダイプレクサ10において、4G移動通信に対するターゲット帯域は728~2150MHzに対応し、5G移動通信に対するターゲット帯域は3440~4200MHz及び4400~4900MHzに該当する。
【0051】
図3を参照すると、S(2、1)グラフは、比較的低周波である2150MHz以下の帯域を通過させる低域通過フィルタ(LPF)の特性を示し、S(3、1)グラフは、比較的高周波である3440MHz以上の帯域は通過させ、低い周波数は遮断させる高域通過フィルタ(HPF)の特性を示す。S(1、1)グラフは、低域周波数帯と高域周波数帯を互いに隔離させる特性を示す。
【0052】
ただし、
図3のS(2、1)グラフを参照すると、低域通過フィルタ(LPF)を通過した信号のスプリアス(Spurious)が4GHz付近で一度、4.6GHz付近で一度それぞれ発生することが確認される。すなわち、低域通過フィルタ(LPF)を通過した信号が高域通過フィルタ(HPF)のターゲット帯域(3440~4200MHz及び4400~4900MHz)上に不必要な影響を及ぼす可能性があるという問題がある。
【0053】
このような問題を解決するために、本開示の一実施形態に係るダイプレクサは、ハウジング100の側面から離隔されて、ハウジング100の上面からハウジング100の下面まで垂直に延長された少なくとも一つのグラウンドポストを含むことができる。
【0054】
この時、グラウンドポストは、誘電体層210は貫通するが、第1導電パターン220-1及び第2導電パターン220-2は貫通しないこともある。すなわち、グラウンドポストは、誘電体層210上で第1導電パターン220-1及び第2導電パターン220-2の何れも形成されない一部領域を貫通することができる。
【0055】
これに関して、
図4a~
図4bは、本開示の一実施形態によってスプリアスを解決するためのグラウンドポストを含むダイプレクサの構造を説明するための図面である。
【0056】
斜視図に対応する
図4aを参照すると、ダイプレクサ10は、三つのグラウンドポスト110-1、2、3を含むことができる。ただし、
図4aは一例に対応し、ダイプレクサ10が前述したグラウンドポスト110-1、2、3のうちの一つまたは二つのみ含む場合ももちろん可能である。また、グラウンドポスト110-1、2、3の少なくとも一つの位置が変更されたり、少なくとも一つのグラウンドポストが追加されることもできることはもちろんである。
【0057】
各グラウンドポスト110-1、2、3は円柱状であり得る。具体的には、各グラウンドポスト110-1、2、3は、直径が5~6mmで、高さが11~12mmの円柱状であり得る。好ましくは、各グラウンドポスト110-1、2、3の直径は5.2mmで、高さは11.7mmであり得る。
【0058】
この時、各グラウンドポスト110-1、2、3の上面は、ハウジング100の上面に接続され、各グラウンドポスト110-1、2、3の下面は、ハウジング100の下面に接続されることができる。
【0059】
図4bは、
図4aのグラウンドポストが回転された状態で示した平面図(上面図)である。
図4bを参照すると、各グラウンドポスト110-1、2、3は、それぞれハウジング100の側面と離隔された位置で誘電体層210を貫通するが、導電パターン220-1、2とは接触されない。
【0060】
図4bを参照すると、第1グラウンドポスト110-1は、アンテナ入出力ポート1と低域通過フィルタ201が接続される導電パターン部分に近接して配置されることができる。具体的には、第1グラウンドポスト110-1は、第3スタブST3、第4ストリップライン、及びアンテナ入出力ポート1で囲まれた位置に配置されることができる。
【0061】
第2グラウンドポスト110-2は、アンテナ入出力ポート1と高域通過フィルタ202が接続される導電パターン部分に近接して配置されることができる。そして、第2グラウンドポスト110-2は、高域通過フィルタ202に含まれる第5スタブST5に近接した位置に配置されることができる。
【0062】
具体的には、第1グラウンドポスト110-1及び第2グラウンドポスト110-2は、アンテナ入出力ポート1を第3ストリップライン及び第3オープンカップリング部とそれぞれ接続されるようにする導電パターン部分を間に挟んで互いに反対側に位置することができる。
【0063】
第3グラウンドポスト110-3は、高域通過フィルタ202を構成する共振器のそれぞれにマッチングされるスタブST4、ST5の間に配置されることができる。そして、第3グラウンドポスト110-3は第2オープンカップリング部と近接して配置されることができる。
【0064】
図5は、
図4a~
図4bに示したダイプレクサの信号特性を説明するためのグラフである。
【0065】
図5のS(2、1)グラフを参照すると、グラウンドポストを含まない場合に該当する
図3のグラフと違って、スプリアスが発生する周波数地点が少しずつ変更されるという効果がある。
【0066】
特に、従来に4400~4900MHz帯域内に存在していたスプリアスはより高域帯である5.5GHz付近に移動したことが確認される。また、3440~4200MHz帯域内に存在していたスプリアスも、当該帯域を完全に超えなかった状態ではあるが、
図3の場合と比べた時、やや上昇された周波数上に発生位置が変更された。一方、このほかにも低域通過フィルタ201の通過帯域が
図3に比べてより広くなったという効果もある。
【0067】
このように、グラウンドポスト110-1、2、3は、低域通過フィルタ201にマッチングされる信号S(2、1)のスプリアスが高域通過フィルタ202にマッチングされる信号S(3、1)のターゲット帯域に及ぶ影響を縮小させるという効果がある。
【0068】
一方、一実施形態に係ると、ダイプレクサ10は、ハウジング100の下面のうち第2導電パターン220-2の少なくとも一部と対向する一領域から第2導電パターン220-2の方向に垂直に延長された少なくとも一つのグラウンドポストを含むことができる。
【0069】
本グラウンドポストは、四角柱状であり得、ハウジングの下面から誘電体層の下面(第2導電パターン220-2)と近接した地点まで垂直に延長された形態であり得る。具体的には、本グラウンドポストは、ハウジング100の下面から第2導電パターン220-2と近接離隔された一地点まで延長されるように形成されることができ、第2導電パターン220-2と接触しないこともある。
【0070】
これに関して、
図6a~
図6bは、本開示の一実施形態によって、スプリアスを解決するためのグラウンドポストを含むダイプレクサの構造を説明するための図面である。
【0071】
図6aを参照すると、ダイプレクサ10は、前述したグラウンドポスト110-1、2、3のほかに、追加的に四角柱状のグラウンドポスト110-4をさらに含むことができる。
【0072】
図6aを参照すると、グラウンドポスト110-4は、高域通過フィルタ202の共振器の一つにマッチングされる第4スタブST4の垂直下方向に形成されることができる。具体的には、グラウンドポスト110-4は、高域通過フィルタ202の第4スタブST4とマッチングされる第2導電パターン220-2の一部分と対向するハウジング100の一領域から第2導電パターン220-2の方向に垂直に延長されるように形成されることができる。
【0073】
図6bは、
図6aのダイプレクサ10を側面で見た側面図である。
【0074】
図6bを参照すると、グラウンドポスト110-4は、ハウジング100の下面から垂直に延長されて、第2導電パターン220-2と近接離隔された地点まで形成されることができる。具体的には、グラウンドポスト110-4の高さは、3~5mmに該当することができ、一例として、4mmに該当することができる。この時、四角柱であるグラウンドポスト110-4の四角面の横及び縦は、それぞれ2mmに対応し得るが、これに限定されない。
【0075】
図7は、
図6a~
図6bに示したダイプレクサの信号特性を説明するためのグラフである。
【0076】
図7のS(2、1)グラフを参照すると、4400~4900MHz帯域に影響を及ぼしていたスプリアスだけでなく、
図5で相変らず3440~4200MHz帯域に一部影響を及ぼしていたスプリアスもターゲット帯域(3220~4200MHz)を超えるように変更されながら、ターゲット帯域に対する干渉が
図5のグラフよりもさらに減少されたことが確認される。
【0077】
グラウンドポスト110-1、2、3、4ごとに関連特性を説明すると、グラウンドポスト110-1はS(2、1)グラフによって確認される低域通過の帯域がより広くなった結果に関連性があり、グラウンドポスト110-2は、3440~4200MHz帯域に影響を及ぼしたスプリアスの周波数が変更された結果と関連性があり、グラウンドポスト110-3は、4400~4900MHz帯域に影響を及ぼしていたスプリアスの周波数が変更された結果と関連性がある。
【0078】
一方、
図3のS(3、1)グラフが2.2GHz近所に現れた急激な出力下落を見せた。ただし、グラウンドポスト110-4の影響により、
図7のS(3、1)グラフでは相対的により高い周波数で当該出力下落が発生することによって、低域通過フィルタ201の通過信号と高域通過フィルタ202の通過信号との間の孤立度がさらに向上されたことに解釈され得る。
【0079】
一方、
図6a~
図6bでは、ダイプレクサ10が円柱のグラウンドポスト110-1、2、3及び四角柱のグラウンドポスト110-4を全部含む場合のみを示したが、ダイプレクサ10が四角柱のグラウンドポストのみを一つ以上含む実施例ももちろん可能である。
【0080】
これに関して、
図8は、本開示の一実施形態によって、スプリアスを解決するためのグラウンドポストを含むダイプレクサの構造を説明するための図面である。
【0081】
図8を参照すると、ダイプレクサ10は、ハウジング100の下面から第2導電パターン220-2の方向に垂直に延長されたグラウンドポスト110-4を含むことができ、
図8のダイプレクサ10も、
図1のダイプレクサ10に比べた時スプリアスの干渉及び/またはフィルタ信号の孤立度の面でより優れた性能を見せることができる。
【0082】
図8のグラウンドポスト110-4は、
図6aのグラウンドポスト110-4と同じ位置及び大きさを有することができる。
【0083】
具体的には、
図8のグラウンドポスト110-4は、ハウジング100の下面から第2導電パターン220-2と近接離隔された一地点まで垂直に延長されて形成されることができる。
【0084】
図8のグラウンドポスト110-4は、ハウジング100の下面のうち、高域通過フィルタ202の共振器にマッチングされる第2導電パターン220-2の一部分(第4スタブST4)と対向する一領域から第2導電パターン220-2の方向に垂直に延長されて形成されることができる。
【0085】
また、
図8のグラウンドポスト110-4は、高さが3~5mmに該当することができ、上面及び下面の横及び縦がそれぞれ2mmに該当することができるが、これに限定されない。
【0086】
以上、本開示の好ましい実施形態について図示して説明したが、本開示は前述した特定の実施形態に限定されず、特許請求範囲で請求する本開示の要旨を逸脱することなく、当該開示に属する技術分野において通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であることはもちろんで、このような変形実施は、本開示の技術的思想や展望から個別的に理解されてはならない。
【符号の説明】
【0087】
10:ダイプレクサ
100:ハウジング
210:誘電体層
220-1:第1導電パターン
220-2:第2誘電パターン
110-1:第1グラウンドポスト
110-2:第2グラウンドポスト
110-3:第3グラウンドポスト
110-4:第4グラウンドポスト
【図 】