(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20240726BHJP
H05K 3/34 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
B65H7/12
H05K3/34 507L
(21)【出願番号】P 2023096723
(22)【出願日】2023-06-13
【審査請求日】2024-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 久
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-005843(JP,U)
【文献】特開2011-006237(JP,A)
【文献】実開平05-014810(JP,U)
【文献】特開2010-070374(JP,A)
【文献】特開2014-035192(JP,A)
【文献】特開平05-147773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/12
B65G 1/00
G01B 11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に基板を搬送する搬送路と、
前記搬送路上に設けられ、前記基板の搬送に伴って自転する第一軸を有する検出ローラと、
第二軸を中心に回転する揺動アームであって、前記検出ローラと連結され、前記検出ローラの昇降に伴い揺動する揺動アームと、
前記第二軸回りの前記揺動アームの回転を検出する回転センサ
であって、発光素子と、前記発光素子から出力される光を検出する受光素子と、を有する回転センサと、
前記受光素子における光が当たる位置の変化により前記搬送路に沿って搬送される前記基板の厚みを検出するコントローラと、
を備え、
前記第一軸と前記第二軸とを結ぶアーム軸線は、
前記検出ローラが前記搬送路に接地した状態で、前記第一軸から前記搬送方向上流側に延びる水平基準線と、前記第一軸から鉛直上向きに延びる鉛直基準線との間に位置する、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記アーム軸線と前記水平基準線とが成す角度は、
前記検出ローラが前記搬送路に接地した状態で、45度以上80度未満である、ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板搬送装置であって、
前記回転センサは、前記搬送路の水平方向外側に配置されている、ことを特徴とする基板搬送装置。
【請求項4】
所定の搬送方向に基板を搬送する搬送路と、
前記搬送路上に設けられ、前記基板の搬送に伴って自転する第一軸を有する検出ローラと、
第二軸を中心に回転する揺動アームであって、前記検出ローラと連結され、前記検出ローラの昇降に伴い揺動する揺動アームと、
前記第二軸回りの前記揺動アームの回転を検出する回転センサと、
前記回転センサの検出結果に基づいて、前記基板の搬送状態の良否を判断するコントローラと、
を備え、
前記第一軸と前記第二軸とを結ぶアーム軸線は、前記検出ローラが前記搬送路に接地した状態で、前記第一軸から前記搬送方向上流側に延びる水平基準線と、前記第一軸から鉛直上向きに延びる鉛直基準線との間に位置し、
前記回転センサは、
前記揺動アームの揺動に伴い前記第二軸を中心に自転する検出ブロックと、
前記第二軸と直交する方向に前記検出ブロックを貫通する検出孔と、
前記検出孔を挟んで対向配置された発光素子および受光素子と、
を備え、前記発光素子および前記受光素子の少なくとも一方は、前記搬送路に対して固定されており、前記検出ブロックの自転に伴い、前記検出孔に対する相対位置が変化する、
ことを特徴とする基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、搬送路に沿って基板を搬送する基板搬送装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板を、搬送路に沿って搬送する基板搬送装置が知られている。かかる基板搬送装置は、2以上の基板が重なったまま搬送されることを防止するために、基板の厚みを検出する機構を有する。
【0003】
ここで、従来の基板厚検出機構は、基板の搬送方向と平行な軸を中心に揺動可能なアームと、当該アームの先端に設けられた検出ローラと、を有している。そして、基板が検出ローラの下側を通過する際の、検出ローラの昇降量に基づいて、基板の厚みの適否を判断していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の厚み検出機構の場合、検出ローラは、搬送方向に動くことができない。そのため、従来の厚み検出機構の場合、検出ローラが、基板から検出方向下流向きの力を受けた際、当該力を逃がすことができず、基板に大きな反力が作用することがあった。そして、この反力を受けて基板が座屈することがあった。
【0006】
なお、特許文献1には、シートの二重送りを検出する装置が開示されている。しかし、特許文献1の技術は、紙等のシートを搬送する場合を想定しており、基板の搬送については、検討されていない。また、特許文献1の技術は、二つのアームの寸法比を調整して、検出精度を高めている。その結果、特許文献1の技術の場合、装置全体が大型化しやすい。
【0007】
そこで、本明細書では、基板の座屈を防止しつつ、基板の厚みを適切に検出できる基板搬送装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する基板搬送装置は、所定の搬送方向に基板を搬送する搬送路と、前記搬送路上に設けられ、前記基板の搬送に伴って自転する第一軸を有する検出ローラと、第二軸を中心に回転する揺動アームであって、前記検出ローラと連結され、前記検出ローラの昇降に伴い揺動する揺動アームと、前記第二軸回りの前記揺動アームの回転を検出する回転センサと、前記回転センサの検出結果に基づいて前記基板の搬送状態の良否を判断するコントローラと、を備え、前記第一軸と前記第二軸とを結ぶアーム軸線は、前記第一軸から前記搬送方向上流側に延びる水平基準線と、前記第一軸から鉛直上向きに延びる鉛直基準線との間に位置する、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記アーム軸線と前記水平基準線とが成す角度は、45度以上80度未満でもよい。
【0010】
また、前記回転センサは、前記搬送路の水平方向外側に配置されてもよい。
【0011】
また、前記回転センサは、前記第二軸と交差するように配置され、前記揺動アームの揺動に伴い前記第二軸を中心に自転する検出ブロックと、前記第二軸と直交する方向に前記検出ブロックを貫通する検出孔と、前記検出孔を挟んで対向配置された発光素子および受光素子と、を備え、前記発光素子および前記受光素子の少なくとも一方は、前記搬送路に対して固定されており、前記検出ブロックの自転に伴い、前記検出孔に対する相対位置が変化してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示する基板搬送装置によれば、基板の厚みを適切に検知しつつ、基板の座屈を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】基板厚検出機構による基板の厚みの検出原理を示す図である。
【
図4】回転センサによる回転量検知の原理を示す模式図である。
【
図5】検出ローラおよび基板に作用する力を示す模式図である。
【
図6】アーム軸線を、検出ローラの中心より、搬送方向下流側に位置させた場合に作用する力を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して基板搬送装置10の構成について説明する。
図1は、基板搬送装置10の模式的な平面図である。また、
図2は、基板厚検出機構14の模式的な正面図である。この基板搬送装置10は、基板100を、搬送路12に沿って、搬送方向上流側から搬送方向下流側に、搬送する。
図1および
図2では、紙面左が、搬送方向上流側であり、紙面右側が、搬送方向下流側である。また、基板搬送装置10は、後工程のために、搬送過程で基板100を加温しており、搬送路12には、当該加温のためのヒータ(図示せず)が内蔵されている。かかる基板搬送装置10は、単独で使用されてもよいし、他の装置(例えば、基板100に対して半導体素子をボンディングするボンディング装置等)に組み込まれてもよい。
【0015】
基板搬送装置10は、さらに、搬送される基板100の厚みを検出する基板厚検出機構14を有する。基板100の厚みを検出するために、基板厚検出機構14は、検出ローラ16と、揺動アーム20と、回転センサ25と、を有する。
【0016】
検出ローラ16は、第一軸Afを中心に自転可能であり、第二軸Asを中心に揺動可能なローラである。なお、第一軸Afは、
図1に示す通り、搬送路12の表面に略平行であり、搬送方向に略直交する軸である。検出ローラ16は、基板100の通過経路上に配置されている。基板100がない場合、検出ローラ16は、搬送路12の表面(すなわち搬送面)に接地している。搬送過程の基板100は、この検出ローラ16の下をくぐって、下流側に送られる。
【0017】
また、検出ローラ16は、第一軸Afと平行な第二軸Asを中心に揺動可能である。この第二軸Asは、第一軸Afよりも搬送方向上流側、かつ、第一軸Afよりも上側に位置している。したがって、第一軸Afから搬送方向上流向きに延びる線を「水平基準線Lh」、第一軸Afから鉛直上向きに延びる線を「鉛直基準線Lv」、第一軸Afと第二軸Asとを結ぶ線を「アーム軸線La」とした場合、アーム軸線Laは、水平基準線Lhと鉛直基準線Lvとの間に位置している。第二軸Asをかかる配置とする理由については後述する。いずれにしても、検出ローラ16は、第二軸Asを中心に揺動(換言すれば公転)することで昇降し、第一軸Afを中心に自転することで基板100を下流側に送り出す。
【0018】
検出ローラ16は、連結シャフト18を介して揺動アーム20に連結されている。連結シャフト18は、第一軸Afと同軸に配されたシャフト部材である。検出ローラ16の中心は、この連結シャフト18の一端に、回転可能に取り付けられている。また、連結シャフト18の他端は、揺動アーム20の下流側端部に固着されている。ここで、
図1から明らかな通り、連結シャフト18の他端は、搬送路12の水平方向を外側に位置している。そして、これにより、揺動アーム20および回転センサ25も、搬送路12の水平方向外側に位置することになる。
【0019】
揺動アーム20は、第二軸Asを中心に揺動するアーム部材である。図示例の場合、揺動アーム20の搬送方向下流側端部に第二軸Asが位置している。さらに、揺動アーム20には、回転シャフト22が固着されている。回転シャフト22は、第二軸Asと同軸に配され、搬送路12から離れる方向に延びるシャフト部材である。この回転シャフト22は、複数のベアリング24により、自転可能に保持されている。回転シャフト22は、揺動アーム20および検出ローラ16の揺動に伴い、自転する。
【0020】
回転シャフト22の中間部分には、回転シャフト22の回転量、ひいては、検出ローラ16の昇降量を検出する回転センサ25が、取り付けられている。回転センサ25は、検出ブロック26と、発光素子32と、受光素子34と、を有する。検出ブロック26には、搬送方向と平行な方向に貫通する検出孔28が形成されている。発光素子32および受光素子34は、この検出孔28の両側に配置されている。こうした回転センサ25による回転量の検出原理については、後述する。なお、発光素子32、受光素子34の配置位置については限定されないが、例えばその両方が搬送路12に固定されていてもよい。また、検出ブロック26には、加工を容易にするためにパイプ状の部材に穴を開けたものを適用してもよい。
【0021】
コントローラ40は、回転センサ25から出力される検出値に基づいて、基板100の厚みを判断し、当該厚みに基づいて、搬送状態の良否、すなわち、基板100が複数枚重なったまま搬送されているか否かを判断する。例えば、コントローラ40は、基板100の厚みが規定の基準値以上の場合、基板100が2枚重なったまま搬送されていると判断し、当該基板100の搬送を中止したり、ユーザに警告を通知したりする。こうしたコントローラ40は、物理的には、プロセッサ42とメモリ44等を含むコンピュータである。
【0022】
次に、上述した基板厚検出機構14による基板100の厚みの検出原理について
図3を参照して説明する。
図3の上段に示すとおり、通常、検出ローラ16は、搬送面に接地している。そして、基板100を上流側から下流側に搬送すると、当該基板100の先端が、検出ローラ16の周面に当接する。この当接に伴い、検出ローラ16は、搬送方向下流側に押圧される。この押圧力を逃がすために、検出ローラ16は、第一軸Afを中心に自転しながら、第二軸Asを中心に揺動し、搬送路12の表面から浮き上がる。
【0023】
そして、検出ローラ16が浮き上がることで、
図3の下段に示すように、基板100が検出ローラ16の下側を通過できる。また、基板100と検出ローラ16との間の摩擦力が、検出ローラ16を自転させる力に変換される。この自転により、基板100が搬送方向下流側に送られる。以下では、この基板100を搬送方向下流に送り出すための検出ローラ16の自転方向を「正回転方向Rn」と呼び、反対側への回転方向を「逆回転方向Rr」と呼ぶ。
【0024】
ここで、検出ローラ16の下をくぐる基板100の厚みが大きいほど、検出ローラ16の揺動量、ひいては、回転シャフト22の回転量が大きくなる。そのため、回転シャフト22の回転量を検出することで、基板100の厚みを取得できる。
【0025】
本例では、回転シャフト22の回転量を検出するために、回転センサ25を設けている。この回転センサ25による回転量検出の原理について説明する。上述した通り、回転センサ25は、回転シャフト22に固着された検出ブロック26と、発光素子32と、受光素子34と、を有する。検出ブロック26は、回転シャフト22の回転に伴い、傾く。また、検出ブロック26には、第二軸Asと直交する方向に貫通する検出孔28が形成されている。発光素子32および受光素子34は、この検出孔28の両側に配置されている。また、発光素子32は、検出ブロック26に固定されており、検出ブロック26とともに傾く。受光素子34は、搬送路12に対して固定されており、回転シャフト22の回転に伴い、検出ブロック26との相対位置関係が変化する。
【0026】
図4は、こうした回転センサ25による回転量検知の原理を示す模式図である。なお、
図4に例示した受光素子34は、その受光部が、第一受光片34aと第二受光片34bとに分割された分割型受光素子である。この場合、第一受光片34aおよび第二受光片34bは、互いに独立して、受光量に応じた電気信号を出力する。
【0027】
検出ローラ16が搬送面に接地している場合、検出孔28は、
図4の上段に示す通り、水平を保っており、発光素子32および受光素子34が正対する。この場合、発光素子32から出力される光束は、受光素子34の中心に当たる。そのため、第一受光片34aおよび第二受光片34bそれぞれが検出する光量は、互いに等しい。
【0028】
一方、検出ローラ16が接地面から浮き、回転シャフト22が回転すると、
図4の下段に示す通り、検出ブロック26が傾く。この場合、受光素子34と検出孔28との相対位置関係が変化する。そして、これにより、発光素子32から出力される光束は、受光素子34の中心からズレた位置に当たることになる。
図4の下段の例では、光束は、第一受光片34aに偏った位置に当たる。この場合、第一受光片34aによる検出光量と、第二受光片34bによる検出光量と、の間で偏差が生じる。こうした検出光量の偏差が、回転シャフト22の回転量、ひいては、基板100の厚みに依存する。したがって、コントローラ40は、この検出光量の偏差に基づいて基板100の厚みを判断し、当該厚みに基づいて、基板100の搬送状態の良否を判断する。
【0029】
以上の説明から明らかな通り、本例では、第一軸Af回りに自転し、第二軸As回りに揺動する検出ローラ16を用いて基板100の厚みを検出している。かかる構成を採用する理由について、従来技術と比較しながら説明する。
図7は、従来の基板厚検出機構14*を示す模式図である。
【0030】
図7に示すとおり、従来の基板厚検出機構14*も、自転および揺動が可能な検出ローラ16*を有する。ただし、この検出ローラ16*の揺動の中心軸(以下「第四軸Aq」と呼ぶ)は、搬送方向と平行である。また、検出ローラ16*の自転の中心軸(以下「第三軸At」と呼ぶ)は、第四軸Aqに対して直交しており、検出ローラ16の揺動に伴い、傾くようになっている。なお、検出ローラ16*には、連結シャフト18*が接続されている。連結シャフト18*は、第四軸Aqを中心に揺動可能で、第三軸Atと同軸配置されている。 この基板厚検出機構14*では、基板100の検出ローラ16*への当接に伴い、検出ローラ16*が浮上し、連結シャフト18*が傾斜する。そして、コントローラ40は、この連結シャフト18*の傾斜量に基づいて、基板100の厚みを判断する。連結シャフト18*の傾斜量は、連結シャフト18*の真上に配置された距離センサ50で検出する。
【0031】
こうした従来の基板厚検出機構14*でも、基板100の厚みは、一応、検出できる。しかし、この基板厚検出機構14*の場合、基板100が、検出ローラ16*を通過できず、基板100が検出ローラ16*からの反力を受けて座屈することがあった。これは、検出ローラ16*が、上下方向には移動できるが、搬送方向に移動できないためである。この場合、検出ローラ16*は、基板100から搬送方向下流向きの力を受けても、当該力を逃がすことができない。また、検出ローラ16*の下端と搬送路12表面との接点Pbにおける静止摩擦力が高くなりやすいため、検出ローラ16*が、正回転方向Rnに自転しにくい。結果として、検出ローラ16*から基板100に大きな反力が作用し、基板100が、座屈することがあった。
【0032】
そこで、本例では、上述した通り、自転軸(第一軸Af)と揺動軸(第二軸As)とを互いに平行としている。この場合において、検出ローラ16および基板100に作用する力について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、基板100の先端が検出ローラ16の周面に当接した場合を考える。このとき、基板100と検出ローラ16との接点を「第一接点Pa」と呼び、検出ローラ16と搬送面との接点を「第二接点Pb」と呼ぶ。また、検出ローラ16に作用する搬送方向下流向きの力を「下流向き力Fd」と呼び、検出ローラ16に作用する搬送方向上流向きの力を「上流向き力Fu」と呼ぶ。
【0033】
基板100の先端が検出ローラ16に当接した際の力の釣り合いについて考える。検出ローラ16が、揺動方向Sに揺動、または、正回転方向Rnに自転するためには、下流向き力Fdが、上流向き力Fuより大きいこと、すなわち、Fd>Fuであることが必要である。ここで、下流向き力Fdおよび上流向き力Fuは、それぞれ以下の式1および式2で表すことができる。
Fd=Fav×sinθ+Fah×cosθ 式1
Fu=Fbh+T×cosφ
=K(W-T×sinφ)+T×cosφ 式2
【0034】
なお、Favは、第一接点Paにおいて基板100が検出ローラ16を押す力であり、Fahは、第一接点Paにおける摩擦力であり、Fbhは、第二接点Pbにおける静的摩擦力であり、Tは、検出ローラ16が揺動アーム20から受ける力であり、Wは、検出ローラ16の質量であり、Kは、搬送面と検出ローラ16との間の摩擦係数である。また、θは、検出ローラ16の中心点と第一接点Paとを結ぶ直線が、鉛直基準線Lvと成す角度である。また、φは、アーム軸線Laが水平基準線Lhと成す角度である。
【0035】
上流向き力Fuが過度に大きいと、Fd>Fuを満たす前に、基板100に過大な反力が作用し、基板100が座屈する。したがって、基板100の座屈を低減するためには、上流向き力Fuを小さくすることが求められる。式2から明らかな通り、上流向き力Fuは、揺動アーム20の傾斜角φが90度の場合には、T×cosφ=0となり、また、T×sinθが最大となるため、上流向き力がFuが最小となる。
【0036】
したがって、基板100の座屈を防止することだけを目的とした場合、φ=90°とすることが最良である。しかし、φ=90°とした場合、検出ローラ16が、上流側および下流側のいずれの向きにも揺動するため、機構的に不安定となる。したがって、機構的に安定させるためには、傾斜角φは、90°未満とする必要があり、例えば、傾斜角φは、85°以下、または、80°以下、または70°以下でもよい。また、傾斜角φが0°に近い場合、下流向き力Fdを受けても、検出ローラ16が、揺動方向Sに揺動しにくい。そのため、検出ローラ16を容易に揺動させるために、傾斜角φは、ある程度大きい値、例えば、30°以上、または、40°以上、または、45°以上としてもよい。
【0037】
なお、
図6に示すように、アーム軸線Laを、検出ローラ16の中心より、搬送方向下流側に位置させることも考えられる。しかしながら、この場合、検出ローラ16が基板100から下流向きの力を受けたときの揺動方向Sは、
図6に示すように、斜め下方向となる。この場合、基板100から検出ローラ16に付加される押圧力が増えるほど、検出ローラ16が搬送面に密着する。換言すれば、この場合、検出ローラ16は浮き上がりにくくなる。また、検出ローラ16が搬送面に密着するほど、検出ローラ16が搬送面から受ける反力が大きくなり、両者の間に発生する摩擦力、ひいては、上流向き力Fuも大きくなる。結果として、基板100に作用する上流向きの反力も大きくなるため、基板100が座屈しやすくなる。
【0038】
以上の説明から明らかな通り、本例では、アーム軸線Laを、水平基準線Lhと鉛直基準線Lvとの間に位置させている。これにより、基板100に作用する搬送方向上流向きの反力を小さく抑えることができるため、基板100の座屈を効果的に防止できる。
【0039】
また、上述した通り、本例では、検出孔28を挟んで対向配置された発光素子32および受光素子34を用いて、基板100の厚みを検出している。かかる構成とすることで、従来技術に比べて、厚みの検出精度を向上できる。
【0040】
すなわち、
図7に示す従来の基板厚検出機構14*の場合、連結シャフト18*と距離センサ50との距離の変化に基づいて、基板100の厚みを検出している。しかし、この場合、検出感度を高めるためには、連結シャフト18*を長くする必要がある。しかし、連結シャフト18を長くすると、その分、装置全体が大型化するという別の問題を招く。結果として、従来技術では、厚みの検出感度を高めることが難しかった。
【0041】
一方、本例では、繰り返し述べる通り、検出孔28の両側に配置した発光素子32および受光素子34により、基板100の厚みを検出している。この場合、検出感度は、発光素子32から受光素子34に向かう光のスポット径を絞ることで向上できる。そして、スポット径は、例えば、検出孔28の直径を小さくしたり、検出光の光路途中に絞りまたはレンズまたはその両方を設けたりすることで、容易に絞ることができる。換言すれば、本例によれば、装置の大型化を防止しつつ、検出感度を容易に向上できる。
【0042】
ところで、
図1から明らかな通り、本例では、回転センサ25を、搬送路12の水平方向外側に配置している。これは、搬送路12から発生する熱の影響を避けるためである。すなわち、後処理を考慮して、基板100を、搬送路12に埋め込まれたヒータにより、加温することがある。この場合、当然ながら、搬送路12の上側空間も高温になる。かかる高温空間に、回転センサ25が配置されていると、温度変化に起因する検出誤差が発生しやすくなる。そこで、本例では、
図1に示すように、回転センサ25を搬送路12の水平方向外側にオフセットさせている。これにより、基板100の厚みをより正確に検出できる。
【0043】
なお、これまで説明した構成は、いずれも一例であり、請求項1に記載の構成を具備するのであれば、その他の構成は変更されてもよい。例えば、上述の説明では、二つの受光片34a,34bに分割された受光素子34を採用しているが、受光素子34の構成は適宜変更されてもよい。例えば、受光素子34は、三つ以上の受光片に分割されてもよい。また、受光素子34は、非分割型の受光素子でもよい。例えば、受光素子34は、第二受光片34bのみを有し、第一受光片34aを有さない構成でもよい。この場合、検出ローラ16の揺動、ひいては、検出ブロック26の回転に伴い、第二受光片34bで検出する受光量が変化する。コントローラ40は、この受光量の変化に基づいて、基板100の厚みを判断してもよい。また、検出ブロック26の回転に伴い、受光素子34での受光量が変化するのであれば、発光素子32および受光素子34の取り付け形態は、適宜変更されてもよい。例えば、発光素子32を検出ブロック26に対して固定し、受光素子34を搬送路12に対して固定してもよい。また、検出ローラ16の浮き上がり量を精度よく検出できるのであれば、他の形態のセンサを用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 基板搬送装置、12 搬送路、14,14* 基板厚検出機構、16,16* 検出ローラ、18,18* 連結シャフト、20 揺動アーム、22 回転シャフト、24 ベアリング、25 回転センサ、26 検出ブロック、28 検出孔、32 発光素子、34 受光素子、40 コントローラ、42 プロセッサ、44 メモリ、50 距離センサ、100 基板、Af 第一軸、As 第二軸。
【要約】
【課題】本明細書では、基板の座屈を防止しつつ、基板の厚みを適切に検出できる基板搬送装置を開示する。
【解決手段】基板搬送装置10は、搬送路12と、前記搬送路12上に設けられ、基板100の搬送に伴って自転する第一軸Afを有する検出ローラ16と、前記第一軸Afと平行で、前記検出ローラ16の昇降に伴い第二軸As回りに揺動する揺動アーム20と、第二軸As回りの前記揺動アーム20の回転を検出する回転センサ25と、前記回転センサ25の検出結果に基づいて前記基板100の搬送状態の良否を判断するコントローラ40と、を備え、前記第一軸Afと前記第二軸Asとを結ぶアーム軸線Laは、前記第一軸Afから前記搬送方向上流側に延びる水平基準線Lhと、前記第一軸Afから鉛直上向きに延びる鉛直基準線Lvとの間に位置する。
【選択図】
図2