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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 27/02 20060101AFI20240726BHJP
   F01K 23/00 20060101ALI20240726BHJP
   F01K 21/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
F01K27/02 A
F01K23/00
F01K21/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023219697
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523214074
【氏名又は名称】八木田 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】八木田 孝
【審査官】上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】特許第6315814(JP,B2)
【文献】特開2014-227881(JP,A)
【文献】特表2020-528509(JP,A)
【文献】実開昭57-066304(JP,U)
【文献】特表2013-510257(JP,A)
【文献】国際公開第2023/228938(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107299891(CN,A)
【文献】国際公開第2022/183188(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 23/00-27/02
F01K 21/00
F02C 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を吐出する圧縮機と、
前記圧縮空気の熱を水へ伝達して水蒸気を発生させる第1熱交換器と、
水蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換する第1タービンと、
前記第1タービンの回転エネルギを電気エネルギに変換する第1発電機と、
前記第1熱交換器で低温になった空気が送られ、かつ、送られた空気を膨張させて液体空気を生成する液体空気生成器と、
前記液体空気生成器から送られる液体空気へ熱を伝達して気化させる第2熱交換器と、
前記第2熱交換器で得られた空気の熱エネルギを回転エネルギに変換する第2タービンと、
前記第2タービンの回転エネルギを電気エネルギに変換する第2発電機と、
前記第2タービンから出る空気を、前記圧縮機の吸い込み口へ送る第2通路と、
を備えた発電システム。
【請求項2】
請求項1記載の発電システムであって、
前記第1熱交換器へ送る水を保持し、かつ、前記第1タービンで水蒸気の温度が低下して得られた水が前記第1タービンから送られる貯水ピットが、更に設けられている、発電システム。
【請求項3】
請求項記載の発電システムであって、
前記第2熱交換器で前記液体空気へ熱を伝達して温度が低下した空気を前記液体空気生成器へ送る第1通路が、更に設けられている、発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンに接続された発電機で発電する発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンを回転させて、タービンに接続された発電機で発電する発電システムの一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された発電システムでは、水蒸気ボイラで燃料を燃焼させて発生した蒸気が、蒸気タービンに至り発電機を回転して発電する。蒸気タービン内で膨脹した蒸気は、復水器で凝縮して復水となり、復水ポンプで昇圧されたのち、給水加熱器で加熱される。この加熱源は、蒸気タービンから抽気した蒸気が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-132409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、特許文献1に記載されている発電システムでは、水蒸気ボイラで燃料を燃焼させる必要がある、という課題を認識した。
【0005】
本開示の目的は、燃料を用いることなく発電機で発電することの可能な発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態は、圧縮空気を吐出する圧縮機と、前記圧縮空気の熱を水へ伝達して水蒸気を発生させる第1熱交換器と、水蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換する第1タービンと、前記第1タービンの回転エネルギを電気エネルギに変換する第1発電機と、を備えた発電システムを構成した。
【発明の効果】
【0007】
本実施形態の発電システムによれば、燃料を用いることなく発電機で発電することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】発電システムの第1実施形態を示す概念図である。
図2】発電システムの第2実施形態を示す概念図である。
図3】発電システムの第3実施形態を示す概念図である。
図4】発電システムの第4実施形態を示す概念図である。
図5】発電システムの第5実施形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(概要)
本実施形態で開示されている発電システムは、発電機と、発電機に接続されたタービンと、を有し、タービンを回転させる流体の生成過程で燃料を用いていない。以下、発電システムに含まれるいくつかの実施形態を図面に基づいて説明する。発電システムのいくつかの実施形態を説明するための各図において、同一構成には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
発電システムの第1実施形態は、図1に示されている。発電システム10は、圧縮機11、熱交換器12,13,14、タービン15,16、発電機17,18、貯水ピット19、膨張ピット20、ポンプ21,22,23、ファン24、等の装置及び機器を有する。図1に示す発電システム10は概念図であり、発電システム10を構成する各装置同士の位置関係は、図1に示すものに限定されない。例えば、タービン15,16は、重力の作用方向で貯水ピット19より上に配置される。圧縮機11は、2つの吸い込み口25,26と、1つの吐出口27とを有する空気機械である。また、圧縮機11は、電動モータにより駆動される。電動モータは、電力が供給されて回転する原動機である。圧縮機11は、2つの吸い込み口25,26の少なくとも一方から吸い込んだ空気を加圧して、吐出口27から圧縮空気を吐出する。吐出口27は、通路29へ接続されている。
【0011】
熱交換器12は、2つの入口30,31及び2つの出口32,33を有する。入口30は出口33へつながり、入口31は出口32へつながっている。入口30は通路29へ接続され、入口31は通路34へ接続されている。出口32は通路35へ接続され、出口33は通路36へ接続されている。熱交換器12は、圧縮機11から入口30へ送られた圧縮空気の熱を、入口31から供給される水へ伝達させることにより、水蒸気(気体)を発生させる機能を有する。生成された水蒸気は、出口32から通路35へ送られる。熱伝達により温度が低下した圧縮空気は、出口33から通路36へ送られる。
【0012】
タービン15は、蒸気タービンであり、タービン15は、固定羽根を有する回転軸、入口37及び出口38を有する。入口37は通路35へ接続され、出口38は通路39へ接続されている。タービン15は、気体、例えば、蒸気の熱エネルギを回転軸の回転エネルギに変換する装置である。タービン15は、熱交換器12から入口37へ送られた高温・高圧の水蒸気を固定羽根に吹き付けて噴出させることで、回転軸の回転エネルギに変換する。羽根に吹き付けられた水蒸気は温度が低下し、かつ、出口38から通路39へ排出される。
【0013】
発電機17,18は、直流発電機または交流発電機の何れでもよい。発電機17,18は、例えば、ロータ、ステータ、ステータに取り付けられた永久磁石、ロータに巻かれたコイルを有する。発電機17のロータは、タービン15の回転軸に連結され、発電機18のロータは、タービン16の回転軸に連結されている。発電機17,18が回転されると電磁誘導の原理によりコイルに電流が流れる。このように、発電機17,18は、ロータに加えられる回転エネルギ(機械エネルギ)を電気エネルギに変換して出力する。発電機17,18で発生された電力は、電力供給先40へ供給される。電力供給先は、二次電池、電気機器、等を含む。
【0014】
貯水ピット19は、圧縮性流体としての水を貯留するタンクである。貯水ピット19は、2つの出口41,42を有し、出口41へポンプ21が接続されている。ポンプ21は、貯水ピット19から水を吸い込み、かつ、吸い込んだ水を加圧して通路34へ吐出する。
【0015】
膨張ピット20は、圧縮空気を容器本体内へ噴出して膨張させることで圧縮空気の圧力を低下させ、かつ、-140℃以下の低温にして液体空気(液化空気)を生成する装置である。膨張ピット20は、例えば、容器本体と、容器本体の内部に設けられたダイアフラムと、ダイアフラムにより容器本体内に形成された収容室と、収容室に接続される2つの入口43,44及び出口45と、を有する。容器本体は、断熱状態におかれる。膨張ピット20へ送られた空気は、体積が膨張して液体空気となる。入口43は通路36へ接続され、入口44は通路46へ接続されている。さらに、ポンプ22が設けられている。ポンプ22は、膨張ピット20の出口45から液体空気を吸い込み、かつ、吸い込んだ液体空気を通路47へ吐出する。
【0016】
熱交換器13は、2つの入口48,49及び2つの出口50,51を有する。入口48は出口51へつながり、入口49は出口50へつながっている。入口48は通路47へ接続され、入口49は通路52へ接続されている。出口50は通路46へ接続され、出口51は通路53へ接続されている。熱交換器13は、入口49へ送られる空気の熱を、入口48へ送られる液体空気へ伝達して気化させる。熱交換器13で得られた気体、つまり、空気は、出口51から通路53へ送られる。熱交換器13において、液体空気へ熱伝達して温度が低下した空気は、出口50から通路46を通って膨張ピット20へ送られる。
【0017】
ポンプ23は、出口42から貯水ピット19内の水を吸い込み、かつ、吸い込んだ水を通路54へ吐出する。熱交換器14は、2つの入口55,56及び2つの出口57,58を有する。入口55は出口57へつながり、入口56は出口58へつながっている。入口55は通路54へ接続され、入口56は通路59へ接続されている。出口57は通路60を介して貯水ピット19へ接続され、出口58は通路52を介して入口49へ接続されている。
【0018】
ファン24は、外気を吸入して吐出する空気機械であり、ファン24は、例えば、電動モータにより回転される。ファン24から吐出される空気は通路59を介して入口56へ送り込まれる。熱交換器14は、入口55へ送られた水の熱を、入口56へ送られた空気へ伝達させることにより、空気の温度を上昇させる。温度が上昇された空気は、通路52を通って入口49へ送られる。熱交換器14において、熱伝達により温度が低下した水は、出口57から通路60を通って貯水ピット19へ戻される。
【0019】
タービン16は、タービン15と同様の構成を有し、かつ、入口61及び出口62を有する。入口61は、通路53へ接続され、出口62は、通路63を介して圧縮機11の吸い込み口26へ接続されている。タービン16は、熱交換器13から入口61へ高温・高圧の水蒸気が送られると、タービン15と同様の原理で回転軸が回転される。タービン16に送られた水蒸気は、温度が低下して気化され、かつ、通路63へ吐出される。
【0020】
(第1実施形態の動作例)
図1に示された発電システム1の動作例は、次の通りである。圧縮機11が駆動されると、圧縮機11から吐出される高温及び高圧の圧縮空気が、通路29を通って熱交換器12の入口30へ送られる。また、貯水ピット19の水の一部が、ポンプ21へ吸い込まれ、かつ、ポンプ21から吐出された水は、通路34を通って熱交換器12の入口31へ送られる。
【0021】
熱交換器12では、入口30へ送り込まれた圧縮空気の熱が、入口31へ送り込まれた水に伝達されて、水蒸気が生成される。熱交換器12で生成された水蒸気は、通路35へ送られる。また、熱交換器12で温度が低下した圧縮空気は、通路36を通って膨張ピット20へ送られる。
【0022】
タービン15の回転軸は、水蒸気の熱エネルギにより回転され、発電機17で発電が行われる。タービン15で温度が低下した水蒸気は、通路39を通って貯水ピット19へ送られ、水蒸気の温度が低下して液化(水)する。貯水ピット19内の水のうち、温度が低い部分が下方へ溜まり、その温度が低い部分の水がポンプ23により吸い込まれ、かつ、ポンプ23で加圧されて通路54を通り、熱交換器14の入口55へ送られる。
【0023】
熱交換器14では、入口55へ送られた水の熱が、入口56へ送られた空気へ伝達され、空気の温度が上昇する。熱交換器14から吐出される高温の空気は、通路52を通って熱交換器13の入口49へ送られる。熱交換器14で温度が低下した水は、通路60を通って貯水ピット19へ送られる。
【0024】
ポンプ22は、膨張ピット20の液体空気を吸い込み、かつ、吸い込んだ液体空気を加圧して通路47へ吐出する。熱交換器13の入口49へ送られた高温の空気の熱は、通路47から熱交換器13の入口48へ送られた液体空気へ伝達され、熱交換器13で液体空気が気化される。熱交換器13で温度が低下した空気は、通路46を通って膨張ピット20へ送られて、温度が低下して液体空気となる。
【0025】
タービン16の回転軸は、熱交換器13から送られた空気の熱エネルギにより回転され、発電機18で発電が行われる。タービン16で温度が低下した空気は、通路63を通って圧縮機11の吸い込み口26へ吸い込まれる。圧縮機11が空気を吸い込むことで出口62が負圧となり、タービン16のタービン効率が向上する。タービン効率は、タービン16に与えた熱量(理論仕事)のうち、どれだけの熱量がタービン16の出力に変換されたかを表す。発電機18で生成された電力は、電力供給先40へ送られる。発電システム10の第1実施形態においては、タービン15へ送る水蒸気、及びタービン16へ送る空気を生成するにあたり、燃料を用いずに済む。したがって、燃料を用いることなく発電機17,18で発電することができる。
【0026】
(第2実施形態)
発電システムの第2実施形態は、図2に示されている。発電システム10は、圧縮機64、熱交換器65,66、タービン67,68、発電機69,70を有する。圧縮機64は、吸い込み口71及び吐出口72とを有する空気機械である。また、圧縮機64は、電動モータにより駆動される。吸い込み口71は、通路73へ接続され、吐出口72は、通路74へ接続されている。
【0027】
熱交換器65は、2つの入口75,76及び2つの出口77,78を有する。入口75は出口78へつながり、入口76は出口77へつながっている。入口75は通路47を介して膨張ピット20へ接続され、入口76は通路74を介して圧縮機64へ接続されている。出口77は通路79へ接続され、出口78は通路80へ接続されている。熱交換器65は、圧縮機64から送られた高温・高圧の圧縮空気の熱を、入口75へ送られた液体空気へ伝達して気化させる。熱交換器65で生成された空気は、出口78から通路80へ送られる。熱伝達により温度が低下した圧縮空気は、出口77から通路79へ送られる。
【0028】
タービン67は、タービン15と同様の構成及び機能を有し、かつ、入口81及び出口82を有する。入口81は通路80へ接続され、出口82は通路63へ接続されている。発電機69は、発電機17と同様の構成及び機能を有する。発電機69のロータは、タービン67の回転軸に連結されている。タービン67が、熱交換器65から送られた空気の熱エネルギで回転されると発電機69が発電し、発電機69で発生された電力は、電力供給先40へ供給される。タービン67の出口82から出た空気は、通路63を通って圧縮機11の吸い込み口26へ吸い込まれる。
【0029】
熱交換器66は、2つの入口83,84及び2つの出口85,86を有する。入口83は出口85へつながり、入口84は出口86へつながっている。入口83は通路52へ接続され、入口84は通路79へ接続されている。出口85は通路46へ接続され、出口86は通路87へ接続されている。熱交換器66は、入口83へ送られた高温の空気の熱を、入口84へ送られた空気へ伝達させることにより、水蒸気を発生させる。生成された水蒸気は、出口86から通路87へ送られる。熱伝達により温度が低下した空気は、出口85から通路46へ送られる。なお、通路79には、ポンプ88が設けられていてもよい。ポンプ88は、出口77から出る空気を加圧して入口84へ送る機能を有する。
【0030】
タービン68は、タービン15と同様の構成及び機能を有し、かつ、入口89及び出口90を有する。入口89は通路87へ接続され、出口90は通路73へ接続されている。発電機70は、発電機17と同様の構成及び機能を有する。発電機70のロータは、タービン68の回転軸に連結されている。タービン68の回転軸が熱交換器66から送られる水蒸気の熱エネルギで回転されると発電機70が発電し、発電機70で発生された電力は、電力供給先40へ供給される。タービン68の出口90から出た空気は、通路73を通って圧縮機64の吸い込み口71へ吸い込まれる。
【0031】
(第2実施形態の動作例)
図2に示された発電システム10の動作例は、次の通りである。熱交換器65は、圧縮機64から送られた高温・高圧の圧縮空気の熱を、入口75から供給される液体空気へ伝達して気化させる。熱交換器65で生成された空気は、出口78から通路80へ送られる。熱伝達により温度が低下した圧縮空気は、出口77から通路79へ送られる。タービン67は、熱交換器65から送られた空気で回転され、発電機69が発電した電力は、電力供給先40へ供給される。タービン67から出た空気は、通路63を通って圧縮機11の吸い込み口26へ吸い込まれる。
【0032】
熱交換器66は、入口83へ送られた高温の空気の熱を、入口84へ送られた空気へ伝達させることにより、水蒸気(気体)を発生させる。生成された水蒸気は、タービン68へ送られる。熱伝達により温度が低下した空気は、出口85から通路46へ送られる。タービン68は、タービン68が水蒸気で回転されると、発電機70で発生された電力は、電力供給先40へ供給される。タービン68から出た空気は、圧縮機64の吸い込み口71へ吸い込まれる。発電システム10は、圧縮機11から吐出される圧縮空気の熱を水へ伝達して水蒸気を発生させ、かつ、膨張ピット20から出る液体空気へ熱を伝達して空気を生成することが可能である。したがって、燃料を用いることなく発電機17,70で発電することができる。発電システム10の第2実施形態の他の動作は、発電システム10の第1実施形態の動作と同じである。
【0033】
(第3実施形態)
発電システムの第3実施形態は、図3に示されている。図3に示された圧縮機64は、吸い込み口71から外気を吸い込んで圧縮空気を生成し、圧縮空気を通路74へ吐出する。熱交換器65の出口77は、通路91を介して空気分離器92へ接続されている。熱交換器14は、入口56及び出口58を有していない。熱交換器14は、入口55へ送られる水の熱を外気へ伝達して温度を低下させ、かつ、その水を出口57から排出する。なお、貯水ピット19を、海水などにより冷却することが可能であれば、熱交換器14、ポンプ23を設けずに済む。
【0034】
(第3実施形態の動作例)
図3に示された発電システム10の動作例は、次の通りである。熱交換器65の出口77から出る空気は、空気分離器92へ送られる。空気分離器92は、例えば、深冷分離法により、空気を分離して窒素、酸素、アルゴンガス、二酸化炭素等を回収することができる装置である。空気分離器92で行われる具体的なプロセスは、具体的には、次のようなものである。
【0035】
まず、空気をフィルターから吸込んだ後、圧縮機で約0.5Mpaまで圧縮する。圧縮した空気は約80℃になるため、その空気を、水洗冷却塔で約10℃まで冷却する。その後、低温で固化する水分ならびに二酸化炭素を吸着器で吸着除去し、空気分離器92に導入した空気を、熱交換器で約-200℃まで冷却して液化した後、精留塔に導入して蒸留することにより、各ガスの沸点の差を利用して分離する。
【0036】
発電システム10は、圧縮機11から吐出される圧縮空気の熱を水へ伝達して水蒸気を発生させ、かつ、膨張ピット20から出る液体空気へ熱を伝達して空気を生成することが可能である。タービン15は水蒸気の熱エネルギで回転され、発電機17が発電を行なう。タービン67は空気の熱エネルギで回転され、発電機69が発電を行なう。したがって、燃料を用いることなく発電機17,69で発電することができる。発電システム10の第3実施形態の他の動作は、発電システム10の第2実施形態の動作と同じである。
【0037】
(第4実施形態)
発電システムの第4実施形態は、図4に示されている。発電システム10は、熱交換器94,95,96、タービン97,98、発電機99,100、液体窒素タンク131を有する。熱交換器94は、2つの入口101,102及び2つの出口103,104を有する。入口101は出口103へつながり、入口102は出口104へつながっている。入口101は通路47へ接続され、入口102は通路105へ接続されている。出口103は通路106へ接続され、出口104は通路107へ接続されている。
【0038】
熱交換器94は、入口102へ送られた気体の熱を、入口101へ送られる液体空気へ伝達して気化させる。熱交換器94で生成された空気は、出口103から通路106へ送られる。熱交換器94において、熱伝達により温度が低下した空気は、出口104から通路107へ送られる。なお、発電システム10が稼働を開始した初期段階では、通路105を通る空気の温度は上昇しておらず、外気の熱が通路106を通る液体空気へ伝達されて気化する。外気は、常温、例えば、15℃~30℃の範囲内である。
【0039】
液体窒素タンク131は、-196℃の液体窒素を、非密閉状態で貯留するタンクである。液体窒素タンク131は、入口108及び出口109を有し、入口108は、通路107へ接続されている。出口109から液体窒素を吸い込み、かつ、加圧して通路110へ吐出するポンプ111が設けられている。
【0040】
熱交換器95は、2つの入口112,113及び2つの出口114,115を有する。入口112は出口114へつながり、入口113は出口115へつながっている。入口112は通路106へ接続され、入口113は通路110へ接続されている。出口114は通路116へ接続され、出口115は通路117へ接続されている。熱交換器95は、入口112へ送られた空気の熱を、入口113へ送られる液体窒素へ伝達する。液体窒素が熱が伝達されて温度が上昇し、かつ、膨張して気化する。気化された窒素ガスは、出口115から通路117へ送られる。熱交換器95で空気の温度が低下して生成された液体空気は、出口114から通路120へ送られる。
【0041】
タービン97は、タービン15と同様の構成及び機能を有し、かつ、入口118及び出口119を有する。入口118は通路117へ接続され、出口119は通路105へ接続されている。発電機99は、発電機17と同様の構成及び機能を有する。発電機99のロータは、タービン97の回転軸に連結されている。タービン97が窒素ガスの熱エネルギ回転されると発電機99が発電し、発電機99で発生された電力は、電力供給先40へ供給される。タービン97の出口119から出た窒素ガスは、通路105を通って熱交換器94の入口102へ送られる。窒素ガスの熱は、入口101へ送られる液体空気へ伝達されて気化し、通路106へ送られる。熱交換器94で温度が低下した窒素ガスは、出口104から出て通路107を通って液体窒素タンク131へ戻る。
【0042】
熱交換器96は、2つの入口120,121及び2つの出口122,123を有する。入口120は出口122へつながり、入口121は出口123へつながっている。入口120は通路116へ接続され、入口121は通路52へ接続されている。出口122は通路124へ接続され、出口123は通路125を介して、膨張ピット20の入口44へ接続されている。熱交換器96は、入口121へ送られた空気の熱を、入口120へ送られた空気へ伝達させることにより、空気の温度を上昇させる。熱交換器96で温度が上昇された空気が、出口122から通路124へ送られる。熱交換器96において、熱伝達により温度が低下した空気は、出口123から通路125を通って膨張ピット20へ送られて液体空気となる。
【0043】
タービン98は、タービン15と同様の構成及び機能を有し、かつ、入口126及び出口127を有する。入口126は通路124へ接続され、出口127は通路63を介して圧縮機11へ接続されている。発電機100は、発電機17と同様の構成及び機能を有する。発電機100のロータは、タービン98の回転軸に連結されている。タービン98が空気の熱エネルギで回転されると発電機100が発電し、発電機100で発生された電力は、電力供給先40へ供給される。タービン98の出口127から出た空気は、通路63を通って圧縮機11の吸い込み口26へ吸い込まれる。
【0044】
(第4実施形態の動作例)
図4に示す発電システム10は、圧縮機11から吐出される圧縮空気の熱を水へ伝達して水蒸気を発生させ、かつ、水蒸気をタービン15へ送り、発電機17で発電する。したがって、燃料を用いることなく発電機17で発電することができる。また、タービン97へ窒素ガスを送る過程、タービン98へ空気を送る過程において、燃料は用いられていない。したがって、発電システム10は、燃料を用いることなく発電機99,100で発電することができる。
【0045】
なお、図4の発電システム10は、通路29と、熱交換器94の入口102とを接続する通路128を備えていてもよい。すると、圧縮機11から吐出される高温・高圧の圧縮空気の一部は、通路128を通って熱交換器94の入口102へ送られる。このため、発電システム10が稼働を開始した初期段階、または、タービン97から熱交換器94へ送られる空気の熱量が不十分である場合において、圧縮空気の熱が、熱交換器94の入口101へ送られる液体空気へ伝達されて、液体空気の温度が上昇する。したがって、熱交換器95から通路117へ送られる窒素ガスを生成し易くなる。
【0046】
また、通路128は、熱交換器95の入口112へ接続されていてもよい。すると、圧縮機11から吐出される高温・高圧の圧縮空気の一部は、通路128を通って熱交換器95の入口112へ送られる。このため、発電システム10が稼働を開始した初期段階、または、タービン97から熱交換器94へ送られる空気の熱量が不十分である場合において、圧縮空気の熱が、熱交換器95の入口112へ送られる空気へ伝達されて、空気の温度が上昇する。したがって、熱交換器95から通路117へ送られる窒素ガスを生成し易くなる。
【0047】
(第5実施形態)
発電システムの第5実施形態は、図5に示されている。発電システム10は、熱交換器95の出口114に通路129を介して空気分離器92が接続されている。また、熱交換器14の入口55へ送られた水の熱が大気中へ放散され、水の温度が低下する。
【0048】
(第5実施形態の動作例)
図5に示す発電システム10において、熱交換器95の出口114から出る液体空気は、通路129を通って空気分離器92へ送られる。図5に示す発電システム10においても、第1実施形態と同様に、燃料を用いることなく発電機17で発電することができる。また、図5に示す発電システム10は、第4実施形態と同様に、タービン97へ送られる窒素ガスを生成する過程で、燃料は用いられていない。したがって、燃料を用いることなく発電機99で発電することができる。さらに、熱交換器95から出た液体空気は、通路129を通って空気分離器92へ送られる。したがって、空気分離器92で空気が分離され、窒素、酸素、アルゴンガス、二酸化炭素等を回収することができる。
【0049】
(その他)
各実施形態において、熱交換器95で液体空気とならない空気は、個体の二酸化炭素として回収することも可能である。さらに、各実施形態に開示されている各通路は、金属製のパイプ、装置のハウジングに設けられた孔、機器のハウジングに設けられた孔等により構成される。
【0050】
本実施形態で説明した事項の技術的意味の一例は、次の通りである。発電システム10は、発電システムの一例である。圧縮機11は、第1圧縮機の一例である。圧縮機64は、第2圧縮機の一例である。熱交換器12は、第1熱交換器の一例である。熱交換器13,65は、第2熱交換器の一例である。タービン15は、第1タービンの一例である。タービン16は、第2タービンの一例である。タービン97は、第3タービンの一例である。発電機17は、第1発電機の一例である。発電機18は、第2発電機の一例である。発電機99は、第3発電機の一例である。膨張ピット20は、液体空気生成器の一例である。空気分離器92は、空気分離器の一例である。液体窒素タンク131は、液体窒素タンクの一例である。熱交換器95は、第3熱交換器の一例である。貯水ピット19は、貯水ピットの一例である。通路46は、第1通路の一例である。通路63は、第2通路の一例である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本開示は、タービンに接続された発電機で発電する発電システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…発電システム、11,64…圧縮機、12,13,65,95…熱交換器、15,16,97…タービン、17,18,99…発電機、19…貯水ピット、20…膨張ピット、46,63…通路、92…空気分離器、131…液体窒素タンク
【要約】
【課題】燃料を用いることなく発電機で発電することの可能な発電システムを提供する。
【解決手段】圧縮空気を吐出する圧縮機11と、圧縮空気の熱を水へ伝達して水蒸気を発生させる熱交換器12と、水蒸気の熱エネルギを回転エネルギに変換するタービン15と、タービン15の回転エネルギを電気エネルギに変換する発電機17と、を備えた発電システム10を構成した。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5