(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】プログラムの提供システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20240726BHJP
【FI】
G16H20/00
(21)【出願番号】P 2024047394
(22)【出願日】2024-03-24
【審査請求日】2024-03-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】724002759
【氏名又は名称】キラル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下川 千草
(72)【発明者】
【氏名】中島 栄彦
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7344423(JP,B1)
【文献】特開2003-108674(JP,A)
【文献】特許第7391443(JP,B1)
【文献】特開2017-213278(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0402642(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H10/00-80/00
G06Q50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの情報処理端末と、
制御部と複数のプログラムを記憶する記憶部とを有するサーバと、を含むシステムであって、
前記制御部は、
ユーザの情報処理端末から、前記ユーザの情報処理端末の利用状況を取得し、もしくは、前記ユーザの情報処理端末から、心理療法的又は性格に関する質問項目に対するユーザの回答と情報処理端末の利用状況とを取得し、取得されたこれらの情報から各々前記ユーザの前記複数のプログラムに対する適性に関する情報と前記ユーザの情報処理端末に対する適性に関する情報とを求め、前記複数のプログラムの中から、
求められたこれらの情報に基づいて、プログラムを選択して
決定し、前記情報処理端末に
前記情報処理端末が決定された前記プログラムを端末上でユーザへ提供するように指示するシステム。
【請求項2】
制御部と、複数のプログラムを記憶する記憶部を有する情報処理端末であって、
前記制御部は、
前記ユーザの情報処理端末の記憶部から利用状況を取得し、もしくは、前記ユーザの情報処理端末の入力装置を介して取得した、心理療法的又は性格に関する質問項目に対するユーザの回答と情報処理端末の利用状況とを取得し、取得されたこれらの情報から各々前記ユーザの前記複数のプログラムに対する適性に関する情報と前記ユーザの情報処理端末に対する適性に関する情報とを求め、前記複数のプログラムの中から、
求められたこれらの情報に基づいて、プログラムを選択して決定し、
決定された前記プログラムを端末上でユーザへ提供する情報処理端末。
【請求項3】
前記システムはさらに前記プログラムの選択時のユーザの状態に関する情報を取得し、
この追加の情報をさらに用いて、前記プログラムを選択することを特徴とする請求項1のシステム。
【請求項4】
前記システムは前記ユーザの前記プログラムの実施状況に関する情報および/または前記プログラムの実施による効果に関する情報を取得することを特徴とする請求項1のシステム。
【請求項5】
複数のプログラムからユーザに適合するプログラムを提供するシステムに使われるデータベース
システムであって、
前記データベース
システムが、
複数のプログラムを記憶する記憶部を有するサーバに含まれ、
前記記憶部がユーザから取得された心理療法的又は性格に関する質問項目に対する前記ユーザの回答またはユーザの情報処理端末の利用状況から求められた前記ユーザの前記複数のプログラムに対する適性に関する情報、前記ユーザの情報処理端末の利用状況から求められた前記ユーザの情報処理端末に対する適性に関する情報、および、前記ユーザの
前記プログラムの実施状況に関する情報または前記ユーザが
前記プログラムを実施して得られた効果に関する情報と、
プログラムの属性と、をセットとして記憶したデータベースシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プログラムの提供システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの情報処理端末が進化し、ユーザの携帯するスマートフォンで多くの機能が実施されるようになってきた。また、典型的には継続的にユーザが利用することが求められるプログラム、特には心理療法を実施するための治療用のセルフケアカウンセリングモジュールなどが提供されるようになってきた。そして、継続的な利用が求められるプログラム等をユーザの情報処理端末に提供したのちに、ユーザが継続的にそのプログラムを情報処理端末を使って利用を続けるようにするための工夫が着目されている。
【0003】
特許文献1には、患者の服薬状況を記録するためのプログラムに関して継続的に記録するためにアラートを発する技術が記載されている。特許文献2には、対象者の疾患が器質性か心因性かを判断し、心因性の場合に治療用のモジュールを提供する技術が記載されている。特許文献3には、ワークの利用実績に応じてワークを切り替える技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-119460広報
【文献】特許7123294
【文献】特開2023-047415
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明では、特定のプログラムを提供し、そのプログラムの継続率を向上させるためにアラートを発して、ユーザの離脱を防ぐ技術を開示している。また特許文献2では診断結果に応じて画一的な出力を提供する技術を開示するにすぎない。しかしながら、プログラムの種類によって、対象ユーザに対して適性がない場合がある、例えば、認知行動療法に基づくカウンセリングなどでは、うつ病の認知行動療法が薬物療法と同程度の有効性(抗うつ薬の有効率は60%程度)が示されている、つまり有効性を示さない場合があり得る、また、仮にユーザがプログラムに適性を持っていた場合でも媒体としてのユーザの情報処理端末の利用状況などの特性によって適性を示さない場合がある。つまり、発明者らは、プログラムを提供するにあたり、従来のように提供されたプログラムの継続性を向上させるだけでは十分ではなく、ユーザが継続しやすいプログラムを提供しなければユーザのプログラムの継続的利用は図れない。また、特許文献3のようにいったんワークを提供してからその実施状況に応じてワークを切り替える場合、ユーザからしてみると最初に提供されたもので相性が悪かったと感じた場合はワークが変更になっても再度挑戦しようという気にならない。とくに治療用アプリなどの場合はまだその効果が広く知られていないので顕著である。本願はこれらの課題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明1)
制御部と、ユーザの情報処理端末と、所定のプログラムを記憶する記憶部とを有し、前記制御部が、前記ユーザの情報処理端末に前記記憶部に記憶された前記所定のプログラムを提供するように制御するシステムであって、
前記制御部は、
前記ユーザの前記プログラムに対する適性と前記ユーザの情報処理端末に対する適性に関する情報を取得し、
前記情報に応じて、前記所定のプログラムを選択して、前記記憶部から前記情報処理端末に提供することを特徴とするシステム。
(発明2)
制御部と、ユーザの情報処理端末と、所定のメンタルヘルスケア用プログラムを記憶する記憶部とを有し、前記制御部が、前記ユーザの情報処理端末に前記記憶部に記憶された前記プログラムを提供するように制御するシステムであって、
前記制御部は、
前記ユーザの前記プログラムに対する適性と前記ユーザの情報処理端末に対する適性に関する情報を取得し、
前記情報に応じて、前記所定のプログラムを選択して、前記記憶部から前記情報処理端末に提供することを特徴とするシステム。
(発明3)
前記システムはさらに前記プログラムの選択時のユーザの状態に関する情報を取得し、その情報に基づいて、前記プログラムを選択することを特徴とする発明1または発明2のシステム。
(発明4)
前記システムは前記ユーザの前記プログラムの実施状況に関する情報および/または前記プログラムの実施による効果に関する情報を取得することを特徴とする請求項1または請求項2のシステム。
(発明5)
複数のプログラムからユーザにあったプログラムを提供するシステムに使われるデータベースであって、
前記データベースが、少なくとも、あるユーザに提供されたプログラムと、前記ユーザのそのアプリへの適性評価情報と、前記ユーザのそのアプリの実施状況に関する情報または前記ユーザがそのプログラムを実施して得られた効果に関する情報をセットとして含むデータベース。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシステムおよび方法によれば、ユーザが継続的に提供するプログラムを実行するようになり、プログラムの意図する効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明で用いるアプリとアプリの属性の対応例を示す図である。
【
図3】本発明のヘルスケアアプリの動作フローと入力例を示す図である。
【
図4】本発明の提供プログラムの選択フロー(アルゴリズム)を示した図である。
【
図5】本発明で用いるデータベースの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、プログラムを提供するにあたり、ユーザの提供プログラムへの適性およびユーザが利用する媒体としての情報処理端末の利用状況などの適性を考慮して提供するプログラム自体を選択、修正、変更、することが必要であるという知見に基づく。
(本発明のヘルスケアシステムの構成)
本発明の一実施形態として、PC、ノートパソコンや、典型的にはスマホやタブレットなどの利用者の情報処理端末にインストールされたプログラムを挙げる。情報処理端末110は、ヘルスケアプログラムを制御する制御装置101、記憶装置102、液晶モニタなどの表示装置103、タッチパネルやキーボードなどの入力装置104、外部ネットワークとの通信用の通信装置105、バイタルデータを測定する測定装置106等を備える。また、情報処理端末110とインターネットや無線接続あるいは優先接続などのネットワークであるネット120を介して、腕時計型、イヤホン型、バンド型、身体貼付型などのウェアラブル端末や、トイレなどに設置された血糖値測定装置、スマートミラーに搭載された撮像装置などの据え置き型測定器である測定装置116を情報処理端末に内蔵された測定装置106に代えて用いても良い。また、本実施例では情報処理端末にプログラムや必要なデータ等を情報処理端末110に収容してスタンドアローンで動作するシステムを例に挙げているが、ネット120を介してサーバ120と接続し、サーバ120と情報処理端末110のそれぞれにプログラムやデータを分散、あるいは、サーバ120にプログラムやデータを集約し、情報処理端末は単なる入出力装置として利用することも可能である。
【0010】
測定装置106の例としてはバイタルデータを測定できるデバイスが利用可能である。バイタルデータの例として以下に歩行速度と心拍数、通話の測定を例に挙げるがこれに限定されるものではなく、体温上昇、皮膚の電気抵抗の変化、血圧変化、血流量変化、睡眠時間、体重、歩数、活動量やその他の当業者に周知の様々なバイタルデータが本発明で利用できることは言うまでもない。また、バイタルデータの測定として、測定装置106が対象者が意識することなく測定可能なバイタルデータ、歩行速度や、対話の分析、トイレ利用時の血糖値測定、洗面所のスマートミラー内蔵撮像素子による心拍測定などのパッシブなデータであると特に都合が良い。さらに常時駆動として無意識状態の測定ができると都合がよい。
【0011】
(ユーザのプログラムへの適性)
ユーザへ提供するプログラムの一例として認知行動療法を実施するプログラムを例示する。プログラムとしてはこういった心理療法を実施するものだけでなく、治療用アプリ、ヘルケアプログラム、セルフケアプログラム、ゲームや教育プログラムやコンテンツなどユーザの適性が関わるようなものが含まれる。また、ヘルスケア用のシステムの場合は、オンラインの診療等の医師による診療が含まれる場合もある。この認知行動療法のプログラムはたとえば、うつ病の患者に提供するプログラムである。プログラムは典型的には、患者の状況をアセスメントするための指標(CPRG-D、CSDD、IDS、HAM-D、NDDS、PHQ-9などのうつ病の症状(GAD-7のような不安障害やその他の疾患の評価指標も用途に応じて利用できる)、重症度を測定する指標)や患者の状態や患者を取り巻く状況などに基づいた問診をユーザの情報処理端末を介してユーザに対して行い、その問診結果をシステムのサーバで分析し、分析結果に基づいて、患者の症状を改善するための心理療法(認知再構成法、エクスポージャー法、曝露反応妨害法、行動活性化療法、社会技能訓練(SST)、問題解決療法、リラクゼーション法、アサーショントレーニング、アンガーマネジメント、系統的脱感作、バイオフィードバック、スキーマ療法、弁証法的行動療法等)を実施するための、動画コンテンツ、音声コンテンツ、患者とのチャットボット形式等による対話などのワークを提供するものであり、単独あるいは複数の組み合わせのプログラムである。
また、認知行動療法のような心理療法については向かない人と向かない状態の人の2種類があることが知られている。つまりユーザのプログラムへの適性と、ユーザのプログラムの実施時点での状態との二つのパラメータがありえる。
【0012】
(認知行動療法のプログラムへの適性について)
(1)認知行動療法では今まで体験した苦痛な出来事や負の感情に改めて向き合うことが必要なため、苦い体験や不安感に向き合えない人、(2)認知行動療法は、治療者との面談で話をするだけでなく、課題を明確にして日常生活の中で実際に試していくことが求められるため、治療に対して受け身な人、(3)認知行動療法では、治療者である医師やカウンセラー(本実施例ではシステムとの対話など)と一緒に自分の考えや行動、ストレスについて話し合い、新しく生まれた価値観に沿ったチャレンジをすることは治療において大切(本実施例の場合は情報処理端末との対話等で代用)ですが、中には議論が目的になってしまい、治療を進めていく過程で生まれた新しい認知や行動について揚げ足をとったり、最初から「出来ない」と決めつけたりして新しい行動や挑戦が出来なくなってしまう方、については認知行動療法の効果が期待できないのでこれらの要因をまず確認する必要がある。
次に、ユーザの状態とは、(4)現在精神が不安定で、調子が悪い、あるいは、(5)今は自分を変えたくないと思っているなどがその要因であり、これらを確認する必要がある。
(1)については、問診項目として、「過去のつらい経験に向き合うことができるかどうか」といった質問項目を設け、システムからユーザの情報処理端末を介してユーザの回答を促し、ユーザの回答を例えば10点法で取得し、7点以上(向き合うことができない傾向が強い場合)に「不適」というように評価することができる、(2)については、問診項目として、「アプリで提供されるプログラムに従って、積極的にプログラムを実践できますか」のような質問項目を設け、(1)同様に、プログラムを実践できないと評価された場合に「不適」と評価することができる、(3)については、「あなたは、本アプリの教示を受け入れることができますか?」のような質問項目を設け、(1)同様に、アプリの教示を受け入れることができないと評価された場合に「不適」と評価することができる。
【0013】
評価の仕方はこれに限られず、簡単なテストを行って評価することもできる。たとえば、心理療法の適性評価として、シロクマ実験を実施することができる。シロクマ実験をアプリで実践する方法は、記憶部に記憶されたシロクマ実験のワークを制御部が実施することで実現される。まず、制御部は、ワークの手順に従って、ユーザの情報処理端末の表示部に「白くまのことを1分間絶対に考えないでください」と表示させ、ユーザがそのワークを実施するようにする。そして、1分経過後に、表示部に、「1.シロクマのことを考えてしまった、2.シロクマのことを考えなかった、3.ワークを実施しなかった」の選択肢を表示させ、ユーザがいずれかを選択するように促す。ユーザの入力結果を制御部に戻し、制御部は所定のルーチンに従って適正評価を行う。適正評価は適宜設計して行われるが、一例として、1、2を選択した場合は適性あり、3を選択した場合は適性なし、あるいは、1分経過する前に入力された、あるいは入力待機時間が1分を超えても入力がなされなかったという場合にやはり適性なしと評価するといったことが考えられる。心理療法への適性は他の周知の方法を用いることもできる。
【0014】
また、心理療法に限らず、提供されるプログラムへの適性は性格判断のような手法を用いても行うことができる。たとえば、BIG5理論を用いた場合、「外向性(社交的、活発な人柄、自己主張の強さ、積極性、刺激を求める)、情緒安定性(気持ちの安定性、不安の感じにくさ、ストレスへの強さ、おおらかさ)、開放性(好奇心の強さ、知性、新しい情報への興味、芸術性、冒険心)、誠実性(勤勉さ、責任感、信頼されやすい人柄、裏表のなさ、約束を守る)、調和性(協調性、協力的、同調的、思いやり、気遣いができる、親切心)」の5つの特性が評価できる。また、このBIG5理論によりプログラムへの適性を求める場合には、BIG5理論に基づく質問枝を記憶部に記憶しておき、制御部は適正評価をリクエストされると、この質問枝をユーザの情報処理端末の表示部に表示させるように制御し、ユーザの回答を得て、BIG5理論に基づく所定のルーチンで分析を行い、上記特性を評価する(例えば5段階)。事前に上記特性と提供プログラムの適性への評価を行っておき、その対応関係を記憶部に記憶しておく。そして、特性の評価結果と対応関係を比較し、適正を評価する。たとえば、提供プログラムを継続的に実施するには、開放性の評価値、誠実性の評価値および調和性の評価値のいずれもが4以上であることが必要とされていた場合は、対象者の特性の評価結果がこれを満たすかどうかで適性を判断することができる。プログラムの適正評価法はこれに限られず、たとえば、スマートフォンの利用履歴等から同様の特性を評価し(例えば、特開2022-189376性格予測モデルなどを用いても良い)、用いるといったことも可能で、それ以外の既知の評価法、今後開発される評価法を利用することもできる。特性についても上記特性だけでなく他の特性とプログラムとユーザの親和性あるいは継続性との相関があるものがあれば用いることができる。単純に、同種のアプリの過去の継続率などを評価するといったことでもよい。こういった、ユーザの過去の履歴などを利用したり、パッシブにデータを取れるものはユーザに新たな作業を求めることがないのでユーザの利便性を向上することができる。プログラムの適性はその他、周知の方法で代替えできる。たとえば、提供するプログラムと同種のプログラムの適性などを利用することができる。BIG5だけでなく、類似の特性分析手法もできる、例としてはエニアグラム、MBTIなど周知のものが利用できる。
【0015】
次にユーザーの状態について、(4)現在精神が不安定で、調子が悪い、あるいは、(5)今は自分を変えたくないと思っているなどがその要因であり、これらを確認する必要がある。
(4)についても(1)-(3)のように単純な質問枝で主観的な意見として情報を収集して判断しても良いが、例えば、簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)を用いることができる。QIDS-Jはその評価点によって、0-5点:正常、6-10点:軽度、11―15点:中程度、16-20点:重度、21-27点:きわめて重度と評価できる。この質問枝を記憶部に記憶し、制御部からのリクエストに応じて読み出し、ユーザの情報処理端末に提供し、ユーザが情報処理端末の表示部の質問枝に回答し、その回答を情報処理端末の入力装置を介して取得し、入力結果を分析して点数付けし、症状の程度を評価することができる。ここで、たとえば、21点以上の場合は重症として治療用アプリによる治療に適性ではないと判断する。
(5)については、ユーザに対して(1)―(3)同様の簡単な質問枝で例えば、「あなたは現在の抑うつ状態を本治療プログラムで改善したいですか?」といった質問をシステムから行い、ユーザの情報処理端末を介して結果(1.改善したい、2.改善したくない)を入力し、ユーザが改善したくないを選択した場合、システムは治療プログラムを不適と判断することができる。
【0016】
(ユーザが利用する媒体としての情報処理端末の利用状況、ユーザの情報処理端末との親和性、情報処理端末との適性)
ユーザーの情報処理端末の利用状況つまりユーザの情報処理端末への適応性は、たとえばユーザが該当のプログラムを所有するスマートフォンで行う場合は、過去のスマートフォンの利用状況の履歴を確認することで実施することができる。なお、プログラムを職場のPCなどで実施する場合にはその利用履歴などが確認できる。
利用履歴の確認方法の一例としては、本システムの制御プログラムを情報処理端末に常駐させ、過去1か月のアプリの利用状況を記憶部に記憶させる。利用状況としては、例えば、すべてのアプリの実際の利用時間、各アプリの積算利用時間(全体に対する割合など)を評価する。また、スマートフォンの利用状況として、(1)あまり利用しない人、(2)受け身型、(3)相互型、などに分類する。分類はさらに細分化しても良い。
ここで判断の例として、3者の評価例を示す。Aさんは、積算利用時間60分、動画視聴20%、チャットアプリ80%、Bさんは、積算利用時間60時間、動画視聴90%、チャットアプリ10%、Cさんは、積算利用時間30時間、動画視聴20%、チャットアプリ70%、文書作成10%だったとする。まず、提供アプリの想定される1日当たりの利用時間が5分だったとすると、一日5分以下の利用者は(1)のあまり利用しない人として不適とされる。次にBさん、Cさんの利用履歴について、制御部は記憶部に記憶されたアプリとアプリの属性の対応リストと各者の利用状況を比較し、各者の利用タイプを分析する。このリストは分析のタイプによって適宜設定できる。このリストの一例が
図2に示されている。ここで、Bさんについては受信型90%、双方向10%で、種別Aが多いのでAタイプ、つまり受け身型と評価され、Cさんについては受信型20%、双方向70%、送信型10%、種別Bが多いので相互型と評価される。結果として、Aさんは適性なし、Bさん、Cさんは適性あり、あるいはBさん、Cさんについてはさらに細分化して、Bさんはタイプ(2)、Cさんはタイプ(3)のように判断しても良い。
ただし、情報処理端末への適性の評価方法はこれに限られず、利用状況を問う質問枝を用いてユーザの主観的な評価の入力を求めてその評価結果を用いても良いし、その他の周知の方法を用いても良い。たとえば、ユーザの情報処理端末の使用状況と対象となるプログラムと同種のプログラムへの適性を教師データとして機械学習させておき、プログラムを提供しようとするユーザ情報をこの学習データに照らし合わせてAIで適性を判断するようにしても良い。
【0017】
(メンタルヘルスケアアプリ)
次に
図3(a)のフローを参照しながら、メンタルヘルスケアアプリの例を示す。本メンタルヘルスケアアプリは、メンタルヘルスのセルフケア/維持/改善/治療用の複数のワークが意味のある順序で組み合わせられたプログラムとして提供される、提供プログラムであり、記憶装置102に記憶されている。この提供プログラムは記憶装置102に記憶された制御プログラムによって提供されるものである。提供プログラムは、動画コンテンツからなる心理教育(201)、チャットボットや、動画コンテンツ、音声コンテンツからなる漸進的筋弛緩法、腹式呼吸法、視覚イメージ法などのリラクゼーション(202)のワーク、行動活性化などのストレスマネジメント(203)のワーク、認知再構成法(204)、マインドフルネス瞑想などのマインドフルネス(205)のワークが含まれる。これらの心理教育やワークが治療効果をもたらすための所定の順序(例えば、201、202、203、204、205の順)に従って、スマートフォン等の情報処理端末110の入力装置104を介して必要なやり取りを行い、表示装置103上でアイコン形式で表示され、タッチパネル等の入力装置(
図3(b))で選択されることによって、ユーザに提供される。また提供方法はこれに限られず、音声出力装置を介してユーザに提供されるといった他の形式で提供されうる。ユーザはこれらの教育やワークを実施することによってメンタルケアを行うことができる。ここで、ヘルスケアアプリでの通常コンテンツ型とは各ワークの提供形式が動画やチャットボットなど治療効果を考慮して最適化した形式で提供されるもの、動画コンテンツ型とはワークを可能な限り動画として提供するように構成されたものを指す。
【0018】
(実施例1)
本実施例ではメンタルヘルスケアを対象としたメンタルヘルスケアシステムの一例を以下に、
図4を参照しながら説明する。本実施例で用いられるメンタルヘルスケアシステム(制御プログラムを含む)は情報処理端末110の記憶装置102に記憶され、記憶装置102から読み出された制御プログラムが制御装置101で制御され、表示装置103や入力装置104、測定装置106,116等と連携しながら実行される(本実施例では前述の提供プログラムを提供するメンタルヘルスケアシステムを例とする)。本実施例では対象者の情報処理端末110としてスマートフォンが用いられている。本メンタルヘルスケアシステムの制御プログラムが起動される(401)と、まず、(402)記憶装置102に記憶されたこころとからだの量的指標であるPHQ-9質問枝を読み出す。制御プログラムは質問枝を情報処理端末110に転送し、表示装置103に表示させる。ユーザは表示装置103に表示された質問に対して、表示に従って入力装置104を介して4点法で回答する(表示されている0-4の数字のうち該当する点数を選択)。情報処理端末110は入力された数値を制御装置に返し、制御装置101は各質問に対して入力された数値を合計し、合計点を算出する。この合計点が、0〜4点はなし、5〜9点は軽度、10〜14点は中等度、15〜19点は中等度〜重度、20〜27点は重度の症状レベルであると評価する。ここで、20-27点の場合はアプリによるカウンセリングは不適としてオンライン診療や実際の医療機関の受診を促す。つぎに、(403)BIG5の質問項目をフロー402と同様に実施する。そして、開放性、調和性が所定値より高く、情緒安定性が所定値より低くない場合、アプリによるカウンセリングに適性ありと判断する。適性なしとなったものについては、オンライン診療や医療機関の受診を推奨する。最後に、(404)前述の(ユーザが利用する媒体としての情報処理端末の利用状況)にしたがって、対象者の情報処理端末への適性に従って、タイプ(2)の場合は動画中心の動画コンテンツ型を提供するプログラムを、タイプ(3)の場合は通常コンテンツ型を提供するプログラムを提供する。また、タイプ(1)の場合は、オンライン診療や実際の医療機関の受診を促す。プログラムの提供後に実施状況や、治療効果を周知の方法で測定し、プログラムの脱落率や治療効果を評価すると都合がよい。上述のように提供プログラムは所定のアルゴリズムによってなされ、そのアルゴリズムや基準値は記憶装置に記憶されている。なお、所定のアルゴリズムに代えて、各適性評価の結果からAIによって提供プログラムを選択するようにしてもよい。さらに、提供プログラムの適性の評価にはユーザの国籍、居住地、職業、学歴などの社会的要因、性別や年齢層などの生物的要因の情報を加えて、タイプを判断してもよい。また、提供プログラムについては、UI/ UXもこれらの特性に応じて、例えば、高齢者の男性で情緒安定性が高いタイプは落ち着いた配色できっちりした印象を与えるもの、若い女性で調和性が高い女性は明るくポップな印象を与えるものなど、変化させてもよい。これらの提案については一つの提案に基づいて進めるもの、あるいは複数の提案からユーザーが選べるようにするなどの変形も可能である。
【0019】
(実施例2)
本実施例では教育コンテンツを提供するものである。基本的な制御プログラムのフローは前述と同様に、システムの各部が連携されて実施される。本教育プログラムでは、例えば数学の問題の解法を講師が解説する複数の動画からなる動画コンテンツ型と、チャットボット形式で回答を導くワークと動画からなる通常コンテンツ型などが挙げられる。本実施例では,過去のスマホの利用状況からユーザの特性(BIG5と相関)を評価し、調和性が所定値より高いことが確認された場合、さらに前述の(ユーザが利用する媒体としての情報処理端末の利用状況)の評価から、提供プログラムとして動画コンテンツ型、通常コンテンツ型を提供プログラムとして選択する。またここで、状態診断として、ユーザのアプリの実施状態として、ユーザのアプリの利用時間の想定の質問枝を作成し、ユーザに「1.家庭での勉強時間、2.通学中」の情報処理端末を介して回答を促す。これらは制御プログラムを介して行われ、通学中が想定されている場合は、前記ルーチンでは通常コンテンツが選択されていた場合でも動画コンテンツを提供プログラムとして選択するようにしても良い。これは通学中は双方向の作業がしにくいという状況による。上述の実施例と同様にプログラムの提供後に実施状況や、学習効果を周知の方法で測定し、プログラムの脱落率や学習効果を評価すると都合がよい。
【0020】
(データベース)
本発明を基にしたデータベースの一例を
図5に示した。データベースは例えば
図1のサーバ120に含まれる。
図5ではシステムに参加してプログラムの提供を受け、実行している4者のデータが記録され、Aは二つのプログラムの提供を受けていること、B、C、Dは1つのプログラムの提供を受け、Dについては現在実施中のために、脱落率、効果は現時点では記録されていないが、プログラムが完了し、結果の評価がなされると記録される。データベースにはユーザとプログラム(属性)、アプリ適性、情報処理端末適性、状態適性、脱落率、効果などが記憶されている。プログラム(属性)とは特定のユーザに提供されたプログラムとその属性、アプリ適性はそのユーザの提供されたアプリ適性を示すもので、たとえば、BIG5でそのアプリへの適性が評価される特性を100%として時のそのユーザの特性の評価値の割合、複数の特性などがある場合は、それぞれの割合、合計値やパターンなどを記憶してもよい。端末適性はそのユーザが利用する情報処理端末とユーザの親和性、状態適性とはユーザが提供時にそのプログラムを実施することの準備ができているかなど、上述の実施例で評価された適性が記入される。次に、脱落率は提供されたプログラムをユーザがどのくらい実施したか、ここでは最後まで実施した場合を0%、半分で脱落した場合を50%としている。最後に提供されたプログラムの効果(評価)を記憶している。これは、ゲームの場合はユーザの満足度、教育向けであれば平均点の向上、ヘルスケアアプリであれば治療効果を指し、主観的指標や客観的指標や測定を用いることが可能である。また、各評価値は定性的、あるいは定量的な評価も用いることができる。これらのデータベースの記録を基にして提供プログラムを選択するための各評価値の閾値を変更することができる。また、これらのデータベースの記録を教師データとして、機械学習し、AIによって、提供するプログラムを選択するようにしてもよい。また、データベースの記録項目としてはこれに限られるものではなく、少なくとも提供されるプログラム(プログラムとはそのプログラム属性だけの場合を含む)と、そのユーザのそのプログラムへの適性と実施状況に関する情報(脱落率など)またはそのユーザがプログラムを実施して得られた効果の情報を含むのが好ましい。
【0021】
ユーザのプログラムに対する適性とユーザの情報処理端末に対する適性あるいはユーザのプログラムを受けられるか同課に関する現在の状態に関する情報はそれぞれ別途入手してもよいし、いずれか、あるいはすべてまとめてデータベースやユーザから入手してもよい。
【0022】
本願の実施例では文字による質問枝への回答を促す構成を例示してきたが、質問枝に対する回答の信ぴょう性を確認するための既知の技術を用いた質問枝とし、信ぴょう性がない場合には再度回答を促す、信ぴょう性がない場合には適性がないというように判断して処理を進めることができる。また、文字による質問枝に代えて、音声による質問に対してユーザの回答を促すように構成しても良い。また回答を音声とした場合、その音声成分を分析してその回答の信ぴょう性を判断する技術を用いて適性等の判断を修正しても良い。
【0023】
プログラムの適性はその他、周知の方法で代替えできる。たとえば、提供するプログラムと同種のプログラムを使用した実施、継続状況などを利用することができる。
【符号の説明】
【0024】
100 ヘルスケアシステム
101 制御装置
102 記憶装置
103 表示装置
104 入力装置
105 通信装置
106 測定装置
110 ユーザの情報処理端末
116 測定装置
120 ネットワーク
【要約】
【課題】プログラムの提供システムおよびその方法を提供する。
【解決手段】
制御部と、ユーザの情報処理端末と、所定のプログラムを記憶する記憶部とを有し、前記制御部が、前記ユーザの情報処理端末に前記記憶部に記憶された前記所定のプログラムを提供するように制御するシステムであって、
前記制御部は、
前記ユーザの前記プログラムに対する適性と前記ユーザの情報処理端末に対する適性に関する情報を取得し、
前記情報に応じて、前記所定のプログラムを選択して、前記記憶部から前記情報処理端末に提供することを特徴とするシステム。
【選択図】
図4