(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】無線システム
(51)【国際特許分類】
G01S 11/06 20060101AFI20240726BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20240726BHJP
H01Q 9/16 20060101ALI20240726BHJP
H01Q 21/24 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
G01S11/06
G01S5/02 Z
H01Q9/16
H01Q21/24
(21)【出願番号】P 2021108963
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】太田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】田茂井 重智
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 元生
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-087789(JP,A)
【文献】特開2012-078370(JP,A)
【文献】特開2001-357485(JP,A)
【文献】特開2003-066139(JP,A)
【文献】特開2014-178120(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0018912(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
G01S 7/00 - 7/42
G01S 11/00 - 13/95
G01S 19/00 - 19/55
G08G 1/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に連結された第1車輪及び第2車輪と、を備え、
前記第1車輪及び前記第2車輪で移動可能な車両と、携帯端末を備える無線システムであって、
前記車両は、
前記車体の内部に配置され、所定の絶縁性を備えた基板と、
少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第1導電部材で構成された第1アンテナと、
少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第2導電部材で構成された第2アンテナと、を備え、
前記携帯端末は、第3アンテナを備え、
前記基板の上において、前記第1アンテナの第1偏波方向と、前記第2アンテナの第2偏波方向とは異なり、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第1波長の第1電波と、前記第1波長と異なる第2波長の第2電波を送信し、
前記車両の前記第1アンテナは、前記第1電波及び前記第2電波を受信し、前記第1電波の第1電界強度と、前記第2電波の第2電界強度を検出し、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第3波長の第3電波と、前記第3波長と異なる第4波長の第4電波を送信し、
前記車両の前記第2アンテナは、前記第3電波及び前記第4電波を受信し、前記第3電波の第3電界強度と、前記第4電波の第4電界強度を検出し、
前記第1電界強度と前記第2電界強度の第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の第2の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求め、
前記第1電界強度と前記第2電界強度の前記第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の前記第2の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求める、
無線システム。
【請求項2】
請求項1に記載の無線システムであって、
前記車両の前記第1アンテナは、少なくとも前記第1波長の第5電波と、前記第2波長の第6電波を送信し、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第5電波及び前記第6電波を受信し、前記第5電波の第5電界強度と、前記第6電波の第6電界強度を検出し、
前記車両の前記第2アンテナは、少なくとも前記第3波長の第7電波と、前記第4波長の第8電波を送信し、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第7電波及び前記第8電波を受信し、前記第7電波の第7電界強度と、前記第8電波の第8電界強度を検出し、
前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の第4の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の第1位相差、及び、前記第5電波と前記第6電波の第2位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求め、
前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の前記第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の前記第4の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の第3位相差、及び、前記第7電波と前記第8電波の第4位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求める、
無線システム。
【請求項3】
請求項2に記載の無線システムであって、
前記携帯端末は、前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を、前記車両に通知し、
前記車両が、前記車両と前記携帯端末との距離を求める、
無線システム。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の無線システムであって、
前記携帯端末は、少なくとも前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を保持する第1記憶部を備える、
無線システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記車両は、少なくとも前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第3電界強度、及び前記第4電界強度を保持する第2記憶部を備える、
無線システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記携帯端末は、第1制御回路を備え、
前記車両は、第2制御回路を備える、
無線システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記車両と前記携帯端末との距離に応じて前記車両の設定を変化させる、
無線システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記第1波長と前記第3波長は同一であり、
前記第2波長と前記第4波長は同一である、
無線システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記第1アンテナは、第1ダイポールアンテナであり、
前記第1ダイポールアンテナは、少なくとも第1ホットエレメントと、第1グランドエレメントを有し、
前記第1ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、
前記第1グランドエレメントの実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である、
無線システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記第2アンテナは、第2ダイポールアンテナであり、
前記第2ダイポールアンテナは、少なくとも第2ホットエレメントと、第2グランドエレメントを有し、
前記第2ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、
前記第2グランドエレメントは、ループ形状部を有し、
前記ループ形状部の実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である、
無線システム。
【請求項11】
携帯端末と、車両に搭載可能な無線通信装置を備える無線システムであって、
前記無線通信装置は、
前記車両の車体の内部に配置され、所定の絶縁性を備えた基板と、
少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第1導電部材で構成された第1アンテナと、
少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第2導電部材で構成された第2アンテナと、を備え、
前記携帯端末は、第3アンテナを備え、
前記基板の上において、前記第1アンテナの第1偏波方向と、前記第2アンテナの第2偏波方向とは異なり、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第1波長の第1電波と、前記第1波長と異なる第2波長の第2電波を送信し、
前記無線通信装置の前記第1アンテナは、前記第1電波及び前記第2電波を受信し、前記第1電波の第1電界強度と、前記第2電波の第2電界強度を検出し、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第3波長の第3電波と、前記第3波長と異なる第4波長の第4電波を送信し、
前記無線通信装置の前記第2アンテナは、前記第3電波及び前記第4電波を受信し、前記第3電波の第3電界強度と、前記第4電波の第4電界強度を検出し、
前記第1電界強度と前記第2電界強度の第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の第2の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求め、
前記第1電界強度と前記第2電界強度の前記第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の前記第2の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求める、
無線システム。
【請求項12】
請求項11に記載の無線システムであって、
前記無線通信装置の前記第1アンテナは、少なくとも前記第1波長の第5電波と、前記第2波長の第6電波を送信し、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第5電波及び前記第6電波を受信し、前記第5電波の第5電界強度と、前記第6電波の第6電界強度を検出し、
前記無線通信装置の前記第2アンテナは、少なくとも前記第3波長の第7電波と、前記第4波長の第8電波を送信し、
前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第7電波及び前記第8電波を受信し、前記第7電波の第7電界強度と、前記第8電波の第8電界強度を検出し、
前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の第4の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の第1位相差、及び、前記第5電波と前記第6電波の第2位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求め、
前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の前記第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の前記第4の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の第3位相差、及び、前記第7電波と前記第8電波の第4位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求める、
無線システム。
【請求項13】
請求項12に記載の無線システムであって、
前記携帯端末は、前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を、前記無線通信装置に通知し、
前記無線通信装置が、前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求める、
無線システム。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の無線システムであって、
前記携帯端末は、少なくとも前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を保持する第1記憶部を備える、
無線システム。
【請求項15】
請求項11から請求項14のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記無線通信装置は、少なくとも前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第3電界強度、及び前記第4電界強度を保持する第2記憶部を備える、
無線システム。
【請求項16】
請求項11から請求項15のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記携帯端末は、第1制御回路を備え、
前記無線通信装置は、第2制御回路を備える、
無線システム。
【請求項17】
請求項11から請求項16のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記無線通信装置と前記携帯端末との距離に応じて前記車両の設定を変化させる、
無線システム。
【請求項18】
請求項11から請求項17のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記第1波長と前記第3波長は同一であり、
前記第2波長と前記第4波長は同一である、
無線システム。
【請求項19】
請求項11から請求項18のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記第1アンテナは、第1ダイポールアンテナであり、
前記第1ダイポールアンテナは、少なくとも第1ホットエレメントと、第1グランドエレメントを有し、
前記第1ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、
前記第1グランドエレメントの実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である、
無線システム。
【請求項20】
請求項11から請求項19のいずれか1項に記載の無線システムであって、
前記第2アンテナは、第2ダイポールアンテナであり、
前記第2ダイポールアンテナは、少なくとも第2ホットエレメントと、第2グランドエレメントを有し、
前記第2ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、
前記第2グランドエレメントは、ループ形状部を有し、
前記ループ形状部の実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である、
無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両と、該車両と無線通信が可能な携帯端末とを備える無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車載分野において、スマートフォンを車両の鍵とするために、Bluetooth(登録商標)通信を使用してスマートフォンの位置を推定し、推定した位置に応じて車両の施錠やエンジンの始動を制御する測距システムが開発されている。
【0003】
高周波数帯を使用するBluetooth通信において、電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)では正確な距離推定を行うことができない。このため、複数のチャンネル間の位相差情報を使用した測距技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-155724号公報
【文献】特開2020-058020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、チャンネル間の位相差は、RSSIが極端に低いと値がばらつく傾向にあり、Bluetoothの電波の伝搬特性上、RSSIが低くなるポイント(即ち、“ヌル”)が複数存在するので、従来のECU(Electronic Control Unit)のように1本のアンテナのみで通信すると、正確な距離を測定できない場合がある。また、スマートフォンからの電波が人体に遮断された場合にRSSIが低下することから、この場合も1本のアンテナのみで通信すると、正確な距離を測定できない場合がある。これらの解決策として、4本のアンテナを用いて測距を行う提案(特許文献2)がなされているが、4本のアンテナを使用することでコスト高になり、またアンテナ切り替えに要する電力消費が多くなるという課題がある。
【0006】
本開示は、車両と携帯端末との距離を正確かつ安価に測定できる無線システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の無線システムは、車体と、前記車体に連結された第1車輪及び第2車輪と、を備え、前記第1車輪及び前記第2車輪で移動可能な車両と、携帯端末を備える無線システムであって、前記車両は、前記車体の内部に配置され、所定の絶縁性を備えた基板と、少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第1導電部材で構成された第1アンテナと、少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第2導電部材で構成された第2アンテナと、を備え、前記携帯端末は、第3アンテナを備え、前記基板の上において、前記第1アンテナの第1偏波方向と、前記第2アンテナの第2偏波方向とは異なり、前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第1波長の第1電波と、前記第1波長と異なる第2波長の第2電波を送信し、前記車両の前記第1アンテナは、前記第1電波及び前記第2電波を受信し、前記第1電波の第1電界強度と、前記第2電波の第2電界強度を検出し、前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第3波長の第3電波と、前記第3波長と異なる第4波長の第4電波を送信し、前記車両の前記第2アンテナは、前記第3電波及び前記第4電波を受信し、前記第3電波の第3電界強度と、前記第4電波の第4電界強度を検出し、前記第1電界強度と前記第2電界強度の第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の第2の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求め、前記第1電界強度と前記第2電界強度の前記第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の前記第2の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求める。
【0008】
本開示によれば、携帯端末は、第3アンテナを備え、第3アンテナが第1波長の第1電波と第2波長の第2電波を送信し、また、第3アンテナが第3波長の第3電波と第4波長の第4電波を送信し、車両は、互いに偏波方向の異なる第1アンテナと第2アンテナを備え、第1アンテナが、携帯端末から送信された第1電波及び第2電波を受信し、受信した第1電波及び第2電波それぞれの電界強度を検出し、第2アンテナが、携帯端末から送信された第3電波及び第4電波を受信し、受信した第3電波及び第4電波それぞれの電界強度を検出し、第1アンテナが受信した第1電波及び第2電波における電界強度の和が、第2アンテナが受信した第3電波及び第4電波における電界強度の和より大きい場合、第1アンテナが受信した第1電波及び第2電波の位相差より車両と携帯端末との距離を求め、第1アンテナが受信した第1電波及び第2電波における電界強度の和が、第2アンテナが受信した第3電波及び第4電波における電界強度の和より小さい場合、第2アンテナが受信した第3電波及び第4電波の位相差より車両と携帯端末との距離を求めるので、常に高い精度で車両と携帯端末との距離を求めることができる。また、車両で使用するアンテナが2本で済むことから、4本のアンテナを使用する従来技術と比較して低価格で、かつアンテナ切り替えに伴う電力消費の低減が図れる。
【0009】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記車両の前記第1アンテナは、少なくとも前記第1波長の第5電波と、前記第2波長の第6電波を送信し、前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第5電波及び前記第6電波を受信し、前記第5電波の第5電界強度と、前記第6電波の第6電界強度を検出し、前記車両の前記第2アンテナは、少なくとも前記第3波長の第7電波と、前記第4波長の第8電波を送信し、前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第7電波及び前記第8電波を受信し、前記第7電波の第7電界強度と、前記第8電波の第8電界強度を検出し、前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の第4の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の第1位相差、及び、前記第5電波と前記第6電波の第2位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求め、前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の前記第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の前記第4の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の第3位相差、及び、前記第7電波と前記第8電波の第4位相差より前記車両と前記携帯端末との距離を求める。
【0010】
本開示によれば、車両の第1アンテナが、第1波長の第5電波と、第2波長の第6電波を送信し、また、車両の第2アンテナが、第3波長の第7電波と、第4波長の第8電波を送信し、携帯端末の第3アンテナが、第5電波及び第6電波を受信し、第5電波の第5電界強度と、第6電波の第6電界強度を検出し、また、携帯端末の第3アンテナが、第7電波及び第8電波を受信し、第7電波の第7電界強度と、第8電波の第8電界強度を検出し、第1アンテナが検出した第1電界強度及び第2電界強度と、第3アンテナが検出した第5電界強度及び第6電界強度との第3の和が、第2アンテナが検出した第3電界強度及び第4電界強度と、第3アンテナが検出した第7電界強度及び第8電界強度の第4の和より大きい場合、第1電波と第2電波の第1位相差、及び、第5電波と第6電波の第2位相差より車両と携帯端末との距離を求め、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度の第3の和が、第3電界強度、第4電界強度、第7電界強度、第8電界強度の第4の和より小さい場合、第3電波と第4電波の第3位相差、及び、第7電波と第8電波の第4位相差より車両と携帯端末との距離を求めるので、更に高い精度で車両と携帯端末との距離を求めることができる。また、車両で使用するアンテナが2本で済むことから、4本のアンテナを使用する従来技術と比較して低価格で、かつアンテナ切り替えに伴う電力消費の低減が図れる。
【0011】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記携帯端末は、前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を、前記車両に通知し、前記車両が、前記車両と前記携帯端末との距離を求める。
【0012】
本開示によれば、車両は、携帯端末から通知された第5電界強度、第6電界強度、第7電界強度、及び第8電界強度を基に車両と携帯端末との距離を求めることができる。
【0013】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記携帯端末は、少なくとも前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を保持する第1記憶部を備える。
【0014】
本開示によれば、携帯端末は、検出した第5電界強度、第6電界強度、第7電界強度、及び第8電界強度を記憶することができる。
【0015】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記車両は、少なくとも前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第3電界強度、及び前記第4電界強度を保持する第2記憶部を備える。
【0016】
本開示によれば、車両は、検出した第1電界強度、第2電界強度、第3電界強度、及び第4電界強度を記憶することができる。
【0017】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記携帯端末は、第1制御回路を備え、前記車両は、第2制御回路を備える。
【0018】
本開示によれば、携帯端末と車両のそれぞれにおいて、車両と携帯端末との距離を求めるための制御と、該距離を求めた後の制御を行うことができる。
【0019】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記車両と前記携帯端末との距離に応じて前記車両の設定を変化させる。
【0020】
本開示によれば、例えば車両と携帯端末との距離が所定値以上の場合、操作を受け付けなくなり、当該距離が所定値以下の場合、操作を受け付ける。なお、車両と携帯端末との距離が所定値の場合、操作を受け付けるようにしてもよいし、受け付けないようにしてもよい。
【0021】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記第1波長と前記第3波長は同一であり、前記第2波長と前記第4波長は同一である。
【0022】
本開示によれば、第1波長と第3波長を異なる波長にし、また第2波長と第4波長を異なる波長とした場合と比べて波長を変更する制御が不要になり、低価格化に寄与できる。
【0023】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記第1アンテナは、第1ダイポールアンテナであり、前記第1ダイポールアンテナは、少なくとも第1ホットエレメントと、第1グランドエレメントを有し、前記第1ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、前記第1グランドエレメントの実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である。
【0024】
本開示によれば、ダイポールアンテナとしての最大利得が得られ、指向性を360度の角度で略均一化できるので、携帯端末が車両に対してどの位置に存在していても略同一精度で車両と携帯端末との距離を計測することができる。
【0025】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記第2アンテナは、第2ダイポールアンテナであり、前記第2ダイポールアンテナは、少なくとも第2ホットエレメントと、第2グランドエレメントを有し、前記第2ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、前記第2グランドエレメントは、ループ形状部を有し、前記ループ形状部の実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である。
【0026】
本開示によれば、ダイポールアンテナとしての最大利得が得られ、指向性を360度の角度で略均一化できるので、携帯端末が車両に対してどの位置に存在していても略同一精度で車両と携帯端末との距離を計測することができる。
【0027】
本開示の無線システムは、携帯端末と、車両に搭載可能な無線通信装置を備える無線システムであって、前記無線通信装置は、前記車両の車体の内部に配置され、所定の絶縁性を備えた基板と、少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第1導電部材で構成された第1アンテナと、少なくとも一部が、前記基板の上に所定の導電性を有する第2導電部材で構成された第2アンテナと、を備え、前記携帯端末は、第3アンテナを備え、前記基板の上において、前記第1アンテナの第1偏波方向と、前記第2アンテナの第2偏波方向とは異なり、前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第1波長の第1電波と、前記第1波長と異なる第2波長の第2電波を送信し、前記無線通信装置の前記第1アンテナは、前記第1電波及び前記第2電波を受信し、前記第1電波の第1電界強度と、前記第2電波の第2電界強度を検出し、前記携帯端末の前記第3アンテナは、少なくとも第3波長の第3電波と、前記第3波長と異なる第4波長の第4電波を送信し、前記無線通信装置の前記第2アンテナは、前記第3電波及び前記第4電波を受信し、前記第3電波の第3電界強度と、前記第4電波の第4電界強度を検出し、前記第1電界強度と前記第2電界強度の第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の第2の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求め、前記第1電界強度と前記第2電界強度の前記第1の和が、前記第3電界強度と前記第4電界強度の前記第2の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求める。
【0028】
本開示によれば、携帯端末は、互いに波長の異なる4つの電波を第3アンテナから送信し、無線通信装置は、互いに偏波方向の異なる第1アンテナと第2アンテナで、携帯端末から送信された電波を受信し、第1アンテナで受信した2つの電波それぞれの電界強度を検出するとともに、第2アンテナで受信した2つの電波それぞれの電界強度を検出し、第1アンテナで受信した2つの電波における電界強度の和が、第2アンテナで受信した2つの電波における電界強度の和より大きい場合、第1アンテナで受信した2つの電波の位相差より無線通信装置と携帯端末との距離を求め、第1アンテナで受信した2つの電波における電界強度の和が、第2アンテナで受信した2つの電波における電界強度の和より小さい場合、第2アンテナで受信した2つの電波の位相差より無線通信装置と携帯端末との距離を求めるので、常に高い精度で無線通信装置と携帯端末との距離を求めることができる。また、無線通信装置で使用するアンテナが2本で済むことから、4本のアンテナを使用する従来技術と比較して低価格で、かつアンテナ切り替えに伴う電力消費の低減が図れる。
【0029】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記無線通信装置の前記第1アンテナは、少なくとも前記第1波長の第5電波と、前記第2波長の第6電波を送信し、前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第5電波及び前記第6電波を受信し、前記第5電波の第5電界強度と、前記第6電波の第6電界強度を検出し、前記無線通信装置の前記第2アンテナは、少なくとも前記第3波長の第7電波と、前記第4波長の第8電波を送信し、前記携帯端末の前記第3アンテナは、前記第7電波及び前記第8電波を受信し、前記第7電波の第7電界強度と、前記第8電波の第8電界強度を検出し、前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の第4の和より大きい場合、前記第1電波と前記第2電波の第1位相差、及び、前記第5電波と前記第6電波の第2位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求め、前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第5電界強度、及び前記第6電界強度の前記第3の和が、前記第3電界強度、前記第4電界強度、前記第7電界強度、前記第8電界強度の前記第4の和より小さい場合、前記第3電波と前記第4電波の第3位相差、及び、前記第7電波と前記第8電波の第4位相差より前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求める。
【0030】
本開示によれば、無線通信装置の第1アンテナが、第1波長の第5電波と、第2波長の第6電波を送信し、また、無線通信装置の第2アンテナが、第3波長の第7電波と、第4波長の第8電波を送信し、携帯端末の第3アンテナが、第5電波及び第6電波を受信し、第5電波の第5電界強度と、第6電波の第6電界強度を検出し、また、携帯端末の第3アンテナが、第7電波及び第8電波を受信し、第7電波の第7電界強度と、第8電波の第8電界強度を検出し、第1アンテナが検出した第1電界強度及び第2電界強度と、第3アンテナが検出した第5電界強度及び第6電界強度との第3の和が、第2アンテナが検出した第3電界強度及び第4電界強度と、第3アンテナが検出した第7電界強度及び第8電界強度の第4の和より大きい場合、第1電波と第2電波の第1位相差、及び、第5電波と第6電波の第2位相差より無線通信装置と携帯端末との距離を求め、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度の第3の和が、第3電界強度、第4電界強度、第7電界強度、第8電界強度の第4の和より小さい場合、第3電波と第4電波の第3位相差、及び、第7電波と第8電波の第4位相差より無線通信装置と携帯端末との距離を求めるので、更に高い精度で無線通信装置と携帯端末との距離を求めることができる。また、無線通信装置で使用するアンテナが2本で済むことから、4本のアンテナを使用する従来技術と比較して低価格で、かつアンテナ切り替えに伴う電力消費の低減が図れる。
【0031】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記携帯端末は、前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を、前記無線通信装置に通知し、前記無線通信装置が、前記無線通信装置と前記携帯端末との距離を求める。
【0032】
本開示によれば、無線通信装置は、携帯端末から通知された第5電界強度、第6電界強度、第7電界強度、及び第8電界強度を基に無線通信装置と携帯端末との距離を求めることができる。
【0033】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記携帯端末は、少なくとも前記第5電界強度、前記第6電界強度、前記第7電界強度、及び前記第8電界強度を保持する第1記憶部を備える。
【0034】
本開示によれば、携帯端末は、検出した第5電界強度、第6電界強度、第7電界強度、及び第8電界強度を記憶することができる。
【0035】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記無線通信装置は、少なくとも前記第1電界強度、前記第2電界強度、前記第3電界強度、及び前記第4電界強度を保持する第2記憶部を備える。
【0036】
本開示によれば、無線通信装置は、検出した第1電界強度、第2電界強度、第3電界強度、及び第4電界強度を記憶することができる。
【0037】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記携帯端末は、第1制御回路を備え、前記無線通信装置は、第2制御回路を備える。
【0038】
本開示によれば、携帯端末と無線通信装置のそれぞれにおいて、無線通信装置と携帯端末との距離を求めるための制御と、該距離を求めた後の制御を行うことができる。
【0039】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記無線通信装置と前記携帯端末との距離に応じて前記車両の設定を変化させる。
【0040】
本開示によれば、例えば無線通信装置と携帯端末との距離が所定値以上の場合、操作を受け付けなくなり、当該距離が所定値以下の場合、操作を受け付ける。なお、無線通信装置と携帯端末との距離が所定値の場合、操作を受け付けるようにしてもよいし、受け付けないようにしてもよい。
【0041】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記第1波長と前記第3波長は同一であり、前記第2波長と前記第4波長は同一である。
【0042】
本開示によれば、第1波長と第3波長を異なる波長にし、また第2波長と第4波長を異なる波長とした場合と比べて波長を変更する制御が不要になり、低価格化に寄与できる。
【0043】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記第1アンテナは、第1ダイポールアンテナであり、記第1ダイポールアンテナは、少なくとも第1ホットエレメントと、第1グランドエレメントを有し、前記第1ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、前記第1グランドエレメントの実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である。
【0044】
本開示によれば、ダイポールアンテナとしての最大利得が得られ、指向性を360度の角度で略均一化できるので、携帯端末が無線通信装置に対してどの位置に存在していても略同一精度で無線通信装置と携帯端末との距離を計測することができる。
【0045】
本開示の無線システムは、上記構成において、前記第2アンテナは、第2ダイポールアンテナであり、記第2ダイポールアンテナは、少なくとも第2ホットエレメントと、第2グランドエレメントを有し、前記第2ホットエレメントの実効長は、使用周波数の波長の1/4であり、前記第2グランドエレメントは、ループ形状部を有し、前記ループ形状部の実効長は、前記使用周波数の波長の1/4である。
【0046】
本開示によれば、ダイポールアンテナとしての最大利得が得られ、指向性を360度の角度で略均一化できるので、携帯端末が無線通信装置に対してどの位置に存在していても略同一精度で無線通信装置と携帯端末との距離を計測することができる。
【発明の効果】
【0047】
本開示によれば、車両(又は無線通信装置)と携帯端末との距離を正確かつ安価に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】実施形態の無線システムの概略構成を示すブロック図
【
図2】実施形態の無線システムを構成する車両の外観を示す側面図
【
図3】実施形態の無線システムを構成するECUの外観を示す斜視図
【
図4】実施形態の無線システムを構成するECUの実装状態における基板と板金部の位置関係を示す図
【
図5】実施形態の無線システムを構成するECUの垂直偏波用アンテナの各角度でのアンテナ利得を示す図
【
図6】実施形態の無線システムを構成するECUの水平偏波用アンテナの各角度でのアンテナ利得を示す図
【
図7】実施形態の無線システムを構成するECUと携帯端末の動作を説明するためのフローチャート
【
図8】実施形態の無線システムを構成するECUと携帯端末の動作を説明するためのフローチャート
【
図9】実施形態の無線システムを構成するECUと携帯端末の動作を説明するためのフローチャート
【
図10】実施形態の無線システムを構成するECUから送信される測距開始要求パケットを示す図
【
図11】実施形態の無線システムを構成する携帯端末から送信されるSlaveデータ送信パケットを示す図
【
図12】実施形態の無線システムを構成するECUから送信されるリトライ要求パケットを示す図
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係る無線システムを具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0050】
以下、本開示を実施するための好適な本実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0051】
以下、図面を参照して、本実施形態の無線システムについて説明する。
図1は、本実施形態の無線システム10の概略構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態の無線システム10を構成する車両20の外観を示す側面図である。
図1及び
図2において、本実施形態の無線システム10は、自動二輪車の車両20と、車両20のユーザが所持する携帯端末30と、車両20の内部に配置される無線通信装置であるECU60とを備える。車両20は、車体21と、車体21に連結された前輪(第1車輪)22及び後輪(第2車輪)23とを備える。なお、車両20は、二輪車に限定されるものではなく、一輪車であっても良いし、三輪車以上であっても良い。
【0052】
携帯端末30は、持ち歩くのに好適な形状及び大きさの箱形の筐体を備える。携帯端末30は、ECU60とペアになるように、事前にECU60に登録される。ECU60と携帯端末30との間の通信には、Bluetooth(登録商標) LE(Low Energy)が用いられる。Bluetooth LE(以下、“BLE”と呼ぶ)で使用される周波数は2.4GHz帯であり、通信距離は100m程度である。なお、携帯端末30は、電子キーやFOBキーとも呼ばれるものであるが、スマートフォンであっても構わない。
【0053】
図1において、携帯端末30は、第3アンテナ301と、フロントエンド部302と、制御回路(第1制御回路)303とを備える。第3アンテナ301は、例えば、1つのダイポールアンテナであり、ホットエレメントとグランドエレメントとを有する。ホットエレメントの実効長は使用周波数の波長の1/4であり、グランドエレメントの実効長は使用周波数の波長の1/4である。なお、第3アンテナ301は、ダイポールアンテナに限らず、複数のアンテナ素子からなるものであってもよい。
【0054】
フロントエンド部302は、微弱な信号の増幅、高い周波数から低い周波数への変換、送信信号の受信部側への回り込みの抑制等を行う。制御回路303は、発振器3031と、送信部3032と、受信部3033と、メモリ(第1記憶部)3034と、制御部(第1制御回路)3035とを備える。発振器3031は、搬送波信号を生成するローカル発振器である。送信部3032は、送信しようとするIQデータ(ベースバンド信号)から電波を生成し、フロントエンド部302を介して第3アンテナ301から送信する。受信部3033は、第3アンテナ301で受信された電波からIQデータを抽出して電界強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を検出する。
【0055】
制御部3035は、波長の異なる複数の電波を送信する制御を行う。具体的には、第1波長の第1電波、第1波長と異なる第2波長の第2電波、第3波長の第3電波、及び第3波長と異なる第4波長の第4電波を送信する制御を行う。
【0056】
制御部3035は、送信制御の他に、波長の異なる複数の電波を受信する制御も行う。具体的には、第1波長の第5電波、第2波長の第6電波、第3波長の第7電波、第4波長の第8電波を受信する制御を行う。
【0057】
なお、第1波長と第3波長は、同一の波長であっても構わない。また、第2波長と第4波長も同一の波長であっても構わない。
【0058】
また、制御部3035は、受信した電波の電界強度を検出する制御も行う。制御部3035は、第5電波の第5電界強度、第6電波の第6電界強度、第7電波の第7電界強度、及び第8電波の第8電界強度を検出する。制御部3035は、検出した電波の電界強度(第5電界強度、第6電界強度、第7電界強度、及び第8電界強度)をメモリ3034に保存する。なお、制御部3035は、第5電界強度、第6電界強度、第7電界強度、及び第8電界強度を車両20側に通知するようにしてもよい。このようにすることで、車両20側(ECU60側)で車両20と携帯端末30との距離を求めることができる。
【0059】
また、制御部3035は、受信した電波の電界強度に基づいて車両20と携帯端末30との距離を求める。即ち、制御部3035は、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度の和(第3の和)が、第3電界強度、第4電界強度、第7電界強度、第8電界強度の和(第4の和)より大きい場合、第1電波と第2電波の第1位相差、及び、第5電波と第6電波の第2位相差より車両20と携帯端末30との距離を求める。また、制御部3035は、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度の和(第3の和)が、第3電界強度、第4電界強度、第7電界強度、第8電界強度の和(第4の和)より小さい場合、第3電波と第4電波の第3位相差、及び第7電波と第8電波の第4位相差より車両20と携帯端末30との距離を求める。
【0060】
なお、車両20と携帯端末30との距離の算出において、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度の和を用いたが、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度の和の成分が含まれていればよい。例えば、第1電界強度、第2電界強度、第5電界強度、及び第6電界強度を4で割って平均値を用いることができる。同様に、第3電界強度、第4電界強度、第7電界強度、第8電界強度の和を用いたが、第3電界強度、第4電界強度、第7電界強度、第8電界強度の和の成分が含まれていればよい。
【0061】
なお、制御部3035は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)と、CPUを制御するためのプログラムを記憶したROM(Read Only Memory)と、CPUの動作に用いられるRAM(Random Access memory)を有している。
【0062】
制御回路303は、発振器3031と、送信部3032と、受信部3033と、メモリ3034と、制御部3035とを備えるものであるが、メモリ3034と制御部3035のみからなるものであっても良いし、制御部3035そのものが制御回路303であってもよい。
【0063】
図1において、ECU60は、第1アンテナ601と、第2アンテナ602と、アンテナ切り替えスイッチ603と、フロントエンド部604と、制御回路(第2制御回路)605とを備える。第1アンテナ601は、第1ダイポールアンテナであり、少なくとも第1導電部材で構成された第1ホットエレメントと第1グランドエレメントを有し、第1ホットエレメントの実効長は使用周波数の波長の1/4であり、第1グランドエレメントの実効長は使用周波数の波長の1/4である。
【0064】
第2アンテナ602は、第2ダイポールアンテナであり、少なくとも第2導電部材で構成された第2ホットエレメントと第2グランドエレメントを有し、第2ホットエレメントの実効長は使用周波数の波長の1/4であり、第2グランドエレメントの実効長は使用周波数の波長の1/4である。
【0065】
第1アンテナ601の第1偏波方向と、第2アンテナ602の第2偏波方向とは異なっている。本実施形態では、互いに直交する方向に配置されており、第1アンテナ601は垂直偏波用とし、第2アンテナ602は水平偏波用として用いられる。なお、第1アンテナ601と第2アンテナ602の具体的な構造については後述する。
【0066】
アンテナ切り替えスイッチ603は、制御回路605からの切り替え信号に従って第1アンテナ601と第2アンテナ602を交互に切り替える。フロントエンド部604は、上述した携帯端末30のフロントエンド部302と同様に、微弱な信号の増幅、高い周波数から低い周波数への変換、送信信号の受信部側への回り込みの抑制等を行う。
【0067】
制御回路605は、発振器6051と、送信部6052と、受信部6053と、メモリ(第2記憶部)6054と、制御部(第2制御回路)6055とを備える。発振器6051は、上述した制御回路303の発振器3031と同様に、搬送波信号を生成するローカル発振器である。送信部6052は、送信しようとするIQデータ(ベースバンド信号)から電波を生成し、フロントエンド部604、アンテナ切り替えスイッチ603を介して第1アンテナ601又は第2アンテナ602から送信する制御を行う。送信部6052は、少なくとも第1波長の第5電波と、第2波長の第6電波を第1アンテナ601から送信する制御を行う。また、送信部6052は、少なくとも第3波長の第7電波と、第4波長の第8電波を第2アンテナ602から送信する制御を行う。
【0068】
受信部6053は、第1アンテナ601又は第2アンテナ602で受信された電波からIQデータを抽出して電界強度(RSSI)を検出する。例えば、受信部6053は、第1アンテナ601が第1波長の第1電波及び第2波長の第2電波を受信した場合、第1電波の第1電界強度と、第2電波の第2電界強度を検出する。また、第2アンテナ602が第3波長の第3電波及び第4波長の第4電波を受信した場合、第3電波の第3電界強度と、第4電波の第4電界強度を検出する。
【0069】
制御部6055は、アンテナ切り替えスイッチ603に対する切り替え制御と、送信部6052に対する送信タイミングの制御(トリガ制御)を行う。制御部6055における送信タイミングの制御は、第1アンテナ601に切り替えた後、第1波長の第5電波と、第2波長の第6電波を送信させ、第2アンテナ602に切り替えた後、第3波長の第7電波と、第4波長の第8電波を送信させる。
【0070】
また、制御部6055は、受信部6053で受信された電波の電界強度をメモリ6054に保存する制御を行う。即ち、制御部6055は、第1アンテナ601で受信された第1波長の第1電波の第1電界強度、及び第2波長の第2電波の第2電界強度をメモリ6054に保存し、また第2アンテナ602で受信された第3波長の第3電波の第3電界強度、及び第4波長の第4電波の第4電界強度をメモリ6054に保存する。なお、第2波長は、第1波長と異なる波長であり、第4波長は、第3波長と異なる波長である。
【0071】
制御部6055は、受信した電波の電界強度に基づいて車両20と携帯端末30との距離を求める。即ち、制御部6055は、第1電界強度と第2電界強度の和(第1の和)が、第3電界強度と第4電界強度の和(第2の和)より大きい場合、第1電波と第2電波の位相差より車両20と携帯端末30との距離を求め、第1電界強度と第2電界強度の第1の和が、第3電界強度と第4電界強度の第2の和より小さい場合、第3電波と第4電波の位相差より車両20と携帯端末30との距離を求める。
【0072】
なお、車両20と携帯端末30との距離の算出において、第1電界強度と第2電界強度の和を用いたが、第1電界強度と第2電界強度の和の成分が含まれていればよい。例えば、第1電界強度と第2電界強度を2で割って平均値を用いることができる。同様に、第3電界強度と第4電界強度の和の成分が含まれていればよい。例えば、第3電界強度と第4電界強度を2で割って平均値を用いることができる。
【0073】
制御部6055は、車両20と携帯端末30との距離を算出した後、算出した距離に応じて車両20の設定を変化させる。この場合、車両20と携帯端末30との距離が所定値以上であれば、携帯端末30の操作を受け付けなくなり、所定値以下であれば、携帯端末30の操作を受け付ける。なお、車両20と携帯端末30との距離が所定値の場合、携帯端末30の操作を受け付けても、受け付けなくてもよい。
【0074】
なお、制御部6055は、携帯端末30の制御部3035と同様に、図示せぬCPUと、CPUを制御するためのプログラムを記憶したROMと、CPUの動作に用いられるRAMを有している。
【0075】
図3は、ECU60の外観を示す斜視図である。同図において、ECU60を構成する基板610は、所定の絶縁性を備えており、車両20の内部に配置される。基板610上には、第1ダイポールアンテナである第1アンテナ601と、第2ダイポールアンテナである第2アンテナ602と、第1アンテナ601に給電するための給電線606と、第2アンテナ602に給電するための給電線608とがそれぞれパターン形成されている。この場合、第1アンテナ601と第2アンテナ602は、直交する向きに配置される。第1アンテナ601は垂直偏波用アンテナとして用いられ、第2アンテナ602は水平偏波用アンテナとして用いられる。
【0076】
第1アンテナ601は、第1ホットエレメント6011と第1グランドエレメント6012とを有している。第1アンテナ601のアンテナ長(実効長)は、ダイポールアンテナの最大利得となるように、第1ホットエレメント6011側、第1グランドエレメント6012側ともに波長×1/4としている。使用周波数が2.4GHz帯の場合、アンテナ長は3cmとなる。第1ホットエレメント6011と第1グランドエレメント6012との間には、アンテナマッチング用コンデンサ607が実装されている。
【0077】
第2アンテナ602は、第2ホットエレメント6013とコ字型の枠体形状を成すループ形状部である板金部6015(第2グランドエレメント)とを有している。ここで、第2アンテナ602は、ダイポールの形状のままだと八の字型の指向性となるため、グランド側を板金を用いたグランドとのループ形状とし、グランドとのループを強くして水平偏波を放射するように、アンテナ下をベタグランド6014としている。アンテナ長は、第1アンテナ601と同じく、第2ホットエレメント6013側、グランド側ともに波長×1/4としている。使用周波数が2.4GHz帯の場合、第2ホットエレメント6013は3cm、板金部6015も3cmとなる。板金部6015は、各辺が1cmで合計3cmとなる。第2ホットエレメント6013とベタグランド6014との間には、第1アンテナ601と同様に、アンテナマッチング用コンデンサ609が実装されている。
【0078】
図3は同図中に示す3軸方向でECU60を見た斜視図であるが、
図4はX軸方向を垂直方向、Z軸方向を水平方向に置き換えた場合の実装状態における基板610と板金部6015の位置関係を示す図である。この図に示すように、板金部6015は、基板610の厚さ方向と同方向に立設されている。板金部6015の両端部は、基板610に形成されたベタグランド6014に接続されている。
【0079】
図4において、基板610上には、アンテナ切り替えスイッチ603、フロントエンド部604及び制御回路605が実装されている。制御回路605は、IC(Integrated Circuit)化されている。
【0080】
図5は、第1アンテナ601のアンテナ利得をシミュレーションした結果を示す図である。同図において、二点鎖線は、垂直偏波でのアンテナ利得を示しており、実線は、水平偏波でのアンテナ利得を示している。第1アンテナ601は、垂直偏波用アンテナであるので、各角度でのアンテナ利得は、垂直偏波のほうが大きくなっている。一方、
図6は、第2アンテナ602のアンテナ利得をシミュレーションした結果を示す図である。同図において、二点鎖線は、垂直偏波でのアンテナ利得を示しており、実線は、水平偏波でのアンテナ利得を示している。第2アンテナ602は、水平偏波用アンテナであるので、各角度でのアンテナ利得は、水平偏波のほうが大きくなっている。
【0081】
なお、第2アンテナ602において、板金部6015をグランドとし、第2ホットエレメント6013をホットラインとしたが、逆即ち板金部6015をホットラインとし、第2ホットエレメント6013をグランドとしてもよい。
【0082】
また、第1ホットエレメント6011、第2ホットエレメント6013、第1グランドエレメント6012、及び板金部6015の各長さは、基板610の材質や、層構成によって変わってくるため、基板610に合わせて任意に変更が可能である。
【0083】
次に、本実施形態の無線システム10の動作について説明する。
図7~
図9は、本実施形態の無線システム10を構成する携帯端末30とECU60の動作を説明するためのフローチャートである。携帯端末30側の処理とECU60側の処理は、共にBLEの定期通信のタイミング(即ち所定の時間間隔)で実行される。これは、スタートからエンドまでの処理が1回限りで終わるというものではないということである。
【0084】
図7において、ECU60は、BLEの定期通信による測距開始指示を送信する(ステップS1)。BLEは一定周期で定期通信を行うため、その定期通信中で測距開始指示があると、定期通信の合間でこれ以降のフローを実行する。携帯端末30は、BLEの定期通信による測距開始指示を受信する(ステップS100)。携帯端末30は、測距開始指示を受信すると、BLEの定期通信による測距開始応答を送信する(ステップS101)。ECU60は、BLEの定期通信による測距開始応答を受信する(ステップS2)。
【0085】
ECU60は、測距開始応答を受信すると、測距開始要求パケットを送信する(ステップS3)。携帯端末30は、ECU60から送信された測距開始要求パケットを受信する(ステップS102)。
図10は、測距開始要求パケットの構造を示す図である。同図に示すように、測距開始要求パケットは、「Preamble」、「機器ID」、「コマンド(測距開始指示)」、「CRC(Cyclic Redundancy Code)」から構成される。
【0086】
測距開始要求パケットが送信された後、制御部6055にてアンテナ切り替えスイッチ603が制御されて、第1アンテナ601側に切り替えられる(ステップS4)。第1アンテナ601側に切り替えられた後、ECU60は、CH1(チャンネル1)の無変調電波を携帯端末30に送信する(ステップS5)。携帯端末30は、無変調電波を受信する(ステップS103)。携帯端末30の受信部3033にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ3034に一時保存(Slaveデータ(1))される(ステップS104)。
図11は、Slaveデータ送信パケットの構造を示す図である。同図に示すように、Slaveデータ送信パケットは、「Preamble」、「機器ID」、「コマンド(Slaveデータ)」、「Slave RSSI」、「Slave IQデータ」、「CRC」から構成される。携帯端末30は、受信信号のRSSIとIQデータをメモリ3034に保存した後、ECU60にCH1の無変調電波を送信する(ステップS105)。
【0087】
ECU60は、携帯端末30から送信された無変調電波を受信する(ステップS6)。この場合、ECU60は、ノイズを含めて何らかの信号を受信するため、次のフローへ強制遷移する。ECU60は、無変調電波を受信すると、受信部6053にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ6054に一時保存(Masterデータ(1))される(ステップS7)。次いで、ECU60の制御部6055にてアンテナ切り替えスイッチ603が制御されて、第2アンテナ602側に切り替えられる(ステップS8)。第2アンテナ602側に切り替えられた後、ECU60は、CH1(チャンネル1)の無変調電波を携帯端末30に送信する(ステップS9)。携帯端末30は、無変調電波を受信する(ステップS106)。携帯端末30の受信部3033にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ3034に一時保存(Slaveデータ(2))される(ステップS107)。次いで、携帯端末30は、ECU60にCH1の無変調電波を送信する(ステップS108)。
【0088】
ECU60は、携帯端末30から送信された無変調電波を受信する(ステップS10)。ECU60は、無変調電波を受信すると、受信部6053にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ6054に一時保存(Masterデータ(2))される(ステップS11)。制御部6055にてアンテナ切り替えスイッチ603が制御されて、第1アンテナ601側に切り替えられる(ステップS12)。第1アンテナ601側に切り替えられた後、ECU60は、CH2(チャンネル2)の無変調電波を携帯端末30に送信する(ステップS13)。
【0089】
携帯端末30は、無変調電波を受信する(ステップS109)。携帯端末30の受信部3033にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ3034に一時保存(Slaveデータ(3))される(ステップS110)。次いで、携帯端末30は、ECU60にCH2の無変調電波を送信する(ステップS111)。ECU60は、携帯端末30から送信された無変調電波を受信する(ステップS14)。この場合、ECU60は、ノイズを含めて何らかの信号を受信するため、次のフローへ強制遷移する。ECU60は、無変調電波を受信すると、受信部6053にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ6054に一時保存(Masterデータ(3))される(ステップS15)。次いで、ECU60の制御部6055にてアンテナ切り替えスイッチ603が制御されて、第2アンテナ602側に切り替えられる(ステップS16)。
【0090】
第2アンテナ602側に切り替えられた後、ECU60は、CH2(チャンネル2)の無変調電波を携帯端末30に送信する(ステップS17)。携帯端末30は、無変調電波を受信する(ステップS112)。携帯端末30の受信部3033にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ3034に一時保存(Slaveデータ(4))される(ステップS113)。次いで、携帯端末30は、ECU60にCH2の無変調電波を送信する(ステップS114)。ECU60は、携帯端末30から送信された無変調電波を受信する(ステップS18)。ECU60は、無変調電波を受信すると、受信部6053にて、受信信号のRSSIとIQデータが検出され、メモリ6054に一時保存(Masterデータ(4))される(ステップS19)。
【0091】
図9において、携帯端末30からECU60にCH2の無変調電波を送信した後、メモリ3034に一時保存したSlaveのRSSIとIQデータを携帯端末30からECU60にパケット送信する(ステップS115)。その後、携帯端末30は、リトライ要求パケットを受信待ちする(ステップS116)。携帯端末30は、リトライ要求パケットを受信したかどうか判定する(ステップS117)。携帯端末30は、リトライ要求パケットを受信したと判定した場合(ステップS117で「YES」と判定した場合)、ステップS103に戻る。携帯端末30は、リトライ要求パケットを受信していないと判定した場合(ステップS117で「NO」と判定した場合)、BLEの定期通信を受信する(ステップS118)。携帯端末30は、BLEの定期通信を受信すると、BLEの定期通信応答を送信し(ステップS119)、本処理を終える。
【0092】
ECU60は、受信信号のRSSIとIQデータを受信部6053が検出し、検出結果をメモリ6054に一時保存した後、携帯端末30が送信したSlaveのRSSIとIQデータのパケットを受信したかどうか判定する(ステップS20)。ECU60は、該パケットを受信しなかったと判定した場合(ステップS20で「NO」と判定した場合)、該パケットを受信する期間を経過していれば、タイムアウトエラーとして(ステップS21)、リトライ要求パケットを送信する(ステップS22)。
【0093】
ECU60は、該パケットを受信したと判定した場合(ステップS20で「YES」と判定した場合)、制御部6055が、各CH(チャンネル)毎において、SlaveとMasterのRSSI平均値を比較する(ステップS23)。この場合、CH1での第1アンテナ601と第2アンテナ602における比較は、Slave(1)、Master(1)の組(即ち、第1アンテナ601の組)のRSSI平均値と、Slave(2)、Master(2)の組(即ち、第2アンテナ602の組)のRSSI平均値を比較する。
【0094】
また、CH2での第1アンテナ601と第2アンテナ602における比較は、Slave(3)、Master(3)の組(即ち、第1アンテナ601の組)のRSSI平均値と、Slave(4)、Master(4)の組(即ち、第2アンテナ602の組)のRSSI平均値を比較する。
【0095】
ECU60は、CH毎において、RSSIが高いアンテナ組の電波のSlaveとMasterのIQを位相に変換する。次いで、SlaveとMasterの位相を足し合わせて、各CHの位相差からECU60と携帯端末30との距離を算出する(ステップS24)。
【0096】
ECU60は、算出した結果(即ち、ECU60と携帯端末30との距離)が規定範囲内かどうか判定する(ステップS25)。ECU60は、ECU60と携帯端末30との距離が規定範囲内でないと判定した場合(ステップS25で「NO」と判定した場合)、算出不可エラーと判断し(ステップS26)、携帯端末30に対してリトライ要求パケットを送信する(ステップS27)。リトライ要求パケットを送信した後、ステップS4に戻る。
図12は、リトライ要求パケットの構造を示す図である。同図に示すように、リトライ要求パケットは、「Preamble」、「機器ID」、「コマンド(リトライ要求)」、「CRC」から構成される。
【0097】
ECU60は、ECU60と携帯端末30との距離が規定範囲内と判定した場合(ステップS25で「YES」と判定した場合)、算出した距離を採用する(ステップS28)。次いで、ECU60は、BLEの定期通信を送信する(ステップS29)。ECU60は、携帯端末30より送信されたBLEの定期通信応答を受信し(ステップS30)、本処理を終える。
【0098】
以上のように、本実施形態の無線システム10は、電波を水平偏波と垂直偏波に分離することができ、また水平偏波と垂直偏波でヌルの位置が異なり、さらに人体遮断時に垂直偏波よりも水平偏波のほうが人体に回り込み易く、RSSIの低下が小さいという特性を利用して、水平偏波受信用の第2アンテナ602と、垂直偏波受信用の第1アンテナ601の2本のアンテナを基板に配置し、これら第1アンテナ601と第2アンテナ602を交互に切り替えて、第1,第2アンテナ601,602でRSSIと位相情報を取得し、RSSIが高いほうのアンテナの位相情報を、車両20(ECE60)と携帯端末30との距離算出に使用するようにしたので、車両20と携帯端末30との距離を正確かつ安価に測定できる。
【0099】
なお、本実施形態の無線システム10では、車両20と携帯端末30との間の無線通信に電磁波を用いたが、光(光も電磁波の一種であるが)を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示の無線システムは、自動二輪車等の車両に有用である。
【符号の説明】
【0101】
10 無線システム
20 車両
21 車体
22 前輪
23 後輪
30 携帯端末
60 ECU
301 第3アンテナ
302,604 フロントエンド部
303,605 制御回路
601 第1アンテナ
602 第2アンテナ
603 アンテナ切り替えスイッチ
606,608 給電線
607,609 アンテナマッチング用コンデンサ
610 基板
3031,6051 発振器
3032,6052 送信部
3033,6053 受信部
3034,6054 メモリ
3035,6055 制御部
6011 第1ホットエレメント
6012 第1グランドエレメント
6013 第2ホットエレメント
6014 ベタグランド
6015 板金部