(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】NOxおよび/またはSOxを捕捉するためのナノ希土類酸化物ドープ担体
(51)【国際特許分類】
B01J 23/10 20060101AFI20240726BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20240726BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240726BHJP
【FI】
B01J23/10 A ZAB
B01J32/00
B01J35/60 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019107961
(22)【出願日】2019-06-10
【審査請求日】2022-04-19
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513089291
【氏名又は名称】パシフィック インダストリアル デベロップメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ジスコウスキー,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジェシカ
(72)【発明者】
【氏名】ラシャペル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ウェイ
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-501346(JP,A)
【文献】特表2017-502837(JP,A)
【文献】特表2007-503987(JP,A)
【文献】特表2008-526661(JP,A)
【文献】国際公開第2009/001902(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/136821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/10
B01J 32/00
B01J 35/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
400℃未満の温度でNOxおよびSOxのうちの1種類以上を捕捉できるように、ナノ希土類酸化物粒子でドープされた無機酸化物材料を含む触媒担体であって、
前記ナノ希土類酸化物粒子は、
図3A~図4Bに記載のように、前記無機酸化物上に分散しているか、または前記無機酸化物中に入り込
むように前記無機酸化物材料上に噴霧され、
前記触媒担体が一つ以上のNOxまたはSOxを400℃未満の温度でトラップできるように、前記ナノ希土類酸化物粒子は、平均粒度(D50)が10nm未満であり、
前記無機酸化物材料は、Al
2O
3、ZrO
2、TiO
2、SiO
2、MgAl
2O
4またはこれらの組み合わせであり、
前記ナノ希土類酸化物粒子は、Ce、Pr、Nd、La、Yまたはこれらの組み合わせの酸化物であって、
希土類酸化物は、可溶性希土類金属前駆体を含む溶液に無機酸化物材料を曝露することによって形成され、その結果、ある量の無機酸化物材料が含まれ、図1A~図2Bに記載のように前記希土類酸化物が配置された離散領域が含まれる従来の希土類ドープ担体の表面となることを除いて、前記触媒担体は、前記触媒担体と同じ元素組成で形成された従来の希土類ドープ担体と比較して、10%水蒸気環境において400℃未満で窒素酸化物および/または硫黄酸化物を捕捉する能力が少なくとも25%増加している、触媒担体。
【請求項2】
前記ナノ希土類酸化物粒子は、平均粒度が8nm未満である、請求項1に記載の触媒担体。
【請求項3】
前記無機酸化物材料は、Al
2O
3、ZrO
2、及びSiO
2の組み合わせである、請求項1または2に記載の触媒担体。
【請求項4】
前記触媒担体の総重量に対して、前記ナノ希土類酸化物粒子は、0.1重量%から80重量%の範囲で存在し、前記無機酸化物材料は、20重量%から99.9重量%の範囲で存在する、請求項1から3のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項5】
前記触媒担体は、表面積が50m
2/gから350m
2/gの範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項6】
前記触媒担体は、表面積が100m
2/gから200m
2/gの範囲である、請求項5に記載の触媒担体。
【請求項7】
前記触媒担体は、細孔容積が0.1cc/gから1.5cc/gの範囲である、請求項1から6のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項8】
前記触媒担体は、細孔容積が0.3cc/gから1.0cc/gの範囲である、請求項7に記載の触媒担体。
【請求項9】
前記触媒担体は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後に表面積が50m
2/gを超える、請求項1から8のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項10】
前記触媒担体は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後に細孔容積が0.2cc/gを超える、請求項1から9のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項11】
前記触媒担体は、10%蒸気環境で、200℃から350℃の間の温度で少なくとも0.5%のNO
2を捕捉することができるおよび/または150℃から325℃の間の温度で、少なくとも0.4%のSO
2を捕捉することができる、請求項1から10のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項12】
前記触媒担体は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、250℃未満の温度で、少なくとも0.5%のNO
2および/または少なくとも0.2%のSO
2を捕捉することができる、請求項1から11のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項13】
前記触媒担体は、
前記従来の希土類ドープ担体と比較した場合に、10%蒸気環境で
350℃未満の温度でのNOx捕捉容量またはSOx捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも
40%増加
する、請求項1から12のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項14】
前記触媒担体は、
前記従来の希土類ドープ担体と比較した場合に、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、
325℃未満の温度でのNOx捕捉容量またはSOx捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも
50%増加
する、請求項1から13のいずれか1項に記載の触媒担体。
【請求項15】
車両の排ガスを処理するための、三元触媒、四元触媒、ディーゼル酸化触媒または酸化触媒における、請求項1から14のいずれか1項に記載の触媒担体の使用。
【請求項16】
金属含有触媒を含む排ガス処理システムであって、前記金属含有触媒は、請求項1から14のいずれか1項に記載の触媒担体材料と、1種類以上の金属とを含む、排ガス処理システム。
【請求項17】
前記金属は、Cu、Fe、Co、Zr、Tiおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項16に記載の排ガス処理システム。
【請求項18】
ウォールフロー基材の少なくとも一部が前記金属含有触媒でコーティングされ、前記ガス流と接触するようにされている、請求項16または17に記載の排ガス処理システム。
【請求項19】
酸素の存在下でガス流に含まれる窒素酸化物または硫黄酸化物を還元するための方法であって、前記ガス流を、請求項16から18のいずれか1項に記載の金属含有触媒と接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には触媒用途に使用される酸化物担体材料に関する。具体的には、これらの酸化物担体材料には、排ガス流に含まれるNOx排出物質および/またはSOx排出物質を捕捉する機能がある。
【0002】
==関連出願へのクロスリファレンス==
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2018年6月14日に出願された米国特許仮出願第62/684,932号の出願日の利益を主張し、その内容全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
「背景技術」部分の記載は本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、先行技術を構成しない場合がある。
【0004】
炭化水素燃料の燃焼時に発生するタイプの大気汚染物質の代表的なものに、NOxと総称される場合もある、一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO2)などの各種窒素酸化物、硫黄酸化物(SOx)、粒子状物質(PM)、二酸化炭素(CO2)がある。窒素酸化物(NOx)は、燃焼過程で生じる比較的高温での窒素と酸素との反応によって形成される。一方、硫黄酸化物(SOx)排出物質は、炭化水素燃料に様々な硫黄化合物が不純物として存在することが原因で生じる。燃料の燃焼に起因する大気汚染物質には、人間の健康に有害なガスだけでなく、温室効果によって環境に影響を及ぼすガスも含まれる。
【0005】
選択的接触還元法(SCR)および選択的非接触還元法(SNCR)では、排ガスを尿素またはアンモニアと反応させて窒素と水を発生させることによって、燃焼後のNOxを低減する。SCRは現在、船舶、ディーゼルトラック、一部の乗用車での排ガス処理をはじめとして、多くの用途で用いられている。動力車のエンジンにおける排ガス再循環/触媒コンバーターの使用によって、車両の排出物質が大幅に低減されてきている。
【0006】
また、NOxガスおよびSOxガスの他の化合物への触媒変換について、現在の排出物質規制技術では、NOxおよび/またはSOxを捕捉または結合するために、様々な能動的吸収剤および受動的吸収剤が利用されている。たとえば、対応する空燃比によって決定されるリーン環境(酸化)およびリッチ環境(還元)下で、NOx吸蔵還元(NSR)触媒が周期的に稼働される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
世界の排出物質規制では、許容可能なNOx排出物質を減らす方向にある。現在の規制および将来の規制により、排ガス中に存在する可能性のある許容可能なNOx排出物質の量が90%以上低減されることになる。車両のテールパイプからのNOx排出物質のうち、75%超がコールドスタート時に発生するため、存在する触媒の総体積を増やさずに触媒活性を超えてNOx捕捉容量を増す必要性が生じる。したがって、NOxまたはSOxの捕捉能力が向上した、これらの新たな規制の要件を満たす酸化物担体材料を用いた触媒やそのような酸化物担体材料に形成された触媒が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、広義には、400℃未満の温度でNOxおよびSOxのうちの1種類以上を捕捉できるように、ナノ希土類酸化物粒子でドープされた無機酸化物材料を含む、触媒担体に関する。このナノ希土類酸化物粒子は、Ce、Pr、Nd、La、Yまたはこれらの組み合わせの酸化物であってもよい。一方、無機酸化物材料は、Al2O3、ZrO2、TiO2、SiO2、MgAl2O4またはこれらの組み合わせを含む。このナノ希土類酸化物粒子は、粒度が10ナノメートル(nm)未満であってもよい。
【0009】
本開示の別の態様によれば、排ガス処理システムが金属含有触媒を含み、金属含有触媒は、上述して本明細書にさらに規定する触媒担体材料を、1種類以上の金属と共に含む。この1種類以上の金属は、Cu、Fe、Co、Zr、Tiおよびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。望ましい場合、ウォールフロー基材の少なくとも一部が金属含有触媒でコーティングされ、ガス流と接触するようにされていてもよい。
【0010】
本開示のさらに別の態様によれば、この触媒担体を使用して、車両の排ガスを処理するための三元触媒、四元触媒、ディーゼル酸化触媒または酸化触媒を形成してもよい。
【0011】
本開示のさらに別の態様によれば、酸素の存在下でガス流に含まれる窒素酸化物または硫黄酸化物を還元するためのプロセスが提供される。このプロセスには、概略で、上述して本明細書にさらに規定するような金属含有触媒にガス流を接触させることを含んでもよい。
【0012】
さらに適用できる分野は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。明細書の説明および特定の実施例は例示の目的だけを意図しており、本開示の範囲を限定することを意図していない旨を理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示をよく理解することができるように、添付の図面を参照して、例として示す本開示の様々な形態について説明する。
【
図1】
図1Aは、従来の希土類ドープアルミナ担体の走査型電子顕微鏡写真である。
図1Bは、担体のセリウムおよびアルミニウムの位置を示す、
図1Aの従来の担体の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図2】
図2Aは、
図1Aの従来の希土類ドープアルミナ担体の高倍率での走査型電子顕微鏡写真である。
図2Bは、担体のセリウムおよびアルミニウムの位置を示す、
図2Aの従来の担体の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図3】
図3Aは、本開示の教示内容に従って形成されたナノ希土類ドープアルミナ担体の走査型電子顕微鏡写真である。
図3Bは、担体のセリウムおよびアルミニウムの位置を示す、
図3Aのナノ希土類担体の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図4】
図4Aは、
図3Aのナノ希土類ドープアルミナ担体の高倍率での走査型電子顕微鏡写真である。
図4Bは、担体のセリウムおよびアルミニウムの位置を示す、
図4Aのナノ希土類担体の透過型電子顕微鏡写真である。
【
図5】
図5Aは、新鮮な従来の希土類ドープ担体および本開示に従って調製した新鮮なナノ希土類ドープ担体についての10%蒸気環境におけるNO
x捕捉のグラフ比較である。
図5Bは、従来の希土類ドープ担体および本開示に従って調製したナノ希土類ドープ担体を10%蒸気環境において800℃で16時間エージング後のNO
x捕捉のグラフ比較である。
【
図6】
図6Aは、新鮮な従来の希土類ドープ担体および本開示に従って調製した新鮮なナノ希土類ドープ担体についての10%蒸気環境におけるSO
x捕捉のグラフ図である。
図6Bは、従来の希土類ドープ担体および本開示に従って調製したナノ希土類ドープ担体を10%蒸気環境において800℃で16時間エージング後のSO
x捕捉のグラフ比較である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で説明する図面は、例示目的のためだけのものであり、どのような形であろうと本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0015】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、決して本開示またはその用途または使用を限定することを意図するものではない。たとえば、本明細書に含まれる教示内容に従って製造および使用される触媒担体は、その組成と使用を一層十分に説明するために、自動車の排出ガスを低減するために使用される三元触媒(TWC)と共に本開示全体に記載される。四元触媒、ディーゼル酸化触媒および酸化触媒などの他の触媒または他の触媒用途にそのようなOSMを取り入れて使用することは、本開示の範囲内であると考えられる。説明全体を通して、対応する参照番号は、同様のまたは対応する部分および特徴を示すことを理解されたい。
【0016】
NOxおよび/またはSOx排出物質の75%超が、コールドスタート条件下での車両の排ガスから生じるため、触媒および触媒担体材料は、NOx排出物質および/またはSOx排出物質に対する捕捉容量が増したものでなければならない。本開示の触媒担体では、低温および中温でのNOx排出物質および/またはSOx排出物質の捕捉量を伝統的な技術および従来の担体材料を用いる場合の1.5倍超まで増すことによって、存在する触媒の体積を増やさずに上記の問題に対処する。
【0017】
本開示は主に、ナノ希土類酸化物粒子でドープされた無機酸化物材料を含む、この材料からなる、または本質的にこの材料からなる触媒担体を提供する。この触媒担体は、400℃未満の温度で、NOxおよびSOxのうちの1種類以上を捕捉することができる。
【0018】
無機酸化物材料は、触媒用途に使用できることが当業者に知られているものであれば、どのようなタイプの酸化物担体材料であってもよい。望ましい場合、無機酸化物材料は、Al2O3、ZrO2、TiO2、SiO2、MgAl2O4およびこれらの組み合わせからなる群から選択される酸化物であってもよい。あるいは、無機酸化物材料は、Al2O3、SiO2、BaOまたはこれらの組み合わせである。あるいは、無機酸化物材料は、Al2O3、SiO2、ZrO2の組み合わせである。このような組み合わせは、異なる酸化物材料を単に混ぜ合わせて得られるものであってもよいし、異なる酸化物を、たとえばゼオライトなどのアルミノケイ酸塩で形成される骨格構造など、共通の骨格構造に組み込んで得られるものであってもよい。
【0019】
望ましい場合、触媒担体の無機酸化物含有量は、触媒担体の総重量に対して、約20重量%から99.9重量%の範囲であってもよいし、あるいは約30重量%から約99重量%、あるいは約40重量%から約90重量%、あるいは約50重量%から約80重量%の間であってもよい。また、触媒担体中のナノ希土類酸化物含有量は、0.1重量%から約80重量%の範囲であってもよいし、あるいは約1重量%から約70重量%、あるいは約10重量%から約60重量%、あるいは約20重量%から約50重量%の間であってもよい。
【0020】
本開示の別の態様によれば、触媒担体中に存在するナノ希土類酸化物粒子は、セリウム(Ce)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)、またはそれらの組み合わせの酸化物を含むように選択されてもよいが、これらに限定されるものではない。これらのナノ希土類酸化物粒子は、平均粒度(D50)が約10ナノメートル(nm)未満、あるいは約8ナノメートル未満、あるいは約1ナノメートルから約10ナノメートルの間である。ナノ希土類酸化物の最大粒度を測定すると、約50ナノメートル、あるいは40ナノメートル未満、あるいは25ナノメートル未満、あるいは10ナノメートル未満である。
【0021】
触媒担体は、表面積が約25m2/gから約500m2/gの範囲、細孔容積(PV)が0.05cc/gから約2.0cc/gの範囲であってもよい。あるいは、触媒担体の表面積は、約50m2/gから約350m2/gの範囲、あるいは約100m2/gから約200m2/gの範囲であってもよい。あるいは、触媒担体の細孔容積(PV)は、0.1cc/gから約1.5cc/gの範囲、あるいは約0.3cc/gから約1.0cc/gの範囲であってもよい。
【0022】
10%蒸気環境において800℃で約16時間の触媒担体でのエージング時、触媒担体の表面積および細孔容積が、その触媒担体の調製直後の測定値よりも小さくなる場合がある。しかしながら、そのようなエージング後、触媒担体の表面積は依然として少なくとも25m2/gであるか、あるいは50m2/g以上であり、最高容積は少なくとも0.1cc/g、あるいは0.2cc/g以上である。
【0023】
ここで
図1Aおよび
図2Aを参照すると、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、最大倍率1マイクロメートル(μm)または300ナノメートル(nm)で、それぞれ従来の希土類酸化物担体(C-1)の画像を提供することができる。この従来の担体(C-1)は、酸化アルミニウム(Al)材料に酸化セリウム(Ce)をコーティングした両者の組み合わせまたは酸化セリウム(Ce)に酸化アルミニウム(Al)材料が入り込んだ両者の組み合わせの一例である。この従来の希土類酸化物担体は、当業者に知られている任意の手段で調製することができる。
【0024】
図1Bおよび
図2Bに示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)をSEMと併せて使用して、従来の希土類酸化物担体(C-1)の表面を分析することができる。これらの従来の担体の表面には、大ざっぱにいうと、酸化セリウム(Ce)が分散したポケットまたは領域が散在した状態で、かなりの量の酸化アルミニウム(Al)が含まれている。
【0025】
従来の希土類酸化物担体(C-1)は、表面積が200m2/g、細孔容積が1.0cc/gのガンマアルミナに、硝酸セリウム溶液を含浸させて調製した。具体的には、70gのガンマアルミナをミキサーに入れ、CeO2含有量30%の硝酸セリウム溶液100gを担体にスプレーした。担体を混合し、120℃で12時間乾燥させた後、600℃で4時間焼成した。得られた従来の担体(C-1)は、酸化セリウム30%を含有する酸化セリウムドープガンマアルミナ担体であった。
【0026】
ここで
図3Aおよび
図4Aを参照すると、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、最大倍率1マイクロメートル(μm)または最大300ナノメートル(nm)で、それぞれ本開示の教示内容に従って調製したナノ希土類酸化物担体(R-1)の顕微鏡写真を提供する。この触媒担体(R-1)は、酸化アルミニウム(Al)材料に酸化セリウム(Ce)ナノ粒子をコーティングした両者の組み合わせまたは酸化セリウム(Ce)ナノ粒子に酸化アルミニウム(Al)材料が入り込んだ両者の組み合わせの一例である。本開示の教示内容に従って調製した希土類酸化物担体は、共沈および/または含浸を含むがこれらに限定されるものではない、当業者に知られている任意の手段を使用して実現することができる。
【0027】
図3Bおよび
図4Bに示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)をSEMと併せて使用して、触媒担体(R-1)の表面を分析することができる。これらの触媒担体の表面には、大ざっぱにいうと、酸化アルミニウム(Al)上に分散した状態または酸化アルミニウム(Al)の中に入り込んだ状態で、かなりの量の酸化セリウム(Ce)ナノ粒子が含まれている。
【0028】
触媒担体(R-1)は、表面積200m2/g、細孔容積1.0cc/gのガンマアルミナに、コロイド状酸化セリウム溶液を含浸させて調製した。具体的には、70gのガンマアルミナをミキサーに入れ、CeO2含有量30%のコロイド状酸化セリウム溶液100gを担体にスプレーした。担体を混合し、120℃で12時間乾燥させた後、600℃で4時間焼成した。得られた触媒担体(R-1)は、酸化セリウム30%を含有する酸化セリウムドープガンマアルミナ担体であった。
【0029】
ここで
図5Aおよび
図6Aを参照すると、本開示の触媒担体(R-1)によって捕捉することができるNO
xおよび/またはSO
xの量と、従来の希土類ドープ酸化物担体(C-1)で捕捉される量が比較されている。
図5Aに示すように、触媒担体(R-1)は、蒸気環境において、約350℃未満、あるいは約150℃から約350℃の間、あるいは約200℃から300℃の間の温度で、少なくとも0.5%のNO
2を捕捉することができる。
図6Aに示すように、触媒担体(R-1)は、蒸気環境中、約325℃未満、あるいは約150℃から約325℃の間の温度で、少なくとも0.4%のSO
2を捕捉することができる。
【0030】
このまま
図5Aおよび
図6Aを参照すると、本開示の触媒担体(R-1)によって捕捉することができるNO
xおよび/またはSO
xの量は、同一の温度範囲で、従来の希土類ドープ担体(C-1)で捕捉される量よりも多い。実際、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境において、従来の希土類ドープ担体(C-1)と比較した場合に、400℃未満の温度でのNO
x捕捉容量またはSO
x捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも25%増加する。あるいは、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で、従来の希土類ドープ担体(C-1)と比較した場合に、350℃未満の温度でのNO
x捕捉容量またはSO
x捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも40%増加する。あるいは、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で、従来の希土類ドープ担体(C-1)と比較した場合に、325℃未満の温度でのNO
x捕捉容量またはSO
x捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも50%増加する。
【0031】
ここで
図5Bおよび
図6Bを参照すると、本開示に従って調製した触媒担体は、所定の時間使用するとNO
xおよび/またはSO
x捕捉性能が低下する場合がある。しかしながら、
図5Bに示すように、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、250℃未満の温度で依然として少なくとも0.5%のNO
2を捕捉することができる。また、
図6Bに示すように、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、250℃未満の温度で依然として少なくとも0.2%のSO
2を捕捉することができる。
【0032】
そのまま
図5Bおよび
図6Bを参照すると、エージング後の触媒担体(R-1)は、エージング後の従来の担体(C-1)と比較して、依然としてNO
x捕捉能力および/またはSO
x捕捉能力が増している。実際、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、従来の希土類ドープ担体(C-1)と比較した場合、400℃未満の温度でNO
x捕捉容量またはSO
x捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも10%増加する。あるいは、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、従来の希土類ドープ担体(C-1)と比較した場合、350℃未満の温度でNO
x捕捉容量またはSO
x捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも20%増加する。あるいは、触媒担体(R-1)は、10%蒸気環境で800℃にて16時間エージング後、従来の希土類ドープ担体(C-1)と比較した場合、300℃未満の温度でNO
x捕捉容量またはSO
x捕捉容量の少なくとも一方が、少なくとも30%増加する。
【0033】
本開示の目的のために、「捕捉された」または「捕捉する」という表現は、触媒担体表面でのNOxおよび/またはSOxの吸着、触媒担体の大部分によるNOxおよび/またはSOxの吸収またはその両方の発生をいう。当業者であれば、触媒担体でのNOxおよび/またはSOx捕捉後、限定ではなく炭化水素が豊富な雰囲気との反応で水と窒素とを発生させることをはじめとする1つ以上のメカニズムを使用することによって、NOxおよび/またはSOxの脱着によって触媒担体を再生できることを理解するであろう。
【0034】
本開示の別の態様によれば、触媒担体を使用して、車両の排ガスを処理するための、三元触媒、四元触媒、ディーゼル酸化触媒または酸化触媒を形成することができる。触媒担体をこのように使用すると、排ガス処理システムが提供される。この排ガス処理システムは主に、1種以上の金属と共に本明細書にて規定される触媒担体を含む、この触媒担体からなる、または本質的にこの触媒担体からなる金属含有触媒を含む。金属含有触媒中に存在する金属は、白金族金属であってもよい。望ましい場合、金属は、限定することなく、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)またはチタン(Ti)またはこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、金属は、Cu、Fe、Co、ZrまたはTiのうちの1つまたは複数を含む。金属含有触媒中に存在する金属の量は0重量%から最大8重量%の範囲、あるいは約1重量%から約7重量%の範囲、あるいは約2重量%から約5重量%の範囲で、残りが触媒担体であってもよい。
【0035】
排ガス処理システムは、ウォールフロー基材、フィルタ、またはモノリスの少なくとも一部が金属含有触媒でコーティングされ、ガス流と接触するようにされて形成されてもよい。この場合、金属含有触媒は、限定されないが、ウォッシュコートとして塗布することができる。望ましい場合、ウォールフロー基材は、ハニカム構造を含んでもよい。
【0036】
本開示のさらに別の態様によれば、酸素の存在下でガス流に含まれる窒素酸化物または硫黄酸化物を還元するためのプロセスが提供される。このプロセスは主に、ガス流を、上述して本明細書にさらに規定するような金属含有触媒と接触させることを含む。
【0037】
本開示の目的のために、本明細書では、当業者に知られている想定される変動(測定の限界とばらつきなど)による測定可能な値および範囲に関して、「約」および「実質的に」という表現を使用する。
【0038】
本開示の目的のために、「重量」という用語は、単位がグラム、キログラムなどになる質量の値をいう。また、上限値と下限値を用いた数値範囲に言及する場合、上限値および下限値それ自体ならびにその数値範囲に包含されるすべての数を含む。たとえば、40重量%から60重量%という範囲の濃度は、40重量%、60重量%、その間のすべての濃度(たとえば、40.1%、41%、45%、50%、52.5%、55%、59%など)を含む。
【0039】
本開示の目的のために、「少なくとも一方」および「1つ以上の」要素という表現を同義に使用し、これらの表現が同じ意味を持つ場合がある。これらの表現は、単一の要素または複数の要素を含むことを示し、そのことを要素の末尾に接尾辞「(s)」を付して表す場合もある。たとえば、「少なくとも1種類の金属」、「1種類以上の金属」および「金属(metal(s))」を同義に使用し、同じ意味を持たせることを意図している。
【0040】
本明細書内では、明確かつ簡潔な明細書を記載できるように実施形態を説明してきたが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせたり分離したりしてもよいことが意図されており、その旨が理解されるであろう。たとえば、本明細書に記載のすべての好ましい特徴は、本明細書に記載の本発明のすべての態様に適用可能であることが理解されるであろう。
【0041】
本開示に照らして、本明細書に開示した特定の実施形態に多くの変更を加えることができ、依然として本発明の意図または範囲から逸脱したりこれを超えたりすることなく同等または類似の結果を得られることが、当業者には自明であろう。また、本明細書で報告した特性が、日常的に測定され、なおかつ複数の異なる方法で得られる特性を表すことも、当業者であれば理解するであろう。本明細書に記載の方法は、そのような方法の1つを表し、本開示の範囲を超えることなく他の方法を利用することができる。
【0042】
本発明の様々な形態の前述の説明は、例示および説明の目的で提示されている。網羅的であることを意図したものではなく、本発明を開示された正確な形態に限定することを意図したものでもない。上記の教示内容に照らして、多くの改変または変形が可能である。ここで論じた形態は、本発明の原理およびその実用的な用途を最も良く示すことで、当業者が考える特定の用途に適した様々な形態および様々な改変を施した形で本発明を利用できるようにするために選択して説明したものである。そのような改変および変形はいずれも、公正かつ合法的、正当に権利が与えられる外延に従って解釈されるとき、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内である。