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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ガス発生器の組立方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 7/00 20060101AFI20240726BHJP
【FI】
B01J7/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019150384
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021030120
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 正人
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-214206(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0069178(KR,A)
【文献】特開2016-013748(JP,A)
【文献】特開2008-114773(JP,A)
【文献】特開2007-297252(JP,A)
【文献】特開昭47-046294(JP,A)
【文献】国際公開第2018/203457(WO,A1)
【文献】特開2011-255750(JP,A)
【文献】特開昭52-031430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と、該底面部に対向する位置に形成された開口に向かって延在し、且つ、該底面部の周縁に接続された周壁部と、を有する外郭容器を準備するステップと、
前記周壁部の内径よりも小さい外径を有する筒状のフィルタを前記外郭容器の前記開口から前記フィルタの外周部が該周壁部に沿うように該外郭容器内に挿入するステップと、
前記フィルタの径方向への移動を規制するフィルタ規制治具を前記外周部及び前記外郭容器に当接させて該外郭容器に対する該フィルタの該径方向の位置決めをし、前記周壁部と該外周部の間に環状の隙間を形成するステップと、
前記フィルタ規制治具と独立し、且つ、前記外郭容器の前記底面部及び前記周壁部が嵌る凹状形状を有するベース治具上に該外容器を載置する載置ステップと、
前記フィルタ規制治具で前記フィルタを前記外郭容器に対する前記径方向の位置決めをした状態で該フィルタの内側にガス発生剤を充填するステップであって、該ガス発生剤が該外郭容器内で該フィルタの前記径方向への移動を阻止するように、該ガス発生剤が該フィルタの内側で該径方向に互いに作用し合うまで充填するステップと、
前記フィルタ規制治具を前記フィルタから取り外すステップと、
を含む、ガス発生器の組立方法。
【請求項2】
前記底面部から前記フィルタの該底面部の側の端部よりも前記開口の側に延在する内筒部材が、前記外郭容器内であって該フィルタの内側に固定されており、
前記ガス発生剤を前記フィルタの内側に充填するステップにおいて、前記内筒部材の周りに前記ガス発生剤を充填し、
前記外郭容器の前記開口から前記ガス発生剤上にリテーナを圧入して、該ガス発生剤を前記フィルタと前記内筒部材との間に固定するステップを更に含む、
請求項1に記載のガス発生器の組立方法。
【請求項3】
前記ガス発生剤を前記フィルタの内側に充填するステップにおいて、前記内筒部材の上端部に配置されて該フィルタの内側に向かって傾斜する環状の傾斜面と、該ガス発生剤の上端を均す羽根と、を有するガス発生剤充填治具が用いられ、
前記傾斜面によって前記フィルタと前記内筒部材との間に前記ガス発生剤の充填が促され、
前記羽根によって前記フィルタと前記内筒部材との間に充填された前記ガス発生剤の上
部が均される、
請求項2に記載のガス発生器の組立方法。
【請求項4】
前記フィルタ規制治具は、前記周壁部の外径に合わせて形成された拡径部と、前記フィルタの外径に合わせて形成された縮径部と、を有し、
前記環状の隙間を形成するステップにおいて、前記拡径部を前記周壁部の少なくとも一部に当接させ、前記縮径部を前記外周部の少なくとも一部に当接させて、前記フィルタ規制治具で該周壁部及び該外周部を取り囲むように配置する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のガス発生器の組立方法。
【請求項5】
前記ガス発生剤を前記フィルタの内側に充填するステップにおいて、前記フィルタ規制治具、前記フィルタ及び前記外郭容器を振動させながら前記ガス発生剤を充填する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガス発生器の組立方法。
【請求項6】
前記フィルタ規制治具は、前記拡径部が前記周壁部の少なくとも一部に当接し、前記縮径部が前記外周部の少なくとも一部に当接した状態において、該フィルタの中心軸と前記外郭容器の中心軸とを一致させる、
請求項4に記載のガス発生器の組立方法。
【請求項7】
前記周壁部と前記外周部の間に環状の隙間を形成するステップにおいて、前記フィルタ規制治具を複数準備し、前記フィルタ規制治具が組付けられて前記外郭容器に対する前記フィルタの前記径方向の位置決めがなされた状態のものを複数準備する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のガス発生器の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器の組立方法及びガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス発生剤を燃焼させて発生した燃焼ガスを所望の動作を実現するための動力源として供給するガス発生器が知られている。ガス発生器は、点火装置の作動により、外郭容器内の燃焼室でガス発生剤を燃焼させて発生させた燃焼ガスをガス排出口から外部に供給する。このようなガス発生器においては、燃焼ガスの冷却及び濾過のために燃焼室とガス排出口との間にフィルタが配置される。特許文献1には、燃焼室とガス排出口との間にフィルタが配置されたガス発生器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-214206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタは、その中心軸とガス発生器の外郭容器の中心軸とが一致するように位置決めされて当該外郭容器内に固定される。フィルタの位置決めを行う際に位置決め治具が用いられるが、フィルタの中心軸と外郭容器の中心軸とを一致させたまま当該フィルタを固定するのは容易ではない。また、フィルタを外郭容器内で固定するための部品を当該外郭容器内に配置する場合には、部品点数の増加及びガス発生器の組立工程の工数が増加してしまう。
【0005】
本明細書では、上記した問題に鑑み、フィルタの位置決めを容易にできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本明細書で開示する実施形態は、ガス発生剤が外郭容器内でフィルタの径方向への移動を阻止するように、ガス発生剤がフィルタの内側で当該径方向に互いに作用し合うまで充填される。これにより、フィルタが径方向に位置ずれするのを抑制することで、フィルタの位置決めを容易にできる。
【0007】
具体的には、本実施形態は、ガス発生器の組立方法であって、底面部と、該底面部に対向する位置に形成された開口に向かって延在し、且つ、該底面部の周縁に接続された周壁部と、を有する外郭容器を準備するステップと、前記周壁部の内径よりも小さい外径を有する筒状のフィルタを前記外郭容器の前記開口から前記フィルタの外周部が該周壁部に沿うように該外郭容器内に挿入するステップと、前記フィルタの径方向への移動を規制するフィルタ規制治具を前記外周部及び前記外郭容器に当接させて該外郭容器に対する該フィルタの該径方向の位置決めをし、前記周壁部と該外周部の間に環状の隙間を形成するステップと、前記フィルタ規制治具で前記フィルタを前記外郭容器に対する前記径方向の位置決めをした状態で該フィルタの内側にガス発生剤を充填するステップであって、該ガス発生剤が該外郭容器内で該フィルタの前記径方向への移動を阻止するように、該ガス発生剤が該フィルタの内側で該径方向に互いに作用し合うまで充填するステップと、前記フィルタ規制治具を前記フィルタから取り外すステップと、を含む。
【0008】
ガス発生剤は、フィルタの内側で互いにフィルタの径方向に作用し合うように、且つ、互いに位置ずれしない程度の密度で充填されている。フィルタは、ガス発生剤によって径方向に掛かる荷重、すなわちガス発生剤がフィルタの内周部に掛ける圧力によって径方向の位置ずれが抑制される。これにより、フィルタの位置決めを容易にできる。
【0009】
上記のガス発生器の組立方法において、前記底面部から前記フィルタの該底面部の側の端部よりも前記開口の側に延在する内筒部材が、前記外郭容器内であって該フィルタの内側に固定されており、前記ガス発生剤を前記フィルタの内側に充填するステップにおいて、前記内筒部材の周りに前記ガス発生剤を充填し、前記外郭容器の前記開口から前記ガス発生剤上にリテーナを圧入して、該ガス発生剤を前記フィルタと前記内筒部材との間に固定するステップを更に含んでいてもよい。
【0010】
リテーナがガス発生剤上に圧入されることによって、ガス発生剤はフィルタの径方向に荷重を掛けた状態でフィルタと内筒部材との間で固定される。固定されたガス発生剤は、フィルタの内周部及び内筒部材に対してフィルタの径方向に作用し合って互いに位置ずれするのを防ぎ、ガス発生剤がフィルタの内周部及び内筒部材に掛ける荷重によってフィルタの内周部に掛かる圧力が生じ、フィルタの径方向の位置が固定される。このガス発生器の組立方法では、フィルタが位置ずれするのを防ぎ、フィルタの位置決めを容易にできる。
【0011】
上記のガス発生器の組立方法において、前記ガス発生剤を前記フィルタの内側に充填するステップにおいて、前記内筒部材の上端部に配置されて該フィルタの内側に向かって傾斜する環状の傾斜面と、該ガス発生剤の上部を均す羽根と、を有するガス発生剤充填治具が用いられ、前記傾斜面によって前記フィルタと前記内筒部材との間に前記ガス発生剤の充填が促され、前記羽根によって前記フィルタと前記内筒部材との間に充填された前記ガス発生剤の上端が均されてもよい。ガス発生剤充填治具を用いることによって、ガス発生剤の上端面が概ね水平となるようにガス発生剤をフィルタの内側に充填することができる。これにより、ガス発生剤の均一な充填を容易にできる。
【0012】
上記のガス発生器の組立方法において、前記フィルタ規制治具は、前記周壁部の外径に合わせて形成された拡径部と、前記フィルタの外径に合わせて形成された縮径部と、を有し、前記環状の隙間を形成するステップにおいて、前記拡径部を前記周壁部の少なくとも一部に当接させ、前記縮径部を前記外周部の少なくとも一部に当接させて、前記フィルタ規制治具で該周壁部及び該外周部を取り囲むように配置してもよい。フィルタ規制治具は、拡径部が外郭容器に当接し、縮径部がフィルタの外周部に当接することでフィルタの中心軸と外郭容器の中心軸とが概ね一致するような寸法で形成されている。このようなフィルタ規制治具を用いることでフィルタの径方向の位置決めを容易にできる。
【0013】
上記のガス発生器の組立方法において、前記ガス発生剤を前記フィルタの内側に充填するステップにおいて、前記フィルタ規制治具、前記フィルタ及び前記外郭容器を振動させながら前記ガス発生剤を充填してもよい。このガス発生器の製造方法によれば、ガス発生剤をフィルタの内側に均一に充填することができる。
【0014】
ここで、本実施形態をガス発生器の側面から捉えることができる。すなわち、本実施形態発明は、ガス発生器であって、底面部と、該底面部に対向する位置に形成された開口に向かって延在し、且つ、該底面部の周縁に接続された周壁部と、を有する外郭容器と、前記周壁部の内径よりも小さい外径を有する筒状のフィルタであって、該フィルタの外周部が該周壁部に沿うように該外郭容器内に挿入されたフィルタと、前記周壁部と前記外周部の間に形成された環状の隙間と、前記底面部から前記フィルタの該底面部の側の端部よりも前記開口の側に延在し、前記外郭容器内であって該フィルタの内側に固定された内筒部
材と、前記フィルタの内側と前記内筒部材との間に充填されたガス発生剤と、前記ガス発生剤上に圧入されたリテーナと、を備え、前記ガス発生剤は、前記外郭容器内で前記フィルタの径方向への移動を阻止するように、該ガス発生剤が該フィルタの内側で該径方向に互いに作用し合うまで充填されており、前記フィルタは、前記ガス発生剤が前記フィルタ及び前記内筒部材に掛ける圧力によって前記径方向の位置が固定されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルタの位置決めを容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係るガス発生器の概略構成を示す図である。
図2】実施形態に係るガス発生器の組立方法に関するフローチャートである。
図3A】実施形態に係るガス発生器の組立工程を説明する概略図(その1)である。
図3B】実施形態に係るガス発生器の組立工程を説明する概略図(その2)である。
図3C】実施形態に係るガス発生器の組立工程を説明する概略図(その3)である。
図3D】実施形態に係るガス発生器の組立工程を説明する概略図(その4)である。
図3E】実施形態に係るガス発生器の組立工程を説明する概略図(その5)である。
図3F】実施形態に係るガス発生器の組立工程を説明する概略図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係るガス発生器及びガス発生器の組立方法について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0018】
図1は、実施形態に係るガス発生器1の高さ方向の断面図である。ガス発生器1は、上部シェル2及び下部シェル3で形成されるハウジング4内に充填されたガス発生剤12を燃焼させて、燃焼ガスを放出するように構成されている。上部シェル2は、頂面部2aと、頂面部2aに対向する位置に形成された開口に向かって延在し、且つ、頂面部2aの周縁に接続された周壁部2bと、を有する。上部シェル2は、頂面部2a及び周壁部2bで囲まれた凹状の内部空間を形成する。頂面部2aは、後述の下部シェル3の底面部3aとともに、上面視で概ね円形状を有している。周壁部2bは、頂面部2aの周囲を囲み、頂面部2aから概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。周壁部2bの一端側(図1中の上側)は頂面部2aに繋がり、周壁部2bの他端側(図1中の下側)は上部シェル2の開口となる。
【0019】
下部シェル3(「外郭容器」の一例)は、底面部3aと、底面部3aに対向する位置に形成された開口(図3A図3Fに示す開口3c)に向かって延在し、且つ、底面部3aの周縁に接続された周壁部3bを有する。下部シェル3は、底面部3a及び周壁部3bで囲まれた凹状の内部空間を形成する。周壁部3bは、底面部3aの周囲を囲み、底面部3aから概ね垂直に延在した環状の壁面を形成している。
【0020】
周壁部3bは、底面部3a側から小径周壁部31、大径周壁部33及び接続部32に区分される。小径周壁部31の一端側(図1中の下側)は底面部3aに繋がり、小径周壁部31の他端側(図1中の上側)は接続部32に繋がっている。接続部32は、小径周壁部
31と大径周壁部33との間に配置されて小径周壁部31と大径周壁部33を接続している。大径周壁部33の径は小径周壁部31の径よりも大きく、大径周壁部33による内部空間の半径は、小径周壁部31による内部空間の半径より大きく形成されている。また、大径周壁部33による内部空間の半径は、上部シェル2の周壁部2bによる内部空間の半径と概ね同じである。また、大径周壁部33の一端側(図1中の下側)は接続部32に繋がっており、大径周壁部33の他端側(図1中の上側)は下部シェル3の開口となる。
【0021】
そして、上部シェル2の周壁部2bの他端側(図1中の下側)と下部シェル3の大径周壁部33の他端側(図1中の上側)とは例えば溶接によって接合されており、これによってハウジング4が形成されている。ハウジング4の内部には、ガス発生剤12が充填される燃焼室6が形成される。なお、ハウジング4において、上部シェル2と下部シェル3は、内部に充填されるガス発生剤12の防湿等のために好適な接合方法により接合されていればよい。なお、ガス発生剤12の詳細については後述する。
【0022】
ハウジング4の内部空間の中心部分には、点火器5が配置されている。より具体的には、下部シェル3の底面部3aには、点火器5が固定される孔34が形成されており、点火器5は孔34から下部シェル3内に挿入されて底面部3aに樹脂で固定されている。本実施形態に係るガス発生器1は、点火装置として点火器5を備えている。点火装置は、点火器5のみで構成されていてもよいし、点火器5と公知の伝火薬とを含んで構成されていてもよい。伝火薬には、例えばニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む粒状や円柱状のものを用いることができる。
【0023】
またガス発生器1は、下部シェル3の底面部3aに固定された内筒部材7を備える。内筒部材7は、カップ型形状を有し、内部に公知の伝火薬(不図示)を収容する収容部を形成している。より具体的には、内筒部材7は、上面視において概ね円形状の上端部7aと、上端部7aの周縁に繋がって上端部7aの周囲を囲み、上端部7aの対向する側に形成された開口に向かって延在する周壁部7bと、を有する。内筒部材7は、その開口側が底面部3aに固定されている。また、内筒部材7の周壁部7bが点火器5の周囲を囲んでおり、内筒部材7の周壁部7bの周囲には環状の燃焼室6が形成される。また、周壁部7bにはその周方向に沿って複数の連通孔7cが設けられている。連通孔7cは、内筒部材7内と燃焼室6内とを連通している。なお、ガス発生器1の作動前においては、連通孔7cはアルミニウムテープによって閉塞されていてもよい。
【0024】
上部シェル2の周壁部2bには、ガス発生剤12の燃焼により発生する燃焼ガスを外部に排出するガス排出口8が周壁部2bの周方向に沿って複数設けられている。各ガス排出口8は、ハウジング4の内部と外部とを連通している。また、外部より湿気が侵入するのを阻止するために、ガス発生器1の作動前ではアルミニウムテープ9によりガス排出口8が上部シェル2の内部から塞がれている。
【0025】
また、ガス発生器1は、燃焼室6とガス排出口8との間に配置され、金属材で形成されて燃焼ガスを冷却及び濾過(浄化)するフィルタ11を備える。フィルタ11は、下部シェル3の大径周壁部33の内径よりも小さい外径を有する筒状形状を有する。フィルタ11は、その外周部11aが大径周壁部33及び上部シェル2の周壁部2bに沿うようにハウジング4内に挿入されている。フィルタ11の下端部は下部シェル3の接続部32の内壁に当接されており、フィルタ11の上端部は上部シェル2の頂面部2に当接されている。フィルタ11は、ステンレス鋼製平編の金網を半径方向に重ね、半径方向及び軸方向に圧縮して形成されており、ガス発生剤12による燃焼ガスを冷却し、その燃焼残渣を捕集(濾過)する。フィルタ11として、その他に針金を心棒に多層に巻いて形成された巻線タイプの構造のものを採用してもよい。また、フィルタ11の外周部11aと、上部シェル2の周壁部2b及び下部シェル3の大径周壁部33との間に形成された環状の隙間10
により、フィルタ11の周囲に環状のガス通路が形成される。隙間10を流れる燃焼ガスはガス排出口8からハウジング4の外部に排出される。この隙間10により、燃焼ガスはフィルタ11の全領域を通過し、フィルタ11の有効利用と燃焼ガスの効果的な冷却及び濾過が達成される。
【0026】
内筒部材7は、フィルタ11の内側に固定されて、底面部3aからフィルタ11の底面部3a側の端部よりも頂面部2a側に延在している。フィルタ11の内側(内周部11b)と内筒部材7との間に形成された燃焼室6内には、ガス発生剤12が充填されている。ガス発生剤12には、比較的燃焼温度の低いものが用いられる。ガス発生剤12の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲にあることが望ましく、例えば、ガス発生剤12には、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物からなる、単孔円柱状のものを用いることができる。
【0027】
ここで、ガス発生剤12は、フィルタ11の内側で互いにフィルタの径方向に作用し合うように、且つ、互いに位置ずれしない程度の密度で充填されている。フィルタ11は、ガス発生剤12によって径方向に掛かる荷重、すなわちガス発生剤12がフィルタ11の内周部11bに掛ける圧力によって径方向の位置ずれが抑制される。ガス発生器1は、フィルタ11と内筒部材7との間に充填されているガス発生剤12によってフィルタ11の径方向の位置が固定されている。
【0028】
また、ガス発生器1は、ガス発生剤12上に圧入されたリテーナ13を備える。リテーナ13は内筒部材7に対して圧入されている。リテーナ13によって固定されたガス発生剤12によって、ハウジング4内で底面部3aだけでなくハウジング4の径方向においてフィルタ11の内周部11b及び内筒部材7の周壁部7bにその荷重が掛かる。ガス発生剤12はフィルタ11の径方向に荷重を掛けた状態でフィルタ11の内周部11bと内筒部材7の周壁部7bとの間で固定される。固定されたガス発生剤12は、フィルタ11の内周部11b及び内筒部材7に対してフィルタ11の径方向に作用し合って互いに位置ずれするのを防ぎ、ガス発生剤12がフィルタ11の内周部11b及び内筒部材7に掛ける荷重によって内周部11bに掛かる圧力によってフィルタ11の径方向の位置が固定される。
【0029】
また、例えば、ガス発生器1が車両用のエアバッグ装置に用いられる場合には、頂面部2aが底面部3aよりも上方となるようにガス発生器1が取り付けられるため、ガス発生剤12の自重によっても底面部3aに荷重が掛かるが、ガス発生剤12による荷重がハウジング4の径方向に分散されてフィルタ11や内筒部材7にも掛かり易く維持されやすい。
【0030】
次に、本実施形態に係るガス発生器の組立方法(以下、単に「組立方法」と称する)について、図2図3Fを用いて説明する。図2は、本実施形態に係る組立方法のフローチャートである。本実施形態に係る組立方法では、図2に示すように先ず下部シェル3を準備する(ステップS101)。図3Aは、下部シェル3がベース治具100上に載置された状態での断面図である。ベース治具100は、下部シェル3の底面部3a及び小径周壁部31が嵌る凹状形状を有し、底面部3a及び小径周壁部31に当接して組立時に下部シェル3が位置ずれするのを抑制する。また、下部シェル3は予め孔34に点火器5が取り付けられ、さらに伝火薬が充填された内筒部材7が取りつけらえた状態としておく。以降では点火器5の図示を省略している。なお、ベース治具100上に下部シェル3を載置するタイミングは、後述するステップS104の工程の直前でもよい。
【0031】
次いで、図2に示すように、フィルタ11を下部シェル3内に挿入する(ステップS102)。図3Bは、フィルタ11が下部シェル3内に挿入された状態での断面図である。
フィルタ11は、下部シェル3の開口3cからフィルタ11の外周部が大径周壁部33に沿うように下部シェル3内に挿入される。この際、フィルタ11は、その下端部が接続部32の内壁に当接するまで下部シェル3内に挿入される。フィルタ11が挿入された状態において、内筒部材7は、フィルタ11の底面部3a側の端部よりも開口3c側に延在して、フィルタ11の内側に固定されている。
【0032】
次いで、図2に示すように、周壁部3bとフィルタ11の外周部11aの間に環状の隙間10を形成する(ステップS103)。図3Cは、環状の隙間10が形成された状態での断面図である。フィルタ11の径方向への移動を規制するフィルタ規制治具101を外周部11a及び下部シェル3に当接させて下部シェル3に対するフィルタ11の径方向の位置決めをし、大径周壁部33と外周部11aの間に環状の隙間10が形成される。
【0033】
また、図3Cに示すように、フィルタ規制治具101は、大径周壁部33の外径に合わせて形成された拡径部101aと、フィルタ11の外径に合わせて形成された縮径部101bと、を有する。ステップS103において、拡径部101aを大径周壁部33の一部に当接させ、縮径部101bをフィルタ11の外周部11aに当接させて、フィルタ規制治具101で大径周壁部33及び外周部11aを取り囲むように配置する。なお、フィルタ規制治具101は、フィルタ11の径方向を下部シェル3に対して位置決めするために、拡径部101aを大径周壁部33の少なくとも一部に当接させ、縮径部101bをフィルタ11の外周部11aの少なくとも一部に当接させることができればよい。また、ステップS103では、フィルタ11の中心軸と下部シェル3の中心軸とが概ね一致するようにフィルタ11の位置決めを行う。フィルタ規制治具101は、拡径部101aが下部シェル3の大径周壁部33に当接し、縮径部101bがフィルタ11の外周部11aに当接することでフィルタ11の中心軸と下部シェル3の中心軸とが概ね一致するような寸法で形成されている。このように、フィルタ規制治具101を用いることでフィルタ11の径方向の位置決めを容易にできるため、図3Bの状態ではフィルタ11の中心軸と下部シェル3の中心軸が多少ずれていても問題ない。なお、ステップS101からステップS103の工程は、下部シェル3をベース治具100から降ろした状態で行ってもよい。この際、フィルタ規制治具101を複数準備しておき、図3Cに示す組付け状態のものを複数準備しておく。これによって、フィルタ規制治具101自体をベース治具100や後述する他の治具から独立させることができ、ベース治具100上で図3Cに示す組付け状態のものを作成するよりも、あらかじめ組付けられたものをベース治具100に載せた後に以降の工程を行う方が、製造に要する時間を短縮することができる。
【0034】
次いで、図2に示すように、ガス発生剤12を充填する(ステップS104)。図3Dは、フィルタ11の内側にガス発生剤12が充填された状態での断面図である。ステップS104において、フィルタ規制治具101でフィルタ11を下部シェル3に対するフィルタ11の径方向の位置決めをした状態でフィルタ11の内側にガス発生剤12が充填される。フィルタ規制治具101は、上面視において下部シェル3の底面部3aと概ね同じ大きさで円形の開口101cを有する。ガス発生剤12は、この開口101cを介して下部シェル3の開口3cから下部シェル3内に充填される。なお、ステップS104において、好ましくは、フィルタ規制治具101、フィルタ11及び下部シェル3を振動させながらガス発生剤12を充填する。これにより、ガス発生剤12をフィルタ11の内側に均一に充填することができる。
【0035】
また、図3Dに示すように、ガス発生剤12は点線で示す仮想線12aまで充填される。仮想線12aが充填されたガス発生剤12の上端となる。ガス発生剤12が下部シェル3内でフィルタ11の径方向への移動を阻止するように、ガス発生剤12がフィルタ11の内側で互いに当該径方向に作用し合う状態になるまで充填される。ここで、ガス発生剤12がフィルタ11の内側で互いに当該径方向に作用し合うとは、ガス発生剤12がフィ
ルタ11と内筒部材7との間での当該径方向に作用し合い、これによって、フィルタ11を上方に持ち上げた際に、ガス発生剤12及び内筒部材7を備える下部シェルも上方に持ち上がる状態までガス発生剤12が密に充填されていることである。このようにガス発生剤12を充填することでフィルタ11の径方向の位置ずれが抑制され、フィルタ11の位置決めが行われる。
【0036】
なお、図3Eに示すように、ステップS104において、内筒部材7の上端部7aに配置されてフィルタ11の内側に向かって傾斜する環状の傾斜面102aと、ガス発生剤12の上端を均す羽根102bとを有するガス発生剤充填治具102が用いられてもよい。図3Eは、フィルタ規制治具101の開口101c内にガス発生剤充填治具102が配置された状態での断面図である。ガス発生剤充填治具102の傾斜面102aは、フィルタ11と内筒部材7との間にガス発生剤12の充填を促す。ガス発生剤充填治具102の羽根102bは、環状の燃焼室6に充填されたガス発生剤群の上端部分(仮想線12aに位置するガス発生剤12)の高さ位置が等しくなるように均す。ガス発生剤充填治具12の軸102cは、下部シェル3の軸を中心に円を描くように、燃焼室6の上方を時計回りに又は半時計回りに移動して、フィルタ11の内側に充填されたガス発生剤12の上端を均す。なお、羽根102bは、フィルタ11と内筒部材7の間をガス発生剤12の上端に沿って移動可能である。ガス発生剤充填治具102を用いることによって、ガス発生剤12の上端が概ね水平となるようにガス発生剤12をフィルタ11の内側に充填することができる。
【0037】
次いで、図2に示すように、リテーナが圧入される(ステップS105)。ガス発生剤12上にリテーナ13を圧入することによってガス発生剤12が固定される。図3Fは、リテーナ13が圧入された状態での断面図である。リテーナ13は、下部シェル3の開口3cからガス発生剤12上に内筒部材7に対して圧入される。この際、リテーナの押付け治具103がフィルタ規制治具101の開口101cから挿入され、押付け治具103によってリテーナ13がガス発生剤12上に内筒部材7に対して圧入される。
【0038】
ガス発生剤12がフィルタ11の内周部11b及び内筒部材7に荷重を加えた状態を維持したままリテーナ13が圧入されて、ガス発生剤12がフィルタ11と内筒部材7との間で固定される。リテーナ13が圧入された後は、押付け治具103が取り除かれた後も固定されたガス発生剤12によって、フィルタ11の内周部7b及び内筒部材7の周壁部7bに対して掛かる荷重が保持された状態となる。ガス発生剤12は、フィルタ11の径方向に作用し合ってフィルタ11の内周部及び内筒部材7の周壁部7bに圧力を掛け、これによってフィルタ11の径方向及び軸方向の位置ずれが抑制されてフィルタ11が固定される。
【0039】
次いで、図2に示すように、フィルタ規制治具101が外される(ステップS106)。次いで、図2に示すように、その他の工程が行われる(ステップS107)。その他の工程では、押付け治具103が外された後、上部シェル2が下部シェル3に対して溶接され、ベース治具100が外される。これにより、図1に示すガス発生器1が組立てられる。
【0040】
ところで特許文献1に記載された技術では、フィルタの外周部に当接される第1外側位置決め治具と第2外側位置決め治具の相対位置を調整することによってフィルタの中心軸がディフューザシェルの中心軸に合うようにフィルタの径方向の位置決めが行われる。しかしながら、当該技術では、第1外側位置決め治具及び第2外側位置決め治具がフィルタの径方向から延在して外周部を保持して位置決めを行うため、フィルタの外周部が第1外側位置決め治具及び第2外側位置決め治具によって変形する虞がある。フィルタの外周部が変形してしまうと、第1外側位置決め治具と第2外側位置決め治具の相対位置を調整し
てもフィルタの中心軸がディフューザシェルの中心軸からずれてしまう。また、フィルタの外周部が変形しない場合であっても、第1外側位置決め治具と第2外側位置決め治具の相対位置を調整するのは困難である。この相対位置がずれてしまうと、フィルタの中心軸もディフューザシェルの中心軸からずれてしまう。
【0041】
これに対し、本実施形態に係る組立方法では、フィルタ規制治具101によってフィルタ11の下部シェル3に対する径方向の位置決めを容易にすることができ、またフィルタ規制治具101自体がフィルタ11に対して径方向に直接荷重をかけることもない。このため、本実施形態に係る組立方法では、フィルタ11の中心軸と下部シェル3の中心軸とを一致させるフィルタ11の位置決めを容易にできる。更に、ガス発生剤12が下部シェル3内でフィルタ11の径方向への移動を阻止するように、ガス発生剤12がフィルタ11の内側で当該径方向に互いに作用し合うまで充填されている。これにより、本実施形態に係る組立方法及びガス発生器1によれば、フィルタ11を固定する部品や加工を行うことなく、組立後のフィルタ11の位置ずれを防ぐことができる。本実施形態に係る組立方法及びガス発生器1によれば、部品点数の増加及び組立工程の工数増加を防ぐことができる。
【0042】
なお、上記実施形態に係る組立方法は、点火器5と燃焼室6とが各々1つのみのシングルタイプのガス発生器1の組立方法であるが、点火器5と燃焼室6とが各々2ずつのデュアルタイプのガス発生器の組立方法に本発明を適用してもよい。本発明は、デュアルタイプのガス発生器及びその組立方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 :ガス発生器
2 :上部シェル
2a :頂面部
2b :周壁部
3 :下部シェル
3a :底面部
3b :周壁部
4 :ハウジング
5 :ガス発生器
6 :燃焼室
7 :内筒部材
7a :上端部
7b :周壁部
7c :連通孔
8 :ガス排出口
9 :アルミニウムテープ
10 :隙間
11 :フィルタ
11a :外周部
12 :ガス発生剤
13 :リテーナ
31 :小径周壁部
32 :接続部
33 :大径周壁部
100 :ベース治具
101 :フィルタ規制治具
102 :ガス発生剤充填治具
102a :周壁部
102b :回転羽根
103c :軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F