(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】インモールドラベル付き容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20240726BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20240726BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20240726BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/14
B65D1/26 110
B65D25/20 Q
(21)【出願番号】P 2019157754
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】小泉 正和
(72)【発明者】
【氏名】工藤 力
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】井口 猶二
【審判官】西岡 貴央
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-129737(JP,A)
【文献】特開2002-255185(JP,A)
【文献】特開平10-156871(JP,A)
【文献】特開平6-91692(JP,A)
【文献】特開2012-206737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型と雌型とを有する金型を用いて行うインモールドラベル付き容器の製造方法であって、
前記雄型の外周面において側面ラベルを保持させ前記雄型の先端面において底面ラベルを保持させるセット工程と、
前記雄型に対し前記雌型を相対的に近接させてキャビティを形成する型閉じ工程と、
前記雌型の前記底面ラベルと対向する面に設けられたゲート孔から前記キャビティに樹脂を射出する射出工程と、を有し、
前記セット工程において、前記底面ラベルの外周縁部は、前記雄型の前記先端面から径方向外側に突出し、
前記型閉じ工程において、前記底面ラベルの外周縁部は、前記雌型の内表面に接触して前記キャビティ内で前記樹脂の流路を塞ぎ、
前記射出工程において、前記樹脂の射出圧により、前記底面ラベルの外周縁部が折り曲げられて前記側面ラベルの下端部に重なり密着する、インモールドラベル付き容器の製造方法。
【請求項2】
前記雄型の前記外周面には、軸方向に沿って延びる第1吸引スリットが設けられ、
前記セット工程において、前記雄型は、前記第1吸引スリットから吸引して帯状の前記側面ラベルの周端部を保持する、
請求項
1に記載のインモールドラベル付き容器の製造方法。
【請求項3】
前記雄型の前記外周面には、周方向に沿って延びる第2吸引スリットが設けられ、
前記セット工程において、前記雄型は、前記第2吸引スリットから吸引して前記側面ラベルを保持する、
請求項
1又は2に記載のインモールドラベル付き容器の製造方法。
【請求項4】
前記雄型の前記先端面には、第3吸引スリットが設けられ、
前記セット工程において、前記雄型は、前記第3吸引スリットから吸引して前記底面ラベルを保持する、
請求項
1~3の何れか一項に記載のインモールドラベル付き容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベル付き容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器本体にラベルをインモールド成形とすることでラベルを一体化したインモールドラベル付き容器が知られている。例えば、特許文献1には、容器本体の内側底部および外側外周部にラベルが設けられたカップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の容器では、容器内に収容される内容物が例えば食品又は飲料である場合、内容物に樹脂材料のにおいが移ったり内容物の風味が樹脂材料に吸収されたりする虞があった。特に、風味および香りが重要な内容物(例えば酒類)を容器に収容する場合、内容物の風味および香りを損なうことが懸念される。このような観点から、容器本体の内側面全体に、ラベルを一体化して当該ラベルによって内容物の風味を保護することが考えられる。内側面にラベルを一体化させるためには、金型の雄型側にラベルを保持させた状態でインモールド成形を行う必要がある。しかしながら、この場合、成型時に樹脂の流動によってラベルにめくれが生じやすく、インモールドラベルを精度良く一体化することが困難であった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、容器本体の内側面にインモールドラベルを精度良く貼着したインモールドラベル付き容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の一態様に係るインモールドラベル付き容器は、筒状の胴部および前記胴部の下端部を閉塞する底部を有する容器本体と、前記容器本体の内表面に貼着され前記内表面全体を覆うインモールドラベルと、を備え、前記インモールドラベルは、前記胴部に設けられた側面ラベルと、前記底部に設けられた底面ラベルと、を有し、前記底面ラベルの外周縁部は、上側に折れ曲がり前記容器本体と前記側面ラベルの下端部との間に挟まれ、前記側面ラベルの上側縁部は、前記内表面の上端の縁部に位置する。
【0007】
この構成によれば、底面ラベルの外周縁部が容器本体と側面ラベルの下端部との間に挟まれる。このため、金型のキャビティ内で、底面ラベルの外周縁部が側面ラベルの下端部に重なって配置される。このような容器の成形工程において、ゲート孔は、底部の中央に配置される。上述の構成の容器によれば、当該容器を成形する射出工程において、樹脂の流動方向に対向する側面ラベルの下端部が、樹脂の流動方向に沿って延びる底面ラベルによって覆われる。したがって、射出工程において、側面ラベルの下端部がめくれたり、側面ラベルと雄型の間に溶融した樹脂が流入したりすることを抑制できる。また、一方で、底面ラベルの外周縁部は、樹脂の射出圧によって雄型側に押し付けられて側面ラベルとの密着性が高められる。したがって、容器本体の内側面にインモールドラベルを精度良く貼着したインモールドラベル付き容器を提供できる。
【0008】
本発明の一態様に係るインモールドラベル付き容器の製造方法は、雄型と雌型とを有する金型を用いて行うインモールドラベル付き容器の製造方法であって、前記雄型の外周面において側面ラベルを保持させ前記雄型の先端面において底面ラベルを保持させるセット工程と、前記雄型に対し前記雌型を相対的に近接させてキャビティを形成する型閉じ工程と、前記雌型の前記底面ラベルと対向する面に設けられたゲート孔から前記キャビティに樹脂を射出する射出工程と、を有し、前記セット工程において、前記底面ラベルの外周縁部は、前記雄型の前記先端面から径方向外側に突出し、前記型閉じ工程において、前記底面ラベルの外周縁部は、前記雌型の内表面に接触して前記キャビティ内で前記樹脂の流路を塞ぎ、前記射出工程において、前記樹脂の射出圧により、前記底面ラベルの外周縁部が折り曲げられて前記側面ラベルの下端部に重なり密着する。
【0009】
この構成によれば、キャビティ内における側面ラベルの下端部のめくれを抑制しつつ、底面ラベルの外周縁部と側面ラベルとの密着性を高めることができる。結果的に、インモールドラベルを精度よく貼着したインモールドラベル付き容器を成形できる。
【0010】
上述のインモールドラベル付き容器の製造方法において、前記セット工程において、前記底面ラベルの外周縁部は、前記雄型の前記先端面から径方向外側に突出し、前記射出工程において、前記樹脂の射出圧により、前記底面ラベルの外周縁部が折り曲げられて前記側面ラベルの下端部に重なる構成としてもよい。
【0011】
この構成によれば、底面ラベルの外周縁部は、樹脂の射出圧によって折り曲げられる。このため、底面ラベルの折り曲げを作業者が行う必要がなく製造工程を簡素化しインモールドラベル付き容器を安価に製造できる。
【0012】
上述のインモールドラベル付き容器の製造方法において、前記雄型の前記外周面には、軸方向に沿って延びる第1吸引スリットが設けられ、前記セット工程において、前記雄型は、前記第1吸引スリットから吸引して帯状の前記側面ラベルの周端部を保持する構成としてもよい。
【0013】
この構成によれば、雄型の外周面に設けられた第1吸引スリットにおいて側面ラベルの周端部を吸引するため、側面ラベルを周方向に緊迫させて保持することができ、側面ラベルに皺等が生じることを抑制できる。このため、インモールドラベル付き容器において側面ラベルを精度良く貼着できる。なお、吸引スリットによる吸着によって、成型後のインモールドラベル付き容器のインモールドラベルには、筋状に突出する吸引跡が残留する。第1吸引スリットに起因する吸引跡は、内側面において軸方向に沿って延びる。
【0014】
上述のインモールドラベル付き容器の製造方法において、前記雄型の前記外周面には、周方向に沿って延びる第2吸引スリットが設けられ、前記セット工程において、前記雄型は、前記第2吸引スリットから吸引して前記側面ラベルを保持する構成としてもよい。
【0015】
この構成によれば、雄型の外周面に設けられた第2吸引スリットにおいて側面ラベルを吸引する。第2吸引スリットは、雄型の外周面において周方向に沿って延びるため、第2吸引スリット32は、周方向に延びる帯状の側面ラベルの全長を安定的に保持できる。第2吸引スリットに起因する吸引跡は、内側面において周方向に沿って延びる。
【0016】
上述のインモールドラベル付き容器において、前記雄型の前記先端面には、第3吸引スリットが設けられ、前記セット工程において、前記雄型は、前記第3吸引スリットから吸引して前記底面ラベルを保持する構成としてもよい。
【0017】
この構成によれば、底面ラベルを雄型の先端面に保持させることができる。なお、第3吸引スリットは、例えば軸方向から見て円環状とすることができる。この場合、雄型の先端面において、底面ラベルの全体をバランスよく保持できる。第3吸引スリットに起因する吸引跡は、底面において例えば円環状に延びる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、容器本体の内側面にインモールドラベルを精度良く貼着したインモールドラベル付き容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態のインモールドラベル付き容器の断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の製造方法における金型の断面模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態の製造方法におけるセット工程を示す金型の部分断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の製造方法における型閉じ工程を示す金型の部分断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の製造方法における射出工程を示す金型の部分断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の製造方法におけるセット工程を示す金型の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のインモールドラベル付き容器(以下、単に容器)10の断面図である。容器10は、容器本体11と、インモールドラベル(以下、単にラベル)20と、を備えている。なお、
図1において、見やすさのため、ラベル20の厚さ寸法を現実より大きくして図示する。
【0021】
容器本体11は、内容物を収容する。容器本体11は、有底筒状に形成されている。以下では、容器本体11の軸線を容器軸Oといい、容器軸O方向に沿う容器本体11の底部14側を下側、これとは反対側を上側という。容器軸O方向から見た平面視において、容器軸Oに交差する方向を径方向といい、容器軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0022】
容器本体11は、胴部13と、底部14と、を備えている。容器本体11は、樹脂材料からなり射出成型によって成型される。容器本体11のゲート痕Gは、底部14の下面にであって、容器軸O上に配置される。
【0023】
胴部13は、全体として下方から上方に向かうに従い漸次拡径する筒状に形成されている。胴部13の上端開口縁には、径方向の外側に向けて突出するフランジ部15が設けられている。胴部13は、容器軸Oに直交する横断面視において、全体として円形状に形成されている。
【0024】
底部14は、胴部13の下端部を閉塞する。底部14は、表裏面が容器軸O方向を向く板状に形成されている。底部14は、胴部13の下端開口縁よりも若干上方に配置されている。胴部13の下端は、底部14よりも下方に向けて突出している。
【0025】
容器本体11は、内容物を収容する収容空間を囲む内表面11cを有する。内表面11cは、内側面11aと底面11bとを有する。内側面11aは、容器軸Oの径方向内側を向く胴部13の面である。また、底面11bは、上側を向く底部14の面である。
【0026】
ラベル20は、容器本体11の内表面11c(すなわち、内側面11aおよび底面11b)に一体的に貼着されている。ラベル20は、容器本体11の内表面11cと内容部との間に介在する。これにより、内容物と容器本体11の内表面11cとの接触を抑制する。ラベル20は、内容物と容器本体11の樹脂材料との間で例えばにおい移りなど、互いに影響を与え合うことを抑制する。なお、ラベル20は、内表面11cの大部分を覆っていれば必ずしも内表面11cの全体を覆っていなくてもよい。
【0027】
ラベル20は、胴部13の内側面11aに設けられた側面ラベル21と、底部14の底面11bに設けられた底面ラベル25と、を有する。側面ラベル21は、容器軸Oの主方向に沿って帯状に延びる。また、底面ラベル25は、軸方向からみて円形である。
【0028】
図2は、
図1における領域IIの拡大図である。
側面ラベル21の下端部21aは、底面11bより若干上側に位置する。したがって、側面ラベル21は、内側面11aの下端近傍の領域を覆わない。
【0029】
底面ラベル25の外周縁部26は、容器本体11の底面11bと内側面11aとの角部において上側に折れ曲がる。これにより、外周縁部26は、内側面11aの下端近傍の領域を覆う。また、底面ラベル25の外周縁部26は、側面ラベル21の下端部21aに対し容器軸Oの径方向外側に重なる。すなわち、底面ラベル25の外周縁部26は、側面ラベル21の下端部21aと容器本体11との間に挟まれる。
【0030】
図3は、容器10を成形する金型Mの断面模式図である。
金型Mは、雄型30と雌型40とを有する。金型Mは、雄型30と雌型40とが相対的に離間および近接することで開閉する。金型Mが閉じた状態で、雄型30と雌型40との間には、キャビティCが設けられる。
【0031】
雌型40は、互いに分割可能な内型45および外型46を有する。内型45は、雄型30の下側に位置する。金型Mが閉じた状態で、内型45は、雄型30の先端面36とキャビティCを介して対向する。内型45は、容器本体11の下面を成形する。内型45は、ゲート孔45gを有する。ゲート孔45gは、容器軸O上に位置する。また、ゲート孔45gは、内型45において底部14の下面を形成する部分に開口している。すなわち、ゲート孔45gは、雌型40の底面ラベル25と対向する面に設けられる。容器本体11を構成する樹脂材料は、ゲート孔45gを通ってキャビティCに射出される。
【0032】
外型46は、雄型30を囲む環状である。金型Mを閉じた状態で、外型46は、雄型30の外周面35とキャビティCを介して径方向に対向する。外型46は、容器本体11の外周面を成形する。
【0033】
雄型30は、容器軸Oを中心とする円柱状である。雄型30は、金型Mが閉じることで雌型40内に進入する。雄型30は、容器軸Oの径方向外側を向く外周面35と、容器軸Oの軸方向を向く先端面36と、を有する。外周面35および先端面36は、それぞれラベル20を介して容器本体11の胴部13および底面11bを成形する。
【0034】
雄型30は、本体部30Eと、本体部30Eに固定される第1コア入子30A、第2コア入子30B、第3コア入子30Cおよび第4コア入子30Dと、を有する。本体部30Eは、円柱状である。本体部30Eの先端面には、軸方向に延びる保持孔30f開口する。また、本体部30Eの外周面には、軸方向に沿って延びる保持溝30gが設けられる。
【0035】
第1コア入子30Aは、軸状であり本体部30Eの保持孔30fに挿入される。第1コア入子30Aの先端には、フランジ部30hが設けられる。第1コア入子30Aの先端面には、保持凹部30iが設けられる。保持凹部30iは、軸方向から見て容器軸Oを中心とする円形である。また、第1コア入子30Aには、バキューム装置(図示略)に繋がる吸入路39が設けられる。
【0036】
第2コア入子30Bは、容器軸Oを中心とする円柱状である。第2コア入子30Bは、保持凹部30iに挿入されて第1コア入子30Aに支持される。第3コア入子30Cは、円環状である。第3コア入子30Cは、本体部30Eの先端面と第1コア入子30Aのフランジ部との間に挟み込まれる。第4コア入子30Dは、本体部30Eに保持溝30gに挿入されて本体部30Eに支持される。保持溝30gから露出する第4コア入子30Dの一面は、本体部30Eの外周面に滑らかに連なる。
【0037】
雄型30の外表面において、本体部30E、第1コア入子30A、第2コア入子30B、第3コア入子30Cおよび第4コア入子30Dの境界部には、部材同士の微細な隙間としての複数のスリットが形成される。複数のスリットは、バキューム装置に繋がる吸入路39に連通する。複数のスリットには、吸入路39を介して、バキューム装置から負圧が付与される。このため、各スリットは、ラベル20を吸着し保持できる。
【0038】
複数のスリットは、雄型30の外周面35において軸方向に沿って延びる一対の第1吸引スリット31(
図4参照)と、雄型30の外周面35において周方向に沿って延びる一対の第2吸引スリット32と、雄型30の先端面36に設けられる第3吸引スリット33に分類される。一対の第1吸引スリット31は、本体部30Eと第4コア入子30Dとの境界部に位置する(
図4参照)。一対の第2吸引スリット32のうち一方は本体部30Eと第3コア入子30Cとの境界部に位置し、他方は第3コア入子30Cと第1コア入子30Aとの境界部に位置する。第3吸引スリット33は、第1コア入子30Aと第2コア入子30Bとの境界部に位置する。各スリットの作用については、後段において説明する。
【0039】
次に、金型Mを用いた容器10の製造方法について
図5~
図7を基に説明する。容器10の製造方法は、主にセット工程と、型閉じ工程と、射出工程と、を有する。
図5~
図7は、金型Mの部分断面図であり、それぞれ容器10の製造方法の各工程に対応する。
【0040】
図5に示すように、セット工程では、雄型30の外周面35において側面ラベル21を保持させ、雄型の30の先端面36において底面ラベル25を保持させる。本実施形態の側面ラベル21は、帯状に形成されている。側面ラベル21は、第1吸引スリット31および第2吸引スリット32において雄型30の外周面35に吸着される。底面ラベル25は、円形の平面状に形成されている。底面ラベル25は、第3吸引スリット33において雄型30の先端面36に吸着される。
【0041】
図4は、容器軸Oに直交する平面に沿う雄型30の部分断面図である。側面ラベル21は、雄型30の外周面35に、周方向に沿って巻き付けられる。一対の第1吸引スリット31は、帯状の側面ラベル21の一対の周端部21bをそれぞれ吸着する。側面ラベル21の一対の周端部21b同士は、周方向に隙間を空けて対向する。すなわち、一対の周端部21b同士は、互いに重ならない。
【0042】
本実施形態によれば、雄型30が第1吸引スリット31から吸引して、帯状の側面ラベル21の周端部21bを保持する。このため、雄型30は、側面ラベル21を周方向に緊迫させて保持することができ、側面ラベル21に皺等が生じることを抑制できる。
【0043】
図3に示すように、一対の第2吸引スリット32は、雄型30の外周面35の先端部に位置し、周方向に沿って平行に延びる。一対の第2吸引スリット32は、帯状の側面ラベル21を周方向に亘って吸着する。本実施形態によれば、第2吸引スリット32は、周方向に延びる帯状の側面ラベル21の全長を安定的に保持できる。また、第2吸引スリット32は、外周面35において雄型30の先端近傍の領域に設けられる。第2吸引スリット32が側面ラベル21を吸着することで、側面ラベル21の下端部21aが外周面35から浮き上がることを抑制できる。このため、後述する射出工程において底面ラベル25の外周縁部26を側面ラベル21の下端部21aに確実に重ねさせることができる。
【0044】
図5に示すように、底面ラベル25の直径は、雄型30の先端面36の直径より大きい。したがって、セット工程において、底面ラベル25の外周縁部26は、雄型30の先端面36から径方向外側に突出する。底面ラベル25は、雄型30の先端面36に設けられた第3吸引スリット33(
図3参照)に吸着される。本実施形態の第3吸引スリットは、軸方向から見て円環状であるため、雄型30の先端面36において、底面ラベル25の全体をバランスよく保持できる。
【0045】
図6に示すように、型閉じ工程では、雄型30に対し雌型40を相対的に近接させてキャビティCを形成する。型閉じ工程において、底面ラベル25の外周縁部26は、雌型40が下側から覆いかぶさることで、雌型40の内表面に接触し上側に折れ曲がる。これにより、外周縁部26は、後段の射出工程においてキャビティC内を流動する溶融した樹脂の流路を塞いだ状態となる。
【0046】
図7に示すように、射出工程では、第1吸引スリット31、第2吸引スリット32および第3吸引スリット33でラベル20を吸着した状態で、ゲート孔45gから溶融した樹脂をキャビティCに射出する。
【0047】
溶融した樹脂は、キャビティC内において容器本体11の底部14を成形する空間を径方向外側に向かって流れ、さらに胴部13を成形する空間に達し上側に向かって流れる。溶融した樹脂は、キャビティC内で流路を塞ぐ底面ラベル25の外周縁部26を雌型40から離間させ雄型30の外周面35側に押し付ける。これにより、底面ラベル25の外周縁部26が、側面ラベル21の下端部21aに、容器軸Oの径方向外側から重なる。すなわち、本実施形態の射出工程によれば、樹脂の射出圧により、底面ラベル25の外周縁部26が折り曲げられて側面ラベル21の下端部21aに重なり密着する。
【0048】
本実施形態によれば、溶融した樹脂の流動経路において側面ラベル21の下端部21aを底面ラベル25の外周縁部26で覆うことができ、側面ラベル21が下端部21aからめくれたり、側面ラベル21と雄型30の外周面35の間に溶融した樹脂が流入したりすることを抑制できる。また、一方で、底面ラベル25の外周縁部26は、溶融した樹脂の流動方向に沿って延びるため底面ラベル25の外周縁部26は、樹脂の射出圧によって外周面35側に押し付けられて側面ラベル21との密着性が高められる。したがって、容器本体11の内側面11aにラベル20を精度良く貼着した容器10を提供できる。
【0049】
なお、本実施形態では、型閉じ工程において底面ラベル25の外周縁部26が雌型40の内表面に接触する場合について説明した(
図6参照)。しかしながら、外周縁部26の直径が雌型の40の内径より小さい場合には、外周縁部26は雌型40の内表面に接触しない。底面ラベル25の外周縁部26は、型閉じ工程において必ずしも雌型40の内表面に接触しなくても、射出工程における樹脂の射出圧によって上側に折り曲げられる。
【0050】
本実施形態によれば、金型MのキャビティC内において、底面ラベル25の外周縁部26が樹脂の射出圧によって折り曲げられて側面ラベル21の下端部21aに重なる。このため、底面ラベル25の折り曲げを作業者が行う必要がなく製造工程を簡素化し容器10を安価に製造できる。
【0051】
キャビティC内で樹脂材料が硬化すると、容器本体11および容器本体11に貼着されたラベル20からなる容器10が形成される。その後、ゲート孔45gの樹脂材料を処理してゲート痕Gを形成するとともに、金型Mから容器10を離脱させ、容器10取り出す。
【0052】
なお、第1吸引スリット31、第2吸引スリット32および第3吸引スリット33による吸着によって、成型後の容器10のラベル20には、筋状に突出する吸引跡29(
図4参照)が残留する。第1吸引スリット31に起因する吸引跡29は、容器10の内側面において軸方向に沿って延びる。第2吸引スリット32に起因する吸引跡29は、容器10の内側面において周方向に沿って延びる。第3吸引スリット33に起因する吸引跡29は、容器10の底面において例えば円環状に延びる。
【0053】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態の容器10の製造方法におけるセット工程を示す図である。第2実施形態の製造方法において、底面ラベル125は、外周縁部126が上側に体上がったカップ形状に成型されている。第2実施形態のセット工程では、雄型30の外周面35に側面ラベル21を保持させた後に底面ラベル125を先端面36に保持させる。これにより、セット工程において、底面ラベル125の外周縁部126を側面ラベル21の下端部21aに重なることができる。さらに、第1実施形態と同様の手順により型閉じ工程および射出工程を行うことで、樹脂の射出圧によって底面ラベル125の外周縁部126が側面ラベル21の下端部21aに密着する。すなわち、第2実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、容器本体11の内側面11aにラベル120を精度良く貼着した容器10を提供できる。
【0054】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…インモールドラベル付き容器(容器)
11…容器本体
11a…内側面
11b…底面
13…胴部
14…底部
20,120…インモールドラベル(ラベル)
21…側面ラベル
21a…下端部
21b…周端部
25,125…底面ラベル
26,126…外周縁部
30…雄型
31…第1吸引スリット
32…第2吸引スリット
33…第3吸引スリット
35…外周面
36…先端面
40…雌型
45g…ゲート孔
C…キャビティ
M…金型