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  • 特許-カーゴタンクユニット及び船舶 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】カーゴタンクユニット及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/16 20060101AFI20240726BHJP
   F17C 13/08 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B63B25/16 101Z
B63B25/16 Z
F17C13/08 302B
B63B25/16 101B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019238408
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107171
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 龍祐
(72)【発明者】
【氏名】寺田 伸
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亨尚
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-28238(JP,A)
【文献】特開2016-199092(JP,A)
【文献】特許第7312815(JP,B2)
【文献】特表2017-512156(JP,A)
【文献】国際公開第2009/084136(WO,A1)
【文献】特開昭57-200797(JP,A)
【文献】特公昭52-41882(JP,B1)
【文献】国際公開第2007/142400(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/076884(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0046509(KR,A)
【文献】古林義弘,伊佐博之,“液化CO2輸送船の試設計”,西部造船會々報,日本,西部造船会,1994年09月04日,第88号,pp.127-134,DOI: 10.14856/wjsna.88.0_127,ISSN 0389-911X
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16,
F17C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGCコードにおけるIMOタンク・タイプCのカーゴタンクと、
上端が前記カーゴタンクの下半部に周方向にわたって接続されているとともに、下方に向かって延びて船体に固定されたスカートと、
前記スカートの上端を前記カーゴタンクに前記周方向にわたって固定する溶接部と、
前記カーゴタンクの下半部の周方向に間隔を空けた複数個所に設けられ、前記カーゴタンクの下半部と前記スカートの内面とを接合する接合部材と、
を備えるカーゴタンクユニット。
【請求項2】
IGCコードにおけるIMOタンク・タイプCのカーゴタンクと、
上端が前記カーゴタンクの下半部に周方向にわたって接続されているとともに、下方に向かって延びて船体に固定されたスカートと、
前記スカートの上端を前記カーゴタンクに前記周方向にわたって固定する溶接部と、を備え、
前記スカートは、筒状部とタンク支持部とを備え、
前記筒状部は、上下方向に延びる円筒状であり、
前記タンク支持部は、前記筒状部の上部に連続して設けられると共に、下方に向かうに従って前記カーゴタンクの径方向外側に向かって延びているカーゴタンクユニット。
【請求項3】
前記タンク支持部と前記筒状部の中心軸とのなす角度は、上方に向かうに従って漸次大きくなるように形成されている
請求項に記載のカーゴタンクユニット。
【請求項4】
前記カーゴタンクの下半部の周方向に間隔を空けた複数個所に設けられ、前記カーゴタンクの下半部と前記スカートの内面とを接合する接合部材、をさらに備える
請求項2に記載のカーゴタンクユニット。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のカーゴタンクユニットを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カーゴタンクユニット及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス等の液化ガスを運搬する船舶は、液化ガスを収容するカーゴタンクを備えている。例えば特許文献1には、カーゴタンクが、円筒形のスカートを介して船体に支持された構成が開示されている。この特許文献1に記載されたスカートの上端部は、カーゴタンクの赤道位置に配置されている。そして、このスカートの上端部は、カーゴタンクの赤道部分に対して溶接により固定されている。
【0003】
ところで、このようなカーゴタンクは、国際海事機関(IMO)が定めた液化ガス船の安全規則であるIGC(International Gas Carrier)コードに規定される、IMOタンク・タイプBの要件に従って設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6342358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、IMOタンク・タイプB方式のカーゴタンクは、モデルテストや詳細解析手法などを用いて構造各部の応力を精密に把握し、疲労解析や破壊機構解析を正確に実施した形式である。よって、カーゴタンクとスカートとの溶接部も、タンクと同様な疲労強度の要件を満たす必要がある。このため、カーゴタンクの赤道部分とスカートとの溶接部には、削り出し加工によって形成されたリング状部材が一般に用いられている。このリング状部材は、カーゴタンクの上半部と下半部との間に接合されている。そして、リング状部材の下端部には、カーゴタンクの下半部の上端と、カーゴタンクの径方向外側に配置されるスカートの上端部とが、それぞれ溶接されている。そのため、リング状部材の下端部は、カーゴタンクの下半部の肉厚と、スカートの上端部の肉厚とを合わせた厚みを有している。
【0006】
IMOタンク・タイプB方式のカーゴタンクでは、材料がアルミニウム合金である場合を除き、リング状部材を含め、各部の肉厚の上限が40mmとなっている。カーゴタンクの下半部の肉厚は、溶接されるリング状部材の厚さ(最大40mm)からスカートの上端部の肉厚を引いたものとなる。つまり、カーゴタンクの少なくとも下半部においては、肉厚を一定以上大きくすることができないこととなる。このことは、耐圧性が求められるカーゴタンクの大型化の妨げとなっている。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、カーゴタンクの肉厚を増大させ、ひいてはカーゴタンクの大型化を図ることができるカーゴタンクユニット及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るカーゴタンクユニットは、カーゴタンクと、スカートと、溶接部と、接合部材とを備える。前記カーゴタンクは、IGCコードにおけるIMOタンク・タイプCである。前記スカートは、上端が前記カーゴタンクの下半部に周方向にわたって接続されている。前記スカートは、下方に向かって延びて船体に固定されている。前記溶接部は、前記スカートの上端を前記カーゴタンクに前記周方向にわたって固定する。接合部材は、前記カーゴタンクの下半部の周方向に間隔を空けた複数個所に設けられ、前記カーゴタンクの下半部と前記スカートの内面とを接合する。
さらに、本開示に係るカーゴタンクユニットは、IGCコードにおけるIMOタンク・タイプCのカーゴタンクと、上端が前記カーゴタンクの下半部に周方向にわたって接続されているとともに、下方に向かって延びて船体に固定されたスカートと、前記スカートの上端を前記カーゴタンクに前記周方向にわたって固定する溶接部と、を備え、前記スカートは、筒状部とタンク支持部とを備え、前記筒状部は、上下方向に延びる円筒状であり、前記タンク支持部は、前記筒状部の上部に連続して設けられると共に、下方に向かうに従って前記カーゴタンクの径方向外側に向かって延びている。
【発明の効果】
【0009】
本開示の船舶によれば、カーゴタンクの肉厚を増大させ、ひいてはカーゴタンクの大型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る船舶の全体構成を示す平面図である。
図2】本開示の実施形態に係る船舶に設けられたカーゴタンクを船首尾方向から見た半断面図である。
図3】本開示の実施形態に係るカーゴタンクとスカートとの接合部の構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本開示の実施形態における船舶の全体構成を示す平面図である。図2は、上記船舶に設けられたカーゴタンクを船首尾方向から見た半断面図である。
図1及び図2に示すように、本開示の実施形態の船舶1は、液化天然ガス等の液化ガスを貯蔵・運搬等をする。この船舶1は、船体2と、カーゴタンク20と、スカート30と、溶接部40と、を少なくとも備えている。
なお、便宜上、カーゴタンク20とスカート30と溶接部40を併せて、カーゴタンクユニットと呼称する。
【0012】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側3A,3Bと、船底4と、上甲板5と、を有している。舷側3A,3Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底4は、これら舷側3A,3Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側3A,3B及び船底4により、船体2の外殻は、船首尾方向Daに直交する断面において、U字状を成している。上甲板5は、外部に露出する全通甲板である。船体2には、船尾2b側の上甲板5上に、居住区を有する上部構造7が形成されている。
【0013】
船体2には、上部構造7よりも船首2a側に、貨物搭載区画(ホールド)8が形成されている。貨物搭載区画8は、上甲板5に対して下方の船底4に向けて凹み、上方に開口している。
【0014】
カーゴタンク20は、貨物搭載区画8内に複数設けられている。これら複数のカーゴタンク20は、船首尾方向Daに並んで配置されている。各カーゴタンク20の上部20aは、船体2の上甲板5よりも上方に突出している。これら複数のカーゴタンク20の上部20aは、上甲板5上に設けられたタンクカバー25によって覆われている。これら複数のカーゴタンク20の外表面には、それぞれ外部からの入熱を抑える断熱材(図示無し)が設けられている。
【0015】
カーゴタンク20は、球形をなしている。カーゴタンク20は、その内部に、運搬対象である液化ガスを収容する。本開示の実施形態において、カーゴタンク20に収容される液化ガスは、例えば9~20(BarG)程度の高圧低温ガスである。カーゴタンク20は、IMOが定めたIGCコードに定められた、IMOタンク・タイプC方式のタンクである。
【0016】
各カーゴタンク20は、下半部21と、上半部22と、を備えている。
下半部21は、カーゴタンク20の下部において、半球状とされている。下半部21は、下方から上方に向かって径寸法が漸次拡大している。下半部21は、例えば、図2に示す断面において、一定の曲率半径を有した半真球状であってもよいし、下方から上方に向かって段階的に曲率半径が大きくなるよう形成されている。
【0017】
上半部22は、下半部21の上部に設けられている。上半部22は、カーゴタンク20の上部において、半球状とされている。上半部22は、下方から上方に向かって径寸法が漸次縮小している。本開示の実施形態において、上半部22は、一定の曲率半径を有した半真球状であってもよいし、下方から上方に向かって段階的に曲率半径が大きくなるよう形成されていてもよい。
なお、カーゴタンク20は、上記に示した形状に限らない。カーゴタンク20は、上半部22と下半部21との間に、円筒状部(図示無し)等を備える構成とすることも可能である。
【0018】
このような各カーゴタンク20は、スカート30によって船体2に支持されている。各カーゴタンク20は、船体2とは独立したタンク構造である。カーゴタンク20は、液密構造で、その内部に収容した液化ガスの荷重を自己支持する。
【0019】
図3は、上記カーゴタンクとスカートとの接合部の構成を示す拡大断面図である。
スカート30は、カーゴタンク20を支持する。スカート30は、全体として上下方向Dvに延びる円筒状である。スカート30の下端部は、貨物搭載区画8の底部に設けられたファウンデーションデッキ部9上に固定される。スカート30の上端30tは、カーゴタンク20の下半部21の外周面21fに接続されている。
【0020】
スカート30は、筒状部31と、タンク支持部32と、を備えている。
筒状部31は、上下方向Dvに延びる円筒状で、上下方向Dvにわたって一定の径寸法を有している。この実施形態における筒状部31は、カーゴタンク20の船幅方向中心を通る軸線aを中心にした円筒状をなしている。
【0021】
タンク支持部32は、スカート30の上端部に設けられている。タンク支持部32は、筒状部31の上部に連続して設けられている。タンク支持部32は、上方に向かうに従って径方向Dr内側に向かって延びている。言い換えれば、タンク支持部32は、先端32tから下方に向かうに従って径方向Dr外側に向かって延びている。この実施形態において、タンク支持部32は、上方に向かって径方向Dr内側に湾曲する湾曲部32wを備えている。湾曲部32wは、上方に向かうに従って、筒状部31の中心軸とのなす角度が漸次大きくなるように形成されている。この実施形態における湾曲部32wの径方向Dr内側の先端32tは、スカート30の上端30tとなっている。そして、湾曲部32wの先端32tは、カーゴタンク20の下半部21の外周面21fに突き当てられている。ここで、径方向Drとは、上述した軸線aを中心とする径方向を意味する。また、以下の説明において、周方向とは、軸線aを中心とする周方向を意味する。
【0022】
カーゴタンク20の外周面に対する湾曲部32wの先端32tの交差角度θは、例えば、30°~90°程度とすることができる。ここで、交差角度θとは、軸線aを含む断面において(図3参照)、上端30tの内面30fのうち最も径方向Dr内側の部分(言い換えれば、先端32t)と、上記内面30fと交差する位置におけるカーゴタンク20の外周面21f(図3において円弧状)の接線ta1とのなす角度である。この実施形態では湾曲部32wを有し内面30fの先端32tも湾曲しているため、交差角度θは、軸線aを含む断面視で、内面30f(図3において曲線状)の先端32tにおける接線ta2と、外周面21fの接線ta1とのなす角度となる。
【0023】
図2に示すように、スカート30の上端30t(湾曲部32wの先端32t)の内径D1は、カーゴタンク20の赤道部分における外径D2よりも小さい。なお、図2において、内径D1及び外径D2は、都合上、半径分のみを示している。
これにより、カーゴタンク20は、スカート30の上端30tにより、下方から支持されている。
【0024】
図3に示すように、カーゴタンク20とスカート30とは、溶接により接合されている。これにより、カーゴタンク20とスカート30との接合部には、溶接部40が形成されている。カーゴタンク20とスカート30とを溶接する際に用いる溶接材としては、例えば9%Ni鋼等の高強度溶接材を用いることができる。このような高強度溶接材を用いることで、溶接部40の強度を高めることができるため、溶接部40の信頼性を向上できる。
【0025】
溶接部40は、スカート30の上端30tをカーゴタンク20に固定する。この実施形態で例示する溶接部40は、スカート30の上端30tをカーゴタンク20の外周面21fに対して、周方向全周にわたって連続的に固定している。なお、溶接部40が周方向全周にわたって連続的に形成される場合について説明したが、この構成に限られない。例えば、溶接部40が周方向の一部に形成されるようにしてもよい。このようにすることで、スカート30の上端30tがカーゴタンク20に対して周方向の一部で固定される。この場合、溶接部40は、カーゴタンク20の周方向に断続的、すなわち複数個所に設けてもよい。
【0026】
カーゴタンク20の下半部21の外周面21fと、スカート30において径方向Dr内側を向く内面30fとの間には、接合部材50が設けられている。接合部材50は、カーゴタンク20の下半部21の周方向に間隔を空けて複数個所に設けられている。この実施形態で例示する接合部材50は、周方向に直交する鉛直面(言い換えれば、軸線aを含む仮想平面)に沿う平板状に形成されている。接合部材50は、径方向Dr内側でカーゴタンク20の下半部21の外周面21fに沿って溶接された内側縁部50aと、径方向Dr外側でスカート30の内面30fに沿って溶接された外側縁部50bと、を有している。なお、溶接は内側縁部50aと外側縁部50bのいずれか一方のみであってもよい。この実施形態で例示する接合部材50の下縁部50cは、その径方向Dr中央部において上方に向かって窪む円弧状に形成されている。なお、下縁部50cの形状は、径方向Dr中央部が上方に向かって窪む円弧状に限られない。
【0027】
上記実施形態の船舶は、カーゴタンク20の下半部21の周方向に間隔を空けた複数個所に設けられ、カーゴタンク20の下半部21とスカート30の内面とを接合する接合部材50、をさらに備えている。
そのため、周方向に複数設けられた接合部材50により、球形の下半部21とスカート30の内面30fとを、より強固に接合することができる。その結果、スカート30によるカーゴタンク20の支持強度をさらに高めることが可能となる。
【0028】
上記実施形態の船舶では、スカート30の上端部は、下方に向かうに従ってカーゴタンク20の径方向Dr外側に向かって延びている。そして、カーゴタンク20を支持するスカート30の上端30tは、カーゴタンク20の下半部21に接続されている。また、スカート30の上端30tは、カーゴタンク20の下半部21の外周面21fに対し、径方向Dr外側から突き当たるようにして溶接部40により接続されている。
したがって、スカート30の上端30tとカーゴタンク20の下半部21の外周面21fとが確実に溶接され、溶接部40の接合強度を有効に高めることができる。
【0029】
上記実施形態の船舶では、スカート30の上端部は、上方に向かって径方向Dr内側に湾曲する湾曲部32wを有し、湾曲部32wの先端32tがカーゴタンク20の外周面21fに溶接されている。
このようにスカート30の上端部に湾曲部32wが形成されることで、湾曲部32wの下端と筒状部31の上端とを滑らかに連続させて形成することができる。そのため、カーゴタンク20の外周面21fに湾曲部32wの先端32tが溶接されたスカート30において、カーゴタンク20の荷重による応力が局所的に集中することが抑えられる。
【0030】
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態では、スカート30の上端部に湾曲部32wを設けるようにしたが、これに限るものではない。スカート30の上端部は、下方に向かうに従ってカーゴタンク20の径方向Dr外側に向かって延びていればよく、例えば円錐筒状としてもよい。この場合、スカート30の上端部において円錐筒状の部分の下端と、筒状部31の上端との接合部分に角部が生じる。そのため、カーゴタンク20の荷重による応力が、円錐筒状の部分の下端と筒状部31との角部に局所的に集中する可能性がある場合は、十分な強度を確保するべく、上記角部に補強等を行うようにしてもよい。
【0031】
また、上記実施形態では、スカート30の上端部を、下方に向かうに従ってカーゴタンク20の径方向Dr外側に向かって延びるように設けたが、これに限られるものではない。例えば、スカート30の上端部は、上下方向Dvに沿って一定の径を有した円筒状としてもよい。
【0032】
上記実施形態では、接合部材50を備えるようにしたが、接合部材50の形状については何ら限定するものではない。接合部材50は、カーゴタンク20の下半部21とスカート30の内面30fとを接合するのであれば、適宜他の形状とすることができる。また、接合部材50の周方向における設置間隔、設置数等についても適宜変更可能である。さらに、接合部材50を備えない構成とすることも可能である。
【0033】
上記実施形態では、カーゴタンク20及びスカート30は、船体2内に形成された貨物搭載区画8内に設ける構成としたが、これに限るものではなく、例えば、カーゴタンク20及びスカート30は、例えば、上甲板5上に設けるようにしてもよい。
また、上記実施形態では船体2に設置する場合を想定しているが、これに限るものではなく、例えば図示しない浮体上に設けるようにしてもよい。
【0034】
<付記>
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0035】
(1)第1の態様に係るカーゴタンクユニットは、IGCコードにおけるIMOタンク・タイプCのカーゴタンク20と、上端30tが前記カーゴタンク20の下半部21に周方向にわたって接続されているとともに、下方に向かって延びて船体2に固定されたスカート30と、前記スカート30の上端30tを前記カーゴタンク20に前記周方向にわたって固定する溶接部40と、を備える。
【0036】
IMOタンク・タイプCが適用されるカーゴタンク20は、その内部に収容される液化ガスの温度・圧力に耐えうる圧力容器規格に基づいて設計される。IGCコードにおけるIMOタンク・タイプCでは、IMOタンク・タイプBのようにスカート30との接合部にまで疲労強度要件が要求されない。このため、カーゴタンク20は、球形であるが故に優れた強度特性を有するのに加えて、その肉厚を増大させた設計が可能となり、強度を確保しつつ大径化、大容量化が可能となる。
【0037】
(2)第2の態様に係るカーゴタンクユニットは、(1)のカーゴタンクユニットであって、前記カーゴタンク20の下半部21の周方向に間隔を空けた複数個所に設けられ、前記カーゴタンク20の下半部21と前記スカート30の内面30fとを接合する接合部材50、をさらに備える。
【0038】
これにより、周方向に複数設けられた接合部材50により、球形の下半部21とスカート30の内面30fとが、より強固に接合される。したがって、スカート30によるカーゴタンク20の支持強度をさらに高めることが可能となる。
【0039】
(3)第3の態様に係るカーゴタンクユニットは、(1)又は(2)のカーゴタンクユニットであって、前記スカート30は、筒状部31とタンク支持部32とを備え、前記筒状部31は、上下方向に延びる円筒状であり、前記タンク支持部32は、前記筒状部31の上部に連続して設けられると共に、下方に向かうに従って前記カーゴタンク20の径方向Dr外側に向かって延びている。
【0040】
これにより、タンク支持部32は、カーゴタンク20の下半部21の外周面21fに対し、径方向Dr外側から突き当てるようにして接続されている。これにより、タンク支持部32とカーゴタンク20の下半部21の外周面21fとが確実に溶接され、溶接部40の接合強度が有効に高められる。
【0041】
(4)第4の態様に係るカーゴタンクユニットは、(3)のカーゴタンクユニットであって、前記タンク支持部32と前記筒状部31の中心軸とのなす角度は、上方に向かうに従って漸次大きくなるように形成されている。
【0042】
このようにすることで、タンク支持部32と筒状部31との接合部分に角部が生じることが抑えられる。これにより、カーゴタンク20の外周面21fに溶接されたスカート30において、カーゴタンク20の荷重による応力が局所的に集中することが抑えられる。
【0043】
(5)第5の態様に係る船舶は、(1)から(4)の何れか一つのカーゴタンクユニットを備える。
【0044】
カーゴタンク20を大容量化すれば、船体2に搭載するカーゴタンク20の個数を抑え、船舶1の製造コストを抑えることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1…船舶
2…船体
2a…船首
2b…船尾
3A、3B…舷側
4…船底
5…上甲板
7…上部構造
8…貨物搭載区画
9…ファウンデーションデッキ部
20…カーゴタンク
20a…上部
21…下半部
21f…外周面
22…上半部
25…タンクカバー
30…スカート
30f…内面
30t…上端
31…筒状部
32…タンク支持部
32t…先端
32w…湾曲部
40…溶接部
50…接合部材
50a…内側縁部
50b…外側縁部
50c…下縁部
D1…内径
D2…外径
Da…船首尾方向
Dr…径方向
Dv…上下方向
θ…交差角度
図1
図2
図3