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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】分光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/36 20060101AFI20240726BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20240726BHJP
【FI】
G01J3/36
H01L31/02 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020000939
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021110569
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】村上 和雅
(72)【発明者】
【氏名】安立 真之
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198714(JP,A)
【文献】特開2012-242117(JP,A)
【文献】特開昭60-043229(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173992(JP,U)
【文献】特開2018-151368(JP,A)
【文献】特開2016-081834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - G01J 3/52
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、
前記複数のビームスプリッタに対して前記第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが前記複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、
前記複数のバンドパスフィルタに対して前記第2方向における前記一方の側に配置され、それぞれが前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合う複数の受光領域を有する光検出器と、
前記複数のビームスプリッタを支持する第1支持体と、
前記複数のバンドパスフィルタを支持する第2支持体と、
前記第2支持体と一体的に形成された壁部を有し、前記複数のビームスプリッタ及び前記複数のバンドパスフィルタを収容する筐体と、を備え、
前記第1支持体には、前記第1方向及び前記第2方向の両方向に平行な外側表面が形成されており、
前記壁部には、前記第1方向及び前記第2方向の両方向に平行な内側表面が形成されており、
前記第2支持体及び前記筐体の少なくとも一方は、前記第1方向及び前記第2方向の両方向に平行な面内での前記第1支持体の位置を規定する規定部を有し、
前記第1支持体、前記第2支持体及び前記筐体のそれぞれは、前記第1方向を長手方向とする長尺状の形状を呈しており、
前記壁部は、前記筐体のうち前記第1方向を長手方向とする長尺状の形状を呈する部分であり、
前記第1支持体は、前記規定部によって前記位置が規定された状態で、前記第1方向を長手方向とする長尺状の領域において前記外側表面が前記内側表面に接触するように前記壁部に取り付けられている、分光モジュール。
【請求項2】
前記第1支持体は、第1係合部を有し、
前記筐体は、前記規定部として、前記第1係合部と係合した第2係合部を有する、請求項1に記載の分光モジュール。
【請求項3】
前記第1係合部及び前記第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、
前記第1係合部及び前記第2係合部の他方は、それぞれが前記複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた複数の位置決めピンである、請求項2に記載の分光モジュール。
【請求項4】
前記筐体は、前記内側表面を底面とする凹部を画定しており、
前記凹部の側面は、前記第1支持体から離間する離間領域を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項5】
前記筐体には、前記第1方向に沿って前記筐体内に光を入射させる第1光入射孔が形成されており、
前記第1支持体には、前記第1方向に沿って前記複数のビームスプリッタに光を入射させる第2光入射孔が形成されており、
前記第2光入射孔は、前記第1方向から見た場合に前記第1光入射孔を含んでいる、請求項1~4のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項6】
前記複数のビームスプリッタのそれぞれは、板状を呈しており、
前記第1支持体には、複数の溝が形成されており、
前記第1支持体には、前記複数の溝のそれぞれに前記複数のビームスプリッタのそれぞれが配置されていることで、それぞれが溝及びビームスプリッタからなる複数の組合せが設けられており、
前記複数の組合せのそれぞれにおいて、前記溝は、前記ビームスプリッタの厚さの2倍以上の幅を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の分光モジュール。
【請求項7】
前記複数の組合せのそれぞれにおいて、前記溝は、それぞれに光通過開口が形成された1対の側面と、底面と、を有し、
前記複数の組合せのそれぞれにおいて、前記ビームスプリッタは、前記1対の側面のうち前記第2方向における前記一方の側に位置する側面、及び前記底面に接触するように、前記溝に配置されている、請求項6に記載の分光モジュール。
【請求項8】
第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、
前記複数のビームスプリッタに対して前記第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが前記複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、
前記複数のバンドパスフィルタに対して前記第2方向における前記一方の側に配置され、それぞれが前記複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合う複数の受光領域を有する光検出器と、
前記複数のビームスプリッタを支持する第1支持体と、
前記複数のバンドパスフィルタを支持する第2支持体と、
前記第2支持体と一体的に形成された壁部を有し、前記複数のビームスプリッタ及び前記複数のバンドパスフィルタを収容する筐体と、を備え、
前記第1支持体には、外側表面が形成されており、
前記壁部には、内側表面が形成されており、
前記第1支持体、前記第2支持体及び前記筐体のそれぞれは、前記第1方向を長手方向とする長尺状の形状を呈しており、
前記壁部は、前記筐体のうち前記第1方向を長手方向とする長尺状の形状を呈する部分であり、
前記第1支持体は、前記第1方向を長手方向とする長尺状の領域において前記外側表面の少なくとも一部が前記内側表面の少なくとも一部に接触するように前記壁部に取り付けられている、分光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
測定光を複数の波長帯域の光に分光して各波長帯域の光を検出する分光モジュールとして、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタが筐体内に配置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-242117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような分光モジュールでは、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置精度(すなわち、隣り合うビームスプリッタ間の位置精度、隣り合うバンドパスフィルタ間の位置精度、及び向かい合うビームスプリッタ及びバンドパスフィルタ間の位置精度)を確保することが、分光精度の向上を図る上で重要である。
【0005】
本発明は、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置精度を確保することができる分光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分光モジュールは、第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、複数のビームスプリッタに対して第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、複数のバンドパスフィルタに対して第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合う複数の受光領域を有する光検出器と、複数のビームスプリッタを支持する第1支持体と、複数のバンドパスフィルタを支持する第2支持体と、第2支持体と一体的に形成された壁部を有し、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタを収容する筐体と、を備え、第1支持体には、第1方向及び第2方向の両方向に平行な外側表面が形成されており、壁部には、第1方向及び第2方向の両方向に平行な内側表面が形成されており、第2支持体及び筐体の少なくとも一方は、第1方向及び第2方向の両方向に平行な面内での第1支持体の位置を規定する規定部を有し、第1支持体は、規定部によって位置が規定された状態で、外側表面が内側表面に接触するように壁部に取り付けられている。
【0007】
この分光モジュールでは、複数のビームスプリッタが第1支持体によって支持されており、複数のバンドパスフィルタが第2支持体によって支持されている。これにより、一体的に形成された同一の支持体によって複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタが支持されている場合に比べ、第1支持体においては複数のビームスプリッタに応じた構造によって隣り合うビームスプリッタ間の位置精度を確保することができ、第2支持体においては複数のバンドパスフィルタに応じた構造によって隣り合うバンドパスフィルタ間の位置精度を確保することができる。また、筐体の壁部が第2支持体と一体的に形成されており、第1支持体が、規定部によって位置が規定された状態で、面接触するように筐体の壁部に取り付けられている。これにより、向かい合うビームスプリッタ及びバンドパスフィルタ間の位置精度を確保することができる。更に、筐体の強度が向上するため、筐体の変形等に起因して複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置関係に狂いが生じ難い。よって、この分光モジュールによれば、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置精度を確保することができる。
【0008】
本発明の分光モジュールでは、第1支持体は、第1係合部を有し、筐体は、規定部として、第1係合部と係合した第2係合部を有してもよい。これによれば、筐体に対して第1支持体を位置決めすることができ、延いては、筐体の壁部と一体的に形成された第2支持体に対して第1支持体を位置決めすることができる。したがって、向かい合うビームスプリッタ及びバンドパスフィルタ間の位置精度を容易に且つ確実に確保することができる。
【0009】
本発明の分光モジュールでは、第1係合部及び第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、第1係合部及び第2係合部の他方は、それぞれが複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた複数の位置決めピンであってもよい。これによれば、単純な構造で筐体に対して第1支持体を位置決めすることができる。
【0010】
本発明の分光モジュールでは、筐体は、内側表面を底面とする凹部を画定しており、凹部の側面は、第1支持体から離間する離間領域を含んでもよい。これによれば、例えばビームスプリッタに損傷等が発見された場合に、第1支持体と離間領域との間に例えば治工具を挿し込むことで、当該ビームスプリッタを支持する第1支持体を凹部から容易に取り外すことができる。
【0011】
本発明の分光モジュールでは、筐体には、第1方向に沿って筐体内に光を入射させる第1光入射孔が形成されており、第1支持体には、第1方向に沿って複数のビームスプリッタに光を入射させる第2光入射孔が形成されており、第2光入射孔は、第1方向から見た場合に第1光入射孔を含んでいてもよい。これによれば、第1光入射孔から入射した光が第2光入射孔の周囲で乱反射することに起因して迷光が発生するのを抑制することができる。
【0012】
本発明の分光モジュールでは、複数のビームスプリッタのそれぞれは、板状を呈しており、第1支持体には、複数の溝が形成されており、第1支持体には、複数の溝のそれぞれに複数のビームスプリッタのそれぞれが配置されていることで、それぞれが溝及びビームスプリッタからなる複数の組合せが設けられており、複数の組合せのそれぞれにおいて、溝は、ビームスプリッタの厚さの2倍以上の幅を有してもよい。これによれば、分光モジュールの製造時において、ビームスプリッタが配置される溝を容易に且つ精度良く形成することができるため、複数のビームスプリッタのそれぞれの位置精度を確保することができる。
【0013】
本発明の分光モジュールでは、複数の組合せのそれぞれにおいて、溝は、それぞれに光通過開口が形成された1対の側面と、底面と、を有し、複数の組合せのそれぞれにおいて、ビームスプリッタは、1対の側面のうち第2方向における一方の側に位置する側面、及び底面に接触するように、溝に配置されていてもよい。これによれば、複数のビームスプリッタのそれぞれの位置精度を確保することに加え、複数のビームスプリッタのそれぞれを安定的に支持することができる。
【0014】
本発明の分光モジュールでは、筐体は、第1方向を長手方向とする長尺状の形状を呈しており、第1支持体は、第1方向を長手方向とする長尺状の形状を呈していてもよい。第1方向を長手方向とする長尺状の筐体は、第1方向において外部からの衝撃、熱等による歪みが生じやすくなり得る。そのような長尺状の筐体に対し、筐体の壁部に面接触するように、同じく第1方向を長手方向とする長尺状の第1支持体を配置することにより、第1支持体が筐体の梁のような役割を果たすため、特に第1方向において筐体が歪むのを防止することができる。
【0015】
あるいは、本発明の分光モジュールは、第1方向に沿って配列された複数のビームスプリッタと、複数のビームスプリッタに対して第1方向と交差する第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のビームスプリッタのそれぞれと向かい合う複数のバンドパスフィルタと、複数のバンドパスフィルタに対して第2方向における一方の側に配置され、それぞれが複数のバンドパスフィルタのそれぞれと向かい合う複数の受光領域を有する光検出器と、複数のビームスプリッタを支持する第1支持体と、複数のバンドパスフィルタを支持する第2支持体と、第2支持体と一体的に形成された壁部を有し、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタを収容する筐体と、を備え、第1支持体には、外側表面が形成されており、壁部には、内側表面が形成されており、第1支持体は、外側表面の少なくとも一部が内側表面の少なくとも一部に接触するように壁部に取り付けられている。
【0016】
この分光モジュールでは、複数のビームスプリッタが第1支持体によって支持されており、複数のバンドパスフィルタが第2支持体によって支持されている。これにより、一体的に形成された同一の支持体によって複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタが支持されている場合に比べ、第1支持体においては複数のビームスプリッタに応じた構造によって隣り合うビームスプリッタ間の位置精度を確保することができ、第2支持体においては複数のバンドパスフィルタに応じた構造によって隣り合うバンドパスフィルタ間の位置精度を確保することができる。また、筐体の壁部が第2支持体と一体的に形成されており、第1支持体が、筐体の壁部と少なくとも一部同士において面接触するように、当該壁部に取り付けられている。これにより、少なくとも外側表面と内側表面とが向かい合う方向において、向かい合うビームスプリッタ及びバンドパスフィルタ間の位置精度を確保することができる。更に、筐体の強度が向上するため、筐体の変形等に起因して複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置関係に狂いが生じ難い。よって、この分光モジュールによれば、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のビームスプリッタ及び複数のバンドパスフィルタにおける相互間の位置精度を確保することができる分光モジュールを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の分光モジュールの断面図である。
図2図1に示されるII-II線に沿っての断面図である。
図3図1に示される第1支持体の一部分の平面図である。
図4図1に示される第2支持体の一部分の断面図である。
図5図4に示されるV-V線に沿っての断面図である。
図6図4に示されるVI-VI線に沿っての断面図である。
図7】光入射部の光軸に対する複数のビームスプリッタの配置の関係を示す図である。
図8】第1変形例の筐体の一部分及び第1支持体の断面図である。
図9】第2変形例の筐体の一部分及び第1支持体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[分光モジュールの構成]
【0020】
図1及び図2に示されるように、分光モジュール1は、筐体2と、複数のビームスプリッタ3と、複数のバンドパスフィルタ4と、第1支持体5と、第2支持体6と、光検出器7と、遮光部材8と、を備えている。複数のビームスプリッタ3は、X方向(第1方向)に沿って配列されている。複数のバンドパスフィルタ4は、複数のビームスプリッタ3に対してX方向に垂直なZ方向(第1方向と交差する第2方向)における一方の側に配置されている。光検出器7は、複数のバンドパスフィルタ4に対してZ方向における一方の側に配置されている。光検出器7は、複数の受光領域7aを有している。
【0021】
各ビームスプリッタ3は、例えばハーフミラーであり、X方向に沿って入射した光のうち一部の光をZ方向における一方の側に反射し、当該入射した光のうち一部の光以外の光をX方向における一方の側に透過させる。各バンドパスフィルタ4は、Z方向において各ビームスプリッタ3と向かい合っており、各ビームスプリッタ3からZ方向に沿って入射した光のうち所定の波長帯域の光をZ方向における一方の側に透過させる。各バンドパスフィルタ4は、互いに異なる波長帯域の光を透過させる。各受光領域7aは、Z方向において各バンドパスフィルタ4と向かい合っており、各バンドパスフィルタ4からZ方向に沿って入射した光を検出する。各受光領域7aは、互いに異なる光検出チャネルを構成している。分光モジュール1では、複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4によって測定光Lが複数の波長帯域の光に分光され、光検出器7によって各波長帯域の光が検出される。
[筐体の構成]
【0022】
図1及び図2に示されるように、筐体2は、複数のビームスプリッタ3、複数のバンドパスフィルタ4、第1支持体5、第2支持体6、光検出器7及び遮光部材8を収容している。筐体2は、本体部20を有している。本体部20は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部(壁部)23及び第4壁部24によって構成されている。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において向かい合っている。第2壁部22は、第1壁部21に対してX方向における一方の側に位置している。第3壁部23は、第1壁部21及び第2壁部22に対してX方向及びZ方向の両方向に垂直なY方向における一方の側に位置している。第4壁部24は、第1壁部21、第2壁部22及び第3壁部23に対してZ方向における他方の側(一方の側とは反対側)に位置している。筐体2は、X方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している。
【0023】
第1壁部21には、X方向に沿って筐体2内に測定光Lを入射させる第1光入射孔2aが形成されている。第3壁部23には、X方向及びZ方向の両方向に平行な内側表面2bが形成されている。内側表面2bには、第3壁部23に形成された複数の位置決め孔(規定部、第2係合部)2cのそれぞれが開口している。第3壁部23は、第2支持体6と一体的に形成されている。本体部20及び第2支持体6は、第3壁部23の内側表面2bを底面91とする凹部9を構成している。すなわち、筐体2は、第3壁部23の内側表面2bを底面91とする凹部9を画定している。本体部20及び第2支持体6は、例えば、金属によって一体的に形成されている。
【0024】
筐体2は、蓋部25と、シールドカバー26と、を更に有している。蓋部25は、凹部9の開口を塞ぐように本体部20及び第2支持体6に取り付けられている。シールドカバー26は、Z方向における一方の側から光検出器7を覆うように本体部20及び蓋部25に取り付けられている。
[ビームスプリッタ及び第1支持体の構成]
【0025】
図1及び図2に示されるように、第1支持体5は、複数のビームスプリッタ3を支持している。各ビームスプリッタ3は、板状を呈しており、1mm以下の厚さを有している。各ビームスプリッタ3は、各ビームスプリッタ3の厚さ方向から見た場合に長尺状を呈しており、各ビームスプリッタ3の長手方向に垂直な方向は、Y方向に平行な方向である。各ビームスプリッタ3は、同一の形状を呈している。各ビームスプリッタ3は、例えば長方形板状を呈している。
【0026】
第1支持体5は、第1壁部51、第2壁部52、第3壁部53、第4壁部54及び第5壁部55によって構成されている。第1壁部51及び第2壁部52は、X方向において向かい合っている。第2壁部52は、第1壁部51に対してX方向における一方の側に位置している。第3壁部53及び第4壁部54は、Y方向において向かい合っている。第3壁部53は、第1壁部51及び第2壁部52に対してY方向における一方の側に位置している。第4壁部54は、第1壁部51及び第2壁部52に対してY方向における他方の側に位置している。第5壁部55は、第1壁部51、第2壁部52、第3壁部53及び第4壁部54に対してZ方向における他方の側に位置している。第1支持体5は、X方向を長手方向とする長尺状の形状を呈している。第1支持体5は、例えば、金属によって一体的に形成されている。
【0027】
第1壁部51には、X方向に沿って複数のビームスプリッタ3に測定光Lを入射させる第2光入射孔5aが形成されている。第3壁部53には、X方向及びZ方向の両方向に平行な外側表面5bが形成されている。外側表面5bには、複数の位置決めピン(第1係合部)5cが設けられている。第1支持体5は、各位置決めピン5cが筐体2の各位置決め孔2cに嵌められることでX方向及びZ方向の両方向に平行な面内での(当該面に沿っての)第1支持体5の位置が規定された状態で、外側表面5bが筐体2の内側表面2bに接触するように第3壁部23に取り付けられている。
【0028】
第1支持体5は、外側表面5bが筐体2の内側表面2b(すなわち、凹部9の底面91)に接触した状態で、凹部9内に配置されている。凹部9の側面92は、複数の離間領域92aを含んでいる。各離間領域92aは、第1支持体5から離間している。本実施形態では、側面92は、本体部20の第1壁部21、第2壁部22及び第4壁部24のそれぞれの内側表面、並びに、第2支持体6における第4壁部24側の表面によって、構成されている。なお、側面92は、少なくとも1つの離間領域92aを含んでいればよい。また、離間領域92aは、側面92の全体であってもよい。
【0029】
第1支持体5には、複数の溝56が形成されている。各ビームスプリッタ3は、各溝56に配置されている。これにより、第1支持体5には、それぞれが溝56及びビームスプリッタ3からなる複数の組合せが設けられている。以下、当該複数の組合せのそれぞれを「対応する溝56及びビームスプリッタ3」という。
【0030】
図1及び図3に示されるように、各溝56は、第5壁部55の外側表面に開口している。各溝56の延在方向は、Y方向に平行な方向である。各溝56の深さ方向は、Y方向に垂直な方向のうち、深い位置ほどX方向における一方の側に位置するように45°傾斜した方向である。各溝56は、1対の側面56a,56bと、底面56cと、を有している。1対の側面56a,56bは、各溝56の幅方向(延在方向及び深さ方向の両方向に垂直な方向)において向かい合っている。側面56aには光通過開口57aが形成されており、側面56bには光通過開口57bが形成されている。
【0031】
本実施形態では、各溝56は、延在方向における各溝56の両端部がそれぞれ第3壁部53及び第4壁部54に位置するように形成されている。光通過開口57aは、Y方向において向かい合う第3壁部53及び第4壁部54間の空間によって側面56aが切り欠かれることで側面56aに形成されており、光通過開口57bは、当該空間によって側面56bが切り欠かれることで側面56bに形成されている。また、底面56cは、Y方向において2つの領域に分離されている。
【0032】
対応する溝56及びビームスプリッタ3において、溝56は、ビームスプリッタ3の厚さの2倍以上の幅(すなわち、1対の側面56a,56b間の距離)を有している。一例として、ビームスプリッタ3の厚さは0.5mmであり、溝56の幅は2.5mm~3.0mmである。対応する溝56及びビームスプリッタ3において、ビームスプリッタ3は、1対の側面56a,56bのうちZ方向における一方の側に位置する側面56a、及び、底面56cに接触するように、溝56に配置されている。この状態で、ビームスプリッタ3は、例えば接着剤によって側面56a及び底面56cに固定されている。
【0033】
図1に示されるように、分光モジュール1では、第1光入射孔2a及び第2光入射孔5aによって光入射部10が構成されている。光入射部10は、X方向に沿って複数のビームスプリッタ3に入射する光を画定する。第2光入射孔5aは、X方向から見た場合に第1光入射孔2aを含んでいる。この場合には、第1光入射孔2aの中心線が光入射部10の光軸Aとなる。一例として、X方向から見た場合に、第1光入射孔2aは円形状を呈しており、第2光入射孔5aはZ方向を長手方向とする長円状を呈している。一例として、X方向から見た場合に、第1光入射孔2aは、第2光入射孔5aのうちZ方向における一方の側の部分と重なっている。これによれば、第1支持体5にビームスプリッタ3が配置された際に第2光入射孔5aを介してビームスプリッタ3の中心を確認することができる。
[バンドパスフィルタ及び第2支持体の構成]
【0034】
図4及び図5に示されるように、第2支持体6は、複数のバンドパスフィルタ4を支持している。各バンドパスフィルタ4は、光透過基板41と、干渉膜42と、遮光膜43と、を有している。光透過基板41は、例えば長方形板状を呈している。干渉膜42は、光透過基板41の光入射面41aに設けられている。干渉膜42は、例えば誘電体多層膜である。遮光膜43は、光透過基板41の側面41bに設けられている。遮光膜43は、例えば黒色の塗装膜である。各バンドパスフィルタ4では、干渉膜42における光透過基板41とは反対側の表面がバンドパスフィルタ4の光入射面4aであり、光透過基板41における干渉膜42とは反対側の表面がバンドパスフィルタ4の光出射面4bであり、遮光膜43の外側表面がバンドパスフィルタ4の側面4cである。なお、図1及び図2では、構成の簡易化が図られた状態で各バンドパスフィルタ4が図示されている。
【0035】
第2支持体6は、支持部61を有している。支持部61には、Z方向における一方の側に開放されるように支持面61aが形成されている。支持面61aがZ方向における一方の側に開放されているとは、第2支持体6のみの状態でZ方向における一方の側から支持部61を見た場合に支持面61aが露出していること(すなわち、支持面61aが視認可能であること)を意味する。複数のバンドパスフィルタ4は、X方向に沿って配列されるように、支持面61aに配置されている。支持面61aは、Z方向に垂直な面であり、各バンドパスフィルタ4の光入射面4aのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が支持面61aに接触するように支持部61に形成されている。クリアアパーチャ40は、バンドパスフィルタ4の機能が保証された有効開口領域である。支持部61には、複数のビームスプリッタ3から複数のバンドパスフィルタ4に至る複数の光路(図1に示される破線)が通る1つの光通過開口61bが形成されている。これにより、支持面61aは、Y方向において2つの領域に分離されている。
【0036】
第2支持体6は、規制部62を更に有している。規制部62は、支持部61に対してZ方向における一方の側に位置するように第2支持体6に設けられている。規制部62は、各バンドパスフィルタ4がZ方向に垂直な方向に移動することを規制している。規制部62は、各バンドパスフィルタ4の側面4cに接触するように設けられた複数の接触部分62a、及び各バンドパスフィルタ4の側面4cから離間するように設けられた複数の離間部分62bによって、構成されている。規制部62は、複数のバンドパスフィルタ4を完全に仕切っていない。つまり、複数のバンドパスフィルタ4は、Z方向に垂直な方向への移動が規制部62によって規制された状態で、空間を介して互いに離間している。
【0037】
図1及び図2に示されるように、第2支持体6には、Z方向における一方の側に開口する凹部63が形成されている。凹部63の底面63aは、規制部62における支持部61とは反対側の表面である。Z方向における支持面61aと底面63aとの距離は、各バンドパスフィルタ4の厚さ(すなわち、Z方向における光入射面4aと光出射面4bとの距離)よりも小さい。これにより、各バンドパスフィルタ4における支持部61とは反対側の一部分は、底面63aから突出しており、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bは、底面63aよりもZ方向における一方の側に位置している(図4参照)。底面63aには、複数の位置決めピン6aが設けられている。
[光検出器及び遮光部材の構成]
【0038】
図1及び図2に示されるように、光検出器7は、配線基板71と、複数の光検出素子72と、コネクタ73と、を有している。複数の光検出素子72は、X方向に沿って配列されるように、配線基板71における複数のバンドパスフィルタ4側の表面71aに実装されている。各光検出素子72は、PDチップ等のディスクリート半導体素子であり、各受光領域7aを有している。コネクタ73は、配線基板71における表面71aとは反対側の表面71bに取り付けられている。コネクタ73は、各光検出素子72に対して電気信号等を入出力するためのポートである。コネクタ73は、シールドカバー26に形成された開口26aを介して筐体2の外側に延在している。光検出器7は、凹部63の開口を塞ぐように第2支持体6に取り付けられている。本実施形態では、配線基板71が凹部63の開口を塞ぐように第2支持体6に取り付けられており、複数の光検出素子72が凹部63内に位置している。
【0039】
遮光部材8は、複数のバンドパスフィルタ4と光検出器7との間に配置されている。遮光部材8は、弾性材料によって形成されており、圧縮された状態で第2支持体6の凹部63に配置されている。この状態で、複数のバンドパスフィルタ4は、第2支持体6の支持部61と遮光部材8とによって挟持されている。遮光部材8には、複数の光通過開口8aが形成されている。複数のバンドパスフィルタ4から複数の受光領域7aに至る複数の光路のそれぞれは、複数の光通過開口8aのそれぞれを通っている。つまり、複数のバンドパスフィルタ4から複数の受光領域7aに至る複数の光路は、遮光部材8によって互いに分離されている。本実施形態では、光検出器7の各光検出素子72が遮光部材8の各光通過開口8a内に位置している。各光通過開口8a内では、光検出素子72の端子と配線基板71の端子とがワイヤ74によって電気的に接続されており、ワイヤ74が樹脂部材75によって覆われている。
【0040】
図6に示されるように、各光通過開口8aは、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が遮光部材8に接触するように遮光部材8に形成されている。つまり、遮光部材8は、各バンドパスフィルタ4の光出射面4bのうちクリアアパーチャ40の外側の領域が遮光部材8に接触するように構成されている。なお、図6では、バンドパスフィルタ4が二点鎖線で図示されている。
【0041】
図2に示されるように、遮光部材8には、複数の位置決め孔8bが形成されている。配線基板71には、複数の位置決め孔7bが形成されている。各位置決め孔7bは、Z方向から見た場合に各位置決め孔8bと重なっている。遮光部材8は、第2支持体6の各位置決めピン6aが各位置決め孔8bに嵌められることでZ方向に垂直な方向における各光通過開口8aの位置が規定された状態で、凹部63に配置されている。光検出器7は、遮光部材8の各位置決め孔8bを貫通した各位置決めピン6aが各位置決め孔7bに嵌められることでZ方向に垂直な方向における各受光領域7aの位置が規定された状態で、第2支持体6に取り付けられている。
[複数のビームスプリッタの配置]
【0042】
図7に示されるように、複数のビームスプリッタ3は、各ビームスプリッタ3の中心3aがX方向に平行なラインα上に位置するように配置されている。ビームスプリッタ3の中心3aは、ビームスプリッタ3の厚さ方向から見た場合におけるビームスプリッタ3の中心(重心)である。各ビームスプリッタ3は、1mm以下の同一の厚さを有しており、X方向に沿って45°の入射角で光が入射するように配置されている。光入射部10の光軸Aは、各ビームスプリッタ3の中心3aを通るラインαに対してZ方向における一方の側に位置している。なお、図7では、光入射部10が模式的に図示されている。
【0043】
各ビームスプリッタ3では、屈折が生じるため、入射光の光軸に対して透過光の光軸が光入射部10の光軸Aから離れる側(Z方向における一方の側とは反対側)にシフトする。分光モジュール1では、各ビームスプリッタ3が同一の厚さを有しており且つX方向に沿って45°の入射角で光が入射するように各ビームスプリッタ3が配置されているため、各ビームスプリッタ3において光の屈折量が等しくなる。光の屈折量とは、ビームスプリッタ3において、入射光の光軸に対して透過光の光軸が光入射部10の光軸Aから離れる側にシフトする量を意味する。
【0044】
各ビームスプリッタ3における光の屈折量をΔZとし、ビームスプリッタ3の個数をMとすると、Z方向における「最前段のビームスプリッタ3における入射光の光軸」と「最後段のビームスプリッタ3における入射光の光軸」との距離は、ΔZ(M-1)となる。最前段のビームスプリッタ3とは、最も前段(光の進行方向における上流側)に配置されたビームスプリッタ3を意味し、最後段のビームスプリッタ3とは、最も後段(光の進行方向における下流側)に配置されたビームスプリッタ3を意味する。
【0045】
分光モジュール1では、Z方向における光軸Aとラインαとの距離がΔZ(M-1)/2となるように、光入射部10の光軸Aに対して複数のビームスプリッタ3が配置されている。これにより、中段(光の進行方向における中流側)に配置されたビームスプリッタ3において、入射光の光軸がビームスプリッタ3の中心3a又は中心3a付近を通ることになる。
【0046】
一例として、各ビームスプリッタ3の厚さが0.5mm、屈折率が1.5であり、ビームスプリッタ3への入射角が45°、ビームスプリッタ3の配置個数が10である場合には、光の屈折量ΔZの値は0.165mmとなる。したがって、Z方向における光軸Aとラインαとの距離は、ΔZ(M-1)/2=0.165×(10-1)/2=約0.74mmとなる。この場合には、最前段から5個目及び6個目のビームスプリッタ3のそれぞれにおいて、入射光の光軸が各ビームスプリッタ3の中心3a付近を通ることになる。光入射部10によって画定される測定光Lの直径(すなわち、最前段のビームスプリッタ3における入射光の直径)が4mmである場合には、長手方向における各ビームスプリッタ3の長さが10mmあれば、全てのビームスプリッタ3においてクリアアパーチャ内に入射光が収まることになる。
【0047】
分光モジュール1では、複数のビームスプリッタ3の配列ピッチが、複数の受光領域7aの配列ピッチに、各ビームスプリッタ3における光の屈折量を加えた値となっている。複数のビームスプリッタ3の配列ピッチとは、複数のビームスプリッタ3がX方向に沿って等間隔で配列された場合における「隣り合うビームスプリッタ3の中心3a間の距離」を意味する。複数の受光領域7aの配列ピッチとは、複数の受光領域7aがX方向に沿って等間隔で配列された場合における「隣り合う受光領域7aの中心間の距離」を意味する。複数のビームスプリッタ3の配列ピッチをP1とし、複数の受光領域7aの配列ピッチP2とすると、P1=P2+ΔZとなる。したがって、ビームスプリッタ3の個数をMとすると、X方向における「最前段のビームスプリッタ3」と「最後段のビームスプリッタ3」との距離は、P1(M-1)=(P2+ΔZ)(M-1)=P2(M-1)+ΔZ(M-1)となる。このように、複数のビームスプリッタ3の配列ピッチは、複数の受光領域7aの配列ピッチだけでなく、各ビームスプリッタ3における光の屈折量の影響も累積的に受ける。
【0048】
以上のことから、「複数のビームスプリッタ3の全体において、バンドパスフィルタ4から離れる側にも、複数のビームスプリッタ3が並ぶ方向における後段側にも、累積された光の屈折量の総和を十分に小さくして、モジュール全体の小型化を図る」上では、各ビームスプリッタ3は、1mm以下の厚さを有していることが好ましく、0.5mm以下の厚さを有していることがより好ましい。ただし、ビームスプリッタ3の強度を確保する上では、各ビームスプリッタ3は、0.1mm以上の厚さを有していることが好ましい。
[作用及び効果]
【0049】
分光モジュール1では、複数のビームスプリッタ3が第1支持体5によって支持されており、複数のバンドパスフィルタ4が第2支持体6によって支持されている。これにより、一体的に形成された同一の支持体によって複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4が支持されている場合に比べ、第1支持体5においては複数のビームスプリッタ3に応じた構造によって隣り合うビームスプリッタ3間の位置精度を確保することができ、第2支持体6においては複数のバンドパスフィルタ4に応じた構造によって隣り合うバンドパスフィルタ4間の位置精度を確保することができる。また、筐体2の第3壁部23が第2支持体6と一体的に形成されており、第1支持体5が、複数の位置決めピン5c及び複数の位置決め孔2cによって位置が規定された状態で、面接触するように筐体2の第3壁部23に取り付けられている。これにより、向かい合うビームスプリッタ3及びバンドパスフィルタ4間の位置精度を確保することができる。更に、筐体2の強度が向上するため、筐体2の変形等に起因して複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4における相互間の位置関係に狂いが生じ難い。よって、分光モジュール1によれば、複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4における相互間の位置精度を確保することができる。
【0050】
また、分光モジュール1では、複数の位置決め孔2cが筐体2に形成されており、それぞれが複数の位置決め孔2cのそれぞれに嵌められた複数の位置決めピン5cが第1支持体5に設けられている。これにより、単純な構造で筐体2に対して第1支持体5を位置決めすることができ、延いては、筐体2の第3壁部23と一体的に形成された第2支持体6に対して第1支持体5を位置決めすることができる。したがって、向かい合うビームスプリッタ3及びバンドパスフィルタ4間の位置精度を容易に且つ確実に確保することができる。
【0051】
また、分光モジュール1では、内側表面2bを底面91とする凹部9を筐体2が画定しており、第1支持体5から離間する離間領域92aを凹部9の側面92が含んでいる。これにより、例えば分光モジュール1の製造時において、ビームスプリッタ3に損傷等が発見された場合に、第1支持体5と離間領域92aとの間に例えば治工具を挿し込むことで、当該ビームスプリッタ3を支持する第1支持体5を凹部9から容易に取り外すことができる。
【0052】
また、分光モジュール1では、第1支持体5に形成された第2光入射孔5aが、X方向から見た場合に、筐体2に形成された第1光入射孔2aを含んでいる。これにより、第1光入射孔2aから入射した光が第2光入射孔5aの周囲で乱反射することに起因して迷光が発生し、筐体2の内部に迷光が進入するのを抑制することができる。
【0053】
また、分光モジュール1では、板状を呈する各ビームスプリッタ3が、第1支持体5に形成された各溝56に配置されており、対応する溝56及びビームスプリッタ3において、溝56が、ビームスプリッタ3の厚さの2倍以上の幅を有している。これにより、分光モジュール1の製造時において、ビームスプリッタ3が配置される溝56を容易に且つ精度良く形成することができるため、各ビームスプリッタ3の位置精度及び角度精度を確保することができる。例えば、エンドミルを用いて第1支持体5に溝56を形成する場合に、加工時におけるエンドミルの先端のブレが抑制されるため、第1支持体5に溝56を容易に且つ精度良く形成することができる。
【0054】
また、分光モジュール1では、対応する溝56及びビームスプリッタ3において、ビームスプリッタ3が、1対の側面56a,56bのうちZ方向における一方の側に位置する側面56a、及び底面56cに接触するように、溝56に配置されている。これにより、各ビームスプリッタ3の位置精度を確保することに加え、複数のビームスプリッタ3のそれぞれを安定的に支持することができる。
【0055】
分光モジュール1では、筐体2が、X方向を長手方向とする長尺状の形状を呈しており、第1支持体5が、X方向を長手方向とする長尺状の形状を呈していている。X方向を長手方向とする長尺状の筐体2は、X方向において外部からの衝撃、熱等による歪みが生じやすくなり得る。そのような長尺状の筐体2に対し、筐体2の第3壁部23に面接触するように、同じくX方向を長手方向とする長尺状の第1支持体5を配置することにより、第1支持体5が筐体2の梁のような役割を果たすため、特にX方向において筐体2が歪むのを防止することができる。
[変形例]
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、第1方向(X方向)に沿って複数のビームスプリッタ3が配列されており、複数のビームスプリッタ3に対して第2方向(Z方向)における一方の側に複数のバンドパスフィルタ4等が配置されていた。つまり、上記実施形態では、第2方向(Z方向)が第1方向(X方向)に垂直な方向であったが、第2方向は第1方向と交差する方向であればよい。また、上記実施形態において「接触するように」との意味には、或る部材と或る部材とが接触していることに限定されず、或る部材と或る部材との間に接着剤等の膜が配置されていることも含まれる。
【0057】
また、第1支持体5は、外側表面5bの少なくとも一部が内側表面2bの少なくとも一部に接触するように第3壁部23に取り付けられていればよい。そのような分光モジュール1においても、複数のビームスプリッタ3が第1支持体5によって支持されており、複数のバンドパスフィルタ4が第2支持体6によって支持されている。これにより、一体的に形成された同一の支持体によって複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4が支持されている場合に比べ、第1支持体5においては複数のビームスプリッタ3に応じた構造によって隣り合うビームスプリッタ3間の位置精度を確保することができ、第2支持体6においては複数のバンドパスフィルタ4に応じた構造によって隣り合うバンドパスフィルタ4間の位置精度を確保することができる。また、筐体2の第3壁部23が第2支持体6と一体的に形成されており、第1支持体5が、筐体2の第3壁部23と少なくとも一部同士において面接触するように第3壁部23に取り付けられている。これにより、少なくとも外側表面5bと内側表面2bとが向かい合う方向において、向かい合うビームスプリッタ3及びバンドパスフィルタ4間の位置精度を確保することができる。更に、筐体2の強度が向上するため、筐体の変形等に起因して複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4における相互間の位置関係に狂いが生じ難い。よって、上述した分光モジュール1によっても、複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4における相互間の位置精度を確保することができる。また、上述した分光モジュール1では、第1支持体5が、X方向から見た場合に、筐体2のうち奥側(第1壁部21、第2壁部22、及び第4壁部24に対してY方向における一方の側)に位置している第3壁部23に取り付けられているため、光軸のアライメント精度の向上を図ることができ、第1支持体5を安定して保持することができる。
【0058】
外側表面5bの少なくとも一部が内側表面2bの少なくとも一部に接触するように第1支持体5が第3壁部23に取り付けられている例について以下に述べる。図8に示される例では、第3壁部53が、Z方向において対向する隅部において面取り形状を呈しており、外側表面5bが、内側表面2bの一部に接触した状態で、凹部9内に配置されている。外側表面5bは、内側表面2bの一部に接触するように第3壁部23に取り付けられている。また、図9に示される例では、第3壁部53は、ラウンド状に突出しており、第3壁部23は、ラウンド上に窪んでいる。内側表面2bの曲率中心は、外側表面5bの曲率中心と一致している。つまり、外側表面5bと内側表面2bとは、互いに沿うように湾曲した形状に形成されている。外側表面5bは、内側表面2bに接触した状態で、凹部9内に配置されている。外側表面5bは、内側表面2bに接触するように第3壁部23に取り付けられている。
【0059】
また、筐体2は、少なくとも複数のビームスプリッタ3及び複数のバンドパスフィルタ4を収容するものであればよい。また、第1支持体5、第2支持体6及び光検出器7の少なくとも1つの一部分によって、筐体2の一部分が構成されていてもよい。また、各バンドパスフィルタ4の光入射面4aは、遮光部材8が配置される凹部63の底面63aよりもZ方向における一方の側に位置していたが、底面63aと同じ位置に位置していてもよい。
【0060】
また、各ビームスプリッタ3は、互いに異なる波長帯域の光を反射し且つ反射する波長帯域の光以外の光を透過させるダイクロイックミラーであってもよい。また、各ビームスプリッタ3は、板状に限定されず、ブロック状を呈していてもよい。また、各ビームスプリッタ3は、各ビームスプリッタ3の厚さ方向から見た場合に長尺状を呈していれば、具体的形状として、多角形、楕円形状等を呈していてもよい。また、複数のビームスプリッタ3は、例えば1つの基材に少なくとも2つの誘電体多層膜が形成されることで構成されていてもよい。つまり、それぞれがビームスプリッタ3として機能する複数の部分が存在すればよく、当該複数の部分のそれぞれが配置された基材が互いに分割されている必要はない。また、複数のバンドパスフィルタ4は、例えば1つの基材に少なくとも2つの誘電体多層膜が形成されることで構成されていてもよい。つまり、それぞれがバンドパスフィルタ4として機能する複数の部分が存在すればよく、当該複数の部分のそれぞれが配置された基材が互いに分割されている必要はない。また、光検出器7は、1つの半導体基板に複数の受光領域7aが形成されたPDアレイ等であってもよい。また、光検出器7は、光電子増倍管であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、筐体2が、規定部として複数の位置決め孔2cを有していたが、第2支持体6及び筐体2の少なくとも一方が、X方向及びZ方向の両方向に平行な面内又はX方向及びZ方向の両方向に沿った面内での第1支持体5の位置を規定する規定部を有していればよい。第2支持体6及び筐体2が有する規定部としては、例えば、凹部9内に配置された第1支持体5に接触するように凹部9の側面92に設けられた接触領域がある。また、第1支持体5は、第1係合部を有し、筐体2は、規定部として、第1係合部と係合した第2係合部を有していてもよい。その場合、第1係合部及び第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、第1係合部及び第2係合部の他方は、それぞれが複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた位置決めピンであってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、第2支持体6が位置決めピン6aを有しており、遮光部材8が位置決め孔8bを有していたが、第2支持体6は、第1係合部を有し、遮光部材8は、第1係合部と係合した第2係合部を有していてもよい。その場合、第1係合部及び第2係合部の一方は、複数の位置決め孔であり、第1係合部及び第2係合部の他方は、それぞれが複数の位置決め孔のそれぞれに嵌められた位置決めピンであってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、X方向から見た場合に、第1光入射孔2aが円形状を呈しており、第2光入射孔5aがZ方向を長手方向とする長円状を呈していたが、第2光入射孔5aは、第1光入射孔2aを含んでいればよい。第2光入射孔5aが第1光入射孔2aを含む一例としては、例えば、X方向から見た場合に、第2光入射孔5aの形状が第1光入射孔2aの形状と同一であって、第1光入射孔2aの外縁と第2光入射孔5aの外縁とが一致している場合が挙げられる。
【0064】
また、ビームスプリッタ3が、板状を呈しており、1mm以下の厚さ(より好ましくは0.5mm以下の厚さ)を有している場合には、全てのビームスプリッタ3の個数をM個(Mは2以上の自然数)とすると、M個のビームスプリッタ3のうちのN個(Nは2以上且つM以下の自然数)のビームスプリッタ3のそれぞれが、板状を呈しており、1mm以下の厚さ(より好ましくは0.5mm以下の厚さ)を有していればよい。なお、全てのビームスプリッタ3が、板状を呈しており、1mm以下の厚さ(より好ましくは0.5mm以下の厚さ)を有していてもよい(M=Nの場合)。
【0065】
また、上記実施形態では、Y方向から見た場合に、第1支持体5の隅部が、直線状に面取りされている形状を呈していたが、第1支持体5の隅部の形状は特に限定されない。第1支持体5の隅部は、Y方向から見た場合に、例えば、ラウンド状に面取りされている形状を呈していてもよく、また例えば、面取りがされていない形状を呈していてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…分光モジュール、2…筐体、2a…第1光入射孔、2b…内側表面、2c…位置決め孔(規定部、第2係合部)、3…ビームスプリッタ、4…バンドパスフィルタ、5…第1支持体、5a…第2光入射孔、5b…外側表面、5c…位置決めピン(第1係合部)、6…第2支持体、7…光検出器、7a…受光領域、9…凹部、23…第3壁部(壁部)、56…溝、56a,56b…側面、56c…底面、57a,57b…光通過開口、91…底面、92…側面、92a…離間領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9