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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】炭化硅素系耐火物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/567 20060101AFI20240726BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240726BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C04B35/567
F27D1/00 N
F27D3/12 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020050252
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147289
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】有賀 喜久雄
(72)【発明者】
【氏名】工藤 重樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 彰人
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-098717(JP,A)
【文献】特開2019-210180(JP,A)
【文献】特開2004-067484(JP,A)
【文献】特開平09-183658(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101768003(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106083118(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/565
C04B 35/567
F27D 1/00
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化硅素質材と1000℃における熱間線膨張率が0.2%以下の酸化物材であるチタン酸アルミニウム質材とを複合してなる複合材を主原料としており、その複合材の全体に対する配合比率が90質量%以上であるとともに、
炭化硅素質材の全体に対する配合比率が60質量%以上95質量%未満であるとともに、
前記チタン酸アルミニウム質材の全体に対する配合比率が5質量%以上40質量%未満であり、下記の方法で測定した場合の弾性率の残存率である耐熱衝撃性が58%以上であることを特徴とする炭化硅素系耐火物。
<耐熱衝撃性の測定方法>
試料を1000℃の電気炉内で30分間加熱保持した後に取り出し、貯水槽中で水中に浸漬させることにより急冷する、というサイクルを5回繰り返した後の試料の弾性率(Ea)と加熱・急冷前の試料の弾性率(Ei)とから下式(1)を用いて弾性率の残存率を算出する。
Ea/Ei×100 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載の炭化硅素系耐火物の製造方法であって、
少なくとも炭化硅素質材とチタン酸アルミニウム質材とを複合してなる複合物を所定の温度で焼成するものであり、
炭化硅素質材が、粒子径が0.1mm以上1.0mm未満の中粒子材および/または粒子径が1.0mm以上の粗粒子材と、粒子径が0.1mm未満の微粒子材とからなるものであるとともに、
チタン酸アルミニウム質材が、粒子径が0.1mm以上1.0mm未満の中粒子材および/または粒子径が1.0mm以上の粗粒子材からなるものであることを特徴とする炭化硅素系耐火物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉の炉材や焼成製品を積載するための棚板等の炉の副資材として用いられる炭化硅素系耐火物(すなわち、主として炭化硅素質材からなる耐火物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窯業製品等の多段に積むことができない製品を焼成する際には、炉内に棚(棚用材)を設けて窯詰めをした上で、それらの窯業製品の焼成が行われる。このように炉内で用いられる棚材や、工業炉の内張り用の炉材を製造する際には、高い熱間耐荷重性・高熱伝導性を有する炭化硅素質材が主原料として用いられる(特許文献1)。そして、そのような炭化硅素質材を主とする原料を所定の形状に成形し、得られた成形品を概ね1200℃~1700℃の温度範囲で焼成することによって、棚材や工業炉の内張り用の炉材として使用可能な耐火物が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-148186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、窯業製品の製造においては、焼成工程の効率の向上のために焼成時の昇温および冷却の速度が高められており、棚材や内張り用の炉材の使用条件は益々過酷になっており、急速な加熱・冷却で繰り返し使用されることが多くなっている。そのため、棚材や内張り用の炉材は、使用時における亀裂や割れの発生率が高くなっており、耐用寿命が低下してきている。
【0005】
本発明の目的は、従来の炭化硅素系耐火物が有する問題点を解消し、高い熱間耐荷重性・高熱伝導性と高い耐熱衝撃性とを兼備しており、使用時における亀裂や割れの発生率が改善された耐用寿命の長い棚材や内張り用の炉材を効率的に製造可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、炭化硅素質材と1000℃における熱間線膨張率が0.2%以下の酸化物材であるチタン酸アルミニウム質材(TiO ・Al とを複合してなる複合材を主原料としており、その複合材の全体に対する配合比率が90質量%以上であるとともに、炭化硅素質材の全体に対する配合比率が60質量%以上95質量%未満であるとともに、前記チタン酸アルミニウム質材の全体に対する配合比率が5質量%以上40質量%未満であり、下記の方法で測定した場合の弾性率の残存率である耐熱衝撃性が58%以上であることを特徴とするものである。
<耐熱衝撃性の測定方法>
試料を1000℃の電気炉内で30分間加熱保持した後に取り出し、貯水槽中で水中に浸漬させることにより急冷する、というサイクルを5回繰り返した後の試料の弾性率(Ea)と加熱・急冷前の試料の弾性率(Ei)とから下式(1)を用いて弾性率の残存率を算出する。
Ea/Ei×100 ・・・(1)
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の炭化硅素系耐火物の製造方法であって、少なくとも炭化硅素質材とチタン酸アルミニウム質材とを複合してなる複合物を所定の温度で焼成するものであり、炭化硅素質材が、粒子径が0.1mm以上1.0mm未満の中粒子材および/または粒子径が1.0mm以上の粗粒子材と、粒子径が0.1mm未満の微粒子材とからなるものであるとともに、チタン酸アルミニウム質材が、粒子径が0.1mm以上1.0mm未満の中粒子材および/または粒子径が1.0mm以上の粗粒子材からなるものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る炭化硅素系耐火物は、高い熱間耐荷重性・高熱伝導性と高い耐熱衝撃性とを兼備しているため、急速な加熱・冷却等の過酷な使用条件下で長期間に亘って繰り返し使用された場合でも、亀裂や割れがきわめて発生しにくく、耐用寿命が非常に長い。また、本発明に係る炭化硅素系耐火物の製造方法によれば、優れた特性を兼備した炭化硅素系耐火物を、きわめて容易に、かつ、効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る炭化硅素系耐火物(以下、単に、耐火物という)の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、各成分の特性、含有量、添加量に関する“~”は、原則的に、左側の数値以上右側の数値未満を意味するものとする。
【0011】
本発明に係る炭化硅素系耐火物は、炭化硅素質材と1000℃における熱間線膨張率が0.2%以下の酸化物材である低熱間線膨張率酸化物材とを複合してなる複合材を主原料とするものである。すなわち、本発明に係る炭化硅素系耐火物は、炭化硅素質材と、炭化硅素質材に比べて低い熱間線膨張率を具備した耐火材原料(低熱間線膨張率酸化物材)とを組み合わせることで、加熱・冷却時に、それらの異なる原料に異なる体積変化を生じさせて、原料粒子間に微間隙を生じさせることによって、亀裂の発生を抑えることを実現し、その結果として、耐熱衝撃性を飛躍的に向上させたものである。
【0012】
本発明で用いる炭化硅素質材とは、炭化硅素(SiC)を成分とする耐火物原料であり、セルフボンドSiC、酸化物結合SiC、窒化硅素結合SiC等を単独で、あるいはそれらを二種以上混合して用いることができる。
【0013】
一方、1000℃における熱間線膨張率が0.2%以下の酸化物材である低熱間線膨張率酸化物材としては、各種のものを用いることができ、その内の1種を単独で、あるいは、2種以上を混合して用いることもできる。また、低熱間線膨張率酸化物材は、1000℃における熱間線膨張率が0.2%以下であることが必要であり、なお、0.15%以下であるとより好ましい。そのように熱間線膨張率がきわめて低い低熱間線膨張率酸化物材としては、チタン酸アルミニウム質材、溶融石英を挙げることができ、それらの低熱間線膨張率酸化物を用いると、耐熱衝撃性がきわめて良好な耐火物を得ることが可能となる。
【0014】
なお、溶融石英は、約1100℃以上の雰囲気下で使用すると、徐々に再結晶化してクリストバライト・トリジマイト等の高い熱間膨張性を有する材料となってしまうため、溶融石英を用いる場合は、使用する温度範囲を1100℃以下にすると、長期間に亘って良好な耐熱衝撃性を持続させることができるので好ましい。一方、本発明に係る耐火物を、1100℃を上回る温度範囲で使用される用途に用いる場合には、低熱間線膨張率酸化物材として、チタン酸アルミニウム質材を用いるのが特に好ましい。
【0015】
本発明に係る炭化硅素系耐火物は、炭化硅素質材と低熱間線膨張率酸化物材(1000℃における熱間線膨張率が0.2%以下の酸化物材)とを複合(混合)してなる複合材を、全体に対して90質量%以上配合している(含有している)ことが必要である。そのように複合材の全体に対する配合比率を90質量%以上とすることによって、炭化硅素系耐火物の耐熱性(熱間耐荷重性等)を高く保持することが可能になる。当該複合材の(全体に対する)配合割合は93質量%以上であるとより好ましく、95質量%以上であると特に好ましい。
【0016】
また、炭化硅素質材と低熱間線膨張率酸化物材との複合化においては、耐熱衝撃性を高めるために組織の結合力を大きく損なうことなく粒子間に有効な微間隙を生成させることが必要である。そのためには、粒度構成上、粒子径の大きい骨材部(粗粒子部、中粒子部)間で微間隙の生成を行うことが好ましい。それゆえ、微粒子材(粒子径が0.1mm以下のもの)より中粒子材(粒子径が1.0mm~0.1mmのもの)を用いるのが好ましく、中粒子材より粗粒子材(粒子径が1.0mm以上のもの)を用いるのが好ましい。一方、耐火材の耐熱間荷重性、対機械的耐久性を高くするためには、各粒子間を結合する結合部を構成する微粒子材として炭化硅素質材を用いるのが好ましい。
【0017】
加えて、炭化硅素質材と低熱間線膨張率酸化物材との複合化において、用いる各原料の粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得る際には、主原料の混合・混練時に、粗粒子材・中粒子材を先に混練機に投入して混合した後に、バインダーを添加混合してから微粒子材を投入して混練するのが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る炭化硅素系耐火物は、炭化硅素質材の全体に対する配合比率を60質量%以上95質量%未満にするのが好ましく、低熱間線膨張率酸化物材の全体に対する配合比率を5質量%以上40質量%未満にするのが好ましい。そのように、主原料中の炭化硅素質材および低熱間線膨張率酸化物材の配合比率を調整することによって、炭化硅素系耐火物の耐熱性と耐熱衝撃性とを同時に良好なものとすることが可能になる。
【0019】
さらに、本発明に係る炭化硅素系耐火物は、原料中に、必要に応じて改質材および/または成形性助材を添加することも可能である。改質材としては、耐化学反応改善材や物理的特性改善材(焼結性改善材)を用いることができ、さらに、耐化学反応改善材としては、酸化クロム質材、含ジルコニア質材を用いることができ、物理的特性改善材としては、焼結助剤(長石質材、陶石質材等)を用いることができる。一方、成形性助材としては、耐火粘土質材等を用いることもできる。
【0020】
加えて、本発明に係る炭化硅素系耐火物は、上記した炭化硅素質材と低熱間線膨張率酸化物材とを複合してなる複合材を所定の温度で焼成することによって得ることができるが、複合材の焼成温度は特に限定されず、1200℃~1700℃の範囲内で必要に応じて適宜選択することができる。
【実施例
【0021】
以下、本発明に係る耐火物について実施例によって詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例・比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0022】
<耐熱衝撃性(弾性率の残存率)>
試料を1000℃の電気炉内で30分間加熱保持した後に取り出し、貯水槽中で水中に浸漬させることにより急冷する、というサイクルを5回繰り返して行った。そして、5サイクル繰り返した後の試料の弾性率(Ea)と加熱・急冷前の試料の弾性率(Ei)とから下式(1)を用いて弾性率の残存率を算出し、耐熱衝撃性の指標とした。
Ea/Ei×100 ・・・(1)
なお、実施例・比較例で得られた耐火物の物性、特性の評価結果を示す表2においては、算出された弾性率の残存率を以下の4段階に分類した。
◎:62%以上
○:60%~62%
△:58%~60%
×:58%未満
【0023】
<熱伝導率>
熱伝導率は、レーザーフラッシュ法によって測定した。すなわち、直径×厚さ=24.5mm×2.5mmの円盤形状の試料を用意し、NETZSC社製の熱伝導率測定装置を用いて、試料の表面をエネルギー(レーザー)パルスによって加熱したときの試料の背面の温度の経時的な上昇をIR検出器によって測定した(すなわち、温度上昇曲線を求めた)。しかる後、試料から周囲への熱損失を考慮し、温度上昇曲線全域にわたってフィッティングすることによって、試料の熱拡散率を算出した。そして、算出された熱拡散率α、試料の比熱容量Cpおよび密度ρを用いて下式(2)によって熱伝導率λを算出した。
λ=α・ρ・Cp ・・・(2)
なお、表2においては、算出された熱伝導率を以下の4段階に分類した。
◎:14(kcal/(m・hr・℃))以上
○:12~14(kcal/(m・hr・℃))
△:10~12(kcal/(m・hr・℃))
×:10(kcal/(m・hr・℃))未満
【0024】
<耐熱性(熱間耐荷重性=熱間荷重軟化点)>
長さ×幅×厚さ=50mm×50mm×50mmの円盤形状の試料を用いて、JIS-R-2209に準じた方法によって測定した。なお、表2においては、測定された熱間荷重軟化点を以下の4段階に分類した。
◎:1700(2kg/(cm・T・℃))以上
○:1650~1700(2kg/(cm・T・℃))
△:1600~1650(2kg/(cm・T・℃))
×:1600(2kg/(cm・T・℃))未満
【0025】
<見掛気孔率>
JIS-R-2205(真空法)に準じた方法によって測定した。なお、表2においては、測定された見掛気孔率を以下の4段階に分類した。
◎:16%未満
○:16%~18%
△:18%~20%
×:20%以上
【0026】
<吸水率>
JIS-R-2205に準じた方法によって測定した。なお、表2においては、測定された吸水率を以下の4段階に分類した。
◎:6.5%未満
○:6.5%~7.0%
△:7.0%~7.5%
×:7.5%以上
【0027】
<圧縮強度>
JIS-R-2206に準じた方法によって測定した。なお、表2においては、測定された圧縮強度を以下の4段階に分類した。
◎:1100(kg/cm)以上
○:1000~1100(kg/cm
△:900~1000(kg/cm
×:900(kg/cm)未満
【0028】
また、実施例・比較例で用いた各原料(主原料)の化学組成および特性を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
[実施例1]
炭化硅素質材の粗粒子材(粒子径が1.0mm以上のもの)28質量部と、チタン酸アルミニウム材の粗粒子材(粒子径が1.0mm以上のもの)12質量部と、炭化硅素質材の中粒子材(粒径=0.1mm~1.0mm)20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、炭化硅素質材の微粒子(粒子径が0.1mm未満のもの)40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土(半湿式用材)を得た。
【0031】
そして、その坏土を用い、フリクションプレスにて加圧成形を行うことによって、平板状(長さ×幅×厚み=450mm×320mm×10mm)の成形品(棚板)、および、特性評価用材としてJIS並形(230mm×114mm×65mm)の成形品を得た。さらに、それらの成形品を、トンネルキルンを用いて、約1,400℃で焼成することによって実施例1の耐火物(焼成品)を作製した。そして、作製された耐火物の特性(熱伝導率、熱間荷重軟化点、圧縮強度等)を、上記した方法によって評価した。実施例1の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0032】
[実施例2]
実施例1と同じ炭化硅素質材の粗粒子材20質量部と、実施例1と同じチタン酸アルミニウム材の粗粒子材20質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、実施例2の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。実施例2の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0033】
[実施例3]
実施例1と同じ炭化硅素質材の粗粒子材12質量部と、実施例1と同じチタン酸アルミニウム材の粗粒子材28質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、実施例3の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。実施例3の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0034】
[実施例4]
実施例1と同じチタン酸アルミニウム材の粗粒子材40質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、実施例4の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。実施例4の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0035】
[実施例5]
実施例1と同じ炭化硅素質材の粗粒子材20質量部と、実施例1と同じチタン酸アルミニウム材の粗粒子材20質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材15質量部と、チタン酸アルミニウム材の中粒子材(粒子径=0.1mm~1.0mm)5重量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、実施例5の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。実施例5の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0036】
[実施例6]
実施例1と同じ炭化硅素質材の粗粒子材28質量部と、溶融石英の粗粒子材(粒子径が1.0mm以上のもの)12重量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、実施例6の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。実施例6の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0037】
[実施例7]
実施例1と同じ炭化硅素質材の粗粒子材20質量部と、実施例6と同じ溶融石英の粗粒子材20重量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、実施例7の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。実施例7の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0038】
[比較例1]
実施例1と同じ炭化硅素質材の粗粒子材40質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、比較例1の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。比較例1の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例1と同じチタン酸アルミニウム材の粗粒子材40質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材10質量部と、実施例5と同じチタン酸アルミニウム材の中粒子材10質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、比較例2の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。比較例2の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0040】
[比較例3]
実施例1と同じチタン酸アルミニウム材の粗粒子材40質量部と、実施例5と同じチタン酸アルミニウム材の中粒子材20質量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、比較例3の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。比較例3の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0041】
[比較例4]
実施例6と同じ溶融石英の粗粒子材40質量部と、実施例1と同じ炭化硅素質材の中粒子材15質量部と、溶融石英質材の中粒子材(粒子径=0.1mm~1.0mm)5重量部とを混練機内に投入して混合した。しかる後、所定量のバインダー(4重量部)を混練機内に添加して混合した後、実施例1と同じ炭化硅素質材の微粒子40質量部を混練機内に添加して十分に混練することによって、原料の各粒子の表面をバインダーによって被覆させてなる坏土を得た。さらに、その坏土を用いて実施例1と同様にして、比較例4の耐火物を得た。そして、得られた耐火物の特性を、上記した方法によって評価した。比較例4の耐火物の評価結果を、原料の組成とともに表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2から、実施例1~7で得られた耐火物は、いずれも、耐熱衝撃性、熱伝導率、耐熱性、圧縮強度とも良好であることが分かる。これに対して、低熱間線膨張率酸化物材を配合していない比較例1の炭化硅素材のみの耐火物は、耐熱衝撃性が不良であることが分かる。また炭化硅素質材の全体に対する配合割合が60質量%を下回っており、かつ、低熱間線膨張率酸化物材の全体に対する配合割合が40質量%を上回っている比較例2~4の耐火物は、いずれも、熱伝導率、耐熱性、圧縮強度が不良であることが分かる。特に、炭化硅素質材の全体に対する配合割合がきわめて低い(50質量%以下である)比較例2,3の耐火物は、耐熱衝撃性も低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る耐火物(炭化硅素系耐火物)は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、工業炉の内張り用の炉材や炉内で窯業製品等を積載するための棚板等の炉の副資材として好適に用いることができる。