(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 5/00 20060101AFI20240726BHJP
B64F 1/36 20240101ALI20240726BHJP
H04B 17/30 20150101ALI20240726BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20240726BHJP
H04W 4/30 20180101ALI20240726BHJP
【FI】
G08G5/00 A
B64F1/36
H04B17/30
H04W88/18
H04W4/30
(21)【出願番号】P 2020058680
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井原 泰介
(72)【発明者】
【氏名】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】吉村 隆汰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 翔
(72)【発明者】
【氏名】古川 憲志
(72)【発明者】
【氏名】粟生 いぶき
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0025830(US,A1)
【文献】国際公開第2019/194003(WO,A1)
【文献】特開2019-047262(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181900(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/039673(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/020607(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/063700(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
B64U 10/00 - 80/86
H04B 1/60
H04B 3/46 - 3/493
H04B 7/24 - 7/26
H04B 17/00 - 17/40
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信端末を有する飛行体の飛行予定位置及び飛行予定日時を含む飛行申請を取得する申請取得部と、
取得された前記飛行申請の内容に基づいて、当該飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、前記飛行体が有する無線通信端末と無線基地局との無線通信によって生じる、無線通信に関する障害の大きさを特定する特定部と、
前記特定部により特定された結果に基づいて、前記飛行申請の可否を判断する判断部と、
前記飛行体が有する無線通信端末と無線基地局との無線通信によって
現実に生じた、無線通信に関する障害の大きさを計測した
計測結果を取得する計測結果取得部とを備え、
前記判断部は、前記特定部により特定された、無線通信に関する障害の大きさと、閾値とを比較して、前記飛行申請の可否を判断する場合に、取得された前記計
測結果に応じて当該閾値を決定する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記飛行予定位置は所定の基準で区切られた空域単位の位置であり、
前記特定部は、各々の前記空域において、前記無線通信に関する障害の大きさを特定する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記飛行予定位置は所定の基準で区切られた空域単位の位置であり、
前記特定部は、各々の前記空域を飛行する予定の飛行体が有する無線通信端末の数に対して重みを付与して、前記無線通信に関する障害の大きさを特定する
ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、各々の前記空域を飛行する予定の飛行体が有する無線通信端末の数に対して、各々の前記飛行体が有する無線通信端末と各々の前記無線基地局との距離に応じた重みを付与して、前記無線通信に関する障害の大きさを特定する
ことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記飛行申請には前記飛行体が有する無線通信端末が実行する無線通信の通信予定速度が含まれており、
前記特定部は、各々の前記空域を飛行する予定の飛行体が有する無線通信端末の数に対して、各々の前記飛行体が有する無線通信端末の通信予定速度に応じた重みを付与して、前記無線通信に関する障害の大きさを特定する
ことを特徴とする請求項2又は3記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記特定部は、各々の前記空域に対応する地上において最も高い位置にある無線基地局と、当該空域を飛行する予定の前記飛行体が有する無線通信端末との距離に基づいて、前記無線通信に関する障害の大きさを特定する
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記判断部は、前記特定部により特定された、無線通信に関する障害の大きさと、前記飛行体の飛行時の条件に応じて変動する閾値とを比較して、前記飛行申請の可否を判断する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記特定部により特定された無線通信に関する障害の大きさに基づいて、前記飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、前記飛行体が有する無線通信端末が無線通信を行うときの通信速度の範囲及び当該無線通信端末の数を特定する通信プラン特定部と、
特定された通信速度の範囲及び無線通信端末の数に関する情報を前記飛行体の管理者に通知する通知部と
を備えることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体の飛行申請の可否を判断するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)ネットワークにおいて、さらなる高速データレートや低遅延などを目的としてロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)が仕様化された(非特許文献1)。LTEではマルチアクセス方式として、下り回線(下りリンク)にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)をベースとした方式を用い、上り回線(上りリンク)にSC-FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access)をベースとした方式を用いている。また、LTEからのさらなる広帯域化及び高速化を目的として、LTEの後継システム(例えば、LTEアドバンスト又はLTEエンハンスメントと呼ぶこともある(以下、「LTE-A」という))も検討され、仕様化されている(Rel.10/11)。
【0003】
LTE、LTE-Aシステムは、その高速通信、低遅延という特徴を活かして、従来の電話としてだけではなく、インターネットアクセス関連、画像・動画配信を始めとするエンターテインメント関連や機械遠隔操作等、様々な分野において世界的な規模で活用されている。その中で、最近注目されているのが、飛行体(例えば、ドローンなどの無人航空機)にLTEシステムの無線通信端末を搭載して、新たなサービスを創出する動きである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】3GPP TS 36.300“Evolved UTRA and Evolved UTRAN Overall description”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
LTEシステムは、複数の無線通信基地局で同じ周波数を使って通信を行うシステムである。従って、隣接する無線通信基地局において、互いの電波照射エリア(サービスエリア)が重複すると、重複エリアでは干渉が発生し、その干渉によりシステムとしての周波数利用効率が低下する。具体的には
図1に示すように、無線基地局が電波を送信して無線通信端末で受信する下りリンクでは、重複エリアに存在する或る無線通信端末MT1は、自端末MT1の接続先である無線通信基地局BS1からの電波に加えて、隣接する無線通信基地局BS2からの比較的強い強度の干渉電波を受信することになり、通信品質(スループット)が低下する。また無線通信端末が電波を送信して無線基地局が受信する上りリンクでは、重複エリアにいる無線通信端末MT1、MT2がそれぞれ無線通信基地局BS1と無線通信基地局BS2に接続する状況が発生する。この場合、無線通信基地局BS1においては、無線通信端末MT1からの電波に加え、無線通信端末MT2からの干渉電波も受信することとなり、無線通信端末MT1の通信品質(スループット)が低下する。このため、LTEシステムの運用者は、重複エリアの大きさが最小限になるように無線基地局のアンテナ位置やアンテナの指向方向を調節してエリア設計をすることが一般的である。現在のLTEシステムは、地表付近での無線通信端末の利用を想定しており、エリア設計も地表付近(地上高1.5m程度)での利用において最適となるよう、具体的には地表付近での電波伝搬に特有の見通し外伝搬を考慮して設計されている。
【0006】
このような地表付近での無線通信端末の利用を想定したLTEシステム上で、ドローンのような飛行体に無線通信端末を搭載して通信を行った場合、地表付近の電波伝搬環境と異なり、無線通信端末と無線基地局間は、ほぼ見通し伝搬の環境となるため、
図1に示すように、下りリンクにおいては、飛行体に搭載された無線通信端末は、通信先となる無線基地局以外の多くの無線基地局からの電波をも受信することにより、通信品質が劣化して通信スループットの低下もしくは通信ができない状態となる場合がある。また、上りリンクにおいては、遠方にいる上空の無線通信端末MT1,MT2からの電波が、干渉として無線基地局に到来し、地表付近で通信する無線通信端末MT3からの上りリンクに対する干渉の要因となる。この結果、受信される干渉電力量がシステム設計時の想定よりも大きくなり、当該無線基地局において通信を行っている地表付近で通信する無線通信端末MT3の無線通信に障害が生じることがある。
【0007】
ドローン等の飛行体における無線通信の用途としては、下りリンクにおいては飛行体の飛行に必要な機体制御等のための制御信号を、上りリンクにおいては飛行体に搭載されたカメラ等で撮影された映像もしくは画像を伝送することが一般的である。下りリンクで伝送される制御信号は比較的低ビットレートの伝送速度なため、地表付近と比較して品質が十分でない上空においても比較的問題ないのに対し、上りリンクで伝送される映像、画像は4K等の高精細な映像を伝送することから、高ビットレートの伝送速度すなわち無線通信端末は大きな送信電力で電波を送信する必要がある。このことは上空からの干渉電波が広範囲に届くこととなり、地表付近で通信する無線通信端末への通信障害を引き起こすことになる。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、飛行体に搭載された無線通信端末からの受信電力強度が大きくなることで、他の無線通信端末の通信に障害が生じることがないように、飛行体の飛行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、無線通信端末を有する飛行体の飛行予定位置及び飛行予定日時を含む飛行申請を取得する申請取得部と、取得された前記飛行申請の内容に基づいて、当該飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、前記飛行体が有する無線通信端末と無線基地局との無線通信によって生じる、無線通信に関する障害の大きさを特定する特定部と、前記特定部により特定された結果に基づいて、前記飛行申請の可否を判断する判断部と、前記飛行体が有する無線通信端末と無線基地局との無線通信によって現実に生じた、無線通信に関する障害の大きさを計測した計測結果を取得する計測結果取得部とを備え、前記判断部は、前記特定部により特定された、無線通信に関する障害の大きさと、閾値とを比較して、前記飛行申請の可否を判断する場合に、取得された前記計測結果に応じて当該閾値を決定することを特徴とする情報処理装置を提供する。
【0010】
前記飛行予定位置は所定の基準で区切られた空域単位の位置であり、前記特定部は、各々の前記空域において、前記無線通信に関する障害の大きさを特定するようにしてもよい。
【0011】
前記飛行予定位置は所定の基準で区切られた空域単位の位置であり、前記特定部は、各々の前記空域を飛行する予定の飛行体が有する無線通信端末の数に対して重みを付与して、前記無線通信に関する障害の大きさを特定するようにしてもよい。
【0012】
前記特定部は、各々の前記空域を飛行する予定の飛行体が有する無線通信端末の数に対して、各々の前記飛行体が有する無線通信端末と各々の前記無線基地局との距離に応じた重みを付与して、前記無線通信に関する障害の大きさを特定するようにしてもよい。
【0013】
前記飛行申請には前記飛行体が有する無線通信端末が実行する無線通信の通信予定速度が含まれており、前記特定部は、各々の前記空域を飛行する予定の飛行体が有する無線通信端末の数に対して、各々の前記飛行体が有する無線通信端末の通信予定速度に応じた重みを付与して、前記無線通信に関する障害の大きさを特定するようにしてもよい。
【0014】
前記特定部は、各々の前記空域に対応する地上おいて最も高い位置にある無線基地局と、当該空域を飛行する予定の前記飛行体が有する無線通信端末との距離に基づいて、前記無線通信に関する障害の大きさを特定するようにしてもよい。
【0015】
前記判断部は、前記特定部により特定された、無線通信に関する障害の大きさと、前記飛行体の飛行時の条件に応じて変動する閾値とを比較して、前記飛行申請の可否を判断するようにしてもよい。
【0017】
前記特定部により特定された無線通信に関する障害の大きさに基づいて、前記飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、前記飛行体が有する無線通信端末が無線通信を行うときの通信速度の範囲及び当該無線通信端末の数を特定する通信プラン特定部と、特定された通信速度の範囲及び無線通信端末の数に関する情報を前記飛行体の管理者に通知する通知部とを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、飛行体に搭載された無線通信端末からの受信電力強度が大きくなることで、他の無線通信端末の通信に障害が生じることがないように、飛行体の飛行を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】LTEシステムの上空利用における問題点を説明する図である。
【
図2】飛行管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】無線通信端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】飛行体運航管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】飛行体運航管理装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】飛行体運航管理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】空域単位の端末評価数を例示する模式図である。
【
図8】飛行体運航管理装置が記憶するデータの一例を示す図である。
【
図9】飛行申請の可否についての判断の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[構成]
図2は、本実施形態に係る飛行管理システム1の構成の一例を示す図である。飛行管理システム1は、ドローンなどの飛行体10と、飛行体10に搭載された無線通信端末20と、地上のユーザが使用する無線通信端末30と、無線基地局41を含むネットワーク40と、ネットワーク40に接続された飛行体運航管理装置50と、ネットワーク40に接続された申請端末60を備える。
【0022】
飛行体10は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び補助記憶装置のほか、自身の位置を測位する測位ユニットや無線通信端末20と接続される通信IF(Interface)等からなるコンピュータと、そのコンピュータにより制御される各種センサ、モータ及び回転翼等を含む駆動機構とを備える。飛行体10は、飛行体運航管理装置50によって許可された飛行計画に従って駆動機構を制御することで空中を飛行する。
【0023】
無線通信端末20,30は、物理的には、CPU、ROM、RAM及び補助記憶装置のほか、ネットワーク40経由で通信を行うための通信IFや飛行体10のコンピュータと接続される通信IF等からなる。無線通信端末20,30と、無線基地局41を含むネットワーク40とにより、無線通信システムが構築される。この無線通信システムは、例えばLTE(Long Term Evolution)に従った無線通信システムである。LTEにおいて、無線通信端末20,30はUEと呼ばれ、無線基地局41はeNBと呼ばれる。無線基地局41の各々と無線通信可能なエリアはセルと呼ばれる。各セル内に居る(在圏する)無線通信端末20,30は、そのセルを形成する無線基地局41と無線接続されて無線通信を行う。例えば、地上に居るユーザが利用する無線通信端末30は、地上において無線基地局41と無線通信を実行する。一方、飛行体10に搭載された無線通信端末20は、地上に限らず、上空(例えば、高度30m以上の空域)において無線基地局41と無線通信を実行する。
【0024】
飛行体運航管理装置50は、飛行体10の運航を管理する情報処理装置である。申請端末60は、飛行体10の飛行を管理する組織又は個人等の管理者から入力された飛行申請をネットワーク40経由で飛行体運航管理装置50に送信する。もしくは、伝達手段として電話、ファクシミリ等の方法により飛行体運航管理装置50を管理する運用者側に伝達され飛行体運航管理装置50に運用者により入力されてもよい。飛行体10が飛行するときに、
図1を用いて説明したように、その飛行体10が有する無線通信端末20と無線基地局41との無線通信によって、他の無線通信端末が行う無線通信に関する障害が生じる可能性がある。飛行体運航管理装置50は、飛行申請に係る飛行体10が飛行するときに、その飛行体10が有する無線通信端末20と無線基地局41との無線通信によって生じる、無線通信に関する障害の大きさを特定し、その障害の大きさに基づいて上記飛行申請に対する可否を判断し、その判断結果を記録する。飛行体運航管理装置50は、その判断結果を申請端末60に送信してもよいし、申請端末60からの要求に応じて判断結果をネットワーク40を経由して表示する、ないしは、電話、ファクシミリ等を経由して飛行体10の飛行を管理する組織または個人などの管理者に伝達してもよい。飛行体運航管理装置50は、飛行申請を許可した場合には、飛行する予定となる飛行体10の識別情報(飛行体ID)と、その飛行体10が飛行する予定の空域の識別情報(空域ID)と、その飛行体10がその空域を飛行する日時等を含む飛行計画を記憶する。また、飛行体運航管理装置50は、各飛行体10の飛行計画を記憶するとともに、各飛行体10の識別情報(飛行体ID)とその飛行状況を記録してもよい。ここで記録される飛行状況には、飛行体10が飛行している位置と、その位置に飛行体10が到達した日時とが含まれている。これらの位置及び日時は、飛行体10の無線通信端末20からネットワーク40を介して飛行体運航管理装置50に通知される。飛行体運航管理装置50は、その位置及び日時が飛行計画内であるかどうかを判断し、その判断結果に基づき、必要に応じてネットワーク40及び無線通信端末20経由で飛行体10に対する飛行指示を行う。なお、このような飛行体10の飛行管理は、既に周知の技術を用いて実現すればよく、本明細書では詳細な説明は省略する。
【0025】
図3は、飛行体10が有する無線通信端末20のハードウェア構成の一例を示す図である。無線通信端末20は、物理的には、プロセッサ2001、メモリ2002、ストレージ2003、通信装置2004、入力装置2005、出力装置2006及びこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。無線通信端末20のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0026】
無線通信端末20における各機能は、プロセッサ2001、メモリ2002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ2001が演算を行い、通信装置2004による通信を制御したり、メモリ2002及びストレージ2003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0027】
プロセッサ2001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ2001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。また、例えばベースバンド信号処理部や呼処理部などがプロセッサ2001によって実現されてもよい。
【0028】
プロセッサ2001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ2003及び通信装置2004の少なくとも一方からメモリ2002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、後述する動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。無線通信端末20の機能ブロックは、メモリ2002に格納され、プロセッサ2001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。各種の処理は、1つのプロセッサ2001によって実行されてもよいが、2以上のプロセッサ2001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ2001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワーク40から無線通信端末20に送信されてもよい。
【0029】
メモリ2002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ2002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ2002は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0030】
ストレージ2003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ2003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0031】
通信装置2004は、無線通信によってコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。通信装置2004は、周波数分割複信及び時間分割複信を実現するために、高周波スイッチ、デュプレクサ、フィルタ、周波数シンセサイザなどを含んで構成されている。送受信アンテナ、アンプ部、送受信部、伝送路インターフェースなどは、通信装置2004によって実現されてもよい。送受信部は、送信部と受信部とで、物理的に、または論理的に分離された実装がなされてもよい。
【0032】
入力装置2005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイスである。入力装置2005は、例えば気圧センサを含む。出力装置2006は、外部への出力を実施する出力デバイスである。なお、入力装置2005及び出力装置2006は、一体となった構成であってもよい。
【0033】
測位装置2007は、例えばGPS(1Global Positioning System)及び地表面に対する測距カメラにより、無線通信端末20の位置、つまり飛行体10の位置を測位するデバイスである。測位装置2007によって測位される位置は、緯度及び経度(主にGPSによって測位される)と、高度(主に測距カメラによって測位される)とを含む3次元空間における位置である。
【0034】
プロセッサ2001、メモリ2002などの各装置は、情報を通信するためのバスによって接続される。バスは、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。本実施形態において、プロセッサ2001及びその周辺装置は、飛行体10の位置を測位して、その飛行体10の位置に基づいて無線通信端末20の通信方式を選択する、本発明に係る制御装置として機能する。
【0035】
また、無線通信端末20は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ2001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。なお、無線通信端末30の構成は、無線通信端末20と同様であるが、必ずしも測位装置2007を備える必要はない。
【0036】
図4は、飛行体運航管理装置50のハードウェア構成を示す図である。飛行体運航管理装置50のハードウェア構成は、
図4に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。また、それぞれ筐体が異なる複数の装置が通信接続されて、飛行体運航管理装置50を構成してもよい。
【0037】
飛行体運航管理装置50は、物理的には、プロセッサ5001、メモリ5002、ストレージ5003、通信装置5004、及びこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。飛行体運航管理装置50における各機能は、プロセッサ5001、メモリ5002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ5001が演算を行い、通信装置5004による通信を制御したり、メモリ5002及びストレージ5003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。これらの各装置は図示せぬ電源から供給される電力によって動作する。なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。
【0038】
プロセッサ5001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ5001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。また、例えばベースバンド信号処理部や呼処理部などがプロセッサ5001によって実現されてもよい。
【0039】
プロセッサ5001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ5003及び通信装置5004の少なくとも一方からメモリ5002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、後述する動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。飛行体運航管理装置50の機能ブロックは、メモリ5002に格納され、プロセッサ5001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。各種の処理は、1つのプロセッサ5001によって実行されてもよいが、2以上のプロセッサ5001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ5001は、1以上のチップによって実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワーク40から飛行体運航管理装置50に送信されてもよい。
【0040】
メモリ5002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ5002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ5002は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0041】
ストレージ5003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ5003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0042】
通信装置5004は、ネットワーク40を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0043】
プロセッサ5001、メモリ5002などの各装置は、情報を通信するためのバスによって接続される。バスは、単一のバスを用いて構成されてもよいし、装置間ごとに異なるバスを用いて構成されてもよい。
【0044】
飛行体運航管理装置50は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ5001は、これらのハードウェアの少なくとも1つを用いて実装されてもよい。
【0045】
申請端末60は、物理的には、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置及びこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。申請端末60における各機能は、プロセッサが、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサが演算を行い、通信装置による通信を制御したり、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置及びこれらを接続するバスは、前述したプロセッサ5001、メモリ5002、ストレージ5003、通信装置5004、入力装置2005、出力装置2006、及びこれらを接続するバスと、ハードウェアとしては同様であるため、その説明を省略する。
【0046】
図5は、飛行体運航管理装置50の機能構成の一例を示す図である。飛行体運航管理装置50において、申請取得部51は、飛行体10の管理者によって申請端末60に入力された飛行申請をネットワーク40経由で取得する。この飛行申請には、飛行を予定している飛行体10の飛行体ID、その飛行体10の数、その飛行体10が有する無線通信端末20が予定している無線通信速度、その飛行体10が飛行を予定している位置(飛行予定位置)及び飛行を予定している日時(飛行予定日時)等が含まれている。ここで、飛行体10の飛行予定位置は、所定の基準でメッシュ状に区切られた空域単位で指定される。本実施形態においてこの空域は、1つが10kmを一辺とする直方体であるが、これに限らない。
【0047】
特定部52は、申請取得部51により取得された飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、飛行体10が有する無線通信端末20と無線基地局41との無線通信によって生じる、無線通信に関する障害の大きさを特定する。ここで、無線通信に関する障害の大きさは、飛行体10の飛行によって各無線基地局41において生じ得ると推定される干渉の大きさに相当する。これを、以下では推定干渉量という。
【0048】
判断部53は、特定部52により特定された結果に基づいて、上記飛行申請に対する可否を判断する。判断結果に関する情報は申請端末60にネットワーク40経由で送信され申請端末60において、この判断結果に関する情報が出力されてもよいし、申請端末60からの要求に応じて判断結果をネットワーク40を経由して表示、ないしは電話、ファクシミリ等を経由して飛行体10の飛行を管理する組織または個人などの管理者に伝達してもよい。申請端末60において、この判断結果に関する情報が出力される。
【0049】
[動作]
次に、
図6~8を参照して本実施形態の動作を説明する。
図6において、飛行体10の管理者は、申請端末60を操作して、飛行を予定している飛行体10の飛行体ID、その飛行体10の数、その飛行体10が有する無線通信端末20が予定している無線通信速度、その飛行体10が飛行を予定している飛行予定位置及び飛行予定日時等を含む飛行申請を入力する。飛行体運航管理装置50の申請取得部51は、この飛行申請をネットワーク40経由で取得する(ステップS11)。なお、飛行体運航管理装置50への飛行体10に関する飛行申請の入力については、上記のように申請端末60、ネットワーク40、申請取得部51により電子的に行われてもよいし、飛行体10の飛行を管理する組織または個人などの管理者から電話、ファクシミリ等により管理者側に伝達された情報を基に管理者が申請取得部51に入力する方法でもよい。
【0050】
次に、飛行体運航管理装置50の特定部52は、申請取得部51により取得された飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、飛行体10が有する無線通信端末20と無線基地局41との無線通信によって生じる、無線通信に関する障害の大きさを空域単位で特定する(ステップS12)。具体的には以下のとおりである。
【0051】
まず、特定部52は、飛行申請に含まれている飛行体10の数(つまりこれらの飛行体が有する無線通信端末20の総数)について、以下の計算式により、空域単位で評価する。
【0052】
各空域における評価端末数=飛行申請に含まれている飛行体が各々有する無線通信端末の総数×位置係数α×通信速度係数β
【0053】
位置係数αとは、飛行体10の飛行予定位置に相当する空域において最大値をとり、飛行体10の飛行予定位置に相当する空域から離れるほど低い値をとる係数である。例えば0≦位置係数α≦1であり、飛行体10の飛行予定位置に相当する空域(以下、飛行予定空域という)においては位置係数α=1、飛行予定空域に隣接する空域(以下、隣接空域という)においては位置係数α=0.5、隣接空域に隣接する空域(ただし飛行予定空域は除く、以下では次隣接空域という)においては位置係数α=0.25、これら飛行予定空域、隣接空域及び次隣接空域以外の空域においては位置係数α=0、といった具合である。無線通信端末20を有する飛行体10の飛行予定位置に近いほど、他の無線通信端末における無線通信に関する障害は大きくなるからである。
【0054】
通信速度係数βとは、飛行体10が有する無線通信端末20が予定している無線通信速度が大きいほど高い値をとる係数である。例えば飛行体10が有する無線通信端末20が予定している無線通信速度が5Mbps以上の場合は通信速度係数β=5、無線通信速度が3Mbps以上~5Mbps未満の場合は通信速度係数β=2、無線通信速度が1Mbps以上3Mbps未満の場合は通信速度係数β=1、無線通信速度が1Mbps未満の場合は通信速度係数β=0.5、といった具合である。飛行体10が有する無線通信端末20の無線通信速度が大きいほど、送信電力が大きくなるため、他の無線通信端末における無線通信に関する障害は大きくなるからである。このように、特定部52は、各々の空域を飛行する予定の飛行体10が備える無線通信端末20の数に対して、各々の無線通信端末20及び各々の無線基地局41間の距離と、無線通信端末20の通信予定速度とに応じた重みを付与することになる。
【0055】
例えば
図7に例示するように、3台の飛行体10が空域Sから空域Gまでを矢印のような経路で、無線通信速度4Mbpsの無線通信を実行しながら飛行する予定であるとする。なお、飛行体10の飛行予定位置は或る大きさをもった空域単位で指定されるが、ここでは各空域の中心位置を飛行体10が飛行するものとする。
【0056】
ここで、前述したように、飛行予定空域においては位置係数α=1、隣接空域においては位置係数α=0.5、次隣接空域においては位置係数α=0.25、これら以外の空域においては位置係数α=0であり、飛行体10が有する無線通信端末20が予定している無線通信速度が5Mbps以上の場合は通信速度係数β=5、無線通信速度が3Mbps以上~5Mbps未満の場合は通信速度係数β=2、無線通信速度が1Mbps以上3Mbps未満の場合は通信速度係数β=1、無線通信速度が1Mbps未満の場合は通信速度係数β=0.5であると仮定する。
【0057】
3台の飛行体10がまず、或る日時に空域Sを飛行する場合を考える。このとき、最も濃い網掛けで表現した空域群A1における評価端末数は、無線通信端末20の総数3×位置係数1×通信速度係数5=15であり、次に濃い網掛けで表現した空域群A2における評価端末数は、無線通信端末20の総数3×位置係数0.5=1.5であり、さらに次に濃い網掛けで表現した空域群A3における評価端末数は、無線通信端末20の総数3×位置係数0.25=0.75であり、網掛けが施されていない空域群A4における評価端末数は、無線通信端末20の総数3×位置係数0=0である。このような空域単位の評価端末数は、3台の飛行体10が空域Sを飛行するときに、各々の無線通信端末20の無線通信によって各々の空域に及ぼされる、無線通信の障害に関する影響の大きさを意味している。このような評価端末数が、飛行体10が飛行する経路に相当する空域ごとに、且つ、その空域を飛行する日時ごとに、算出される。なお、
図7は、各空域を2次元平面上に表現していたが、実際にはこれらの各空域は、緯度、経度及び高度に応じて区切られた3次元空間に配置されており、端末評価数も3次元空間において算出される。
【0058】
次に、特定部52は、空域及び日時ごとに推定干渉量を算出する。ここでは、各空域の直下にある地上エリアに設置されている無線基地局41の位置として、各空域に対応する地上(各区域の直下の地上)において最も高い位置にある無線基地局41(以下、代表基地局という)の位置を用いる。代表基地局は、はるか遠方にわたって見通しがよいと考えられることから、ここでは最も干渉が発生しやすい基地局とみなしている。特定部52は、飛行体10の飛行予定位置及び代表基地局の位置の間の距離と無線通信端末20と代表基地局の空中線特性、評価端末数、空気中の電波伝搬モデルとに基づいてシミュレーションを行って、推定干渉量を算出する。
【0059】
このため、特定部52は、
図8に例示するデータ群を記憶している。このデータ群には、各空域の空域IDと、その空域の境界(つまり隣接する空域との境界)の位置を示す境界位置情報と、その空域の中心の位置(代表位置という)を示す代表位置情報と、その空域に対応する地上(各空域の直下の地上)における代表基地局の位置を示す位置情報と、代表基地局の空中線特性が含まれている。特定部52は、
図7に例示したような経路で3台の飛行体10が飛行する場合に、まず、空域Sの代表位置(空域Sの中心の位置)に1台の無線通信端末20があると仮定し、空域Sを含む周辺の空域群(ここでは、飛行予定となる空域S、その隣接空域及び次隣接空域)の代表基地局に対する推定干渉量を空域ごとに算出し、算出した推定干渉量の各々に対し、これらの各空域について算出しておいた評価端末数を乗算してトータルの推定干渉量を算出する。これにより、空域Sを3台の飛行体10が飛行しているときの、各無線通信端末20と各空域直下にある代表基地局との無線通信によって生じる、無線通信に関する障害の大きさを特定することができる。特定部52は、このような計算を、飛行体10飛行する経路にわたって空域及び日時ごとに行う。
【0060】
そして、判断部53は、特定部52により特定されたトータルの推定干渉量に基づいて、上記飛行申請に対する可否を判断し(
図6のステップS13)、その判断結果に関する情報を申請端末60にネットワーク40経由で送信する(
図6のステップS14)。なお、この判断結果に関する情報は、電話、ファクシミリ等を経由して飛行体10の飛行を管理する組織または個人などの管理者に伝達されてもよい。飛行申請に対する可否の判断については、具体的には、判断部53は、特定部52により特定された空域及び日時単位で算出されたトータルの推定干渉量と閾値とを比較し、飛行体10の飛行予定経路にわたって全ての空域又は日時においてトータルの推定干渉量が閾値以下の場合には飛行申請を許可し、いずれか1以上の空域又は日時においてトータルの推定干渉量が閾値を上回った場合には飛行申請を許可しない。この閾値は、干渉の影響が無視できないほど大きい場合に相当する値であり、予め計算又は実験的に決められている。判断部53は、飛行申請を許可した場合に、
図8に例示したデータ群において、各空域を飛行する予定の各飛行体10の飛行体ID及び各飛行体10が有する無線通信端末20の通信予定速度を記憶する。なお、これらの各空域を飛行する予定の各飛行体10の飛行体ID及び各飛行体10が有する無線通信端末20の通信予定速度は、飛行予定日時に対応付けられて記憶される。
【0061】
ここで、
図9は、或る空域において飛行申請の可否についての判断の例を示す図である。ここでは、わかりやすく説明するために、飛行日時を日単位で区切って表現している。図の例では、対象とする或る空域において、飛行予定日Nに関しては、飛行体10の管理者であるA者、B者、C者、D者による飛行申請に基づく推定干渉量の合計が閾値以下であるから、いずれの飛行申請も許可される。一方、飛行予定日N+1に関しては、飛行体10の管理者であるA者、B者、C者によって先になされた飛行申請に基づく推定干渉量の合計は閾値以下であるから、これらの飛行申請は許可されるが、その後になされたD者による飛行申請に基づく推定干渉量を合計すると、その空域における推定干渉量が閾値を超えるから、D者の飛行申請は許可されない。飛行予定日N+2に関しても同様に、D者の飛行申請は許可されない。
【0062】
このようにして、飛行申請に対する可否を含み、申請日の場合は条件変更を促すメッセージが、飛行体運航管理装置50から申請端末60に送信もしくは申請端末60からの要求に応じて結果を伝達、もしくは飛行体10の管理者の要望に応じて電話、ファクシミリなどで伝達される。飛行体10の管理者はこのメッセージを参照し、飛行申請が許可されない場合には、飛行申請に含まれる諸条件を見直して、再度、飛行申請を行うなどの作業を行う。
【0063】
以上説明した実施形態によれば、飛行体に搭載された無線通信端末からの受信電力強度が大きくなることで、他の無線通信端末の通信に障害が生じるような飛行申請を許可しない。つまり、他の無線通信端末の通信に障害が生じるような飛行体の飛行を抑制することが可能となる。
【0064】
[変形例]
本発明は、上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態を以下のように変形してもよい。また、以下の2つ以上の変形例を組み合わせて実施してもよい。
【0065】
[変形例1]
判断部53が特定部52により特定された空域及び日時単位で算出された推定干渉量と閾値とを比較する場合において、この閾値は固定値である必要はなく、飛行体10の飛行時の条件に応じて変動してもよい。例えば飛行体10が備える無線通信端末20による無線通信によって生じる障害の大きさは、他の無線通信端末の数に応じて実質的に変動する。例えば、夜間や山間部・海上等においては、他の無線通信端末が極端に少ないと想定されるので、飛行体10が備える無線通信端末20による無線通信によって生じる障害は実質的に問題とならない。つまり、このような日時又は地域に対応する空域において、上記閾値は、これ以外の空域に比べて大きくしてもよい。つまり、判断部53は、飛行申請の可否を判断する場合に、位置又は日時に応じて閾値を変更するようにしてもよい。位置又は日時に応じた閾値は予めデータベース化されて判断部53に記憶されている。
【0066】
また、例えばコンサート、展示会、スポーツの競技等の行事が開催される地域には、地上において無線通信端末を所持するユーザが多数集まることから、そのような地域の上空にある空域は、干渉の問題を生じさせる可能性が高い空域に相当する。つまり、地上においてユーザが多く集まるような行事が開催される地域の上空の空域において、上記閾値は、これ以外の空域に比べて小さくしたほうが望ましい。そこで、判断部53は、特定部52により特定された、通信に関する障害の大きさと、閾値とを比較して、飛行申請の可否を判断する場合に、飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において開催予定の行事に応じて、閾値を変更するようにしてもよい。開催される行事の予定位置及び予定日時に応じた閾値は予めデータベース化されて判断部53に記憶されている。
【0067】
[変形例2]
無線基地局41における現実の干渉量を評価分析し、上記閾値を適正化するようにしてもよい。各無線基地局41においては、無線接続している無線通信端末20との間の伝搬遅延の量を計測することが可能であるから、飛行体運航管理装置50は、各無線基地局41から伝搬遅延の量に関する情報(つまり無線通信端末20との無線通信によって生じた干渉を計測した結果に相当する情報)を収集する。つまり、飛行体運航管理装置50は、飛行体10が有する無線通信端末20と無線基地局との通信によって生じた、通信に関する障害の大きさを計測した結果を取得する計測結果取得部を備える。そして、判断部53は、特定部52により特定された、通信に関する障害の大きさと、閾値とを比較して、飛行申請の可否を判断する場合に、計測結果取得部により取得された計測結果に応じて、干渉量が問題とならないような適切な閾値を決定するようにしてもよい。
【0068】
[変形例3]
飛行体運航管理装置50は、飛行申請に係る飛行予定位置及び飛行予定日時における干渉推定量の閾値以内で許容可能な、無線通信速度と無線通信端末20の台数との組み合わせを飛行体10の管理者に提示して、その中から管理者に選択してもらうようにしてもよい。干渉推定量の閾値以内で許容可能な、無線通信速度と無線通信端末20の台数との組み合わせは、
図7~9を用いて説明した、無線通信端末20の数、位置係数、通信速度係数、推定干渉量及び閾値の関係から特定し得る。つまり、飛行体運航管理装置50は、特定部52により特定された通信に関する障害の大きさに基づいて、飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において、無線通信端末20が無線通信を行うときの通信速度の範囲及び当該無線通信端末20の数を特定する通信プラン特定部と、特定された通信速度の範囲及び無線通信端末20の数に関する情報を飛行体10の管理者に通知する通知部とを備えるようにしてもよい。さらに、通信プラン特定部は、特定部により特定された通信に関する障害の大きさに基づいて、飛行申請に含まれる飛行予定位置及び飛行予定日時において無線通信端末20が通信を行うことに対する料金を特定し、通知部は、特定された料金に関する情報を飛行体の管理者に通知するようにしてもよい。例えば、通知部は、飛行体10の管理者に対して、「あなたへのおすすめプラン1:最大速度3Mbps~1Mbps×3台で値段:***円です」「あなたへのおすすめプラン2:最大速度1Mbps以下×30台で値段:+++円です」といったメッセージを生成して申請端末60に送信する。飛行予定位置及び飛行予定日時に応じた料金は予めデータベース化されて通信プラン特定部に記憶されている。
【0069】
[そのほかの変形例]
上記実施の形態の説明に用いたブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的及び/又は論理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び/又は間接的に(例えば、有線及び/又は無線)で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0070】
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broadband)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-WideBand)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
【0071】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0072】
本明細書で説明した情報又はパラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。例えば、無線リソースはインデックスで指示されるものであってもよい。
【0073】
上述したパラメータに使用する名称はいかなる点においても限定的なものではない。さらに、これらのパラメータを使用する数式等は、本明細書で明示的に開示したものと異なる場合もある。様々なチャネル(例えば、PUCCH、PDCCHなど)及び情報要素(例えば、TPCなど)は、あらゆる好適な名称によって識別できるので、これらの様々なチャネル及び情報要素に割り当てている様々な名称は、いかなる点においても限定的なものではない。
【0074】
本明細書で使用する「判定(determining)」、「決定(determining)」という用語は、多種多様な動作を包含する場合がある。「判定」、「決定」は、例えば、判断(judging)、計算(calculating)、算出(computing)、処理(processing)、導出(deriving)、調査(investigating)、探索(looking up)(例えば、テーブル、データベース又は別のデータ構造での探索)、確認(ascertaining)した事を「判定」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判定」、「決定」は、受信(receiving)(例えば、情報を受信すること)、送信(transmitting)(例えば、情報を送信すること)、入力(input)、出力(output)、アクセス(accessing)(例えば、メモリ中のデータにアクセスすること)した事を「判定」「決定」したとみなす事などを含み得る。また、「判定」、「決定」は、解決(resolving)、選択(selecting)、選定(choosing)、確立(establishing)、比較(comparing)などした事を「判定」「決定」したとみなす事を含み得る。つまり、「判定」「決定」は、何らかの動作を「判定」「決定」したとみなす事を含み得る。
【0075】
本発明は、無線通信端末20又は飛行体運航管理装置50において行われる処理のステップを備える情報処理方法として提供されてもよい。また、本発明は、無線通信端末20又は飛行体運航管理装置50において実行されるプログラムとして提供されてもよい。かかるプログラムは、光ディスク等の記録媒体に記録した形態で提供されたり、インターネット等のネットワークを介して、コンピュータにダウンロードさせ、これをインストールして利用可能にするなどの形態で提供されたりすることが可能である。
【0076】
ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0077】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれかを使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0078】
本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。例えば、チャネル及び/又はシンボルは信号(シグナル)であってもよい。また、信号はメッセージであってもよい。また、コンポーネントキャリア(CC)は、キャリア周波数、セルなどと呼ばれてもよい。
【0079】
本明細書で使用する「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0080】
上記の各装置の構成における「手段」を、「部」、「回路」、「デバイス」等に置き換えてもよい。
【0081】
「含む(including)」、「含んでいる(comprising)」、及びそれらの変形が、本明細書或いは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書或いは特許請求の範囲において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0082】
本開示の全体において、例えば、英語でのa、an、及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0083】
以上、本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0084】
1:飛行管理システム、10:飛行体、20、30:無線通信端末、2001:プロセッサ、2002:メモリ、2003:ストレージ、2004:通信装置、2005:入力装置、2006:出力装置、40:ネットワーク、41:無線基地局、50:飛行体運航管理装置、51:申請取得部、52:特定部、53:判断部、5001:プロセッサ、5002:メモリ、5003:ストレージ、5004:通信装置,60:申請端末。