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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】油水分離方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240726BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20240726BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20240726BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20240726BHJP
   B01D 17/022 20060101ALI20240726BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240726BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C22B7/00 C
H01M10/54
C22B3/26
C22B3/22
B01D17/022 501
B01D39/16 A
B09B5/00 A ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020122850
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019174
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】内海 貴光
(72)【発明者】
【氏名】天野 整一
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183292(JP,A)
【文献】米国特許第06350354(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0112291(US,A1)
【文献】特開2019-055354(JP,A)
【文献】特開2004-057861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
B01D 17/00-17/12
B01D 11/00-11/04
B01D 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法における、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液の油水分離方法であって、以下の工程:
該抽出液を有機層と水層とに粗分離する工程;及び
得られた粗分離された有機層及び/又は水層をコアレッサーフィルターで処理する工程

を含み、かつ、該コアレッサーフィルターの孔径が1μ以上30μm以下であり、かつ、該コアレッサーフィルターが濾材として不織布を含み、かつ、該コアレッサーフィルターの濾材を構成する繊維成分の90%以上が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、及びポリアミド66からなる群から選ばれる1種以上である、油水分離方法。
【請求項2】
前記粗分離工程における粗分離は、静置分離である、請求項に記載の油水分離方法。
【請求項3】
前記水層をコアレッサーフィルターで処理する工程の前に、該水層を粗濾過する工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の油水分離方法。
【請求項4】
前記二次電池がリチウムイオン二次電池である、請求項1~のいずれか1項に記載の油水分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法における、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液の油水分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒抽出法とは、非鉄金属の湿式精錬法の一般的な手法であり、酸性の水溶液と該非鉄金属ごとに特有な抽出剤及び/又は希釈溶媒とを混合して非鉄金属イオン抽出液を得、その後、該抽出液をミキサーセトラー(静置分離)等で粗分離し、その後、粗分離された有機層及び/又は水層を、電気分解や結晶化などの方法により、該非鉄金属を回収する方法である。(例えば、以下の特許文献1を参照のこと)。
【0003】
しかしながら、ミキサーセトラーは、分離効率が低く、また、時間がかかり生産性が悪いという問題がある。特に、リチウムイオン電池からの特定金属(コバルト、ニッケル等)の回収においては、分離効率が不十分であり、回収金属の純度が満足するものではないため、安定して良好な分離効率が得られる方法が求められている。また、回収金属を、金属単体ではなく、リチウムイオン電池の原料として回収する場合には、電池性能の安定化のために不純物濃度が規定されており、溶媒抽出法での分離効率を高めることが重要となる。
【0004】
以下の特許文献2には、溶媒抽出工程で用いられる有機溶媒を効率よく回収できる、コアレッサーフィルターを備えた油水分離装置が開示されているが、リチウムイオン二次電池などの二次電池から特定金属を効率よく回収することができる分離効率(分離性能と生産性)の高い油水分離方法は未だ知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-194105号公報
【文献】特開2014-124539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、二次電池から金属を回収するための分離効率(分離性能と生産性)の高い、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液の油水分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本願発明者らは鋭意検討し実験を重ねた結果、二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法における、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液に対し、前段として粗分離を行い、後段としてコアレッサーフィルターを用いた処理を行うことで、高効率に油水分離ができることを予想外に見出し、本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
[1]二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法における、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液の油水分離方法であって、以下の工程:
該抽出液を有機層と水層とに粗分離する工程;及び
得られた粗分離された有機層及び/又は水層をコアレッサーフィルターで処理する工程;
を含む油水分離方法。
[2]前記コアレッサーフィルターの孔径が0.3μm以上100μm以下である、前記[1]に記載の油水分離方法。
[3]前記コアレッサーフィルターが濾材として不織布を含む、前記[1]又は[2]に記載の油水分離方法。
[4]前記コアレッサーフィルターの濾材を構成する繊維成分の90%以上が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、及びガラスからなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の油水分離方法。
[5]前記粗分離工程における粗分離は、静置分離である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の油水分離方法。
[6]前記水層をコアレッサーフィルターで処理する工程の前に、該水層を粗濾過する工程をさらに含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載の油水分離方法。
[7]前記二次電池がリチウムイオン二次電池である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の油水分離方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る油水分離方法は、二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法における、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液の油水分離方法であって、分離効率(分離性能と生産性)に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の油水分離方法は、二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法における、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液による金属イオン抽出液の油水分離方法であって、以下の工程:
該抽出液を有機層と水層とに粗分離する工程;及び
得られた粗分離された有機層及び/又は水層をコアレッサーフィルターで処理する工程;
を含む油水分離方法であり、粗分離を行った後にコアレッサーフィルターで処理することにより、高分離効率で、かつ、良好な生産性を示す。
【0011】
本実施形態の油水分離方法を用いるところの、二次電池から金属を回収するための溶媒抽出法においては、まず、二次電池の焼却、破砕物を、酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液で処理して金属イオン抽出液を得る。ここで、「酸性水溶液」は、特に制限はなく、二次電池に含まれる金属に応じて適宜選択されるが、例えば、硫酸、塩酸等の水溶液が挙げられる。
また、「抽出剤及び/又は希釈溶媒」も、特に制限はなく、二次電池に含まれる金属に応じて適宜選択されるが、例えば、抽出剤としては2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル系抽出剤、酸性リン酸エステル系抽出剤などが、希釈溶媒としてはアルキルベンゼン系希釈剤などが挙げられる。
【0012】
例えば、リチウムイオン二次電池のリサイクル方法としては、使用済み電池を焼却、破砕して選別した後に酸浸出を行い、それにより得られた浸出液から溶媒抽出によってそれぞれの金属を抽出分離する方法があるが、酸浸出させるリチウムイオン二次電池に、正極を構成する金属のみならず、銅、鉄及びアルミニウムが含まれていると、酸浸出によって銅、鉄及びアルミニウムも浸出され、目的回収物であるニッケル、コバルト等の品質を低下させるため、リチウムイオン二次電池を酸浸出した浸出液中に銅、鉄及びアルミニウムが含まれている場合は、それらの除去が必要となる。
【0013】
上記酸浸出に得られる金属混合水溶液は、特に制限はないが、典型的には、正極活物質を含むリチウムイオン二次電池、ニカド電池、ニッケルめっき廃液等を含む廃材を硫酸等で酸浸出して得られた浸出後液であることができる。より詳細には、正極活物質メーカーから出てくる廃正極活物質、電池メーカーから出てくる正極活物質(場合によっては負極活物質及び溶剤(PVDFやNMP)が混練されている)を焼却・乾燥したもの、アルミニウム箔等の集電体にバインダーを介して正極活物質が接着された正極材、正極材から正極活物質を分離したもの、一般に電池滓や電池破砕粉と呼ばれる電池そのものを焼却・破砕・篩別などして正極活物質を分離したようなものを硫酸等で酸浸出して得られた浸出後液であることができる。
本明細書中、用語「金属イオン抽出液」とは、廃リチウムイオン二次電池の破砕物を、「酸性水溶液と抽出剤及び/又は希釈溶媒の混合溶液」で抽出し、これを濾過して得られる金属(コバルト、マンガン、リチウムなど)イオンが含まれる溶媒が混合された液を包含する。
【0014】
本実施形態の油水分離方法は、分離の前段として粗分離を行う工程を含む。粗分離方法としては特に制限はないが、静置分離が好ましい。静置分離としては、ミキサーセトラー型やロータリーディスクカラム型、パルスカラム型等の分離方法を用いることができるが、分離効率の観点から特にミキサーセトラー型が好ましい。また、粗分離は一段である必要ではなく、多段としてもよい。
【0015】
本実施形態の油水分離方法は、粗分離の後に得られた有機層及び/又は水層をコアレッサーフィルターで処理する工程を含むことを特徴とする。コアレッサーフィルターとは、油(有機溶媒)中に微小に分散した遊離水滴を粗大化させて分離する、又は、水中に微小に分散した遊離油滴を粗大化させて分離するためのフィルターである。
前記コアレッサーフィルターの孔径は、生産性の観点から、0.3μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、前記コアレッサーフィルターの孔径は、分離効率の観点から、100μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0016】
コアレッサーフィルターに用いられる濾過材料(濾材)としては、不織布、膜が挙げられ、特に不織布が好ましい。濾材の材質は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・アジペート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・セバケート、ポリエチレンテレフタレート・ドデカンジオエート、ポリプチレンテレフタレートなどのポリエステル系、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンデカミド、ポリヘキサメチレンヘキサミド、ポリカプラミド、ポリオクタミド、ポリノナミド、ポリカミド、ポリテトラミドなどのポリアミド系(ポリアミド6、ポリアミド66等)、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ガラス繊維系などが挙げられ、流体中の水層pHや有機層の耐薬品性に応じて選択することができる。前記コアレッサーフィルターの濾材を構成する繊維成分の90%以上が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド6、ポリアミド66、及びガラスからなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0017】
また、濾材は、親水性、親油性又は撥水性の表面処理がなされてもよい。親水化する方法は、なんら限定されるものではないが、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、ケトン基やスルホン基といった親水性のある官能基を化学反応により繊維高分子に導入したり、グラフト重合によってアクリル酸のようなアルカリ処理を施すことで親水性となる化合物を側鎖に導入する方法が挙げられる。また、ポリエチレングリコールやポリカルボン酸、ポリイソシアネート、ビニル基、グリシジルエーテル基、ポリアミン、N-メトキシメチロールなどを含有したポリアルキレンオキサイドや高分子電解質、親水性をもったセルロース系物質などの親水性を有する加工剤によって繊維表面を親水化処理する方法が挙げられる。撥水加工は通常の方法で行えばよく、例えば、アクリル酸パーフルオロアルコールなどのフッソ系樹脂、ジメチルシリコーンなどのシリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂、ワックス系樹脂等の公知の撥水加工剤を、原糸製造時あるいは繊維構造体にパディング、浸漬、スプレー、吸尽等の方法で付与させればよい。
【0018】
前記不織布は、単独で用いられてもよいし、又は強度を高める為、機能性を付与する為、複数を組み合わせて使用されてもよく、さらに補強材を用いることもできる。補強材としては、例えば、金属メッシュ、織布、編布、不織布等が挙げられる。また、これら織布、編布、不織布を構成する素材も何ら限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート・アジペート、ポリエチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリエチレンテレフタレート・セバケート、ポリエチレンテレフタレート・ドデカンジオエート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系共重合体の繊維、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンデカミド、ポリヘキサメチレンヘキサミド、ポリカプラミド(ポリアミド6)、ポリオクタミド、ポリノナミド、ポリデカミド、ポリドデカミド、ポリテトラミドなどのポリアミドの繊維、ポリアミド・イミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラオキシベンゾエートなどのポリエステルエーテルの繊維、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのハロゲン含有重合体の繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンの繊維、各種アクリル繊維、ポリビニルアルコール系繊維、再生セルロース、アセテート、木綿、麻、絹、羊毛などの天然繊維が挙げられる。
【0019】
前記不織布の製造方法は何ら限定されるものではなく、例えば、メルトブロー法、スパンボンド法、抄紙法などが挙げられ、中でも単繊維径0.1~10μmメルトブロー法による不織布を主体として用いることが好ましい。単繊維径が10μm以下であれば油中に分散した油と相分離状態にある液滴が不織布シートを透過しにくくなるため充分な分離精度が得られ好ましい。また、0.1μm以上の繊維は工業上安定して生産しやすく好ましい。前記不織布の単繊維径は0.3~7μmの繊維を主体とすることが好ましい。
【0020】
フィルターの形状は、処理流量を上げる為、カートリッジ化したものが好ましく、特に不織布を円筒状にプリーツ層を形成し、表面積を大きくしたものが好ましい。重ね合わせの枚数は、何ら限定されるものではないが、実用的には、2~8枚程度である。また、重ね合わせ方法も何ら限定されるものではないが、例えば、コアレッサーフィルターに液の来る側から順に、補強と夾雑物除去をかねた不織布、メイン不織布、補強とスペーサーを兼ねたメッシュの順に重ね合わせてプリーツ化すると、コアレッサーフィルターの耐圧強度の増大、夾雑物に対する耐久性の増大、プリーツ化によるフィルター有効面積の減少をおさえる等の効果が同時に得られて好ましい。また、補強と夾雑物除去を兼ねた不織布もプリーツ化されているので、1本のカートリッジ内で多くの有効面積を取り、高い耐久性を得ることができる。
【0021】
コアレッサーフィルター1段の処理にて粗粒化が不十分である場合には、コアレッサーフィルターを多段にし、又は処理液をコアレッサーフィルターに循環させることによって処理を行なうことも可能である。また、処理液中の夾雑物を捕集するために、コアレッサーフィルターにて被処理液を処理する前に、夾雑物捕集として、プレフィルターを置くことも可能である。
【実施例
【0022】
以下、実施例と比較例により本発明を具体的に説明する。
まず、用いた物性の測定方法等を以下に説明する。
(1)孔径
ISO16889に準拠したマルチパス法で、カット率が90%以上となる最小のダスト粒子径をコアレッサーフィルターの孔径とした。
【0023】
(2)分離性能
二次電池抽出液を模した、コバルトを含む硫酸水溶液と、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル系抽出剤とアルキルベンゼン系希釈剤とからなる有機層とをビーカー内で混合し、10分静置して粗分離した後、水溶液層のみを回収したものを模擬試験液とした。かかる模擬試験液1Lをフィルター(コアレッサーフィルター、平膜式、12.5cm2)へ小型ポンプで通液し、得られた液(水層側)を12時間静置し、目視にて分離性能を、以下の評価基準で判定した:
◎:浮上油が確認されず、液の濁りも確認されない
○:浮上油が確認されないものの、液がわずかに濁っている
△:浮上油が確認されないものの、液が濁っている
×:浮上油が得られた。
【0024】
(3)生産性
前記(2)の試験において、通液の様子より以下の評価基準で、生産性を判定した:
○:1Lの試験液を問題なく通液できた
△:圧損上昇が確認されたが、1Lの試験液は通液できた
×:途中目詰まりによる差圧上昇や流量低下がみられた。
【0025】
[実施例1]
フィルターとして、孔径2μmのポリエステル製不織布(厚み0.2mm、繊維径1.7μm)を用いた。結果を以下の表1に示す。
【0026】
[実施例2]
フィルターとして、孔径5μmのポリエステル製不織布(厚み0.44mm、繊維径2.7μm)を用いた。結果を以下の表1に示す。
【0027】
[実施例3]
フィルターとして、孔径50μmのポリエステル製不織布(厚み2.2mm、繊維径10μm)を用いた。結果を以下の表1に示す。
【0028】
[実施例4]
フィルターとして、孔径0.3μmのポリエステル製不織布(厚み0.09mm、繊維径0.8μm)を用いた。結果を以下の表1に示す。
【0029】
[実施例5]
フィルターとして、孔径5μmのポリアミド66製不織布(厚み0.36mm、繊維径1.7μm)を用いた。結果を以下の表1に示す。
【0030】
[実施例6]
フィルターとして、孔径5μmのガラス繊維製不織布(厚み0.45mm、繊維径1.5μm)を用いた。結果を以下の表1に示す。
【0031】
[実施例7]
模擬試験液の抽出液を酸性リン酸エステル系抽出剤に代えた以外は、実施例2と同様に試験を行った。結果を以下の表1に示す。
【0032】
[実施例8]
フィルターとして、孔径5μmのポリプロピレン繊維製不織布(厚み0.17mm、繊維径1.7μm)に代えた以外は、実施例2と同様に試験を行った。結果を以下の表1に示す。
【0033】
[実施例9]
二次電池抽出液を模した、コバルトを含む硫酸水溶液と、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシルエステル系抽出剤とアルキルベンゼン系希釈剤とからなる有機層とをビーカー内で混合し、10分静置して粗分離した後、有機層のみを回収したものを模擬試験液とした以外は、実施例2と同様に試験を行った。結果を以下の表1に示す。尚、本実施例の分離性能の評価基準は、上記「(2)分離性能」の評価基準における「浮上油」を「遊離水」に読み替えるものとする。
【0034】
[比較例1]
試験液をフィルターへ通液せずに12時間静置した。結果を以下の表1に示す。
【0035】
[比較例2]
フィルターとして、孔径0.1μmのPTFEメンブレンフィルターを用いた。結果を以下の表1に示す。
【0036】
[比較例3]
フィルターとして、ポリプロピレン製吸着剤(厚み4mm、面積12.5cm2、シート状)を用いた。結果を以下の表1に示す。尚、本比較例3では通液途中で吸着材の保持量を超えてしまい、交換を行う必要があった。
【0037】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケルカドミウム二次電池などの二次電池からの特定有用金属を高効率で分離することができるため、産業上有用である。